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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】繰り返しモーメント発生装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/34 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
G01N3/34 S
G01N3/34 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022514111
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2021014813
(87)【国際公開番号】W WO2021206125
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2020069940
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正浩
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-059642(JP,U)
【文献】実開昭55-046244(JP,U)
【文献】実開昭61-105843(JP,U)
【文献】実開昭57-199084(JP,U)
【文献】実開昭58-163855(JP,U)
【文献】特公昭52-032264(JP,B1)
【文献】特開2007-057429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0139344(US,A1)
【文献】特開昭57-070428(JP,A)
【文献】特開平11-156296(JP,A)
【文献】米国特許第2591444(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返しねじりモーメントを伝達するための主軸と、前記主軸を回転自在に保持する二つの主軸受け部材と、前記主軸の軸心方向に離れた位置にそれぞれ前記主軸の軸心と直交する状態で前記主軸に取り付けられた二つの梃子部材と、前記梃子部材が対向する領域において前記主軸を挟んで対称をなす位置にそれぞれ前記主軸と平行をなす状態で前記梃子部材に回転自在に軸支された軸体に設けられた主偏心重錘ロータと、
前記主軸受け部材と連続する部材に設けられた二対の副軸受け部材の間にそれぞれ前記主軸と平行をなす軸体を中心に回転自在に設けられた副偏心重錘ロータと、
二つの前記主偏心重錘ロータ並びに二つの前記副偏心重錘ロータを同期して回転させる駆動手段と、を備え、
二つの前記主偏心重錘ロータの重心の偏心方向がそれぞれの軸心を中心に互いに180度異なり、
二つの前記副偏心重錘ロータの重心の偏心方向がそれぞれの軸心を中心に互いに180度異なり、
且つ、一方の前記主偏心重錘ロータの重心の偏心方向と、当該主偏心重錘ロータと前記主軸に対して同じ側に位置する前記副偏心重錘ロータの重心の偏心方向と、がそれぞれの軸心を中心に互いに180度異なる繰り返しモーメント発生装置。
【請求項2】
二つの前記主偏心重錘ロータの回転によって発生する二つの遠心力が互いに同一の大きさであって且つ作用方向が180度逆方向であり、二つの前記副偏心重錘ロータの回転によって発生する二つの遠心力が互いに同一の大きさであって且つ作用方向が180度逆方向である請求項1記載の繰り返しモーメント発生装置。
【請求項3】
二つの前記主偏心重錘ロータの回転によって発生する二つの遠心力と二つの前記遠心力の作用線間距離の積で定義される偶力と、二つの前記副偏心重錘ロータの回転によって発生する二つの遠心力と前記二つの遠心力の作用線間距離の積で定義される偶力と、が互いに同一の大きさであって且つ回転方向が逆である請求項1または2記載の繰り返しモーメント発生装置。
【請求項4】
二つの前記主軸受け部材並びに二対の前記副軸受け部材を、前記主偏心重錘ロータの軸体の軸心と、前記副偏心重錘ロータの軸体の軸心と、が互いに平行をなすようにテーブルに設けた請求項1~3の何れかの項に記載の繰り返しモーメント発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体に繰り返しモーメントを負荷して材料の疲労強度特性を試験する疲労試験機において、供試体に繰り返しモーメントを負荷する手段として使用可能な繰り返しモーメント発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の捻り疲労試験機における繰り返しモーメント発生手段として、本発明者らは特許文献1において「例えば、インバータモータで回転駆動された偏心カムと梁部材とを組み合わせた機構やリンク機構を採用することができる」旨、提案している。
【0003】
一方、捻り疲労試験機とは異なるが、本発明に関連する従来技術として、例えば、特許文献2に記載された「振動疲労試験機」や特許文献3に記載された「疲労試験機」などがある。
【0004】
特許文献2に記載された「振動疲労試験機」は「モータで不平衡振り子を回転させることにより振動を発生させて、試料ホルダーに装着した試料に負荷を与えるしくみ」を備えている。また、引用文献3に記載された「疲労試験機」は「偏心重錘を回転軸芯まわりに回転させるとき、この回転軸芯と垂直方向に発生する振動を試験片に伝え試験片に繰り返し荷重を与える」機能を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-64508号公報
【文献】特開平6-337233号公報
【文献】実開昭58-163855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3などに記載されている従来の疲労試験機においては、供試体に繰り返し捻り荷重や軸荷重を負荷する手段として、供試体に接続された部材で偏心重錘を回転させることにより軸体に繰り返しモーメントや軸振動を発生させる機構が採用されている。しかし、試験中の疲労試験機には偏心重錘の回転で発生する遠心力によって上下左右の方向に力が繰り返し作用するので、比較的大きな振動と騒音が発生する。
【0007】
従って、例えば、50Nm程度のモーメント容量の汎用的な疲労試験機の場合、振動を強制的に抑えるために、重い土台(例えば、コンクリートブロック)の上に疲労試験機を固定する必要があり、この結果、実際に使用されている疲労試験機は1トン・クラスの大型・重量物となっているのが実状である。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、疲労試験機の小型化、軽量化並びに静音化を実現可能な繰り返しモーメント発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る繰り返しモーメント発生装置は、
繰り返しねじりモーメントを伝達するための主軸と、前記主軸を回転自在に保持する二つの主軸受け部材と、前記主軸の軸心方向に離れた位置にそれぞれ前記主軸の軸心と直交する状態で前記主軸に取り付けられた二つの梃子部材と、前記梃子部材が対向する領域において前記主軸を挟んで対称をなす位置にそれぞれ前記主軸と平行をなす状態で前記梃子部材に回転自在に軸支された軸体に設けられた主偏心重錘ロータと、
前記主軸受け部材と連続する部材に設けられた二対の副軸受け部材の間にそれぞれ前記主軸と平行をなす軸体を中心に回転自在に設けられた副偏心重錘ロータと、
二つの前記主偏心重錘ロータ並びに二つの前記副偏心重錘ロータを同期して回転させる駆動手段と、を備え、
二つの前記主偏心重錘ロータの重心の偏心方向がそれぞれの軸心を中心に互いに180度異なり、
二つの前記副偏心重錘ロータの重心の偏心方向がそれぞれの軸心を中心に互いに180度異なり、
且つ、一方の前記主偏心重錘ロータの重心の偏心方向と、当該主偏心重錘ロータと前記主軸に対して同じ側に位置する前記副偏心重錘ロータの重心の偏心方向と、がそれぞれの軸心を中心に互いに180度異なることを特徴とする。
【0010】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、二つの前記主偏心重錘ロータの回転によって発生する二つの遠心力が互いに同一の大きさであって且つ作用方向が180度逆方向であり、二つの前記副偏心重錘ロータの回転によって発生する二つの遠心力が互いに同一の大きさであって且つ作用方向が180度逆方向であることが望ましい。
【0011】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、二つの前記主偏心重錘ロータの回転によって発生する二つの遠心力と二つの前記遠心力の作用線間距離の積で定義される偶力と、二つの前記副偏心重錘ロータの回転によって発生する二つの遠心力と前記二つの遠心力の作用線間距離の積で定義される偶力と、が互いに同一の大きさであって且つ回転方向が逆であることが望ましい。
