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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】発泡剤のマスターバッチ
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20241216BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J3/22 CET
C08J9/04 CES
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020520090
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015536
(87)【国際公開番号】W WO2020213457
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019080274
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】711008836
【氏名又は名称】鈴木 康公
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康公
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-081371(JP,A)
【文献】特開昭57-014629(JP,A)
【文献】特開平07-228721(JP,A)
【文献】特開2009-298996(JP,A)
【文献】特開平7-247366(JP,A)
【文献】特開平11-286645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
C08J 3/00-3/28
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形予定の成形用樹脂と相容(溶)性を示す樹脂によって製造されたワニスを用いて無機系発泡剤又は/及び有機系発泡剤の発泡剤の粉末を、発泡成形予定の前記成形用樹脂の表面、又は発泡成形予定の前記成形用樹脂と相容(溶)性を示す樹脂の表面に担持した、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項2】
請求項1に於いて、発泡成形予定の前記成形用樹脂がAS、ABS、又はこれらを主成分とする成形用樹脂であり、
有機溶剤を用いてAS又はABSを溶解したワニスを用いて、前記発泡剤の粉末を、発泡成形予定の前記成形用樹脂の表面、又は発泡成形予定の前記成形用樹脂と相容(溶)性を示す前記樹脂の表面に担持した、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項3】
請求項1に於いて、発泡成形予定の前記成形用樹脂がAS、ABS、又はこれらを主成分とする成形用樹脂であり、
有機溶剤を用いてAS又はABSを溶解したワニスに水分を加えてエマルジョン系、又はサスペンジョン系としたワニスを用いて、前記発泡剤の粉末を、発泡成形予定の前記成形用樹脂の表面、又は発泡成形予定の前記成形用樹脂と相容(溶)性を示す前記樹脂の表面に担持した、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項4】
請求項1に於いて、発泡成形予定の前記成形用樹脂がPS、HIPS、変性PPO(E)、又はこれらを主成分とする成形用樹脂であり、
有機溶剤を用いてPS又はHIPSを溶解したワニスを用いて、前記発泡剤の粉末を、発泡成形予定の前記成形用樹脂の表面、又は発泡成形予定の前記成形用樹脂と相容(溶)性を示す前記樹脂の表面に担持した、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項5】
請求項1に於いて、発泡成形予定の前記成形用樹脂がPS、HIPS、変性PPO(E)、又はこれらを主成分とする成形用樹脂であり、
有機溶剤を用いてPS又はHIPSを溶解したワニスに水分を加えてエマルジョン系、又はサスペンジョン系としたワニスを用いて、前記発泡剤の粉末を、発泡成形予定の前記成形用樹脂の表面、又は発泡成形予定の前記成形用樹脂と相容(溶)性を示す前記樹脂の表面に担持した、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに於いて、AS、ABS、PS、HIPS、又は変性PPO(E)と、相容(溶)性を示す、アクリル系樹脂、又はスチレン変性アクリル樹脂を主成分とするワニスを用いて、前記発泡剤の粉末を、発泡成形予定の前記成形用樹脂の表面、又は発泡成形予定の前記成形用樹脂と相容(溶)性を示す前記樹脂の表面に担持した、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項7】
請求項6の前記ワニスが、エマルジョン系、又はサスペンジョン系のワニスである、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項8】
請求項1に於いて、発泡成形予定の前記成形用樹脂がPP、又はPPを主成分とする成形用樹脂であり、
PPを酸変性して、有機溶剤に可溶とした、酸変性のPPのワニスを用いて、前記発泡剤の粉末を、発泡成形予定のPPの前記成形用樹脂の表面、又はPPと相容(溶)性を示す前記樹脂の表面に担持した、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項9】
請求項8の前記ワニスが、エマルジョン系、又はサスペンジョン系のワニスである、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項10】
発泡剤の粉末と、ワニスとだけを混ぜ合わせて、蒸発乾固して、造粒固化をして、造粒した、成形加工に使用する成形加工用の原料は、成分が前記発泡剤と、前記ワニスの樹脂とだけからなる、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項11】
前記請求項10の成形加工に使用する成形加工用の原料に於いて、前記発泡剤と、前記ワニスと、発泡成形予定の成形用樹脂の粉末、又は/及び発泡成形予定の前記成形用樹脂と相容(溶)性を示す樹脂の粉末とを用いて蒸発乾固して、固化して、造粒した、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【請求項12】
請求項1に於いて、前記発泡剤はADCA、HDCA、DPT、炭酸水素塩、又は中空気球を主成分とする、
発泡成形に使用する発泡剤のマスターバッチ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形(型)品を得る為(ため)に使用する発泡剤、発泡成形品の製造方法、発泡成形品の塗装方法、これ等生地となる発泡成形品の製造の手段、製造の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂(プラスチック)と発泡剤とからなる成形材料をインサートが配置された型内に未充填部を残してショート・ショットし、発泡剤の発泡による膨張力で未充填部を充填する発泡成形方法が記載されている。樹脂は、母材樹脂と、母材樹脂と同種で母材樹脂より低分子量の低分子量樹脂とからなる。
特許文献2には、発泡成形に於いて表面に発生するスワール・マーク{(発泡縞模様)略号;SM}を抑える手段のガス・カウンター・プレッシャー(略号;GCP)法と、その金型構造が説明され、U字形状のOリングの使用が記載されている。
文献3には、車両部品のバンパーに前処理に関しての記載があるが、発泡成形で、重曹、又(また)は重曹を含む発泡剤で、発泡成形品の表面を綺麗にする手段にGCPを用いたモノ(物、成形品など)まで限定した記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-103919号公報
【文献】特開平11-216748号公報
【文献3】
【0004】
塗装工学:Vol.27 No.11(1992)

「プラスチックバンパーの低公害表面処理について」吉田佑一;ページ505(21)からページ511(27)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、表面は綺麗な発泡成形を得る事(こと)、発泡成形品の塗装を施し、塗膜の付着性を十分にさせる事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1の構成)
請求項1に係る第1発明は、シール金型内を0.6MPa以上で圧気して、その状態を維持しながら、発泡性樹脂を成形空間の90体積以上が充填された時点で、圧気の排気を開始する。
【0007】
(請求項1の作用)
請求項1に係る第1発明は、圧気の排気は、図38の様に、L、L、L其々にGCP装置が接続されている場合は、初めにL、又はLの何れか(一般には圧気の量が多いLが先)を排気し、続いてLを排気すると、断熱圧縮による変色・焼けをなくす事が出来る。
、L、LにGCP装置が1台繋がれた場合は、一気に90体積%に達した時に排気する。
【0008】
(請求項1の効果)
請求項1に係る第1発明は、成形空間への発泡性樹脂の充填が、90体積%以上充填された段階で、圧気の排気をすれば、圧気に起因するショート・モールド、変色・焼けのない発泡成形品が製造出来る。
【0009】
(請求項1の解説)
GCPは通常の成形に比べて、成形空間内の気体はその圧力分だけ多い。この圧気は発泡成形に於いて、表面の発泡を抑えるには有効な手段であるが、成形空間内への発泡性樹脂の充填には、邪魔モノ、ショート・モールド、変色・焼けの原因になる。樹脂の充填の力で成形空間以外の空間へ移動させる。成形空間に発泡性樹脂を一杯に充填をしなくても、早い段階で排気しても、製品の形状によっては表面が発泡して、スワール・マークが発生する事はない。
【0010】
(請求項2の効果)
請求項2に係る第2発明は、シール金型内を圧気して、発泡性樹脂を成形空間内に充填された時から、圧気の排気を開始する。
【0011】
(請求項2の作用)
請求項2に係る第2発明は、圧気の排気は、成形空間一杯に発泡性樹脂が充填された後に排気を開始するので、スワール・マークをなくし、表面が平滑で綺麗な外観の発泡成形品が得られる。
【0012】
(請求項2の効果)
請求項2に係る第2発明は、排気の時期が、成形空間内に発泡性樹脂が一杯に充填された後に排気を開始するので、表面にスワール・マークは抑え込める。
排気の時期は、成形空間内に発泡性樹脂に充填の途中か、成形空間一杯に充填された後とする。排気時期は成形品形状によって変更をするので、スワール・マークのない、然もショート・モールド、変色・焼けのない発泡成形品の製造が出来る。
【0013】
(請求項2の解説)
図38の様に、L、L、L其々にGCP装置が接続されている場合は、初めにL、又はLの何れか(一般には圧気の量が多いLが先)を排気し、続いてLを排気する。排気のタイミングをずらす。
成形空間の圧気は樹脂の充填の力で、他の場所に(L、L、GCP装置、GCPのホースの中)に押し込まれるので、充填される発泡性樹脂の先端部に掛かる圧力はそれ程は高くならない。結果スワール・マークのない、然もショート・モールドのない発泡成形品が得られる。充填の力によって成形空間内の圧気を他の場所に移送する事を本発明では「トランスファー」と言う。
【0014】
(請求項3の構成)
請求項3に係る第3発明は、発泡成形品の発泡倍率を高める手段として、GCPの排気の開始と同時に金型を後退させ、モールド・バック、又は/及びコア・バックを行う。
【0015】
(請求項3の作用)
請求項3に係る第3発明は、GCPを用いて表面平滑な発泡成形後に、内部が未だ冷却・固化が完了していない時にモールド・バック、又は/及びコア・バックをする事で、スワール・マークのない表面は平滑で、高い発泡倍率の成形品の製造が出来る。
又GCPの排気と同時にモールド・バック、又は/及びコア・バックを行う事で、レイン・ドロップをなくす事も出来る。
【0016】
(請求項3の効果)
請求項3に係る第3発明は、発泡倍率の高い発泡成形品を得られるので、材料費の低減などの経済的な効果を奏する。
【0017】
(請求項3の解説)
請求項3に係る第3発明は、GCPの排気の開始と同時にモールド・バック、又は/及びコア・バックを行う事で、GCPの排気弁以外にPLを開く事でガスベントは作られ、圧気が一気に排気されるので、圧気に起因するレイン・ドロップのない綺麗な外観の発泡成形品が得られる。
【0018】
(請求項4の構成)
モールド・バック、又は/及びコア・バックを金型の固定側で行う。
【0019】
(請求項4の作用)
モールド・バック、又は/及びコア・バックを金型の固定側で行う事も可能で、可動側の場合と同様に、発泡倍率の高い発泡成形品が得られる。
【0020】
(請求項4の効果)
金型の構造(例えば3枚型で、ストリッパー・プレートを持つ金型など)から、固定側でのモールド・バック、又は/及びコア・バックを固定側で行う事の方が金型の機構を簡単に出来る。
【0021】
(請求項4の解説)
バネなどの機構を金型に入れて、成形機(本発明で「成形機」とは、主には射出成形機、射出成形機とよく似た加工をする機械を含む。)ダイプレートを後退させ、金型を開く時に、固定側の金型が後退をする機構を持たせてある。
【0022】
(請求項5の構成)
請求項5に係る第5発明は、成形機ダイプレートを後退させ、金型を開く時に、可動側と固定側の金型とが後退して、モールド・バック、又は/及びコア・バックをする機構を、金型と、成形機とに持たせてある。
【0023】
(請求項5の作用)
請求項5に係る第5発明は、可動側と、固定側とをモールド・バック、又は/及びコア・バックをするので、発泡倍率をより高める事が出来る。
【0024】
(請求項5の効果)
請求項5に係る第5発明は、可動側と、固定側とをモールド・バック、又は/及びコア・バック、片側だけの場合よりも更に高い発泡倍率の成形品が得られる。
【0025】
(請求項5の解説)
モールド・バック、又は/及びコア・バックを可動側、固定側との両方で行う。後退の順番は同時でも良いが、時間差を付ける場合もある。
【0026】
(請求項6の構成)
GCPを排気して、モールド・バック、又は/及びコア・バックと同時に、シール金型内の真空引きを行う。成形空間Lの樹脂と金型の隙間に巻き込まれた圧気を真空引きする。
【0027】
(請求項6の作用)
請求項6に係る第6発明は、レイン・ドロップをなくし、綺麗な外観の発泡成形品を得るには、樹脂と金型に入り込んだ圧気を急速に排気する。更に真空引きをする事で更に排気の速度が上げられる。
【0028】
(請求項6の効果)
請求項6に係る第6発明は、モールド・バック、又は/及びコア・バックと同時に行う事は、成形品表層の冷却・固化の前であるので、金型への転写性は向上、レイン・ドロップがなくせる。
【0029】
(請求項6の解説)
請求項6に係る第6発明は、GCPの排気後に、モールド・バック、又は/及びコア・バックを行い、樹脂と金型の隙間に入り込んだ圧気の真空引きをするので、レイン・ドロップのない成形品が得られる。
【0030】
(請求項7の構成)
真空引きの時期を、モールド・バック、又は/及びコア・バックから遅延時間を取ってから行う。
【0031】
(請求項7の作用)
真空引きの遅延時間を取っているので、金型の排気を十分行った後に真空引きを行う。
【0032】
(請求項7の効果)
真空引きをする事で、レイン・ドロップのない、外観が綺麗な高発泡倍率の発泡成形品が得られる。
【0033】
(請求項7の解説)
請求項7に係る第7発明は、GCPを排気して、モールド・バック、又は/及びコア・バックして、ガスベントを開け、真空引きをする。
金型を広げガスベントが広がるので、真空引きの効果は大きくなる。然も十分に排気してからの真空引きなので、真空引き(減圧)の効果は大きい。使用する真空引き装置は真空引きの気体の量が少なく出来るので、装置を小さく出来る。
この方法はシボ加工なしに、光沢面でもレイン・ドロップのない綺麗な外観の成形品が得られる。
【0034】
(請求項8の構成)
シール金型内の圧気を排気の開始と同時に真空引きを開始する。
【0035】
(請求項8の作用)
真空引きをするので、圧気に起因するレイン・ドロップをなくせる。
【0036】
(請求項8の効果)
真空引きをするので、レイン・ドロップのない綺麗な発泡成形品が得られる。
【0037】
(請求項8の解説)
請求項8に係る第8発明は、モールド・バック、又は/及びコア・バックせずにGCPの排気と同時に真空引きを行う。レイン・ドロップをなくし、綺麗な成形品を得るには、金型の表面にシボ加工を施した方が更に良い。
【0038】
(請求項9の構成)
シール金型内、GCP装置内の真空引きを遅延時間を取って開始する。
【0039】
(請求項9の作用)
真空引きをするので、圧気に起因するレイン・ドロップをなくせる。
【0040】
(請求項9の効果)
レイン・ドロップのない綺麗な発泡成形品が得られる。
【0041】
(請求項9の解説)
GCPの排気から遅延時間を取ってから真空引きを行う。前記請求項6至請求項9の真空引きを行う場合は、金型のシール構造は図11のエジェクターピンをシールした金型構造の方が真空引きの体積が少ないので、真空引きの作用・効果は大きい。モールド・バックなどをせずに真空引きを行う場合、レイン・ドロップのない綺麗な外観が要求される場合は、外観が要求される金型の表面にシボ加工を施した方が良い。
【0042】
(請求項10の構成)
請求項10に係る第10発明は、発泡成形の用いる、GCP装置、気体、又は液体とその両方とを加熱筒内の注入する装置と、中空成形を行う中空成形装置と、圧空成形を行う圧空成形装置などを制御し、其々に動作の指令を出すプログラムが成形機のPLC内に組み込まれている。
【0043】
(請求項10の作用)
成形機のPLC内に外部に接続して、GCP装置、液体などの注入装置、中空成形、圧空成形を実施する装置のプログラムが書き込まれているので、装置の接続、操作などの作業が容易である。
【0044】
(請求項10の効果)
請求項10に係る第10発明は、成形機のPLC内にGCP装置、液体などの注入装置、中空成形、圧空成形を実施する装置のプログラムが書き込まれているので、外部接続のコントローラーの準備の必要はなく、余分な設備投資をしなくても済む。
【0045】
(請求項10の解説)
成形機のPLCのプログラムに、GCP装置、液体などの注入装置、中空成形、圧空成形を実施する装置の動作の指令を出すプログラムが書き込まれている。
【0046】
(請求項11の構成)
金型が閉られた事をスタート信号(金型の型締め完了信号、金型に取り付けたLS信号など)として、GCP装置の圧気弁(附番46)を開け、金型内を圧気する。予めPLC内のプログラムには圧気の時間が入力されている。時間がタイムアップした時に成形機は発泡性樹脂の射出を開始する指令を出すプログラムが成形機のPLCに書き込んである。
【0047】
(請求項11の作用)
GCP装置の動作(圧気)が、成形機のPLC内のプログラムによって開始される様になっている。
【0048】
(請求項11の効果)
GCP装置の動作に別のコントローラーを準備する必要はなく、成形機内のPLCにプログラムが組み込んである。型締めを確認して、型内の圧気をタイマーで行う仕様としているので、別にコントローラーの準備の必要はなく、作業者は、移動をしなくても済む。
【0049】
(請求項11の解説)
GCP装置の圧気の動作は成形機のPLCに組み込まれている。金型内の圧気と、射出の開始は、タイマーによって行われる。
【0050】
(請求項12の構成)
型内の圧気の排気(附番51の弁の開)は、成形機PLC内のプログラムによって行われる。
【0051】
(請求項12の作用)
成形機のPLCの中に、GCP装置へ動作(弁を開き、排気する。)の指令は成形機PLCのプログラムを組み込んである。
【0052】
(請求項12の効果)
請求項12に係る第12発明は、成形機のPLCの中にGCP装置の動作のプログラムが組み込んであるので、作業者は同じ画面だけでプログラムの内容の確認をして、操作が出来る。
【0053】
(請求項12の解説)
金型内の排気(附番51弁の開の動作)を、成形機内のPLCに組み込まれたプログラムによって行う。
GCP装置に動作の指令を出す、別の新たに、設備投資などをしてコントローラーの準備をする必要はない。
【0054】
(請求項13の構成)
成形機のPLCには圧気の排気後に、モールド・バック、又は/及びコア・バックさせるプログラムが組み込まれている。
【0055】
(請求項13の作用)
成形機のPLCにGCP装置の動作と、モールド・バック、又は/及びコア・バックさせるプログラムが組み込まれているので、成形機からの指令によって行われている。
【0056】
(請求項13の効果)
請求項13に係る第13発明は、成形機のPLCにモールド・バック、又は/及びコア・バックのプログラムが組み込んである。別にコントローラーの準備の必要はない。
【0057】
(請求項13の解説)
成形機のPLCに、GCP装置の動作と、モールド・バック、又は/及びコア・バックのプログラムが組み込んであり、そのプログラムによって発泡成形が実施される。
【0058】
(請求項14の構成)
成形機のPLCには圧気の排気後に、モールド・バック、又は/及びコア・バックさせた後に、真空引きをするプログラムが組み込まれている。
【0059】
(請求項14の作用)
成形機のPLCに、GCP装置の動作と、モールド・バック、又は/及びコア・バックさせた後に、真空引きは成形機からの指令によって行われている。
【0060】
(請求項14の効果)
請求項14に係る第14発明は、成形機のPLCにモールド・バック、又は/及びコア・バックさせた後に、真空引きのプログラムが組み込んである。別に専用のコントローラーの準備の必要はない。
【0061】
(請求項14の解説)
成形機のPLCに、GCP装置の動作と、モールド・バック、又は/及びコア・バック、真空引きのプログラムが組み込んであり、そのプログラムによって発泡成形が実施される。
【0062】
(請求項15の構成)
請求項15に係る第15発明は、発泡成形に用いる成形機の加熱筒内にスクリューのL/D(長さを直径で除した(割った)値)が15以上である。
【0063】
(請求項15の作用)
請求項15に係る第15発明は、L/Dが15以上のスクリューを用いて、樹脂を可塑化し、中に発泡性ガスを加圧溶解、微分散をさせる。
【0064】
(請求項15の効果)
請求項15に係る第15発明は、L/Dが15以上の高混錬のスクリューなので、可塑化した樹脂中に、発泡性ガスを加圧溶解、微分散が最適に出来る。
【0065】
(請求項15の解説)
発泡成形では、加熱筒内の溶融樹脂中に、可塑化、計量の段階で、発泡性ガスの、加圧溶解と微分散には、高い混錬性を必要とする。
L/Dを15以上の高混錬性のモノで、フライトはダブルフライトとしたり、又は/及びダルメージを設けて高混錬タイプすると、発泡性ガスは、十分に加圧溶解され、微分散されるので、得られる発泡成形品は微細な発泡セルを形成する。
【0066】
(請求項16の構成)
請求項16に係る第16発明は、高背圧を掛けて可塑化する事で、発泡性ガスは、加圧溶解され、微分散する。発泡成形での可塑化時の背圧は、加熱筒内の可塑化された溶融樹脂の掛かる背圧は5MPa以上である事が望ましい。
【0067】
(請求項16の作用)
5MPa以上の高背圧を掛けて可塑化(溶融混錬、計量)をするので、発泡ガスが均一に加圧溶解され、均一に微分散された発泡性樹脂とする事が出来る。
【0068】
(請求項16の効果)
5MPaの高い背圧を掛けながら計量して、加熱溶融して、過疎化するので、加熱筒内で溶融された樹脂は、発泡性ガスが均一に加圧溶解をされ、微分散された発泡成形に適する発泡性を有する発泡性樹脂とする事が出来る。
【0069】
(請求項16の解説)
背圧を5MPa程度高くしながら可塑化する。その際にノズルから鼻タレするので、
ノズルにはシャット・オフ・ノズルなどを装着する。
計量の完了は、次の射出(充填)の前までに完了していれば良い、先に計量が完了していると、加熱筒内で発泡性ガスの凝集が始まるので、計量遅延を行う場合もある。
計量完了後も背圧を掛け続ける(背圧ブロック)を行う事もある。
【0070】
(請求項17の構成)
成形空間に充填された発泡性樹脂の圧力を下げる目的で、発泡性樹脂の充填後直ぐに、遅延時間を取ってサックバックさせる。
【0071】
(請求項17の作用)
サックバックさせる事で、成形空間内に充填をされた樹脂の圧力は急激に下がり発泡が容易になる。
【0072】
(請求項17の効果)
サックバックで発泡倍率を高められる。発泡倍率の高い発泡成形品が得られる。
【0073】
(請求項17の解説)
成形空間内の充填された発泡性樹脂をサックバックで圧力を下げて発泡を容易にする。I-GCPの圧力も下げられ、内部の発泡部をより大きく出来る。
【0074】
(請求項18の構成)
成形空間に充填された発泡性樹脂の圧力を下げる目的で、発泡性樹脂の充填後直ぐに、遅延時間を取ってブリージングさせる。
【0075】
(請求項18の作用)
ブリージングさせる事で、溶融樹脂の圧力は急激に下がり発泡が容易になる。
【0076】
(請求項18の効果)
ブリージングで発泡倍率を高められる。
【0077】
(請求項18の解説)
成形空間内の充填された発泡性樹脂をブリージングで圧力を下げて発泡を容易にする。サックバックとの併用も行う。I-GCPの圧力も下げられ、内部の発泡部をより大きく出来る。
【0078】
(請求項19の構成)
金型の温度調節に沸点が高く、毒性がなく、水で簡単に洗浄が出来る、多価アルコールを使用する。加熱には誘導(電磁誘導)加熱で、内部の金属玉、金属の粉体などを加熱、更にその温度によって液体を加熱する。
【0079】
(請求項19の作用)
誘導加熱を用いた加熱の手段を示している。熱容量の大きい液体を使用する。
【0080】
(請求項19の効果)
加熱水蒸気を用いた場合は、加圧した状態でも得られる高い温度は130℃程度で、然も気体で熱容量は少ない。一方多価アルコールを用いた場合は液体であるので熱容量が大きい。
多価アルコールのグリセリンの沸点は、高く使い勝手が良い。
【0081】
(請求項19の解説)
GCPを用いた発泡成形では金型の表面の温度を高くすると、レイン・ドロップが多くなる。一方金型の表面の温度を高くするとスキン層(表面の非発泡層)は薄くなり、型転写性も高くなり、外観は綺麗(但しレイン・ドロップは多発する。)である。よって圧気を排気して、モールド・バック、コア・バックなどを行い、真空引きを実施すれば、金型の表面の温度を高くしても、レイン・ドロップをなくせる。この方法を用いれば硝子繊維入りの複合材でも、成形時に金型の表面温度を硝子転移点(Tg)以上に高くすれば、硝子の浮きの少ない、或いはない綺麗な硝子繊維入りなどの複合材の発泡成形品の製造が出来る。
【0082】
(請求項20の構成)
請求項20に係る第20発明は、発泡剤のマスター・バッチが、成形予定の樹脂と、発泡剤の粉末と、発泡予定の樹脂と相容(溶)性を持つワニスとからなり、成形予定の樹脂のペレット表面に、ワニスを用いて発泡剤を担持されている。
【0083】
(請求項20の作用)
請求項20に係る第20発明は、従来の発泡剤マスター・バッチの製造方法である、成形予定の樹脂を加熱溶融して中に、発泡剤の粉末を入れて、溶融混錬して、製造されているが、樹脂の種類によっては溶融温度が発泡剤に分解温度よりも高い場合には製造は困難である。
発泡予定の樹脂と相容(溶)性を持つワニスを用いて、ペレットの表面に担持する手段は、担持を行う温度が低い(ワニス中の溶剤が蒸発して、ペレットの表面に発泡剤の粉末が乾固すれば良い。)ので、発泡剤のマスター・バッチを製造する成形予定の樹脂の溶融温度に関係なしに製造が出来る。
【0084】
(請求項20の効果)
請求項20に係る第20発明は、樹脂を加熱溶融しないので、樹脂の熱劣化がない。製造に掛かる熱エネルギーが少ない。設備が大掛かりなモノ(装置、場所など)を使用しなくても済むなどの経済的効果がある。
【0085】
(請求項20の解説)
従来の発泡剤のマスター・バッチの製造方法は、マスター・バッチのキャリアレジンを押出機、ニーダーなどで加熱溶融して、その中に発泡剤を投入して、ペレット化するが、樹脂の溶融温度が発泡剤の熱分解温度より高い場合は、この溶融混錬の製造では困難である。請求項3に係る第3発明では、樹脂のペレット(性状はペレットに限らずバルクでも良い。)と、発泡剤の粉末とを混ぜ合わせ、加熱しながら、その中に発泡成形予定の樹脂と相容(溶)性を示すワニスを少しずつ入れて、ワニス中の溶剤を蒸発させ、ペレットの表面に、発泡剤の粉末を担持(ワニス内の樹脂でくつ付ける。)する。樹脂を溶融加熱しないので、樹脂の熱劣化もなく、発泡剤も分解温度以下で、発泡剤のー切の分解のない発泡時マスター・バッチの製造が可能である。
大掛かりな設備の必要もなく、例示したようなロッキングミキサーの様な安価な、小型の、簡単な構造の装置で製造出来る。発泡剤、発泡助剤、気泡核剤などは別々にマスター・バッチを製造して、最適な配合に其々のマスター・バッチを混ぜ合わせるのが良いが、それ等を一緒に混ぜ合わせた発泡剤のマスター・バッチの製造も容易に出来る。又従来の溶融混錬の手段と異なり、高濃度の発泡剤を持つ発泡剤のマスター・バッチ(担持を繰り返せば当然発泡剤の粉末は多く担持される。)の製造も可能である。
【0086】
(請求項21の構成)
請求項21に係る第21発明は、発泡成形予定の樹脂がAS、ABS、それらを主成分とする樹脂の発泡成形の用いる発泡剤のマスター・バッチの製造に用いるワニスは、同質のAS、ABSを有機溶剤、例えばMEKなどで溶解して、必要に応じてトルエンなどを加えた。このワニスを用いてAS、ABSなどのペレットに担持して発泡剤のマスター・バッチを製造する。
【0087】
(請求項21の作用)
請求項21に係る第21発明は、発泡剤のマスター・バッチ製造に用いるワニスが、発泡成形予定の樹脂中のAS、発泡成形予定のABSからなるので、発泡成形品に異材が入らないので、物性の低下などの問題をなくす事が出来る。
【0088】
(請求項21の作用)
