(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 23/00 20060101AFI20241216BHJP
C03B 40/033 20060101ALI20241216BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20241216BHJP
B08B 11/04 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C03C23/00 A
C03B40/033
B08B3/08 Z
B08B11/04
(21)【出願番号】P 2022510452
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011543
(87)【国際公開番号】W WO2021193477
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2020054571
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】南 貴博
(72)【発明者】
【氏名】藤居 孝英
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茂嘉
(72)【発明者】
【氏名】山本 好晴
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033098(JP,A)
【文献】特開2017-100933(JP,A)
【文献】特開2018-035209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 23/00
C03B 40/033
B08B 3/08,11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートに接触するガラス板を保管する保管工程と、前記保管工程後に前記ガラス板を洗浄する洗浄工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、
前記洗浄工程は、前記ガラス板に第一洗浄液を供給して前記ガラス板を洗浄する第一洗浄工程と、前記第一洗浄工程後に、前記ガラス板に第二洗浄液を供給して前記ガラス板を洗浄する第二洗浄工程と、を備え、
前記第一洗浄液は、
ヒドロキシ酸を含む酸性洗浄液であり、前記第二洗浄液は、アルカリ性洗浄液であることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシ酸は、グリコール酸を含む請求項
1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ性洗浄液は、水酸化物塩を含む請求項1
又は2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ性洗浄液は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を含む請求項1から
3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記第一洗浄工程では、洗浄具を前記ガラス板に接触させることにより、前記ガラス板を洗浄する請求項1から
4のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記第二洗浄工程では、洗浄具を前記ガラス板に接触させることにより、前記ガラス板を洗浄する請求項1から
5のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記第一洗浄工程の後であって前記第二洗浄工程の前に、除去液を前記ガラス板に供給することにより、前記ガラス板に付着している前記第一洗浄液を除去する液切り工程を備え、
前記除去液は、温水である請求項1から
6のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記第二洗浄工程後に、リンス液を前記ガラス板に供給することにより、前記ガラス板に付着している前記第二洗浄液を除去するリンス工程を備え、
前記リンス液は、アルカリ電解水を含む請求項1から
7のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のパネルディスプレイは、高精細化が推進されている。これに伴い、ディスプレイ用の基板として用いられるガラス板には、当該ディスプレイの製造工程で緻密な電気回路が形成される。従って、この種のガラス板には、塵や汚れが付いていない高い清浄性が要求される。
【0003】
