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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】Al2O3焼結部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20241216BHJP
   B24B 7/22 20060101ALI20241216BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C04B37/00 C
B24B7/22 Z
C04B35/111
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019158954
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038101
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】関谷 秀介
(72)【発明者】
【氏名】傳井 美史
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】塩谷 領大
【審判官】深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-298574(JP,A)
【文献】特開2012-071995(JP,A)
【文献】特開2012-011672(JP,A)
【文献】特開2007-066933(JP,A)
【文献】特開2016-016565(JP,A)
【文献】プリント回路技術便覧,第3版,日刊工業新聞社,2006年05月30日,1068頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/00-35/84
C04B41/80-41/91
B28B11/00-11/24
H01L21/68-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して相対密度が72%~91%の第1のAl仮焼体を得る工程と、
第2のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して相対密度が72%~91%の第2のAl仮焼体を得る工程と、
前記第1のAl仮焼体に第1の平面を形成する工程と、
前記第2のAl仮焼体に第2の平面を形成する工程と、
前記第1の平面又は前記第2の平面の少なくとも一方に凹部を形成する工程と、
前記第1のAl仮焼体と前記第2のAl仮焼体とを、前記第1の平面と前記第2の平面とを接触させた状態で積層する工程と、
前記積層した前記第1のAl仮焼体及び前記第2のAl仮焼体を、積層方向に10kgf/cm以上の圧力を加えながら1400℃以上1800℃以下で焼成する工程とを備えることを特徴とするAl焼結部材の製造方法。
【請求項2】
前記凹部を形成する工程の前に、前記第1のAl仮焼体及び前記第2のAl仮焼体を保管する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のAl焼結部材の製造方法。
【請求項3】
第3のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して第3のAl仮焼体を得る工程をさらに備え、
前記積層する工程において、前記第3のAl仮焼体を前記第1のAl仮焼体又は前記第2のAl仮焼体の積層方向外側に剥離材を介して積層し、
前記焼成する工程において、積層された前記第1のAl仮焼体と前記第2のAl仮焼体と第3のAl仮焼体とに前記圧力を加えることを特徴とする請求項1又は2に記載のAl焼結部材の製造方法。
【請求項4】
乾式の研削加工又は研磨加工により、前記第1の平面、前記第2の平面及び前記凹部のうち少なくとも何れかを形成することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のAl焼結部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Al焼結部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において、ウエハなどの基板を表面に保持するセラミック製静電チャックなどの載置台としての基台は、静電チャックなどと共に昇温されるので静電チャックなどと熱膨張係数が近似すると共に、高電圧が印加される場合があるので、体積抵抗率が高い素材からなることが好ましい場合がある。このような素材として、Al焼結体が挙げられる。
