(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法、および、データ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241216BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2023166187
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501227328
【氏名又は名称】マップマーケティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 正則
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-091620(JP,A)
【文献】特開2001-229186(JP,A)
【文献】特開2002-041752(JP,A)
【文献】特開2002-203026(JP,A)
【文献】特開2004-118853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データにおいて行政界に区分された
行政界地域を複数のメッシュに区分した場合の、個々の前記メッシュにおいて前記
行政界地域が占める面積比率を決定する面積比率決定部と、
前記
行政界地域
において特定の地点に来訪した来訪者の出発地についての人数分布を前記メッシュの単位で示した人流
メッシュデータを前記メッシュの単位で前記面積比率に応じて按分した按分データを生成する按分データ生成部と、
前記按分データの前記複数のメッシュ全体に対する比率に基づいて、
前記人流メッシュデータとは異なるデータであって前記
行政界地域に関して集計された数値データを前記複数のメッシュに配分するデータ配分部と、
を備える、データ処理装置。
【請求項2】
前記人流
メッシュデータは、前
記来訪者の出発地が属するメッシュに前記来訪者の人数を割り当て
たデータである、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記面積比率決定部は、前記複数のメッシュのうち、前記
行政界地域の形状に対応するポリゴンデータのポリラインが含まれるメッシュを検出し、検出したメッシュにおいて前記ポリゴンデータが占める面積比率を決定する、請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記面積比率決定部は、前記複数のメッシュのうち、前記ポリラインが含まれるメッシュとして検出されないメッシュの前記面積比率を100%に決定する、請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記データ処理装置は、前記複数のメッシュに前記数値データが配分されたメッシュデータを、前記数値データに応じて前記メッシュを個別に強調した表示形式にてディスプレイに表示する表示制御部をさらに備える、請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記表示形式は、前記数値データに応じて前記メッシュを色分けしたヒートマップ形式である、請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記
行政界地域は、商品またはサービスを販売する企業または店舗が所在する地域であり、前記数値データは、前記企業または前記店舗の前記
行政界地域における顧客数データまたは売上データである、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
地図データにおいて行政界に区分された
行政界地域を複数のメッシュに区分した場合の、個々の前記メッシュにおいて前記
行政界地域が占める面積比率を決定する処理と、
前記
行政界地域
において特定の地点に来訪した来訪者の出発地についての人数分布を前記メッシュの単位で示した人流
メッシュデータを前記メッシュの単位で前記面積比率に応じて按分した按分データを生成する処理と、
前記按分データの前記複数のメッシュ全体に対する比率に基づいて、
前記人流メッシュデータとは異なるデータであって前記
行政界地域に関して集計された数値データを前記複数のメッシュに配分する処理と、
を含む、データ処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
地図データにおいて行政界に区分された
行政界地域を複数のメッシュに区分した場合の、個々の前記メッシュにおいて前記
行政界地域が占める面積比率を決定する処理と、
前記
行政界地域
において特定の地点に来訪した来訪者の出発地についての人数分布を前記メッシュの単位で示した人流
メッシュデータを前記メッシュの単位で前記面積比率に応じて按分した按分データを生成する処理と、
前記按分データの前記複数のメッシュ全体に対する比率に基づいて、
前記人流メッシュデータとは異なるデータであって前記
行政界地域に関して集計された数値データを前記複数のメッシュに配分する処理と、
を実行させる、データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、データ処理方法、および、データ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
国が公表する様々な地域別の統計データ(例えば、人口、世帯数など)には、大きく分けて2種類の表示方法(または集計方法)がある。1つは行政区画(「行政界」ともいう)単位のデータに基づく方法であり、もう1つは地域を例えば格子状の区画に区分したメッシュ(「地域メッシュ」と称されてもよい)の単位のデータ(以下「メッシュデータ」とも称する)に基づく方法である。
【0003】
昨今、企業において、自社の会員(または顧客)データ等を基に行政界データを作成し、統計データと比較、分析する需要が高まってきている。さらに、視覚的に理解しやすいメッシュデータの分析需要も高まっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】国土交通省 国土技術政策総合研究所 都市研究部、「人口情報メッシュ配分プログラム 操作マニュアル バージョン:2.2」、令和元年10月18日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
行政界データをメッシュデータに変換する方法の一例として、非特許文献1には、行政界データの一例である町丁目の人口データを100mメッシュデータに配布する方法(プログラム)が示される。この方法では、町丁目区画内に含まれるメッシュのうち、国土交通省国土数値情報の「土地利用細分メッシュデータ」の「建物用地」に分類されるメッシュに対してのみ、人口データが等配分される。
【0006】
