(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】高精密レーザートリガーシステムおよびこれを利用する高精密レーザートリガー方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20241216BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241216BHJP
H01L 21/301 20060101ALN20241216BHJP
【FI】
B23K26/08 D
B23K26/00 M
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2024081346
(22)【出願日】2024-05-17
【審査請求日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】10-2023-0064664
(32)【優先日】2023-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】524189498
【氏名又は名称】ディーアイティー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】DIT Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】チェ ブヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョンスン
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-100653(JP,A)
【文献】特開2003-53563(JP,A)
【文献】特開2001-71160(JP,A)
【文献】特開平5-261575(JP,A)
【文献】特開平5-277765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高精密レーザートリガーシステムにおいて、
対象体が装着されるステージと、
時間基盤モードおよび位置基盤モードに応じてトリガー信号を発生させるトリガー発生装置と、
前記トリガー信号が入力されるとレーザー光を照射するレーザーと、
前記ステージおよび前記トリガー発生装置を制御するモーションコントローラと、
前記位置基盤モードで前記対象体を前記レーザーの照射位置に配置する前記ステージの座標を識別し、前記座標を含む座標情報および前記時間基盤モードと前記位置基盤モード間を変更するモード変更信号を前記モーションコントローラに伝送する制御装置と、を含み、
前記モーションコントローラは、
前記時間基盤モードで前記トリガー発生装置が周期ごとに前記トリガー信号を発生させるように制御し、
前記モード変更信号を受信すると、前記ステージの移動速度が目標速度に到達するように加速して前記座標のうち開始座標に位置するように制御し、
前記ステージが前記開始座標に位置すると前記位置基盤モードに変更して、前記ステージが前記目標速度で移動しながら前記座標にそれぞれ位置するたびに前記トリガー発生装置が前記トリガー信号を発生させるように制御し、
前記ステージが前記座標のうち終了座標に到達すると前記モード変更信号を受信することによって前記ステージを減速するように制御する、高精密レーザートリガーシステム。
【請求項2】
前記モーションコントローラは、
前記目標速度と通信ディレイ時間を利用して通信ディレイによる位置誤差を演算し、前記座標を補正する、請求項1に記載の高精密レーザートリガーシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記トリガー信号の周期および前記レーザーの照射間隔に基づいて前記ステージの目標速度を識別する、請求項1に記載の高精密レーザートリガーシステム。
【請求項4】
前記モーションコントローラは、
前記ステージから受信するエンコーダ信号に基づいて前記ステージの位置を識別する、請求項1に記載の高精密レーザートリガーシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記ステージを加速する加速時間および前記ステージを減速する減速時間は前記トリガー信号の周期の倍数に設定する、請求項1に記載の高精密レーザートリガーシステム。
【請求項6】
前記モーションコントローラは、
前記ステージを減速した後、前記ステージが次の開始座標に移動するように制御する、請求項1に記載の高精密レーザートリガーシステム。
【請求項7】
前記モーションコントローラは、
前記ステージが前記開始座標に移動する間、前記位置基盤モードに同期化を遂行する、請求項1に記載の高精密レーザートリガーシステム。
【請求項8】
高精密レーザートリガーシステムによって遂行される高精密レーザートリガー方法において、
時間基盤モードでトリガー発生装置が周期ごとにトリガー信号を発生させるように制御する段階と、
