(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ペン用の集積回路
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20241216BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20241216BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G06F3/03 400B
G06F3/041 560
G06F3/03 400Z
G06F3/044 Z
G06F3/044 120
(21)【出願番号】P 2023118927
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2021525457の分割
【原出願日】2019-06-11
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】山本 定雄
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043203(WO,A1)
【文献】特表2016-540453(JP,A)
【文献】特開2008-269005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0343079(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03- 3/047
G06F 13/10-13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプロトコルに従って生成されたアップリンク信号を受信し、該アップリンク信号の受信タイミング及び該アップリンク信号内に配置されたコマンドに基づいてダウンリンク信号を送信するように構成されたペン用の集積回路であって、
前記アップリンク信号を受信した後、次のアップリンク信号を受信可能である期間に、前記次のアップリンク信号を正常に受信せずに特別な状態のアップリンク信号を受信した場合に、前記第1のプロトコルに従い、該期間の前に受信していた前記アップリンク信号内に配置されたコマンドに従うデータ、又は、既定のデータを含む前記ダウンリンク信号を送信する、
ペン用の集積回路。
【請求項2】
前記特別な状態は、前記コマンドの復号において異常を検出した状態である、
請求項1に記載のペン用の集積回路。
【請求項3】
前記異常は、復号結果が符号語にならないことである、
請求項2に記載のペン用の集積回路。
【請求項4】
前記アップリンク信号は誤り検出符号を含み、
前記異常は、前記誤り検出符号により誤りが検出されることである、
請求項2に記載のペン用の集積回路。
【請求項5】
前記異常は、前記ペン用の集積回路が対応している第1のプロトコルにおいて第1の値と規定されている第1のビットの値が前記第1の値と異なる第2の値になっていることである、
請求項2に記載のペン用の集積回路。
【請求項6】
前記ペン用の集積回路が対応していない第2のプロトコルにおいては、前記第1のビットの値は前記第2の値と規定されている、
請求項5に記載のペン用の集積回路。
【請求項7】
前記特別な状態のアップリンク信号の受信が所定期間連続した場合に、前記ダウンリンク信号の送信を停止する、
請求項1に記載のペン用の集積回路。
【請求項8】
前記ダウンリンク信号の送信タイミングを前記特別な状態のアップリンク信号の受信タイミングに基づいて決定する、
請求項1に記載のペン用の集積回路。
【請求項9】
前記ペン用の集積回路が対応している第1のプロトコルに従って生成された前記アップリンク信号は、既知の同期信号を含む一方、前記ペン用の集積回路が対応していない第2のプロトコルに従って生成された前記アップリンク信号は、前記既知の同期信号と一部分のみが一致する同期信号を含み、
前記特別な状態は、前記一部分の一致が検出される一方、前記コマンドの復号において異常を検出した状態である、
請求項1に記載のペン用の集積回路。
【請求項10】
前記一部分は、前記既知の同期信号を拡散するために用いる拡散符号のチップ幅、または拡散符号を構成するコードの部分である、
請求項9に記載のペン用の集積回路。
【請求項11】
前記一部分は、前記既知の同期信号の先頭部分である、
請求項9に記載のペン用の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン及びセンサコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子黒板などの大きなサイズのタッチ面を有する電子機器に関して、近年、複数の電子ペンで同時に操作(描画)する用途が伸びている。
【0003】
特許文献1には、2本の電子ペンによる同時描画を実現するセンサコントローラの例が開示されている。この例によるセンサコントローラは、検出済みの2本の電子ペンのそれぞれに異なるローカルIDを割り当て、このローカルIDをコマンド信号に含めることにより、各電子ペンを個別に制御可能に構成される。
【0004】
特許文献2には、電子ペンによって送信された所定長のパルス列を検出した場合に、電子ペンとの同期を確立するセンサコントローラの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/043203号明細書
【文献】米国特許公開公報第2015/0256329号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電子ペンとセンサコントローラの間で双方向に送受信される信号のプロトコルは、技術の進歩などによって変更される場合がある。そうすると、ある電子機器において同時に用いられる2つ以上の電子ペンの一部は新しいプロトコル(以下、「新プロトコル」という)に対応しているが、他は古いプロトコル(以下、「旧プロトコル」という)にしか対応していない、という状況が発生し得ることになる。そこで、1つの電子機器において、新旧の両プロトコルに対応する電子ペン(以下、「新ペン」という)と、旧プロトコルにしか対応しない電子ペン(以下、「旧ペン」という)との両方を使用可能とすることが必要とされていた。
【0007】
したがって、本発明の目的の一つは、1つの電子機器において、新ペンと旧ペンの両方を同時に使用できる電子ペン及びセンサコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によるペンは、第1のプロトコルに従って生成されたアップリンク信号を受信し、該アップリンク信号の受信タイミング及び該アップリンク信号内に配置されたコマンドに基づいてダウンリンク信号を送信するように構成されたペンであって、前記アップリンク信号を受信した後、次のアップリンク信号を受信可能である期間に、前記次のアップリンク信号を正常に受信せずに特別な状態のアップリンク信号を受信した場合に、前記第1のプロトコルに従い、該期間の前に受信していた前記第1のアップリンク信号内に配置されたコマンドに従うデータ、又は、既定のデータを含む前記ダウンリンク信号を送信する、ペンである。
【0009】
本発明の他の一側面によるペンは、第1のプロトコルに従って生成された第1のアップリンク信号、及び、前記第1のプロトコルとは異なる第2のプロトコルに従って生成された第2のアップリンク信号の両方を受信可能に構成されたペンであって、前記第2のアップリンク信号を受信したことに応じて前記第2のプロトコルに従う第2の動作モードにエントリした後、前記第1のアップリンク信号を受信した場合に、前記第2のプロトコルに従う第2のダウンリンク信号を送信する、ペンである。
【0010】
本発明によるセンサコントローラは、第1のプロトコルに従って生成された第1のダウンリンク信号、及び、前記第1のプロトコルとは異なる第2のプロトコルに従って生成された第2のダウンリンク信号の両方を検出可能に構成されたセンサコントローラであって、前記第1のプロトコル用の第1のアップリンク信号を送信する第1のフレームと、前記第2のプロトコル用の第2のアップリンク信号を送信する第2のフレームとを、設定された割合で交互に設定するよう構成され、前記第2のフレーム内において、前記第1及び第2のダウンリンク信号の両方を検出する、センサコントローラである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つの電子機器において、新ペンと旧ペンの両方を同時に使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態による位置検出システム1の全体を示す図である。
【
図2】センサコントローラ31における送信(Tx)と受信(Rx)のスケジュールを示す図である。
【
図3】ダウンリンク信号DSの構成を示す図である。
【
図4】アップリンク信号USの構成を示す図である。
【
図7】(a)はアップリンク信号US1の構成例を示す図であり、(b)~(g)はそれぞれ、アップリンク信号US2の構成例を示す図である。
【
図8】(a)は、旧プロトコルで使用されるプリアンブルPREを構成する拡散符号の例を示し、(b)は、新プロトコルで使用されるプリアンブルPREを構成する拡散符号の例を示す図である。
【
