(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】回路基板のコネクタ
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241216BHJP
H01R 12/77 20110101ALI20241216BHJP
H05K 1/11 20060101ALN20241216BHJP
【FI】
H05K1/02 D
H05K1/02 B
H01R12/77
H05K1/11 C
(21)【出願番号】P 2021051122
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 高士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】小島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】山中 裕二
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-129887(JP,A)
【文献】特開2000-340914(JP,A)
【文献】特開2018-190518(JP,A)
【文献】実開平07-029871(JP,U)
【文献】実開昭62-074769(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 3/46
H01R 9/00 - 9/28
H01R 12/00 - 12/91
H01R 24/00 - 24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に回路パターンを形成した可撓性を有する基材の端部近傍に前記回路パターンに接続するコネクタ接続パターンを形成することで構成される回路基板のコネクタにおいて、
前記基材の前記コネクタ接続パターンを設けた反対側の面に補強板を接着し、且つ当該補強板は、前記コネクタ接続パターン及び当該コネクタ接続パターンに接続する回路パターンの一部をその裏面側から覆う大きさで形成され、
前記基材のコネクタ接続パターン近傍の回路パターンの裏面側に接着防止層を設けることで、前記補強板の一方の面に形成した接着層を前記基材に接着した際に、当該接着層の一部が前記基材の接着防止層上に位置して補強板の基材への接着が阻止された部分を補強板の摘み部としたことを特徴とする回路基板のコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板のコネクタであって、
前記接着防止層は、透光性を有する材料で形成されていることを特徴とする回路基板のコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路基板のコネクタであって、
前記接着層は、前記補強板の一方の面の全面に形成されていることを特徴とする回路基板のコネクタ。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の回路基板のコネクタであって、
前記接着防止層は、印刷によって形成されていることを特徴とする回路基板のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メス側コネクタに挿入されて電気的・機械的に接続される回路基板のコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1の
図1,
図2に示すように、表面に回路パターン(30)を形成したフィルム板からなる基材(20)の端部近傍に前記回路パターン(30)に接続するコネクタ接続パターン(31)を形成することで構成される回路基板(10)のコネクタ(オス側コネクタ)(35)がある。
【0003】
そしてこのコネクタ(35)においては、メス側コネクタに挿入・接続する際の強度(剛性)を確保するために、基材(20)の前記コネクタ接続パターン(31)を形成した部分の裏面に補強板(80)を接着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記回路基板(10)のコネクタ(35)を、メス側コネクタに挿入・接続する作業は手作業によって行われるが、前記回路基板(10)のコネクタ(35)の部分の大きさが小さくなると、当該コネクタを指などで摘まんでメス側コネクタに挿入する作業が困難になり、その接続作業性が悪化するという課題があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、コネクタ間の接続作業性を向上することができる回路基板のコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面に回路パターンを形成した可撓性を有する基材の端部近傍に前記回路パターンに接続するコネクタ接続パターンを形成することで構成される回路基板のコネクタにおいて、前記基材の前記コネクタ接続パターンを設けた反対側の面に補強板を接着し、且つ当該補強板は、前記コネクタ接続パターン及び当該コネクタ接続パターンに接続する回路パターンの一部をその裏面側から覆う大きさで形成され、前記基材のコネクタ接続パターン近傍の回路パターンの裏面側に接着防止層を設けることで、前記補強板の一方の面に形成した接着層を前記基材に接着した際に、当該接着層の一部が前記基材の接着防止層上に位置して補強板の基材への接着が阻止された部分を補強板の摘み部としたことを特徴としている。
本発明によれば、補強板の摘み部を指などで摘まむことができるので、例えコネクタが小型化しても、当該コネクタを他のコネクタへ容易且つ確実に接続することができる。
また、補強板は小さいので、当該補強板の摘み部となる部分に接着層を設けない面を精度良く形成することは困難であるのに対し、回路基板は補強板に比べて大きいので、当該回路基板側に接着防止層を精度よく印刷などによって形成することは容易に行える。このため精度よく且つ容易に補強板に摘み部を設けることが可能になる。
