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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】断熱配管
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/14 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
F16L59/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020193779
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082299
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169591
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】ウー ラダー
(72)【発明者】
【氏名】李 官益
(72)【発明者】
【氏名】松▲ざき▼ 和宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々山 博亘
(72)【発明者】
【氏名】松尾 幸久
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔悟
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210372366(CN,U)
【文献】特開2008-214568(JP,A)
【文献】特開2014-173626(JP,A)
【文献】特開2014-035041(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104108720(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105236421(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105060309(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1038949(KR,B1)
【文献】特表2018-534219(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0099819(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0346751(US,A1)
【文献】国際公開第2017/038646(WO,A1)
【文献】特表2005-525454(JP,A)
【文献】特開平01-230840(JP,A)
【文献】実開昭51-073759(JP,U)
【文献】中国実用新案第209819048(CN,U)
【文献】中国実用新案第208651968(CN,U)
【文献】中国実用新案第210716325(CN,U)
【文献】国際公開第2014/132655(WO,A1)
【文献】特開2020-060291(JP,A)
【文献】特開2022-082364(JP,A)
【文献】国際公開第2022/107365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と、外管と、前記内管と前記外管の間に空間と、前記空間に充填された断熱材とを有する断熱配管であって、
前記断熱材は、一次粒子の集合体である二次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有するエアロゲルを原料とし、前記二次粒子を破壊して生成された一次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有する微粒子を含むと共に、
前記微粒子は、その粒子径分布において、粒子総数の50%以上が粒子径について0.1μm以上1.0μm以下の範囲に分布し、且つ、当該粒子範囲に最頻値を有することを特徴とする、
断熱配管。
【請求項2】
内管と、外管と、前記内管と前記外管の間に空間と、前記空間に充填された断熱材とを有する断熱配管であって、
前記断熱材は、一次粒子の集合体である二次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有するエアロゲルを原料とし、前記二次粒子を破壊して生成された一次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有する微粒子を含むと共に、
前記断熱材を構成する粒子の径は、頻度分布に、前記微粒子によるピークを含む2つのピークをもつことを特徴とする、
断熱配管。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記断熱材は、さらに中空粒子を含むことを特徴とする、
断熱配管。
【請求項4】
請求項3において、
前記中空粒子は殻を有し、殻の内側の中空部分に空気よりも熱伝導率の低い気体が封入されていることを特徴とする、
断熱配管。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項において、
前記内管と前記外管の間の前記空間に、空気よりも熱伝導率の低い気体が封入されていることを特徴とする、
断熱配管。
【請求項6】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項において、
前記内管と前記外管の間の前記空間が、大気圧よりも低い気圧に減圧されていることを
特徴とする、
断熱配管。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項において、