図9】旧ペンであるペン2aのモード遷移図である。
【
図10】新ペンであるペン2bのモード遷移図である。
【
図11】センサコントローラ31のモード遷移図である。
【
図12】センサコントローラ31のモード遷移を説明するための説明する図である。
【
図13】センサコントローラ31のモード遷移を説明するための説明する図である。
【
図14】旧プロトコルでペアリングしたペン2bとの通信を新プロトコルに移行させる手順を説明するための説明する図である。
【
図15】本発明の実施の形態の第1の変形例によるペン2bのモード遷移図である。
【
図16】本発明の実施の形態の第2の変形例によるセンサコントローラ31における送信(Tx)と受信(Rx)のスケジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態による位置検出システム1の全体を示す図である。同図に示すように、位置検出システム1は、2本のペン2a,2bと、電子機器3とを含んで構成される。電子機器3は、センサ電極30と、センサコントローラ31と、パネル32と、電子機器制御部33と、液晶表示部34とを含んで構成される。
【0015】
ペン2a,2bはいずれもアクティブ静電方式に対応したアクティブスタイラスであり、1以上のユーザによって同時又は別々に使用される。以下、ペン2a,2bを特に区別する必要がない場合には、まとめてペン2と表記する場合がある。
【0016】
ペン2とセンサコントローラ31とは、双方向に通信可能に構成される。以下、
図1にも示すように、センサコントローラ31からペン2に対して送信される信号をアップリンク信号USと称し、ペン2からセンサコントローラ31に対して送信される信号をダウンリンク信号DSと称する。
【0017】
アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信は所定のプロトコルに従って実行されるが、このプロトコルは、技術の進歩などによって変更される場合がある。以下では、ある時点で新たに上市されたプロトコルを新プロトコル(第2のプロトコル)と称し、それまで使われていたプロトコルを旧プロトコル(第1のプロトコル)と称する。また、ペン2aは、旧プロトコルにしか対応していない電子ペン(旧ペン)であり、ペン2bは、新旧の両プロトコルに対応する電子ペン(新ペン)であるとして説明を続ける。
【0018】
ペン2による入力操作の概略を説明すると、ユーザは、ペン2をパネル32の表面(タッチ面)に徐々に近づけ(ペンダウン。
図1では「DOWN」と表記している)、最終的にペン2のペン先をタッチ面に接触させる(ペンタッチ)。そして、ユーザがこの接触状態を保ちつつタッチ面上でペン先を移動させる(ペンムーブ)と、電子機器3の処理によってタッチ面上に移動の軌跡が描画される。
図1には、こうして描画される軌跡の例として、3本の軌跡st1~st3を示している。軌跡の描画は、ユーザがペン2aのペン先をタッチ面から離す(ペンアップ。
図1では「UP」と表記している)まで継続される。
【0019】
ペン2は、センサコントローラ31がセンサ電極30を介して供給したアップリンク信号USを検出するともに、そのアップリンク信号USに応じて所定のダウンリンク信号DSを送信するように構成される。詳しくは後述するが、センサコントローラ31は、センサ電極30を介してこのダウンリンク信号DSを受信することにより、タッチ面内におけるペン2の位置を取得するとともに、ペン2が送信したデータを取得する。センサコントローラ31が取得した位置及びデータは、逐次、電子機器制御部33に供給される。電子機器制御部33は、こうして供給された位置及びデータに基づいてストロークデータを生成し、レンダリングしたうえで液晶表示部34に出力することによって、タッチ面に上述した軌跡を描画する。
【0020】
図2は、センサコントローラ31における送信(Tx)と受信(Rx)のスケジュールを示す図である。同図に示すように、センサコントローラ31は、フレームFの単位でアップリンク信号USの送信及びダウンリンク信号DSの受信を行うよう構成される。各フレームF内では、アップリンク信号USの送信とダウンリンク信号DSの受信とが時分割で実行される。具体的には、まず各フレームFの先頭で、センサコントローラ31によるアップリンク信号USの送信が行われる。そして、各フレームFの残りの時間で、ペン2によるダウンリンク信号DSの送信が行われる。
【0021】
ここで、
図2を見ると理解されるように、本実施の形態では、1つのフレームFの中に2つの受信用タイムスロットTS1,TS2が設けられる。以下では、タイムスロットTS1,TS2を特に区別する必要がない場合には、まとめてタイムスロットTSと表記する場合がある。これらのタイムスロットTSは、互いに異なるペン2がダウンリンク信号DSを時分割で送信できるように設けられているもので、本実施の形態では、2つのタイムスロットTS1,TS2が設けられていることにより、1つのフレームF内で最大2本のペン2がダウンリンク信号DSを送信可能とされている。このことは、センサコントローラ31と同時にペアリング可能なペン2の本数が最大2本であることを意味している。ただし、後述する
図16に例示するように、センサコントローラ31と同時にペアリング可能なペン2の数は2本に限定されない。各ペン2が使用するタイムスロットTSは、センサコントローラ31とペン2がペアリングを行う際に決定される。
【0022】
図3は、ダウンリンク信号DSの構成を示す図である。同図(a)は、センサコントローラ31を未だ検出していないペン2が送信するダウンリンク信号DSを示し、同図(b)は、センサコントローラ31とペアリング中のペン2が送信するダウンリンク信号DSを示している。
【0023】
図3(a)に示すように、センサコントローラ31を未だ検出していないペン2は、ダウンリンク信号DSとして、位置信号PSのみを送信する。位置信号PSは、例えば無変調の搬送波信号である。この場合の位置信号PSは、センサコントローラ31がタッチ面の全体でペン2の位置を検出するために用いられる。この位置検出を、本明細書では「グローバルスキャン」と称する。グローバルスキャンによる位置検出の具体的な方法については、後述する。
【0024】
一方、
図3(b)に示すように、センサコントローラ31とペアリング中のペン2は、ダウンリンク信号DSとして、上述した位置信号PSの他、データ信号DATAを送信する。この場合の位置信号PSは、センサコントローラ31がペン2の位置を更新するために用いられる。この位置更新を、本明細書では「ローカルスキャン」と称する。ローカルスキャンによる位置更新の具体的な方法についても、後述する。
【0025】
データ信号DATAは、ペン2内に保持されるデータをセンサコントローラ31に送信するための信号であり、後述する筆圧検出部23(
図5を参照)によって検出される筆圧値、ペン2の筐体の側面又は底面に設けられるスイッチのオンオフを示す値、個々のペン2を一意に識別するためのペンIDなどを含んで構成される。ペン2は、通常は、筆圧値のみをデータ信号DATA内に配置してなるダウンリンク信号DSを送信する。一方、後述するコマンドCOMDATAによりセンサコントローラ31から特定のデータの送信を指示された場合には、ペン2は、コマンドCOMDATAに従うデータを含むダウンリンク信号DSを送信する。
【0026】
ここで、
図3(b)に示したビットAは、ペン2が旧プロトコルにしか対応していない場合と、旧プロトコル及び新プロトコルの両方に対応している場合とで異なる値を有するフラグ情報であり、センサコントローラ31に新プロトコルへの対応状況を通知するために用いられる。ビットAは、旧プロトコルに従って生成されるダウンリンク信号DSに含まれていればよく、新プロトコルに従って生成されるダウンリンク信号DSには含まれていなくてもよい。
【0027】
図4は、アップリンク信号USの構成を示す図である。同図に示すように、アップリンク信号USは、プリアンブルPREと、コマンド信号COMと、誤り検出符号CRCとを含んで構成される。
【0028】
プリアンブルPREは、ペン2をセンサコントローラ31に同期させるためのペン2に既知とされた同期信号である。この同期信号は、例えば、チップ幅が所定の長さ(例えば、0.5us、1.0us、2.0us・・・)のチップで構成された所定の拡散符号(パルス列)により構成される。この拡散符号のチップ長(拡散符号のコード超)は、例えば7、15、31、63[chips]・・・である。また、このようなチップ長の拡散符号が2以上連結されて同期信号を構成するとしてもよい。また、他の例として同期信号は、例えば、パルス幅が上記例のような長さであるパルスが所定数連続する特定周波数のパルス列であってもよい。ペン2は、プリアンブルPREを構成する拡散符号の検出動作を連続的又は断続的に行い、プリアンブルPREを検出した場合にセンサコントローラ31の存在を検出し、プリアンブルPREを検出したタイミングに基づいて、センサコントローラ31と同期する。ここでいう同期とは、プリアンブルPREを検出したタイミングに基づいて、ダウンリンク信号DSの送信タイミング、及び、次のアップリンク信号USの受信タイミング(すなわち、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュール)を決定することを意味する。ペン2は、アップリンク信号USを受信する都度、この同期を更新するよう構成される。
