(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】魚体の鱗取り装置
(51)【国際特許分類】
A22C 25/02 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
A22C25/02
(21)【出願番号】P 2021078205
(22)【出願日】2021-05-01
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000222794
【氏名又は名称】東洋水産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】塚越 智頼
(72)【発明者】
【氏名】打田 崇
(72)【発明者】
【氏名】澤口 孝
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-049387(JP,A)
【文献】実開昭58-044083(JP,U)
【文献】特開2011-083250(JP,A)
【文献】特開2010-099092(JP,A)
【文献】特開2011-217621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向面を魚体挟持搬送面に形成している第1無端ベルト及び第2無端ベルトを含むコンベア手段と、
上記コンベア手段における魚体の搬送経路内において、
頭部と尾びれを通る方向を搬送方向に向けて上記搬送経路上を搬送される魚体の表面に
圧力水を噴射して魚体の鱗を除去する圧力水噴射手段とを備えた魚体の鱗取り装置において、
上記圧力水噴射手段は、魚体の幅方向に並列している鱗が、
上記魚体の搬送方向における鱗の長さに相当する距離だけ搬送される間に、この鱗列に対して数回、魚体の幅方向に
移動して魚体の鱗
に数回、圧力水を吹き付けて鱗を除去する圧力水噴射ノズルを備えて
おり、
上記圧力水噴射手段は、
外周面の一部を上記魚体の搬送経路側に向けた円筒形状の固定ノズル外筐と、
上記固定ノズル外筐の外周面の一部に魚体に向けて開口している長孔と、
上記固定ノズル外筐内に回転自在に配設され且つ圧力水供給管に接続されている圧力水受け入れ筒体と、
上記圧力水受け入れ筒体に連通、支持され、先端を上記長孔に臨ませて、先端から噴射する圧力水の噴射反力で、上記圧力水受け入れ筒体と共に上記固定ノズル外筐内で回転する圧力水噴射ノズルとを含むことを特徴とする魚体の鱗取り装置。
【請求項2】
上記第1無端ベルトは、第1上流側無端ベルト及び第1下流側無端ベルトを含み、上記魚体の搬送経路において、上記第1上流側無端ベルトと上記第1下流側無端ベルトとの間に圧力水噴射用隙間が設けられており、
上記圧力水噴射手段は、上記圧力水噴射用隙間に向かって上記圧力水噴射用隙間を通過する上記魚体の表面に
圧力水を噴射するように構成していることを特徴とする請求項1に記載の魚体の鱗取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア手段によって搬送中の魚体に圧力水を吹き付けて魚体の鱗を除去する魚体の鱗取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚体の鱗を水噴射によって除去する装置としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0003】
上記特許文献1に記載された魚体の鱗取り機は、魚体の搬送経路の上流側と下流側とにそれぞれ、魚体を挟持して搬送する上下搬送ベルトからなるコンベアを配設すると共に、一方又は双方のコンベアの上流側コンベア部分と下流側コンベア部分との間に搬送中の魚体が露呈する隙間を設けてなるコンベア手段を構成し、このコンベア手段の上記隙間で魚体の表面に水を噴射して魚体の鱗を除去する複数の水噴射ノズルからなる水噴射手段を備えている。
【0004】
この水噴射手段は、上記隙間に跨がって配設され、隙間の両側のコンベア部分の回転軸に跨がって摺動自在に支持された摺動部材に取り付けられてあり、水噴射ノズルの先端と魚体の表面との距離を略一定に保持しながら、水噴射ノズルから噴射する低水圧で鱗を除去するように構成している。
【0005】
この際、水噴射ノズルは、2列のノズル列から構成されていて、最初の列の水噴射ノズルからの噴射水で魚体の鱗を起立させ、次の列の水噴射ノズルからの噴射水で鱗を剥ぎ取るように構成している。
【0006】