ガラス板の製造工程は、例えばパレット上で保管されたガラス原板を取り出す開梱工程と、取り出されたガラス原板から所定サイズのガラス板を切り出す切断工程と、ガラス板に端面加工を施す端面加工工程と、端面加工されたガラス板を洗浄する洗浄工程とを備える。ガラス板を洗浄する方法としては、洗浄ディスクや、洗浄ブラシ(ロールブラシ)などの洗浄具により、所定方向に搬送されるガラス板を洗浄する方法が挙げられる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ガラス板の製造工程に供給されるガラス原板は、パレット上に積載されて保管され、パレット上では、複数のガラス原板が樹脂シートを介して積層されている場合がある。
【0006】
この場合、パレット上での保管が長期にわたると、カルシウム汚れや有機物を含む汚れが発生する場合がある。また、これらの汚れがガラス原板に強固に付着し、洗浄工程で、ガラス板から除去することが困難となる場合がある。
【0007】
そこで本発明は、ガラス板の洗浄工程における洗浄力を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、樹脂シートに接触するガラス板を保管する保管工程と、前記保管工程後に前記ガラス板を洗浄する洗浄工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、前記洗浄工程は、前記ガラス板に第一洗浄液を供給して前記ガラス板を洗浄する第一洗浄工程と、前記第一洗浄工程後に、前記ガラス板に第二洗浄液を供給して前記ガラス板を洗浄する第二洗浄工程と、を備え、前記第一洗浄液は、酸性洗浄液であり、前記第二洗浄液は、アルカリ性洗浄液であることを特徴とする。
【0009】
本発明者等の鋭意研究によれば、ガラス板に樹脂シートを接触させた状態で長期間保管した場合において、樹脂シートからガラス板の表面に転写された汚れにカルシウムが含まれている場合(以下、「カルシウム汚れ」という)、他の汚れと比較して、当該カルシウム汚れをガラス板から洗浄により除去することが困難となることが確認されている。
【0010】
本発明者等は、第一洗浄液を酸性洗浄液とする第一洗浄工程を実行した後に、第二洗浄液をアルカリ性洗浄液とする第二洗浄工程を実行することで、カルシウム汚れ、及び有機物を含む汚れをガラス板から効果的に除去できることを見出した。
【0011】
前記酸性洗浄液は、ヒドロキシ酸を含んでもよい。ヒドロキシ酸(オキシ酸)としては、例えばグリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸等が挙げられる。ヒドロキシ酸は水酸基を併せ持つカルボン酸であり、水溶性が高い。また、ヒドロキシ酸は、分子内に含まれるカルボキシル基がガラス板の表面におけるカルシウム汚れのカルシウムイオン(Ca2+)とキレート効果により反応し、カルシウムイオンを1分子内または複数分子で取り込み安定化させるため、ガラス板の表面に固着したカルシウム成分の除去に効果的である。
【0012】
前記アルカリ性洗浄液は、水酸化物塩を含んでもよく、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を含んでもよい。
【0013】
前記第一洗浄工程では、洗浄具を前記ガラス板に接触させることにより、前記ガラス板を洗浄してもよい。これにより、第一洗浄工程を効率良く行うことができる。
【0014】
前記第二洗浄工程では、洗浄具を前記ガラス板に接触させることにより、前記ガラス板を洗浄してもよい。これにより、第二洗浄工程を効率良く行うことができる。
【0015】
本方法は、前記第一洗浄工程の後であって前記第二洗浄工程の前に、除去液を前記ガラス板に供給することにより、前記ガラス板に付着している前記第一洗浄液を除去する液切り工程を備え、前記除去液は、温水であってもよい。この液切り工程によって、第一洗浄工程後にガラス板に付着している第一洗浄液を除去することで、その後の第二洗浄工程において、第二洗浄液によるガラス板の洗浄をより効果的に行うことができる。
【0016】
本方法は、前記第二洗浄工程後に、リンス液を前記ガラス板に供給することにより、前記ガラス板に付着している前記第二洗浄液を除去するリンス工程を備え、前記リンス液は、アルカリ電解水を含んでもよい。リンス工程によってガラス板の表面を陰イオンで覆うことで、リンス液中に分散して存在する粒子状の物質がガラス板の表面へ再付着することを防止でき、リンス工程後におけるガラス板の表面の清浄度を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガラス板の洗浄工程における洗浄力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造方法を示す断面図である。
【
図2】第一洗浄部及び第二洗浄部における洗浄機の構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係るガラス板の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図3は、本発明に係るガラス板の製造方法の第一実施形態を示す。
