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特許7604061多孔性カーボン担体、多孔性カーボン担体の製造方法及びこれを用いた燃料電池用触媒
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】多孔性カーボン担体、多孔性カーボン担体の製造方法及びこれを用いた燃料電池用触媒
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/96 20060101AFI20241216BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20241216BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20241216BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20241216BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20241216BHJP
   B01J 35/31 20240101ALI20241216BHJP
   B01J 35/38 20240101ALI20241216BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20241216BHJP
   B01J 35/73 20240101ALI20241216BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20241216BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241216BHJP
【FI】
H01M4/96 B
H01M4/96 M
H01M4/88 C
H01M4/92
B01J23/42 M
B01J32/00
B01J35/31
B01J35/38
B01J35/61
B01J35/73
C01B32/05
H01M8/10 101
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024519237
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 KR2022009371
(87)【国際公開番号】W WO2023277596
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085990
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085991
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0079934
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523457338
【氏名又は名称】ザ カーボン スタジオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギ ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジェ ヒョン
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130446(JP,A)
【文献】特開2008-060457(JP,A)
【文献】特開2002-025560(JP,A)
【文献】特開2011-142009(JP,A)
【文献】特表2015-525184(JP,A)
【文献】米国特許第05372981(US,A)
【文献】特開2021-084852(JP,A)
【文献】特公平07-017368(JP,B2)
【文献】特開2019-089021(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133132(WO,A1)
【文献】特開2014-118345(JP,A)
【文献】瀬戸山徳彦,吸着等温線の解析法 比較プロット法,Adsorption News,日本,2015年07月31日,Vol.29, No.2,Page.10-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/96
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/92
H01M 8/10
C01B 32/05
B01J 35/61
B01J 35/31
B01J 35/73
B01J 32/00
B01J 35/38
B01J 23/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のt-プロット(t-plot)法に基づく吸着等温法を用いて0.35nm~0.4nmの厚さ(t)の範囲で得た0超2nm未満のサイズの気孔の表面積が100m/g~300m/gであり、
ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH(Barrett-Joyner-Halenda)脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積は、100m/g~800m/gであることを特徴とする、多孔性カーボン担体。
【請求項2】
前記多孔性カーボン担体のBET基盤の全比表面積に対してジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積の比が0.2~1であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項3】
前記多孔性カーボン担体において、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積は、200m/g~2000m/gであることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項4】
前記多孔性カーボン担体のBET基盤の全比表面積に対してジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積の比が0.5~2であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項5】
前記多孔性カーボン担体のタップ密度(tap density)は、0.05g/cm~0.5g/cmであることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項6】
前記多孔性カーボン担体の真密度(true density)は、2.1g/cm~4g/cmであることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項7】
前記多孔性カーボン担体の平均1次粒径は、10nm~30nmであることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項8】
前記多孔性カーボン担体は層状構造であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項9】
前記多孔性カーボン担体のX線回折法により測定された平均層間隔(d002)が0.335nm~0.355nmであり、a軸方向格子定数(La)は、4nm~10nmであることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項10】
前記多孔性カーボン担体の平均層数(average number of graphene layers)は、6~20であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項11】
前記多孔性カーボン担体の熱重量分析(Thermogravimetric analysis:TGA)における500℃~700℃の質量減少率は0~30%であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項12】
前記多孔性カーボン担体の微分熱重量分析(Derivative Thermogravimetry: DTG)における最小値の温度は、740℃~850℃であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性カーボン担体。
