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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】バリア容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/28 20060101AFI20241216BHJP
   B65D 51/22 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B65D17/28
B65D51/22 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021125235
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020073
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0272283(US,A1)
【文献】実公平07-052054(JP,Y2)
【文献】特開2020-029301(JP,A)
【文献】特開2021-104834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/28-17/30
B65D 6/00-13/02
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B65D 35/00-35/42
B65D 35/56-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出部を有する積層本体と、積層本体の注出部に開閉自在に装着されるキャップと、積層本体の底部を封鎖する底部シールとを備えるバリア容器であって、
積層本体は、注出部に開口された注出口と、注出口の内周に破断可能な薄肉弱化部を介して連結された除去部とを備え、
積層本体は、基材樹脂を含む基材層に対し、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層が内層となるように、除去部に設けたゲートから共射出成形され、ガスバリア層が注出部の除去部から底部まで連続して形成されることを特徴とするバリア容器。
【請求項2】
除去部は、積層本体の注出部からキャップを開蓋することにより、薄肉弱化部を破断後、除去部を積層本体からキャップに移行して注出口を開口することを特徴とする請求項1に記載のバリア容器。
【請求項3】
キャップは、積層本体の注出部に螺合して装着されるねじキャップであることを特徴とする請求項1または2に記載のバリア容器。
【請求項4】
キャップは、積層本体の注出部にヒンジを介して連設されたヒンジキャップであることを特徴とする請求項1または2に記載のバリア容器。
【請求項5】
キャップは、ヒンジを介して積層本体と一体成形されることを特徴とする請求項4に記載のバリア容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有するバリア容器に関し、とくに、注出部と一体成形され、ガスバリア層が内層されたバリア容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドレッシングや調味料などの内容物を収容する食品容器には、開封時まで容器内を密封状態にしておくために、容器本体の口部に装着されるキャップ本体に、薄肉弱化部により画成される除去部を形成した隔壁を設け、除去部に設けられたプルリングを引き上げることにより、開栓して注出口を開口するキャップが広く用いられている。
【0003】
また、プルリングを引き上げて薄肉弱化部を破断する際に、指先の力が弱い使用者には開栓が困難なこともあり、プルリングによる引き上げではなく、上蓋を回転させて開栓するキャップも同様に知られている。
【0004】
さらに、内容物の風味を維持するため、食品容器外部の空気に含まれる酸素等を遮断するガスバリア性に優れた食品容器が提案されており、これに対応するキャップとして、ガスバリア性を有するバリアキャップが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-70037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載のバリアキャップは、ガスバリア性に優れているものの、バリアキャップのキャップ本体をガスバリア性を有する容器本体の口部に打栓等で装着する必要があるため、酸素等が装着部から容器本体内に透過するおそれがあり、バリアキャップを装着した容器本体を完全なバリア容器とすることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、従来の容器本体とキャップ本体とが積層本体として一体化され、基材樹脂を含む基材層に