(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】栽培用トレイ及び植物栽培キット
(51)【国際特許分類】
A01G 9/00 20180101AFI20241216BHJP
【FI】
A01G9/00 B
(21)【出願番号】P 2024175030
(22)【出願日】2024-10-04
【審査請求日】2024-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596109686
【氏名又は名称】ユメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小久保 孝志
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-254744(JP,A)
【文献】特開平11-004627(JP,A)
【文献】特開2004-154031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗ポットを収容する収容部を有するトレイ本体と、
前記トレイ本体の底部の正面側の縁部に接続され、前記底部の左右方向に延在する排水管と、
前記トレイ本体の正面側に設けられた第一フックと、
前記トレイ本体の背面側に設けられた第二フックと
を有し、
前記排水管の内部と前記収容部の内部とは、前記排水管と前記トレイ本体との接続部において連通している
栽培用トレイ。
【請求項2】
前記第一フックは、前記トレイ本体の側面から見て、前記第二フックよりも高い位置に設けられている
請求項1に記載の栽培用トレイ。
【請求項3】
前記第二フックは、前記トレイ本体を上方から平面視した際の前後方向の中心線よりも右寄り又は左寄りに取り付けられている
請求項1に記載の栽培用トレイ。
【請求項4】
複数の栽培用トレイを左右方向に並べて使用するものであり、
隣り合う前記排水管同士が連結可能となっている
請求項1に記載の栽培用トレイ。
【請求項5】
前記トレイ本体の左右の側面には、隣り合う栽培用トレイ同士を連結する連結部材がそれぞれ設けられている
請求項4に記載の栽培用トレイ。
【請求項6】
前記トレイ本体の底部に、前後方向に延在する複数の凸部を有している
請求項1に記載の栽培用トレイ。
【請求項7】
前記トレイ本体は、前記育苗ポットを正面側で保持する第一保持部と、
前記育苗ポットを背面側で保持する第二保持部と
を有する
請求項1に記載の栽培用トレイ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の栽培用トレイと、
育苗ポットと
を有する
植物栽培キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培用トレイ及び植物栽培キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イチゴなどの植物を栽培する方法として、場所を取らずに栽培することができるため、空中採苗法が用いられてきている。
このような空中採苗法において、水平に架けられたパイプに懸架できるような膨出部を備えた育苗ポットを用いることが知られている(例えば、特許文献1)。また、ほぼ垂直に自立して固定された縦、横の網目状の生産ネットに、該網目の横線に懸架した作物栽培ポットを多列、多段に配設した作物栽培装置であって、作物栽培ポット列が横に隣り合う作物栽培ポットの軸心をネット面に対してお互いに対称に傾斜させて構成したことを特徴とする作物栽培装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-45042号公報
【文献】国際公開第2006/006209号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の育苗ポットを傾斜させる空中採苗法では、散水後において、育苗ポットの底面(特に正面側の底面の縁部)の水捌けが十分ではなく、育苗ポットの底面に水が溜まってしまうという問題があった。また、散水した水が育苗ポットから直接床等に落ちてしまい、床を濡らしてしまうという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、散水後の水捌けが良好で、かつ、育苗ポット内に散水した水が直接地面に排出されることを防止することができる栽培用トレイ及び植物栽培キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、育苗ポットを収容する収容部を有するトレイ本体と、
前記トレイ本体の底部の正面側の縁部に接続され、前記底部の左右方向に延在する排水管と、
前記トレイ本体の正面側に設けられた第一フックと、
前記トレイ本体の背面側に設けられた第二フックと
を有し、
前記排水管の内部と前記収容部の内部とは、前記排水管と前記トレイ本体との接続部において連通している
栽培用トレイである。
また、本発明は、本発明の栽培用トレイと、
育苗ポットと
を有する
植物栽培キットである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、散水後の水捌けが良好で、かつ、育苗ポット内に散水した水が直接地面に排出されることを防止することができる栽培用トレイ及び植物栽培キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る栽培用トレイの一例を示す斜視図((a)右斜視図、(b)左斜視図)である。
