(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ウェブ検出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/188 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
B65H23/188
(21)【出願番号】P 2021576192
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004399
(87)【国際公開番号】W WO2021157715
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2020019780
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(72)【発明者】
【氏名】角田 和隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 英毅
(72)【発明者】
【氏名】高田 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】葉山 正樹
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273694(JP,A)
【文献】特開2007-276472(JP,A)
【文献】特開2007-137524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/188
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、
前記センサによる
、ロール・ツー・ロールで搬送されるウェブの幅方向の存在可能範囲の一部または全部にわたる所定範囲における検出結果に基づいて、
前記所定範囲のうち、前記ウェブの実際の存在範囲
がどこであるかを特定する制御装置と、を備える
ことを特徴とするウェブ検出装置。
【請求項2】
前記センサは、前記幅方向に走査することを特徴とする請求項1に記載のウェブ検出装置。
【請求項3】
前記センサは、前記存在可能範囲すべてにわたって走査することを特徴とする請求項2に記載のウェブ検出装置。
【請求項4】
ウェブに隣接並行するシートにウェブから所定の処理が施され、
前記制御装置は、シートが搬送される方向である搬送方向に見たときに、前記存在範囲に、前記シートのうち前記所定の処理が施される範囲である処理範囲が収まっているか否かを判定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のウェブ検出装置。
【請求項5】
前記シートには、塗布部分を規定するニスデータに基づいて紫外線硬化性ニスが塗布され、紫外線硬化性ニスが塗布された部分に前記所定の処理が施され、
前記制御装置は、前記ニスデータに基づいて、前記処理範囲を特定することを特徴とする請求項4に記載のウェブ検出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記幅方向において、前記処理範囲と重ならない前記存在範囲の部分の幅を特定することを特徴とする請求項4または5に記載のウェブ検出装置。
【請求項7】
ウェブは、フィルムに箔が積層された箔保持フィルムであり、
前記所定の処理は、ウェブから前記シートへの箔の転写であることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載のウェブ検出装置。
【請求項8】
前記センサは、ウェブが巻き出される巻出しロールの径方向外側に設けられる測距センサであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のウェブ検出装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記センサにより検出される前記センサから前記巻出しロールの外周面までの距離に基づいてウェブの残量を推定することを特徴とする請求項8に記載のウェブ検出装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記巻出しロールを支持する巻出し軸の径を考慮して、前記巻出しロールの残量を推定することを特徴とする請求項9に記載のウェブ検出装置。
【請求項11】
前記センサは、送り出し中のウェブを検出することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のウェブ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートにニスを塗布するニス塗布装置と、シート上のニスに、ロール・ツー・ロールで搬送されるウェブから箔を転写させる箔押し装置と、を備える印刷システムが知られている。箔押し装置としては、例えば特許文献1に記載されるような箔押し装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、箔押し装置を備える印刷システムの使い勝手を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のウェブ検出装置は、センサと、センサによる、ロール・ツー・ロールで搬送されるウェブの幅方向の存在可能範囲の一部または全部にわたる所定範囲における検出結果に基づいて、前記所定範囲のうち、前記ウェブの実際の存在範囲がどこであるかを特定する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、箔押し装置を備える印刷システムの使い勝手を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態の印刷システムを模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態の印刷システムを模式的に示す図である。
【
図8】
図1の箔押し装置と、箔押し装置に向けて搬送されるシートとを示す平面図である。
【
図9】第1センサによる検出結果の一例を示す図である。
【
図10】第2センサによる検出結果の一例を示す図である。
【
図11】
図11(a)、(b)は、制御装置による判定シーンの一例を示す図である。
【
図12】
図12(a)~(d)は、制御装置による判定シーンの別の例を示す図である。
【
図13】
図13(a)~(d)は、箔押しの動作を時系列で示す図である。
【
図14】
図14(a)~(d)は、箔押しの動作を時系列で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0009】
図1、2は、実施の形態に係るウェブ検出装置が用いられる印刷システム10を模式的に示す図である。
図1は側面図であり、
図2は平面図である。印刷システム10は、シートを搬送しながらシートに所定の印刷を施す装置である。以降、シートが搬送される方向(
図1、2において右から左に向かう方向)を「搬送方向」、搬送方向と直交する方向(
図1において紙面に直交する方向、
図2の上下方向)を「幅方向」と呼ぶ。また、シートまたはシート上の所定範囲の「搬送方向」の下流側の端縁を「先端」、上流側の端縁を「後端」と呼ぶ。
【0010】
印刷システム10は、シートを1枚ずつ給紙する給紙装置12と、1枚ずつ給紙されるシートにニスを塗布するニス塗布装置14と、ニスのタック性を利用してシート上のニスに箔を転写する箔押し装置16と、シートを蓄積するスタッカ18と、印刷システム10を統合的に制御する制御装置20と、を備える。給紙装置12、ニス塗布装置14、箔押し装置16、スタッカ18は、搬送方向に上流側(
図1、2では右側)からこの順に一列に並ぶ。制御装置20は、給紙装置12、ニス塗布装置14、箔押し装置16およびスタッカ18とネットワーク2を介して接続される。ウェブ検出装置は、印刷システム10の構成要素のうち、制御装置20と、箔押し装置16の第1センサ68および第2センサ70とによって構成される。
【0011】
給紙装置12は、フィーダ22と、レジスト部24と、コロナ処理部26と、を備える。フィーダ22は、テーブル28と、吸着ヘッド30と、を含む。テーブル28にはシートが積載される。テーブル28は、昇降可能に構成される。吸着ヘッド30は、テーブル28に積載されたシートを上から順に1枚ずつ送り出す。
【0012】
レジスト部24は、レジスト基準ガイド32に突き当てることによって、フィーダ22が送り出したシートの幅方向の位置を揃える。
