(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】改善された加工性を有する高溶融強度ポリプロピレン
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20241216BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20241216BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20241216BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241216BHJP
C08L 23/14 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/00
C08L23/06
C08L23/08
C08L23/14
(21)【出願番号】P 2019542421
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(86)【国際出願番号】 US2018012140
(87)【国際公開番号】W WO2018147944
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2019-08-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】シュミット サシャ ピー
(72)【発明者】
【氏名】ペーラート ジョージ ジェイ
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】岡谷 祐哉
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0123431(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0193272(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン組成物であって、組成物の質量に対して95質量%から60質量%の分枝ポリプロピレンと、組成物の質量に対して5質量%から40質量%の範囲内の低分子量ポリオレフィンとを含み、
分枝ポリプロピレンが、0.98未満の分枝指数g’(vis);0.1g/10分から20g/10分の範囲内のメルトフローレート(ASTM D1238、230℃/2.16kg);少なくとも20cNの溶融強度(190℃);および少なくとも5のMw/Mnを有し、
低分子量ポリオレフィンが、100,000g/mol以下の重量平均分子量;および少なくとも50g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有し、
ポリプロピレン組成物は、
1秒
-1
の、5秒
-1
の、及び10秒
-1
の3種類の歪み速度で190℃で伸長レオロジーにより測定された場合、分枝ポリプロピレン単独が同じ歪み速度で190℃で伸長レオロジーにより測定されたときに示す
歪み硬化の、
それぞれ少なくとも90%の
歪み硬化を示す、ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
低分子量ポリオレフィンが、50g/10分から5,000g/10分の範囲内のメルトフローレート(230℃/2.16kg)を有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
低分子量ポリオレフィンが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
低分子量ポリオレフィンが、5未満のMw/Mnを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項5】
190℃での微小振幅振動性分光法により決定されたとき、分枝ポリプロピレン単独と比較して、500rad/秒で、少なくとも10%低い複素粘度を示す、請求項1から4のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項6】
ポリプロピレン組成物を生成するためのプロセスであって、
分枝ポリプロピレンおよび低分子量ポリオレフィンの質量に対して、95質量%から60質量%の範囲内の分枝ポリプロピレンを、5質量%から40質量%の範囲内の低分子量ポリオレフィンと合わせるステップであって、
分枝ポリプロピレンが、0.98未満の分枝指数g’(vis);0.1g/10分から20g/10分の範囲内のメルトフローレート(ASTM D1238、230℃/2.16kg);少なくとも20cNの溶融強度(190℃);および少なくとも5のMw/Mnを有し、
低分子量ポリオレフィンが、100,000g/mol以下の重量平均分子量;および少なくとも50g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有するステップと、
ポリプロピレン組成物を回収するステップとを含み、
ポリプロピレン組成物は、
1秒
-1
の、5秒
-1
の、及び10秒
-1
の3種類の歪み速度で190℃で伸長レオロジーにより測定された場合、前記分枝ポリプロピレン単独が同じ歪み速度で190℃で伸長レオロジーにより測定されたときに示す
歪み硬化の、
それぞれ少なくとも90%の
歪み硬
化を示す、プロセス。
【請求項7】
低分子量ポリオレフィンが、押出機に直接供給することにより、または低分子量ポリオレフィンと高い分子量のポリオレフィンとのマスターブレンドを初めに形成することにより合わせられる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
線状ポリプロピレンを有機過酸化物と合わせて、分枝ポリプロピレンを得るステップを含む、請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項9】