一方、上記特許文献2に記載された水圧式鱗取り装置は、魚体を挟持しながら上流側から下流側に向かって水平に巡回移動する上下搬送装置と、この上下搬送装置における上側搬送装置の上方の左右両側と、下側搬送装置の下方の左右両側とに固定配置された噴射ノズルとを備えている。
【0007】
上記上下搬送装置は、上流側と下流側とにそれぞれ回転自在に配設されたスプロケット軸の左右両端にスプロケットが取り付けられており、対向する右端のスプロケット間と左端のスプロケット間にそれぞれ、無端チェーンを掛け渡すと共に、これらの左右無端チェーンの各リンク間に横ワイヤを取り付けてなり、更に、下側搬送装置においては、スプロケット軸間に上記横ワイヤに直交する無端ロープを左右方向に所定間隔毎に無端状に掛け渡してこれらの無端ロープと上記横ワイヤとによって平面視で多数格子網状の空間部を形成している。
【0008】
そして、上記上側搬送装置に張設している複数の横ワイヤと、上記下側搬送装置に設けた横ワイヤと無端ロープとによる格子網とによって魚体を挟持しながら搬送する魚体搬送面を形成している。
【0009】
この魚体搬送面を挟んだ上下位置のそれぞれの左右両側に電動モータが固定配置され、各電動モータの出力軸に旋回アームの一端部が取り付けられており、この旋回アームの他端部(遊端)に上記噴射ノズルが魚体搬送面に対して左右方向外側から中央側に向けて所定の傾斜角でもって傾斜していると共に、魚体搬送面に対して搬送方向進み側に向く方向にも所定の角度でもって傾斜してあり、旋回アームを旋回させながら、噴射ノズルから魚体に向けて圧力水を噴射することにより、鱗を剥がすように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-83250号公報
【文献】特開2012-165721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載の魚体の鱗取り装置によれば、魚体の鱗を除去する際に、水噴射ノズルの先端と魚体の表面との距離の変動が小さいので、低水圧の噴射水でもって鱗の除去を可能にすることができるが、水噴射装置は、コンベア手段によって搬送される魚体の幅方向(背腹方向)に複数の噴射ノズルを設けているものであるから、これらの複数の噴射ノズルに圧力水を供給するためには比較的設備の大きいポンプを必要とするばかりでなく、低水圧の噴射水では魚体の鱗を完全に剥ぎ取ることが困難であるため、魚体の搬送方向に間隔をあけて2列の噴射ノズルを設け、最初の列の噴射ノズルからの噴射水で魚体の表面の鱗を起立させ、この起立した鱗を次列の噴射ノズルからの噴射水で剥ぎ取るように構成する必要があり、水噴射手段の構造が複雑化するばかりでなく、低圧水の噴射では鱗除去処理能力が低下するという問題点がある。
【0012】
更に、水噴射手段の全ての水噴射ノズルは、コンベア手段の上記隙間に対して水の噴射方向を変動させることなく常に一定の部位に向かって水噴射するように構成しているのに対して、コンベア手段によって搬送される魚体は、その大きさや種類などにより鱗の配列状態が異なっているため、上記水噴射ノズルからの噴射水は、魚体の鱗に対して最も効率的に剥ぎ取る部分に集中的に噴射することができず、剥ぎ取り難い部分に噴射できない事態が発生して鱗の剥離が困難となり、魚体の表面に除去されない鱗が残存する虞れがある。
【0013】
一方、上記特許文献2に記載の水圧式鱗取り装置によれば、上下搬送装置によって挟持、搬送される魚体の表面に噴射ノズルから高圧の圧力水を吹き付けるものであるから、魚体の鱗を高圧水の噴射圧によって素早く剥ぎ取ることができるが、噴射ノズルからの高圧水は、無担状の巡回移動する上下搬送装置を通してこれらの搬送装置の魚体搬送面によって挟持された魚体の表面に噴射するものであるから、上下搬送装置を構成する横ワイヤや無端ロープに圧力水の一部が当たって分散し、圧力水を魚体の表面に効率的に噴射させることができない事態が発生するばかりでなく、魚体の鱗の一部は上記上下搬送装置を構成している横ワイヤによって挟持されているので、魚体の鱗の剥離除去が困難になるという問題点を有する。
【0014】
又、魚体の表面に圧力水を噴射する噴射ノズルは、電動モータの出力軸に一端を固定した旋回アームの他端に、魚体搬送面に対して左右方向外側から中央側に向けて所定の傾斜角でもって傾斜していると共に、魚体搬送面に対して搬送方向進み側に向く方向にも所定の角度でもって傾斜しているので、魚体の表面に向けている噴射ノズルは、鱗の周りを旋回するように移動して鱗に作用する噴射圧は変動し、均一な高圧水でもって全ての鱗を効率良く剥離させることができないといった問題点を有する。