【0003】
しかしながら、Al焼結体は焼結温度が高く、且つ難加工性であるので、Al焼結体からなる内部に中空構造を有する基台はあまり実用化されていない。
【0004】
特許文献1には、セラミックス仮焼体同士を常圧、荷重下で焼成することにより、一体化する技術が開示されている。実施例として、1100℃又は1500℃の温度で仮焼したAl仮焼体同士を、錘を載置した荷重下で1580℃又は1800℃の温度で焼成して一体化することが挙げられている。
【0005】
また、特許文献2には、α-Alとγ-Alを調整して比表面積を15~100m/gとしたAl粉末を原料として加圧成形体又は仮焼体を作製し、これらを成形圧力を超える圧力によって接合した後、接合体を1300℃以上の温度で焼成してAl焼結部材を得る技術が開示されている。なお、実施例として、最高900℃の温度で加圧成形体を仮焼して仮焼体を作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-298574号公報
【文献】特開2000-26172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、Al焼結部材の緻密度が十分でないという課題があった。
【0008】
一方、上記特許文献2に記載された技術では、仮焼体が高い空隙率を有している。そのため、接合時及び焼成時における変形が大きく、仮焼体の接合面に凹部を形成しても変形のため、高い寸法精度を有する中空構造を備えたAl焼結部材が得られない。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、緻密度が高く、寸法精度が高い中空構造を有するAl焼結部材を得ることが可能なAl焼結部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のAl焼結部材の製造方法は、第1のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して相対密度が72%~91%の第1のAl仮焼体を得る工程と、第2のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して相対密度が72%~91%の第2のAl仮焼体を得る工程と、前記第1のAl仮焼体に第1の平面を形成する工程と、前記第2のAl仮焼体に第2の平面を形成する工程と、前記第1の平面又は前記第2の平面の少なくとも一方に凹部を形成する工程と、前記第1のAl仮焼体と前記第2のAl仮焼体とを、前記第1の平面と前記第2の平面とを接触させた状態で積層する工程と、前記積層した前記第1のAl仮焼体及び前記第2のAl仮焼体を、積層方向に10kgf/cm(=0.98MPa)以上の圧力を加えながら1400℃以上1800℃以下で焼成する工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のAl焼結部材の製造方法によれば、凹部に由来する中空構造を有するAl焼結部材を得ることが可能となる。第1及び第2のAl仮焼体に第1及び第2の平面並びに凹部を形成しているが、これらを形成するための研削や研磨などの作業などは、Al焼結体にこれらを形成する場合と比較して、作業時間の短縮化を図ることが可能となる。また、凹部を形成したAl成形体同士を焼成して一体化する場合と比較して、凹部に由来するAl焼結部材の中空構造の寸法精度の向上を図ることが可能となる。
【0012】
また、錘を用いた小さな荷重を加えた状態で焼成を行う上記特許文献1に開示された技術と比較して、10kgf/cm(=0.98MPa)以上の加圧を行いながら焼成を行うので、Al焼結部材の緻密化を図ることが可能となる。
【0013】
さらに、仮焼体が高い空隙率を有するように最高900℃の温度で仮焼する上記特許文献2に開示された技術と比較して、第1及び第2のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して第1及び第2のAl仮焼体を得るので、第1及び第2のAl仮焼体の空隙率が低い。これにより、これらを積層して積層方向に圧力を加えながら焼成することによって得られるAl焼結部材の中空構造の寸法精度の向上を図ることが可能となる。
【0014】
本発明の第1のAl焼結部材の製造方法において、前記凹部を形成する工程の前に、前記第1のAl仮焼体及び前記第2のAl仮焼体を保管する工程を備えることが好ましい。