【請求項13】
(a)炭素原料を1500℃~3000℃で熱処理して不純物を除去し、結晶化させるステップと、
(b)前記結晶化した炭素原料をホウ素、炭素、窒素、酸素、リンおよび硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの異種元素を含む雰囲気下で前処理して、前記異種元素がドープされた活性化部位を導入するステップと、
(c)前記活性化部位が導入された炭素原料に有機界面活性剤を含む添加剤を混合し、その後、熱処理によって前記異種元素を除去して炭素原料を活性化させるステップと、
(d)前記活性化された炭素原料を洗浄した後乾燥するステップと、を含む、多孔性カーボン担体の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の多孔性カーボン担体に白金を含む金属粒子が担持されていることを特徴とする、燃料電池用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性カーボン担体、多孔性カーボン担体の製造方法及びこれを用いた燃料電池用触媒に関し、より詳しくは、高い多孔性を有し、かつ、高結晶化を示すので、白金などの金属粒子を効率的に担持することができる多孔性カーボン担体、多孔性カーボン担体の製造方法及びこれを用いて安定性及び耐久性が向上した燃料電池用触媒に関する。
【0002】
本発明を支援した国家研究開発事業は、下記のりである。
【0003】
課題固有番号:1711160139
課題番号:2021M3H4A1A02049886
関係省庁:科学技術情報通信部
課題管理(専門)機関名:韓国研究財団
研究事業名:独自技術開発事業/ナノ及び素材技術開発事業/未来技術研究実・先導型
研究課題名:低温工程を基盤とした高結晶性の多孔性カーボン担体の合成技術開発
寄与率:1/2
課題遂行機関名:株式会社ザーカーボンスタジオ
研究期間:2022.01.01-2022.12.31
課題固有番号:1415178031
課題番号:20011473
関係省庁:産業通商資源部
課題管理(専門)機関名:韓国産業技術評価管理院
研究事業名:素材部品技術開発事業/素材部品異種技術融合型
研究課題名:水素社会の実現のための水素燃料電池の電極触媒カーボン担体の生産の独自技術開発
寄与率:1/2
課題遂行機関名:株式会社ザーカーボンスタジオ
研究期間:2022.01.01-2022.12.31
【背景技術】
【0004】
高分子電解質膜燃料電池(PEMFC)は、触媒を用いて水素と酸素との電気化学反応によって電気を生産する発電システムであり、酸化陽極(以下、アノードという)と還元陰極(以下、カソードという)との間にカチオン交換膜が挿入された構造を有し、輸送手段に適用されることができ、今後高い需要が予測される。
【0005】
触媒は、燃料電池の性能を決定する重要な要素であって、従来、高分子電解質膜燃料電池用触媒は、非晶質カーボン担体に白金などの金属粒子を担持させたものなどを用いたが、いろいろな問題があった。
【0006】
一例として、白金を担持した触媒を用いて輸送用燃料電池を駆動する場合、駆動開始時点で、カソードでは高い電圧が印加され、カーボン担体の酸化現象および不可逆的な劣化が起こり、アノードでもスタック単位の燃料電池で間欠的に発生する水素欠乏現象によって電極に加えられる電圧が飛躍的に上昇してカーボン担体の劣化を引き起こす。このような現象は、結果的に担体の表面の白金ナノ粒子の脱離(detachment)現象を招き、白金の活性面積を減少させて燃料電池の全体としての安定性及び耐久性が低下する。
【0007】
近年は、このような問題を改善するために、カーボン担体の更なる気孔形成によって白金の分散性を改善し、触媒活性を増加させる研究が進められている。しかし、従来に使用されていた水蒸気活性法のように化学反応を強制に誘導してカーボン中に気孔を形成する場合、当該反応がカーボンの表面上でランダムに進められるので、形成される気孔のサイズ分布を制御することが困難であった。また、当該工程において、炭素の結晶質部分と非晶質部分との区分なしに活性化反応および気孔形成が進められて、気孔形成後にむしろ全体的な結晶性が低下した。かかる工程の場合、結果的に、「多孔質」と「結晶性」がトレードオフ(trade off)の関係を示すようになる。すなわち、活性化工程により、多孔性及び白金の分散性を改善できるとしても、結晶性はむしろ劣ることによって、燃料電池の駆動時、安定性及び耐久性が低下するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、白金などの金属粒子を効率的に担持できる細孔を有し、かつ、高結晶性の多孔性カーボン担体及びその製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記多孔性カーボン担体を用いて安定性および耐久性が向上した燃料電池用触媒を提供することである。
【0010】
ただし、本発明の技術的課題は、これらに限定されず、以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者に明確に理解されることができる部分を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のt-プロット(t-plot)法に基づく吸着等温法を用いて0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲で得た0超2nm未満のサイズの気孔の表面積が100m/g~300m/gであり、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH(Barrett-Joyner-Halenda)脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積は、100m/g~800m/gである多孔性カーボン担体を提供する。
【0012】
前記多孔性カーボン担体のBET基盤の全比表面積に対してジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積の比が0.2~1であることができる。
【0013】
前記多孔性カーボン担体において、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積は、200m/g~2000m/gとすることができる。
【0014】
前記多孔性カーボン担体のBET基盤の全比表面積に対してジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積の比が0.5~2であることができる。
【0015】
前記多孔性カーボン担体のタップ密度(tap density)は、0.05g/cm~0.5g/cmであってもよい。
【0016】
前記多孔性カーボン担体の真密度(true density)は、2.1g/cm~4g/cmであってもよい。
【0017】
前記多孔性カーボン担体の平均1次粒径は、10nm~30nmであることができる。
【0018】
前記多孔性カーボン担体は層状構造であってもよい。
【0019】
前記多孔性カーボン担体のX線回折法により測定された平均層間隔(d002)が0.335nm~0.355nmであり、a軸方向格子定数Laは、4nm~10nmであることができる。
【0020】
前記多孔性カーボン担体の平均層数(average number of graphene layers)は、6~20であることができる。
【0021】
前記多孔性カーボン担体の熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)における500℃~700℃の質量減少率は0~30%であることができる。
【0022】
前記多孔性カーボン担体の微分熱重量分析(DTG:Derivative Thermogravimetry)における最小値の温度は、740℃~850℃であることができる。
【0023】
また、本発明は、
(a)炭素原料を1500℃~3000℃で熱処理して不純物を除去し、結晶化させるステップと、
(b)前記結晶化した炭素原料をホウ素、炭素、窒素、酸素、リンおよび硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの異種元素を含む雰囲気下で前処理して、前記異種元素がドープされた活性化部位を導入するステップと、
(c)前記活性化部位が導入された炭素原料に有機界面活性剤を含む添加剤を混合し、その後、熱処理によって前記異種元素を除去して炭素原料を活性化させるステップと、
