IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Berryの特許一覧

<>
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図1
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図2
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図3
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図4
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図5
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図6
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図7
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図8
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図9
  • 特許-頭蓋形状矯正ヘルメット 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】頭蓋形状矯正ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
A61F5/01 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023178346
(22)【出願日】2023-10-16
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521407050
【氏名又は名称】株式会社Berry
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕士
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-094208(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079416(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
A42B 3/04
A42C 1/00
B29C 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットであって、
上側開口部及び下側開口部を有するシェルを備え、
前記頭蓋形状矯正ヘルメットの前記シェルは、その外面に形成され、複数の盛り上がり部が連続して配置される凹凸部を有する頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項2】
前記凹凸部は、前記頭蓋形状矯正ヘルメットの前記シェルの外面において前記シェルの周方向に延びる前記盛り上がり部としての突条部と、
前記頭蓋形状矯正ヘルメットの前記シェルの外面において前記周方向に延びる溝部と、を有し、
前記突条部と前記溝部とは、前記頭部に装着された状態での前記頭蓋形状矯正ヘルメットの上下方向に交互に配置される請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項3】
前記頭蓋形状矯正ヘルメットの前記シェルの厚み方向における前記突条部の頂部と該突条部に隣接する前記溝部の底部との間の距離は、0.05mm~1.0mmである請求項2に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項4】
前記頭蓋形状矯正ヘルメットの前記シェルは、その外面に前記凹凸部が形成され、その内面が平坦である請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項5】
前記頭蓋形状矯正ヘルメットの前記シェルは、その厚み方向に貫通する複数の通気孔を有し、
複数の前記通気孔は、その径が前記シェルの内面から外面に向かうにしたがって小さくなるように形成される請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項6】
前記頭蓋形状矯正ヘルメットの前記シェルは、その厚み方向に貫通し、前記通気孔よりも開口径が大きく、頭部の触診に用いられる複数の触診孔を有し、
