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特許7604026非球面凸レンズの研削部材及び非球面凸レンズの研削装置
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  • 特許-非球面凸レンズの研削部材及び非球面凸レンズの研削装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】非球面凸レンズの研削部材及び非球面凸レンズの研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24D 7/18 20060101AFI20241216BHJP
   B24B 13/00 20060101ALI20241216BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20241216BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20241216BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241216BHJP
【FI】
B24D7/18 F
B24B13/00 A
B24D3/00 320B
B24B55/02 Z
B24B41/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023145841
(22)【出願日】2023-09-08
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】521054164
【氏名又は名称】株式会社吉田光学工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成男
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129004(JP,A)
【文献】特開2000-225562(JP,A)
【文献】実公昭05-007433(JP,Y1)
【文献】特開平09-262750(JP,A)
【文献】国際公開第03/000461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 7/18
B24B 13/00
B24D 3/00
B24B 55/02
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非球面凸レンズの被研削面を研削するための研削部を備えた非球面凸レンズの研削部材であって、
前記研削部は、
前記研削部の中央に設けられた略円形状の中央部平坦面と、
前記中央部平坦面の外周に、凹曲面が環状に連続して設けられた研削面と、
前記研削面の外周に、前記中央部平坦面と略同じ高さ位置に環状に設けられた周縁部平坦面とを備え、
前記研削面は、前記非球面凸レンズの被研削面に当接して研削することにより光学機能面を形成し、
前記中央部平坦面及び前記周縁部平坦面は、前記非球面凸レンズの外周縁部に当接して研削することにより、前記光学機能面の外周に非光学機能面を形成する、非球面凸レンズの研削部材。
【請求項2】
前記中央部平坦面、前記研削面及び前記周縁部平坦面のうち、少なくとも前記研削面には、ダイヤモンド砥粒を含む砥材層が設けられている、請求項1に記載の非球面凸レンズの研削部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記非球面凸レンズの研削部材と、
前記研削部の研削面が前記非球面凸レンズに対向するように前記研削部材を保持し、かつ、前記研削部材をその中心軸周りに回転させる研削部材保持部と、
前記非球面凸レンズをその被研削面が前記研削部材に対向するように保持し、かつ、前記非球面凸レンズをその中心軸周りに回転させる非球面凸レンズ保持部とを備え、
前記研削部材保持部及び前記非球面凸レンズ保持部は、前記研削部材の中心軸と前記非球面凸レンズの中心軸とが平行となる状態で、前記非球面凸レンズの被研削面を前記研削部の研削面に当接させ、かつ、前記非球面凸レンズの外周縁部を前記研削部の前記中央部平坦面及び前記周縁部平坦面に当接させ、