【0015】
この場合、予め作製した第1及び第2のAl仮焼体を保管しておくことにより、少なくとも仮焼に要する時間だけ短い時間でAl焼結部材を得ることが可能となる。また、第1の平面及び第2の平面を形成した第1及び第2のAl仮焼体を保管しておくことにより、第1の平面及び第2の平面を形成する工程に要する時間の分も短い時間でAl焼結部材を得ることが可能となる。
【0016】
また、本発明のAl焼結部材の製造方法において、第3のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して第3のAl仮焼体を得る工程をさらに備え、前記積層する工程において、前記第3のAl仮焼体を前記第1のAl仮焼体又は前記第2のAl仮焼体の積層方向外側に剥離材を介して積層し、前記焼成する工程において、積層された前記第1のAl仮焼体と前記第2のAl仮焼体と第3のAl仮焼体とに前記圧力を加えることが好ましい。
【0017】
この場合、第1又は第2のAl仮焼体の段差部や凹部などに第3のAl仮焼体を剥離材を介して配置した状態で圧力を加えることにより、第3のAl仮焼体は第1及び第2のAl仮焼体と共に焼成によって同様に収縮するので、焼成中に加わる圧力の均一化、及び接合強度の向上を図ることが可能となる。また、焼成後、第3のAl仮焼体に相当する焼結体部分を容易に剥離させることが可能であるので、機械加工などによる除去を不要としない。
【0018】
また、本発明のAl焼結部材の製造方法において、乾式の研削加工又は研磨加工により、前記第1の平面、前記第2の平面及び前記凹部のうち少なくとも何れかを形成することが好ましい。
【0019】
この場合、湿式で研削加工又は研磨加工を行う場合と比較して、研削液又は研磨液が第1又は第2のAl仮焼体の内部に侵入することにより、Al焼結部材に不純物が残存するおそれの解消を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係るAl焼結部材の製造方法を示すフローチャート。
図2A】第1及び第2のAl仮焼体を示す模式断面図。
図2B】第1及び第2のAl仮焼体を積層した状態を示す模式断面図。
図2C】Al焼結部材を示す模式断面図。
図3】本発明の第2の実施形態に係るAl焼結部材の製造方法を示すフローチャート。
図4A】第1から第3のAl仮焼体を示す模式断面図。
図4B】第1から第3のAl仮焼体を積層した状態を示す模式断面図。
図4C】Al焼結部材を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態に係るAl焼結部材10の製造方法について図面を参照して説明する。なお、図面は、Al焼結部材10及び構成要素などを明確化するためにデフォルメされており、実際の比率を表すものではなく、上下などの方向も単なる例示である。
【0022】
本発明の第1の実施形態に係るAl焼結部材10の製造方法は、図1に示すように、第1のAl仮焼体取得工程STEP1、第2のAl仮焼体取得工程STEP2、第1の平面形成工程STEP3、第2の平面形成工程STEP4、凹部形成工程STEP5、積層工程STEP6及び焼成工程STEP7を備えている。
【0023】
第1のAl仮焼体取得工程STEP1においては、図2Aを参照して、第1のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して第1のAl仮焼体1を得る。第2のAl仮焼体取得工程STEP2においては、第2のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して第2のAl仮焼体2を得る。なお、第1のAl仮焼体取得工程STEP1及び第2のAl仮焼体取得工程STEP2における仮焼温度は同じであっても、相違していてもよい。
【0024】
第1のAl仮焼体取得工程STEP1及び第2のAl仮焼体取得工程STEP2においては、Al(酸化アルミニウム、アルミナ)粉末を成形した2個のAl成形体を仮焼して第1及び第2のAl仮焼体1,2を形成する。例えば、Al粉末に、焼結助剤、樹脂バインダなどの添加剤を適宜添加して混合して、成形原料を作製し、この成形原料を用いて加圧成形して2個のAl成形体を形成する。
【0025】
Al粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、Al粉末の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。