【0012】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、二つの前記主軸受け部材並びに二対の前記副軸受け部材を、前記主偏心重錘ロータの軸体の軸心と、前記副偏心重錘ロータの軸体の軸心と、が互いに平行をなすようにテーブル部材に設けることができる。
【0013】
なお、前記繰り返しモーメント発生装置においては、下記の構成要件を具備することも可能であり、これによって装置の簡素化とコンパクト化を実現することができる。
(1)二つの前記主偏心重錘ロータの回転中心間の距離と、二つの前記副偏心重錘ロータの回転中心間の距離と、を同一とする。
(2)二つの前記主軸受け部材をテーブル上に起立状に設け、二つの前記副軸受け部材を前記テーブルの下面に垂下状に設ける。
(3)二つの前記主偏心重錘ロータの回転中心並びに二つの前記副偏心重錘ロータの回転中心が、仮想長方形若しくは仮想正方形の四つの頂点に位置するように配置する。
(4)二つの前記主偏心重錘ロータの回転面並びに二つの前記副偏心重錘ロータの回転面が同一の仮想平面上に位置するように配置する。
(5)前記主偏心重錘ロータ並びに前記副偏心重錘ロータの形状、構造及びサイズを同一とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、疲労試験機の小型化、軽量化並びに静音化を実現可能な繰り返しモーメント発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態である繰り返しモーメント発生装置を示す一部省略斜視図である。
図2図1に示す繰り返しモーメント発生装置の主軸付近を拡大して示す一部省略斜視図である。
図3図1に示す繰り返しモーメント発生装置における主偏心重錘ロータ並びに副偏心重錘ロータの回転状態を示す一部省略説明図である。
図4図1に示す繰り返しモーメント発生装置における主偏心重錘ロータ並びに副偏心重錘ロータの回転状態を示す一部省略説明図である。
図5図1に示す繰り返しモーメント発生装置における主偏心重錘ロータ並びに副偏心重錘ロータの回転状態を示す一部省略説明図である。
図6図1に示す繰り返しモーメント発生装置における主偏心重錘ロータ並びに副偏心重錘ロータの回転状態を示す一部省略説明図である。
図7図4に示す状態における不釣り合い力の相殺作用を示す一部省略説明図である。
図8】その他の実施形態である繰り返しモーメント発生装置を示す一部省略斜視図である。
図9図8の一部拡大図である。
図10図8に示す繰り返しモーメント発生装置の一部省略平面図である。
図11】その他の実施形態である繰り返しモーメント発生装置を示す一部省略平面図である。
図12図16に示す繰り返しモーメント発生装置で使用する正逆微動回転弾性軸受を示す一部省略斜視図である。
図13図12中の矢線A方向から見た正逆微動回転弾性軸受の一部省略正面図である。
図14図12中の矢線B方向から見た正逆微動回転弾性軸受の一部省略側面図である。
図15図12中の矢線C方向から見た正逆微動回転弾性軸受の一部省略平面図である。
図16図12に示す正逆微動回転弾性軸受を使用した繰り返しモーメント発生装置の一部省略斜視図である。
図17図16に示す繰り返しモーメント発生装置の一部拡大図である。
図18】その他の実施形態である正逆微動回転弾性軸受を示す一部省略斜視図である。
図19図18に示す正逆微動回転弾性軸受の一部省略正面図である。
図20】その他の実施形態である正逆微動回転弾性軸受を示す一部省略斜視図である。
図21図20に示す正逆微動回転弾性軸受の一部省略正面図である。
図22】その他の実施形態である正逆微動回転弾性軸受を示す一部省略斜視図である。
図23図22に示す正逆微動回転弾性軸受の一部省略正面図である。
図24】その他の実施形態である正逆微動回転弾性軸受を示す一部省略斜視図である。
図25図24に示す微動回転弾性軸受の一部省略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図7に基づいて、本発明の実施形態である繰り返しモーメント発生装置100について説明する。なお、図1図7においては、視認性を高めるため、テーブル24や支持部材25などの構成部材の一部を透明にして表示している部分がある。また、段落[0016]~[0052]の説明文中に記載した符号はそれぞれ図面[図1]~[図7]中に記載した符号にのみ対応するものであり、図面[図1]~[図7]以外の図面中に記載した符号とは対応しない。
【0017】
初めに、図1図2に基づいて、本実施形態に係る繰り返しモーメント発生装置100の構造、機能などについて説明する。図1に示すように、繰り返しモーメント発生装置100は、繰り返しモーメントを伝達するための主軸1と、主軸1を回転自在に保持するためテーブル24上面に所定距離を隔てて起立状に設けられた主軸受け部材2a,2bと、主軸1の軸心1c方向に離れた位置にそれぞれ主軸1と直交する状態で主軸1に取り付けられた一対の梃子部材3a,3bと、梃子部材3a,3bが対向する領域において主軸1を挟んで対称をなす位置にそれぞれ主軸1と平行な軸心4c,5c(図2参照)を中心に回転自在に設けられた軸体4,5と、軸心4c,5cを中心に軸体4,5と共に回転自在に設けられた主偏心重錘ロータ6,7などを備えている。
【0018】
テーブル24は四角形平板状の部材であり、その四つのコーナ部24cの下面側に配置された四つの支持部材25により水平状態に保たれている。支持部材25は水平断面がL字状をなし、下面側に底板25bが設けられている。テーブル24の四つのコーナ部24cはそれぞれ四つの支持部材25の上面25aに載置した状態で固定され、四か所に位置する底板25bの上に四角形平板状のアンダーテーブル26が配置されている。
【0019】
主軸受け部材2a,2bと連続する部材であるテーブル24下面には複数の副軸受け部材8a,8b,9a,9bが垂下状に設けられ、対向する副軸受け部材8a,8bの間には主軸1と平行をなす軸心10c(図3参照)を有する軸体10が軸心10cを中心に回転自在に配置され、対向する副軸受け部材9a,9bの間には主軸1と平行をなす軸心11cを有する軸体11が軸心11cを中心に回転自在に配置されている。副偏心重錘ロータ12は軸体10と共に回転自在であり、副偏心重錘ロータ13は軸体11と共に回転自在である。
【0020】
主偏心重錘ロータ6,7並びに副偏心重錘ロータ12,13のサイズ、構造及び機能などは同一であるため、以下、主偏心重錘ロータ7について説明する。図2に示すように、主偏心重錘ロータ7は、軸体5の一部に形成された円柱状の拡径部7bと、拡径部7bを軸心5cと直交する方向に貫通して取り付けられた重錘部材7cと、を備えている。
【0021】
重錘部材7cは、拡径部7bを貫通するように螺合されたボルト部材7eと、ボルト部材7eの端部に取り付けられた重錘7gと、ボルト部材7eを拡径部7bに係止するためボルト部材7eに螺合されたロックナット7dと、を備えている。ボルト部材7eの外周には雄ネジが形成され、重錘部材7cの反対側の端部には雄ネジ部分より拡径した短円柱形状のストッパ部7fが設けられている。
【0022】
外周に雄ネジを有するボルト部材7eは、雌ねじ孔(図2中の雌ネジ孔6hに相当)を有する拡径部7bを貫通した状態で螺合されており、ボルト部材7eをその軸心周りに回転させて長手方向に移動させ、重錘7gと軸体5の軸心5cとの間の距離を変更することにより、重錘部材7cの重心7G(図3参照)を軸心5cから離れる方向に偏心させることができる。
【0023】
重錘部材7cの重心7Gが軸心5cから偏心した状態において、後述するように、モータ14の駆動力により回転する軸体5の回転に伴って主偏心重錘ロータ7が回転すると、重錘部材7cも軸心5cを中心に回転し、重心7Gの偏心量と回転数で決まる大きさの遠心力7aがボルト部材7eの軸心方向に発生する。この遠心力7aが作用する方向は軸心5cを中心に回転するので、回転に伴って上下左右に変化する力が軸体5及び軸体5に連結された部材に伝わる。主偏心重錘ロータ6並びに副偏心重錘ロータ12,13も主偏心重錘ロータ7と同様の機能を有する。
【0024】
二つの主偏心重錘ロータ6,7並びに二つの副偏心重錘ロータ12,13を同期して回転させる駆動手段として、モータ14,中タミングプーリ15,16、大タミングプーリ17,18、小タミングプーリ19a,19b,20a,20b並びにタミングベルト21,22,23を備えている。
【0025】
モータ14の回転軸14aには中タミングプーリ15並びに大タミングプーリ17が取り付けられ、主軸1には中タミングプーリ16並びに大タミングプーリ18が軸受を介して取り付けられている。モータ14の回転軸14aは主軸1と平行をなし、モータ14側の中タミングプーリ15並びに大タミングプーリ17は、主軸1側の中タミングプーリ16並びに大タミングプーリ18の直下に位置し、中タミングプーリ15,16並びに大タミングプーリ17,18がそれぞれ上下方向に直列をなすように対向配置されている。
