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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20241216BHJP
   F16H 57/03 20120101ALI20241216BHJP
   F16H 57/028 20120101ALI20241216BHJP
【FI】
F16H61/00
F16H57/03
F16H57/028
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024509234
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011618
(87)【国際公開番号】W WO2023182455
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022047615
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝則
(72)【発明者】
【氏名】湯川 洋久
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 智雄
(72)【発明者】
【氏名】児島 謙治
(72)【発明者】
【氏名】東山 晃
(72)【発明者】
【氏名】湯本 泰章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 務
(72)【発明者】
【氏名】沼田 和也
(72)【発明者】
【氏名】川原 淳之介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和慶
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135155(JP,A)
【文献】国際公開第2021/015205(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
F16H 57/03
F16H 57/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構を収容するケースと、
前記動力伝達機構に供給する油圧を制御すると共に、前記ケース内で縦置きされたコントロールバルブと、
前記コントロールバルブにオイルを供給する第1ポンプおよび第2ポンプと、を有する動力伝達装置であって、
前記ケースは、
前記動力伝達機構の回転軸を支持する第1支持壁と、
前記コントロールバルブを支持すると共に、前記回転軸に沿う向きで配置された第2支持壁と、
前記第1支持壁の一方側に位置する第1室と、
前記第2支持壁を間に挟んで前記第1室に隣接する第2室と、
前記第2支持壁から前記回転軸に沿って、前記第1支持壁の他方側に延びる第3支持壁と、を有し、
前記第1ポンプは、前記第1室内で前記第1支持壁に取り付けられており、
前記第2ポンプは、前記第2室内で前記第3支持壁に取り付けられている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1支持壁の他方側に第3室が位置しており、
前記第3支持壁は、前記第3室の側方に位置しており、
前記第3支持壁は、前記第2支持壁と共に前記第2室を形成し、
前記回転軸の径方向から見て、前記第2室は、前記第1室および前記第3室と重なる位置関係で設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1支持壁に付設されたストレーナと、
前記ストレーナと、前記第2ポンプとを接続する第2ポンプ用油路と、を有し、
前記第2ポンプ用油路は、
前記第1支持壁内を直線状に延びる第1油路と、
前記第3支持壁内を直線状に延びると共に、前記第1油路に連通する第2油路と、を有し、
前記第1油路は、前記第2室に開口する止まり穴であり、
前記第2油路は、前記第3支持壁の端部に開口する止まり穴であり、
前記第1油路の基端の開口と、前記第2油路の基端の開口が、それぞれプラグで封止されている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1ポンプは、前記第1室内の前記第2支持壁の近傍で、前記第1支持壁に支持されている、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記第3支持壁は、前記第2油路が設けられた領域の厚みが、他の領域よりも厚く形成されている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記第3支持壁は、前記第2油路が設けられた領域の厚みが、他の領域よりも厚く形成されている、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項において、
前記第2ポンプと前記コントロールバルブとを繋ぐ第3油路を有し、
前記第3支持壁では、前記第2油路と前記第3油路が上下に並んでおり、
前記第3支持壁は、前記第3油路が設けられた領域の厚みも厚く形成されており、
前記第3支持壁では、前記第2油路の領域の膨出方向が、前記第3支持壁の一方側であり、
前記第3油路の領域の膨出方向が、前記第3支持壁の他方側である、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項において、
前記第3室の外周を囲む周壁部と、
前記第3支持壁から、前記周壁部側に膨出したリブと、を有し、
前記周壁部は、前記第1支持壁に設けられていると共に、前記第3支持壁との間に隙間を空けて設けられており、
前記リブは、前記第3支持壁と前記第2支持壁に跨がって設けられている、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項において、
前記リブは、前記第1支持壁に近づくにつれて、前記第3支持壁からの膨出幅が広くなる形状で形成されている、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項1から請求項の何れか一項において、
前記動力伝達機構の回転軸方向から見て、前記第1ポンプと前記第2ポンプは重ならない位置関係で設けられている、動力伝達装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用の駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/107979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この駆動装置では、機械式オイルポンプと電動オイルポンプが、ストレーナを共用している。ストレーナは、機械式オイルポンプに片持ち支持された状態で設けられている。
電動オイルポンプと、機械式オイルポンプは、ストレーナを共用できるようにするために、同じ壁部の一方の側面と他方の側面に取り付けられている。
【0005】
機械式オイルポンプと電動オイルポンプは共に起震源となる。そのため、振動を抑えるためには、壁部の厚みを厚くして、機械式オイルポンプと電動オイルポンプの支持安定性を高める必要がある。
