(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ロータリコンプレッサ、ロータリコンプレッサの製造方法および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/00 20060101AFI20241216BHJP
F04C 18/356 20060101ALI20241216BHJP
F04C 23/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
F04C29/00 B
F04C18/356 H
F04C23/00 F
(21)【出願番号】P 2018226344
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-11-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水野 弘之
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】長馬 望
【審判官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108443148(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/00
F04C 18/356
F04C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の密閉容器と、
前記密閉容器内に、回転軸と前記回転軸の軸方向に間隔を存して配置され、冷媒を圧縮する複数の冷媒圧縮部を有する圧縮機構部と、
前記圧縮機構部の上側で前記密閉容器の内周面に固定された固定子と、前記固定子で取り囲まれ、前記回転軸に固定される回転子と、を有し、前 記密閉容器の内部で前記回転軸を介して前記圧縮機構部を駆動する電動機と、
前記圧縮機構部に吸込管を介して接続され、前記冷媒を液相冷媒と気相冷媒とに分離するアキュームレータと、を具備し、
前記圧縮機構部は、主固定部と前記主固定部よりも下側に位置する補助固定部とで密閉容器に溶接固定され、
前記主固定部と前記密閉容器との複数の溶接点は、前記補助固定部と前記密閉容器との溶接点よりも多く、
前記主固定部は、前記電動機に最も近い前記冷媒圧縮部が連結された主支持部材で構成され、前記補助固定部は、前記電動機から最も遠い前 記冷媒圧縮部が連結された補助支持部材で構成され、
前記主固定部の複数の前記溶接点は、前記溶接点と前記密閉容器の中心軸を結ぶ線と、前記密閉容器
の中心軸と前記アキュームレータの中心軸を結ぶ直線状の基準線とがなす角度が30°~50°になる位置と、前記溶接点と前記密閉容器の中心軸を結ぶ線と、前記基準線とがなす角度が20°~30°になる位置と、前記溶接点と前記密閉容器の中心軸を結ぶ線と、前記基準線と前記基準線と垂直に交わる線とがなす角度が0°~10°になる位置と、に設けられ、
前記主固定部の複数の前記溶接点から前記圧縮機構部および前記電動機の前記回転子を含む構造物の重心までの軸方向距離が前記補助固定部の溶接点から前記重心までの軸方向距離よりも近いことを特徴とするロータリコンプレッサ。
【請求項2】
前記圧縮機構部は第1ないし第3の冷媒圧縮部を有する、請求項1に記載のロータリコンプレッサ。
【請求項3】
冷媒が循環するとともに、放熱器、膨張装置および吸熱器が接続された循環回路と、
前記放熱器と前記吸熱器との間で前記循環回路に接続された請求項1、または請求項2に記載のロータリコンプレッサと、を備えた冷凍サイクル装置。
【請求項4】
密閉容器の内周壁に固定され、冷媒を圧縮する第1ないし第3の冷媒圧縮部を有する圧縮機構部と、固定子と回転子とを有し回転軸を介して前記圧縮機構部を駆動する電動機と、を具備し、前記圧縮機構部は、主固定部と補助固定部とで前記密閉容器に溶接固定され、前記主固定部は、前記電動機に最も近い前記第1の冷媒圧縮部が連結された主支持部材で構成されて、
前記主固定部と前記密閉容器との複数の溶接点は、前記補助固定部と前記密閉容器との溶接点よりも多く、前記補助固定部は、前記主固定部よりも下側で前記圧縮機構部に取り付けられた補助支持部材で構成されるとともに、前記補助固定部から前記圧縮機構部および前記電動機の前記回転子を含む構造物の重心までの距離が、前記主固定部の前記重心までの距離よりも離れているロータリコンプレッサの製造方法において、
前記密閉容器に前記主支持部材を溶接固定する工程と、
