(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】理美容鋏
(51)【国際特許分類】
B26B 13/20 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
B26B13/20
(21)【出願番号】P 2024188380
(22)【出願日】2024-10-25
【審査請求日】2024-10-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390038209
【氏名又は名称】足立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190816
【氏名又は名称】中山 公博
(72)【発明者】
【氏名】足立 榮美
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-079976(JP,U)
【文献】特開2007-167097(JP,A)
【文献】特開2023-011077(JP,A)
【文献】特開2007-185404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0375406(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106976112(CN,A)
【文献】特開2004-113539(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0017479(KR,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0007988(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1刃部と、第1柄部と、第1リング部を有する第1指環部と、を備える第1鋏部材と、
第2刃部と、第2柄部と、第2指環部と、を備える第2鋏部材と、
弾性部材を備える復帰機構と、
を備え、
前記第1指環部は前記第1柄部に対して移動可能であり、前記第1指環部の移動によって前記第1柄部に対する前記第1リング部の位置および向きを調節可能であ
り、
前記復帰機構は、前記第1指環部が第1位置から第2位置に移動した後、前記第2位置にある前記第1指環部を前記第1位置に復帰させる機構であり、
前記弾性部材は、前記第1指環部が前記第1位置から前記第2位置に移動した際に弾性変形し、前記第1指環部に対して働く前記弾性部材の復元力により、前記第1指環部は、前記第2位置から前記第1位置に自動的に戻る、
理美容鋏。
【請求項2】
取付部材をさらに備え、
前記第1指環部は、前記取付部材によって前記第1柄部に取り付けられており、
前記第1指環部は、前記取付部材を中心として前記第1柄部に対して回転可能であり、前記第1指環部の回転によって前記第1柄部に対する前記第1リング部の位置および向きを調節可能である、
請求項1に記載の理美容鋏。
【請求項3】
前記第1指環部が移動しないように前記第1指環部を固定するロック部材をさらに備える、
請求項1または2に記載の理美容鋏。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記第1柄部に取り付けられており、
前記ロック部材は、第1ロック係合部を有し、
前記第1指環部は、第2ロック係合部を有し、
前記第1ロック係合部が前記第2ロック係合部と係合することで、前記第1指環部は固定される、
請求項
3に記載の理美容鋏。
【請求項5】
前記第1ロック係合部または前記第2ロック係合部の一方は、突起であり、
前記第1ロック係合部または前記第2ロック係合部の他方は、前記突起が挿入される穴である、
請求項
4に記載の理美容鋏。
【請求項6】
前記第1指環部は、第1位置と第2位置との間で移動可能であり、
前記第1柄部は、第1移動規制部を有し、
前記第1指環部は、第2移動規制部を有し、
前記第1移動規制部または前記第2移動規制部の一方は、前記第1位置に対応する位置および前記第2位置に対応する位置それぞれに配置されており、
前記第1ロック係合部および前記第2ロック係合部の少なくとも一方は、前記第1位置および前記第2位置それぞれで前記第1指環部を固定するために、複数設けられており、
前記第1指環部が前記第1位置から前記第2位置に移動するとき、および前記第2位置から前記第1位置に移動するときに、前記第2移動規制部が前記第1移動規制部に接触することで前記第1指環部は停止し、前記第2ロック係合部は前記第1ロック係合部と整合する、
請求項
4に記載の理美容鋏。
【請求項7】
前記取付部材は、前記第1指環部が移動しないように前記第1指環部を固定する、
請求項2に記載の理美容鋏。
【請求項8】
前記第2指環部は第2リング部を有し、