前記断熱配管は、前記外管に固定されて前記内管を支持する支持機構を備え、
前記支持機構は、前記内管と前記外管との間の直線距離よりも長い部材を折り曲げて構
成されたことを特徴とする、
断熱配管。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちのいずれか1項において、
前記内管が、さらに繊維を含む部材で被覆されていることを特徴とする、
断熱配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱配管に関し、特に断熱配管に通す流体が低温または高温であるときの環境からの熱絶縁に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
液体や気体などの流体を通す管では、その流体が低温または高温で、その管が設置された環境の温度と差が大きいときには、温度差を吸収する熱絶縁の工夫が重要である。
【0003】
特許文献1には、内外二重の管(二重配管)であって、内管と外管の間の空間に真空の領域を設けた断熱配管が開示されている。特許文献2には、二重配管であって内管の周囲をマイクロ多孔質材料で覆った熱絶縁パイプが開示されている。
【0004】
特許文献3には、内外二重のパイプ(二重配管)であって、外側の管と内側の管の間の環状空間に多孔質で弾力性のある圧縮性物質を含む二重配管が開示されている。その環状空間には、その圧縮性物質を予め圧縮して保持していた容器の残部が残されているとされる。使用される圧縮性物質としては、エアロゲル、シリカエアロゲル、ナノ多孔質シリカなどが例示列挙されている(請求項6など)。
【0005】
ここで、エアロゲルとは、分散相が気体である微多孔性固体で構成されるゲルである。例えば、媒質に溶かした金属アルコキシドを加水分解、縮合して調製されたゾルをゲル化して湿潤ゲルを生成し、生成された湿潤ゲルから溶媒成分を除去することにより生成される。湿潤ゲルでは、金属アルコキシドを原料として上記ゾルにコロイドとして含まれていた粒子を骨格として三次元網目構造が形成されているが、その構造を維持したまま溶媒成分を除去することにより、微細な空孔を持った構造体となる。空孔の大きさが空気の平均自由行程よりも小さくなるように調製することにより、空孔内で対流など気体を介した熱伝導が発生せず、熱伝導率を低く抑えることができる。そのためエアロゲルは、熱絶縁材料として利用される。
【0006】
特許文献4には、エアロゲル成分と中空シリカ粒子を含有するエアロゲル複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-081192号公報
【文献】米国特許第6145547
【文献】国際公開WO2006/133155
【文献】特許第6288382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2、3及び4について本発明者らが検討した結果、以下のような新たな課題があることがわかった。
【0009】
特許文献1に記載される技術では、内管と外管の間の空間を真空に保つために、排気設備が必要とされる。図示される二重配管には排気用筒体7が設けられており、封止弁を介して真空ポンプ等の吸引設備に接続されているとされる(第0012段落)。完全な真空封止は難しく、排気なしでは時間の経過とともに真空度が低下し、断熱効果を保つことができないためである。このような排気設備は、コスト要因となっている。
【0010】
特許文献2に記載される技術では、内管の周囲をマイクロ多孔質材料で覆うことで排気設備を不要としながら断熱効果を高めるが、マイクロ多孔質材料の熱伝導性は真空には及ばず、また外管との間に空間が残っている点でも、熱絶縁性能は劣る。またそのマイクロ多孔質材料が経年劣化する場合には、定期的に交換するなどの保守が必要で、これがコスト要因となっている。
【0011】
特許文献3に開示される技術では、内管と外管の間の空間に隙間なく充填するために、充填される物質は多孔質で弾力性のある圧縮性物質に限られる。その圧縮性物質を減圧下で小さい容器に封止して内管と外管の間の空間に入れた後に減圧から解放することによって膨張して充填される(第0014段落など)とされる。またその多孔質で弾力性のある圧縮性物質が経年劣化する場合には、定期的に交換するなどの保守が必要で、これがコスト要因となることは、特許文献2に記載される技術の場合と同様である。
【0012】
特許文献4に開示されるエアロゲル複合体は、中空シリカ粒子を複合することによって断熱性と柔軟性を高めるものの、嵩密度を低減することは期待できず、絶縁材料として利用するときの量がコスト要因となっている。
【0013】
本発明の目的は、流体を通す管において、管の外壁を内外二重にしたときの内壁と外壁の間の空間に熱絶縁が、低コスト高性能に実現された管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施の形態によれば、下記の通りである。
【0015】
すなわち、内管と、外管と、前記内管と前記外管の間の空間と、前記空間に充填された断熱材とを有する断熱配管であって、前記断熱材は、一次粒子の集合体であるクラスターで骨格を構成された三次元網目構造を有するエアロゲルを原料とし、前記一次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有する微粒子を含むことを特徴とする。
【0016】