前記圧縮機構部を前記密閉容器に挿入し、前記主支持部材に前記第1の冷媒圧縮部を固定する工程と、
前記補助支持部材を前記密閉容器に溶接する工程と、を備えたロータリコンプレッサの製造方法。
【請求項5】
前記補助支持部材を前記密閉容器にレーザー溶接により溶接する、請求項4に記載のロータリコンプレッサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、多気筒型のロータリコンプレッサとその製造方法および当該ロータリコンプレッサを備えた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷媒の圧縮能力を高めるため、三組の冷媒圧縮部を回転軸の軸方向に配列した圧縮機構部を有する縦型の3シリンダ形ロータリコンプレッサが開発されている。この種のロータリコンプレッサは、二組の冷媒圧縮部を回転軸の軸方向に配列した2シリンダ形ロータリコンプレッサとの比較において、回転軸の全長が長くなるとともに、圧縮機構部の高さ寸法が増大する。
さらに、2シリンダ形ロータリコンプレッサよりも冷媒圧縮部の数が増えるので、電動機の出力を高める必要があり、その分、電動機が大型化するのを避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4594302号公報
【文献】特開平6-26478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3シリンダ形ロータリコンプレッサでは、高さ寸法が増した圧縮機構部の上側に重く大きな電動機が張り出した形態となり、圧縮機構部および電動機を収容した密閉容器の全高が増大する。このため、3シリンダ形ロータリコンプレッサの重心位置が自ずと高くなり、運転中に大きな振動が発生するリスクを伴う。振動を低減するため、圧縮機構部を密閉容器に固定する固定部を増やすことが考えられるが、一般的に圧縮機は密閉容器にアークスポット溶接により溶接固定され、溶接のための下穴加工が必要であり、下穴が増えることで気密不良等の製造不良が発生する恐れがある。
本発明の目的は、運転中の振動および騒音を低減するとともに、製造不良を抑制した信頼性の高いロータリコンプレッサを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、実施形態のロータリコンプレッサは、筒状の密閉容器と、密閉容器内に、回転軸と回転軸の軸方向に間隔を存して配置され、冷媒を圧縮する複数の冷媒圧縮部を有する圧縮機構部と、圧縮機構部の上側で密閉容器の内周面に固定された固定子と、固定子で取り囲まれ、回転軸に固定される回転子と、を有し、密閉容器の内部で回転軸を介して圧縮機構部を駆動する電動機と、圧縮機構部に吸込管を介して接続され、冷媒を液相冷媒と気相冷媒とに分離するアキュームレータと、を具備している。圧縮機構部は、主固定部と主固定部よりも下側に位置する補助固定部とで密閉容器に溶接固定されている。主固定部と密閉容器との複数の溶接点は、補助固定部と密閉容器との溶接点よりも多く、主固定部は、電動機に最も近い冷媒圧縮部が連結された主支持部材で構成され、補助固定部は、電動機から最も遠い冷媒圧縮部が連結された補助支持部材で構成されている。主固定部の複数の溶接点は、溶接点と密閉容器の中心軸を結ぶ線と、密閉容器の中心軸とアキュームレータの中心軸を結ぶ直線状の基準線とがなす角度が30°~50°になる位置と、溶接点と密閉容器の中心軸を結ぶ線と、基準線とがなす角度が20°~30°になる位置と、溶接点と密閉容器の中心軸を結ぶ線と、直線状の基準線と直線状の基準線と垂直に交わる線とがなす角度が0°~10°になる位置と、に設けられ、主固定部の複数の溶接点から圧縮機構部および電動機の回転子を含む構造物の重心までの軸方向距離が補助固定部の溶接点から重心までの軸方向距離よりも近い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態による冷凍サイクル装置の概略構成図である。
【
図2】同実施形態によるロータリコンプレッサの縦断面図である。
【
図4】同実施形態によるロータリコンプレッサの平面図である。
【
図5】第2の実施形態によるロータリコンプレッサの要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態のロータリコンプレッサについて、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は、例えば冷凍サイクル装置である空気調和装置1の冷凍サイクルの構成を示している。空気調和装置1は、ロータリコンプレッサ2、四方弁3、室外熱交換器4、膨張装置5、および室内熱交換器6を備えている。これらは冷媒が循環する冷媒通路7を介して接続されている。