前記時間基盤モードから位置基盤モードに変更するモード変更信号を受信すると、対象体が装着されたステージの移動速度が目標速度に到達するように加速してステージの座標のうち開始座標に位置するように制御する段階と、
前記ステージが前記開始座標に位置すると前記位置基盤モードに変更して、前記ステージが前記目標速度で移動しながら前記座標にそれぞれ位置するたびに前記トリガー発生装置が前記トリガー信号を発生させるように制御する段階と、
前記ステージが前記座標のうち終了座標に到達すると前記位置基盤モードから前記時間基盤モードに変更するモード変更信号を受信することによって前記ステージを減速するように制御する段階を含む、高精密レーザートリガー方法。
【請求項9】
前記開始座標に位置するように制御する段階以前に、
前記位置基盤モードで前記対象体をレーザーの照射位置に配置する前記ステージの座標を識別する段階を含む、請求項8に記載の高精密レーザートリガー方法。
【請求項10】
前記ステージの座標を識別する段階は、
前記目標速度と通信ディレイ時間を利用して通信ディレイによる位置誤差を演算し、前記座標を補正する段階を含む、請求項9に記載の高精密レーザートリガー方法。
【請求項11】
前記開始座標に位置するように制御する段階以前に、
前記トリガー信号の周期およびレーザーの照射間隔に基づいて前記ステージの目標速度を識別する段階を含む、請求項8に記載の高精密レーザートリガー方法。
【請求項12】
前記ステージから受信するエンコーダ信号に基づいて前記ステージの位置を識別する段階をさらに含む、請求項8に記載の高精密レーザートリガー方法。
【請求項13】
前記ステージを加速する加速時間および前記ステージを減速する減速時間は前記トリガー信号の周期の倍数に設定する段階をさらに含む、請求項8に記載の高精密レーザートリガー方法。
【請求項14】
前記ステージを減速するように制御する段階以後、
前記ステージを次の開始座標に移動させる段階をさらに含む、請求項8に記載の高精密レーザートリガー方法。
【請求項15】
前記開始座標に位置するように制御する段階は、
前記ステージが前記開始座標に移動する間、前記位置基盤モードに同期化を遂行する段階を含む、請求項8に記載の高精密レーザートリガー方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高精密レーザートリガーシステムおよびこれを利用する高精密レーザートリガー方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工技術は、鉄鋼、自動車などの伝統的な製造分野から超高速、超精密加工技術を要求する半導体、ディスプレイ、医療機器分野などに拡大している。
【0003】
より精密にレーザー加工を遂行するために、レーザートリガーシステムはレーザーをトリガーするトリガー発生装置を具備し、レーザーシステムで要求する周期を正確に合わせ、かつ正確な照射位置でトリガー信号を発生させてレーザーに入力することが主な課題である。
【0004】
特に、レーザーの中でもポンプレーザー(pumped laser)の場合、ウェハーなどの対象体に一定のエネルギーを有するレーザー光を照射するために加工を遂行する区間の他にも持続的にトリガー信号を発生/入力しなければならない。
【0005】
この時、加工を遂行しない区間から加工を進行する区間に進入時に誤差が発生し得、あるいはトリガー信号を発生/入力する過程で発生する通信ディレイによってトリガー周期や位置に誤差が発生し得る。
【0006】
したがって、レーザーシステムで要求する周期および位置に正確に合わせてレーザー加工を遂行できる方案が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、より精密で正確にレーザー加工を遂行する高精密レーザートリガーシステムおよびこれを利用する高精密レーザートリガー方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムにおいて、対象体が装着されるステージと、時間基盤モードおよび位置基盤モードに応じてトリガー信号を発生させるトリガー発生装置と、前記トリガー信号が入力されるとレーザー光を照射するレーザーと、前記ステージおよび前記トリガー発生装置を制御するモーションコントローラと、前記位置基盤モードで前記対象体を前記レーザーの照射位置に配置する前記ステージの座標を識別し、前記座標を含む座標情報および前記時間基盤モードと前記位置基盤モード間を変更するモード変更信号を前記モーションコントローラに伝送する制御装置と、を含み、前記モーションコントローラは、前記時間基盤モードで前記トリガー発生装置が周期ごとに前記トリガー信号を発生させるように制御し、前記モード変更信号を受信すると、前記ステージの移動速度が目標速度に到達するように加速して前記座標のうち開始座標に位置するように制御し、前記ステージが前記開始座標に位置すると前記位置基盤モードに変更して、前記ステージが前記目標速度で移動しながら前記座標にそれぞれ位置するたびに前記トリガー発生装置が前記トリガー信号を発生させるように制御し、前記ステージが前記座標のうち終了座標に到達すると前記モード変更信号を受信することによって前記ステージを減速するように制御する。