しかしながら、非特許文献1の方法では、「建物用地」に分類されるメッシュへの等配分であるため、得られるメッシュデータの精度に関して改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的の1つは、行政界データをメッシュデータに変換する際の精度を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るデータ処理装置は、地図データにおいて行政界に区分された地域を複数のメッシュに区分した場合の、個々の前記メッシュにおいて前記地域が占める面積比率を決定する面積比率決定部と、前記地域の人流データを前記メッシュの単位で前記面積比率に応じて按分した按分データを生成する按分データ生成部と、前記按分データの前記複数のメッシュ全体に対する比率に基づいて、前記地域に関して集計された数値データを前記複数のメッシュに配分するデータ配分部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、行政界データをメッシュデータに変換する際の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るデータ処理システムの一例を示す図である。
【
図2】特定の行政界地域内に所在する店舗における購買データの一例を示す図である。
【
図3】(A)~(C)は、それぞれ、
図2に例示した購買データの変形例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係るデータ処理装置の一例としてのコンピュータの機能的な構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図1および
図4に例示したコンピュータの動作例を示すフローチャートである。
【
図6】
図5の動作例において用いられるポリゴンデータ(区画データ)の一例を示す図である。
【
図7】
図5の動作例において求められるメッシュごとの面積比率の一例を説明するための図である。
【
図8】
図5の動作例において用いられる人流メッシュデータの一例を示す図である。
【
図9】
図5の動作例において面積比率に応じて按分された人流メッシュデータの一例を示す図である。
【
図10】
図5の動作例において
図9の人流メッシュデータを基に決定したメッシュ構成比データの一例を示す図である。
【
図11】
図4の動作例において
図5に示す売上データを、
図10に例示したメッシュごとの構成比に応じて配布した町丁目売上メッシュデータの一例を示す図である。
【
図12】
図11に例示した町丁目売上メッシュデータをヒートマップ形式によって表示した例を示す図である。
【
図13】一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【
図14】地図上に顧客数データを町丁目別にヒートマップ形式によって表した例を示す図である。
【
図16】町丁目ごとの面積、顧客数、および、ヒートマップの色の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態および実施例について詳細に説明する。同一または類似の符号は同一または類似の要素を示し、繰り返しの説明を省略する場合がある。以下の説明において数値を記載した場合、その数値はあくまでも例示であり、他の数値が追加的または代替的に用いられてもよい。
【0012】
[概要]
行政界データには、都道府県別、市区町村別、大字別、町丁目(ちょうちょうもく)別、または、町丁字(ちょうちょうあざ)別といった区分のデータがある。一方、メッシュデータは、例えば、特定の地域を行政界の区分に依らずに格子状の複数の区画(メッシュ)に区分した単位のデータである。メッシュデータには、例示的に、1kmメッシュ、500mメッシュ、250mメッシュ、125mメッシュ、100mメッシュ、または、50mメッシュといった、正方形である1区画の一辺の長さが異なるデータがある。
【0013】
メッシュデータに基づく表示は、例えば天気予報などにも使われるように、個々のメッシュの面積が一定であるため、視覚的に理解しやすい表示方法であるが、具体的な場所(例えば、住所)をイメージしにくい場合もある。
【0014】
一方、小売業等の企業が保有する、地域に関連したデータ(以下「地域関連データ」とも称する)といえば、例えば会員データのような個人データが多く、行政界別に集計されたデータは少ない。仮に行政界別に集計されたデータと企業が保有する会員データのような自社データとを同じ地域単位で比較、分析したい場合には、自社データから行政界データを作るために、自社において集計作業を行うことになる。
【0015】
例えば、自社の会員データから得られた個人それぞれの住所情報を基に集計作業を行うことで、行政界別データを作成できる。スーパーマーケットのような店舗を例にすると、店舗において、顧客データの住所情報を基に町丁目レベルの地域(例えば、YY市ZZ町2丁目)の顧客を集計することにより、ZZ町2丁目の町丁目別の顧客数データが得られる。
【0016】
このデータが町丁目単位の行政界データである。行政界データは、例えば、国勢調査データ等との比較、分析に用いることができる。この比較、分析によって、例えば、ZZ町2丁目の人口に対する会員比率は「〇〇%」であるといった情報を得ることができる。
【0017】
なお、自社の会員データから行政界データを集計する他の方法としては、会員の地番レベルの住所を地図上にプロットして座標(例えば、緯度および経度)を付与し、行政界データと比較することによりメッシュ単位の統計データを作る方法が挙げられる。しかし、地番レベルの住所を使った処理は、個人情報保護の観点から利用が制限されることが多いため、使用しにくい。
【0018】
図14は、地図上に顧客数データを町丁目別にヒートマップ形式によって表した例を示す図である。
図14には、スーパーマーケットのような店舗Aが存在し、店舗Aを含む各地域が町丁目レベルで区割りされた例が示される。各地域(町丁目)は、店舗Aの顧客数に応じて色分け表示されており、例えば、顧客数が多い地域ほど暖色系の色によって表示され、また、顧客数が少ない地域ほど寒色系の色によって表示される。
【0019】
図14においては、例示的に、店舗Aが所在する地域を含む北東側周辺の幾つかの地域が「赤」(R)で表示され、店舗Aから南側に離れた幾つかの地域が「青」(B)で表示される。この場合、視覚的かつ直感的に、店舗Aの北東側に顧客数が多いことが分かり、店舗Aの南側には顧客数が少ないことが分かる。
【0020】
仮に店舗Aの南側に競合店舗が立地していれば、競合店舗に顧客が奪われていることを想像できる。したがって、店舗Aは、例えば、このようなヒートマップを基に店舗Aの南側地域の顧客を集客するための販促を立案できる。
【0021】
ここで、
図14に例示したヒートマップでは、町丁目の各地域が略一定の面積であるため、顧客数の分布を視覚的に把握しやすい。しかし、例えば
図15に示すように、1つの地域Kの面積が他の地域の面積と比べて極めて大きいような場合、単純な顧客数と単位面積あたりの顧客数との間で大小関係が逆転し、視覚的に把握しにくい(または、誤解しやすい)現象が生じ得る。
