(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】水素発生インナーマスクフレーム、パッド及び健康増進マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
(21)【出願番号】P 2020191249
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510213978
【氏名又は名称】株式会社協明テクノシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】吉原 文美
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-3197(JP,A)
【文献】特開2001-37894(JP,A)
【文献】特開2020-139237(JP,A)
【文献】特許第5498615(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/11
A62B18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクの内側に装着するインナーマスクフレームにおいて、
前記インナーマスクフレームは、
前記マスクの内側から支持して口元部分にドーム形状の空間が形成されるように立体形成され、
かつ多孔質で形成されており、そこに呼気の水分と反応して水素を発生する水素発生物質を担持させていることを特徴とする水素発生インナーマスクフレーム。
【請求項2】
請求項1において、
前記水素発生物質は、水素化ホウ素化合物の微粉末と、定着用化合物とを混錬した混合物である水素発生インナーマスクフレーム。
【請求項3】
マスクの内側に装着するインナーマスクパッドにおいて、
前記インナーマスクパッドは、前記マスクを内側から支持して空間を形成するようにして口元部分を覆うように立体形成された
通気性シートで構成されており、
この通気性シートは、
水素発生物質を担持させた多孔質の樹脂フォームで形成された層と、柔軟な天然繊維で形成された裏層とを含んでいることを特徴とする水素発生インナーマスクパッド。
【請求項4】
請求項3において、
前記インナーマスクパッドは抗菌処理がなされ、
前記裏層をシルクで構成している水素発生インナーマスクパッド。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の水素発生インナーマスクフレームを内装している健康増進マスク。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の水素発生インナーマスクパッドを内装している健康増進マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの内側に装着する新規なインナーマスクフレーム及びパッド、これらを用いた健康増進マスクの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
次の特許文献には、通常のフィルター機能だけでなく、種々の薬効などの付加機能を備えたマスクやシートが開示されている。
すなわち特許文献1には、吸引取付部に微細粉末処理、昇華処理、気化処理、液化処理した薬香剤を加工処理したマスクが開示され、特許文献2には、マスクを構成する織布、不織布に銀合金を被覆させたマスクが開示されている。また特許文献3には、呼気が濾過を経ずに鼻部から吸入されるのを防止した鼻口分離マスクが開示されている。更に、特許文献4には、水素を発生させて美容効果を得る水素発生シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-89655号公報
【文献】実登録第3228789号公報
【文献】実登録第3150905号公報
【文献】特開2019-114641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでマスクに水素ガスの発生機能を持たせると健康増進作用が期待できる。しかしながらマスクそのものは鼻や唇に直接接触する構造であったため、マスクに十分な量の水素発生ガス物質を固定しようとするとマスクが嵩張って厚いものになってしまい、重量も増えるため、装着感が悪くなることが考えられる。本発明はこのような問題の解決を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の本発明は、マスクの内側に装着するインナーマスクフレームであって、このインナーマスクフレームは、マスクを内側から支持して口元部分にドーム形状の空間が形成されるように立体形成され、かつ多孔質で形成され、そこに呼気の水分と反応して水素発生物質を担持する構造になっている。
【0006】
また、第二の本発明は、マスクの内側に装着するインナーマスクパッドであって、このインナーマスクパッドは、マスクを内側から支持して空間を形成するようにして口元部分を覆うように立体形成された通気性シートで構成されており、
この通気性シートは、水素発生物質を担持させた多孔質の樹脂フォームで形成された層と、柔軟な天然繊維で形成された裏層とを含んだ構成になっていることを特徴とする。
【0007】
また第三の本発明は、第二の本発明であるインナーマスクフレーム又は第三の発明であるインナーマクスパッドを内装した健康増進マスクである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、インナーマスクフレームあるいはパッドがマスクを内側から支持して口元部分にドーム形状の空間が形成されるように立体形成され、呼気の水分と反応して水素を発生する水素発生物質を固定しているので、マクスに厚みが生じても不快感を与えることがなく十分な量の水素発生物質を固定することが可能である。
また、このようなインナーマスクフレームあるいはパッドをマスクの内側に装着したマスクは、水素ガスの吸引による健康増進効果や乾燥対策、美容促進効果などもある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)はインナーマスクフレームを斜め前方から見たときの全体斜視図、(b)は斜め後方から見たときの全体斜視図である。
【
図2】インナーマスクフレームがマスクの内側に装着された状態を示す全体透視図である。
【
図3】水素発生インナーマスクの作用を示す縦断面図である。
【
図4】(a)はインナーマスクパッドを斜め前方から見たときの全体斜視図、(b)は斜め後方から見たときの全体斜視図である。
【
図5】インナーマスクパッドがマスクの内側に装着された状態を示す全体透視図である。
【
図6】インナーマスクパッドの他例の全体透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、第一の発明である水素発生インナーマスクフレームについて説明する。