【0029】
コマンド信号COMは、このコマンド信号COMの宛先であるペン2を示すローカルID(LID)と、ペン2に対する命令を含むコマンドCOMDATAと、
図2に示したタイムスロットTS1,TS2それぞれの空き状況を各1ビットで表すスロット状態情報STAとを含んで構成される。
【0030】
誤り検出符号CRCは、コマンド信号COMを入力とする所定の演算を行うことにより求められる符号であり、コマンド信号COMの伝送中に発生した誤りを検出するために用いられる。
【0031】
まだセンサコントローラ31を発見していない状態でアップリンク信号USを受信したペン2は、スロット状態情報STAを参照することにより、タイムスロットTS1,TS2の空き状況を確認する。その結果、いずれかのタイムスロットTSが空きであった場合に、そのタイムスロットTSを利用して、位置信号PSのみを含むダウンリンク信号DSを送信する。このダウンリンク信号DSを受信したセンサコントローラ31は、次に送信するアップリンク信号USにおいて、ダウンリンク信号DSを受信したタイムスロットTSのスロット状態情報STAを使用中に変更する。このアップリンク信号USを受信したペン2は、スロット状態情報STAの変化を検出することにより、センサコントローラ31により自身が検出されたことを検出するとともに、ダウンリンク信号DSを送信したタイムスロットTSに応じた所定のローカルID(例えば、タイムスロットTS1であれば0、タイムスロットTS2であれば1など)を取得し、自身のメモリ内に記憶する。
【0032】
ローカルIDを記憶したペン2は、その後にアップリンク信号USを受信して復号すると、まずコマンド信号COM内のローカルIDを参照し、それが自身のメモリ45内に記憶されているローカルIDと一致するか否かを判定することにより、そのアップリンク信号USが自身に向けて送信されたものか否かを判定する。この判定の結果、自身に向けて送信されたアップリンク信号USであると判定した場合、ペン2は、コマンド信号COMからコマンドCOMDATAを抽出し、その内容に応じた処理を行う。この処理には、センサコントローラ31から送信を要求されたデータを取得し、次以降のダウンリンク信号DS内に配置する処理が含まれる。一方、自身に向けて送信されたアップリンク信号USでないと判定した場合、ペン2は、コマンド信号COM内のコマンドCOMDATAを取得することなく、位置信号PSと、筆圧値のみを含むデータ信号DATAとを含む既定のダウンリンク信号DSの送信を行う。
【0033】
センサコントローラ31は、センサ電極30を用いて位置信号PSを受信することにより、ペン2の存在とその位置を検出するよう構成される。
図1に示した指示位置P1,P2は、こうして検出される位置の例を示している。上述した軌跡st1~st3は、この指示位置P1,P2の移動の軌跡である。センサコントローラ31はまた、センサ電極30を用いてデータ信号DATAを受信することにより、ペン2が送信したデータ(筆圧値など)を取得するよう構成される。
【0034】
図5は、ペン2の内部構成を示す図である。同図に示すように、ペン2は、芯体20、ペン先電極22、筆圧検出部23、電源26、及び集積回路27を有して構成される。
【0035】
芯体20は、その長手方向がペン2のペン軸方向と一致するように配置される棒状の部材であり、その一端はペン2のペン先端部21を構成する。芯体20の表面には導電性材料が塗布され、ペン先電極22を構成している。
【0036】
ペン先電極22は、芯体20の近傍に設けられる導電体であり、配線により集積回路27と電気的に接続されている。集積回路27は、このペン先電極22を介して、アップリンク信号USの受信及びダウンリンク信号DSの送信を行う。ただし、ペン先電極22を送信用の電極と受信用の電極とに分離することとしてもよい。
【0037】
筆圧検出部23は、ペン先端部21に加えられた力(筆圧値)を検出する機能部である。具体的に説明すると、筆圧検出部23は芯体20の後端部と当接しており、この当接を通じて、ユーザがペン2のペン先をタッチ面等に押し当てたときにペン先端部21に加わる力を検出するよう構成される。典型的な例では、筆圧検出部23は、ペン先端部21に加えられた力に応じて静電容量の変化する可変容量モジュールにより構成される。
【0038】
電源26は、集積回路27に動作電力(直流電圧)を供給するためのもので、例えば円筒型のAAAA電池により構成される。
【0039】
集積回路27は、図示しない基板に形成された回路群によって構成される処理部であり、ペン先電極22を介してアップリンク信号USを受信する処理と、受信したアップリンク信号USに基づいてダウンリンク信号DSを生成し、ペン先電極22を介して送信する処理とを行う。ペン2が対応しているプロトコルの種類(旧プロトコルのみ、又は、新旧の両プロトコル)は、集積回路27のファームウェア及びハードウェアの少なくとも一方によって決定される。
【0040】
詳しくは
図9を参照して後述するが、旧プロトコルにしか対応していない旧ペンであるペン2aの集積回路27は、センサコントローラ31を発見するためのディスカバリモードS0と、発見したセンサコントローラ31と通信を行うための通信モードS1と、通信モードS1にエントリした後、後述する特別な状態のアップリンク信号USが受信された場合にもセンサコントローラ31との通信を継続するための継続モードS1aとのいずれかにより動作するよう構成される。以下では、特別な状態のアップリンク信号USを「アップリンク信号SUS」と称し、旧プロトコルに従って正常に受信されるアップリンク信号USを「アップリンク信号NUS」と称する。
【0041】
一方、詳しくは
図10を参照して後述するが、新旧の両プロトコルに対応する新ペンであるペン2bの集積回路27は、センサコントローラ31を発見するためのディスカバリモードS10と、発見したセンサコントローラ31と旧プロトコルによる通信を行うための旧モードS11(第1の動作モード)と、旧モードS11にエントリした後、新プロトコルに従って生成されたアップリンク信号USが受信された場合にもセンサコントローラ31との通信を継続するための旧継続モードS11aと、発見したセンサコントローラ31と新プロトコルによる通信を行うための新モードS12(第2の動作モード)と、新モードS12にエントリした後、旧プロトコルに従って生成されたアップリンク信号USが受信された場合にもセンサコントローラ31との通信を継続するための新継続モードS12aとのいずれかにより動作するよう構成される。以下では、旧プロトコルに従って生成されたアップリンク信号USを「アップリンク信号US1」と称し、新プロトコルに従って生成されたアップリンク信号USを「アップリンク信号US2」と称する。ペン2aにとっては、アップリンク信号US1はアップリンク信号NUSであり、アップリンク信号US2はアップリンク信号SUSである。
【0042】
次に、
図6は、電子機器3の内部構成を示す図である。以下、この
図6を参照しながら、電子機器3の構成及び動作について詳しく説明する。
【0043】
センサ電極30は、それぞれY方向に延在する複数の線状電極30Xと、それぞれX方向に延在する複数の線状電極30Yとによって構成される。センサ電極30は、これら線状電極30X,30Yにより、ペン2と容量結合するように構成される。上述したアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSは、この容量結合を介して送受信される。
【0044】
センサコントローラ31は、
図6に示すように、MCU60、ロジック部61、送信部62、受信部63、及び選択部64を有して構成される。
【0045】
MCU60及びロジック部61は、送信部62、受信部63、及び選択部64を制御することにより、センサコントローラ31の送受信動作を制御する制御部である。具体的に説明すると、MCU60は、内部にROMおよびRAMを有し、所定のプログラムに基づき動作するマイクロプロセッサである。MCU60が行う処理には、ロジック部61を制御する処理の他、電子機器制御部33の制御に従ってコマンド信号COM及び誤り検出符号CRCを生成し、送信部62に供給する処理と、受信部63から供給されるダウンリンク信号DSに基づいてペン2の座標x,yを導出するとともにペン2が送信したデータResを受信し、そのペン2のローカルIDとともに電子機器制御部33に出力する処理とが含まれる。一方、ロジック部61は、MCU60の制御に基づき、制御信号ctrl_t1~ctrl_t4及びctrl_rを出力するよう構成される。
【0046】
MCU60は、
図2に示した送受信スケジュールに従ってアップリンク信号USの送信及びダウンリンク信号DSの受信を行うよう構成される。詳しくは
図11を参照して後述するが、MCU60は、アップリンク信号USの送信モードとして、新旧混在モード、旧オンリーモード、新オンリーモードの3つを有している。新旧混在モードにエントリしている場合、MCU60は、旧プロトコル用のアップリンク信号US1を送信するフレームF(第1のフレーム)と、新プロトコル用のアップリンク信号US2を送信するフレームF(第2のフレーム)とを、設定された割合(例えば1:1)で交互に設定するよう構成される。一方、旧オンリーモードにエントリしている場合、MCU60は、すべてのフレームFで旧プロトコル用のアップリンク信号US1を送信するよう構成される。また、新オンリーモードにエントリしている場合、MCU60は、すべてのフレームFで新プロトコル用のアップリンク信号US2を送信するよう構成される。