【0026】
軸体4,5には小タミングプーリ19a,19bが取り付けられ、軸体10,11には小タミングプーリ20a,20bが取り付けられている。小タミングプーリ19a,19bは大タミングプーリ18を挟んで直列をなすように配置され、小タミングプーリ20a,20bは大タミングプーリ17を挟んで直列をなすように配置されている。小タミングプーリ19a,19b,20a,20bのサイズ(外径)は互いに同一であり、中タミングプーリ15,16のサイズ(外径)も互いに同一であり、大タミングプーリ17,18のサイズ(外径)も互いに同一である。
【0027】
中タミングプーリ15と中タミングプーリ16とはタミングベルト21で連係され、小タミングプーリ19a,19b及び大タミングプーリ18はタミングベルト22で連係され、小タミングプーリ20a,20b及び大タミングプーリ17はタミングベルト23で連係されている。
【0028】
モータ14を稼働させると、回転軸14aに一体的に取り付けられた大タミングプーリ17及び中タミングプーリ15が同じ方向に同じ回転数で回転し、中タミングプーリ15の回転はタミングベルト21を介して中タミングプーリ16に伝達されるので、中タミングプーリ15,16はモータ14の回転軸14aと同じ方向に同じ回転数で回転する。中タミングプーリ16の回転は、主軸1を介して中タミングプーリ15と一体化した大タミングプーリ18に伝達されるので、大タミングプーリ17,18は互いに同じ方向に同じ回転数で回転する。
【0029】
大タミングプーリ17の回転はタミングベルト23を介して小タミングプーリ20a,20bに伝達され、大タミングプーリ18の回転はタミングベルト22を介して小タミングプーリ20a,20bに伝達されるので、小タミングプーリ19a,19b,20a,20bがそれぞれ取り付けられた軸体4,5,10,11は互いに同じ方向に同じ回転数で回転する。
【0030】
従って、後述する図3に示すように、二つの主偏心重錘ロータ6,7並びに二つの副偏心重錘ロータ12,13は互いに同期して同じ方向に同じ回転数で回転する。なお、繰り返しモーメント発生装置100においては、二つの主偏心重錘ロータ6,7の回転中心線はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cと同一であり、二つの副偏心重錘ロータ12,13の回転中心線はそれぞれ軸体10,11の軸心10c,11cと同一である。
【0031】
図1に示す繰り返しモーメント発生装置100においては、図3に示すように、二つの主偏心重錘ロータ6,7が、それぞれの重心6G,7Gの偏心方向(遠心力6a,7aの方向)がそれぞれの軸体4,5の軸心4c,5cを中心に互いに180度異なるように配置されている。また、二つの副偏心重錘ロータ12,13の重心12G,13Gの偏心方向(遠心力12a,13aの方向)がそれぞれの軸体10,11の軸心10c,11cを中心に互いに180度異なるように配置されている、さらに、一方の主偏心重錘ロータ6の偏心方向(遠心力6aの方向)と、当該主偏心重錘ロータ6と主軸1に対して同じ側に位置する副重錘ロータ12の偏心方向(遠心力12aの方向)と、がそれぞれの軸体4,10の軸心4c,10cを中心に互いに180度異なるように配置されている。
【0032】
次に、図3図7に基づいて、図1に示す繰り返しモーメント発生装置100における、二つの主偏心重錘ロータ6,7並びに二つの副偏心重錘ロータ12,13の作用、効果などについて説明する。
【0033】
図1に示す繰り返しモーメント発生装置100においてモータ14を稼動させると、図3に示すように、二つの主偏心重錘ロータ6,7並びに二つの副偏心重錘ロータ12,13はそれぞれ時計回り(矢線A方向)に同じ回転数で回転する。
【0034】
図3図6は、二つの主偏心重錘ロータ6,7並びに二つの副偏心重錘ロータ12,13が回転する状態を時間の経過に沿って、順次、表示したものである。二つの主偏心重錘ロータ6,7は、それぞれの遠心力6a,7aの方向が回転中心線(軸心4c,5c)を中心に互いに180度異なる関係を維持しながら回転し、二つの副偏心重錘ロータ12,13は、それぞれの遠心力12a,13aの方向が回転中心線(軸心10c,11c)を中心に互いに180度異なる関係を維持しながら回転する。
【0035】
図3図6に示すように、二つの主偏心重錘ロータ6,7の回転によって発生する二つの遠心力6a,7aは互いに同一の大きさで作用方向が180度逆方向をなし、二つの副偏心重錘ロータ12,13の回転によって発生する二つの遠心力12a,13aは互いに同一の大きさであって且つ作用方向が180度逆方向をなしている。
【0036】
また、二つの主偏心重錘ロータ6,7の回転によって発生する二つの遠心力6a,7aと二つの遠心力6a,7aの作用線間距離の積で定義される偶力と、二つの副偏心重錘ロータ12,13の回転によって発生する二つの遠心力12a,13aと二つの遠心力12a,13aの作用線間距離の積で定義される偶力と、が互いに同一の大きさであって且つ回転方向が逆となっている。
【0037】
さらに、二つの主軸受け部材2a,2b並びに二対の副軸受け部材8a,8b,9a,9bを、主偏心重錘ロータ6,7の軸体4,5の軸心4c,5cと、副偏心重錘ロータ12,13の軸体10,11の軸心10c,11cと、が互いに平行をなすようにテーブル24に配置されている。
【0038】
二つの主偏心重錘ロータ6,7は、それぞれの遠心力6a,7aの方向が回転中心線(軸心4c,5c)を中心に互いに180度異なる関係を維持しながら回転し、二つの副偏心重錘ロータ12,13は、それぞれの遠心力12a,13aの方向が回転中心線(軸心10c,11c)を中心に互いに180度異なる関係を維持しながら回転する。
【0039】
また、二つの主偏心重錘ロータ6,7並びに二つの副偏心重錘ロータ12,13が回転しているとき、一方の主偏心重錘ロータ6の遠心力6aの方向と、当該主偏心重錘ロータ6と主軸1に対して同じ側に位置する副重錘ロータ12の遠心力12aの方向と、は、それぞれの回転中心線(軸心4c,10c)を中心に互いに180度異なる関係を維持している。
【0040】
二つの主偏心重錘ロータ6,7が、それぞれ回転中心線(軸心4c,5c)を中心に回転することによって振動が生じ、この振動は軸体4,5を介して梃子部材3bの両端部分を交互に上下振動させるので、梃子部材3bは主軸1の軸心1cを中心に細かいシーソー運動を繰り返し、これにより、梃子部材3bと一体化された主軸1は細かい正逆回転を繰り返す。従って、主軸1の軸心1cの延長上に供試体(図示せず)をセットしておけば、この供試体に対して繰り返し荷重(繰り返しモーメント)を負荷することができる。
【0041】
図7に示すように、主偏心重錘ロータ6,7並びに副偏心重錘ロータ12,13が同一の偏心量と同一の回転数で回転しているとき、軸体4,5,10,11にはそれぞれ同一の大きさの遠心力F,F,F,Fが発生している。
【0042】
これらの遠心力Fを互いに直角をなす二方向の力(横方向分力Fhと縦方向分力Fv)に分けて考えると、主偏心重錘ロータ6における横方向分力Fhと縦方向分力Fv、主偏心重錘ロータ7における横方向分力Fhと縦方向分力Fvは、縦方向と横方向にて、それぞれ互いに力の大きさは同じで、力の方向が180度逆方向となっているので、縦方向と横方向の力はそれぞれ相殺され、力の釣り合い条件を満足する。
【0043】
同様に、副偏心重錘ロータ12における横方向分力Fhと縦方向分力Fv、副偏心重錘ロータ13における横方向分力Fhと縦方向分量Fvは、縦方向と横方向にて、それぞれ互いに力の大きさは同じで、力の方向が180度逆方向となっているので、縦方向と横方向の力はそれぞれ相殺され、力の釣り合い条件を満足する。
【0044】
従って、図7に示す主偏心重錘ロータ6,7並びに副偏心重錘ロータ12,13を含む構造体に発生する全ての力は常に力の釣り合い条件を満足し、図7に示す構造体は全方向に並進運動をしないので、図7に示す構造体に連結される試験機(図示せず)も並進運動をしない。
【0045】
これらの横方向分力Fhと縦方向分力Fvのうち、主偏心重錘ロータ6,7における横方向分力Fhは同一の軸方向に作用するので偶力を生じないが、縦方向分力Fvは互いに同一の大きさであって且つ方向が180度逆方向をなし、軸体4,5間の距離Lm離れて作用するので、縦方向分力Fvと距離Lmの積で定義されるMm=Fv×Lmの大きさの偶力(即ち、モーメント)を生じ、前記モーメントMmは主軸1を伝わって主軸1に連結される供試体(図示せず)に作用し、さらに供試体を試験機に固定する部材(図示せず)を通じて試験機に伝わる。
【0046】
また、副偏心重錘ロータ12,13における横方向分力Fhは同一の軸方向に作用するので偶力を生じないが、縦方向分力Fvは互いに同一の大きさであって且つ方向が180度逆方向をなし、軸体10,11間の距離Ls離れて作用するので、縦方向分力Fvと距離Lsの積で定義されるMs=Fv×Lsの大きさの偶力(即ち、モーメント)を生じ、前記モーメントMsは副偏心重錘ロータ12、13を支える副軸受部材部材8a,8b,9a,9bを通じてテーブル24に伝わり、テーブル24に連結される試験機(図示せず)に伝わる。