機械式オイルポンプと電動オイルポンプが同じ壁部に取り付けられている場合には、壁部の厚みをより厚くする必要がある。しかし、壁部の厚みが厚くなると駆動装置が、壁部の厚みを厚くした分だけ軸方向の寸法が大型化する。
そのため、この種の2つのポンプを備える駆動装置(動力伝達装置)において、大型化を抑制しつつ、2つのポンプの支持安定性を高めることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、
動力伝達機構を収容するケースと、
前記動力伝達機構に供給する油圧を制御すると共に、前記ケース内で縦置きされたコントロールバルブと、
前記コントロールバルブにオイルを供給する第1ポンプおよび第2ポンプと、を有する動力伝達装置であって、
前記ケースは、
前記動力伝達機構の回転軸を支持する第1支持壁と、
前記コントロールバルブを支持すると共に、前記回転軸に沿う向きで配置された第2支持壁と、
前記第1支持壁の一方側に位置する第1室と、
前記第2支持壁を間に挟んで前記第1室に隣接する第2室と、
前記第2支持壁から前記回転軸に沿って、前記第1支持壁の他方側に延びる第3支持壁と、を有し、
前記第1ポンプは、前記第1室内で前記第1支持壁に取り付けられており、
前記第2ポンプは、前記第2室内で前記第3支持壁に取り付けられている、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、大型化を抑制しつつ、ふたつのポンプの支持安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、ケースを第2カバー側から見た図である。
図3図3は、ケースを第3カバー側から見た図である。
図4図4は、図2におけるA-A線に沿ってハウジングを切断した断面を模式的に示した図である。
図5図5は、図4におけるA-A線に沿ってハウジングを切断した断面を模式的に示した図である。
図6図6は、ストレーナをアッパケース側の上方から見た斜視図である。
図7図7は、隔壁部におけるメカオイルポンプの支持構造を説明する図である。
図8図8は、収容部を車両前方側から見た図である。
図9図9は、図8におけるA-A線に沿ってハウジングを切断した断面を模式的に示した図である。
図10図10は、図9におけるA-A線に沿ってハウジングを切断した断面を模式的に示した図である。
図11図11は、図9におけるB-B線に沿ってハウジングを切断した断面を模式的に示した図である。
図12図12は、図9におけるC-C線に沿ってハウジングを切断した断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0010】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0013】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0014】
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0015】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。
【0016】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0017】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁(弁体)が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0018】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0019】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0020】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0021】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
【0023】
図1に示すように、動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
ハウジングHSの内部には、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCV、ストレーナ10などが収容される。
ここで、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5が、発明における動力伝達機構の構成要素である。
【0024】
動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0025】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0026】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0027】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0028】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3上で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4上で同軸に配置される。動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも表記する。
【0029】
図2は、ケース6を、第2カバー8側から見た状態を示す模式図である。
図3は、ケース6を、第1カバー7側から見た状態を示す模式図である。
なお、図2の拡大図では、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの図示を省略して、隔壁部62に設けた接続部625、627周りを示している。さらに、図2の拡大図と図3では、開口部620の位置を判り易くするために、開口部620の領域に交差したハッチングを付して示している。
【0030】
図2に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。
図1に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第3室S3である。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止されて、閉じられた第1室S1が形成される。第3室S3側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止されて、閉じられた第3室S3が形成される。
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第3室S3には、バリエータ3が収容される。
【0031】
