(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】信号切替機及びコンピュータ
(51)【国際特許分類】
G06F 13/14 20060101AFI20241216BHJP
G06F 3/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G06F13/14 310D
G06F3/00 A
(21)【出願番号】P 2023085420
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2021013102の分割
【原出願日】2021-01-29
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】514154444
【氏名又は名称】株式会社日本アシスト
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】鷲▲ざき▼ 正治
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-164673(JP,A)
【文献】特表2015-519641(JP,A)
【文献】特開2021-005995(JP,A)
【文献】登録実用新案第3224817(JP,U)
【文献】特開2001-142591(JP,A)
【文献】特開2014-010630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 13/10-13/14
G06F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモバイル端末の統合端子にそれぞれ接続される複数のモバイル端子と、
前記複数のモバイル端子のそれぞれに対応して設けられる複数のシリアル通信端子と、
映像出力端子と、
前記複数のモバイル端子のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記モバイル端子及び対応する前記シリアル通信端子に接続される複数のセレクタと、
前記映像出力端子及び前記複数のセレクタに接続されるマルチプレクサと、
前記複数のモバイル端子それぞれの接続先を、前記マルチプレクサ及び対応する前記シリアル通信端子の間で切り替えるよう前記複数のセレクタのそれぞれを制御するとともに、前記映像出力端子の接続先を前記複数のセレクタの間で切り替えるよう前記マルチプレクサを制御するマイコンと、
を有する信号切替機。
【請求項2】
前記マイコンに接続される制御端子をさらに有し、
前記マイコンは、前記制御端子を通じて外部のコンピュータに接続され、該コンピュータの制御に従って、前記複数のセレクタ及び前記マルチプレクサの制御を行う、
請求項
1に記載の信号切替機。
【請求項3】
複数のモバイル端末の統合端子にそれぞれ接続される複数のモバイル端子と、
前記複数のモバイル端子のそれぞれに対応して設けられる複数のシリアル通信端子と、
映像出力端子と、を有し、
前記複数のシリアル通信端子は、前記複数のモバイル端末に対して入力する操作信号を出力するキッティング装置に接続される、
信号切替機とともに用いられるコンピュータであって、
前記複数のモバイル端子のそれぞれが対応する前記シリアル通信端子に接続されることとなるよう前記信号切替機を制御し、
前記複数のモバイル端子のそれぞれが対応する前記シリアル通信端子に接続されている状態で前記操作信号を出力するよう前記キッティング装置を制御することにより、前記複数のモバイル端末のそれぞれに前記操作信号を供給し、
前記複数のモバイル端子のそれぞれが前記映像出力端子に順次接続されることとなるよう前記信号切替機を制御し、その都度、前記映像出力端子から出力される前記モバイル端末のディスプレイ画面と、予め記憶している画像との照合を行う、
コンピュータ。
【請求項4】
前記信号切替機は、
前記複数のモバイル端子のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記モバイル端子及び対応する前記シリアル通信端子に接続される複数のセレクタと、
前記映像出力端子及び前記複数のセレクタに接続されるマルチプレクサと、を有し、
前記コンピュータは、
前記複数のセレクタを制御することにより、前記複数のモバイル端子のそれぞれが対応する前記シリアル通信端子に接続されることとなるよう前記信号切替機を制御し、
前記複数のモバイル端子のそれぞれが前記マルチプレクサに接続されるよう前記複数のセレクタを制御した後、前記複数のセレクタが順次前記映像出力端子に接続されるよう前記マルチプレクサを制御することにより、前記複数のモバイル端子のそれぞれが前記映像出力端子に順次接続されることとなるよう前記信号切替機を制御する、
請求項
3に記載のコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号切替機及びキッティングツールに関し、特に、モバイル端末のキッティングのために使用する信号切替機及びキッティングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末のキッティング(設定作業)を自動化するキッティングツールが注目されている。キッティングツールを用いると複数のモバイル端末を一括で設定することができるので、多数のモバイル端末を使用する企業などにおいては、キッティングツールを用いたモバイル端末の設定が多用されている。
【0003】
特許文献1には、キッティングツールの一例が開示されている。このキッティングツールよれば、コンピュータで記録したシナリオをキッティング装置が再生することにより、複数のモバイル端末のキッティングを同時に実行することが可能になる。キッティング装置とモバイル端末の間は、シリアル通信インターフェイスにより有線接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のキッティングツールでは、キッティングの実行結果を確認するために、各モバイル端末を1台1台目視で確認する必要がある。そこで、作業をより効率化するため、シナリオ再生後に各モバイル端末のディスプレイ画面を読み込み、画像認識によりキッティングが成功したか否かを判定するシステムが求められている。
【0006】
ここで、例えばアップル(登録商標)インコーポレイテッドのLightning(登録商標)のように、シリアル通信インターフェイスとディスプレイインターフェイスとを1つにまとめてなる統合インターフェイスが知られている。この種の統合インターフェイスを有するモバイル端末をキッティングの対象として上記画像認識による判定も行う場合、キッティング装置と、ディスプレイ画面を示す映像信号を取得する画像取得装置との両方を統合インターフェイスに接続する必要がある。そこで、このような接続を実現するため、本願の発明者は、モバイル端末とキッティング装置及び画像取得装置との間に信号切替機を接続し、モバイル端末の接続先をキッティング装置と画像取得装置との間で切り替えながら、キッティングと画像認識による判定とを実行することを検討している。
【0007】
上記信号切替機の内部においては、モバイル端末と外部機器(具体的には、キッティング装置及び画像取得装置)との間でデータ信号をやり取りするための信号線の接続経路と、モバイル端末から外部機器に対して電源信号を送信するための電源線の接続経路とを分離し、信号線の接続経路にのみ、接続先の外部機器を切り替えるためのセレクタを挿入することになる。電源線の接続経路にセレクタを設けないのは、オン抵抗の大きいセレクタを大電流が流れる電源線に接続すると大きな電圧降下が発生してしまう一方で、電源信号はキッティング装置と画像取得装置とで共通であることから、電源線を切り替える必要はないことによるものである。
【0008】