【0015】
この問題点は、たとえ特許文献2に記載の噴射ノズルを上記特許文献1に記載の上流側コンベア部分と下流側コンベア部分との間に設けている隙間の上方に配置しても生じることになる。
【0016】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、魚体の表面の全ての鱗に高圧水を均一に且つ数回に亘って吹き付けて全ての鱗を効率良く且つ確実に除去することができる魚体の鱗取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の魚体の鱗取り装置は、
対向面を魚体挟持搬送面に形成している第1無端ベルト及び第2無端ベルトを含むコンベア手段と、
上記コンベア手段における魚体の搬送経路内において、上記搬送経路上を搬送される魚体の表面に高圧の圧力水を噴射して魚体の鱗を除去する圧力水噴射手段とを備えた魚体の鱗取り装置において、
上記圧力水噴射手段は、魚体の幅方向に並列している鱗が、鱗の長さに相当する距離だけ搬送される間に、この鱗列に対して数回、魚体の幅方向に高速移動して魚体の鱗を除去する圧力水噴射ノズルを備えていることを特徴とする。
【0018】
上記魚体の鱗取り装置において、
上記第1無端ベルトは、第1上流側無端ベルト及び第1下流側無端ベルトを含み、上記魚体の搬送経路において、上記第1上流側無端ベルトと上記第1下流側無端ベルトとの間に圧力水噴射用隙間が設けられており、
上記圧力水噴射手段は、上記圧力水噴射用隙間に向かって上記圧力水噴射用隙間を通過する上記魚体の表面に高圧の圧力水を噴射するように構成していることを特徴とする。
【0019】
上記魚体の鱗取り装置において、
上記圧力水噴射手段は、
外周面の一部を圧力水噴射用隙間側に向けた円筒形状の固定ノズル外筐と、
上記固定ノズル外筐の外周面の一部に魚体に向けて開口している長孔と、
上記固定ノズル外筐内に回転自在に配設され且つ圧力水供給管に接続されている圧力水受け入れ筒体と、
上記圧力水受け入れ筒体に連通、支持され、先端を上記長孔に臨ませて、先端から噴射する圧力水の噴射圧力で、上記圧力水受け入れ筒体と共に上記固定ノズル外筐内で高速回転する圧力水噴射ノズルとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の魚体の鱗取り装置の圧力水噴射手段は、魚体の搬送経路内において、搬送経路上を搬送される魚体の表面に向かって高圧の圧力水を噴射し、魚体表面の鱗を除去する圧力水噴射ノズルを有しており、圧力水噴射ノズルは、魚体の幅方向(背腹方向)に並列している鱗が鱗の長さ(頭尾方向)に相当する距離だけ搬送される間に、この鱗列に対して数回、魚体の幅方向に高速移動するように構成されているので、全ての鱗に高圧の圧力水を数回、均等に吹き付けることができ、この高圧の圧力水によって鱗を素早く起立させると同時に、根元から瞬時に剥がすことができ、魚体の表面の鱗を効率良く確実に除去することができる。
【0021】
上記魚体の鱗取り装置において、コンベア手段の魚体の搬送経路に向かって開口している長孔を設けた固定ノズル外筐内に圧力水受け入れ筒体を回転自在に配設し、この圧力水受け入れ筒体に外部配管の圧力水供給管から圧力水を供給することにより、圧力水供給管に接続している圧力水噴射ノズルからの高圧水噴射反力で、この圧力水噴射ノズルを圧力水受け入れ筒体と共に固定ノズル外筐内で高速回転させながら、圧力水噴射ノズルが、固定ノズル外筐の外周面の一部に開口している長孔に臨んだ時に、この長孔を通じて魚体の表面に圧力水を噴射するように構成している場合には、別に圧力水噴射ノズルの回転駆動装置などは必要とすることなく、圧力水噴射ノズルからの噴射圧で固定ノズル筐体内で周方向に高速回転させることができ、コンベア手段の魚体の搬送経路に向かって開口している長孔から噴射される高圧水以外の高圧水は、外部に飛散されることなく、固定ノズル外筐の内周面に衝突させてこの固定ノズル外筐から上記長孔或いは適宜な排水孔を通じて外部に排出することができる。
【0022】
更に、圧力水噴射ノズルから噴射される高圧の圧力水の圧力を大小変化させることによって、圧力水噴射ノズルの回転数を変動させることができ、魚体の種類に応じて魚体表面の鱗の除去が効率良く且つ確実に除去できるように調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】魚体の鱗取り装置の使用状態を示した簡略側面図。
【