対し、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層が内層となるように成形された積層本体を備えるバリア容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、バリア容器として、注出部を有する積層本体と、積層本体の注出部に開閉自在に装着されるキャップと、積層本体の底部を封鎖する底部シールとを備えるバリア容器であって、積層本体は、注出部に開口された注出口と、注出口の内周に破断可能な薄肉弱化部を介して連結された除去部とを備え、積層本体は、基材樹脂を含む基材層に対し、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層が内層となるように、除去部に設けたゲートから共射出成形され、ガスバリア層が注出部の除去部から底部まで連続して形成されることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
バリア容器の実施形態として、除去部は、積層本体の注出部からキャップを開蓋することにより、薄肉弱化部を破断後、除去部を積層本体からキャップに移行して注出口を開口することを特徴とする構成、また、キャップは、積層本体の注出部に螺合して装着されるねじキャップであることを特徴とする構成を採用する。
【0010】
バリア容器の別の実施形態として、キャップは、積層本体の注出部にヒンジを介して連設されたヒンジキャップであることを特徴とする構成、また、キャップは、ヒンジを介して積層本体と一体成形されることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバリア容器は、上記構成を採用することにより、従来の容器本体とキャップ本体とが積層本体として一体化され、ガスバリア層が積層本体の注出部から底部まで連続して形成されるため、内容物を収容する積層本体のガスバリア性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例であるバリア容器の開栓前の閉蓋状態を示す側面断面図である。
図2】本発明の第1実施例であるバリア容器の開栓後の開蓋状態を示す側面断面図である。
図3】本発明の第2実施例であるバリア容器の開栓前の閉蓋状態を示す側面断面図である。
図4】本発明の第2実施例であるバリア容器の開蓋状態を示す図で、(a)は成形時の側面断面図であり、(b)は開栓後の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のバリア容器の具体化した実施形態について、実施例に示した図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1において、Aは合成樹脂製のバリア容器、Bは注出部1を有する積層本体、Cは積層本体Bの注出部1に開閉自在に装着されるキャップ、Fは積層本体Bの底部6を封鎖する底部シールであり、積層本体Bと、キャップCと、底部シールFとによりバリア容器Aを構成している。
【0015】
図1に示すように、積層本体Bは、上部に注出口2が開口された注出部1と、注出部1から垂設された円筒状の首部3と、首部3の下端から次第に拡径させて錐体状に形成された肩部4と、肩部4の下端から垂設された筒体状の胴部5とから構成され、胴部5の下端である底部6は、内容物を充填する充填口となり、内容物の充填後に、底部6を底部シールFで封鎖するようになっている。
【0016】
注出部1は、首部3の上端から内方に延設されたリング状の基壁7と、基壁7の内縁から立設されたねじ壁8と、ねじ壁8の上端から内方に延設され、注出口2の周囲を封鎖するリング状の隔壁9と、隔壁9の内周に開口された注出口2の周囲から立設された注出筒10とから構成されている。
【0017】
注出口2の内周側には、隔壁9に形成された破断可能な薄肉弱化部13を介して注出口2を封鎖する除去部14が連設されている。
除去部14は、外周に薄肉弱化部13が連設された環状の底壁15と、底壁15の内縁に立設された円筒状の筒状壁16と、筒状壁16の上端から連設され、積層本体Bの成形時に、合成樹脂を射出するゲートGが設けられた天壁17とから構成されている。
【0018】
筒状壁16の外周には、上部にラチェット機構の一方の第1歯部を構成する係合突起18が径方向に突設され、下部に第1係合突部19が環状に突設されている。
【0019】
隔壁9の外周には、キャップCを積層本体Bの注出部1に螺合する際に、その終了を知らせるための音出し突部20が設けられている。
ねじ壁8は、外周面にねじ部(雄ねじ)21が螺設されている。
【0020】
本実施例の積層本体Bは、図1に示すように、積層本体Bの基材樹脂を含む基材層に対し、バリア性樹脂を含むガスバリア層Dが内層となるように共射出成形で製造され、基材層の基材樹脂に接着樹脂がブレンドされるか、ガスバリア層Dのバリア性樹脂に接着樹脂がブレンドされるか、あるいは、基材樹脂とバリア性樹脂の両方に接着樹脂がブレンドされている。