【
図2】
図1の栽培用トレイに育苗ポットを挿入した一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る栽培用トレイの一例を示す側面図((a)右側面図、(b)左側面図)である。
【
図4】本発明に係る栽培用トレイの一例を示す(a)上面図、(b)正面図(正面図)である。
【
図5】
図1の栽培用トレイを複数連結した一例を示す斜視図である。
【
図6】
図1の栽培用トレイを複数連結した一例を示す正面図である。
【
図7】
図1の栽培用トレイを設置用パイプに設置した状態の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る栽培用トレイ及び植物栽培キットの好適な実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る栽培用トレイの一例を示す斜視図((a)右斜視図、(b)左斜視図)である。
図2は、
図1の栽培用トレイに育苗ポットを挿入した一例を示す斜視図である。
図3は、本発明に係る栽培用トレイの一例を示す側面図((a)右側面図、(b)左側面図)である。
図4は、本発明に係る栽培用トレイの一例を示す(a)上面図、(b)正面図(正面図)である。
図5は、
図1の栽培用トレイを複数連結した一例を示す斜視図である。
図6は、
図1の栽培用トレイを複数連結した一例を示す正面図である。
図7は、
図1の栽培用トレイを設置用パイプに設置した状態の一例を示す側面図である。
図8は、育苗ポットの一例を示す図である。
【0010】
<栽培用トレイ1>
本発明に係る栽培用トレイ1は、
図1~
図4に示すように、育苗ポット10を収容する収容部21を有するトレイ本体2と、トレイ本体2の底部22の正面11側の縁部に接続され、底部22の左右方向に延在する排水管3と、トレイ本体2の正面11側に設けられた第一フック4と、トレイ本体2の背面12側に設けられた第二フック5とを有している。この栽培用トレイ1は、
図2に示すように、育苗ポット10を収容部21に収容するよう構成されている。なお、本発明において、正面11と背面12を結んだ方向(
図4(b)の紙面と垂直な方向)を前後方向、前後方向と水平面で直交する方向(
図4(b)の左右方向)を左右方向という。
【0011】
図1及び
図2に示すように、トレイ本体2は、全体として円筒形状であることが好ましいが、その形状は、収容する育苗ポット10の形状に応じて適宜変更することができる。育苗ポット10は、例えば、
図8に示すように、上方が開口したカップ型形状をしており、その下部には排水するための排水口101が設けられている。本実施形態では、トレイ本体2は、収容部21の正面11側に、収容部21の外周と連続して形成され、上方向に突出している第一保持部24を有している。第一保持部24は、育苗ポットを正面側で保持し、これにより、収容した育苗ポット10が正面11側に転倒することを防止することができる。第一保持部24の上端は、
図1に示すように、C字状となっていることが好ましい。これにより、育苗ポット10の出し入れをより容易に行うことができる。また、本実施形態では、
図1~
図4に示すように、第一保持部24の左右側にそれぞれ窓部25が設けられており、これにより、栽培用トレイ1全体としての軽量化を図ることができる。
【0012】
また、本実施形態では、トレイ本体2は、収容部21の背面12側に、収容部21の外周と連続して形成され、上方向に突出している第二保持部26を有している。第二保持部26は、育苗ポットを背面側で保持し、これにより、育苗ポット10の背面12側への転倒を防止するとともに、育苗ポット10をトレイ本体2(収容部21)内により確実に保持することができる。また、本実施形態では、
図1に示すように、第二保持部26の中央に窓部27が設けられており、これにより、栽培用トレイ1全体としての軽量化を図ることができる。
【0013】
排水管3は、
図1~4に示すように、トレイ本体2の底部22の正面11側縁部に接続され、底部22の左右方向に延在している。また、排水管3の内部と収容部21の内部とは、排水管3とトレイ本体2との接続部6において連通し、連通孔61を形成している。育苗ポット10に散水された水は、この連通孔61を介して排水管3に流れ込む仕組みとなっている。なお、底部22には、
図1及び
図4に示すように、前後方向に延在する複数の凸部23が形成されていることが好ましい。これにより、底部22から排水管3への排水をより促進することができる。
【0014】
本発明に係る栽培用トレイ1は、
図5及び
図6に示すように、複数を左右方向に並べて使用するものであり、排水管3は、隣り合う排水管3同士が連結可能となっていることが好ましい。具体的には、排水管3は、図示の構成のように、左右で径が異なっており、隣り合う排水管3同士において、一方の排水管3の一部が他方の排水管3の内部に入ることで嵌合して、隣り合う排水管3同士が連結・連通する構成となっていることが好ましい。
【0015】
第一フック4は、トレイ本体2の正面11側に設けられている。第一フック4は、例えば、