さらに、前記研削部材保持部は前記研削部材をその中心軸周りに回転させ、前記非球面凸レンズ保持部は前記非球面凸レンズをその中心軸周りに回転させることで、前記被研削面を前記研削面で研削して光学機能面を形成し、かつ、前記外周縁部を前記中央部平坦面及び前記周縁部平坦面で研削して非光学機能面を形成する、非球面凸レンズの研削装置。
【請求項4】
前記研削部材保持部に保持された前記研削部材の研削面に、研削液を供給する研削液供給部をさらに備え、
前記研削部材保持部は、前記研削部材の中心軸が水平面と平行となるように前記研削部材を保持し、
前記非球面凸レンズ保持部は、前記非球面凸レンズの中心軸が水平面と平行となるように前記非球面凸レンズを保持する、請求項に記載の非球面凸レンズの研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球面凸レンズの被研削面を研削して光学機能面を形成するための非球面凸レンズの研削部材及び非球面凸レンズの研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非球面凸レンズ等の光学レンズに対する研削や研磨等の加工は、回転させた砥石等の研削部材等に光学レンズを当接して行われている。そのような加工を可能にする加工装置としては、例えば、特許文献1に開示のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示の加工装置は、光学レンズを回転する研磨皿の研磨面に接触させて研磨を行うものであり、光学レンズが固定される上軸を支持し、研磨皿の研磨面の曲率中心を揺動中心として揺動する第1揺動軸と、第1揺動軸を支持し、第1揺動軸の揺動面に交差する方向に直線変位が可能にされた直進軸と、研磨皿を支持する下軸が載置され、研磨皿の曲率中心を揺動中心として揺動する第2揺動軸とを備えた構成を有している。これにより、特許文献1の研磨装置では、多様な外形仕様の光学素子を単一の研磨装置で高精度に研磨することが可能とされている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示の研磨装置は一般に高価であり加工時間も長いため、非球面凸レンズ等の高付加価値製品に適しているとはいっても装置コストがかかりすぎるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-113162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、生産性及び作業性を向上させながら、低コストで非球面凸レンズの加工を行うことが可能な非球面凸レンズの研削部材及び非球面凸レンズの研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非球面凸レンズの研削部材は、前記の課題を解決するために、非球面凸レンズの被研削面を研削する研削部を備えた非球面凸レンズの研削部材であって、前記研削部は、前記研削部の中央に設けられた略円形状の中央部平坦面と、前記中央部平坦面の外周に、凹曲面が環状に連続して設けられた研削面と、前記研削面の外周に、前記中央部平坦面と略同じ高さ位置に環状に設けられた周縁部平坦面とを備え、前記研削面は、前記非球面凸レンズの被研削面に当接して研削することにより光学機能面を形成することを特徴とする。
【0008】
前記の構成によれば、研削部に於ける研削面は、中央部平坦面の外周に於いて凹曲面が環状に連続して設けられることにより構成されている。従って、研削面を非球面凸レンズの被研削面に当接させ、例えば、研削部を、その中心軸周りに回転させるだけで、非球面凸レンズの被研削面を研削して光学機能面を形成することができる。すなわち、前記構成の研削部材であると、高価な研削装置を用いなくとも、生産性及び作業性を向上させながら、装置コストを抑制して良好な非球面凸レンズを製造することができる。
【0009】
前記の構成において、前記中央部平坦面及び前記周縁部平坦面は、前記非球面凸レンズの外周縁部に当接して研削し、前記光学機能面の外周に非光学機能面を形成することが好ましい。
【0010】
前記の構成に於いて、前記中央部平坦面、前記研削面及び前記周縁部平坦面のうち、少なくとも前記研削面には、ダイヤモンド砥粒を含む砥材層が設けられていることが好ましい。
【0011】