(d)前記活性化された炭素原料を洗浄した後乾燥するステップと、を含む多孔性カーボン担体の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記多孔性カーボン担体に白金を含む金属粒子が担持された燃料電池用触媒を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明による多孔性カーボン担体は、白金粒子等の金属粒子を担持するに適する高多孔性構造を有し、かつ、高結晶性を示すので、燃料電池用触媒として使用するとき、優れた安定性及び耐久性を示すとともに高効率及び低コストを達成することができる。
【0026】
本発明の製造方法によれば、炭素原料に異種元素を導入した後に除去する工程によって結晶性および多孔性を同時に向上させることができ、高結晶性且つ高多孔性を有する多孔性のカーボン担体を高収率で得ることができる。
【0027】
本発明による燃料電池用触媒は、多孔性カーボン担体の気孔内に好適なサイズの白金粒子等の金属粒子が効率よく分散されるので、触媒活性が改善され、これを用いた燃料電池の諸特性が向上することができる。
【0028】
ただし、本発明の効果はこれに限定されず、以下に直接記載されていなくても、本発明の技術的特徴から予測可能な効果を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1(a)~図1(e)は、それぞれ、実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体のSEM(Scanning Electron Microscope)写真である
図2図2(a)~図2(e)は、それぞれ、実施例1-1~1-2および比較例1-1~1-3の多孔性カーボン担体のTEM(Transmission Electron Microscope)写真である
図3図3(a)~図3(e)は、それぞれ、実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体のXRDグラフである。
図4図4(a)は、実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体のTGAのグラフであり、図4(b)は、実施例1-1~1-2および比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体のDTGグラフである。
図5図5(a)~図5(e)は、それぞれ、実施例2-1~2-2および比較例2-1~2-3による燃料電池用触媒のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のt-プロット(t-plot)法に基づく吸着等温法を用いて0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲で得た0超2nm未満のサイズの気孔の表面積が100~300m/gであり、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH(Barrett-Joyner-Halenda)脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積は100~800m/gである多孔性カーボン担体を提供する。
【0031】
本発明による多孔性カーボン担体は、白金粒子等を担持するに適するサイズの高多孔性の構造を有し、かつ、高結晶性を示すので、燃料電池用触媒として使用するとき、安定性及び耐久性が向上するとともに、高効率化及び低コスト化を達成することができる。
【0032】
本発明において、「ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のt-プロット(t-plot)法に基づく吸着等温法」とは、多孔性カーボン担体の気孔表面積を算出する方法として当業界に広く知られている。具体的には、窒素吸着等温線のx軸に該当する相対圧力(P/Po)をジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式を用いてガス吸着膜厚(t:thickness)に変換して得たt-プロット(t-plot)関数を用いてx軸の特定の厚さtの範囲に対するトレンドラインのy切片を確認して気孔の表面積を求める(Harkins-Jura式:t=[13.99/{0.034-log(P/Po)}]0.5、P/Po:相対圧力、t:ガス吸着膜厚)。
【0033】
このような「ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のt-プロット(t-plot)法に基づく吸着法」は、ガス吸着膜厚tの範囲に応じて気孔表面積が負の値に導出されることができ、材料の吸収特性によって適切な厚さtの範囲を選択することが重要である。適切な厚さtの範囲であるかどうかは、算出された気孔表面積が正の値を有するか否か相関係数(correlation coefficient)を通じて確認することができる(Removal of Pharmaceuticals and Personal Care Products from Aqueous Solutions with Metal-Organic Frameworks, Isil Akpinar, UCL, 2017, pp. 55 and 83)。
【0034】
ここで、相関係数(correlation coefficient)は、当該指数がオリジナルのデータをどのぐらいよく反映しているかを示し、トレンドラインでピアソン相関係数(PCC:Pearson Correlation Coefficient)を求める方法を適用して求めることができる。計算された気孔表面積が正の値を有する場合に信頼できる結果であると判断され、計算過程で算出された相関係数が1に近似するほど、t-プロット関数トレンドラインがオリジナルのデータをよく反映するものと判断される(The dual capture of AsV and AsIII by UiO-66 and analogues, Cornelius O. Audu etc., The Royal Society of Chemistry 2016, p. 1), (Hierarchically Porous Organic Polymers: Highly Enhanced Gas Uptake and Transport through Templated Synthesis, Sanjiban Chakraborty, ESI for Chem, 2014, p. 2)。
【0035】
このようなt-プロット(t-plot)法は、0超2nm未満のサイズの細孔の表面積を算出するときに有用に用いられることができる。本発明による多孔性カーボン担体は、0超2nm未満のサイズの細孔を含むことができる。当該サイズの気孔は、2nmを超えるサイズの中大型の気孔の間をつなぎ、本発明による多孔性炭素内部の全ての気孔ネットワークの架橋の役割を果たす。0超2nm未満のサイズを有する気孔に対して、0.35nm~0.4nmのガス吸着膜厚tの範囲でジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式に基づくt-プロット法を用いて算出された気孔表面積が正の値を有することが確認された。
【0036】
これに加えて、本発明による多孔性カーボン担体は、0超2nm未満のサイズの細孔に対して、0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲でt-プロット法を用いて測定する場合、相関係数が0.9990以上で相関係数が1に近似するものであり、これは実際の値とほぼ一致しているとみなすことができる。
【0037】
本発明における「ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温法」とは、多孔性カーボン担体の気孔表面積を算出するまた他の方法であって、窒素脱着等温線をジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式を用いてBJH脱着(desorption)曲線に変換し確認するものであり、当業者によく知られているため詳細は省略する。このようなBJH脱着(desorption)法は、2nm以上のサイズの気孔表面積を算出する際に使用することができる。2nm以上のサイズの気孔のうち2~5nm領域の気孔は、触媒合成時に、例えば、白金が担持され得る領域であり、当該範囲の多孔性に応じて担持される白金の特性が決定される。