Al粉末は、α-Alからなることが好ましい。
【0026】
混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。また、Al粉末に焼結助剤などを添加してAl顆粒を作製し、このAl顆粒に樹脂バインダなどの添加剤を添加したものを用いて加圧成形してAl成形体を形成してもよい。成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。
【0027】
なお、Al成形体を900℃以上1000℃未満の温度で加熱してAl脱脂体を得たうえで、このAl脱脂体を1000℃以上1500℃以下の温度で加熱して第1及び第2のAl仮焼体1,2を得てもよい。また、Al成形体を1000℃以上1500℃以下の温度まで連続的に昇温させながら加熱して第1及び第2のAl仮焼体1,2を得てもよい。
【0028】
第1の平面形成工程STEP3においては、第1のAl仮焼体1に第1の平面1aを形成する。第2の平面形成工程STEP4においては、第2のAl仮焼体2に第2の平面2aを形成する。なお、第1の平面1aと第2の平面2aは、積層工程STEP6において接触する面となる。
【0029】
NC旋盤、MC加工機などの平面研削機やラッピング加工機などを用いて、例えば、表面粗さRaが、好ましくは0.15μm以上0.8μm以下、より好ましくは0.15μm以上0.4μm以下となるように研磨又は研削を行うことにより、第1及び第2の平面1a,2aを形成する。
【0030】
凹部形成工程STEP5においては、第1の平面1a又は第2の平面2aの少なくとも一方に凹部3を形成する。凹部3は、第1の平面1a、第2の平面2aの何れか一方、又は双方から掘り込むように研削加工などによって形成する。
【0031】
なお、第1の平面形成工程STEP3又は第2の平面形成工程STEP4において、第1の又は第2の平面1a,2aを研磨加工せずに、あるいは粗く研削加工しただけとしておき、凹部形成工程STEP5において凹部3を形成した後で、第1又は第2の平面1a,2aを研磨加工、あるいは仕上げの研削加工を行ってもよい。
【0032】
なお、第1及び第2の平面1a,2aの双方から掘り込むように凹部3を形成する場合、これらの凹部3は、第1及び第2の平面1a,2aを積層工程STEP5において接触されたときに、一体化するものであってもよいが、他の平面によって閉じられるものであってもよい。また、第1及び第2の平面1a,2aと凹部3の境界部分及び凹部3の底隅部分には、R面やC面などの面取り加工を施すことが好ましい。
【0033】
また、第1の平面形成工程STEP3、第2の平面形成工程STEP4又は凹部形成工程STEP5において、乾式の研削加工又は研磨加工により、第1の平面1a、第2の平面2a又は凹部3を形成することが好ましい。これにより、研削液又は研磨液が第1又は第2のAl仮焼体1,2の内部に侵入し、Al焼結部材10に不純物が残存するおそれの解消を図ることが可能となる。なお、研削加工及び研磨加工を行う場合、これら加工の双方ともに乾式で行うことが好ましい。
【0034】
さらに、凹部形成工程STEP5の前に、第1及び第2のAl仮焼体1,2を保管する保管工程を備えていてもよい。これにより、予め作製した第1及び第2のAl仮焼体1,2を保管しておくことにより、少なくとも仮焼に要する時間だけ短い時間でAl焼結部材10を得ることが可能となる。また、第1の平面形成工程STEP3及び第2の平面形成工程STEP4後の第1及び第2のAl仮焼体1,2を保管しておくことにより、第1の平面1a及び第2の平面2aを形成する工程に要する時間の分も短い時間でAl焼結部材10を得ることが可能となる。
【0035】
積層工程STEP6においては、図2Bを参照して、第1のAl仮焼体1と第2のAl仮焼体2とを、第1の平面1aと第2の平面2aとを接触させた状態で積層する。
【0036】
焼成工程STEP7においては、積層した第1のAl仮焼体1及び第2のAl仮焼体2を、積層方向に10kgf/cm(=0.98MPa)以上の圧力を加えながら1400℃以上1800℃以下で焼成する。これにより、図2Cを参照して、第1及び第2のAl仮焼体1,2が焼結して一体化されたAl焼結部材10が得られる。
【0037】
焼成工程STEP7においては、少なくとも積層方向に加圧した状態で加熱するホットプレスなどによって、加圧焼結を行う。加熱時間は、好ましくは0.1時間以上10時間以下、より好ましくは1時間以上5時間以下である。そして、焼成雰囲気は、例えば不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。