図7】圧力水による魚体の鱗の除去状態を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の魚体の鱗取り装置の一例について図面を参照しながら説明する。魚体の鱗取り装置は、
図1~4に示すように、魚体Aを挟持しながら上流側から下流側に向かって搬送するコンベア手段1と、コンベア手段1によって搬送される魚体Aの表面に高圧の圧力水Wを噴射して魚体Aの表面の鱗を除去する圧力水噴射手段7、7とを備えている。
【0025】
コンベア手段1は、第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3を含む。第1無端ベルト2は、第1上流側無端ベルト2a及び第1下流側無端ベルト3aを含むと共に、第2無端ベルト3は、第2上流側無端ベルト2b及び第2下流側無端ベルト3bを含み、これらの第1上流側無端ベルト2a、第1下流側無端ベルト3a、第2上流側無端ベルト2b及び第2下流側無端ベルト3bの対向面は、魚体Aを挟持して搬送する魚体挟持搬送面4、4に形成されている。
【0026】
コンベア手段1を構成する第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3、例えば、上流側に設けられた第1上流側無端ベルト2aは、駆動プーリ4aと従動プーリ2a2に無端状に掛け渡されていると共にテンションプーリ2a3と挟圧プーリ2a4とを配している。
【0027】
同様に、その他の無端ベルト2b、3a、3bも駆動プーリと従動プーリ間に無端状に掛け渡されており、テンションプーリと挟圧プーリとを配している。なお、このような構成は公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0028】
更に、第1上流側無端ベルト2aと第1下流側無端ベルト3aとの間、詳しくは、これらの第1上流側無端ベルト2aと第1下流側無端ベルト3aとをそれぞれ掛け渡している対向するプーリ間に所定間隔を有する圧力水噴射用隙間5が設けられている。
【0029】
同様に、第2上流側無端ベルト2bと第2下流側無端ベルト3bとの間、詳しくは、これらの第2上流側無端ベルト2bと第2下流側無端ベルト3bとをそれぞれ掛け渡している対向するプーリ間に所定間隔を有する圧力水噴射用隙間6が設けられている。
【0030】
コンベア手段1において、搬送始端側からの第1上流側無端ベルト2aの長さを第2上流側無端ベルト2bの長さよりも長く形成している一方、搬送終端側からの第1下流側無端ベルト3aの長さを第2下流側無端ベルト3bの長さよりも短く形成している。
【0031】
従って、第1上流側無端ベルト2aと第1下流側無端ベルト3a間に設けられた圧力水噴射用隙間5と、第2上流側無端ベルト2bと第2下流側無端ベルト3b間に設けられた圧力水噴射用隙間6とは、魚体Aの搬送方向に一定の間隔を存して設けられており、上流側に設けられた圧力水噴射用隙間6には、第1上流側無端ベルト2aの下向きの魚体挟持搬送面の一部がこの圧力水噴射用隙間6を通じて下方に露出している。
【0032】
一方、下流側に設けられた圧力水噴射用隙間5には、第2下流側無端ベルト3bの上向きの魚体挟持搬送面の一部が圧力水噴射用隙間5を通じて上方に露出している。なお、上記圧力水噴射用隙間5、6は、何れか一方の圧力水噴射用隙間を上流側とし、他方の圧力水噴射用隙間を下流側に設けたコンベア手段1であってもよい。
【0033】
そして、
図1~4に示したように、上記圧力水噴射用隙間5には、コンベア手段1によって搬送された魚体Aの鱗を除去するための左右一対の圧力水噴射手段7、7が配設されていると共に、上記圧力水噴射用隙間6にも、コンベア手段1によって搬送された魚体Aの鱗を除去するための左右一対の圧力水噴射手段7、7が配設されている。
【0034】
図4~6に示したように、圧力水噴射手段7は、一端が閉塞され且つ他端が開口部とされた有底円筒形状のノズル外筐71と、このノズル外筐71内に一端部が挿入された状態に配設された圧力水供給管72と、この圧力水供給管72の一端部に回転自在に被嵌された状態に配設された圧力水受け入れ筒体73と、上記圧力水受け入れ筒体73に連通した状態に固定された圧力水噴射ノズル74とを有する。
【0035】
圧力水噴射手段7のノズル外筐71は、その外周面の一部を上記圧力水噴射用隙間5、6に向けて配設され、圧力水噴射用隙間5、6に向けた外周面には、その内外周面間に亘って貫通し且つ周方向[魚体Aの幅方向(背腹方向)]に長い長孔711が形成されている。
【0036】
