(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】画像再構成
(51)【国際特許分類】
G06T 5/70 20240101AFI20241216BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G06T5/70
G06T1/00 290B
G06T1/00 500B
(21)【出願番号】P 2021559172
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 GB2020050876
(87)【国際公開番号】W WO2020201755
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-16
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500532757
【氏名又は名称】キングス カレッジ ロンドン
【氏名又は名称原語表記】KINGS COLLEGE LONDON
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】リーダー アンドリュー ジェイ
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0315225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 5/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース画像を反復的に更新することによって測定データセットを表す画像を作成する方法であって、
前記測定データセットから主要データセットを生成するステップであって、前記主要データセットが、前記測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するデータセットを含む、前記主要データセットを生成するステップと、
前記測定データセットから少なくとも1つの追加データセットを生成するステップであって、前記追加データセットが、各追加データセットが前記測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するように、且つ各追加データセットが前記主要データセットと同一でないように、前記測定データセットから生成されたデータセットを含む、前記少なくとも1つの追加データセットを生成するステップと、
前記主要データセット及び各追加データセットを用いてノイズ補償なしで前記ベース画像を処理し、それぞれ主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を取得するステップと、
前記主要中間画像及び前記少なくとも1つの追加中間画像を比較して、存在するノイズのレベルの指標を決定するステップと、
前記決定された、存在するノイズの指標を用いて、前記測定データセットを表す新たなベース画像を作成するために、前記測定データセットを用いて前記ベース画像を処理するときに適用するノイズ補償を選択するステップと を含む、前記画像を作成する方法。
【請求項2】
前記主要データセットが前記測定データセットである、請求項1に記載の画像を作成する方法。
【請求項3】
前記主要データセットが、前記測定データセットから生成されたブートストラップデータセットを含む、請求項1に記載の画像を作成する方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの追加データセットを生成するステップが、前記測定データセットからサンプリングされた1又は2以上のブートストラップデータセットを作成するステップを含む、請求項1~3のいずれかに記載の画像を作成する方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの追加データセットを生成するステップが、前記測定データセットから1又は2以上の追加データセットを生成するステップを含み、前記追加データセットのそれぞれが、各追加データセットが前記測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するように、且つ各追加データセットが前記測定データセットと同一でないように、前記測定データセットから生成されたデータセットを含む、請求項1~4のいずれかに記載の画像を作成する方法。
【請求項6】
前記主要中間画像及び前記少なくとも1つの追加中間画像を比較して、存在するノイズの指標を決定するステップが、存在するノイズの指標を決定するために前記主要中間画像と少なくとも1つの追加中間画像との間の比較を考慮するステップを含む、請求項1~5のいずれかに記載の画像を作成する方法。
【請求項7】
前記考慮するステップが、前記主要中間画像に対する前記追加中間画像の分布の1又は2以上の特性を計算するステップの1又は2以上を含む、請求項6に記載の画像を作成する方法。
【請求項8】
前記測定データセットを表す前記新たなベース画像を取得するために、前記測定データセットに基づいて前記ベース画像の反復更新を行うために前記選択されたノイズ補償を用いるステップを含む、請求項1~
7のいずれかに記載の画像を作成する方法。
【請求項9】
異なる選択されたノイズ補償手順を用いて前記ベース画像を処理するステップを含む、請求項
8に記載の画像を作成する方法。
【請求項10】
前記選択されたノイズ補償手順と前記異なる選択されたノイズ補償手順を用いて取得された作成画像を比較して、前記測定データセットを表す新たなベース画像を作成するために、前記測定データセットを用いて前記ベース画像を処理するときにどのノイズ補償手順を適用するかを選択するステップを含む、請求項
9に記載の画像を作成する方法。
【請求項11】
適切なノイズ補償手順の選択が、前記ノイズ補償手順を用いて取得された中間画像を前記主要中間画像と比較するステップを含む、請求項
10に記載の画像を作成する方法。
【請求項12】
前記主要中間画像及び少なくとも1又は2以上の追加中間画像を比較して、存在するノイズの指標を決定するステップが、ノイズ補償手順のための1又は2以上のパラメータを求めることが目標である目的関数を実装するステップであって、前記パラメータが、求められ、前記1又は2以上の追加中間画像に適用されると、前記主要中間画像とのその集合的な差異が最小化されるように各追加中間画像の更新につながる、ステップを含む、請求項1~
11のいずれかに記載の画像を作成する方法。
【請求項13】
前記目的関数が、前記1又は2以上の追加中間画像と前記主要中間画像との間の距離に関連する尺度を含む、請求項
12に記載の画像を作成する方法。
【請求項14】
距離に関連する前記尺度が、二乗距離の合計、カルバック-ライブラー距離尺度、距離尺度としての任意のノルム、又は距離に相関する他の適切な交差尤度尺度の1つを含む、請求項
13に記載の画像を作成する方法。
【請求項15】
前記反復更新が加法的更新又は乗法的更新を含む、請求項
8に記載の画像を作成する方法。
【請求項16】
選択されたノイズ補償を伴う前記処理が、前記測定データセットを用いた任意の正則化された反復画像再構成アルゴリズムから導出された正則化された反復更新に対応する、請求項1~
15のいずれかに記載の画像を作成する方法。
【請求項17】
前記ノイズ補償手順が、前記主要中間画像に一致するように前記追加中間画像のいずれかをマッピングするように訓練された人工ニューラルネットワークに対応し、前記訓練された人工ニューラルネットワークを前記主要中間画像に適用して前記ベース画像の更新を得られるようになる、請求項
9~
14のいずれかに記載の画像を作成する方法。
【請求項18】
前記ノイズ補償のパラメータが、前記ベース画像の反復更新を遅くして残留ノイズの蓄積を回避するため、最適化手順によって求められたものより大きなレベルのノイズ補償を引き起こすように修正される、請求項
9~
14又は17のいずれかに記載の画像を作成する方法。
【請求項19】
継続的な反復更新が、実装された前記ノイズ補償の前記パラメータが前記最適化手順によって求められた前記パラメータに次第に近くなるように選択されるようなもの、且つ前記パラメータが前記継続的な反復更新における前記最適化手順のすべての以前の使用から求められた最大レベルのノイズ補償に対応するように選択されるようなものである、請求項
18に記載の画像を作成する方法。
【請求項20】
コンピュータ上で実行されたとき、請求項1~
19のいずれかに記載の方法を実行するように動作可能なコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
ベース画像から測定データセットを表す画像を作成するように構成されたイメージング装置であって、
前記測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有する前記測定データセットからの主要データセット及び前記測定データセットからの少なくとも1つの追加データセットを生成するように構成されたデータセット生成ロジックであって、各追加データセットが、前記測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するデータセットを含むように選択される、前記データセット生成ロジックと、