【0009】
前記モーションコントローラは、前記目標速度と通信ディレイ時間を利用して通信ディレイによる位置誤差を演算し、前記座標を補正することができる。
【0010】
前記制御装置は、前記トリガー信号の周期および前記レーザーの照射間隔に基づいて前記ステージの目標速度を識別することができる。
【0011】
前記モーションコントローラは、前記ステージから受信するエンコーダ信号に基づいて前記ステージの位置を識別することができる。
【0012】
前記制御装置は、前記ステージを加速する加速時間および前記ステージを減速する減速時間は前記トリガー信号の周期の倍数に設定することができる。
【0013】
前記モーションコントローラは、前記ステージを減速した後、前記ステージが次の開始座標に移動するように制御することができる。
【0014】
前記モーションコントローラは、前記ステージが前記開始座標に移動する間前記位置基盤モードに同期化を遂行できる。
【0015】
本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムによって遂行される高精密レーザートリガー方法において、時間基盤モードでトリガー発生装置が周期ごとにトリガー信号を発生させるように制御する段階と、前記時間基盤モードから位置基盤モードに変更するモード変更信号を受信すると、対象体が装着されたステージの移動速度が目標速度に到達するように加速してステージの座標のうち開始座標に位置するように制御する段階と、前記ステージが前記開始座標に位置すると前記位置基盤モードに変更して、前記ステージが前記目標速度で移動しながら前記座標にそれぞれ位置するたびに前記トリガー発生装置が前記トリガー信号を発生させるように制御する段階と、前記ステージが前記座標のうち終了座標に到達すると前記位置基盤モードから前記時間基盤モードに変更するモード変更信号を受信することによって前記ステージを減速するように制御する段階を含む。
【0016】
前記開始座標に位置するように制御する段階以前に、前記位置基盤モードで前記対象体を前記レーザーの照射位置に配置する前記ステージの座標を識別する段階を含むことができる。
【0017】
前記ステージの座標を識別する段階は、前記目標速度と通信ディレイ時間を利用して通信ディレイによる位置誤差を演算し、前記座標を補正する段階を含むことができる。
【0018】
前記開始座標に位置するように制御する段階以前に、前記トリガー信号の周期および前記レーザーの照射間隔に基づいて前記ステージの目標速度を識別する段階を含むことができる。
【0019】
前記方法は、前記ステージから受信するエンコーダ信号に基づいて前記ステージの位置を識別する段階をさらに含むことができる。
【0020】
前記方法は、前記ステージを加速する加速時間および前記ステージを減速する減速時間は前記トリガー信号の周期の倍数に設定する段階をさらに含むことができる。
【0021】
前記ステージを減速するように制御する段階以後、前記ステージを次の開始座標に移動させる段階をさらに含むことができる。
【0022】
前記開始座標に位置するように制御する段階は、前記ステージが前記開始座標に移動する間前記位置基盤モードに同期化を遂行する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施例によると、加工/非加工区間のモード切り替えを通じて正確な位置に同一のエネルギーのレーザー光を対象体に照射できるところ、加工品質を高めることができる。
【0024】
本発明の一実施例によると、モード間の変更時に同期化区間を設けて変更されるモードに制御するための準備を遂行できるので、信号間の誤差を除去することができる。
【0025】
本発明の一実施例によると、通信ディレイによる誤差を補正することによって、加工品質をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムを図示した概略図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムの動作フローチャートを図示した図面である。
【
図3】本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムの信号チャートを図示した図面である。
【
図4】本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムをウェハーに適用する場合の動作の様子を図示した図面である。
【
図5】本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムの誤差補正の様子を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る好ましい実施形態を添付された図面を参照して詳細に説明する。添付された図面と共に以下に開示される詳細な説明は本発明の例示的な実施形態を説明しようとするものであり、本発明が実施され得る唯一の実施形態を表そうとするものではない。図面で本発明を明確に説明するために、説明に関わらない部分は省略することができ、明細書全体を通じて同一または類似する構成要素に対しては同じ参照符号を使うことができる。