前記第2指環部は前記第2柄部に対して移動可能であり、前記第2指環部の移動によって前記第2柄部に対する前記第2リング部の位置および向きを調節可能である、
請求項1または2に記載の理美容鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の鋏部材を備え、各鋏部材が、刃部と、柄部と、指環部と、を備える理美容鋏が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1は、1つの実施形態として、刃部、柄部および指環部が一体形成された理美容鋏を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
毛髪を切断する際、理美容鋏の使用者は、切断箇所に応じて理美容鋏の向きを変えなければならない。使用者は、切断箇所によっては手首を大きくねじるなどする必要があり、その結果、毛髪を切断しにくくなることがあった。
【0005】
本発明は、使用者が毛髪を切断しやすくなる理美容鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
第1刃部と、第1柄部と、第1リング部を有する第1指環部と、を備える第1鋏部材と、
第2刃部と、第2柄部と、第2指環部と、を備える第2鋏部材と、
を備え、
前記第1指環部は前記第1柄部に対して移動可能であり、前記第1指環部の移動によって前記第1柄部に対する前記第1リング部の位置および向きを調節可能である、
理美容鋏
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、使用者が毛髪を切断しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1指環部が第1位置にあるときの理美容鋏の斜視図である。
【
図2】第1指環部が第1位置にあるときの理美容鋏の平面図である。
【
図3】第1指環部が第1位置にあるときの理美容鋏の左側面図である。
【
図5】第1指環部が第2位置にあるときの理美容鋏の左側面図である。
【
図6A】左側から見た第1柄部の部分斜視図である。
【
図9A】第1指環部が第1位置にあるときの、第1移動規制部と第2移動規制部との位置関係を示す概略図である。
【
図9B】第1指環部が第2位置にあるときの、第1移動規制部と第2移動規制部との位置関係を示す概略図である。
【
図11】ロック部材を第1柄部に向けて押し込んだときの
図2のIV部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の理美容鋏1000について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<1.理美容鋏の全体構造>
図1から
図3に示すように、理美容鋏1000は、第1鋏部材10と、第2鋏部材20と、結合部材30と、を備える。第1鋏部材10および第2鋏部材20は、結合部材30によって互いに回転可能に結合されている。結合部材30は、例えば、ボルト、ナットおよびベアリングを含む。結合部材30としては、公知の結合部材を使用できる。
【0011】
本実施形態において、第1鋏部材10は動刃であり、第2鋏部材20は静刃である。理美容鋏1000の使用時に、使用者は、静刃(第2鋏部材20)をほぼ動かさず、主に動刃(第1鋏部材10)を動かして毛髪を切断する。
【0012】
第1鋏部材10は、第1刃部11と、第1柄部12と、第1指環部13と、を備える。第1刃部11および第1柄部12は一体形成されており、互いに分離不能である。第1柄部12は、結合部材30よりも後方に延びている。第1指環部13は、第1柄部12に取り付けられている。第1指環部13は、第1リング部131と、接続部132と、を備える。理美容鋏1000の使用時に、第1リング部131内には、通常、親指が挿入される。第1鋏部材10の詳細な構造は後述する。
【0013】
第2鋏部材20は、第2刃部21と、第2柄部22と、第2指環部23と、を備える。第2刃部21、第2柄部22および第2指環部23は一体形成されており、互いに分離不能である。第2刃部21、第2柄部22および第2指環部23は、ほぼ同一平面上に位置している。第2柄部22は、結合部材30よりも後方に延びている。第2指環部23は、第2リング部231と、指掛け部232と、を備える。理美容鋏1000の使用時に、第2リング部231内には、通常、薬指が挿入される。また、理美容鋏1000の使用時に、指掛け部232には、通常、小指が掛けられる。
【0014】
説明の便宜上、
図2に示すように、第1刃部11および第2刃部21の先端側を理美容鋏1000の「前」、第1指環部13および第2指環部23の後端側を理美容鋏1000の「後」、第1指環部13側を理美容鋏1000の「左」、第2指環部23側を理美容鋏1000の「右」と規定する。また、
図3に示すように、理美容鋏1000が閉じているときに、第1刃部11と第2刃部21とが重なる方向を、理美容鋏1000の「上下方向」(第2刃部21側が「上」、第1刃部11側が「下」)と規定する。