しかしながら、上記構成の信号切替機を用いて実際に外部機器の切り替えを行おうとすると、うまく切り替えられない場合があることが判明した。すなわち、統合インターフェイスを有するモバイル端末の中には、統合インターフェイスに接続された外部機器に応じた動作モードにエントリし、統合インターフェイスからケーブルが抜かれるまで同じ動作モードを維持するものがある。上記信号切替機によれば、セレクタで外部機器の接続先を切り替えてもモバイル端末の動作モードが切り替わらず、その結果として、切替先の外部機器を用いることができなくなってしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的の一つは、電源線の接続経路にセレクタを設けることなく、モバイル端末の動作モードを切り替えることのできる信号切替機及びキッティングツールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による信号切替機は、1以上のモバイル端末、第1の外部機器、及び、第2の外部機器に接続される信号切替機であって、前記1以上のモバイル端末のそれぞれに接続される1以上の信号線と、前記1以上のモバイル端末のそれぞれから電源信号の供給を受ける1以上の第1の電源線と、前記モバイル端末ごとに設けられ、対応する前記信号線の接続先を前記第1の外部機器と前記第2の外部機器との間で切り替える1以上のセレクタと、前記モバイル端末ごとに設けられ、対応する前記第1の電源線を前記第1の外部機器及び前記第2の外部機器のそれぞれに接続する1以上の第1の電源制御装置と、前記1以上のセレクタ及び前記1以上の第1の電源制御装置を制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、前記1以上のセレクタのそれぞれを制御することによって前記1以上の前記信号線それぞれの接続先を前記第1の外部機器と前記第2の外部機器との間で切り替える場合に、前記1以上の第1の電源制御装置のそれぞれを制御することにより前記1以上の第1の電源線のそれぞれを一時的に遮断する、信号切替機である。
【0011】
本発明によるキッティングツールは、前記信号切替機と、前記第1の外部機器と、前記第2の外部機器と、を含むキッティングツールである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1以上のセレクタを用いて1以上の信号線それぞれの接続先を第1の外部機器と第2の外部機器との間で切り替える場合に、1以上の第1の電源制御装置を用いて1以上の第1の電源線のそれぞれを一時的に遮断するので、1以上の第1の電源線のそれぞれを再接続したときに、各モバイル端末と外部機器との間で認証処理を走らせることができる。したがって、電源線の接続経路にセレクタを設けることなく、モバイル端末の動作モードを切り替えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態によるキッティングツール1のシステム構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態による信号切替機2の内部構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態による信号切替機2の内部構成を示す図である。
【
図4】(a)は、モバイル端子Mbの構成の一例を示す図であり、(b)は、シリアル通信端子3bの構成の一例を示す図であり、(c)は、映像出力端子5bの構成の一例を示す図である。
【
図5】モバイル端末MとOTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cとを直接接続した場合に、これらの間で行われる処理を示すシーケンス図である。
【
図6】5台のモバイル端末Mそれぞれに関してコンピュータ4が行う処理を時系列に並べてなる図である。
【
図7】コンピュータ4から信号切替機2の初期設定を行うよう指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。
【
図8】各モバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようコンピュータ4から指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。
【
図9】各モバイル端子Mbの接続先をシリアル通信端子3bに切り替えるようコンピュータ4から指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態によるキッティングツール1のシステム構成を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態による信号切替機2の内部構成を示す図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態による信号切替機2の内部構成を示す図である。
【
図13】5台のモバイル端末Mそれぞれに関して、本発明の第2の実施の形態によるコンピュータ4が行う処理を時系列に並べてなる図である。
【
図14】1台目のモバイル端末Mに接続されているモバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようコンピュータ4から指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。
【
図15】n台目(n=2~5)のモバイル端末Mに接続されているモバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようコンピュータ4から指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。
【
図16】本発明の第3の実施の形態による信号切替機2の内部構成を示す図である。
【
図17】本発明の第3の実施の形態による信号切替機2の内部構成を示す図である。
【
図18】本発明の第1の実施の形態の変形例による信号切替機2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるキッティングツール1のシステム構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態によるキッティングツール1は、信号切替機2、キッティング装置3、コンピュータ4、及び複数のUSB変換器5を含んで構成される。
図1には、キッティングツール1によるキッティングの対象となる複数のモバイル端末Mも示している。各モバイル端末Mは例えばスマートフォン又はタブレット端末であり、上述した統合インターフェイスである統合端子Maを有して構成される。
【0016】
信号切替機2は、統合インターフェイスをシリアル通信インターフェイス及びディスプレイインターフェイスに分けるための装置であり、それぞれモバイル端末Mの統合端子Maに接続される複数のモバイル端子Mbと、それぞれHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)変換器5cを介してUSB変換器5の映像入力端子5aに接続される複数の映像出力端子5bと、それぞれOTG変換器3wを介してキッティング装置3の出力ポート3aに接続される複数のシリアル通信端子3bと、コンピュータ4に接続される制御端子4aとを有して構成される。
【0017】
本実施の形態による信号切替機2においては、1つのモバイル端子Mbに対し各1つの映像出力端子5b及びシリアル通信端子3bが設けられており、信号切替機2は、モバイル端子Mbの接続先を、対応する映像出力端子5bと、対応するシリアル通信端子3bとの間で切り替える役割を果たす。
【0018】
各モバイル端子Mbはモバイル端末Mの統合端子Maと接続可能に構成された端子である。モバイル端子Mbと統合端子Maとの間は、例えば市販のLightning(登録商標)ケーブルによって接続される。
【0019】
各映像出力端子5bは、典型的にはモバイル端末Mの統合端子Maと同じ規格に従う端子であり、例えばLightning(登録商標)の端子によって構成される。HDMI(登録商標)変換器5cは、映像出力端子5bの出力信号をHDMI(登録商標)に従う映像信号に変換するための装置である。一例として、映像出力端子5bがLightning(登録商標)の端子である場合のHDMI(登録商標)変換器5cは、Lightning(登録商標)の出力信号から映像信号を取り出すためのLightning(登録商標)-Digital AVアダプタとなる。
【0020】
ここで、本実施の形態においてモバイル端末Mの統合端子Maから出力される信号に含まれる映像信号は、モバイル端末Mのディスプレイ画面の映像を示す信号である。モバイル端末Mは、統合端子Maから常に映像信号を出力しているわけではなく、ディスプレイモードにエントリしている場合にのみ映像信号を出力するよう構成される。
【0021】
