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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】留置針組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
A61M25/06 500
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021551318
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036944
(87)【国際公開番号】W WO2021065922
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019182527
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】貞廣 衝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/052655(WO,A1)
【文献】特開2017-153658(JP,A)
【文献】特表2004-524926(JP,A)
【文献】特開2019-051220(JP,A)
【文献】特開2010-148799(JP,A)
【文献】国際公開第2007/083770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、
前記外針ハブ側の係合部に解除可能に係合されて前記内針ハブを該外針ハブに対して軸方向で連結するクリップが前記内針ハブに直接形成されて、該内針ハブから該外針ハブに向かって前方に延びて設けられており、該クリップが該内針ハブにおける前記内針の針先の刃面と同じ天面側に設けられていると共に、
該内針ハブにおいて該クリップを周方向に外れた両側には、患者への穿刺の際に手指によって支持される一対の側方支持面が設けられている一方、
該外針ハブ側の前記係合部が、該外針ハブの基端側に設けられた連結部材に設けられており、
該クリップへ外力を及ぼすことで該クリップが弾性変形して該クリップの該係合部への係合が解除される留置針組立体。
【請求項2】
前記外針ハブ側に設けられる前記係合部が、前記クリップに設けられた係合爪が係合される係合凹所とされている請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記クリップは、前記内針ハブに連結されて外周側へ突出する支点部と、該支点部から基端側へ延び出す外力作用片と、該支点部から先端側へ延び出して該外針ハブ側の前記係合部に係合される係合爪を備えた係合片とを備えている請求項1又は2に記載の留置針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通された構造を有する留置針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血、血液透析などを行う際に用いられる留置針組立体が知られている。留置針組立体は、例えば特開2011-206609号公報(特許文献1)に示されているように、基端側に内針ハブが設けられた内針が、基端側に外針ハブが設けられた外針に対して、抜去可能に挿通された構造を有している。留置針組立体は、内針が外針に挿通された状態で内針と外針が患者の血管などに穿刺されて、内針が外針から抜去されることによって、外針が血管などに留置される。そして、外針ハブに外部流路が接続されることにより、外針及び外針ハブの内腔と外部流路とを通じて輸液や採血、血液透析などが実施される。
【0003】
ところで、留置針組立体は、鋭利な針先を有する内針が血管などの体内管腔に穿刺され、内針に外挿された外針が内針の穿刺箇所において血管などへ挿入されることから、内針に固定された内針ハブを持って穿刺作業を行うことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-206609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際には、留置針組立体を穿刺する際に、内針ハブよりも針先に近い外針ハブ側を持って穿刺作業が行われる場合もあることが明らかとなった。内針が外針に対して基端側へ抜去可能に挿通されていることから、外針ハブ側を持って穿刺作業を行うと、内針が外針に対して基端側へ移動するおそれがある。その結果、例えば、外針の先端が内針の針先を覆うことで、内針の針先の切れ味が低下して、穿刺時に患者の痛みが増してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明の解決課題は、外針ハブ側を持って穿刺した場合にも内針の外針に対する相対的な移動が制限される、新規な留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、前記外針ハブ側の係合部に解除可能に係合されて前記内針ハブを該外針ハブに対して軸方向で連結するクリップが前記内針ハブに直接形成されて、該内針ハブから該外針ハブに向かって前方に延びて設けられており、該クリップが該内針ハブにおける前記内針の針先の刃面と同じ天面側に設けられていると共に、該内針ハブにおいて該クリップを周方向に外れた両側には、患者への穿刺の際に手指によって支持される一対の側方支持面が設けられている一方、該外針ハブ側の前記係合部が、該外針ハブの基端側に設けられた連結部材に設けられており、該クリップへ外力を及ぼすことで該クリップが弾性変形して該クリップの該係合部への係合が解除されるものである。
【0009】
本態様によれば、外針ハブ側の係合部と内針ハブ側のクリップとの係合によって、外針に対する内針の基端側への移動量が制限される。それ故、内針の針先が外針よりも先端側へ突出した状態に保持されて、外針が内針の針先にかかることによる内針の切れ味の低下が回避される。その結果、穿刺時に患者に与える痛みを抑えることができる。
【0010】
クリップが内針の針先の刃面と同じ天面側に設けられていることにより、穿刺時に患者の体表面と反対側にクリップが位置することとなる。それ故、クリップによる係合を解除する際にクリップを容易に操作することができると共に、クリップが患者の体に当たることでクリップによる係合が意図せずに解除されるのを防止できる。