ポリプロピレンおよび有機過酸化物の質量に対して0.1質量%から5質量%の範囲内の有機過酸化物を合わせる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
ポリプロピレン組成物を溶融押出して、発泡成形品、熱成形品、および/または押出品を形成するステップをさらに含む、請求項6から9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物を含む、発泡成形品、熱成形品、または押出品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2017年2月7日に出願された仮出願第62/455,707号、および2017年3月13日に出願された欧州出願第17160477.0号の利益を主張し、これらの開示は、それらを参照することにより本明細書に組み込まれる。
本開示は分枝ポリプロピレンの改善された加工に関し、特に、分枝ポリプロピレンおよび低分子量ポリオレフィンの混合に関する。
【背景技術】
【0002】
剪断流動および伸長流動の両方に関与する工業用の押出プロセスにおけるポリプロピレンの適用性は、限定されてきた。これは、部分的に、その低い溶融強度および歪み硬化の不足が原因である。複数の取り組みが、ポリプロピレンの溶融強度および歪み硬化を改善するために本業界で試みられており、この取り組みには、分子量を増大させること、分子量分布(Mw/Mn)を広げること、超高分子量テールを追加すること、および/または長鎖分枝(LCB)を追加することが含まれる。
溶融強度および歪み硬化が改善されたポリプロピレンが作られているが、これらのポリプロピレンは、非常に高い剪断粘性を持つ傾向があり、それらを加工することが困難となる。高い溶融強度および歪み硬化を有するが、発泡成形および熱成形などの適用するための広範なプロセス操作窓を有するポリプロピレンを発見することが有益であろう。これが達成される1つの手法は、低分子量添加剤の添加によりプロセス温度を低下させて、粘度を減少させることである。しかしながら、この取り組みの課題は、より高い濃度の低分子量添加剤で、歪み硬化が減少することである。より良い取り組みが必要とされる。
関連する刊行物には、米国特許出願公開第2015/0018463号;米国特許出願公開第2010/222470号;米国特許出願公開第2003/0119996号;米国特許第4,897,452号;米国特許第6,103,833号;米国特許第9,410,034号;欧州特許第1159,309号B1;欧州特許出願公開第2325248号;欧州特許出願公開第2386601号;欧州特許出願公開第2433982号;国際公開第2010/049371号;国際公開第2014/070384号;国際公開第2015/200586号;国際公開第2016/053468号;および特開2010-043162号公報;ならびにM. E. Shivokhin, L. Urbanczyk, J. Michel, and C. Bailly, in "The influence of molecular weight distribution of industrial polystyrene on its melt extensional and ultimate properties", 56(9) POLYMER ENGINEERING & SCIENCE, 1012-1020 (September 2016)が含まれる。
【発明の概要】
【0003】
ポリプロピレン組成物を生成するためのプロセスであって、分枝ポリプロピレンを、少なくとも50g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を有する低分子量ポリオレフィンと合わせて、ポリプロピレン組成物を得るステップを含む(またはそのステップからなる、またはそのステップから本質的になる)、プロセスが、本明細書に記載される。10から40cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)を有する線状ポリプロピレンを、有機過酸化物と合わせて、20から80cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)を有する分枝ポリプロピレンを得るステップであって、ここで、分枝ポリプロピレンの溶融強度が、線状ポリプロピレンの溶融強度を超える、ステップと;0.1~20g/10分の範囲内のメルトフローレート、および少なくとも5のMw/Mnを有する分枝ポリプロピレンを、分枝ポリプロピレンおよびポリプロピレンホモポリマーの質量に対して5から40質量%までの範囲内の、少なくとも50g/10分のメルトフローレートおよび5未満のMw/Mnを有するポリプロピレンホモポリマーと合わせて、ポリプロピレン組成物を得るステップとを含み(またはそれらのステップからなり、またはそれらのステップから本質的になり)、ここで、そのポリプロピレン組成物は、0.5から40g/10分までの範囲内のメルトフローレート、20から80cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)を有し、かつ分枝ポリプロピレンにより示される歪み硬化の少なくとも90%を示す。
【0004】