【0047】
前記モーメントMmと前記モーメントMsの回転軸は互いに平行で常に同一の大きさであって且つ回転方向が逆向きに作用するので、前記モーメントMmと前記モーメントMsとは相殺されて、モーメントの釣り合い条件を満足する。従って、試験機(図示せず)は回転運動をしない。
【0048】
また、主偏心重錘ロータ6,7と副偏心重錘ロータ12,13によって発生した遠心力とモーメントの相殺関係は、図3図6に示すように、遠心力Fがどの方向を向いている場合においても(主偏心重錘ロータ6,7及び副偏心重錘ロータ12、13が軸心4c,5c、10c、11c周りのどのような姿勢にあっても)成立する。
【0049】
このように、主偏心重錘ロータ6,7と副偏心重錘ロータ12,13の回転によって発生した遠心力は、理論上、試験機に並進運動及び回転運動を起こす原因とはならず、試験機は、運転中、不動の状態を保つため、振動の軽減(理論上の無振動化)並びに静音化を図ることができる。
【0050】
また、前述した振動の軽減(理論上の無振動化)並びに静音化が実現されることにより、制振手段、防振手段並びに防音手段などが不要となるので、繰り返しモーメント発生装置100の小型化も実現することができる。さらに、振動を抑えることを目的として従来のように試験機の質量を増加させる必要が無いので、試験機の軽量化も実現することができる。
【0051】
さらに、繰り返しモーメント発生装置100は、図3図6に示すように、下記の構成要件を具備しているので、装置の簡素化とコンパクト化を実現することができた。
(1)二つの主偏心重錘ロータ6,7の回転中心間の距離(軸心4c,5c間の距離)と、二つの副偏心重錘ロータ12,13の回転中心間の距離(軸心10c,11c間の距離)と、を同一とする。
(2)二つの主軸受け部材2a,2bをテーブル24上に起立状に設け、二対の副軸受け部材8a,8b,9a,9bをテーブル24の下面に垂下状に設ける。
(3)二つの主偏心重錘ロータ6,7の回転中心(軸心4c,5c)並びに二つの副偏心重錘ロータ12,13の回転中心(軸心10c,11c)が、仮想長方形Rの四つの頂点に位置するように配置する。
(4)二つの主偏心重錘ロータ6,7の回転面並びに二つの副偏心重錘ロータ12,13の回転面が同一の仮想平面上に位置するように配置する。
(5)主偏心重錘ロータ6,7並びに副偏心重錘ロータ11,12の形状、構造及びサイズを同一とする。
【0052】
なお、図1図7に基づいて説明した繰り返しモーメント発生装置100は、本発明に係る繰り返しモーメント発生装置の一例を示すものであり、本発明に係る繰り返しモーメント発生装置は前述した繰り返しモーメント発生装置100に限定されない。
【0053】
次に、図8図11に基づいて、その他の実施形態である繰り返しモーメント発生装置100,200について説明する。なお、図8図11においては、視認性を高めるため、構成部材の一部を透明化して表現している部分がある。また、段落[0053]~[0092]の説明文中に記載した符号はそれぞれ図面[図8]~[図11]中に記載した符号にのみ対応するものであり、図面[図8]~[図11]以外の図面中に記載した符号とは対応しない。
【0054】
初めに、図8図10に基づいて、繰り返しモーメント発生装置100について説明する。図8図9に示すように、繰り返しモーメント発生装置100は、供試体に繰り返しモーメントを負荷して疲労強度特性を試験する疲労試験機(図示せず)に使用するものである。繰り返しモーメント発生装置100は、前記疲労試験機にセットされた供試体(図示せず)に繰り返しモーメントを伝達するための主軸1と、主軸1を回転自在に保持するためテーブル24の上面に所定距離を隔てて起立状に設けられた主軸受け部材2a,2bと、主軸1の軸心1c方向に離れた位置にそれぞれ主軸1と直交する状態で主軸1に取り付けられた一対の梃子部材3a,3bと、梃子部材3a,3bが対向する領域において主軸1を挟んで対称をなす位置にそれぞれ主軸1と平行な軸心4c,5c(図9参照)を中心に回転自在に設けられた軸体4,5と、軸心4c,5cを中心に軸体4,5と共に回転する偏心重錘ロータ6,7などを備えている。
【0055】
図9に示すように、偏心重錘ロータ6,7は、それぞれ軸体4,5の一部に設けられた拡径部6b,7bと、拡径部6b,7bに軸心4c,5cと直交する方向に開設された貫通孔6h,7hに軸体4,5と直交する状態で且つ軸体4,5と直交する方向に沿ってスライド可能な状態で挿通された偏心重錘部材6c,7cと、を備えている。また、軸体4,5を同期して回転させる駆動手段であるモータ14を備えている。
【0056】
偏心重錘部材6c,7cは、円柱状の本体部6e,7eと、本体部6e,7eのそれぞれの両端部に貫通孔6h,7hの内径よりも拡径した短円柱状に設けられたストッパ6f,6g,7f,7gと、を備えている。本体部6e,7eは、それぞれの外周面が貫通孔6h,7hの内周面に接触した状態でスライド可能であり、軸体4,5に対する偏心重錘部材6c,7cのスライド距離はそれぞれストッパ6f,6g(7f,7g)により本体部6e,7eの長さに制限されている。
【0057】
偏心重錘部材6c,7cの本体部6e,7eにおいて、一方のストッパ6f,7fと軸体4,5の拡径部6b,7bとの間に位置する部分の周りには弾性部材であるスプリング6d,7dが配置され、スプリング6d(7d)の両端部はそれぞれ拡径部6b(7b)、ストッパ6f(7f)に係止されている。偏心重錘部材6c,7cに長手方向の外力が加わっていない状態のとき、スプリング6d(7d)は、偏心重錘部材6c(7c)の重心がそれぞれ軸体4(5)の軸心4c(5c)に位置する状態を保持するようにストッパ6f(7f)と軸体4(5)の拡径部6b(7b)とを連結している。
【0058】
図10に示すように、主軸1において梃子部材3a,3bの間の部分の外周にはスライダ30が取り付けられている。スライダ30は、主軸1の軸心1c方向に沿って摺動可能であり、且つ、主軸1はスライダ30に対して空転可能である。また、軸体4(5)において偏心重錘ロータ6(7)と梃子部材3bとの間の部分の外周にはスライダ31(32)が取り付けられている。スライダ31(32)は、軸体4(5)の軸心4c(5c)方向に沿って摺動可能であり、且つ、軸体4(5)はスライダ31(32)に対して空転可能である。
【0059】
一方、スライダ30,31,32の軸心1c,4c,5cの長手方向の移動を同期させるため、スライダ30,31,32を一体的に連結する連動部材33が設けられている。連動部材33は、偏心重錘ロータ6,7と梃子部材3bとの間の部分に、主軸1及び軸体4,5と直交し、梃子部材3a,3bと平行をなすように配置されている。
【0060】
後述する操作手段を用いて、連動部材33を軸心1c方向に沿って移動させることによりスライダ31(32)が軸体4(5)の軸心4c(5c)方向に摺動したとき、この摺動運動を、偏心重錘部材6c(7c)の軸体4(5)の軸心4c(5c)と直交する方向のスライド運動に変換して偏心重錘部材6c(7c)に伝達する連接手段としてリンク機構34(35)が設けられている。
【0061】
リンク機構34(35)は、第一リンク部材10(12)と第二リンク部材11(13)とを備えている。第一リンク部材10(12)の一方の端部側がスライダ31(32)の支軸10a(12a)に回動可能に軸支され、他方の端部側が偏心重錘部材6c(7c)のストッパ6g(7g)の支軸10b(12b)に回動可能に軸支されている。第二リンク部材11(13)の一方の端部側は軸体4(5)の拡径部6b(7b)の支軸11a(13a)に回動可能に軸支され、他方の端部側が第一リンク部材10(12)の中央部分の支軸11b(13b)に回動可能に軸支されている。
【0062】
図10においては、偏心重錘ロータ6,7の上面側のみにリンク機構34,35が表示されているが、図9の偏心重錘ロータ6付近に一部表示されているように、リンク機構34,35は、図2に示す偏心重錘ロータ6,7の下面側にも設けられている。即ち、一対のリンク機構34,34(35,35)が偏心重錘ロータ6(7)を挟んで鏡面対称をなすように配置されている。
【0063】
図9に示すように、スライダ30の下方に開設された雌ネジ孔36に軸体4,5並びに主軸1と平行をなす状態で雄ネジ部材37が螺合され、雄ネジ部材37の一方の端部(図示せず)は主軸1の直下のテーブル24上に配置された軸受け部材43に回動可能に保持されている。雄ネジ部材37の他方の端部側は主軸受け部材2bに開設された貫通孔38に回動可能に挿通され、貫通孔38から突出する雄ネジ部材37の先端に斜歯ギア39が取り付けられている。雄ネジ部材37は、軸受け部材43及び主軸受け部材2bの貫通孔38により、雄ネジ部材37の長手方向の移動が拘束された状態で回動可能に保持されている。