【0020】
図1に示すように、本方法は、ガラス板Gを保管する保管工程S1と、ガラス板Gを洗浄する洗浄工程S2とを備える。保管工程S1と洗浄工程S2の間に、前述の開梱工程と、切断工程と、端面加工工程とをさらに備えてもよい。洗浄工程S2の後工程として、ガラス板Gの検査工程と、ガラス板Gをパレット上に積載する梱包工程をさらに備えてもよい。
【0021】
保管工程S1では、ガラス板Gは、梱包体PBの状態で管理される。梱包体PBは、パレットP上に複数のガラス板Gを積載することにより構成される。本実施形態の保管工程S1では、平置き姿勢でガラス板Gが保管されるが、傾斜姿勢でガラス板Gが保管されてもよい。
【0022】
ガラス板Gは、例えばオーバーフローダウンドロー法によって形成される長尺状のガラスリボンを切断することにより構成される。オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、ガラスリボンを連続成形するというものである。ガラス板Gは、オーバーフローダウンドロー法に限らず、フロート法その他の各種の成形法により製造され得る。
【0023】
ガラス板Gは、矩形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。ガラス板Gは、第一主面Gaと、第二主面Gbとを含む。本実施形態において、第一主面Gaは保証面とされており、第二主面Gbは非保証面とされている。ここで、「保証面」とは、例えばディスプレイの製造過程において透明導電膜等の成膜処理が施される側の面を意味する。
【0024】
ガラス板Gは、例えば、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラスにより構成される。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0025】
各ガラス板Gには、樹脂シートRSが重ねられている。この樹脂シートRSにより、梱包体PBの状態においてガラス板G同士の接触が防止される。
【0026】
樹脂シートRSは、ガラス板Gよりも表面積が大きな矩形状のシートにより構成される。樹脂シートRSは、例えばポリエチレンを主成分とする樹脂による発泡樹脂シート、樹脂製保護フィルム等により構成される。樹脂シートRSは、ポリマー型帯電防止剤等の帯電防止剤、或いはアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を含有し得る。
【0027】
保管工程S1において、梱包体PBは例えば数日から一年保管される。保管期間が長くなるほど、ガラス板Gの汚れが増加し、本発明の洗浄力の向上させる効果が顕著となる。このため、保管期間は二か月以上が好ましく、四か月以上がより好ましい。保管工程S1を経た梱包体PBは、保管空間SSから運び出される。
【0028】
洗浄工程S2には、梱包体PBから取り出されたガラス板Gが供給される。この場合において、樹脂シートRSは、ガラス板Gから剥がされる。洗浄工程S2では、
図1に示す洗浄装置1によってガラス板Gを洗浄する。
【0029】
洗浄装置1は、第一洗浄液CS1をガラス板Gに供給しつつ、当該ガラス板Gを洗浄する第一洗浄部2と、ガラス板Gに付着している第一洗浄液CS1を除去する液切り部3と、第二洗浄液CS2をガラス板Gに供給しつつ、当該ガラス板Gを洗浄する第二洗浄部4と、ガラス板Gにリンス液を供給しつつ、当該ガラス板Gに付着している第二洗浄液CS2を除去するリンス部5と、乾燥部6と、を主に備える。その他、洗浄装置1は、ガラス板Gを所定の搬送方向Xに沿って搬送する搬送装置7を備える。
【0030】
第一洗浄部2は、ガラス板Gの第一主面Gaを洗浄する上側洗浄機2aと、ガラス板Gの第二主面Gbを洗浄する下側洗浄機2bとを備える。
【0031】
上側洗浄機2aは、第一主面Gaに接触する上側洗浄具8aと、当該上側洗浄具8aを支持する本体部9aとを備える。下側洗浄機2bは、第二主面Gbに接触する下側洗浄具8bと、当該下側洗浄具8bを支持する本体部9bとを備える。上側洗浄機2aと下側洗浄機2bとは同型のものである。
【0032】
以下、各洗浄機2a,2bの構成について、
図2に示す上側洗浄機2aを例として説明する。上側洗浄具8aは、円盤状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。上側洗浄具8aは、ガラス板Gの第一主面Gaに接触する洗浄部材10と、当該洗浄部材10を支持する軸部11とを備える。
【0033】
洗浄部材10は、例えば発泡樹脂成形体若しくは発泡ゴム成形体(フォームスポンジ)、又はフェルト状の繊維成形体(フェルトスポンジ)によりディスク状(円板状)に形成される。この構成に限らず、洗浄部材10は、ブラシにより構成されてもよい。
【0034】