【0028】
図1は、本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムを図示した概略図である。
【0029】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステム1(以下、システム1とする。)は対象体10、ステージ20、モーションコントローラ30、トリガー発生装置40、レーザー50および制御装置60を含む。
【0030】
対象体10はレーザー加工の対象となる構成であって、半導体ウェハー、ディスプレイなど多様に適用され得る。
【0031】
ステージ20は対象体10を装着して移送させる構成であって、多軸ステージ(XYステージあるいはXYZステージ)であり得、ステージ20の移動方式はいずれか一つに限定されずに多様に適用可能である。ステージ20はエンコーダを具備して持続的にステージ20の位置情報をモーションコントローラ30に提供することができる。
【0032】
モーションコントローラ30はステージ20およびトリガー発生装置40を制御する装置である。具体的には、モーションコントローラ30は対象体10がレーザー50の照射位置に配置されるようにステージ20を移動させ、ステージ20の位置をモニタリングして定められた位置でレーザー50がレーザー光を照射するようにトリガー発生装置40を制御する。
【0033】
モーションコントローラ30はプロセッサ(以下、モーションプロセッサ31という。)を含み、モーションプロセッサ31はプログラムなどのソフトウェアを実行してモーションコントローラ30の少なくとも一つの他の構成要素(例:ハードウェアまたはソフトウェア構成要素)を制御でき、多様なデータ処理または演算を遂行できる。
【0034】
モーションプロセッサ31はステージ20、トリガー発生装置40、制御装置60と有線/無線で通信して、必要な情報を受信または伝送することができる。このために、図示されてはいないが、モーションコントローラ30は別途の通信部を具備することができる。以下、モーションコントローラ30の動作はモーションプロセッサ31が遂行するものと見なす。
【0035】
トリガー発生装置40はトリガー信号を発生させる装置である。本発明の一実施例に係るシステム1は、時間基盤モードおよび位置基盤モードに切り替えながら動作する。時間基盤モードはシステム1が加工を遂行する前の準備区間で時間(周期)を基準としてトリガー信号を発生させるモードであり、位置基盤モードはシステム1が加工を遂行する区間でステージ20の位置を基準としてトリガー信号を発生させるモードである。したがって、トリガー発生装置40は時間基盤モードおよび位置基盤モードに応じてトリガー信号を発生させることができる。
【0036】
レーザー50はシステム1内で固定されて位置し、トリガー発生装置40からトリガー信号を受信すると対象体10にレーザー光を照射する。この時、レーザー50はポンプレーザーであり得、ただしこれに限定されず、トリガー信号を受信することによってレーザー光を照射するように具現されたものであればいずれのレーザーを採用してもよい。
【0037】
制御装置60はシステム1内の構成要素の全般的な動作を制御する装置であり、コンピュータ、サーバーなどで具現され得る。
【0038】
制御装置60はプロセッサ(以下、制御プロセッサ61という。)を含み、制御プロセッサ61はプログラムなどのソフトウェアを実行して制御装置60の少なくとも一つの他の構成要素(例:ハードウェアまたはソフトウェア構成要素)を制御でき、多様なデータ処理または演算を遂行できる。
【0039】
制御プロセッサ61はステージ20、モーションコントローラ30、トリガー発生装置40と有線/無線で通信して、必要な情報を受信または伝送することができる。このために、図示されてはいないが、制御装置60は別途の通信部を具備することができる。以下、制御装置60の動作は制御プロセッサ61が遂行するものと見なす。
【0040】
制御装置60はステージ20が移動する座標を識別する。制御装置60は識別した座標を含む座標情報および時間基盤モードと位置基盤モード間を変更するモード変更信号をモーションコントローラ30に伝送する。一方、モーションコントローラ30は座標情報に基づいてステージ20を移動させ、ステージ20の位置に基づいてトリガー発生装置40を制御することができる。
【0041】
本発明の一実施例によると、システム1は対象体10に一定のエネルギーを有するレーザー光を照射するために加工を遂行する区間(本発明では位置基盤モードで動作する区間である。)の他にも持続的にトリガー信号を発生/入力しなければならない。
【0042】
この時、時間基盤モードと位置基盤モード間を切り替える過程や通信ディレイによってトリガー信号を発生/入力する過程でトリガー周期や照射位置に誤差が発生し得る。