また本発明の非球面凸レンズの研削装置は、前記の課題を解決するために、前記非球面凸レンズの研削部材と、前記研削部の研削面が前記非球面凸レンズに対向するように前記研削部材を保持し、かつ、前記研削部材をその中心軸周りに回転させる研削部材保持部と、前記非球面凸レンズをその被研削面が前記研削部材に対向するように保持し、かつ、前記非球面凸レンズをその中心軸周りに回転させる非球面凸レンズ保持部とを備え、前記研削部材保持部及び前記非球面凸レンズ保持部は、前記研削部材の中心軸と前記非球面凸レンズの中心軸とが平行となる状態で、前記非球面凸レンズの被研削面を前記研削部の研削面に当接させ、さらに、前記研削部材保持部は前記研削部材をその中心軸周りに回転させ、前記非球面凸レンズ保持部は前記非球面凸レンズをその中心軸周りに回転させることで、前記被研削面を前記研削面で研削して光学機能面を形成することを特徴とする。
【0012】
前記の構成によれば、研削部材保持部及び非球面凸レンズ保持部は、研削部材の研削面と非球面凸レンズの被研削面とが対向するように、それぞれ研削部材と非球面凸レンズとを保持する。また、研削部材保持部及び非球面凸レンズ保持部は、研削部材の中心軸と非球面凸レンズの中心軸とが平行となる状態で、非球面凸レンズの被研削面を研削部の研削面に当接させる。そして、研削部材保持部が研削部材をその中心軸周りに回転させるだけで非球面凸レンズの被研削面を研削して光学機能面を形成することができる。すなわち、前記構成の研削装置であると、高価な研削装置を用いなくとも、生産性及び作業性を向上させながら、装置コストを抑制して良好な非球面凸レンズを製造することができる。
【0013】
前記の構成に於いては、前記研削部材保持部に保持された前記研削部材の研削面に、研削液を供給する研削液供給部をさらに備え、前記研削部材保持部は、前記研削部材の中心軸が水平面と平行となるように前記研削部材を保持し、前記非球面凸レンズ保持部は、前記非球面凸レンズの中心軸が水平面と平行となるように前記非球面凸レンズを保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、非球面凸レンズの被研削面を研削するための研削部として、中央部平坦面の外周に於いて凹曲面が環状に連続して設けられた研削面を備えるものを用いる。これにより、本発明では、研削面を非球面凸レンズの被研削面に当接させ、例えば、研削部をその中心軸周りに回転させるだけで、非球面凸レンズの被研削面を研削して光学機能面を形成することができる。すなわち、本発明であると、高価な研削装置を用いなくとも、生産性及び作業性を向上させながら、装置コストを抑制して非球面凸レンズを製造できる研削部材及び研削装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る研削装置の概略構成を表す模式図である。
図2図2(a)は本発明の実施形態に係る研削部材を模式的に表す斜視図であり、同図(b)は研削部材を上方から見た平面図であり、同図(c)は研削部材を下方から見た底面図である。
図3】本発明の実施形態に係る研削部材の概略を表す断面模式図である。
図4】非球面凸レンズを保持することが可能な非球面凸レンズ保持部を模式的に表す斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る研削装置を用いて、非球面凸レンズを研削加工する様子を表す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(研削装置)
本発明の実施形態に係る研削装置について、図面を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0017】
本実施形態の研削装置1は、非球面凸レンズの被研削面を研削加工する装置である。
研削装置1は、図1に示すように、非球面凸レンズ2を研削するための研削部材10と、研削部材10を保持する研削部材保持部20と、非球面凸レンズ2を保持する非球面凸レンズ保持部30と、研削液供給部40とを少なくとも備える。図1は、本実施形態の研削装置1の概略構成を表す模式図である。
【0018】
研削部材10は、図1図3に示すように、非球面凸レンズ2を研削する研削部11と、研削部材保持部20に接続するための突出部12とを備える。図2(a)は本実施形態の研削部材10を模式的に表す斜視図であり、同図(b)は研削部材10を上方から見た平面図であり、同図(c)は研削部材10を下方から見た底面図である。図3は、本実施形態の研削部材10を表す断面模式図である。
【0019】