【0022】
例えば
図16に示すように、「ZZ町1丁目」の面積が2km
2であり、かつ、顧客数(または人口でもよい)は100人であるのに対し、「ZZ町2丁目」の面積は10km
2であり、かつ、顧客数は110人であるケースを想定する。
【0023】
この場合、顧客密度は、「ZZ町2丁目」(11人/km2)よりも「ZZ町1丁目」(50人/km2)の方が大きい。しかし、顧客数の絶対値は、「ZZ町1丁目」(100人)よりも「ZZ町2丁目」(110人)の方が大きいので、ヒートマップにおいては、例えば、「ZZ町2丁目」が「赤」で表示され、「ZZ町1丁目」は「青」で表示される結果になる。
【0024】
そのため、実際には「ZZ町2丁目」よりも「ZZ町1丁目」に店舗Aの顧客が集中的に分布しているにも関わらず、「赤」で表示された「ZZ町2丁目」に店舗Aの顧客が集中的に分布しているかのような逆転現象が生じて誤解が生じ得る。
【0025】
行政界データ(例えば、町丁目データ)は、都市部のような人口集中地区では町丁目の区割り面積が小さく、地方部では町丁目の区割り面積が大きい傾向にある。そのため、面積の異なる町丁目が混在するような地域に関して、上述のような誤解が生じやすい。仮に、個々の町丁目の面積が一定であれば同じ顧客数の町丁目について顧客密度も同じになるため、このような誤解は生じにくい。
【0026】
したがって、例えば、個々の町丁目の面積を一定(同じ)とした表現手法としてメッシュデータに基づくヒートマップを利用することで、上述のような誤解が生じることを抑止または低減できる。別言すると、自社の顧客データから作成した行政界データをメッシュデータに変換することで、誰にでも視覚的に把握しやすく誤解の生じにくいヒートマップを提供できる。
【0027】
ここで、例えば、会員の住所データを基にした行政界データへの集計は比較的に簡単であるが、行政界データにおける地域の区割りとは必ずしも整合しないメッシュデータへの集計は簡単ではない。そこで、行政界データをメッシュデータへ変換することに需要がある。このようなデータの変換に係る処理または作業は「配布」と称されることがある。「配布」という用語は、「配分」、「割り当て」、「関連付け」、「紐づけ」といった他の用語に相互に読み替えられてもよい。
【0028】
ここで、非特許文献1に記載の方法において、町丁目の「人口データ」に代えて、町丁目の「会員数(または顧客数)データ」を適用することで、「会員数データ」をメッシュデータに配布することが検討され得る。しかしながら、非特許文献1の方法では、既述のとおり、「建物用地」に分類されるメッシュへの等配分であるため、得られるメッシュデータの精度に関して改善の余地がある。
【0029】
例えば、県境のような町丁目間の境界が含まれるメッシュでは、境界によって町丁目の地域が部分的に欠けるため、境界が含まれないメッシュよりも、メッシュ内において町丁目の地域の占める面積割合が小さくなる。
【0030】
そのため、メッシュ内において町丁目地域が占める面積の比率(以下「面積比」と略称することがある)を考慮せずに、「会員数データ」を個々のメッシュに等配分した場合、メッシュに配布された会員数に大きな誤差が生じる。そのため、メッシュ単位の人数をヒートマップにて表示した場合、
図16により上述したような誤解が生じ得る。
【0031】
そこで、以下においては、例えば、メッシュ内において町丁目地域が占める面積比に応じてメッシュに配布するデータを決定(例えば、按分)することで、精度が改善されたメッシュデータの提供に資する非限定的な実施形態について説明する。
【0032】
[システム構成例]
図1は、一実施形態に係るデータ処理システム1の一例を示す図である。
図1に示すデータ処理システム1は、例示的に、ネットワーク(NW)50介して相互に通信可能に接続された、ID-POSシステム10、行政界データサーバ20、人流データサーバ30、コンピュータ40を備える。コンピュータ40には、例えば、コンピュータ40の出力を表示するディスプレイ41が接続される。
【0033】
ID-POSシステム10は、例えば、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアといった、小売業を営む店舗に設置され、店舗に来訪した顧客の購買データを基に顧客の購買行動を調査、分析することに用いられる。ここで、ID-POSシステム10において得られる購買データは、顧客情報(例えば、顧客の年齢、性別、住所といった顧客の属性情報)と関連付け(または「紐づけ」)られる。顧客の属性情報と紐づけられた購買データは、「ID-POSデータ」と称されてよい。
【0034】
図2は、特定の行政界地域内に所在する店舗XにおけるID-POSデータの一例を示す図である。
図2に示すように、店舗XのID-POSデータは、例示的に、顧客(又は会員)IDの別に、年齢、性別、郵便番号、住所といった顧客属性情報に、購買の日時、購買商品、個数、金額といった購買データが紐づけられたデータである。なお、複数の店舗のID-POSデータが集約的に管理される場合、ID-POSデータには、店舗ごとのIDを示す情報が付与されてよい。
【0035】
なお、ID-POSデータにおいて、郵便番号および住所の一方または双方は省略されてもよいし、住所については例えば市区町村までの情報あるいは大字までの情報であってもよい。
図3(A)および
図3(B)は、郵便番号および住所のうち郵便番号が省略されたID-POSデータの例を示し、
図3(A)では住所が市区町村までの情報に留められ、
図3(B)では住所が市区町村までの情報に留められている。
図3(C)は、郵便番号および住所のうち住所が省略されたID-POSデータの例を示す。
【0036】
このように、ID-POSデータは、例えば、「いつ」、「だれが」、「どこで」、「何を」、「何といっしょに」、「何個」、「いくらで」、購入したのかを特定可能なデータである。店舗Xは、このようなID-POSデータを例えば売上向上のための分析に用いることができる。
【0037】
なお、ID-POSデータのような、企業または店舗が自社の顧客または来訪者に関して収集し保有するデータを「顧客データ」または「第1パーティデータ(1st party data)」と称することがある。「第1パーティデータ」に対して「第2パーティデータ(2nd party data)」および「第3パーティデータ(3rd party data)」と呼ばれるデータもある。
【0038】
「第2パーティデータ」および「第3パーティデータ」は、何れも自社データとは異なり、企業等が外部から提供を受けるデータである。例えば、「第2パーティデータ」は、自社と提携関係にあるような他の企業や機関等から提供を受けるデータであり、「第3パーティデータ」は、自社および自社と提携関係にない企業や機関等の第三者から提供を受けるデータである。行政界データサーバ20が提供する行政界データおよび人流データサーバ30が提供する人流データは、例えば、「第2パーティデータ」または「第3パーティデータ」に該当し得る。
【0039】