【0011】
使用者が手指で持つ側方支持面が、内針ハブにおいてクリップを周方向に外れた両側に設けられていることから、内針の針先の刃面の向きを位置決めした状態で取扱い易く、穿刺が容易になる。しかも、クリップに意図しない力が作用し難く、クリップによる係合が意図せずに解除されるのを防ぐこともできる。
また、本態様によれば、外針ハブよりも基端側の連結部材に係合部が設けられることで、クリップを先端側へ大きく延ばす必要がなく、クリップを備える内針ハブのサイズを軸方向において小さくすることができる。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
の態様は、第1の態様に記載された留置針組立体において、前記外針ハブ側に設けられる前記係合部が、前記クリップに設けられた係合爪が係合される係合凹所とされているものである。
【0022】
本態様によれば、係合部の形成部分において外針ハブ側が大径化することがない。また、例えば、係合爪が係合凹所の壁内面に対して軸方向だけでなく、周方向でも係合されるようにすれば、内針ハブと外針ハブ側との相対回転が制限されて、内針と外針を周方向で位置決めすることができる。
【0023】
の態様は、第1又は第2の態様に記載された留置針組立体において、前記クリップは、前記内針ハブに連結されて外周側へ突出する支点部と、該支点部から基端側へ延び出す外力作用片と、該支点部から先端側へ延び出して該外針ハブ側の前記係合部に係合される係合爪を備えた係合片とを備えているものである。
【0024】
本態様によれば、例えば、外力作用片を押すなどの簡単な操作によって、係合片に設けられた係合爪を移動させて、係合爪の係合部への係合を解除することができる。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、外針ハブ側を持って穿刺した場合にも内針の外針に対する相対的な移動が制限される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施形態としての留置針組立体を示す斜視図
図2図1に示す留置針組立体の正面図
図3図2に示す留置針組立体の縦断面図
図4図2の留置針組立体の要部を拡大して示す斜視断面図であって、内針が外針に挿通された初期状態を示す図
図5図2の留置針組立体の要部を拡大して示す斜視断面図であって、内針の針先が針先プロテクタよりも基端側に位置する状態を示す図
図6図2の留置針組立体の要部を拡大して示す斜視断面図であって、針先プロテクタが外針ハブ側から分離した状態を示す図
図7】本発明の第2の実施形態としての留置針組立体を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1~3には、本発明の第1の実施形態としての留置針組立体10が示されている。留置針組立体10は、外針12に内針14が抜去可能な態様で挿通された構造を有している。以下の説明において、軸方向とは、原則として、外針12及び内針14の針軸方向である図2中の左右方向を言う。また、先端側とは後述する針先44側である図2中の左側を、基端側とは図2中の右側を、それぞれ言う。
【0034】
外針12は、合成樹脂などで形成された小径チューブ状とされている。外針12は、先端部分が先端側に向かって次第に小径となるテーパ形状とされている。
【0035】
外針12の基端側には、外針ハブ16が設けられている。外針ハブ16は、全体として筒状とされており、針接合部18と流路接続部20が軟質チューブ22によって連結された構造を有している。
【0036】
針接合部18は、硬質の合成樹脂によって形成されている。針接合部18は、先端に向かって小径となるテーパ筒状とされている。針接合部18の内周には、外針12の基端部分が挿入されて嵌合されている。これにより、外針12は、基端部分に針接合部18が固定されて、針接合部18から先端側へ延び出している。
【0037】
流路接続部20は、後述する外部流路に接続される接続部を基端に有する筒状の構造を有しており、本実施形態においては、筒状の弁ハウジング24に止血弁26と押し子28が収容された構造を有している。弁ハウジング24は、筒状とされたカバー部材30の基端部分に、筒状とされた押し子ガイド32の先端部分が挿し入れられて、それらカバー部材30と押し子ガイド32が軸方向で連結されることによって構成されている。押し子ガイド32は、基端部分が略一定の断面形状で軸方向に延びており、基端には外周へ向けて突出する雄ねじ部34が一体形成されている。
【0038】
止血弁26は、全体として略円板形状とされており、樹脂エラストマやゴムなどの弾性体によって形成されている。止血弁26は、円板形状の中央部分に放射状の切込み36が形成されており、中央部分の弾性変形によって切込み36が開閉されるようになっている。止血弁26の外周部分は、押し子ガイド32の先端と、カバー部材30の内周に保持された弁支持部材38との間で軸方向に挟持されている。これにより、止血弁26が弁ハウジング24によって支持されて、弁ハウジング24の内腔が止血弁26によって遮断されている。
【0039】
押し子28は、筒状とされており、押し子ガイド32の内周に挿入されている。押し子28は、基端部分が略一定の外径寸法とされていると共に、先端部分の外周面が先端側に向かって小径となるテーパ形状とされている。
【0040】
針接合部18と流路接続部20をつなぐ軟質チューブ22は、樹脂エラストマやゴムなどで形成されて湾曲変形可能とされていると共に、断面形状の変化も許容されている。軟質チューブ22が設けられることにより、例えば、外針ハブ16を皮膚に固定した状態で後述する外部流路を外針ハブ16に接続し易くなる。軟質チューブ22の先端部分は、針接合部18と外針12の間に差し入れられて固着されている。軟質チューブ22の基端部分は、流路接続部20のカバー部材30に挿入状態で取り付けられたチューブ連結部材40の内周へ差し入れられて固着されている。これにより、針接合部18と流路接続部20が軟質チューブ22で接続されており、針接合部18の内腔と流路接続部20の内腔が、軟質チューブ22の内腔を介して相互に連通されている。
【0041】