【0015】
<2.第1鋏部材の構造>
図1から
図4に示すように、理美容鋏1000は、ロック部材40と、第1弾性部材50(
図4参照)と、取付部材60と、第2弾性部材70(
図4参照)と、ヒットポイント80と、抜け止め部材90と、をさらに備える。
【0016】
図3と
図5との比較から分かるように、第1指環部13は、第1柄部12に対して移動可能である。第1指環部13を移動させることにより、第1柄部12に対する第1リング部131の位置および向きを変えることができる。第1指環部13は、ロック部材40によって所定の位置で第1柄部12に対して固定(ロック)可能である。
【0017】
本実施形態において、第1指環部13は、第1位置と第2位置との間で移動可能である。第1指環部13が第1位置(
図3参照)にあるとき、第1リング部131は第1刃部11および第1柄部12とほぼ同一平面上に位置している。第1指環部13が第2位置(
図5参照)にあるとき、第1リング部131は、第1位置よりも下方に位置している。このように、第1指環部13は、第1位置と第2位置との間で上下方向に移動可能である。
【0018】
【0019】
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1柄部12は、第1穴部121と、第2穴部122と、第3穴部123と、を有する。また、第1柄部12は、第1柄部12の後端に、第1移動規制部124を有する。
【0020】
第1穴部121は、第1柄部12の左側面から右方向に向けて凹んでいる。第1穴部121の形状は、非真円形状である。第1穴部121内には、ロック部材40の一部が配置されている(
図4参照)。第1穴部121の底部には、第1穴部121の底部を貫通する第1貫通穴121aが設けられている。
【0021】
第2穴部122は、第1穴部121よりも後方に設けられている。第2穴部122は、第1柄部12の左側面から右方向に向けて凹んでいる。第2穴部122内には、取付部材60の一部が配置されている(
図4参照)。
【0022】
第2穴部122の底部には、第2穴部122の底部を貫通する第2貫通穴122aが設けられている。第2貫通穴122aの内面には、ネジ溝が設けられている。第2貫通穴122a内には、取付部材60の第2取付軸部63が挿入されている(
図4参照)。
【0023】
第2穴部122の底部には、第2貫通穴122aよりも後方に、第1バネ受容部122bが設けられている。第1バネ受容部122bは、第2穴部122の底部に設けられた穴である。第1バネ受容部122b内には、第2弾性部材70の第1バネ軸部72が挿入されている(
図4参照)。
【0024】
第3穴部123は、第1柄部12の右側面から左方向に向けて凹んでいる。第3穴部123の内面には、ネジ溝が設けられている。第3穴部123のネジ溝には、ヒットポイント80がネジ結合されている(
図4参照)。
【0025】
第1移動規制部124は、後述する第2移動規制部136a,136bと協働して、第1指環部13の移動範囲(回転範囲)を制限する。第1移動規制部124は、第1柄部12の後端から後方に突出する突起である。第1移動規制部124は、第1指環部13の凹部136内に配置されている(
図9Aおよび
図9B参照)。
【0026】
<2-2.ロック部材および第1弾性部材>
主に
図4および
図7を参照して、ロック部材40および第1弾性部材50について説明する。
【0027】
ロック部材40は、第1指環部13が第1柄部12に対して回転不能となるように、第1指環部13を第1位置および第2位置で固定する。ロック部材40による固定(ロック)は解除可能であり、ロック解除することで、第1指環部13は第1柄部12に対して回転可能になる。
【0028】
図7に示すように、ロック部材40は、ロック頭部41と、第1ロック軸部42と、第2ロック軸部43と、延出部44と、第1ロック係合部45と、を備える。ロック部材40は、第1ロック軸部42および第2ロック軸部43の中心軸方向に移動可能である。
【0029】
ロック頭部41は、第1柄部12の外部に配置されている(
図4参照)。ロック頭部41は、ロック解除を行う際に、使用者によって押される部分である。
【0030】
第1ロック軸部42は、ロック頭部41から延びている。第1ロック軸部42の一部は、第1穴部121内に配置されている(
図4参照)。
【0031】
第2ロック軸部43は、第1ロック軸部42と同一の中心軸を有しており、第1ロック軸部42から延びている。第2ロック軸部43の外径は、第1ロック軸部42の外径よりも小さい。したがって、第1ロック軸部42と第2ロック軸部43との間には、段差46が存在する。第2ロック軸部43は、第1穴部121内および第1貫通穴121a内に配置されている(
図4参照)。第2ロック軸部43は、ネジ穴を有している。抜け止め部材90は、例えばネジであり、第2ロック軸部43のネジ穴にネジ結合されている(