前記主要データセット及び前記少なくとも1つの追加データセットを用いて前記ベース画像を処理し、それぞれ主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を取得するように構成された処理ロジックと、
前記主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を比較して、存在するノイズのレベルの指標を決定するように構成された比較ロジックと、
ノイズの前記決定された指標を用いて、前記測定データセットを表す新たなベース画像を作成するために、前記測定データセットを用いて前記ベース画像を処理するときに適用するノイズ補償のレベルを選択するように構成された画像作成ロジックと、
を含む、前記装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
いくつかの態様及び実施形態が、測定データセットを表す画像を作成する方法、その方法を実行するように動作可能なコンピュータプログラム製品及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆問題は多くの分野において発生する。これらの分野は、医用及び前臨床イメージングを含む。
【0003】
イメージングの分野において逆問題を扱うとき、目的は、大抵画像と呼ばれる、関心のある何らかのオブジェクトを表す1又は2以上のパラメータ、又は多次元密度関数を推定することである。例えば、医用イメージングにおいて、関心のある逆問題は通常、画像再構成と呼ばれ、3D配列のボクセル、又は2D配列のピクセル内の関心のある値が推定される。これらの関心値は、いくつかの例において、例えば、人体内部の放射性トレーサ(例えば、陽電子放出断層撮影(PET,positron emission tomography)及び単一光子放射断層撮影(SPECT,single photon emission computed tomography))の濃度、結合能及び/又は取り込み速度、又は解剖学的イメージング(MRI)のためのプロトン密度及び組織緩和パラメータを表すことができる。
【0004】
このような再構成画像及び密度推定は、広範囲にわたる用途を有する。医療分野において、機能的、分子的及び解剖学的画像は、病気の理解、診断及びステージング及び健康な人体がどのように機能するかを理解することを含む用途を有する。前臨床イメージングの分野において、再構成画像は、病気の研究及び新薬の開発に価値を有する。他の分野において、再構成画像は、セキュリティ、例えば、セキュリティチェック、衛星監視又は安全性、例えば、非破壊検査及び地震画像のような用途に価値を有し得る。
【0005】
すべての逆問題に関連する問題は、収集データにノイズが多くても、逆問題に対する一意のノイズ補償解決策が大抵存在しないことである。一意の解決策が存在しなければ、イメージング及びセンシングデバイスを作製及び使用して画像再構成プロセスのために1又は2以上の固定ノイズ補償パラメータを選択する人に選択の負担がかかる。このようなノイズ補償パラメータの選択により、逆問題を満たし得る多くの解決策の1つが選択される。収集データにおけるノイズは様々な方法で画像再構成を損なう可能性があり、ノイズ補償及び補正アプローチがこれらの障害を補償するように見えることが理解されよう。これと併せて、ノイズ低減方法を展開することができ、その目的は、収集されたデータセットにおいてノイズを低減及び軽減することであり得る。
【0006】
医用イメージングに関連して、臨床医によって解釈される画像は、ノイズ補償手順及びノイズ補償パラメータの特定の固定された選択に従って、製造者、又はユーザに依存することになり、もし彼らが事前情報を用いていれば、これらの固定ノイズ補償パラメータは、用いる事前情報の強度を制御することができる。多くの可能な画像が臨床医に提示されてしまい、これらのそれぞれが異なる方法で読み取られるおそれがあり、異なる診断、予後又は医学的評価につながる可能性があることが理解されよう。
【0007】
解釈の目的のために用いる結果の画像を決定する、ノイズ補償パラメータの選択は、イメージング分野における重大な問題である。これは、マルチモーダル又は相乗的画像再構成に関連して特に当てはまり得る。他のモダリティからの情報が用いられる(例えば、PET再構成を支援する磁気共鳴(MR,magnetic resonance)画像)、このようなアプローチにおいて、他のモダリティからの情報を誤用しないことが重要であるが、これは不適切なパラメータが選択されれば起こる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、ベース画像を反復的に更新することによって測定データセットを表す画像を作成する方法を提供し、この方法は、
測定データセットから主要データセットを生成するステップであって、主要データセットが、測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するデータセットを含む、ステップと、測定データセットから少なくとも1つの追加データセットを生成するステップであって、追加データセットが、各追加データセットが測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するように且つ各追加データセットが主要データセットと同一でないように測定データセットから生成されたデータセットを含む、ステップと、主要データセット及び各追加データセットを用いてノイズ補償なしでベース画像を処理し、それぞれ主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を取得するステップと、主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を比較して、存在するノイズのレベルの指標を決定するステップと、決定された、存在するノイズの指標を用いて、測定データセットを表す新たなベース画像を作成するために、測定データセットを用いてベース画像を処理するときに適用するノイズ補償を選択するステップと、
を含む。
【0009】
第1の態様は、ノイズがイメージングにおける重要な問題になる可能性があることを認識している。ノイズが重大である、放射断層撮影のための画像再構成のような用途においてノイズが特に問題になる可能性がある。以下でより詳細に説明するように、純粋最尤又は最小二乗推定を用いる画像再構成アプローチは、臨床又は研究タスクには有用でない。ノイズ問題に対処するときに交差検証が何らかの支援を提供し得ることが認識されている。交差検証は、画像再構成のためのノイズ補償パラメータのデータ駆動型選択を提供する。
【0010】
第1の態様は、交差検証技術を利用しながら既知の画像再構成アプローチに伴ういくつかの問題に対処している。特に、第1の態様は、測定データセットを処理すること及び1又は2以上のブートストラップデータセット(これらのそれぞれが測定データと実質的に同じノイズを被っている)を処理することにより、測定データセットにおけるノイズのレベルの指標を得る客観的なメカニズムを提供することができることを認識している。1又は2以上の処理されたブートストラップデータセット及び処理された測定データセットから、処理されたブートストラップデータセットと処理された測定データセットを比較し、画像を作成するときに測定データセットに適用する適切なノイズ補償パラメータを計算することが可能になる。
【0011】
したがって、第1の態様に従って適用されるノイズ補償手順は、それぞれの処理されたブートストラップデータセットを、処理された測定データセットに可能な限り近くマッピングするために要求されるマッピングであり、第1の態様による方法は、特定のノイズ補償手順に関連して適用するノイズ補償パラメータの適切なセットを求めるように動作することができる。
【0012】
第1の態様は、ベース画像を反復的に更新することによって測定データセットを表す画像を作成する方法を提供することができる。この方法は、測定データセットから主要データセットを作成するステップを含むことができ、主要データセットは、測定データセットのノイズレベルと同一、同様、又は同じレベルでノイズを有するデータセットを含む。この方法は、測定データセットから少なくとも1つの追加データセットを作成するステップを含むことができ、追加データセットは、測定データセットからサンプリングされたブートストラップデータセットを含み、このブートストラップデータセットは、各追加ブートストラップデータセットが測定データセットと同一、同様、又は同じレベルでノイズを有するように測定データセットから選択される。各追加ブートストラップデータセットは、測定データセットと実質的に同じサイズとすることができる。この方法は、第1のデータセット及び各追加データセットを用いてノイズ補償を用いることなくベース画像を処理し、それぞれ主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を取得するステップを含むことができる。この方法は、主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像間の何らかの比較の実行を含むことができる。その比較を用いて、測定(及びブートストラップ)データセットに存在するノイズのレベルの指標を決定することができる。