ケース6では、周壁部61の車両前方側の外周に、第2室S2を形成する収容部68が付設されている。収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。収容部68の開口が第3カバー9で封止されて、閉じられた第2室S2が形成される。
第2室S2には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが設けられている。
【0032】
図1に示すように、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路(図示せず)が形成されている。油圧制御回路には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁SP(スプール弁)が設けられている。
【0033】
第2室S2内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向に沿わせた向きで、縦置きされている。
これにより、コントロールバルブ内のスプール弁の進退移動方向が、水平線方向に沿う向きで配置される。さらに、コントロールバルブ内のスプール弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置される。よって、スプール弁の進退移動が阻害されないようにしつつ、第2室S2が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0034】
図2に示すように、ケース6の隔壁部62は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~回転軸X4)に対して略直交する向きで設けられている。
【0035】
隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を、間隔をあけて囲む周壁部641とが、設けられている。図2において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(図1における第2カバー8側)に突出している。
【0036】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容する円筒状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(図1参照)が回転可能に支持される。
【0037】
図2に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
貫通孔622を囲む周壁部632では、セカンダリプーリ32の出力軸33(図1参照)が回転可能に支持される。
【0038】
図2に示すように、支持穴623は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X3は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方、かつ回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
支持穴623を囲む周壁部633では、アイドラ軸44(図1参照)が回転可能に支持される。
【0039】
図2に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め下方、回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方、そして、回転軸X3から見て車両前方側の斜め下方に位置している。
【0040】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(図1参照)が、回転可能に支持されている。貫通孔624を、デフケース50から延びる駆動軸55Aが貫通する。
図1に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4周りに回転する。
【0041】
このように、隔壁部62は、プライマリプーリ31の入力軸34、セカンダリプーリ32の出力軸33、アイドラ軸44、デフケース50および駆動軸55Aの支持壁として機能している。
【0042】
ケース6では、ファイナルギア45よりも車両前方側の領域であって、前記した弧状の周壁部641の下側の領域が、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの収容部67となっている。
収容部67は、ケース6(ハウジングHS)内の下部に位置している。そのため、収容部67には、動力伝達機構の構成要素の駆動や冷却に用いられるオイルOLが貯留される。
【0043】
図4に示すように、収容部67は、開口を第1室S1側(図4における右側)に向けた有底の空間である。
ケース6の下部において収容部67は、前後進切替機構2が収容される領域651の下方を回転軸X1方向に横切る範囲に形成されている。
【0044】
隔壁部62の下部には、隔壁部62を回転軸X1方向に貫通する開口部620が形成されている。ケース6内の第1室S1と第3室S3は、この開口部620を介して互いに連通している。
【0045】
図2に示すように、回転軸X1方向から見て開口部620は、接線Lmと重なる位置に設けられている。ここで、接線Lmは、前後進切替機構2(図示せず)を囲む弧状の周壁部641の外周と、ファイナルギア45の外周とを結ぶ接線である。
開口部620は、周壁部641とファイナルギア45との間の領域から、直線Lnに沿って、接線Lmを上方から下方に横切ってケース6の下部まで及ぶ範囲に形成される。ここで、直線Lnは、周壁部641とファイナルギア45との間を通り、接線Lmに直交する直線である。
動力伝達装置1では、周壁部641とファイナルギア45との間の領域が使用されないデッドスペースとなる傾向が高いが、デッドスペースを有効に利用して、開口部620を設けている。
【0046】
図4に示すように、収容部67では、周壁部641に隣接する位置に、ストレーナ10の接続部625が設けられている。接続部625は、接続口625aを第2カバー8側(第1室S1側)に向けた筒状の部位である。
図2に示すように、回転軸X1方向から見て接続部625は、下部側の一部の領域が、開口部620と重なる位置関係で設けられている。回転軸X1方向から見て接続部625の下部側の一部の領域は、開口部620内に突出している。
【0047】
図4に示すように、接続部625の奥側に油路626が開口している。
図2に示すように油路626は、隔壁部62内を開口部620から離れる方向に直線状に延びている。油路626は、ケース6内の油路281(図10参照)を介して、収容部68内に収容された電動オイルポンプEOPに接続されている。
【0048】
図2に示すように、収容部67では、油路626の下側に、メカオイルポンプMOPとの接続部627が設けられている。接続部627の接続口627aは、前記した接続部625の接続口625aと同一方向を向いて開口している。接続部627の接続口627aは、隔壁部62内に設けた油路628に連絡している。