【0008】
また本発明は、上記特徴に加え、前記接着防止層は、透光性を有する材料で形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、接着防止層の下面側から基材の裏面を目視することができ、当該基材の異常などを確認することができる。特に、基材を透光性を有する材料で構成しておけば、当該基材の表面側に形成した回路パターンを接着防止層側から目視することが可能になるので、回路パターンの断線なども容易に確認することができる。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記接着層は、前記補強板の一方の面の全面に形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、たとえ補強板の寸法が小さくても、接着層を設けない部分を精度良く形成するなどの必要が無いので、当該補強板への接着層の形成を容易に行うことができる。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記接着防止層は、印刷によって形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、回路基板に接着防止層を容易に精度よく形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、補強板の摘み部を指などで摘まむことができるので、当該コネクタを他のコネクタへ接続する際の接続作業性を向上することができる。また補強板に精度よく且つ容易に摘み部を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】回路基板10のコネクタA近傍部分を上側から見た分解斜視図である。
【
図2】回路基板10のコネクタA近傍部分を上側から見た斜視図である。
【
図3】回路基板10のコネクタA近傍部分を下側から見た分解斜視図である。
【
図4】回路基板10のコネクタA近傍部分を下側から見た斜視図である。
【
図5】回路基板10のコネクタA近傍部分の概略側断面図である。
【
図6】コネクタAをコネクタ60に挿入する挿入方法説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施形態に係る回路基板10のコネクタ(オス側コネクタ)A近傍部分を上側から見た分解斜視図、
図2は当該コネクタA近傍部分を上側から見た斜視図、
図3は当該コネクタA近傍部分を下側から見た分解斜視図、
図4は当該コネクタA近傍部分を下側から見た斜視図である。
【0014】
これらの図に示すように、回路基板10のコネクタA近傍部分は、可撓性を有する基材(以下「フィルム板」という)11の表面(上面)に回路パターン13を形成し、その上面を絶縁層30によって被覆し、またフィルム板11の裏面(下面)の所定位置に接着防止層17を形成し、さらに当該回路基板10の先端のコネクタAとなる部分の下面に補強板50を接着して構成されている。なお以下の説明において、「上」または「表面」とはフィルム板11の回路パターン13を形成した面側をいい、「下」または「裏面」とはその反対面側をいうものとする。また回路基板10のコネクタAを設けた側を「先端側」、その反対側を「根元側」というものとする。
【0015】
フィルム板11は、可撓性を有する絶縁性の合成樹脂フィルム(この例では透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)によって形成されている。
図1~
図4に示すフィルム板11は、コネクタAを構成するために引き出された部分を示しており、この例では帯状に形成されている。
【0016】
フィルム板11上には、回路パターン13が複数本(3本)平行に形成され、その先端近傍部分(絶縁層30によって覆われないコネクタAとなる部分)をコネクタ接続パターン15としている。言い換えれば回路パターン13にコネクタ接続パターン15を接続するように形成されている。回路パターン13(コネクタ接続パターン15を含む)は導電ペースト(例えば銀ペースト〔溶剤に溶かしたウレタン系、フェノール系などの樹脂材に銀粉を混錬したもの〕やカーボンペースト〔溶剤に溶かしたウレタン系、フェノール系などの樹脂材にカーボン粉を混錬したもの〕など)をスクリーン印刷などによってフィルム板11上に1層または複数層重ねて印刷形成して構成されている。フィルム板11や回路パターン13の材質に種々の変更が可能であることは言うまでもなく、また回路パターン13はスクリーン印刷以外の各種印刷方法や、金属箔のエッチングのような印刷以外の各種パターン形成方法を用いて形成しても良い。
【0017】
絶縁層30は、フィルム板11の先端部分(前記コネクタ接続パターン15となる部分)を除く表面に、絶縁性の樹脂ペーストを印刷などすることによって形成される。なお絶縁層30は、樹脂フィルムを貼り付けることによって形成しても良い。
【0018】
接着防止層17は、前記フィルム板11のコネクタ接続パターン15近傍の回路パターン13の裏面側に形成される。接着防止層17の材質としては、下記する補強板50に塗布した接着層53の接着を阻害する材質であればどのような材質でも良く、この例では透光性を有するインキを印刷することで形成されている。接着防止層17の形成範囲は、回路基板10の裏面の、前記コネクタ接続パターン15に対して接続している前記回路パターン13に対向する裏面位置、即ち絶縁層30の先端側の端部近傍位置の裏面位置(さらに言えば下記するメス側のコネクタ60のパターン当接用金属端子が当接するよりも奥側の位置)から、所定寸法コネクタAから奥側に離れる位置までであり、且つフィルム板11の全幅にわたって形成されている。この例では、接着防止層17として透光性を有するインキを使用したが、補強板50の接着層53への接着を阻止できる材質であれば、どのような材質の塗料、さらにはフィルムを用いても良い。