【0043】
本発明では、モードの間に同期化区間を導入してモード切り替え時に発生する誤差を減らし、通信ディレイを考慮した座標の補正を通じて誤差を減らすことができる高精密レーザートリガーシステム1およびこれを利用する高精密レーザートリガー方法について提案する。
【0044】
以下、図面を参照して本発明の一実施例に係るシステム1の動作について具体的に説明する。
【0045】
図2は、本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムの動作フローチャートを図示した図面である。以下、動作はモーションコントローラ30を基準として説明する。
【0046】
本発明の一実施例によると、モーションコントローラ30は時間基盤モードでトリガー発生装置40が周期ごとにトリガー信号を発生させるように制御する(S10)。
【0047】
前述した通り、時間基盤モードはシステム1が加工を遂行する前の準備区間で時間(周期)を基準としてトリガー信号を発生させるモードである。この時、周期はレーザー50の性能により決定され得る。以下、周期はトリガー信号の周期と見なす。
【0048】
時間基盤モードではレーザー50が実際に対象体10を加工するのではなく、レーザー光のエネルギーを一定に維持して加工品質を高めるために、レーザー50は周期ごとにレーザー光を出力する。ただし、レーザー50の内部または外部にシャッターを具備して時間基盤モードではレーザー光が不要なところに照射されないように遮断する。
【0049】
本発明の一実施例によると、モーションコントローラ30はモード変更信号を受信すると、ステージ20の移動速度が目標速度に到達するように加速してステージの座標のうち開始座標に位置させる(S20)。
【0050】
一般的にステージ20に対象体10がロード(load)される場合、その位置が少しずつねじれていることもあり得る。制御装置60は対象体10に対してビジョンアライメント(vision align)を遂行し、対象体10がレーザー50の照射位置に配置されるためのステージ20の座標を識別する。制御装置60はレーザー50のサイズ(あるいはレーザー50の照射間隔)を考慮してステージ20の座標を識別することができる。例えば、レーザー50のサイズが20mm*20mmの正四角形状である場合、レーザー照射間隔は20mmとなる。また、制御装置60は対象体10の形状を考慮して、全体的な照射経路を設定することができる。ステージ20の座標は照射経路によって決定される。
【0051】
モーションコントローラ30は制御装置60からステージ20の座標を含む座標情報とモード変更信号を受信する。モード変更信号は、時間基盤モードから位置基盤モードにあるいは位置基盤モードから時間基盤モードに変更する信号である。
【0052】
開始座標は加工工程をいくつかの区間に分けた時、各区間でレーザー50が対象体10にはじめてレーザー光を照射する位置である。例えば、対象体10がウェハーであり、ウェハーの横方向に左から右に加工する場合、レーザーがウェハーに照射される領域のうち最左側の座標が開始座標となる。これに関連して、
図4を参照して具体的に説明する。
【0053】
この時、加工方向はいずれか一つに限定されるものではなく、制御装置60あるいはモーションコントローラ30が能動的に経路を選択することができる。また、作業者が制御装置60あるいはモーションコントローラ30を操作して手動で経路を選択できることは言うまでもない。
【0054】
また、時間基盤モードから位置基盤モードに変更するモード変更信号を受信する時、ステージ20は開始座標の以前の座標に位置していなければならない。以前の座標はステージ20が目標速度に到達するように加工方向に加速時(この時、一定の加速度で加速することとする。)、開始座標に到達できる位置を意味する。一般的に、以前の座標は開始座標からレーザー照射間隔だけのマージンを置く。制御装置60は以前の座標も識別してモーションコントローラ30に共に伝送することができる。
【0055】
本発明の一実施例によると、モーションコントローラ30はステージ20の位置をモニタリングして以前の座標に移動させることができる。
【0056】
制御装置60はトリガー信号の周期およびレーザーの照射間隔に基づいてステージ20の目標速度を識別することができる。例えば、レーザーの照射間隔が20mmで、トリガー信号の周期が5Hz(0.2s)である場合、ステージ20の目標速度は100mm/sとなる。
【0057】
モーションコントローラ30はステージ20が目標速度に到達するように加工方向に加速させる。この時、モーションコントローラ30は一定の加速度でステージ20を加速させることができる。制御装置60はステージ20を加速する加速時間はトリガー信号の周期の倍数に設定することができる。同期化区間でもトリガー信号の周期を維持するためである。
【0058】