【0038】
なお、積層工程STEP6において凹部3に中子を挿入した場合、焼成工程STEP7において又は焼成工程STEP7後に中子を除去すればよい。例えば、凹部3が外部に連通している場合、溶解した中子を外部に排出すればよい。
【0039】
Al焼結体同士を拡散接合して一体化する場合、Al焼結体は難加工性であるので、接合面の研磨に多大な時間を要するが、これと比較して、上述した本発明の第1の実施形態に係るAl焼結部材10の製造方法においては、第1及び第2のAl仮焼体1,2の第1及び第2の平面1a,2a並びに凹部3を研削加工又は研磨加工する時間の低減を図ることが可能となる。また、凹部3を形成したAl成形体同士を焼成して一体化する場合と比較して、凹部3に由来するAl焼結部材10の中空構造などの寸法精度の向上を図ることが可能となる。
【0040】
さらに、錘を用いた小さな荷重を加えた状態で焼成を行う上記特許文献1に開示された技術と比較して、10kgf/cm以上の加圧を行いながら焼成を行うので、Al焼結部材10の緻密化の向上を図ることが可能となる。なお、10kgf/cm未満の加圧では、焼成時に第1及び第2のAl仮焼体1,2の第1及び第2の平面1a,2aの良好な面接触が得られず接合不良を引き起こすため不適である。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態に係るAl焼結部材20の製造方法について図面を参照して説明する。
【0042】
本発明の第2の実施形態に係るAl焼結部材20の製造方法は、図3に示すように、第1のAl仮焼体取得工程STEP11、第2のAl仮焼体取得工程STEP12、第3のAl仮焼体取得工程STEP13、第1の平面形成工程STEP14、第2の平面形成工程STEP15、凹部形成工程STEP16、積層工程STEP17及び焼成工程STEP18を備えている。
【0043】
図3における第1のAl仮焼体取得工程STEP11においては、図4Aを参照して、第1のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して第1のAl仮焼体11を得る。第2のAl仮焼体取得工程STEP12においては、第2のAl成形体を1000℃以上1500℃以下の温度で仮焼して第2のAl仮焼体12を得る。なお、第1のAl仮焼体取得工程STEP11及び第2のAl仮焼体取得工程STEP12における仮焼温度は同じであっても、相違していてもよい。
【0044】
第1のAl仮焼体取得工程STEP11は上述した図1における第1のAl仮焼体取得工程STEP1と同様であり、第2のAl仮焼体取得工程STEP12は上述した第2のAl仮焼体取得工程STEP2と同様であるので、説明は省略する。
【0045】
第3のAl仮焼体取得工程STEP13においては、第3のAl成形体を1000℃以上1500以下の温度で仮焼して第3のAl仮焼体13を得る。第3のAl仮焼体13は、上述した第1又は第2のAl仮焼体11,12と同様にして得ればよい。なお、第3のAl仮焼体取得工程13における仮焼温度は、第1又は第2のAl仮焼体取得工程STEP11,12における仮焼温度と同じであっても、相違していてもよい。
【0046】
第3のAl仮焼体13は、積層工程STEP17において、図4Bを参照して、第1のAl仮焼体11と第2のAl仮焼体12とを、第1の平面11aと第2の平面21aとを接触させた状態で積層したときに、積層方向外側における段差や凹部を解消するような形状に構成されている。例えば、第2の仮焼体12の積層方向外側の表面の外周部に環状の段差が形成されている場合、第3のAl仮焼体13は段差の高さとほぼ一致する厚みを有する環状部材として形成される。
【0047】
次に、第1の平面形成工程STEP14において、第1のAl仮焼体11に第1の平面11aを形成する。第2の平面形成工程STEP15において、第2のAl仮焼体12に第2の平面12aを形成する。
【0048】
第1の平面形成工程STEP14は上述した第1の平面形成工程STEP3と同様であり、第2の平面形成工程STEP15は上述した第2の平面形成工程STEP4と同様であるので、説明は省略する。
【0049】
次に、凹部形成工程STEP16において、第1の平面11a又は第2の平面12aの少なくとも一方に凹部14を形成する。凹部形成工程STEP16は上述した凹部形成工程STEP5と同様であるので、説明は省略する。