USB変換器5は、HDMI(登録商標)変換器5cによって生成された映像信号をコンピュータ4でデータ処理できるUSBデータに変換し、コンピュータ4に出力する画像取得装置である。本発明における「第2の外部機器」は、コンピュータ4と、各USB変換器5と、各HDMI(登録商標)変換器5c(第2の変換器)とによって構成される。USB変換器5は、HDMI(登録商標)変換器5cから映像信号の入力を受ける映像入力端子5aを有しており、HDMI(登録商標)変換器5cと映像入力端子5aの間は、例えば市販のHDMI(登録商標)ケーブルによって接続される。詳しくは後述するが、コンピュータ4は、USB変換器5から供給されるUSBデータにより示されるモバイル端末Mのディスプレイ画面と、予め記憶している画像とを照合する処理を行う。なお、USB変換器5にディスプレイを接続し、映像入力端子5aを通じてUSB変換器5に入力される映像信号をこのディスプレイに表示することとしてもよい。
【0022】
各シリアル通信端子3bも、映像出力端子5bと同様に典型的にはモバイル端末Mの統合端子Maと同じ規格に従う端子であり、例えばLightning(登録商標)の端子によって構成される。各シリアル通信端子3bは、例えばUSB On-The-Goに対応する変換器であるOTG変換器3wを介して、例えばUSB Type-Aの規格に従う端子であるキッティング装置3の出力ポート3aに接続される。シリアル通信端子3bがLightning(登録商標)の端子であり、出力ポート3aがUSB Type-Aの端子である場合のOTG変換器3wは、市販のLightning-OTG変換アダプタによって構成され得る。OTG変換器3wには、図示したように、モバイル端末Mの充電器3hが接続され得る。充電器3hは商用電源に接続されており、商用電源に基づいて後述する電源信号Host_Pw(x)を生成し、OTG変換器3wを介して信号切替機2に供給することにより、モバイル端末Mを充電する役割を果たす。
【0023】
キッティング装置3は、モバイル端末Mに対して操作信号を入力するためのUSB子デバイスとして機能する装置である。本発明における「第1の外部機器」は、キッティング装置3と、各OTG変換器3w(第1の変換器)とによって構成される。図示していないが、キッティング装置3の内部には、コンピュータ4に接続されるマスターマイコンと、それぞれマスターマイコンに接続される複数のスレーブマイコンとが設けられる。マスターマイコンは、コンピュータ4からキッティング用のシナリオ(モバイル端末Mの一連の操作情報)の供給を受け付け、受け付けたシナリオに含まれる操作情報を逐次、複数のスレーブマイコンのそれぞれに分配する機能を有する。一方、複数のスレーブマイコンはそれぞれ、マスターマイコンから入力された操作情報をキー情報(キーボードを構成する1以上のキーを示す情報)又はマウス情報(マウスの動きやクリック動作を示す情報)を示す操作信号に変換したうえで、出力ポート3a及び信号切替機2を介して、対応するモバイル端末Mに送信する機能を有する。
【0024】
ここで、モバイル端末Mが上記操作信号を受け付けることができるのは、モバイル端末Mがシリアル通信モードにエントリしている場合に限られる。モバイル端末Mが上述したディスプレイモードにエントリしている場合には、キッティング装置3からモバイル端末Mに上記操作信号を入力することはできない。
【0025】
コンピュータ4は例えば市販のパーソナルコンピュータであり、プロセッサ及びメモリを有して構成される。プロセッサは、メモリ内に格納されるプログラムを読み出して実行する処理装置であり、以下で説明するコンピュータ4の各処理を実行する役割を果たす。メモリは、プロセッサが実行するためのプログラムと、プロセッサによる読み書きの対象となる各種のデータとを記憶する記憶装置である。メモリには、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの主記憶装置と、ハードディスクなどの補助記憶装置とが含まれる。
【0026】
コンピュータ4は、信号切替機2、キッティング装置3、及び複数のUSB変換器5のそれぞれに接続されており、これらと協働して、各モバイル端末Mのキッティングを実行するよう構成される。コンピュータ4が実行する処理の概要を説明すると、コンピュータ4は、まず初めに信号切替機2を制御することによって各モバイル端末Mをキッティング装置3に接続し、次いでキッティング装置3にシナリオを再生させる。そして、1つのシナリオの再生が終了したら、信号切替機2を制御することによって各モバイル端末Mを対応するUSB変換器5に接続することにより、各USB変換器5に、対応するモバイル端末Mのディスプレイ画面を供給する。この供給を受けたUSB変換器5は、供給されたディスプレイ画面をUSBデータに変換し、コンピュータ4に出力する。コンピュータ4は、こうして入力されたUSBデータにより示されるモバイル端末Mのディスプレイ画面と、予め記憶している画像とを照合し、その結果を示す結果情報を生成する。
【0027】
コンピュータ4による照合は、モバイル端末Mのディスプレイ画面の一部又は全体について、予め記憶している画像と一致しているか否かを画素単位で比較することによって実行される。比較対象となるすべての画素が一致していた場合、コンピュータ4は照合OKを示す結果情報を生成する。一方、一致しない画素があった場合、コンピュータ4は照合NGを示す結果情報を生成する。コンピュータ4は、こうして生成した結果情報に基づいてキッティングが成功したか否かを判定し、判定結果に応じた処理(ユーザへの通知、又は、次のキッティングの開始)を行う。
【0028】
図2及び
図3は、信号切替機2の内部構成を示す図である。これらの図に示すように、信号切替機2は、
図1にも示した各端子の他に、マイコン10(制御装置)と、複数のセレクタ11と、複数の電源制御装置12(第2の電源制御装置)と、複数の電源制御装置13(第1の電源制御装置)とを有して構成される。なお、各5つのモバイル端子Mb、シリアル通信端子3b、及び映像出力端子5bについては、
図2及び
図3の両方に同じものを図示している。
【0029】
セレクタ11、電源制御装置12、及び電源制御装置13はそれぞれ、モバイル端子Mbごとに1つずつ設けられる。なお、同図には信号切替機2が5個のモバイル端子Mbを有する例を示しているが、信号切替機2が有するモバイル端子Mbの個数は5個に限られず、1個以上であればよい。以下では、信号切替機2が5個のモバイル端子Mbを有することを前提として説明を続ける。
【0030】
マイコン10は、制御端子4aを通じてコンピュータ4に接続される集積回路であり、コンピュータ4の制御に従って各セレクタ11、各電源制御装置12、及び各電源制御装置13の制御を行う役割を有している。具体的には、イネーブルバー信号30EnableBAR及び選択信号P_Selectを用いて各セレクタ11を、イネーブル信号Host_ENを用いて各電源制御装置12を、イネーブル信号App_ENを用いて各電源制御装置13を、それぞれ制御する。
【0031】
各セレクタ11と対応するモバイル端子Mbとの間は、
図2に示すように、5本の信号線Lout[x01:x05]によって接続される。ただし、xは自然数であり、その最大値はモバイル端子Mbの個数に等しい。また、各セレクタ11は、5本の信号線Lin[x01:x05]によって対応するシリアル通信端子3bに接続され、5本の信号線Lin[x11:x15]によって対応する映像出力端子5bに接続される。
【0032】
各電源制御装置12は、
図3に示すように、対応するシリアル通信端子3bから電源信号Host_Pw(x)が供給される電源線と、対応するモバイル端末Mbに対して電源信号Host_Power(x)を供給する電源線(第2の電源線)とに接続される。電源信号Host_Pw(x)は、対応するシリアル通信端子3bの外部に接続されたOTG変換器3wから供給される電源信号である。各電源制御装置12は、入力端子に供給された電源信号Host_Pw(x)に基づいて電源信号Host_Power(x)を生成するよう構成される。
【0033】
各電源制御装置13は、
図3に示すように、対応するモバイル端子Mbから電源信号Ap_iPower(x)が供給される電源線(第1の電源線)と、対応するシリアル通信端子3b及び映像出力端子5bのそれぞれに対して共通に電源信号App_Power(x)を供給する電源線とに接続される。電源信号Ap_iPower(x)は、対応するモバイル端子Mbの外部に接続されたモバイル端末Mから供給される電源信号である。各電源制御装置13は、入力端子に供給された電源信号Ap_iPower(x)に基づいて電源信号App_Power(x)を生成するよう構成される。