【0008】
具体的には、
図1に示すように、ロータリコンプレッサ2の吐出側は、四方弁3の第1ポート3aに接続されている。四方弁3の第2ポート3bは、室外熱交換器4に接続されている。室外熱交換器4は、膨張装置5を介して室内熱交換器6に接続されている。室内熱交換器6は、アキュームレータ8を介してロータリコンプレッサ2の吸込側に接続されている。空気調和装置1は冷房運転を行う場合、四方弁3は、第1ポート3aが第2ポート3bに連通し、第3ポート3cが第4ポート3dに連通するように切り替わる。
【0009】
空気調和装置1が冷房運転を開始されると、ロータリコンプレッサ2で圧縮された高温・高圧の気相冷媒が四方弁3を経由して放熱器(凝縮器)として機能する室外熱交換器4に導かれる。室外熱交換器4に導かれた気相冷媒は、外部の空気との熱交換により凝縮し、高圧の気液二相冷媒に変化する。高圧の気液二相冷媒は、膨張装置5を通過する過程で減圧されて低圧の気液二相冷媒に変化する。気液二相冷媒は、吸熱器(蒸発器)として機能する室内熱交換器6に導かれるとともに、当該室内熱交換器を通過する過程で室内の空気と熱交換する。この結果、気液二相冷媒は、空気から熱を奪って蒸発し、低温・低圧の気相冷媒に変化する。室内熱交換器6を通過する空気は、液相冷媒の蒸発潜熱により冷やされ、冷風となって室内に送られる。室内熱交換器6を通過した低温・低圧の気相冷媒は、四方弁3を経由してアキュームレータ7に導かれる。冷媒中に蒸発しきれなかった液相冷媒が混入している場合は、アキュームレータ7で液相冷媒と気相冷媒とに分離される。液相冷媒が分離された低温・低圧気相冷媒は、ロータリコンプレッサ2に吸い込まれるとともに、当該ロータリコンプレッサ2で再び高温・高圧の気相冷媒に圧縮されて上記のサイクルを繰り返す。
【0010】
空気調和装置1が暖房運転を開始されると、四方弁3は、第1ポート3aが第3ポート3cに連通し、第2ポート3bが第4ポート3dに連通するように切り替わる。そのため、ロータリコンプレッサ2から吐出された高温・高圧の気相冷媒は、四方弁3を経由して凝縮器として機能する室内熱交換器6に導かれ、当該室内熱交換器6を通過する室内空気と熱交換される。この結果、室内熱交換器6を通過する気相冷媒は、空気との熱交換により凝縮し、高圧の気相冷媒に変化する。室内熱交換器6を通過する空気は、気相冷媒と熱交換により加熱され、温風となって室内に送られる。室内熱交換器6を通過した高温の液相冷媒は、膨張装置5に導かれるとともに、当該膨張装置5で減圧されて低圧の気液二相冷媒に変化する。気液二相冷媒は、蒸発器として機能する室外熱交換器4に導かれるとともに、室外の空気と熱交換することにより蒸発し、低温・低圧の気相冷媒に変化する。室外熱交換器4を通過した低温・低圧の気相冷媒は、四方弁3及びアキュームレータ8を経由してロータリコンプレッサ2に吸い込まれる。
【0011】
次に、空気調和装置1に用いられるロータリコンプレッサ2の具体的な構成について、説明する。
図2は、縦型の3シリンダ形ロータリコンプレッサ
2の内部構造を示す図である。
図2に示すように、ロータリコンプレッサ2は、密閉容器10と、密閉容器10内部に電動機11および圧縮機構部12を備えている。
【0012】
密閉容器10は、例えば容器本体10a、底部材10b、および蓋部材10cの3つの部材から構成されている。容器本体10aは、円筒状の周壁10dを有するとともに、鉛直方向に沿うように起立されている。底部材10bは、容器本体10aの下端開口部を塞ぐように容器本体10aの下端に溶接されている。蓋部材10cは、容器本体10aの上端開口部を塞ぐように容器本体10aの上端に溶接されている。
【0013】
蓋部材10cには吐出管10eが取り付けられている。吐出管10eは、冷媒回路7を介して四方弁3の第1吐出ポート3aに接続されている。
密閉容器10の下部には、圧縮機構部12を潤滑する潤滑油が蓄えられている。
【0014】
電動機11は、インナーロータ形のモータであって、固定子13および回転子14を備えている。固定子13は、容器本体10aの周壁10dの内面に焼嵌めなどにより固定されている。回転子14は、密閉容器10の中心軸(ロータリコンプレッサ2の中心軸)O1線の同軸上に位置されるとともに、固定子13で取り囲まれている。