分枝ポリプロピレン、および少なくとも50g/10分のメルトフローレートを有する低分子量ポリオレフィンを含む(または、それらから本質的になる)ポリプロピレン組成物も記載される。とりわけ、分枝ポリプロピレンおよびポリプロピレンホモポリマーの質量に対して95から60質量%までの範囲内の、20から80cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)、および0.1~20g/10分の範囲内のメルトフローレートを有する分枝ポリプロピレンと;分枝ポリプロピレンおよびポリプロピレンホモポリマーの質量に対して5から40質量%までの範囲内の、少なくとも50g/10分のメルトフローレートを有するポリプロピレンホモポリマーとを含む(またはそれらから本質的になる)ポリプロピレン組成物を含む(またはそれから本質的になる)、発泡成形品、熱成形品、および/または押出品が記載され、ここで、そのポリプロピレン組成物は、0.5から40g/10分までの範囲内のメルトフローレート、20から80cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)を有し、かつ分枝ポリプロピレンにより示される歪み硬化の少なくとも90%を示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】1
秒
-1
の
歪み速度での時間の関数としての粘度を示す、比較用混合物および2つの本発明の混合物の伸長レオロジーのトレースである。
【
図2】5
秒
-1
の
歪み速度での時間の関数としての粘度を示す、比較用混合物および2つの本発明の混合物の伸長レオロジーのトレースである。
【
図3】10
秒
-1
の
歪み速度での時間の関数としての粘度を示す、比較用混合物および2つの本発明の混合物の伸長レオロジーのトレースである。
【
図4】剪断粘性の関数としての角周波数を示す、比較用混合物および2つの本発明の混合物の、SAOSのトレースである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
低分子量添加剤である、本明細書で使用される低分子量ポリオレフィンの分子量および濃度の賢明な選択により、高い溶融強度および歪み硬化されたポリプロピレンの剪断粘性を減少させながら、歪み硬化(伸長厚化)のレベルを同時に維持することができることが発見された。この挙動はユニークであり、以前にポリプロピレンでは実証されていなかった。歪み硬化は、熱成形、繊維引抜/紡糸、インフレートフィルム、発泡成形におけるような伸長流動に関与する工業的応用、ならびに剪断および伸長流動変形の両方に関与する他の工業的応用にとって重要である。本発明は、以下に、より詳細に記載され、所望の末端のポリプロピレン組成物をもたらす出発材料およびプロセスの記載に基づいて順序付けられている。
(線状ポリプロピレン)
ここで、本明細書全体にわたって、用語「線状ポリプロピレン」は、0.98を超える分枝指数g’(vis)を有する「分枝ポリプロピレン」を形成するのに有益な、反応器グレードのポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーを指す。本発明のあらゆる実施形態において最も好ましい線状ポリプロピレンは、本明細書に記載される特性を有し、かつ当業者に公知のあらゆる手段によっても作ることができるが、最も好ましくは、チーグラー・ナッタのスクシネート含有触媒を使用して生成される。ここで言う特性とは、非過酸化物「添加剤」、例えば、抗酸化剤、アルキルラジカル捕捉剤等との溶融混合前または溶融混合後の、反応器グレードの材料の特性である。任意の実施形態では、望ましい線状ポリプロピレンは、プロピレン由来単位のホモポリマーであるか、または線状ポリプロピレンの質量に対して0.20、または0.40、または0.80質量%から、1.0、または2.0、または4.0、または6.0質量%までの範囲内の、エチレンまたはC4-C12α-オレフィン由来単位、最も好ましくはエチレン、1-ブテン、または1-ヘキセン由来単位を含むコポリマーであり、その残りは、プロピレン由来単位である。
【0007】
有益な線状ポリプロピレンを生成するのに適切なチーグラー・ナッタ触媒には、米国特許第4,990,479号、および米国特許第5,159,021号、および国際公開第00/63261号等に記載される固体状チタン担持触媒系が含まれる。簡潔に言えば、チーグラー・ナッタ触媒は:(1)20~25℃で液体である芳香族炭化水素中でジアルコキシマグネシウム化合物を懸濁するステップ;(2)ジアルコキシマグネシウム炭化水素組成物を、チタンハライド、および芳香族ジカルボン酸のジエステルと接触させるステップ;および(3)ステップ(2)の生じた官能性ジアルコキシマグネシウム炭化水素組成物を、追加のチタンハライドと接触させるステップにより得ることができる。
「触媒系」には、典型的には、チタン、ならびにマグネシウム、ハロゲン、少なくとも1つの非芳香族「内部」電子供与体、および少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の「外部」電子供与体を含む、固体状チタン触媒成分が含まれる。固体状チタン触媒成分は、チーグラー・ナッタ触媒とも言われ、マグネシウム化合物、チタン化合物、および少なくとも内部電子供与体との接触により調製できる。固体状チタン触媒成分の調製で使用されるチタン化合物の例には、式(I):
Ti(ORn)X4-n (I)
を有する四価チタン化合物が含まれ、式中、Rが、ヒドロカルビルラジカルであり、Xが、ハロゲン原子であり、nが、0~4である。
【0008】
用語「ヒドロカルビルラジカル」、「ヒドロカルビル」、および「ヒドロカルビル基」は、特に明記しない限り、本明細書全体にわたって交換可能に使用される。本開示の目的のために、ヒドロカルビルラジカルは、適切な場合には、線状、分枝、または環式(芳香族または非芳香族)であることもある、C1-C20ラジカル、またはC1-C10ラジカル、またはC6-C20ラジカル、またはC7-C20ラジカルであると定義され;かつ他のヒドロカルビルラジカル、および/または元素周期表の第13~17族からの元素を含む1つまたは複数の官能基で置換された、ヒドロカルビルラジカルを含む。加えて、2つ以上のそのようなヒドロカルビルラジカルは、縮合環系をともに形成することもあり、その縮合環系は、部分的にまたは完全に水素化した縮合環系を含み、複素環式ラジカルを含んでもよい。
【0009】