本実施形態の軟質チューブ22は、外径寸法が軸方向で略一定とされていると共に、内径寸法は軸方向の中央部分において両端部分よりも小さくされている。従って、軟質チューブ22は、軸方向中央部分が両端部分よりも厚肉の厚肉部41とされている。これにより、軟質チューブ22の軸方向の中央部分である厚肉部41の内周面は、外針12に内針14が挿通された状態において内針14の外周面42に近い位置に配されている。従って、例えば軟質チューブ22を摘まんだ場合に、軟質チューブ22が厚肉部41において内針14に強く押し付けられて、軟質チューブ22と内針14の間の滑りが生じ難い。なお、軟質チューブ22は、肉厚が軸方向で略一定であってもよいし、軸方向の中央部分が薄肉であってもよい。
【0042】
内針14において軟質チューブ22に挿通される部分の外周面42は、例えば、凹凸、シボなどの粗面化や、摩擦抵抗の大きいエラストマ、ゴム、合成樹脂などによる被覆等によって、軟質チューブ22の内周面に対して滑り難くされた滑止めが設けられ得る。このようにすれば、軟質チューブ22を把持した場合に、軟質チューブ22と内針14の間の滑りが生じ難く、内針14と外針12の相対位置をずれ難くすることができる。なお、内針14の外周面に軟質チューブ22の内周面に対して滑り難くする構成(滑止め)を設けなくともよい。また、滑止めは、軟質チューブ22の内周面に設けられていても良く、内針14と軟質チューブ22の間、換言すれば、内針14の外周面と軟質チューブ22の内周面との少なくとも一方に設けられていれば良い。
【0043】
外針12と針接合部18と軟質チューブ22と流路接続部20の各内腔には、内針14が基端側から挿通されている。内針14は、中空の金属針であって、先端面が傾斜した刃面43を有することで鋭角の針先44が形成されている。なお、図2,3において、内針14の刃面43は、図中の上側に設けられている。
【0044】
内針14の基端側には、内針ハブ46が設けられている。内針ハブ46は、内針14の基端部分が挿入状態で固着される台座部48を有しており、台座部48の基端側に連結部50が設けられていると共に、台座部48の先端側にプロテクタ収容部52が設けられている。
【0045】
連結部50は、筒状とされており、内針キャップ54が取外し可能に差し入れられて装着されている。内針キャップ54は、針軸方向の中間部分に段差が設けられた略段付き円筒形状とされている。内針キャップ54の先端部分には、通気フィルタ56が設けられている。通気フィルタ56は、気体は通過するが液体は通過しない性質を有しており、通気フィルタ56が内針キャップ54の内腔に設けられることで、内針14を通じての逆血が外部に漏れ出さないようになっている。なお、内針ハブ46や内針キャップ54を透明乃至は半透明とすれば、逆血(フラッシュバック)によって血管への穿刺を容易に確認することができる。
【0046】
プロテクタ収容部52は、筒状とされている。また、プロテクタ収容部52の先端側には、穿刺操作部58が設けられている。穿刺操作部58は、プロテクタ収容部52よりも大径の略筒状とされている。穿刺操作部58は、プロテクタ収容部52から先端側へ向かって延びており、内針14が外針12に挿通された状態において、外針ハブ16における流路接続部20の基端部の外周側を囲むように配されている。なお、穿刺操作部58は、例えば、軟質チューブ22の外周まで達していても良く、これによって、より先端側で内針ハブ46側を持つことが可能になると共に、穿刺時に軟質チューブ22を持ち難くすることができる。
【0047】
図1,2に示すように、穿刺操作部58の外面には、一対の側方支持面60,60が設けられている。側方支持面60は、穿刺操作部58の外周面において相互に対応する両側面に設けられて、軸方向に延びている。側方支持面60,60は、内針14の針先44の刃面43が上向きとなる図2の状態において、上下方向と直交する両側方に位置するように設けられている。側方支持面60,60は、穿刺操作部58の先端まで達しておらず、先端部分が先端側に向かって側方外側へ傾斜する傾斜面とされている。側方支持面60,60が穿刺操作部58の先端まで達していないことにより、穿刺操作部58の先端部分が厚肉とされており、穿刺操作部58の先端部分の形状安定性が高められている。また、各側方支持面60には、突起、凹所、シボなどの滑止めが設けられていても良いし、単なる曲面でもあってもよい。
【0048】
プロテクタ収容部52の内周側には、プロテクタハウジング62が配されている。プロテクタハウジング62は、図3,4に示すように、筒状の収容筒部64と、収容筒部64の先端側の開口を閉塞する蓋体66とを備えている。また、蓋体66は、先端側の板状部と基端側の板状部が軸方向で離れて設けられており、それら板状部の間に針先プロテクタ68が配されている。針先プロテクタ68は、プロテクタハウジング62に収容された遮蔽部材70と固定部材72によって構成されている。遮蔽部材70と固定部材72は、軸直角方向で内針14を挟んで相互に離れて配置されている。遮蔽部材70と固定部材72は、一方が磁石とされていると共に、他方が磁石又は強磁性体とされており、それら遮蔽部材70と固定部材72の間に相互に引き合う磁気的な引力が作用している。本実施形態では、遮蔽部材70が金属などの強磁性体とされていると共に、固定部材72が永久磁石とされている。固定部材72は、収容筒部64の先端部に固定されている。遮蔽部材70は、固定部材72に対して接近方向へ変位可能とされており、遮蔽部材70と固定部材72の間に内針14が挿通された状態において、固定部材72側への移動が内針14によって阻止されている。
【0049】
穿刺操作部58は、より詳細には天面である上部に形成されていない部分があり、上向きに開口する略C字断面を有している。そして、内針ハブ46における穿刺操作部58の周方向端部間には、クリップ74が設けられている。
【0050】
クリップ74は、内針ハブ46において、内針14の針先44の刃面43と同じ側である天面側(図2中の上側)に設けられている。内針ハブ46において、クリップ74を周方向に外れた両側に側方支持面60,60が形成されている。クリップ74は、図1,3,4などに示すように、穿刺操作部58の先端部から上側へ向かって延び出す支点部76を有しており、支点部76の突出端部から基端側へ延び出す外力作用片78と、支点部76の突出端部から先端側へ延び出す係合片80とを、一体で備えている。
【0051】