【0034】
ここで、信号切替機2において電源線の接続経路にセレクタを設けていないのは、オン抵抗の大きいセレクタ(例えば6~10Ω程度)を大電流が流れる電源線(例えば数百mA程度)に接続すると、例えば1V以上の大きな電圧降下が発生してしまう一方で、電源信号はOTG変換器3wとHDMI(登録商標)変換器5cとで共通であることから、電源線を切り替える必要はないことによるものである。
【0035】
図4(a)は、モバイル端子Mbの構成の一例を示す図である。同図に示すように、この例によるモバイル端子Mbは、1番~8番の8個の端子を有して構成される。8番の端子は接地電位を外部に出力する接地端子であり、信号切替機2の内部で接地配線に接続される。4番の端子は、電源制御装置12から供給される電源信号Host_Power(x)をモバイル端末Mに出力する電源出力端子である。5番の端子は、モバイル端末Mから入力される電源信号Ap_iPower(x)を電源制御装置13に供給する電源入力端子である。その他の端子は、対応するセレクタ11に接続されるデータ端子である。具体的に説明すると、1番の端子は信号線Lout[x01]に接続され、2番の端子は信号線Lout[x02]に接続され、3番の端子は信号線Lout[x03]に接続され、6番の端子は信号線Lout[x04]に接続され、7番の端子は信号線Lout[x05]に接続される。
【0036】
図4(b)は、シリアル通信端子3bの構成の一例を示す図である。同図に示すように、この例によるシリアル通信端子3bは、モバイル端子Mbと同様、1番~8番の8個の端子を有して構成される。このうち8番の端子は接地電位を外部に出力する接地端子であり、信号切替機2の内部で接地配線に接続される。5番の端子は、電源制御装置13から供給される電源信号App_Power(x)を外部に出力する電源出力端子である。4番の端子は、OTG変換器3wから入力される電源信号Host_Pw(x)を電源制御装置12に供給する電源入力端子である。その他の端子は、対応するセレクタ11に接続されるデータ端子である。具体的に説明すると、1番の端子は信号線Lin[x01]に接続され、2番の端子は信号線Lin[x02]に接続され、3番の端子は信号線Lin[x03]に接続され、6番の端子は信号線Lin[x04]に接続され、7番の端子は信号線Lin[x05]に接続される。
【0037】
図4(c)は、映像出力端子5bの構成の一例を示す図である。同図に示すように、この例による映像出力端子5bは、モバイル端子Mb及びシリアル通信端子3bと同様、1番~8番の8個の端子を有して構成される。このうち8番の端子は接地電位を外部に出力する接地端子であり、信号切替機2の内部で接地配線に接続される。5番の端子は、電源制御装置13から供給される電源信号App_Power(x)を外部に出力する電源出力端子である。4番の端子は電源信号Host_Pw(x)の入力端子であるが、信号切替機2では使用しない。その他の端子は、対応するセレクタ11に接続されるデータ端子である。具体的に説明すると、1番の端子は信号線Lin[x11]に接続され、2番の端子は信号線Lin[x12]に接続され、3番の端子は信号線Lin[x13]に接続され、6番の端子は信号線Lin[x14]に接続され、7番の端子は信号線Lin[x15]に接続される。
【0038】
図2及び
図3に戻る。
図2に示した各セレクタ11は、イネーブルバー信号30EnableBARがローになっている場合にアクティブ化し、ハイになっている場合に非アクティブ化するよう構成される。セレクタ11が非アクティブになっているとき、各セレクタ11に接続されている複数の信号線Lout[x01:x05]は、対応する信号線Lin[x01:x05],Lin[x11:x15]のいずれにも接続されない状態となる。
【0039】
アクティブになっている場合の各セレクタ11は、対応する複数の信号線Lin[x01:x05]と、対応する複数の信号線Lin[x11:x15]とのいずれか一方を選択信号P_Selectに応じて選択し、選択した一方を、対応する複数の信号線Lout[x01:x05]に接続するよう構成される。これにより各セレクタ11は、複数の信号線Lout[x01:x05]の接続先を、キッティング装置3(OTG変換器3w)とコンピュータ4(HDMI(登録商標)変換器5c)との間で切り替える役割を果たす。
【0040】
図3に示した電源制御装置12は、ゲートにイネーブル信号Host_ENが供給される電界効果トランジスタを含んで構成される。この電界効果トランジスタのソースは、対応するシリアル通信端子3bの電源入力端子(
図4(b)に示した4番の端子)に接続される。したがって、ソースには、対応するOTG変換器3wから電源信号Host_Pw(x)が供給される。また、ドレインは、対応するモバイル端子Mbの電源出力端子(
図4(a)に示した4番の端子)に接続される。マイコン10がイネーブル信号Host_ENをハイに制御すると、電源制御装置12内の電界効果トランジスタがオンの状態になり、そのソースとドレインの間が接続される。その結果として、対応するシリアル通信端子3bの電源入力端子に入力されている電源信号Host_Pw(x)が電源信号Host_Power(x)としてモバイル端子Mbの電源出力端子に供給されるようになる。こうしてモバイル端子Mbの電源出力端子に電源信号Host_Power(x)が供給されているとき、モバイル端子Mbに接続されたモバイル端末Mは充電中の状態となる。一方、マイコン10がイネーブル信号Host_ENをローに制御すると、電源制御装置12内の電界効果トランジスタがオフとなり、モバイル端子Mbの電源出力端子への電源信号Host_Power(x)の供給が停止する。
【0041】
電源制御装置13は、ゲートにイネーブル信号App_ENが供給される電界効果トランジスタを含んで構成される。この電界効果トランジスタのソースは、対応するモバイル端子Mbの電源入力端子(
図4(a)に示した5番の端子)に接続される。したがって、ソースには、モバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(x)が供給される。また、ドレインは、対応するシリアル通信端子3bの電源出力端子(
図4(b)に示した5番の端子)、及び、対応する映像出力端子5bの電源出力端子(
図4(c)に示した5番の端子)に共通に接続される。マイコン10がイネーブル信号App_ENをハイに制御すると、電源制御装置13内の電界効果トランジスタがオンの状態になり、そのソースとドレインの間が接続される。その結果として、電源信号Ap_iPower(x)から電源信号App_Power(x)が生成され、対応するシリアル通信端子3bの電源出力端子と、対応する映像出力端子5bの電源出力端子とに供給される。一方、マイコン10がイネーブル信号App_ENをローに制御すると、電源制御装置13内の電界効果トランジスタがオフとなり、対応するシリアル通信端子3bの電源出力端子、及び、対応する映像出力端子5bの電源出力端子への電源信号App_Power(x)の供給が停止する。
【0042】
ここで、モバイル端末Mの統合端子Maに外部機器(具体的には、OTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5c)を接続した際に、これらの間で行われる認証処理について、詳しく説明する。モバイル端末M、OTG変換器3w、HDMI(登録商標)変換器5cはそれぞれ認証IDを記憶する認証チップを内蔵しており、ケーブルを介して物理的に接続されると、認証IDの送受信を通して互いに認証を行うよう構成される。モバイル端末Mは、この認証が成功した場合にのみ接続相手の機器を認識し、その機器に応じたモードにエントリするよう構成される。
【0043】