図4参照)。抜け止め部材90の頭部は、第1柄部12の外部(より詳細には、第1柄部12の右側面上)に配置されている。第2ロック軸部43に抜け止め部材90が取り付けられることにより、抜け止め部材90の頭部が第1柄部12に引っ掛かるため、ロック部材40は第1柄部12から抜けないようになっている。
【0032】
第1弾性部材50は、ロック部材40を第1柄部12に向けて押し込んだ後、第1弾性部材50の復元力により、ロック部材40を自動的に元の位置に戻すための部材である。第1弾性部材50は、例えばバネであり、具体的にはコイルバネである。第1弾性部材50は、第2ロック軸部43の周囲に取り付けられている(
図4参照)。第1弾性部材50は、段差46と第1穴部121の底部との間で伸縮する。
【0033】
延出部44は、第1ロック軸部42から後方に延びている。延出部44は、第1穴部121と相補的な形状(すなわち、非真円の柱状)を有している。延出部44は、延出部44の外周面と第1穴部121の内周面との間にほぼ隙間がないように、第1穴部121内に配置されている。第1穴部121の形状が非真円形状であり、延出部44の形状が非真円の柱状であり、かつ、延出部44が、延出部44の外周面と第1穴部121の内周面との間にほぼ隙間がないように、第1穴部121内に配置されていることにより、ロック部材40が第1柄部12に対して回転してしまうことを防止できる。
【0034】
第1ロック係合部45は、延出部44の後部から、第2ロック軸部43とは反対方向に延びている。第1ロック係合部45は、円柱形の突起である。第1ロック係合部45が後述する第1指環部13の第2ロック係合部133aと係合することで(
図4参照)、第1指環部13は第1位置で固定される。また、第1ロック係合部45が後述する第1指環部13の第2ロック係合部133bと係合することで、第1指環部13は第2位置で固定される。なお、第1ロック係合部45は、円柱形の突起に限定されない。
【0035】
<2-3.第1指環部>
主に
図1、
図4、
図8Aおよび
図8Bを参照して、第1指環部13について説明する。
【0036】
接続部132は、第1指環部13を第1柄部12に接続するための部分である。
図8Aおよび
図8Bに示すように、接続部132は、複数の第2ロック係合部133(133a,133b)と、複数の第2バネ受容部134と、取付部材受容部135と、を有する。接続部132は、第1柄部12の左側面上に配置されている(
図1参照)。また、第1指環部13は、接続部132と第1リング部131との間の位置に、凹部136を有する。
【0037】
第2ロック係合部133aは、第1ロック係合部45と相補的な形状(本実施形態の場合、円形)の穴である。第1指環部13が第1位置にあるとき、第1ロック係合部45は、第2ロック係合部133aに挿入される(
図4参照)。これにより、第1指環部13は、第1位置で固定される。第2ロック係合部133bは、第1ロック係合部45と相補的な形状(本実施形態の場合、円形)の穴である。第2ロック係合部133bは、第2ロック係合部133aよりも下方に設けられている。第1指環部13が第2位置にあるとき、第1ロック係合部45は、第2ロック係合部133bに挿入される。これにより、第1指環部13は、第2位置で固定される。なお、第2ロック係合部133a,133bは、接続部132を貫通する貫通穴であってもよい。また、第2ロック係合部133a,133bは、円形の穴に限定されない。
【0038】
複数の第2バネ受容部134(
図8Aでは、3つ)は、円形の穴である。複数の第2バネ受容部134のいずれか1つには、第2弾性部材70の第2バネ軸部73が挿入されている(
図4参照)。
【0039】
取付部材受容部135は、接続部132を貫通する貫通穴である。取付部材受容部135には、取付部材60の第1取付軸部62が挿入されている(
図4参照)。
【0040】
凹部136は、後方に向けて凹んでいる。凹部136を画定する第1側壁は、第2移動規制部136aとして機能する。また、凹部136を画定すると共に第1側壁とは反対側に位置する第2側壁は、第2移動規制部136bとして機能する。第2移動規制部136a,136bは、第1移動規制部124と協働して、第1指環部13の移動範囲(回転範囲)を制限する。
図9Aに示すように、第1指環部13が第1位置にあるとき、第2移動規制部136aが第1移動規制部124に接触している。したがって、第1指環部13は、これ以上、上方には移動できない。また、
図9Bに示すように、第1指環部13が第2位置にあるとき、第2移動規制部136bが第1移動規制部124に接触している。したがって、第1指環部13は、これ以上、下方には移動できない。このように、第1指環部13の回転範囲は、第2移動規制部136aと第2移動規制部136bとの間に制限される。
【0041】
<2-4.取付部材および第2弾性部材>
主に
図4および