【0038】
本発明による多孔性カーボン担体は、0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲でジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のt-プロット(t-plot)法で得た0超2nm未満のサイズの気孔の表面積が100~300m/gであることができる。前記範囲よりも小さい場合、中大型気孔の間をつながる細孔が足りなくなり、燃料電池の駆動時、ガス伝達が容易ではなくなる。ただし、当該サイズの気孔は、中大型気孔の架橋役割を果たすだけで実際に白金が担持される領域ではないことから、前記範囲を超える場合には、白金が担持され得る比表面積が不足になることができる。すなわち、当該範囲内の適切な比表面積を有しなければならない。
【0039】
詳しくは、100~250m/g、あるいは100~200m/g、又は120~190m/g、又は135~155m/g、又は165~185m/gであってもよい。
【0040】
本発明による多孔性カーボン担体は、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法で得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積は、100~800m/gであることができる。前記範囲よりも小さい場合は、担持され得る比表面積が不足し、白金などの金属粒子がまともに担持されないか、または凝集した形態で担持される現象が発生して触媒性能が低下するか、または形態を維持しにくく、安定性および耐久性の問題が発生することがあるので、好ましくない。また前記範囲を超える場合には、担持され得る比表面積が大きすぎるので、白金粒子が3nm未満のサイズで担持されることができる。すなわち、当該範囲内の適切な比表面積を有しなければならない。
【0041】
具体的には、100~600m/g、または200~500m/g、又は200~250m/g、又は200~230m/g、又は400~480m/g、又は440~480m/gであってもよい。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、BET(Brunauer, Emmett, Teller)基盤の全比表面積に対して、前記ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積の比が0.2~1であるところ、高いBET基盤の全比表面積を確保するとともに、燃料電池に好適な3~4nmサイズの白金粒子を効果的に担持することができる。
【0043】
具体的には、0.2~0.8、または0.3~0.7、または0.35~0.65、または0.35~0.4、または0.6~0.65であることができる。
【0044】
本発明による多孔性カーボン担体は、中大型サイズの気孔が細孔によって連結されたネットワークを構成する骨格構造であって、中大型気孔の中で白金が効果的に担持されるための2~5nm領域の気孔以外にも2~100nm領域の気孔も、燃料電池の駆動時、排水のための通路として用いられ、燃料電池の性能に実質的に寄与する気孔の範囲である。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積が200~2000m/gとすることができる。前記範囲を外れる場合、これを用いた燃料電池の駆動時の生成物である水の排出が円滑に行われにくく、燃料電池の諸特性が低下する恐れがあり、好ましくない。
【0046】
具体的には、500~1500m/g、又は600~1000m/g、又は600~650m/g、又は900~1000m/gであり得る。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、BET基盤の全比表面積に対してジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積の比率は、0.5~2であることができる。前記範囲を外れる場合、これを用いた燃料電池の駆動時の生成物である水の排出が円滑に行われにくく、燃料電池の諸特性が低下する恐れがあり、好ましくない。
【0048】
具体的には、0.8~1.8、または1.0~1.5、または1.1~1.2、または1.0~1.2であってもよい。
【0049】
本発明におけるタップ密度(tap density)とは、多孔性カーボン担体の全体体積の密度をいい、真密度(true density)とは、多孔性カーボン担体において物質のみが占める体積の密度、即ち、空隙を差し引いた残りの体積密度をいい、ASTM D8176に従って測定することができる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、タップ密度(tap density)は、0.05~0.5g/cmであり、真密度(true density)は、2.1~4g/cm3であることができる。タップ密度または真密度が前記範囲から外れる場合、空隙率において大きな差が発生するようになり、かかる空隙率の差は、燃料電池の製造のためのスラリー製造時に吸油量の差をもたらすことができ、製造条件を変更しなければならないため、製造工程性が低下する恐れがあるので好ましくない。
【0051】
具体的には、タップ密度は、0.08~0.4g/cm、または0.08~0.3g/cm、または0.08~0.2g/cm、または0.08~0.15g/cmであってもよい。詳しくは、真密度は2.2~3.5g/cm、または2.6~3.1g/cm、又は2.3~2.6g/cmであることができる。
【0052】
本発明による多孔性カーボン担体の平均1次粒径は、10nm~30nmであってもよい。前記範囲を外れる場合、燃料電池の製造のためのスラリー製造時に凝集などの現象が発生して均一な分散が行われ難いため、触媒性能が低下するか、形態を維持しにくく、電気化学的安定性が低下する恐れがあり、好ましくない。詳しくは、15~30nm、あるいは20~30nmであることができる。1次平均粒径は、ASTM D3849に従って測定することができる。
【0053】
黒鉛の結晶は、黒鉛の六角網面が平行に積層されている六方晶系層状構造であって、平均層(面)間隔(d002)が小さいほど、a軸方向格子定数Laが大きいほど、構造内の平均グラフェン層数である平均層数(average number of graphene layers)が大きいほど結晶性が高くなる。このような平均層間隔(d002)、a軸方向格子定数La、構造内の平均グラフェン層数である平均層数(average number of graphene layers)は、X線回折法を用いてASTM D5187に従って測定することができる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前記多孔性カーボン担体は、X線回折法により測定された格子面(002)の平均層間隔(d002)が0.335nm~0.355nmであり、a軸方向格子定数Laは4nm~10nmであり、平均層数(average number of graphene layers)は6~20であることができる。このような多孔性カーボン担体は、層間距離が非常に粗密であり、かつ積層されたグラファイトの数は多く、グラファイトの厚さだけでなく幅も平均的により広く、結晶性が非常に高いので、燃料電池の駆動時、酸化耐性が強く炭素の劣化を最小化することができる。前記範囲を外れる場合、本発明の意図する効果を発揮することができず、好ましくない。
【0055】
本発明による多孔性カーボン担体において、具体的には、X線回折法により測定された格子面(002)の平均層間隔(d002)が、0.340~0.352nm、または0.342~0.350nm、または0.342nm~0.347nm、又は、0.348nm~0.350nmであってもよい。詳しくは、a軸方向格子定数Laは、6~9nm、または7~9nm、または7~8nm、又は8~9nmであることができる。具体的には、平均層数(average number of graphene layers)は、7~15、または7.5~12、または8~9、または10~11であってもよい。
【0056】