【0019】
補強板50は、可撓性を有する絶縁性の合成樹脂フィルム(この例では透明なPETフィルム)からなるフィルム板51の一方の面全体に透明な接着層53を形成して構成されている。補強板50は矩形状であり、その幅寸法は前記回路基板10の幅寸法と同一に形成されている。また補強板50の先端・根元方向の長さ寸法は、前記コネクタ接続パターン15の同方向への長さ寸法よりも所定長さ(下記する摘み部55の長さ分)長く形成している。即ち、補強板50は、前記コネクタ接続パターン15及び当該コネクタ接続パターン15に接続する回路パターン13の一部をその裏面側から覆う大きさに形成されている。
【0020】
そして補強板50は、前記フィルム板11のコネクタ接続パターン15を設けた反対側の面に接着されるが、このとき補強板50の根元側部分の接着層53は前記フィルム板11の接着防止層17上に位置して補強板50のフィルム板11への接着は阻止される。そしてこの補強板50の接着が阻止された部分を摘み部55とする。なおこの例では、接着層53として、紫外線硬化性(光硬化性)の透光性を有する接着材を用い、当該接着層53を塗布した補強板50をフィルム板11の裏面に接着した後、紫外線を通す透明なフィルム板51の下面側から紫外線を照射して当該接着層53を硬化させるが、紫外線硬化性樹脂は紫外線の照射によって迅速且つ確実に硬化し、粘性を失うので、摘み部55に付着している接着層53も容易且つ確実に硬化できて粘性が無くなる。このように接着層53の粘性が迅速且つ確実に無くなるので、製造作業性が向上し、またこの摘み部55を指などで摘まんだ時にべたつくことはない。またゴミなどが付着することもない。なお接着層53の材質として、紫外線硬化性樹脂の他に、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用いても良いし、これら複数の樹脂を2種類以上混合して用いても良い。
【0021】
図5は、以上のようにして構成された回路基板10のコネクタA近傍部分の概略側断面図である。同図に示すように、回路基板10のコネクタAは、表面に回路パターン13を形成した可撓性を有するフィルム板11の端部近傍に前記回路パターン13に接続するコネクタ接続パターン15を形成することで構成される回路基板10のコネクタAであり、前記フィルム板11の前記コネクタ接続パターン15を設けた反対側の面に補強板50を接着し、且つ当該補強板50は、前記コネクタ接続パターン15及び当該コネクタ接続パターン15に接続する回路パターン13の一部をその裏面側から覆う大きさで形成され、前記フィルム板11のコネクタ接続パターン15近傍の回路パターン13の裏面側に接着防止層17を設けることで、前記補強板50の一方の面に形成した接着層53を前記フィルム板11に接着した際に、当該接着層53の一部が前記フィルム板11の接着防止層17上に位置して補強板50のフィルム板11への接着が阻止された部分を補強板50の摘み部55として構成している。
【0022】
そして
図6に示すように、このオス側のコネクタAをメス側のコネクタ60の接続用挿入穴61に挿入して接続する際、上記コネクタAによれば、補強板50の摘み部55を指X1,X2などで摘まむことができる。このため、例えコネクタAが小型化しても、当該コネクタAを他のコネクタ60へ容易且つ確実に挿入して接続させることができ、その接続作業性が向上する。
【0023】
また、上記コネクタAのように、接着防止層17を用いて摘み部55を形成する構成とすれば、例えコネクタAの寸法が小さくても、精度よく且つ容易に補強板50に摘み部55を形成することができる。即ち、小さい補強板50の面の一部に接着層53を形成しない面を精度よく設けることで摘み部55を形成することは困難であるのに対し、フィルム板11(回路基板10)は補強板50に比べて大きいので、当該フィルム板11(回路基板10)側に接着防止層17を精度よく印刷などによって形成することは容易に行える。このため上述のように、精度よく且つ容易に補強板50に摘み部55を設けることができる。
【0024】
また上記コネクタAによれば、透光性を有する接着防止層17を用いているので、接着防止層17の面側(下面側)からフィルム板11の裏面を目視することができる。これによって回路基板10の異常、例えば透明なフィルム板11の表面側に形成した回路パターン13の断線などを、接着防止層17を介在して容易に確認することができる。
【0025】
また上記コネクタAによれば、補強板50の一方の面全体に接着層53を形成すればよいので、たとえ補強板50の寸法が小さくても、当該補強板50への接着層53の形成を容易に行うことができる。
【0026】
また上記接着防止層17を印刷によって形成したので、回路基板10(フィルム板11)への接着防止層17の形成を、容易且つ精度よく行うことができる。
【0027】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、フィルム板11や回路パターン13やコネクタAやコネクタ接続パターン15や補強板50などの形状や構造に各種変更が可能であることは言うまでもない。また場合によっては、接着防止層17は不透光性の材料で構成しても良い。また場合によっては、必ずしも補強板50の一方の面の全面に接着層53を形成しなくても良い。また場合によっては、補強板50は硬質板で構成しても良い。また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0028】
10 回路基板
11 フィルム板(基材)
13 回路パターン
15 コネクタ接続パターン
17 接着防止層
A コネクタ
50 補強板
51 フィルム板
53 接着層
55 摘み部