外力作用片78は、周方向に湾曲する板状とされている。外力作用片78の上面には、2つの凹所82,82が周方向に延びて形成されており、それら凹所82,82によって後述する外力作用片78の押込み操作時に指先が滑り難くなっている。
【0052】
係合片80は、穿刺操作部58の周方向の両端部間に位置しており、係合片80は、外力作用片78と同様に、周方向に湾曲する板状とされている。係合片80は、外力作用片78よりも軸方向の長さ寸法が大きくされている。係合片80の先端は、軸方向において穿刺操作部58の先端と略同じ位置まで達している。係合片80は、中央部分に上下方向に貫通する貫通孔83が形成されている。
【0053】
係合片80は、係合爪84を備えている。係合爪84は、係合片80における貫通孔83よりも先端側に設けられている。係合爪84は、係合片80から下向きに突出している。係合爪84は、基端側に向かって次第に突出寸法が大きくなっている。本実施形態の係合爪84は、基端側の面が軸直角方向に広がる係合平面86とされていると共に、先端側の面が係合平面86に対して傾斜するガイド面87とされており、図3に示す縦断面において略直角三角形断面を有している。
【0054】
そして、クリップ74は、外力作用片78に下向きの力を加えると、係合片80が支点部76を中心として傾動し、係合片80の先端部に設けられた係合爪84が上側へ移動するようになっている。
【0055】
プロテクタハウジング62は、連結部材としてのコネクタキャップ88によって外針ハブ16に連結されている。コネクタキャップ88は、軸直角方向に広がる底壁部90を備えている。底壁部90は、円環板状とされており、内周端部には先端側へ突出する管状突起92が一体形成されている。底壁部90の外周端部には、先端側へ延び出す周状壁部94と、基端側へ延び出す一対の弾性片96,96とが一体形成されている。
【0056】
周状壁部94は、筒状とされている。周状壁部94の内周面には、雌ねじ98が設けられている。そして、周状壁部94の内周へ外針ハブ16を構成する押し子ガイド32の基端部分が差し入れられて、押し子ガイド32の雄ねじ部34と周状壁部94の雌ねじ98が螺合することにより、コネクタキャップ88が外針ハブ16の基端部分に取り付けられる。
【0057】
コネクタキャップ88の先端部には、上面に開口する係合部としての係合凹所100が形成されている。係合凹所100は、周状壁部94の上面及び先端面に開口する凹所であって、内針ハブ46のクリップ74に設けられた係合爪84と対応する形状とされている。要するに、係合凹所100は、係合爪84を上側から挿入可能とされており、係合凹所100の基端側の壁内面が係合爪84の係合平面86と対応する軸直角方向に広がる平面とされている。
【0058】
弾性片96,96は、板状とされて、厚さ方向で弾性的な撓み変形を許容されている。弾性片96,96は、突出先端において内周側へ突出する係止突起102がそれぞれ設けられている。係止突起102は、突出先端である内周側に向けて軸方向の幅寸法が小さくなる先細断面形状を有している。そして、弾性片96,96の対向間にプロテクタハウジング62の先端部分が差し入れられて、弾性片96,96の各係止突起102がプロテクタハウジング62に対して軸方向で係止される。これにより、コネクタキャップ88がプロテクタハウジング62に取り付けられており、外針ハブ16とプロテクタハウジング62がコネクタキャップ88を介して連結されている。また、プロテクタハウジング62を基端側へ引くことにより、プロテクタハウジング62が弾性片96,96を外周側へ押し広げて係止突起102,102を乗り越え、プロテクタハウジング62ひいては針先プロテクタ68が、コネクタキャップ88から分離可能とされている。
【0059】
コネクタキャップ88には、内針ハブ46の穿刺操作部58が外挿されている。これにより、弾性片96,96の外周側への変形が、穿刺操作部58によって規制されて、一対の係止突起102,102によるコネクタキャップ88とプロテクタハウジング62との連結が安定して維持される。
【0060】
内針ハブ46は、クリップ74の係合爪84がコネクタキャップ88の係合凹所100に差し入れられて、軸方向で相互に係合されることにより、コネクタキャップ88に対する基端側への移動が制限されている。即ち、係合爪84が係合凹所100に挿入されることによって、係合爪84の係合平面86と係合凹所100の基端側の壁内面とが、軸方向の投影において相互に重なり合う位置に配されている。その結果、内針ハブ46がコネクタキャップ88に対して基端側へ移動しようとすると、係合爪84の係合平面86と係合凹所100の基端側の壁内面が係合されて、内針ハブ46のコネクタキャップ88に対する相対移動量が制限される。従って、内針14の外針12に対する基端側への抜けが、クリップ74の係合爪84とコネクタキャップ88との係合によって防止されている。このように、内針ハブ46が外針ハブ16の基端側に取り付けられたコネクタキャップ88に連結されることにより、内針14が外針12に対して軸方向で位置決めされて、内針14の外針12に対する基端側への移動が防止されている。
【0061】
上記のように、内針ハブ46の外針ハブ16に対する分離方向(基端側)への移動は、クリップ74の係合爪84と係合凹所100の壁内面との係合によって制限されている。従って、本実施形態において、外針ハブ16と内針ハブ46の分離方向の相対移動に対する抗力を生じる位置決め部は、内針ハブ46側に設けられたクリップ74の係合爪84と、外針ハブ16側であるコネクタキャップ88に設けられた係合凹所100とによって構成されている。なお、外針ハブ16と内針ハブ46の分離方向は、外針ハブ16と針先プロテクタ68の分離方向と略同じとされている。
【0062】
内針ハブ46の穿刺操作部58及び係合片80をコネクタキャップ88に対して基端側から接近させると、係合片80に設けられた係合爪84のガイド面87が、コネクタキャップ88の上側の弾性片96の基端部に軸方向で当接する。これにより、内針ハブ46をコネクタキャップ88に対して先端側へ更に移動させると、係合爪84が上側の弾性片96によって上側へ押し上げられて、係合爪84がコネクタキャップ88の外周面に摺接しながら先端側へ移動する。そして、係合爪84がコネクタキャップ88の先端部に設けられた係合凹所100まで移動すると、係合片80の弾性によって係合爪84が係合凹所100に挿入される。このように、本実施形態では、クリップ74を操作することなく、内針ハブ46をコネクタキャップ88に対して基端側から先端側へ移動させることによって、係合爪84をコネクタキャップ88の係合凹所100に挿入することができる。