請求項21に係る第21発明は、発泡剤のマスター・バッチの製造に於いて、発泡成形予定の樹脂はAS、ABS、それらを主成分とする樹脂で、相容(溶)性を持つAS、ABSのワニスを用いているので、異材が入り込んでの物性の低下の問題はない。AS、ABSのワニスの製造は簡単で、安価なので、このモノを用いて製造をした発泡剤のマスター・バッチは安価、発泡成形品の製造原価を押し上げない。
【0089】
(請求項21の解説)
請求項21に係る第21発明は、AS、ABSを溶剤に溶解して、ワニスを製造する。AS、ABSのペレットの表面にこれらのワニスを用いて発泡剤の粉末が担持されている。
AS、ABSは溶剤には容易に溶解するので、ワニスではなく、AS、ABSのペレットと、発泡剤の粉末とを混ぜ合わせ、有機溶剤、例えばMEKだけを入れてAS、ABSペレットの表面発泡剤を担持する事も出来る。
【0090】
(請求項22の構成)
請求項22に係る第22発明は、AS、ABSを溶解したワニスを、エマルジョン系、サスペンジョン系として、担持に使用する。
【0091】
(請求項22の作用)
請求項22に係る第22発明は、エマルジョン系、サスペンジョン系のモノを用いるので、溶剤の臭いは少なく、作業環境が悪化しない。
【0092】
(請求項22の効果)
請求項22に係る第22発明は、エマルジョン系、サスペンジョン系を用いるので、作業環境が悪化しない事と、欧州などでのVOC規制に対応出来るなど環境へ配慮した製造の方法である。
【0093】
(請求項22の解説)
請求項22に係る第22発明では、前記第21発明では溶剤で溶解をしたワニスを用いている。溶剤は引火の危険性などと、臭いが強いなどから作業への配慮が必要である。少量の溶剤を用いてワニスを製造し、水などを用いてエマルジョン系、サスペンジョン系として発泡剤の粉末を発泡成形予定の樹脂のペレットの表面に担持する材料として使用する。
又本第22発明ではエマルジョン系、サスペンジョン系としたモノと、溶剤で溶解したワニスとを併用しても良い。
請求項4乃至請求項5記載の発泡剤のマスター・バッチはAS、ABS以外にはAAS、ASA、AES、ACSでの使用可能である。当然これ等AASなどを用いてワニスとしても良い。
【0094】
(請求項23の構成)
請求項23に係る第23発明は、前記第4発明で使用する発泡成形予定の樹脂のAS、ABSをPS、HIPS、変性PPO(E)に変更したので、使用するワニスもこれ等と相容(溶)性を持つPS、HIPSとした。
【0095】
(請求項23の作用)
請求項23に係る第23発明は、発泡成形予定の樹脂と相容(溶)性を持つPS、HIPSを前記AS、ABS同様にMEKなどの有機溶剤を用いて溶解したワニスを使用しているので、安価で、容易に発泡剤のマスター・バッチの製造が出来る。
【0096】
(請求項23の効果)
請求項23に係る第23発明は、発泡成形予定の樹脂がPS、HIPS、変性PPO(E)で、発泡剤のマスター・バッチのキャリア・レジン(実際はペレットである。)がPS、HIPSで、発泡成形予定の樹脂が同質のPS、HIPSと、発泡時のマスター・バッチを構成する樹脂のPS、HIPSで、PPO(E)とは十分に相容(溶)する。尚発泡予定に変性PPO(E)を使用する場合、物性低下が懸念される場合は、発泡剤のマスター・バッチ製造に変性PPO(E)ペレットを使用すれば良い。
【0097】
(請求項23の解説)
請求項23に係る第23発明は、成形予定の樹脂がPS、HIPS、PS、又は/及びHIPSとPPO(E)とを混ぜ合わせたポリマーブレンド、ポリマーアロイの場合は、これらの樹脂と同質のPS、HIPS、相容(溶)するPS、HIPSのワニスを用いて、担持して、発泡剤のマスター・バッチを製造する。
【0098】
(請求項24の構成)
請求項24に係る第24発明は、PS、HIPS、変性PPO(E)の発泡成形に用いる発泡剤のマスター・バッチは、発泡成形予定の樹脂のペレット、発泡成形予定の樹脂と相容(溶)する、PS、HIPSを溶剤に溶解して、エマルジョン系、サスペンジョン系として、これを成形予定のPS、HIPS、変性PPO(E)のペレットに担持する。
【0099】
(請求項24の作用)
請求項24に係る第24発明は、使用する発泡剤のマスター・バッチの製造には、発泡成形予定の樹脂と相容(溶)する樹脂のワニスをエマルジョン系、サスペンジョン系としているので、製造時の作業環境を悪くしないなどの作用がある。
【0100】
(請求項24の効果)
請求項24に係る第24発明は、エマルジョン系、サスペンジョン系を用いて発泡剤のマスター・バッチを製造しているので、ワニスを用いた場合よりも、使用する溶剤を少なく出来るので作業環境を悪くしない効果を奏する。エマルジョン系、サスペンジョン系のモノは溶剤系のモノと比べて、引火、発火などの危険性も少ないので安全に作業が出来る。
【0101】
(請求項24の解説)
請求項24に係る第24発明は、発泡成形予定の樹脂がPS、HIPS、変性PPO(E)で、予めPS、HIPSを溶剤に溶解して、必要に応じて乳化剤を使用して、エマルジョン系、サスペンジョン系とする。
この溶液を用いて、PS、HIPS、変性PPO(E)のペレットの表面に、発泡剤の粉末を担持するので、使用する溶剤を少なく出来る。
【0102】
(請求項25の構成)
請求項25に係る第25発明は、発泡剤粉末の担持に、塗料の製造に使用されている、スチレン系樹脂と相容(溶)性を示すアクリル樹脂、スチレン変性アクリル樹脂のワニスを用いる。
【0103】
(請求項25の作用)
請求項25に係る第25発明の、ワニス中のアクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂は、AS、ABS、PS、HIPS、変性PPO(E)などのスチレン系樹脂と相容(溶)性を示す。
【0104】
(請求項25の効果)
請求項25に係る第25発明は、使用するワニスの主成分の、アクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂は、AS、ABS、PS、HIPS、変性PPO(E)の何れ共に相容(溶)性を示す。発泡剤のマスター・パッチ製造に使用するワニスを1種類だけ準備すれば済み、塗料用に市販されている塗料用材料の流用が出来るので、経済的である。
【0105】
(請求項25の解説)
請求項25に係る第25発明の発泡剤のマスター・バッチ製造に使用するワニスは、例えばプラスチックの塗料用に市販されている塗料製造の原料を流用できる。例示した手段のロッキングミキサーなどを用いれば容易に担持は出来る。
使用するワニスはアクリル樹脂、スチレン変性アクリル樹脂だけの単純なモノが良い。前記ワニス中にCAB(セルロース・アセテート・ブチレート)、硝化綿(ニトロ・セルロース)を含んでいる場合には、CAB構わないが、硝化綿を含むワニスの使用は出来ない。硝化綿は発泡成形加工の際に硝化綿に起因する変色が発生するので好ましくない。CABの場合は変色は起こらない。
【0106】
(請求項26の構成)
請求項26に係る第26発明は、発泡剤のマスター・バッチの製造の際に使用する、アクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂のワニスを、エマルジョン系、サスペンジョン系としたモノを使用して製造した発泡剤のマスター・バッチ。
【0107】
(請求項26の作用)
請求項26に係る第26発明は、エマルジョン系、サスペンジョン系のモノを使用しているので、作業環境の改善になる。
【0108】
(請求項26の効果)
請求項26に係る第26発明は、アクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂のワニスを、エマルジョン系、サスペンジョン系としたモノを使用しているので、発泡剤のマスター・バッチ製造時に臭いも少なく、結果作業環境を悪くしない効果を奏する。
エマルジョン系、サスペンジョン系のモノは溶剤系のモノと比べて、引火、発火などの危険性も少ないので安全に作業が出来る。
【0109】
(請求項9の解説)
(請求項26の解説)
請求項26に係る第26発明は、発泡剤のマスター・バッチの製造に、アクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂のワニスを、エマルジョン系、サスペンジョン系としたモノを使用する。アクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂はスチレン系樹脂のPS、HIPS、変性PPO(E)、AS、ABSとは相容(溶)性を示すので、作業時にワニスを多く準備する必要はない。
エマルジョン系、サスペンジョン系にする場合には乳化剤を使うが、塗料、塗膜の性能を求めるのではなく、単に発泡成形までに、ペレットなどの表面に付着して、容易に取り扱えて、簡単に混合できれば、目的は十分に果たすので、乳化剤なしのモノで実施は十分に可能である。
【0110】
(請求項27の構成)
PP用発泡剤のマスター・バッチの製造方法を示した。PPは耐薬品性が高く、PP単体では溶解が可能な溶剤は少ない。PPを溶剤に可溶とするにはPPを酸変性する。
請求項27に係る第27発明は、PPの発泡剤のマスター・バッチの製造に酸変性したPPのワニスを用いて、前記HIPS、ABS等のスチレン系樹脂用の発泡剤のマスター・バッチの製造と同様に、発泡成形予定のPPのペレットの表面に発泡剤の粉末を酸変性したPPのワニスを用いて担持する。
【0111】
(請求項27の作用)
請求項27に係る第27発明は、発泡成形予定のPPと、酸変性のPPとは相容(溶)性を示す。発泡剤のマスター・バッチの製造に、酸変性したPPのワニスを用い、発泡成形しても、成形樹脂中に酸変性したPPは、相容(溶)性してPP中に微分散して、海島構造を示し、PP樹脂の物性には殆ど影響を殆ど与えない。
【0112】
(請求項27の効果)
請求項27に係る第27発明は、発泡成形予定のPPと、相容(溶)性を示す酸変性のPPを用いているので、成形時に加熱溶融の段階で共に溶融して、樹脂中に混ざり合って、微分散をして、海島構造を示し、PPの物性には殆ど影響を与えないので、PPの発泡成形が可能である。
【0113】
(請求項27の解説)
請求項27に係る第27発明は、PP用の発泡剤のマスター・バッチの製造の関するモノである。市販のPP用の発泡剤のマスター・バッチは、キャリアレジンがPEであるので、GCPを用い、スワール・マークのない綺麗な外観の発泡成形品を作っても、ゲート近傍などはPEに起因するシルバーが発生した。(図1参照)
然しPPはPEに比べると、溶融温度が約20℃以上も高いので、PPを溶融してその中に、炭酸水素塩、ADCA、HDCAなどの発泡剤の粉末を入れて、混練を試みても、溶融混練の段階で、熱分解してしまい、ペレット化しても中の発泡剤は、既に発泡剤の機能を失っている。
PPと相容(溶)性のある、酸変性をしたPP、例えばマレイン酸変性のPPのワニス(このモノは、PPの接着剤、PP成形品へ塗装を施す際のプライマーとして多用されている。)を用いて、発泡成形予定のPPのペレットに発泡剤の粉末を、前記HIPS、ABSの場合と同様に簡単に担持出来るので、簡単にPP用の発泡剤のマスター・バッチが製造出来る。
然も樹脂を加熱溶融しないので、PPの熱履歴による熱劣化もしない。
【0114】
(請求項28の構成)
請求項27では、PP用の発泡剤のマスター・バッチの製造に酸変性をしたPPのワニス(溶剤系のモノ、酸変性のPPを溶剤を用いて溶解をしたモノ)を使用したが、請求項28に係る第28発明では、ワニス(酸変性したPPを溶剤で溶解したモノ)をエマルジョン系、サスペンジョン系として使用する。
【0115】
(請求項28の作用)
請求項28に係る第28発明は、溶剤の使用量の少ない、エマルジョン系、サスペンジョン系として使用する。
酸変性をしたエマルジョン系、サスペンジョン系のモノでも、PP用の接着剤としての機能を持っているので、発泡剤の粉末を、PPペレット表面に担持するのに十分な作用を発揮する。
【0116】
(請求項28の効果)
請求項28に係る第28発明は、溶剤の使用量の少ない、エマルジョン系、サスペンジョン系として使用するので、作業環境の悪化をさせず、引火、発火の危険性も少なく安全にPP用発泡剤のマスター・バッチの製造が出来る
【0117】
(請求項28の解説)
請求項28に係る第28発明は、PP用発泡剤のマスター・バッチの製造に、酸変性をしたPPのエマルジョン系、サスペンジョン系モノでPPの表面に担持する。
酸変性をしたPPは発泡成形予定のPPとは相容(溶)性を示すので、PP用発泡剤のマスター・バッチの製造が出来る。前記請求項27と同様にPP中に入り込んで、混ざり込んでも、PPの物性には殆ど影響を与えない。酸変性のPPは熱安定性は高く、PPの中に混ざり、発泡成形加工をしても、樹脂に変色・焼けを発生させない事は本発明の実験(PPのペレットに、酸変性をしたPPで担持した発泡剤を用いた発泡成形)で問題がない事は確認されている。
【0118】
(請求項29の構成)
請求項29に係る第29発明は、発泡剤の成分が、発泡剤の粉末と、発泡成形予定の樹脂と相容(溶)性を示すワニスを構成する樹脂だけからなる、発泡成形に用いる発泡剤のマスター・バッチ。
【0119】
(請求項29の作用)
請求項29に係る第29発明は、ペレットの表面に発泡剤の粉体を担持するのではなく、ワニスと発泡剤の粉体とを混ぜ合わせたモノ(性状は液体)を、例えばロッキングミキサー中に始めに少量の発泡剤に粉末を入れて、中に少量づつを入れながら加熱すると、始めに入れた発泡剤の粉末を核として、発泡剤とワニス中の樹脂成分とが混ざり合ったモノが、成長し、造粒が出来る。
【0120】
(請求項29の効果)
請求項29に係る第29発明は、造粒によって発泡剤のマスター・バッチが製造出来るので、発泡剤の濃度(粒に中に含まれる発泡剤の量)は多い。アクリル系樹脂、ワニスにスチレン変性アクリル樹脂を用いれば、HIPS、ABS等のスチレン系樹脂の何れにも使用可能な発泡剤のマスター・バッチとする事が出来る。
【0121】
(請求項29の解説)
粉体の発泡剤は取り扱いが困難である、発泡剤の粉末を少量のワニスを用いて造粒をすると、取り扱いが容易になる。然も従来の溶融混練しないので、発泡剤の濃度の高いモノを簡単に製造が出来る。
【0122】
(請求項30の構成)
請求項30に係る第30発明は、発泡剤の粉末と、発泡成形予定の樹脂、又は樹脂の成分の粉末とを、ワニスを用いて造粒をする。
【0123】
(請求項30の作用)
請求項30に係る第30発明は、発泡剤の粉末と、ワニスと、発泡成形予定の樹脂の粉末、又は/及び発泡成形予定の樹脂と相容(溶)性を示す樹脂の粉末とを用いて造粒する。例えばABSはASとブタジエンにA(アクリルニトリル)と、S(スチレン)とをグラフト共重合したモノとのブレンドポリマーで、ASの粉体を用いて発泡剤の粉末と混ぜ合わせ、ワニスを用いて造粒すれば、発泡剤のマスター・バッチは容易に製造出来る。AS、PSに限れば、溶剤の溶解性があるので、ロッキングミキサー内にAS粉末、又はPSの粉末と発泡剤の粉末とを入れて、混ぜ合わせ、例えばMEKをスプレーすれば、ワニスを使用しなくても造粒も出来る。
又例えばAS、ABSのペレットを入れて、発泡剤の粉末を入れてMEKのスプレーをしてもMEKによってAS、ABSの表面は溶解させるので、発泡剤のマスター・バッチの製造が出来る。
【0124】
(請求項30の効果)
請求項30に係る第30発明は、従来の溶融混練の方法に比べて、高濃度の発泡剤を含有する発泡剤のマスター・バッチの製造も可能である。
【0125】
(請求項30の解説)
請求項30に係る第30発明は、発泡剤の粉末と、樹脂の粉末とを混ぜ合わせ、ロッキングミキサーなどで攪拌をしながら、溶剤を、或いはワニスを噴霧して造粒する手段で製造した発泡剤のマスター・バッチである。
【0126】
(請求項31の構成)
請求項31に係る第31発明は、発泡成形予定の樹脂のペレットに、発泡剤の粉末、発泡助剤の粉末、気泡核剤の粉末、顔料・染料などの粉末を其々別々に担持し、担持したペレットを、発泡予定の樹脂のペレットと混ぜ合わせ使用する。
【0127】
(請求項31の作用)
請求項31に係る第31発明は、其々を担持したペレットなど(ペレットに担持したモノと、造粒したモノの両方)を、最適な添加量で混ぜ合わせて、使用するので、其々の添加量の最適化が出来る。
【0128】
(請求項31の効果)
請求項31に係る第31発明は、其々の作用を示す材料の粉末を担持したペレットなどを、最適化した配合で使用するので、余分な量の添加をしない事、配合量の変更は簡単に出来る事など、経済的な、品質の安定、向上などの効果を奏する。
【0129】
(請求項31の解説)
請求項31に係る第31発明は、本発明で説明をしている、ワニス、溶剤などを用い其々のマスター・バッチを製造し、最適な添加量を添加して、発泡成形を行う。
発泡予定の樹脂のペレットを使用していないのでアクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂を用いて造立した発泡剤のマスター・バッチは、前記アクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂はHIPS、ABSなどと相容(溶)性を示すので、種類を少なく出来る。
同じ方法で、酸変性のPPのワニスを用いて、PP用の高濃度の発泡剤のマスター・バッチの製造も可能である。
【0130】
(請求項32の構成)
請求項32に係る第32発明は、化粧性を目的に塗装を施す発泡成形品で、使用する発泡剤は、塗膜の付着性・密着性を低下させない。問題のない有機系発泡剤のADCA,HDCA、塗膜の付着性・密着性に影響を与える発泡残渣がない水、アルコール、エーテルなどを用いる。
【0131】
(請求項32の作用)
請求項32に係る第32発明は、使用する発泡剤は発泡残渣がないモノ、発泡残渣が塗膜の付着性・密着性に影響を与えないモノから選ばれるので塗膜の付着性・密着性の問題は発生しない。
【0132】
(請求項32の効果)
請求項32に係る第32発明は、使用する発泡剤は、塗膜の付着性・密着性に影響を与えないので、厄介な発泡残渣の除去を目的とした前処理(剪除)行わずに、表面に付着したゴミをエアーブローなどで除去し、油脂などはアルコール拭きなどで除去するだけで簡単に塗装が開始できるので塗装の工程を簡素化出来ると言う効果を奏する。
【0133】
(請求項32の解説)
発泡成形に用いる発泡剤は加熱筒内で熱分解して、発泡性ガスを発生、加熱筒内に溶融樹脂中に加圧溶解され、微分散して、溶融樹脂に発泡性を付与する。然し発泡剤の分解残渣は、発泡性が付与された樹脂中に入り込む。この発泡剤の残渣が入り込んだ発泡成形品の表面には、発泡残渣が認められ、発泡残渣を除去せずに塗装を行い、塩水噴霧試験、塩水浸漬試験、耐湿性試験、耐水性試験などを行うと、発泡残渣に起因し、塗膜に膨れ、剥がれが発生、使用に耐えない。
アゾ系の発泡剤にADCA、HDCAの残渣は実験の結果、塗膜の付着性・密着性には影響を与えない事が確認されたので、塗装工程の或る発泡成形品の製造には、前記ADCA、HDCAなどのアゾ系発泡剤が適する。
【0134】
水は100℃、エタノールは約80℃が沸点、これらを容量を量って、計量(可塑化)中の加熱筒内の溶融樹脂中に入れると、加熱筒の熱、溶融された樹脂の温度によって気化し、溶融樹脂中に、溶解して、分散して溶融樹脂に発泡性を付与する。然しアルコール等これ等は全てが気化し、残渣は何も残らない。これ等の液体を発泡剤として使用すれば、発泡剤の残渣に起因する塗膜の付着性・密着性の問題は解決される。
【0135】
(請求項33の構成)
請求項33に係る第33発明は、発泡剤に炭酸水素塩(例えば重曹)を使用した場合、発泡残渣の炭酸塩(重曹の場合は炭酸ナトリウム)は、未分解の炭酸水素塩が発泡残渣となる。このままで塗装を施すと、表目に存在をする発泡残渣に起因する塗膜の膨れ・剥がれが発生するので、その前に酸性の物質を用いてこれら発泡残渣などを除去する。
【0136】
(請求項32の作用)
請求項32に係る第32発明は、炭酸塩、炭酸水素塩は、アルカリ性の物質なので、酸性の物質との接触で中和して、容易に溶解する。
これらの炭酸水素塩を発泡剤として使用した発泡成形品は、酸洗浄などを行う事で、塗膜の十分な付着性・密着性を得る事が出来る。
【0137】
(請求項32の効果)
請求項32に係る第32発明は、発泡剤としての炭酸水素塩は安価、発生する発泡性ガスは炭酸ガスと水蒸気で、形成させる発泡セルも微細、安定した発泡成形品が得られる。この成形品の酸洗浄を行う事で、十分な塗膜の付着性・密着性を得る事が出来ると言う効果を奏する。
【0138】
(請求項32の解説)
炭酸水素塩は発泡剤として多用されているが、発泡残渣、未分解の炭酸水素塩が表面に現れた発泡成形品を塗装すると、塗膜の付着性・密着性は低下、塗膜の評価試験(例えばJIS K5600-7-1など)を行うと、膨れ、剥がれが発生、使用には耐えない。炭酸塩、炭酸水素塩は弱酸性の溶液に浸漬、弱い酸を含ませた布などで拭うと容易に除去(溶解させる事)が出来る。酸洗浄の後で、必要に応じて水洗して、乾燥して塗装を行えば、塗膜の十分な付着性・密着性を得る事が出来る。
酸洗浄に用いる酸はPHが6程度のモノで構わない。洗浄する酸の溶液の温度を40℃以上と高くすれば、油脂の除去も同時に行える。洗浄液中に超音波発振子(板)を入れればより効果的である。バルブリングをしても良い。
【0139】
【図面の簡単な説明】
【0140】
図1】発泡剤のマスター・バッチのベース・レジンに起因するシルバーがゲート近傍に発生、流動末端はGCPの圧力不足でスワール・マークが制御(押さえ込む)が出来なかった図(写真)(使用材料はPP)。
図2】GCPでスワール・マークの制御(押さえ込む)がは出来たが、発泡剤のマスター・バッチのベース・レジンに起因するシルバーがゲート近傍に(使用材料は自動車の内装用に使用するPP)(使用材料はTSOP)。
図3】GCP未実施で表面全部にスワール・マークが発生した事を示す図(写真)(使用材料は透明ABS)。
図4】GCPを実施、発泡セルが押さえ込まれ、表面にはスワール・マークの発生は認められず表面が平滑な事を示す図(写真)(使用材料は透明ABS)。
図5】内部に発泡層(符番110)が、外側には綺麗なスキン層(符番111)が、GCPを用いる事で発泡セルの内部への閉じ込め(表面はスワール・マークのない綺麗なスキン層、内部は発泡層となっている。)が可能である事を示す発泡成形品の断面の図(写真)。
図6】炭酸水の図(写真)。
図7】発泡の理由を示す図(写真)。
図8】GCPの原理を示す図(写真)。
図9】GCP装置。
図10】エジェクター機構をボックスで囲いシールした発泡成形用金型構造を示す模式図。
図11】エジェクターピンを荷重式Oリングなどでシールした発泡成形用金型構造を示す模式図。
図12】Oリングを固定する蟻溝を示す模式図。
図13図10の金型の圧気空間のL乃至L3を示した発泡成形用金型構造を示す模式図で図13中のLはエジェクター・ボックスの空間、Lは成形空間の空間、Lは固定側の入子の底に設けた空間を示す。
図14図11の金型の圧気空間のL乃至Lを示した発泡成形用金型構造を示す模式図で図14中のLは可動側の入子の底に設けた空間で昨日は図13中のLエジェクター・ボックスの空間に該当する、L2は成形空間の空間、Lは固定側の入子の底に設けた空間を示す。
図15】GCP装置。
図16】GCP装置(サブタンク55付き)。
図17】コア・バック前(発泡性樹脂の充填時)を説明した模式図。
図18】コア・バック後(拡張した)を説明した模式図。
図19】モールド・バック前(発泡性樹脂の充填時)を説明した模式図。
図20】モールド・バック後(拡張した)を説明した模式図。
図21】実施例に用いた成形品のCADで製作した図面。
図22】実施例に用いた成形品のCADで製作した図面。
図23】磁性流体を電磁誘導で加熱する装置を示した模式図。
図24】荷重式Oリングを説明した模式図(荷重機能のスプリングを組み込んだ組図)。
図25】荷重式Oリングを説明した模式図の断面(荷重機能のスプリングの開口部は上向き)。
図26】荷重式Oリングを説明した模式図の断面(荷重機能のスプリングの開口部は下向き)。
図27】U(V)字のOリングの断面を示した模式図。
図28】U(V)字のOリングを示した模式図。
図29】符番85の代替の機能を持つ市販のコイルスプリングの図(写真)。
図30】市販のOリングの図(写真)。
図31】固定側からのガス加圧の手段を示した模式図。
図32】ガス加圧に用いるガスピンの内芯を示した模式図。
図33】ガス加圧に用いるガスピンの外筒を示した模式図。
図34】ガス加圧に用いるガスピンの外筒に内芯を入れて組み立てた模式図。
図35】ガス加圧ピンが成形品の表面に設置されている事を示す模式図。
図36】エジェクタービンをシールする片側荷重の荷重式Oリングの模式図と、エジェクターピン其々の径に関する下穴などの形状(ハウジング寸法)を記した図、図48と関連がある。
図37】エジェクタービン1本だけをシールする手段を示した図。
図38】金型とGCP装置の接続などを示した図。
図39】金型のパーティングのGCPの圧気を出入するガスベントを示した図。
図40】金型のパーティングのGCPの圧気を出入するガスベントを示した図。
図41】入子の底部のL、Lの形状(圧気の通路)を示した図。
図42】樹脂と発泡剤マスター・バッチと起泡核剤のマスター・バッチの組み合わせを示した図(表)。
図43】GCP不使用の場合の外観と内部とを観察結果を示した図(表)。
図44】GCP使用の場合の外観と内部とを観察結果を示した図(表)。
図45】塗膜の付着性の評価結果を示した図(表)。
図46】塗膜の付着性の評価結果を示した図(表)。
図47】塗膜の付着性の評価結果を示した図(表)。
図48】片側荷重式Oリングの装着などを詳細な寸法などを記した図(表)。
図49】金型内の圧気を排気後に更に真空引きをする手段を示した図。
図50】PLからの圧気に入りと出の手段を示した金型の構造を示した断面の模式図。
図51】金型の製品面に圧気に入りと出の手段を示した金型の構造を示した模式図。
図52図51の断面を示した模式図。
図53】コア・バックで固定の金型と固定の金型とは金属同士は見切らず、成形品の中に稼働の金型を入れ込んで、成形空間内へ発泡性樹脂を充填後に稼働側の金型を後退させる事を示した模式図。
図54図53で附番61(可動側の金型)を後退させた事を示す模式図。
図55】Vリングの断面を示す模式図。
図56】Uリングの断面を示す模式図。
図57】PL方向にVリング開口部を向けて、且つ通常の円形のOリングも配した事を示すPLのシールの手段の断面を示す模式図。
図58】PL方向にUリング開口部を向けて、且つ通常の円形のOリングも配した事を示すPLのシールの手段の断面を示す模式図。
図59】PL方向にVリング開口部を向け、成形空間内を与圧した気体をシールする機能を持たせ、別のVリングはPLとは反対の方向に向けて、PL内などを真空引きする際に、PLの合わせ面などから、外気が入り込まない様にシールする役目を持たせた。尚且つ通常の円形のOリングも配した事を示すPLのシールの手段の断面を示す模式図。
図60】PL方向にUリング開口部を向け、成形空間内を与圧した気体をシールする機能を持たせ、別のUリングはPLとは反対の方向に向けて、PL内などを真空引きする際に、PLの合わせ面などから、外気が入り込まない様にシールする役目を持たせた。尚且つ通常の円形のOリングも配した事を示すPLのシールの手段の断面を示す模式図。
図61図55のVリングを左右に設けて一体とした場合の模式図。
図62図56のUリングを左右に設けて一体とした場合の模式図。
図63】真空引きを行う装置(真空装置、真空引き装置)の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0141】
(用語の定義)
まず、本発明に於いて用いる用語を定義する。
【0142】
(未満と、以下と、以上)
「未満」とは後に示す数値を含まない。「以下」とは後に示す数値を含む。「以上」とは後に示す数値を含む。例えばPH7未満とは7を含まず、その溶液は中性(PH=7)でなく酸性を示す。PH7以下とは7を含むので、中性と酸性とを示す。
【0143】
(適応可能な商品など)
本発明が適用可能な製品は、射出成形、注型又はブロック成形などによって作られた樹脂成形品であれば材質、形状、使用用途などは特に問わない。OA、家電製品、遊技機などではスチレン系樹脂、又はスチレン系樹脂を含むポリマーアロイ、ポリマーブレンドが主に使用される。車両ではオレフィン系樹脂、又はオレフィン系樹脂を含むポリマーアロイ若しくはポリマーブレンドが主に使用される。住宅、家具、雑貨品などではスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニルなどに代表されるビニル系樹脂、エステル系、アミド系樹脂などの熱可塑性樹脂を含むポリマーアロイ若しくはポリマーブレンドが主に使用される。市場回収された特に熱可塑性樹脂を出発原料として、改質、変性をして、新たな成形材料としたリサイクル材を使用した成形品も対象としている。発泡成形は、中実成形に比べ、保圧を使用しない分、寸法安定性(=成形品の寸法の繰り返し精度)が高いので、熱可塑性樹脂のリサイクル(再生)材の使用に適する。変性PPO(E)にアセチレンブラックなどを入れたICトレイは発泡成形をすれば、計量化が出来るので、バーニング、検査などの際に搬送のエネルギーが少なく済む。
【0144】
本発明で使用可能な樹脂は、化学工業日報社のプラスチック成形材料商取引便覧‐特性データベース‐〈1999年版、2012年版〉に記載されている。
本発明は、成形用の熱可塑性樹脂であれば種類を問わない。熱可塑性樹脂を例示すれば、スチレン系単量体を重合せしめてなるポリスチレン系樹脂、例えばポリスチレン(PS)、ハイインパクト(耐衝撃性)ポリスチレン(HIPS)、ニトリル系単量体・スチレン系単量体との共重合体であるスチレン系樹脂、例えば、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ニトリル系単量体・スチレン系単量体・ブタジエン系ゴムからなる樹脂例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ブタジエン系ゴムをオレフィン系ゴムとしたAES、アクリル系ゴムとしたASA(AAS)などのスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などに代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)ポリフエニレンエーテル(PPE)、スチレン変性のポリフェニレンオキサイド(m-PPO)、スチレン変性のポリフェニレンエーテル(m-PPE)ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのエンジニアリングプラスチック、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂、塩化ビニル(PVC)のビニル系樹脂などでの実施も可能である。