図10を参照して、取付部材60および第2弾性部材70について説明する。
【0042】
取付部材60は、第1指環部13を第1柄部12に取り付けるための部材である。取付部材60は、取付部材60の中心軸が第1柄部12の軸方向に対して非平行(例えば、直角)となるように、第1柄部12に取り付けられている。取付部材60の中心軸は、第1指環部13が回転する際の回転軸となる。すなわち、第1指環部13は、取付部材60を中心として、取付部材60の周囲を回転する。
【0043】
図4に示すように、取付部材60は、取付頭部61と、第1取付軸部62と、第2取付軸部63と、を備える。取付部材60としては、一般的なネジを使用できる。
【0044】
取付頭部61は、接続部132の左側面上に配置されている。
【0045】
第1取付軸部62は、取付頭部61から延びている。第1取付軸部62は、第1指環部13の取付部材受容部135(
図8A参照)に挿入されると共に、第2穴部122内に配置されている(
図4参照)。
【0046】
第2取付軸部63は、第1取付軸部62と同一の中心軸を有し、第1取付軸部62から延びている。第2取付軸部63の外径は、第1取付軸部62の外径よりも小さい。第2取付軸部63の外面には、ネジ溝が設けられている。第2取付軸部63は、第1柄部12の第2貫通穴122aのネジ溝(
図6A参照)とネジ結合する。これにより、取付部材60は、第1柄部12に固定される。
【0047】
理美容鋏1000は、第1指環部13を第2位置から第1位置に復帰させるための復帰機構を備える。復帰機構は、第1指環部13を第2位置から第1位置に自動的に復帰させる機構であってもよい。本実施形態において、復帰機構は、第2弾性部材70を備える。第2弾性部材70は、その復元力により、第1指環部13を第2位置から第1位置に自動的に復帰させるための部材である。
【0048】
第2弾性部材70は、例えばバネである。
図10に示すように、第2弾性部材70は、バネ本体71と、第1バネ軸部72と、第2バネ軸部73と、を備える。バネ本体71は、コイルバネである。第1バネ軸部72は、バネ本体71から、バネ本体71の中心軸とほぼ平行に延びている。第2バネ軸部73は、第1バネ軸部72とは反対方向に、バネ本体71から延びている。
【0049】
図4に示すように、バネ本体71は、第1取付軸部62の周囲に配置されている。第1バネ軸部72は、第1柄部12の第1バネ受容部122bに挿入されている。第2バネ軸部73は、第1指環部13の第2バネ受容部134に挿入されている。
【0050】
【0051】
図3に示す第1指環部13は、第1位置に配置されている。
図4に示すように、第1指環部13が第1位置にあるとき、第1ロック係合部45は第2ロック係合部133aに挿入されている。また、
図9Aに示すように、第1指環部13が第1位置にあるとき、第2移動規制部136aは、第1移動規制部124に接触している。
【0052】
図11に示すように、使用者がロック部材40のロック頭部41を押すと、ロック部材40は第1柄部12に向けて移動し、第1ロック係合部45が第2ロック係合部133aから離脱する。これにより、第1指環部13に対するロックが外れ、第1指環部13は、第1柄部12に対して回転可能になる。また、第1弾性部材50は、ロック部材40の段差46と第1穴部121の底部との間で圧縮される。使用者は、ロック部材40を押したままの状態で、第1リング部131を下方(すなわち、
図3における時計回り方向)に回転させる。第1指環部13は、取付部材60の中心軸を中心として回転し、第2位置に向けて移動する(
図5参照)。第2移動規制部136bが第1移動規制部124に接触すると(
図9B参照)、第1指環部13はそれ以上回転できず、第2位置で停止する。
【0053】
第1指環部13を第2位置に移動させた後、使用者がロック部材40を押すのを止めると、第1弾性部材50の復元力によりロック部材40が自動的に戻り、第1ロック係合部45が第2ロック係合部133bに挿入される。第1ロック係合部45が第2ロック係合部133bに挿入されると、第1指環部13は第1柄部12に対して回転不能になる。すなわち、第1指環部13は第2位置で固定される。
【0054】
図3と
図5との比較から分かるように、第2位置にある第1リング部131の位置および向きは、第1位置にある第1リング部131の位置および向きとは異なっている。具体的には、第2位置にあるときの第1リング部131の後端は、第1位置にあるときの第1リング部131の後端および第1柄部12よりも下方に位置している。そして、第1リング部131は、第1リング部131の後端が第1リング部131の前端よりも下方に位置するような傾斜した姿勢となっている。
【0055】
第2弾性部材70の第2バネ軸部73は第1指環部13の第2バネ受容部134に挿入されているため(