ここで、一次粒子について説明する。従来のエアロゲル粉末粒子の三次元網目構造において、その骨格を構成する単位は二次粒子と呼ばれている(例えば、特許文献4の第0035段落参照)。一次粒子とは、複数個が集まってこの二次粒子を構成する、より小さな単位の粒子である。なお、同文献によれば、二次粒子の径が概ね2nm~50μmであるのに対して、一次粒子の径は0.1nm~5μmであるとされる。但し、技術常識として普遍的に、一次粒子、二次粒子の粒子径について、それぞれの絶対値に画一的な範囲が規定されているわけではない。
【0017】
本明細書において、一次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有するエアロゲル微粒子を、弱結合超微粒子エアロゲル粉末と呼ぶ。このとき、弱結合超微粒子エアロゲル粉末は、後述するように、従来のエアロゲルで三次元網目構造の骨格を構成する二次粒子よりも疎な粒子を単位として構成された三次元網目構造を持つエアロゲルを粉砕して生成される。この従来の二次粒子よりも疎な粒子を単位として構成された三次元網目構造を持つエアロゲルを、弱結合超微粒子エアロゲルと呼ぶこととする。
【発明の効果】
【0018】
前記一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0019】
すなわち、管を内外二重にしたときの内管と外管の間の空間の熱絶縁が、低コスト高性能に実現された断熱配管を提供することができる。熱絶縁材の原料となるエアロゲルの重量を従来の数分の1に抑えることができるからである。本発明では、熱絶縁材の原料となるエアロゲルの三次元網構造の骨格を、従来の二次粒子ではなく一次粒子を単位として構成し、そのエアロゲル(弱結合超微粒子エアロゲル)を超微粒子粉末(弱結合超微粒子エアロゲル粉末)に粉砕する。その結果、弱結合超微粒子エアロゲル粉末の嵩密度は、従来のエアロゲル粉末の数分の1に低下させることができるので、内管と外管の間の空間を充填するために必要なエアロゲルの重量を従来の数分の1に抑えることができる。ここで、嵩密度(bulk density)とは、粉体の見かけ上の密度であって、既知の体積の容器に粉体を充填したときの粉体の質量を容器の体積で割ることによって算出される。容器の体積には、粉体を構成する粒子の体積の合計だけでなく粒子間の隙間も体積に算入されており、嵩密度は粉体を構成する粒子の隙間にも依存する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の係る断熱配管の断面構造を示す説明図である。
図2図2は、本発明の係る断熱配管の構成を俯瞰によって示す説明図である。
図3図3は、一般的なエアロゲルの構造及びそれを粉砕するときの切断面を模式的に示す説明図である。
図4図4は、一般的なエアロゲルの三次元網目構造の骨格を構成する二次粒子を模式的に示す説明図である。
図5図5は、一般的なエアロゲルを粉砕して作られるエアロゲル粉末を、模式的に示す説明図である。
図6図6は、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末を作成する過程で、エージング工程後に生成される弱結合超微粒子エアロゲルの三次元網目構造を、模式的に示す説明図である。
図7図7は、図6に示した弱結合超微粒子エアロゲルの三次元網目構造の骨格を構成する二次粒子を、模式的に示す説明図である。
図8図8は、図6に示した弱結合超微粒子エアロゲルを粉砕するときの切断面を、模式的に示す説明図である。
図9図9は、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末を模式的に示す説明図である。
図10図10は、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末を製造する方法の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、高速粉砕工程における粉砕機の回転数の制御例を示す説明図である。
図12図12は、高速粉砕工程の後の粒子サイズの分布を示す分布図である。
図13図13は、試作された弱結合超微粒子エアロゲル粉末に振動を加えたときの圧縮特性を示すグラフである。
図14図14は、内管を被覆した断熱配管の断面構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0022】
〔1〕弱結合超微粒子エアロゲル粉末を充填した二重断熱配管(図1,2,6,7,9)
内管(2)と、外管(1)と、前記内管と前記外管の間の空間と、前記空間に充填された断熱材(3)とを有する断熱配管(10)であって、前記断熱材は、一次粒子(11)の集合体であるクラスター(21)で骨格を構成された三次元網目構造を有するエアロゲル(31)を原料とし、前記一次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有する微粒子(51)を含むことを特徴とする。なお、一次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有する微粒子(51)は、弱結合超微粒子エアロゲル粉末であり、その原料であるエアロゲル(31)は、弱結合超微粒子エアロゲルである。
【0023】
これにより、管を内外二重にしたときの内管と外管の間の空間に熱絶縁が、低コスト高性能に実現された断熱配管を提供することができる。
【0024】
〔2〕弱結合超微粒子エアロゲル粉末の過半数は粒子径1μm以下に分散ピーク(図12
〔1〕項の断熱配管において、前記微粒子は、その総数の50%以上が粒子径について0.1μm以上1.0μm以下に最頻値をもって分散する。なお、ここで言う粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置による観測値である。レーザー回折式粒子径分布測定を本明細書では、PSD(particle size distribution)測定と略す。本明細書において、粒子径についてはPSD測定を前提として説明する。ただし、PSD測定では、粒子自体の径だけではなく、粒子の凝集も粒子径として観測されるため、真の粒子径は測定値よりも小さい可能性が高い。測定法に依存した粒子径の相違があれば、換算して理解いただきたい。