【0145】
熱可塑性樹脂、又は/及(およ)び熱可塑性エラストマーは、二種以上を混合してポリマーブレンド或いはポリマーアロイとしても良い。ポリマーブレンド或いはポリマーアロイは、例えば押出成形機におけるスクリュー混練などによって製造される。
【0146】
本発明の樹脂には、機能を損なわない限りに於いては、ラバーダイジェスト社編の便覧ゴム・プラスチック配合薬品1989年3月〔最新版〕1993年、2003年12月〔改訂第二版〕に記載の配合薬品の使用が出来る。樹脂の配合時に他の樹脂、及び添加剤は、例えば顔料、染料、補強剤(硝子繊維、炭素繊維など)、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、タルクなど)耐熱剤、老化防止剤、酸化劣化防止剤、オゾン劣化防止剤、耐候(光)剤(紫外線吸収剤、光安定剤)、可塑剤、発泡助剤、発泡核材、滑剤、スリップ材、内部離型剤、離型剤、防曇剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、流動性改良剤、帯電防止剤、相容化剤、相溶化剤などが使用される。
【0147】
本発明の「樹脂」とは、熱可塑性樹脂(TPR)、熱硬化性樹脂(TSR)、TSE(熱硬化性エラストマー)、TPE(熱可塑性エラストマー)、ゴムの全てを言い、熱可塑性を示す熱可塑性樹脂、又は/及びTPEとを「熱可塑性樹脂」と言う。熱硬化性を示す、熱硬化性樹脂、ゴム、TSEを「熱硬化性樹脂」と言う。
【0148】
本発明の主たる技術のGCPに付いて説明する。GCPの作用・効果{発泡セルを内部に閉じ込め、外側(表面)には綺麗なスキン層(非発泡層、GCPの作用によって表面の発泡が抑え込まれた層)が形成される。}をPPを用いた場合は図2図6に、内部の発泡セルが確認出来る様に透明ABSを用いたモノは図4に示した。図5はPPを用いてGCPを実施した発泡成形品の断面である。図1乃至図5に記載の符番は、符番1がサイドゲートで開口部の左右に1箇所づ(ず)つの2箇所としている。符番2は上述した様にPPを用いたGCP成形に於いて、発泡剤のマスター・バッチ(略号;MB)に起因するシルバー(PEの表面の浮き)が発生している事を示している。
符番3はGCPの圧力(型内の与圧の圧力)が低い場合、排気のタイミングが早すぎた場合にスワール・マークを抑えきれない事を示している。符番4はGCPを用いずに発泡成形を行った場合に、表面全部にスワール・マークが発生している。図1乃至図5を実施するにあたり、使用した発泡剤はADCAを用いている。起泡核剤、発泡助剤は不使用である。尚重曹でも同様に行った結果はADCAとは変わりがない。炭酸水素カリウムでも、重曹と同様な結果を得た。ACDAと重曹とを併用するとADCA単品での使用と比べて、発泡セルは微細になる。
GCPの圧力を高めれば、発泡残渣を成形品の中に抑え込み、閉じ込める作用もする。結果高いGCPの圧力を用いれば、炭酸水素ナトリウムを用いた発泡成形品でも、未発泡の発泡剤、発泡残渣を抑え込み、塗装が可能になる可能性が推測される。
【0149】
(相溶性と相容性)
「相溶性」とは、互いの樹脂が分子レベルで混ざり合う性質(例えば水に砂糖が解ける。)を言い、「相容性」とは一方の樹脂中に他方の樹脂が入り込んで、海島構造を示す性質と本発明では定義する。相溶性と相容性とを合わせて相容(溶)性と表現する。
【0150】
{成形装置(ユニット、デヴァイス、デバイス)}
本発明で使用する「成形装置」とは、前記GCP装置、中空成形、圧空成形装置(空気中の窒素ガスを分離する装置、窒素ガスを圧縮する装置、圧縮した窒素ガスを注入して、噴出して、中空成形、圧空成形品を得る装置)、GCP、モールド・バック、コア・バック、リセッション、リセス、ブリージング、射出後のスクリューのサックバック(型内へ充填された樹脂の圧力を下げる事が目的)などと、中空成形、圧空成形などの動作が行える様に、射出成形機のシーケンサーにこれ等装置を制御するプログラムを書き込んだ(組み入れた、インストールした。)射出成形機、図10図11などに示すシールされた成形用の金型、図9図15図16図49などのGCP装置{本発明の射出成形機には図9図10図11図49の圧気弁、排気弁、真空引きの際の弁(符番141)の開閉を指令するプログラムをインストールしてある。}、図50に示す金型、図23の金型昇温装置、油圧式、空圧式、機械式、バネ式などの機構で動作するシャット・オフ・ノズルと、樹脂のペレットに発泡剤を担持する装置、発泡剤粉末(「粉末」とは個体が細かい状態となったもので、「粉体」とは粉末が多数集合した状態を言う。)と、樹脂粉末とを混ぜ合わせ造粒する装置などを言う。
【0151】
(成形材料)
本発明で使用する「成形材料」とは、熱可塑性樹脂と、その製造に用いられるその他添加剤、ガラス繊維などのに代表される強化剤、発泡剤、発泡助剤、起泡核剤を示す。熱硬化性樹脂でも実施可能である。
【0152】
(商品)
発泡剤を担持した発泡剤マスター・バッチ、発泡剤の粉体と、樹脂の粉体とから造粒された発泡剤を用いた発泡成形品、本発明で示すGCP装置を用いた表面が平滑な発泡成形品は、熱可塑性を主成分とする射出成形品、ブロック成形品、注型成形品ならば全て実施可能である。これ等の発泡成形品は、自動車部品、家電、oA機器、住宅設備、その他雑貨、遊技機などに多用される。
【0153】
「成形空間」とは、射出成形、ブロック成形、又は注型成形に於いて、発泡性を持たせた樹脂、又は/及び非発泡性の樹脂で満たされる空間を言う。又「キャピティ内」とは、成形空間の内部、空間、又は体積(vol)、容積(vol)を言う。「金型キャビティ」とは「成形空間」と同義語である。単に「キャビティ」と言う場合もある。
【0154】
「射出」とは、成形空間内に発泡性を持たせた樹脂、又は/及び非発泡性の樹脂を充填する事、注入する事、又はその工程(プロセス)を言う。
【0155】
「充填」とは、成形加工に於いて、成形空間内に発泡性を持たせた樹脂、又は/及び非発泡性の樹脂を満たす事を言う。成形空間内の体積よりも少ない量の充填は、ショート・ショット、又はショート・モールドと言う。同等な量の充填は、フル・ショット、又はフル・パックと言う。成形空間内の体積よりも多い量の充填は、オーバー・ショット、又はオーバー・パックと言う。ヒケを少なくする、又は転写性を向上する為、フル・ショット後に成形機加熱筒から樹脂の保圧をかける場合は、保圧を使用した事を明示する。ブロック成形の場合の非加圧、加圧の区分けは、充填後は非加圧、充填後に加圧などと加圧の有無を明示する。
【0156】
「加熱筒内の樹脂」とは、成形機(射出成形機、押出成形機、注型成形機など)の加熱筒内で、加熱溶融前のペレット、バルク、パウダーなど固体(固形)の状態、可塑化途中の段階、可塑化が完了して溶融状態にある熱可塑性樹脂を言う。
【0157】
{ガス・カウンター・プレッシヤー(GCP)}
「GCP」とは、図10図11に示すシール金型の中(成形空間など)に予め大気圧以上の気体で圧力をかけて、加圧して於いて、加圧下の中に気体、液体、固体の発泡剤(単独でも、複合でも可能)を用いて発泡性を付与させた発泡性樹脂を射出して、充填して、充填の途中(樹脂の種類、発泡剤の種類、発泡剤の添加量、発泡性ガスの種類、GCPの圧力などによって排気のタイミングは変わるが、発明者の経験から、成形空間内に発泡性樹脂が90%以上充填された段階で、排気しても、完全に排気されるまでの時間がかかる事、樹脂内の発泡性ガスが表面に出てスワール・マークとなるまでの時間が少し遅れるので、表面にスワール・マークのない綺麗な成形品を得る事が出来る。)、充填完了後に金型内に入れた気体を排気する。これによって表面はスワール・マーク(発泡縞模様)のない表面が平滑で綺麗なスキン層(非発泡層)、内部は発泡層を持つ成形品(発泡構造体)を得る手段、プロセスと意味する。別にはGCPとはシール金型内へ大気圧以上の気体を用いて加圧する行為、工程の意味もある。GCPを別には「圧気」とも言い、圧気とは金型内を大気圧以上で加圧する事、金型内に入れた気体を意味する場合もある。
【0158】
GCPの金型への圧気の手段は、図10図11はパーティングから、成形空間への圧気を示しているが、他の手段、例えばエジェクターピンを二重構造にして内芯と、外筒との隙間から圧気しても良い。エジェクターピンをガストース(商品名)、先端部を焼結金属にして圧気の気体が通れば、成形空間内は圧気出来る。この場合の圧気はエジェクタープレートを圧気圧力に耐える様にしてエジェクタープレートの隙間に圧気する。この場合の金型構造は図11のエジェクターピンは図24乃至図30の荷重式Oリングでシールした構造が良い。
衣装面ではない部分にφ50mm程度の前記2重構造の入子(入れ子)を設け、隙間から圧気しても良い。この様に成形空間内の圧気はパーティングの隙間だけではないが、排気は成形空間内の圧気を溶融樹脂の充填の力(=充填をされる事)によってパーティングから他の場所、例えば図6符番55に移送させる。
例えば特開2010-184401(P2010-184401A)では、型内への圧気は可能であるが、型内への樹脂の充填に力によって樹脂の充填には邪魔な圧気ガスを別の場所に移送する事などは不可能である。この手段ではショート・モールド、変色・焼けの原因になる。
【0159】
「担持」とは、例えば樹脂ペレットの表面に、塗料用のワニス、成形予定の樹脂を溶剤で溶解したドープセメントなどをバインダーとして用いて、ペレット表面に他の物質、例えば本発明で使用する発泡剤の粉体、発泡助剤の粉体、起泡核剤の粉体、又は/及び顔料の粉体、その他添加剤をくっ付ける作業を言う。AS、ABS(AAS、ASA、AES、ACSを含む。)のバインダーはAS、ABS、アクリル樹脂、スチレン変性アクリル樹脂を溶剤に溶解させたドープセメント、ワニスを、成形予定の樹脂がPS、HIPS、変性PPO(E)の場合はPS、HIPS、アクリル樹脂、スチレン変性アクリル樹脂を溶剤に溶解させたドープセメント、ワニスを使用する。PPの場合は酸変性、或いはハロゲン化したPP、マレイン酸変性のPP(例えば無水マレイン酸を用いた変性)を溶剤に溶解して、或いは水で乳化してバインダーとして使用する。
【0160】
(バインダー)
「バインダー」とは発泡剤、起泡核剤(性状は粉体)、分解促進剤などを配合して、発泡成形予定のペレットの表面に担持する際に用いる接着剤の作用・効果をする物質、これ等発泡剤などの粉体、発泡成形予定の樹脂の粉体とを混ぜ合わせ、固めて造粒する際、接着剤の作用・効果をする物質を言う。バインダーを例示すれば、ABS、HIPS、変性PPO(E)にはその樹脂と相容(溶)性のある、AS、ABS、PS、HIPSをMEKなどの溶剤を用いて溶解したドープセメント、塗料用に市販されているスチレン変性アクリル樹脂ワニス、スチレン変性アクリル樹脂のエマルジョン、サスペンジョンのモノが例示される。PP用にはマレイン酸変性のPPを溶剤で溶解したワニス、PP用にはマレイン酸変性のPPをエマルジョン、サスペンジョンのモノが例示される。
【0161】
{発泡剤の粉末を用いてサスペンジョン(懸濁)させる。}
前記ワニスに不溶なモノ、例えば溶剤系のワニスに、有機系の発泡剤ADCA、HDCAなどの粉末を、無機系の発泡剤の重曹などを混ぜ合わせたモノも、サスペンジョンと言う。水系のエマルジョンの中にADCA、HDCAを分散させたモノを使用しても良い。エマルジョンの中に水に可溶な重曹を溶解させたワニスを用いても良い。
これ等ワニスは、ペレットを加熱しながら、スプレーすれば、発泡剤が含有(分散か、溶解した。)したワニスを用いるので同じ様にペレットの表面に担持が出来る。ペレットを用いずに、予め少量の発泡剤の粉末を入れて、加熱しながらスプレーをすれば造粒も出来る。
ロッキングミキサーにペレットを入れて、サスペンジョンをスプレーする事で発泡時のマスター・バッチの製造も出来る。ペレットと、サスペンジョンとを入れて加熱をしながら攪拌をしても良い。
【0162】
「酸変性」とは、PPは殆どの溶剤に不溶、本発明のPPのペレットの表面に担持する場合には、成形予定のPPと相容(溶)性のある樹脂のワニスを使用する。成形予定の樹脂がPPの場合に、PPと相容(溶)するPPを変性して、溶剤に、水に溶解、微分散可能な様にする。一般的にはPPをマレイン酸、アクリル酸、塩素(CI)、臭素(Br)などを用いて変性させれば良い。塩素、臭素などのハロゲンを用いた場合、発泡成形加工時に加熱筒内で分解してハロゲンが遊離、加熱筒、スクリュー、金型などを腐食する危険性、PPを変色させる問題がある。マレイン酸などは弱酸なので、これ等の酸を用いてPPを酸変性した場合は、仮に酸が遊離しても、加熱筒、スクリュー、金型など腐食の問題は少ない、或いはない。
酸変性のPPが本発明の担持に用いるバインダー剤に使用可能かは、PPのペレットの上に1wt(重量)%乃至5wt%、重量の代わりに質量を用いて表現すれば1mass(質量)%乃至5mass%担持し、担持したPPを射出成形機でパージしてそのパージ塊に変色、焼け発生しないかで使用の可否を判断する。
前記パージ塊の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてのPPとマレイン酸変性の分散の形態、界面の剥がれなどの有無の観察、実際に成形予定のPPと、マレイン酸変性にPPなどを混ぜ合わせ(発泡剤として使用した時に入り込んでしまう量を考慮して、)、PPの物理的特性、化学的特性が使用の範囲内に留まるかを確認する。
PPに酸変性をすると溶融温度が下がるので、PPのペレットと、発泡剤の粉体と、酸変性されたPPの粉体とを混ぜ合わせて加熱をすると、溶融温度が低い酸変性のPPが溶融して、溶融した酸変性のPPがバインダーとなって、PPのペレットの周りに、表面に担持出来る。
PPペレットだけを先に入れ加熱して、表面を溶融させた状態で、発泡剤のパウダーを入れると、幾らかは担持は出来る。
【0163】
「レイン・ドロップ」とは、GCPを行う場合に発生する特有な外観不良で、溶融樹脂が金型に充填される際に、発泡性樹脂の表面の発泡を抑える目的で成形空間内を加圧した気体を充填途中の樹脂が巻き込んで、溶融樹脂と、金型との隙間に入り込んだ結果、成形品表面に凹が出てしまう事である。
【0164】
(真空引き)
「真空引き」とは、真空ポンプを用いて金型内の圧気を吸引する手段、予め真空ポンプを用いて、シール金型の圧気を入れる体積より大きいタンク(サブタンク)に引き入れる手段を言う。GCPでは圧気は表面の発泡を押さえる手段には有効、しかし樹脂の充填には邪魔モノ、これによってレイン・ドロップが生じる。シボ加工を行ったり、パーティングのガスペントの巾を大きくして、金型内の圧気がスムースに排気する様にする。GCPの排気後に0.1mm、0.2mmモールド・バックなどをして、ガスベントを広くする手段を行う。モールド・バック後に、圧気のガス回路を利用して真空引きをすると更に効果は高くなる。
【0165】
レイン・ドロップを避けるには、金型の表面温度を下げる、樹脂の粘度を下げる、即ち樹脂温度を下げる事、充填の速度を遅くして圧気の気体の巻き込みを少なくする事などの手段を講じたが、何れも成形加工性が低下した。しかしこの手段(GCP排気後にモールド・バックさせる手段、さらにはモールド・バックと同時に、少し遅れて真空引きをする手段の何れか)ではレイン・ドロップ問題の解消が出来た。
【0166】
図49は金型内の圧気を排気後に、更に真空引きをして、発泡倍率を高める事、レイン・ドロップをなくす手段を示している。符番43によって圧縮された気体は、図10図11に示すシール金型が閉じられ、符番46注入弁が開かれ、符番138の回路(符番49、符番52など)を通り、金型内を大気圧以上の大なる圧力で加圧(圧気)する。圧力は成形空間内を予め与圧(「加圧」,「圧気」などと言う。)して於いて、その圧力を維持しながら、発泡性樹脂を充填するが、成形空間内の与圧によって表面の発泡は抑えられ、スワール・マークは発生しない。樹脂の種類、発泡剤の種類、発泡剤の添加量、発泡性ガスの種類、GCP排気のタイミングは変わるが、発明者の経験から、圧気の圧力は成形空間内に充填された発泡性樹脂の発泡を抑える(抑制する。)圧力を必要として、大気圧以上あれば良く、好ましくは0.6MPa以上で、実際に本実施例での圧気にエアーを用いた場合の圧力は0.8MPa乃至1.5MPaとした。それ以上でも構わないが、圧気の圧力を高くすると、樹脂の充填によって巻き込まれた圧気に起因するレイン・ドロップが発生しやすく多くなる。
【0167】
加圧された成形空間内に気体、液体、固体の発泡剤を用いて(単体の場合もあれば、気体と固体、液体と固体など併用する場合もある。)発泡性を付与した発泡性樹脂を充填、充填の途中、充填完了後直ぐに、或いはすこし時間を経過した後弁46を閉じ、弁51を開けて圧気を大気中に排気する。一般にはこれが本発明で示すGCPのプロセスであるが、更に弁51も閉じ、弁141を開けて、予め符番144の真空ポンプを用いて減圧して於いた符番142のタンク内に吸引させる。この場合に金型を0.1mm乃至0.3mm程度モールド・バックさせ、PL(パーティング)を広げると、結果のガスベントが広がるのでレイン・ドロップの原因となる、金型と樹脂の隙間に入り込んだ圧気を強制的に排気出来るので、レイン・ドロップの発生はしない。この場合にパーティング(符番60)に設けた符番33のOリングはシール機能をなくさない様(=パーティングをモールド・バックさせてパーティングに隙間を設けて、真空引きしても開けたパーティングから空気が入り込まない様にシール性を維持する。)に直径が太いものを使用する必要がある。符番136は金型内を加圧する圧気の流れ、符番137は金型内を圧気する気体を示す。符番139は金型内に圧気を排気する場合の流れを示し、符番140は真空引きされる圧気の流れを示す。符番145はタンク142内の減圧具合を確認する圧力計、143は真空ポンプで吸引される142内の気体の流れを、符番135はコンプレッサーで圧縮された気体が図15図16内へ送り込まれる気体を示す。符番146は金型内を圧気する回路に設けられた逆止弁、符番147は圧気の排気回路に設けられた逆止弁、符番148は真空引きの回路に設けられた逆止弁である。符番146、符番147、符番148の逆止弁は、弁51、弁133のK開閉を同調させれば必ずしも設ける必要はない。
【0168】
(GCPと中空成形との併用)
成形空間内に充填された発泡性樹脂の内部に高圧ガスを用いて一旦中空とし、その後に排気すると内部に発泡が開始される。この場合にエジェクターピンを二重構造にして、高圧ガスを入れる。排気は高圧ガス装置に設けた排気弁を開けて排気する。エジェクタープレートを下げてガスビンを後退させれば、排気速度が上がるので、内部にいれた高圧ガスが完全に排気され、膨れ、破裂の問題は一気に解決される。
【0169】
本発明のGCPと、圧空成形(金型と樹脂の隙間に高圧ガスを入れて、高圧ガスの圧力で加圧側の反対側への転写性を高める手段)との組み合わせの実施も可能である。
【0170】
「発泡剤」の性状は、気体、液体、固体の何れもがあり、大きくは物理発泡剤、化学発泡剤に分類され、それぞれ無機系、有機系のモノがある。発泡剤は、化学発泡剤の無機系の熱分解型では炭酸水素塩、炭酸塩、亜硝酸塩、水素化合物、水素化合物カルボン酸、カルボン酸塩などがあり、セスキ(Sesqui=3/2)炭酸ソーダ{(化学名;セスキ炭酸ナトリウム)、化学式:NaCO・NaHCO・2HO}は、NaHCOは熱分解して炭酸ガスと水蒸気を、中に2モルの結晶水(今は「結晶水」の概念ではなく「水和物」と言う。)を持っているので、勿論この2モルの結晶水も加熱筒内で、気化し、その水蒸気は発泡性ガスとして作用する。発泡剤としての中空気球{ミクロ(マイクロ)バルーン}も本発明の発泡剤に含まれ、バインダーを用いた本発明の方法(担持の手段)で、成形予定の樹脂ペレットの回りに担持し、発泡剤マスター・バッチとして製造が出来る。
【0171】
有機系の熱分解型であるアゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジ化合物、ニトロソ化合物、トリアゾール化合物などがあり、反応型ではイソシアネート化合物がある。これ等を例示すると加熱筒内の樹脂中に窒素ガス、炭酸ガス(二酸化炭素)などを単独で、或いは混ぜ合わせて複合ガスとして入れ込む、例えばミューセル、アモテックなど、水、エタノール、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、クエン酸ナトリウム水溶液などの液状発泡剤など、市販の発泡剤は重曹、炭酸水素カリウム、ADCA{アゾ・ダイ(ジ)・カルボン酸アミド}、HDCA(ヒドロ・ダイ・ガルボン酸アミド)、アゾ・ダイ・カルボキシレート(ADCAのBa塩、HDCAのBa塩)、DPT(ダイ・ニトロソ・ペンタメチレンテトラミン)、OBSH{P-P’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)}、AIBN(アゾ・ビス・イソブチロ・ニトリル)〕などがあげられる。発泡剤、発泡成形の詳細は、(株)技術情報協会1993年8月発行の各種高分子と発泡成形技術に記載されている。
本発明では、発泡剤の性質を明確にする為に、性状が23℃の1気圧の元で性状が気体であるモノを「気体の発泡剤(例えばミューセルに使用する窒素ガスなど)」、液体であるモノを「液状発泡剤(例えばエタノール、重曹水など)」、固体であるモノを「固形の発泡剤(重曹、ADCAなど、或いはこれ等を含む発泡剤のマスター・バッチ)」と区別する。市販の発泡剤は例えば発泡剤のマスター・バッチとしてポリスレン、アドバンセル、ファインブロー(いずれも商品名で固形の性状はペレット)がある。
【0172】
液状発泡剤を熱可塑性樹脂に用いる場合、成形品の重量に対して最適な容量を測定(計量)して、加熱筒内の熱可塑性樹脂内に注入し、加熱筒と加熱筒内の温度、加熱筒内の溶融した熱可塑性樹脂の温度、又は/及び金型の温度によって気化、熱分解、又は/及び化学反応させて、又は熱を必要としないで分解、又は/及び化学反応させて発泡に有用(有効)なガスを発生させる。
【0173】
発生させたガスは、加熱筒内の熱可塑性樹脂中に微分散又は/及び加圧溶解させる。そうすると、加熱筒内の熱可塑性樹脂は、発泡性を有する熱可塑性樹脂となる。これを成形空間内に充填して、発泡構造体を有する成形品を製造する事が出来る。別言すると、「発泡成形」とは、加熱筒内の樹脂に対して、発泡性ガスを分散又は/及び溶解などさせて発泡性を付与した樹脂を金型に充填させて発泡構造体を得る事、及びその工程を言う。
【0174】
「起泡」とは、液状発泡剤、市販の発泡剤が気化などの物理的な変化、熱分解、化学反応などによって発泡成形に有用な気体、例えば水蒸気、アルコール蒸気(気体)、有機溶剤の蒸気、一酸化炭素、炭酸ガス、窒素ガス、水素などを発生させる事を言う。
「発泡」とは、発泡性ガスを溶融状態の熱可塑性樹脂中に微分散又は/及び加圧溶解させ、圧力を下げる事で、熱可塑性樹脂の内部、又は/及び表面で発泡セルが形成させる事を言う。熱硬化性樹脂の場合は、発泡剤を加熱する事で、発泡剤が気化、熱分解、化学反応して、発泡性ガスを発生し、熱硬化性樹脂の内部、又は/及び表面で発泡セルを形成させる事を言う。この様に発泡によって内部、又は/及び外部に発泡層を持った成形品を発泡成形品と言う。
【0175】
別言すると、「起泡」とは、外部からの圧力、例えばGCP、背圧、射出圧力などの力によって発泡性ガスが抑えられた状態(樹脂中に圧縮され体積が小さく微分散した状態又は/及び加圧溶解された状態)から、外部からの圧力が少なくなり、又はなくなり、樹脂中の発泡性ガスの体積が増す事、又は/及び加圧溶解されていた発泡性ガスが気体になる事を言う。又「起泡」には、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂が加熱筒から押出されて発泡する場合、又は液状、又は固体の発泡剤の気化、熱分解、化学反応によって発泡性ガスが発生する工程も「起泡」と言う。
【0176】
「発泡性樹脂」とは、発泡成形に有用な発泡性ガスを微分散させた、又は/及び加圧溶解させた溶融状態の熱可塑性樹脂を言う。別言すると、「発泡性樹脂」とは、気体の発泡剤、液状発泡剤、又は/及び市販の発泡剤を含んだ熱可塑性樹脂を言う。本発明では「溶融状態の発泡性を持たせた熱可塑性樹脂」、「発泡剤含有の熱可塑性樹脂、又は発泡剤含有の熱硬化性樹脂」と発泡性を持たせた事、気体、液状発泡剤、又は/及び市販の発泡剤を含有する事など樹脂の状態を出来るだけ正確に記す。
【0177】
「発泡成形品」とは、発泡性を持たせた熱可塑性樹脂を成形加工した、内部に不連続な発泡セル(Cell)を持っている樹脂成形品を言う。発泡セルは、その大きさが1、000μm(ミクロン、マイクロメーター)以下である。本発明では、中空部分と発泡セルとが混在する場合も発泡成形品とする。
【0178】
「併用」とは、それだけでなく、別のモノと共に用いる事、組み合わせる事を言う。例えば成形加工法の1つでも効果があるが、別の方法との併用(GCPと中空成形、GCPと圧空成形など)も可能で、相乗効果を求めたり、一方又は/及び両方の効果の向上が期待出来る。発泡剤も、単独ではなく数種類を併用する事もある。市販の発泡剤と併用する事もある。気体、液体、固体の発泡剤を併用する事もある。
【0179】
「発泡助剤」とは、発泡剤の分解温度を下げたり、発泡剤に分解を促進させる目的で使用する物質を言う。有機系発泡剤の発泡助剤は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、金属石鹸、尿素(ADCAの分解温度を下げる作用・効果がある。)、亜鉛華などがあげられ、炭酸塩、炭酸水素塩の分解に用いる無機系、有機系(例えばクエン酸)の酸も発泡助剤であるとも言える。
【0180】
「起泡(発泡)核剤」とは、微細(本発明では直径が2000μm以下の発泡セルと定義する。)な発泡セルを形成させる目的で、成形予定の樹脂、発泡剤に混ぜ合わせる物質である。例えば、亜鉛華、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩などが挙げられる。樹脂の添加剤、例えば顔料なども起泡核剤の作用をする。有機酸のアルカリ金属塩、特にクエン酸2水素1ナトリウム塩、クエン酸2水素1カリウム塩などは有効な起泡核剤の作用をする。
【0181】
「発泡剤混合比」とは、発泡剤の重量、又は容量を1とし、成形予定の樹脂の重量、又は容量との比で、成形予定の樹脂中に含まれる発泡剤の割合で表す。例えば、樹脂に対して2wt%、2vol(容量、体積、容積)%の液状発泡剤を使用する場合は、2:100(或いは1:50、或いは1/50)、又は2wt%、2vol%などと表現する。
【0182】
(発泡剤のマスター・バッチ)
市販の発泡剤は、無機系の物質、例えば重曹、炭酸水素カリウムを発泡剤に使用する場合、有機系の物質、例えばADCA,DPTなどの性状は粉末(粉体)なので、これ等粉末の発泡剤を用いる場合は、使用の前に、発泡させる樹脂のペレットにパラフィンオイル、オリーブオイル、菜種油などと、粉末の発泡剤を入れて、混ぜ合わせ(タンブラーなどを用いて)、ペレットの周りに発泡剤を展着させて使用する。
少量の場合はこの展着の手段でも良いが、樹脂の使用量が多くなると、展着は厄介な作業になる。上記発泡剤を配合予定の樹脂と相溶性、相容性がある樹脂を用いて発泡剤のマスター・バッチを製造する。
マスター・バッチの場合、発泡予定の樹脂の形状(一般にはペレット)と同じ様にペレットの形状とするので、タンブラー、オートカラーリング装置などを用いて最適な量(発泡剤のマスター・バッチの最適な添加量)を容易に安定させられるので、結果安定した発泡倍率を持った発泡成形品を得る事が出来る。
本発明で使用する発泡剤、起泡核剤のマスター・バッチに用いられる樹脂{マスター・バッチの主成分の樹脂(キャリア・レジン、ベース・レジンなどと言う。)}は配合予定の樹脂と相溶性、相容性を持つ必要がある。
【0183】
「相溶性」とは、熱可塑性樹脂の場合に其々の樹脂が加熱溶融の段階で分子レベルで混ざり合う性質を言い、例えばABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンの3元共重合体)に対しての、AS(アクリルニトリル・スチレンの元共重合体)は相溶性がある、PPO(ポリフェニレンオキサイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)にはPS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)が相溶する。PPOとPPEとは略同じ分子構造(フェノールの、例えばメチル化、エチル化などしたモノマーの酸化重合体)なので、本発明はPPO(E)と総称する。
HIPS又は/及びPSを用いて変性、変成(混ぜ合わせてブレンドポリマー、ポリマーアロイとした。)PPO(E)を変性PPO(E)、m‐PPO(E)と言う。
【0184】
「相容性」とは、相溶せず一方の樹脂中に他方の樹脂が分散し、海島構造、又はその他の構造を示す場合で、例えばABS中のBゴム{ブタジエンゴムにアクリルニトリルとスチレンとをグラフト共重合させた重合体(高分子)}は相容性を示す。相溶、相容する場合は物性低下しない、或いは少ない。本発明では相溶性と、相容性とを本発明では相容(溶)性と記述する。相容(溶)性とは相溶性及び/又は相容性を示す場合を示す。
【0185】
{ポリプロピレン(PP)}
本発明で使用可能なPPに付いて説明する。PPとはプロピレンの重合体で、立体規則の違いにより、アイソタクチック(イソタクチク)、シンジオタクチック、アタクチックの立体規則性(タクティシティー)の異なったポリプロピレンが合成される。PPはコポリマー(主としてエチレン)との共重合の形態に於いて、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーの3種に分類される。ホモポリマーはプロピレンの単独重合体である。プロピレンと連鎖移動剤として水素を用いて重合する。違いによりn-ブチル基或いは、i(iso)プロピル基になる。メタロセン触媒により得られるポリマーでは、2、1挿入や、1、3挿入により見かけ上エチレンが共重合された構造となる。アイソタクチックPPの示差走査熱量計(DSC)によって測定された融点は約165℃である、(一方平衡融点は187.5℃とされる。)融点はタクティシティーが高いほど向上する。ランダムコポリマーは、エチレンを通常4.5Wt%以下を共重合体中に含有する。