【0047】
また、これも詳しくは
図11を参照して後述するが、MCU60は、ダウンリンク信号DSの受信モードとして、タイムスロットTSごとに、ディスカバリモード、旧モード、新モードの3つを有している。ディスカバリモードにエントリしているタイムスロットTSにおいてMCU60は、未ペアリングのペン2により送信されたダウンリンク信号DSの受信を待機する。また、旧モードにエントリしているタイムスロットTSにおいてMCU60は、ペン2が旧プロトコルに従って生成したダウンリンク信号DSの受信を待機する。一方、新モードにエントリしているタイムスロットTSにおいてMCU60は、ペン2が新プロトコルに従って生成したダウンリンク信号DSの受信を待機する。以下では、旧プロトコルに従って生成されたダウンリンク信号DSを「ダウンリンク信号DS1」と称し、新プロトコルに従って生成されたダウンリンク信号DSを「ダウンリンク信号DS2」と称する。
【0048】
ここで、ダウンリンク信号DSの受信モードは、アップリンク信号USの送信モードとは関係なく設けられるものである。したがって、MCU60は、アップリンク信号US1を送信したフレームF内でダウンリンク信号DS1,DS2の両方を検出する場合があり、アップリンク信号US2を送信したフレームF内でもダウンリンク信号DS1,DS2の両方を検出する場合がある。
【0049】
図7(a)はアップリンク信号US1の構成例を示す図であり、
図7(b)~(g)はそれぞれ、アップリンク信号US2の構成例を示す図である。アップリンク信号US1,US2はともに
図4に示した構成を有し、一部に共通部分を有するが、プロトコルの違いのための違いがある。この違いの内容は特に限定されるものではなく、様々な態様が考えられる。
図7(b)~(g)には、そのような態様のうちの6つを示している。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0050】
図7(b)は、旧プロトコルにおいて第1の値(例えば「0」)と規定されているビットBの値を、新プロトコルにおいては第1の値と異なる第2の値(例えば「1」)とする例である。この場合、新ペンであるペン2bは、受信したアップリンク信号USを復号した後、ビットBの値を参照することで、そのアップリンク信号USがアップリンク信号US1,US2のいずれであるかを判定することができる。一方、旧ペンであるペン2aは、受信したアップリンク信号USを復号した後、ビットBが第1の値であれば正常に受信できたと判定するが、ビットBが第2の値であれば、コマンドの復号において異常を検出したと判定する。そして、前者の場合には、受信したアップリンク信号USは上述したアップリンク信号NUSであると判定し、後者の場合には、受信したアップリンク信号USは上述した特別な状態のアップリンク信号SUSであると判定する。
【0051】
なお、
図7(b)のアップリンク信号US2を使用できるのは、例えば、アップリンク信号US1内に、リザーブドとしたフィールドがある場合である。リザーブドとしたフィールドの値は特定の意味を持たないが、通常、特定の値(例えば「0」)を有している。旧プロトコルの設計時には、新プロトコルにおいてこのフィールドにどのようにビットがアサインされるかを具体的に予見することは不可能であるが、新プロトコルの設計時に上記特定の値と異なる値(例えば「1」)を上記フィールドに設定することで、ペン2aは、アップリンク信号US1を受けた場合に、上記フィールドに通常でない値が設定されていることを認識することができる。したがって、受信したアップリンク信号USを特別な状態のアップリンク信号SUSであると判定することが可能になる。
【0052】
図7(c)は、新プロトコルにおいて、コマンド信号COMを入力とする所定の演算を行うことにより求められる誤り検出符号CRCに代え、該誤り検出符号CRCを反転してなる反転誤り検出符号RCRCをアップリンク信号US内に配置する例である。この場合、新ペンであるペン2bは、受信したアップリンク信号USから誤り検出符号CRC又は反転誤り検出符号RCRCに相当する部分を取り出し、その部分を反転せずに誤り検出を試行するとともに、その部分を反転して誤り検出を試行することにより、そのアップリンク信号USがアップリンク信号US1,US2のいずれであるかを判定することができる。つまり、ペン2bは、取り出した部分を反転して誤り検出を行った結果、誤りが検出されなかった場合にアップリンク信号US2を受信したと判定し、取り出した部分を反転せずに誤り検出を行った結果、誤りが検出されなかった場合にアップリンク信号US1を受信したと判定することができる。一方、旧ペンであるペン2aにおいては、受信したアップリンク信号US内に誤り検出符号CRCが配置されていれば復号結果が符号語になる(すなわち、誤り検出符号により誤りが検出されない)が、反転誤り検出符号RCRCが配置されていれば復号結果が符号語にならない(すなわち、誤り検出符号により誤りが検出される)ことになる。そこでペン2aは、復号結果が符号語になった場合、あるいは符号語にならなかった場合であってCRCのフィールドに反転された値が含まれているときには、受信したアップリンク信号USは上述したアップリンク信号NUSであると判定し、復号結果が符号語にならなかった場合には、受信したアップリンク信号USは上述した特別な状態のアップリンク信号SUSであると判定する。このようにすることで、
図7(b)のように新たなフィールドを用いることなく、旧プロトコルに存在するCRCフィールドを利用して新プロトコルに適合したコマンドが発行されていることを示すことができる。
【0053】
図7(d)は、新プロトコルのプリアンブルPREが旧プロトコルのプリアンブルPREより長い例であり、
図7(e)は、旧プロトコルと異なり新プロトコルでは誤り検出符号CRCが設けられない例であり、
図7(f)は、多値化等により、新プロトコルのコマンド信号COMの時間長が旧プロトコルのコマンド信号COMの時間長より短くなる例であり、
図7(g)は、旧プロトコルと異なり新プロトコルでは誤り検出符号CRCが設けられず、かつ、多値化等により、新プロトコルのコマンド信号COMの時間長が旧プロトコルのコマンド信号COMの時間長より短くなる例である。いずれの場合においても、新ペンであるペン2bは、受信したアップリンク信号USをアップリンク信号US1,US2のそれぞれであると仮定して復号を試行することにより、そのアップリンク信号USがアップリンク信号US1,US2のいずれであるかを判定することができる。一方、旧ペンであるペン2aは、アップリンク信号USをアップリンク信号US1としてのみ復号することになるので、アップリンク信号USがアップリンク信号US2であった場合には異常な結果が得られることになる。そこでペン2aは、正常な復号結果が得られた場合には、受信したアップリンク信号USは上述したアップリンク信号NUSであると判定し、異常な復号結果が得られた場合には、受信したアップリンク信号USは上述した特別な状態のアップリンク信号SUSであると判定する。
【0054】
なお、
図7(d)に示す例のように旧プロトコルと新プロトコルとで異なるプリアンブルPREを用いる場合、拡散符号のチップ幅(1チップあたりの時間長、つまりはチップ(パルス)の基本周波数あるいは整数倍周波数)や、拡散符号を構成するコード(チップ列)の部分一致(相関演算の結果が所定値以上となるような一致を含む)、あるいは複数の拡散符号のパターンで構成されるプリアンブルPREの先頭部分など、一部分のみが一致するようにそれぞれのプリアンブルPREを構成することとしてもよい。この場合、旧ペンであるペン2aは、異常な復号結果が得られたことに加えてこの一部分の一致を検出した場合に、受信したアップリンク信号USは上述した特別な状態のアップリンク信号SUSであると判定することとしてもよい。こうすることで、ノイズによる復号エラーなどの場合にまで特別な状態のアップリンク信号SUSが受信されたと判定しまうことを防止することが可能になる。
【0055】
図8(a)は、旧プロトコルで使用されるプリアンブルPREを構成する拡散符号の例を示し、
図8(b)は、新プロトコルで使用されるプリアンブルPREを構成する拡散符号の例を示している。これらの例では、旧プロトコルと新プロトコルとで異なるプリアンブルPREを用いているが、拡散符号のチップ幅Lが一致している。この例のようなプリアンブルPREを用いる場合であれば、旧ペンであるペン2aは、異常な復号結果(プリアンブルPRE(又はアップリンク信号US)の全部が一致しない、という結果を含む)が得られたことに加えて、チップ幅Lの一致を検出した場合に、受信したアップリンク信号USは上述した特別な状態のアップリンク信号SUSであると判定すればよい。チップ幅Lの一致に代えて、又は、チップ幅Lの一致に加えて、拡散符号を構成するコードあるいはプリアンブルPREの部分一致を検出した場合についても同様である。
【0056】
図6に戻る。送信部62は、MCU60及びロジック部61の制御に従ってアップリンク信号USを生成する回路であり、