【0050】
次に、積層工程STEP17においては、図4Bを参照して、第1のAl仮焼体11と第2のAl仮焼体12とを、第1の平面11aと第2の平面12aとを接触させた状態で積層する。
【0051】
さらに、積層工程STEP17において、第3のAl仮焼体13を第1のAl仮焼体11又は第2のAl仮焼体12の積層方向外側に剥離材15を介して積層する。これにより、第1から第3のAl仮焼体11~13は、積層方向外側において段差や凹部を解消されて平面状となって積層される。剥離材15としては、例えば、カーボンシート、窒化ホウ素シートなどを用いることができる。また、カーボンや窒化ホウ素を第1のAl仮焼体11又は第2のAl仮焼体12に直接コーティングしてもよい。
【0052】
次に、焼成工程STEP18において、積層した第1から第3のAl仮焼体11~13を、積層方向に10kgf/cm以上の圧力を加えながら1400℃以上1800℃以下で焼成する。焼成工程STEP18は上述した焼成工程STEP7と同様であるので、説明は省略する。
【0053】
焼成工程STEP18の完了により、図4Cを参照して、第1及び第2のAl仮焼体11,12が焼結して一体化されたAl焼結部材20が得られる。なお、第3のAl仮焼体13が焼結してなる図示しないAl焼結体は、剥離材15を介してAl焼結部材20と接しているだけであるので、Al焼結部材20と焼結せず、容易にAl焼結部材20と分離することができる。
【0054】
以上説明した本発明の第2の実施形態に係るAl焼結部材20の製造方法においても、前述した本発明の第1の実施形態に係るAl焼結部材10の製造方法と同様の作用効果を奏する。
【0055】
さらに、本発明の第2の実施形態に係るAl焼結部材20の製造方法においては、第1又は第2のAl仮焼体11,12の積層方向外側における段差部や凹部などに剥離材15を介して第3のAl仮焼体13が配置された状態で加圧焼成される。そして、この焼成の際、第3のAl仮焼体13は第1及び第2のAl仮焼体11,12と同様に収縮する。これらにより、焼成中に第1及び第2のAl仮焼体11,12に加わる圧力の均一化、及び接合強度の向上を図ることが可能となる。
【0056】
なお、本発明は、上述した第1又は第2の実施形態に具体的に記載したAl焼結部材10,20の製造方法に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。例えば、Al焼結部材10,20は2個のAl仮焼体1,2又は11,12が一体化したものであるが、3個以上のAl仮焼体が一体化したものであってもよい。
【実施例
【0057】
(実施例1~6)
実施例1~6においては、第1及び第2のAl仮焼体取得工程STEP1,2として、まず、純度99%、平均粒径0.4μmのAl粉末に、焼結助剤として0.05質量%のMgOと、PVA(ポリビニルアルコール)とを添加したスラリーを調整した。次に、このスラリーをスプレードライヤーで顆粒化して顆粒を得た。
【0058】
そして、この顆粒を金型に充填し、圧力を0.5MPaとした一軸加圧成形して2個のAl成形体を得た。これらのAl成形体の嵩密度は表1に示す通りであった。
【0059】
次に、これらAl成形体を焼成炉内にてAr雰囲気で炉内温度を表1に示すように1000℃~1500℃として3時間焼成して第1及び第2のAl仮焼体1,2を得た。これら第1及び第2のAl仮焼体1,2の嵩密度及び仮焼によるAl成形体に対する収縮率は、表1に示す通りであった。これら第1及び第2のAl仮焼体1,2を共に、一辺100mm、厚さ10mmの正方形板状に切削加工した。
【0060】
次に、第1及び第2の平面形成工程STEP3,4として、2個のAl仮焼体を、図2Aを参照して、第1のAl仮焼体1の第1の平面1a及び第2のAl仮焼体2の第2の平面2aは、実施例1~4においては、♯170のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行った。そして、実施例5,6においては、♯600のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行った。研削加工は、研磨液は用いずに、乾式で行った。第1及び第2の平面1a,2aの算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)の平均は、表1に示す通りであった。
【0061】