洗浄部材10は、第一洗浄液CS1をガラス板Gに供給する供給孔12を有する。軸部11は管状に構成されており、内部に第一洗浄液CS1を通過させることができる。軸部11は、洗浄部材10の供給孔12と連通している。
【0035】
本体部9aは、第一洗浄液CS1を貯留する貯留槽13と、第一洗浄具の軸部11を回転可能に支持する軸受部14と、軸部11を回転させる駆動部(図示省略)とを備える。
【0036】
貯留槽13は、第一洗浄液CS1としての酸性洗浄液を貯留する。酸性洗浄液は、例えばヒドロキシ酸を含む水溶液により構成される。ヒドロキシ酸としては、例えばグリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸等が挙げられる。ヒドロキシ酸は、水酸基を併せ持つカルボン酸であり、水溶性が高い。また、ヒドロキシ酸は、分子内に含まれるカルボキシル基がガラス板Gの表面(各主面Ga,Gb)におけるカルシウム汚れのカルシウムイオン(Ca2+)とキレート効果により反応し、カルシウムイオンを1分子内または複数分子で取り込み安定化させるため、ガラス板Gの各主面Ga,Gbに固着したカルシウム成分の除去に効果的である。例えば酸性洗浄液として、グリコール酸を使用した場合、その濃度は、1.5~10%とされることが好ましいが、この範囲に限定されない。なお、酸性洗浄液は、ヒドロキシ酸を1種又は複数種含んでもよい。
【0037】
この他、第一洗浄液CS1は、ガラス板G上の有機物を含んだ汚れを洗浄除去するための界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等に代表される陰イオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等に代表される非イオン系界面活性剤からなる群より選択することができる。界面活性剤は、樹脂シートRSからガラス板Gの各主面Ga,Gbに転写された汚れ中の有機物主体の汚れを取り込んでガラス板Gの各主面Ga,Gbから除去するのに効果的である。
【0038】
酸性洗浄液は、この洗浄液中に遊離したカルシウムイオン(Ca2+)のガラス板Gの各主面Ga,Gbへの再付着を防ぐために、カルシウムイオンを優先的に補足するキレート助剤をさらに含んでもよい。添加するキレート助剤としては、トリポリリン酸ナトリウム、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)、NTA(ニトリロトリ酢酸)、クエン酸ナトリウムや、種々の有機高分子キレート助剤を用いてもよいし、例えばゼオライトといったカルシウムイオンを選択的に吸着する無機物等を用いてもよい。
【0039】
貯留槽13は、第一洗浄液CS1を加熱するヒータを備えてもよい。この場合における第一洗浄液CS1の温度は、40~50℃とされることが好ましいが、この範囲に限定されない。
【0040】
第一洗浄部2は、各洗浄具8a,8bをガラス板Gの各主面Ga,Gbに接触させた状態で、駆動部によって軸部11を回転させることで、ガラス板Gに対する擦り洗浄を行うことができる。
【0041】
液切り部3は、第一洗浄部2を通過したガラス板Gに付着している第一洗浄液CS1を除去するためのものである。液切り部3は、上側エアナイフ3aと、下側エアナイフ3bとを備える。液切り部3は、各エアナイフ3a,3bのエアをガラス板Gの各主面Ga,Gbに吹き付けることにより、ガラス板Gから第一洗浄液CS1を除去することができる。
【0042】
第二洗浄部4は、ガラス板Gに対して擦り洗浄を実行することが可能な上側洗浄機4a及び下側洗浄機4bを備える。上側洗浄機4aは、上側洗浄具15aと、当該上側洗浄具15aを支持する本体部16aと、を備える。下側洗浄機4bは、下側洗浄具15bと、当該下側洗浄具15bを支持する本体部16bと、を備える。第二洗浄部4の上側洗浄機4a及び下側洗浄機4bは、第一洗浄部2における上側洗浄機2a及び下側洗浄機2bと同じ構造を有する。
【0043】
但し、第二洗浄部4は、第二洗浄液CS2としてアルカリ性洗浄液を使用する点が、第一洗浄部2と異なる。アルカリ性洗浄液は、水酸化物塩を含み、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を含む水溶液により構成される。アルカリ性洗浄液における水酸化ナトリウムの濃度と水酸化カリウムの濃度の合計は、0.5~10%とされることが好ましく、1.5~10%とされることがより好ましい。第二洗浄液CS2は、界面活性剤やキレート剤を含んでいてもよい。また、第二洗浄液CS2の温度は、40~50℃とされることが好ましいが、この範囲に限定されない。
【0044】
アルカリ性洗浄液は、水酸化物塩に限らず、炭酸塩を含んでもよい。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)等が使用可能である。また、上記に限らず、アルカリ性洗浄液は、ケイ酸塩等のアルカリビルダー助剤を含んでもよい。
【0045】