【0064】
斜歯ギア39は雄ネジ部材37と同心をなすように取り付けられ、斜歯ギア39の下方には、ウォームギア40aが形成された回転軸40が雄ネジ部材37と直角に立体交差するように配置され、斜歯ギア39はウォームギア40aに噛合されている。回転軸40の両端部分はそれぞれテーブル24上に配置された軸受け部材41,42に回動可能に保持され、軸受け部材41から突出する回転軸40の端部にハンドル44が取り付けられている。
【0065】
ハンドル44を回転させると回転軸40及びウォームギア40aが回転し、この回転が斜歯ギア39に伝わり、斜歯ギア39の回転に伴って雄ネジ部材37が回転し、雄ネジ部材37と螺合する雌ネジ孔36を有するスライダ30並びに連動部材33が雄ネジ部材37の長手方向(主軸1の軸心1c方向)に移動する。これに伴って、連動部材33と一体化したスライダ31,32が軸体4,5の軸心4c,5c方向に移動し、リンク機構34,35が作動する。
【0066】
例えば、図9に示すように、ハンドル44を矢線W1方向に回転させると、ウォームギア40a及び斜歯ギア39を介して雄ネジ部材37が矢線W2方向に回転し、雄ネジ部材37と雌ネジ孔36との螺合によりスライダ30及び連動部材33が梃子部材3bから離隔する方向へ移動する。
【0067】
これにより、連動部材33と一体化したスライダ31,32も梃子部材3bから離隔する方向へスライドするので、このスライド運動がリンク機構34,35を介して偏心重錘部材6c,7cのストッパ6g,7gに伝達され、ストッパ6g,7gはそれぞれ軸体6,7の拡径部6b,7bから離隔する方向へ移動し、偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cから離れていく。
【0068】
一方、前述したようにハンドル44を矢線W1方向に回転操作した後、ハンドル44を矢線W1と逆方向に回転させると、ウォームギア40a及び斜歯ギア39を介して雄ネジ部材37が矢線W2と逆方向に回転し、雄ネジ部材37と雌ネジ孔36との螺合によりスライダ30及び連動部材33が梃子部材3bに接近する方向へ移動するので、前述とは逆に、ストッパ6g,7gはそれぞれ軸体6,7の拡径部6b,7bに接近する方向へ移動し、偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cに近づいていく。
【0069】
図10に示すように、偏心重錘部材6c,7cの一方のストッパ6f,7fと軸体4,5の拡径部6b,7bとの間に配置されたスプリング6d,7dは、偏心重錘部材6c,7cの重心が軸体4,5の軸心4c,5cに位置する状態を保持するようにストッパ6f,7fと軸体4,5とを連結している。これにより、リンク機構34,35を介して偏心重錘部材6c,7cを移動させるとき、偏心重錘部材6c,7cにはスプリング6d,7dによる付勢力(偏心重錘部材6c,7cの重心をそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cの位置に復帰させようとする力)が加わり続けるので、捩りモーメントの不連続変化(バックラッシュの影響)をなくすことができる。
【0070】
また、偏心重錘ロータ6,7の回転中に、万一、リンク機構34,35が損傷して偏心重錘部材6c,7cを所定状態に保持できなくなったような場合、スプリング6d,7dの弾性復元力により、偏心重錘部材6c,7cはそれぞれの重心が軸体4,5の軸心4c,5cに位置する状態(偏心ゼロ状態)に復帰するので、所謂、フェール・セーフ機能も発揮する。
【0071】
図8に示すように、テーブル24は四角形平板状の部材であり、その四つのコーナ部24cの下面側に配置された四つの支持部材25により水平状態に保たれている。支持部材25は水平断面がL字状をなし、下面側に底板25bが設けられている。テーブル24の四つのコーナ部24cはそれぞれ四つの支持部材25の上面25aに載置した状態で固定され、四か所に位置する底板25bの上に四角形平板状のアンダーテーブル26が配置されている。
【0072】
二つの偏心重錘ロータ6,7を同期して回転させる駆動手段として、モータ14,中タイミングプーリ15,16、大タイミングプーリ18、小タイミングプーリ19a,19b並びにタイミングベルト21,22を備えている。モータ14が稼働すると、その回転力はギアボックス17を経由して回転軸14aに出力される。
【0073】
モータ14により回転する回転軸14aには中タイミングプーリ15が取り付けられ、主軸1には中タイミングプーリ16並びに大タイミングプーリ18が軸受を介して回転自在に取り付けられている。回転軸14aは主軸1と平行をなし、モータ14側の中タイミングプーリ15は、主軸1側の中タイミングプーリ16の直下に位置し、中タイミングプーリ15,16が上下方向に直列をなすように対向配置されている。
【0074】
軸体4,5には小タイミングプーリ19a,19bが取り付けられている。小タイミングプーリ19a,19bは大タイミングプーリ18を挟んで直列をなすように配置されている。小タイミングプーリ19a,19bのサイズ(外径)は互いに同一であり、中タイミングプーリ15,16のサイズ(外径)も互いに同一である。
【0075】
中タイミングプーリ15と中タイミングプーリ16とはタイミングベルト21で連係され、小タイミングプーリ19a,19b及び大タイミングプーリ18はタイミングベルト22で連係されている。
【0076】
モータ14を稼働させると、回転軸14aに一体的に取り付けられた中タイミングプーリ15が回転し、中タイミングプーリ15の回転はタイミングベルト21を介して中タイミングプーリ16に伝達されるので、中タイミングプーリ16は回転軸14aと同じ方向に同じ回転数で回転する。中タイミングプーリ16の回転は、主軸1を介して中タイミングプーリ15と一体化した大タイミングプーリ18に伝達される。
【0077】
大タイミングプーリ18の回転はタイミングベルト22を介して小タイミングプーリ19a,19bに伝達されるので、小タイミングプーリ19a,19bがそれぞれ取り付けられた軸体4,5は互いに同じ方向に同じ回転数で回転する。従って、二つの偏心重錘ロータ6,7は互いに同期して同じ方向に同じ回転数で回転する。また、二つの偏心重錘ロータ6,7の回転に伴ってリンク機構34,35及びスライダ31,32も一体的に回転するが、スライダ30及び連動部材33は静止状態に保持される。なお、繰り返しモーメント発生装置100において、二つの偏心重錘ロータ6,7の回転中心線はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cと同一である。
【0078】
図8図10に示す繰り返しモーメント発生装置100においては、二つの偏心重錘ロータ6,7が、それぞれの偏心重錘部材6c,7cの重心の偏心方向(遠心力6a,7aの方向)がそれぞれの軸体4,5の軸心4c,5cを中心に互いに180度異なるように配置されている。従って、二つの偏心重錘ロータ6,7は、それぞれの遠心力6a,7aの方向が回転中心線(軸心4c,5c)を中心に互いに180度異なる関係を維持しながら回転する。
【0079】
偏心重錘部材6c,7cの重心が軸心4c,5cから偏心した状態において、後述するように、モータ14の駆動力により回転する軸体4,5の回転に伴って偏心重錘ロータ6,7が回転すると、偏心重錘部材6c,7cも軸心4c,5cを中心に回転し、偏心重錘部材6c,7cの重心の偏心量と回転数で決まる大きさの遠心力6a,7aが本体部6e,7eの軸心方向に発生する。この遠心力6a,7aが作用する方向は軸心4c,5cを中心に回転するので、回転に伴って遠心力6a,7aの方向は上下左右に変化する。
【0080】
このように、二つの偏心重錘ロータ6,7が、それぞれ回転中心線(軸心4c,5c)を中心に回転することによって振動が生じ、この振動は軸体4,5を介して梃子部材3a,3bの両端部分を交互に上下振動させるので、梃子部材3a,3bは主軸1の軸心1cを中心に細かいシーソー運動を繰り返し、これにより、梃子部材3a,3bと一体化された主軸1は細かい正逆回転を繰り返す。従って、主軸1の軸心1cの延長上に供試体(図示せず)をセットしておけば、この供試体に対して繰り返し荷重(繰り返しモーメント)を負荷することができる。
【0081】
前述したように、ハンドル44を矢線W1方向に回転させると、スライダ30,31,32が梃子部材3bから離隔する方向へスライドし、リンク機構34,35を介してストッパ6g,7gが軸体6,7の拡径部6b,7bから離隔する方向へ移動し、偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cから離れていくので、偏心重錘ロータ6,7の回転によって生じる振動が増大し、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅は大きくなっていく。
【0082】