研削部11は、厚みのある円板状の全体形状を有している。研削部11の一方の面(上方側の面)には、研削部11の中央に設けられた略円形状の中央部平坦面13と、中央部平坦面13の外周に設けられた研削面14と、研削面14の外周に環状に設けられた周縁部平坦面15とが設けられている。また、研削部11の他方の面(下方側の面)は、図2(c)及び図3に示すように、平坦面16となっている。研削部11の厚さは特に限定されず、適宜設定することができる。
【0020】
中央部平坦面13は、平面視に於いて円形状となっている。また、中央部平坦面13は、非球面凸レンズ2の被研削面2aを研削する際、非球面凸レンズ2の外周縁部2bに当接して研削し、非光学機能面を形成することができる。中央部平坦面13の面積は特に限定されず、研削部11や、研削対象である非球面凸レンズ2の大きさ(より具体的には、非球面凸レンズ2の被研削面2aの大きさ)等に応じて適宜設定することができる。尚、本明細書に於いて「非光学機能面」とは、非球面凸レンズに要求される光学特性を満たしておらず、光学機能に関与しない面を意味する。本実施形態では、外周縁部2bが平坦状である場合の他、平坦状でない場合でも、使用時に光束が透過しないときは、外周縁部2bは本発明の非光学機能面に該当する。
【0021】
研削面14は、中央部平坦面13の外周に環状に設けられている。また研削面14は、研削部11の厚さ方向に於ける断面形状に於いて、図3に示すように、凹曲面となっている。研削面14の断面形状を凹曲面にすることで、研削対象である非球面凸レンズ2を研削面14に当接させると、研削面14を、非球面凸レンズ2の被研削面(凸状面)2aに於ける頂点を通る経線で接触させることができる。すなわち、本実施形態の研削面14は、非球面凸レンズ2の被研削面2aに於いて点接触により当接するものではない。そのため、点接触により研削を行う従来の研削装置と比べ、非球面凸レンズ2の被研削面2aを簡便に研削し、光学機能面を形成させることができる。図3に示す研削面14の深さD及び幅Wは特に限定されず、研削対象である非球面凸レンズ2の大きさ等により適宜設定することができる。尚、本明細書に於いて「光学機能面」とは、非球面凸レンズに要求される光学特性の機能を備えた面を意味する。
【0022】
周縁部平坦面15は、研削面14の外周に環状に設けられている。また、周縁部平坦面15は、非球面凸レンズ2の被研削面2aを研削する際、非球面凸レンズ2の外周縁部2bに当接して研削し、非光学機能面を形成することができる。さらに、周縁部平坦面15の高さ位置は、図3に示すように、中央部平坦面13と略同じ高さ位置となっている。これにより、非球面凸レンズ2の被研削面2aを研削面14に当接させた際、非球面凸レンズ2の外周縁部2bが中央部平坦面13及び周縁部平坦面15のそれぞれに当接する圧力を均等にすることができる。
【0023】
また本実施形態に於いて、中央部平坦面13、研削面14及び周縁部平坦面15の表面には、ダイヤモンド砥粒を含む砥材層(図示しない。)が設けられている。砥材層を設けることにより、非球面凸レンズ2の研削時間を短縮し、研削加工の生産性を向上させることができる。砥材層の厚さは、中央部平坦面13、研削面14及び周縁部平坦面15の面内に於いて均一であることが好ましい。また、ダイヤモンド砥粒は、砥材層に於いて分散混合しているのが好ましい。ダイヤモンド砥粒の平均粒径は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。尚、本発明に於いて砥材層は、少なくとも研削面14の表面に設けられていればよい。
【0024】
突出部12は、図1図2(c)及び図3に示すように、研削部11に於ける平坦面16の中央部において、平坦面16に対し垂直となる方向に突出するように設けられている。突出部12の全体形状は円柱状となっており、また突出部12の内部には、研削部材保持部20との螺合を可能にする雌ネジ部17が設けられている。これにより、雄ネジ部(詳細については後述する。)を有する研削部材保持部20に螺合させることにより、研削部材10を研削部材保持部20に固定させることができる。また、突出部12の側周面には、その任意の位置に平坦部18が設けられている。これにより、研削部材保持部20に固定された研削部材10を、ペンチやプライヤ等の公知の挟持部材を用いて取り外す際、挟持部材を、平坦部18を含む様に挟持させることで、当該平坦部18に滑り止めとしての機能を発揮させることができる。
【0025】