【0013】
コロナ処理部26は、搬送路34の上方に配置される電極36と、電極36と上下で対向するように搬送路34の下方に配置される誘電ローラ38と、を含む。コロナ処理部26は、電極36と誘電ローラ38との間のコロナ放電により、シートの表面改質を行う。なお、エア吸引部40によってシートを搬送路34に吸着させた状態で搬送すると、電極36とシートとの距離が一定となり、コロナ放電が安定する。エア吸引部40は、不図示の排気用ブロワーの吸引口の一つを配置して負圧を発生させるものであるが、吸引ファンを配置して負圧を発生させる構成としてもよい。誘電ローラ38は、コロナ処理部26の筐体に対して回転可能でもよいし、固定でもよい。さらに、電極36との間にコロナ放電を生じさせるものであれば、その形状はローラ状に限らない。
【0014】
ニス塗布装置14は、シートセンサ42と、一対のCCDセンサ44と、ニス吐出部46と、半硬化用紫外線ランプ48と、本硬化用紫外線ランプ50と、を含む。一対のCCDセンサ44、ニス吐出部46、半硬化用紫外線ランプ48、本硬化用紫外線ランプ50は、この順に上流側から並ぶように配置される。CCDセンサ44はCMOSセンサであってもよい。図示の例では、ニス塗布装置14は3つのニス吐出部46を含んでいるが、これには限定されず、ニス塗布装置14は幅方向の全域にわたって延在する1つのニス吐出部46を含んでもよいし、2つまたは4つ以上のニス吐出部46を含んでもよい。半硬化用紫外線ランプ48および本硬化用紫外線ランプ50には紫外線を照射するLEDを用いるが、紫外線を照射するものであれば、電球や蛍光灯などの他の光源であってもよい。光源は出力調整が可能になっている。
【0015】
シートセンサ42は、給紙装置12から給紙されたシートを検出する。
【0016】
ニス吐出部46は、特に限定しないがライン型のインクジェットヘッドである。ニス吐出部46は、シートセンサ42によるシートの先端エッジの検出をトリガとして、ニスデータに従って紫外線硬化性ニスを吐出し、シートに紫外線硬化性ニスを塗布する。ニスデータは、シートのどこにニスを塗布するのかを示すデータである。
【0017】
給紙装置12が給紙するシートには、予め、下地画像と、下地画像の位置を特定する基準となる複数のレジストレーションマークと、が印刷されていてもよい。ニス塗布装置14は、シートにおけるニスの塗布部分を規定するニスデータに従って、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布するものであり、例えば下地画像に重なるように、ニスを塗布してもよい。
【0018】
ここで、シートの下地画像がずれていたり歪んでいたりすることもあり得る。したがって、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布する場合は、ずれや歪みを考慮してニスデータを補正しておく必要がある。例えば、CCDセンサ44が、シートセンサ42によるシートの検出をトリガとしてシートを撮像し、制御装置20がCCDセンサ44による撮像データを画像解析し、複数のレジストレーションマークの理論位置との相違により、レジストレーションマークに囲まれた領域のニスデータを補正してもよい。なお、当該補正には、本出願人が先に出願した特開2016-083898号公報に記載の方法を適用できる。
【0019】
半硬化用紫外線ランプ48は、シート上のニスに出力が比較的抑制された紫外線を照射し、ニスを半硬化させる。半硬化は、ニスの流動性を低下させつつも完全には硬化させない程度に軽く(例えばさらに硬化させることができる状態に)硬化させることをいう。
【0020】
半硬化状態のニスは、箔押し装置16において本硬化される。シートに箔押ししないときは、通常、半硬化用紫外線ランプ48をオフにする。しかし、箔押ししないときであっても半硬化用紫外線ランプ48を使用してもよい。例えば、シート上に塗布したニスが滲みやすい場合には、半硬化用紫外線ランプ48をオンにし、半硬化させておくことによって滲みを抑える効果がある。
【0021】
本硬化用紫外線ランプ50は、シートに塗布されたニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。シートに箔押しするときは、本硬化用紫外線ランプ50をオフにする。
【0022】
つまり、シートに箔押しするときは、半硬化用紫外線ランプ48によってニスを半硬化させ、箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66によって半硬化状態のニスを本硬化させる。この場合、本硬化用紫外線ランプ50はオフにする。シートを箔押ししないすなわちシートにニスを塗布するだけのときは、本硬化用紫外線ランプ50でニスを本硬化させる。この場合、半硬化用紫外線ランプ48および箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66はオフにする。なお、上述したように、半硬化用紫外線ランプ48は、箔押ししないときでもオンにすることがある。また、箔押し用紫外線ランプ66の光源には紫外線を照射するLEDを用いるが、紫外線を照射するものであれば他の光源でもよい。
【0023】
図3は、ニス吐出部46によってシートS上に塗布され、半硬化用紫外線ランプ48によって半硬化されたニス層100、102を示す図である。100a、102aは硬化した硬化部分、100b、102bは硬化が十分ではない未硬化部分である。硬化部分100a、102aは各々ニス層100、102の内部を占め、未硬化部分100b、102bは各々ニス層100、102の表層部を占める。外気に触れる表層部の方が、酸素阻害の影響により硬化しにくいためである。
【0024】
図3(a)(b)はともに、ニス層100、102がすべて硬化しない程度に紫外線の出力を抑制して形成された半硬化状態であるが、
図3(a)の場合は
図3(b)の場合よりも、半硬化用紫外線ランプ48の出力が相対的に強いので、ニス層102よりもニス層100の方が硬化が表層部の近くにまで達している。したがってニス層100はニス層102よりも形状が安定し、表層部は流動はしないものの完全に硬化はしておらず、タック性を有した状態になっている。一方で、ニス層102はニス層100に対し、表層部のタック性はほとんど無く流動性を有し、特に上方の部分の流動性が高い。したがって半硬化後も上方のニスが流動し、徐々に上面が平らになるレベリング効果を発揮する。
【0025】
半硬化状態のニスは、本硬化用紫外線ランプ50または箔押し装置16において、改めて紫外線が照射され、本硬化される。本硬化とは、ニス層100、102の全ての部分が完全に硬化されることをいう。半硬化状態のニス層100、102とも、シートSに接着している部分はそのほとんどが硬化部分100a、102aが占めるため、接着部が安定する。したがって、本硬化までの間に、ニス層100、102がシートS上に滲んでシート面方向(矢印A方向)に広がるのを抑制できるため、シートSの面方向の形状が安定する。
【0026】
この半硬化用紫外線ランプ48の位置を、シートの搬送方向に沿って移動可能に構成し、ニス吐出部46との距離を調整可能としてもよい。ニス吐出部46によりニスを塗布してから半硬化までの間はニスが広がり、より高いレベリング効果が得られる。半硬化用紫外線ランプ48とニス吐出部46との距離を調整可能とすることにより、ニスの広がりを止めるタイミングを調整可能とし、レベリングと形状の安定のバランスを調整することができる。ニス層が厚い場合はニスの体積が大きい分ニスの広がりが大きいため、半硬化用紫外線ランプ48をニス吐出部46に近づけ、早めにニスの広がりを抑制するのが良い。ニス層が薄い場合は、半硬化用紫外線ランプ48をニス吐出部46から遠ざけて、レベリングの時間を十分にとるのが良い。また、文字等の比較的シャープさが要求される場合は、半硬化用紫外線ランプ48をニス吐出部46に近づけ、早めにニスの広がりを抑制するのが良い。
【0027】
箔押し装置16は、ウェブ52をロール・ツー・ロールで搬送する。ウェブ52は、フィルムに箔(例えば金属箔)が保持された箔保持フィルムである。箔押し装置16では、シート上の半硬化状態のニスのタック性を利用して、当該ニスにウェブ52が保持する箔を接着させる。そして、箔がウェブ52に保持され、かつ、シート上のニスに接着した状態で、箔押し用紫外線ランプ66によって、箔が接着した半硬化状態のニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。これにより、ウェブ52が箔を保持する力よりも本硬化したニスが箔を接着する力の方が強い状態となる。この状態でシートとウェブ52とを分離させることで、ウェブ52に保持されていた箔を、シート上のニスが塗布された部分に転写できる。