【0021】
本実施例では、積層本体Bの注出部1の基壁7、ねじ壁8、隔壁9、薄肉弱化部13および除去部14と、首部3と、肩部4と、胴部5にガスバリア層Dが内層されている。
なお、注出部1の注出筒10には、ガスバリア層Dが内層されていない。
【0022】
積層本体Bの基材層となる基材樹脂として、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等の公知の樹脂が用いられる。
また、ガスバリア層Dとなるガスバリア性樹脂として、それぞれのガスバリアの目的に応じて、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)や、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド(PA)、MXナイロン(MXD6等)等の公知のガスバリア性の樹脂が用いられる。
中でも、酸素に対するバリア性や風味および香気に対するバリア性からみて、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
【0023】
ここで、基材層となる基材樹脂と、ガスバリア層となるガスバリア性樹脂との配合例を以下に示す。
<基材層> <バリア層>
LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン) EVOH+LLDPE
LLDPE+EVOH EVOH
LLDPE+接着樹脂 EVOH
LLDPE EVOH+接着樹脂
LLDPE MXD6+LLDPE
なお、抜栓可能となる配合率については、基材層の基材樹脂とガスバリア層Dのガスバリア性樹脂として、どのようなものを選択するかによって、それぞれ相違したものとなる。また、基材層の基材樹脂としてLDPE(低密度ポリエチレン)を用いてもよい。
【0024】
底部シールFは、積層本体Bの底部6を封鎖するために、ガスバリア性樹脂製のシート材料やアルミシートを用い、熱溶着や接着剤により積層本体Bの底部6に接合するようにしている。
【0025】
図1に示すように、キャップCは、頂壁25と、頂壁25の外周縁から垂設された外周壁26とを備え、頂壁25の内面には、内側から順に、閉蓋時に内周が積層本体Bの除去部14外周と係合するとともに、外周が注出筒10内周に当接する切断筒部27と、内周がねじ壁8外周と螺合するねじ筒部28とが垂設され、さらに、切断筒部27と、ねじ筒部28との間に音出し部材29が配設されている。
【0026】
切断筒部27の内周には、上方に、積層本体Bの除去部14の第1歯部を構成する係合突起18に係合する第2歯部を構成する係合腕30が係合突起18と同数で設けられ、下端部には、積層本体Bの第1係合突部19と係合する第2係合突部31が形成されている。
また、切断筒部27の外周には、注出筒10内周面に当接して注出口2を密閉するシール部が形成されている。
【0027】
ねじ筒部28には、内周にねじ壁8のねじ部(雄ねじ)21に螺合するねじ部(雌ねじ)32が設けられている。
音出し部材29は、先端部に振動片が設けられ、キャップCを積層本体Bの注出部1に締め込む際に、注出部1の音出し突部20に振動片が触れて音を発するため、それによってキャップCの締め込みの終了を知ることができる。
【0028】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のバリア容器Aは、まず、積層本体Bの基材樹脂となる基材層に対し、ガスバリア性樹脂のガスバリア層Dが内層化されるように共射出成形で製造することができる。
【0029】
本実施例の積層本体Bの共射出成形では、最初に基材樹脂を単独で射出し始めた所定時間後に、ガスバリア性樹脂を基材樹脂と同時に所定時間だけ射出し、その後、基材樹脂を単独で所定時間射出することにより、積層本体Bの成形が完了する。
その際、除去部14の天壁17の中央にゲートGを設け、基材樹脂およびガスバリア性樹脂を射出し、除去部14および薄肉弱化部13を介して積層本体Bの注出部1に流し込み成形される。
【0030】
本実施例の積層本体Bは、除去部14の天壁17に高さ(距離)があるので、射出する合成樹脂の流れを安定させることができる。
そのため、積層本体Bを基材樹脂となる基材層に対し、ガスバリア性樹脂のガスバリア層Dが内層化されるようゲートGから共射出成形することによって積層容器として、品質を安定して製造することができる。
【0031】
次に、積層本体BにキャップCをセットする際には、積層本体Bの注出部1にキャップCを螺合して締め込み、積層本体BにキャップCを装着する。
なお、積層本体Bのねじ部(雄ねじ)21にキャップCのねじ部(雌ねじ)32を螺合して締め込む際には、ラチェット機構によって、キャップCの切断筒部27の係合腕30は積層本体Bの除去部14の筒状壁16の係合突起18を乗り越え、キャップCの回転を許容する。