この方法は、決定された、存在するノイズの指標を用いて、測定データセットを表す新たなベース画像を作成するために、測定データセットを用いてベース画像を処理するときに適用するノイズ補償のレベルを選択するステップを含むことができる。特に、ノイズ補償手順において適用するノイズ補償パラメータは、比較ステップによって生成されたノイズの指標に基づいて選択することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、主要データセットは測定データセットを含む。いくつかの実施形態において、主要データセットは、測定データセットから作成されたブートストラップデータセットを含む。いくつかの実施形態において、主要データセットは、上記測定データセットから生成された、他のサンプリング又は機械学習方法によって同様に生成されたデータセットを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加データセットを作成するステップは、測定データセットから2又は3以上の追加データセットを作成するステップを含み、追加データセットのそれぞれは、各追加データセットが測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するように選択された測定データセットからサンプリングされたブートストラップデータセットを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加データセットを生成するステップは、測定データセットからサンプリングされた1又は2以上のブートストラップデータセットを作成するステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加データセットを生成するステップは、測定データセットから1又は2以上の追加データセットを生成するステップを含み、追加データセットのそれぞれは、各追加データセットが測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するように且つ各追加データセットが測定データセットと同一でないように測定データセットから生成されたデータセットを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を比較して、存在するノイズの指標を決定するステップは、存在するノイズの指標を決定するために主要中間画像と少なくとも1つの追加中間画像との間の比較を考慮するステップを含む。したがって、測定データセットにおけるノイズのあり得るレベルのより全体的な見解を取ることが可能である。
【0018】
いくつかの実施形態において、考慮するステップは、主要中間画像に対する追加中間画像の分布の1又は2以上の特性を計算するステップの1又は2以上を含む。このような特性は、例えば、ノイズの平均指標を計算すること、ノイズの中央指標を計算すること、又はノイズの最大指標を計算することを含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、考慮するステップは、人工ニューラルネットワークを実装して、測定データセットから作成された主要中間画像と比較して1又は2以上の追加データセットから作成された1又は2以上の追加中間画像に基づいて測定データセットに適用する適切なノイズ補償を求めるステップを含む。したがって、所与のデータセットに適用する最適なノイズ補償アプローチ(パラメータ及び手順の両方)を、適切に構成されたニューラルネットワークの適切な適用によって効率的に発見することができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、この方法は、ベース画像のさらなる反復更新を得るため、測定データセットに基づいてベース画像の反復更新を処理するために選択されたノイズ低減を用いるステップを含む。したがって、継続的な反復により、任意のベース画像を測定データセットによって表される「真の」画像に向かって移動させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、この方法は、選択されたノイズ補償手順を用いてベース画像を処理するステップを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、異なる選択されたノイズ補償手順を用いてベース画像を処理するステップを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、選択されたノイズ補償手順と異なる選択されたノイズ補償手順を用いて取得された作成画像を比較して、測定データセットに適用する適切なノイズ補償手順を選択するステップを含む。いくつかの実施形態において、適切なノイズ補償手順の選択は、どのノイズ補償手順が主要中間画像に最も近い追加中間画像を提供するかを選択するステップを含む。したがって、いくつかの実施形態が、ノイズ補償の可能性の範囲を開くことができ、収集されたデータに応じてその使用を最適化することができる。ノイズ補償アプローチは、各反復ステップで、最適なカーネル幅を求めることができるガウシアン平滑化カーネルのように簡単なことも、再構成に含めるため高度なガイド付き平滑化(ここでも、測定データに従って具体的に最適化されたパラメータ化で)のように複雑なこともある。
【0022】
いくつかの実施形態において、主要中間画像及び追加中間画像を比較して、存在するノイズの指標を決定するステップは、ノイズ補償手順のための1又は2以上のパラメータを求めることが目標である目的関数を実装するステップであって、パラメータは、求められ、1又は2以上の追加中間画像に適用されると、主要中間画像とのその集合的な差異が最小化されるように各追加中間画像の更新につながる、ステップを含む。換言すると、画像再構成反復アルゴリズムにおける任意の又は各ステップで直接埋め込むことができるノイズ除去手順を用いることが可能である。いくつかの実施形態が、所与の測定データセットについて、ベース画像の各反復更新のための任意のノイズ除去手順のパラメータ化を適応的且つ正確に最適化するように動作することができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、目的関数は、追加中間画像と主要中間画像との間の距離に関連する尺度を含む。いくつかの実施形態において、距離に関連する尺度は、二乗距離の合計、カルバック-ライブラー距離尺度、距離尺度としての任意のノルム、又は距離に相関する他の適切な交差尤度尺度の1つを含む。いくつかの実施形態において、反復更新は、加法的更新又は乗法的更新を含む。すなわち、測定データセットにおけるノイズのレベルを決定し、したがって所与のノイズ補償手順のための適切なノイズ補償パラメータを決定するための主要中間画像及び追加中間画像間の比較を様々な方法で実行することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、ノイズ補償を伴う処理は、任意の正則化された反復画像再構成アルゴリズムから導出された正則化された反復更新に対応する。いくつかの実施形態において、ノイズ補償手順は、主要中間画像に一致するように追加中間画像のいずれかをマッピングするように訓練された人工ニューラルネットワークに対応し、人工ニューラルネットワーク訓練を主要中間画像に適用してベース画像の更新を得られるようになる。すなわち、ベース画像を処理して測定データセットを表す画像を得るときに適用されるノイズ補償手順は、様々な利用可能なノイズ補償手順から選択することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、ノイズ補償のパラメータは、ベース画像の反復更新を遅くするため、最適化手順によって求められたものより大きなレベルのノイズ補償を引き起こすように修正される。いくつかの実施形態において、ノイズ補償のパラメータは、残留ノイズの蓄積を回避するため、最適化手順によって求められたものより大きなレベルのノイズ補償を引き起こすように修正される。したがって、慎重な更新プロセスを実装して、ベース画像をより穏やかに反復的に更新することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、継続的な反復更新は、実装されたノイズ補償のパラメータが目的関数の最適化によって求められたパラメータに次第に近くなるように選択されるようなものである。いくつかの実施形態において、継続的な反復更新は、実装されたノイズ補償のパラメータが目的関数の最適化によって求められたパラメータに次第に近くなるように選択されるようなものである。いくつかの実施形態において、継続的な反復更新は、実装されたノイズ補償のパラメータが最適化手順によって求められたパラメータに次第に近くなるように選択されるようなもの且つパラメータが継続的な反復更新における最適化手順のすべての以前の使用から求められた最大レベルのノイズ補償に対応するように選択されるようなものである。
【0027】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加データセットを生成するステップは、測定データセットから1又は2以上の追加データセットを生成するステップを含み、生成するステップはサンプリング又は機械学習方法を含み、追加データセットのそれぞれは、各追加データセットが測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するように且つ各追加データセットが測定データセットと同一でないように測定データセットから生成されたデータセットを含む。