【0028】
スタッカ18は、箔押し装置16から搬出されたシートを蓄積する。
【0029】
制御装置20は、例えばPCなどの情報処理端末である。制御装置20は、印刷ジョブの定義についての入力を受け付ける。制御装置20は、所定のジョブ管理画面を表示し、当該ジョブ管理画面を介して、ジョブの定義についての入力を受け付けてもよい。ジョブの定義には、例えば、印刷を施すシートの枚数(印刷部数)、印刷を施すシートのシートサイズ、ニスデータ、箔押しの有無、が含まれる。制御装置20は、ジョブの定義に基づいて、給紙装置12、ニス塗布装置14および箔押し装置16を制御する。
【0030】
制御装置20は、ニス吐出部46によりニスが吐出されたシートに対して紫外線を照射する工程で、使用する紫外線ランプの組み合わせが異なる、第1、第2、第3モードのいずれかを選択する。
【0031】
第1モードでは、ニス吐出部46によりニスが吐出されたシートに対し、半硬化用紫外線ランプ48と、箔押し用紫外線ランプ66により紫外線を照射し、本硬化用紫外線ランプ50をオフとする。第2モードでは、ニス吐出部46によりニスが吐出されたシートに対し、半硬化用紫外線ランプ48と、本硬化用紫外線ランプ50により紫外線を照射し、箔押し用紫外線ランプ66をオフとする。第3モードでは、ニス吐出部46によりニスが吐出されたシートに対し、本硬化用紫外線ランプ50のみにより紫外線を照射し、半硬化用紫外線ランプ48と、箔押し用紫外線ランプ66をオフとする。
【0032】
第1モードは、箔押し装置16において箔押しを行う場合に選択される。つまりシートに箔押しするときは、半硬化用紫外線ランプ48によってニスを半硬化させる。半硬化用紫外線ランプ48の出力は第2モードよりも相対的に強めとする。ニス層は
図3(a)に示すように、表層部にタック性を有した状態で、その形状が安定する。このタック性を利用して、箔押し装置16においてニス層上面に箔が接着される。
図3(a)に示すように未硬化状態が表層部だけであるので、箔が接着されても、未硬化部分が押しつぶされてシート面方向に広がることが無く、ニス層形状、特にシート面方向の形状が安定する。ニス層に箔が接着された状態で、箔押し用紫外線ランプ66によって半硬化状態のニスを本硬化させ、箔を確実にニス層に接着させる。その結果、箔押し後のシート上に形状の安定した箔が得られる。
【0033】
第2モードは、箔押ししない場合に選択される。第2モードでも、半硬化用紫外線ランプ48によってシート上のニスを半硬化させる。そして本硬化用紫外線ランプ50により本硬化される。箔押し装置16はシートが通過するだけで、箔押しは行われない。スタッカ18には、シートのニスを塗布すべき塗布部分にニス層が形成されたシートが排出される。半硬化用紫外線ランプ48の出力は、第1モードよりも相対的に弱めとする。ニス層は
図3(b)に示すように、表層部上方に比較的多くの未硬化部分102
bを残した状態となる一方で、シートSに接着している部分はそのほとんどが硬化部分102
aが占め、接着部が安定する。したがって、ニスが広がるのを抑制でき、その形状が安定するとともに、本硬化用紫外線ランプ50まで搬送される間に、上方の、未硬化部分のニスが流動し、上面が平らになるレベリング効果を発揮するので、上面が平滑なニス層が得られる。
【0034】
また、第2モードでは紫外線の照射を半硬化紫外線ランプ48と本硬化用紫外線ランプ50とに分担しているので、一つの光源により本硬化させる第3モードに比べて、紫外線によるシートへの熱照射も分散させることができる。したがって、熱に敏感なシートがカール等の変形を起こしたり、下地画像が熱で変色あるいはトナーが融解するなどの不具合を抑制することができる。
【0035】
第3モードは、箔押ししない場合に選択される。第3モードでは、半硬化用紫外線ランプ48によるシート上のニスの半硬化は行われず、本硬化用紫外線ランプ50による本硬化のみが行われる。箔押し装置16はシートが通過するだけで、箔押しは行われない。スタッカ18には、シートの所定位置に所定形状のニス層が形成されたシートが排出される。半硬化が行われないので、本硬化用紫外線ランプ50まで搬送される間のレベリング効果がより高くなり、より上面が平滑なニス層が得られる。
【0036】
第1、第2、第3モードを選択可能としたことにより、シートにニスを塗るだけの場合においても、より高品質なニス層を形成可能な装置が得られる。
【0037】
制御装置20は、入力された印刷ジョブの定義に基づき、モードを選択する。印刷ジョブが箔押しを含むものであれば、第1モードが選択される。印刷ジョブが箔押しを含まないものであれば、第2または第3モードが選択される。
【0038】
第2モードで得られたニス層は、半硬化を経ているので、ニス層がシート面方向に滲んで広がるのを防ぐ効果がある。したがって特に広がりの回避と、ニス層のシート面方向の形状の安定を必要とするジョブに適している。
【0039】
例えば、ニス層の厚みが厚い場合は、その分ニスが広がりやすい。したがって、ニス層の厚みが所定以上である領域を含む場合に第2モードを選択してもよい。また、ニス層の塗布すべき領域の面積が小さいオブジェクトを含む場合、あるいはニス層のシート面方向の最小の幅が狭い場合、隣接するニス層との間隔が小さい部分を含む場合は、ニス層の広がりによってニスを塗布した領域の形状が崩れやすい。したがって、印刷ジョブのうち、シート上のニスの塗布部分を規定するニスデータを画像解析し、ニスを塗布すべきオブジェクトの面積が所定以下、ニス層のシート面方向の最小の幅が所定以下、隣接するニス層との間隔が所定以下である場合等に、第2モードを選択してもよい。また、印刷ジョブがニスの種類またはシートの種類、あるいはその両方を含む場合は、広がりが発生しやすい種類のニスまたはシート、あるいはその組み合わせの場合に、第2モードを選択してもよい。そしてこれらの第2モード選択の条件に当てはまらない場合は、優れたレベリング性が得られる第3モードが選択される。
【0040】
制御装置20は、第1、第2、第3モードのいずれを選択するかについて、ユーザによる入力を受け付け、ユーザが入力したモードを選択してもよい。あるいは、印刷ジョブに箔押しが含まれる場合のみ第1モードを自動選択し、印刷ジョブに箔押しが含まれない場合には、第2、第3モードのいずれを選択するかについて、ユーザによる入力を受け付けてもよい。箔押しを行う場合に第1モードを選択せざるを得ないが、第2、第3モードは実際の印刷における広がり具合に応じた選択を要するケースが考えられるからである。制御装置20が、自動選択する場合と同様のアルゴリズムで選択候補としたモードを、ユーザの入力画面において推奨モードとして表示するようにしてもよい
【0041】
以上が印刷システム10の基本構成である。
【0042】
変形例として、印刷システム10は、給紙装置12に代えて、シートに下地画像とレジストレーションマークを印刷するプリンタを備え、プリンタから1枚ずつシートを給紙してもよい。
【0043】
また、印刷システム10は、箔押し装置16とスタッカ18との間に、シートを切断したり綴じたりする後処理装置や、箔表面を保護するための第2のニス塗布部、表面保護目的の合紙挿入機、シートを所定形状に打抜いてカートン材料等を作成する打ち抜き機、合い紙などの表面保護目的の後処理機等を備えてもよい。
【0044】
つづいて、箔押し装置16の構成について詳細に説明する。
図4~7は、箔押し装置16を示す図である。
図4は斜視図であり、
図5、6は側面図であり、
図7は平面図である。
図5は、ニップローラ等が上昇位置にあるときを示し、
図6は、ニップローラ等が下降位置にあるときを示す。
【0045】
箔押し装置16は、複数の搬送ローラ54と、巻出し軸56と、巻取り軸58と、複数のガイドローラ60(
図4、7では不図示)と、第1ニップローラ62と、第2ニップローラ64と、箔押し用紫外線ランプ66と、第1センサ68と、第2センサ70と、シート検知センサ77と、を備える。
【0046】
複数の搬送ローラ54は、紙押さえコロ72、ニップローラ62,64または硬化後搬送ローラ73との間でシートを挟みつつ、シートを搬送方向下流側(
図5、
図6では左側)に向けて搬送する。
【0047】
紙押さえコロ72は、