図4参照)、第1指環部13を第2位置まで回転させると、第2弾性部材70は第1指環部13によって引っ張られ、伸びる。伸びた第2弾性部材70は、その復元力により第1指環部13を第1位置に向けて付勢しているが、第1指環部13は第2位置で固定されているため、第1位置に向けて回転することができない。
【0056】
ロック部材40を再度押し込むと、第1ロック係合部45が第2ロック係合部133bから離脱する。これにより、第1指環部13に対するロックが外れ、第1指環部13は、第1柄部12に対して回転可能になる。そして、第2弾性部材70の復元力により、第1指環部13は自動的に上方(すなわち、
図5における反時計回り方向)に回転し、第1位置に戻る。第2移動規制部136aが第1移動規制部124に接触することで(
図9A参照)、第1指環部13は第1位置で停止する。使用者がロック部材40を押すのを止めると、第1弾性部材50の復元力によりロック部材40が自動的に戻り、第1ロック係合部45が第2ロック係合部133aに挿入される。こうして、第1指環部13は、第1位置で固定される。
【0057】
<4.効果>
図3および
図5に示すように、理美容鋏1000では、第1柄部12に対して第1指環部13を移動させることができる。これにより、第1刃部11および第1柄部12に対する第1リング部131の位置および向きを変えることができる。よって、第1リング部131の位置および向きを使用者が使いやすい位置および向きに調節できるため、使用者が毛髪を切断しやすくなる。
【0058】
理美容鋏1000が、第1指環部13を第2位置から第1位置に復帰させる復帰機構を備えることにより、第1指環部13を第2位置に戻すことができる。
【0059】
復帰機構が第2弾性部材70を備えることにより、第2弾性部材70の復元力により、第1指環部13を第2位置から第1位置に自動的に戻すことができる。したがって、使用者は、ロック部材40によるロックを解除するだけで、第1指環部13を簡単に第1位置に戻すことができる。
【0060】
図8Aに示すように、複数の第2バネ受容部134を設けることにより、第2弾性部材70の第2バネ軸部73を挿入する位置を変えることができる。第2バネ軸部73の挿入位置を変えることにより、第1指環部13を回転させたときの第2弾性部材70の伸び量(すなわち、復元力の大きさ)を変えることができる。したがって、複数の第2バネ受容部134を設けることにより、第2弾性部材70の復元力を調節することができるため、第1指環部13が第2位置から第1位置に戻るときの第1指環部13の回転速度を調節できる。
【0061】
ロック部材40によって第1指環部13を所定の位置で固定できることにより、理美容鋏1000の使用中に、不意に第1指環部13が動いてしまうことを防止できる。
【0062】
図7および
図8Aに示すように、第1指環部13を固定するための機構として、第1ロック係合部45と、第1ロック係合部45が係合する第2ロック係合部133a,133bとの組み合わせを採用することにより、第1指環部13の段階的な位置調節が可能になる。本実施形態では、第1位置に対応する第2ロック係合部133aと第2位置に対応する第2ロック係合部133bとが設けられているため、第1指環部13は、2段階での位置調節が可能である。
【0063】
図7および
図8Aに示すように、第1指環部13を固定するための機構として、突起(第1ロック係合部45)とその突起が挿入される穴(第2ロック係合部133a,133b)との組み合わせを採用することにより、簡単な構造でロック機構を実現できる。
【0064】
図11に示すように、ロック解除するために使用者がロック部材40を押し込むと、第1弾性部材50は圧縮される。そして、使用者がロック部材40を押すのを止めると、ロック部材40は、第1弾性部材50の復元力により自動的に戻り、第1指環部13をロックする。したがって、使用者は、ロック部材40によって簡単に第1指環部13を所定の位置で固定できる。
【0065】
図9Aに示すように、第2移動規制部136aが第1移動規制部124と接触するとき、第2ロック係合部133aが第1ロック係合部45と整合する。また、
図9Bに示すように、第2移動規制部136bが第1移動規制部124と接触するとき、第2ロック係合部133bが第1ロック係合部45と整合する。このように、第1移動規制部124および第2移動規制部136a,136bを設けることにより、第1ロック係合部45と第2ロック係合部133a,133bとの位置合わせを簡単に行うことができる。
【0066】
<5.変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下に、本発明の変形例を説明する。以下で説明する変形例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、単独でまたは適宜組み合わせて、上記実施形態に適用できる。
【0067】