一方、前述したようにハンドル44を矢線W1方向へ回転操作した後、ハンドル44を矢線W1と逆方向に回転させると、ウォームギア40a及び斜歯ギア39を介して雄ネジ部材37が矢線W2と逆方向に回転し、スライダ30,31,32が梃子部材3bに接近する方向へ移動し、前述とは逆に、ストッパ6g,7gはそれぞれ軸体6,7の拡径部6b,7bに接近する方向へ移動し、偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cに近づいていくので、偏心重錘ロータ6,7の回転によって生じる振動が減少し、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅は小さくなっていく。
【0083】
このように、ハンドル44を矢線W1方向または逆方向に回転操作することにより、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅を大きくしたり、小さくしたりすること(振幅調整すること)ができる。このような振幅調整作業は二つの偏心重錘ロータ6,7が停止しているときに限らず、回転しているときも行うことができる。
【0084】
また、モータ14の停止中に二つの偏心重錘ロータ6,7の偏心重錘部材6c,7cの重心を、それぞれ回転中心線(軸心4c,5c)の位置(振幅ゼロの位置)にセットした後、モータ14を始動させ、二つの偏心重錘ロータ6,7の回転中にハンドル44を操作して振幅を徐々に増大させることにより最適振幅にセットすることもできるので、所謂、オーバーシュートを回避することもできる。
【0085】
さらに、繰り返しモーメント発生装置100に、捩りモーメント計や回転角エンコーダを併用すれば、閉ループ制御も可能となり、捩りモーメント制御だけでなく、角変位制御やプログラム制御による試験が可能となり、高度な油圧式疲労試験機に匹敵する多彩な制御機能を低コストで具備することができる。
【0086】
なお、図8図10に示す繰り返しモーメント発生装置100は、一本の主軸1に対して二本の軸体4,5と、二つの偏心重錘ロータ6,7と、二つのスライダ31,32と、二つのリンク機構34,35とを備え、それぞれに振幅調整機構を設けているが、これに限定するものではないので、一本の主軸1に対して一本の軸体4(または5)と、一つの偏心重錘ロータ6(または7)と、一つのスライダ31(または32)と、一つのリンク機構34(または35)と、を備えたものとすることも可能であり、この場合も前述と同様の振幅調整機能を得ることができる。
【0087】
次に、図11に基づいて、その他の実施形態である繰り返しモーメント発生装置200について説明する。なお、図11に示す繰り返しモーメント発生装置200を構成する部分(部材)において、図8図10に示す繰り返しモーメント発生装置100と共通する部分(部材)については図8図10中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0088】
図11に示すように、繰り返しモーメント発生装置200においては、スライダ31,32の軸体4,5の軸心4c,5c方向の摺動運動を、偏心重錘部材6c,7cの軸体4,5と交差する方向のスライド運動に変換して偏心重錘部材6c,7cに伝達する連接手段として、図10に示すリンク機構34,35の代わりに、プーリ50,51及びワイヤ52,53を設けている。なお、ワイヤ52,53は、これに限定するものではないので、同様の機能を有するものであれば、可撓性を有する線材、紐状体、チェーンなどを用いることもできる。
【0089】
図11に示すように、偏心重錘ロータ6,7の拡径部6b,7bにそれぞれプーリ50,51が回動可能に軸支され、スライダ31(32)と偏心重錘部材6c(7c)とが、プーリ50(51)を経由してワイヤ52(53)で連結されている。ワイヤ52(53)の一方の端部はスライダ31(32)に係止され、ワイヤ52(53)の他方の端部は偏心重錘部材6c(7c)のストッパ6f(7f)に係止されている。
【0090】
ハンドル44を図9中に示す矢線W1と逆方向に回転させると、連動部材33と共にスライダ31,32が梃子部材3bに接近する方向に移動するので、ワイヤ52(53)及びプーリ50(51)を介して偏心重錘部材6c(7c)のストッパ6f(7f)が拡径部6b(7b)に接近する方向にスライドし、偏心重錘部材6c(7c)の重心が軸体4(5)の軸心4c(5c)から離れていくので、偏心重錘ロータ6,7の回転によって生じる振動が増大し、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅は大きくなっていく。
【0091】
一方、前述したようにハンドル44を矢線W1と逆方向へ回転操作した後、ハンドル44を矢線W1方向に回転させると、スライダ30,31,32が梃子部材3bから離隔する方向へ移動し、前述とは逆に、ストッパ6g,7gはそれぞれ偏心重錘ロータ6,7の拡径部6b,7bに接近する方向へ移動し、スプリング6d,7dの弾性復元力により偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ偏心重錘ロータ6,7の拡径部6b,7b(軸体4,5の軸心4c,5c)に近づいていくので、偏心重錘ロータ6,7の回転によって生じる振動が減少し、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅は小さくなっていく。
【0092】
このように、繰り返しモーメント発生装置200においても、偏心重錘ロータ6,7が回転中であるか否かを問わず、ハンドル44を回転操作することにより、主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅を調整することができる。その他の部分の構造、機能並びに作用効果などについては前述した繰り返しモーメント発生装置100と同様である。
【0093】
次に、図12図25に基づいて正逆微動回転弾性軸受50及びこれを使用した繰り返しモーメント発生装置100並びにその他の実施形態である正逆微動回転弾性軸受60,70,80,90について説明する。なお、図16においては、視認性を高めるため、構成部材の一部を透明化して表現している部分がある。また、段落[0093]~[0134]の説明文中に記載した符号はそれぞれ図面[図12]~[図25]中に記載した符号にのみ対応するものであり、図面[図12]~[図25]以外の図面中に記載した符号とは対応しない。
【0094】
先ず、図12図17に基づいて、正逆微動回転弾性軸受50及び正逆微動回転弾性軸受50を使用した繰り返しモーメント発生装置100について説明する。
【0095】
初めに、図12図15に基づいて、正逆微動回転弾性軸受50の構造並びに機能などについて説明する。図12図15に示すように、正逆微動回転弾性軸受50は、正逆方向に微動回転する軸体1の周囲に配置された支持部材51,52と、支持部材51,52にそれぞれ基端部53b,54b側が係止され、軸体1の外周に先端部53a,54a側が係止された複数の板状弾性部材53,54と、を備え、板状弾性部材53,54それぞれの基端部53b(54b)側と先端部53a(54a)側が、軸体1を挟んで対向する位置に係止されている。
【0096】
複数の板状弾性部材53,54は、同形状、同寸法の板状弾性部材であり、複数の板状弾性部材53,54それぞれの基端部53b(54b)側と先端部53a(54a)側は、軸体1にねじりモーメントが負荷されたときに、板状弾性部材53,54が軸体1の軸心1cに関して軸対称に変形可能な位置に係止されている。
【0097】
支持部材51,52は、ブロック体55上に一体的に立設され、図13に示すように、支持部材51,52及びブロック体55は正面視形状が凹形状をなしている。図13に示すように、支持部材51,52は軸体1を挟んで鏡面対称をなす部分を有している。支持部材51,52は、軸体1にねじりモーメントが負荷されたときに、板状弾性部材53,54が軸体1の軸心1cに関して軸対称に変形可能な位置に配置されている。
【0098】
前述したように、板状弾性部材53,54は同形状、同寸法の板状をなす弾性部材であり、軸体1の周囲の半周領域を包囲するように湾曲した湾曲部53c,54cを有する。板状弾性部材53,54の板厚53t,54tは、板状弾性部材53,54の基端部53b,54bから先端部53a,54aに向かってそれぞれ連続的に減少している。
【0099】
板状弾性部材53の基端部53bは支持部材51の左側面51sから軸体1に向かって支持部材51及び基端部53bを貫通するボルト57bとボルト57bに螺着されたナット57nによって支持部材51に固定されている。同様に、板状弾性部材54の基端部54bは支持部材52の右側面52sから軸体1に向かって支持部材52及び基端部54bを貫通するボルト58bとボルト58bに螺着されたナット58nによって支持部材52に固定されている。
【0100】