【0015】
圧
縮機構部12は、第1の冷媒圧縮部15A、第2の冷媒圧縮部15B、第3の冷媒圧縮部15C、第1の中間仕切り板16、第2の中間仕切り板17、主軸受18、副軸受19および回転軸20を備えている。本実施形態のロータリコンプレッサ
2を構成する圧縮機構部12と、電動機11の回転子14を含めた構造物の重心Gを
図2に示している。
【0016】
回転軸20は、密閉容器10の中心軸O1線上の同軸上に位置されている。回転軸20は、上端が電動機11の回転子14に固定され、圧縮機構部12側に第1ないし第3のクランク部40a,40b,40cが間隔を存して一体に形成されている。
第1ないし第3のクランク部40a,40b,40cは、回転軸20の回転中心に対し偏心しているとともに、偏心方向が回転軸20の周方向に120°ずつずれている。
【0017】
第1ないし第3の冷媒圧縮部15A,15B,15Cは、密閉容器10の軸方向に間隔を存して一列に並んでいるとともに、回転軸20の第1ないし第3のクランク部40a,40b,40cをそれぞれ囲うように配置されている。第1ないし第3の冷媒圧縮部15A,15B,15Cは、それぞれ第1のシリンダボディ21a、第2のシリンダボディ21b、第3のシリンダボディ21cを備えている。
【0018】
第1の中間仕切り板16は、第1のシリンダボディ21aと第2のシリンダボディ21bとの間に介在されている。第1の中間仕切り板16の上面は、第1のシリンダボディ21aの内径部を下方から覆うように第1のシリンダボディ21aの下面に重ねられ、第1の中間仕切り板16の下面は、第2のシリンダボディ21bの内径部を上方から覆うように第2のシリンダボディ21bの上面に重ねられている。
第2の中間仕切り板17は、第2のシリンダボディ21bと第3のシリンダボディ21cとの間に介在されている。第2の中間仕切り板17の上面は、第2のシリンダボディ21bの内径部を下方から覆うように第2のシリンダボディ21bの下面に重ねられている。第2の中間仕切り板17の下面は、第3のシリンダボディ21cの内径部を上方から覆うように第3のシリンダボディ21cの上面に重ねられている。
【0019】
主軸受18は、第1のシリンダボディ21aの上面に配置されている。主軸受18は、容器本体10aの周壁10dに向けて張り出すフランジ部23を有している。フランジ部23は、第1のシリンダボディ21aの内径部を上方から覆うように第1のシリンダボディ21aの上面に重ねられている。主軸受18には、電動機11側の端面に第1のマフラ31が取り付けられ、第1のマフラ31の内部に第1のマフラ室32が形成されている。
【0020】
副軸受19は、第3のシリンダボディ21cの下面に配置されている。副軸受19は、容器本体10aの周壁10dに向けて張り出すフランジ部29を有している。フランジ部29は、第3のシリンダボディ21cの内径部を下方から覆うように第3のシリンダボディ21cの下面に重ねられている。副軸受19には、電動機11と反対側の端面に第2のマフラ室33が取り付けられ、第2のマフラ室33の内部に第2のマフラ室34が形成されている。
【0021】
主軸受18のフランジ部23、第1のシリンダボディ21a、第1の中間仕切り板16および第2のシリンダボディ21bは、密閉容器10の軸方向に積層されているとともに、複数の第1の締結ボルト24を介して一体的に結合されている。
【0022】
副軸受19のフランジ部29、第3のシリンダボディ21c、第2の中間仕切り板17および第2のシリンダボディ21bは、密閉容器10の軸方向に積層されているとともに、複数の第2の締結ボルト28を介して一体的に結合されている。
【0023】
第1のシリンダボディ21aは、主軸受18のフランジ部23および第1の中間仕切り板16とで囲まれた領域に第1のシリンダ室25を形成している。
第2のシリンダボディ21bは、第1の中間仕切り板16および第2の中間仕切り板17とで囲まれた領域に第2のシリンダ室を形成している。
第3のシリンダボディ21cは、第2の中間仕切り板17および副軸受19のフランジ部29とで囲まれた領域に第3のシリンダ室27を形成している。
【0024】
第1ないし第3のシリンダ室25,26,27は、内部に回転軸20の第1ないし第3のクランク部40a,40b,40cに嵌合し、偏心回転する第1ないし第3のローラ41a,41b,41cを備えている。
【0025】
図3に第1のシリンダボディ21aを代表して示すように、第1ないし第3のシリンダボディ21a,21b,21cにそれぞれベーンスロット42が第1のシリンダ室25の径方向に延びて形成されている。