一方、この加速区間はモードが時間基盤モードから位置基盤モードに完全に変更されるまでの区間であって、同期化区間ともいう。モーションコントローラ30は同期化区間の間、信号間の誤差を除去したり、位置基盤モードに制御するためのプロセスを実行するなど同期化動作を遂行する。
【0059】
本発明の一実施例によると、モーションコントローラ30はステージ20が開始座標に位置すると位置基盤モードに変更して、ステージ20が目標速度で移動しながら座標にそれぞれ位置するたびにトリガー発生装置40がトリガー信号を発生させるように制御する(S30)。
【0060】
モーションコントローラ30はステージ20が目標速度に到達すると位置基盤モードで等速で移動するように制御する。
【0061】
ステージ20の座標それぞれでトリガー発生装置40がトリガー信号を発生させると、レーザー50はトリガー信号を受信して該当座標で対象体10にレーザー光を照射するであろう。
【0062】
本発明の一実施例によると、モーションコントローラ30はステージ20が座標のうち終了座標に到達するとモード変更信号を受信することによってステージ20を減速する(S40)。
【0063】
終了座標は同様に、加工工程をいくつかの区間に分けた時、各区間でレーザー50が対象体10に最後にレーザー光を照射する位置である。例えば、対象体10がウェハーであって、ウェハーの横方向に左から右に加工する場合、レーザーが照射されるウェハーの領域のうち最右側の座標が終了座標となる。これに関連して、
図4を参照して具体的に説明する。
【0064】
制御装置60はステージ20が終了座標に到達するとモーションコントローラ30にモード変更信号を伝送することができる。あるいは、モーションコントローラ30が終了座標到達時にトリガー信号の下降エッジ(Falling Edge)でモード変更信号を発生させることができる。
【0065】
この時、モード変更信号は位置基盤モードから再び時間基盤モードに変更する信号である。
【0066】
一方、この減速区間も前記加速区間と同様に、モードが位置基盤モードから時間基盤モードに完全に変更されるまでの区間であって、同期化区間ともいう。モーションコントローラ30は同期化区間の間、信号間の誤差を除去したり、時間基盤モードに制御するためのプロセスを実行するなどの同期化動作を遂行する。
【0067】
万一、加工が終了した場合、モーションコントローラ30はステージ20の移動速度が0となるように減速する(ステージ停止)。
【0068】
加工が終了していない場合、モーションコントローラ30はステージ20が次の加工のための位置に移動させなければならないので、移動速度を一定の速度に減速する。モーションコントローラ30はステージ20を一定の減速度で減速することとする。
【0069】
図2のS10~S40で説明した過程は、対象体10の加工工程の一つのシーケンスである。対象体10の大きさや形状に応じて、加工工程を完了するために複数のシーケンスを遂行できる。
【0070】
制御装置60は次の加工のための位置情報(座標情報)をモーションコントローラ30に伝送することができる。一方、制御装置60は対象体10の全体を加工するためのステージ20の座標情報を識別して伝送することができるが、これに限定されず、シーケンス別に送ったり、リアルタイムで送ってもよい。
【0071】
本発明の一実施例によると、加工/非加工区間のモード切り替えを通じて正確な位置に同一のエネルギーのレーザー光を対象体に照射できるので、加工品質を高めることができる。
【0072】
本発明の一実施例によると、モード間の変更時に同期化区間を設けて変更されるモードに制御するための準備を遂行できるので、信号間の誤差を除去することができる。
【0073】
図3は、本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムの信号チャートを図示した図面である。
【0074】
前記の
図2に関連して説明した内容を信号チャートで図示したところ、重複する内容は
図2を参照する。
【0075】
図3を参照すると、時間基盤モード(同期化区間を含む)でのトリガー信号、位置基盤モードでのトリガー信号はすべて参照トリガー信号(reference trigger)と同じ周期で信号を発生させる。
【0076】
まず、ステージ20が停止または単純位置移動する場合(Idle状態)、時間基盤モードで5Hz(0.2秒)周期でトリガー信号を発生させる。
【0077】
制御装置60はモード変更信号および位置基盤ステージ座標をモーションコントローラ30に伝送する。ステージ20が開始座標の以前の座標にある場合、モード変更信号が発生し得る。
【0078】
制御装置60でモード変更信号入力後、モーションコントローラ30はモード変更開始トリガー信号を発生させてステージ20を加速制御する。
【0079】
ステージ20の加速時間はトリガー信号周期の倍数に設定することができ、
図3ではトリガー信号周期の2倍に設定して加速時間は0.4秒である。ステージ20が加速する間、トリガー発生装置40は継続して時間基盤モードトリガー信号によってトリガリングされる。加速区間は前述したように同期化区間であって、モーションコントローラ30は時間基盤モードから位置基盤モードに変更して同期化を遂行する。モーションコントローラ30は制御装置60から受信した座標を入力することができる。