【0063】
本実施形態では、外針ハブ16側のコネクタキャップ88に設けられる係合部が、外周面に開口する凹形状の係合凹所100とされていることから、コネクタキャップ88の外寸が係合部の形成によって大きくなるのを防ぐことができる。
【0064】
係合凹所100は、外針ハブ16の基端側に取り付けられるコネクタキャップ88に設けられている。それ故、クリップ74の係合片80がコネクタキャップ88よりも先端側まで達する長さとする必要がなく、クリップ74を小型化することができる。また、外針ハブ16に係合凹所100を設けなくて良くなることで、外針ハブ16の形状をより自由に設計することができる。
【0065】
係合凹所100は、コネクタキャップ88の先端側に設けられている。これにより、係合片80の長さが外力作用片78よりも長くされており、入力による外力作用片78の移動量に対して、係合爪84が設けられた係合片80の先端部分の移動量が大きくなる。それ故、外力作用片78を大きく動かすことなく、係合爪84を十分に移動させることができて、係合爪84の係合凹所100への挿入状態を解除することができる。
【0066】
係合凹所100は、軸方向に延びており、周方向の一部に設けられている。そして、係合凹所100に挿入された係合爪84が、係合凹所100の基端側の壁内面に係合されると共に、係合凹所100の周方向両側の壁内面にも係合される。これにより、係合爪84と係合凹所100の壁内面との周方向での係合によって、外針12と内針14とを周方向で位置決めする回転制限部が構成されている。要するに、外針12と内針14は、係合爪84と係合凹所100の壁内面との係合によって、内針14の外針12に対する基端側への移動が制限されるだけでなく、内針14の外針12に対する相対回転も制限される。
【0067】
このような構造とされた留置針組立体10は、内針14が図示しない患者の腕などの血管に穿刺される。血管への穿刺を行う医療従事者(使用者)は、内針ハブ46の穿刺操作部58を手指で持って適切に保持した状態で、内針14を患者の腕などに穿刺する。医療従事者は、側方支持面60,60に指先を当てて穿刺操作部58の側方を挟むように持つ。これにより、医療従事者は、安定して内針14を針先44から患者に穿刺することができる。クリップ74を周方向に外れた側方に設けられた側方支持面60,60を持つことによって、内針ハブ46の上面に設けられたクリップ74に誤って力が及ぼされ難い。それ故、外針ハブ16側のコネクタキャップ88と内針ハブ46のクリップ74による連結が意図せずに解除されるのを防止できる。
【0068】
このように、医療従事者が内針ハブ46に設けられた穿刺操作部58を持って穿刺作業を行うことにより、内針14を精度よくコントロールすることができて、正確な穿刺を実現することができる。
【0069】
穿刺操作部58において医療従事者が指先で持つ部分が、側方支持面60,60とされていることにより、穿刺操作部58が周方向において位置決めされた状態で保持され易い。また、側方支持面60,60の先端部分がそれぞれ傾斜面とされていることにより、指先が側方支持面60,60よりも先端側へ滑り難く、穿刺方向の力をより安心して加えることができる。なお、穿刺操作部58に翼状部が設けられて、この翼状部を持って操作することもできる。翼状部は、例えば、穿刺操作部58に外挿状態で装着される嵌合筒部に対して、板状の連結部が嵌合筒部の接線方向に突出して設けられていると共に、連結部の嵌合筒部からの突出先端側にそれぞれ翼本体が設けられた構造を有している。
【0070】
内針14側に設けられた穿刺操作部58を持つことにより、外針12側に不要な外力が加わり難く、外針ハブ16を持って穿刺を行う場合に比して、外針12と内針14の意図しない相対変位が生じ難い。それ故、軟質チューブ22の変形による外針12と内針14の相対的な移動が防止されて、穿刺痛の低減やより正確な穿刺が実現される。
【0071】
ところで、軟質チューブ22を備える外針ハブ16においては、軟質チューブ22を備えていることから外針ハブ16が長くなりやすく、内針14側を把持して穿刺しようとすると把持位置から針先44までが遠くなって針先44の位置決めが難しいことから、使用者は穿刺の際に外針ハブ16を持つケースが増える。留置針組立体10は、医療従事者が穿刺操作部58よりも針先44に近い外針ハブ16側を持って穿刺をする場合に、穿刺時の抵抗による内針14の外針12に対する基端側への移動が防止される。即ち、内針ハブ46は、外針ハブ16に取り付けられたコネクタキャップ88に対して、クリップ74によって基端側への移動が制限されている。これにより、外針ハブ16側を持って穿刺を行ったとしても、内針ハブ46が外針ハブ16側に対して基端側へ移動することがなく、内針14が外針12に対して基端側へ移動しない。その結果、刃面43を備える内針14の針先44が外針12よりも先端に露出した状態に保持されて、針先44の切れ味の低下が回避されることで、患者に与える痛みが低減される。
【0072】
内針14及び外針12が患者の血管に穿刺された後、外針12から内針14が抜去されることにより、外針12及び外針ハブ16が患者の血管に挿入された状態で留置される。
【0073】
内針14の外針12からの抜去は、クリップ74によるコネクタキャップ88に対する連結を解除することによって可能となる。即ち、クリップ74において支点部76よりも基端側に延び出す外力作用片78を指先で押すなどして、下向きの外力を外力作用片78に加えることにより、支点部76よりも先端側に延び出す係合片80に設けられた係合爪84が上側へ移動する。これにより、係合爪84がコネクタキャップ88の係合凹所100の開口よりも上側へ移動して、内針ハブ46のコネクタキャップ88に対する基端側への移動、換言すれば内針ハブ46の外針ハブ16側からの分離が、係合爪84と係合凹所100の基端側の壁内面との係合によって制限されることなく許容される。このように、クリップ74のコネクタキャップ88への係合は、外力作用片78を下向きに押し込む簡単な操作によって解除することができる。外針12及び外針ハブ16と内針14及び内針ハブ46は上述のように分離可能に組み合わされており、内針14及び外針12が患者の血管に穿刺された後で分離されて、内針14及び内針ハブ46が取り除かれる。