図4に示すように球状であり、一つの搬送ローラ54に対して幅方向に離間した一対の紙押さえコロ72が配置される。一対の紙押さえコロ72のうちの少なくとも一方は、搬送するシートの幅に応じて幅方向に移動可能な構成となっている。この構成により、搬送するシートの幅方向の両端部のみを紙押さえコロ72と搬送ローラ54とで挟んで搬送する。シートの搬送方向において、ウェブ52とシートとが接触する箔転写領域(第1ニップローラ62と第2ニップローラ64との間の領域)よりも上流側のシートは、上面に半硬化状態のニスを保持している。半硬化状態のニスに搬送部材が接触すると、ニスの塗布状態が乱れたり、搬送部材が汚れたりする不具合が生じるおそれがある。これに対して、紙押さえコロ72がシートの幅方向の両端部のみを押さえることで、この不具合の発生を抑止できる。なお本実施形態では、シートをレジスト基準ガイド32に突き当ててシートの幅方向の位置を揃える。したがって、幅方向において、レジスト基準ガイド32が設けられた側を基準としてシートが搬送される。紙押さえコロ72のうち、幅方向でレジスト基準ガイド32と同じ側に存在する紙押さえコロ72は、幅方向への移動は行わないので、これを球状では無くローラ形状としてシートの搬送性を高めてもよい。
【0048】
一方、硬化後搬送ローラ73は、
図4に示すように、幅方向に延びる一本の回転軸に対して複数のローラ部73aが配置された部材である。複数のローラ部73aは、幅方向(軸方向)に移動しない構成となっている。箔転写領域よりも下流側のシートの上面のニスは、箔押し用紫外線ランプ66によって本硬化されているため、硬化後搬送ローラ73のローラ部73aが接触しても上述した不具合が生じることなく、シートを搬送できる。
【0049】
巻出し軸56は、未使用のウェブのロール(以下、巻出しロール74と呼ぶ)を支持する。巻出し軸56は、フリクションシャフトにより構成される。複数のガイドローラ60、第1ニップローラ62および第2ニップローラ64は、ウェブの経路を規定する。第2ニップローラ64は、第1ニップローラ62よりも搬送方向下流側に位置する。
【0050】
第1ニップローラ62と第2ニップローラ64との間で、ウェブ52とシートとが接触する。このとき、シート上の半硬化状態のニスに、ウェブ52から箔が転写される。なお、転写中は、シート上のニスとウェブ52とが一時的に接着するため、ウェブ52はシートと同じ速度で送られる。なお、第2ニップローラ64を回転駆動させ、シートと同じ速度でウェブ52を送るようにしてもよい。ここで、ニップローラ62,64を回転駆動させる駆動源を設け、対向する搬送ローラ54との間で表面移動速度の速度差が生じると、箔を保持するウェブ52であってニップローラ62,64に接触するウェブ52と、箔が転写されるシートであって搬送ローラ54に接触するシートとの間に速度差が生じ、箔にしわが生じる原因となる。これに対し本実施の形態では、ニップローラ62,64を回転駆動させる駆動源を設けず、ニップローラ62,64がウェブ52の移動に対して従動回転する構成とすることで、箔にしわが生じることを抑制している。
【0051】
巻取り軸58は、使用済みのウェブ52、すなわちフィルムおよびフィルムに残存した箔をロール状に巻き取る。以下、巻取り軸58が巻き取ったロール状のウェブ52を、巻取りロール76と呼ぶ。巻取り軸58は、フリクションシャフトにより構成される。フリクションシャフトは、その軸方向(すなわち幅方向)の位置により、回転速度を異ならせることが可能な構造を有する。巻取り軸58は、不図示の駆動源に駆動されて回転する。
【0052】
ガイドローラ60のうちの少なくとも一つに、その回転数を検出するためのエンコーダ(不図示)が取り付けられる。エンコーダが取り付けられたガイドローラ60は、表面に摩擦係数の高い材質を用いる等、ウェブ52との滑りを少なくすることが望ましい。箔転写領域では、ウェブ52は、その外周面の箔がシートまたは搬送ローラ54の表面に接触し、これらの表面との連れ回りによって、シートの搬送方向の下流側に移動する。制御装置20は、エンコーダによる検出結果に基づいてウェブ52の移動速度を算出し、巻出しロール74からのウェブ52の送り出し速度が算出されたウェブ52の移動速度よりも遅くなるように巻出し軸56の回転数を制御する。このとき、巻出し軸56の回転による送り出しよりもウェブ52の移動速度の方が速くなるが、フリクションシャフトからなる巻出し軸56の周面が駆動入力軸に対して回転し、周面が駆動入力軸よりも速く回転することで、ウェブ52を張った状態を保ちつつ、箔転写領域でのシートの移動速度と同速となるように、ウェブ52を送り出すことができる。
【0053】
また、制御装置20は、ウェブ52の移動速度よりも巻取りロール76によるウェブ52の巻取り速度が速くなるように巻取り軸58の回転数を制御する。このとき、巻出し軸56の回転による巻取りよりもウェブ52の移動速度の方が遅くなるが、フリクションシャフトからなる巻取り軸58の周面が駆動入力軸に対して回転し、周面に対して駆動入力軸が空回りする状態となることで、ウェブ52を張った状態を保ちつつ、箔転写領域でのシートの移動速度と同速となるように、ウェブ52を巻き取ることができる。
【0054】
箔押し用紫外線ランプ66は、第1ニップローラ62と第2ニップローラ64との間のウェブ経路の上方に設けられる。
【0055】
第1ニップローラ62、第2ニップローラ64、箔押し用紫外線ランプ66および一部のガイドローラ60はそれぞれ、
図5の上昇位置と、
図6の下降位置との間を上下動可能に構成される。上昇位置は、ウェブ52が搬送中のシートと接触し得ない位置である。下降位置は、ウェブ52が搬送中のシートであってウェブ52に隣接並行するシートと接触し得る位置である。制御装置20は、シートに箔押ししない場合(すなわちニスを塗布するだけの第2、第3モードの場合)はニップローラ等を上昇位置に位置させ、シートに箔押しする場合(第1モードの場合)はニップローラ等を下降位置に位置させる。
【0056】
シート検知センサ77は、箔転写領域での転写タイミングを検出するセンサである。シート検知センサ77は、検知位置でのシートの有無を検知するものであり、検知結果に基づいて、シートの先端の通過タイミングや後端の通過タイミングを検出できる。ニップローラ等が上昇位置にあるときに、箔押しを行うシートの先端がシート検知センサ77の検知位置を通過したことを検出した後の所定のタイミングで、ニップローラ等を下降位置に向けて移動させる。また、箔押しを行うシートの後端がシート検知センサ77の検知位置に通過したことを検出した後、必要に応じて、所定のタイミングでニップローラ等を下降位置から上昇位置に向けて移動させる。
【0057】
本実施の形態では、第1ニップローラ62と、ウェブ52の搬送経路の上流側において第1ニップローラ62に隣接する一つのガイドローラ60と、ウェブ52の搬送経路の下流側において第2ニップローラ64に隣接する一つのガイドローラ60とが上昇位置と下降位置との間を移動する。これらの部材が上昇位置から下降位置に移動すると、巻出しロール74から巻取りロール76までのウェブ52の移動経路が長くなる。このとき、巻出し軸56の駆動入力軸に対して周面がより速く回転し、移動経路が長くなった分のウェブ52が巻き出される。一方、上述した部材が下降位置から上昇位置に移動すると、巻出しロール74から巻取りロール76までのウェブ52の移動経路が短くなる。このとき、巻取り軸58の駆動入力軸が空回りすることなく周面がより速く回転し、移動経路が短くなった分のウェブ52を巻き取り、ウェブ52が撓むことを抑止できる。
【0058】
第1センサ68は、測距センサであり、巻出しロール74の径方向外側に設けられる。第1センサ68は、好ましくは図示のように、搬送方向において巻出しロール74と巻取りロール76との間に設けられる。この場合、箔押し装置16の搬送方向のコンパクト化が図れる。
【0059】
第1センサ68は、好ましくはレーザ式測距センサであるが、これに限られず赤外線センサ、静電容量式、超音波式、高周波レーター式、渦電流式等公知の測距センサを使うことができる。
【0060】
第1センサ68は、幅方向に走査する。第1センサ68は特に、ウェブ52(巻出しロール74)の存在可能範囲すべてにわたって走査する。存在可能範囲は、ウェブ52を設けることが可能な幅方向の範囲である。この例では、第1センサ68は、幅方向に往復動することで、幅方向に走査する。なお、第1センサ68は、所定の軸周りで回転することで、幅方向に走査してもよい。第1センサ68は、少なくとも、後述の判定および残量推定のいずれかを実行する際に幅方向に走査すればよい。
【0061】