顧客データにおいて、年齢、性別、住所、家族構成といった「だれが」を特定可能な情報は、例えば、会員カードやポイントカードを発行する店舗Xにおいて顧客が入会または登録の手続きの際にアンケート等の回答として提示する情報から取得されてよい。ただし、住所に関しては、個人情報保護の観点から、店舗Xは、地番レベルの情報は顧客に要求せず、町丁目または郵便番号といったレベルの情報に留められてよい。
【0040】
店舗Xは、例えば、ID-POSデータの住所情報を基に、顧客(購買者)が「どこから(from)」店舗Xに来訪したのかを分析できるため、顧客の居住地域の相違による購買行動の相違を分析可能である。なお、この分析は「来訪者居住地分析およびFrom分析」と表記され得る。
【0041】
この分析によって、例えば、居住地により「aa製品」は競合店舗において購入され易いといった地域差を把握し得る。また、高層マンションが多い地域では富裕層かつ特定の世代が集中している傾向にあるため、他の地域に比べて「bb製品」の売れ行きがよいといった地域差も把握し得る。
【0042】
ここで、従来は行政界別(または郵便番号別)のID-POSデータに基づく分析(例えば、売上データの分析)が主流であった。これに対し、本実施形態においては、メッシュ単位のID-POSデータの分析を可能とし、視覚的に理解しやすく誤解の生じにくいメッシュ単位のデータ表示を可能とする。なお、ID-POSデータに代えて、または追加して、顧客の会員カードやポイントカードの登録情報、アンケートの回答情報等が分析に用いられてもよい。
【0043】
図1に戻り、行政界データサーバ20は、例えば、都道府県別、市区町村別、大字別、町丁目別、または、町丁字別といった、地図データにおいて行政界に区分された地域のデータ(以下「行政界データ」と称する)を記憶、管理するサーバコンピュータである。
【0044】
行政界データは、地理的または空間的な位置に数値データ等が関連付けられた情報(地理空間情報)の一例である。行政界データサーバ20が提供する行政界データは、公的な機関の管理下にあるデータであってもよいし、民間の企業や機関の管理下にあるデータであってもよい。
【0045】
人流データサーバ30は、例えば、行政界の何れかの地域における人流データを記憶、管理するサーバコンピュータである。なお、人流データサーバ30と行政界データサーバ20とは機能的に1つのサーバに統合されていてもよい。
【0046】
「人流データ」は、例えば、「人」または人が所持する「モノ」の移動や滞在に関するデータであり、センサ、カメラ、スマートフォン、基地局(またはアクセスポイント)といった機器を利用して取得され得る。「人流データ」の取得には、地理的または空間的な範囲に応じて、例えば、同一種類の複数の機器が使用されてもよいし、異なる種類の複数の機器が組み合わせて(または、相互補完的に)使用されてもよい。
【0047】
「人流データ」は、例えば、スマートフォンのような携帯端末に固有の識別子(端末ID)の1つを1人と考え、端末IDの別に位置情報に基づく移動履歴をデータベース(DB)化することによって得られる。また、
図8により後述する店舗Xに関する「人流メッシュデータ」は、例えば、次のようにして得られる。
【0048】
・端末IDの移動履歴DBにおいて、端末ID(人物)が夜間などにおいて数時間といった長時間(第1の基準時間)以上にわたって滞在した場所(例えば、メッシュ)をその人物の居住地域メッシュと推定する。
・店舗Xの敷地内に例えば10分以上といった一定時間(第2の基準時間)以上にわたって滞在した端末ID(人物)を店舗Xの来訪者として1カウントとカウントし、その端末IDと、当該端末IDについて推定された居住地域メッシュとを紐づける。
【0049】
なお、第1の基準時間および第2の基準時間の一方または双方は、例えば、人流データサーバ30またはコンピュータ40においてユーザによって指定可能である。また、端末IDのカウント方法については、例えば、以下の(1)または(2)に示す例が挙げられる。(1)または(2)に示すカウント方法は、例えば、人流データサーバ30またはコンピュータ40においてユーザによって指定(選択)可能である。
【0050】
(1)特定の期間(例えば、1日)において同じ端末IDが複数回にわたって店舗Xを訪問した場合であっても1カウントとする。
(2)特定の期間(例えば、1日)において同じ端末IDが複数回にわたって店舗Xを訪問した場合は、累計カウント(延べカウント)とする。
【0051】
「人流データ」には、例示的に、「カウントデータ」、「滞留データ」、「ODデータ」、および、「移動軌跡データ」と称される複数種類のデータの何れか1つまたは2以上の任意の組み合わせが含まれてよい。
【0052】
「カウントデータ」は、例えば、特定の地点を通過した人数を示すデータ(例えば、通行量データ)であり、時間別または移動方向別に取得され得る。「滞留データ」は、例えば、特定の地点または空間内に一定時間留まっている人数を示すデータであり、時間別に取得され得る。
【0053】
「ODデータ」は、例えば、出発地点(origination)から目的地(到着地:destination)へ移動した人数を示すデータであり、2地点間の人の流れ(経路は不問)を把握、分析する場合に利用され得る。「移動軌跡データ」は、例えば、特定の地理的または空間的な範囲内における個人の移動軌跡を示すデータである。
【0054】
本実施形態において利用する人流データは、例示的に、行政界の特定の地域(例えば、店舗Xが所在する町丁目地域)におけるODデータと滞留データとを含んでよい。ODデータと滞留データとを含む「人流データ」によって、例えば、店舗Xが所在する町丁目地域において、1つまたは複数の第1の地点(出発地)から第2の地点(例えば、目的地である店舗X)へ来訪した人数を把握することが可能である。
【0055】
このような人流データは、非限定的な一例として、移動体通信事業者において基地局(またはアクセスポイント)を通じて得られる携帯端末の位置情報を利用したデータまたはその加工データであってよい。加工データは、例えば、個人情報保護またはプライバシー保護の観点から、個人および地番レベルの住所といった個人を特定可能な情報を除去または隠蔽したデータである。
【0056】
人流データを基に、例えば、店舗Xの営業時間帯において店舗Xに一定時間滞在した来訪者の人数を推定でき、また、店舗Xの営業時間外(例えば、夜間)の滞留時間を基に店舗Xへ来訪した人の居住地(「どこから」来訪したのか)を推定できる。
【0057】
なお、特定の日時または時間帯における人流データから推定される店舗Xへの来訪者の人数には、店舗Xの非会員である来訪者の人数が含まれる可能性があり、また、商品等を購入しなかった来訪者の人数が含まれる可能性もある。そのため、特定の日時または時間帯において、人流データから推定される来訪者数は、ID-POSデータから得られる顧客数とは必ずしも一致しない。
【0058】
しかしながら、町丁目地域において現実に店舗Xへ来訪した平均的な人数や店舗Xへ来訪した人が町丁目地域内の「どこ」(出発地)から来訪したかという地理的な分布の傾向は十分に把握できる。