前記触診孔における前記シェルの外面側の内周面には、前記凹凸部が形成される請求項5に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋形状矯正ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳児や幼児に、斜頭等の治療を要する頭蓋変形が生じる場合がある。例えば、斜頭は、頭蓋が左右対称形状ではなく片側に傾斜している変形形状である。このような頭蓋変形を治療する装具として、頭部に被ることにより、頭蓋の成長に伴って頭蓋の形状が矯正されるように変形を促す頭蓋形状矯正ヘルメットが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-169510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、頭蓋形状矯正ヘルメットの製造時において、質感を向上させるためにシェルの外面を磨くことがある。しかし、シェルの外面が滑らかになり、シェルを把持したときに頭蓋形状矯正ヘルメットが手から滑り落下するおそれがある。
【0005】
本発明は、質感を担保しつつ、シェルを把持した場合に手が滑り難い頭蓋形状矯正ヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
頭蓋形状矯正ヘルメットは、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットであって、上側開口部及び下側開口部を有する略環状のシェルを備え、前記シェルは、その外面に形成され、複数の盛り上がり部が連続して配置される凹凸部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、質感を担保しつつ、シェルを把持した場合に手が滑り難い頭蓋形状矯正ヘルメットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットを対象者が装着している状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットを示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットを示す左側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットを示す右側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットを示す背面図である。
図6図2のVI-VI線に対応する断面図である。
図7図5に示す領域A1の要部拡大図である。
図8図6に示す領域A2の要部拡大図である。
図9図6に示す領域A3の要部拡大図である。
図10】シェルの外面に形成された凹凸部の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1図5は、本実施形態の頭蓋形状矯正ヘルメット10を対象者1が装着している状態を示す図である。図6は、図2のVI-VI線に対応する断面図である。図7図5に示す領域A1の要部拡大図である。図8図6に示す領域A2の要部拡大図である。図9図6に示す領域A3の要部拡大図である。
【0010】
図1図3図4及び図6において、矢印Xは対象者1の頭部2に装着された状態での頭蓋形状矯正ヘルメット10の前後方向Xを示し、さらにX1は前側、X2は後側を示している。図2及び図5において、矢印Yは対象者1の頭部2に装着された状態での頭蓋形状矯正ヘルメット10の左右方向を示し、さらにY1は右側、Y2は左側を示している。図1図7図9において、矢印Zは対象者1の頭部2に装着された状態での頭蓋形状矯正ヘルメット10の上下方向を示し、さらZ1は上側、Z2は下側を示している。図1において、矢印Cは頭蓋形状矯正ヘルメット10の後述するシェル11の周方向であるシェル周方向を示している。シェル周方向は、上下方向に直交し、かつシェル11の外面111に沿う方向である。なお、本明細書において、左右方向、前後方向、及び上下方向とは、頭蓋形状矯正ヘルメット10を装着した対象者1から見た方向を意味している。
【0011】
本実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10は、対象者1の頭部2に被せることにより、頭蓋の成長に伴って頭蓋の形状が矯正されるように変形を促すものである。対象者1としては、例えば斜頭、短頭、長頭等の治療を要する頭蓋変形が生じた乳児や幼児等が挙げられる。斜頭とは、頭蓋が左右対称ではなく片側に傾斜している変形形状である。短頭とは、頭蓋の前後方向寸法が著しく短い変形形状である。長頭とは、頭蓋の前後方向寸法が著しく長い変形形状である。
【0012】
頭蓋形状矯正ヘルメット10は、環状のシェル11と、シェル11の内側に配置されて頭部2に接触するクッション(図示省略)と、を備える。
【0013】
クッションは、反発性を有する発泡合成樹脂の成形体である。クッションは、矯正対象の頭蓋が固いシェル11に直接押し付けられる時に生じる頭皮へのダメージを和らげる。クッションは、シェル11の内面112に、例えば両面接着テープを介して着脱自在に貼着される。
【0014】
シェル11は、図1に示すように、主部14と、上側開口部12と、下側開口部13と、背面延出部15と、一対の側面突出部16と、主部14に形成される寸法調整機構20と、複数の通気孔17と、複数の触診孔18と、凹凸部30と、を有する。