研削部材保持部20は、その先端部に雄ネジ部21を備える。雄ネジ部21は、研削部材10の突出部12に設けられた雌ネジ部17に螺合可能となっている。雄ネジ部21が雌ネジ部17に螺合することにより、研削部材10を研削部材保持部20に固定することができる。研削部材保持部20は、保持された研削部材10の中心軸51が水平面に対し平行となるように、当該研削部材10を固定する。また研削部材保持部20は、図示しない回転駆動部と電気的に接続されており、研削部材保持部20が回転することにより、保持されている研削部材10をその中心軸51周りに回転させることができる。
【0026】
非球面凸レンズ保持部30は、図4に示すように、その内部が空洞であり、その上端部において非球面凸レンズ2を保持することができる。図4は、非球面凸レンズ2を保持することが可能な非球面凸レンズ保持部30を模式的に表す斜視図である。上端部には、非球面凸レンズ2の被研削面2aが表出するように非球面凸レンズ2を保持することが可能な載置部31が設けられている。載置部31の載置面31aは、周縁部31bよりも高さ位置が低くなるように段差が設けられている。これにより、載置部31は、非球面凸レンズ2を嵌め込むようにして載置することができる。また、周縁部31bの一部には切り欠き部34が設けられている。切り欠き部34は、非球面凸レンズ保持部30の側壁部35に於いて、下端部の方向に向かって任意の距離で直線状に延在している。これにより非球面凸レンズ2を載置部31上に嵌め込んで載置する際に、非球面凸レンズ2の大きさに応じて、周縁部31bを拡径することができる。さらに、非球面凸レンズ保持部30の側壁部35には、非球面凸レンズ保持部30を貫通する一対の貫通穴36が設けられている。この一対の貫通穴36を介して、例えばボルトを側壁部35に貫通させ、貫通したボルトを反対側からナットで締結することにより、周縁部31bの縮径が可能になる。その結果、非球面凸レンズ2を周縁部31bで固定し、載置部31から脱離するのを抑制することができる。
【0027】
また非球面凸レンズ保持部30は、保持された非球面凸レンズ2の中心軸52が水平面に対し平行となるように、当該非球面凸レンズ2を固定する。さらに非球面凸レンズ保持部30は、図示しない他の回転駆動部と電気的に接続されており、非球面凸レンズ保持部30が回転することにより、保持されている非球面凸レンズ2をその中心軸52周りに回転させることができる(図1参照)。非球面凸レンズ保持部30は、保持する非球面凸レンズ2の被研削面2aが、研削部材10の研削面14と対向する様に配置される。また、非球面凸レンズ保持部30は、保持する非球面凸レンズ2が研削部材10の研削面14に圧接(当接)した状態で研削されるように、非球面凸レンズ2を研削面14に押圧する。
【0028】
尚、非球面凸レンズ2を研削部材10の研削面14に圧接(当接)させる方法としては、非球面凸レンズ保持部30が非球面凸レンズ2を研削面14に押圧する場合の他、研削部材保持部20が、保持している研削部材10の研削面14を非球面凸レンズ2に押圧して行ってもよい。あるいは、研削部材保持部20と非球面凸レンズ保持部30との両者が相互に、研削部材10の研削面14と非球面凸レンズ2とを押圧させて行ってもよい。
【0029】
研削液供給部40は、研削部材10が非球面凸レンズ2を研削加工する際、研削部材10と非球面凸レンズ2との間に研削液を供給する。研削液供給部40は、図示しない研削液貯留部と、研削液供給管41とを備える。研削液貯留部は、その内部に研削液を貯留する。研削液貯留部には、研削部材10と非球面凸レンズ2との間に研削液を供給するための研削液供給管41が接続されている。さらに、研削液供給管41の経路中には開閉弁(図示しない)が設けられていてもよい。開閉弁は、その開閉が制御されるようにしてもよい。この場合、動作指令により開閉弁が開栓されると、研削液が研削液供給管41を介して圧送される。
【0030】
(研削方法)
次に、本実施形態の研削装置1を用いた非球面凸レンズ2の研削方法について、図5に基づき説明する。図5は、非球面凸レンズ2を研削加工する様子を表す概略説明図である。
【0031】