油路628は、前記した油路626の下側を、油路626に沿って収容部68側(図中、右側)に延びている。油路628は、ケース6内の油路を介して、収容部68内に設置されたコントロールバルブCV(図12参照)に連絡している。
【0049】
図3に示すように、ケース6の第1カバー7側の面では、第3室S3を囲む周壁部61の内側に隔壁部62が位置しており、隔壁部62の下部に、開口部620が開口している。さらに、周壁部61の内側では、隔壁部62の上側で、貫通孔621、622が開口している。
周壁部61の内側では、鉛直線VL方向における上側の領域に、バリエータ3のプライマリプーリ31とセカンダリプーリ32とが位置している。
周壁部61は、プライマリプーリ31が設けられた領域の下部側が、ケース6の下部側に大きく膨らんでおり、この膨らんだ領域の最下部に開口部620が位置している。
【0050】
動力伝達装置1の駆動時には、図示しない油路を介して供給されるオイルOLが、第3室S3内のバリエータ3のベルト30に向けて噴射されて、バリエータ3のベルト30を潤滑する。
ベルト30を潤滑したオイルOLは、自重により、第3室S3内を開口部620が設けられた下部に向けて移動して、開口部620を通って、ストレーナ10が配置された第1室S1の下部に戻されるようになっている。
【0051】
図4は、図2におけるA-A線に沿ってハウジングHSを切断した断面を模式的に示した図である。この図4では、ストレーナ10と隔壁部62との接続部周りが示されている。
図5は、図4におけるA-A線に沿ってハウジングHSを切断した断面を模式的に示した図である。この図5では、収容部67におけるストレーナ10とメカオイルポンプMOPの配置が模式的に示されている。
図6は、ストレーナ10をアッパケース11側の上方から見た斜視図である。
【0052】
図4および図5に示すように、ストレーナ10は、アッパケース11とロアケース12との間に形成した空間S10内に、フィルタ19を配置した基本構成を有している。
【0053】
図6に示すように、アッパケース11の一側部11aには、第1接続部15が設けられている。第1接続部15は、内部にオイルの排出路151を有する筒状部材である、第1接続部15は、アッパケース11の一側部11aから斜め上方に向けて突出している。
第1接続部15の根元側には、第2接続部16が設けられている。図4に示すように、第2接続部16は、内部にオイルOLの排出路161を有する有底筒状を成している。
【0054】
第1接続部15と第2接続部16は、排出路151、161の開口方向を直交させた向きで設けられている。
第2接続部16内の排出路161と、第1接続部15内の排出路151は、ストレーナ10の内部の空間S10に開口している。
【0055】
図6に示すように、アッパケース11では、第2接続部16内の排出路161の延長上に位置する領域に、ロアケース12側に窪んだ凹部17(切欠部)が設けられている。そのため、図4に示すように、ストレーナ10と、隔壁部62側の接続部625とを接続するための筒状部材130を、ストレーナ10の側方から、アッパケース11に干渉させることなく、排出路161内に挿入できるようになっている。
図2に示すように、ストレーナ10における底壁部613との対向部には、吸込口13が設けられている。ここで、底壁部613は、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向で、ケース6の周壁部61における下部に配置された領域である。
【0056】
図5に示すように、ストレーナ10は、第1接続部15の先端15a側を、メカオイルポンプMOP側の接続口120に挿入して、メカオイルポンプMOPに組み付けられる。メカオイルポンプMOPは、隔壁部62に組み付けられるようになっており、ストレーナ10は、メカオイルポンプMOPを介して隔壁部62に支持される。
【0057】
図7は、隔壁部62におけるメカオイルポンプMOPの支持構造を説明する図である。この図7は、図5におけるA-A線に沿って、メカオイルポンプMOPを切断した断面を模式的に示している。
図7に示すように、メカオイルポンプMOPにおける隔壁部62との対向部には、位置決め用の突起150と、オイルOLの排出口140とが設けられている。
隔壁部62では、メカオイルポンプMOPとの対向面に、挿入孔630と、接続部627が開口している。
【0058】
メカオイルポンプMOPは、隔壁部62の挿入孔630に、突起150を挿入することで、隔壁部62上の所定位置に位置決めされる。この状態において、メカオイルポンプMOPは、図示しないボルトにより、隔壁部62に固定される。
メカオイルポンプMOPが隔壁部62に固定されると、メカオイルポンプMOPの排出口140が、隔壁部62側の接続部627に対向する位置に配置されて、排出口140と、接続部627とが連通する。接続部627は、隔壁部62内の油路628に連絡している。そのため、メカオイルポンプMOPの排出口140から吐出されるオイルOLが、接続部627を通って、油路628内に供給される。油路628に供給されたオイルOLは、収容部68内のコントロールバルブCVに供給される(図12参照)。
【0059】
ここで、メカオイルポンプMOPの隔壁部62への組み付け方向(図7における左右方向)は、ストレーナ10の第2接続部16の隔壁部62への組み付け方向(図4における左右方向)と同じである。よって、メカオイルポンプMOPを隔壁部62に取り付けると、ほぼ同時期に、ストレーナ10の第2接続部16が、筒状部材130を介して隔壁部62側の接続部625に接続される。
この状態において、ストレーナ10は、第1接続部15がメカオイルポンプMOPに支持されていると共に、第2接続部16が、第2接続部16に挿入された筒状部材130を介して隔壁部62に付設される。
【0060】
図8は、収容部68を車両前方側から見た図である。この図8では、車両前方側から見た第2室S2を、ハウジングHSの他の構成要素(ケース6、第1カバー7、第2カバー8)と共に模式的に示している。また、紙面手前側に位置する接合部683の領域に交差したハッチングを付して示している。コントロールバルブCVの外観を模式的に示している。
なお、図8の拡大図は、電動オイルポンプEOPの紙面奥側に位置する収容室69(第3支持壁)の部分を拡大して模式的に示した図である。
【0061】
図8に示すように、車両前方側から見て収容部68は、第2室S2の外周を全周に亘って囲む周壁部681を有している。周壁部681の紙面手前側の端面は、第3カバー9との接合部683となっている。
【0062】
図1に示すように、収容部68は、動力伝達装置1の回転軸Xに沿う向きで設けられている。収容部68は、ケース6の周壁部61に隣接する領域から、第1カバー7の側方まで及ぶ回転軸X方向(図中、左右方向)の範囲を持って形成されている。
【0063】
図1に示すように、収容部68の内側は、第2カバー8側(図中、右側)の略半分の領域が底壁部682(第2支持壁)、第1カバー7側の略半分の領域が底壁部691(第3支持壁)となっている。底壁部682と底壁部691は、車両前後方向に位置をずらして設けられている。
底壁部682は、ケース6側の周壁部61と一体に形成されている。底壁部691は、第1カバー7の車両前方側で、第1カバー7の外周との間に隙間を開けて設けられている。