好ましくは、ハロゲン含有チタン化合物は、四ハロゲン化チタンまたは四塩化チタンである。チタン化合物は、単独に、または互いに組み合わせて使用されてもよい。チタン化合物は、炭化水素化合物またはハロゲン化炭化水素化合物で希釈されてもよい。非限定的な例には、TiCl4、TiBr4、および/もしくはTiI4などの四ハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(O-n-C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、および/もしくはTi(O-イソ-C4H9)Br3を含む三ハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(O-n-C4H9)2Cl2、および/もしくはTi(OC2H5)2Br2を含む二ハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(O-n-C4H9)3Cl、および/もしくはTi(OC2H5)3Brを含む一ハロゲン化トリアルコキシチタン;ならびに/またはTi(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、および/もしくはTi(O-n-C4H9)4を含むテトラアルコキシチタンが含まれる。
好ましくは、固体状チタン触媒成分の調製で使用されるマグネシウム化合物には、被還元性を持つマグネシウム化合物、および/または被還元性を持たないマグネシウム化合物が含まれる。被還元性を持つ適切なマグネシウム化合物は、例えば、マグネシウム-炭素結合またはマグネシウム-水素結合を有するマグネシウム化合物であってもよい。そのような還元可能なマグネシウム化合物の適切な例には、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、および/またはハロゲン化ブチルマグネシウムが含まれる。これらのマグネシウム化合物は、単独で使用されてもよいか、または本明細書に記載されるような有機アルミニウム共触媒とともに錯体を形成してもよい。これらのマグネシウム化合物は、液体または固体であってもよい。
【0010】
被還元性を持たないマグネシウム化合物の適切な例には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、およびフッ化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、フェノキシ塩化マグネシウム、およびメチルフェノキシ塩化マグネシウムなどのハロゲン化アルコキシマグネシウム;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクタオキシマグネシウム、および2-エチルヘキサオキシマグネシウムなどのアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウムおよびジメチルフェノキシマグネシウムなどのアリールオキシマグネシウム;ならびに/またはラウリン酸マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウムなどのカルボン酸マグネシウムが含まれる。
非還元可能なマグネシウム化合物は、被還元性を持つマグネシウム化合物から誘導される化合物であってもよいし、または触媒成分を調製する時点で誘導される化合物であってもよい。被還元性を持たないマグネシウム化合物は、例えば、被還元性を持つマグネシウム化合物と、ポリシロキサン化合物、ハロゲン含有シラン化合物、ハロゲン含有アルミニウム化合物、エステル、アルコール等を接触させることにより、被還元性を持つ化合物から誘導されてもよい。
【0011】
被還元性を持つマグネシウム化合物、および/または被還元性を持たないマグネシウム化合物は、上記のマグネシウム化合物と他の金属との錯体、またはその化合物と他の金属化合物との混合物であってもよい。それらはまた、2つ以上のタイプの上記の化合物の混合物であってもよい。さらに、塩化マグネシウム、アルコキシ塩化マグネシウム、およびアリールオキシ塩化マグネシウムを含むハロゲン含有マグネシウム化合物が使用されてもよい。
担持チーグラー・ナッタ触媒は、共触媒と組み合わせて使用されてもよく、本明細書においてチーグラー・ナッタ共触媒とも言われる。分子中に少なくとも1つのアルミニウム-炭素結合を含む化合物が、共触媒として利用されてもよく、本明細書において有機アルミニウム共触媒とも言われる。適切な有機アルミニウム化合物は、一般式(II):
R1
mAl(OR2)nHpXq (II)
の有機アルミニウム化合物を含み、式中、R1およびR2が、同一かまたは異なり、各々が、1から15個までの炭素原子、または1~4個の炭素原子を含むヒドロカルビルラジカルを表し;Xが、ハロゲン原子を表し;mが、1、2、または3であり;nが、0、1、または2であり;pが、0、1、2、または3であり;およびqが、0、1、または2であり;ならびに、ここで、m+n+p+q=3である。
【0012】
他の適切な有機アルミニウム化合物には、一般式(III):
M1AlR1
4 (III)
により表された、第I族の金属(周期表、リチウム等)とアルミニウムとの錯体アルキル化化合物が含まれ、式中、M1は、Li、Na、またはKなどの第I族の金属であり、R1は式(II)で定義された通りである。
有機アルミニウム化合物の適切な例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリイソフェニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;ジエチルアルミニウムエトキシドおよびジブチルアルミニウムエトキシドなどの、ジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシドおよびブチルアルミニウムセスキブトキシドなどの、アルキルアルミニウムセスキアルコキシド;一般式R1