【0028】
選択されたノイズ補償手順を用いてベース画像を処理するステップを方法が含む実施形態において、そのノイズ補償アプローチは、人工ニューラルネットワークの使用のように高度であり得る。
【0029】
画像再構成反復アルゴリズムにおける任意の又は各ステップでノイズ除去手順が直接埋め込まれている実施形態において、この方法は、所与の測定データセットについて、ベース画像の各反復更新のための任意のノイズ除去手順のパラメータ化を適応的且つ正確に最適化するように動作することが理解されよう。このノイズ除去手順の適応的且つ正確な最適化は自動であり、ユーザ提供パラメータ又はガイダンスを必要としない。
【0030】
ノイズ補償を伴う処理のステップを方法が含む実施形態において、ノイズ補償を伴う処理は、任意の正則化された反復再構成アルゴリズムから導出された正則化された反復更新に対応し得る。このようなアプローチは、事前の1より多くの選択肢からの正則化のレベルの自動的且つ正確な最適化を可能にすることができ、事前情報の異なる選択肢の強度を自動的に選択することができるようになる。例えば、ガイドなしの平滑化と比較して、どれだけのガイド付き平滑化情報を用いるか。換言すると、可能なノイズ補償手順のセットの中から選択するのではなく、各ノイズ補償手順のどれだけを適用するかを選択することが可能である。このような実施形態は、この方法は可能なノイズ補償候補のセットから単一の候補を選択する必要がないように動作することができるが、代わりに1より多くのノイズ補償候補の異なる比率を適用することができることを意味する。
【0031】
明確化のために、第1の態様の方法は、いくつかの実施形態において、完全に自動であると考えられることが留意される。すなわち、この方法は、ユーザが動作パラメータの選択をする必要なしに起こり得る。すなわち、例えば、すべてのデータセット及びすべてのノイズレベルに適合するように過度に慎重な初期パラメータを事前選択すると、測定データセットの処理が完全に自動の正確な手順になるため、この方法は完全にデータ駆動型とすることができる。
【0032】
要約すると、第1の態様は、ベース画像を反復的に更新することによって測定データセットを表す画像を作成する方法を提供し、この方法は、測定データセットから主要データセットを生成するステップであって、主要データセットが、測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するデータセットを含む、ステップと、測定データセットから少なくとも1つの追加データセットを生成するステップであって、追加データセットが、各追加データセットが測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するように且つ各追加データセットが主要データセットと同一でないように測定データセットから生成されたデータセットを含む、ステップと、主要データセット及び各追加データセットを用いてノイズ補償なしでベース画像を処理し、それぞれ主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を得るステップと、主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を比較して、存在するノイズのレベルの指標を決定するステップと、決定された、存在するノイズの指標を用いて、測定データセットを表す新たなベース画像を作成するために、測定データセットを用いてベース画像を処理するときに適用するノイズ補償を自動的に選択するステップと、を含む。
【0033】
少なくとも1つの追加データセットは、純粋にデータ駆動型のアプローチにおいて、測定データセットから生成されたブートストラップデータセットを含むことができる。このようなアプローチは真にデータ駆動型であり、方法が他のデータから学習した機会を軽減する。もちろん、いくつかの実施形態は、人工ニューラルネットワーク(ANN,artificial neural network)によって測定データセットから生成されたデータセットを含む少なくとも1つの追加データセットを可能にし得る。いくつかの実施形態においてANNをノイズ補償手順のために部分的又は全体的に用いることができる。
【0034】
第2の態様は、コンピュータ上で実行されたとき、第1の態様の方法を実行するように動作可能なコンピュータプログラム製品を提供する。
【0035】
第3の態様は、ベース画像から測定データセットを表す画像を作成するように構成されたイメージング装置を提供し、この装置は、測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有する測定データセットからの主要データセット及び測定データセットからの少なくとも1つの追加データセットを生成するように構成されたデータセット生成ロジックであって、各追加データセットが、測定データセットと実質的に同じレベルでノイズを有するデータセットを含むように選択される、データセット生成ロジックと、主要データセット及び少なくとも1つの追加データセットを用いてベース画像を処理し、それぞれ主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を得るように構成された処理ロジックと、主要中間画像及び少なくとも1つの追加中間画像を比較して、存在するノイズのレベルの指標を決定するように構成された比較ロジックと、ノイズの決定された指標を用いて、測定データセットを表す新たなベース画像を作成するために、測定データセットを用いてベース画像を処理するときに適用するノイズ補償のレベルを選択するように構成された画像作成ロジックと、を含む。
【0036】
第3の態様の実施形態は、第1の態様に関連して説明した実施形態に対応する。
【0037】
さらなる特定の好ましい態様が添付の独立及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、適宜、請求項に明示的に記載されているもの以外の組合せで、独立請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0038】
装置特徴が機能を提供するように動作可能であるとして説明される場合、これは、その機能を提供する、又はその機能を提供するように適合又は構成されている装置特徴を含むことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
次に、添付の図面を参照して、本発明の実施形態をさらに説明する。
【
図1】異なる再構成方法で3つの異なるカウントレベルを用いて取得されたPET画像のセットを含む。
【
図2】
図1における対象についてのMR画像である。
【
図3】対象のMRIからの構造的事前情報を利用する異なる再構成方法で3つの異なるカウントレベルを用いて取得されたPET画像のセットを含む。
【
図4】データ処理への全般的なアプローチを概略的に示す。
【
図5】
図4によるデータ処理アプローチに従った全般的なイメージングアプローチの概念的な大要を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
前述のように、イメージングの分野において逆問題を扱うとき、目的は、大抵、画像と呼ばれる、関心のある何らかのオブジェクトを表すオブジェクト表現パラメータのセット、又は多次元密度関数を推定することである。例えば、医用イメージングにおいて、関心のある逆問題は通常、画像再構成と呼ばれる。
【0041】
製造者、及び/又はユーザは画像再構成のためにノイズ補償パラメータを指定する必要があるため、これは医用イメージング業界にとって問題である。例えば、PETイメージングに関連してこれらのノイズ補償パラメータは反復回数及び平滑化レベルを含むことがある。選択されたパラメータは、再構成される画像に大きな影響を与えることになる。医用イメージング用途において再構成画像は、臨床医がスキャンの「結果」をどのように読み取るかに影響を与え、これは患者管理に関する診断及び決定に影響する可能性がある。PET及びSPECTイメージングに関連して、取得される放射データは、スキャン時間が限定され、患者又は研究対象へ注入される放射能の量が限定されるため、非常にノイズが多く、したがって再構成画像にもノイズ問題がある。
【0042】
ノイズを補償する画像再構成における典型的な解決策は7つのカテゴリに分類され、それぞれ製造者及び/又はユーザがノイズ補償パラメータの事前設定選択をすることが要求される。
【0043】
1)ポスト平滑化
画像/パラメトリックマップが再構成された後のこれらのポスト処理及び/又は平滑化により、ノイズをうまく軽減することができる。しかしながら、この後処理には空間分解能の減少という代償が伴い、医用画像における重要な詳細が失われる。これは、従来のフィルタ逆投影(FBP,filtered back projection)法、並びに順序付きサブセット期待値最大化(OSEM,ordered subsets expectation maximisation)のような反復画像再構成方法にも当てはまる。これらの方法はすべて、平滑化が適用されない限り、ノイズの多い画像になるであろう。より高度な後処理方法を適用することもできるが、いずれの場合においても、後処理では依然としてノイズ補償のレベルを選択する必要があり、カテゴリ3に関連して以下で説明するのと同じ問題に直面する。