【0064】
図8に示すように、第2室S2内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向(紙面、手前奥方向)に沿わせた向きで、縦置きされている。
第2室S2では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数の調圧弁SP(スプール弁)が、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ、(b)調圧弁SP(スプール弁)の進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる。
【0065】
これにより、調圧弁SP(スプール弁)の進退移動が阻害されないようにしつつ、コントロールバルブCVが第2室S2内で縦置きされる。よって、第2室S2が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0066】
車両前方側から見てコントロールバルブCVは、略矩形形状のバルブボディ921に切欠部923を設けた略L字形状を成している。切欠部923は、電動オイルポンプEOPとの干渉を避けるために設けられている。
車両前方側から見て電動オイルポンプEOPは、第2カバー8側(図中、左側)の一部が切欠部923に収容されている。
そのため、鉛直線VL方向から見ると、電動オイルポンプEOPの一部が、コントロールバルブCVと重なる位置関係で設けられている。
【0067】
図8に示すように、第2室S2内では、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPとが、動力伝達装置1の回転軸X方向(図中、左右方向)に並んでいる。
車両前方側から見てコントロールバルブCVは、ケース6と重なる位置関係で設けられている。車両前方側から見て電動オイルポンプEOPは、第1カバー7と重なる位置関係で設けられている。
【0068】
電動オイルポンプEOPは、制御部51と、モータ部52と、ポンプ部53が、モータMの回転軸Z1方向で直列に並んだ基本構成を有する。
電動オイルポンプEOPは、回転軸Z1を、動力伝達装置1の回転軸Xに直交させた向きで設けられている。この状態において、電動オイルポンプEOPは、ポンプ部53を第2室S2(収容室69)内の上側に、制御部51を第2室S2(収容室69)内の下側に、それぞれ位置させる向きで縦置きされている。
【0069】
図9は、図8におけるA-A線に沿ってハウジングHSを切断した断面を模式的に示した図である。図9では、第2室S2における収容室69の部分の断面が、車両後方側に位置する第1カバー7の周壁部71の断面と共に、模式的に示されている。
【0070】
図8に示すように、収容部68の底壁部682では、車両前方側から見たときに第1カバー7と重なる領域に電動オイルポンプEOPの収容室69が設けられている。
図9に示すように収容室69は、底壁部682を第1カバー7側(図9における右側)に膨出させて形成される。収容室69の底壁部691は、底壁部682から見て、第1カバー7側に深さD69だけ離れて位置している。底壁部682の上側に接続する壁部693は、電動オイルポンプEOPの上側を車両前方側に延びている。底壁部682の下側に接続する壁部692は、電動オイルポンプEOPの下側を車両前方側に延びていると共に、
収容部68の周壁部681の延長上に位置している。
【0071】
本実施形態では、電動オイルポンプEOPの第1カバー7側の一部が、収容室69内に収容される。
図8の拡大図に示すように収容室69の底壁部691には、ボルト孔21a、22aを持つボス部21、22が、2つずつ設けられている。
収容室69において、ボス部21、21は、鉛直線VL方向の上側で、水平線方向に間隔を空けて並んでいる。ボス部22、22は、鉛直線VL方向におけるボス部21、21の下側で、水平線方向に間隔を空けて並んでいる。
ボス部21、21のボルト孔21a、21aには、電動オイルポンプEOPを貫通したボルトBL1、BL1が螺入される。
ボス部22、22のボルト孔22a、22aには、電動オイルポンプEOPを貫通したボルトBL2、BL2が螺入される。
これにより、収容室69内で電動オイルポンプEOPが、底壁部691上の所定位置に位置決めされるともに固定される。
底壁部691では、ボス部21とボス部21とに跨がって、補強用のリブ23が設けられている。リブ23は、水平線方向に沿う向きで設けられている。
【0072】
底壁部691では、コントロールバルブCV側のボス部22に隣接する位置に、ボス部26が設けられている。ボス部26には、オイルOLの供給口26aが開口している。
底壁部691の下部では、ボス部26とボス部22とに跨がって、補強用のリブ24が設けられている。リブ24は、水平線方向に沿う向きで設けられている。
【0073】
リブ24が接続するボス部22側(図中、右側)では、ボス部22の上側に、ボス部25が設けられている。ボス部25には、オイルOLの吐出口25aが開口している。
ボス部25から見てコントロールバルブCV側(図中、左側)には、紙面手前側に膨出した膨出部27が設けられている。膨出部27は、水平線に沿ってコントロールバルブCV側に延びている。
【0074】
図9に示すように、収容室69の底壁部691は、第1カバー7の周壁部71との間に間隔を空けて設けられている。底壁部691の外周には、周壁部71側(図中、右側)に膨出した膨出部28が設けられている。膨出部28は、底壁部691を間に挟んで、ボス部26の反対側に位置している。膨出部28の内部には、油路281が設けられている。油路281は、ボス部26に設けたオイルOLの供給口26aに連絡している。
【0075】
図10は、図9におけるA-A線に沿ってハウジングHSを切断した断面図である。
図10に示すように、油路281は、底壁部691に付設した膨出部28内を、動力伝達装置の回転軸X方向に直線状に延びている。膨出部28は、底壁部691と隔壁部62とに跨がって設けられている。油路281は、膨出部28に設けた止まり穴である。
油路281の基端281aは、膨出部28の端面に開口している。油路281の基端281a側の開口は、プラグPLで封止されている。
油路281の先端281bは、前記した隔壁部62内の油路626と交差している。
【0076】
油路626は、隔壁部62内を直線状に延びている。油路626は、隔壁部62に設けた止まり穴である。油路626の基端626aは、第2室S2に開口している。油路626の基端626a側の開口は、プラグPLで封止されている。
油路626の先端626bは、前記した接続部625の接続口625aに連絡している。
【0077】
ここで、本明細書における用語「止まり穴」とは、一端(先端)が閉じられた直線状の油孔を意味する。油路281、626は、例えば、鋳造後のケース6(膨出部28)に対するドリル加工で形成される。油路281の場合には、膨出部28の領域を貫通させずに、先端が行き止まりとなった穴を加工している。すなわち、「止まり穴」とは、油路の加工領域を貫通させずに、先端が行き止まりとなるように形成した穴であり、例えばドリル加工などの加工により形成される。