エチレンに更にブテン-1を共重合した三元共重合体(ターポリマー)も、プロピレンとブテンー1の二元共重合体(エチレンを含まない。)も存在してこれ等は入手可能である。ランダムとは統計的にランダムであると言う事を必ずしも意味しない。エチレンのポリプロピレン主鎖中に分布(ランダムネス)は、触媒の種類によって異なる。必ずしも全ての分子量分画に於いてエチレン含有率が等しいと言う訳ではなく、低分子量鎖と高分子量鎖では、エチレンの含有量が異なっている。即ちエチレン含有量の分布(共重合組成分布)が存在する。メタロセン触媒を用いて得られるポリマーは、固体触媒を用いた場合よりも共重合組成分布が狭く均一である。ランダムコポリマーは、ホモポリマーより結晶性が低く、透明で、靭性に優れ柔軟なポリマーである。
コモノマー(共重合されるモノマーは主にはエチレン)の含有量が多いほど融点は低くなる。ブロックコポリマーは、インパクトコポリマー、異相共重合体とも呼ばれる。これはホモポリマーの重合に続き、後続の反応槽でエチレンが共重合されたエチレンープロピレン重合体を含有する組成物を意味する。ブロックコポリマーはホモポリマーの「海」の中にエチレンープロピレン重合体の「島」が浮かぶ相容構造(海島構造)をしている。この海島構造はエチレン-プロピレン重合体のエチレン分率、分子量及びホモポリマーの分子量により制御可能である。ポリプロピレンにおける「ブロック」の語は、特に断りがない限り通常のブロックコポリマーを意味しない。即ちホモポリプロピレン連鎖とエチレン-プロピレン共重合体連鎖が化学的に結合されている事を意味しない。エチレン-プロピレン重合体の含有率を40wt%乃至50wt%或いはそれ以上高くしたブロックコポリマーをリアクターメイドTPO、或いはリアクターTPO、又は単にTPoと呼ぶ事がある。ブロックコポリマーはホモポリマーより耐衝撃性に優れる。ホモポリマーより透明性は劣る。
上述の様にPPはポリプロピレン、エチレンーポリプロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン・エチレン共重合体、プロピレン・4(又は5)-メチル-1、4ヘキサジエン共重合体などが例示される。
アイソタクチックPP、シンジオタクチック PPは結晶性の樹脂、アイソタクチックPPの結晶構造は3/1螺旋鎖を基礎とする、α晶、β晶、γ晶などの結晶構造を取る事が出来る。支配的な結晶構造であり、シンジオタクチックPPの結晶構造は8/1螺旋鎖を基礎とする斜方晶である。
【0186】
これ等のPPは本発明の成形材料として用いるが、上述したそれぞれ単独で使用する以外には、所望する特性を持たせる目的で、混ぜ合わせ、ブレンドポリマーとしても使用される。ブレンドポリマーの製造は、ペレット化の段階でも、射出成形加工の際ホッパー内にそれぞれの材料を混ぜ合わせて、射出成形機加熱筒内計量の段階でブレンドしても良い。これを「モールド・ブレンド」と言う。
【0187】
(PP用発泡剤のマスター・パッチ)
上記PPのペレット形態のモノは発泡剤の粉体を担持する際にも使用される。発泡剤の製造には、PPの粉体と発泡剤の粉体とを混ぜ合わせて、マレイン酸変性のPPなどのワニスを用いてH加工の様に固めて、ペレット化(PPペレットの回りに担持する。)でも良い。
以下H加工の原理を示す。テフロンコーティングされた調理用器具であるフライパンを、80℃程度の加熱した中に、PPのペレットを入れ、PPペレットに対して例えば20wt%の重曹の粉体を入れる。ペレットと発泡剤とが中が均一になる様に攪拌をしながら、その中に上からマレイン酸変性のPPの溶液をスプレーする。マレイン酸変性のPP溶液中の溶媒は蒸発して、結果PPペレットの回り(表面)に重曹が、マレイン酸変性のPPをバインダー(例えば糊としての作用)として担持される。十分に溶剤が蒸発した上で、取り出し、重曹を20wt%担持した、発泡剤のマスター・バッチとして使用出来る。ペレット同士がくつ付いている場合は、ふるいにかけて粒径を揃える。必要に応じて粉砕などをする場合もある。
【0188】
永和化成、三協化成、大塚化学などの発泡剤メーカーのPP用の発泡剤のマスター・バッチは、前記無機系、有機系発泡剤と、PPと相容性のあるPE(ポリエチレン)をキャリア・レジン、ベース・レジンとして用いて、PP用の発泡剤のマスター・バッチを製造して市販{例えば、永和化成から販売されているポリスレンEE207(商品名)など}されている。
PP(ノーブレンAZ864)に永和化成の発泡剤のマスター・バッチをポリスレン EE207(商品名、グレード)のベース・レジンはPEを3.5wt%添加し後述するGCP法で表面のスワール・マーク(符番3)がない成形品でもゲート近傍にはスワール・マークに似た現象(符番2)が現れた。(図1)永和化成製の発泡剤ポリスレン EE25C(商品名、グレード、ベース・レジンはPE)でも同様のゲート近傍にはスワール・マークに似た現象が発生した。
FT-IR(赤外分光分析)の結果このスワール・マークに似た現象は発泡剤のマスター・バッチ中のPEである事が判明した。ADCAの元末(性状は粉体)をペレットにパラフィンオイルを用いて展着、GCPを用いての発泡成形を実施した場合は、図1の様なゲート近傍に符番2の現象は発生しない。図1における符番1はゲートである。
【0189】
参考までに図3はGCPを行わない発泡成形(透明ABS)で全面にスワ一ル・マークが発生している事を示している。
【0190】
この問題を解決する手段として、発明者は発泡予定のPPと相溶するPPを発泡剤のマスター・バッチのベース・レジンとして用いる事を検討した。単軸、多軸の押し出し機、ニーダーなどを用いても、PEに比べてPPは溶融温度が20℃以上も高いので、これ等の装置では溶融混練の段階で、配合予定の発泡剤は熱分解して、発泡剤のマスター・バッチとしての機能{単位当たり(例えば発泡剤のマスター・バッチの100グラム当たりの)の発泡性ガスの発生量}が低下してしまう。
この問題の解決する手段として、発泡予定のPPのペレットを、プレートの上で加熱して、パラフィンオイル、ステアリン酸と、揮発性溶剤、発泡剤パウダーとを攪拌をしながらPPペレットの表面に発泡剤(例えばADCA、重曹など)を担持する事の発想を得た。この発泡剤のマスター・バッチを用いた場合、PEが存在しないので、ゲート近傍にPEに起因する図1図2の様なシルバーの発生の問題はない。
この加工方法は涛(濤)和化学(株)が既に着色剤のマスター・バッチの加工で量産技術を保有していたので、PP用の発泡剤のマスター・バッチとして、PPと相溶性、相容性のあるPPをベース・レジンとして発泡剤がADCAと、重曹とを其々10wt%含有の発泡剤のマスター・バッチの試作を行った。
【0191】
発明者はヘンシェルミキサー(商品名)にPPのペレットを90部に対して、ADCAのパウダーを10部、バインダーとして、マルチプライマーEXC-3000を5部(初めから投入しても良いが、スプレーしながら、或いは滴下しながら入れても良い。)入れ、攪拌をしながら、ミキサーの温度を室温から少しづつ上げて60℃まで加熱しながらマルチプライマーEXC-3000に含まれる溶剤を蒸発させ、PPの周りに、ADCAを担持したPP用(PPと相溶性又は/及び相容性を持つPP)発泡剤の製造が可能な事を確認した。
ADCA以外に重曹でも、炭酸水素カリウムでも製造は可能、マルチプライマーにマレイン酸変性樹脂を主成分としたプライマーのエマルジョン(エマルション)、サスペンジョン(サスペンション)タイプも同様に使用(実施例18参照)する事も可能である。
【0192】
PPのペレット70wt%と、ADCAのパウダー20wt%と、マレイン酸変性のPP{ユニチカ(株)製のARROWBASE(アローベース) DB-4010、性状はエマルジョンタイプ}とを10Wt%混ぜ合わせ、80℃程度に加熱して、蒸発乾固(エマルジョンの中の水などの溶剤を蒸発)させて、ADCA含有の発泡剤マスター・バッチを製造した。
ADCAの代わりに粉体の重曹でも製造が可能な事も確認した。又起泡核剤のクエン酸2水素ナトリウムでも同様にマスター・バッチの製造が可能である事を確認した。
【0193】
重曹以外には、炭酸水素のアルカリ金属塩、アドバンセル(商品名)で販売されている発泡剤の中のミクロバルーン、中空糸球なども、この手段(方法)では、樹脂のペレットの表面に担持するので、発泡剤(マスター・バッチ)とする事が出来る。
東洋紡(株)が販売しているハードレン NZ-1015(エマルジョンタイプ、水性タイプ)で市販され、含まれるマレイン酸変性の量(溶解固形分は約30wt%)でも使用は可能、マレイン酸変性のPP{PMA H1100P、PMA-F6(商品名)は粉体、PPのパウダー;ADCA:PMA H1100P、又はPMA-F6の混合比を7:2:1として、100℃程度に加熱、これ等マレイン酸変性のPPを溶融させて、PPペレットの回りに、ADCAを担持しても良い。これ等のマレイン酸変性のPPを、有機溶剤(例えばトルエン、アルコール、ケトンなど)を用いて、溶解した、マレイン酸変性のPPを用いても良い。
無水マレイン酸は官能基によって多くの分子構造のモノが存在する。PP用の発泡剤製造にマレイン酸変性のPPを用いた場合、溶剤を用い溶解したワニス、エマルジョン、サスペンジョンとしたモノがある。エマルジョン、サスペンジョンの製造に乳化剤(界面活性剤)を用いるが、乳化剤が熱安定性が悪い場合、発泡成形品に焼け・変色の問題となる。乳化剤を使用しないモノ、熱安定性(成形温度にさらされても熱分解などしない。)の良い乳化剤を使用する。
【0194】
この方法を用いればPEのペレットにマレイン酸変性のPEを用いて担持する事が出来る。この発泡剤マスター・バッチはPE用にも使用される。
【0195】
ASパウダー又は、ABSのパウダーと、重曹と、少量の水で金平糖製造の手段を用いれば成形予定の樹脂がAS、ABSの発泡成形に使用する発泡剤マスター・バッチとする事が出来る。PS、HIPSの場合も同様に簡単に製造は出来る。この方法を用いればPC用の着色のマスター・バッチの製造も可能である。
【0196】
(ABS用発泡剤のマスター・バッチ)
ABSの場合の発泡剤のマスター・バッチの製造方法を説明する。始めにABSが溶解可能な溶剤、例えばメチル・エチル・ケトン(MEK、2-ブタノン、エチル・メチル・ケトン、n-ブタノン)を用いて溶解、ドープセメントを製造する。次にABSのペレットをヘンシェルミキサーに入れ、次に発泡剤(例えばADCA、重曹など)の粉末を入れ、45℃程度に加温しながら前記ドープセメントをスプレーする。ドープセメントは必要に応じてMEKで、その他の溶剤例えばトルエンでスプレーが可能な粘度まで調整を行う。乾燥が完了すれば、ABSペレットの周り(表面)に発泡剤が担持された発泡剤のマスター・バッチが得られる。起泡核剤(例えばクエン酸2水素1ナトリウム)の場合は同様に、発泡剤の代わりに起泡核剤(性状は粉末)を用いて同様に担持すれば起泡核剤のマスター・バッチが得られる。
発泡助剤例えばADCAの分解温度を下げる物質に尿素があるが、これも同様な手段で担持すれば、発泡助剤を担持した発泡助剤のマスター・バッチが得られる。
担持に用いるバインダーはABSのドープセメントを用いたが、実施例6のリペレS#1100はアクリル塗料で、その主成分であるスチレン変性アクリル樹脂は、ABS、HIPS、m-PPO(E)とは相容性を持つので、リペレS#1100(商品名)製造に用いるワニス{例えばDIC(株)のスチレン変性アクリル樹脂のアクリディック M-1156(商品名)}でもABSのドープセメントの代替にはなる。ABSでなくてもAS(ABSとは相溶性を持つので、)でも構わない。勿論溶剤型でなくエマルジョンタイプのスチレン変性アクリル樹脂も使用可能である。
【0197】
PS、HIPS、m-PPO(E)の場合は、ABSの代わりにHIPS、又は/及びPSのドープセメントを用いれば良い。PCの場合はPCでも、PCと相容性のあるABSのドープセメントでも良い。当然ながらエマルジョンタイプのワニスでも、又前記のドープセメントをエマルジョンとして使用も出来る。スチレン変性アクリル樹脂を用いたABS用の発泡剤マスター・バッチはPC用に使用が出来る。
PCの場合は発泡剤に重曹を用いて、或いはADCAを用いて、本発明のGCP装置で表面平滑な発泡成形は得られるが、発泡剤に起因して物性低下が著しい。PCの発泡成形に有効な発泡剤はエタノールなどの気化性の液体を溶融樹脂中に入れ、気化させてエタノール蒸気を用いて発泡性を付与する手段か、溶融樹脂中にドライアイスを入れ(射出成形機の場合は、加熱筒途中で穴を開け、溶融樹脂内に最適な容量を入れる。)昇華させ、炭酸ガスをPC中に気化させて発泡性を付与する手段が有効である。この方法は他の熱可塑性樹脂の場合でも実施出来る。
この場合に起泡核剤を使用するとより微細な発泡セル形成が出来る。
【0198】
上述した様に発泡剤、起泡核剤、発泡助剤を其々のペレットに担持して別々のマスター・バッチとする事で、成形前に其々の前記マスター・バッチを最適な配合としてペレットに混ぜ合わせる事で、容易に配合の変更出来るので、最適な発泡の状態が容易に作り出せる。
HIPS、ABS、HIPS変性PPO(E)のマスター・バッチ製造の用いるキャリア・レジンは、例えばABSはASの海のアクリロニトリルがグラフトされたブタジエンゴムが島となって浮かぶ構造を持つ。前記グラフトブタジエンゴムでも良いが、海構造となるASを用いる。HIPS、変性PPO(E)にはPSを用いても良い。
【0199】
本発明でも発泡剤の製造方法は、発泡予定の樹脂のペレット、パウダー(PPの場合製造途中のパウダーでも可)を用いる事で、同じ種類の樹脂を用いる事で物性の低下は少なく出来る。避けられる。
【0200】
(塗装適正)
前記図1図2のPEに起因するスワール・マークが発生したPP成形品に、初めにプライマーとし、実施例6に使用した武蔵塗料(株)製のマルチプライマーEXC-3000(商品名、商品番号)でプライマー処理をした後に、上塗り塗料は武蔵塗料株式化会社製のEC-GPX79-エコハイウレック シルバー(主剤と硬化剤との混合比率は10:1)(商品名、商品番号)}塗料で塗装を施した。その成形品を日本工業規格(JIS) K5600-7-1に基づき、塩水噴霧試験{ソルトスプレーテスト(SST)}を240時間行ったところ、PEが浮き出た場所に近傍にブリスター(膨れ)が発生した。
【0201】
前記PPをベース・レジンとして、ADCAを発泡剤にした発泡剤の含有量が10wt%含有の発泡剤のマスター・バッチを用いた場合、同様に塗膜適正(SST)の評価を行ったところ、PE含有ではないので、膨れの発生はなく、塗膜の付着性が良好な結果を得た。
発泡剤に重曹を、ベース・レジンにPPを用いた場合は、PEに起因するゲート近傍の不具合は確認されない。
同じ様に塗装を施し、塗膜の付着性試験(SST)を行ったところ、全面に塗膜のブリスターが発生、良好な塗装適正が得られない。発泡成形品の表面を詳細に観察した結果、発泡剤の残渣(未反応の重曹、発泡残渣の炭酸ナトリウム)が確認された。この発泡残渣が膨れの原因と考え、塗装前に、発泡成形品を、1Wt%の酢酸水に10分間浸漬、水洗して乾燥して発泡残渣を除去した発泡成形品へ塗装をした結果、塗膜の膨れはなく、塗膜の付着性が良好な結果を得た。
【0202】
(発泡残渣の除去)
重曹に代表される炭酸水素塩を用い、発泡成形をした成形品表面の発泡残渣を除去(溶解除去)させるには、酸性の溶液に浸漬、或いは酸性の溶液を成形品表面に噴霧(スプレー)して、成形品表面に存在するアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩を溶解させ塗装を施せば、塗膜の膨れ、剥がれはない事は確認された。
酸洗に用いる酸は、塩酸、硫酸、硝酸、クロム酸などの強酸と、酢酸、クエン酸、林檎酸、スルファミン酸などに代表される弱酸で、無機系の酸(無機酸)、有機系の酸(有機酸)を用いる事が出来る。
酸洗に用いる溶液の水素イオン濃度(PH)は低い方が前記炭酸塩の溶解(成形品表面からの除去)効果は高いが、PHが低いと作業環境が悪いので、PHは7以下であれば化学反応(成形品の中の発泡残渣と酸との化学反応、中和反応)良く、酸洗浴中の液の温度を高めれば、除去の効果は大きくなる。尚洗浄液の液の温度が高い方が、発泡残渣の除去効果は大きい。上記の酸は単独で、或いは混酸として使用される。
【0203】
(他の発泡剤の塗装適正)
市販の発泡剤のアドバンセルをTSOP(豊田自動車が自動車に樹脂成形品用に使用しているPPを主成分とした樹脂)の6番に用いて、塗装の付着性試験結果では、重曹の場合と同様に、ブリスターが発生し、塗膜の付着性を低下させる事を確認した。ファインブロー(商品名)でも同様に塗膜付着性の低下が確認された。ファインブローの原因は発泡剤に重曹を用いている事と推測をされる。
【0204】
(GCP)
GCPは、発泡成形に於ける表面に発生するスワール・マークをなくす有効な手段である。図10図11などで示すシールされた金型内の成形空間の中を例えば空気、窒素ガス、炭酸ガス、メタン、エタンなどの炭化水素、水素、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスで大気圧以上の大なる圧力で与圧するプロセス。この成形空間内を与圧するプロセスをGCPと言う。成形空間内を与圧する行為を「圧気する。」とも言い、成形空間内など(L,L,L)の気体を圧気とも言う。成形空間内を圧気して、発泡性が付与された発泡性樹脂を充填し、圧気を排気するプロセスもGCPである。
圧気は表面の発泡を押さえスワール・マークのない綺麗な外観の発泡成形品を得るには有効な手段であるが、樹脂の充填には厄介な存在、成形空間内に充填される樹脂の充填の力によってPLまで押し出し、表面転写性を図るが、樹脂の充填速度が速すぎた場合、金型の表面が光沢の場合、シボ加工しても深さが浅すぎた場合、樹脂温度が高すぎた場合、成形空間に充填される溶融樹脂の粘度が低い場合、金型温度が高い場合には、前記GCPの気体を巻き込んでしまう。巻き込まれたGCPの気体は、逃げ場がなくなり、結果成形表面に留まり、ヒケ(この場合はレイン・ドロップと言う。)になってしまう。
この問題を解決する手段として、GCP排気後に、金型を開けて(後退させ、リセスさせ、リセッションさせ、モールド・バックさせ、コア・バックさせて、)成形品表面に巻き込んでしまったGCPの気体を一気に外部に放出させる。必要に応じて図49に示した様に真空引きをする。
金型のPLに0.05程度のガスベントを設ける事を述べたが、PLに焼結金属(図50の右側の符番149部分)を設けても良い。この場合焼結金属は強度が低いので、一部は強度(硬度)の高いモノで挟み込んで使用する。パーティングを多層(図50のPLの左側の符番150の部分)にしてガスの排気をスムースにしても良い。(図51
図51の様に金型の中央部にガスベント(符番153)を設ける事もある。この場合はガスベント153を溶融樹脂が覆うので、ガスの排気作用・効果は低い。パーティングからの排気が有効である。図10図11に示す金型は、入子(符番23など)構造としているので、成形空間への圧気の入りは可能、符番153と同じ効果はある。一部排気は可能であるので、PLへ設けたガス回路(例えば図39など)の設置は必ず必要である。
【0205】
(GCPの原理)
GCPの原理を、図6に示す炭酸水を用いて説明する。炭酸水は炭酸ガスを水に加圧溶解させたモノで、上部の栓(符番5)が閉じられ、符番6の部分に掛かる圧力(符番6)によって炭酸ガスは符番7中(溶媒の水)に加圧され溶解されている。中の炭酸水(符番7)は炭酸ガスが大気圧下では過飽和状態となっている。
栓5を開けると、符番6の圧力が大気圧になるので、余分に溶け込んでいる炭酸ガスは気体となって発泡する。符番8は容器である。
今炭酸水を射出成形機の加熱筒に置き換えるとすると、符番5の栓はシャット・オフ・ノズルである。符番8に容器(瓶、ペットボトル)が加熱筒である。ホッパー内に発泡剤と成形予定の樹脂ペレットとを、混ぜ合わせ、加熱溶融すると発泡剤が熱分解して発泡性ガスを発生する。可塑化、計量の段階で、一定の圧力以上の背圧を掛けると、発泡性ガスは加熱筒内の溶融樹脂中に微分散、或いは加圧溶解する。
発泡性ガスの代表的なモノは窒素ガス、一酸化炭素、炭酸ガス、水蒸気、アルコールなど有機溶剤の蒸気などがある。
窒素ガスが熱可塑性樹脂とは親和性(溶解性)が低いので、多くが樹脂中に微分散をする。一酸化炭素、炭酸ガスは、親和性が高いので、樹脂中に多くは溶解する。水蒸気は窒素ガスと、炭酸ガスとの略中間の溶解性を示す。アルコール蒸気は、樹脂との親和性が非常に高く、発泡性ガスにアルコール蒸気などを用いると、溶融樹脂の流動性が増す。
加熱筒内での発泡性ガスはヘンリーの法則と、ボイルの法則とに支配される。前者ヘンリーの法則は炭酸ガスに代表される、溶融樹脂と親和性に高いモノ(ガス)に、後者ボイルの法則に支配されるのは溶融樹脂との親和性が低い窒素ガスなどに適用される。
【0206】
(GCP金型)
GCPの原理を前記炭酸水と同じ炭酸ガスを加圧溶解させたビールをもって説明する(図7図8)。今符番9で仕切られた空間(符番10)を、扉(符番11)を開けて大気圧{1気圧(atom}と同じ圧力で、コップにビールを注ぐと、図7の様にコップ上部にはビールの泡(符番12)が出る。次に符番11の扉を閉じて、仕切られた空間(符番10)にコンプレッサーなどを用いて大気圧の10倍(10気圧)のエアー(空気)で加圧して、その加圧した雰囲気の中でコップにビールを注いでも、外部から10気圧の圧力が掛かっているので、ビールは泡立たずに注げる。(図8
次に扉11を開け、空間10の圧力を10気圧から、一気に1気圧に下げると加圧溶解され、過飽和状態の炭酸ガスはヘンリーの法則に従い、 水の中に閉じ込めている炭酸ガス(溶解させている)は外部の圧力が下がるので、結果ビールの内部に炭酸ガスが出てくる。これがGCPの原理である。窒素の場合は圧気の圧力によって体積が小さくなっている発泡ガスは、外からの圧力(GCPの圧力、金型内の与圧が対応する。)がなくなる、圧気が排気されるので、体積が膨れ上がる。
【0207】
具体的に射出成形加工に於いての実施の手段を説明する。発泡性樹脂の製造方法は熱可塑性樹脂に発泡性を持たせる手段は、成形予定の樹脂ペレット(ペレットには限らず、粉体でも、バルクでも可で、成形機加熱筒の中で可塑化が出来れば形状は問わない。)と上記気体、液体、固体の発泡剤とを所望する割合{発泡予定の樹脂の体積に対して、発泡ガスの割合は、25vol%乃至250vol%となるが、圧気の圧力が低いと、発泡力を抑える力(圧力)が低いので発泡剤を多くを入れる事は出来ない。一方圧気の圧力が高いと多くの発泡性ガスを、加圧溶解、微分散させられる。GCPにエアーを用いる場合は、2MPa程度、窒素ガスも同様、炭酸ガスを用いる場合は、液化しやすいので、その圧気の温度における、臨界圧力より少し低い程度が良い。}で混ぜ合わせ〔液体の場合は、発泡予定の樹脂中に含浸させても良い。例えばABSを水中に浸漬して、ABS中に水を含浸させて成形すればABS中に水は、加熱筒内の温度(加熱筒、スクリューと溶融樹脂の温度で、)で気化して発泡剤として作用する。シリカゲルなどに水を含浸させ、ペレットと混ぜ合わせても良い。気体の場合は、可塑化され、溶融された樹脂中に入れ加熱溶融された樹脂に発泡性を付与する。勿論の事液体の発泡剤も気体と同様に加熱溶融された樹脂中に入れ、加熱溶融された樹脂に発泡性を付与しても良い。固体の発泡剤の場合はペレットと混ぜ合わせてホッパー内に投入して使用するが、加熱筒の一部に穴を開け、入れても良い。例えば固体の炭酸ガス{ドライアイス(この場合は発泡残渣がないので塗膜の付着性などの影響はない。)}〕を加熱筒内の溶融樹脂に入れ、昇華させ内部溶融樹脂に発泡性を付与出来る。当然重曹もADCAなどの化学発泡剤もドライアイスと同様に実施は可能である。加熱溶融して可塑化する、その可塑化の段階で発泡剤は気化、熱分解などをして発泡性ガスを発生、加熱筒内で加熱溶融された溶融樹脂中に微分散、溶解していく。微分散させるには加熱内の溶融樹脂に掛かる圧力を高めると良い。加圧溶融させるには一般的には可塑化中の背圧を高め、スクリュー回転数を上げれば良い。スクリューの形状は高混練タイプの モノが望ましく、必要に応じてダルメージを設けたスクリューを用いると、発泡性ガスは溶融樹脂中に微分散しやすくなるので、得られる発泡成形品の内部発泡セルはより細かく微細になる。
【0208】
発泡剤の性状は、気体、液体、固体の何れの場合である。気体の発泡剤では、加熱筒内に入れ、スクリューによって分散させるので、ダルメージの様な仕様は必要、液体と固体の場合は、分子レベルで気体を発生(液体では主に気化、固体では主には熱分解である。)させ、凝集して、発泡性ガスとなるので、ダルメージがなくても良い。あっても問題はない。固体の場合は、事前に樹脂ペレット中にマスター・バッチとして混ぜ合わせてから、可塑化するのでダルメージはあっても良いが、多くの場合は用いない。加熱筒内の溶融樹脂中に気体、液体、固体の何れかの発泡剤より発生させた発泡性ガスを微分散する手段を述べる。
可塑化の用いるスクリューは高混錬である方が良く、L/Dは大きいスクリューを用い、高い背圧を掛けながら、長い時間可塑化(溶融混錬)した方が、溶融樹脂中に発泡性ガスは微分散する。
この様に背圧を高めて可塑化(計量)をすると、背圧と、発泡の圧力(加熱筒内の可塑化して、発泡性を付与した樹脂)によって加熱筒内の溶融樹脂はノズル先端から漏れ出す。この問題解決するには、バネ式の、エアーシリンダーを、油圧シリンダーを、機械的な機構を持つなど何れか手段でのシャット・オフ・ノズルを用いる。計量が完了しても、加熱筒内の溶融樹脂が加熱筒内で発泡しない様に、次の射出まで加熱筒内の溶融樹脂に圧力を掛け続け、加熱筒内での発泡を抑える必要がある。これを背圧ブロック(エンド・バック・プレッシャー)と言う。
ここでシャット・オフ・ノズルの作用をするのが、前記符番5の栓の作用と同じである。シャット・オフ・ノズルと同じ機能を持っているモノの油圧、空圧その他機械(例えばアクチュエーター等)的な手段によって開閉するバルブゲート方式のホット・ランナーがある。
【0209】
GCP用の金型構造は、エジェクターボックスタイプのモノ(図10)と、エジェクタービンを荷重式Oリングなどでシールするタイプのモノ(図11)とがある。其々の構造を図10と、図11とを用いて説明する。
初めにエジェクターボックスタイプのモノ(図10)を説明する。図10における符番16はスプール・ブッシュ、符番17は固定側の取付け板、符番18は固定側の入子を収める型板、符番19は固定側の入子、符番20は固定側の入子の合わせ面でガスが出入り(合わせ面なのでガスは容易に通る。)する。符番21は溶融樹脂が充填されるキャビティ(成形空間)、符番22は可動側の入子を収める型板、符番23は可動側の入子、符番24はエジェクターピン、符番25はエジェクターピンを固定するエジェクタープレート(上)、符番26はエジェクターピンを固定するエジェクタープレート(下)、符番27はシール機能を持たせたスペーサーブロック、サポートピラー、符番28は可動側の取付け板、符番29はエジェクターロットの穴である。符番30は可動側の入子の入子の合わせ面、符番20は固定側の入子の合わせ面でガスが出入り(合わせ面なのでガスは容易に通る。)する。
【0210】
金型をシール金型にするには其々の隙間(合わせ面)にOリングを配する必要があり、符番31はスプール・ブッシュに配したOリング、符番32は固定側取付け板に配したOリング、符番33はパーティングに配したOリングである。これらのOリングの断面は円形に限らず、三角(△)形、四角(□)形でも、多角形でも良い。V字、U字のモノも構わない。
可動側のキャビティを形成する入子は、細かく子入子(符番23)、孫入子(図示せず)などに分かれ、これ等は符番22の型板にボルト(図示せず)などで固定されている。例えばパーティングに設けられたGCP(圧気ガス)の入りと出の回路(共に同じ回路である。)キャビティ内に圧気にエアーを用いて加圧しても入子の隙間、エジェクターピンの隙間から漏れ出してしまうので、入子の隙間、エジェクターピンの隙間からのガス漏れをシールする為に、符番27のスペーサーブロックを日本語(文字)カタカナの「ロ」字の形状とし、エジェクター機構(符番34)全体を囲い込む。この型構造をエジェクターボックスと言う。このエジェクターボックスの型構造によって符番35は符番22とエジェクターボックス形状のスペーサーブロック符番27との間に設けたOリング、符番36はエジェクタープレート(符番34エジェクター機構)が後退した時にシールする為にエジェクターロットの穴の周りに設けたOリングである。
【0211】
図10に於いてパーティングとエジェクタープレートは可動するので、このOリング(符番33と符番36)は外れない様に蟻溝(符番39)にはめ込むなどの工夫が必要である。図12に於いて符番38は符番33、符番36何れかのOリングを示す。(図12
図11ではエジェクターボックス(符番27でシールした空間を言う。図13のLの事)とする必要がないので、符番37は普通の形状(単なる四角のブロック形状の)スペーサーブロックである。
【0212】
図10の場合は、符番27によってエジェクター機構(符番34)を囲い込むので、それで形成される空間(エアーなどで圧気する体積)が大きいので、多くの圧気用の気体を必要とする。気体がエアーの場合でも経済的ではないが、圧気に窒素ガス、炭酸ガスなどを用いる場合は多く使用し、多く消費するので現実的ではない。
圧気に窒素ガス、二酸化炭素などの高価ガスを使用する場合は、後に回収して再使用する事もあるが、樹脂中のモノマーなどが入り込んで汚染、昇圧装置などのトラブルを招く危険性があるので十分注意が必要である。
【0213】
符番27のエジェクターボックスの変わりにエジェクターピンを本発明の荷重式Oリング図24図25図26図27図28に示すU字(凹)形状の溝を持たせたOリング(パッキン、シール)を用いてシールすれば、圧気に必要な気体の量が減らせるので前記経済的な問題は解決される。