図5に示すように、研削前の非球面凸レンズ2を非球面凸レンズ保持部30に保持させる。非球面凸レンズ2は、その中心軸52が水平面に平行となる様に保持される。また、非球面凸レンズ保持部30は、非球面凸レンズ2の被研削面2aが研削部材10の研削面14に対向する様に配置される。次に、非球面凸レンズ2を保持した状態で非球面凸レンズ保持部30を回転駆動させる。これにより、非球面凸レンズ保持部30に保持された非球面凸レンズ2を中心軸52回りに回転させる。非球面凸レンズ2の回転速度は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0032】
また、研削部材10を研削部材保持部20に保持させる。研削部材10は、その中心軸51が水平面に平行となる様に保持される。また、研削部材保持部20は、研削部材10の研削面14が非球面凸レンズ2の被研削面2aに対向する様に配置される。次に、研削部材10が固定された状態で研削部材保持部20を回転駆動させる。これにより、研削部材保持部20に保持された研削部材10を中心軸51回りに回転させる。研削部材10の回転速度は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0033】
非球面凸レンズ2の回転速度及び研削部材10の回転速度は、それぞれ適宜必要に応じて設定することができる。例えば、非球面凸レンズ2の回転速度と、研削部材10の回転速度とは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、非球面凸レンズ2の被研削面2aの面積に応じて、研削部材10の回転速度を変更してもよい。より具体的には、被研削面2aの面積が小さい場合は研削部材10の回転速度を遅くし、被研削面2aの面積が大きい場合は研削部材10の回転速度を早くしてもよい。また、非球面凸レンズ2及び研削部材10の回転方向も同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
さらに、非球面凸レンズ2及び研削部材10をそれぞれ回転させた状態で、その被研削面2aを研削部材10の研削面14に当接させ、被研削面2aの研削を行う。このとき、非球面凸レンズ2の被研削面2aと、研削部材10の研削面14との間には、研削液供給部40の研削液供給管41から研削液が供給される。非球面凸レンズ2の被研削面2aは、その頂点を通る経線に於いて研削面14と当接するが、非球面凸レンズ2自体が中心軸52周りに回転するため、被研削面2aの全面を研削面14に当接させることができる。そのため、本実施形態の研削装置1では、例えば、研削部11を非球面凸レンズ2に対し任意の角度で傾斜させるなどして、被研削面2aの研削領域を適宜調整する必要がない。尚、非球面凸レンズ2の外周縁部2bは、研削部11の中央部平坦面13及び周縁部平坦面15に当接して研削される。これにより、非球面凸レンズ2の被研削面2aに光学機能面を形成することができる。
【0035】
以上の通り、本実施形態の研削装置1を用いた研削方法であると、非球面凸レンズ2の被研削面2aに研削部11を当接させるだけで、当該被研削面2aを研削して簡便に光学機能面を形成することができる。そのため、本実施形態の研削装置1を用いた研削方法であると、高価な研削装置を用いなくとも、生産性及び作業性を向上させながら、装置コストを抑制して良好な非球面凸レンズ2の研削を行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 :研削装置
2 :非球面凸レンズ
2a:被研削面
2b:外周縁部
10:研削部材
11:研削部
12:突出部
13:中央部平坦面
14:研削面
15:周縁部平坦面
16:平坦面
17:雌ネジ部
18:平坦部
20:研削部材保持部
21:雄ネジ部
30:非球面凸レンズ保持部
40:研削液供給部
41:研削液供給管
51:中心軸
52:中心軸
【要約】
【課題】生産性及び作業性を向上させながら、低コストで非球面凸レンズの加工を行うことが可能な非球面凸レンズの研削部材及び非球面凸レンズの研削装置を提供する。
【解決手段】本発明の非球面凸レンズの研削部材10は、非球面凸レンズ2の被研削面2aを研削する研削部11を備えたものであって、研削部11は、研削部11の中央に設けられた略円形状の中央部平坦面13と、中央部平坦面13の外周に、凹曲面が環状に連続して設けられた研削面14と、研削面14の外周に、中央部平坦面13と略同じ高さ位置に環状に設けられた周縁部平坦面15とを備え、研削面14は、非球面凸レンズ2の被研削面2aに当接して研削することにより光学機能面を形成することを特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5