【0059】
したがって、人流データサーバ30は、例えば、町丁目地域を複数のメッシュに区分したメッシュの別に、当該メッシュに属する地点を出発地(または推定される居住地)として店舗Xに来訪した人数を割り当てたデータを生成できる。このデータが「人流メッシュデータ」の一例である。なお、このような人流メッシュデータは、便宜的に、「来訪者居住者データ(メッシュfromデータ)」と称されてもよい。
【0060】
人流データサーバ30は、例えば一辺の長さが1km、500m、250m、125m、100m、50mといった異なるサイズ(細かさ又は粒度)の人流メッシュデータを(例えば、コンピュータ40に)提供し得る。なお、人流メッシュデータは、例えば、人流データの提供を受けたコンピュータ40において生成されてもよい。
【0061】
人流メッシュデータのメッシュサイズは、例えば、携帯端末の位置情報を扱う移動体通信事業者などにおけるデータの提供基準や、データの提供を受ける側(例えば、コンピュータ40)のデータ処理能力に応じて定められてよい。例えば、50mメッシュではデータ容量が大きすぎて処理負荷または処理時間が許容値を超えるおそれがあるため、125mメッシュ、250mメッシュ、または500mメッシュといった、よりデータ容量の小さいメッシュサイズが適用されてよい。
【0062】
なお、移動通信事業者が「個人情報を特定できないようにサマリーできている」と判断する最小のメッシュサイズは、50mメッシュであると云われている。したがって、50mメッシュ以上のメッシュサイズであれば、人流メッシュデータに対して個人情報の除去または隠蔽といったデータ加工を個別に行う必要はない。
【0063】
コンピュータ40は、データ処理装置の一例であって、例えば、NW50を介してID-POSシステム10、行政界データサーバ20、および、人流データサーバ30と通信して、ID-POSデータ、行政界データ、および、人流データを取得して処理する。なお、NW50は、無線および有線の何れのネットワークでもよく、無線および有線が混在したネットワークでもよい。
【0064】
そして、コンピュータ40は、例えば、ID-POSデータと行政界データとを基に、店舗Xの売上データを町丁目別に集計した町丁目売上データを生成し、生成した町丁目売上データをメッシュデータに変換(または配布)する。
【0065】
なお、町丁目売上データは、コンピュータ40とは異なる他のコンピュータにおいて生成されてコンピュータ40に受信または入力されることとしてもよい。コンピュータ40は、サーバコンピュータであってもよいし、クライアントコンピュータであってもよい。コンピュータ40によって実行される処理は、例えば、コンピュータ40を含む複数のコンピュータに分散して実行されてもよい。複数のコンピュータは、例えば、仮想化技術によって仮想化されたクラウドサーバ群であってもよい。
【0066】
[コンピュータ40の構成例]
上述したようなデータの変換(または配布)機能に着目したコンピュータ40の構成例を
図4に示す。
図4は、一実施形態に係るデータ処理装置の一例としてのコンピュータ40の機能的な構成例を示すブロック図である。
【0067】
図4に示すように、コンピュータ40は、例えば、データ取得部401、処理部402、データ出力部403、および、記憶部404を備える。なお、以下において、「~部」という用語は、「~回路」、「~ブロック」、「~モジュール」、「~手段」といった他の用語に相互に読み替えられてもよい。
【0068】
データ取得部401は、例えば、NW50を介して、ID-POSシステム10、行政界データサーバ20、および、人流データサーバ30から、それぞれ、ID-POSデータ、行政界データ、および、人流データを取得する。これらのデータは、例えば、記憶部404に一時的に記憶されてよい。
【0069】
処理部402は、データ取得部401によって取得されたデータを処理することにより、例えば、行政界データに基づく町丁目売上データをメッシュデータに変換する。ここで、この変換によって得られる町丁目売上メッシュデータは、後述するように、町丁目地域の人流メッシュデータと、個々のメッシュにおいて町丁目地域が占める面積比とに基づいて生成される。そのため、町丁目地域とメッシュとの間の面積比の不整合に起因して生じ得る誤差を抑制でき、町丁目売上メッシュデータの精度を高めることができる。
【0070】
非限定的な一例として、処理部402は、
図4に示すように、面積比率決定部421、按分データ生成部422、メッシュ構成比率決定部423、および、データ配布部424を備える。
【0071】
面積比率決定部421は、例えば、店舗Xが所在する町丁目地域を複数のメッシュに区分した個々のメッシュにおいて町丁目地域が占める面積比を決定する。なお、店舗Xが所在する町丁目地域を便宜的に「町丁目X」と表記することがある。
【0072】
面積比は、
図5および
図6により後述するように、例えば、町丁目Xの平面視形状に対応したポリゴンデータ(以下「町丁目ポリゴン」と略称する)と、当該町丁目Xを複数のメッシュに区分するメッシュデータとを用いた画像処理に基づいて決定される。なお、ポリゴンデータとは、区画を表現する多角形の面データの一例であり、「区画データ」と称されてもよい。
【0073】
按分データ生成部422は、人流メッシュデータと、面積比率決定部421によって決定された面積比とに基づいて、人流メッシュデータにおける個々のメッシュについての人流データを面積比に応じて按分したメッシュデータを生成する。
【0074】
「人流メッシュデータ」は、
図7により後述するように、何れかのメッシュを出発地(from)として店舗Xへ来訪した人数が出発地の別に、すなわち個々のメッシュに割り当てられたデータである。このような「人流メッシュデータ」は、便宜的に、「来訪者居住者データ(メッシュfromデータ)」と称されてよい。
【0075】
按分データ生成部422は、例えば、「来訪者居住者データ(メッシュfromデータ)」において個々のメッシュの人数に、対応するメッシュについての面積比を乗じることにより、個々のメッシュの人数を面積比によって按分する。按分処理の一例については、
図8により後述する。
【0076】
メッシュ構成比率決定部423は、例えば、按分後の人流メッシュデータに基づいて、町丁目(ポリゴン)の全体を「1(100%)」として、按分後の個々のメッシュにおける人流データ(来訪者数)の構成比率を決定する。構成比率の決定処理の一例については、
図8および
図9により後述する。
【0077】
データ配布部424は、例えば、町丁目Xの売上データSを、メッシュ構成比率決定部423において決定された構成比に応じて個々のメッシュに配布して町丁目売上メッシュデータを生成する。この配布処理の一例については、
図9および
図10により後述する。
【0078】
なお、上述した処理部402における各部421~424の機能は、一部または全部が1つのブロックに統合されてもよい。
【0079】