【0025】
これにより、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末の嵩密度は、従来のエアロゲル粉末の数分の1に低減される。粒子径1μm以下に分散ピークをもつ微粒子は、一次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有する微粒子(51)であると考えられ、その分散ピークが十分に大きくなくても、嵩密度を低減する一定の効果期待できるが、そのような微粒子が多数を占めることによって、その効果は顕著となる。
【0026】
〔3〕中空粒子の添加(実施形態2)
〔1〕項または〔2〕項の断熱配管において、前記断熱材はさらに中空粒子を含む。
【0027】
これにより、断熱材の熱伝導率を下げることができる。
【0028】
〔4〕中空粒子内に特殊な気体を封入(実施形態2)
〔3〕項の断熱配管において、前記中空粒子は殻を有し、殻の内側の中空部分に空気よりも熱伝導率の低い気体が封入されている。
【0029】
これにより、断熱材の熱伝導率をさらに下げることができる。
【0030】
〔5〕内管と外管の間の空間に特殊な気体を封入(実施形態3)
〔1〕項から〔4〕項のうちのいずれか1項に記載される断熱配管において、前記内管と前記外管の間の前記空間に、空気よりも熱伝導率の低い気体が封入されている。
【0031】
これにより、断熱材の熱絶縁性能をさらに高めることができる。
【0032】
〔6〕内管と外管の間の空間を減圧(実施形態3)
〔1〕項から〔4〕項のうちのいずれか1項に記載される断熱配管において、前記内管と前記外管の間の前記空間が、大気圧よりも低い気圧に減圧されている。
【0033】
これにより、断熱材の熱絶縁性能をさらに高めることができる。
【0034】
〔7〕二重配管の支持機構(実施形態3)
〔1〕項から〔6〕項のうちのいずれか1項に記載される断熱配管は、前記外管に固定されて前記内管を支持する支持機構を備え、前記支持機構は、前記内管と前記外管との間の直線距離よりも長い部材を折り曲げて構成されている。
【0035】
これにより、内管と外管を接続する支持機構を通した熱伝導を抑えることができ、断熱配管全体の熱絶縁性能が向上される。
【0036】
〔8〕内管の補強(実施形態3)
〔1〕項から〔7〕項のうちのいずれか1項に記載される断熱配管において、前記内管が、さらに繊維を含む部材で被覆されている。
【0037】
これにより、断熱配管が高圧の気体または液体を通す場合にも、内管が破裂するなどの事故を防止することができる。
【0038】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0039】
〔実施形態1〕
図1は実施形態1に係る断熱配管の断面構造を示す説明図で、図2はその断熱配管の構成を俯瞰によって示す説明図である。
【0040】
実施形態1に係る断熱配管10は、内管2と外管1からなる断熱配管であり、内管2は外管1の内側の壁面に取り付けられた支持部材4で支持されて内管2と外管1の間には環状の空間が形成されており、その環状空間に断熱材3が充填されている。支持部材4は、図1,2に示すように、例えば3個の支持部材4を使って内管2の外周を3か所で支え、3個一組の支持部材4が、断熱配管10の長手方向に適当な間隔で配置されている。
【0041】
内管2と外管1の間の環状空間に充填される断熱材は、弱結合超微粒子エアロゲル粉末を含む。ここで、弱結合超微粒子エアロゲル粉末とは、一次粒子の集合体であるクラスターで骨格を構成された三次元網目構造を有するエアロゲルを原料とし、その一次粒子で骨格を構成された三次元網目構造を有する微粒子である。これにより、内管2と外管1の間の環状空間に充填される断熱材が、低コストかつ高性能で実現される。ここでその微粒子は、粒子径が1.0μm以下に分散の最頻値(ピーク)をもつとよく、特にその総数の50%以上が0.1μm以上1.0μm以下に分散のピークをもつとより好適である。これにより、嵩密度を従来のエアロゲル粉末の数分の1に低減することができるので、内管と外管の間の空間を充填するために必要なエアロゲルの重量を従来の数分の1に抑えることができる。
【0042】
一般に、ゾルゲル法で作成したゲルを超臨界乾燥等することにより、微細な空孔を有する三次元網目構造を持つエアロゲルが作成できることが、よく知られている。金属アルコキシド溶液を加水分解・縮合して生成されたゾルをゲル化して湿潤ゲルを生成し、エージングした後、超臨界乾燥法により溶媒成分を取り除くことによって、エアロゲルが生成される。金属アルコキシド溶液では、一次粒子が溶媒に溶けた状態であり、加水分解と縮合によってこの一次粒子が互いに縮合してコロイドを形成する。これがゲルであり、形成されたコロイドは縮合する前の一次粒子に対して二次粒子と呼ばれる。ゲル化した状態では溶媒成分を含む湿潤ゲルである。湿潤ゲルから超臨界乾燥法等により溶媒成分を取り除くと、二次粒子を単位として構成される三次元網目構造が残る。これがエアロゲルである。このようなエアロゲルは、機械粉砕することにより、数十μm~数mmの粉末にして利用される。
【0043】