【0044】
2)早期停止
最尤期待値最大化(MLEM,maximum likelihood expectation maximisation)、又はその加速バージョン、OSEMのような方法は大抵、反復プロセスにおいて早期に停止され、そのため前述の平滑化は必要でない。しかしながら、これには、潜在的に空間的に変化するノイズ及び分解能特性という代償が伴い、いくつかの領域は他より低いノイズを有し、画像のいくつかの詳細は不完全に分解される一方、他の領域は分解される。最後に、反復回数(この場合におけるノイズ補償パラメータは反復回数である)を選択する要件があるので、ノイズのレベルはユーザによって直接選択される。交差検証及び他の停止規則により反復回数の選択が除去されるが、反復再構成アルゴリズムの不完全な収束の問題が残る。
【0045】
3)正則化方法
ベイジアン及び最大事後(MAP,maximum a posteriori)法が反復アルゴリズムで用いられ、これは、滑らかさ、又は定義された領域内の滑らかさのような、事前予測を画像に課す(例えば、解剖学的情報やエッジ保存事前分布を用いるで、MRIを用いてPET再構成の正則化を導くことができる)。これらの方法に伴う問題は、パラメータ(ベイジアンコンテキストにおいてハイパーパラメータと呼ばれる)を注意深く選択する必要性であるが、これはノイズ及び解像度のレベルに影響し、実際このパラメータの選択はスキャンごとに注意深く調整する必要がある。実際、所与のデータセットの任意の所与の再構成のために最良なパラメータが選択されたことを確認することは極端に困難である。正則化を過小評価することにより多すぎるノイズが画像に残る一方、正則化パラメータを過大評価することにより重要な画像詳細が損なわれる。これは、(例えば)MRIを用いてPET又はSPECT画像再構成の正則化をガイドすべき場合、事前情報のどれくらいを用いるべきか、事前分布をどれくらい「強く」すべきか、マルチモーダルイメージングでは特に問題になる。
【0046】
4)基底変換
これらの方法は、より大きな関心領域(ROI,regions of interest)、又は詳細における時間的類似性から導出された、又は他のイメージングモダリティ(例えばMRI)からの類似性尺度から導出されたカーネル空間基底関数のような、従来のピクセル又はボクセル以外の空間基底関数を用いる。これらの方法はノイズをうまく低減するが、画像に特定の構造を課し、もう一度カーネルを生成するためのパラメータ選択の負担をユーザに残し、これによって詳細レベル及びノイズ補償、並びに用いる反復回数が再びユーザの手に委ねられる。
【0047】
5)更新間フィルタリング
これは、上述のポスト平滑化法と同様であるが、反復間に実行される。どれくらいの平滑化を適用するかを決定する必要があるという同じ問題、ノイズ補償のためのパラメータ選択の問題が発生する。
【0048】
6)交差検証に基づく停止
このようなアプローチは再構成を早期に終了し、したがって、不完全に収束した再構成を用い、上のカテゴリ2と同様の問題がある可能性がある。結果として、交差検証停止規則は、例えば、放射断層撮影コミュニティにおいて注目すべき理解を受けていない。
【0049】
7)限定グリッド検索に基づくパラメータ選択
このアプローチでユーザは、ノイズ補償のための候補パラメータの限定された数の固定セットを事前選択することが要求される。次いで候補パラメータの各セットについて完全な再構成が実行され、L曲線法又は交差検証法のいずれかを用いて、再構成パラメータのこれらのセットのどれを用いるかを選択する。これらの方法は、2つの主な方法、すなわちユーザが限定された数の固定候補パラメータを事前選択する必要性、及びパラメータの候補セットごとに全体の(大抵計算上集約的な)画像再構成を実行する必要性で限定されている。さらに、交差検証の場合、交差検証目的のためにデータのサブセットを定義する必要もあり、そのために多くの可能な選択肢がある。
【0050】
臨床PETイメージングのための産業による使用における、これらのアプローチの具体的な実施形態は、通常、早期終了(カテゴリ2)又は後処理(カテゴリ1)のいずれかに依存してノイズを補償する、Siemens社からのOSEM及び/又はHD-PET、及びキーの正則化パラメータを決定することがユーザに要求される(カテゴリ3)GE社からのQClearを含む。
【0051】
上で概説した7つのカテゴリに沿ったアプローチに依存する放射断層撮影データにおける画像ノイズを補償することへのアプローチに伴う主な欠点は、ノイズ補償のレベルを選択する正確に最適で、実用的に堅牢な又は計算効率の良い方法が存在しないことを含む。ノイズレベル及び画像化されるオブジェクトに応じて異なるデータセットに対して異なるレベルのノイズ補償が必要とされることは明らかである。さらに、ユーザ又は製造者には、どれくらいのノイズ補償、例えば、平滑化又は正則化が画像に存在すべきかを指定することが要求されるが、これは主観的であり、又はよくても、実際に取得されたデータに正確に最適ではなく、ノイズと画像詳細との間のユーザ定義トレードオフを伴う。再構成を支援するマルチモーダル情報を用いれば、どれくらい事前情報を用いるべきか、又は用いないべきかが分からない。
【0052】
大要
構成の具体的な実施形態の詳細を詳細に説明する前に、アプローチに対する全般的な大要を提供する。
【0053】
ノイズがイメージングにおける重要な問題になる可能性があることが知られている。ノイズが重大である、放射断層撮影のための画像再構成のような用途において、ノイズが特に問題になる可能性がある。上述のように、純粋最尤又は最小二乗推定を用いる画像再構成アプローチは、臨床又は研究タスクには有用でない。
【0054】
ノイズを打ち消すための現在の方法は、どれくらい平滑化するかという問題が伴うポスト再構成平滑化、いつ終了するか、及びこのような画像が何に対応するかという問題が伴い、空間変動収束が懸念される、反復アルゴリズムの早期終了、及びどの量を正則化すべきか(すなわち、βとされている、ハイパーパラメータの選択をどうするか)という問題を伴う最大事後再構成を含む。
【0055】
ノイズ問題に対処するときに交差検証(CV,cross validation)が何らかの支援を提供し得ることが認識されている。CVは、画像再構成のためのノイズ補償パラメータのデータ駆動型選択を提供する。
【0056】
既知のCVアプローチには問題が伴い、例えば、CVはデータを分割する必要があり、CVの、例えば、PET再構成における早期使用は単に取得データを2つに分割するので、ノイズ補償パラメータの「最適性」は最終的にデータのサブセットに基づく。既知のアプローチにおけるCVは、信頼できる画像を与えるためには用いられないか(例えば、早期終了の問題を伴う早期停止アプローチ)、そのかわり候補ノイズ補償パラメータの限定された数の固定された選択肢からの比較的大まかな選択を伴い、各選択肢について画像全体の再構成が要求される。
【0057】
ブートストラップ調整アプローチが有用な方法である可能性があることをいくつかのアプローチが認識している。ブートストラップして新たなデータセットを得ることは、同じサイズのデータを「追加」データセットとして用いることができることを意味し、これにより上で概説したCVに伴う第1の問題が解決される。
【0058】
同様に、(人工ニューラルネットワークからのような)データ生成アプローチを用いて新たなデータセットを得ることができることをいくつかのアプローチが認識しており、これは、同じサイズのデータを「追加」データセットとして用いることができることを意味し、これも上で概説したCVに伴う第1の問題を解決する。
【0059】
図4は、以下で詳細に説明する様々な実施形態において用いられる全般的なアプローチを概略的に示す。
【0060】
測定データを処理すること及び1又は2以上の生成された(例えば、ブートストラップされた)データセット(これらのそれぞれが測定データと実質的に同じノイズを被っている)を処理することにより、測定データにおけるノイズの指標を提供する。処理され、生成された(例えば、ブートストラップされた)データセット及び処理された測定データから、処理され、生成された、(例えばブートストラップされた)データと処理された測定データを比較し、測定データの処理において適用する適切なノイズ補償パラメータを計算することが可能である。
【0061】
ノイズ補償手順は、処理され、生成された(例えば、ブートストラップされた)データセットを、処理された測定データに可能な限り近く一致させるために要求されるマッピングである。
【0062】
所与のノイズ補償手順のためのノイズ補償パラメータは、次の式によって与えられる。
【0063】
【0064】
特定のノイズ補償手順に関連して適用するノイズ補償パラメータの適切なセットを求めるようにいくつかのアプローチが動作する。
【0065】
このアプローチは、所与の測定データセットについて1又は2以上のノイズ補償手順に適用することができ、このアプローチをそれぞれ適用することにより、所与のノイズ補償手順のための1又は2以上のノイズ補償パラメータの関連するセットが与えられることが理解されよう。
【0066】