上記のアルカリ性洗浄液により、有機物を含む他の汚れをガラス板Gからより効果的に取り除くことができる。また、ガラス板Gの各主面Ga,Gbをアルカリ化して負の電荷を保持させることにより、第一洗浄液CS1(酸性洗浄剤)を使用した後にガラス板Gの各主面Ga,Gbに吸着残存している極性の高い界面活性剤成分を特に効果的に除去することが可能となる。
【0046】
アルカリ性洗浄液は、ガラス板G上の有機物を含んだ汚れや前記の酸性洗浄剤の残留物を効果的に除去するための界面活性剤成分を含んでも良い。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等に代表される陰イオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等に代表される非イオン系界面活性剤からなる群より選択することができる。界面活性剤は、ガラス板Gの各主面Ga,Gb上の有機物主体の残存物を取り込んでガラス板Gの各主面Ga,Gbから除去するのに効果的である。
【0047】
より好ましくは、アルカリ性洗浄液は、ガラス板Gから除去されてこのアルカリ性洗浄液中に遊離したカルシウムイオンがガラス板Gの各主面Ga,Gbに再付着することを防ぐために、第一洗浄液CS1と同様にキレート助剤を含んでもよい。
【0048】
リンス部5は、第二洗浄部4を通過したガラス板Gに付着している第二洗浄液CS2を除去するためのものである。リンス部5は、上側リンス液供給部5aと、下側リンス液供給部5bとを備える。上側リンス液供給部5aは、ガラス板Gの第一主面Gaにリンス液を供給する。下側リンス液供給部5bは、ガラス板Gの第二主面Gbにリンス液を供給する。
【0049】
リンス液としては、例えば純水が使用されるが、これに限定されない。例えばリンス液として、小濃度の炭酸カリウム水溶液から電気分解で形成させたpH=11程度のアルカリ電解水を含む純水を用いてもよい。これにより、ガラス板Gの各主面Ga,Gbが負の帯電をし(陰イオンで覆われ)、排液中に分散したカルシウムイオンや有機物、パーティクル等が負に帯電して反発効果を持つことで、洗浄後のガラス板Gの主面Ga,Gbへの異物の再付着を防止でき、特に外観検査で不可視の微小パーティクルの減少に効果がある。アルカリ電解水を含む純水を用いる場合、アルカリ電解水を含む純水のpHは例えば9~12とすることができる。
【0050】
リンス部5は、スプレー状ノズルを備え、高圧のリンス液を噴射して洗浄することにより、第二洗浄液CSをガラス板Gから除去することができる。リンス部5は、空気を純水中に混入させたリンス液を、ミックスジェットノズルによって噴射することにより、第二洗浄液CS2をガラス板Gから除去してもよい。また、リンス部5は、洗浄具を用いて第二洗浄液CSをガラス板Gから除去してもよい。
【0051】
乾燥部6は、リンス部5を通過したガラス板Gに付着しているリンス液を除去するためのものである。乾燥部6は、上側エアナイフ6aと、下側エアナイフ6bとを備える。上側エアナイフ6aは、リンス部5を通過したガラス板Gの第一主面Gaにエアを吹き付ける。下側エアナイフ6bは、ガラス板Gの第二主面Gbにエアを吹き付ける。
【0052】
搬送装置7は、第一洗浄部2から乾燥部6までガラス板Gを搬送する。搬送装置7は、例えばローラコンベアにより構成されるが、この構成に限定されるものではない。搬送装置7は、所定の間隔をおいて配置される複数の搬送ローラ7aを備える。各搬送ローラ7aは、ガラス板Gの第二主面Gbに接触しつつ、回転駆動されることで当該ガラス板Gを搬送方向Xに沿って搬送する。
【0053】
図3に示すように、洗浄工程S2は、第一洗浄工程S21と、液切り工程S22と、第二洗浄工程S23と、リンス工程S24と、乾燥工程S25と、を備える。
【0054】
第一洗浄工程S21では、第一洗浄部2において、搬送装置7によりガラス板Gを搬送方向Xに沿って搬送しつつ、第一洗浄部2における上側洗浄具8a及び下側洗浄具8bをガラス板Gの第一主面Ga及び第二主面Gbに接触させる。これにより、ガラス板Gは、各洗浄具8a,8bによって挟持される。各洗浄具8a,8bは、第一洗浄液CS1としての酸性洗浄液をガラス板Gの各主面Ga,Gbに供給しながら洗浄部材10を回転させる。これにより、ガラス板Gの第一主面Ga及び第二主面Gbが同時に洗浄される。
【0055】
液切り工程S22では、第一洗浄部2を通過したガラス板Gに対し、液切り部3の各エアナイフ3a,3bからエアを吹き付けることで、当該ガラス板Gの第一主面Ga及び第二主面Gbに付着している第一洗浄液CS1を除去する。
【0056】
第二洗浄工程S23では、第二洗浄部4において、ガラス板Gを搬送方向Xに沿って搬送しつつ、第二洗浄部4における上側洗浄具15a及び下側洗浄具15bをガラス板Gの第一主面Ga及び第二主面Gbに接触させる。各洗浄具15a,15bは、第二洗浄液CS2としてのアルカリ性洗浄液をガラス板Gの各主面Ga,Gbに供給しながら洗浄部材10を回転させる。これにより、ガラス板Gの第一主面Ga及び第二主面Gbが同時に洗浄される。
