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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20241216BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241216BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241216BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H01L23/28 A
H01L25/04 C
H01L23/48 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023542072
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2021030097
(87)【国際公開番号】W WO2023021589
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-07-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 省二
(72)【発明者】
【氏名】猪ノ口 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 太志
(72)【発明者】
【氏名】山内 宏哉
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-064852(JP,A)
【文献】特開2021-057447(JP,A)
【文献】特開2015-162645(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178296(WO,A1)
【文献】特開2015-220238(JP,A)
【文献】国際公開第2019/038906(WO,A1)
【文献】特開2010-219420(JP,A)
【文献】特開2013-051295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28
H01L 25/07
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子の上面と離間された延設部分を有し、前記半導体素子と接合された板状部材であるリード電極端子と、
前記リード電極端子を封止する第1封止部材と、
前記延設部分の延設方向の端部と前記半導体素子との間に設けられ、前記端部下の前記第1封止部材と界面を有する介在部材と
を備え、
前記界面は、前記延設部分の前記端部の外側から内側に跨って設けられている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記介在部材は、前記半導体素子を封止する第2封止部材を含む、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置であって、
前記第1封止部材の物性値と前記第2封止部材の物性値とが互いに異なる、半導体装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の半導体装置であって、
前記第2封止部材の材料はシリコーンゲルを含む、半導体装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の半導体装置であって、
前記第2封止部材はモールド成形樹脂を含む、半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記介在部材は、応力緩衝用フレームを含み、
前記第1封止部材は、前記半導体素子及び前記応力緩衝用フレームをさらに封止する、半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記介在部材は、前記半導体素子の前記上面に設けられた緩衝層を含み、
前記第1封止部材は、前記半導体素子及び前記緩衝層をさらに封止する、半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記介在部材は、前記半導体素子と前記リード電極端子とを接合する接合部材を含み、
前記第1封止部材は、前記半導体素子及び前記接合部材をさらに封止する、半導体装置。
【請求項9】
半導体素子と、
前記半導体素子の上面と離間された延設部分を有し、前記半導体素子と接合されたリード電極端子と、
前記半導体素子及び前記リード電極端子を封止する封止部材と
を備え、
前記半導体素子と前記延設部分との間の距離が、前記延設部分の厚さ以上であり、
前記半導体素子のうち前記延設部分の延設方向の端部直下の領域は、非通電領域である、半導体装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記延設部分の延設方向の端部の上面側に突起が設けられた、半導体装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記延設部分の延設方向は、前記半導体素子の前記上面に対して傾斜している、半導体装置。