ベーンスロット42には、ベーン43が収容されている。ベーン43は、ベーンスロット42に沿って第1のシリンダ室25の径方向に移動可能であるとともに、スプリング44を介して第1のシリンダ室25に向けて付勢されている。ベーン43の先端部は、ローラ41aの外周面に摺動可能に押し付けられている。ベーン43は、ローラ41aと協働して第1のシリンダ室25を吸入領域R1と圧縮領域R2とに区画している。
【0026】
図2に示すように、容器本体10aには開口部45が設けられている。第1ないし第3のシリンダボディ21a、21b、21cには、シリンダ室25,26,27に開口する吸入口46が設けられ、アキュームレータ8の下端から延びる第1ないし第3の吸込管36,37,38が開口部45を通して接続されている。
【0027】
主軸受18のフランジ部23及び第1の中間仕切り板16には、吐出孔と第1のシリンダ室25の圧縮領域R2の圧力が所定の値に達したときに吐出孔を開く図示しない吐出弁が設けられている。
第1の中間仕切り板16及び第2の中間仕切り板17には、吐出孔と第2のシリンダ室26の圧縮領域R2の圧力が所定の値に達したときに吐出孔を開く吐出弁が設けられている。
第2の中間仕切り板17及び副軸受19のフランジ部29には、吐出孔と第3のシリンダ室27の圧縮領域R2の圧力が所定の値に達したときに吐出孔を開く吐出弁が設けられている。
【0028】
主軸受18の吐出弁の吐出側は、第1のマフラ室32に連通し、副軸受19の吐出弁の吐出側は、第2のマフラ室34に連通している。第2のマフラ室34は、図示しない吐出通路を介して第1のマフラ室32に連通している。
第1の中間仕切り板16の吐出弁の吐出側と、第2の中間仕切り板17の吐出弁の吐出側は、上記の吐出通路に連通し、第1のマフラ室32に連通している。
【0029】
上述した圧縮機構部12は、上端側を主支持部材63で容器本体10aに固定され、下端側を補助支持部材64で容器本体10aに固定されている。
主支持部材63は、主軸受18のフランジ部23の外周側で、第1のシリンダボディ21aの上面に配置されている。主支持部材63と第1のシリンダボディ21aは、複数の第3の締結ボルト30で結合されている。
補助支持部材64は、副軸受19のフランジ部23の外周側で、第3のシリンダボディ21cの下面に配置されている。補助支持部材64と第3のシリンダボディ21cは、複数の第4の締結ボルト35で結合されている。
【0030】
主支持部材63および補助支持部材64は、容器本体10aの所定の位置に溶接固定されている。例えば、主支持部材63は、密閉容器10の周方向の同じ高さに形成される6つの下穴の位置で溶接されている。補助支持部材64は、容器本体10aの周方向の同じ高さに形成される3つの下穴の位置で溶接されている。主支持部材63と容器本体10aの溶接箇所を溶接点65と呼び、補助支持部材64と容器本体10aの溶接箇所を溶接点66と呼ぶ。主支持部材63は、圧縮機構部12の上端部を容器本体10aに固定する主固定部61を構成している。主固定部61の溶接点65は、重心Gまでの距離T1を有している。補助支持部材64は、圧縮機構部12の下端部を容器本体10aに固定する補助固定部62を構成している。補助固定部62の溶接点66は、重心Gまでの距離T2を有している。本実施形態によると、主固定部61の溶接点65から重心Gまでの距離T1は、補助固定部62の溶接点66から重心Gまでの距離T2よりも近い。
【0031】
図4は溶接点65,66の位置を示すロータリコンプレッサ2の平面図である。溶接点65の一部は、溶接点66と密閉容器10の周方向において同じ位置に設けられている。本実施形態では、溶接点65は、アキュームレータ8の固定部品を挟んだ2点65a,65bと、アキュームレータ8と反対側に2点65c,65dと、溶接点65aと65cとの間に1点65eと、溶接点65bと65dとの間に1点65fの計6点であ
る。
【0032】
詳細には、溶接点65aは、溶接点65aとロータリコンプレッサ2の中心軸O1を結ぶ線と、ロータリコンプレッサ2の中心軸O1とアキュームレータ8の中心軸O2とを結ぶ線(以下、基準線Aと呼ぶ。)がなす角度θ1が30°~50°となる位置に設けられる。同様に、溶接点65bは、溶接点65bとロータリコンプレッサ2の中心軸O1とを結ぶ線と、基準線Aがなす角度θ2が30°~50°となる位置に設けられる。この時、溶接点65aと65bは、基準線Aを挟んで反対側に設けられる。