(5-1)第1指環部13は、3つ以上の第2ロック係合部133を有していてもよい。これにより、第1指環部13を、3つ以上のそれぞれの位置で固定できる。例えば、第3位置に対応する3つ目の第2ロック係合部133が、第2ロック係合部133aよりも上方に設けられていてもよく、第2ロック係合部133bよりも下方に設けられていてもよく、または、第2ロック係合部133aと第2ロック係合部133bとの間に設けられていてもよい。
【0068】
(5-2)第1ロック係合部45は複数設けられていてもよい。複数の第1ロック係合部45は、第1位置で第1指環部13を固定するための第1ロック係合部45と、第2位置で第1指環部13を固定するための第1ロック係合部45と、を含む。複数の第1ロック係合部45が設けられた場合、第2ロック係合部133は1つのみであってもよく、複数であってもよい。
【0069】
(5-3)第1ロック係合部45が穴であり、第2ロック係合部133が突起であってもよい。
【0070】
(5-4)第2弾性部材70は、
図10に示す構造の弾性部材に限定されず、例えば板バネなどの他の構造を有するバネであってもよい。
【0071】
(5-5)第1バネ受容部122bは複数設けられていてもよい。複数の第1バネ受容部122bが設けられる場合、第2バネ受容部134は1つのみであってもよく、複数であってもよい。複数の第1バネ受容部122bを設けることにより、第2弾性部材70の第1バネ軸部72を挿入する位置を変えることができる。その結果、第2弾性部材70の復元力を調節することができるため、第1指環部13が第2位置から第1位置に戻るときの第1指環部13の回転速度を調節できる。
【0072】
(5-6)第1位置は、第1リング部131が第1刃部11および第1柄部12とほぼ同一平面上に配置される位置に限定されない。また、第2位置は、第1リング部131が第1刃部11および第1柄部12よりも下方に配置される位置に限定されない。第1位置は、第1リング部131が第1刃部11および第1柄部12よりも下方に配置される位置であってもよく、第2位置は、第1リング部131が第1刃部11および第1柄部12とほぼ同一平面上に配置される位置であってもよい。あるいは、例えば、第1位置および/または第2位置は、第1リング部131が第1柄部12よりも上方に配置される位置であってもよい。この場合、第1リング部131は、第1リング部131の後端が第1リング部131の前端よりも上方に位置するような傾斜した姿勢となる。例えば、第1位置または第2位置の一方が、第1リング部131が第1柄部12とほぼ同一平面上に配置される位置であり、第1位置または第2位置の他方が、第1リング部131が第1柄部12よりも上方に配置される位置であってもよい。あるいは、第1位置または第2位置の一方が、第1リング部131が第1柄部12よりも上方に配置される位置であり、第1位置または第2位置の他方が、第1リング部131が第1柄部12よりも下方に配置される位置であってもよい。
【0073】
(5-7)第1移動規制部124は、突起に限定されない。また、第2移動規制部136a,136bは、凹部136を画定する第1側壁および第2側壁に限定されない。第1柄部12に、突起(第1移動規制部124)の代わりに、第2移動規制部136a,136bと同様の第1側壁および第2側壁を設け、第1指環部13に、第1側壁および第2側壁(第2移動規制部136a,136b)の代わりに、第1移動規制部124と同様の突起を設けてもよい。
【0074】
(5-8)ロック部材40と取付部材60とを別々に設けるのではなく、取付部材60にロック部材40の機能を持たせてもよい。
【0075】
(5-9)第1鋏部材10が静刃であり、静刃である第1鋏部材10の第1指環部13が第1柄部12に対して移動可能であってもよい。あるいは、第1指環部13が第1柄部12に対して移動可能であることに加え、第2指環部23が第2柄部22に対して移動可能であってもよい。第2柄部22に対する第2リング部231の位置および向きを変更できることにより、第2リング部231の位置および向きを使用者が使いやすい位置および向きに調節できるため、使用者が毛髪を切断しやすくなる。
【0076】
(5-10)第1柄部12は、第1刃部11とほぼ同一平面上に位置している形態に限定されない。例えば、第1柄部12は、第1刃部11に対して斜め上方または斜め下方に傾斜していてもよい。そして、第1指環部13は、その傾斜した第1柄部12に対して上下方向に移動可能であってもよい。また、第2柄部22は、第2刃部21とほぼ同一平面上に位置している形態に限定されない。例えば、第2柄部22は、第2刃部21に対して斜め上方または斜め下方に傾斜していてもよい。そして、第2指環部23は、その傾斜した第2柄部22に対して上下方向に移動可能であってもよい。
【0077】
<6.付記>
(項1)
第1刃部と、第1柄部と、第1リング部を有する第1指環部と、を備える第1鋏部材と、
第2刃部と、第2柄部と、第2指環部と、を備える第2鋏部材と、
を備え、
前記第1指環部は前記第1柄部に対して移動可能であり、前記第1指環部の移動によって前記第1柄部に対する前記第1リング部の位置および向きを調節可能である、