本発明において、熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)とは、試料の温度変化に応じて質量変化率を温度または時間の関数で測定する方法であり、酸化ガス雰囲気下でのTGAによって炭素の酸化耐性を確認することができる。より高い温度区間で質量減少がより緩やかに起こるほど耐酸化性に優れることが知られている。熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)によって微分熱重量分析(DTG:Derivative Thermogravimetry)を行うことができる。これはASTM E1131によって測定することができる。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、前記多孔性カーボン担体の熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)における500℃~700℃の質量減少率は0%~30%であることから、優れた酸化耐性を示すので、燃料電池用触媒として用いると、炭素の劣化を最小化することができ、最終的には安定性および耐久性を確保することができる。詳しくは、500℃~700℃の質量減少率は、2~28%、または10~28%、または15%~25%、または18~20%、または21~23%であることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、前記多孔性カーボン担体の熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)における原材料を基準として30%の質量が減少した温度は、700℃~740℃の高温であり、優れた酸化耐性を示すので、燃料電池用触媒として用いると、炭素の劣化を最小化することができ、最終的には安定性および耐久性を確保することができる。詳しくは、原料基準30%の質量が減少した温度は、705~730℃、または710~715℃、または715~725℃であることができる。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、前記多孔性カーボン担体の微分熱重量分析(DTG:Derivative Thermogravimetry)における最小値の温度は、740℃~850℃であることから、優れた酸化耐性を示すので、燃料電池用触媒として用いると、炭素の劣化を最小化することができ、最終的には安定性および耐久性を確保することができる。詳しくは、750~820℃、または750~780℃、または750~760℃、または770~780℃であることができる。
【0060】
一方、本発明は、多孔性カーボン担体が燃料電池用触媒の担体として用いられ、前記多孔性カーボン担体に白金を含む金属粒子が担持された燃料電池用触媒を提供する。
【0061】
本発明による燃料電池用触媒は、多孔性カーボン担体の気孔内に適切なサイズの白金粒子等の金属粒子が効率的に分散されて形成されるので、触媒活性が改善され、これを用いた燃料電池の諸特性が向上することができる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、前記金属粒子は、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、セレン(Se)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及び鉛(Pb)から選択されたいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の金属を含むことができる。
【0063】
本発明による燃料電池用触媒は、詳しくは、前記燃料電池用電極触媒であることができる。前記電極はアノードまたはカソードであってもよく、好ましくは、カソードであることができる。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、前記燃料電池は、高分子(polymer)電解質燃料電池であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
一方、本発明は、
(a)炭素原料を1500℃~3000℃で熱処理して不純物を除去し、結晶化させるステップと、
(b)前記不純物が除去され、結晶化した炭素原料をホウ素、炭素、窒素、酸素、リンおよび硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの異種元素を含む雰囲気下で前処理して、前記異種元素がドープされた活性化部位を導入するステップと、
(c)前記活性化部位が導入された炭素原料に有機界面活性剤を含む添加剤を混合し、その後、熱処理によって前記異種元素を除去して炭素原料を活性化させるステップと、
(d)前記活性化された炭素原料を洗浄した後乾燥するステップと、を含む多孔性カーボン担体の製造方法を提供する。
【0066】
本発明による製造方法において、炭素分子構造中に異種元素を挿入すると、当該部位が相対的に不安定になり、その後、活性化工程のような化学反応を進行すると、不安定な部位で相対的に高い頻度の活性化反応を誘発することができ、結晶性及び収率を向上させることができる。このような異種元素の導入部位は、細孔が形成される部位としても作用することになる。その結果、白金微粒子等を担持するに適したサイズの高多孔性の構造を有し、かつ、高結晶性を示すので、燃料電池用触媒として用いると、安定性及び耐久性が向上するとともに、高効率及び低コストを達成することができる多孔性カーボン担体を製造することができる。
【0067】
前記ステップ(a)は、炭素原料に熱処理を行って不純物を除去し、結晶化させる過程であって、これにより、工程(b)における異種元素が炭素原料の内部に効果的に浸透することができる。ここで、不純物は、炭素原料の表面あるいは内部に存在する炭素以外の物質であって、例えば、石油残渣、他の官能基等であり得るが、これらに限定されるものではない。工程(a)では、炭素原料の格子定数が大きくなるに伴って、一部または全体に対して結晶化が行われることができる。
【0068】
本発明の一実施形態では、炭素原料は、セルロース、フェノール性樹脂、等方性ピッチのハードカーボン、メゾフェースピッチ、針状コークスなどのソフトカーボンなどの非晶質炭素であってもよく、人造黒鉛、天然黒鉛などの結晶質炭素であってよく、具体的には、非晶質炭素、より詳しくは、ソフトカーボンであってもよい。ソフトカーボンはハードカーボンよりも相対的に異方性(anisotropic)を示し、炭素層面が互いに平行に配列されており、1500℃以上の熱処理によって結晶化、つまり黒鉛化が容易に進められることができる。場合によっては、CNT(carbon nano tube)、CNF(carbon nano fiber)であってもよい。
【0069】
本発明の一実施形態において、前記工程(a)は、1500℃~3000℃で10分以上、真空、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができる。これらの条件は、炭素原料に存在する炭素以外の不純物を除去しながら結晶化をするための条件であり、前記範囲を外れると、本発明の目的を達成することができず好ましくない。詳しくは、1500℃~2500℃で、10分~100分、真空、窒素または不活性ガス雰囲気下で行うことができ、より具体的には、1500℃~2000℃、又は2100℃~2500℃で、10分~50分、真空、窒素または不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、前記不純物は、炭素原料に存在する炭素以外の元素、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄などであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0071】
前記ステップ(b)は、前記不純物が除去され、結晶化した炭素原料に所定の異種元素を導入する過程であって、該過程で炭素原料は内部の結晶性の低い部分から選択的に異種元素で置換される。異種元素の導入部位は、後ほどの活性化過程における反応の開始点になり、細孔が形成される部位としても作用するようになる。場合によって、異種元素導入点および頻度を調節して、後で選択的に所望する部位に所望のサイズの細孔を得ることができ、所望する形態の気孔分布を誘導することができる。
【0072】