【0074】
クリップ74は、内針14及び外針12が患者の血管に穿刺された状態において、留置針組立体10において患者と反対側になる天面(上面)側に位置している。これにより、側方支持面60を親指と中指で把持して穿刺操作を行った後に、側方支持面60を把持したまま人差指でクリップを押すことができ、持ち手を変えたり、両手を用いたりする必要が無い。それ故、上記の如きクリップ74を押し込みながら内針14を外針12に対して基端側へ引き抜く操作を、片手で簡単に行うことができる。
【0075】
外針12から引き抜かれた内針14は、図5,6に示すように、針先44が針先プロテクタ68によって保護される。即ち、内針14が基端側に引き抜かれると、内針14は、コネクタキャップ88に係止されたプロテクタハウジング62に対して、基端側へ相対変位する。そして、図5に示すように、内針14の先端が遮蔽部材70よりも基端側まで移動することにより、遮蔽部材70の固定部材72への接近変位が許容されて、遮蔽部材70が内針14の先端側を塞ぐように配置される。これにより、内針14は、針先プロテクタ68に対して先端側への移動が制限されて、プロテクタハウジング62に収容された内針14の針先44が外部に露出しなくなる。
【0076】
さらに、内針14に設けられた図示しない突部がプロテクタハウジング62の収容筒部64の基端部に対して軸方向で係止されることにより、内針14からプロテクタハウジング62に引抜力が伝達される。そして、プロテクタハウジング62がコネクタキャップ88に対して基端側へ引かれることにより、プロテクタハウジング62とコネクタキャップ88の係止突起102との係止が解除されて、図6に示すように、プロテクタハウジング62がコネクタキャップ88から分離する。これにより、内針14が外針12から分離して取り除かれる。
【0077】
内針14から分離して留置された外針12は、外針ハブ16からコネクタキャップ88が取り外されて、外針ハブ16の流路接続部20に設けられた雄ねじ部34に対して、図示しない外部流路を構成するチューブやシリンジのコネクタが取り付けられる。これにより、外針12及び外針ハブ16の内腔が、外部流路に接続される。このように、外針ハブ16の雄ねじ部34は、コネクタキャップ88の外針ハブ16への連結と、外部流路の外針ハブ16への連結との両方に用いられる。
【0078】
なお、プロテクタハウジング62がコネクタキャップ88に固定されていると共に、内針14とプロテクタハウジング62が周方向で位置決めされていても良い。この場合には、内針14及び内針ハブ46を回転させることで、回転力がプロテクタハウジング62を介してコネクタキャップ88に伝達されて、コネクタキャップ88が外針ハブ16から取り外される。プロテクタハウジング62とコネクタキャップ88は、別体で固定されていても良いが、一体とされ得る。
【0079】
外針ハブ16に図示しない外部流路が接続されると、押し子28が外部流路によって先端側へ押し込まれる。押し込まれた押し子28が止血弁26に押し当てられて止血弁26を変形させることにより、止血弁26の切込み36が開放される。これにより、外針12及び外針ハブ16の内腔を通じて、患者の血管と外部流路が接続されて、血液透析や採血、薬液の投与などの治療を行うことができる。
【0080】
図7には、本発明の第2の実施形態としての留置針組立体110が示されている。以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材及び部位には、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0081】
留置針組立体110は、外針ハブ112の全体が硬質の合成樹脂によって一体形成されており、軟質チューブ22を備えていない。
【0082】
また、外針ハブ112の外周面に図示しない係合部が設けられており、内針ハブ46のクリップ74が外針ハブ112に対して他部材を介することなく係合されている。なお、外針ハブ112に設けられる係合部は、前記実施形態のような係合凹所100であっても良いし、外周面に突出する係合突部であっても良い。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、係合凹所100は、全周に亘って周方向に延びていても良く、外針12と内針14が係合爪84と係合凹所100の壁内面との係合によって周方向で位置決めされる前記実施形態の如き構成は必須ではない。
【0084】
針先プロテクタ68は必須ではなく、外針ハブ16とプロテクタハウジング62を連結するコネクタキャップ88も省略され得る。
【0085】
例えば、コネクタキャップとプロテクタハウジングが内針の引抜きでは分離しない構造とされていると共に、コネクタキャップと外針ハブが内針の引抜きによって分離する構造とされており、コネクタキャップが内針と共に外針ハブから分離するようにしても良い。この場合には、外針ハブとコネクタキャップの固定力が小さく位置決めが不十分になり易いことから、クリップは、外針ハブ或いは外針ハブに固定されたコネクタキャップ以外の部材に係合されることが望ましい。
【0086】
係合爪と係合部の軸方向で当接して係合される面は、軸直角方向に対して傾斜して広がっていても良い。
【0087】
クリップ74は、プロテクタ収容部52や穿刺操作部58とは別体であっても良く、例えば、材質を異ならせることもできる。なお、クリップの具体的な構造は、特に限定されない。例えば、前記実施形態のクリップ74は、外力作用片78に作用する外力が解除されると、支点部76の弾性等に基づいてクリップ74が初期形状に復帰するが、外力作用片78とプロテクタ収容部52の間にばねを設けるなどして、クリップ74の初期形状への復帰をばねの弾性によって補助することもできる。また、別体のクリップをピン支持させて揺動させることや、押圧操作で内方へ引込み移動する係止爪を、内周面に設けた係合凹部へ係止させるクリップなども採用可能である。また、特に第1の実施形態の如き軟質チューブを備えた態様では、天面側に代えて又は加えて側面側や底面側に少なくとも1つのクリップを設けても良く、例えば両側面においてそれぞれ外針ハブ側に設けられた係合部に対して係合される一対のクリップを設けることも可能である。また、クリップ74において操作力が及ぼされる部分は、外力作用片78のような構造の他、例えばクリップに外力を与え続けずともクリップが係合解除状態に保持されるようにしても良いし、クリップの係合状態と係合解除状態とをボタン操作で複数回切り換えることができるようにしても良い。