【0015】
主部14は、対象者1の頭部2をシェル周方向で囲む環状の部位である。主部14の後部には背面延出部15が形成され、主部14の左右側面部には側面突出部16がそれぞれ形成される。
【0016】
背面延出部15は、図2図6に示すように、主部14の後部から下方に延出する部位である。背面延出部15は、対象者1の頚部背面に対向する。
【0017】
側面突出部16は、図1図4に示すように、主部14の左右側面部から下方にそれぞれ突出する。各側面突出部16は、対象者1の耳3の前方に位置する。背面延出部15と各側面突出部16の間に、対象者1の耳3が位置する。
【0018】
上側開口部12は、主部14の上側の縁部である上側開口縁12aによって形成される開口である。上側開口部12から上方には、頭部2の頭頂部が露出する。
【0019】
下側開口部13は、主部14の下側の縁部、背面延出部15の下側の縁部及び一対の側面突出部16の下側の縁部である下側開口縁13aによって形成される開口である。下側開口部13から下方には、対象者1の顔や耳、頚部等が露出する。
【0020】
ここで、本実施形態に係るシェル11は、造形材料を1層ずつ積層して成形される。即ち、シェル11は、造形材料を積層して成形された積層体である。造形材料としては、熱可塑性樹脂や紫外線硬化等の各種樹脂が挙げられる。樹脂の種類は、成形方法に応じて選択される。シェル11の成形方法については後述する。なお、本明細書では、シェル11の成形において造形材料を積層した方向を積層方向という。本実施形態のシェル11は、下側開口部13側から上側開口部12側に向かって成形される。即ち、本実施形態では、積層方向は上下方向と略一致する。
【0021】
寸法調整機構20は、シェル11の径を調整する機構であり、シェル11の左右の側部のうちの一方に形成される。図6に示すように、寸法調整機構20は、スリット23と、端部片24と、延出片25と、帯状体(図示省略)と、を有する。
【0022】
スリット23は、図6に示すように、上側開口部12の上側開口縁12aから下側開口部13の下側開口縁13aにわたって形成されている。主部14には、スリット23を間に挟んで互いに離接可能に対向する前側の第1端部21及び後側の第2端部22が形成される。
【0023】
端部片24は、図6に示すように、主部14の一部であり、第1端部21から前後方向において右側の側面突出部16が突出する位置までの部位である。端部片24には、左右方向に略平行であり、上下方向に間隔を空けて配置される2つの嵌合スリット部241が形成される。
【0024】
図4に示すように、延出片25は、主部14の一部であり、第2端部22からシェル周方向に沿ってシェル11の前側に向かって延出する。延出片25は、シェル11の厚み方向において端部片24と重畳する。延出片25は、第1端部21の外面111側に接続され、第1端部21に沿って延びる接続部251と、接続部251からシェル周方向に沿って延出し、端部片24を覆うカバー部252と、2つの嵌合凸部253と、を有する。
【0025】
嵌合凸部253は、図6に示すように、カバー部252における内面112側の面から突出し、2つの嵌合スリット部241のそれぞれに嵌合する。嵌合凸部253は、嵌合スリット部241に対してシェル周方向にスライド可能に嵌合する。この構成により、嵌合スリット部241内における嵌合凸部253の位置を変更することで、主部14の径を調整することができる。具体的には、嵌合凸部253が、嵌合スリット部241の後側の端部242に近づくにつれて第1端部21と第2端部22との間の間隔が広がり、主部14が拡径する。反対に、嵌合凸部253が、嵌合スリット部241の前側の端部243に近づくにつれて第1端部21と第2端部22との間の間隔が狭まり、主部14が縮径する。
【0026】
帯状体は、シェル11を貫通する2つの貫通孔211、212に挿入されたピン(図示省略)に掛け渡され、シェル周方向に延びる。図6に示すように、貫通孔211は、シェル11における第1端部21の近傍であり、第1端部21よりも後側に形成される。貫通孔212は、シェル11における端部片24の近傍であり、端部片24よりも前側に形成される。帯状体は、そのシェル周方向の長さを調整可能に形成される。帯状体のシェル周方向の長さを固定することで、貫通孔211、212の間の距離が固定される。即ち、第1端部21と第2端部22との間の距離が固定され、シェル11の径が固定される。
【0027】
複数の通気孔17は、シェル11の厚み方向に貫通し、シェル11の内外を連通する。複数の通気孔17の形状は任意であるが、例えば、円形状、台形状、三角形状等である。複数の通気孔17は大きさが不揃いであり、さまざまな大きさがあってもよい。本実施形態では、通気孔17は通気性の確保とともに軽量化に寄与する。
【0028】
図8に示すように、本実施形態の通気孔17は、その径がシェル11の内面112から外面111に向かうにしたがって小さくなるように形成される。これにより、外面111に形成される通気孔17による開口面積を抑えつつ、通気孔17を大きくすることができるので、外面111の質感を維持しつつ、シェル11をより軽量化することができる。