ノズル外筐71内には、圧力水Wを供給する圧力水供給管72の一端部がノズル外筐71内に挿入、固定されている。圧力水供給管72は、その一端部の軸芯がノズル外筐71の軸芯に合致した状態に配設されている。
【0037】
圧力水供給管72内には、一端が閉塞された圧力水流路721が形成され、この圧力水流路721の一端部には、径方向に放射状に延び且つ圧力水供給管72の外周面に開口する複数個の通水孔722が形成され、後述する圧力水受け入れ筒体73の水路孔733に連通するように構成されている。
【0038】
圧力水受け入れ筒体73は、その両端面間に貫通する軸孔731が形成され、この軸孔731をノズル外筐71内に配設された圧力水供給管72の一端部に回転自在に被嵌させている。圧力水受け入れ筒体73の軸孔731は、その軸芯方向の中間部分において全周に亘って圧力水供給管72の一端部の外径よりも大径に形成され、圧力水供給管72の複数の通水孔722から噴出した圧力水を受ける大径口部732を有している。この大径口部732の外周部と圧力水受け入れ筒体73の外周面との間を貫通する水路孔733が形成されており、この水路孔733の外側先端に圧力水Wを噴射する圧力水噴射ノズル74が取り付けられている。
【0039】
圧力水受け入れ筒体73の水路孔733は、圧力水受け入れ筒体73の軸芯から僅かに偏心しており、この僅かに偏心した水路孔733を通じて圧力水噴射ノズル74から噴射する圧力水の噴射反力によって、圧力水噴射ノズル74は、圧力水受け入れ筒体73と共に固定ノズル外筐71内において高速回転するように構成されている。
【0040】
圧力水噴出手段7の圧力水噴射ノズル74は、固定ノズル外筐71内にて高速回転しながら、長孔711に臨んだ時に長孔711を通じて長孔711の長さ方向に高速移動しつつ、魚体Aの表面に圧力水Wを噴射するように構成されている。
【0041】
圧力水噴射手段7は、上記圧力水噴射用隙間5、6のそれぞれに2個ずつ配設されている。各圧力水噴射用隙間5、6に配設された2個の圧力水噴出手段7、7のうち、一方の圧力水噴出手段7は、その圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水Wを魚体Aにおける幅方向の腹部側表面(幅方向の中央頂部から腹部までの表面)に噴射させる一方、他方の圧力水噴出手段7は、その圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水Wを魚体Aにおける幅方向の背側表面(幅方向の中央頂部から背部までの表面)に噴射させるように構成されている。従って、各圧力水噴射用隙間5、6に配設された両方の圧力水噴射手段7から噴射された圧力水Wが、魚体Aの幅方向の全体に噴射され、魚体Aの鱗が全面的に剥離されるように構成されている。
【0042】
そして、圧力水噴射手段7の圧力水噴射ノズル74から噴射される圧力水Wは、魚体Aの表面に対して傾斜した方向(頭部側又は尾びれ側に傾斜した方向、好ましくは、
図3のように尾びれ側に傾斜した方向)から魚体表面の鱗に噴射されており、鱗に斜め方向から高圧の圧力水Wが複数回に亘って吹き付けられ、この高圧の圧力水Wによって鱗に対して斜め方向の押圧力を加えることによって鱗を素早く起立させると同時に根元から瞬時に剥がすことができるように構成されている。
【0043】
次に、魚体の鱗取り装置の使用要領について説明する。コンベア手段1の第1上流側無端ベルト2a、第1下流側無端ベルト3a、第2上流側無端ベルト2b及び第2下流側無端ベルト3bの駆動プーリをそれぞれ駆動させることによって、第1上流側無端ベルト2a、第1下流側無端ベルト3a、第2上流側無端ベルト2b及び第2下流側無端ベルト3bの上下対向面から形成された魚体挟持搬送面4を魚体の搬送方向(
図1では、紙面の右方向から左方向)に搬送させる。
【0044】
コンベア手段1における第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3の上下対向面の搬送始端の開口部、即ち、第1上流側無端ベルト2a及び第2上流側無端ベルト2bの上下対向面の搬送始端の開口部から、魚体Aをその頭部側から寝かせた状態で供給して魚体Aを魚体挟持搬送面4、4によって上下から挟持し、魚体Aをその長さ方向(頭部と尾びれを通る方向)が搬送方向を向いた状態に搬送する。
【0045】
そして、魚体Aが圧力水噴射用隙間5、6を通過する時、圧力水噴射用隙間5、6のそれぞれには左右一対の圧力水噴射手段7、7が配設され、圧力水噴射手段7の圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水Wが上下方向から魚体Aの鱗に吹き付けられる。