【0088】
クリップ74は、針先プロテクタ68とコネクタキャップ88の外周側に設けられて、針先プロテクタ68とコネクタキャップ88の分離を防止するようにされても良い。また、クリップ74は、針先プロテクタ68と外針ハブ16の外周側に設けられて、針先プロテクタ68と外針ハブ16の分離を防止するようにされても良い。
【0089】
前記実施形態においては、外針ハブ16の基端に外針ハブ16の基端を覆うコネクタキャップ88を設けて、当該コネクタキャップ88を連結部材としたが、コネクタキャップ88を設けず、外針ハブ16と針先プロテクタ68が組み付けられていても良い。この場合に、クリップ74は、例えば、針先プロテクタ68に対して解除可能に係止されるように設けられ得る。
【0090】
前記実施形態では、外針ハブ16と内針ハブ46の分離方向の相対移動に対して抗力を生じる位置決め部が、クリップ74の係合爪84とコネクタキャップ88の係合凹所100とによって構成されていたが、位置決め部の構造は前記実施形態の具体例に限定されない。例えば、内針ハブ46がコネクタキャップ88に外挿される筒部(穿刺操作部58に相当)を備えており、筒部の内周面に突出する凸部とコネクタキャップ88の外周面に突出する凸部とが軸方向で係合されることによって、位置決め部が構成されていてもよい。この場合に、筒部の凸部とコネクタキャップ88の凸部は、全周にわたって連続して設けられていてもよいし、周方向で部分的に設けられていてもよい。凸部を周方向で部分的に設ける場合には、例えば、凸部同士が干渉しない周方向の向きで内針ハブ46と外針ハブ16を組み合わせた後、内針ハブ46と外針ハブ16を回転させて、それら凸部を軸方向で係合する位置まで移動させることにより、位置決め部を設けつつ、内針ハブ46と外針ハブ16を組み合わせる作業を容易にすることができる。
【0091】
位置決め部の別の態様としては、例えば、内針ハブ46の筒部をコネクタキャップ88に嵌合させて、内針ハブ46の筒部とコネクタキャップ88の間に作用する摩擦抵抗力を利用することもできる。位置決め部のまた別の態様としては、例えば、コネクタキャップ88の外周面に突出する凸部を、コネクタキャップ88に外挿される内針ハブ46の筒部に形成されたスリット部に嵌合させて、凸部とスリット部の内面との間に作用する摩擦抵抗を利用することもできる。位置決め部の更に別の態様としては、例えば、内針14が貫通して内針14の外周面に接するゴム弁等のゴム状体を止血弁26とは別に設けて、ゴム状体と内針14の間に作用する摩擦抵抗力を利用して、内針ハブ46と外針ハブ16を位置決めすることもできる。
【0092】
なお、位置決め部による外針ハブ16と内針ハブ46の位置決めは、例えば、クリップ74の外力作用片78を押圧する等の特別な操作を要することなく、位置決め部によって発揮される抗力よりも大きな力で内針ハブ46を外針ハブ16に対して基端側へ引くだけで解除されるようにしても良い。
また、本発明は、もともと以下(i)~(viii)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、前記外針ハブ側の係合部に解除可能に係合されるクリップが前記内針ハブに設けられており、該クリップが該内針ハブにおける前記内針の針先の刃面と同じ天面側に設けられていると共に、該内針ハブにおいて該クリップを周方向に外れた両側には、手指によって支持される一対の側方支持面が設けられている留置針組立体、
(ii) 外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、前記外針ハブは、前記外針が固定される針接合部と、外部流路に接続される流路接続部と、それら針接合部と流路接続部をつなぐ軟質チューブとを、備えていると共に、該外針ハブ側に設けられた係合部に解除可能に係合されるクリップが前記内針ハブに設けられている留置針組立体、
(iii) 前記係合部が前記外針ハブの基端側に取り付けられた連結部材に設けられている(i)又は(ii)に記載の留置針組立体、
(iv) 外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、前記外針ハブ側に設けられた係合部に解除可能に係合されるクリップが前記内針ハブに設けられており、前記内針が前記外針から基端側へ引き抜かれる際に該内針の針先を覆う針先プロテクタが設けられていると共に、該針先プロテクタを該外針ハブに対して分離可能に連結する連結部材が該外針ハブの基端側に設けられて、該係合部が該連結部材に設けられている留置針組立体、
(v) 前記外針ハブ側に設けられる前記係合部が、前記クリップに設けられた係合爪が係合される係合凹所とされている(i)~(iv)の何れか1項に記載の留置針組立体、
(vi) 前記クリップは、前記内針ハブに連結されて外周側へ突出する支点部と、該支点部から基端側へ延び出す外力作用片と、該支点部から先端側へ延び出して該外針ハブ側の前記係合部に係合される係合爪を備えた係合片とを備えている(i)~(v)の何れか1項に記載の留置針組立体、
(vii) 外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、前記外針ハブは、前記外針が固定される針接合部と、外部流路に接続される流路接続部と、それら針接合部と流路接続部をつなぐ軟質チューブとを、備えており、前記内針における該軟質チューブへの挿通部分の外周面と該軟質チューブの内周面との間に滑止めが設けられている留置針組立体、