2.5Al(OR2)0.5により表される平均組成を有する部分的にアルコキシル化されたアルキルアルミニウム;二ハロゲン化アルキルアルミニウム、例えば、二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム、および二臭化ブチルアルミニウムなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;二水素化アルキルアルミニウム、例えば、二水素化エチルアルミニウムおよび二水素化プロピルアルミニウムなどの、部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;ならびにエチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、およびエチルアルミニウムエトキシブロミドなどの、部分的にアルコキシル化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムが含まれる。
【0013】
電子供与体は、本明細書に記載された線状ポリプロピレンを生成するのに適切な触媒を形成する際に、上記の金属成分とともに存在する。「内部」および「外部」電子供与体の両方は、本明細書に記載された線状ポリプロピレンを作るのに適切な触媒を形成するのに望ましい。より具体的に、内部電子供与体は、遷移金属ハロゲン化物が金属水素化物または金属アルキルと反応させられるような、触媒の形成反応で使用されてもよい。適切な内部電子供与体の例には、アミン、アミド、エーテル、エステル、ケトン、ニトリル、ホスフィン、スチルベン、アルシン、ホスホルアミド、チオエーテル、チオエステル、アルデヒド、アルコラート、および有機酸の塩が含まれる。
【0014】
より好ましくは、1つまたは複数の内部供与体は、非芳香族である。非芳香族の内部電子供与体には、脂肪族アミン、アミド、エステル、エーテル、ケトン、ニトリル、ホスフィン、ホスホルアミド、チオエーテル、チオエステル、アルデヒド、アルコラート、カルボン酸、またはそれらの組合せが含まれてもよい。
さらにより好ましくは、非芳香族の内部電子供与体には、置換されているまたは置換されていないC
2-C
10ジカルボン酸のC
1-C
20ジエステルが含まれる。非芳香族の内部電子供与体は、式(IV):
【化1】
(IV)
の1つまたは複数のスクシネート化合物であってもよく、式中、R
1およびR
2が、独立して、C
1-C
20の線状もしくは分枝アルキル、アルケニル、またはシクロアルキルヒドロカルビルラジカルであり;およびR
3~R
6が、独立して、水素、ハロゲン、またはC
1-C
20の線状もしくは分枝アルキル、アルケニル、またはシクロアルキルヒドロカルビルラジカルであり、ここで、R
3~R
6ラジカルが、ともに結合されておらず、ここで、R
3~R
6ラジカルのうちの少なくとも2つが、環式二価ラジカル、またはその組合せを形成するように結合されている。
【0015】
式(IV)のR3~R5基は、水素であってもよく、R6は、第一級分枝、第二級、もしくは第三級アルキル、または3~20個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルからなる群から選択されるラジカルであってもよい。
【0016】
内部供与体は、一置換の非芳香族スクシネート化合物であってもよい。適切な例には、ジエチル-sec-ブチルスクシネート(secbutylsuccinate)、ジエチルヘキシルスクシネート、ジエチル-シクロプロピルスクシネート、ジエチル-トリメチルシリルスクシネート、ジエチル-メトキシスクシネート、ジエチル-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル-(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル-t-ブチルスクシネート、ジエチル-イソブチルスクシネート、ジエチル-イソプロピルスクシネート、ジエチル-ネオペンチルスクシネート、ジエチル-イソペンチルスクシネート、ジエチル-(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)スクシネート、ジイソブチル-sec-ブチルスクシネート、ジイソブチルヘキシルスクシネート、ジイソブチル-シクロプロピルスクシネート、ジイソブチル-トリメチルシリルスクシネート、ジイソブチル-メトキシスクシネート、ジイソブチル-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル-(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル-t-ブチルスクシネート、ジイソブチル-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-ネオペンチルスクシネート、ジイソブチル-イソペンチルスクシネート、ジイソブチル-(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)スクシネート、ジネオペンチル-sec-ブチルスクシネート、ジネオペンチルヘキシルスクシネート、ジネオペンチルシクロプロピルスクシネート、ジネオペンチルトリメチルシリルスクシネート、ジネオペンチルメトキシスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチルt-ブチルスクシネート、ジネオペンチルイソブチルスクシネート、ジネオペンチルイソプロピルスクシネート、ジネオペンチルネオペンチルスクシネート、ジネオペンチルイソペンチルスクシネート、および/またはジネオペンチル(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)スクシネートが含まれる。
【0017】