【0029】
複数の触診孔18は、図9に示すように、シェル11の厚み方向に貫通し、シェル11の内外を連通する。複数の触診孔18の形状は任意であるが、例えば、円形状、台形状、三角形状等である。複数の触診孔18は大きさが不揃いであり、さまざまな大きさがあってもよい。触診孔18は、通気孔17よりも開口径が大きく、頭部2の触診に用いられる。本実施形態の触診孔18は、指が挿入可能な直径10mm以上25mm以下の孔である。
【0030】
図5に示すように、本実施形態では、複数の触診孔18は、主部14における後部の中央側から右側にかけて形成される。また図9に示すように、触診孔18は、シェル11の厚み方向における中心が最も径が小さく、この中心から離れるにつれて拡径するように形成される。即ち、触診孔18の内周面181は、触診孔18の厚み方向の中心から外面111側及び内面112側に向かうにつれて触診孔18の径が大きくなるように傾斜する。
【0031】
凹凸部30は、シェル11の外面111に形成され、複数の盛り上がり部が連続して配置される部位である。ここで、複数の盛り上がり部が連続して配置されるとは、複数の盛り上がり部が、任意の方向において盛り上がり部よりもシェル11の厚み方向に低い領域、即ち盛り上がり部よりもシェル11の厚みが薄い領域(以下、低領域という)を間に挟んで配置されることをいう。言い換えれば、複数の盛り上がり部が連続して配置されるとは、盛り上がり部と低領域とが任意の方向に交互に連続して配置されることをいう。
【0032】
複数の盛り上がり部は、大きさや高さ、形状等が不揃いであってもよく、略等しくてもよい。また複数の盛り上がり部は、一定の間隔を空けて規則的に配列されていてもよく、不当間隔で、不規則的に配列されていてもよい。
【0033】
図1図7に示すように、本実施形態の凹凸部30は、複数の突条部(盛り上がり部)31と、複数の溝部(低領域)32と、を有する。突条部31は、シェル11の外面111において積層方向に直交する方向、即ちシェル周方向に延びる。溝部32は、シェル11の外面111において積層方向に直交する方向、即ちシェル周方向に延びる。突条部31と溝部32とは、図7に示すように、積層方向に交互に連続して配置される。図8及び図9に示すように、凹凸部30が形成される外面111は、縦断面視で波形状である。
【0034】
複数の突条部31は、大きさや高さ、形状等が不揃いであってもよく、略等しくてもよい。複数の溝部32は、大きさや高さ、形状等が不揃いであってもよく、略等しくてもよい。複数の突条部31と複数の溝部32とは、規則的に配列されていてもよく、不規則的に配列されていてもよい。本実施形態では、複数の突条部31と複数の溝部32とは、積層方向に規則的に配列されている。
【0035】
図8に示すように、シェル11の厚み方向における突条部31の頂部311と該突条部31に隣接する溝部32の底部321との間の距離d2は、0.05mm~1.0mmであることが好ましい。即ち、盛り上がり部のうち最も厚みがある部分と、該盛り上がり部に隣接する低領域のうち最も厚みが薄い部分との間の距離d2は、0.05~1.0mmであることが好ましい。
【0036】
図8に示すように、シェル11の厚みdは、シェル11の強度と重さの点から、2mm~10mmであることが好ましい。本実施形態のシェル11の厚みd1は、約3mmである。なお、本実施形態において、シェル11の厚みd1とは、シェル11の厚み方向におけるシェル11の内面112から溝部32の底部321までの距離をいう。
【0037】
本実施形態では、突条部31と溝部32とは、シェル11の外面111において、主部14の第1端部21から第2端部22までのシェル周方向全体に亘って延びるように形成される。また、突条部31と溝部32とは、背面延出部15、側面突出部16及びカバー部252におけるシェル周方向全体に亘って形成される。接続部251の外面111は、突条部31及び溝部32が形成されておらず、平坦である。
【0038】
図7及び図9に示すように、触診孔18におけるシェル11の外面111側の内周面181には、凹凸部30が形成される。突条部31及び溝部32は、主部14の外面111から触診孔18の外面111側の内周面181まで連続して形成される。
【0039】
図6図8及び図9に示すように、シェル11の内面112は、平坦である。これにより、両面接着テープ等を用いて、シェル11の内面112にクッションをより容易かつ強固に貼り付けることができる。
【0040】
次に、本実施形態に係るシェル11の成形方法(製造方法)について説明する。頭蓋形状矯正ヘルメット10のシェル11は、対象者1それぞれの治療目標となる理想の頭部2の3次元モデルに基づいて設計される。この3次元モデルに基づいて、シェル11の形状に関する3次元データが作成される。シェル11の3次元データは、凹凸部30も含めたデータである。
【0041】