【請求項12】
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記半導体素子のうち前記延設部分の延設方向の端部直下の領域は、非通電領域である、半導体装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記半導体素子の材料は、ワイドバンドギャップ半導体を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケース型の半導体装置の構造としては、半導体素子と、当該半導体素子と電気的に接続されたリード電極端子とを封止樹脂で封止する構造が一般的である。このような半導体装置において、半導体素子の動作及び非動作の繰り返しによって冷熱サイクルが生じると、リード電極端子及び封止樹脂の線膨張係数の差によって、応力が封止樹脂に生じる。この応力によって、リード電極端子の端部から進展して半導体素子に到達するクラックが封止樹脂に生じることがある。
【0003】
このような応力を低減するために、リード電極端子の線膨張係数に近い線膨張係数を有する材料を封止樹脂に用いる技術、及び、リード電極端子の形状を工夫する技術などが提案されている。例えば特許文献1には、リード電極端子の膨張収縮に伴う封止樹脂の応力を低減するために、特殊な形状を有するリード電極端子を用いる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-082048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷熱サイクルの温度差が大きい場合などには、半導体素子に到達するクラックが依然として発生し、半導体装置の信頼性が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、半導体素子に到達するクラックを抑制可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子の上面と離間された延設部分を有し、前記半導体素子と接合された板状部材であるリード電極端子と、前記リード電極端子を封止する第1封止部材と、前記延設部分の延設方向の端部と前記半導体素子との間に設けられ、前記端部下の前記第1封止部材と界面を有する介在部材とを備え、前記界面は、前記延設部分の前記端部の外側から内側に跨って設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、リード電極端子の延設方向の端部と半導体素子との間に設けられ、端部下の第1封止部材と界面を有する介在部材を備える。このような構成によれば、半導体素子に到達するクラックを抑制することができる。
【0009】
本開示の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図2】関連半導体装置の構成を示す断面図である。
図3】関連半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図4】実施の形態1に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図5】実施の形態2に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図6】実施の形態3に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図7】実施の形態3に係る半導体装置の一部の構成を示す上面図である。
図8】実施の形態4に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図9】実施の形態5に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図10】実施の形態6に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図11】実施の形態7に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図12】実施の形態8に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
図13】実施の形態9に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の各実施の形態で説明される特徴は例示であり、すべての特徴は必ずしも必須ではない。また、以下に示される説明では、複数の実施の形態において同様の構成要素には同じまたは類似する符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「表」または「裏」などの特定の位置及び方向は、実際の実施時の位置及び方向とは必ず一致しなくてもよい。
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す断面図である。図1の半導体装置は、電気自動車または電車などのモーターを制御するインバータまたはコンバータであってもよいし、これら以外の機器であってもよい。
【0013】