本実施形態では、2つの止まり穴を連通させることで、電動オイルポンプEOPとストレーナ10とを接続する油路626、281を形成している。
【0078】
電動オイルポンプEOPが駆動されると、ハウジングHSの下部に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して吸引される。油路626には、ストレーナ10に吸引されたオイルOLが、第2接続部16から流入する。
油路626に流入したオイルOLは、油路626内の第2室S2側で開口する油路281に流入し、油路281に連絡するオイルOLの供給口26aから電動オイルポンプEOP内に供給される。
【0079】
図11は、図9におけるB-B線に沿ってハウジングHSを切断した断面図である。
図11に示すように、油路271は、底壁部691に付設した膨出部27内を、動力伝達装置の回転軸X方向に直線状に延びている。膨出部27は、底壁部691と隔壁部62とに跨がって設けられている。油路271は、膨出部27に設けた止まり穴である。油路271の基端271aは、膨出部27の端面に開口している。油路271の基端271a側の開口は、プラグPLで封止されている。
【0080】
油路271の先端271bは、隔壁部62内の油路629と交差している。
油路629は、隔壁部62内を直線状に延びている。油路629は、隔壁部62に設けた止まり穴である。油路629の基端629aは、第2室S2内に位置するコントロールバルブCVに連絡している。
【0081】
油路271には、オイルの吐出口25aが連絡している。
電動オイルポンプEOPが駆動されると、当該電動オイルポンプEOP内で加圧されたオイルOLが、吐出口25aから油路271内に供給される。
油路271に供給されたオイルOLは、油路629を通ってコントロールバルブCVに供給される。
【0082】
図12は、図9におけるC-C線に沿ってハウジングHSを切断した断面図である。
図12に示すように、底壁部691の外周には、リブ29が設けられている。
図9に示すように、リブ29は、膨出部28の下側の領域から、第1カバー7の周壁部71に近づく方向に延びている。リブ29は、収容室69の下側の壁部692に対して略平行に設けられている。
【0083】
図12に示すように、リブ29は、底壁部691と隔壁部62とに跨がって設けられている。リブ29は、底壁部691からの膨出幅W29が、隔壁部62に近づくにつれて広くなる形状で形成されている。そのため、鉛直線方向から見ると、リブ29は、斜めに設けられている。
第1カバー7の周壁部71は、ケース6の隔壁部62に接合されており、底壁部691は、隔壁部62から周壁部71の側方を、隔壁部62から離れる方向に延びている。
リブ29は、周壁部71と隔壁部62と底壁部691の間の隙間を利用して設けられている。
隔壁部62では、メカオイルポンプMOP側(図中、右側)から見てリブ29と重なる領域に、油路628が設けられている。油路628は、隔壁部62に設けた止まり穴である。油路628の基端628aは、第2室S2内に位置するコントロールバルブCVに連絡している。
【0084】
メカオイルポンプMOPが駆動されると、ハウジングHSの下部に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して、メカオイルポンプMOP内に吸引される。メカオイルポンプMOPには、ストレーナ10に吸引されたオイルOLが、第1接続部15から流入する。そして、メカオイルポンプMOPで加圧されたオイルOLが、排出口140と接続部627を通って、油路628内に供給される。油路628に供給されたオイルOLは、油路628を通ってコントロールバルブCVに供給される。
【0085】
このように、動力伝達装置1では、電動オイルポンプEOPは、底壁部691で支持されている。底壁部691は、メカオイルポンプMOPの支持に関与する隔壁部62とは別の壁部である。動力伝達装置1の回転軸Xに沿う底壁部691と、回転軸Xに直交する隔壁部62は、互いに直交する向きで設けられている。そして、底壁部691の外周に設けたリブ29が、底壁部691と隔壁部62に跨がって設けられているので、底壁部691と隔壁部62の剛性強度が高められている。
隔壁部62の第1室S1側にメカオイルポンプMOPを取り付けると共に、底壁部691の第2室S2側に電動オイルポンプEOPを取り付けることで、メカオイルポンプMOPと電動オイルポンプEOPの支持安定性が向上する。
【0086】
メカオイルポンプMOPと電動オイルポンプEOPが、同じ壁部の一方の面と他方の面に設けられている場合には、各ポンプの固有振動数に起因する音振が大きくなる傾向がある。上記の通り、メカオイルポンプMOPと、電動オイルポンプEOPが異なる壁部に設けられていると共に、メカオイルポンプMOPの回転軸と、電動オイルポンプEOPの回転軸とが直交する位置関係(平行や、同軸にならない位置関係)で設けられている。そのため、各ポンプの固有振動数に起因する音振の低減が期待できる。
【0087】
さらに、電動オイルポンプEOPを支持する底壁部691では、厚み方向の一方の面に膨出部28が位置すると共に、他方の面に膨出部27が位置している。
電動オイルポンプEOPを支持するに当たり、底壁部691全体の厚みを厚くするのではなく、局所的に厚みを厚くすると共に、厚みを厚くした部分の膨出方向が上下方向で互い違いとなるようにしている。
これにより、底壁部691全体の厚みを厚くすることなく、底壁部691の剛性強度を確保している。よって、動力伝達装置1の重量を大きく増やすことなく、底壁部691における電動オイルポンプEOPの支持安定性を高めている。
【0088】
また、底壁部613と第1カバー7との間に隙間があるので、底壁部691と第1カバー7との間に、膨出部28とリブ29を配置する空間的な余裕がある。
これにより、ハウジングHSを大型化させることなく、底壁部691と隔壁部62とに跨がって膨出部28とリブ29を設けて、底壁部691と隔壁部62の剛性を高めることができる。
【0089】
電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPを、同じ壁部の一方の面と他方の面に設ける場合のように、底壁部691と隔壁部62の厚みを厚くする必要が無い。
隔壁部62の厚みを厚くする場合には、動力伝達装置1が回転軸X方向(車幅方向)に大型化し、底壁部691の厚みを厚くする場合には、動力伝達装置1が回転軸Xの径方向(車両前後方向)に大型化する可能性がある。
前記したように、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPが異なる壁部に設けられていることにより、壁部の厚みを厚くすることに起因する動力伝達装置1の大型化を好適に防止できる。
【0090】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を揺する。
(1)動力伝達装置1は、
動力伝達機構を収容するハウジングHS(ケース)と、
動力伝達機構に供給する油圧を制御すると共に、ハウジングHS内で縦置きされたコントロールバルブCVと、