データ出力部403は、例えば、処理部402による処理結果をディスプレイ41に出力する。データ出力部403は、例えば、データ配布部424による処理結果である町丁目売上メッシュデータをディスプレイ41に出力して表示させる。
【0080】
なお、データ出力部403は、面積比率決定部421、按分データ生成部422、および、メッシュ構成比率決定部423の何れか1つ以上の処理結果をディスプレイ41に出力してもよい。これらの各部421~423の何れか1つ以上の処理結果がディスプレイ41に表示されることで、例えば、町丁目売上メッシュデータが得られる途中の処理過程の一部または全部を視覚的に確認できる。
【0081】
また、データ出力部403は、ディスプレイ41に表示するデータの表示態様を制御する表示制御部として機能してもよい。例えば、表示制御部としてのデータ出力部403は、町丁目売上メッシュデータM5をヒートマップ形式によってディスプレイ41に表示させてよい。
【0082】
非限定的な一例として、表示制御部403は、売上データが高いメッシュに属する町丁目地域(別言すると、町丁目ポリゴン領域)ほど暖色系の色を表示色に設定してよい。また、表示制御部403は、例えば、売上データが低いメッシュに属する町丁目ポリゴン領域ほど寒色系の色を表示色に設定してよい。
【0083】
記憶部404は、例えば、データ取得部401によって取得されたデータ、コンピュータ40を上述したデータ取得部401、処理部402、および、データ出力部403としての機能させるためのプログラムやデータを記憶する。なお、例えば、コンピュータ40の処理部402において、「人流メッシュデータ」を生成する場合、データ取得部401を通じて記憶部404に、既述の第1の基準時間および第2の基準時間の一方または双方を指定する情報が記憶されてよく、また、既述の端末IDのカウント方法を指定する情報が記憶されてよい。
【0084】
[動作例]
以下、上述のごとく構成されたコンピュータ40の動作例(例えば、行政界データの一例である町丁目データをメッシュデータに配布する処理例)について、
図5~
図12を参照して説明する。
【0085】
図5は、コンピュータ40の動作例を示すフローチャートであり、
図6~
図12は、町丁目データをメッシュデータに配布する処理において用いられるデータの一例を示す図である。なお、
図6~
図12は、それぞれ、ディスプレイ41におけるデータの表示画面例に相当すると理解されてもよい。
【0086】
図5に例示するように、コンピュータ40は、データ取得部401によってデータを取得する(S10)。取得するデータは、例示的に、
図6に例示するような町丁目Xのポリゴンデータ(町丁目ポリゴン)Px、
図7に例示するような、町丁目ポリゴンをメッシュ状に区分するメッシュ区画データM1、および、
図8に例示するような人流メッシュデータM2である。なお、
図6において、町丁目ポリゴンPxには町丁目の売上(sales)データS(例えば、S=28,425,000円)が付記されている。
図6に示した町丁目ポリゴンPは、町丁目別の売上データSが紐づけられたデータであると理解されてよい。
【0087】
データ取得部401は、取得した各種データを面積比率決定部421に入力する。面積比率決定部421は、例えば、町丁目ポリゴンPxを
図7に示すようにメッシュ区画データM1と重畳する。重畳画像データにおいて、面積比率決定部421は、例えば、1メッシュあたりの画素数に対して町丁目ポリゴンPの画素数が占める割合を検出することにより、個々の区画(メッシュ)に含まれる町丁目ポリゴンの面積比を決定する(
図5のS20)。
【0088】
例えば
図7において、町丁目ポリゴンPを4×4=16のメッシュ#1~#16に区分した場合、面積比率決定部421は、例えば、町丁目ポリゴンPの外縁(別言すると、町丁目の境界)に相当する線分(「ポリライン」ともいう)を含むメッシュ#iを検出する。なお、iは、1≦i≦16を満たす整数である。
図7の例では、12個のメッシュ#1~#5、#8、#9、#12~#16がポリラインを含むメッシュが検出される。
【0089】
これら12個のメッシュのそれぞれにおいては、「メッシュの画素数>町丁目ポリゴンの画素数」であるため、メッシュ#1~#5、#8、#9、#12~#16それぞれについての面積比は、100%未満である。非限定的な一例として、面積比率決定部421は、
図7の例において、12個のメッシュ#1~#5、#8、#9、#12~#16それぞれについての面積比を、5%、75%、93%、35%、81%、48%、65%、19%、2%、27%と決定する。
【0090】
町丁目ポリゴンPの中央部分に対応する残りの4個のメッシュ#6、#7、#10、#11のそれぞれは、ポリラインを含まないため、「メッシュの画素数=町丁目ポリゴンの画素数」である。したがって、面積比率決定部421は、ポリラインを含むメッシュとして検出しなかったメッシュ#6、#7、#10、#11のそれぞれについて、面積比を100%と決定してよい。
【0091】
このように、面積比の決定処理において、ポリラインを含むメッシュとして検出されないメッシュの面積比を100%と決定することで、全てのメッシュについて個別的に面積比を決定する場合に比して、処理負荷を軽減できる。なお、面積比の決定は、代替的に、例えば空間演算処理によって行われてもよい。
【0092】
面積比の決定後、処理部402は、例えば、按分データ生成部422による処理を実施する(
図5のS30)。按分データ生成部422は、
図8に示すような人流メッシュデータM2と、上述したように決定された面積比とに基づいて、個々のメッシュ#iについての人流データを面積比に応じて按分したメッシュデータM3を生成する。
【0093】
図8に例示した人流メッシュデータM2は、メッシュ#iを出発地(from)として店舗Xへ来訪した人数が出発地の別に、すなわち個々のメッシュ#iに割り当てられたデータであり、便宜的に、「来訪者居住者データ(メッシュfromデータ)」と称されてよい。例えば
図8において、メッシュ#1を出発地として店舗Xへ来訪した人数は「329」人であり、メッシュ#2を出発地として店舗Aへ来訪した人数は「108」人である。他のメッシュ#3~#16についても同様である。
【0094】
按分データ生成部422は、例えば、人流メッシュデータM2において個々のメッシュ#iの人数に、
図7に例示したように決定した、対応するメッシュ#iの面積比(%)を乗じることにより、メッシュ#iの人数を面積比によって按分する。
図9に、按分後の人流メッシュデータM3の一例を示す。
【0095】
例えば
図9において、
図8に例示したメッシュ#1の人数(329人)は、
図7に例示したメッシュ#1の面積比5%が乗じられることにより、約16.5人となる。同様に、メッシュ#2の人数(108人)は、
図7に例示したメッシュ#1の面積比75%が乗じられることにより、約81人となる。他のメッシュ#3~#16についても同様である。
【0096】
なお、メッシュ#6、#7、#10、#11については、何れも面積比が100%であるため、それぞれ、
図9において