第2センサ70は、送り出し中のウェブ52、別の言い方をすると搬送経路上のウェブ52、さらに別の言い方をすると、巻出しロール74から巻き出されたウェブ52であって巻取りロール76に巻き取られる前のウェブ52、を検出可能に設けられる。第2センサ70は、送り出し中のウェブ52を検出可能であれば、反射型センサであっても、測距センサであっても、その他のセンサであってもよい。送り出し中のウェブ52を検出することで、ウェブ52が張り掛けられているか否かを検出することが可能となる。
【0062】
ここで、ウェブ52が切れたとき、巻取りロール76に巻き取られなかったウェブ52は搬送経路内に残留しうる。しかしながら、ウェブ52の搬送経路のうち、ウェブ52が鉛直方向上側に向かって移動する部分では、切れたときに巻取りロール76に巻き取られなかったウェブ52は張力を失って落下するため、ウェブ52が残留しにくい。したがって、第2センサ70は、好ましくは、
図5、
図6に示すように、鉛直方向上側に向かって移動する搬送経路上のウェブ52を検出可能に設けられる。この場合、ウェブ52が切れてウェブ52が張り掛けられていない状態にも関わらず、第2センサ70がウェブ52を検出してしまうことを抑止できる。搬送方向における第2センサ70の配置としては、
図5、6に示すように、巻出しロール74と巻取りロール76との間に第2センサ70を設けることが好ましい。これにより、箔押し装置16の搬送方向のコンパクト化が図れる。
【0063】
第2センサ70は、超音波式センサである。第2センサ70は箔転写領域を通過した後の、もはや箔を保持していないウェブ52も検出可能とする必要がある。箔をシート上に転写し、もはや箔を保持していないウェブ52は、多くの場合透明であるため、光センサでは検出が困難なことがある。そのため、光を透過するか否かに関わらずウェブ52の物理的な存在に基づいて検出が可能な超音波式や、静電容量式が望ましい。一方で、幅方向の両端付近に残った箔を検出対象としたり、箔転写後も透明でないウェブ52を利用するなどして、光センサを使用してもよい。
【0064】
第2センサ70は、幅方向に走査する。第2センサ70は特に、ウェブ52の存在可能範囲すべてにわたって走査する。この例では、第2センサ70は、幅方向に往復動することで、幅方向に走査する。なお、第2センサ70は、所定の軸周りで回転することで、幅方向に走査してもよい。第2センサ70は、第1センサ68と同様に、少なくとも、後述の判定および残量推定のいずれかを実行する際に幅方向に走査すればよい。
【0065】
図8は、箔押し装置16と、箔押し装置16に向けて搬送されるシートSとを示す平面図である。ユーザは、シートSに箔押しする場合、搬送方向αに見たとき(すなわち搬送方向αの上流側から搬送方向αに沿うように搬送方向αの下流側を見たとき)に、ウェブ52の幅方向の存在範囲Rwに処理範囲Rpが収まるように、ウェブ52を設ける。すなわち、幅方向に座標軸を定義するとき、ウェブ52の存在範囲Rwの座標範囲に、処理範囲Rpの座標範囲が収まるように、ウェブ52を設ける。言い換えると、処理範囲Rpの座標範囲の全体が、ウェブ52の存在範囲Rwの座標範囲に重なるように、ウェブ52を設ける。処理範囲Rpの座標範囲の少なくとも一部がウェブ52の存在範囲Rwの座標範囲に重ならない場合、当該少なくとも一部に対応する処理範囲のニスには箔が転写されない。
【0066】
ここで、処理範囲Rpは、シートSのうち、箔押し処理、すなわちウェブ52からシートSに箔を転写する処理を施す幅方向の連続する範囲である。処理範囲Rcは、シートSのうち、箔押し処理を施す搬送方向の範囲である。処理範囲Rpは、幅方向の連続する範囲がシートS上に複数存在する場合には各々個別の範囲を示す。処理範囲Rcは、箔を転写する処理を施す搬送方向の連続する範囲がシートS上に複数存在する場合には、その搬送方向下流側の処理範囲の先端から、搬送方向上流側の後端までの範囲である。先端非処理部Rcfは、シートSの先端から、処理範囲Rcの先端までの範囲を示す。後端非処理部Rcrは、処理範囲Rcの後端から、シートSの後端までの範囲を示す。制御装置20は、本実施の形態では、ニスデータに基づいて処理範囲Rp、Rcを特定する。つまり、制御装置20は、本実施の形態では、ニスが塗布されたところに箔が転写されるものとして、処理範囲Rp、Rcを特定する。なお、制御装置20は、ニスデータとは別のデータにより特定される箔押しする幅方向の範囲を、処理範囲Rp、Rcとして特定してもよい。
【0067】
複数(N)の処理範囲Rp_i(i=1,…N)が存在する場合、制御装置20は、隣接する処理範囲Rp_k(k=1,…N-1)と処理範囲Rp_k+1との間隔Dkが所定の閾値DTH以下の場合、処理範囲Rp_kと処理範囲Rp_k+1とそれらの間の範囲Rb_kとをまとめて1つの処理範囲Rpとして特定する。
図8の例では、制御装置20は、2つの処理範囲Rpを特定する。
【0068】
また、ウェブ52の幅方向の存在範囲Rwは、ウェブ52の幅方向の存在可能範囲Rmaxにおける実際の存在範囲である。存在範囲Rwは、第1センサ68または第2センサ70による検出結果に基づいて特定できる。
【0069】
図9は、第1センサ68による検出結果の一例を示す図である。第1センサ68は、上述したように測距センサである。したがって、第1センサ68による検出結果は、幅方向の各位置における、第1センサ68から巻出し軸56の外周面または巻出しロール74の外周面までの距離Lを示す。当該検出結果は、巻出しロール74の外径を示すデータともいえる。制御装置20は、第1センサ68の検出結果が示す距離Lが巻取り軸58までの距離L0よりも短い連続する範囲を、ウェブ52の幅方向の存在範囲Rwと特定することができる。
【0070】
図10は、第2センサ70による検出結果の一例を示す図である。この例では、第2センサ70は反射型センサである。第2センサ70による検出結果は、幅方向の各位置における反射光の受光量を示す。ウェブ52が存在する位置では、反射光の受光量が高くなる。制御装置20は、第2センサ70の検出結果が示す受光量が所定の閾値よりも高い連続する範囲を、ウェブ52の幅方向の存在範囲Rwと特定することができる。
【0071】
つづいて、制御装置20による箔押し装置16の制御について詳細に説明する。
【0072】
(巻出しロールの取り付け判定)
制御装置20は、巻出し軸56に巻出しロール74が取り付けられているか否かを判定する。制御装置20は、この判定を、ジョブの開始操作が入力されたとき、巻出し軸56と巻取り軸58との間にウェブ52を這わした後にウェブ52を張るためのボタンが操作されたとき、ニスデータを読み込んだとき、あるいは当該判定の実行ボタンが操作されたときに実施する。後述のウェブ52の張り掛け判定、存在範囲判定についても同様である。
【0073】
具体的には制御装置20は、第1センサ68の検出結果が示す距離Lが巻取り軸58までの距離L0よりも短い連続する範囲に、巻出しロール74が取り付けられている(すなわち存在する)と特定する。
図8の例では、制御装置20は、巻出し軸56に2つの巻出しロール74が取り付けられていると特定する。例えば制御装置20は、巻出しロール74が1つも取り付けられていない場合に、表示または音声により、その旨をユーザに警告してもよい。また例えば、制御装置20は、ニスデータに基づいて処理範囲を特定し、特定した巻出しロール74の数と特定した処理範囲の数とが一致しない場合に、表示または音声により、その旨をユーザに警告してもよい。巻出しロール74の数が処理範囲の数よりも少ないときに警告を発することにより、巻出しロール74の取り付け忘れを防止できる。また、巻出しロール74の数が処理範囲の数よりも多いときに警告を発することにより、次のジョブでは使用しない巻出しロール74の取り外し忘れを防止できる。
【0074】
(ウェブ52の張り掛け判定)
制御装置20は、巻出し軸56に取り付けられた巻出しロール74が巻出し軸56から巻取り軸58にわたって張り掛けられているか否か判定する。具体的には制御装置20は、ウェブ52の幅方向の存在範囲Rwについて、第1センサ68の検出結果により特定されるウェブ52(巻出しロール74)の存在範囲と、第2センサ70の検出結果により特定されるウェブ52の存在範囲とが、搬送方向に見たときに一致しているか否かを判定する。すなわち、制御装置20は、幅方向に座標軸を定義するとき、第1センサ68の検出結果に基づくウェブ52(巻出しロール74)の存在範囲Rwの座標範囲と、第2センサ70による検出結果に基づくウェブ52の存在範囲Rwの座標範囲とが一致するか否かを判定する。両者が一致しない場合、巻出し軸56に巻出しロール74が取り付けられているもののウェブ52が張られていない、具体的にはウェブ52を張り忘れている、あるいはウェブ52が切れていると考えられる。この場合、制御装置20は、表示または音声により、その旨をユーザに警告する。これにより、ウェブ52の張り掛け忘れを防止できる。また、ウェブ52が切れたときに、第1センサ68と第2センサ70とで検出した存在範囲Rwが一致しない異常を検出することができ、ウェブ52が切れた状態でジョブが実行されることを防止できる。さらに、次のジョブで不要な存在範囲Rwに位置するウェブ52について、巻出し軸56と巻取り軸58との一方のみから取り外し、他方の外しを忘れた場合に、上記異常を検出することで、外し忘れの状態でジョブが実行されることも防止できる。