コントロールバルブCVにオイルOLを供給するメカオイルポンプMOP(第1ポンプ)および電動オイルポンプEOP(第2ポンプ)と、を有する動力伝達装置である。
ハウジングHSは、
動力伝達機構の回転軸を支持する隔壁部62(第1支持壁)と、
コントロールバルブCVを支持すると共に、回転軸に沿う向きで配置された底壁部682(第2支持壁)と、
隔壁部62の一方側に位置する第1室S1と、
底壁部682を間に挟んで第1室S1に隣接する第2室S2と、
底壁部682から回転軸に沿って、隔壁部62の他方側に延びる底壁部691(第3支持壁)と、を有する。
メカオイルポンプMOPは、第1室S1内で隔壁部62に取り付けられている。
電動オイルポンプEOPは、第2室S2内で底壁部691に取り付けられている。
【0091】
このように構成すると、ハウジングHSにおいて電動オイルポンプEOPは、メカオイルポンプMOPの支持に関与する隔壁部62とは別の壁部である底壁部691に設けられる。すなわち、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPは、ハウジングHSにおいて異なる壁部(底壁部691、隔壁部62)で支持されていることになる。
そうすると、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPを同じ壁部で支持する場合に比べて、各壁部に求められる剛性の要求が低くなる。電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPを同じ壁部、例えば隔壁部62で支持する場合、隔壁部62の厚みを厚くして剛性を高める必要が生じる。そうすると、動力伝達装置1が、厚くなった隔壁部62の分だけ大型化すると共に、動力伝達装置1全体の重量が増加する。
【0092】
特に、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPが、同じ壁部の一方側の面と他方側の面に支持される(ポンプの対向配置)と共に、電動オイルポンプEOPの回転軸とメカオイルポンプMOPの回転軸が、互いに平行または同軸に、動力伝達装置の回転軸に沿わせた向きで配置されていると、壁部の厚みを回転軸方向に厚くする必要がある。かかる場合、動力伝達装置は、回転軸方向に大型化する。
例えば、動力伝達装置1が、フロントエンジン・フロントドライブの車両(FF車)に搭載されている場合、動力伝達装置1が回転軸に沿う車幅方向に大型化すると、車両への搭載性への影響が懸念される。
前輪駆動の車両では、動力伝達装置が左右の駆動輪WH、WHの間に配置される。
左右の駆動輪WH、WHの間には、動力伝達装置1だけでなく、駆動源(エンジン)や他の部品が配置される。そのため、動力伝達装置1の回転軸方向の寸法は、搭載性に影響を及ぼす重要な因子であり、動力伝達装置1の回転軸方向の寸法を可能な限り抑えておくことが望ましい。
上記のとおり、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPを異なる壁部(底壁部691、隔壁部62)に支持させることにより、動力伝達装置1の回転軸方向への大型化を抑制できる。これにより、車両搭載性への影響を抑えつつ、動力伝達装置1の重量増加を好適に抑制できる。
また、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPを、同じ隔壁の厚み方向の一方側と他方側に配置する場合、各ポンプの固有振動数に起因する音振の問題が生ずる。音振に起因するノイズを低減させるためには、壁部の厚みを厚くする、ポンプの位置関係を見直す等の対策が必要になる。壁部の厚みを厚くすると動力伝達装置の大型化と、重量増加が問題となる。ポンプの位置関係を見直す場合には、レイアウトの自由度が損なわれる。
上記のように、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPを異なる壁部に支持させることにより、動力伝達装置1の大型化と、重量増加を好適に抑制できると共に、レイアウトの自由度が確保できる。
【0093】
(2)隔壁部62の他方側に第3室S3が位置している。
底壁部691(第3支持壁)は、第3室S3の側方に位置している。
底壁部691は、底壁部682と共に第2室S2を形成する。
回転軸Xの径方向から見て、第2室S2は、第1室S1および第3室S3と重なる位置関係で設けられている。
【0094】
このように構成すると、第1室S1および第3室S3から見て回転軸Xの径方向外側に、第2室S2が配置される。第2室S2は、ハウジングHSの回転軸X方向の略全長に亘って設けられる。第2室S2では、底壁部682に取り付けられたコントロールバルブCVと、底壁部691に取り付けられた電動オイルポンプEOPが、動力伝達装置1の回転軸X方向に並んで配置される。
第1室S1に隣接して第2室S2を設けた場合、底壁部682のみで第2室S2を形成すると、第3室S3の側方に利用されない空間が残されることになる。上記のように、底壁部691を設けると共に、底壁部682と底壁部691の両方を利用して第2室S2を形成すると、第2室S2が、第1室S1の側方から第3室S3の側方まで及んで形成される。これにより、第2室S2に、電動オイルポンプEOPを配置することが可能な空間を確保できる。よって、ハウジングHS周りに未利用の空間を大きく残すことなく、動力伝達装置1の構成要素を配置できる。
ここで、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを、回転軸X方向に並べて配置できない場合には、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPが回転軸Xの径方向(車両前後方向)に並ぶことになる。かかる場合、動力伝達装置1が、回転軸Xの径方向(車両前後方向)に大型化してしまう。上記のように、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを、回転軸X方向に並べて配置できるので、動力伝達装置1が回転軸Xの径方向(車両前後方向)に大型化することを好適に防止できる。
【0095】
(3)隔壁部62に付設されたストレーナ10と、
ストレーナ10と、電動オイルポンプEOP(第2ポンプ)とを接続する電動オイルポンプEOP用油路(油路626、油路281)と、を有する。
第2ポンプ用油路(油路626、油路281)は、
隔壁部62内を直線状に延びる油路626(第1油路)と、
底壁部691内を直線状に延びると共に、油路626に連通する油路281(第2油路)と、を有する。
油路626は、第2室S2に開口する止まり穴である。
油路281は、底壁部691の端部に開口する止まり穴である。
油路626の基端626aの開口と、油路281の基端281aの開口が、それぞれプラグPLで封止されている。
【0096】