本発明の一実施形態において、前処理は、100~800sccm又は10~100Nm/hrで供給されるホウ素、炭素、窒素、酸素、リンおよび硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの異種元素を含む雰囲気下で、400℃~1200℃で30~600分間熱処理して行うことができる。このような前処理の条件から外れた場合、炭素原料に所望のサイズの気孔が所望の位置に十分に形成できなく、本発明の意図する効果が得られず好ましくない。詳しくは、100~600sccmの流量条件の雰囲気下で、500~1000℃で60~600分間熱処理することができる。
【0073】
本発明の一実施形態において、前記異種元素は、ホウ素、炭素、窒素、酸素、リンおよび硫黄からなる群から選択される少なくとも1つであることができる。
【0074】
ステップ(c)は、前処理工程で挿入された異種元素が反応の開始点として作用して本格的な細孔を形成する過程であって、当該異種元素と添加物が高温で反応して燃料電池に適した細孔の構造を形成することができる。結晶性が弱い部分にはドーピングされた異種元素が活性化過程により除去されながら結晶性が向上すると共に、所望のサイズの気孔が形成されることができ、最終的に、高多孔性の構造を有し、かつ高結晶性を示すカーボン担体を形成することができる。
【0075】
本発明の一実施形態において、前記添加剤は、前処理されて活性化部位が導入された炭素原料100重量部を基準として無機または有機界面活性剤0.1~10重量部、アルカリ金属水酸化物0.1~10重量部及び中性の水1~10重量部を含むことができる。前記範囲を外れる場合、本発明の意図する効果が得られず好ましくない。具体的には、前記添加剤は、前処理されて活性化部位が導入された炭素原料100重量部を基準として、有機界面活性剤0.5~5質量部、アルカリ金属水酸化物0.5~5重量部および中性の水1~8重量部を含むことができる。
【0076】
本発明の一実施形態では、アルカリ金属水酸化物は、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、およびCs0からなる群から選択される1種以上であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明の一実施形態において、有機界面活性剤は、SDBS、SDS、LDS、CTAB、DTAB、PVP、Triton X-シリーズ、Brijシリーズ、Tweenシリーズ、ポリ(アクリル酸)、およびポリビニルアルコールのうち少なくともいずれか1つであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の一実施形態において、前記熱処理は、500~1000℃で10~100分間、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。このような条件から外れた場合、炭素原料に所望のサイズの気孔が所望の位置に十分に形成できなく、本発明の意図する効果が得られず好ましくない。詳しくは、600~900℃で10~60分間行われることができ、または600~800℃で20~40分間行われることができる。
【0079】
前記段階(d)で活性化された炭素原料を洗浄後乾燥する。
【0080】
本発明の一実施形態では、前記洗浄は、pHが5~9の条件で行うことができ、詳細には、6~8のpH条件下で行うことができる。前記条件を外れる場合、炭素内部の塩基性もしくは酸性物質が残存する可能性があり、これは、後ほどの触媒担持過程およびMEA駆動時致命的に作用する可能性があるので好ましくない。
【0081】
本発明の一実施形態では、前記乾燥は、70℃~120℃の温度、大気圧の条件下で10~20時間行った後、80℃~150℃の温度および真空条件下で1時間~5時間行うことができる。前記条件を外れる場合、炭素内部の水分が存在することがあり、当該残存水分の場合、触媒合成時に炭素の含量の不正確さを引き起こす恐れがある。70℃~100℃の温度、大気圧の条件下で10~15時間行った後、80℃~120℃の温度および真空条件下で1~3時間行うことができる。
【0082】
以下、本発明の実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0083】
<実施例1-1:多孔性カーボン担体の製造>
(a)炭素原料(KETJENBLACK 600JD)を(b)2100~2500℃で10~50分間、アルゴン雰囲気下で加熱して結晶化させた。その後、前記結晶化した炭素原料に100~600sccm以上の流量で供給される酸素および窒素を含むガス雰囲気下で、500~1000℃以上で1~10時間以上熱処理して前処理過程を行った。前記前処理過程後、重量比で、有機界面活性剤と、中性の水とを順次に投入した。この過程で、前処理された炭素原料100重量部を基準として、有機界面活性剤0.5~3重量部、水酸化カリウム0.5~3重量部、中性の水1~10質量部で投入し、30分間以上攪拌した後、熱風乾燥した。次いで、不活性ガス雰囲気下、600℃以上の温度条件で30分以上熱処理をして回収した。回収された試料は、塩酸と、アンモニア水と、中性の水とを順次投入し、それぞれ、少なくとも30分間攪拌し、その以後、真空ろ過により洗浄した。塩酸とアンモニア水のプロセスは、1回ずつ行い、塩酸は水酸化カリウムの重量に対して1~5重量比で、アンモニア水は塩酸の重量に対して1~5重量比で投入した。中性の水を含むプロセスは、攪拌時の溶液のpHが6~8の範囲に達するまで繰り返した。最終的にpHが目標に到達すると、80℃以上の温度及び大気圧の条件下で12時間以上乾燥し、100℃以上の温度および真空条件下で1時間以上更に乾燥し回収した。
【0084】
<実施例1-2及び比較例1-1~1-3:多孔性カーボン担体の製造>
実施例1-1で表1のように変更したことを除き、実施例1-1と同様の方法を用いて実施例1-2の多孔性カーボン担体を製造した。比較例1-1~1-3は、それぞれ表1に示されている炭素材料を多孔性カーボン担体として用いた。
【0085】
【表1】

<実施例2-1:燃料電池用触媒の製造>
実施例1-1によって製造された多孔性カーボン担体0.75gをエチレングリコール(EG:Ethylene glycol)と水との混合液で分散した。その過程で、水はEG重量に対して1重量比で進行した。本分散溶液に白金前駆体と安定剤を順次に投入する。この過程で白金前駆体の濃度は、10~50wt%で、重量は2~10gで進行し、安定剤の濃度は、10~50wt%で、質量は2~10gで進行した。その後、混合溶液を90~160℃の温度に昇温して1~5時間維持して白金(Pt)粒子を多孔性カーボン担体表面に合成した。その後、混合溶液を常温に冷却させた後、白金(Pt)粒子が担持された多孔性カーボン担体をろ過した後、蒸留水で十分に洗浄し、真空乾燥器内で250℃の温度で乾燥して燃料電池用触媒を製造した。
【0086】
<実施例2-2及び比較例2-1~2-3:燃料電池用触媒の製造>
実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体を用いたことを除き、実施例2-1と同様な方法を用い、実施例2-2及び比較例2-1~2-3の燃料電池用触媒を製造した。
【0087】
<実験例1>
実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体に対するSEM(Scanning Electron Microscope)写真を図1(a)~図1(e)にそれぞれ示し、TEM(Transmission Electron Microscope)写真を図2(a)~図2(e)にそれぞれ示した。
【0088】
これらを総合すると、比較例1-1(図1(c)、図2(c))は、炭素の内部が中実状であって、多孔質の形状とは差があり、結晶層も明確に観測されない。比較例1-2(図1(d)、図2(d))及び比較例1-3(図1(e)、図2(e))は、中空の多孔性が観測されるものの、実施例1-1(図1(a)、図2(a))および実施例1-2(図1(B)、図2(b))に比べて、厚く且つきれいな結晶層は確認されず、炭素構造の大部分が非晶質の構造となっていることを確認することができる。他方、実施例1-1及び実施例1-2では、炭素内部に特有の厚い結晶層と中空の多孔性の形状が同時に存在することがわかる。特に、厚く且つきれいな結晶層が炭素内部の大部分を形成しており、非晶質の構造の割合が非常に低いことをSEMおよびTEM写真から確認できる。
【0089】
<実験例2>