本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末は、エージングの進行を従来よりも抑えた弱結合超微粒子エアロゲルを生成し、それを超高速粉砕して生成される。これにより、従来のエアロゲルを機械粉砕した場合の約1000分の1の微粒子粉末となっている。より具体的には、弱結合超微粒子エアロゲル粉末は、PSD測定によって観測したときに、その粒子径が1.0μm以下に分散の最頻値(ピーク)をもつとよく、特にその総数の50%以上が、粒子径について100nm以上1.0μm以下に最頻値をもって分散するようなエージング条件及び粉砕条件で超高速に粉砕することによって製作されるとより好適である。本発明者がPSD測定によって観測した弱結合超微粒子エアロゲル粉末の粒子径は、約300nmを最頻値として分布する。詳しくは後述する。
【0044】
本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末の個々の粒子は、三次元網目構造を持っている。従来のエアロゲル粉末粒子も三次元網目構造を持っているが、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末の粒子は、その骨格を構成する単位が異なる。即ち、特許文献4の第0035段落に「エアロゲル粒子1は、複数の一次粒子から構成される二次粒子の態様を取っていると考えられており」とされるように、従来のエアロゲル粉末粒子の三次元網目構造は、二次粒子を単位として構成されるのに対して、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末の粒子は、その骨格を構成する単位が一次粒子である点に特徴がある。
【0045】
図3図5は、一般的なエアロゲル及びそれを粉砕して作られるエアロゲル粉末の構造を模式的に示す説明図である。図3は一般的なエアロゲル30の構造及びそれを粉砕するときの切断面40を、図4はその三次元網目構造の骨格を構成する二次粒子20を、図5図3のエアロゲル30を粉砕して作られるエアロゲル粉末50を、それぞれ模式的に示す。図3に示すように一般的なエアロゲル30では、乾燥される前のゲルに含まれていたコロイドが二次粒子20となって、二次粒子20を骨格の単位とする三次元網目構造が形成されている。このようにして作成されたエアロゲル30では、三次元網目構造の体積の約10%で骨格が形成され、他の約90%が空孔によって形成されている。その空孔の大きさが空気など空孔を満たす気体の平均自由工程よりも小さいときには、気体分子の衝突による熱伝導がほとんど発生しない。このため、エアロゲルは熱絶縁材料として用いられている。
【0046】
図5には、一般的なエアロゲルを粉砕したときのエアロゲル粉末50の構造が模式的に示されている。図3に示した一般的なエアロゲル30を粉砕するとき、粉砕機による切断面40は、二次粒子20そのものではなく、二次粒子が連結している箇所となる。これは、図4に示すように二次粒子20は一次粒子11が密に凝集しているので結合が強く、二次粒子相互の結合の方がはるかに弱いためであると考えられる。その結果、一般的なエアロゲル30を粉砕したときのエアロゲル粉末50は、二次粒子20によって骨格が形成された三次元網目構造をもつこととなる(図5)。
【0047】
図6図9は、本発明のエージング後のエアロゲル31及びそれを粉砕して作られる弱結合超微粒子エアロゲル粉末51の構造を模式的に示す説明図である。図6は本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末51を作成する過程で、エージング工程後に生成される弱結合超微粒子エアロゲル31の三次元網目構造を、図7図6に示した弱結合超微粒子エアロゲルの三次元網目構造の骨格を構成する二次粒子21を、図8図6に示した弱結合超微粒子エアロゲル31を粉砕するときの切断面40を、図9は本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末51を、それぞれ模式的に示す。本発明では、一般的な工程よりもエージングを抑えて弱結合超微粒子エアロゲル31を生成する。このため生成される弱結合超微粒子エアロゲル31の三次元網目構造は、一次粒子11が従来よりも疎に凝集する二次粒子21(図7)を骨格として構成されることとなる(図6)。このような三次元網目構造(図6)をもつ弱結合超微粒子エアロゲル31に超高速粉砕を施すと、骨格を構成する二次粒子21相互の結合部分だけではなく、図8に示されるように二次粒子21そのものにも粉砕機による切断面40が存在して、二次粒子21そのものが粉砕されるものと考えられる。その結果、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末51は、図9に示されるように、一次粒子11によって骨格が形成された三次元網目構造をもつこととなる。なお、二次粒子21は、図7に示されるように一次粒子11が疎に凝集して形成されているため、実際の二次粒子21の外縁は不明確となっているが、図8には理解を助けるために外縁に相当する部分が実線の円で示されている。
【0048】
本発明の発明者らは、エアロゲルの製造過程で生成されるコロイドが加水分解と縮合によって形成されることに着目し、縮合反応を支配するエージングの条件を調整することによって、一次粒子を単位として骨格を形成する三次元網目構造を持ったエアロゲルを調製することができることに気付き本発明に到達した。以下に、その製造方法の一例を説明する。
【0049】
図10は、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末を製造する方法の一例を示すフローチャートである。
【0050】
シリカエアロゲルは、主に以下の2ステップにより製作される。ゾルゲル法による湿潤ゲルを形成するステップと、その湿潤ゲルを乾燥するステップである。湿潤ゲルはナノ構造の固体シリカの網目と液体の溶媒からなり、シリカ前駆体分子を加水分解、縮合して製作される。このシリカ前駆体は、TEOS(Tetraethoxysilane)とメタノールを混合することによって製作される(S1)。さらにこの混合液に、合計6.3gのシュウ酸(0.01M)が添加され、最後に1.5gの水酸化アンモニウム(NH4OH 0.5M)が加えられ、アルコゾルとなる。このアルコゾルは室温で放置されるとゲル化する(S2)。