図5は、モバイル端末MとOTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cとを直接接続した場合に、これらの間で行われる上記認証のための処理を示すシーケンス図である。同図に示すように、モバイル端末MとOTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cとがケーブルにより接続されると(ステップS1)、5番の端子を通じて、モバイル端末MからOTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cへの電源信号App_Power(=電源信号Ap_iPower)の供給が開始される(ステップS2)。モバイル端末M及びOTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cはそれぞれ、この電源信号App_Powerの供給開始によって、何らかの機器が接続されたことを検出する(ステップS3a,S3b)。続いてモバイル端末Mは、内蔵している認証チップから第1の認証IDを読み出し、1番の端子を用いて送信する(ステップS4)。これを受けたOTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cは、接続相手がモバイル端末Mであることを検出する(ステップS5)とともに、内蔵している認証チップから第2の認証IDを読み出し、1番の端子を用いて送信する(ステップS6)。モバイル端末Mは、こうして受信される第2の認証IDに基づいて接続相手の機器の種類を判別し、判別した種類に応じたモードにエントリする(ステップS7)。具体的には、OTG変換器3wの第2の認証IDが受信された場合にはシリアル通信モードにエントリし、HDMI(登録商標)変換器5cの第2の認証IDが受信された場合にはディスプレイモードにエントリする。これにより、モバイル端末Mと、OTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cとの間での通信が実行可能となる。
【0044】
図5から理解されるように、モバイル端末Mのモード設定が行われるためには認証IDによる認証が必要であり、そのためには、電源信号App_Powerの供給開始をモバイル端末MとOTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cとの双方で検出する必要がある。モバイル端末Mの統合端子Maから一旦ケーブルを抜けば、これらの処理が滞りなく行われるが、もし仮に、信号切替機2において電源信号App_Powerの供給を継続したままで、セレクタ11を制御することによってモバイル端末Mの接続先を切り替えたとすると、ステップS3a,S3bの検出が行われず、したがってステップS4~S7の認証処理及びモード設定も行われないことになる。そこで信号切替機2においては、各モバイル端末Mの接続先を切り替える場合に電源信号App_Powerの供給を一時的に遮断し、それによって、電源信号App_Powerの供給を再開したときに各モバイル端末MとOTG変換器3w又はHDMI(登録商標)変換器5cとの間で認証処理が実行されるようにしている。以下、そのためにコンピュータ4及びマイコン10が行う処理の具体的な内容について、
図6~
図9を参照しながら詳しく説明する。
【0045】
図6は、5台のモバイル端末Mそれぞれに関してコンピュータ4が行う処理を時系列に並べてなる図である。同図に示すように、コンピュータ4はまず、信号切替機2の初期設定を行う(時刻t1)。具体的には、信号切替機2内のマイコン10に対し、信号切替機2の初期設定を行うよう指示する。
【0046】
図7は、コンピュータ4から信号切替機2の初期設定を行うよう指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。同図には、参考として、機器の物理的な接続作業についても破線により図示している。
【0047】
初期状態は、キッティング装置3及び各USB変換器5が信号切替機2に接続された状態である(ステップS10)。この接続は、ユーザの手作業によって行われる。この時点ではまだ、各モバイル端末Mを信号切替機2に接続しない。
【0048】
ステップS11~S14の処理は、コンピュータ4の制御を受けてマイコン10が実行する処理である。具体的に説明すると、マイコン10はまず、各信号をディスイネーブルにする(具体的には、イネーブル信号Host_ENをロー、イネーブル信号App_ENをロー、イネーブルバー信号30EnableBARをハイに、それぞれ制御する)ことにより、モバイル端末Mに何も繋がっていない状態を作る(ステップS11)。
【0049】
次にマイコン10は、選択信号P_Selectを用いて各セレクタ11を制御することにより、各モバイル端子Mbの接続先をシリアル通信端子3b側に切り替える(ステップS12)。具体的には、各モバイル端子Mbに含まれる複数のデータ端子の接続先を、対応するシリアル通信端子3b内の複数のデータ端子に切り替える。そして、イネーブル信号Host_ENをハイに制御することにより、各モバイル端子Mbの電源出力端子への電源信号Host_Power(x)の供給を開始する(ステップS13)。
【0050】
続いてマイコン10は、イネーブルバー信号30EnableBARをローに制御することにより各セレクタ11をアクティブ化すると同時に、イネーブル信号App_ENをハイに制御することによって、各モバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(x)が供給される電源線を、対応するシリアル通信端子3bの電源出力端子及び映像出力端子5bの電源出力端子に接続する(ステップS14)。
【0051】
ステップS14の完了後、ユーザの手作業によって、各モバイル端末Mを信号切替機2に接続する(ステップS15)。この時点で各モバイル端子Mbの接続先はシリアル通信端子3bとなっていることから、ステップS15で信号切替機2に接続された各モバイル端末Mと、対応するシリアル通信端子3bに接続されているOTG変換器3wとの間で
図5に示した認証処理が実行され、その結果として、各モバイル端末Mはシリアル通信モードにエントリし、キッティング装置3からの操作信号を受け付け可能な状態になる。ここまでの一連の処理及び作業によって、初期設定が完了する。
【0052】
図6に戻る。コンピュータ4は、初期設定が完了した後、各モバイル端末Mのキッティングを開始する(時刻t2)。具体的には、予め記憶しているキッティング用シナリオをキッティング装置3に供給し、再生させる。これにより、各モバイル端末Mに一連の操作信号が供給され、キッティングが実行される。シナリオの再生が完了した後、コンピュータ4は、各モバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようマイコン10を制御する(時刻t3。切替1)。
【0053】
図8は、各モバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようコンピュータ4から指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。マイコン10はまず、イネーブルバー信号30EnableBARをハイに制御することにより、各セレクタ11を非アクティブ化する(ステップS20)とともに、イネーブル信号Host_ENをローに制御して各モバイル端末Mに電源信号Host_Power(x)を供給するための電源線を遮断することにより、各モバイル端子Mbの電源出力端子への電源信号Host_Power(x)の供給を停止する(ステップS21)。これにより、各モバイル端末MとOTG変換器3wとを接続していた信号線が切り離されるとともに、各モバイル端末Mへの電源信号Host_Power(x)の供給が一時的に停止される(モバイル端末Mが充電されない状態になる)。続いてマイコン10は、イネーブル信号App_ENをローに制御することによって各モバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(x)が供給される電源線を一時的に遮断し、それによって、各シリアル通信端子3b及び各映像出力端子5bへの電源信号App_Power(x)の供給を一時的に停止する(ステップS22)。
【0054】
その後、マイコン10は、選択信号P_Selectを用いて各セレクタ11を制御することにより、各モバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5b側に切り替える(ステップS23)。具体的には、各モバイル端子Mbに含まれる複数のデータ端子の接続先を、対応する映像出力端子5b内の複数のデータ端子に切り替える。次にマイコン10は、改めてイネーブル信号Host_ENをハイに制御することにより、各モバイル端子Mbの電源出力端子への電源信号Host_Power(x)の供給を開始する(ステップS24)。
【0055】