次いで所与の測定データセットに適用する適切なノイズ補償手順を客観的に「選択」するためのアプローチを実装することができる。換言すると、所与の測定データセットに最も適した(ノイズ補償手順の所与の選択の)ノイズ補償手順を識別するような方法でアプローチを実装することができる。
【0067】
図5は、
図4によるデータ処理アプローチに従った全般的なイメージングアプローチの概念的な大要を概略的に示す。
【0068】
図4及び5に関連して説明したものに沿ったアプローチにより、逆問題に対する客観的でユーザから独立した解決策を提供することができる。このような逆問題は、例えば、PET又はSPECTにおける画像再構成及び動態/機能的パラメータ推定を含むことができる。
【0069】
いくつかのアプローチにより、用いるノイズ補償のレベルに関連するハイパーパラメータを製造者又はユーザが指定する必要なしに画像再構成が可能になり得る。(同時PET-MRのような)マルチモーダルイメージングに関連する実施形態のための有用な方法をいくつかのアプローチが提供することができ、各モダリティからの情報を活用することが望まれるが、どれくらいあるか不明であり、もしあっても、事前情報を安全に再構成に用いることができるかは分からない。
【0070】
いくつかのアプローチが、すべての反復更新ごとに適切なノイズ補償パラメータを推定するために1又は2以上の、生成するのが容易な、ブートストラップデータセットを用いることが可能であることを認識している。
【0071】
いくつかのアプローチが、ほぼすべての反復画像再構成方法を、任意の所与のステップで、更新関数Uとして見なすことができることを認識しており、これは、現在の画像(反復kでパラメータθ(k)によって記述される)及び測定データmを用いて、新たな画像θ(k+1)を届ける。
【0072】
【0073】
反復画像再構成アルゴリズムは、事実上、各反復で進行して、現在の画像に新たな「変更画像」を追加し、目的関数(例えば、最尤度(ML,maximum likelihood)、最小二乗(LS,least squares)又は最大事後確率(MAP))の要件を満たす画像に向かって進む。例えば、MLEMアルゴリズムでは、満たす必要があるのはML目的である。MAPでは、満たす必要があるのはユーザ指定正則化目的(ユーザ指定の正則化ハイパーパラメータを伴う)であり、これは他のイメージングモダリティ(例えば、PETのためのMRI)からの事前情報を活用することができる。しかしながら、MLEM及び他の非正則化目的/アルゴリズム(例えばLS/共役勾配)が過度のノイズ増幅につながる一方、MAP及び他の正則化方法は画像詳細と画像ノイズとの間のユーザ選択トレードオフにつながる。
【0074】
測定データmをリサンプリングすることによって得られるブートストラップ複製データセットbを用いて、反復kで、ブートストラップ更新画像を与えることが適切であることをいくつかのアプローチが認識している。
【0075】
【0076】
更新画像もbに存在するノイズを被ることになるが、明白にこれはmにおけるそれとは異なるノイズになる(実際の測定データmは、ブートストラップによってbのようなノイズの多いデータセットの大きな集合の平均のモデルと見なされるため)。
【0077】
いくつかのアプローチが、ブートストラップ更新に適用されるノイズ補償パラメータを最適化し、画像の次の反復更新を得るため、次いで測定データから標準反復更新を処理するためにこれらの最適化ノイズ補償パラメータを用いることによってブートストラップ更新イメージを従来の測定データ更新イメージにフィットさせる。
【0078】
最適化段階は、画像空間フィッティングであるが、これは、次のように、交差目的関数、「集合平均目的関数」、又はコスト関数を実装することによって達成することができる。
【0079】
【0080】
ここで目標は、画像
【0081】
【0082】
のブートストラップ反復更新に何らかの方法(以下で詳述する)で適用されるとき、交差目的関数に従って、従来の更新イメージ
【0083】
【0084】
に最もフィットするブートストラップ更新につながるノイズ低減演算子Fβ{}にとって、最適なノイズ補償パラメータを求めることである。
【0085】
交差目的関数は、2つの画像間の距離Dに関連する尺度であり、これは多くの方法で測定することができるが、ガウシアンデータでは最小二乗フィットに対応し(ガウシアン交差尤度を最大化するため)、ポアソン分布データではカルバック-ライブラー(KL,Kullback-Leibler)距離尺度に対応する(ポアソン交差尤度を最大化するため)。
【0086】
この交差目的関数は「集合平均目的関数」と見なすこともできる。集合平均目的関数は、ノイズの多い更新画像の大きな集合の平均(
【0087】
【0088】
によってモデル化)とノイズの多い更新
【0089】
【0090】
のいずれか1又は2以上との間の距離Dに関連する尺度である。
【0091】
最適ノイズ低減パラメータ
【0092】
【0093】
(これは交差目的を最小化する)を求めたら、画像の次の更新は次の式によって与えることができる。
【0094】
【0095】
このプロセスは、次の反復更新などのために繰り返すことができる。
【0096】
反復更新を遅くし、ノイズ補償ブートストラップ更新画像を従来の測定データ更新画像に完全にフィットさせることが不可能であることによる残留ノイズの蓄積を回避するため、最適化手順によって求められたものより大きなレベルのノイズ補償を引き起こすように早期反復更新におけるノイズ補償パラメータを修正する必要があろうということをいくつかのアプローチが認識している。
【0097】
継続的な反復更新で、最適化手順によって求められたノイズ補償パラメータに次第に近くなるようにノイズ補償パラメータが選択されること、及び継続的な反復更新における最適化手順のすべての以前の使用から求められたノイズ補償の最大レベルに対応するようにノイズ補償パラメータが選択されることをいくつかのアプローチが認識している。
【0098】
図5は、
図4によるデータ処理アプローチに従った全般的な画像再構成アプローチの概念的な大要を概略的に示す。
図5に概念的に示すように、測定データセットを用いて反復更新Uを介してベース画像を処理し、「標準」更新を与える。同じ反復更新関数Uを用いるが、ブートストラップデータセットを用いて「ブートストラップ」更新を与えるベース画像の処理も概念的に示す。これらの更新は、「中間」画像又は更新と見なすことができる。
図5に概略的に示すように、ブートストラップ画像更新に対して動作して標準及びブートストラップ画像更新間の差異を最小化するノイズ補償パラメータを求めることができる。最小化差異基準を満たすノイズ補償パラメータを求めたら、これらのノイズ補償パラメータを用いて反復更新Uを介してベース画像を処理しながらノイズ補償を適用して新たな更新ベース画像を与えることもできる。
【0099】
全般的な大要を与えたので、アプローチのいくつかの具体的な実施形態を以下に詳述する。
【0100】
a)加法的変更画像のフィルタリング
これは、その簡単さ、柔軟性及び堅牢性を考えると、多くの人に訴える可能性が高い簡単で直感的なアプローチである。更新関数は次のようにモデル化されている。
【0101】
【0102】
ここで、Δ(k)(b)は、現在の画像に効果的に追加されて次の更新を得る反復kでの「変更画像」である。いくつかのアプローチが変更画像のためのノイズ除去手順を選択し、これは、簡単なガウシアン平滑化から、マルチモーダルガイド付きフィルタリングプロセス、又はさらには人工ニューラルネットワークのような機械学習ベースのノイズ除去までのいずれのものであってもよい。ノイズ除去手順は、演算子Fβ{}によって表すことができる。
【0103】
【0104】
そして交差目的関数(3)の使用を通じてノイズ補償パラメータβの「最適な」選択を求める目標が設定される。PET又はSPECTデータの場合その目標は2つの画像間のKL距離を最小化することに対応するであろう(この距離尺度は、最大ポアソン対数尤度推定を求めることから直接発生する)。KL距離を最小化する以外の目標を選択することができることが理解されよう。
【0105】
式(6)において、Fβ{}ノイズ補償手順(例えば簡単な平滑化、又はPET又はSPECTのMRガイダンスの場合におけるマルチモーダルガイド付きエッジ保存平滑化)は、1又は2以上のノイズ補償パラメータβを有する。一例において、ユーザは、ノイズ補償パラメータβではなくノイズ補償手順を選択する。いくつかのアプローチによる交差目的フィッティングは自動的に動作して測定データにおけるノイズレベルに適応し、適切なノイズ補償パラメータを選択する。
【0106】
上の例は加法的更新(「変更画像」)に適用されるノイズ補償の場合に関連しているが、このアプローチは、乗法的更新、又は事実更新画像全体にさえ同様に適用することができることが理解されよう。
【0107】
交差目的関数の使用によって「最適な」ノイズ補償パラメータβを求めたら、次の式に従って最適化ノイズ補償パラメータを用いて元の測定データから取得された画像を更新することが可能である。
【0108】
【0109】
b)簡単な更新間フィルタ
(a)において説明した方法の変形において、(6)は次の式によって置き換えられる。
【0110】
【0111】
隔離されたノイズの多い更新「変更画像」ではなく、更新画像全体がノイズ補償の対象となるため、このような方法は(a)において説明したものとは異なる。
【0112】
c)MAP-EM更新