理美容鋏。
【0078】
(項2)
取付部材をさらに備え、
前記第1指環部は、前記取付部材によって前記第1柄部に取り付けられており、
前記第1指環部は、前記取付部材を中心として前記第1柄部に対して回転可能であり、前記第1指環部の回転によって前記第1柄部に対する前記第1リング部の位置および向きを調節可能である、
項1に記載の理美容鋏。
【0079】
(項3)
前記第1指環部が第1位置から第2位置に移動した後、前記第2位置にある前記第1指環部を前記第1位置に向けて復帰させる復帰機構をさらに備える、
項1または2に記載の理美容鋏。
【0080】
(項4)
前記復帰機構は、弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記第1指環部が前記第1位置から前記第2位置に移動した際に弾性変形し、
前記第1指環部に対して働く前記弾性部材の復元力により、前記第1指環部は、前記第2位置から前記第1位置に自動的に戻る、
項3に記載の理美容鋏。
【0081】
(項5)
前記第1指環部が移動しないように前記第1指環部を固定するロック部材をさらに備える、
項1または2に記載の理美容鋏。
【0082】
(項6)
前記ロック部材による前記第1指環部に対する固定は、解除可能である、
項5に記載の理美容鋏。
【0083】
(項7)
前記ロック部材は、前記第1柄部に取り付けられており、
前記ロック部材は、第1ロック係合部を有し、
前記第1指環部は、第2ロック係合部を有し、
前記第1ロック係合部が前記第2ロック係合部と係合することで、前記第1指環部は固定される、
項5または6に記載の理美容鋏。
【0084】
(項8)
前記第1ロック係合部または前記第2ロック係合部の一方は、突起であり、
前記第1ロック係合部または前記第2ロック係合部の他方は、前記突起が挿入される穴である、
項7に記載の理美容鋏。
【0085】
(項9)
前記第1指環部は、第1位置と第2位置との間で移動可能であり、
前記第1柄部は、第1移動規制部を有し、
前記第1指環部は、第2移動規制部を有し、
前記第1移動規制部または前記第2移動規制部の一方は、前記第1位置に対応する位置および前記第2位置に対応する位置それぞれに配置されており、
前記第1ロック係合部および前記第2ロック係合部の少なくとも一方は、前記第1位置および前記第2位置それぞれで前記第1指環部を固定するために、複数設けられており、
前記第1指環部が前記第1位置から前記第2位置に移動するとき、および前記第2位置から前記第1位置に移動するときに、前記第2移動規制部が前記第1移動規制部に接触することで前記第1指環部は停止し、前記第2ロック係合部は前記第1ロック係合部と整合する、
項7または8に記載の理美容鋏。
【0086】
(項10)
前記第1移動規制部は、突起であり、
前記第2移動規制部は、前記第1位置に対応する位置に設けられた第1側壁と、前記第2位置に対応する位置に設けられた第2側壁と、を含み、
前記第1指環部が前記第1位置から前記第2位置に移動するとき、前記第2側壁が前記突起に接触することで、前記第1指環部は前記第2位置で停止し、
前記第1指環部が前記第2位置から前記第1位置に移動するとき、前記第1側壁が前記突起に接触することで、前記第1指環部は前記第1位置で停止する、
項9に記載の理美容鋏。
【0087】
(項11)
前記取付部材は、前記第1指環部が移動しないように前記第1指環部を固定する、
項2に記載の理美容鋏。
【0088】
(項12)
前記第2指環部は第2リング部を有し、
前記第2指環部は前記第2柄部に対して移動可能であり、前記第2指環部の移動によって前記第2柄部に対する前記第2リング部の位置および向きを調節可能である、
項1から11のいずれか1項に記載の理美容鋏。
【符号の説明】
【0089】
1000 理美容鋏
10 第1鋏部材
11 第1刃部
12 第1柄部
124 第1移動規制部
13 第1指環部
131 第1リング部
133a 第2ロック係合部
133b 第2ロック係合部
136a 第2移動規制部
136b 第2移動規制部
20 第2鋏部材
21 第2刃部
22 第2柄部
23 第2指環部
231 第2リング部
40 ロック部材
45 第1ロック係合部
60 取付部材
70 第2弾性部材(復帰機構,弾性部材)
【要約】
【課題】使用者が毛髪を切断しやすくなる理美容鋏を提供する。
【解決手段】理美容鋏1000は、第1鋏部材10と、第2鋏部材20と、を備える。第1鋏部材10は、第1刃部11と、第1柄部12と、第1指環部13と、を備える。第1指環部13は、第1リング部131を有している。第2鋏部材20は、第2刃部21と、第2柄部22と、第2指環部23と、を備える。第1指環部13は第1柄部12に対して移動可能であり、第1指環部13の移動によって第1柄部12に対する第1リング部131の位置および向きを調節できる。
【選択図】
図5