実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体に対して、それぞれBET(Brunauer, Emmett, Teller)前処理および分析を行った。BET前処理の場合には、カーボン担体に対して、真空下で200℃で12時間以上加熱し、内部の水分を含む不純物を除去した。その以降、BET分析装置に試料が装入されたチューブを締結した後、77.35Kの温度条件で窒素ガスを漸進的に管内に流しながら試料の表面に着脱させた。当該過程で試料に吸着された窒素ガスの体積と内部の相対圧力を用いてIsothermという窒素吸脱着等温線を求め、当該曲線を基盤にして多孔性関連の値を計算した。
【0090】
実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体に対して、それぞれ0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲でジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のt-プロット(t-plot)方法で得た0超2nm未満のサイズの気孔の比表面積(SSA)(i)を求めた。ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法で得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積(ii)と、2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積(iii)とを求めた。また、実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3で得られた多孔性カーボン担体に対して、相対圧力0.05~0.30の範囲で前記BET(Brunauer, Emmett, Teller)法を適用してBET基盤の比表面積の合計(total SSA)(iv)を求めた。BET基盤の全比表面積に対してジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法に基づく吸着等温線法により得た2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積の比(v/v)及び2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積の比(vi)を求め、表2に示した。
【0091】
【表2】

一般に、燃料電池に適切な白金粒子サイズは3~4nmであり、これを効果的に担持するための担体の気孔のサイズは、2~5nmであると知られており、当該孔径に対する比表面積を調節することが非常に重要である。表2によれば、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式を基盤として、BJH脱着(desorption)法で得た実施例1-1~1-2の2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積は、それぞれ213.80m/g、464.85m/gであり、これは、白金粒子を担持するに極めて適切な比表面積である。2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積に対して比較例1-1~1-3は、相対的に非常に低い値を示し、白金粒子を十分に担持することができず、比較例1-2の場合、相対的に非常に高い値を示し、担持される白金粒子の平均粒径が小さくなることがあり、好ましくない。白金が効果的に担持されるための2~5nm領域の気孔以外にも、2~100nm領域の通常の気孔も、燃料電池の駆動時、排水のための通路として用いられると知られているため、当該領域の多孔性も重要である。したがって、単なる全比表面積対比2nm以上100nm以下のサイズの気孔の表面積の比率が高いほど、燃料電池の駆動時の生成物である水の排出が円滑に行われることと見込まれる。表2によれば、実施例1-1~1-2は、1.00以上の高い割合を示しており、比較例1-1~1-3は、1.00以下の値を示している。これは、実施例1-1~1-2の2nm以上100nm以下のサイズの気孔の比率が非常に高いことを意味し、後ほどの燃料電池の駆動時、比較例1-1~1-3に比べて水分の排出が非常に円滑に行われる可能性が高いことを意味する。
【0092】
<実験例3>
実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体に対して0.35nm~0.5nmの厚さtの範囲で、ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のt-プロット(t-plot)法に基づく吸着等温法で得た0超2nm未満のサイズの気孔の表面積を求め、0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲で求めた値と比較して下記の表3に示した。線形回帰法に基づいてトレンドラインを示すとき、各々の範囲における相関係数(correlation coefficient)を求めた。ジュラ・ハーキンス(Harkins-Jura)式基盤のBJH脱着(desorption)法で0.35~0.5nmの厚さtの範囲でPV(0~2nmの気孔の体積)を求めた。相関係数(correlation coefficient)は、トレンドラインにおいてピアソン相関係数(Pearson Correlation Coefficient, PCC)を求める方法を適用して求めた。
【0093】
【表3】

表3によれば、実施例1-1~1-2の0.35nm~0.5nmの厚さtの範囲で求めた0nm超え2nm未満のサイズの気孔の表面積(SSA)および体積(PV)の値は負の数が出るなど正確に求めることが困難であった。0.35nm~0.5nmの厚さtの範囲および0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲における、0超2nm未満のサイズの気孔の表面積の計算過程の相違点を把握するために、それぞれの範囲における相関係数(correlation coefficient)を求めた。当該相関係数は、トレンドラインがオリジナルのデータをどのぐらいよく反映しているかについての指標であって、1の値に近似するほどよく反映すると知られており、1に近似する相関係数が得られる厚さの範囲でBET分析を進める必要がある。その結果、実施例1-1~1-2に対し、0.35nm~0.5nmの厚さtの範囲に比して、0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲で一層1に近似する相関係数を得ることができ、全般的に比較例に比べて0.35nm~0.4nmの厚さtの範囲で相関係数が増加する程度がより大きいことを確認することができる。
【0094】
<実験例4>
実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体に対してASTM D8176(Standard Test Method for Mechanically Tapped Density of Activated Carbon(Powdered and Fine Mesh)を適用してタップ密度(tap density)、真密度(true density)を求めた。具体的には、タップ密度は、タップ密度測定装置によって3回測定した後、平均値を求め、真密度は真密度測定装置でHeガスを基盤として3回測定した後、平均値を求めた。また、TEM Dataに対してASTM D3849(Standard Test Method for Carbon Black-Morphological Characterization of Carbon Black Using Electron Microscopy)を適用して1次平均粒径を求め、表4に示した。
【0095】
【表4】

表4の実施例1-1~1-2の多孔性カーボン担体は、0.1付近のタップ密度、2.0~3.0の真密度、20~30nmの平均1次粒径を維持している。これは、金属触媒を担持する過程で非常に好適な数値と判断される。ただし、比較例1-1は、真密度と平均1次粒径において、比較例1-3は真密度の範囲で金属触媒の担持に適した範囲を外れるため、スラリー製造時の吸油量及びスラリー上での分散に影響を及ぼし、燃料電池の性能低下を招くもう一つの原因となり得る。比較例1-2は、タップ密度、真密度、平均1次粒径は類似するため、スラリー製造時の吸油量および分散の問題は多少少ないことと見込まれるが、結局、表3に示すように、燃料電池に必要な適正サイズの気孔表面積が大きすぎるという短所がある。すなわち、タップ密度、真密度、平均1次粒径はる類似するものの、微細多孔性が燃料電池の担体として適しておらず、当該物性が同時に満足されなければならないと燃料電池の性能を極大化できない。