エジェクターピンのシールには、図27に示すU字形状のパッキン、図24図25図26、に示す中に符番85のU字形状のスプリング{荷重の機能(内側に締め付ける。)を目的に入れてある。}の入った荷重式Oリング{例えばオムニシール(商品名)、バリシール(商品名)}が有効である。U字形状のスプリング(符番85)の変わりに、図29に示す一般形状のスプリングでも、図30に示す市販のOリングを用いても良い。U字形状のパッキン、荷重式Oリングの材質は、摺動製の高いテフロン(商品名)、テフロンに10wt%程度のグラファイトを含有させ摺動性を高めた材料、ターコン(商品名)、シリコンゴムが好ましいが、ウレタンゴム、ニトリルゴムなどでも可能である。
図36に示す様に片圧シール(内側に締め付ける。)ではシールカが強く、低圧でも十分な気密性を保持する事が出来る。符番42のOリングは前記エジェクターピンヘOリングを納めこんで使用、固定支持するので、符番40プレート(上)と、符番41プレート(下)との間にはめ込んで使用する。符番40プレート(上)と符番22の可動側の入子を収める型板との間にはシールの為のOリング(符番38)を入れ込んである。図11には符番40プレート(上)と符番41のプレート(下)との間にも念の為にOリングを配しているが、符番42の荷重式Oリングがあるので敢えて必要はない。傾斜コアの場合は、金型が閉じられ(PLが合わさり)た時にシールをすれば良いので、下側を円柱形状にして前記図24乃至図28の様な荷重式Oリングなどでシールすれば良い。
又傾斜コアの前部に形状を作り、Oリングを配して金型が閉した時にシールする様にすれば良い。GCPの金型構造は、金型が閉された時にシールの機能を果たせば良く、アンギュラピンを用いたスライドコアの場合はPLに配したOリング(符番33)内側に配する(設ける。)。油圧、空圧、機械式などのスライドコアの場合も同様である。
スライドコアのパーティング面にシールが必要な場合、前記パーティングと同様にシールをする。
【0214】
図36に於いて符番112は片側荷重式のシールで「L字シール」と称する。材質はPTFEなど摺動性の高いテフロン(商品名)、テフロンにグラファイトを5wt%から25wt%程度混ぜ合わせた材質を用いているが、他の材質でも構わない。符番113は符番112を荷重する目的で市販のOリング{材質はNBR(アクリロ・ニトリル・ブタジエン・ラバー、ニトリルゴム)}を用いているが、図29で例示したコイルスプリングでも良い。
L字シールは符番40、符番41によって形成されるハウジング114に収められ、符番114の詳細な形状は図48(表15)中に詳細が記載されている。表15中のEPはエジェクターピンの略号でEP直径(符号d)、h9(はめあい公差)、を示し、Kシール番号は其々のエジェクターピンに適する形状のL字シールの管理番号、D(径)+0.05、L(深さ)+0.2、S(隙間)のはめあい公差程度をH7/f8とし、C(口元のC形状を)0.3、r(根元のR形状)を最大0.4(0.4Max)としている。備考にはKシールヘエジェクターピンを入れ込む際の注意点が記載してある。これ等図48中の其々の記号などは図36とで対応(関連付け)がさせてある。
【0215】
図11は、符番25、符番26を用い、符番42を挟み込んで、エジェクターピンを荷重式Oリングでシールした。図37は、エジェクターピン24を符番116とのシール(押さえの)ブロック(上)と、符番117のシール(押さえの)ブロック(下)を用い、符番42を同じ様に挟み込んでシールする。この手段は図11とは異なり、エジェクターピン(傾斜ピン、傾斜スライド)1本(各々)をシールする手段を示した。符番115はOリングで、符番118又は符番119のOリングの役目を果たす。図37は例えば可動側の型板の下部に設け、符番115を固定するプレート、ボルトなどは図示せず省略した。
【0216】
(GCPプロセス)
GCP装置は、エジェクターボックスの構造でシールした金型、エジェクターピンを荷重式Oリングなどでシールした金型にいずれも略同じ(荷重式Oリングでシールした金型ではサブタンク55を設けている。)である。(1)金型を閉じて、(2)ノズルタッチして、(3)金型内をコンプレッサーなどで圧縮した気体を注入(圧気=これをGCPと言う場合もある。)、して、(4)圧気したままで発泡性の樹脂(物理発泡剤、化学発泡剤を用いて発泡性を付与した溶融樹脂)をキャビティ内に充填する。充填開始のタイミングはLへ注入した気体の圧力を監視し、所望する圧力に達した事を確認して射出(充填)を開始するなどの方法が用いられる。(5)充填の途中、或いは充填完了後に圧気のガスを排気、又は別に設けられ容器内に回収して、(6)金型内で発泡性樹脂の冷却が完了すれば、金型を開いて取り出す。この技法によって表面にスワール・マークのない綺麗な外観の発泡成形品を得る手段をGCP法と、工程をGCPプロセスと称する。本発明でGCPとは、上述した一連のプロセス{金型閉→金型内に気体注入→発泡性樹脂の充填(射出)→排気・・・}を言い、金型内(L、L、Lなどへ)に発泡を抑える目的で気体を入れる事を「圧気する。GCPする。GCPをする。GCP加圧する。GCPを掛ける。」などと言う。「圧気」とは金型内(L、L、Lなどへ)入れた気体を言う場合もある。
【0217】
(GCP装置)
図13で示すLは符番27で囲われるエジェクター機構34を収めた空間とする。図14では可動側入子の底に設けた空間(符番33と、符番118と、符番119と、符番42とで囲まれシールされた空間)である。図13図14共にLはキャビティ空間(符番21)である。Lは固定側入子の底に設けた符番32と符番33でシールされた空間である。(図13図14図14の符番40、符番41を用いる場合は、可動側と同様に、符番118、符番119に該当するOリングを配置しなければならない。
とLの役割は、Lに溶融樹脂が充填された際に、圧気は発泡を抑えるには有効な手段であるが、Lへの溶融樹脂の充填を妨げ、ショート・モールド、変色、焼けなどの原因になる。この問題を解決する為に、LとLの空間が存在、Lへの溶融樹脂の充填の力で、L内の気体がここの空間に押し出される事で、L内の圧力が異常に高くなる事が避けられるので、ショート・モールド、変色、焼けなどでのトラブル発生がなくなる。
【0218】
図15はGCP装置で、符番43はエアーコンプレッサーで大気圧以上に圧縮された気体を金型内に、上述した様にタイミングを見計らって注入(圧気)する注入(圧気)弁(符番46)である。符番51は金型内に入れた圧気を排気する排気弁である。停電などでのトラブルを想定、安全面から注入弁46はノーマルクローズド仕様のモノを、排気弁51はノーマルオープン仕様のモノを発明者は選択している。その組み合わせであれば、停電時に金型に送り込まれる圧気は直ちに停止し、金型内に送り込まれた圧気は直ちに排気させるので、金型内の圧気の圧力で金型は開くなどの事故が防げる。
図15の装置は別に設けられたコントローラー(図示せず)、或いはこのコントローラーのプログラムを成形機のコントローラーに組み込みそれらの命令{圧気の入り(注入)と、出(排気)など}によって動作する。
図15のGCP装置は注入弁を1個、排気弁1個の簡単なモノで、L乃至Lの空間とはフレキなホース(符番52)で繋がれる。この場合L乃至Lの空間の注入と排気とはこのホースによって行われる。成形品の大きさと形状などによっては図15の装置を3台準備して使用する場合もある。更に台数を多くする場合もある。
初めに図15の装置を1台用い、GCPを実施する手段を説明する。複数のホース52をマニホールド49に繋ぐ。ホース52の先は図13(エジェクターボックス構造の金型)の金型のL乃至L空間へ繋ぐ。図15のGCP装置を1台使用するこの場合はL乃至L空間への圧気の入り(注入)と、出(排気)とは同時に行われる。符番44は符番43と符番46とを繋ぐ回路(通常はフレキなホースを使用する。鋼管でも可能である。)、符番48はホース52と繋ぐ部分で、一般にはワンタッチカプラ(発明者はこのカプラの形状をマニホールドには♂(オス)の形状を、ホースの先は♀(メス)の形状を用いている。金型は♂と標準化をしているがこの限りではない。)符番53の→(矢印)は圧気の流れの方向を、符番54は金型への圧気の出入りを同じホースを用いて行われている事を、符番47は圧気が大気中に排気される事を示している。
【0219】
図13の金型に於いて図15の装置を3台準備して、L乃至Lの空間に其々別々に繋ぐ場合は、例えば金型が閉じられた後の注入は同時に、排気は時間差を持って行う事が可能となる。前記の図15の装置を1台用いてL乃至Lの空間に其々繋ぐ場合を1段抜き(1段排気)と言い、図13の装置を3台準備し、L乃至Lの空間に其々を繋ぎ、時間差を持って排気する手段を3段抜き(3段排気)と言い、形状は複雑な成形品の場合には有効である。排気はLとLとを先に排気して、少し遅延してLを排気するとスワール・マークを抑え易く(コントロールし易く)なる。
図16のGCP装置は符番55に示すサブタンクを持たせてある事が図15のGCP装置との異いである。この図16のGCP装置は図14で示すエジェクターピンを荷重式Oリングなどでシールした金型構造L2内の気体をこのサブタンク(符番55)へ移送させ、L内の圧力が異常に高くならない様にする機能をこのサブタンク55は持っている。
図10図13の場合は、エジェクターボックスLがこのサブタンクの役目を果たすので必要はないが、大きな成形品ではこのエジェクターボックスLの容積が大きくなるので、圧気の気体が多く必要な事、圧気に掛かる(必要な)時間が余計に必要、結果成形品の加工費が高くなり、経済的ではなかった。この問題を解決する手段に符番42を用いたエジェクターピンのシール(荷重式Oリングの使用)では圧気に必要な気体の量も少なく、必要な時間も短く出来るが、L内に溶融樹脂を充填されると、キャビティ内の圧気の逃げる場所が少ないので、L内の圧力が異常に高くなり(上り、上昇し、)、ショート・モールド、変色・焼けの原因になる。この問題はサブタンク55をGCP装置に設ける事で解決する。
図15図16には符番56の圧力計が設けてある。其々のLの、Lの、Lの空間への圧気の圧力、昇圧の状態を目視で、その他計測装置を用いて測定をする、或いは予め設定した圧力に圧気が達した時に射出が開始する様にすれば、圧気から射出へ移る時間を短縮出来るので、ロスタイム(余計な時間)が略(ほぼ)なくなるので、図10の金型構造の場合に比べて生産性向上が期待出来る。又圧力を監視する事で圧気の圧力不足による不良発生を監視も出来る。
【0220】
(急速排気弁)
金型内の圧気の排気をより早く行う場合は、CKD(株)のQEV2シリーズ(商品名)、SMC(株)のクイックエキゾーストバルブAQシリーズ(商品名)を用い、圧気の排気速度を上げる急速排気弁を金型に設けても良い。
【0221】
(GCP装置とシール金型との接続など)
図11にエジェクターピンをシールした金型と、図16に示すGCP装置との接続を具体的に示す。符番127はL空間への圧気を入れ、発泡性樹脂を充填し、充填の途中で、充填の完了後に圧気を排気する金型内に設けた回路である。符番126はL空間への圧気を入れ、発泡性樹脂を充填し、充填の途中で、充填の完了後に圧気を排気する金型内に設けた回路である。符番125はL空間への圧気を入れ、発泡性樹脂を充填し、充填の途中で、充填の完了後に圧気を排気する金型内に設けた回路である。符番128は其々の回路に設けられたワンタッチカプラである。
【0222】
符番118と符番119とはOリング、符番120は其々のL空間乃至L空間へ圧気を送り込むコンプレッサー43の圧気をGCP装置へ導くコンプレッサーからの配管121に設けたワンタッチカプラである。符番122はLへ圧気の入りと排気とを行うGCP装置、符番123はLへ圧気の入りと排気とを行うGCP装置、符番124はLへ圧気の入りと排気とを行うGCP装置である。上述した様に、金型内のL乃至L空間への入りと出とは、射出成形機、又は別に設けられたコントローラーによって開閉の制御がされる。図38は、図11の金型に符番122乃至符番124で示す、GCP装置を接続、多段排気を行える様にしたが、複雑な形状の場合でなければ、符番122乃至符番124で示す、GCP装置1台を用い、L乃至Lと例えば123に付帯しているカプラ48に繋ぎ1段の排気としても良い。勿論の事、図16で示すGCP装置は、図10の金型に使用しても何も問題はない。
【0223】
空間(キャビティ)圧気の入りと出とを行う手段を説明する。図39は固定側のパーティング面を正面から見た図を示している。符番129は製品形状の外に掘(ほ)られた溝で、発明者は巾8mm、深さ3mm程度としているが、圧気の入りと出との大きな抵抗にならなければそれ程は形状にはこだわらない。符番130は符番129に繋がるガスベントで、発明者は巾5mm、深さ1mm程度としているが、圧気の入りと出との大きな抵抗にならなければそれ程は形状にはこだわらない。符番131もガスベントであるが、製品形状(成形空間)と直接に繋がっているので、圧気は容易に通過するが、溶融樹脂は通過しない形状としている。発明者はABSなど溶融樹脂の粘度が比較的に高いスチレン系樹脂などの場合は発明者は巾5mm、深さ0.05mmから0.1mm程度としている。PPなど溶融樹脂の粘度が低い樹脂などの場合は発明者は巾5mm、深さ0.02mmから0.05mm程度としている。符番131のガスベントの深さは圧気の入りと出は抵抗なく行えるがバリが張らない程度を最良としている。本発明の発泡成形では樹脂保圧を使用せず、或いは使用しても低圧で、短時間(例えば最大射出圧力の30%程度、加圧時間は0.5秒乃至2秒程度)で、然も1次の充填速度と、圧力とで成形空間へ充填される発泡性樹脂の量は、成形空間の体積と同じ、或いは充填される発泡性樹脂の量は成形空間の体積とは少ないのでガスベントを設けてもバリの発生はそれ程ではない。
【0224】
図40図39の側面から見た図で、Lへの圧気回路128と、符番132の金型の開けられた圧気の通路との繋がりを示している。
図41は、図11のL空間、図10図11のL空間を示した。図41図11のL空間として説明する。符番132は、符番40が符番23の底部と接する部分を示している。符番134は溝で圧気が通る部分、符番133、符番134は符番40の開けられた穴(符番127に該当する圧気の回路)で圧気の入りと出の回路である。
符番23の合わせ面30にも前記符番131、符番130と同じ形状を加工して十分なガスベント{成形空間の発泡性樹脂が充填されれば、その圧力(力)で、圧気をスムースに押し出し、ショート・モールド、変色・焼けなどのトラブルをなくす}の加工をする。このガスベントは符番134に繋がっている。
【0225】
図38と、図39図40図41図10、又は図11のL乃至のLへ繋がっているので、コンプレッサー43で圧縮された、例えばエアーを圧気とした場合に入りと出とが抵抗なく行える事を示している。コンプレッサー43の吸入口に窒素ガスを繋げば窒素ガスのGCPが実施出来る。
【0226】
図39図40などには成形空間への圧気は、PLの合せ面にガス回路を設け、その隙間から圧気の入り(圧気)と出(排気)とを行う事にしているが、成形品の化粧面でない部分(主にはエジェクターピンのあとが付く稼動側)に設け圧気と排気を行う手段があるが、パーティングからの圧気と排気の方がスムースに行われる。図50には参考までに製品の中央部に圧気と排気の回路を設置した図51を示し、説明は上述した。
【0227】
(アモテック、窒素ガスのGCP)
図16の装置には逆止弁58が設けてある。この逆止弁の作用は、例えば予め安価なエアーを用いて1MPa程度で圧気をして於いて、別に設けた装置と回路からL空間に窒素ガスで2MPa程度の圧気をすると、L空間内の酸素濃度が下がるので、不活性なガス、酸素濃度を下げたガスのGCPでは変色・焼けを少なく出来る。
上記の方法で窒素の代わりに炭酸ガスを用いたGCPでは発泡性樹脂の溶融先端部から炭酸ガスが溶け込み金型への転写性向上、溶融樹脂の誘導性が見られる。硝子繊維などを入れた複合材では硝子繊維の浮きを押さえ、綺麗な外観が得られる。
逆止弁58は市販のレシプロタイプのコンプッレッサー{レシーバータンク付き(図示せず)}の耐圧が1.4MPa程度、当然安全弁(図示せず)が設けられているが、Lへコンプレッサーの耐圧以上の圧力を掛けると危険である事から、コンプレッサーへ後で掛ける窒素ガス、炭酸ガスなどが入り込まない様に設けてある。当然ながら安全を鑑み図15図16のGCP装置には安全弁(図示せず)はマニホールド49に取り付けてある。図16の装置は図13図14の金型何れでも使用可能である。前記図13の金型に図15のGCP装置を1台接続して使用する方法、3台を接続して使用する方法を説明したが、図14の金型と図16のGCP装置も同じ様に1台で、或いは3台での1段排気、多段(例えば3段の)排気が行える。
【0228】
(射出成形機の制御)
図15図16に示すGCP装置のコントロールの詳細を示す。初めに発泡性樹脂製造方法、別言すれば、射出成形機加熱筒内で溶融樹脂に発泡性を付与する手段の詳細を示す。初めに固体の発泡剤のADCA、重曹など粉体の場合はペレットに展着して使用する。例えばタンブラーに発泡予定の樹脂ペレットを入れ、発泡剤の必要量を入れ、展着をさせるのに、展着剤の作用をするパラフィンオイルを少量加えてタンブリング、樹脂のペレットの周りに発泡剤の粉体が展着される。
これをホッパーに入れて加熱筒内に送り込み、加熱溶融すると、発泡剤が熱分解して、発泡性ガスを発生、発生した発泡性ガスは加熱筒内にスクリューの回転の力で、加熱筒内の溶融樹脂に掛かる背圧などで、溶融樹脂中に微分散していく。溶融樹脂に掛かる圧力が高いので、加圧溶解もしていく。
発泡剤が粉体では取り扱いが厄介なので、発泡剤をペレットの形状とする場合は、単に発泡予定の樹脂のペレットを練りこむ、或いは担持すると、発泡剤のペレット(マスター・バッチ)とを、成形予定の樹脂のペレットとをタンブラーで混ぜて、同じ様にホッパーに投入、発泡性樹脂を製造する。
【0229】
(スクリュー)
加熱筒内の溶融樹脂中に発泡性ガスを加圧溶解、微分散させるには、高混錬を必要とし、圧縮比(CR)は、2.4から4程度、エンジニアリングプラスチックの場合は4以上とする場合もある。有効長{L(スクリューの全長)/D(スクリューの直径)}は、15以上、好ましくは18以上で、L/D(LをDで割算した値)が大きくなると高混錬となるので、溶融樹脂中に発泡性ガスを加圧溶解、微分散させるには有用である。
スクリューは供給部、圧縮部、計量部にゾーン分けされる。一般の中実成形を実施する場合は供給部は1/2、圧縮部は1/4、計量部は1/4程度の長さとするが、発泡成形の場合は圧縮部を1/4を出来るだけ長くして、発泡性ガスの加圧溶解、微分散を十分にさせる。圧縮部を長くする事は前記L/Dを長くする事で、溶融樹脂の圧縮の時間を長く出来る。それ以外にスクリューにフライトを浅くして高混錬とする、ダブルフライトとするなどの手段を講じる。
【0230】
GCPの圧気に圧力から明らかな様に、外部からの圧力があれば、発泡性ガスの閉じ込めは可能であるが、可塑化(計量)中の背圧が高い方が、より均一に、より微細に、加熱筒内の溶融樹脂中に加圧溶解、微分散される。本発明での背圧は、樹脂、使用する発泡剤の種類によっても変わるが一般的に計量中(可塑化して発泡性ガスを樹脂中に加圧溶解、微分散をさせる。)背圧は5MPa以上あれば良い。発明者は使用するシャット・オフ・ノズルから計量中にハナ垂れをする圧力よりも、少しだけ低めにして、出来るだけ高背圧とする。計量完了後に背圧を切ってしまうと、加熱筒内で発泡(プレ発泡)してしまうので、射出開始までの間はそのまま背圧{エンド・バック・プレッシャー(EBP)}を掛けておく必要がある。その場合のEBPの圧力は5MPa程度を掛けておく。
本実施例では、上記のCRが3程度、L/Dが18のスクリューデザインのモノを用いた。以下にφ60のフルフライトスクリューの場合は、フライト部の長さは1,560mm、供給部の長さは480mm、圧縮部の長さは540mm、計量部の長さは540mm、CRは3、供給セレクションの溝深さは8.3mm、計量セレクションの溝深さは2.5mm、フライトの巾は6mm、スクリュー先端部の角度は90゜から30゜程度などと例示出来る。
【0231】
エタノール、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩の水溶液などの液体の発泡剤の場合は、加熱筒に穴を開けて、弁付きの注入口、焼結金属を埋め込んだ注入口を設け、計量開始と同時に、又は少し遅延してから液体を加熱筒内で加熱溶融された樹脂中に注入、加熱筒の温度(熱エネルギー)、溶融樹脂の温度(熱エネルギー)で気化し、蒸発乾固し、熱分解して発泡性ガスを発生、加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を付与する。液体の注入の停止は、計量完了の前に、計量完了と同時に、計量完了後から時間経過後に何れかで停止する。必要に応じて計量の途中で一旦液体の注入を停止する場合もある。ミューセル、アモテックなどの気体を加熱筒内に入れて加熱筒内の溶融樹脂内に分散させ、発泡性を付与する手段も、前記液体の場合と略同様である。
【0232】
実際に射出成形機内のプログラムは、(1)計量が開始これをゼロスタートとし、(2)液体、又は/及び気体の注入開始までの遅延時間の設定(ゼロの場合は計量開始と同時になる。)がなされ、(3)計量開始からのスクリューの位置をモニタリングしながら、計量の途中で注入を停止する場合は、そのスクリュー位置を設定する。(4)再注入を開始する場合は再注入開始のスクリュー位置が設定出来る。(5)計量の前に注入を停止する場合は、注入停止の指令をスクリュー位置で設定する。(6)計量完了と同時停止させる場合、遅延させ注入させる場合は、遅延時間の設定(ゼロの場合は計量完了と同時になる。)が可能な様にする。
この信号は、別に設置された液体の注入装置、ガスの注入装置へと繋がれる。気体の注入の場合は注入弁の開閉を、液体の場合はプランジャーを押す、停止する指令を射出成形機のプログラムからから発信、指令、それに連動して例えばアクチュエーターなどは動作をする。
【0233】
(発泡倍率を高める手段)
発泡倍率を高める手段は、金型内に充填された発泡性樹脂の圧力を下げる方法がある。例えば、キャビティ一杯に樹脂を充填するのではなく、少ない量を充填させる、所謂ショート・ショットとする事、キャビティ内に発泡性樹脂を充填の後に、直ぐに、一定時間経過した後にスクリューを後退(サックバック)させ圧力を下げる手段、発泡性樹脂を充填の後、金型の一部を拡張させキャビティ内に充填された発泡性樹脂の圧力を下げる手段で、これを拡張コアと言う。
この場合の発泡倍率はキャビティ体積が変わっていないので、発泡倍率(本発明では、発泡倍率を100-発泡成形品の体積÷中実成形品の体積の百分率と定義する。発泡倍率を軽量化率とも言う。)はそれ程大きくはない。
大きな発泡倍率を得る手段にコア・バック、モールド・バック{金型に両方の構造(丸穴などの開口部はコア・バックでないと、金型を開けると開口部に樹脂が入り込んでしまう場合があるので、本発明ではコア・バックの形状とした。)を実施する方が良い。GCPを行った場合は、GCP排気の開始と同時に、GCP排気の途中、GCP排気完了後直ぐに、或いは少し遅延をさせる。コア・バック、モールド・バック共に良く似た金型の動き(型開き)をするが、図17図18に示す様に符番60パーティング(固定側の金型と、可動側の金型とが合わさる面)を縦見切り(附番62に示す様に固定側の金型と可動側の金型とが金属同士で見切られている。図53では金型同士 は見切ってはいない。)の場合をコア・バック、図19図20の様に符番60パーティングを平見切りの場合をモールド・バックと区別する。
【0234】
(複数台にのGCP装置を一つの金型に装着した場合の成形機の制御)
図13図14に示す空間のL,L,Lのそれぞれに図15、又は図16に示すGCP装置を取り付けてGCPを行う場合の制御は、金型の成形空間内への圧気の開始は同じように型締め完了信号などで行う。即ち附番46の弁の開は同時になる。違いは排気のタイミングで1台しか繋がなかった場合は、附番51の1ケでしか排気されないので、L,L,Lの圧気はいっきに排気される。L,L,Lに其々1台づつを繋いだ場合は、排気にタイミングを変える事が出来る。排気の信号は、スクリュー位置、排気タイマーなどで行い、成形機のPLCは複数台を制御可能なプログラムがインストールされている。
排気後のモールド・バック、コア・バック、金型後退、成形品取り出しは1台の場合と同じ1つの信号で行う。
【0235】
{ノズルからの液体、気体注入{Sinbo(金沢工業大学名誉教授 新保實)プロセス}
射出途中に加熱筒の先端のノズルの設けられた注入口(構造は前記の加熱筒に液体、気体を注入するものと略同じ。気体、液体が通過可能なポーラスな焼結金属を使用する。)から気体、液体(例えばアルコールなど)を射出の段階で入れ、射出の力で液体、気体を射出途中の樹脂中に分散させ、加圧溶解させる場合は、(1)射出開始をゼロとして遅延時間の設定(ゼロの場合は射出開始と同時になる。)が可能な様にする。(2)停止は注入停止の指令をスクリュー位置で設定する。(3)勿論の事射出途中で一旦注入を停止し、再び注入を開始する場合は、停止、再注入はスクリュー位置(任意設定が可能な)の設定を持って行う。
ノズルに液体、気体の注入口を設ける以外に、ホット・ランナーに同じ様に液体、気体の注入口を設け、同じ様に射出成形機のプログラムで制御する。
【0236】
気体、液体、固体によって発泡性を付与し発泡性樹脂と、非発泡性樹脂とを射出の段階でノズル内で混ぜ合わせる手段(ミックスド・プロセス)の場合の制御は、上記のノズルから液体、気体を注入する制御と同じである。勿論このミックスド・プロセスの実施はホット・ランナーでも可能である。
【0237】
(射出成形機のシーケンサーによるGCP装置の制御)
GCPの場合の射出成形機からGCP装置への指令は以下の様に行う。(1)金型が閉じられ、(2)ノズルタッチが完了している事が確認されれば、(3)図15図16の符番46の注入弁を開け型内を気体で加圧する(圧気の工程)。(4)GCP時間は予め設定して於いて、タイマーのタイムアップでキャビティ内に発泡性樹脂の充填が開始される(射出の工程)。(5)タイマーの代わりに、符番56の圧力計を用いる場合は予め設定された圧力に達した段階でキャビティ内に発泡性樹脂の充填が開始される。(6)GCPの排気は射出途中、又は射出完了後に行われる(排気の工程)。射出途中では射出開始のスクリュー位置をスタート位置として、任意に設定された位置をスクリューが通過した時に図15図16符番51の排気弁を開け型内の気体を大気中に放出する(排気の工程)。(7)射出完了後に同時排気させる場合、遅延させ排気させる場合は、遅延時間の設定(ゼロの場合は射出完了と同時になる。)が可能な様にする(排気の工程)。射出完了後の0から一定の時間経過後、予め設定して於いた位置までスクリューを下げ(後退させて)、キャビティ内に充填された発泡性樹脂の圧力を下げ発泡し易くする手段の場合は、(8)上述した様に射出途中、射出完了と同時に、射出完了後一定時間を経過した後に排気する以外に、サックバックの開始と同時に、サックバックの途中で、遅延をさせてサックバックさせる場合は、遅延時間の設定{ゼロの場合は後退が完了(設定された位置まで後退された段階で、)と同時になる。}が可能な様にする。
【0238】
金型の一部を拡大(ブリージング、拡大コア、拡張コア)させて、キャビティ内に充填された発泡性樹脂の圧力を下げて発泡し易くする手段で、ブリージングのタイミングは(1)キャビティ内への樹脂の充填完了と同時に、遅延時間の設定(ゼロの場合は射出完了と同時になる。)を行う場合とがある(排気の工程)。ブリージングは金型に設けた例えば油圧、空圧のシリンダーの動作、モーター動作以外に、射出成形機のエジェクター機構を用いて行う事が出来、何れも射出成形機のプログラムから指令を出す。ブリージングとサックバックとは動作は異なるが同時に行う場合もある。
【0239】
(コア・バックとモールド・バック)
初めにコア・バックとモールド・バックの違いを図17図18図19図20を用いて説明する。{図53(コア・バックの前)、図54(コア・バック後)もコア・バックの金型構造を示している。)
コア・バックの金型は、符番62に示す様に符番60のパーティングは固定側の金型59に、可動側の金型61が入り込んでいる構造(縦見切りのパーティング)としている。(図17
この状態で符番59と符番61で形成させるキャビティ21に発泡性樹脂を充填し、GCPの実施の場合はGCPを排気完了後に(1)遅延時間の設定(ゼロの場合は排気完了後と同時になる。)図18で示す様に符番61を後退(符番63の矢印で示すコア・バック)させ、21の拡大を行い、パーティング60は隙間67が生じる。金型の59と61は縦見切り62としているので、溶融樹脂は外に溢れ出る事はない。
モールド・バックを図19図20を用いて説明する。図17図18ではパーティング60は縦見切り62であるが、図19図20ではパーティング60は平見切り64である。21に発泡性樹脂を充填した後に可動側の金型の61を後退(符番65に矢印で示すモールド・バック)させ21を拡大する。60のパーティングは平見切り64は後退させた分は符番66で示す様に開き、21中の樹脂を押さえる力はなくなるが、後退によって生じる隙間が少ない場合、GCPを用いて表面にスキン層を形成させた場合は、冷却固化が進み、表面には固化層が形成されているので、中の溶融樹脂は漏れ出る事はない。
【0240】
GCPの実施の場合は、圧気の排気完了後に(1)遅延時間の設定(ゼロの場合は排気完了後と同時になる。)図20で示す様に符番61を後退(符番65)させ、21の拡大を行い、パーティング60には隙間66が生じ、溶融樹脂は外に溢れ出ない理由は上述した。
コア・バックとモールド・バックとは、パーティングにコア・バック形状を設けると金型構造は複雑で、金型費のUp(高額になる事)が懸念されるので、パーティングは図19図20のモールド・バックの構造が良い。穴などの場合は、モールド・バック(平見切り)では、モールド・バックしては隙間が出来て、樹脂が入り込んでしまう事が懸念されるので、この場合はコア・バック(縦見切り)の構造を用いる。
コア・バックとモールド・バック共に射出成形機の内部制御盤にこれ等の動作のプログラムを事前に組み込みさえしておけば容易に実施出来る。直圧の射出成形機は金型を後退させる精度はある程度は出るが、トグル機構の場合は後退の精度は直圧より低い場合、プラーボルトなどを金型に組み込み後退の精度(コア・バック、モールド・バックの後退距離の精度)を高める場合もある。