【0075】
(ウェブ52の存在範囲判定)
制御装置20は、搬送方向に見たときに、存在範囲Rwに処理範囲Rpが収まっているか否かを判定する。すなわち、制御装置20は、幅方向に座標軸を定義するとき、存在範囲Rwの座標範囲に、処理範囲Rpの座標範囲が収まっているか否かを判定する。言い換えると、制御装置20は、処理範囲Rpの座標範囲の全体が存在範囲Rwの座標範囲と重なっているか否かを判定する。存在範囲Rwは、第1センサ68の検出結果によって特定される存在範囲であっても、第2センサ70の検出結果によって特定される存在範囲であってもよい。処理範囲Rpの座標範囲の少なくとも一部が存在範囲Rwの座標範囲に重ならない場合、当該少なくとも一部に対応する処理範囲のニスには箔が転写されない。この場合、制御装置20は、表示または音声により、その旨をユーザに警告する。なお、制御装置20は、ジョブの開始操作が入力されたときに当該判定を行い、存在範囲Rwに処理範囲Rpが収まっていなかった場合、ジョブを開始せずに、警告する。これにより、搬送方向に見たときに処理範囲Rpが存在範囲Rwの幅方向外側にはみ出すのを防止でき、処理範囲Rpのニス全体に箔を転写できる。
【0076】
また、制御装置20は、搬送方向に見たときに、処理範囲Rpと重ならない存在範囲Rwの部分の幅を特定する。すなわち、制御装置20は、幅方向に座標軸を定義するとき、処理範囲Rpの座標範囲と重ならない存在範囲Rwの座標範囲の幅を特定する。制御装置20は、当該幅が所定の閾値幅以上の場合、ウェブ52(箔)の幅方向の無駄が多いものとして、表示または音声により、その旨をユーザに警告する。これにより、箔の無駄を低減することが可能となる。
【0077】
(ウェブ52の残量推定)
制御装置20は、第1センサ68による検出結果に基づいて、ウェブ52の残量を推定する。ウェブ52の残量を推定することで、ユーザは、シートへの箔の転写漏れを抑止するための適切な対応をとることが可能になる。制御装置20は、残量の推定を、例えば、ジョブの定義が入力されたとき、ジョブの開始操作が入力されたとき、または、ジョブの実行中の所定のタイミング(例えば所定の周期)に実行する。
【0078】
例えば制御装置20は、巻出しロール74の残量として、そのときに設定されているジョブの条件(シートサイズ)における処理可能なシートの枚数を推定してもよい。制御装置20は、巻出しロール74の径、巻出し軸56の径、ウェブ52の厚み、1枚のシートの箔押しに使用されるウェブ52の長さをパラメータとする計算式に基づいて、処理可能なシートの枚数を推定すればよい。1枚のシートの箔押しに使用されるウェブ52の長さは、例えば処理範囲Rcに所定の余裕長さβを加えた値とするが、シート1枚の長さとしてもよい。制御装置20は、推定した処理可能なシートの枚数がジョブにおける印刷部数よりも少なければ、すなわちウェブ52の残量が足りなければ、表示または音声により、その旨をユーザに警告する。制御装置20は、ジョブの開始操作が入力されたときの残量判定においてウェブ52の残量が足りないと判定した場合、ジョブを開始せずに残量不足を警告してもよく、残量不足を警告しつつもジョブを開始してもよく、残量不足を警告しつつ、ジョブをそのまま開始するか否かユーザに選択させてもよい。また、制御装置20は、残量不足と判定した場合、残りのウェブ52で処理可能なシートの枚数を、表示または音声によりユーザに通知してもよい。この場合、ユーザに通知するシートの枚数は、上述のようにして推定した処理可能なシートの枚数であってもよく、あるいは推定した処理可能な枚数に所定の安全率(0.8)を乗じた枚数であってもよい。
【0079】
巻出しロール74の径は、第1センサ68から巻取り軸58の中心軸まで距離LCと、第1センサの検出結果が示す距離Lとの差から特定される。距離LCは、制御装置20が予め保持しておけばよい。巻出し軸56の径、ウェブ52の厚み、および1枚のシートの箔押しに使用されるウェブ52の長さは、所定のタイミングにユーザに入力させればよい。
【0080】
また例えば制御装置20は、巻出しロール74の残量として、巻出しロール74の径方向の厚みを特定(推定)してもよい。制御装置20は、第1センサ68から巻出し軸56までの距離L0と、第1センサ68の検出結果が示す距離Lとの差から、巻出しロール74の径方向の厚みを特定すればよい。制御装置20は、特定した径方向の厚みが所定の厚み閾値以下であれば、すなわちウェブ52の残量が残り少なければ、表示または音声により、その旨をユーザに警告する。制御装置20は、ジョブの実行中の残量判定においてウェブ52の残量が残り少ないと判定した場合、ジョブを中止または停止しつつ、残量が残り少ないことを警告してもよく、ジョブを中止および停止せずに、残量が残り少ないことを警告してもよく、残量が残り少ないことを警告しつつ、ジョブを中止または停止するか否かユーザに選択させてもよい。
【0081】
厚み閾値は、ユーザが入力してもよく、制御装置20が予め保持していてもよい。
【0082】
また、巻出し軸56の径rが異なれば、巻出しロール74の径方向の厚みが同じでも、ウェブ52も残っているウェブ52の長さは異なる。したがって、制御装置20は、巻出し軸56の径に応じて厚み閾値を補正してもよい。例えば制御装置20は、巻出し軸56の径が大きいほど厚み閾値を高くし、径が小さいほど厚み閾値を小さくしてもよい。
【0083】
図11(a)、(b)は、制御装置20による判定シーンの一例を示す図である。
図11(a)、(b)では、各処理範囲Rpに対応する巻出しロール74が設けられ、各巻出しロール74のウェブ52は張り掛けられており、各処理範囲Rpは対応するウェブ52の存在範囲Rwに収まっている。
【0084】
図12(a)~(d)は、制御装置20による判定シーンの別の例を示す図である。
図12(a)では、2つの処理範囲Rpのうちの一方の処理範囲Rpに対応する巻出しロール74が設けられていない。この場合、制御装置20は、巻出しロールの取り付け判定およびウェブ52の存在範囲判定の少なくとも一方の判定の結果、ユーザに警告する。
【0085】
図12(b)では、搬送方向αに見たときに、2つの処理範囲Rpのうちの一方の処理範囲Rpが対応する存在範囲Rwに収まっていない。この場合、制御装置20は、ウェブ52の存在範囲判定の結果、ユーザに警告する。
【0086】
図12(c)では、2つの巻出しロール74のうちの一方の巻出しロール74のウェブ52が切れていて張り掛けられていない。この場合、制御装置20は、ウェブ52の張り掛け判定の結果、ユーザに警告する。
【0087】
図12(d)では、搬送方向αに見たときに、処理範囲Rpと重ならない存在範囲Rwの部分の幅Wが閾値幅WTH以上である。
図12(e)では、搬送方向αに見たときに、2つの存在範囲Rwのうちの一方に対応する処理範囲Rpが存在しない。言い換えると、搬送方向αに見たときに、2つの存在範囲Rwのうちの一方の存在範囲Rwは、処理範囲Rpとまったく重ならない。これらの場合、制御装置20は、ウェブ52の存在範囲判定の結果、ユーザに警告する。
【0088】
(箔押しの動作)
図13(a)~(d)、
図14(a)~(d)は、箔押しを行うとき(第1モード)での箔押しの動作を時系列で示す図である。
図13(a)は、1枚目のシートS1の先端がシート検知センサ77に到達した段階である。この段階ですでに、シートS1は給紙装置12から1枚ずつ給紙され、ニス塗布装置においてニスが塗布され、半硬化用紫外線ランプ48により半硬化が行われた状態である。シートS1には先端側から順に、先端非処理部Rcf、処理範囲Rc、後端非処理部Rcrが形成されている。先端非処理部Rcf、後端非処理部Rcrには、ニスが塗布されていない。処理範囲Rcは、ニスが塗布された領域が存在する範囲である。ニスが塗布された領域が搬送方向に連続する範囲がシートS上に複数存在する場合には、その搬送方向下流側の処理範囲の先端から、搬送方向上流側の後端までの範囲である。第1ニップローラ62と第2ニップローラ64は上昇位置にある。箔転写領域Fは箔を保持したウェブ52がシートSと接触し、箔がシートに転写される部分である。シートS1は搬送ローラ54(