電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPが異なる壁部(底壁部691、隔壁部62)に設けられている場合には、直線状に設けた油路626(第1油路)と、直線状に設けた油路281(第2油路)とが交差するように、それぞれの壁部(底壁部691、隔壁部62)に油穴を形成するだけで、油路626と油路281を合流させることができる。これにより、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPが同じ壁部に設けられている場合に比べて、油路の形成が容易になる。
【0097】
(i)油路626は、先端が閉じられて行き止まりとなっていると共に、基端が第2室S2に開口する直線状の加工穴である。
油路281は、先端が閉じられて行き止まりとなっていると共に、基端が底壁部691の端部に開口する直線状の加工穴である。
2つの先端が行き止まりとなった加工穴を交差させて、ストレーナ10と電動オイルポンプEOPを接続する油路が形成される。
【0098】
このように構成すると、ストレーナ10と電動オイルポンプEOPを接続する油路を、直線状の2つの加工穴を交差するように設けるだけで簡単に形成できる。
【0099】
(4)メカオイルポンプMOPは、第1室S1内の底壁部682の近傍で、隔壁部62に支持されている。
【0100】
このように構成すると、第2室S2内のコントロールバルブCVに最も近い位置に、メカオイルポンプMOPが配置される。第2室S2内では、電動オイルポンプEOPが、コントロールバルブCVに近接して配置されているので、コントロールバルブCVから見て、回転軸X方向の隣に電動オイルポンプEOPが、回転軸Xの径方向の隣にメカオイルポンプMOPが、それぞれ近接配置される。
これにより、電動オイルポンプEOPとコントロールバルブCVとを繋ぐ油路(油路271、油路629)と、メカオイルポンプMOPとコントロールバルブCVとを繋ぐ油路628の長さを、それぞれ短くできる。そうすると、ポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)からコントロールバルブCVへのオイルOLの供給に要する時間が短くなるので、コントロールバルブCVにおける油圧応答性の向上が期待できる。
【0101】
(5)底壁部691は、油路281(第2油路)が設けられた領域の厚みが、他の領域よりも厚く形成されている。
【0102】
このように構成すると、底壁部691の内部に油路281を形成しても、底壁部691の剛性を確保できる。
また、油路281が隔壁部62まで及んでいるので、底壁部691における厚みが厚くなった領域も、隔壁部62まで及んでいる。そのため、底壁部691における厚みが厚くなった領域が、底壁部691の補強用のリブとしても機能するので、底壁部691における電動オイルポンプEOPの支持強度を確保できる。
【0103】
(6)電動オイルポンプEOPとコントロールバルブCVとを繋ぐ第3油路(油路271、油路629)を有する。
底壁部691では、油路281(第2油路)と油路271(第3油路)が上下に並んでいる。
底壁部691は、油路271が設けられた領域の厚みも厚く形成されている。
底壁部691では、油路281の領域の膨出方向が、底壁部691の一方側であり、油路271の膨出方向が、底壁部691の他方側である。
【0104】
このように構成すると、例えば、油路281の領域(膨出部28)の膨出方向が、底壁部691の一方側に位置する第3室S3側であり、油路271の領域(膨出部27)の膨出方向が、第3室S3とは反対側となる。
これにより、底壁部691の剛性を確保できる。
【0105】
(7)第3室S3の外周を囲む周壁部71と、
底壁部691から、周壁部71側に膨出したリブ29と、を有する。
周壁部71は、隔壁部62に接続して設けられていると共に、底壁部691との間に隙間を空けて設けられている。
リブ29は、周壁部71と底壁部691との間の隙間(回転軸Xの径方向の隙間)で、底壁部691と隔壁部62に跨がって設けられている。
【0106】
第3室S3は、第1室S1と第2室S2との隣接方向(回転軸Xの径方向)の範囲が、第1室S1よりも小さいので、第3室S3と第2室S2との間には、隙間が残されており、空間的な余裕がある。
底壁部691の厚みが厚く形成された領域を、第3室S3と第2室S2との間の空間に膨出するリブ29とすることで、ハウジングHSの周囲の利用されていない空間を有効に利用しつつ、底壁部691の剛性を確保できる。
【0107】
(8)リブ29は、隔壁部62に近づくにつれて、底壁部691からの膨出幅W19が広くなる形状で形成されている。
【0108】
このように構成すると、ハウジングHSの重量増加を抑えつつ、隔壁部62と底壁部691の剛性を確保できる。
【0109】
(ii)第2室S2内においてコントロールバルブCVは、複数の調圧弁SPを上下方向に並べる向きで配置されている。
動力伝達装置1の回転軸X方向から見てコントロールバルブCVは、電動オイルポンプEOPと重なる位置関係で設けられている。
【0110】
コントロールバルブCVが、複数の調圧弁SPを水平線方向に並べる向きで配置されていると、コントロールバルブCVが水平線方向に大きく場所を取ることになる。
上記のように、複数の調圧弁SPが上下方向に並ぶようにコントロールバルブCVを配置すると、複数の調圧弁が水平線方向に並ぶようにコントロールバルブを配置する場合に比べて、コントロールバルブの設置に必要な水平線方向の範囲が少なくなる。
これにより、第2室S2の水平線方向の厚みが薄くなるので、動力伝達装置1の水平線方向への大型化を好適に防止できる。
さらに、電動オイルポンプEOPを、第2室S2内で回転軸Z1を上下方向に沿わせた向きで縦置き配置するすると、回転軸Z1方向から見たコントロールバルブCVの厚みの範囲内に、電動オイルポンプEOPを設けることができる。これにより、第2室S2に電動オイルポンプEOPを設けても、第2室S2が水平線方向に大型化することがない。このことによっても、動力伝達装置1の水平線方向への大型化を好適に防止できる。
【0111】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、第2室S2に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0112】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 動力伝達装置
2 前後進切替機構(動力伝達機構)
3 バリエータ(動力伝達機構)
4 減速機構(動力伝達機構)
5 差動装置(動力伝達機構)
29 リブ
69 隔壁部(第1支持壁)
682 壁部(第2支持壁)
682B 壁部(第3支持壁)
626 油路(第2ポンプ用油路:第1油路)
626a 基端
281 油路(第2ポンプ用油路:第2油路)
281a 基端
271 油路(第3油路)
629 油路(第3油路)
CV コントロールバルブ
HS ハウジング(ケース)
MOP メカオイルポンプ(第1ポンプ)
EOP 電動オイルポンプ(第2ポンプ)
PL プラグ
S1 第1室
S2 第2室
S3 第3室


図1
図2
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図5
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図12