続いてマイコン10は、イネーブルバー信号30EnableBARをローに制御することによって各セレクタ11をアクティブ化すると同時に、イネーブル信号App_ENをハイに制御することによって各モバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(x)が供給される電源線を各シリアル通信端子3bの電源出力端子及び映像出力端子5bの電源出力端子に再接続し、それによって、各シリアル通信端子3b及び各映像出力端子5bへの電源信号App_Power(x)の供給を再開する(ステップS25)。なお、ここでいう「同時」は、信号線の接続が完了する前に電源線が再接続されてしまうことのないようにする、という意味である。信号線の接続と電源線の接続とを「同時」に行うことにより、モバイル端末MとHDMI(登録商標)変換器5cとの間で
図5に示した認証処理が正常に行われ、モバイル端末Mをディスプレイモードにエントリさせることが可能になる。こうしてモバイル端末Mがディスプレイモードにエントリすることにより、コンピュータ4は、各モバイル端末Mのディスプレイ画面を示すデータをUSB変換器5から受信できるようになる。
【0056】
図6に戻る。各モバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替える処理が完了した後、コンピュータ4により上述した照合処理が実行される(時刻t4)。コンピュータ4は、この照合の結果を示す結果情報を生成し、生成した結果情報に基づいて、キッティングが成功したか否かを判定する。そして、成功したと判定した場合には、次のキッティングを始めるために、各モバイル端子Mbの接続先をシリアル通信端子3bに切り替えるようマイコン10を制御する(時刻t5。切替2)。一方、失敗したと判定した場合には、コンピュータ4はキッティングを中断し、失敗した旨をコンピュータ4のユーザ(キッティング作業者)に通知する。この後は、ユーザによる対応が行われる。
【0057】
図9は、各モバイル端子Mbの接続先をシリアル通信端子3bに切り替えるようコンピュータ4から指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。マイコン10はまず、イネーブルバー信号30EnableBARをハイに制御することにより、各セレクタ11を非アクティブ化する(ステップS30)とともに、イネーブル信号Host_ENをローに制御して各モバイル端末Mに電源信号Host_Power(x)を供給するための電源線を遮断することにより、各モバイル端子Mbの電源出力端子への電源信号Host_Power(x)の供給を停止する(ステップS31)。これにより、各モバイル端末MとHDMI(登録商標)変換器5cとを接続していた信号線が切り離されるとともに、各モバイル端末Mへの電源信号Host_Power(x)の供給が一時的に停止される(モバイル端末Mが充電されない状態になる)。続いてマイコン10は、イネーブル信号App_ENをローに制御することによって各モバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(x)が供給される電源線を一時的に遮断し、それによって、各シリアル通信端子3b及び各映像出力端子5bへの電源信号App_Power(x)の供給を一時的に停止する(ステップS32)。
【0058】
次にマイコン10は、選択信号P_Selectを用いて各セレクタ11を制御することにより、各モバイル端子Mbの接続先をシリアル通信端子3b側に切り替える(ステップS33)。具体的には、各モバイル端子Mbに含まれる複数のデータ端子の接続先を、対応するシリアル通信端子3b内の複数のデータ端子に切り替える。その後、マイコン10は、改めてイネーブル信号Host_ENをハイに制御することにより、各モバイル端子Mbの電源出力端子への電源信号Host_Power(x)の供給を開始する(ステップS34)。
【0059】
続いてマイコン10は、イネーブルバー信号30EnableBARをローに制御することによって各セレクタ11をアクティブ化すると同時に、イネーブル信号App_ENをハイに制御することによって各モバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(x)が供給される電源線を各シリアル通信端子3bの電源出力端子及び映像出力端子5bの電源出力端子に再接続し、それによって、各シリアル通信端子3b及び各映像出力端子5bへの電源信号App_Power(x)の供給を再開する(ステップS35)。なお、ここでいう「同時」の意味は、上述したステップS25における「同時」と同様である。ステップS25と同様、信号線の接続と電源線の接続とを「同時」に行うことにより、モバイル端末MとOTG変換器3wとの間で
図5に示した認証処理が正常に行われ、モバイル端末Mをシリアル通信モードにエントリさせることが可能になる。こうしてモバイル端末Mがシリアル通信モードにエントリすることにより、キッティング装置3から各モバイル端末Mに対し、操作信号を供給できるようになる。
【0060】
図6に戻る。各モバイル端子Mbの接続先をシリアル通信端子3bに切り替える処理が完了した後、コンピュータ4は再び、各モバイル端末Mのキッティングを開始する(時刻t6)。この後の処理は、時刻t2以降の処理の繰り返しとなる。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態によるキッティングツール1及び信号切替機2によれば、各セレクタ11を用いて信号線Lout[x01:x05]それぞれの接続先をキッティング装置3とコンピュータ4との間で切り替える場合に、App_Power(x)を供給するための電源線を一時的に遮断するので、この電源線を再接続したときに、各モバイル端末Mと外部機器(具体的には、OTG変換器3w又はUSB変換器5)との間で認証処理を走らせることができる。したがって、電源線の接続経路にセレクタを設けることなく、モバイル端末Mの動作モードを切り替えることが可能になる。
【0062】
図10は、本発明の第2の実施の形態によるキッティングツール1のシステム構成を示す図である。本実施の形態によるキッティングツール1は、モバイル端末Mの統合端子Maから出力される映像信号からUSBデータを取得する処理を各1台のHDMI(登録商標)変換器5c及びUSB変換器5により行う点で、第1の実施の形態によるキッティングツール1と相違している。以下、第1の実施の形態によるキッティングツール1との相違点に着目して説明を続ける。
【0063】
本実施の形態による信号切替機2は、各モバイル端子Mbに共通の1つの映像出力端子5bを有している。この映像出力端子5bに対しHDMI(登録商標)変換器5cを介してUSB変換器5が接続される点、及び、USB変換器5の構成及び動作については、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
図11及び
図12は、本実施の形態による信号切替機2の内部構成を示す図である。なお、
図2及び
図3の場合と同様、各5つのモバイル端子Mb、シリアル通信端子3b、及び映像出力端子5bについては、
図11及び
図12の両方に同じものを図示している。
図11に示すように、本実施の形態による信号切替機2では、各セレクタ11に接続されている信号線Lin[x11:x15]がマルチプレクサ14を介して1つの映像出力端子5bに接続されている。
【0065】
マルチプレクサ14は、映像出力端子5bを構成する複数のデータ端子の接続先を複数のセレクタ11の間で切り替える装置である。マルチプレクサ14と映像出力端子5bの間は、信号線Lin[121:125]により接続される。マルチプレクサ14には、マイコン10から、イネーブル信号49Enableと選択信号RC[0:2]とが供給される。マイコン10は、イネーブル信号49Enableを用いてマルチプレクサ14の状態を制御するとともに、選択信号RC[0:2]を用いて5セットの信号線Lin[111:115]~信号線Lin[511:515]のうちの1セットを選択する。マルチプレクサ14は、こうして選択された信号線Lin[x11:x15]を、信号線Lin[121:125]を介して映像出力端子5b内の対応する各データ端子に接続することにより、上記切り替えを行う。
【0066】
また、本実施の形態による信号切替機2は、デコーダ15を有して構成される。デコーダ15は複数の電源制御装置13のうちの1つを選択するための装置であり、マイコン10からイネーブル信号MApp_Eと選択信号RC[0:2]の入力を受け、5つの電源制御装置13のそれぞれに対応する5つの選択信号MApp_ENを生成するよう構成される。