図1の半導体装置は、絶縁基板1と、フィン2と、半導体素子3と、リード電極端子4と、信号端子5と、ケース6と、第1封止部材である封止樹脂7と、第2封止部材である封止樹脂8aとを備える。
【0014】
絶縁基板1の下面には導電パターン1aが設けられ、絶縁基板1の上面には導電パターン1bが設けられている。フィン2は、はんだ及びろう材などの接合部材11aによって導電パターン1aと接合されている。
【0015】
半導体素子3は、はんだ及びろう材などの接合部材11bによって導電パターン1bと接合されている。半導体素子3は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)及びMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体スイッチング素子、または、PND(PN junction Diode)及びSBD(Schottky Barrier Diode)などのダイオードを含む。本実施の形態1では、半導体素子3の材料は、一般的な珪素(Si)であるが、後述するようにこれに限ったものではない。また本実施の形態1では、半導体素子3の数は2つであるが、1つ以上であればよい。
【0016】
リード電極端子4は、例えば銅などの金属材料からなる板状部材であり、半導体素子3と接合されている。リード電極端子4は、半導体素子3の上面に沿って延設する延設部分を有しており、当該延設部分は半導体素子3の上面と離間されている。なお本実施の形態1では、リード電極端子4の延設部分が半導体素子3と接合されているが、これに限ったものではなく、例えばリード電極端子4が下側に突出する突出部分を有する場合などには、当該突出部分が半導体素子3と接合されてもよい。また本実施の形態1では、リード電極端子4は、はんだ及びろう材などの接合部材11cによって半導体素子3と接合されているが、例えば半導体素子3と直接接合されてもよい。
【0017】
信号端子5は、ワイヤ12によって半導体素子3と電気的に接続されている。
【0018】
ケース6は、例えば樹脂などからなるインサートケースであり、フィン2上に設けられて半導体素子3の周囲などを囲む。ケース6は、リード電極端子4の延設部分の延設方向の端部4aと、リード電極端子4の端部である電極端子4bとを露出した状態で、リード電極端子4を固定している。同様に、ケース6は、信号端子5のワイヤ12と接続された端部と、それとは別の端部とを露出した状態で、信号端子5を固定している。
【0019】
封止樹脂7は、ケース6に囲まれた空間の上部に設けられ、リード電極端子4を封止する。封止樹脂8aは、ケース6に囲まれた空間の下部に設けられ、半導体素子3を封止する。なお図1の例では、封止樹脂8aは、絶縁基板1なども封止する。封止樹脂7及び封止樹脂8aのそれぞれは、例えばエポキシ樹脂などから構成される。
【0020】
ここで、封止樹脂8aの少なくとも一部は、リード電極端子4の端部4aと半導体素子3との間に設けられ、端部4a下の封止樹脂7と界面を有する介在部材として機能する。このような界面は、例えば、封止樹脂7と封止樹脂8aとが同じ樹脂で同じ製造条件で別々に形成されることによって形成される。なお、封止樹脂8aを一度形成した後に、封止樹脂7を形成した場合には、封止樹脂8aの線膨張係数は、封止樹脂7の線膨張係数よりも大きくなるが、封止樹脂7の線膨張係数と封止樹脂8aの線膨張係数とは同じであってもよい。
【0021】
図2は、本実施の形態1に係る半導体装置と関連する半導体装置(以下、「関連半導体装置」と記す)の構成を示す断面図である。関連半導体装置は、封止樹脂7及び封止樹脂8aの代わりに、端部4a下に界面を有さない封止樹脂16を備えている。
【0022】
この関連半導体装置において、半導体素子3の動作及び非動作の繰り返しによって冷熱サイクルが生じると、リード電極端子4及び封止樹脂16の線膨張係数の差によって、図3に示すように、端部4aと封止樹脂16との間に剥離17が生じる。さらに半導体素子3の動作及び非動作の繰り返しによってさらに冷熱サイクルが生じると、端部4aに接する封止樹脂16に応力が集中して、端部4aから半導体素子3に達するクラック18が封止樹脂16に発生することがある。この場合、半導体装置の信頼性が低下するという問題が生じる。
【0023】
このような問題を解決するための技術が様々に提案されている。しかしながら、近年、半導体装置の最大使用温度を高める要求によって、半導体装置の動作温度または半導体装置の周囲温度の変化が大きくなり、冷熱サイクルの温度差が大きくなり、樹脂に発生する応力が大きくなっている。このため、従来の技術を用いても、クラック18の発生及びクラック18の進展速度の増加などが生じるという問題があった。
【0024】
<実施の形態1のまとめ>
本実施の形態1では、封止樹脂8aが、リード電極端子4の端部4aと半導体素子3との間に設けられ、端部4a下の封止樹脂7と界面を有する介在部材として機能する。これにより、図4に示すように、リード電極端子4の端部4aから鉛直方向の半導体素子3に進展するクラック18が封止樹脂7に発生しても、封止樹脂7と封止樹脂8aとの間の界面によってクラック18の進展方向が界面方向(つまり水平方向)に変化する。このため、半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができるため、冷熱サイクル耐量などの半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0025】