本実施形態に係るシェル11は、シェル11の3次元データを用いて、3Dプリンタによって造形される。3Dプリンタによってシェル11を成形する具体的な方法は種々あるが、例えば、液槽光重合法、材料噴射法、結合剤噴射法、粉末床溶融結合法、材料押出法、指向性エネルギー体積法、シート積層法等の周知の方法が挙げられる。
【0042】
例えば、材料噴射法のうち熱溶解積層(FDM:Fused Deposition Mdeling)方法では、高温で溶解させた熱可塑性樹脂を3Dプリンタのノズルから出力しながら、1層ずつ積層することでシェル11を成形する。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリエステル、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。3Dプリンタのノズルの動きは、シェル11の3次元データに基づいて決定される。
【0043】
ここで、FDM方式では、他の成形方法に比べて製造コストを抑えられるものの、溶解させた樹脂を積層していく方法であるので、断層が目立ちやすい。他の成形方法においても、造形材料を積層していくため、断層の目立ちやすさは軽減されるものの断層が形成され、質感が低減する。このため、頭蓋形状矯正ヘルメット10の質感を向上させるために、3Dプリンタによる成形工程後に、シェル11の外面111を研磨する必要がある。
【0044】
本実施形態によれば、シェル周方向に延びる凹凸が積層方向に交互に形成されるので、シェル11の積層痕を目立たなくすることができるとともに、外面111の研磨をせずに良好な質感を得ることができる。シェル11の研磨工程を省略できるので、良質な質感を担保しつつ、シェル11の製造コストを抑えることができる。
【0045】
次に、シェル11の凹凸部30の変形例について図10を参照しながら説明する。図10は、シェル11の外面111に形成された凹凸部30Aを示す正面図である。
【0046】
凹凸部30Aは、複数のシェル11の外面111に形成され、複数の凸部(盛り上がり部)31Aが連続して配置される。複数の凸部31Aは、平坦な外面111からシェル11の径方向外側に突出し、所定の間隔を空けて配置される。凸部31Aの形状は、特に限定されず、円柱状であってもよく、円錐状であってもよく、半円状であってもよく、多角柱状であってもよく、多角錐状であってもよい。
【0047】
凸部31Aと該凸部31Aが形成されていない外面111の部分である低領域とは、任意の方向において交互に連続して配置される。例えば、図10に示すように、凸部31Aと低領域とは、二点鎖線Lの方向に交互に連続して配置される。
【0048】
以上説明した実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10によれば以下のような効果が奏される。
【0049】
(1)頭蓋形状矯正ヘルメット10は、頭蓋の変形を矯正するために頭部2に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット10であって、上側開口部12及び下側開口部13を有する略環状のシェル11を備え、シェル11は、その外面111に形成され、複数の突条部31、凸部31Aが連続して配置される凹凸部30、30Aを有する。
【0050】
ここで、3Dプリンタ等による成形工程後にシェル11を研磨することで、積層痕等を除去して外面111をより滑らかにすることができるが、その反面にシェル11を手に持ったときに滑りやすく、頭蓋形状矯正ヘルメット10が落下し、破損するおそれがある。特に、頭蓋形状矯正ヘルメット10を装着する対象者1である乳児や幼児は汗を比較的多量にかく傾向にあり、対象者1から脱がした頭蓋形状矯正ヘルメット10のシェル11の外面111は汗等でより滑りやすくなる場合がある。
【0051】
本実施形態によれば、シェル11の外面111に連続した凹凸の模様が形成されるので、シェル11を研磨せずに、良好な質感が得られるとともに、シェル11を把持した場合に手が滑り難くなる。よって、シェル11の質感を担保しつつ、シェル11を把持した場合における頭蓋形状矯正ヘルメット10の落下を防止できる。また、シェル11の研磨工程を省略できるので、シェル11の質感を担保しつつ、製造コストを抑えることができる。
【0052】
(2)(1)に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット10において、シェル11は、造形材料を積層することによって形成され、凹凸部30は、シェル11の外面111において造形材料の積層方向に直交する方向に延びる盛り上がり部としての突条部31と、シェル11の外面111において積層方向に直交する方向に延びる溝部32と、を有し、突条部31と溝部32とは、積層方向に交互に配置される。
【0053】
これにより、シェル周方向に延びる突条部31及び溝部32が積層方向に交互に形成されるので、シェル11の積層痕を目立たなくすることができ、外面111の研磨なしで良好な質感を担保できる。
【0054】