【0067】
本実施の形態による電源制御装置13は、ゲートにイネーブル信号App_ENが供給される電界効果トランジスタ(以下「第1の電界効果トランジスタ」という)とは別に、ゲートにイネーブル信号MApp_ENが供給される電界効果トランジスタ(以下「第2の電界効果トランジスタ」という)を有して構成される。第2の電界効果トランジスタのソースには、モバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(x)が供給される。また、第2の電界効果トランジスタのドレインは、
図12に示したダイオード13aを介して、映像出力端子5bの電源出力端子(
図4(c)に示した5番の端子)に接続される。ダイオード13aは電源制御装置13ごとに設けられており、対応する第2の電界効果トランジスタのドレインにアノードが接続され、映像出力端子5bの電源出力端子にカソードが接続されるように回路に挿入される。各ダイオード13aのカソードは、映像出力端子5bの電源出力端子に共通に接続される。本実施の形態においては、第1の電界効果トランジスタのドレインは映像出力端子5bの電源出力端子には接続されず、対応するシリアル通信端子3bの電源出力端子(
図4(b)に示した5番の端子)にのみ接続される。
【0068】
デコーダ15が、選択信号RC[0:2]によって選択されたイネーブル信号MApp_EN(x)をハイに制御すると、対応する電源制御装置13内の第2の電界効果トランジスタがオンの状態になり、そのソースとドレインの間が接続される。その結果として、電源信号Ap_iPower(x)から電源信号MApp_Pw(x)が生成され、ダイオード13aを介して、電源信号App_Power(0)として映像出力端子5bの電源出力端子に供給される。一方、デコーダ15が、選択信号RC[0:2]によって選択されていないイネーブル信号MApp_EN(x)をローに制御すると、対応する電源制御装置13内の第2の電界効果トランジスタがオフの状態になり、電源信号MApp_Pw(x)の生成が停止される。ただし、他の電源制御装置13内の第2の電界効果トランジスタがオンの状態になっていれば、映像出力端子5bの電源出力端子へは電源信号App_Power(0)が引き続き供給される。
【0069】
図13は、5台のモバイル端末Mそれぞれに関して、本実施の形態によるコンピュータ4が行う処理を時系列に並べてなる図である。このうち時刻t1~t3までの処理(初期設定及び1回目のキッティング)は、第1の実施の形態での処理と同様である。シナリオの再生が完了した後、コンピュータ4は、1台目のモバイル端末Mに接続されているモバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようマイコン10を制御する(時刻t3。切替3)。
【0070】
図14は、1台目のモバイル端末Mに接続されているモバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようコンピュータ4から指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。同図に示すように、マイコン10はまず、イネーブル信号49Enableをローに制御することにより、マルチプレクサ14を非アクティブ化する(ステップS40)。続いてマイコン10は、
図8に示したステップS20,S21と同様の処理を行った後(ステップS41,S42)、イネーブル信号MApp_Eをローに制御することによりデコーダ15から出力されるすべてのイネーブル信号MApp_ENをローに制御することによって各モバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(x)が供給される電源線と映像出力端子5b内の電源出力端子との接続を一時的に遮断し、それによって電源信号App_Power(0)の供給を停止する(ステップS43)。
【0071】
次にマイコン10は、選択信号P_Selectを用いて各セレクタ11を制御することにより、各モバイル端子Mbの接続先をマルチプレクサ14側に切り替える(ステップS44)。そして、改めてイネーブル信号Host_ENをハイに制御することにより、各モバイル端子Mbの電源出力端子への電源信号Host_Power(x)の供給を開始する(ステップS45)。
【0072】
続いてマイコン10は、イネーブルバー信号30EnableBARをローに制御することにより、各セレクタ11をアクティブ化する(ステップS46)。そして、選択信号RC[0:2]を用いてマルチプレクサ14及びデコーダ15を制御することにより、1台目のモバイル端末Mに対応するセレクタ11(に接続されている信号線Lin[x11:x15])を映像出力端子5bに接続するとともに、1台目のモバイル端末Mの電源信号Ap_iPower(1)を選択する(ステップS47)。この時点では、デコーダ15は、すべてのイネーブル信号MApp_ENをローに制御した状態を維持する。
【0073】
その後、マイコン10は、イネーブル信号49Enableをハイに制御することによってマルチプレクサ14をアクティブ化すると同時に、イネーブル信号MApp_Eをハイにしてイネーブル信号MApp_EN(1)をハイに制御することによって1台目のモバイル端末Mから電源信号Ap_iPower(1)が供給される電源線を映像出力端子5bの電源出力端子に再接続し、それによって、映像出力端子5bへの電源信号App_Power(0)の供給を再開する(ステップS48)。ステップS48における「同時」の意味は、上述したステップS25における「同時」と同様である。ステップS48が終了すると、1台目のモバイル端末MとHDMI(登録商標)変換器5cとの間で、
図5に示した認証処理が行われる。そして、その結果として1台目のモバイル端末Mがディスプレイモードにエントリし、1台目のモバイル端末Mのディスプレイ画面を示すデータがUSB変換器5からコンピュータ4に供給されるようになる。
【0074】
図13に戻る。1台目のモバイル端末Mに接続されているモバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替える処理が完了した後、コンピュータ4により上述した照合処理が実行される(時刻t4)。コンピュータ4は、この照合の結果を示す結果情報を生成して記憶したうえで、2台目のモバイル端末Mに接続されているモバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようマイコン10を制御する(時刻t5。切替4)。以下、この切り替えを、結果情報の生成と記憶を行いつつ、5台目のモバイル端末Mまで順次行う(時刻t6~t12)。
【0075】
図15は、n台目(n=2~5)のモバイル端末Mに接続されているモバイル端子Mbの接続先を映像出力端子5bに切り替えるようコンピュータ4から指示されたマイコン10によって実行される処理を示す図である。同図と
図14を比較すると理解されるように、この場合にマイコン10が行う処理は、
図14に示した処理のうちステップS40,S43,S47,S48を実行する処理となる(ステップS50~S53)。ただし、ステップS52の処理は、n台目のモバイル端末Mに対応するセレクタ11(に接続されている信号線Lin[x11:x15])を映像出力端子5bに接続するとともにn台目のモバイル端末Mの電源信号Ap_iPower(n)を選択する処理となる。ステップS53の終了により、n台目のモバイル端末MとHDMI(登録商標)変換器5cとの間で、
図5に示した認証処理が行われる。そして、その結果としてn台目のモバイル端末Mがディスプレイモードにエントリし、n台目のモバイル端末Mのディスプレイ画面を示すデータがUSB変換器5からコンピュータ4に供給されるようになる。
【0076】
図13に戻る。すべてのモバイル端末Mについての結果情報を記憶したコンピュータ4は、記憶した一連の結果情報に基づいて、キッティングが成功したか否かを判定する。そして、成功したと判定した場合には、次のキッティングを始めるために、各モバイル端子Mbの接続先をシリアル通信端子3bに切り替えるようマイコン10を制御する(時刻t13。切替2)。この切り替え処理は