また、本実施例では、キャップCの音出し部材29の先端部の振動片が、積層本体Bの音出し突部20に触れて音を発することでキャップCの締め込みが終了したことを知ることができる。
【0032】
積層本体BにキャップCを装着後、積層本体Bを倒立させ、胴部5の底部6から内容物を充填し、最後に積層本体Bの底部6に底部シールFを接合してバリア容器Aを完成させる。
以上のように、積層本体Bは、ガスバリア層Dが注出部1から首部3および肩部4を通過し、胴部5の底部6まで連続して形成されるので、バリア容器Aのガスバリア性が向上する。
【0033】
次に、本実施例のバリア容器Aを使用するには、キャップCを螺脱方向に回転させ、キャップCの回動開始時は、なめらかに回転が始まり、続いてキャップCの切断筒部27の係合腕30が積層本体Bの筒状壁16の係合突起18に当接して係合するようになると、ラチェット機構が働き、キャップCの回転力がラチェット機構を介して積層本体Bの除去部14に加わるようになる。
【0034】
このとき、切断筒部27の第2係合突部31が筒状壁16の第1係合突部19を乗り越えた内周面に緊密に嵌合しているので、筒状壁16を内側から補強してキャップCの回転力がラチェット機構を介して除去部14に伝わりやすくなっているとともに、ねじの回転に伴って除去部14を上方に引き上げる力を発生させる。
キャップCの回転が進むと、除去部14に加わる回転力と引き上げ力により、ついには薄肉弱化部13が破断して注出口2が開栓され、隔壁9から分離された除去部14は筒状壁16に係合する切断筒部27によって引き上げられてキャップCとともに上昇していく。
【0035】
切断筒部27外周のシール部は、注出筒10内周面から離れ、ねじ部(雌ねじ)32がねじ部(雄ねじ)21から螺脱してキャップCを積層本体Bから離脱すれば、図2に示すように、キャップCとともに除去部14が除去された注出口2から積層本体B内の内容物を注出することができる。
【0036】
バリア容器Aを使用した後、再度キャップCを積層本体Bに装着する際には、除去部14の底壁15先端および破断した薄肉弱化部13の残片によって、注出筒10の内周面に付着した内容物が掻き落とされ、注出筒10の内周面を清潔に保つことができる。
また、切断筒部27外周のシール部が注出筒10に当接して積層本体B内を密封することができる。
【実施例2】
【0037】
次に、第1実施例の積層本体BおよびキャップCを変更した第2実施例について説明する。
以下、第1実施例と同一の構成部分には同一の符号を付し、異なる構成部分のみ異なる符号を付して相違点を中心に説明する。
【0038】
図3において、Aaは合成樹脂製のバリア容器、Baは注出部40を有する積層本体、Caは積層本体Baの注出部40にヒンジEを介して開閉自在に連設されたキャップ、Fは積層本体Baの底部6を封鎖する底部シールであり、積層本体Baと、キャップCaと、底部シールFとによりバリア容器Aaを構成している。
【0039】
図3に示すように、積層本体Baは、上部に注出口41が開口された注出部40と、注出部40から垂設された円筒状の首部3と、首部3の下端から次第に拡径させて錐体状に形成された肩部4と、肩部4の下端から垂設された筒体状の胴部5とから構成され、注出部40の外周上端の所定の位置にヒンジEが連設されている。
【0040】
注出部40は、首部3の上端から内方に延設されたリング状の基壁43と、基壁43の内縁から内方に延設され、注出口41の周囲を封鎖するリング状の隔壁44と、隔壁44の内周に開口された注出口41の周囲から立設された注出筒45とから構成されている。
注出筒45の内周側の隔壁44には、使用時に注出口41を開口するため、破断可能な薄肉弱化部48によって画成された除去部49が設けられている。
【0041】
除去部49は、図4(a)に示すように、薄肉弱化部48を介して隔壁44に連結された底壁50と、底壁50のヒンジEと反対側の上面から立設された略円筒状の引基壁51と、引基壁51を覆うように、段部52を介して上方に連設され、積層本体Baの成形時に、合成樹脂を射出するゲートGが設けられた山形状の係止突部53とから構成されている。
【0042】
注出部40には、基壁43の上面にキャップCaの閉蓋を維持する環状の蓋係合部56が設けられている。
【0043】
図3および図4(a)に示すように、キャップCaは、頂壁60と、頂壁60の周縁から垂下された外周下部の所定の位置にヒンジEを連設した外周壁61とを備え、頂壁60の下面には、閉蓋時に積層本体Baの注出筒45の内周に外周が密接する密封筒62と、密封筒62の内方のヒンジEと反対側寄りに係合壁63とが垂設され、さらに、頂壁60には、係合壁63の内周面と連通する係合穴部64が開口されている。
外周壁61には、外周のヒンジEと反対側下端に、円弧状に摘み65が設けられ、内周の下部には、積層本体Baの蓋係合部56が嵌合して閉蓋状態を維持する環状の係止部66が凹設されている。