次に、凹部形成工程STEP5として、第2のAl仮焼体2の第2の平面2aに凹部3を形成した。凹部3は、3本の幅20mm、深さ5mm、長さ70mmの直線状の溝であった。この凹部3は、直径20mmのエンドミルを用いてMC加工により形成した。このMC加工の加工性の評価は表1に示す通りであった。
【0062】
なお、評価は加工時の主軸の負荷、ビビリ及び仮焼体の破損の発生によって判定した。表1において、評価「◎」は1パスの切り込み量が0.25mm以上、且つ刃送り量が250mm/min以上が可能であって優良を意味する。評価「〇」は1パスの切り込み量が0.2mm以上、且つ刃送り量が200mm/min以上が可能であって良を意味する。評価「△」は1パスの切り込み量が0.15mm以上、且つ刃送り量が150mm/min以上が可能であって可を意味する。評価「×」は1パスの切り込み量が0.15mm未満、又は刃送り量が150mm/min未満となるものであって不良を意味する。評価「××」は加工途中に仮焼体が破損したものであって不良を意味する。
【0063】
これより、凹部3を形成する際の加工性に関しては、仮焼温度が1000℃以上1500℃以下であれば凹部3の形成は可能であるが、1200℃以上1300℃以下であると良好であることが分かった。仮焼温度が1200℃より低くなると、仮焼体の強度が低下
することにより、一定以上の高負荷の刃送り条件では仮焼体の破損が生じることが分かっ
た。
【0064】
次に、積層工程STEP6として、図2Bを参照して、第1のAl仮焼体1と第2のAl仮焼体2とを、第1の平面1aと第2の平面2aとを接触させた状態で積層させた。
【0065】
次に、焼成工程STEP7として、このように積層した第1及び第2のAl仮焼体1,2を焼成炉内にてAr雰囲気で押圧板としてのカーボン平板で挟み込んで、25kgf/cm(=2.45MPa)の荷重を積層方向にかけながら、炉内温度を1600℃として3時間焼成した。これにより、図2Cを参照して、Al焼結部材10が得られた。Al焼結部材10の嵩密度は表1に示す通りであった。
【0066】
そして、このAl焼結部材10に対して、接合部を含むように切断し、切断面を研磨加工した後、接合部を拡大鏡などを用いて実験者が目視した。その結果、接合部に接合不良や破損などは確認されず、凹部3に由来する中空構造にも破損や歪みなどは確認されなかった。
【0067】
実施例1~5の結果を表1にまとめた。
【0068】
【表1】
【0069】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1~6と同様に作製したAl成形体を焼成炉内にてAr雰囲気で炉内温度を1600℃として3時間焼成して2個のAl焼結体を得た。すなわち、比較例1においては、Al仮焼体1,2の代わりにAl焼結体を用いた。Al焼結体に凹部3の形成を実施例1~6において凹部3を形成したMC加工機を用いて加工することを試みたが、非常に困難であり、途中で断念した。
【0070】
(比較例2)
比較例2においては、実施例1~6と同様に作製したAl成形体を焼成炉内にてアルゴン雰囲気で炉内温度を900℃として3時間焼成して2個のAl仮焼体を得た。Al仮焼体に凹部3の形成を実施例1~6において凹部3を形成したMC加工機を用いて加工することを試みたが、加工時に仮焼体が破損したため、途中で断念した。
【0071】
(比較例3)
比較例3においては、焼成工程STEP7において積層した第1及び第2のAl仮焼体1,2にかける荷重を5kgf/cm(=0.49MPa)とした点を除いて、実施例2と同じ工程でAl焼結部材30を作製した。焼結体の密度は高く緻密であるものの、断面観察によって接合部に未接合箇所が確認され、中空構造を有するAl焼結部材10として不適であった。
【0072】
比較例1~3の結果を表2にまとめた。なお、比較例1は1600℃で焼成したものであるが、表2においては、便宜上、仮焼体の欄に記載した。
【0073】
【表2】
【0074】
(実施例7)
実施例7においては、第1及び第2のAl仮焼体1,2を、それぞれ直径400mm、厚さ10mmの円板状、及び直径400mm、厚さ25mmの円板状としたこと以外は、実施例6と同様にして、Al焼結部材10を作製した。
【0075】
(実施例8)
実施例8においては、実施例7を同様に、第1及び第2のAl仮焼体1,2を得た。そして、第1及び第2のAl仮焼体1,2を、それぞれ切削加工して、直径400mm、厚さ10mmの円板状、及び直径400mm、厚さ25mmの円板状とした。