図8に例示した人数(138人、203人、48人、38人)から変わりない。按分後の各メッシュ#1~#16の人数の合計は1468人である。
【0097】
按分処理の後、処理部402は、例えば、メッシュ構成比率決定部423による処理を実施する(
図5のS40)。例えば、メッシュ構成比率決定部423は、按分後の人流メッシュデータM3に基づいて、町丁目(ポリゴン)の全体を「1(100%)」として、按分後の個々のメッシュ#iにおける人流データ(来訪者数)の構成比率を決定する。
図10に、
図9の人流メッシュデータM3を基に決定したメッシュ構成比データM4の一例を示す。
【0098】
例えば
図10において、メッシュ#1についての構成比率は、[16.5(人)÷1468(人)]×100(%)≒1.12%となり、メッシュ#2についての構成比率は、[81.0(人)÷1468(人)]×100(%)≒5.52%となる。他のメッシュ#3~#16についても同様である。
【0099】
構成比率の決定後、処理部402は、例えば、データ配布部424による処理を実施する(
図5のS50)。例えば、データ配布部424は、町丁目Xの売上データSを、メッシュ構成比率決定部423において決定された構成比に応じて個々のメッシュ#iに配布する。
図11に、
図5の売上データS(例えば、28,425,000円)を、
図10に例示したメッシュ#iごとの構成比に応じて配布した町丁目売上メッシュデータM5の一例を示す。なお、
図11においてメッシュ#iのそれぞれに付記した売上データの数値単位は[千円]である。
【0100】
配布処理の後、処理部402は、例えば、データ出力部403によって、処理結果をディスプレイ41に出力する(
図5のS60)。例えば、データ出力部403は、データ配布部424による配布結果である町丁目売上メッシュデータM5をディスプレイ41に出力して表示させる。
【0101】
なお、データ出力部403は、面積比率決定部421、按分データ生成部422、および、メッシュ構成比率決定部423の何れか1つ以上の処理結果をディスプレイ41に出力してもよい。これらの各部421~423の何れか1つ以上の処理結果がディスプレイ41に表示されることで、例えば、町丁目売上メッシュデータM5が得られるまでの処理過程の一部または全部を視覚的に確認できる。
【0102】
また、データ出力部403は、ディスプレイ41に表示するデータの表示態様を制御する表示制御部として機能してもよい。例えば、表示制御部として機能するデータ出力部403は、町丁目売上メッシュデータM5をヒートマップ形式によってディスプレイ41に表示させる。
【0103】
例えば、表示制御部403は、売上データが高いメッシュ#iに属する町丁目地域(別言すると、町丁目ポリゴン領域)ほど暖色系の色を表示色に設定し、売上データが低いメッシュ#jに属する町丁目ポリゴン領域ほど寒色系の色を表示色に設定する。なお、「j」は、j≠iかつ1≦j≦16を満たす整数である。色分けの基準となる売上データの閾値または範囲は、例えば、データ取得部401を通じて取得された設定データ、または、記憶部404に予め記憶された設定データによって設定されてよい。
【0104】
図12に、
図11に例示した町丁目売上メッシュデータM5をヒートマップ形式によって表示した例を示す。
図12においては、例えば、売上データS>300万円を満たすメッシュ#5、#7、#14に属する町長目地域は「赤」で表示され、250万円≦S<300万円を満たすメッシュ#6、#8、#9に属する町丁目地域は「オレンジ」で表示される。また、S<150万円を満たすメッシュ#10~#13、#15、#16にそれぞれ属する町丁目地域は、「水色」、「青」といった寒色系の色によって表示される。
【0105】
このようなヒートマップ形式による表示態様によれば、町丁目内において店舗Xの売上に対する貢献度の高い地域と低い地域とを視覚的かつ直感的に把握できる。したがって、例えば、店舗Xは、売上貢献度が相対的に低い地域に対して優先的に集客のための販促を効率的に実施できる。
【0106】
ここで、
図7~
図9にて説明したとおり、個々のメッシュ#iについての売上データは、メッシュ単位の人流データを個々のメッシュ#iにおいて町丁目地域が占める面積比率に応じて按分したデータに基づいて求められる。
【0107】
そのため、
図14~
図16を用いて説明したような数値データの逆転現象を防止または抑制でき、したがって、例えば、ヒートマップ形式の表示態様において暖色系と寒色系との色分けに逆転現象が生じて数値データの把握に誤解が生じることを防止または抑制できる。
【0108】
[補足事項]
上述した実施形態においては、メッシュ単位の数値データの強調表示形式としてヒートマップ形式を用いる例について示したが、これに限られず、その他の強調表示形式がメッシュ単位の数値データの強調表示に用いられてもよい。
【0109】
また、上述した実施形態においては、行政界データの一例として町丁目別に区分されたデータついて示したが、例えば、県別、市区町村別、大字別、または、町丁字(ちょうちょうあざ)別、郵便番号よって区分されたエリア(郵便番号エリア)別に区分されたデータについて上述した実施形態が適用されてもよい。
【0110】
さらに、上述した実施形態においては、町丁目Xにおける売上データSを数値データの一例としてメッシュ#iに配布する例を示したが、その他の数値データ、例えば、町丁目Xにおける顧客数(または会員数)がメッシュ#iに配布されてもよい。
【0111】
町丁目Xの売上データSは、ID-POSシステム10とは異なるシステム、例えば、顧客の属性情報は収集しないPOSシステムや、その他の販売管理システムによって収集、取得されたデータであってもよい。
【0112】
また、売上データSは、例えば、商品またはサービスの別に集計された売上データであってもよい。例えば、商品またはサービスの別の売上データSに本実施形態を適用した場合、どのような商品またはサービスの売れ行きが、町丁目Xにおけるどの地域(別言すると、メッシュ)において好調であるか不調であるかといった情報の視認性を向上できる。
【0113】
上述した実施形態において、店舗Xとの関係における人流データには、例えば、車両等の移動手段による人の流れ(移動)を示すデータが含まれてよい。例えば、車載の通信機器やセンサによって取得される位置情報を基にした車流データが人の流れを示す人流データとして扱われてもよい。
【0114】
また、店舗Xとの関係における人流データには、行政が公開する町丁目Xの人口・世帯数データと、店舗Xについての「ハフモデル」(Huff model)とを併用して得られるデータが用いられてもよい。
【0115】
「ハフモデル」は、例えば、店舗Xと顧客の居住地との距離、店舗Xが所在する地域における競合店舗の存在、店舗Xの規模(例えば、面積)といったパラメータを基に店舗Xの集客率(または吸引率)を推定する商圏分析手法の1つである。例えば、基地局を利用して得られる現実の人流データを取得または利用しにくいようなケースにおいて、「ハフモデル」を用いて推定したデータを人流データの代替に使用できる。