【0046】
圧力水噴射手段7の圧力水噴射ノズル74から圧力水Wが魚体Aの鱗に吹き付けられる時、魚体Aは、圧力水噴出手段7に対向する無端ベルト(第1上流側無端ベルト2a又は第2下流側無端ベルト3b)によって受止されて位置決めされており、圧力水噴射手段7の圧力水噴射ノズル74から魚体A表面までの距離の変動が低減化されるように構成されている。従って、圧力水噴射手段7の圧力水噴射ノズル74から魚体Aの鱗に吹き付けられる圧力水の圧力、量及び吹き付け回数の変動を低減化し、魚体Aの鱗の除去を常時、確実に行なうことができるように構成されている。
【0047】
圧力水噴射手段7の圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水Wは、固定ノズル外筐71における長孔711を通じて、魚体の幅方向(背腹方向)に並列している鱗が鱗の長さ(頭部と尾びれとを結ぶ方向の鱗の長さ)に相当する距離だけ搬送される間に、この鱗列に対して数回、魚体の幅方向に高速移動しながら均等に吹き付けられ、全ての鱗に高圧の圧力水Wを複数回に亘って確実に吹き付けることができる。
【0048】
しかも、
図7に示したように、圧力水噴射ノズルから噴射された圧力水Wは、魚体Aの鱗に対して斜め方向から複数回に亘って吹き付けられるので、鱗81にはその根元部811を支点として起立する方向に押圧する応力と、起立した鱗81が根元部811を支点として魚体A側に押し戻される応力が時間差で加わる。その結果、鱗81は、その根元部811を支点として起伏する方向(
図7において上下方向)に動き、鱗81の根元部811における魚体Aへの付着部が弱体化し、魚体Aに付着している鱗81の根元部811の付着が解除され、魚体Aの表面から鱗81が素早く除去される。
【0049】
そして、圧力水Wによって加えられた衝撃力によって起立状態となった鱗81と、魚体Aの搬送始端側に隣接する鱗82との隙間K内にも圧力水Wが進入することができ、起立状態となった鱗81の剥離を促進することができる。
【0050】
そして、圧力水噴射ノズル74を高速回転させながら長孔711を通じて十分な吹き付け長さでもって魚体Aの表面に圧力水Wを吹き付けており、圧力水噴射ノズル74を魚体Aの表面に近づけても、圧力水Wを十分な吹き付け長さでもって魚体Aの表面に吹き付けることができ、一の圧力水噴射ノズル74によって、魚体Aの幅方向における中央から腹部側又は背びれ側の鱗列の全体に圧力水Wを確実に吹き付けることができる。
【0051】
圧力水噴射用隙間5、6のそれぞれに配設された左右一対の圧力水噴射手段7、7から魚体Aの表面に上下方向から圧力水が吹き付けられ、魚体Aの表面全面に圧力水Wが吹き付けられて、魚体Aの鱗を全面的に除去することができる。
【0052】
従って、圧力水噴射ノズル74から噴出される圧力水Wの圧力損失を最小限としながら、圧力水Wを魚体Aの表面に吹き付けることができ、圧力水供給管に供給される供給圧力を最小限とし、圧力ポンプの小型化を図ることができ、消費電力の抑制を図ることができると共に、電源設備の工事を行うことなく、魚体の鱗取り装置を駆動させることができる。
【0053】
又、圧力水噴射ノズル74から十分な圧力でもって圧力水Wを魚体Aの鱗に吹き付けることができるので、鱗に吹き付ける圧力水Wの量を低減させることができ、従来の魚体の鱗取り装置のように圧力水Wを循環利用する必要はなく、衛生面においても優れている。
【0054】
上記した魚体の鱗取り装置では、第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3を上下方向に所定間隔を存して配設した場合を例に挙げて説明したが、第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3を左右方向(
図1では紙面に直交する方向)に所定間隔を存して配設してもよい。この場合、
図1に示した魚体の鱗取り装置は、上下方向から見た平面図となる。
図1に示した魚体の鱗取り装置の各構成は同一であるので説明は省略する。使用にあたっては、コンベア手段1における第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3の左右対向面の搬送始端の開口部、即ち、第1上流側無端ベルト2a及び第2上流側無端ベルト2bの対向面(左右対向面)の搬送始端の開口部から、魚体Aをその頭部側から背腹方向を上下に向けた状態で供給される。そして、魚体挟持搬送面4、4に挟持されて搬送される魚体Aに左右方向から圧力水噴射手段7の圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水Wが吹き付けられる。