(3)(2)に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット10において、シェル11の厚み方向における突条部31の頂部311と該突条部31に隣接する溝部32の底部321との間の距離d2は、0.05mm~1.0mmである。
【0055】
これにより、質感及び意匠性がより向上する。
【0056】
(4)(1)~(3)のいずれか1つに記載の頭蓋形状矯正ヘルメット10において、シェル11は、その内面112が平坦である。
【0057】
これにより、内面112にクッションをより容易かつ確実に取り付けることができる。
【0058】
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載の頭蓋形状矯正ヘルメット10において、シェル11は、その厚み方向に貫通する複数の通気孔17を有し、複数の通気孔17は、その径がシェル11の内面112から外面111に向かうにしたがって小さくなるように形成される。
【0059】
これにより、外面111に形成される通気孔17による開口面積を抑えつつ、通気孔17を大きくすることができるので、外面111の質感を維持しつつ、シェル11の通気性を向上させるとともに、シェル11の軽量化が可能となる。
【0060】
(6)(5)に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット10において、シェル11は、その厚み方向に貫通し、通気孔17よりも開口径が大きく、頭部2の触診に用いられる複数の触診孔18を有し、触診孔18におけるシェル11の外面111側の内周面181には、凹凸部30が形成される。
【0061】
これにより、触診孔18内の積層痕等も目立たなくすることができ、質感がより向上する。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく適宜変更が可能である。
【0063】
上記実施形態では、シェル11は下側開口部13側から上側開口部12側に向かって成形され、積層方向が上下方向と略一致していたが、造形材料を左右方向に積層してシェル11を成形する場合、上下方向に延びる突条部31及び溝部32を形成してもよい。
【0064】
また上記実施形態では、突条部31と溝部32とは、シェル11の外面111において、主部14の第1端部21から第2端部22までのシェル周方向全体に亘って延びるように形成されていたが、シェル周方向に部分的に延びるように形成されていてもよい。
【0065】
また上記実施形態では、接続部251の外面111は、平坦であったが、突条部31及び溝部32が形成されていてもよい。
【0066】
また例えば、主部14の外面111には、上下方向における異なる凹凸部30との間にシェル周方向に延びる帯状の平坦部が形成されていてもよい。
【0067】
また例えば、凹凸部30は、シェル周方向全体に亘って延びる複数の突条部31及び複数の溝部32が、上下方向においてシェル11の外面111全体に亘って交互に連続して配置されてもよい。即ち、凹凸部30は、シェル11の外部に露出する面全体に亘って形成されていてもよい。これにより、積層痕をより目立たなくすることができる。
【0068】
また、図10に示す凹凸部30Aは、複数の盛り上がり部としての複数の凸部31Aと凸部31Aが形成されていない外面111の部分とからなる構成であったが、凹凸部は平坦な外面111に形成される複数の凹部と該凹部が形成されていない外面111の部分からなる構成であってもよい。このとき、凹部が形成されていない外面111の平坦な部分が盛り上がり部に相当し、凹部が低領域に相当する。凹部と凹部が形成されていない外面111の部分とは、任意の方向において交互に連続して配置される。
【0069】
本実施形態では、シェル11は、例えば、3Dプリンタにより製造されていたが、製造方法はこれに限定されない。シェル11は、合成樹脂の成形体であり、所要の表面硬さ及び剛性を有する。したがって、例えば3Dプリンタの他に、塊状の合成樹脂を切削加工して成形することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 対象者
2 頭部
10 頭蓋形状矯正ヘルメット
11 シェル
12 上側開口部
13 下側開口部
30、30A 凹凸部
31 突条部(盛り上がり部)
31A 凸部(盛り上がり部)
32 溝部
111 外面
【要約】
【課題】質感を担保しつつ、シェルを把持した場合に手が滑り難い頭蓋形状矯正ヘルメットを提供すること。
【解決手段】頭蓋形状矯正ヘルメット10は、頭蓋の変形を矯正するために頭部2に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット10であって、上側開口部12及び下側開口部13を有する略環状のシェル11を備え、シェル11は、その外面111に形成され、盛り上がり部としての複数の突条部31が連続して配置される凹凸部30を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10