【0116】
「ハフモデル」を用いて推定した代替的な人流データは、既述の実施形態において使用した現実の人流データに比して、得られるメッシュデータの精度が低下し得る。しかし、例えば、生じ得る精度の低下が許容範囲内であると想定される場合や、簡便にメッシュデータへの配布結果を得たい場合などにおいては有用である。
【0117】
なお、例えば、吸引率を求めるためのパラメータに修正や改良を加えた「修正ハフモデル」や「アドバンスハフモデル」を用いることで、代替的な人流データの精度を向上させることもできる。
【0118】
上述した実施形態においては、1つの町丁目についてのデータ処理を説明したが、例えば、隣接する複数の町丁目についてもそれぞれに対応する町丁目ポリゴンを用いて町丁目別に同様のデータ処理を適用できる。例えば、
図5のS20において示した面積比の決定では、1つまたは複数のポリラインを含むメッシュを検出する。そして、当該メッシュ内においてポリラインによって区分されるポリゴン領域のそれぞれが異なる町丁目に属するものとして異なる町丁目別に面積比を決定する。
【0119】
また、上述した実施形態においては、行政界データの一例として町丁目別に区分されたデータを処理対象にした例について説明したが、例えば、「町丁目」を「都道府県」、「市区町村」、「大字」、「町丁字」、または「郵便番号エリア」に読み替えて上述した実施形態のデータ処理が適用されてもよい。
【0120】
[コンピュータ40のハードウェア構成例]
図13は、一実施形態に係るコンピュータ40のハードウェア構成例を示す図である。コンピュータ40は、物理的には、例えば、中央演算装置(CPU)4001、メモリ4002、記憶装置4003、入力装置4004、出力装置4005、および、通信装置4006を含んで構成されてよい。これらの装置は、例えば、バス4007によって相互に通信可能に接続される。
【0121】
なお、「装置」という用語は、回路、デバイス、ユニットといった他の用語に相互に読み替えられてもよい。コンピュータ40のハードウェア構成は、
図13に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0122】
コンピュータ40における各機能は、例えば、CPU4001が、メモリ4002または記憶装置4003からプログラムやプログラムの実行に伴って用いられるデータを読み込んで実行することによって実現される。CPU4001は、シングルコアCPUでもよいし、マルチコアCPUでもよい。
【0123】
プログラムは、CPU4001が読み込んで実行することによって上述した実施形態において説明したデータ処理装置としての機能または動作の少なくとも一部をコンピュータ40に実行させるプログラムである。例えば、
図4に示したデータ取得部401、処理部402、および、データ出力部403は、CPU4001が、
図5~
図12を用いて説明した動作例を具現するデータ処理プログラムを実行することによって実現されると理解されてよい。
【0124】
なお、プログラムは、例えば、記憶装置4003に予め記憶されていてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、またはネットワーク(電気通信回線)を通じてコンピュータ40において受信されもよい。また、プログラムは、コンピュータ40のオペレーティングシステム(OS)の一部として組み込まれてもよい。
【0125】
メモリ4002および記憶装置4003は、何れもコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例である。メモリ4002は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)といった記憶媒体の少なくとも1つによって構成されてよい。
【0126】
記憶装置4003は、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)のような光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、フラッシュメモリといった記憶媒体の少なくとも1つによって構成されてよい。
【0127】
入力装置4004は、外部機器からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置4005は、外部機器への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ41、スピーカなど)である。なお、入力装置4004および出力装置4005は、例えば、タッチパネルのように一体化された構成であってもよい。
【0128】
通信装置4006は、有線および無線のネットワークの一方または双方を介して外部機器(例えば、ID-POSシステム10、サーバ20、または、サーバ30)と通信するためのハードウェアデバイスである。通信装置4006は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、または、通信モジュールと称されてもよい。
【0129】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示を通じて説明した内容に本開示の趣旨および範囲が限定されないことは当業者に明らかである。本開示は、請求の範囲の記載によって定まる本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施可能である。したがって、本開示の記載は、例示的な説明を目的とし、本開示の趣旨および範囲に対して何らの制限的な意味を有さない。
【符号の説明】
【0130】
1 データ処理システム
10 ID-POSシステム
20 行政界データサーバ
30 人流データサーバ
40 コンピュータ(データ処理装置)
41 ディスプレイ
50 ネットワーク(NW)
401 データ取得部
402 処理部
403 データ出力部
404 記憶部
421 面積比率決定部
422 按分データ生成部
423 メッシュ構成比率決定部
424 データ配布部
4001 中央演算装置(CPU)
4002 メモリ
4003 記憶装置
4004 入力装置
4005 出力装置
4006 通信装置
4007 バス
Px ポリゴンデータ(町丁目ポリゴン)
M1 メッシュ区画データ
M2、M3、M4、M5 メッシュデータ
S 売上データ
【要約】
【課題】行政界データをメッシュデータに変換する際の精度を向上する。
【解決手段】データ処理装置4は、地図データにおいて行政界に区分された地域を複数のメッシュに区分した場合の、個々のメッシュにおいて地域が占める面積比率を決定する面積比率決定部421と、地域の人流データをメッシュの単位で面積比率に応じて按分した按分データを生成する按分データ生成部422と、按分データの複数のメッシュ全体に対する比率に基づいて、地域に関して集計された数値データを複数のメッシュに配分するデータ配分部423、424と、を備える。
【選択図】
図4