上述した(1)気体、液体、固体の発泡剤を単独で、或いは併用して用いて加熱筒内の溶融樹脂に発泡性を付与させるプログラム、(2)キャビティ内に充填された発泡性を持つ溶融樹脂の圧力を下げる目的で、スクリューの後退、ブリージングなどのプログラム、(3)GCPを行うに当たり圧気の注入と排気などのプログラム、コア・バック、モールド・バックのプログラムを事前に射出成形機に組み込んでおくとそれらが容易に実施可能である。
勿論の事例えばGCP装置は別にシーケンサーが内蔵されたコントローラーを製作、射出成形機からの信号を受け取り、或いは射出成形機へ信号を送り互いのインターフェースを取るよりも射出成形機の制御盤にこれ等プログラムを組み込んだ方が簡単で、安全で、安価とする事が出来る。
【0241】
(モールド・バック、コア・バックの手段)
モールド・バックなどでは、成形品が、衣装性の固定側(キャビ)から一旦離れてしまう。その後に発泡力によって再び固定側に張り付き、型転写するが、発泡力での型転写はその圧力が低いので、型再現性(金型への転写性)が低い場合がある。この問題を解決する手段を以下に説明する。
【0242】
(L、L、L排気のタイミングを制御する手段)
GCPではL(可動側の入子の底部の空間、又はエジェクターボックスの空間)、L(成形空間)、L(固定側の入子の底部の空間)の排気が同時ではなく、時間差を持たせて排気し、GCPの圧力で可動側から加圧しながら、モールド・バックなどをさせる手段を取る。実際にはL、L、Lの圧気をキャピティ(L)に発泡性樹脂が充填される前に、充填された時点、充填されてからしばらく時間経過した後の何れかで、初めにLを排気する。続いてLの排気と同時に、或いは少し遅延してLの排気を行う。Lには圧気が掛かった状態(圧気の圧力によって成形品は可動側から固定側に圧縮された状態)で、モールド・バックなどをすると、Lの圧気は型が開く事で隙間が出来るので、符番60パーティングなどから一気に排気される。この時には上述した様にLの圧気の力で押さえ付けられた(転写された)状態でモールド・バックなどをするので、型転写性は維持される。使用する型構造は、図10のエジェクターボックス構造では、一気に体積の大きなエジェクターボックス(L)内の圧気が排気されるので、非常に大きな音がするなどと量産の実施にはあまり適さない。図11のエジェクターピンをシールする金型構造では排気される圧気の量が比較的少ないので、安全に実施出来る。L、L、Lの圧力は同じ(L=L=L)でも良いが、L>L=Lと、Lを少し高くすると上記可動から固定に貼り付ける効果は大きくなる。この場合のGCP装置はL、L、Lとを別々に排気する多段排気のGCP装置{図15の装置を3台準備して、其々をL、L、Lとが別々に繋げる。43コンプレッサーは1台でも良いが、L、L、Lの圧力を変更する場合は、符番46の前にレギュレーター(図示せず)を設ける。図16の装置の方が図11図14に示す型構造の場合は適する。当然レギュレーターを設けるとL、L、Lの圧力を変更する事が出来る。}を用いる。(図38
【0243】
(別に可動側を気体で圧気する手段)
図31乃至図35には、図11示すエジェクターピンのシールタイプの金型に、可動側から別に設けた符番90、符番92、符番94ガス加圧回路(ガスを樹脂と、キャビティ可動側の金型との隙間に入れ込んで、圧気とは別のガスの力で可動側から固定側へ加圧する。)、符番89、符番91、符番93ガス加圧ピンを用いる手段がある。
、Lと排気して別に設けた回路から圧縮した気体を入れてその気体の圧力で、可動側から固定側に押し付けた状態でモールド・バックなどをさせて、発泡倍率を高める。符番89、符番91符番93は可動側から固定側への加圧用のガスピンである。
この手段では、ガス噴出の周りをリブで囲い、隙間に入れたガスが逃げない様にする。(図35の符番101)このリブの高さはモールド・バックなどをさせる距離より高い方が良い。加圧ガスを排気する事なく、可動側から固定側ヘガス加圧した状態で、モールド・バックをすると、樹脂の加圧ガスはキャビティ内の固化が始まり樹脂と金型との隙間がモールド・バックをした距離開くので、ガスは大気放出される。
、L、Lとの圧気をして於いて、発泡性樹脂をキャビティ(L)へ充填させ、充填の途中、充填完了後にLを排気、同時に、或いは少し遅れてLを排気する。発泡性樹脂をキャビティ充填完了後に、符番100からガスを噴出、前記同様に樹脂と金型との隙間にガスを入れ込み加圧する。初めの圧気(L、L、L)は、別々にLを排気、Lを排気、最後にLを排気する多段排気を用いる。
【0244】
(別に可動側を気体で圧気する手段)
図31乃至図35には、図11示すエジェクターピンのシールタイプの金型に、エジェクターピンを二重構造(符番91)として、エジェクタープレートの設け、エジェクタープレートのガス回路(符番92)を設け、二重構造のエジェクターピンの内芯と外筒の隙間からガス加圧(ガスを樹脂と、キャビティ可動側の金型との隙間に入れ込んで、別のガスの力で可動側から固定側へ加圧する。)する手段がある。
この場合も構造は図31中に記載した。加圧ピンの構造は図32乃至図35同じで、可動側のガス加圧の場所が異なっている(符番89と符番91との違い)だけである。
図31中にはエジェクタープレートにガス加圧ピンを設けた場合も記載した。可動側取り付け板(符番28)で、ガス圧力を抑える構造(符番107)に設ける方法もある。
これ等の場合もGCP(圧気)の排気は1段排気でも良いが多段排気の方が好ましい。
【0245】
(エジェクターピンで押す手段)
射出成形機にエジェクター機構を用いて、金型は後退をするが、エジェクターピンは後退させずに、エジェクターピンを押し続ける事でモールド・バックなどの時に固定側から成形品が離れない。これ等もGCPの排気は1段排気でも良いが多段排気の方が好ましい。
【0246】
(内部からガス加圧する手段)
成形品内部に高圧ガス中空成形法(例えばGasTy-2、シンプレス、旭化成のAGIなど)がある。この手段を発泡成形のモールド・バックなどに適用する。L、L、Lの排気の前に発泡性樹脂の内部に高圧ガスを注入して、内部の高圧ガスの力で膨らませると、キャビティ内の発泡性樹脂は、内部にガス圧力によって発泡は抑制され、発泡しないままで、モールド・バックなどをしても、固定側、可動側からは離れる事はなく、モールド・バックに追従して、キャビティ内部の発泡性樹脂は拡大される。モールド・バック完了と同時に、或いは少し時間差を持たせて中に注入した高圧ガスを大気中に排気すると、内部から発泡を抑制していた圧力が開放されるので、内部に発泡を始める。
ガス注入ピンの構造は、図35に於いて符番100ガス噴出口を符番104の中(板厚の半分程度の位置まで)に入れ込む事で、中空とする事が出来る。
GCP(L、L、L其々の圧気)の排気は、モールド・バックなどの前に既に完了しておく。この場合はL、L、L排気の順番は特に制限はない。一般にはモールド・バックなどの前に完了する。
【0247】
実施例の製品の3DのCAD図{図21図22}で67の穴のパーティングは、金型を後退させても金型に隙間が出来る事を避ける目的で穴の形状を形成する金型はコア・バック構造、符番68で示すパーティングは、モールド・バック構造とした。一部のパーティングは可動側だけに平見切り(符番68)とし、一部のパーティングはR形状を設ける為に固定側にR形状を設けた両面彫り(符番69)としてある。図21は固定側を、図22は可動側を示している。符番70は天肉を示し金型が閉じられた時に2mmの厚さとしてある。この金型で0.5mmと1mmとパーティングを開けのコア・バック(縦見切り)、モールド・バック(平見切り)を行い其々の発泡倍率(軽量化率)と型再現性とを確認している。
【0248】
(ヒート・アンド・クール)
GCPに於いて、表面のスキン層の厚さは金型表面の温度、別言すればキャビティ内に充填された溶融樹脂の冷却・固化の速度によってその厚さは変化する。当然ながら高い方が薄くはなる。
ボイラーを用いて発生させた過熱(加熱)水蒸気を用いて金型温度を高める手段(ヒート・アンド・クールが一般的であるが、本発明では、磁性流体と電磁誘導、高周波過熱などを用いた装置)を図23に示した。
符番71は、熱媒体でポリエチレングリコール、グリセリン、シリコンオイル、鉱物油などを用いる。符番72は加熱部で中に小さな磁性体(例えば強磁性体の鉄、ステンレス、ニッケル、コバルトなど、)の粒、粉体などが入っている。外部の符番73はIHヒーターのコイルでここに電流を流せば(ON)、高周波電流が発生、内部の磁性体(符番72)が加熱され、その熱は熱媒体(符番71)に伝えられるので、熱媒体は加熱される。電流を切れば(OFF)加熱は中止されるので、電流のON/OFFで温度がコントロール出来る。符番74は回路の中に設けられた羽でマグネット(符番75)が付けられている。外部のマグネット(符番76)を回転させれば、磁場の変化によって中の羽(符番74)は回転、加熱された熱媒体を循環させられる。回転数によって熱媒体の流量(流速)が変わり、加熱効率を制御出来る。別にアラゴの円盤の原理でもこの羽を回転させる事は出来る。符番78は熱媒体の流れ方向を示す矢印、符番79は加熱する金型の入子などを示す。符番81は加熱装置を符番82は循環装置を示す。83は熱媒体71が流れる配管を示し、鋼管で作られている。附番83は耐熱さえ十分であればフレキなホースも使用出来る。図示していないが図23中には流量計と、温度計、圧力計が組み込まれ確実な温度コントロールが実施出来る。高温に出来る事、水溶性である事などと使い勝手の良さから熱媒体にはグリセリンが推奨される。グリセリンは化学式C、融点は17.8℃、沸点は290℃で、液体であるので、ボイラーで加圧して加熱水蒸気を用いるより、比熱比が大きいので、熱交換率が良い。グリセリンは毒性が少なく、水溶性なので、油脂に比べて水洗で容易に除去出来るので、作業環境を悪化させにくい。エチレングリコールも使用出来るが毒性があるので使用は好ましくはない。符番77は流量調整弁、符番80はフィルターで中に磁性体が81内に留まる様にしてある。
【0249】
冷却は別に金型の設けた回路に冷却水を流せば冷却は可能である。気体を流しても、エタノールなどの気化熱を用いても良い。これ等の回路を金型に設ける手段はガンドリルなどで穴を開ける手段、入子にこれ等加熱、冷却の回路を加工して、熱処理の拡散溶着の手段を用いて張り合わせれば熱効率の高い回路が作れる。拡散溶着には、銅パウダー、ニッケルパウダーを溶着材(剤)に用いる。
GCPの場合にはキャビティ(L)の表面温度が高いほど、表面のスキン層は薄くなる。上述した様に高温の熱媒体で金型を加熱する以外に、取り出し機にコイルを設け、発泡性樹脂の充填前(金型の閉直前)金型に高周波誘導させ、金型表面を昇温させる手段{例えば旭化成工業(株)BSM}がある。
【0250】
それ以外には金型に断熱層を持たせて冷却・固化を遅くする。断熱層にはテフロン(商品名)コーティング、セラミックコーティング、セラミックのプラズマコーティングなどを施す。それ以外にはWC(タングステンカーバイド)、TiN(窒化チタン)、CrN(窒化クロム)、アルミナ、DLC(ダイヤモンド・ライク・コーティング、グイヤモンド・ライク・カーボン)などを施すとこれ等の物質は断熱効果があるので、キャビティ内に溶融された発泡性樹脂の冷却・固化速度が遅くなるので、結果表面のスキン層の厚さは薄くなる。これ等の手段を用いると発泡性樹脂の持っている自らの温度で、冷却・固化速度が遅くなるので、流動性が増す作用・効果もある。
【0251】
(プラスチック用塗料)
本発明に用いる樹脂成形品の上に化粧(カバーマーク)を目的に使用される塗料は、熱可塑性樹脂成形品の場合、素材樹脂の熱変形(耐熱)温度が低いので、アクリル系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、ウレタン塗料などの低温で乾燥又は硬化乾燥する塗料が選ばれる。焼付け乾燥の温度が低い塗料が選ばれる。又PP成形品では、上記塗料を直接に塗装すると、PP成形品と上記塗料(塗膜)との親和性は乏しく、十分な付着性を得る(発揮)事が出来ないので、PP成形品に塗装を行う場合は、ハロゲン化(塩素化、臭素化)PE、ハロゲン化PPなどを主成分とする、或いはマレイン酸変性樹脂(PP、PE)を主成分としたプライマーを塗布し、上記上塗りを塗布する。プライマー及び上塗り塗料は溶剤系であっても、エマルジョン系であっても良い。プライマーを塗布し、指触乾燥完了後、少し強制乾燥させた後、上記化粧用の塗料(上塗り塗料)を用いて塗装をする。上記塗料は溶剤系、エマルション系、水系がある。粉体系の塗料の場合もある。
【0252】
(塗装の前処理)
塗装の手段はエアースプレー塗装或いは静電塗装が行われるのが一般的である。塗料は美装な塗膜を得る為に専用シンナーにて作業に適した粘度に希釈調整する。塗装の前処理としては、被塗物に付着しているゴミ、ブツ、油脂、離型剤などの除去、静電気の除去など塗装不良を防止する為いわゆる除塵、除電を行う。
メーカーによっては手作業で、例えばイソプロピルアルコール(イソプロパノール、IPA)などでアルコール拭きを行い、塗装前に更にエアーブロー後、スプレー塗装している。又これ等前処理を自動的に行う場合は脱脂液をシャワー或いは浸漬後、水洗、水切り乾燥を自動化している塗装するラインもある。
発泡剤に重曹を用いた場合は、これ等の前処理手段だけでは、発泡残渣(炭酸ナトリウム)、未分解の発泡剤(重曹)は除去しきれず、そのまま塗装すると発泡残渣などが塗膜の付着性を阻害すると言う問題がある。
これ等の残渣は水洗だけでは完全に除去出来ないが、これ等アルカリ性物質は酸で中和する事で水溶化し、容易に水洗除去する事が出来る。そこで発明者は塗装前処理として、酢酸、クエン酸、コハク酸などの有機酸を含む希薄水溶液で被塗物にシャワー或いは浸漬後、常温或いは温水洗浄除去する事で付着不良問題を解決した。浸漬の場合超音波洗浄、バブリングなど併用すると洗浄効果は増す。
【0253】
(コア・バックの金型構造)
図53図54とで図17図、18とは金型構造が異なる場合を例示する。図17図18は金属同士の縦見切りである。図53図54は可動側の形状(附番157)が成形品の中に入り込んで、発泡性樹脂を充填させた後、可動側を後退させ発泡倍率を高める。附番155は可動側の金型と、固定側の金型とに樹脂が入る(充填される)空間(成形空間)を示している。附番156は附番61を後退させた時の拡張しない外側の成形品を示している。
【0254】
(PLなどのシールに用いるOリングの別の形状)
図11附番33のOリングは通常は、断面が円形で、モールド・バックしてから真空引きをして、レイン・ドロップをなくす手段をモールド・バックしてパーティングを開いても、PLが十分シールする必要から、附番33のOリングを太する。それ以外には図55に示すVリング、図56に示すUリングを用いる。附番159、附番160は開口部でここの気体が入り込むと、その圧力で外側に広がり、シール性を発揮する。附番158はVリングの、附番161はUリングの断面を示す。図57はVリングと、通常の円形のOリングとを組み合わせた場合を示し、図58はUリングの場合である。
【0255】
上述した様に図55図56のOリングは、シールの方向性があるので、成形空間内を圧気して、圧気の排気後の、真空引きをする場合は、成形空間に開口部159、160を成形空間の方向に向けたVリング(Vシールリング)又はUリング(Uシールリング)と、PL方向とは反対の方向に向けたVリング又はUリングとを配置すると左右のシールができる。間に162のOリングを設けても良い。(図59図60図61図62図55を左右で一体とした形状、図63図56を左右で一体とした形状である。中央部に附番162のOリング形状を設ける場合もある。これ等のリングの材質は市販のOリングと同じNBR、ウレタンゴムなどで十分である。必要に応じてシリコンゴム、フッ素ゴムなどを使用する。ゴムの硬度は金型の大きさ、圧気の圧力によって最適な硬度に変更する。
図示しいないが図55乃至図62では図面の左方向の先が成形空間があり、右方向はPLを通じて外部を示している。図55乃至図62のPL面はこれ等の図面のシールが配された面である。(図示せず。)
附番163は開口部164を外側に向けた図55のVシール、附番166は開口部165を外側に向けた図55のUシールである。附番159、附番160、附番164、附番166の中には、前記図24乃至図26同様に、図29のスプリング、図30のOリングなどを入れて(はめ込んで)、外側に開けられる仕様(加重式、荷重式)としても良い。
【0256】
(真空引き装置)
GCP排気後に、金型内の圧気を更に真空引きをして、GCP特有の不具合のレイン・ドロップをなくす手段を説明する。図15、又は図16のGCP装置で、附番51の排気弁を開け、型内の圧気を排気後に、モールド・バック,コア・バックさせて、金型と樹脂の隙間に入り込んでレイン・ドロップの原因となる、圧気を外に排気(GCP装置の附番51の排気弁を通じて、)させる事でレイン・ドロップは少なくなる、目立たなくなる、消滅をする。更に真空引きを行う事で、レイン・ドロップを少なく出来る。
【0257】
金型を閉じて、図10図11で示すシール金型へ圧気をして、発泡性樹脂を充填、充填途中、充填完了後に51の弁を開け、圧気を排気させる。排気の途中、排気完了後に、金型のPLを開け(モールド・バック、コア・バックをさせて)、金型と樹脂との隙間に入り込んだ、レイン・ドロップの原因となる圧気を排気する。
真空引きを行う場合は、弁51を閉じ、図63に示す真空引き装置の附番174を開け、型内の圧気を附番169のタンク内に引き込む事で、樹脂と金型との隙間の圧気を減らし、成形品の発泡力で型転写する。
金型表面温度が高い、溶融樹脂の温度が高い、圧気の圧力が高いとレイン・ドロップが多くなるが、真空引きを採用する事でこれ等の問題は解決される。図63中で附番177は真空ポンプ、173は電磁弁で、附番169タンクの圧力を確認する附番170圧力計(信号出力可能な仕様)の設定の圧力で駆動(ONとOFF)をする。176はマニホールド、171はホース、172は真空引きの対応するワンタッチカプラで、金型のL(成形空間への圧気回路)と繋がれる。附番168は逆止弁、附番175の矢印は真空引きされた圧気の流れを示す。
【0258】
次に、実施例に基づいて、本発明を説明する。実施で用いた樹脂について説明する。ABSは日本エイアンドエル(株)のクララスチックGA-501(商品名)を、PSは東洋スチレン(株)のトーヨースチロールG100C(商品名)、HIPSは東洋スチレン(株)のトーヨースチロールH450(商品名)、m(スチレン変性)-PPE(ポリフェニレンエーテル)は旭化成工業(株)のザイロン100Z(商品名)、PC/ABS(PCとABSとのポリマーアロイ、ブレンドポリマー)は帝人化成のマルチロンT3714(商品名)、PCは三菱エンジニアリングプラスチック(株)のユーピロンS2000(商品名)、PPは住友化学(株)のノーブレンAZ864(商品名)を用いた。
成形機は東洋機械金属(株)製の射出成形機を用い、その東洋機械金属(株)製の成形機の中のPLCには、本発明のGCP装置、液体の注入装置、中空成形装置、圧空成形装置、本発明の図23に示す金型の温度調整器などを制御し、指令し、命令をするプログラムを組み込んである。
【実施例1】
【0259】
(発泡剤のマスター・バッチの製造)
無機系発泡剤として、重曹の粉体を、有機系発泡剤とADCAの粉体を、起泡核剤としてクエン酸2水素1ナトリウム(クエン酸1ナトリウム、クエン酸モノナトリウム、クエン酸モノソーダ)の粉体を其々準備した。涛(濤)和化学(株)(〒578-0935 大阪府東大阪市若江東町6丁目66-35)に上記 重曹、ADCA、クエン酸モノソーダと、ABS、PS、PPのペレットとを送り込み、MC加工、SC加工を改良したH加工(H加工の詳細は涛和化学に企業秘密であるので不明、涛和化学からはこの様に説明を受けた。)を依頼、其々の発泡剤(重曹と、ADCAとを)、起泡核剤とを其々の樹脂ペレット表面に担持した。
ABSに重曹を10Wt%担持したABS用の発泡剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-B-重曹-10)、PSに重曹を10wt%担持したPS用の発泡剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-S-重曹-10)、PP{AZ864(ブロックコポリマー MI値=30程度)に重曹を10wt%担持したPP用の発泡剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-P-重曹-10)と、ABSにADCAを10wt%担持したABS用の発泡剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-B-ADCA-10)、PSにADCAを10Wt%担持したPS用の発泡剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-S-ADCA-10)、PP(AZ864)にADCAを10wt%担持したPP用の発泡剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-P-ADCA-10)と、ABSにクエン酸モノソーダを10wt%担持したABS用の起泡核剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-B-CANa-10)、PSにクエン酸モノソーダを10wt%担持したPS用の起泡核剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-S-CANa-10)、PPにクエン酸モノソーダを10wt%担持したPP用の起泡核剤のマスター・バッチ(開発コード;Wn-P-CANa-10)とを製造した。
実施例1ではH加工を用いたが、別に(株)ヘキサケミカル(東大阪市)のペレ加工でも製造は可能である。それ以外には上述した様な手段、例えばヘンシェルミキサーを用いても同じモノ(発泡剤のマスター・バッチ、発泡助剤のマスター・バッチなど)が製造出来る事は確認をしている。
愛知電機(株)の ロッキング ミキサーのRHM-(SJ)(商品名)、 ロッキング ミキサーのRMDHLV(商品名)でも実施可能である。
【実施例2】
【0260】
(GCPなしの発泡成形品の製造)
上記ABS、HIPS、m-PPO(E)、PP、PC、PC/ABSに其々に適した発泡剤(例えばPPには上記のWn-P-ADCA-10など)、必要に応じて起泡核剤を用いてGCPを実施せず図21図22の金型を用いて発泡成形を行った。勿論の事GCPを実施しない発泡成形なので、成形品表面にはスワール・マークが発生している事は目視確認した。成形品を破断(割って)して内部を確認、発泡セルが存在、発泡層が形成されている事を確認した。図42図43は其々の成形品の結果を示す。尚図42には其々の成形樹脂と、発泡剤のマスター・バッチとの組み合わせ、添加量、起泡核剤の添加量が示してある。
其々の発泡剤の添加量を3wt%の場合も、5wt%の場合も同様な結果を得た。
成形樹脂がPPの場合、発泡剤マスター・バッチ製造を、成形予定のPPのペレットに、成形予定のPPと相溶性、相容性のある酸変性したPPとしたので、図1図2 に示したゲート近傍のシルバー(符番2)の発生はない。
PPに対しての発泡剤Wn-P-重曹-10の重曹の粒径を0.5μmの微細にして、発泡剤のマスター・バッチを製造、重曹1粒1粒からの発泡性ガスの発生量を少なくさせスワール・マークを目立たなくさせる手段を講じたが、後述のGCPを用いていないので、やはりスワール・マークは表面に発生した。
【実施例3】
【0261】
(GCPありの発泡成形品の製造)
上記実施例2に金型構造が、図10に記載のエジェクターボックスを用いたシール金型(図11でも可能である。)を、図15記載のGCP装置1台をL乃至Lに繋いだ。射出成形機は東洋機械金属(株)製の350トン(Si-350-6S)を用いた。射出成形機(Si-350-6S)には、図15のGCP装置をコントロールする前記詳細に記載した、GCPのプログラム{金型内への圧気(気体の入り)と排気、サックバック、ブリージング、コア・バック、モールド・バックなど}が成形機のプログラムの中に組み込まれているので、図15の装置には別に設けてコントローラーを用いないで、射出成形機の中のプログラムにインストールされているプログラムで動作させている。
図13の金型の製品の重量は100グラム/1個程度(両方で約200グラム)である。金型が締りノズルタッチしている事を射出成形機が確認したので、射出成形機から符番46注入弁開の信号を送り注入弁46から金型の空間L乃至Lヘコンプレッサー43で圧縮したエアーを送り込んだ。符番56の圧力計の出力信号を0.8MPaとして、圧力計が達した時(金型内も同圧と推測される。)この信号を受けて射出成形機は空圧式で作動するシャット・オフ・ノズルを開き加熱筒内の発泡性樹脂をキャビティ(L空間)に充填した。キャビティ内に充填された溶融樹脂の体積÷キャビティ内の体積×100で定義される充填率(vol%)が95vol%に達した時、射出成形機から符番51の排気弁を開きL乃至L型内のガスを排気した。外観の状況と内部の発泡層は図44に記載した。成形樹脂がPPの場合に発泡剤のマスター・バッチのベース・レジンを相溶性、相容性のあるPP、発泡剤の担持に用いたPPも成形材料のPPと相容(溶)性のある酸変性(例えばマレイン酸)のPPとしたので、図1図2に示した符番2の様にゲート近傍のシルバーの発生はない。
【実施例4】
【0262】
(金型内の圧気の排気のタイミングの違い)
実施例3に於いて、排気時間を(1)キャビティ内へ100%充填した後直ぐにと、充填後3秒後としたが、外観と、内部発泡層は変わらず、排気のタイミングが遅い分には大きな影響はない様子である。反対に排気のタイミングを、充填率60%(充填途中)で行うと、流動末端には発泡力(発泡ガスの発泡力、起泡力)が押さえ(抑え)られないので、流動末端にスワール・マークが発生した。
排気のタイミングは成形空間内に発泡性を付与した発泡性樹脂を90%以上充填した時から排気すれば、流動末端にもスワール・マークの発生は確認されない。
【実施例5】
【0263】
(GCP圧気の圧力)
実施例3に於いて、GCPの圧気の圧力(成形空間内の圧力)を0.8MPaから1.0MPa、1.2MPa、1.4MPaとした。圧気の圧力の差による外観と、発泡層の変化はない。圧気の圧力を0.6MPaに下げたところ、発泡力を抑えられずに、全体にスワール・マークが発生した。特に発泡剤にADCAを用いた場合はスワール・マークの発生が多い。これは使用する樹脂に対して、発泡性ガスである窒素ガスは溶解度が低い結果と推測される。発泡剤の種類と、発泡剤の添加量と樹脂の種類によってGCPの成形空間内への圧気の圧力は変化する。当然ながら圧気の圧力が高いと、発泡力の大きい発泡剤(例えばADCA)が多くてもスワール・マークをなくす事は出来る。
【実施例6】
【0264】
(GCPなしの成形品への塗装適性)
実施例2で得た成形品{成形品の番号(符番)は図43に記載}に其々適した塗料、ABSと、HIPSと、m-PPO(E)と、PCと、PC/ABSの成形品には、スチレン変性アクリル樹脂を主成分とした塗料{(株)トウペ製のリペレS#1100(商品名、商品番号)}を、PPの成形品には、プライマーが必要なので、初めに武蔵塗料(株)製のマルチプライマーEXC-3000(商品名、商品番号)でプライマー処理をした後に、上塗り塗料は武蔵塗料(株)製のEC-GPX79-エコハイウレックス{色はシルバー(主剤と硬化剤との混合比率は10:1)(商品名、商品番号)}を用いて塗装し、塗装成形品を得た。
これ等成形品の塗装面に対して、JIS K-5600-5-6に準拠して碁盤目試験を行った。結果を図45に示した。図45の成形品のすべてにスワール・マークが発生、スワール・マークは成形品表面に薄い樹脂膜が付いているだけであるので、スワール・マークと成形品本体とは殆ど付着していないので、このスワール・マークが剥がれの原因となった。
【0265】
実施例6での塗装手段の詳細な方法は、ABSと、HIPSと、m-PPO(E)と、PCと、PC/ABSの成形品では、(1)イソプロピルアルコール(IPA)を用いて表面を脱脂して、(2)屋内放置してIPAを蒸発させ、(3)其々の成形品の材質に適する上記塗料を用いてスプレー塗装を施した。膜厚は10μm程度とした。(4)3分間程度のセッチングを行った後に、(5)乾燥温度は50~60℃、乾燥時間は45分とした。(6)48時間屋内で放置後に上記付着性試験を行い結果を得た。PPの成形品の場合は(1)IPAを用いて表面を脱脂して、(2)屋内放置してIPAを蒸発させ、(3)塩素化ポリオレフィン樹脂を主成分とするプライマー処理が必要なので、初めにマルチプライマーEXC-3000をスプレーし、セッチング5分後60℃で30分乾燥、膜厚は3μmとした。(4)適する上記塗料(EC-GPX79-エコハイウレック 色はシルバー)を用いてスプレー塗装を施した。膜厚は10μm程度とした。(5)セッチング5分後、(6)乾燥温度は60℃で45分乾燥した。膜厚は15μmとした。48時間室内で放置後に上記付着性試験をJIS K-5600-5-6に準拠して実施した結果が図45である。
PPの発泡成形品の塗装を行う場合は、初めにPPにマレイン酸変性のPPからなるプライマーを塗布して、2液ウレタン塗料などを用いて塗装をする。その際に発泡剤マスター・バッチのマレイン酸変性のPPと、同材質の、同じモノ(例えばハードレン NZ-1015など)を用いたプライマーを用いるのが好ましい。
勿論異なるモノでも良いが、その場合はマレイン酸変性のPPが含有した発泡成形品へのプライマーの付着性確認を行う。マレイン酸変性のPPならば、変性率などが異なっても使用可能(例えば発泡剤マスター・バッチの製造には東洋紡のハードレン NZ-1015を、塗装のプライマーにはアローベース DA-1010の組み合わせ)であった。
【実施例7】
【0266】
(GCPありの成形品への塗装適性)
実施例7は前記実施例6に使用した成形品をGCPを行い表面が平滑なスワール・マークの発生がない成形品{成形品の番号(符番)は図44に記載}を用いて、実施例6と同様な塗料、同様な手法で塗装成形品を得た。実施例6と同様にJIS K-5600-5-6に準拠して1次付着性を確認する為に、碁盤目試験を行ったところ、全ての成形品での塗膜の付着性は100/100と良好であった。(図44