図6に示すように、パターン供給部80、スイッチ81、符号列保持部82、拡散処理部83、及び送信ガード部84を含んで構成される。なお、このうち特にパターン供給部80に関して、本実施の形態では送信部62内に含まれるものとして説明するが、MCU60内に含まれることとしてもよい。
【0057】
パターン供給部80は、ロジック部61から供給される制御信号ctrl_t1の指示に従い、プリアンブルPREを構成するシンボルを出力する機能部である。プリアンブルPREを構成するシンボルは、例えば0~15のいずれにも対応付けられないプリアンブル専用のシンボルによって構成される。
【0058】
スイッチ81は、ロジック部61から供給される制御信号ctrl_t2に基づいてパターン供給部80及びMCU60のいずれか一方を選択し、選択した一方の出力を拡散処理部83に供給する役割を果たす。スイッチ81がパターン供給部80を選択した場合、拡散処理部83には、パターン供給部80からプリアンブルPREを構成するシンボルが供給される。一方、スイッチ81がMCU60を選択した場合、拡散処理部83には、MCU60からコマンド信号COM及び誤り検出符号CRCが供給される。拡散処理部83に供給されるコマンド信号COM及び誤り検出符号CRCはそれぞれ、例えば0~15のいずれかに対応付けられたシンボルの列によって構成される。
【0059】
符号列保持部82は、ロジック部61から供給される制御信号ctrl_t3に基づき、自己相関特性を有する所定チップ長の拡散符号PNを生成して保持する機能を有する。符号列保持部82には、シンボルの種類ごとに異なる拡散符号PNが保持される。符号列保持部82が保持している拡散符号PNは、拡散処理部83に供給される。
【0060】
拡散処理部83は、スイッチ81を介して供給されるシンボルの値(プリアンブルPRE又はコマンド信号COM)を、符号列保持部82に保持される複数の拡散符号PNのうちの対応するものによって拡散することにより、送信チップ列を得る機能を有する。拡散処理部83は、取得した送信チップ列を送信ガード部84に供給するよう構成される。
【0061】
送信ガード部84は、ロジック部61から供給される制御信号ctrl_t4に基づき、アップリンク信号USの送信期間とダウンリンク信号DSの受信期間との間に、送信動作と受信動作を切り替えるために必要となるガード期間(送信と受信の両方を行わない期間)を挿入する機能を有する。
【0062】
受信部63は、ロジック部61から供給される制御信号ctrl_rに基づいて、ペン2が送信したダウンリンク信号DSを受信するための回路である。具体的には、増幅回路85、検波回路86、及びアナログデジタル(AD)変換器87を含んで構成される。
【0063】
増幅回路85は、選択部64から供給されるダウンリンク信号DSを増幅して出力する。検波回路86は、増幅回路85の出力信号のレベルに対応した電圧を生成する回路である。AD変換器87は、検波回路86から出力される電圧を所定時間間隔でサンプリングすることによって、デジタル信号を生成する回路である。AD変換器87が出力するデジタル信号は、MCU60に供給される。MCU60は、こうして供給されたデジタル信号に基づき、ペン2が送信したデータRes(筆圧値、ペンIDなど)を取得する。
【0064】
選択部64は、スイッチ88x,88yと、導体選択回路89x,89yとを含んで構成される。
【0065】
スイッチ88x,88yはそれぞれ、共通端子とT端子及びR端子のいずれか一方とが接続されるように構成された1回路2接点のスイッチ素子である。スイッチ88xの共通端子は導体選択回路89xに接続され、T端子は送信部62の出力端に接続され、R端子は受信部63の入力端に接続される。また、スイッチ88yの共通端子は導体選択回路89yに接続され、T端子は送信部62の出力端に接続され、R端子は受信部63の入力端に接続される。
【0066】
導体選択回路89xは、複数の線状電極30Xを選択的にスイッチ88xの共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路89xは、複数の線状電極30Xの一部又は全部を同時にスイッチ88xの共通端子に接続することも可能に構成される。
【0067】
導体選択回路89yは、複数の線状電極30Yを選択的にスイッチ88yの共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路89yも、複数の線状電極30Yの一部又は全部を同時にスイッチ88yの共通端子に接続することも可能に構成される。
【0068】
選択部64には、ロジック部61から4つの制御信号sTRx,sTRy,selX,selYが供給される。具体的には、制御信号sTRxはスイッチ88xに、制御信号sTRyはスイッチ88yに、制御信号selXは導体選択回路89xに、制御信号selYは導体選択回路89yにそれぞれ供給される。ロジック部61は、これら制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部64を制御することにより、アップリンク信号USの送信及びダウンリンク信号DSの受信を実現する。
【0069】
より具体的に説明すると、ロジック部61は、アップリンク信号USを送信する場合には、複数の線状電極30Yのすべて(又は複数の線状電極30Xのすべて)が送信部62の出力端に接続されるよう、選択部64を制御する。
【0070】
ダウンリンク信号DSに含まれる位置信号PSを受信する場合のロジック部61の動作は、位置信号PSを受信したタイムスロットTSにおいてペン2とペアリング中か否かによって異なる。ペアリング中でないタイムスロットTSにおいては、ロジック部61は、タイムスロットTSの継続期間内に各複数の線状電極30X,30Yのすべてが順に受信部63の入力端に接続されるよう、選択部64を制御する。こうすることで、MCU60はすべての線状電極30X,30Yのそれぞれにおける位置信号PSの受信強度を取得することができるので、タッチ面の全体でペン2の位置を検出することが可能になる(グローバルスキャン)。一方、ペアリング中でないタイムスロットTSにおいては、ロジック部61は、位置信号PSの送信が継続している間に、前回検出した位置の近傍に位置する所定数本の線状電極30X,30Yが順に受信部63の入力端に接続されるよう、選択部64を制御する。こうすることで、MCU60は、前回検出した位置の近傍にある所定数本の線状電極30X,30Yのそれぞれにおける位置信号PSの受信強度を取得することができるので、ペン2の位置を更新することが可能になる(ローカルスキャン)。
【0071】
ダウンリンク信号DSに含まれるデータ信号DATAを受信する場合のロジック部61は、各複数の線状電極30X,30Yのうち、そのデータ信号DATAを送信するペン2について直前の位置信号PSにより導出した位置に最も近い1本のみが受信部63の入力端に接続されるよう、選択部64を制御する。こうすることで、データ信号DATAの送信時間を、ペン2からセンサコントローラ31にデータを送るためにフルに活用することが可能になる。
【0072】
以上、位置検出システム1を構成するペン2及び電子機器3の構成について説明するとともに、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSについて説明した。次に、ペン2及び電子機器3の動作について、それぞれのモード遷移図を参照しながら、より詳細に説明する。
【0073】
図9は、旧ペンであるペン2aのモード遷移図である。同図に示すように、ペン2aは、ディスカバリモードS0、通信モードS1、継続モードS1aのいずれかで動作するように構成される。
【0074】
ディスカバリモードS0は、センサコントローラ31を発見するためのモードである。ディスカバリモードS0にエントリしているペン2aは、アップリンク信号USの検出動作を断続的又は連続的に実行する。そして、アップリンク信号NUSが受信された場合には、その受信タイミングに基づいてアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定するとともに、通信モードS1に遷移する。一方、アップリンク信号SUSが受信された場合には、ペン2aは、ディスカバリモードS0に留まって次のアップリンク信号USの受信を試みる。
【0075】
通信モードS1にエントリしているペン2aは、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号NUSが受信されている間、通信モードS1に留まってセンサコントローラ31との通信を行う。具体的には、受信されたアップリンク信号NUSの受信タイミングに従って送受信スケジュールを更新するとともに、更新された送受信スケジュールに従ってダウンリンク信号DSの送信を行う。こうして送信されるダウンリンク信号DSはペン2aが旧プロトコルに従って生成する信号であり、直前のアップリンク信号NUS内のコマンドCOMDATAにより送信を指示されたデータ、又は、筆圧値などの既定のデータを含む。
【0076】