【0057】
リンス工程S24では、第二洗浄部4を通過したガラス板Gに対し、リンス部5の各リンス液供給部5a,5bからリンス液を供給する。これにより、ガラス板Gの第一主面Ga及び第二主面Gbに付着している第二洗浄液CS2を除去することができる。
【0058】
乾燥工程S25では、リンス部5を通過したガラス板Gに対し、乾燥部6の各エアナイフ6a,6bからエアを吹き付ける。この場合において、例えば高圧のエアをエアナイフ6a,6bからガラス板Gに向かって噴射することが望ましい。これにより、ガラス板Gに付着しているリンス液を除去することができる。
【0059】
本実施形態に係るガラス板Gの製造方法によれば、保管工程S1において樹脂シートRSからガラス板Gに転写されたカルシウム汚れを第一洗浄工程S21によって効果的に除去することができる。また、第二洗浄工程S23において、有機物を含む汚れを効果的に除去することができる。これにより、ガラス板Gの洗浄工程S2における洗浄力を向上させることが可能になる。ここで、カルシウム汚れは、樹脂シートRSに含まれる添加剤(例えばポリエチレングリコールやポリエチレングリコールとポリプロピレンの共重合体)が大気中の水分を吸収する過程で、大気中の水分に含まれる微量のカルシウムが析出・濃縮してガラスに付着することで発生すると推察される。また、有機物を含む汚れは、樹脂シートRSに含まれる各種添加剤(例えば疎水性物質)がブリードアウトすることで発生すると推察される。
【0060】
図4は、本発明に係るガラス板の製造方法の第二実施形態を示す。本実施形態では、液切り工程S22の構成が第一実施形態と異なる。第一実施形態において、洗浄装置1の液切り部3は、エアナイフにより構成されていたが、本実施形態における液切り部3は、ガラス板Gに付着している第一洗浄液CS1を取り除く除去液を供給するシャワー洗浄装置により構成される。
【0061】
液切り部3は、上側除去液供給部17aと、下側除去液供給部17bとを備える。上側除去液供給部17aは、ガラス板Gの第一主面Gaに除去液を供給する。下側除去液供給部17bは、ガラス板Gの第二主面Gbに除去液を供給する。
【0062】
ガラス板Gに供給される除去液は、例えば純水により構成される。除去液は、加熱された温水の状態でガラス板Gに供給されることが好ましい。除去液の温度は、例えば40~60℃とされることが好ましいが、この範囲に限定されない。
【0063】
除去液は、アルカリ電解水を含んでもよい。除去液にアルカリ電解水を使用することで、ガラス板Gの各主面Ga,Gbを陰イオンで覆い、ガラス板Gから除去されて除去液中に分散して存在する粒子状の物質がガラス板Gの各主面Ga,Gbに再付着することを防止できる。これにより、第一洗浄工程S21後におけるガラス板Gの各主面Ga,Gbの清浄度を高めることができる。
【0064】
本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
上記の実施形態では、第一洗浄工程S21と第二洗浄工程S23との間に液切り工程S22を備えるガラス板Gの製造方法を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。本発明では、例えば液切り工程S22を省略してもよい。
【0066】
上記の実施形態では、洗浄具8a,8b,15a,15bとして、円盤状(ディスク状)のものを例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。洗浄具は、洗浄ローラその他の洗浄具により構成されてもよい。
【0067】
本発明は、第二洗浄工程S23とリンス工程S24との間に、第二洗浄工程S23によってガラス板Gに付着した第二洗浄液CS2(アルカリ性洗浄液)を除去する液切り工程を備えてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明に係る実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。本発明者等は、本発明によって製造されるガラス板の品質を確認するための試験を実施した。試験は、以下に詳述するように、第一の方法及び第二の方法の二つの方法により行った。
【0069】
第一の方法による試験では、清浄、乾燥された矩形状のテスト用ソーダガラス板と樹脂シートとを使用した。ガラス板のサイズは、100mm×100mm、厚み0.7mmである。樹脂シートのサイズは、150mm×150mmである。樹脂シートをガラス板に接触させた状態で三か月間保管した後、樹脂シートをガラス板から取り除き、カルシウム汚れ、及び有機物を含む汚れが表面に形成されたガラス板の試験片(実施例1~5、比較例1)を作製した。
【0070】