【0051】
ゲル化に続けて、アルコゲルは60℃のメタノール中でそれぞれ3時間、6時間、12時間のエージングを行った(S3)。過剰な量のメタノールがゲルに加えられ、その後、常温よりも高い温度に上げた乾燥工程において蒸発した。表面修飾の逆反応を避けるために、アルコゲルは60℃のヘキサンに10時間浸され、表面を修飾するために、ヘキサンのみの溶媒はヘキサンとTMCS(Trimethylchlorosilane)の混合液に代替された(S4)。ここでヘキサンとTMCSの体積比は一定値である4に保たれた。表面修飾ステップ(S5)において、アルコゲルはヘキサンとTMCSの60℃の混合液に24時間浸された。アルコゲルの乾燥の前に、試料は60℃の純ヘキサンに6時間浸されて、過剰なTMCSが除去された(S6)。エアロゲルを作成する最後のステップは乾燥(S7)である。乾燥工程は、第1から第3のステップと冷却ステップからなる。第1ステップでは40℃で4時間、第2ステップでは80℃で2時間、第3ステップでは120℃で1時間保持されたのち、加熱炉全体とともに冷却された。
【0052】
乾燥ステップ(S4~S7)の後、エアロゲル試料に対して、高速粉砕工程(S8)が施された。大阪ケミカル株式会社製ワンダークラッシャーWC-3を用い、図11に示すように、Crushing speedが11,200rpm~21,000rpmの高速で、Crushing timeが約5分間のプログラムを3回実施した。
【0053】
図12は、高速粉砕工程の後の粒子サイズの分布を示す分布図である。エージング時間が3時間、6時間、12時間の試料それぞれについて、高速粉砕工程の後の粒子径をログスケールで横軸に取り、相対粒子量の頻度(左の縦軸)と累積値(右の縦軸)が示されている。比較のために従来の(市販の)エアロゲル粉末のデータを合わせて示す。ここで、粒子径はPSD測定によって観測した。より具体的には図12は、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-2300を用いて測定した結果である。なお、PSD測定では、粒子自体の径だけではなく、粒子の凝集も粒子径として観測されるため、測定値は正方向に偏っている(真の値よりも大きな値が測定される誤差が多い)ことに注意する必要がある。しかし、以下のように、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末の特徴を説明するには、十分な情報が得られている。
【0054】
従来のエアロゲル粉末では、約300μmの粒子径を平均値として相対粒子量は1つのピークのみをもつ。これに対して、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末では、エージング時間が3時間、6時間、12時間の試料について、高速粉砕工程の後の相対粒子量の頻度がそれぞれ2つのピークを持つ。エージング3時間の試料では、第1ピークは平均0.32μm、標準偏差0.10、第2ピークは平均21.14μm、標準偏差0.14、エージング6時間の試料では、第1ピークは平均0.66μm、標準偏差0.15、第2ピークは平均31.89μm、標準偏差0.40、エージング12時間の試料では、第1ピークは平均0.96μm、標準偏差0.13、第2ピークは平均38.52μm、標準偏差0.21である。
【0055】
このように2つのピークに分かれることは、それぞれのピークを構成する粒子に本質的な違いがあることを強く推認させる。仮に本質的な変化がなく、エージング条件によって生成される粒子の径が変化するだけであれば、ピークの位置がそれに伴って変化することがあっても2つのピークが現れることは考えにくいからである。したがって、粒子径の大きい第2ピークを構成する粒子は、従来通り二次粒子を骨格の単位とする三次元網目構造を持つのに対して、粒子径の小さい第1ピークを構成する粒子は、一次粒子を骨格の単位とする三次元網目構造を持つと考えるのが自然である。即ち、図3~5及び図6~9を参照した上述の説明を裏付ける結果となっている。
【0056】
また、エージングの条件を変化させることによって、高速粉砕された後に生成される粒子の性質、即ち、二次粒子を骨格の構成単位とするか一次粒子を骨格の構成単位とするかを、顕著に変化させること、即ち制御するができることがわかる。粒子径が大きい方の分散の最頻値は10μm以上であり、粒子径が小さい方の分散の最頻値は1μm以下である。エージング時間が6時間と12時間でその後高速粉砕された試料では、相対粒子量の累積値が50%を超えるのが、粒子径が大きい方のピーク側にある。相対粒子量の累積値が50%を超えるのは、エージング時間が6時間でその後高速粉砕された試料では粒子径が約20μm、エージング時間が12時間でその後高速粉砕された試料では粒子径が約40μmであり、いずれも第2ピーク側である。一方、エージング時間が3時間でその後高速粉砕された試料では、相対粒子量の累積値が50%を超えるのが、粒子径が約0.3μmであって粒子径が小さい方のピーク(第1ピーク)側にある。別の観点から表現すれば、エージング時間が6時間と12時間でその後高速粉砕された試料では、60%~70%の粒子が10μm以上の径をもつ粒子であって、その大きさから二次粒子を骨格の構成単位とする粒子が主であるのに対して、エージング時間が3時間本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末試料では、約80%の粒子が0.1μmから1.0μmの範囲の径を持つ粒子、即ち、その大きさから一次粒子を骨格の構成単位とする粒子が主であることがわかる。
【0057】