図1はインナーマスクフレームとマスクが分離している状態を示す全体斜視図、
図2はインナーマスクフレームがマスクの内側に装着された状態を示す全体透視図である。
【0011】
インナーマスクフレームAはマスクCの内側に装着される穴開きカップ状のものであって、フレーム10は、マスクCを内側から支持して口元部分にドーム形状の空間が形成されるように立体形成されている。そして、その裏面全体に、呼気の水分と反応して水素を発生する水素発生物質11が固定されている。
フレーム10は、顔面に当接するベース部12と、ベース部12から前方に突出した窓付きドーム部13とを備えるが、窓付きドーム部13は呼吸に支障を与えない十分な通気性が確保できていればどのような窓形状になっていてもよい。なおこの例ではベース部12の両側に不織布マスクのプリーツに係止するためのフック14が形成されている。
【0012】
フレーム10の素材は特に制限されず、例えばシリコン、ウレタン等の合成樹脂で形成されていても、紙や不織布、藁、木等で形成されていてもよい。呼気と反応して水素ガスを発生させる水素ガス物質が固定できれば、中実素材でも多孔性素材であってもよい。
【0013】
水素発生物質11は、空気中の水分と反応して水素ガスを発生するもので限定されない。例えば、水素化ホウ素化合物が好適であるが、Mgの粉末、アルミニウム合金の粉末、水素化マグネシウム(水素を収蔵しているマグネシウム)の粉末、水素を担持させた炭酸カルシウム粉末等を用いることもできる。また、水素焼成サンゴ末、植物由来の水素発生原料、天然水由来のカルシウム粉末、水素発生剤として使用される水素担持粉末など、市販されている種々の物質が使用できる。
なお水素発生物質11による水素ガス発生持続時間は、水素発生物質11に反応調節剤を加えることで調整できる。反応調節剤としては、例えばpH調整剤、有機酸類(クエン酸等)が適する。
【0014】
具体的な固定方法としては、水素化ホウ素化合物の一つである水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)の微粉末とポリビニルプロリドン等の定着用化合物(接着剤)とを混錬した混合物を、連続気泡を有した部材に浸透、乾燥させたものを採用できる。このとき担体となる部材は樹脂フォーム等であっても一体すなわち多孔質で形成されたフレーム10の全体であってもよいし裏面全体であってもよいし、フレーム10とは別体の部材を貼り付けたものでもよい。またこの担体部分の肌との接触面は通気性を有するシートや布等でカバーして汚れや目詰まりを防止してもよい。
フレーム10に水素ガス発生物質11を固定させる方法としては、実施例以外にも、フレームの表面に塗布する、フレーム素材に含侵させる、練込むなどの方法が可能である。
【0015】
またインナーマスクフレームAはマスクCを内側から支持して口元部分にドーム形状の空間が形成されるように立体形成されたものであるため、厚みがあっても不快感を与えることがなく十分な量の水素発生物質11を固定させて、強力な抗酸化力を持った水素ガスを長時間発生できる。
【0016】
図3は、水素発生インナーマスクの作用を示す縦断面図である。
呼気の湿度はほぼ100%なので、インナーマスクフレームAの近傍の空気は十分な水分を含んでおり、次のような反応によって水素ガスが生じる。
NaBH5 + 2H2O → 4H2 + NaBO2
ここで生じた水素ガスは呼吸によりあるいは経皮吸収により人体に取り込まれて、水素ガスによる公知の健康増進作用が発揮される。
【0017】
次いで第二の発明である水素発生インナーマスクパッドについて説明する。
図4はインナーマスクパッドBとマスクCが分離している状態を示す全体斜視図、
図5はインナーマスクパッドがマスクの内側に装着された状態を示す全体透視図である。
【0018】
インナーマスクパッドBは、マスクの内側に装着され、口元とマスクとの間に十分な空間を形成するために膨出した形状で、マスクを内側から支持して口元部分を覆うように形成され、前述したインナーマスクフレームAと同様な素素材で構成される。
図例では、呼気の水分と反応して水素を発生する水素発生物質11を含有する通気性シート15で構成されているが、呼気の水分と反応して水素を発生する水素発生物質11を含有する通気性シート15を収容させた構造にしてもよい。
【0019】
パッドBを通気性シートで構成する場合には、通気性シート15は少なくとも二層以上の構造にする。例えば三層構造とし、中間層は多孔質の樹脂フォームとして水素発生物質11を担持させ、表層、裏層は綿、絹等の柔軟な天然繊維とすれば、装着時のかぶれや刺激をなくすことが出来る。また、このような構造にすれば水素発生物質11を樹脂フォームに多量に含ませることができ、天然繊維により目詰まりを防止し、更に肌触りや美観にも優れたものが得られる。
さらに、通気性シート15はマスクを内側から支持するために立体縫製してもよく、形状を保持するための針金や金網等を内側に縫い込んでいてもよい。
更に、通気性シートは、パッド内に、取替え可能に収容されるものでもよく、この場合、通気性シートは使い捨てとし、パッドはマスクから外して、洗濯することで繰り返し使用できる構成にしてもよい。
【0020】
水素発生物質11は前記と同様のものを用いることができ、その作用、効果も同様であるので説明を省略する。
【0021】
図6は、インナーマスクパッドBをハードメッシュ素材で構成したものを示している。
図例では、パッドBは、外周フレーム12を中央の縦フレーム13で二分して左右にメッシュ部14,14を設け、パッドBには上述した方法で水素発生物質11が固定されており、マスクCの内側面に粘着テープなどを用いて着脱可能な構成にしているが、マスクCと一体化させた構造にしてもよい。
マスクパッドBは抗菌処理をしたものが望ましいが、表面は綿とし、口元側の裏面はシルクにするなどして肌触りがよく、潤いのある構成にすれば、敏感肌にも対応できる。
また、保湿効果の高い構成にすれば、乾燥対策にもなり、美容促進効果のあるマスクが提供できる。
このようなインナーマスクパッドBは、前記インナーマスクフレームAと同様に厚みがあってもマスク着用時に不快感を与えることがなく、十分な量の水素発生物質11を固定して、呼気と接触させることで、水素ガスを長時間発生させる効果がある。
【0022】
また、前記した種々の態様のインナーマスクフレームA、パッドBをマスクCの内側に装着して構成される第三の本発明の健康増進マスクは装着感も快適で、睡眠時にも不快感がないので、呼吸によって水素ガスを吸引して健康増進作用が期待できる。
【符号の説明】
【0023】
A インナーマスクフレーム
B インナーマスクパッド
C マスク
10 フレーム
11 酸素発生物質
15 通気性シート