一方、ペン2aは、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号USが受信されなかった場合には、センサコントローラ31から離れたと判定し、ディスカバリモードS0に戻る。また、送受信スケジュールに従って(つまり、次のアップリンク信号NUSを受信可能である期間に)、次のアップリンク信号NUSを正常に受信せずにアップリンク信号SUSが受信された場合には、継続モードS1aに遷移する。
【0077】
継続モードS1aにエントリしているペン2aは、アップリンク信号SUSが受信された場合には、そのアップリンク信号SUSの受信タイミングに従って送受信スケジュールを更新しつつも、旧プロトコルに従ってダウンリンク信号DSの送信を行う。具体的には、上記期間の前に受信していたアップリンク信号NUS内に配置されたコマンドに従うデータ、又は、筆圧値などの既定のデータを含むダウンリンク信号DSを送信する。
【0078】
一方、ペン2aは、アップリンク信号NUSが受信された場合には、通信モードS1に戻る。また、n回以上(nは例えば2以上の任意の自然数)にわたって連続して(つまり、アップリンク信号NUSが検出されず)アップリンク信号SUSが検出された場合、及び、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号USが受信されなかった場合には、ディスカバリモードS0に戻る。
【0079】
図10は、新ペンであるペン2bのモード遷移図である。同図に示すように、ペン2bは、ディスカバリモードS10、旧モードS11、旧継続モードS11a、新モードS12、新継続モードS12aのいずれかで動作するように構成される。
【0080】
ディスカバリモードS10は、
図9に示したペン2aのディスカバリモードS0と同じく、センサコントローラ31を発見するためのモードである。ディスカバリモードS10にエントリしているペン2bは、アップリンク信号USの検出動作を断続的又は連続的に実行する。そして、アップリンク信号US1が受信された場合には、その受信タイミングに基づいてアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定するとともに、旧モードS11に遷移する。一方、アップリンク信号US2が受信された場合には、その受信タイミングに基づいてアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定するとともに、新モードS12に遷移する。
【0081】
旧モードS11にエントリしているペン2bは、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号US1が受信されている間、旧モードS11に留まってセンサコントローラ31との通信を行う。具体的には、受信されたアップリンク信号US(アップリンク信号US1,US2を含む)の受信タイミングに従って送受信スケジュールを更新するとともに、更新された送受信スケジュールに従ってダウンリンク信号DSの送信を行う。こうして送信されるダウンリンク信号DSはペン2bが旧プロトコルに従って生成する信号であり、直前のアップリンク信号US1内のコマンドCOMDATAにより送信を指示されたデータ、又は、筆圧値などの既定のデータを含む。
【0082】
一方、ペン2bは、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号USが受信されなかった場合には、センサコントローラ31から離れたと判定し、ディスカバリモードS10に戻る。また、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号US2が受信された場合には、旧継続モードS11aに遷移する。
【0083】
旧継続モードS11aにエントリしているペン2bは、アップリンク信号US2が受信された場合には、アップリンク信号US2の受信タイミングに従って送受信スケジュールを更新しつつも、旧プロトコルに従ってダウンリンク信号DSの送信を行う。具体的には、それまでに受信していたアップリンク信号US1内に配置されたコマンドに従うデータ、又は、筆圧値などの既定のデータを含むダウンリンク信号DSを送信する。
【0084】
一方、ペン2bは、アップリンク信号US1が受信された場合には、旧モードS11に戻る。また、n回以上(nは例えば2以上の任意の自然数)にわたって連続して(つまり、アップリンク信号US1が検出されず)アップリンク信号US2が検出された場合、及び、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号USが受信されなかった場合には、ディスカバリモードS10に戻る。
【0085】
ここで、ペン2bは、受信したアップリンク信号US1の中に配置されたコマンドCOMDATAがモードの移行を指示する移行コマンドであった場合、
図10に破線で示したように、新モードS12に遷移することが好ましい。これによれば、センサコントローラ31からの指示によって、ペン2bのモードを新モードS12に強制的に切り替えることが可能になる。
【0086】
次に、新モードS12にエントリしているペン2bは、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号US2が受信されている間、新モードS12に留まってセンサコントローラ31との通信を行う。具体的には、受信されたアップリンク信号US(アップリンク信号US1,US2を含む)の受信タイミングに従って送受信スケジュールを更新するとともに、更新された送受信スケジュールに従ってダウンリンク信号DSの送信を行う。こうして送信されるダウンリンク信号DSはペン2bが新プロトコルに従って生成する信号であり、直前のアップリンク信号US2内のコマンドCOMDATAにより送信を指示されたデータ、又は、筆圧値などの既定のデータを含む。
【0087】
一方、ペン2bは、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号USが受信されなかった場合には、センサコントローラ31から離れたと判定し、ディスカバリモードS10に戻る。また、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号US1が受信された場合には、新継続モードS12aに遷移する。
【0088】
新継続モードS12aにエントリしているペン2bは、アップリンク信号US1が受信された場合には、アップリンク信号US1の受信タイミングに従って送受信スケジュールを更新しつつも、新プロトコルに従ってダウンリンク信号DSの送信を行う。具体的には、それまでに受信していたアップリンク信号US2内に配置されたコマンドに従うデータ、又は、筆圧値などの既定のデータを含むダウンリンク信号DSを送信する。
【0089】
一方、ペン2bは、アップリンク信号US2が受信された場合には、新モードS12に戻る。また、n回以上(nは例えば2以上の任意の自然数)にわたって連続して(つまり、アップリンク信号US2が検出されず)アップリンク信号US1が検出された場合、及び、送受信スケジュールに従ってアップリンク信号USが受信されなかった場合には、ディスカバリモードS10に戻る。
【0090】
図11は、センサコントローラ31のモード遷移図である。同図に示すように、センサコントローラ31は、タイムスロットTSごとにダウンリンク信号DSの受信モードを有するとともに、アップリンク信号USの送信モードを有している。前者は、ディスカバリモード、旧モード、新モードを含み、後者は、新旧混在モード、旧オンリーモード、新オンリーモードを含む。また、
図12及び
図13は、センサコントローラ31のモード遷移を説明するための説明する図である。以下、これら
図11~
図13を参照しながら、センサコントローラ31のモード遷移について説明する。
【0091】
初めに、
図11に示した状態S20は、センサコントローラ31がどのペン2ともペアリングしていない初期状態である。この状態S20では、2つのタイムスロットTS1,TS2それぞれの受信モードはともにディスカバリモードであり、アップリンク信号USの送信モードは新旧混在モードである。この場合、センサコントローラ31は、旧プロトコル用のアップリンク信号US1を送信するフレームFと、新プロトコル用のアップリンク信号US2を送信するフレームFとを、設定された割合で交互に設定する。この割合は1:1とすることが好適であるが、1:1でなくてもよい。
【0092】
図12(a)は、センサコントローラ31が状態S20にあるときに、アップリンク信号US2を送信したフレームF内のタイムスロットTS1においてダウンリンク信号DS2が受信された場合を示している。アップリンク信号US2に応じて最初のダウンリンク信号DS2を送信するペン2はペン2bであり、ダウンリンク信号DS2を送信した時点で、
図10に示した新モードS12にエントリしている。センサコントローラ31は、検出したダウンリンク信号DS2を送信したペン2と新プロトコルによりペアリングし、タイムスロットTS1におけるダウンリンク信号DSの受信モードを新モードに設定する(
図11の状態S21)。これにより、タイムスロットTS1では、新プロトコルによる通信が行われることになる。
【0093】