<実施の形態1の変形例1>
実施の形態1において、封止樹脂7の物性値と封止樹脂8aの物性値とは互いに異なってもよい。なお、物性値は、例えば線膨張係数、及び、機械的強度などである。
【0026】
物性値が線膨張係数である場合、封止樹脂7の線膨張係数とリード電極端子4の線膨張係数との差は、封止樹脂8aの線膨張係数とリード電極端子4の線膨張係数との差よりも小さくてもよい。つまり、封止樹脂7の線膨張係数が、リード電極端子4の線膨張係数に近くてもよい。このような構成によれば、リード電極端子4の端部4aと隣接する封止樹脂7でのクラック18の発生を抑制することができる。
【0027】
また、封止樹脂8aの線膨張係数と絶縁基板1の線膨張係数との差は、封止樹脂7の線膨張係数と絶縁基板1の線膨張係数との差よりも小さくてもよい。つまり封止樹脂8aの線膨張係数が、絶縁基板1の線膨張係数に近くてもよい。このような構成によれば、半導体装置が経時的な冷熱サイクルによって反る変形、及び、絶縁基板1と隣接する封止樹脂8aでのクラック18の発生を抑制することができる。
【0028】
物性値が機械的強度である場合、封止樹脂8aの機械的強度は、封止樹脂7の機械的強度よりも大きくてもよい。このような構成によれば、半導体素子3に到達するクラック18が封止樹脂8aに発生することを抑制することができる。
【0029】
<実施の形態1の変形例2>
実施の形態1における封止樹脂8aの材料はシリコーンゲルであってもよい。このような構成によれば、リード電極端子4の端部4aから進展するクラック18が封止樹脂7に発生しても、シリコーンゲルにより半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができる。このため、冷熱サイクル耐量などの半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0030】
<実施の形態2>
図5は、本実施の形態2に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。本実施の形態2では、実施の形態1で説明した封止樹脂8aが、モールド成形によって形成されたモールド成形樹脂8bとなっている。なお、図5には、モールド成形によって形成された痕跡として、モールド成形樹脂8bが、絶縁基板1を封止せずに、半導体素子3及び接合部材11bの外周に沿って設けられていることが示されている。モールド成形樹脂8bのようにモールド成形によって形成された樹脂は、一般的に高硬度樹脂となる。
【0031】
<実施の形態2のまとめ>
本実施の形態2では、封止樹脂8aがモールド成形樹脂8bである。このような構成によれば、実施の形態1と同様に、封止樹脂7とモールド成形樹脂8bとの間の界面によってクラック18の進展方向が界面方向に変化するため、半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができる。
【0032】
また、モールド成形樹脂8bは高硬度樹脂であるため、半導体素子3に到達するクラック18をさらに抑制することができる。また、モールド成形樹脂8bは絶縁基板1を封止しないため、絶縁基板1の熱膨張によってモールド成形樹脂8bにクラック18が発生することを抑制することができる。
【0033】
なお、本実施の形態2の構成と、これまでに説明した実施の形態1及び変形例1,2の少なくともいずれかの構成とを組み合わせてもよい。
【0034】
<実施の形態3>
図6は、本実施の形態3に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。本実施の形態3の構成は、実施の形態1において、封止樹脂8aを、応力緩衝用フレーム8cに代えた構成と同様である。
【0035】
応力緩衝用フレーム8cは、リード電極端子4及び半導体素子3と離間して設けられた樹脂などからなる板状部材である。本実施の形態3では、応力緩衝用フレーム8cが、リード電極端子4の端部4aと半導体素子3との間に設けられ、端部4a下の封止樹脂7と界面を有する介在部材として機能する。封止樹脂7は、リード電極端子4だけでなく、半導体素子3及び応力緩衝用フレーム8cを封止している。
【0036】
図7は、リード電極端子4及び応力緩衝用フレーム8cを示す上面図である。応力緩衝用フレーム8cには、図7の穴8c1を有する格子構造などのように、製造時に液化された封止樹脂7が通過しやすい構造が設けられることが好ましい。このような構成によれば、製造時に液化された封止樹脂7が、図6の応力緩衝用フレーム8cの上側からその下側に到達し易くなり、封止樹脂7と他の構成要素との間の隙間を低減することができる。また、応力緩衝用フレーム8cの線部分8c2の平面視での外郭線の内側に、リード電極端子4の端部4aが位置することが好ましい。このような構成によれば、半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができる。
【0037】
<実施の形態3のまとめ>