【0055】
上記した魚体の鱗取り装置では、第1無端ベルト2が第1上流側無端ベルト2a及び第2下流側無端ベルト2bを、第2無端ベルト3が第2上流側無端ベルト2b及び第2下流側無端ベルト3bを含む場合を示したが、第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3は、これらの無端ベルトの上下対向面から構成される魚体挟持搬送面4、4によって魚体Aが搬送方向に搬送可能に構成されておればよく、第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3のそれぞれを構成する無端ベルトの数及び配置方法は特に限定されない。例えば、第1無端ベルト2の第1上流側2aと、第2無端ベルト3の第2上流側無端ベルト2b及び第2下流側無端ベルト3bとによって、魚体Aを搬送方向に搬送可能であれば、第1無端ベルト2の第1下流側無端ベルト3aは、必ずしも配設される必要はない。
【0056】
上記した魚体の鱗取り装置では、圧力水噴射手段7は、その圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水が、無端ベルト間に形成された圧力水噴射用隙間5、6を通じて、コンベア手段1によって搬送経路上を搬送される魚体Aの表面に吹き付けられるように構成している場合を示したが、圧力水噴射手段7は、無端ベルト間に配設される必要はなく、圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水が、コンベア手段1によって搬送経路上を搬送される魚体Aの表面に吹き付けられるように配設されていればよい。従って、第1無端ベルト2の第1下流側無端ベルト3aが配設されない場合、圧力水噴出手段7は、第1上流側無端ベルト2aの搬送終端側に配設されてもよい。
【0057】
上記した魚体の鱗取り装置では、圧力水噴射手段7が、その圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水を、第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3の対向面から構成される魚体挟持搬送面4、4に向かって吹き付けるように配設された場合を説明した。更に、圧力水噴射手段7を第1無端ベルト2及び第2無端ベルト3の対向面間に形成された隙間の何れか一方の側方又は両側方(魚体挟持搬送面4、4の搬送方向に交差又は直交する方向の何れか一方の側方又は両側方)に配設し、圧力水噴出手段7から噴射される圧力水をコンベア手段1の魚体挟持搬送面4、4に挟持されて搬送される魚体Aの背側又は腹側から魚体Aに吹き付けてもよい。圧力水噴出手段7から噴射される圧力水の噴射方向は、魚体挟持搬送面4、4の面方向に概ね沿った方向であることが好ましい。
【0058】
この場合、圧力水噴射手段7は、その固定ノズル外筐71の長孔711をコンベア手段1の魚体挟持搬送面4、4間に挟持、搬送される魚体Aに臨ませた状態に配設される。圧力水噴射手段7の固定ノズル外筐71の長孔711は、その長さ方向が魚体Aの搬送方向に向けられた状態に配設されており、圧力水噴射ノズル74から噴射された圧力水Wは、固定ノズル外筐71の長孔711を通じて、魚体Aの表面に側方から搬送方向と同一又は反対方向に高速移動しながら均等に吹き付けられる。圧力水Wは、魚体Aの背又は腹方向から吹き付けられるので、鱗81とこの鱗81に対して魚体Aの搬送方向に隣接して配列している鱗82との間に圧力水Wを効果的に進入させることができ、魚体Aの鱗の除去効果を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 コンベア手段
2 第1無端ベルト
2a 第1上流側無端ベルト
3a 第1上流側無端ベルト
3 第2無端ベルト
2b 第2下流側無端ベルト
3b 第2下流側無端ベルト
4 魚体挟持搬送面
5、6 圧力水噴射用隙間
7 圧力水噴射手段
71 固定ノズル外筐
711 長孔
72 圧力水供給管
721 圧力水流路
722 通水孔
73 筒体
731 軸孔
732 大径口部
733 水路孔
74 圧力水噴射ノズル
8 鱗
A 魚体
W 圧力水