図5、6参照)と紙押さえコロ72により矢印方向に移動している。
箔押し用紫外線ランプ66は消灯している。
【0089】
図13(b)は、シートS1が移動し、処理
範囲Rcの先端が箔転写領域Fに入る直前に、第1ニップローラ62と第2ニップローラ64とが非図示の駆動機構により下降位置に下降したところである。下降のタイミングは、搬送ローラ54の駆動機構に介在させたエンコーダによりパルスを取得し、シート検知センサ77がシートS1の先端を検知してから、所定パルスP1を計数した段階とする。所定パルスP1は、ニスデータから取得された先端非処理部Rcfの搬送方向の長さに基づき決められる。シートS1がさらに移動すると、半硬化状態のニスのタック性によりウェブ52と接着し、搬送ローラ54により移動するシートS1につられてウェブ52も移動を開始する。
【0090】
図13(c)は、処理
範囲Rcの先端が、
箔押し用紫外線ランプ66の照射範囲Uに入る直前に達したところである。このタイミングで、
箔押し用紫外線ランプ66が点灯する。点灯のタイミングは、シート検知センサ77がシートS1の先端を検知してから、所定パルスP2を計数した段階とする。この所定パルスP2は、ニスデータから取得された先端非処理部Rcfの搬送方向の長さに基づき、シート上の処理
範囲Rc(ニス塗布部分)が
箔押し用紫外線ランプ66(紫外線照射部)の照射範囲
Uに到来する直前のタイミングで
箔押し用紫外線ランプ66(紫外線照射部)を点灯するように予め定められる。
【0091】
続いて、
図13(d)に示すように、シートS1はウェブ52と重なった状態で、半硬化状態のニスが
箔押し用紫外線ランプ66に照射されながらさらに移動する。この照射によりニスは本硬化される。本硬化されたニスにより、ウェブ52の箔とシートS1とが強く接着する。処理
範囲Rcの先端寄りでは既にウェブ52が離間しているが、シートS1上のニスが塗布された領域には、本硬化されたニスにより接着した箔が残っている。
【0092】
図14(a)は、処理
範囲Rcの後端が、
箔押し用紫外線ランプ66の照射範囲Uから出た直後である。このタイミングで、
箔押し用紫外線ランプ66が消灯する。消灯のタイミングは、シート検知センサ77がシートS1の先端を検知してから、所定パルスP3を計数した段階とする。この所定パルスP3は、ニスデータから取得された先端非処理部Rcfと、処理
範囲Rcの搬送方向の長さに基づき、シート上の処理
範囲Rc(ニス塗布部分)が
箔押し用紫外線ランプ66(紫外線照射部)の照射範囲
Uを通過した直後のタイミングで
箔押し用紫外線ランプ66(紫外線照射部)を消灯するように予め定められる。
【0093】
続いて、
図14(b)に示すように、シートS1はウェブ52と重なった状態でさらに移動する。
【0094】
図14(c)は、処理
範囲Rcの後端が、箔転写領域Fから出た直後に、第1ニップローラ62と第2ニップローラ64とが非図示の駆動機構により上昇位置に上昇したところである。上昇のタイミングは、シート検知センサ77がシートS1の先端を検知してから、所定パルスP4を計数した段階とする。所定パルスP4は、ニスデータから取得された先端非処理部Rcfと、処理
範囲Rcの搬送方向の長さに基づき決められる。シートS1とウェブ52が離間するため、シートS1の移動につられてのウェブ52移動が停止する。第1ニップローラ62と第2ニップローラ64が上昇しても、ウェブ52は巻取り軸58の駆動回転により巻取りロール76に巻き取られるので、ウェブ52がたるむことはない。
【0095】
こうしてニスが塗布された部分に箔が接着されたシートS1がスタッカ18(
図1,2参照)に排出され、シートS1の箔押し処理が完了する。
【0096】
続いて
図14(d)に示すように、次のシートS2の先端がシート検知センサ77に検知される。この後シートS2についても
図13(b)~(d)、
図14(a)~(d)と同様の動作が行われる。ジョブデータに定められた枚数の処理が完了するまでこの動作を繰り返す。すなわち各々のシートごとに、処理
範囲Rcの先端が、
箔押し用紫外線ランプ66の照射範囲Uに入る直前に達したタイミングで、
箔押し用紫外線ランプ66が点灯するとともに、処理
範囲Rcの後端が、
箔押し用紫外線ランプ66の照射範囲Uから出た直後のタイミングで、
箔押し用紫外線ランプ66が消灯する。
【0097】
箔押し用紫外線ランプ66の紫外線は、処理範囲Rcにおけるウェブ52の箔とシートSとの間の半硬化ニスを本硬化させることにより、箔をシートSに確実に接着させるためのものである。
【0098】
しかし、ウェブ52が停止している状態で紫外線を所定時間以上照射すると、熱によりウェブ52が変形あるいは溶解してしまうおそれがある。これを回避するため、ウェブ52が停止している期間、あるいは停止している可能性がある期間では、箔押し用紫外線ランプ66を消灯させておく必要がある。
【0099】
ウェブ52は、第1ニップローラ62、第2ニップローラ64が下降位置にあり、搬送ローラ54との間で、ウェブ52とシートSとが重なった状態で挟まれているときに移動する。
【0100】
第1ニップローラ62、第2ニップローラ64が下降位置にあっても、シートSがウェブ52と接触していない場合は、ウェブ52と搬送ローラ54との間には、シートSが入るための隙間の分だけ離間しているため、ウェブ52は移動しない可能性がある。
【0101】
したがって箔押し用紫外線ランプ66は、第1ニップローラ62、第2ニップローラ64を下降位置とし、シートSがウェブ52に接触した後、処理範囲Rcが照射領域Uに入る前に点灯するのが望ましい。また、箔押し用紫外線ランプ66は、処理範囲Rcが照射範囲Uから出た後、第1ニップローラ62、第2ニップローラ64を上昇位置としてシートSとウェブ52とが離間する前に消灯するのが望ましい。
【0102】
本実施形態では、照射範囲Uの上流端が箔転写領域F(第1ニップローラ62、第2ニップローラ64の間)の上流端よりも下流側に設けられているので、移動するシートSとウェブ52とが接触してから、処理範囲Rcが照射範囲Uに入るまでの間に、箔押し用紫外線ランプ66を点灯させることができる。また、照射範囲Uの下流端が箔転写領域F(第1ニップローラ62、第2ニップローラ64の間)の下流端よりも上流側に設けられているので、処理範囲Rcが照射範囲Uから出てから、移動するシートSとウェブ52とを離間させるまでの間に、箔押し用紫外線ランプ66を消灯させることができる。
【0103】
なお、本実施形態では、ウェブ52は移動するシートSに接触することによって移動するが、別途ウェブ52を移動させるための駆動を有する場合は、その駆動のオンオフのタイミングに合わせ、ウェブ52が停止している間は箔押し用紫外線ランプ66を消灯してもよい。
【0104】
また、本実施形態では、シートSに処理範囲Rcが1つ形成されている例を説明したが、ニスを塗布する領域がシートSの先端側と後端側に互いに大きく離れている場合は、それぞれを別の処理範囲Rcとして、シートS1枚に対して処理範囲Rcを複数設定し、各々の処理範囲Rcに対応して箔押し用紫外線ランプ66の点灯、消灯制御を行ってもよい。具体的には、処理範囲Rcの先端が照射範囲Uに到達する直前に点灯させ、処理範囲Rcの後端が照射範囲Uから出た直後に消灯させる、という制御を、複数の処理範囲Rcの各々について個別に行ってもよい。そうすることにより、シートSに紫外線を照射する時間を短縮することができ、紫外線の熱によるシートSの変形等の不具合を抑制することができる。
【0105】
さらに、先端側に存在する処理範囲Rcと、それよりも後端側に存在する処理範囲Rcとが、搬送方向に隣接しており、かつ、先端側の処理範囲Rcの後端と後端側の処理範囲Rcの先端との間隔が、箔転写領域Fの搬送方向長さよりも長い場合は、先端側の処理範囲Rcの後端が箔転写領域Fを出た直後から、後端側の処理範囲Rcの先端が箔転写領域Fに入る直前までの間、第1ニップローラ62と、第2ニップローラ64とを上昇位置としてもよい。第1ニップローラ62と、第2ニップローラ64とが上昇位置にある間はウェブ52が送られず停止するので、箔押し用紫外線ランプ66は、先端側の処理範囲Rcの後端が照射範囲Uを出た後、第1ニップローラ62と、第2ニップローラ64とが上昇するまでの間に消灯させ、その後第1ニップローラ62と、第2ニップローラ64とが下降した後、後端側の処理範囲Rcの先端が照射範囲Uに入るまでの間に再点灯させるのがよい。そうすることにより、送られるウェブ52の長さを抑制することができ、箔の節約につながる。