式(IV)と一致する構造を有する内部電子供与体は、R3からR6までの少なくとも2つのラジカルを含んでもよく、このラジカルは、水素とは異なり、かつC1-C20の線状もしくは分枝アルキル、アルケニル、および/またはシクロアルキルヒドロカルビル基から選択され、ヘテロ原子を含むこともある。水素とは異なる2つのラジカルは、同じ炭素原子に連結させられてもよい。適切な例には、ジエチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジエチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-(シクロヘキシルメチル)-2-イソブチルスクシネート、ジエチル-2-シクロペンチル-2-n-プロピルスクシネート、ジエチル-2,2-ジイソブチルスクシネート、ジエチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジエチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2,2-ジイソプロピル-ジエチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジエチル-2-(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2,2-ジメチルスクシネート、
【0018】
ジイソブチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-(シクロヘキシルメチル)-2-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロペンチル-2-n-プロピルスクシネート、ジイソブチル-2,2-ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジイソブチル-2-(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2,2-ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジネオペンチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-(シクロヘキシルメチル)-2-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロペンチル-2-n-プロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,2-ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジネオペンチル-2-(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル2,2-ジイソプロピルスクシネート、および/またはジネオペンチル2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネートを含む、2,2-二置換スクシネートが含まれる。
【0019】
水素とは異なる少なくとも2つラジカルは、式(IV)のR3からR6までの間の異なる炭素原子に連結させられてもよい。例には、R3およびR5、またはR4およびR6が含まれる。このような適切な非芳香族スクシネート化合物には:ジエチル-2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル-2,2-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジエチル-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジエチル-2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジエチル-2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジエチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジエチル-2,3-(1-トリフルオロメチル-エチル)スクシネート、ジエチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジエチル-2-t-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、
【0020】
ジエチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル-2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジエチル-2,2,3,3-テトラメチルスクシネート、ジエチル-2,2,3,3-テトラエチルスクシネート、ジエチル-2,2,3,3-テトラプロピルスクシネート、ジエチル-2,3-ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジイソブチル-2,2-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジイソブチル-2,3-ジエチル-2イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)スクシネート、
【0021】