溶接点65cおよび溶接点65dは、各溶接点65c,65dとロータリコンプレッサ2の中心軸O1とを結ぶ線と、基準線Aとがなす角度θ3,θ4がそれぞれ20°~30°となる位置に設けられる。この時、溶接点65cと65dは、基準線Aを挟んで反対側に設けられる。
溶接点65eおよび溶接点65fは、各溶接点65e,65fとロータリコンプレッサ2の中心軸O1とを結ぶ線と、基準線Aと垂直に交わる線とがなす角度θ5,θ6がそれぞれ0°~10°となる位置に設けられる。溶接点65eと65fは、互いに向かい合う位置に設けられる。
【0033】
溶接点66は、溶接点65のいずれか3点、例えば、溶接点65a,65c,65fと同じ位置に設けられている。上記の位置に溶接点65,66を設けることで、密閉容器10にアキュームレータ8を固定するのに邪魔することなく、圧縮機構部12を安定して支持することができる。
【0034】
次に、上述した3シリンダ形ロータリコンプレッサ2の、製造方法について説明する。
容器本体10aは、主支持部材63および補助支持部材64を溶接する位置に下穴加工を施しておく。主支持部材63を所定の位置まで挿入し、下穴を介して容器本体10aにアークスポット溶接により溶接固定する。
次に、例えば、容器本体10aを加熱して電動機11の固定子13をの主支持部材63の上部側で容器本体10aに焼嵌め固定する。
【0035】
一方で、補助支持部材64を含む圧縮機構部12の回転軸20に電動機11の回転子14を固定する。この状態で、容器本体10aに圧縮機構部12を挿入する。このとき、固定子13が下になるように容器本体10aを逆さにして、回転軸20は回転子14側から下方に向かって挿入し、圧縮機構部12の第1のシリンダボディ21aの上面が主支持部材63に当接するまで挿入する。容器本体10aの開口部45に、圧縮機構部12の吸入口46が対向していることを確認する。
【0036】
この状態で、主支持部材63と第1のシリンダボディ21aを第3の締結ボルト30で締結し、補助支持部材64と第3のシリンダボディ21cとを第4の締結ボルト35で仮締めする。補助支持部材64を容器本体10aの下穴を介してアークスポット溶接により溶接固定する。第4の締結ボルト35で仮締めした補助支持部材64と第3のシリンダボディ21cを本締めする。そして容器本体10aに底部材10bと蓋部材10cを溶接固定する。
【0037】
このような3シリンダ形ロータリコンプレッサ2において、電動機11が駆動するとき、回転軸20の回転に伴って、圧縮機構部12の第1ないし第3のローラ41a、41b、41cが偏心回転する。これにより、第1ないし第3のシリンダ室25,26,27の吸入領域R1および圧縮領域R2の容積が変化し、アキュームレータ8から第1ないし第3の吸込管36,37,38を通って気相冷媒が吸入口46より第1ないし第3のシリンダ室25,26,27の吸入領域R1に吸い込まれる。
【0038】
第1の吸込管36から第1のシリンダ室25の吸入領域R1に吸い込まれた気相冷媒は、吸入領域R1が圧縮領域R2に移行する過程で次第に圧縮され、圧縮領域R2の圧力が所定値に達したとき、吐出弁が開き、第1のシリンダ室25で圧縮された気相冷媒が主軸受18及び第1の中間仕切り板16を介して第1のマフラ室32に吐出される。
第2の吸込管37から第2のシリンダ室26の吸入領域R1に吸い込まれた気相冷媒は、圧縮され、圧縮領域R2の圧力が所定の値に達したとき、吐出弁が開き第1の中間仕切り板16及び第2の中間仕切り板17を介して第1のマフラ室32に導かれる。
第3の吸込管38から第3のシリンダ室27の吸入領域R1に吸い込まれた気相冷媒は、圧縮され、圧縮領域R2の圧力が所定の値に達したとき、吐出弁が開き、第2の中間仕切り板17及び第2のマフラ室34を介して第1のマフラ室32に導かれる。
【0039】
回転軸20の第1ないし第3のクランク部40a,40b,40cは、偏心方向が回転軸20の周方向に120°ずつずれている。そのため、第1ないし第3のシリンダ室25,26,27で圧縮された気相冷媒が吐出されるタイミングに同等の位相差が存在する。
第1ないし第3のシリンダ室25,26,27で圧縮された気相冷媒は、第1のマフラ室32で合流するとともに、第1のマフラ31の排気孔から密閉容器10の内部に連続的に吐出される。密閉容器10の内部に吐出された気相冷媒は、電動機11を通過した後、吐出管10eから四方弁3に導かれる。
【0040】