なお、エージング条件は、上述のように時間を従来よりも短縮する以外に、温度を従来よりも下げることも効果的である。即ち、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末を製作するためのエージングの条件は、温度が15℃~70℃、より好適には20℃~70℃、さらに好適には25℃~60℃、時間が0~24時間、より好適には0~12時間、さらに好適には3~12時間であり、粉砕パラメータは、回転数が10,000~30,000rpm、より好適には10,000~25,000rpm、さらに好適には11,000~22,000rpmであり、時間が1~120分、より好適には3~60分、さらに好適には5~45分である。
【0058】
試作された弱結合超微粒子エアロゲル粉末の嵩密度は、0.018g/cm3と測定された。これは市販のエアロゲル粉末の嵩密度0.06g/cm3~0.20g/cm3と比較して1/3~1/11である。一方、熱伝導率は23mW/mKと測定され、これは市販のエアロゲル粉末の熱伝導率約23mW/mKと同等レベルである。
【0059】
図13は、試作された弱結合超微粒子エアロゲル粉末に振動を加えたときの圧縮特性を示すグラフである。底面積一定の容器に試作された弱結合超微粒子エアロゲル粉末を入れて、振動を加えたときのエアロゲルの高さの経時変化を測定したもので、市販のエアロゲル粉末と比較して示す。横軸の振動時間は任意単位である。従来のエアロゲル粉末は、初期の高さの82%で一定値に達したのに対して、試作された弱結合超微粒子エアロゲル粉末は69%で一定値に到達した。この特性を使って、嵩密度が経時変化によって圧縮された飽和点を推定すると、上述の試作された弱結合超微粒子エアロゲル粉末の嵩密度0.018g/cm3は、振動によって最大0.026g/cm3に達すると考えられる。一方同様の考え方によれば、市販のエアロゲル粉末の嵩密度約0.12g/cm3は、最大0.13g/cm3に達する。その違いは若干縮まるものの、なお1:5の比がある。本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末は、従来のエアロゲル粉末と比較して数分の1の嵩密度であり、同じ空間を充填するために必要な量が数分の1に抑えられる。
【0060】
以上説明したように、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末を二重配管における内管と外管の間の環状空間へ充填する断熱材として用いれば、嵩密度が従来のエアロゲル粉末の数分の1であるから、充填に必要される断熱材のコストを大幅に抑えることができる。また弱結合超微粒子エアロゲル粉末は疎水性でありため、環状空間に残存する水分との間の反応による経年劣化がほとんど発生しないので、定期的に断熱材を交換するような保守コストも大幅に低減される。さらには、弱結合超微粒子エアロゲル粉末は非常に微細であるため、内管と外管の間の環状空間に狭窄部分があっても隅々まで充填することができ、断熱配管としての熱絶縁性能を高めることに大きく貢献する。
【0061】
〔実施形態2〕
上記実施形態1の断熱配管10においては、内管2と外管1の間の環状空間に断熱材として充填される弱結合超微粒子エアロゲル粉末に、さらに中空粒子を添加してもよい。これにより、断熱材の熱伝導率を下げることができる。
【0062】
断熱材としてエアロゲルを用いることにより、エアロゲルの空孔の大きさが空気の平均自由行程よりも小さいために、気体分子の衝突によるまたは対流による気体を介した熱伝導が抑えられ、空孔が真空である場合に近い熱絶縁性能が期待される。しかし現実には真空の性能には及ばない。その原因を本発明者が探求した結果、エアロゲル粉体を充填された断熱材には、微細な連通孔が残存しており、その連通孔を通して上述のような熱伝導が生じていることがわかった。そこで本発明者らはエアロゲルに中空粒子を添加してハイブリッド化することにより、熱伝導率を低下させる技術を創作した(特願2020-120921として特許出願済み)。添加した中空粒子が上述のような微細な連通孔を塞いで、僅かに生じていた気体による熱伝導を抑えるため、熱伝導率を低下させることができるのである。
【0063】
また、中空粒子を構成している球殻は機密性が高いので、球殻内に空気よりも熱伝導率の低い気体を封入することにより、断熱材の熱伝導率をさらに下げることができる。
【0064】
添加する中空粒子は、特に限定されないが、ナノ中空粒子、マイクロ中空粒子、またはその両方とすることができる。ナノ中空粒子は、好ましくは、外径が30nm~360nm、球殻の厚さが7.5nm~65nmの範囲に調製される。外径については常温常圧の空気の平均自由行程の約1/2~約5倍の範囲に相当する。このように、ナノ中空粒子は、中空の大きさが空気の平均自由行程と同じオーダーに調製されているため、エアロゲルに添加された場合には、断熱効果への寄与が大きい。マイクロ中空粒子は、好ましくは、外径が1μm~23μm、球殻の厚さが0.35μm~3μmの範囲に調製される。外径については常温常圧の空気の平均自由行程の15倍よりも大きく、断熱効果への寄与に加えて網目の構造的強度を高める効果がある。エアロゲルには、上述したような微細な連通孔が残存しているが、添加された中空粒子はこの連通孔を塞ぎ、連通孔によって生じていた対流などの気体を介した熱伝導を抑えるため、断熱効果を高める。
【0065】
ナノ中空粒子は、例えば、ソフトテンプレート法によって製造することができる。即ち、エタノール中で高分子電解質の表面をアンモニアで修飾し、シリカ(SiO2)でコーティングすることにより、中核と球殻からなる粒子が生成される。これを洗浄または焼成することによって中核に封じ込められていた媒質を取り除き、中空粒子が生成される。
【0066】