全般的なアプローチの他の一実施形態は、ベイジアン法に適用されるものであり、これはMAP目的を用いる。事前分布及び正則化ハイパーパラメータの選択に依存する、任意のMAP更新アルゴリズムを用いて、処理されたブートストラップ更新を生成することができる。
【0113】
例えば、画像の重み付き二次ギブス事前確率に対してDePierro[1]の方法を用いると、MAP目的に基づいて反復EM更新を得ることが可能であり、これは次の一般的な形式のものである。
【0114】
【0115】
ここで項B及びCは、現在の画像θ(k)からの隣接するボクセルの重み付けされた組合せに依存し、例えば、空間的に変化する重み付けされた二次事前分布を介したマルチモーダルガイド付き正則化が可能になる(例えばBowsher[2]の方法)。このような一実施形態によれば、ノイズ補償パラメータβはベイジアン事前分布のハイパーパラメータとして知られており、β=0はノイズ補償なしに対応することが明らかであるので、βを選択することは非常に重要な課題である。
【0116】
式(9)に基づいて、ブートストラップデータでβの交差目的最適化を用いることが可能であり、適切な量の事前情報を反復MAP-EM更新に含めることができるようになる。全般的なアプローチのこの実施形態は、特にマルチモーダルガイド付き画像再構成の文脈において、正則化された方法に関連する重大な課題に対処する。
【0117】
このようなアプローチにより、βの自動で正確な最適化が可能になり、ユーザは収束MAP-EM画像再構成アルゴリズムを達成する正則化のレベルを指定する必要がない。そのアルゴリズムは、所望の正則化された目的関数を満たす再構成画像の最終収束推定を届ける。
【0118】
目的関数において1より多くの正則化コンポーネント、例えば、第1の部分にβ1、第2の部分にβ2などを用いることができることが理解されよう。これは、ガイド付き画像再構成の文脈において特に価値を有することができ、これによってガイド付き正則化のレベルを、従来のガイドなし正則化のレベル(例えば、二次ペナルティ関数)とともに、自動的且つ正確に求めることができる。
【0119】
測定データ(すなわち、無限カウント)においてノイズがゼロになる傾向があるため、ブートストラップデータは測定データに向かう傾向があることが理解されよう。結果として、ノイズのないデータにはノイズ補償は必要とされない(交差目的関数からの最適なβ、「集合平均目的関数」はゼロに近づくことになる)。対照的に、ノイズが増加すると(すなわち、低カウント)、ブートストラップデータ由来の更新は、測定データから導出された更新にフィットさせるためにノイズ補償のレベルを増加させる必要がある。換言すると、ノイズの多い更新の集合の平均のモデルに向かってノイズの多い更新をマッピングするためにより多くのノイズ補償が必要とされることになるため、交差目的フィッティングからの最適なβは、測定データにおけるノイズの増加とともに増加することになる。
【0120】
アプローチの実演
上で概説した全般的なアプローチの実施形態の有効性を示すため、MAP EM 3D再構成の場合を実際のデータで示す。
【0121】
以下に説明する図は、ユーザがノイズ補償レベルを選択することなく、様々なノイズレベルで、PETデータの自動ノイズ低減に対して、この全般的な戦略がどれだけ効果的であるかを示している。
【0122】
図1は、低、中及び高カウントデータ比較(測定された実際のデータの1%、10%及び100%について)を含む。第1の列は、これら3つの場合の従来のMLEM再構成を含み、第2の列は、4mmのガウシアンカーネルでの典型的なポスト平滑化(臨床画像についての標準として大抵行われるように)を伴うこれらの画像を示す。右側の3つの列(列4、5及び6)は、ハイパーパラメータβの異なる選択に対する標準のMAPEM再構成を示し、異なるカウントレベルについてのハイパーパラメータの異なる選択に対して視覚的により良好な結果が得られていることが分かる。図に概説された、第3の列は、ブートストラップ最適化MAPEM法が、すべてのカウントレベルについて良質の画像を自動的に届けることを示しており、これは、そのハイパーパラメータがユーザによって調整及び調査されない限り他の方法を用いて求めることができない。
【0123】
図2は、
図1からの対象データについてのMR画像を示す。
【0124】
図3は、
図1のそれと同様の比較を含み、列及び画像の全般的な構造は、
図1に関連して説明したものと同じであるが、ここでは、Bowsher法[2]を用いて、ノイズ補償を支援するMAP EMに事前構造情報を提供するため、
図2からのMR画像を利用している。この場合も、ブートストラップ最適化MAPEM法は、すべてのノイズレベルに適切なハイパーパラメータを自動的に選択する。上述の実施形態によって適用されるノイズ補償のレベルは、データにおけるノイズのレベルに適切であることが理解されよう。他の列に示す現在の標準的な方法と比較して、第3の概説した列に示すもののような画像を臨床医は好むであろうと考えられている。
【0125】
図1及び3は、高カウントのデータ及び極端に低カウントのデータで、説明したアプローチによる実施形態を用いたあり得る結果を示しており、同じアルゴリズムが両方の場合に用いられている。説明したアプローチによる方法を適用することによって一貫した良質の画像が得られることが分かる。第3の概説した列は、平滑化の強度、用いられる事前分布の量が視覚的に適切である優れた結果を示している。
【0126】
様々な他の事前分布及びフィルタに関連して、そして、このような事前分布及びフィルタに関係する様々なハイパーパラメータのすべてについて、説明したアプローチを適用するための余地があることが理解されよう。無数の事前分布及び画像処理フィルタを検討することができ、説明したアプローチは、画像再構成のために自動的に選択されたレベルのノイズ補償を提供する厳密なフレームワーク内へ現状技術の画像ノイズ除去方法(例えば、ガイド付き平滑化に基づくもの、ローカルパッチベースの方法、又は様々な人工ニューラルネットワークアーキテクチャに基づくもの)を埋め込むことによって、これらを活用するためのかなりの可能性を有することを意味し、これによってユーザ又は製造者は、どのノイズ補償方法を用いるかを選択するだけで済み、ノイズ補償パラメータを(すなわち、どれくらいノイズ補償を適用するかによって)指定する必要性はない。
【0127】
いくつかのアプローチの実施形態により、交差目的フィッティングによって反復更新全体を通して画像詳細と画像ノイズとの間のトレードオフを客観的且つ正確に選択することが可能になる。いくつかのアプローチにより、ユーザ及び/又は製造者から任意のノイズ補償パラメータ選択が除去され、再構成画質の堅牢性が提供される。非常に変化するカウントレベルに対するこのような堅牢性は、放射断層撮影において以前は得られていなかった。他の画像を用いてノイズ低減を支援することができ、このような追加の情報源をどの強度まで用いるべきかを決定することが非常に主観的である、マルチモーダルイメージングの文脈において、いくつかのアプローチが特に有用となり得る。
【0128】
説明したアプローチを用いる実施形態の利点は、例えば、以下を含むことができる。
【0129】
1)結果の画質の客観性における自信。適用するノイズ補償のレベルの自動選択は、ブートストラップ交差目的ノイズ除去パラメータ推定を介して再構成された画像が、データによってサポートされているのと同じくらいの詳細のみの低ノイズ画像であることを意味する。説明したアプローチによる方法が、データの統計的品質に従って、良質の画像に収束することを結果が示している。既存の方法は通常、ユーザ又は製造者が指定した様々なレベルのノイズ低減に依存し、通常、データによって必ずしもサポートすることができない、スキャンを誤って表している可能性がある画像特徴とトレードオフされる。
【0130】
2)任意のノイズ除去又はノイズ補償方法での実装のための余地。任意のノイズ除去手順、例えば、簡単なガウシアンカーネル平滑化方法、簡単な正則化(
図1に示すような)からマルチモーダルガイド付き正則化方法(
図3に示すような)及び人工ニューラルネットワークのような、機械学習からの方法の使用の「最適な」活用が可能になるフレームワーク内での実装が、いくつかのアプローチにより可能になる。これは、任意の事前構造情報を使いすぎて、誤解を招く及び/又は人工的に見える画像を与えることがよくある、マルチモーダルガイダンスに関連して特に重要となり得る。上に示したもののようなアプローチを用いることによって得られる結果は、データの質に自動的に適応する強度及びエッジ感度で事前画像ガイダンスをどのように用いることができるかを示しており、既存のガイド付き正則化方法に伴う大きな問題を回避している。
【0131】
3)簡単さ、余地及び実用性。製造者又はユーザは、所与のデータセットを再構成するノイズ補償パラメータを指定するタスクを最早有さないので、画像における情報のレベル(空間分解能及び詳細対ノイズの量)は主観的なパラメータ選択に依存しない。この方法は、実装するのが非常に簡単であり、任意の反復画像再構成方法を、任意の好ましいノイズ補償手順の埋め込みで調整することが可能であり、ノイズ補償の強度はデータ依存性となり、その方法によって自動的に求められる。異なる現状技術のノイズ補償方法の探求のための余地がかなりあり、測定データによってサポートされる強度でマルチモダリティベースのノイズ補償を実装することが可能になる。
【0132】