試験では、酸性洗浄液(第一洗浄液)によって実施例1~5に係るガラス板を洗浄した後、アルカリ性洗浄液(第二洗浄液)によって、当該ガラス板を洗浄した。この場合において、酸性洗浄液の濃度及びアルカリ性洗浄液の濃度を異ならせて各実施例1~5に係るガラス板を洗浄した。また、比較例1に係るガラス板を、アルカリ性洗浄液(第一洗浄液)によって洗浄し、その後、酸性洗浄液(第二洗浄液)によって洗浄した。
【0071】
具体的には、所定の濃度の上記洗浄液をシャワーにて吹き付け、ポリビニルアルコール(PVA)製のスポンジに洗浄液を含侵させてガラス板を30秒擦った後、手動により純水でリンスし、乾燥エアで乾燥させた。
【0072】
本発明者等は、実施例1~5及び比較例1に係るガラス板について、洗浄結果を評価した。洗浄結果の評価は、蛍光灯による照度1500ルクスの照明を用いたガラス板の表面に対する光の反射及び透過を利用してガラス板の表面における汚れの有無等を目視で確認する検査(目視検査)により行った。加えて、洗浄結果の評価は、より強度の高いハロゲン照明による照度10000ルクスの照明を用いたガラス板の表面に対する光の反射を利用する目視検査により行った。評価結果は、○(良)、△(通常)、×(不可)の三段階で行った。
【0073】
表1における○(良)の評価は、目視検査において、蛍光灯による照度1500ルクス、およびハロゲン照明による照度10000ルクスの条件において、点状、ないしは線状の表面異物や、洗剤の残存による半透明状のムラが観察されない清浄で透明なガラス板が得られたことを示す。
【0074】
表1における△(通常)の評価は、蛍光灯照明照度1500ルクスでは表面異物が観察されないが、ハロゲン照明による照度10000ルクスの条件での目視検査で微小異物残りや、ブリードアウト異物または洗剤成分の薄い膜状の残存物と考えられる半透明ムラが観察されたことを示す。
【0075】
一方、表1における×(不可)の評価は、蛍光灯による照度1500ルクスの照明を用いた目視検査で異物の残存や半透明ムラが観察された場合に判定される。
【0076】
試験結果を表1に示す。なお、酸性洗浄液の濃度はグリコール酸の濃度(質量%)を示し、アルカリ性洗浄液の濃度は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの合計濃度(質量%)を示す。アルカリ性洗浄液では、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの濃度(質量%)を同じにした。
【表1】
【0077】
表1に示すように、実施例1~5については、洗浄結果が良好及び通常と判定された。このうち、実施例3、4においては、蛍光灯による目視検査では汚れが確認されなかったが、ハロゲンランプを用いた強い照度の目視検査においては、若干の洗浄不足と思われる微小異物や、酸性洗剤の残存または膜状異物の残存が起因と思われる白色の不透明の薄いムラが観察された。
【0078】
一方、比較例1については、有機物を含む汚れをガラス板から十分に除去することができず、洗浄不良と判定された。
【0079】
ここで、ガラス板の表面には、ブリードアウトに伴う有機物を含む汚れが付着した後で、カルシウム汚れが付着する場合が多い。このため、有機物を含む汚れの一部又は全部の表面がカルシウム汚れに覆われている場合が多い。したがって、比較例のようにアルカリ性洗浄液(第一洗浄液)によって洗浄した後、酸性洗浄液(第二洗浄液)によって洗浄すると、アルカリ洗浄液による洗浄では、有機物を含む汚れのうちの表面の露出部が除去され、酸性洗浄液による洗浄ではカルシウム汚れが除去される傾向となる。その結果、有機物を含む汚れのうちの表面の非露出部が残存する傾向となり、有機物を含む汚れをガラス板から十分に除去できなかったと推察される。この試験結果から、酸性洗浄液によってガラス板を洗浄した後、アルカリ性洗浄液によって当該ガラス板を洗浄することで、洗浄力が向上することが確認された。
【0080】
第二の方法による試験では、所定方法で清浄、乾燥された矩形状のガラス板と、ポリエチレン製発泡樹脂シートとを用いた。ガラス板のサイズは、370mm×470mm、厚み0.5mmである。このガラス板は、液晶ディスプレイ用無アルカリホウケイ酸ガラス板(材質:日本電気硝子株式会社製OA-11)である。樹脂シートのサイズは、400mm×500mm、厚み0.085mmである。
【0081】
ポリエチレン製発泡樹脂シートをガラス板に重ね合わせて、ガラス積層体を構成した。ガラス積層体は、1枚のガラス板と1枚の樹脂シートの組み合わせを1セットとし、複数セットのガラス積層体を水平姿勢で積層させた。この複数セットのガラス積層体は、輸送用のパレットに積載された保管状態を想定して再現したものである。
【0082】
このガラス積層体を恒温恒湿試験機に入れ、試験機内の温度及び湿度を変化させることによる加速環境試験を実施した。以下、加速環境試験の詳細について説明する。
【0083】
この試験では、温度及び湿度の異なる第一工程及び第二工程を繰り返し実施した。具体的には、第一工程と第二工程の組み合わせを1サイクルとし、このサイクルを180回繰り返した。