【0267】
2次付着性を確認する為に、JIS K5600-7-1に基づき、塩水噴霧試験(SST)を240時間行ったところ、発泡剤にADCAを使用したモノは塗膜の剥がれなどの確認は出来なかったが、重曹を発泡剤として用いたモノは塗膜の膨れ(ブリスター)が確認された。(図47)これは発泡剤の重曹が、熱分解して発泡性ガスの炭酸ガスと水蒸気とを発生させた後に残る発泡残渣の炭酸ナトリウムと、或いは未分解の炭酸水素ナトリウムとの何れか、或いは両方が成形品表面に付着したまま(IPAでの脱脂だけ)であったので、塗膜の膨れが発生した原因と推測した。JIS K5600-7-2の耐水性試験、例えば50℃、98%RH(湿度)雰囲気で、240時間放置、JIS K5600-6-2の耐水性試験、例えぱ40℃の温水に240時間の浸漬などでも、塗膜の膨れが確認された。(図47
【実施例8】
【0268】
(発泡残渣の除去)
実施例7に於いて膨れの原因が炭酸ナトリウムと、未分解の炭酸水素ナトリウムと推測されたので、重曹を発泡剤に用いた成形品だけを、IPAの脱脂後に1wt%の酢酸水溶液に10分間浸漬、炭酸ナトリウムと、未分解の炭酸水素ナトリウムを水溶化{酢酸は酸性なので中和(反応)させ、水溶解が容易になる。}させ、水洗した後、乾燥させた酸洗浄した成形品を、実施例7で行ったSST240時間の結果、耐水性試験、塩水浸漬試験を行ったところ、塗膜の膨れの発生はなかった。(図47
酢酸の代わりに5wt%含有のクエン酸水溶液でも結果は同様、塗膜の付着性の向上は確認された。実施例8の結果から、重曹を発泡剤として用いた場合、酸洗を行う事で塗膜の付着性を高める事が確認された。実施例8では重曹を用いたが、炭酸水素カリウムでも同様な結果を得ている。
【実施例9】
【0269】
実施例2場合の金型は図13を用いた。実施例9では金型を図24図25図26図27図28の荷重式Oリング、U字パッキン、V字パッキン、L字パッキンなどを用いてエジェクターピンをシールした図14(詳細は図12)の金型を用い、実施例2と同様にGCPを行った。何れの樹脂の場合もスワール・マークの発生はない。但し充填速度を最速に、最高圧に設定したところ、急速な圧力の上昇によって、GCPの気体{ガス(圧気)}逃げ(ガスの移送、ガス抜きなど)が十分でなく、ショート・モールド、変色・焼けが発生した。GCP装置で55サブタンクをもった図16のGCP装置に変更した結果、高速・高圧に溶融樹脂の充填でも、充填の力で、GCPのガスがサブタンク55に戻される(移送される)ので、急速な圧力の上昇に起因するショート・モールド、変色・焼けの発生はなくなった。
GCP装置は55サブタンクを持たせた方が成形空間内の圧気の圧力が樹脂の充填によっ圧縮され、結果変色・焼けをなくす作用・効果は大きい。図11の場合はエジェクター・ボックスLがこの55サブタンクの役目を果たす。
【実施例10】
【0270】
(モールド・バックとコア・バック)
実施例2に於いて、圧気を排気した後(GCPプロセス完了後)直ぐに金型を0.5mm後退{射出成形機で可動側の金型を0.5mm下げモールド・バックとコア・バックとをさせて}、発泡倍率=100-0.5mm{可動側金型の後退の距離、型開きの距離+2mm(初めの天肉の板厚)}÷2mm(初めの天肉の板厚)×100=25%の軽量化をした。GCPを排気した後直ぐに金型を1mm後退させ、発泡倍率が50%の発泡成形品も得た。これ等0.5mmのモノも、1mmのモノも何れもGCPを実施しているので、其々の樹脂でも表面のスワール・マークの発生はない。又モールド・バックとコア・バックさせた事に起因するヒケ、膨れはなくも型再現性は高く形状の乱れはない。符番67(コア・バック構造の部分)の穴の部分だけ、穴の冷却が先に進むか周りが少し発泡しにくい様子であった。
附番67は縦見切りの金型構造であるが、平見切りのモールド・バックでも実施は出来る。
【実施例11】
【0271】
実施例9に於いて図14の金型を用い、図16のGCP装置を用いて同様に0.5mmと1mmとをモールド・バックとコア・バック(附番67の穴)させた。発泡倍率を高めた発泡成形品でもスワール・マークの発生も、ヒケ、膨れはなくも型再現性は高く形状の乱れは殆どない。
後退のタイミングをGCPプロセスの圧気を排気後の5秒後、10秒後と遅延させると、当然ながらキャビティ内の成形品の冷却・固化が進むので、モールド・バックとコア・バックしての型再現性は低くなる事を確認した。
遅延の時間は、樹脂の種類、発泡剤の種類、発泡剤の添加量、発泡性ガスの種類、GCPの圧力、成形品の板厚などによって変わるが、発明者の経験から、10秒以上に遅延はスワール・マークを押させるには必要はない。
【0272】
成形空間内に発泡性樹脂が90%以上充填された段階で、排気しても、完全に排気されるまでの時間がかかる事、樹脂内の発泡性ガスが表面にでてスワール・マークとなるまでの時間が少し遅れるので、表面にスワール・マークのない綺麗な成形品を得る事が出来る。
この様に排気は成形空間内に90%以上の充填から、完全充填、完全充填から10秒程度遅延させるの範囲内で成形品の外観を確認しながら調整(設定)する。
、L、Lの排気のタイミングは、同時でも、又上述の成形途中、遅延時間の範囲内でそれぞれ設定しても良い。
同時排気の場合は、図15図16のGCP装置を1台用いる手段でも良い。数台(例えば3台)を用いても良い。排気は原則一気に行い、発泡させるが、排気弁に流量調整弁を設けて、排気速度をコントロールする場合もある。排気後に真空引きをする事も、図11で42の加重式Oリングの方向を反対に設けたモノを追加{附番42のOリング(図24の加重式Oリング)はシールの方向性があるので、真空引きの場合は追加(図12には図示せず。)が必要。}すれば可能である。
【0273】
GCP排気後直ぐに、或いは少し時間差を持って金型をモールド・バックさせると、GCPを用いた発泡成形の場合に、樹脂の充填によって巻き込まれ、レイン・ドロップ現象の解決が出来た。金型を後退させて、ガスベントを開けて、溶融樹脂の充填によって巻きこんで、レイン・ドロップの原因となる、圧気が急速に排気され、未だ冷却固化が完了しない、内部発泡層の発泡力によって金型へ押さえつけれれるので、型再現をする。この場合は薄い(深さの浅い)シボでも、光沢面でもレイン・ドロップの発生はない。
【実施例12】
【0274】
(金型温調)
実施例3では金型の表面温度が、ABS,HIPS、m-PPO(E)、PPでは固定側、可動側共に約45℃、PCでは55℃とした。実施例12では図23に示す装置で、熱媒体にグリセリンを用いて、固定側、可動側共に150℃とした。GCPを行い、後に金型に設けた別回路に冷却水を循環させ発泡成形品を製造した。金型温度を85℃と高く設定した結果、天肉が2mmでも表面のスキン層は非常に薄く、内部発泡層は十分発泡をしていた。実施例9でも結果は同じ、実施例10、実施例11ではモールド・バックとコア・バックする事で、穴(符番67)の型再現性が低かったが、実施例12では表面スキン層が非常に薄くなるので穴(符番67)の部分の型再現性も十分高い。実施例10、実施例11では2mm後退させ発泡倍率が100%でも冷却・固化が遅いので型再現性は十分、外観が良好な成形品は得られる。
【0275】
GCPはキャビティ内に充填された発泡性樹脂の持っている発泡力を抑える作用をするが、キャビティ内の気体はキャビティ内に溶融樹脂の充填を邪魔する厄介な存在である。故にGCPを用いた発泡成形の場合に、GCPの圧力が高くなるほど、金型温度が高くなるほど(溶融粘度の高いスチレン系樹脂、例えばABSよりも溶融粘度の低いPPではレイン・ドロップは発生し易い。)、溶融樹脂温度が高いほどレイン・ドロップ(水溜りに雨水が降り注ぐ時に、雨粒によって水溜りの水の表面に小さな窪みが発生する現象)と呼ばれる外観不良{成形品表面の凹(へこみ)が発生した様子}が多くなる。この外観不良をなくすには、GCPでの圧気の圧力を下げる、金型温度を下げる、樹脂温度を下げる必要があるが、これでは所望する発泡成形品が得られない。この問題を解決する有効な手段が、シボ加工を化粧面の固定に施す。可動側に施しても問題はない。シボの作用・効果は、調理用のラップ(薄いフィルム)を光沢硝子面に貼ろうとすると、起泡が入ってしまう。然しスリ硝子の場合は起泡が入らず綺麗に張る事は出来る。粗さが大きいと気泡は更に入らない。粗いシボ加工をするとGCPを用いた発泡成形でもレイン・ドロップがない綺麗な外観が得られる。
シボ加工以外に、モールド・バック、コア・バックによってもレイン・ドロップの問題は解決される。レイン・ドロップをなくすには、モールド・バック、コア・バックの量は0.1mmもあれば良くこの手段では発泡倍率を高くさせないので、成形品の強度低下は殆どない。金型のPLが縦見切りのコア・バックより、平見切りのモールド・バックの方が、レイン・ドロップの原因となる、樹脂と金型との間に入り込んだ圧気が急速に排気されるので、レイン・ドロップをなくす手段に向いている。
図21図22の成形品固定側に深さ50μmの砂シボと、深さ20μmの砂シボと、5μmの梨地シボの加工をして、PPを用いて、GCPの圧力が1MPa、発泡剤をWn-P-ADCA-10を3%、Wn-P-CANa-10を1%使用した。50μmの場合は、シボが深いので、レイン・ドロップの発生はないが、20μmではレイン・ドロップの発生はある。0.1mmのモールド・バックなどを行った結果、20μmのシボ面でも、当然ながら5μmのシボ面でもレイン・ドロップの発生はなくなった。結果モールド・バックによってレイン・ドロップの問題を解決する手段にモールド・バックなどを行う事が非常に有効と判断される。PPに炭酸カルシウムを10wt%加え、複合材として、上記同様に0.1mmのモールド・バックを行った結果、シボ深さ5μm以下の細かいシボでもレイン・ドロップの発生はない。上記実施例12での結果から、浅めにシボ加工して、モールド・バックをさせれば、樹脂と金型との隙間に樹脂の充填によって巻き込んだ圧気が排気されない事で起因するレイン・ドロップの問題は解決される。樹脂に炭酸カルシウム、硝子繊維、硝子ビーズなどの無機物の添加でも十分にレイン・ドロップの問題は解決されるが、モールド・バックさせると添加量を少なく出来る。
【0276】
(光沢面のレイン・ドロップをなくす手段)
図15図16に 示す GCP装置は、金型内の圧気の排気は成形機などからの排気信号を受け符番51排気弁を開け、圧気の圧力で排気(自然排気、大気圧排気)するが、図49に示す様に排気弁51とは別に、真空引きをする回路(符番141などが配置された回路)を設けて、排気の後に真空引きをしても良い。この場合に真空引きの効果を十分に行う為には、始めに排気弁51を開き、排気完了後に必要に応じて金型を開く。開き量は、金型を拡大(モールド・バック、コア・バック、リセッション、リセス)させ発泡倍率高める目的の成形空間を拡大をさせる距離、或いは少し、例えば0.1mm、0.3mm程度開けて、ガスベントを拡大させる 事によって、レイン・ドロップをなくす方法などを上述した。この場合のPLの構造は縦見切り(PLがコア・バックの構造)でも良いが、平見切り(PLはモールド・バックの構造)の方が樹脂が充填によって巻き込み金型表面と成形品との間の圧気ガスの排気には有効である。
必要に応じて排気した後に、符番51を閉じ、符番141を開け、符番142内の真空引き(減圧)したタンク内へ引き込み。この際に符番33パーティングのOリングは、金型が開いてもシール機能を維持する為にOロングのつぶししろは、モールド・バックさせる距離以上とする。エジェクターピンなどに用いられている符番42の荷重式Oリングは方向性があるので、真空引きを行う場合は、符番42とは別方向(反対の方向)に設置、真空引きの効果を高める。真空引きの装置は、図63に示した。
【0277】
圧気の気体は、空気、窒素ガス、炭酸ガス、窒素ガスと炭酸ガスの1:1の混合気体を其々を圧力1.4MPaでシール金型内を圧気して、実施例12に於いて図49が付帯されたGCP装置を用いて圧気の排気後に、0.2mm モールド・バック後に真空引きを行いレイン・ドロップが少なくなる、殆ど確認されないまでなくなる事を確認した。GCPの場合のシボの深さは0.5μmであるが、光沢面でも可能である事は確認した。圧気の圧力は、高いとGCPに於いて発泡セルを押さえ込む力が高く発泡縞模様を少なくする効果が大きい。真空装置の制御は成形機のPLCに組み込まれたプログラムによってなされる。また別にPLCを設けて、成形機との信号を交換をして真空引き装置を制御しても良い。
【0278】
GCPを用いた場合の光沢面レイン・ドロップをなくす具体的な手段を示す。初めに金型温度が高い方が発泡成形品表面の非発泡層(スキン層)を薄くする事が出来る。
具体的にはABS、HIPSなどの非結晶性で金型の温度を市販のヒート・アンド・クールの装置、図23の様な装置、取出し機に高周波誘導コイルを取り付けて金型表面に渦電流を発生、金型表面温度を上げる手段{例えば旭化成工業(株)のBSM成形法など}で昇温させる。この方法はPPでのPCでも変性PPO(E)などでも実施出来る。金型温度が高いと、上述した様にスキン層は薄く出来るが、金型温度が低い時よりレイン・ドロップの発生は多くなる。レイン・ドロップをなくすにはシボ加工を施す、金型をモールド・バックさせると良好な結果を得る事は述べた。モールド・バックをした上で、一気に真空引きを行うと、金型と樹脂の隙間に入り込んだ与圧の気体を一気に吸出し、樹脂と金型との隙間の圧気の気体をなくせるので、微細なシボ加工でも、光沢面でもレイン・ドロップのない外観が綺麗な、GCPを実施した発泡成形品が得られる。
【実施例13】
【0279】
硝子繊維10Wt%入りのABSとして、日本エイアンドエル(株)のクララスチック GA-110G-10(商品名)、硝子繊維20wt%入りのABSとして、日本エイアンドエル(株)のクララスチック GA-110G-20(商品名)とを準備した。
前記硝子繊維10wt%、20wt%入りの材料を発泡成形ではなく、通常の中実成形を実施例12(図23の装置を用いて金型の表面温度をABSの場合は、非結晶性樹脂なので硝子転移点温度(T9)はなく、Vicat軟化点温度、加熱変形温度(HDT)、荷重タワミ温度などから考え125℃以上の150℃にして、)でGCPを行わずに成形した結果、符番67の穴に起因するウェルド・ライン、硝子繊維の浮きはなく、非常に綺麗な光沢の高い外観の成形品が得られた。この場合は化粧面固定側へのシボ加工は行っていない。
【0280】
発泡剤にWn-B-ADCA-10を用い、上記樹脂GA-110G-10と、GA-110G-20とへの添加量を4wt%、GCPの圧力を1.4MPaとした結果、硝子繊維が沈み、光沢のある成形品なので、レイン・ドロップは発生した。
シボ深さが50μmの砂シボ加工、15μmの砂シボ加工をした結果、GCPに起因(圧力が高く、ガス量が多いので、)するレイン・ドロップの発生はなく、硝子繊維は沈み、外観は綺麗で薄いスキン層が形成され、内部は硝子繊維が起泡核剤の作用をするので、微細な発泡セルを持った発泡層が形成されていた。
【実施例14】
【0281】
実施例13に於いて図42に示す成形材料と発泡剤のマスター・バッチ、必要に応じて起泡核剤を用いて、金型の表面温度を例えば150℃と其々の樹脂のT9以上として、図14の金型に50μmのシボ加工をした。図16のGCP装置を用い、モールド・バックとコア・バックを2mmさせた。金型温度が高いので発泡倍率100%でも、レイン・ドロップなどの外観の不具合はなく、型再現性も金型温度が低い場合に比べて高く、スキン層の厚さも非常に薄いが表面のスワール・マークはない。
【実施例15】
【0282】
(排気の時間差を設ける事で他の一方に押さえつける手段)
実施例3に於いて、図15のGCP装置3台を用いて圧気回路のL乃至Lに其々繋ぎ、L乃至Lの圧力を1.3MPaとした。発泡性樹脂をキャピティ内に95vol%充填した段階で、L3を排気、100Vol%充填された段階で、L2を排気、2mmモールド・バックをさせ、モールド・バックが完了後にLを排気した。当然ながら金型のパーティングが開くので、その時にLの排気は開始される。観察した結果にLを遅延させたので固定側への押し付けがあり型転写は十分であった。
を排気後、2mmモールド・バックさせる事でも固定側への押さえつける作用は確認した。
モールド・バックの距離を0.1mm、0.2mm、0.5mm、1mmそれぞれ押さえつける作用・効果を確認した。其々のモールド・バックの距離でレイン・ドロップ現象が解決される事も確認した。
【実施例16】
【0283】
実施例3に於いて、図16のGCP装置3台を用いて圧気回路のL乃至Lに其々繋ぎ、図38の様にした。LのLの圧力を1.0MPa、Lを1.4MPaとした。発泡性樹脂をキャビティ内に95vol%充填した段階で、Lを排気、100vol%充填された段階で、Lを排気、2mmモールド・バックなどをさせ、モールド・バックなどが完了後にLを排気した。当然ながら金型のパーティングが開くので、その時にLの排気は開始される。観察した結果にLを遅延させたので固定側への押し付けがあり型転写は十分であった。
実施例15の同様に、Lを排気後にモールド・バックさせても型転写性は十分、レイン・ドロップ問題の解決も可能である事を確認された。
【実施例17】
【0284】
(発泡剤マスター・バッチの製造)
PCを、例えば四塩化炭素、クロロフォルム、塩化メチレンなどの塩素化の有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の有機溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトンなどのケトン類、その他ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアセトンアルコールなどで溶解する。PCのペレットをこれ等溶剤(2種類以上を混ぜ合わせた混合溶剤でも可)を用いて溶解して、ワニスとする。ロッキングミキサーの中にPCのペレットと、発泡剤、例えばADCA(性状は粉体)などを混ぜ合わせ、上記ワニスを加え(ロッキングミキサーでは混ぜながら、加熱しながら、ワニスをスプレーして、溶剤を蒸発させる事が行える。)、ワニス中の溶剤を蒸発させ、蒸発乾固させる事でPCのペレットの回りに、発泡剤のADCAが担持された状態となる。
【0285】
以下簡単なPC用発泡剤の手作業での製造方法を示す。始めにPC樹脂{レキサン141(商品名)}のペレット100グラムに、酢酸エチル400ミリリットル(ml)を加え、室温で24時間放置後、45度(℃)まで加温して、攪拌をして、酢酸エチルでPC溶解をして、PCのワニスを得た。
テフロンコーティングをしたフライパンの中に、前記レキサン141のペレット500グラムと、ADCAの粉末50グラムを入れて混ぜ合わせ、その中にヘラなどでかき混ぜながら前記PCワニスを少量づつ加え、PCのペレットの回りにADCAを担持する。少しフライパンを40℃から60℃程度に加温して溶剤の酢酸エチルに蒸発を早めた。この様に酢酸エチルを蒸発させ乾固してPCにADCAを担持したが、ペレット同士がくつ付いている場合は、木ハンマーなどを用いて粉砕する。この様にしてPC用発泡剤(PC001)のマスター・バッチが得られた。
【0286】
前記レキサン141のペレット40に対してPC001を1の割合(ADCAとして1÷45×0.01=0.025wt%の添加量となる。)でタンブラーを用いて混合し、350トン射出成形機で発泡成形を実施した。GCPが未実施であったので、表面にはスワール・マークは発生したが、内部は不連続な発泡セルを持つ発泡構造体が得られた。
【0287】
前記発泡成形に於いて、本発明のGCP装置(図9図15図16図38など)を用いて、図10乃至図14に示すシール金型内を予め圧力が1.4MPaのエアーで与圧した中に、前記発泡剤PC001を用いて発泡性を付与した発泡性樹脂を充填して、表面は綺麗なスキン層を、内部は微細な発泡セルを持つ発泡構造体を得た。
【0288】
ADCAの場合に熱分解して発泡性ガスの窒素ガス、一酸化炭素、炭酸ガスを発生させるが少量のアンモニアガスも発生してくる。アンモニアガスはアルカリ性でPCを分解させる危険性が考えられたので、このアンモニアを反応させ無害化させる目的で少量のクエン酸などの有機酸を加える。これ等有機酸も粉体であるので、前記PCoO1と同様にPCのペレットの回りに担持し、クエン酸のマスター・バッチとすると良い。
ADCAは発生ガスが樹脂への溶解性が低い窒素ガスなので、発泡セルの大きさは大きくなる。起泡核剤として、亜鉛華、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなども粉体なので、同様にPCペレットに担持して、起泡核剤のマスター・バッチを製造して用いる。
これ等は予め混ぜ合わせ、PCペレットの回りに担持しても良いが、成形品によって配合量を変える必要がある場合は、それぞれ発泡剤、分解促進剤、有機酸、起泡核剤などのマスター・バッチを製造し、成形加工前に其々を担持したマスター・バッチを混ぜ合わせると良い。
【0289】
上述のPC用の発泡剤は、PCのペレットに担持する手段を述べたが、PCのペレットを使用せず、ADCAの粉体を攪拌しながら、PCワニスを加えて、菓子の金平糖を製造する方法でも良い。
この製法の場合は、1粒当たりのADCAの濃度が高いので、発泡力の制御はむつかしい。発泡剤の添加量を微妙に調整(発泡力を調整する事の意味。)を必要とする場合は、PCのペレット1粒当たり、5wt%から20wt%程度が使い勝手は良い。
【0290】
PCを主成分とするポリマーアロイはPC/ABS、PC/PET、PC/PBTなどと多くある。
前記PC用の発泡剤、発泡助剤、起泡核剤のマスター・バッチはPC用のモノが使用出来る。勿論アロイとしているABS、PET、PBTのペレットも用いられるが、これ等PCを主成分とするPCのポリマーアロイは、海島構造を持つので、海となる樹脂を用いると射出成形機内に短軸のスクリューで単に溶融混練するだけで、マスター・バッチのキャリア・レジンは容易に成形品の主成分の樹脂中に分散する。
【0291】
PCが溶解可能な溶剤は上述したが、PCを溶解してから、粘度調整などに芳香族炭化水素、アルコールなどを用いて複合溶剤としても良い。本実施例17では、無機系発泡剤の重曹でも、有機系発泡剤のADCAでも本発明のGCPの手段を用いれば内部発泡層、外部にスキン層を持つ発泡構造体が得られるが、得られた発泡構造体は、何れの発泡剤でも物性低下は著しい。
上述した様にPCは加水分解すると、著しく物性低下を招くので、PCに最適な発泡剤はエタノールなどの液状発泡剤が良い。ドライアイスのペレットを、可塑化した溶融PC樹脂中に入れ、加熱筒の温度、溶融したPCの温度(熱、熱エネルギー)によってドライアイスを気体の炭酸ガスにしてPC中に分散させれば、発泡剤による加水分解の問題は解決される。この発泡成形品に塗装適正は発泡残渣がないので重曹を用いた場合の様な問題はない。
【0292】
実施例17の方法を用いれば、PCをキャリア・レジンとして、PC用の顔料を担持すれば、PC用着色材のマスター・バッチが製造出来る。カーボンブラック、ケッチンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、CNT(カーボンナノチューブ)を担持すれば、PCの導電性を付与する、添加剤のマスター・バッチを製造出来る。この担持の方法は溶融混練の必要がないので、キャリア・レジンの溶融温度が高くても容易に製造が出来、PCの発泡剤などの製造に限定されるモノではない。
【0293】
実施例17はPC用発泡剤などの製造方法を示した。PCのワニス以外にポリビニルアルコール(PVA)の水溶液の使用も可能である。低融点の樹脂例えばカプロラクトンの粉体を用いて造粒をしても良い。この方法はPC以外、ABS、HIPSなど、PPなどにも応用展開は可能で、PCに限定はされない。
【実施例18】
【0294】
(PP用発泡剤マスター・バッチの製造)
実施例1でPP用発泡剤のマスター・バッチの製造方法を述べたが、PP樹脂ペレットの担持する材料にマレイン酸変性のPPがあり、その例として、ユニチカ(株)製の{ARROWBASE(アローベース) DB-4010(商品名)} も使用出来る。それ以外には東洋紡のPMA H1100P、PMA-F6も、NZ-1015も使用出来る。NZ-1015はエマルジョン系で、乳化剤を含まないので、使用勝手が良い。
実際にこれ等マレイン酸変性のPPを用いて、PPのペレットヘ、ADCA、重曹、炭酸水素カリウム、クエン酸モノソーダなどで発泡剤、起泡核剤のマスター・バッチ製造を行った。ハードレン NZ-1015は、エマルジョンタイプなので、加熱時に火災の危険性は少ない。これ等の発泡剤などの製造(担持)には、実施例1で示した。本実施例18ではH加工ではなく、愛知電機(株)のロッキングミキサー(商品名)の加液タイプ、加熱タイプを用いた。外部から加熱して、水、溶剤を蒸発させる機能を持ち、前記担持に用いるワニスなどを中に噴霧(加液)する機能を持つ仕様のモノ(ロッキングミキサーなど)で生産をした。
マレイン酸変性のPPの溶融温度は、成形予定のPPの溶融温度と近い方が好ましいが、成形機加熱筒内で溶融して、計量の段階、溶融混練の段階で溶融して、PP中に相容(溶)すれば良い。
更に本発明のそれぞれの発泡剤のマスター・バッチは射出成形加工以外には、押し出し成形でも、ブロック成形でも、使用可能である。
又この発泡剤マスター・バッチはPPのポリマーアロイのPP/PA(PAは6ナイロン、6-6ナイロン、12ナイロン、芳香族ナイロンなど)に代表されるPPのポリマーアロイでも実施可能である。前記アローペース DB-4010にADCAを懸濁(サスペンジョン)させて、PPのペレットの表面に担持も出来るので発泡剤のマスター・バッチにする。アローベース DB-4010に重曹を溶解して、同じようにPPの表面にスプレーして、加熱して、乾燥させれば、発泡剤のマスター・バッチとする事が出来る。
【実施例19】
【0295】
{ABS、HIPS、変性PPO(E)用発泡剤マスター・バッチの製造}
実施例17でPC用発泡剤のマスター・バッチの製造方法を述べたが、ABSを、或いはASをMEKに溶解したワニスを用いて成形予定のABS、或いはAS樹脂ペレットに無機系、又は/及び有機系発泡剤をを用いて担持して、ABS用の発泡剤マスター・バッチを製造出来る。HIPS、PSを同様にMEKに溶解、HIPS、或いはPS樹脂ペレットに無機系、又は/及び有機系発泡剤をを用いて担持して、HIPS、PS、変性PPO(E)用の発泡剤マスター・バッチを製造出来る。勿論これ等のマスター・バッチの製造は、H加工と、実施例18で示したロッキングミキサーなどでも可能であった。
実施形態1
【0296】
実施形態1は、上述した様に発泡剤のマスター・バッチの製造は配合予定の樹脂と相容(溶)性を持つ樹脂に発泡剤、発泡助剤、起泡核剤を其々担持して発泡剤のマスター・バッチ、発泡助剤のマスター・バッチ、起泡核剤のマスター・バッチを別々に製造して於いて、配合予定の樹脂ペレットと其々のマスター・バッチとを混ぜ合わせて使用する事で、所望する最適な発泡倍率が、最適な発泡構造体を、最適な大きさの発泡セルを作り出す事が出来る。
例えばABSの溶融温度は240℃、ADCAの熱分解温度は約230℃(融点は225℃で分解をする。)と溶融樹脂の温度とADCAの熱分解の温度が近いのでADCAを担持した発泡剤のマスター・バッチだけでも良いが、PPの場合は溶融温度が200℃と低いので、ADCAの熱分解温度を下げる作用のある尿素を担持したマスター・バッチを混ぜ合わせると、ADCAの熱分解温度が下げられる。
【0297】
重曹に代表される炭酸水素塩、クエン酸、クエン酸2水素ナトリウムなどは水溶液とする事が出来る。これ等の水溶液を、例えばヘンシェルミキサーに入れ、釜(ベッセル)を回しながら、これ等の物質(発泡剤としての作用のあるモノ)が分解を開始する温度以下で加熱しながら、蒸発乾固させると、成形用の樹脂ペレットと混ざり合う粒の形状まで造粒出来るので取り扱いが、粉体に比べて容易になる。ヘンシェルミキサーの代わりにロッキングミキサーでも良い。
【0298】
ADCAは難溶解性なので、ADCAの粉体と、配合予定の樹脂のワニス{例えばPSのMEK溶液(PSのドープセメント)、ASのMEK溶液(ASのドープセメント)}とを、前記炭酸水素塩などの場合と同様にヘンシェルミキサーの中で造粒するとADCAを主成分とする発泡剤が造粒出来る事は前記実施例でも説明した。
【0299】
ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛に代表されるステアリン酸化合物をトルエンなどの溶剤で溶解、前記ドープセメントの代わりに用いても良い。この場合はステアリン酸、ステアリン酸化合物は成形加工では滑剤として多用されるので、PP用の発泡剤の造粒の際にして使用しても良い。PVAも使用出来る。
【0300】
前記ステアリン酸、ステアリン酸化合物のトルエンなどの溶液とPPペレットと、重曹などの無機系発泡剤、ADCAに代表される有機系発泡剤の粉体とをヘンシェルミキサーに入れ、造粒しても良い。マレイン酸変性のPPを用いても、マレイン酸変性のPPと前記ステアリン酸、ステアリン酸化合物のトルエンなどの溶液など併用しても良い。
実施形態2
【0301】
前記実施形態1に於いて、或いはADCAを発泡剤として用いた場合には、形成させる発泡セルが大きい。起泡核剤として、クエン酸2水素ナトリウムを担持したペレット、亜鉛華を担持したペレットなどを、ADCAを担持したペレットと配合予定の樹脂のペレットとを混ぜ合わせ使用すれば、起泡核剤の作用によって微細な発泡セルを得る事が出来る。
実施形態3
【0302】
重曹を担持したペレットを用いて発泡成形を行うと微細な発泡セルが得られる。然しその発泡残渣(炭酸ナトリウム)が塗膜の付着性に影響する事は実施例7で示した。発泡剤である重曹、発泡残渣の炭酸ナトリウムと反応するクエン酸をペレットに担持したマスター・バッチを添加する事で、重曹との化学反応による発泡性ガスの発生と、塗膜の付着性に影響する発泡残渣の炭酸ナトリウムがクエン酸と反応して、塗膜の付着性を低下する発泡残渣を少なくする事で、塗膜の付着性が向上する。
実施形態4
【0303】