本実施の形態3では、モールド成形樹脂8bが、実施の形態1で説明した封止樹脂8aと同様に介在部材として機能する。このような構成によれば、実施の形態1と同様に、封止樹脂7と応力緩衝用フレーム8cとの間の界面によってクラック18の進展方向が界面方向に変化するため、半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができる。
【0038】
なお、応力緩衝用フレーム8cはケース6と一体化されてもよい。このような構成によれば、半導体装置が経時的な冷熱サイクルによって反る変形を抑制することができる。そのような構成においては、応力緩衝用フレーム8cに、封止樹脂7の線膨張係数と近い樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
なお、本実施の形態3の構成と、これまでに説明した実施の形態1,2及び変形例1,2の少なくともいずれかの構成とを組み合わせてもよい。
【0040】
<実施の形態4>
図8は、本実施の形態4に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。本実施の形態4に係る半導体装置は、実施の形態1で説明した封止樹脂8aなどの介在部材を備えない。一方、本実施の形態4では、半導体素子3とリード電極端子4の延設部分との間の距離Waが、延設部分の厚さWb以上となっており、封止樹脂7が、半導体素子3及びリード電極端子4などを封止している。
【0041】
<実施の形態4のまとめ>
本実施の形態4では、半導体素子3とリード電極端子4の延設部分との間の距離Waが比較的大きいため、リード電極端子4の端部4aから進展するクラック18が半導体素子3に到達するまでの時間を長くすることができる。これにより、半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができるため、冷熱サイクル耐量などの半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0042】
なお、本実施の形態4の構成と、これまでに説明した実施の形態1~3及び変形例1,2の少なくともいずれかの構成とを組み合わせてもよい。
【0043】
<実施の形態5>
図9は、本実施の形態5に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。本実施の形態5の構成は、実施の形態1においてリード電極端子4の延設方向の端部4aの上面側に、突起4cが設けられた構成と同様である。このようなリード電極端子4は、例えば、半導体素子3側にダレ面を有し、半導体素子3と逆側にカエリ面を有するように、リード電極端子4形成時の打ち抜きを設定することで形成することができる。
【0044】
<実施の形態5のまとめ>
本実施の形態5では、冷熱サイクルによってクラック18が形成される場合に、突起4cによって半導体素子3と逆側にクラック18の進展を促進させることができる。これにより、半導体素子3に到達するクラック18の発生を抑制することができるため、冷熱サイクル耐量などの半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0045】
なお、本実施の形態5の構成と、これまでに説明した実施の形態1~4及び変形例1,2の少なくともいずれかの構成とを組み合わせてもよい。
【0046】
<実施の形態6>
図10は、本実施の形態6に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。本実施の形態6の構成は、実施の形態1においてリード電極端子4の延設部分の延設方向が、半導体素子3の上面に対して傾斜した構成と同様である。つまり、リード電極端子4の延設部分の延設方向と、半導体素子3の面内方向との間の角度が0度よりも大きくなっている。
【0047】
<実施の形態6のまとめ>
本実施の形態6では、リード電極端子4の延設部分の延設方向が、半導体素子3の上面に対して傾斜しているため、半導体素子3と端部4aとの間の距離が大きくなっている。例えば、リード電極端子4が5°傾くと、半導体素子3と端部4aとの間の距離が8.7%増加する。この結果、リード電極端子4の端部4aから進展するクラック18が半導体素子3に到達するまでの時間を長くすることができる。これにより、半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができるため、冷熱サイクル耐量などの半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0048】
なお、本実施の形態6の構成と、これまでに説明した実施の形態1~5及び変形例1,2の少なくともいずれかの構成とを組み合わせてもよい。
【0049】
<実施の形態7>
図11は、本実施の形態7に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。本実施の形態7の構成は、実施の形態1において、封止樹脂8aを、緩衝層8dに代えた構成と同様である。
【0050】
緩衝層8dは、半導体素子3の上面に設けられている。本実施の形態7では、緩衝層8dが、リード電極端子4の端部4aと半導体素子3との間に設けられ、端部4a下の封止樹脂7と界面を有する介在部材として機能する。封止樹脂7は、リード電極端子4だけでなく、半導体素子3及び緩衝層8dを封止している。