図9を参照して説明した処理と同様であり、切り替え処理が終了した後、コンピュータ4は再び、各モバイル端末Mのキッティングを開始する(時刻t14)。一方、失敗したと判定した場合には、コンピュータ4は、キッティングを中断し、失敗した旨をコンピュータ4のユーザ(キッティング作業者)に通知する。この後は、ユーザによる対応が行われる。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態によるキッティングツール1及び信号切替機2によれば、1台のHDMI(登録商標)変換器5cと1台のUSB変換器5を用いて画像の照合を行う場合においても、第1の実施の形態によるキッティングツール1と同様、電源線の接続経路にセレクタを設けることなく、モバイル端末Mの動作モードを切り替えることが可能になる。
【0078】
次に、本発明の第3の実施の形態によるキッティングツール1について、説明する。本実施の形態によるキッティングツール1のシステム構成は、
図10に示した第2の実施の形態によるキッティングツール1のものと同様である。本実施の形態によるキッティングツール1は、モバイル端末Mの充電状態の管理を行う点で、第2の実施の形態によるキッティングツール1と相違する。以下、第2の実施の形態によるキッティングツール1との相違点に着目して説明を続ける。
【0079】
図16及び
図17は、本実施の形態による信号切替機2の内部構成を示す図である。なお、
図11及び
図12の場合と同様、各5つのモバイル端子Mb、シリアル通信端子3b、及び映像出力端子5bについては、
図16及び
図17の両方に同じものを図示している。
図16に示すように、本実施の形態による信号切替機2のマイコン10は、各電源制御装置12に共通のイネーブル信号Host_ENに代え、電源制御装置12ごとに異なるイネーブル信号MHost_EN(x)を生成するよう構成される。各電源制御装置12内に設けられる上述した電界効果トランジスタのゲートには、イネーブル信号Host_ENに代え、対応するイネーブル信号MHost_EN(x)が供給される。
【0080】
マイコン10が各イネーブル信号MHost_EN(x)を制御するタイミングは、原則として第2の実施の形態と同様である。つまり、
図7に示したステップS13、
図9に示したステップS34、及び、
図14に示したステップS45において各イネーブル信号MHost_EN(x)をハイに制御し、
図9に示したステップS31、及び、
図14に示したステップS42において各イネーブル信号MHost_EN(x)をローに制御する。
【0081】
本実施の形態によるコンピュータ4は、モバイル端末Mのディスプレイ画面からモバイル端末Mの電池残量を取得し、各モバイル端末Mの電池残量が既定値を超えないよう、各モバイル端末Mに対応するイネーブル信号MHost_EN(x)を個々に制御する。そうすることによって電源信号Host_Power(x)の供給を制御し、各モバイル端末Mの電池の劣化を防止する。
【0082】
コンピュータ4による電池残量の取得は、USB変換器5を介してコンピュータ4に供給されるモバイル端末Mのディスプレイ画面に含まれる電池残量表示を参照することによって実行される。具体的に説明すると、例えば電池残量表示がインジケータにより示されるものであれば、コンピュータ4は、そのインジケータの表示を読み取ることによって充電池残量を取得すればよい。また、例えば電池残量表示が数値により示されるものであれば、コンピュータ4は、光学文字認識(OCR)による文字認識を行うことによって電池残量を取得すればよい。
【0083】
一般的に、例えばリチウム電池を満充電状態で高温保管をした際には、電池劣化が起こることが知られている。本実施の形態によるキッティングツール1及び信号切替機2によれば、モバイル端末Mの満充電を避け、電池残量を既定値以下に留めることができるので、上記のような電池劣化を防止することが可能となる。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0085】
例えば、上記各実施の形態では、例えば
図8に示した処理を実行することによってモバイル端末Mをディスプレイモードに切り替えた後、次にシリアル通信モードに切り替えるまで電源信号Host_Power(x)の供給を停止することはなかったが、モバイル端末Mがディスプレイモードにエントリしている間にイネーブル信号Host_ENを一時的にローにしてハイに戻す処理(ロー/ハイ処理)を実行することとしてもよい。こうすることで、モバイル端末Mのディスプレイ画面が真っ黒になり、画像認識(照合)が不可能になってしまうことを防止できる。
【0086】
詳しく説明すると、モバイル端末Mは、各モードへのエントリから所定時間が経過するとスリープ状態になるよう構成される。モバイル端末Mがスリープ状態に入ると、そのディスプレイ画面が真っ黒になり、画像認識(照合)が不可能になる。これに対し、上記のロー/ハイ処理を適宜実行することにより、その都度、電源信号Host_Power(x)による充電割込みをかけることができるので、モバイル端末Mがスリープ状態になってしまうことを防止でき、したがって、モバイル端末Mのディスプレイ画面が真っ黒になって画像認識(照合)ができなくなってしまうことを防止できる。
【0087】
ここで、モバイル端末Mがディスプレイモードにエントリしている間に、OTG変換器3wから充電器3hが取り外される可能性がある。或いは、OTG変換器3wに元々充電器3hが接続されていない場合もある。そうすると、電源信号Host_Pw(x)の供給が止まるので、上記ロー/ハイ処理によりモバイル端末Mに対して充電割込みをかけることができなくなってしまう。そこで、以下の変形例で説明するように、信号切替機2内に内部電源回路を設け、この内部電源回路によって電源信号Host_Pw(x)を生成することとしてもよい。
【0088】
図18は、本発明の第1の実施の形態の変形例による信号切替機2を示す図である。本変形例による信号切替機2は、
図2及び
図3に示した構成のすべてに加え、内部電源回路16と、電源制御装置12ごとに設けられる複数のダイオード16aとをさらに有して構成される。
【0089】
内部電源回路16には、マイコン10からイネーブル信号IPCEが供給される。内部電源回路16は、このイネーブル信号IPCEがハイになっている場合に、複数の電源制御装置12のそれぞれに対応する複数の内部電源信号In_Powerを生成し、対応するダイオード16aを介して、シリアル通信端子3bと電源制御装置12を接続する電源線(電源信号Host_Pw(x)を供給するための電源線)に供給するよう構成される。ダイオード16aは逆流防止のために設けているもので、内部電源回路16にアノードが接続され、対応する電源制御装置12にカソードが接続されるように回路に挿入される。
【0090】
マイコン10は、例えばモバイル端末Mをディスプレイモードにしている場合に、イネーブル信号IPCEをハイにするよう構成される。こうすることで、OTG変換器3wに充電器3hが接続されていなくても、各電源制御装置12に電源信号Host_Pw(x)を供給することが可能になる。したがって、上記ロー/ハイ処理によりモバイル端末Mに対して充電割込みをかけることが可能になる。
【0091】
なお、マイコン10は常にイネーブル信号IPCEをハイにしておくこととしてもよい。また、
図18には第1の実施の形態の変形例による信号切替機2に内部電源回路16を設けた例を説明したが、第2の実施の形態の変形例による信号切替機2、又は、第3の実施の形態の変形例による信号切替機2に内部電源回路16を設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 キッティングツール
2 信号切替機
3 キッティング装置
3a 出力ポート
3b シリアル通信端子
3h 充電器
3w OTG変換器
4 コンピュータ
4a 制御端子
5 USB変換器
5a 映像入力端子
5b 映像出力端子
5c HDMI(登録商標)変換器
10 マイコン
11 セレクタ
12,13 電源制御装置
13a,16a ダイオード
14 マルチプレクサ
15 デコーダ
16 内部電源回路
30EnableBAR イネーブルバー信号
Ap_iPower,App_Power,Host_Power,Host_Pw,MApp_Pw 電源信号
49Enable,App_EN,Host_EN,MApp_E,MApp_EN,MHost_EN イネーブル信号
In_Power 内部電源信号
Lin[x01:x05],Lin[x11:x15],Lin[121:125],Lout[x01:x05] 信号線
M モバイル端末
Ma 統合端子
Mb モバイル端子
P_Select,RC[0:2] 選択信号