【0084】
第一工程では、試験機内を高温高湿に設定した。第一工程における試験機内の設定温度は50℃であり、設定湿度は70%である。第二工程では、試験機内を常温常湿に設定した。第二工程における試験機内の設定温度は25℃であり、設定湿度は50%である。
【0085】
第一工程と第二工程のサイクルは、以下のように設定した。まず、第一工程の温度及び湿度を1時間維持する。その後、第二工程の条件になるまで1時間をかけて試験機内の温度及び湿度を下降させる。そして、第二工程の温度及び湿度を1時間維持する。その後、第一工程の条件になるまで1時間をかけて試験機内の温度及び湿度を上昇させる。上記の温度及び湿度の維持、下降、及び上昇が1サイクルとなる。この1サイクルは、ガラス積層体が一日保管された場合の周囲環境の温度及び湿度の変化を短時間で再現するものである。この試験では、180サイクルの繰り返しにより、ガラス積層体が180日間保管された状態を仮想的に再現した。
【0086】
上記のような加速環境試験により、ガラス板上に樹脂シートの成分を転写して汚染させた。その後、樹脂シートをガラス板から取り除き、カルシウム汚れ、及び有機物を含む汚れが表面に形成されたガラス板の試験片(実施例6~10、比較例2)を作製した。
【0087】
この第二の方法におけるガラス板の洗浄は、上記の第一実施形態による洗浄装置1により行った。洗浄装置1によるガラス板の洗浄では、リンス工程において、リンス液として、アルカリ電解水を含まない純水を使用する洗浄条件1と、アルカリ電解水を含む純水を使用する洗浄条件2を設けた。
【0088】
洗浄結果の評価は、先述の第一の方法と同じく、蛍光灯による照度1500ルクスの光を用いたガラス板の表面の目視検査、およびハロゲン照明による照度10000ルクスの光を用いたガラス板の表面の目視検査により行った。実施例6~10及び比較例2について、各5枚のガラス板を検査し、○(良)、△(通常)、×(不可)の三段階で評価を行った。
【0089】
さらに、第二の方法に係る試験では、洗浄後のガラス板の表面における1μm以上の微小異物(パーティクル)の個数を、株式会社日立ハイテク製パーティクル測定機GI7200を用いて測定した。実施例6~10及び比較例2について、各1枚のガラス板を測定し、結果を比較した。なお、パーティクルの個数は、370mm×470mm内に検出された個数を1m2(1000mm×1000mm)当たりの個数に換算して表示した。
【0090】
試験結果を表2に示す。なお、酸性洗浄液の濃度はグリコール酸の濃度(質量%)を示し、アルカリ性洗浄液の濃度は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの合計濃度(質量%)を示す。アルカリ性洗浄液では、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの濃度(質量%)を同じにした。表2の蛍光灯検査およびハロゲン検査の結果は、洗浄条件1で洗浄後のガラス板と、洗浄条件2で洗浄後のガラス板で有意な差がなかったので、洗浄条件1で洗浄後のガラス板のものを示す。
【表2】
【0091】
表2に示すように、実施例6~10については、洗浄結果が良好及び通常と判定された。そのうち、実施例7、8においては、蛍光灯検査、ハロゲン検査の結果とともに、パーティクル個数も100~200個/m2と少なく、良好であった。
【0092】
実施例6、10では、蛍光灯による目視検査では汚れが確認されなかったが、ハロゲンランプによる目視検査においては、洗剤成分の残存が起因と思われる白色のごく薄いムラが観察され、また、パーティクル個数も500~1000個/m2と比較的高い数字を示した。
【0093】
実施例9では、蛍光灯による目視検査では汚れが確認されなかったが、ハロゲンランプによる目視検査においては、洗浄不足と思われる微小異物が観察され、また、パーティクル個数が700個/m2と高くなった。なお、リンス工程において、アルカリ電解水を含む純水を使用する洗浄条件2で、アルカリ電解水を含まない純水を使用する洗浄条件1と比べ、実施例6~10のいずれにおいてもパーティクルの数値が低減し、異物の再付着防止の効果があることが認められた。
【0094】
一方、比較例2については、有機物を含む汚れをガラス板から十分に除去することができず、洗浄不良と判定された。パーティクルの数値も10000個/m2と高く、目視検査において、ガラス板上に発泡樹脂シートの表面の凹凸に起因する異物が不定形に残存したことによるブリーディング跡(縞状ムラ)が観察されたため、比較例2は不良となった。
【符号の説明】
【0095】
8a 上側洗浄具
8b 下側洗浄具
15a 上側洗浄具
15b 下側洗浄具
CS1 第一洗浄液
CS2 第二洗浄液
G ガラス板
RS 樹脂シート
S1 保管工程
S2 洗浄工程
S21 第一洗浄工程
S22 液切り工程
S23 第二洗浄工程
S24 リンス工程