(viii) 外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、前記内針が前記外針から基端側へ引き抜かれる際に該内針の針先を覆う針先プロテクタが設けられ、該針先プロテクタを該外針ハブに対して分離可能に連結する連結部材が該外針ハブの基端側に設けられており、該針先プロテクタと該外針ハブの分離方向で該連結部材と前記内針ハブの相対移動に対する抗力を生じる位置決め部が設けられている留置針組立体、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、外針ハブ側の係合部と内針ハブ側のクリップとの係合によって、外針に対する内針の基端側への移動量が制限される。それ故、内針の針先が外針よりも先端側へ突出した状態に保持されて、外針が内針の針先にかかることによる内針の切れ味の低下が回避される。その結果、穿刺時に患者に与える痛みを抑えることができる。クリップが内針の針先の刃面と同じ天面側に設けられていることにより、穿刺時に患者の体表面と反対側にクリップが位置することとなる。それ故、クリップによる係合を解除する際にクリップを容易に操作することができると共に、クリップが患者の体に当たることでクリップによる係合が意図せずに解除されるのを防止できる。使用者が手指で持つ側方支持面が、内針ハブにおいてクリップを周方向に外れた両側に設けられていることから、内針の針先の刃面の向きを位置決めした状態で取扱い易く、穿刺が容易になる。しかも、クリップに意図しない力が作用し難く、クリップによる係合が意図せずに解除されるのを防ぐこともできる。
上記(ii)に記載の発明では、外針ハブが軟質チューブを備えていることにより、例えば、外針が血管などに穿刺された状態で流路接続部に外部流路を接続する場合に、軟質チューブを曲げることで流路接続部と外部流路の接続が容易になる。外針ハブ側の係合部と内針ハブ側のクリップとの係合によって、外針に対する内針の基端側への移動量が制限される。それ故、内針の針先が外針よりも先端側へ突出した状態に保持されて、内針の切れ味の低下が回避されることから、穿刺時に患者に与える痛みを抑えることができる。本態様が対象とする留置針組立体は、軟質チューブを備えていることから外針ハブが長くなりやすく、内針ハブを把持して穿刺しようとすると把持位置から針先までが遠くなって針先の位置決めが難しいことから、穿刺の際に外針ハブを持つケースが増えるという統計情報を得た。ここにおいて、本態様の留置針組立体では、内針と外針の相対的な移動がクリップの係合によって防止されていることから、仮に外針ハブを持って穿刺しても、内針に対して外針が先端側へ移動して内針の針先が外針で覆われてしまうような不具合が回避される。それ故、例えば針先に近い針接合部を持って行う安定した穿刺にも、良好に対応することが可能になる。
上記(iii)に記載の発明では、外針ハブよりも基端側の連結部材に係合部が設けられることで、クリップを先端側へ大きく延ばす必要がなく、クリップを備える内針ハブのサイズを軸方向において小さくすることができる。
上記(iv)に記載の発明では、外針ハブ側の係合部と内針ハブ側のクリップとの係合によって、外針に対する内針の基端側への移動量が制限される。それ故、内針の針先が外針よりも先端側へ突出した状態に保持されて、内針の切れ味の低下が回避されることから、穿刺時に患者に与える痛みを抑えることができる。クリップと係合される係合部が、外針ハブと針先プロテクタを外針ハブの基端側において連結する連結部材に設けられていることから、クリップを外針ハブに係合させる場合に比して、クリップの先端側への延出し長さを短くすることができて、クリップを備える内針ハブが軸方向で小型化され得る。
上記(v)に記載の発明では、係合部の形成部分において外針ハブ側が大径化することがない。また、例えば、係合爪が係合凹所の壁内面に対して軸方向だけでなく、周方向でも係合されるようにすれば、内針ハブと外針ハブ側との相対回転が制限されて、内針と外針を周方向で位置決めすることができる。
上記(vi)に記載の発明では、例えば、外力作用片を押すなどの簡単な操作によって、係合片に設けられた係合爪を移動させて、係合爪の係合部への係合を解除することができる。
上記(vii)に記載の発明では、例えば穿刺時に軟質チューブが摘ままれて、指で押し潰された軟質チューブの内周面が内針の外周面に接する場合に、軟質チューブの内周面と内針の外周面との間に設けられた滑止めによって、軟質チューブが内針に対して滑り難い。それ故、内針と外針の軸方向での相対位置をずれ難くすることができる。滑止めは、好適には、内針の外周面における粗面化や凹凸の形成によって設けられる。これによれば、内針の滑止めに軟質チューブが押し付けられる際に、軟質チューブの内周部分が内針の滑止めの凹凸に沿って変形することで、軟質チューブが滑止めの凹凸に対して軸方向で機械的に係止されて、軟質チューブがアンカー効果によって内針に対して軸方向でより滑り難くなる。
上記(viii)に記載の発明では、外針ハブと内針ハブの意図しない相対的な移動が、位置決め部において発揮される抗力によって防止されることから、内針が外針に対して基端側へ移動して、内針の針先が外針によって覆われてしまうのを防ぐことができる。それ故、内針の切れ味の低下が回避されて、穿刺時に患者に与える痛みを抑えることができる。また、連結部材と内針ハブの分離方向での意図しない相対移動が位置決め部によって防止されることで、針先プロテクタの内針に対する不要な移動も防止される。
【符号の説明】
【0093】
10 留置針組立体(第1の実施形態)
12 外針
14 内針
16 外針ハブ
18 針接合部
20 流路接続部
22 軟質チューブ
24 弁ハウジング
26 止血弁
28 押し子
30 カバー部材
32 押し子ガイド
34 雄ねじ部
36 切込み
38 弁支持部材
40 チューブ連結部材
41 厚肉部
42 外周面
43 刃面
44 針先
46 内針ハブ
48 台座部
50 連結部
52 プロテクタ収容部
54 内針キャップ
56 通気フィルタ
58 穿刺操作部
60 側方支持面
62 プロテクタハウジング
64 収容筒部
66 蓋体
68 針先プロテクタ
70 遮蔽部材
72 固定部材
74 クリップ
76 支点部
78 外力作用片
80 係合片
82 凹所
83 貫通孔
84 係合爪(位置決め部)
86 係合平面
87 ガイド面
88 コネクタキャップ(連結部材)
90 底壁部
92 管状突起
94 周状壁部
96 弾性片
98 雌ねじ
100 係合凹所(係合部,位置決め部)
102 係止突起
110 留置針組立体(第2の実施形態)
112 外針ハブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7