【0044】
係合壁63は、内周面が積層本体Baの除去部49の係止突部53の下部外周面に合わせて傾斜を有し、下面は閉蓋時に引基壁51の上面の段部52に当接ないし近接するようになっており、また、係合壁63の内周側上面に係合部67が設けられている。
【0045】
本実施例では、最初の閉蓋時において、図3に示すように、積層本体Baの除去部49の係止突部53の上部は、係合穴部64にまで達しており、後の超音波溶着による抜け止め加工によって、係止突部53の上部は、係合穴部64を埋めるように拡げられ、係止突部53は、係合壁63上面の係合部67によって係合される。
【0046】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
図4(a)に示すように、本実施例のバリア容器Aaは、積層本体Baに対しキャップCaを開蓋した状態でヒンジEを介して一体成形で製造される。
その際、バリア容器Aaは、基材樹脂の他に、積層本体Baにのみ基材層に対し、ガスバリア性樹脂のガスバリア層Daが内層化されるように共射出成形することによって製造することができる。
【0047】
具体的には、本実施例のバリア容器Aaの成形は、実施例1と同様に、最初に基材樹脂を単独で射出し始めて所定時間後に、ガスバリア性樹脂を基材樹脂と同時に所定時間だけ射出し、その後、基材樹脂を単独で所定時間射出することにより積層本体Baの成形が完了する。
【0048】
本実施例のバリア容器Aaを内容物の充填に備えてセットするには、一体成形した積層本体BaにヒンジEを支点にキャップCaを回転して閉蓋した後、図3に示すように、キャップCaの頂壁60から突出する除去部49の係止突部53先端を超音波溶着により抜け止め加工すると、変形した係止突部53がキャップCaの係合穴部64内周および係合壁63上面と係合され、積層本体Baの除去部49がキャップCaの頂壁60の内方に装着されることとなる。
【0049】
積層本体Baの除去部49がキャップCaに係合されたバリア容器Aaは、積層本体Baを倒立させ、胴部5の底部6から内容物を充填し、最後に積層本体Baの底部6に底部シールFを接合してバリア容器Aaを完成させる。
以上のように、積層本体Baは、実施例1と同様に、ガスバリア層Daが注出部40から首部3および肩部4を通過し、胴部5まで連続して形成されるので、バリア容器Aaのガスバリア性が向上する。
【0050】
本実施例のバリア容器Aaを最初に使用する際には、まず、図3に示す状態のバリア容器Aaに対して、キャップCaの摘み65に手指を掛け、摘み65を持ち上げると、キャップCaがヒンジEを支点に開蓋していくとともに、キャップCaに装着されている除去部49が引っ張られ、除去部49自体がヒンジEと反対側から持ち上げられ、隔壁44に連設する薄肉弱化部48がヒンジEと反対側から破断されていき、さらにキャップCaを持ち上げることにより、ヒンジE方向に薄肉弱化部48の破断が進み、最後には、図4(b)に示すように、除去部49は、隔壁44から除去され、注出口41が開栓されるとともに、キャップCaに移行する。
積層本体Baの注出筒45の内周側の隔壁44には、除去された除去部49の跡が注出口41となり、積層本体Ba内の内容物を注出することができる。
【0051】
バリア容器Aaを使用した後、再度キャップCaを積層本体Baに閉蓋すると、除去部49の底壁50によって、注出口41を概ね閉塞するとともに、密封筒62の外周が注出筒45の内周に当接して積層本体Ba内を密封することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のバリア容器は、従来の容器本体とキャップ本体とが積層本体として一体化され、ガスバリア層が積層本体の注出部から底部まで連続して形成されるため、内容物を収容する積層本体のガスバリア性を向上することができ、飲食料や化粧料などのガスバリア性を必要とする内容物を収容する容器として好適である。
【符号の説明】
【0053】
A、Aa バリア容器
B、Ba 積層本体
C、Ca キャップ
D、Da ガスバリア層
E ヒンジ
F 底部シール
G ゲート
1、40 注出部
2、41 注出口
3 首部
4 肩部
5 胴部
6 底部
7、43 基壁
8 ねじ壁
9、44 隔壁
10、45 注出筒
13、48 薄肉弱化部
14、49 除去部
15、50 底壁
16 筒状壁
17 天壁
18 係合突起
19 第1係合突部
20 音出し突部
21 ねじ部(雄ねじ)
25、60 頂壁
26、61 外周壁
27 切断筒部
28 ねじ筒部
29 音出し部材
30 係合腕
31 第2係合突部
32 ねじ部(雌ねじ)
51 引基壁
52 段部
53 係止突部
56 蓋係合部
62 密封筒
63 係合壁
64 係合穴部
65 摘み
66 係止部
67 係合部
図1
図2
図3
図4