【0106】
また、緊急停止や、ジャム等、装置の異常停止によりウェブ52が停止した場合は、本硬化用紫外線ランプを直ちに消灯してもよい。
【0107】
また、箔押し用紫外線ランプ66の紫外線を停止中のウェブ52に照射しても、ごく短時間であれば耐えられるため、停止中の照射時間が所定時間を超えないタイミングで、箔押し用紫外線ランプ66を点灯または消灯してもよい。
【0108】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0109】
(変形例1)
実施の形態では、第1センサ68および第2センサ70がウェブ52の存在可能範囲すべてにわたって走査する場合について説明したが、第1センサ68および第2センサ70の少なくとも一方は、存在可能範囲の一部のみを走査してもよい。例えば、第1センサ68および第2センサ70の少なくとも一方は、処理範囲Rpに基づく座標範囲のみ、具体的には処理範囲Rpの座標範囲のみ、あるいは処理範囲とその両側のマージンとを含む座標範囲のみ、を走査してもよい。
【0110】
(変形例2)
センサ68,70は、毎回、幅方向に走査する必要はない。例えば、ジョブの実行中であれば、それまでの走査でウェブ52の幅方向の存在範囲Rwは特定されている。したがって、ジョブの実行中は、搬送方向に見たときに当該存在範囲Rwに重なる位置に、センサ68,70を固定してもよい。巻出しロール74が複数設けられているすなわち存在範囲Rwが複数ある場合は、所定のタイミングで、例えばシートを1枚箔押しするごとに、別の存在範囲Rwに位置するようにセンサ68,70の位置を移動させてもよい。
【0111】
(変形例3)
実施の形態では、第1センサ68および第2センサ70が幅方向に走査する場合について説明したが、これには限定されず、第1センサ68および第2センサ70の少なくとも一方は、複数の検出素子が幅方向に連続的に並んだセンサアレイ(ラインセンサ等)であってもよい。
【0112】
(変形例4)
実施の形態では、箔押し装置16が2つのセンサ68,70を備える場合について説明したが、箔押し装置16が備えるウェブ52の有無を検知するセンサは1つであってもよい。
【0113】
例えば、箔押し装置16は、第1センサ68のみを備えてもよい。この場合、ウェブ52が張られているか否かはユーザが判定すればよい。実施の形態のように自動で判定する場合と比べれば煩わしいタスクではあるが、ウェブ52が張られているか否かはひと目で分かるため、ユーザにも容易に判定できる。
【0114】
また例えば、箔押し装置16は、第2センサ70のみを備えてもよい。この場合、ユーザが、巻出しロール74を適宜確認し、巻出しロール74(すなわちウェブ52)の残量を目視で確認すればよい。あるいはまた、ユーザが、処理後のシートを適宜確認し、ウェブ52の残量が切れた場合にいち早く気づくようにすればよい。
【0115】
また例えば、箔押し装置16は、第1センサ68および第2センサ70の代わりに、巻出しロール74を検出可能な第3センサを備えてもよい。制御装置は、第3センサの検出結果に基づいて、ウェブ52の存在範囲を特定すればよい。この場合、ウェブ52が張られているか否か、ウェブ52の残量が十分であるか否かは、ユーザが目視で確認すればよい。
【0116】
(変形例5)
実施の形態では、
図12(e)の例のように、搬送方向に見たときに、存在範囲Rwが処理範囲Rpとまったく重ならない巻出しロール74が存在すればユーザに警告した。本変形例では、当該巻出しロール74が巻出し軸56に取り付けられているだけで張り掛けられていなければ、ユーザに警告しなくてもよい。この場合、ウェブ52の張り掛け判定は実施しなくてもよい。
【0117】
(変形例6)
第2センサ70に測距センサを採用し、第2センサ70の向きを変えて巻取りロール76の径を検出してもよい。制御装置20は、その検出値により、巻出し軸56の駆動回転数を補正してもよい。具体的には、経が大きいほど回転数を遅くしてもよい。
【0118】
(変形例7)
第1センサ68,第2センサ70に加えて、巻取りロール76の外周面との距離を測定して外径推定が可能な第4センサを設けてもよい。制御装置は、推定した外径が所定の閾値を上回った場合に(具体的には、巻取りロール76の外周面との距離が所定の閾値を下回った場合に)、巻き取りロール76が満杯であるとして警告を出してもよい。巻き取りロール76においても、ウェブ52はもはや箔を保持していない可能性があるため、第4センサは超音波式または静電容量式の測距センサとするのが望ましい。一方で、箔が必ず残る部分を検出対象としたり、箔転写後も透明でないウェブ52を利用するなどして、光センサを使用してもよい。まだ第4センサも幅方向に走査可能とし、巻取り軸58に複数のウェブ52がかけられた場合に、各々の外径推定を行ってもよい。また、この第4センサに代えて、巻き取られたウェブ52の径が所定以上になると光軸を塞ぐように、光軸を幅方向に略平行に配置した光センサを配置してもよい。
【0119】
(変形例8)
実施の形態では、本発明に係るウェブ検出装置を備え、箔が積層された箔保持フィルムであるウェブからシートに対して所定の処理を施す処理装置として、ウェブ52に保持された箔をニスの接着力によってシートに転写するコールド箔と呼ばれる処理を行う構成について説明した。処理装置が行う所定の処理としては、コールド箔に限らない。例えば、ウェブに保持された箔を熱と圧力とによってシートに転写するホット箔と呼ばれる処理でもよい。また、箔を転写するものに限らず、ウェブ状のインクリボンのインクをシートに転写する処理でもよい。
【0120】
さらに、本発明に係るウェブ検出装置を適用する装置としては、ウェブがシートに対して所定の処理を施すものに限らない。ウェブの幅方向の所定の範囲におけるウェブの有無を検出する必要があるものであればよい。例えば、シート以外の物品に対してウェブから箔やインク等を転写するものでもよい。また、ウェブが保持する箔やインク等を転写するものに限らず、ウェブによって物品表面をクリーニングする装置や研磨する装置等にも用いることができる。
本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された態様を以下に記載する。
[態様1]
センサと、
前記センサによる検出結果に基づいて、ロール・ツー・ロールで搬送されるウェブの幅方向の存在可能範囲における実際の存在範囲を特定する制御装置と、を備えるウェブ検出装置。
[態様2]
前記センサは、前記幅方向に走査することを特徴とする態様1に記載のウェブ検出装置。
[態様3]
前記センサは、前記存在可能範囲すべてにわたって走査することを特徴とする態様2に記載のウェブ検出装置。
[態様4]
ウェブに隣接並行するシートにウェブから所定の処理が施され、
前記制御装置は、シートが搬送される方向である搬送方向に見たときに、前記存在範囲に、前記シートのうち前記所定の処理が施される範囲である処理範囲が収まっているか否かを判定することを特徴とする態様1から3のいずれかに記載のウェブ検出装置。
[態様5]
前記シートには、塗布部分を規定するニスデータに基づいて紫外線硬化性ニスが塗布され、紫外線硬化性ニスが塗布された部分に前記所定の処理が施され、
前記制御装置は、前記ニスデータに基づいて、前記処理範囲を特定することを特徴とする態様4に記載のウェブ検出装置。
[態様6]
前記制御装置は、前記幅方向において、前記処理範囲と重ならない前記存在範囲の部分の幅を特定することを特徴とする態様4または5に記載のウェブ検出装置。
[態様7]
ウェブは、フィルムに箔が積層された箔保持フィルムであり、
前記所定の処理は、ウェブから前記シートへの箔の転写であることを特徴とする態様4から6のいずれかに記載のウェブ検出装置。
[態様8]
前記センサは、ウェブが巻き出される巻出しロールの径方向外側に設けられる測距センサであることを特徴とする態様1から7のいずれかに記載のウェブ検出装置。
[態様9]
前記制御装置は、前記センサにより検出される前記センサから前記巻出しロールの外周面までの距離に基づいてウェブの残量を推定することを特徴とする態様8に記載のウェブ検出装置。
[態様10]
前記制御装置は、前記巻出しロールを支持する巻出し軸の径を考慮して、前記巻出しロールの残量を推定することを特徴とする態様9に記載のウェブ検出装置。
[態様11]
前記センサは、送り出し中のウェブを検出することを特徴とする態様1から6のいずれかに記載のウェブ検出装置。
【符号の説明】
【0121】
10 印刷システム、 52 ウェブ、 68 第1センサ、 70 第2センサ。