4)理論的魅力。再構成画像は、統計的に動機付けられた目的関数から求められたノイズ補償パラメータを用いる。これは、反復再構成における所与の更新ステップのために交差目的を最適化する画像であり、これは交差尤度(ポアソン又はガウシアン)であり得る。
【0133】
図1及び3における図から分かるように、説明したアプローチによる実施形態が、低から高ノイズレベルまでの、3つの異なるカウントレベルについて、3DリアルPETデータでうまく実装された。図示の例において、このアプローチは、MAP正則化を介した、そしてMRIガイド付きMAP正則化の場合のための(これによってブートストラップ交差目的によって制御される正則化のレベルで、事前分布において構造的画像が用いられる)ノイズ補償を用いて実装されている。
【0134】
2D及び4Dイメージング方法においていくつかのアプローチを実装することもできることが理解されよう。
【0135】
パラメータ推定が起こり、データにおけるノイズが性能限定因子である任意の逆問題に、説明したアプローチが適用可能であることがさらに理解されよう。主な例の商用用途は、医用イメージングの場合、特に、スキャン時間が限定され且つ注入作業が限定されることによりカウントが限定された(ノイズが多い)データにつながる、がん、心臓及び脳のための臨床及び前臨床イメージングにおける再構成のためのPET又はSPECTスキャナ、データ品質が低い(放射線被曝を減らすため、又は高速動的イメージングのため)ときはいつでも、解剖学的画像、血管造影画像を再構成する、低線量コンピュータ断層撮影(CT,computed tomography)、いくつかのMR画像がSNRの限定を被り、したがって、ノイズの多いk空間データを有する、低SNR磁気共鳴画像法(MRI,magnetic resonance imaging)シーケンス、を含む。
【0136】
医用イメージング以外では、ノイズの多いデータに悩まされている任意のパラメータ推定問題にいくつかのアプローチを用いることができる。このアプローチを適用することができる他の分野は、画像処理及びノイズ除去(例えば、写真及び画像ノイズ除去、ビデオノイズ除去)、非破壊検査(例えば、CT及びインピーダンストモグラフィ)、リモートセンシング(例えば、衛星画像及び地震画像)、天体物理学(例えば、マルチスペクトルイメージング)及びセキュリティイメージング(例えば、CT)を含む。
【0137】
交差検証法[3]及びブートストラップフィルタリング法[4]が知られている。既知の方法は、停止基準として交差検証に依存しており、これは、結果が空間的に変化する収束(空間的に変化する分解能及びノイズ)の影響を受けやすくなることを意味する。より最近の高度な交差検証法[5]では、限定された数の例のノイズ補償パラメータを事前選択すること、交差検証するデータのサブセットを指定すること、次いでノイズ補償パラメータの例のセットごとに全体の再構成を実行すること、が要求される。その結果、ノイズ補償パラメータの選択精度が低くなり、交差検証の目的でデータのサブセットの選択にも依存する。他のより高度な一般化された交差検証法[6]は、全変動のような正則化の固定インスタンスに依存しているので、柔軟性、余地及び一般的な適用可能性が提供されない。ブートストラップフィルタリングは、交差検証停止画像の前方投影を用いる。前方投影は、ブートストラップサンプルを生成する手段として用いられる。この既知の方法は、多数のブートストラップサンプルからの再構成及び期待値の発見を伴う。
【0138】
ここで説明したようなアプローチ及び実施形態は、次の点で既知のものとは異なる。
【0139】
いくつかのアプローチは、停止基準を伴わない、収束に対して1回のみ実行することができる方法に関連し得る。
【0140】
いくつかのアプローチは、ブートストラップデータセットが、交差検証された停止画像の前方投影からではなく、生の測定データのリサンプリングから直接導出されるようなものである。
【0141】
いくつかのアプローチは、交差検証のための複数のデータセット又はデータサブセットの選択ではなく、単一のブートストラップデータセットを用いることができるようなものである。
【0142】
いくつかのアプローチは、任意のノイズ除去手順を任意の又は各ステップで任意の反復再構成アルゴリズムに直接埋め込むことが可能になるようなものである。いくつかのアプローチは、更新ごとに任意のノイズ除去のパラメータ化を適応的且つ正確に最適化することができるようなものである。いくつかのアプローチは、更新ごとに任意のノイズ除去のパラメータ化を自動的且つ正確に最適化することができるようなものである。
【0143】
いくつかのアプローチは、正確に最適化されたノイズ低減パラメータを届けるために1つのみの反復再構成手順が含まれ、複数の再構成を実行し、次いで限定された数の事前選択ノイズ低減パラメータの中からの低精度選択のための交差検証によって遡及的に比較する必要がない。
【0144】
いくつかのアプローチがノイズ補償の可能性の範囲を開き、収集されたデータに応じてその使用を最適化することができることが理解されよう。ノイズ補償アプローチは、各反復ステップで、最適なカーネル幅を求めることができるガウシアン平滑化カーネルのように簡単なことも、再構成に含めるため高度なガイド付き平滑化(ここでも、測定データに従って具体的に最適化されたパラメータ化で)のように複雑なこともある。対照的に、[3]及び[4]におけるもののような既知の方法は、停止又は単一の「非線形」フィルタリング法に関係しており、これは、近似された複数のブートストラップMLEM結果の平均によって定義される。これにより1回限りの平均化プロセスが提供され、これは、未知の空間変化収束を有する、停止画像推定の中央使用によってさらに制約される。
【0145】
本明細書に記載のアプローチは、任意の標準的な反復画像再構成方法について実装することができ、例えば、1つだけの(又はより多い)ブートストラップされたリサンプリングされたデータセットの使用により、強力な現状技術のノイズ除去アルゴリズムを比較的簡単な画像再構成に直接埋め込むことが可能になる方法を提供する。いくつかのアプローチは、更新のたびに任意のノイズ除去の強度を自動的でデータ依存的且つ正確に最適化するためのメカニズムを提供する。
【0146】
本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して、本明細書に詳細に開示してきたが、本発明は正確な実施形態に限定されないこと、及び添付の請求項及びそれらの均等物によって定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって、その中で様々な変更及び修正を行うことができることが理解される。
【0147】
参考文献
[1]A. R. De Pierro (1995) A Modified Expectation Maximization Algorithm for Penalized Likelihood Estimation in Emission Tomography, IEEE Trans. Med. Imaging, vol. 14, no. 1, pp. 132-137
【0148】
[2]J. E. Bowsher et al (2004) Utilizing MRI Information to Estimate F18-FDG Distributions in Rat Flank Tumors, IEEE Nucl. Sci. Symp. Conf. Rec., vol. 4, 2004, pp. 2488-2492.
【0149】
[3]Coakley, K. J. (1991), A cross-validation procedure for stopping the EM algorithm and deconvolution of neutron depth profiling spectra IEEE Transactions on Nuclear Science Volume: 38, Issue: 1
【0150】
[4]Coakley, K. J. (1996), Bootstrap method for nonlinear filtering of EM-ML reconstructions of PET images. Int. J. Imaging Syst. Technol., 7: 54-61. doi:10.1002/(SICI)1098-1098(199621)7:1<54::AID-IMA7>3.0.CO;2-T
【0151】
[5]Zhang et al (2017) Regularization parameter selection for penalized-likelihood list-mode image reconstruction in PET Phys. Med. Biol. 62 5114
【0152】
[6]Xiongjun Zhang, Bahram Javidi, and Michael K. Ng (2017), Automatic regularization parameter selection by generalized cross-validation for total variational Poisson noise removal Applied Optics Vol. 56, Issue 9, pp. D47-D51