図12(b)は、センサコントローラ31が状態S21にあるときに、アップリンク信号US2を送信したフレームF内のタイムスロットTS2においてダウンリンク信号DS2が受信された場合を示している。このダウンリンク信号DS2を送信するペン2もペン2b(タイムスロットTS1においてダウンリンク信号DS2を送信しているペン2bとは異なるペン2b。以下、同様。)であり、ダウンリンク信号DSを送信した時点で、
図10に示した新モードS12にエントリしている。センサコントローラ31は、検出したダウンリンク信号DS2を送信したペン2と新プロトコルによりペアリングし、タイムスロットTS2におけるダウンリンク信号DSの受信モードを新モードに設定するとともに、アップリンク信号USの送信モードを新オンリーモードに設定する(
図11の状態S23)。これにより、タイムスロットTS1,TS2ともに新プロトコルによる通信が行われ、アップリンク信号USとしてはアップリンク信号US2のみが送信されることになる。
【0094】
図12(c)は、センサコントローラ31が状態S21にあるときに、アップリンク信号US1を送信したフレームF内のタイムスロットTS2においてダウンリンク信号DS1が受信された場合を示している。このダウンリンク信号DS1を送信するペン2は、ペン2a及びペン2bのいずれでもあり得る。ペン2aである場合、ダウンリンク信号DS1を送信した時点で、
図9に示した通信モードS1にエントリしている。一方、ペン2bであれば、ダウンリンク信号DS1を送信した時点で、
図10に示した旧モードS11にエントリしている。センサコントローラ31は、検出したダウンリンク信号DS1を送信したペン2と旧プロトコルによりペアリングし、タイムスロットTS2におけるダウンリンク信号DSの受信モードを旧モードに設定する(
図11の状態S24)。これにより、タイムスロットTS1では新プロトコルによる通信が行われ、タイムスロットTS2では旧プロトコルによる通信が行われることになる。
【0095】
図13(a)は、センサコントローラ31が状態S20にあるときに、アップリンク信号US1を送信したフレームF内のタイムスロットTS1においてダウンリンク信号DS1が受信された場合を示している。アップリンク信号US1に応じて最初のダウンリンク信号DS1を送信するペン2は、ペン2a及びペン2bのいずれでもあり得る。ペン2aである場合、ダウンリンク信号DS1を送信した時点で、
図9に示した通信モードS1にエントリしている。一方、ペン2bであれば、ダウンリンク信号DS1を送信した時点で、
図10に示した旧モードS11にエントリしている。センサコントローラ31は、検出したダウンリンク信号DS1を送信したペン2と旧プロトコルによりペアリングし、タイムスロットTS1におけるダウンリンク信号DSの受信モードを旧モードに設定する(
図11の状態S22)。これにより、タイムスロットTS1では、旧プロトコルによる通信が行われることになる。
【0096】
図13(b)は、センサコントローラ31が状態S22にあるときに、アップリンク信号US2を送信したフレームF内のタイムスロットTS2においてダウンリンク信号DS2が受信された場合を示している。このダウンリンク信号DS2を送信するペン2はペン2bであり、ダウンリンク信号DS2を送信した時点で、
図10に示した新モードS12にエントリしている。センサコントローラ31は、検出したダウンリンク信号DS2を送信したペン2と新プロトコルによりペアリングし、タイムスロットTS2におけるダウンリンク信号DSの受信モードを新モードに設定する(
図11の状態S25)。これにより、タイムスロットTS1では旧プロトコルによる通信が行われ、タイムスロットTS2では新プロトコルによる通信が行われることになる。
【0097】
図13(c)は、センサコントローラ31が状態S22にあるときに、アップリンク信号US1を送信したフレームF内のタイムスロットTS2においてダウンリンク信号DS1が受信された場合を示している。このダウンリンク信号DS1を送信するペン2は、ペン2a及びペン2bのいずれでもあり得る。ペン2aである場合、ダウンリンク信号DS1を送信した時点で、
図9に示した通信モードS1にエントリしている。一方、ペン2bであれば、ダウンリンク信号DS1を送信した時点で、
図10に示した旧モードS11にエントリしている。センサコントローラ31は、検出したダウンリンク信号DS1を送信したペン2と旧プロトコルによりペアリングし、タイムスロットTS2におけるダウンリンク信号DSの受信モードを旧モードに設定するとともに、アップリンク信号USの送信モードを旧オンリーモードに設定する(
図11の状態S26)。これにより、タイムスロットTS1,TS2ともに旧プロトコルによる通信が行われ、アップリンク信号USとしてはアップリンク信号US1のみが送信されることになる。
【0098】
ここで、上記の動作によれば、ペアリング対象のペン2が新プロトコルに対応したペン2bであっても、ペン2bがタッチ面への接近後に初めて検出したアップリンク信号USがアップリンク信号US1であった場合には、旧プロトコルによって通信が開始されてしまう。そこでセンサコントローラ31は、旧プロトコルにより通信を開始した場合には、ダウンリンク信号DS1内に含まれるビットA(
図2を参照)を参照することにより、そのペン2が新プロトコルに対応しているか否かを判定し、対応していると判定した場合には、次に送信するアップリンク信号US1の中に、新プロトコルでの通信への移行を指示する移行コマンドを配置する。以下、この点について、
図14を参照しながら詳しく説明する。
【0099】
図14は、旧プロトコルでペアリングしたペン2bとの通信を新プロトコルに移行させる手順を説明するための説明する図である。同図(a)には、
図11に示した状態S20においてタイムスロットTS1に検出されたペン2bとの通信を新プロトコルに移行させる手順を示し、同図(b)には、
図11に示した状態S21においてタイムスロットTS2に検出されたペン2bとの通信を新プロトコルに移行させる手順を示し、同図(c)には、
図11に示した状態S22においてタイムスロットTS2に検出されたペン2bとの通信を新プロトコルに移行させる手順を示している。以下、順に説明する。
【0100】
まず
図14(a)は、センサコントローラ31が状態S20にあるときに、アップリンク信号US1を受けて旧モードS11にエントリしたペン2bが、タイムスロットTS1を用いてダウンリンク信号DS1を送信したケースである。このダウンリンク信号DS1を受けたセンサコントローラ31は、タイムスロットTS1においてペン2bと旧プロトコルでペアリングするとともに、状態S22へと遷移する。
【0101】
その後、センサコントローラ31は、タイムスロットTS1でペアリング中のペン2bが送信したダウンリンク信号DS1の中に含まれるビットA(
図3(b)を参照)から、ペン2bが旧プロトコル及び新プロトコルの両方に対応していることを検出する。なお、ビットAが含まれるのは
図3(b)に示したデータ信号DATA内であるので、センサコントローラ31がこの検出を行うのは、ローカルスキャンに遷移してからとなる。
【0102】
ペン2bが旧プロトコル及び新プロトコルの両方に対応していることを検出したセンサコントローラ31は、次に送信するアップリンク信号US1により、ペン2bに対して新プロトコルへの移行を指示するコマンドCOMDATA(移行コマンド)を送信する。このコマンドCOMDATAを受けたペン2bは、
図10を参照して説明したように、新モードS12にエントリする。そして、新モードS12にエントリしたペン2bが送信したダウンリンク信号DS2を受信したセンサコントローラ31は、ペン2bと新プロトコルで再ペアリングを行うとともに、タイムスロットTS1におけるダウンリンク信号DSの受信モードが新モードとなる状態S21へと遷移する。以上の手順により、状態S20においてタイムスロットTS1に検出されたペン2bとの通信が新プロトコルに移行することになる。
【0103】
次に
図14(b)は、センサコントローラ31が状態S21にあるときに、アップリンク信号US1を受けて旧モードS11にエントリしたペン2bが、タイムスロットTS2を用いてダウンリンク信号DS1を送信したケースである。このダウンリンク信号DS1を受けたセンサコントローラ31は、タイムスロットTS2においてペン2bと旧プロトコルでペアリングするとともに、状態S24へと遷移する。
【0104】
その後、センサコントローラ31は、タイムスロットTS2でペアリング中のペン2bが送信したダウンリンク信号DS1の中に含まれるビットA(
図3(b)を参照)から、ペン2bが旧プロトコル及び新プロトコルの両方に対応していることを検出する。するとセンサコントローラ31は、次に送信するアップリンク信号US1により、タイムスロットTS2でペアリング中のペン2に対して新プロトコルへの移行を指示するコマンドCOMDATA(移行コマンド)を送信する。このコマンドCOMDATAを受けたペン2bは、
図10を参照して説明したように、新モードS12にエントリする。そして、新モードS12にエントリしたペン2bが送信したダウンリンク信号DS2を受信したセンサコントローラ31は、ペン2bと新プロトコルで再ペアリングを行うとともに、タイムスロットTS2におけるダウンリンク信号DSの受信モードが新モードとなる状態S23へと遷移する。以上の手順により、状態S21においてタイムスロットTS2に検出されたペン2bとの通信が新プロトコルに移行することになる。
【0105】
最後に、