板状弾性部材53の先端部53aは、ボルト59によって軸体1の外周面に固定され、板状弾性部材54の先端部54aは、ボルト56によって軸体1の外周面に固定されている。図12図13に示すように、一方の板状弾性部材53の基端部53b及び先端部53aと、他方の板状弾性部材54の基端部54b及び先端部54aとは、軸体1の軸心1cと直交する仮想直線L上で直列をなすように配置されている。
【0101】
正逆微動回転弾性軸受50においては、軸体1を挟んで対向するように配置された一対の板状弾性部材53,54によって軸体1を支持しているので、正逆微動回転する軸体1を一定位置に安定的に支持することができるだけでなく、軸体1に負荷されるねじりモーメントの大きさに比例した回転角を軸体1に付与することができ、ねじりモーメントに抗して回転角がゼロとなる定位置に軸体1を戻す復元力を付与することができる。
【0102】
また、正逆微動回転している軸体1を支持する正逆微動回転弾性軸受50においては、互いに接触・離隔したり、微小領域で摺動したりする部分が存在しないので、稼働中の騒音・振動が極めて小さく、メンテナンス不要であり、また、正逆微動回転弾性軸受50は構成部品の点数が少ないので、構造の簡素化並びに小型化・軽量化を比較的容易に実現することが可能である。
【0103】
次に、図16図17に基づいて、図12図15に示す正逆微動回転弾性軸受50を使用した繰り返しモーメント発生装置100について説明する。なお、図16図17においては、視認性を高めるため、構成部材の一部(例えば、テーブル24や支持脚25など)を透明にして表示している部分がある。
【0104】
図16図17に示すように、繰り返しモーメント発生装置100は、供試体に繰り返しモーメントを負荷して疲労強度特性を試験する疲労試験機(図示せず)などに使用可能なものである。繰り返しモーメント発生装置100においては、前記疲労試験機にセットされた供試体(図示せず)に繰り返しモーメントを伝達する軸体1を正逆微動回転自在に保持するため、軸体1の両端部寄りの部分にそれぞれ正逆微動回転弾性軸受50,50が配置されている。正逆微動回転弾性軸受50,50は、テーブル24の上面に軸体1の軸心1c方向に所定距離を隔てて配置されている。
【0105】
正逆微動回転弾性軸受50,50の間の領域において、軸体1の軸心1c方向に離れた位置にそれぞれ軸体1と直交する状態で一対の梃子部材3a,3bが軸体1に取り付けられ、梃子部材3a,3bが対向する領域において軸体1を挟んで対称をなす位置にそれぞれ軸体1と平行な軸心4c,5cを中心に回転自在な軸体4,5が設けられ、軸体4,5の一部には軸心4c,5cを中心に軸体4,5と共に回転する偏心重錘ロータ6,7が設けられている。
【0106】
図17に示すように、偏心重錘ロータ6,7は、それぞれ軸体4,5の一部に設けられた拡径部6b,7bと、拡径部6b,7bに軸心4c,5cと直交する方向に開設された貫通状の雌ネジ孔6h,7hに軸体4,5と直交する状態で且つ軸体4,5と直交する方向に沿って移動可能な状態で挿通された偏心重錘部材6c,7cと、を備えている。
【0107】
偏心重錘部材6c,7cは、拡径部6b,7bを貫通するように螺合されたボルト部材6e,7eと、ボルト部材6e,7eの一方の端部に設けられた重錘6g,7gと、ボルト部材6e,7eを拡径部6b,7bに係止するためボルト部材6e,7eに螺合されたロックナット6d,7dと、を備えている。ボルト部材6e,7eの外周には雄ネジが形成され、偏心重錘部材6c,7cの他方の端部には雄ネジ部分より拡径した短円柱形状のストッパ部6f,7fが設けられている。また、軸体4,5を同期して回転させる駆動手段であるモータ14を備えている。
【0108】
外周に雄ネジを有するボルト部材6e,7eは、雌ネジ孔6h,7hを有する拡径部6b,7bを貫通した状態で螺合されており、ボルト部材6e,7eをその軸心周りに回転させて長手方向に移動させ、重錘6g,7gと軸体4,5の軸心4c,5cとの間の距離を変更することにより、偏心重錘部材6c,7cの重心(図示せず)の位置を軸心4c,5cから離れたり、軸心4c,5cに近づけたりする方向に変更することができる。
【0109】
図16に示すように、テーブル24は四角形平板状の部材であり、その四つのコーナ部24cの下面側に配置された四つの支持脚25により水平状態に保たれている。支持脚25は水平断面がL字状をなし、下面側に底板25bが設けられている。テーブル24の四つのコーナ部24cはそれぞれ四つの支持脚25の上面25aに載置した状態で固定され、四か所に位置する底板25bの上に四角形平板状のアンダーテーブル26が配置されている。
【0110】
テーブル24の下方のアンダーテーブル26上には、二つの偏心重錘ロータ6,7を同期して回転させる駆動手段として、モータ14,中タイミングプーリ15,16、大タイミングプーリ18、小タイミングプーリ19a,19b並びにタイミングベルト21,22を備えている。モータ14が稼働すると、その回転力はギアボックス17を経由して回転軸14aに出力される。
【0111】
モータ14により回転する回転軸14aには中タイミングプーリ15が取り付けられ、軸体1には中タイミングプーリ16並びに大タイミングプーリ18が軸受を介して回転自在に取り付けられている。回転軸14aは軸体1と平行をなし、モータ14側の中タイミングプーリ15は、軸体1側の中タイミングプーリ16の直下に位置し、中タイミングプーリ15,16が上下方向に直列をなすように対向配置されている。
【0112】
軸体4,5には小タイミングプーリ19a,19bが取り付けられている。小タイミングプーリ19a,19bは大タイミングプーリ18を挟んで直列をなすように配置されている。小タイミングプーリ19a,19bのサイズ(外径)は互いに同一であり、中タイミングプーリ15,16のサイズ(外径)も互いに同一である。
【0113】
中タイミングプーリ15と中タイミングプーリ16とはタイミングベルト21で連係され、小タイミングプーリ19a,19b及び大タイミングプーリ18はタイミングベルト22で連係されている。
【0114】
モータ14を稼働させると、回転軸14aに一体的に取り付けられた中タイミングプーリ15が回転し、中タイミングプーリ15の回転はタイミングベルト21を介して中タイミングプーリ16に伝達されるので、中タイミングプーリ16は回転軸14aと同じ方向に同じ回転数で回転する。中タイミングプーリ16の回転は、軸体1を介して中タイミングプーリ15と一体化した大タイミングプーリ18に伝達される。
【0115】
大タイミングプーリ18の回転はタイミングベルト22を介して小タイミングプーリ19a,19bに伝達されるので、小タイミングプーリ19a,19bがそれぞれ取り付けられた軸体4,5は互いに同じ方向に同じ回転数で回転し、これにより、二つの偏心重錘ロータ6,7も互いに同期して同じ方向に同じ回転数で回転する。なお、繰り返しモーメント発生装置100において、二つの偏心重錘ロータ6,7の回転中心線はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cと同一である。
【0116】
図16に示す繰り返しモーメント発生装置100においては、二つの偏心重錘ロータ6,7が、それぞれの重錘部材6c,7cの重心の偏心方向(図17に示す遠心力6a,7aの方向)がそれぞれの軸体4,5の軸心4c,5cを中心に互いに180度異なるように配置されている。従って、二つの偏心重錘ロータ6,7は、それぞれの遠心力6a,7aの方向が回転中心線(軸心4c,5c)を中心に互いに180度異なる関係を維持しながら回転する。
【0117】
偏心重錘部材6c,7cの重心が軸心4c,5cから偏心した状態において、モータ14の駆動力により回転する軸体4,5の回転に伴って偏心重錘ロータ6,7が回転すると、偏心重錘部材6c,7cも軸心4c,5cを中心に回転し、偏心重錘部材6c,7cの重心の偏心量と回転数で決まる大きさの遠心力6a,7aがボルト部材6e,7eの軸心方向に発生する。この遠心力6a,7aが作用する方向は軸心4c,5cを中心に回転するので、回転に伴って遠心力6a,7aの方向は上下左右に変化する。
【0118】
このように、二つの偏心重錘ロータ6,7が、それぞれ回転中心線(軸心4c,5c)を中心に回転することによって振動が生じ、この振動は軸体4,5を介して梃子部材3a,3bの両端部分を交互に上下振動させるので、梃子部材3a,3bは軸体1の軸心1cを中心に細かいシーソー運動を繰り返し、これにより、梃子部材3a,3bと一体化された軸体1は細かい正逆微動回転を繰り返す。従って、軸体1の軸心1cの延長上に供試体(図示せず)をセットしておけば、この供試体に対して繰り返し荷重(繰り返しモーメント)を負荷することができる。
【0119】
繰り返しモーメント発生装置100において、偏心重錘部材6c、7cの重心の偏心量を同一に設定しておけば、遠心力6a,7bは常に大きさが同じで互いに平行で逆向きに作用するので、偏心重錘ロータ6,7を一定の回転数で回転させれば正弦波の繰り返し偶力(モーメント)が発生する。これにより、軸体1の延長上にセットされた供試材(図示せず)に繰り返しモーメントが負荷されるので、供試体の疲労試験を行うことができる。