ジイソブチル-2,3-n-プロピルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-テルブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル-2-n-プロピル-3-(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル-2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,2,3,3-テトラメチルスクシネート、ジイソブチル-2,2,3,3-テトラエチルスクシネート、ジイソブチル-2,2,3,3-テトラプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル-2,2-ジ-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジネオペンチル2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル2,3-(1,1,1-トリフルオロ-2プロピル)スクシネート、ジネオペンチル-2,3-n-プロピルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-t-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル-2-n-プロピル-3-(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル-2,2,3,3-テトラメチルスクシネート、ジネオペンチル2,2,3,3-テトラエチルスクシネート、ジネオペンチル-2,2,3,3-テトラプロピルスクシネート、および/またはジネオペンチル-2,3-ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネートが含まれる。
【0022】
式(IV)の電子供与体は、環式の多価ラジカルを形成するように連結させられる、同じ炭素原子に結合されている2または4つのR3~R6ラジカルを含んでもよい。適切な化合物の例には、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチル)-2,6-ジメチルシクロヘキサン、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチル)-2,5-ジメチル-シクロペンタン、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチルメチル)-2-メチルシクロヘキサン、および/または1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンが含まれる。
【0023】
好ましくは、内部電子供与体は、ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジ-n-ブチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジエチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジエチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジエチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-(シクロヘキシルメチル)-3-エチル-3-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-(シクロヘキシルメチル)-3-エチル-3-メチルスクシネート、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0024】
内部供与体と合わせて、2つ以上の外部電子供与体もまた、触媒と組み合わせて使用されてもよい。外部電子供与体は、一般式(V):
R1
nSi(OR2)4-n (V)
の有機ケイ素化合物を含んでもよく、式中、R1およびR2が、独立して、ヒドロカルビルラジカルを表し、およびnが、1、2、または3である。
適切な有機ケイ素化合物の例には、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソ-プロピルジエトキシシラン、t-ブチルメチル-n-ジエトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビス-o-トリルジメトキシシラン、ビス-m-トリルジメトキシシラン、ビス-p-トリルジメトキシシラン、ビス-p-トリルジメトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチル-ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニル-トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピル-トリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、[γ]-クロロプロピルトリ-メトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、イソ-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロ-ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、エチルシリケート、ブチルシリケート、トリメチル-フェノキシシラン、メチルアリルオキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、および/またはジメチルテトラエトキシジシロキサンが含まれる。
【0025】
nが0、1、または3である有機ケイ素化合物の適切な例には、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メチル-フェニルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、t-ブチル-メチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、デシル-トリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリ-メトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、および/または2-ノルボルナントリエトキシシランが含まれる。