【0096】
<実験例5>
実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体に対してASTM D5187(Standard Test Method for Determination of Crystallite Size of Calcined Petroleum Coke by X-Ray Diffraction)を適用して平均層間隔(d002)、a軸方向格子定数La、平均層数(average number of graphene layers)を求めた。具体的には、担体試料をXRD基板上に一定の厚さに平らに積載し、CuKα線X線(波長:0.154nm)を試料上に走査し、その後、測定角度(2シータ)による回折X線の強度を測定した。結果として得られたXRDグラフを図3(a)~図3(e)にそれぞれ示したが、X線回折法により測定されたグラフ上における炭素特有の(002)ピーク及び(100)ピークに対して、ブラッグの式(Bragg’s equation)とシェラーの式(Scherrer equation)を用いて(d002)、La、Lcを測定し、これを用いて平均層数(average number of graphene layers)(Lc/(d002)+1)を求め、表5に示した。ここで、(d002)は、グラファイト(Graphite)層間の平均距離であり、平均層数(average number of graphene layers)は、構造内の平均グラフェン層数であり、Laは、a軸方向結晶サイズの横方向サイズ(Lateral Size)であって、グラファイト構造がいくら広いかを示すものである。
【0097】
また、実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3による多孔性カーボン担体に対してASTM E1131(Standard Test Method for Compositional Analysis by Thermogravimetry)を適用してTGA分析によって酸化耐性を確認した。具体的に、試料をTGA内部に装入した後、空気のような酸化性ガスを200sccm以下の流量で流しながら、20℃/分以下の速度で昇温した。TGA(Thermogravimetric analysis、熱重量分析)によってDTG(Derivative Thermogravimetry、微分熱重量分析)グラフを求めた後、DTG最小値温度を求めたし、TGAおよびDTGグラフを図4(a)および4(b)にそれぞれ示した。
【0098】
【表5】

表5によれば、実施例1-1~1-2は、比較例1-1~1-3に比べ、(d002)が小さく、La値が大きいことが分かるが、これは、実施例1-1および1-2による多孔性カーボン担体は、グラファイトの層間距離が平均的に粗密であり、積層されたグラファイト層数は平均的により多く、グラファイトの厚さだけでなく幅も平均的により広く、多孔性を示し、かつ、高結晶性を有することを意味する。表5、図4(a)及び図4(b)によれば、実施例1-1及び1-2は、比較例1-1~1-3に比べて、特に、500℃~700℃質量減少率(%)が小さく、DTG値が最小となる温度値が高いことがわかるが、これは、実施例1-1及び1-2の多孔性カーボン担体は高い温度区間で質量が減少すると判断される。また、比較例1-1~1-3と比較して、DTG最小値がさらに大きいことを確認した。これは、酸化による質量減少速度も相対的に遅いことを意味する。総合的に、TGA分析時、実施例1-1および1-2は、より高い温度でよりゆっくりと減少することを意味し、これは、酸化耐性が高いことを意味する。その結果、実施例1-1及び1-2の高結晶性が、高い酸化耐性につながることを確認することができる。
【0099】
<実験例6>
実施例2-1~2-2および比較例2-1~2-3による燃料電池用触媒のTEM写真を図5(a)~図5(e)にそれぞれ示した。その後、実施例2-1~2-2および比較例2-1~2-3で得られた燃料電池用触媒のPt含有量、担持されたPtの平均粒径および電気化学的評価のために半電極の評価を行った結果を表6に示した。
【0100】
Pt含有量は、XRF装置によって測定された。担持量を知得している標準試料のシグナルを測定して担持比率によるシグナル標準データを確保し、実施例2-1~2-2および比較例2-1~2-3を測定して得た試料のPtシグナルを標準データに代入してPt担持量を計算した。
【0101】
担持されたPtの平均粒径は、TEMのイメージから確認されるPt粒子の粒径を、イメージJプログラムを使用して測定し、TEM画像において最小50個以上のPt粒子を測定して平均及び標準偏差を計算した。
【0102】
電気化学実験は、回転ディスク電極(RDE:Rotating Disk Electrode)3電極セル(3 Electrode Cell)で行われ、ここで、電解質は0.1MのHClO溶液を用いた。基準電極は、Ag/AgCl(飽和KCl、3M)を使用し、相対電極は白金ワイヤを使用した。触媒インクを製造するために、触媒を蒸留水、ナフィオン(5wt%)、イソプロピルアルコール(IPA)に添加して超音波分散させた。このようにして作製されたインクをマイクロピペットでガラス状炭素(glassy carbon)RDE電極(5mm)に、白金を基準に100μg/cmでロードした後、乾燥した。サイクリックボルタンメトリー法(CV)による測定は、高純度窒素ガスを30分間パージした後0.05~1.05のVRHE電圧範囲で20mV/sの電圧走査速度で行った。電気化学的活性表面積(ECSA)は、0.05~0.4のVRHEの水素の吸脱着面積を用いて計算した。酸素還元反応(ORR)の測定は、高純度の酸素ガスを30分間パージした後、0.05~1.05のVRHEの電圧範囲でRDEの回転速度は、1600rpm、電圧走査速度は、5mV/sで実験を行った。
【0103】
ここで、Ptローディング(loading)量(μg/cm)は、単位電極面積当たりPtがどのぐらい上昇したかの指標である。ECSA(Electrochemical Surface Area)(m/g)は、電気化学反応に関与する白金表面積を示す数値であって、その値が高いほど水素活性が高いことを意味する。MA(Mass Activity)(mA/gpt)は、酸素活性部分を示す数値であって、通常、その値が高いほど電流濃度(current density)が高いことを意味し、該値にローディング量を適用して計算する。半波電位(V)は、電流が半分に下がる時の電圧値であって、同様に、該電圧値が高いほど酸素活性が高いことを意味する。
【0104】
【表6】

表6によれば、実施例2-1~2-2による燃料電池用触媒を用いて製造された燃料電池は、ECSA、MA、半波電位(Half wave potential)(V)に全般的に優れていることを確認することができる。特に、比較例2-1~2-3とPt担持量(%)及び単位面積当りのPtローディング量がほぼ同じであるにもかかわらず、ECSA、MA、半波電位(V)が総合的に非常に高いことを確認した。これは、類似する白金担持量にもかかわらず、実施例2-1~2-2で使用された炭素は、燃料電池に適した多孔性により、半電極実験において、広い電気化学的活性部位及び優れた酸素還元反応性を示すことを意味する。このような高い燃料電池の性能は、前述の実験例1で確認した2nm以上5nm以下のサイズの気孔の表面積に起因する。実施例1-1~1-2は、当該比表面積が白金を担持するに適した値を示したので、それぞれ図5(a)、図5(b)の担持後TEM写真において現れる白金の平均粒径が3~4nm程度の球状で均一なサイズと形状を示すことを確認した。ただし、比較例2-1の図5(c)の場合、低い比表面積に起因して、相対的には、白金粒子の平均粒径5.30nmと非常に大きく形成され、これにより、相対的に低いECSA値を示すことを確認した。比較例2-2の図5(d)の場合には、逆に、高い比表面積に起因して、相対的には、白金粒子の平均粒径2.51nmと小さく形成され、これにより、ECSA値は高いが、むしろMAの値が低くなる現象が確認された。また、比較例2、3の図5(e)場合にも低い比表面積に起因して、粒子が一部凝集しているか、形状が均一な球状ではなく、これにより、平均粒径が4.77nmであり、標準偏差は2.81nmと非常に高い値を示すことを確認したし、同様に、低いECSAが測定された。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】