【0080】
モーションコントローラ30はステージ20の加速および同期化を終了後、位置基盤モードに変更し、ステージ20を等速で移動し、入力された座標到達時にトリガー信号を発生するようにトリガー発生装置40を制御する。
【0081】
モーションコントローラ30は入力された座標のうち最後の座標にステージ20が到達した時、トリガー信号の下降エッジ(Falling Edge)で再びモード変更信号を受信する。
【0082】
モーションコントローラ30はモード変更信号を受信すると、ステージ20を減速する。同様に、減速時間はトリガー信号周期の2倍に設定して減速時間は0.4秒である。モーションコントローラ30は位置基盤モードから時間基盤モードに変更して同期化を遂行する。
【0083】
減速が完了すると時間基盤モードに変更され、5Hz(0.2秒)周期でトリガー信号を発生させる。
【0084】
図4は、本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムをウェハーに適用する場合の動作の様子を図示した図面である。
【0085】
図4は、対象体10がウェハー11である場合、その具体的なシステム1の動作過程を説明する。同様に、
図2および
図3と重複する内容は前述した内容を適用する。
【0086】
前述した通り、ウェハー11の加工方向/加工経路は多様に設定され得、
図4の場合、ウェハー11の横方向に左から右に/右から左にジグザグ方向に加工経路が設定されている。この時、一列ずつ加工を遂行することにし、一つの列が一つのシーケンスであるものと見なす。
【0087】
制御装置60はウェハー11の形状、レーザーの照射間隔、レーザーの位置などを考慮してステージが位置すべき座標を識別する。
【0088】
モーションコントローラ30は座標情報を利用してステージ20を以前の座標410に移動する。以前の座標410は先の
図2のS20に関連して説明した通り、ステージ20が開始座標420の以前の座標である。
【0089】
ステージ20が以前の座標410に位置した場合、モーションコントローラ30はモード変更信号によりステージ20を加速制御して開始座標420に位置させる(1:加速区間=同期化区間)。
【0090】
モーションコントローラ30は開始座標420から終了座標430までステージ20を等速で移動させながら、定められた座標ごとにレーザー光を照射するようにトリガー発生装置40を制御する(2:等速区間、位置基盤モード)。
【0091】
モーションコントローラ30は終了座標430から再びモード変更信号を受信すると、ステージ20を減速制御する(3:減速区間=同期化区間)。
【0092】
その結果、ステージ20は座標440に位置することができ、次のシーケンスの以前の座標450に移動することができる(4:停止あるいは単純移動区間、時間基盤モード)。
【0093】
図5は、本発明の一実施例に係る高精密レーザートリガーシステムの誤差補正の様子を図示した図面である。
【0094】
本発明の一実施例によると、ステージ20のエンコーダ信号がモーションコントローラ30に入力され、位置基盤モードでトリガー発生装置40がトリガー信号を出力およびレーザー50に入力される過程で通信ディレイが発生し得る。すなわち、トリガー信号の周期とエンコーダの周期が正確に一致しないため誤差が発生し得る。
【0095】
通信ディレイはシステムが有している固有の値であり、速度が変わっても通信ディレイは変わらない。したがって、モーションコントローラ30は通信ディレイによる位置誤差を演算して座標を補正することができる。具体的には、モーションコントローラ30は目標速度と通信ディレイ時間を利用して通信ディレイによる位置誤差を演算することができる。
【0096】
例えば、トリガー信号の周期が5Hz、レーザー照射間隔が20mmである場合、目標速度は100mm/sである。通信ディレイ時間が1msであれば、通信ディレイによって0.1mmの位置誤差が発生する。
【0097】
この場合、同一のX軸位置でレーザー50を照射しても、対象体10の移動方向により上/下最大0.2mmだけ位置誤差が発生し得る。
【0098】
モーションコントローラ30は対象体10の移動速度(目標速度)および通信ディレイ時間で誤差時間を計算して移動方向により補正値を適用することができる。
【0099】
他の方法として、
図5に図示された通り、トリガー発生装置40で10nsec分解能で周期を逓倍してトリガー位置を精密に補正することができる。
【0100】
本発明の一実施例によると、通信ディレイによる誤差を補正することによって、加工品質をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0101】
1:レーザートリガーシステム
10:対象体
20:ステージ
30:モーションコントローラ
40:トリガー発生装置
50:レーザー
60:制御装置