図14(c)は、センサコントローラ31が状態S22にあるときに、アップリンク信号US1を受けて旧モードS11にエントリしたペン2bが、タイムスロットTS2を用いてダウンリンク信号DS1を送信したケースである。このダウンリンク信号DS1を受けたセンサコントローラ31は、タイムスロットTS2においてペン2bと旧プロトコルでペアリングするとともに、状態S26へと遷移する。
【0106】
その後、センサコントローラ31は、タイムスロットTS2でペアリング中のペン2bが送信したダウンリンク信号DS1の中に含まれるビットA(
図3(b)を参照)から、ペン2bが旧プロトコル及び新プロトコルの両方に対応していることを検出する。するとセンサコントローラ31は、次に送信するアップリンク信号US1により、タイムスロットTS2でペアリング中のペン2bに対して新プロトコルへの移行を指示するコマンドCOMDATA(移行コマンド)を送信する。このコマンドCOMDATAを受けたペン2bは、
図10を参照して説明したように、新モードS12にエントリする。そして、新モードS12にエントリしたペン2bが送信したダウンリンク信号DS2を受信したセンサコントローラ31は、ペン2bと新プロトコルで再ペアリングを行うとともに、タイムスロットTS2におけるダウンリンク信号DSの受信モードが新モードとなる状態S25へと遷移する。以上の手順により、状態S22においてタイムスロットTS2に検出されたペン2bとの通信が新プロトコルに移行することになる。
【0107】
以上のように、本実施の形態によれば、センサコントローラ31は、新プロトコルに対応したペン2bと旧プロトコルによりペアリングしてしまった場合であっても、新プロトコルによってペアリングをやり直し、新プロトコルによる通信を開始することが可能になる。
【0108】
以上説明したように、本実施の形態によれば、旧プロトコルにしか対応していないペン2aは、センサコントローラ31から特別な状態のアップリンク信号SUS(例えば、新プロトコルによるアップリンク信号US2)を受信しても、それまでに受信していたアップリンク信号NUSに基づいて動作することができる。また、新旧の両プロトコルに対応するペン2bは、センサコントローラ31と新プロトコルによる通信中には、アップリンク信号US1を受信したとしても、それまでに受信していたアップリンク信号US2に基づいて動作することができ、センサコントローラ31と旧プロトコルによる通信中には、アップリンク信号US2を受信したとしても、それまでに受信していたアップリンク信号US1に基づいて動作することができる。さらに、センサコントローラ31は、アップリンク信号US1を送信するフレームF及びアップリンク信号US2を送信するフレームFのそれぞれにおいて、旧プロトコルに従って生成されたダウンリンク信号DS1と、新プロトコルに従って生成されたダウンリンク信号DS2との両方を検出することができる。したがって、本実施の形態によれば、1つの電子機器3において、ペン2aとペン2bの両方を同時に使用することが可能になる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、新プロトコルに対応したペン2bと旧プロトコルによりペアリングしてしまったとしても、センサコントローラ31から移行コマンドを送ることによってペン2bを新モードS12に遷移させることができるので、新プロトコルに対応したペン2bとは、新プロトコルを用いて通信を行うことが可能になる。
【0110】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0111】
例えば、上記実施の形態では、旧モードS11にエントリしたペン2bを新モードS12に移行させるためにセンサコントローラ31から移行コマンドを送信したが、ペン2bが自律的に新モードS12に移行することとしてもよい。
【0112】
図15は、本発明の実施の形態の第1の変形例によるペン2bのモード遷移図である。同図に示すように、本変形例によるペン2bは、旧モードS11にエントリしている間にアップリンク信号US2を検出すると、
図10に示した継続モードS11aではなく新モードS12に遷移する。
図15の例では、継続モードS11aは設けられない。このようにしても、センサコントローラ31は、新プロトコルによってペン2bと通信を行うことが可能になる。
【0113】
また、上記実施の形態では、センサコントローラ31と同時にペアリング可能なペン2の数は2本までとしたが、センサコントローラ31と同時にペアリング可能なペン2の数は2本に限定されない。
【0114】
図16は、本発明の実施の形態の第2の変形例によるセンサコントローラ31における送信(Tx)と受信(Rx)のスケジュールを示す図である。同図に示すように、本変形例では、互いに周波数の異なる2つの受信用チャネルRx1,Rx2が用いられる。受信用チャネルRx1には2つのタイムスロットTS1,TS2が設けられ、受信用チャネルRx2には2つのタイムスロットTS3,TS4が設けられる。したがって、ダウンリンク信号DSの送信に使用可能なタイムスロットの数が合計4つとなることから、本変形例によれば、センサコントローラ31と同時にペアリング可能なペン2の数は4本となる。
【0115】
なお、本変形例に関しては、旧プロトコルは受信用チャネルRx1のみに対応し、新プロトコルは受信用チャネルRx1,Rx2に対応していることとしてもよい。この場合、新プロトコルに対応したペン2bは、タイムスロットTS3,TS4を優先的に使用することが好ましい。こうすることで、できるだけ多くのペン2を同時に使用することが可能になる。
【0116】
また、本変形例によるセンサコントローラ31は、旧プロトコルに従って生成されるダウンリンク信号DS1と新プロトコルに従って生成されるダウンリンク信号DS2の混在状況に応じて、アップリンク信号US1,US2の送信割合を変更することが好ましい。具体的には、ダウンリンク信号DS1に比べてダウンリンク信号DS2の受信数が多いほど、アップリンク信号US2の送信率が高くなるよう上記割合を変更することが好ましい。
【0117】
また、上記実施の形態では、センサコントローラ31が送信する移行コマンドとして、ペン2bとの通信を旧プロトコルから新プロトコルに移行させるもののみを説明したが、センサコントローラ31は、ペン2bとの通信を新プロトコルから旧ブロトコルに移行させる移行コマンドを送信することとしてもよい。
【0118】
また、上記実施の形態では、ペン2bとの通信を旧プロトコルから新プロトコルに移行させる場合、センサコントローラ31は、アップリンク信号US1により移行コマンドを送信することとしたが、アップリンク信号US2により移行コマンドを送信することとしてもよい。この場合、ペン2bは、旧モードS11又は旧継続モードS11aにエントリしている場合であっても、アップリンク信号US2内のコマンド信号COMを一旦復号し、移行コマンドが含まれているか否かを判定することが好ましい。そして、移行コマンドが含まれていた場合には、その移行コマンドに従う動作、すなわち新モードS12への移行を実行することが好ましい。
【0119】
また、上記実施の形態てば、新旧のプロトコル(後方互換)に本発明を適用する例を説明したが、本発明は、異なるプロトコルが混在するマルチペン環境にも適用可能である。例えば、互いに異なるプロトコルであるが、共にアップリンク信号によりフレームの基準時刻が定まり、かつ、信号の一部が共通する異なる2つのプロトコルにも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 位置検出システム
2,2a,2b ペン
3 電子機器
20 芯体
21 ペン先端部
22 ペン先電極
23 筆圧検出部
26 電源
27 集積回路
30 センサ電極
30X 線状電極
30X,30Y 線状電極
30Y 線状電極
31 センサコントローラ
32 パネル
33 電子機器制御部
34 液晶表示部
45 メモリ
60 MCU
61 ロジック部
62 送信部
63 受信部
64 選択部
80 パターン供給部
81 スイッチ
82 符号列保持部
83 拡散処理部
84 送信ガード部
85 増幅回路
86 検波回路
87 アナログデジタル(AD)変換器
88x,88y スイッチ
89x,89y 導体選択回路
A.B ビット
COM コマンド信号
COMDATA コマンド
CRC 誤り検出符号
ctrl_t1~ctrl_t4,ctrl_r 制御信号
DATA データ信号
DS ダウンリンク信号
F フレーム
NUS 旧プロトコルに従って正常に受信されるアップリンク信号US
P1,P2 指示位置
PN 拡散符号
PRE プリアンブル
PS 位置信号
RCRC 反転誤り検出符号
Rx1,Rx2 受信用チャネル
S0 ディスカバリモード
S1 通信モード
S0,S10 ディスカバリモード
S11 旧モード
S11a 旧継続モード
S12 新モード
S12a 新継続モード
S1a 継続モード
st1~st3 軌跡
STA スロット状態情報
sTRx,sTRy,selX,selY 制御信号
SUS 特別な状態のアップリンク信号US
TS,TS1~TS4 タイムスロット
US アップリンク信号
US1 旧プロトコルに従って生成されたアップリンク信号US
US2 新プロトコルに従って生成されたアップリンク信号US