次に、第1及び第2の平面形成工程STEP3,4として、実施例6と同様にして、第1のAl仮焼体1に第1の平面1aを、第2のAl仮焼体2に第2の平面2aを形成した。さらに、凹部形成工程STEP5として、実施例6と同様のMC加工により凹部3を形成した。
【0076】
なお、第1及び第2の平面1a,2aに対して♯600のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行い、第1及び第2の平面1a,2aの算術平均粗さ(Ra)を0.27μmとした。さらに、表面粗さRa0.01μmの平面を有するAl焼結体を用いて乾式で前記平面に垂直な方向に6000Paを掛けながら、第1及び第2の平面1a,2aをそれぞれ摺動させることにより、こられの平面1a,2aの表面粗さRaを0.18μmとした。
【0077】
次に、積層工程STEP6として、実施例6と同様にして、第1のAl仮焼体1と第2のAl仮焼体2とを、第1の平面1aと第2の平面2aとを接触させた状態で積層させた。
【0078】
次に、焼成工程STEP7として、実施例6と同様にして、焼成した。これにより、図2Cを参照して、Al焼結部材10が得られた。
【0079】
実施例7,8で得られたAl焼結部材10も、実施例6と同様に、接合部に接合不良や破損などは確認されず、凹部3に由来する中空構造にも破損や歪みなどは確認されなかった。実施例7,8の結果を表3にまとめた。そして、実施例7,8で作製したAl焼結部材10は、静電チャック用の基台として使用することが可能であることを確認した。
【0080】
(実施例9)
実施例9においては、図3における第1及び第2のAl仮焼体取得工程STEP11,12として、実施例6の第1及び第2のAl仮焼体取得工程STEP1,2と同様にして、2個のAl成形体を得た。次に、これらAl成形体を焼成炉内にてAr雰囲気で炉内温度を1500℃として3時間焼成して2個のAl仮焼体を得た。
【0081】
また、第3のAl仮焼体取得工程STEP13として、実施例6の第1及び第2のAl仮焼体取得工程STEP1,2と同様にして、1個のAl成形体を得た。次に、このAl成形体を焼成炉内にてAr雰囲気で炉内温度を1500℃として3時間焼成して1個のAl仮焼体13を得た。
【0082】
次に、図3における第1及び第2の平面形成工程STEP14,15として、図4Aを参照して、前記2個のAl仮焼体を、直径350mm、厚さ25mmの円板形状の第1のAl仮焼体11及び直径400mm、厚さ10mmの円板形状の第2のAl仮焼体12に加工した。第1のAl仮焼体11の第1の平面11a及び第2のAl仮焼体12の第2の平面12aは、♯170のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行った。また、前記1個のAl仮焼体を、外径400mm、内径349.5mm、厚さ25mmの円環形状の第3のAl仮焼体13に加工した。
【0083】
さらに、凹部形成工程STEP16として、実施例6の凹部13と同じ形状の凹部14をMC加工により第2の平面12aに形成した。
【0084】
次に、積層工程STEP17として、図4Bを参照して、第1のAl仮焼体11と第2のAl仮焼体12とを、第1の平面11aと第2の平面12aとを接触させた状態で積層させた。さらに、第2のAl仮焼体12の外周外側に剥離材15を介して第3のAl仮焼体13を、剥離材15を介して第1のAl仮焼体11の第1の平面11aの下方に設置した。なお、剥離材15は共に厚さ0.5mmのカーボンシートを用いた。
【0085】
次に、焼成工程STEP18として、このように積層した第1から第3のAl仮焼体11~13を、実施例1の焼成工程STEP7と同様にして焼成した。その後、第3のAl仮焼体13が焼成された部分を剥離することにより、図4Cを参照して、Al焼結部材20が得られた。
【0086】
そして、このAl焼結部材20に対して、接合部を含むように切断し、切断面を研磨加工した後、接合部を拡大鏡などを用いて実験者が目視した。その結果、接合部に接合不良や破損などは確認されず、凹部14に由来する中空構造にも破損や歪みなどは確認されなかった。
【0087】
実施例7~9の結果を表3にまとめた。
【0088】
【表3】
【符号の説明】
【0089】
1,11…第1のAl仮焼体、 1a,11a…第1の平面、 2,12…第2のAl仮焼体、 2a,12a…第2の平面、 3、14…凹部、 13…第3のAl仮焼体、 15…剥離材、 10,20…Al焼結部材。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C