前記実施形態2の起泡核剤は炭酸2水素ナトリウムを用いたが、炭酸2水素カリウムを用いても同様に発泡セルを微細にする効果が確認されている。勿論の事実施形態1乃至実施形態3、実施形態4では、図10図11記載の金型と、図15図16図9に示したGCP装置、とで、GCPを実施すれば、外観のスワール・マークのない外観の綺麗な、内部は発泡セルを持った発泡成形品が得られる。
実施形態5
【0304】
PPの押し出し成形の発泡成形に於いて使用する、PP用の発泡剤、発泡助剤、起泡核剤などのマスター・バッチは、PPと相溶性のあるPPをベース・レジンに、PPと相容性のあるマレイン酸変性のPPを用いて担持され製造されているので、PPの押し出し成形に於いても、図1図2などで示した様にPEベース・レジンとして用いた市販の発泡剤のマスター・バッチの様に、前記PEが表面に出る事はない。これ等発泡剤、発泡助剤、起泡核剤などのマスター・バッチは別々に製造し、最適な配合で、PPのペレットに混ぜ合わせ使用する。PP/PAのポリマーアロイでも実施可能である。
実施形態6
【0305】
PCの発泡成形の場合に用いる市販の発泡剤のベース・レジンはPCと相容性のあるABSを用いている。結果PCの発泡成形によって得られる発泡成形品は少なからず、ABSを含有するのでPCの特性(高い耐衝撃性など)は低下する。この問題を解決する為に、PCを有機溶剤で溶解した溶液を用いてPCに発泡剤を担持し、製造した発泡剤のマスター・バッチを用いると、上述した物性低下の問題は解決される。この場合に実施例17に示した様に一般のPCより溶剤溶解性改良PCも使用が可能であるが、PCの溶解をしたモノ以外には、スチレン変性アクリル樹脂を用いたワニスを使用して良い。然しこの場合には上述した様に無機系、有機系発泡剤に起因するPCの物性低下は避けられない。
実施形態7
【0306】
ミューセルなどの手法では、気体を射出成形機、押し出し成形機に気体を発泡剤として用いる結果、インライン方式射出成形機の場合、(1)注入する気体の量の制御は、圧力制御となるので、計量中の溶融樹脂の圧力が変わる。それに伴い、加熱筒内の溶融樹脂中に入り込む溶融樹脂に発泡性を付与する気体の量が変わる。結果発泡に、発泡力に、発泡性にバラツキが生じる。(2)液体の様な、樹脂の溶融したモノは液体とは言えないが、本発明の実施形態7の溶融樹脂に対して、実施形態7に関して「液体」とすると、液体の中に気体を短時間{計量(可塑化して、溶融混練の段階で)の間の時間}で加熱筒内の溶融樹脂中に加圧溶解する、又は/及び微分散させる事は非常に困難、微分散しないで気体は大きな塊となっている状態で射出、又は押し出すと膨れ、破裂(バースト)が発生する。(3)射出成形機の場合は、加熱溶融した樹脂は加熱筒の前部に移動(スクリューがボルト、加熱溶融した樹脂はナットとする、ボルトが回転すればナットは前に行く。)する。この短時間に、加熱筒中に気体を入れて、計量中に微分散させて、発泡性を付与するのは困難、特に大きな成形品(重量の大きい成形品)では難しい。
【0307】
この問題を解決する手段は、例えばUCC(発泡成形の手段のユニオンカーバイト法)法の様に、プリ・プランジャー式射出成形機を用いると解決させる。
プリ・プランジャー式射出成形機の代わりに、射出成形機加熱筒の例えば上部に、小さなスクリューを持った小さな加熱筒内に気体を入れて、プレ分散させ、溶融樹脂に発泡性を付与させて、射出を行う本加熱筒に送り込み、再混練して、微分散させると良い。
この様な仕様と使用には、ソディック(株)製のプリプラ仕様の射出成形機で実施可能である。
【0308】
上述した場合は気体に付いて述べたが、気体に限らず、液体(例えばエタノールなどの、水、重曹水など)でも良い。この場合の注入量は気体の圧力制御ではなく、注射器(プランジャー、ピストンとシリンダーなど)の様なモノで容量を制御して入れる。
気体のモノでも液体でも、勿論固体の、例えばミクロバルーンの様な物理発泡剤、重曹、ADCAなどの化学発泡剤の場合も本発明の図10図11図37などの金型構造を持たせ、図15図16などの装置を用いてのGCPを行えば、表面にスワール・マークのない綺麗な外観の成形品が得られる。
【0309】
押し出し成形機の場合も同様にメインの加熱筒の例えば上に、小さなサブの可塑化の加熱筒を設け、ここに気体、液体を入れて、発泡性を付与する。
押し出し成形機の場合、直接押し出し機加熱筒内に気体を入れても、やはり分散不良となるので、射出成形機の場合と同様に、プレ溶融させる小さなサブ加熱筒(スクリュー)内に気体を入れ、溶融樹脂中にプレ分散させて、発泡性を付与させてから、押し出し機の本加熱筒内に送り込んで、再混練させて微分散させ、発泡性樹脂の押し出しとする方が良い。
実施形態8
【0310】
射出成形機(本発明では、単に「成形機」とも言う。)を用いて発泡成形を行う場合の実施の具体的な方法(成形機内に組み込むプログラムなど)を説明する。図10(エジェクター・ボックス構造のシール金型)、又は図11図24図25などの加重式Oリングなどを用いてエジェクターピンをシールした金型)のシール金型を、成形機に着床(取り付け)する。発泡予定の樹脂のペレットに、本発明で説明をしている手段で化学発泡剤の重曹、ADCAなどの粉体をワニスなどを用いて担持した発泡剤のマスター・バッチ、或いは永和化成工業(株)、三協化成(株)、大塚化学(株)などが製造販売している、発泡剤のマスター・バッチ(発泡剤などが樹脂中に練りこんである形態。)を、事前にタンブラーなどで混ぜ合わせ、或いは(株)カワタなどが製造販売をしているオートカラー装置を用いて、最適な比率(例えば図15図16のGCP装置の圧力でスワール・マークを抑えるなど、発泡セルの大きさと形体などから決定される。)で混合した発泡可能な樹脂(発泡予定のペレットと、発泡剤のマスター・バッチのペレットとを混ぜ合わせたモノ)を成形機のホッパーに投入する。少量の場合は成形予定のペレットの表面に粉末の発泡剤をオイルなどを用いてペレットの表面に担持して使用しても良い。
【0311】
(圧気開始のタイミング)
前記図10図11の金型が閉められ{型締め完了信号は、金型のPLにリミット・スイッチ(LS)を設けてその信号でも良い。}、ノズルタッチが完了すれば、成形機{成形機のPLC(シーケンサー)に組み込まれたプログラムの指令で、}から、例えば図16に繋がれたGCP装置の弁(附番46)を開けて金型内の空間(L、L、L)内へGCPガスを入れて(圧気する。与圧する。加圧する。GCPを掛ける。)金型内の空間を加圧(圧気、与圧)する。
圧気の時間は、予め成形機のPLC(単にPLCとも言う。)に予め入力して於いた数値(時間)に達した時、或いは附番56の圧力計を接点があるモノを使用、予め設定した圧力に達した時に成形空間内へ発泡性樹脂に射出を開始する。尚成形機とGCP装置とは信号ケーブルで繋がれ、互いに信号の交換(確認と指令など)を行っている。
【0312】
加熱筒内で加熱溶融し、発泡剤は加熱筒内の温度(熱エネルギー)、加熱溶融された樹脂の温度(熱エネルギー)で熱分解、化学反応して発生した発泡性ガスを加熱筒内に設けられたスクリューの回転の力(溶融混錬の力)で、溶融樹脂中に加圧溶解、微分散をされ、発泡性を付与させた発泡性樹脂を、成形空間(L)内に充填(射出)する。この時はまだ弁46は開いているので、金型内の空間(L、L、L)への圧気は続けられている。
【0313】
内の圧気のガスは発泡性樹脂の充填の力で、入れ子の隙間、エジェクターピンの隙間などからL、Lへと押し出される。図10の場合は、エジェクター・ボックス内にこの圧気が入るので、クッションの役目をして、圧力が大きくなる事はないので、樹脂の変色・焼けを少なく出来る。
図11の場合はエジェクター・ボックスの作用をする大きな空間がないので、GCP装置はできれば図16のサブタンク附番55を設けたモノとの接続が良い。勿論図15でも実施出来る。その理由は図15のGCP装置と金型とを繋ぐホースの空間は多少なりとも附番55の役割は果たす。
【0314】
(排気のタイミング)
内に発泡性樹脂の充填の途中、充填完了の直後、充填を完了して少し時間を経過した後の附番46の注入弁を閉じ、附番51の排気弁を開けて(附番46を閉じて、直ぐに附番51を開ける場合と、附番51を開けるタイミングを少し遅延させる場合とがある。)、シール金型内の圧気を排気する。排気をするタイミングは、成形機が成形空間内への充填を開始した時点(射出開始)を0(ゼロ)として、充填完了の時点を100として、その割合(例えばパーセント)で行う。(充填途中の排気)スクリュー位置はサーボモーター、マグネスケール、エンコーダーなどで監視できるので、任意に位置を設定、スクリューが設定をした位置に達した時に排気信号を出力すれば良い。
【0315】
射出完了後の排気は、成形機の充填の完了信号(一時圧の完了信号)を用いる。発泡成形の場合はクッションを用いずに保圧を掛ける事がある。その理由は保圧を用いないと、成形空間内に充填された発泡性樹脂のバネ性(圧縮性)によってスクリューが戻され結果、成形品の重量のバラツキを少なくさせる。保圧の圧力と時間とはスクリューが戻されなければ良いので、それ程の高い圧力と長い時間でなくても良い。勿論クッションを取って保圧を用いる事もある。
【0316】
(排気の時期、サックバック)
金型内の空間の圧気を排気するタイミングは、射出途中の排気と、充填完了後の排気とがある。射出途中の排気の手段は、成形機のPLCは射出のスクリュー位置をモニターしているので、任意のスクリュー位置{排気をさせる位置=スクリューが予め設定された位置を通過したことを確認する位置(数値)}をPLCに入力、スクリューがその位置に達した時点で、排気の信号を図15、又は図16のGCP装置へ出力して、排気弁51を開け排気する。
射出完了後に排気する場合は、射出完了後直ぐに(同時に)と、射出完了後に一定の時間を経過した後と、射出完了後に、成形空間内に充填された発泡性樹脂に掛かる圧力を下げる目的でサックバック(スクリュー後退)させ、サックバックが開始された時点で直ぐに、サックバックの途中(排気の指令に位置を予め入力して於いて)、サックバックが完了して直ぐに、サックバック完了して、一定に時間を経過した後などの何れかで排気する。これ等排気の指令は成形機PLC内に組み込まれたプログラムによって行われる。
【0317】
フィーサー(株)のバネ式の場合は困難であるが、油圧、空圧のシリンダーを用いたニードル式の、或いはロータリーバルブ式のシャット・オフ・ノズルの場合は十分可能である。サックバックとGCP排気とは別々に行い上述したタイミングの組み合わせは自由である。サックバックの指令は成形機のPLC内に組み込んだプログラムによって行う。
ホット・ランナーの場合も同様にフィーサー(株)が製造、販売しているバネ式もモノは使用できないが、油圧、空圧、アクチュエーターなどを用いて開閉させるモノは前記ニードル式のシャット・オフ・ノズルと同様に動作を実施すれば良い。
【0318】
(拡張コア)
前記サックバックと同じ作用・効果を持つ手段(本発明では拡張コア、ブリージング・コアと言う。)に、金型の一部を後退(拡張、)させ、成形空間内に充填された発泡性樹脂の圧力を下げ、発泡を容易にする手段を用いる場合の排気は、前記サックバックと同様に排気の時期を設定する。サックバックと、拡張コアとは同じ金型で同時に行っても良い。その時に何れの動作で排気するかは、成形品の状態を観察して行う。
拡張コアは金型一部を初めは縮めて於いて、油圧、空圧で前進、後退する機能を持つシリンダー、サーボモーターを組み込んだアクチュエーターなどを用いて動作コアの一部を後退させる。
【0319】
(シャッター付きの金型)
金型の一部にダミー形状を設け、入口にはシャッターを設け、初めはシャッターを閉じて於いて成形空間内に発泡性樹脂を充填して、タイミングを見てシャッターを開けると、発泡性樹脂が未充填の空間へ流れ込んで成形空間内へ充填された発泡性樹脂の圧力が下がるので発泡が容易になる。シャッターを開けるタイミングはサックバックと同様で、動作は成形機に組み込んだプログラムの指令によって行われる。
拡張コアは、シャッターの開閉は金型の内部に、或いは外部に駆動装置を設ける以外に、成形機のエジェクターを動作させる機構を用い、成形品を押し出す機構のエジェクターピンを組み込んだエジェクタープレート以外にその前にもう1枚(1組,1セット)のエジェクタープレートを設けこれに段付きのエジェクターロット棒などを設けて、エジェクターピンの動作(前部にエジェクタープレートの押出と、従来エジェクターピンを組み込んだエジェクタープレートの押出とが行える。)とは別に拡張コアの動作、シャッターの開閉などを行う。当然これ等の指令は(例えばシャッターの開閉など)は成形機のPLC内に組み込んだプログラムによって行う。
【0320】
(モールド・バック、コア・バック)
モールド・バック、コア・バック(合わせてモールド・バックなどと言う。)の場合は、通常はモールド・バックなどは、一般には排気が完了した時点で開始するが、排気途中で行う場合もある。この場合附番56の圧力計に予めモールド・バックなどを開始する圧力を予め設定して於いて、設定した圧力まで下がった時にモールド・バックなどを開始する。サックバックと同様にモールド・バックなど開始も遅延時間を設定しても良い。当然これ等の指令は、成形機のPLCに組み込まれたプログラムによって指令を出して行う。
【0321】
モールド・バックなど目的は発泡倍率を高める事である。本発明のGCPを用いて表面のスワール・マークをなくし表面平滑で綺麗な成形品を得て、それ程大きな発泡倍率(2倍程度)を高める場合はコア・バック(図17図18)より、モールド・バック(図19図20)の方が好ましい。モールド・バック実施のタイミングは、GCPの前ではなく、GCPの排気が開始して、附番56の圧力計が設定した圧力に達した時にモールド・バックを開始する、或いはGCPが排気が完了(附番56の圧力計が大気圧近くの圧力を示した時)にモールド・バックを開始する、或いはGCPを排気して附番56の圧力計が設定した圧力に達した時から、遅延時間を設定し、その設定をした遅延時間に達した時にモールド・バックなどを開始する。当然これ等(モールド・バックなど)の指令は成形機のPLC内に組み込んだプログラムによって行う。モールド・バックなどの実施によってPLのガスベントの巾(時に附番131が広がる。同時にPLは金型が後退された距離分、全周が開きガスベントが大きくなる。)が広くなるので、金型と樹脂との隙間に入り込んでレイン・ドロップの原因となる、少量の圧気の気体が一気に排気されるが、充填をされた発泡性樹脂の内部は冷却固化が完了せず、発泡力を持っているので、再び金型へ転写、レイン・ドロップのない綺麗な外観の発泡成形品が得られる。
【0322】
上記の様にモールド・バックなどを行えばレイン・ドロップをなくす事が出来るが、発明者の鋭意研究の結果、光沢面よりは浅いシボ加工でも行った方が良い事が判明した。GCPと真空引きとの併用 が大きな効果がある。モールド・バックが開始された段階で、金型の空間のL乃至Lをホースで繋ぎ、その先の真空引きをする装置(図63)を用いて一気に減圧をすれば、光沢面のレイン・ドロップをなくし綺麗な外観の発泡成形品が得られる。
使用する金型は図10図11のシール金型を用いるが、真空引きの作用・効果を十分に発揮するのは、真空引きをする空間体積の少ないエジェクターピンをシールした構造が良い。図11ではエジェクターピンをシールするOリングには方向性があるので、真空引きの金型には同じシールを逆方向に用いて真空引きをしても大気が入り込まずになる。モールド・バックさせて、PLが開いても真空引きが可能な様に、33のシールはPLが開いてもシール性を維持される様に、太いものを、或いは図56乃至図62を使用する。
単に真空ポンプを金型に、或いは図15図16のGCP装置に繋いだだけでは、一気には減圧は出来ない。レシーバータンク(附番169)に真空ポンプ(附番177)を繋ぎ、レシーバータンク内を減圧させて於いて、成形機からの信号によって、弁(附番174)を開け一気に真空引きをする方が望ましい。
【0323】
GCPを用い発泡成形品の表面に綺麗なスキン層を形成させる場合に、金型の表面温度が高いと薄くなる。例えば図23の様な装置を用いて金型表面温度を高くする。又金型表面を高周波誘導加熱をして高くする等の手段を講じ、高くすれば良い。但しこの場合は金型表面の温度が高いのでレイン・ドロップの発生は多い。レイン・ドロップをなくし綺麗な発泡成形品を得るにはモールド・バックなどと十分な真空引きとを用いれば、光沢面でもレイン・ドロップない綺麗な外観の成形品が得られる。この様に発泡性樹脂の温度も高く、金型の表面温度も高くしてGCPを行い、その上で真空引きを行えば、薄い肉厚で表面が綺麗な発泡成形品が作れる。
【0324】
(真空引き)
モールド・バックなどを行った後に、図63の真空装置を用いて金型内真空引き(厳密には減圧の意味)する場合、GCPの排気が完了した後に行う。成形機PLCから、モールド・バックなどが完了した後に附番174を開け、金型内に残る圧気の気体の一部を附番169内に引き込む。附番174の開くは、モールド・バックなどの完了と同時に、或いは任意に設定した遅延時間完了後に行う。附番170の圧力計には、必要に応じて圧力値を出力する機能を持たせ、設定値以下まで減圧(真空引き)されなければ、成形機のPLCは型締め開始しない様にしてある。真空引きの効果を十分に発揮させるには、図10のエジェクター・ボックス仕様(与圧の体積が大きい。)の金型より、図11のエジェクターピンをシールした金型(与圧の体積が小さい。)の方が良い。
真空引きをしてから、もう一度型締め(モールド・バックなどさせた距離以下で、或いは同じ距離で、或いはそれ以上の距離を)を行い圧縮成形する場合もある。
【0325】
(O-GCP、I-GCP)
図15図16のGCP装置は発泡性樹脂の外から気体で圧力を掛けて(加圧して)発泡を抑え、表面のスワール・マークをなくす手段を説明した。発明者はこれを「アウターGCP(O-GCP)」と称する。旭化成工業(株)のAGI、三菱ガス化学のシンプレスで例示される中空成形を、本発明の発泡性樹脂に適用すると、成形品中から、成形品内部に形成された中空部から発泡を抑える。例えば、出願番号PCT2016-86380の特許明細書(以下「86380特許」と言う。)内に記載の図1の装置と、図1で圧縮した高圧ガスを図124などの中空成形用のピン(高圧ガスを成形品の中に入れるピン)を本発明の図10図11め金型に設置する。これ等86380特許の明細書に記載されている図1図124などを用いて内部を中空にして、中空形成のガスを排気すれば、内部から発泡を抑えるガス圧力が解放されるので、一度中空となった部分に発泡が開始される。発明者はこれを「インナーGCP(I-GCP)Jと称する。
【0326】
I-GCPは、O-GCPとリンク(同調、同期)しても良いが、リンクをしなくても良い。I-GCPの開始(成形品内部への高圧ガスの注入)は、射出途中、充填完了の直後、充填完了から遅延時間を取って、サックバックの開始、サックバックの途中、サックバックの完了後直ぐに、サックバックの完了後に遅延時間を取ってから行う。I-GCPは中空部を形成して、排気は、高圧ガスの注入後、直ぐに、或いは一定の遅延時間を取って行う。以下には成形機PLC内のプログラムを説明する。予め成形空間内をO-GCPを掛けて於いてから、発泡性樹脂を射出する。射出途中で、或いは射出完了と同時に、或いは射出完了後に一定の遅延時間を取って)86380特許の図1中の附番14の弁を開け、内部に中空部を形成する。必要に応じて86380特許の図1中の附番14の弁を閉じ、内部に注入した高圧ガスを閉じ込め(保持時間)た後に、86380特許の図1中の附番15を開け内部に注入した高圧ガスを排気すると、中空内部に向かって発泡が開始される。このI-GCP用に成形機PLCに組み込まれたプログラムを、非発泡性樹脂で実施した場合には、中空成形のプログラムとして使用出来る。尚O-GCPは上述した様に、成形機のPLCに組み込まれたプログラムによって制御される。
【0327】
I-GCPに用いる86380特許の図124のガス注入ピンは、固定していても良いが、スムースに排気させるには、後部に油圧、空圧などのシリンダーを設け、高圧ガス注入の前は前進させて於いて。排気の際(86380特許の図1の附番15を開き開始、内部の高圧ガスの排気を開始すると同時に、或いは一定時間遅延をした後で、)には後退させて、中空部に中の圧力を抜かなければ、離型時に膨れ、破裂の原因となる。
実施形態9
【0328】
(気体、液体の発泡剤)
実施形態8では主に固体の化学発泡剤を担持したマスター・バッチを用いた場合を説明をしたが、発泡剤として気体、又は液体でも実施出来る。
窒素ガス、炭酸ガスなどの気体、水、アルコール、重曹水などの液体を計量中に成形機加熱筒内に注入、可塑化中の樹脂に発泡性を付与する場合の成形機PLC内のプログラムは、計量開始に信号を、或いは計量開始から遅延時間を取って、或いはスクリュー位置を予め入力して於いて、計量中にスクリューがその位置を通過した時に気体、液体の注入が開始される。気体、液体注入の停止は、計量完了の信号を、或いは計量開始から予め定められた時間に達した時に、或いはスクリュー位置を予め入力して於いて、計量中にスクリューがその位置を通過した時に注入停止の指令を出力する。
実施形態10
【0329】
GCPの用いる気体は一般的にはエアーであるが、変色・焼けが発生する場合は、窒素ガス、炭酸ガスなどを用いる。或いは混合気体としても良い。図15図16には別に口を設け(図示せず。)、別に弁を設け(図示せず。)初めのエアーで金型内を圧気して、Lへ初めの圧気エアーの圧力よりも高い圧力で圧気をすれば、L内を窒素ガス、炭酸ガスなど不活性なガスの置換する事が出来る。初めからこれ等不活性なガスを用いても良い。言うまでもなくこれ等も成形機のプログラムの中に組み込まれている。
実施形態11
【0330】
上述した新保實方式にもO-GCP、I-GCPで説明した適用は可能、液体の発泡剤を射出と同時にノズル後部に設けた注入口から入れた発泡させる指令も成形機のプログラムに組み込まれている。勿論の事この方式にGCPを併用させ、綺麗な外観の成形品が得られる事は実験によって確認された。
【0331】
上述の実施例、実施形態は説明の為に例示したもので、本発明としてそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び図面の記載から当事者が認識する事が出来る本発明の技術的思想に反しない限り、変更、及び付加が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0332】
熱可塑性樹脂の発泡成形品の、特に外観に発生するスワール・マークのない外観が綺麗な、発泡倍率が高い発泡成形品の製造に適用される。
【0333】
本発明で使用する金型の構造図、GCP装置の構造図、実施した結果を示す図(写真)、塗装などの結果を記した図(表)などを示した。
【符号の説明】
【0334】
1.ゲート
2.ゲート近傍に発生したPEに起因するシルバー・ストリーク
3.ゲート遠方のスワール・マークが押さえられ外観が綺麗な事を示す。
4.表面に発生したスワール・マーク
5.上部の栓
6.空間(圧力が掛かっている空間)
7.炭酸水
8.容器
9.仕切り
10.空間
11.扉
12.表面の泡
13.ビール(炭酸ガス含有)
14.コップ
15.表面に泡の発生がない。
16.スプール・ブッシュ
17.固定側の取付け板
18.固定側の入子を収める型板
19.固定側の入子
20.固定側の入子の合わせ面
21.成形空間(金型キャビティ,キャビティ,成形空間,L
22.可動側の入子を収める型板
23.可動側の入子
24.エジェクターピン(略号;EP)
25.エジェクタープレート(上)
26.エジェクタープレート(下)
27.シール機能を持たせたスペーサーブロック
28.可動側の取付け板
29.ロットの穴
30.可動側の入子の合わせ面
31.Oリング
32.Oリング
33.Oリング
34.エジェクター機構
35.Oリング
36.Oリング
37.スペーサーブロック
38.Oリング
39.蟻溝
40.プレート(上)
41.プレート(下)
42.Oリング
43.コンプレッサー{レシーバータンク(図示せず)付き}
44.ホース
45.マニホールド49と注入弁46との繋ぎ部分
46.注入(圧気)弁
47.GCP{金型内に注入した気体(圧気)}の排気の方向を示す矢印
48.カプラ
49.マニホールド
50.マニホールド49と排気弁51との繋ぎ部分
51.排気弁
52.フレキなホース
53.コンプレッサーからのGCP(金型内を圧気する気体)の流れ方向を示す矢印、コンプレッサーからGCP装置への気体の流れを示す矢印
54.金型への圧気の出入り示す矢印
55.サブタンク
56.圧力計
57.サブタンク55との繋ぎの配管
58.逆止弁
59.固定側の金型
60.パーティング(PL)
61.可動側の金型
62.縦見切りのパーティング{金属同士(固定側と可動側の金型)の縦の見切り}
63.コア・バックを示す矢印(61を後退させた事を示す矢印)
64.平見切りのパーティング
65.モールド・バックを示す矢印(61を後退させた事を示す矢印)
66.モールド・バックによって、パーティングが開いた結果生じた隙間
67.コア・バック構造、コア・バックによってパーティングが開いた事を示す。
68.モールド・バック構造(片面彫り)
69.モールド・バック構造(両面彫り)
70.天肉
71.熱媒体
72.磁性体
73.IHヒーターのコイル
74.羽
75.マグネット
76.マグネット
77.流量調整弁
78.流れ方向を示す矢印
79.金型の入子
80.フィルター
81.加熱装置
82.循環装置
83.配管
84.荷重式Oリングのシール部分で、材質はターコン(商品名)、ザーコン(商品名)などが主に用いられる。
85.加重式Oリングに於いて符番84に荷重するモノで、U字形状のステンレスのスプリングが符番84に開口部が上向きではめ込まれている。
86.符番85の荷重を目的にはめ込まれたU字形状のステンレスのスプリングの開口部を下向きにはめ込んである。材質はステンレスに限らずバネ鋼でも良く、形状も図29のコイルスプリングでも良い。荷重目的に用いるのは、金属製のモノだけでなく、図30の例示した市販のOリングでも良い。87.U(V)字形状のOリング(パッキン)のリップ(シール)部で、図24乃至図26で例示した、符番84と同じ機能を持たせた。
88.内部のU(V)字形状(凹部)を示した。符番88の中に、図29図30をはめ込むと荷重式Oリングになる。
89.金型に設けたガス加圧ピン
90.ガス加圧の為のガス回路
91.エジェクターピンを2重構造としたガス加圧ピン
92.ガス加圧の為のガス回路
93.可動側の取り付け板に設置したガス加圧ピン
94.エジェクターピンを2重構造としたガス加圧ピン
95.ガス加圧ピンの外筒、破線はエジェクタースリーブピンに中に開けられた穴
96.エジェクターピン
97.ガスが流れ易くする為に加工したDカット
98.ガスをシールする為のゴムシート(パッキン)
99.加圧ガス
100.ガスの噴出場所(ガスピンの先端部)
101.ガスが漏れない為に設けたリブ
102.成形品の断面
103.ガス加圧ピン
104.ガス加圧面で粗いシボ加工を施すと、楔効果でガスは樹脂と金型との隙間に入り易い。
105.可動側の金型
106.固定側の金型
107.可動側取付け板28に設けたガス加圧ピン103を固定して、94ガス回路を設けた。
108.圧気に使用する気体の入口
109.片側
110.GCPによって内部に閉じ込められた発泡層
111.GCPによって形成された外側が綺麗なスキン層
112.L字シールの本体
113.Oリンブ
114.L字シールを収めるハウジング
115.荷重目的に嵌め込んだOリング
116.押さえブロックの(上)
117.押さえブロックの(下)
118.Oリング
119.Oリング
120.カプラ
121.配管
122.LへGCPを行う装置
123.LへGCPを行う装置
124.LへGCPを行う装置
125.金型内のガス回路
126.金型内のガス回路
127.金型内のガス回路
128.カプラ
129.溝
130.ガスベント
131.ガスベント
132.穴
133.穴
134.溝
135.例えばコンプレッサーによって圧縮された気体をGCP装置に入れるのを示す矢印
136.圧気の流れを示す矢印
137.金型内への圧気の流れを示す矢印
138.配管、回路、ホースなど
139.金型内の圧気の気体が大気中に排気される流れを示す矢印
140.符番142タンク内に吸引される金型内の圧気の気体が吸引される流れを示す矢印
141.弁
142.真空(減圧)タンク
143.符番144の真空ポンプによって吸引される気体の流れを示す矢印
144.真空ポンプ
145.タンク内の真空(減圧)度を示す圧力計
146.逆止弁
147.逆止弁
148.逆止弁
149.圧気の入りと排気が可能なポーラスな焼結金属
150.多層にして入子を圧気の入りと排気が可能なポーラスな焼結金属
151.符番150を固定する入子
152.成形空間を画定する入子など(図示せず。)を入れ込むの固定側、又は可動側の型板
153.圧気の入りと出を目的に設けた入子154の隙間を示している。
154.符番153を形成する入子
155.可動側の金型と、固定側の金型とに樹脂が充填される成形空間
156.附番156は附番61を後退させた時の拡張しない部分を示している。
157.可動側の形状成形品の中に入り込んでいるのを示している事を示した模式図
158.Vリングの断面
159.Vリングの開口部
160.Uリングの開口部
161.Uリングの開口部
162.断面が円形のOリングの顔面
163.真空引きで十分シールをする様に、Vシールで成形空間とは反対方向の開口部164が向いている事を示す。
164.外側(成形空間とは反対方向)に向けられたVリングの開口部
165.外側(成形空間とは反対方向)に向けられたUリングの開口部
166.真空引きで十分シールをする様に、Uシールで成形空間とは反対方向の開口部164が向いている事を示す。
167.逆止弁
168.逆止弁
169.真空(減圧)されたタンク
170.附番169内の圧力を確認する圧力信号を出力が可能な圧力計
171.ホース
172.真空引きの対応をさせたワンタッチカプラ
173.弁(附番170の信号によってON、OFFする。真空対応)
174.弁(モールド・バック、コア・バックさせた後、型内の圧気をタンク169へ導く真空対応の弁)
175.真空引きされた圧気の流れを示す矢印(→)
176.マニホールド
177.真空ポンプ
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