図7に示すように、水平に架けられた設置用パイプ8に引っかけることで、栽培用トレイ1を設置用パイプ8に設置することができる。また、第一フック4は、図示の構成のように、その断面が円弧状となっていることが好ましい。また、第一フック4は、
図1~
図4に示すように、排水管3と離間して設けられていることが好ましい。具体的には、第一フック4は、
図1に示すように、第一保持部24上に設けられていることが好ましい。これにより、設置用パイプと排水管3とが干渉することを効果的に防止することができる。
【0016】
第二フック5は、トレイ本体2の背面12側に設けられている。第二フック5は、前述した第一フック4と同様に、例えば、
図7に示すように、水平に架けられた設置用パイプ9に引っかけることで、栽培用トレイ1を設置用パイプ9に設置することができる。また、第二フック5は、図示の構成のように、前述した第一フック4と同様に、その断面が円弧状となっていることが好ましい。第二フック5は、トレイ本体2の底部22の背面12側縁部に設置されていることが好ましい。これにより、栽培用トレイ1を設置用パイプに設置する前において、排水管3とともに第二フック5が脚部として機能し、設置前の栽培用トレイ1を静置するすることが可能となる。また、第二フック5は、トレイ本体2を上方から平面視した際の前後方向の中心線よりも右寄り又は左寄りに取り付けられていることが好ましい。
図4(a)の構成では、第二フック5は、右寄りに取り付けられている。これにより、2つの栽培用トレイ1を背面12が互いに向かい合うように同じ設置用パイプに第二フック5を引っかけて設置する際に、第二フック5同士が干渉することを防止することができる。
【0017】
本発明の栽培用トレイ1は、例えば、
図7に示すように、正面側に傾斜した状態で設置されることが好ましい。これにより、育苗ポット10に散水した水を連通孔61を介してより確実に排水管3へ導くことができる。また、第一フック4は、傾斜していない状態でのトレイ本体2の側面から見て、第二フック5よりも高い位置に設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、
図7に示すように、水平方向において平行に架けられた2つの設置用パイプ8、9のうちの設置用パイプ8に第一フック4を、設置用パイプ9に第二フック5を引っかけることで、栽培用トレイ1を容易に傾斜した状態で設置することができる。なお、第一フック4と第二フック5の取付位置は、第一フック4が高い位置にあることに限定されず、同じ位置であってもよいし、第二フック5が高い位置にあってもよい。このような場合、2つの設置用パイプの高さを変更することで、栽培用トレイ1を傾斜した状態とすることができる。なお、栽培用トレイ1は傾斜していない状態で設置してもよい。
【0018】
本実施形態に係る栽培用トレイ1は、トレイ本体2の左右の側面には、隣り合う栽培用トレイ同士を連結する連結部材7a、7bが設けられている。本実施形態では、連結部材7a、7bは、それぞれ、トレイ本体2の側面の下端に設けられている。また、本実施形態では、連結部材7aは、その中央に凹部を備えており、連結部材7bは、その中央に突起部を備えている。そして、隣り合う栽培用トレイ同士を連結する際に、
図6に示すように、連結部材7aの凹部に、連結部材7bの突起部が挿入・嵌合することで、強固に連結することができる。
【0019】
<植物栽培キット>
本発明に係る植物栽培キットは、上述した栽培用トレイ1と、育苗ポット10とを有している。育苗ポット10は、例えば、
図8に示すように、その下部に排水口101を備えていることが好ましい。排水口101の数は、1つでもあっても、複数であってもよいが、複数あることが好ましい。また、排水口101は、育苗ポット10の側面の下端側または底面の側面側に有していることが好ましい。これにより、傾斜した状態の栽培用トレイ1に育苗ポット10を挿入した際に、散水後の水捌けが特に良好なものなる。
【0020】
このような栽培用トレイ1及び植物栽培キットであれば、散水後の水捌けを良好なものとすることができる。また、育苗ポット10内に散水した水が排水管を通って排水されるため、直接地面に排出されることを防止することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0021】
1 栽培用トレイ
2 トレイ本体
3 排水管
4 第一フック
5 第二フック
6 接続部
7a、7b 連結部材
8 設置用パイプ
10 育苗ポット
11 正面
12 背面
21 収容部
22 底部
23 凸部
24 第一保持部
25 窓部
26 第二保持部
27 窓部
61 連通孔
101 排水口
【要約】
【課題】散水後の水捌けが良好で、かつ、育苗ポット内に散水した水が直接地面に排出されることを防止することができる栽培用トレイ及び植物栽培キットを提供する。
【解決手段】栽培用トレイ1は、育苗ポット10を収容する収容部21を有するトレイ本体2と、トレイ本体2の底部22の正面11側の縁部に接続され、底部22の左右方向に延在する排水管3と、トレイ本体2の正面11側に設けられた第一フック4と、トレイ本体2の背面12側に設けられた第二フック5とを有し、排水管3の内部と収容部21の内部とは、排水管3とトレイ本体2との接続部6において連通している。
【選択図】
図1