【0051】
<実施の形態7のまとめ>
本実施の形態7では、緩衝層8dが、実施の形態1で説明した封止樹脂8aと同様に介在部材として機能する。このような構成によれば、実施の形態1と同様に、封止樹脂7と緩衝層8dとの間の界面によってクラック18の進展方向が界面方向に変化するため、半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができる。
【0052】
なお、緩衝層8dには、例えばポリイミド材料など、封止樹脂7よりも硬度(例えばビッカース硬度)が低い材料から構成されることが好ましい。このような構成によれば、緩衝層8dは封止樹脂7からの応力を吸収することができるので、冷熱サイクル耐量などの半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0053】
なお、本実施の形態7の構成と、これまでに説明した実施の形態1~6及び変形例1,2の少なくともいずれかの構成とを組み合わせてもよい。
【0054】
<実施の形態8>
図12は、本実施の形態8に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。本実施の形態8の構成は、実施の形態1の構成において、封止樹脂8aが削除されている。
【0055】
その一方で、本実施の形態8では、半導体素子3とリード電極端子4とを接合する接合部材11cのテーパ角が比較的大きくなっている。これにより本実施の形態8では、接合部材11cの少なくとも一部が、リード電極端子4の端部4aと半導体素子3との間に設けられ、端部4a下の封止樹脂7と界面を有する介在部材として機能する。封止樹脂7は、リード電極端子4だけでなく、半導体素子3及び接合部材11cを封止している。
【0056】
<実施の形態8のまとめ>
本実施の形態8では、接合部材11cが、実施の形態1で説明した封止樹脂8aと同様に介在部材として機能する。このような構成によれば、封止樹脂7と接合部材11cとの間の界面によってクラック18の進展方向が界面方向に変化し、クラック18が半導体素子3に到達するまでの距離が長くなるので、半導体素子3に到達するクラック18を抑制することができる。
【0057】
なお、本実施の形態8の構成と、これまでに説明した実施の形態1~7及び変形例1,2の少なくともいずれかの構成とを組み合わせてもよい。
【0058】
<実施の形態9>
図13は、本実施の形態9に係る半導体装置の一部の構成を示す断面図である。本実施の形態9の構成は、実施の形態4(図8参照)において、半導体素子3のうち端部4a直下の領域3aが非通電領域である構成と同様である。非通電領域は、クラック18が到達しても半導体素子3が正常な動作を維持可能な領域であり、例えば温度センサが設けられた領域、及び、絶縁領域などである。
【0059】
<実施の形態9のまとめ>
本実施の形態9では、半導体素子3のうち端部4a直下の領域3aが非通電領域であるため、クラック18が半導体素子3に到達したとしても、半導体素子3は正常な動作を行うことができる。なお、半導体素子3は、クラック18の到達などによって領域3aの不具合を検出した場合に、退避動作を行うように構成されてもよい。このような構成によれば、領域3aの不具合によって意図しない半導体素子3の急停止が生じることを抑制することができる。
【0060】
なお、本実施の形態9の構成と、これまでに説明した実施の形態1~8及び変形例1,2の少なくともいずれかの構成とを組み合わせてもよい。
【0061】
<実施の形態1~9の変形例>
以上で説明した実施の形態1~9及び変形例1,2のいずれかにおいて、半導体素子3の材料はワイドバンドギャップ半導体であってもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、または、ダイヤモンドなどである。
【0062】
ワイドバンドギャップ半導体からなる半導体素子3は、珪素からなる半導体素子3に比べて硬度(例えばビッカース硬度)が高い。例えば、炭化珪素素の硬度は約23GPaであり、珪素の硬度は約10GPaであり、前者の硬度は後者の硬度の2.3倍程度である。このため、半導体素子3の材料をワイドバンドギャップ半導体とすることにより、クラック18の進展に対する応力耐性を高めることができる。
【0063】
なお、各実施の形態及び各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態及び各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0064】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、限定的なものではない。例示されていない無数の変形例が、想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0065】
3 半導体素子、3a 領域、4 リード電極端子、4a 端部、4c 突起、7,8a 封止樹脂、8b モールド成形樹脂、8c 応力緩衝用フレーム、8d 緩衝層、11c 接合部材。
図1
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図13