本実施形態のロータリコンプレッサ2は、圧縮機構部12の上端側が主固定部61で密閉容器10に固定され、圧縮機構部12の下端側が補助固定部62で密閉容器10に固定されている。本実施形態では、電動機11の回転子14および圧縮機構部12を含めた構造物の重心Gが、第1のクランク部40aと第2のクランク部40bとの間に位置されている。したがって、主支持部材63から重心Gまでの距離T1が、補助支持部材64から重心Gまでの距離T2よりも近い。一方で、主固定部61の溶接点65は、補助固定部62の溶接点66よりも多く設けられている。したがって、圧縮機構部12の振動要素である重心Gの近くを密閉容器10に強固に固定することができ、圧縮機構部12の振動を抑制することができる。
【0041】
さらに、補助固定部62で圧縮機構部12の下端部を固定したことで、圧縮機構部12の振動を抑制するとともに、溶接点66を少なくすることで、下穴加工を減らすことができ、気密不良等の製造不良が発生するのを防ぐことができる。
また、補助固定部62はレーザー溶接により溶接固定しても良い。この場合、下穴加工が不要であるため、溶接不良や気密不良の発生を防ぐことができるとともに、耐圧強度の確保が容易となる。
【0042】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態のロータリコンプレッサ2の圧縮機構部12を示している。第2の実施形態は、圧縮機構部12の下端側を密閉容器10に固定する構成が第1の実施形態と相違している。第2の実施形態は、補助支持部材64を備えず、第3のシリンダボディ21cが補助固定部62を構成している。したがって、第3のシリンダボディ21cは、外周が密閉容器10に接している。
【0043】
容器本体10aには、主支持部材63の対応する周方向同じ高さに複数の溶接点65が設けられ、第3のシリンダボディ21cが対応する周方向同じ高さに、主支持部材63よりも少ない溶接点66が設けられている。第3のシリンダボディ21cを固定するために容器本体10aに形成される下穴が、主支持部材63を固定するための下穴よりも少ない。このような構成とすることで、補助支持部材64が不要なため、補助固定部62の部品点数を減らすことができる。
【0044】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の3シリンダ形ロータリコンプレッサ2によれば、圧縮機構部12を振動要素であるロータリコンプレッサ2の重心Gに近い主固定部61の溶接点65を重心Gから離れた補助固定部62の溶接点66よりも多くして強固に固定することで、圧縮機構部12の振動を抑制することができるとともに、溶接のための下穴加工による気密不良等の製造不良を抑えることができる。
さらに、補助固定部62の溶接方法をレーザー溶接とすれば、下穴加工が不要であるため、製造不良を防ぐことが可能であるとともに、密閉容器10の耐圧強度を確保することができる。
【0045】
また、主固定部61は、圧縮機構部12の第1の冷媒圧縮部15Aと連結した主支持部材63で構成され、補助固定部62は、第3の冷媒圧縮部15Cと連結した補助支持部材64で構成されるロータリコンプレッサ2の製造方法として、予め容器本体10aに主支持部材63を溶接固定した状態で、補助支持部材64を含み、電動機11の回転子14を取付けた圧縮機構部12を容器本体10aに挿入する。次に主支持部材63と第1の冷媒圧縮部15Aを第3の締結ボルト30を用いて連結し、補助支持部64を密閉容器10に溶接固定することで、圧縮機構部12の位置決めから固定までを容易に行うことができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、三組の冷媒圧縮部15を回転軸20の軸方向に配列した圧縮機構部12を有する3シリンダ形ロータリコンプレッサについて説明したが、二組の冷媒圧縮部15を回転軸20の軸方向に配列した2シリンダ形ロータリコンプレッサにも適用することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…空気調和装置、2…ロータリコンプレッサ、4…室外熱交換器、5…膨張装置、6…室内熱交換器、10…密閉容器、11…電動機、12…圧縮機構部、13…固定子、14…回転子、15A…第1の冷媒圧縮部、15B…第2の冷媒圧縮部、15C…第3の冷媒圧縮部、20…回転軸、61…主固定部、62…補助固定部、63…主支持部材、64…補助支持部材、65,65…溶接点,G…重心、T1…主固定部から重心Gまでの距離、T2…補助固定部から重心Gまでの距離