マイクロ中空粒子の製造には、例えば二重エマルジョン法が好適である。界面活性剤を含む油相と前駆体及び界面活性剤からなる水相のような非混和性液体からなる分散多相システムから、乳化によって油相を連続相とし、水相を中心とする液滴を含むエマルジョンが生成され、これに水相を加えることによって水相の連続相にゲルを中心とする液滴を含むエマルジョンに変わる。これを洗浄/濾過または焼成することによって、マイクロ中空粒子が製造される。
【0067】
本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末を製造する方法において、中空粒子は、図10に示されるフローチャートのゲル化工程(S2)の前に、シリカ前駆体として調製(S1)されたTEOSとメタノールの混合液に添加されるとよい。また、添加後、混合液を超音波振動によって十分に撹拌し、添加された中空粒子を均一に分散させるとよい。中空粒子の添加量は、ハイブリッド化されたエアロゲル全体に対して、例えば以下の組成となるように調整される。
【0068】
ナノ中空粒子は、好ましくは0.01重量%~30重量%、さらに好ましくは0.10重量%~15重量%、最も好ましくは1.00重量%~10重量%である。またマイクロ中空粒子の場合も同様に、好ましくは0.01重量%~30重量%、さらに好ましくは0.10重量%~15重量%、最も好ましくは1.00重量%~10重量%である。
【0069】
以上のように、断熱配管10において、内管2と外管1の間の環状空間に断熱材として充填される弱結合超微粒子エアロゲル粉末に中空粒子を添加することにより、断熱材の熱伝導率を下げることができる。
【0070】
〔実施形態3〕
本発明の断熱配管10は、外管1に固定されて内管2を支持する支持機構4を備えることができる(図1図2参照)。支持機構4は、外管1と内管2との間の直線距離よりも長い部材を折り曲げて構成されている。外管1と内管2の間の機械的な強度を保ちながら、その間の熱伝導をできる限り抑える構成となっている。図示は省略されているが、断熱配管10の両端、即ち、他の断熱配管10やタンクなどの設備との接続部において、外管1と内管2を接続して支持する機構を設けても良い。このとき、接続部での熱伝導を抑えるため、外管1と内管2との間の直線距離よりも長い部材を折り曲げて構成されるとよい。
【0071】
断熱配管10の端部は、充填される断熱材3が漏れ出さないように封止されるとよい。断熱配管10は、内管2と外管1の間の環状空間に断熱材3が充填された後に端部を封止することができる。これにより、施工時には断熱配管10への断熱材3の充填を不要とすることができる。一方、施工後に断熱材3を充填してもよい。このとき、断熱配管10には断熱材3を充填するために、内管2と外管1の間の環状空間に外部からつながる配管を設ける(図示は省略)。また、充填された断熱材3を断熱配管10から外へ排泄する配管を、さらに設けることもできる(図示は省略)。これにより、断熱材3の交換が容易になる。
【0072】
なお上述したように、本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末は、超高速粉砕によって従来のエアロゲル粉末の約1000分の1の300nm程度の微粒子粉末となっているため、環状空間内に狭窄部があっても末端まで充填することができる。
【0073】
本発明の断熱配管10は、内管2と外管1の間の環状空間に、断熱材3を充填するとともに、空気よりも熱伝導率の低い気体を封入することができる。これにより、熱絶縁性能をさらに高めることができる。封入する気体は、例えば二酸化炭素が好適である。二酸化炭素を封入するには、内管2と外管1の間の環状空間に、断熱材3を充填するときに、ドライアイスを合わせて投入するとよい。ドライアイスは気化して環状空間を二酸化炭素で満たす。
【0074】
本発明の断熱配管10の環状空間は、断熱材3を充填するとともに、減圧してもよい。減圧するためには、断熱配管10に、環状空間を排気するための配管及び真空ポンプを接続することができるように構成するとよい(図示は省略)。
【0075】
本発明の断熱配管10は、内管2の周囲が、繊維を含む被覆部材5で被覆されるとより好適である。図14は、内管2が被覆された断熱配管10の断面構造を示す説明図である。内管2に通す流体が高圧の気体または液体水素など気化して高圧となる危険のある液体の場合に、内管2の破裂などの事故を防止することができる。被覆部材5を構成する材料としては、例えば、グラスファイバー、カーボンファイバーなどが好適ある。
【0076】
本発明に好適な、断熱配管10の構造を下の表1に示す。本発明の断熱配管は、内管2及び外管1を金属、プラスティックまたはポリマーを材質とする部材、またはそれらを積層するなど組み合わせた構造で構成することができる。特に、液化水素を送るときに内管2は、水素脆化に対する耐性を考慮して適切な材料、例えばSUS304L、SUS316、SUS316Lを選択する必要がある。また、以下の仕様を満たすと良い。
【表1】
本発明に好適な、断熱材3の仕様を下の表2に示す。
【表2】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1 外管
2 内管
3 断熱材
4 支持部材
5 被覆部材
10 断熱配管
11 一次粒子
20 二次粒子
21 一次粒子が疎に密集する二次粒子
30 二次粒子を単位とする骨格で形成された三次元網目構造
31 一次粒子が疎に密集する二次粒子を単位とする骨格で形成された三次元網目構造(弱結合超微粒子エアロゲル)
40 粉砕機による切断面
50 一般的なエアロゲル粉末
51 本発明の弱結合超微粒子エアロゲル粉末

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14