【0120】
また、偏心重錘部材6c、7cの重心の偏心量を同一に設定しておけば、遠心力6a,7bは常に大きさが同じで互いに平行で逆向きに作用するので、偏心重錘ロータ6,7がいかなる位置にあっても並進運動の原因となる力の成分は常に相殺され、振動は生じない。これにより、軸体1および軸体を支える正逆微動回転弾性軸受50には常に軸心1cに関して軸対称のモーメントだけが伝わるので、軸体1の軸心1cは不動を保つ。
【0121】
繰り返しモーメント発生装置100の一部をなす正逆微動回転弾性軸受50においては、軸体1を挟んで対称を成すように配置された一対の板状弾性部材53,54によって軸体1を支持しているので、正逆微動回転する軸体1を一定位置に安定的に支持することができるだけでなく、軸体1に負荷されるねじりモーメントの大きさに比例した回転角を軸体1に付与することができ、ねじりモーメントに抗して回転角がゼロとなる定位置に軸体1を戻す復元力を付与することができる。
【0122】
また、繰り返しモーメント発生装置100において正逆微動回転している軸体1を支持する正逆微動回転弾性軸受50には、互いに接触・離隔したり、微小領域で摺動したりする部分が存在しないので、稼働中の騒音・振動が極めて小さく、メンテナンス不要であり、また、正逆微動回転弾性軸受50を構成する部品点数が少ないので、構造の簡素化並びに小型化・軽量化を比較的容易に実現することが可能である。
【0123】
次に、図18図25に基づいて、その他の実施形態である正逆微動回転弾性軸受60,70,80,90について説明する。なお、図18図25に示す正逆微動回転弾性軸受60,70,80,90を構成する部分において、前述した正逆微動回転弾性軸受50の構成部分と共通する部分については、図12図15中に示す符号と同符号を付して説明を省略しているところがある。
【0124】
図18図19に示す正逆微動回転弾性軸受60は、短円筒形の支持部材61の内周面に突設された複数の支持部61a,61bと、支持部61a,61bにそれぞれ基端部53b,54b側が係止され、軸体1に着脱可能な短円筒形のボス62の外周に先端部53a,54a側が係止された板状弾性部材53,54と、を備えている。板状弾性部材53,54は同形状、同サイズであり、ボス62の中心軸(図示せず)と支持部材61の中心軸とは一致するように配置されている。ボス62に開設された貫通孔62aに軸体1を挿入し、キー溝1b,62bの位置を合わせてキー(図示せず)を差し込めばボス62と軸体1とは一体的に固定される。
【0125】
支持部材61の内周面に180度間隔を置いて形成された支持部61a,61bは軸体1(ボス62)を挟んで鏡面対称をなしている。湾曲部53c,54cを有する板状弾性部材53,54のそれぞれの基端部53b(54b)側と先端部53a(54a)側が、軸体1(ボス62)を挟んで対向する位置に係止されている。
【0126】
正逆微動回転弾性軸受60は、軸体1が挿入・離脱可能な貫通孔62aを有するボス62を備えているので、正逆微動回転弾性軸受60を単品の製品として市場に流通させることができる。また、支持部材61の外周面の一部にキー溝61cが設けられている。正逆微動回転弾性軸受60の用途、使用目的などは限定しないが、例えば、繰り返しモーメント発生装置などの各種装置に取り付けて使用可能であり、前述した図17に示す正逆微動回転弾性軸受50と同様の作用、効果を発揮する。
【0127】
次に、図20図21に示す正逆微動回転弾性軸受70においては、多角形(六角形)リング状の支持部材71の内側に3個の板状弾性部材73,74,75並びに軸体1が配置されている。板状弾性部材73,74,75は同形状、同寸法であり、図12に示す板状弾性部材53,54と同様の形状、機能を有している。
【0128】
3個の板状弾性部材73,74,75の基端部73b,74b,75b側は、支持部材71の内周面に、軸体1の軸心1cを中心に60度間隔を置いて配置され、それぞれ複数のボルトナット72で支持部材71に固定されている。板状弾性部材73,74,75の先端部73a,74a,75a側は、軸体1の外周面に、軸心1cを中心に60度間隔を置いて配置され、それぞれ複数のボルト76で軸体1に固定されている。板状弾性部材73,74,75の基端部73b,74b,75b側と、先端部73a,74a,75a側は、それぞれ軸体1を挟んで対向する位置に係止されている。
【0129】
正逆微動回転弾性軸受70の用途や使用目的などは限定しないが、例えば、繰り返しモーメント発生装置などの各種装置に取り付けて使用可能であり、図12に示す正逆微動回転弾性軸受50と同様の作用、効果を発揮する。なお、正逆微動回転弾性軸受70においては、多角形(六角形)リング状の支持部材71の内側に3個の板状弾性部材73,74,75を配置しているが、これに限定するものではなく、4個以上の板状弾性部材を配置することもできる。
【0130】
次に、図22図23に示す正逆微動回転弾性軸受80は、正逆方向に微動回転する軸体1の周囲に配置された支持部材81,82と、支持部材81,82にそれぞれ基端部53b,54b側が係止され、軸体1の外周に先端部53a,54a側が係止された複数の板状弾性部材53,54と、を備え、板状弾性部材53,54それぞれの基端部53b,54b側と先端部53a,54a側が、軸体1を挟んで対向する位置に係止されている。複数の板状弾性部材53,54は、同形状、同寸法の板状弾性部材である。支持部材81,82はブロック体85上に一体的に立設され、図23に示すように、支持部材81,82及びブロック体85は正面視形状が凹形状をなしている。
【0131】
図22図23に示すように、正逆微動回転弾性軸受80は、図12に示す正逆微動回転弾性軸受50を左右対称に軸体1の軸心方向に沿って二連配置したものと同様の機能を有している。このように複数の板状弾性部材53,54を並列配置することにより、微小角度で正逆方向に回転を繰り返す軸体1を支持する弾性力を高めることができる。なお、板状弾性部材53,54の形状は任意に設定することができ、板厚や板幅は一定である必要はなく、基端部から先端部まで自由に変化させることができるが、同じ形状・寸法の弾性部材を等間隔で配置すれば同等の機能を発揮する。
【0132】
次に、図24図25に示す正逆微動回転弾性軸受90においては、多角形(四角形)リング状の支持部材91の内側に2個のコイルバネ93,94並びに軸体1が配置されている。コイルバネ93,94は同形状、同寸法であり、コイルバネ93,94の基端部93b,94b側はそれぞれ支持部材91の内周面に係止され、コイルバネ93,94の先端部93a,94a側はそれぞれ平板状の連結部材95,96を介して軸体1の外周面に係止されている。
【0133】
コイルバネ93,94は、それぞれの伸縮方向(長手方向)93s,94sが軸体1を挟んで互いに平行をなすように配置され、連結部材95,96は軸体1の外周面に180度間隔を置いた位置に固定されている。連結部材95,96は軸体1の軸心1cから軸体1の半径方向に突出するように固定され、コイルバネ93,94の伸縮方向(長手方向)93s,94sは連結部材95,96の面方向と直交している。
【0134】
正逆微動回転弾性軸受90は、図12に示す正逆微動回転弾性軸受50と同様に使用することができ、同様の作用効果を得ることができる。また、正逆微動回転弾性軸受90を構成するコイルバネ93,94はシンプルな形状であり、入手容易な汎用部品であるため、正逆微動回転弾性軸受90は構造の簡素化、製作コストの軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明に係る繰り返しモーメント発生装置は、供試体に繰り返し荷重を負荷して材料の疲労強度特性を試験する疲労試験機などにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 主軸
2a,2b 主軸受け部材
3a,3b 梃子部材
4,5,10,11 軸体
1c,4c,5c 軸心
6,7 主偏心重錘ロータ
6a,7a,12a,13a 遠心力
6h 雌ネジ孔
7b 拡径部
7c 重錘部材
7d ロックナット
7e ボルト部材
7f ストッパ部
7g 重錘
8a,8b,9a,9b 副軸受け部材
12,13 副偏心重錘ロータ
14 モータ
14a 回転軸
15,16 中タミングプーリ
17,18 大タミングプーリ
19a,19b,20a,20b 小タミングプーリ
21,22,23 タミングベルト
24 テーブル
24a 上面
24b 下面
24c コーナ部
25 支持部材
25a 上面
25b 底板
26 アンダーテーブル
100 繰り返しモーメント発生装置
Fh 横方向分力
Fv 縦方向分力
Ls,Lm 距離
R 仮想長方形
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25