【0026】
好ましくは、外部電子供与体は、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、および/またはシクロヘキシルトリメトキシシランのうちのいずれか1つまたは複数から選択される。
外部電子供与体は、立体規則性を制御するように作用し、これにより、所与の系中で生成されたイソタクチックポリマー対アタクチックポリマーの量に影響を与える。より立体規則性のイソタクチックポリマーは、より結晶質であり、これにより、より高い曲げ弾性率を有する材料がもたらされる。高結晶質のイソタクチックポリマーは、重合中の水素応答性が減少した結果として、低いメルトフローレート(MFR)も示す。所与の外部電子供与体の立体規則性能および水素応答性は、典型的には、直接関係する、および反比例する。
【0027】
上に開示された有機ケイ素化合物は、そのような有機ケイ素化合物に変化可能な化合物を、オレフィンを重合した時点、または予備重合した時点で添加し、有機ケイ素化合物が、オレフィンの重合または予備重合の間にインサイチュで形成されてもよいように使用できる。
任意の実施形態では、線状ポリプロピレンの生成には、2つの外部電子供与体の使用が含まれてもよい。2つの外部電子供与体は、本明細書に記載された外部電子供与体のうちのいずれから選択されてもよい。しかし、特定の実施形態では、第1の外部電子供与体は、式R1
2Si(OR2)2を有し、式中、各R1が、独立して、Siに隣接する炭素が第二級または第三級炭素原子である、1から10個までの炭素原子を含むヒドロカルビルラジカルであり、式中、各R2が、独立して、1から10個までの炭素原子を含むヒドロカルビルラジカルであり;ならびに第2の外部電子供与体は、式R3
nSi(OR4)4-nを有し、式中、各R3およびR4が、独立して、1から10個までの炭素原子を含むヒドロカルビルラジカルであり、およびnが、1、2、または3であり;ここで、第2の外部電子供与体が、第1の外部電子供与体とは異なる。
【0028】
任意の実施形態では、第1の外部電子供与体および第2の外部電子供与体は、テトラエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン(dicyclopentydimethoxysilane)、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。チーグラー・ナッタ触媒系は、外部電子供与体の合計mol%に基づいて、2.5mol%~50mol%未満の第1の外部電子供与体、および50mol%を超える第2の外部電子供与体を含んでもよい。
任意の実施形態では、線状ポリプロピレンを作るための方法は、プロピレンモノマー(および、コモノマーでもよい)を、本明細書に記載されたようなプロピレン重合条件で触媒系に接触させて、線状ポリプロピレンの質量に対して少なくとも94.0、または96.0、または98.0、または99.0、または99.2、または99.6、または99.8、または100質量%のプロピレン由来単位、5を超える(または本明細書に記載されたような)Mw/Mn、および190℃で伸長レオメーターを使用して決定された少なくとも10cNの溶融強度(さらに以下に記載される)を含む、線状ポリプロピレンを生成するステップを含み、ここで、任意のコモノマーは、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、およびそれらの組合せから選択されてもよい。
【0029】
重合プロセスには、予備重合ステップが含まれることもある。予備重合には、有機アルミニウム共触媒の少なくとも一部分と合わせた非芳香族の内部電子供与体を含むチーグラー・ナッタ触媒系を利用するステップが含まれてもよく、ここで、外部電子供与体の少なくとも一部分が存在し、ここで、触媒系が、次の「本」重合プロセスで利用されるよりも高い濃度で利用される。
本重合段階および/または予備重合段階における触媒系の濃度は、0.01から200mMまで、またはより好ましくは、0.05から100mMまでであってもよく、1リットルの不活性炭化水素媒体当たりのチタン原子として算出される。有機アルミニウム共触媒は、存在するチタン触媒の1グラム当たり、0.1から500gまでのポリマー、またはより好ましくは0.3から300gまでのポリマーを生成するのに十分な量で存在してもよく、触媒成分中に存在するチタン原子の1mol当たり、0.1から100molまで、またはより好ましくは0.5から50molまでで存在してもよい。
【0030】
予備重合は、実行される場合、オレフィンおよび触媒成分が存在する不活性炭化水素媒体中の穏やかな条件下で実施されてもよい。使用される不活性炭化水素媒体の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、およびケロシンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、およびメチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素;塩化エチレンおよびクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ならびにそれらの混合物が含まれる。そのような不活性炭化水素は、本重合プロセスで同様に使用できる。また、予備重合で使用されるオレフィンは、本重合で使用される予定のオレフィンと同じであってもよい。予備重合のための反応温度は、生じた予備重合物が、不活性炭化水素媒体に実質的に溶解しない温度であってもよく、-20から+100℃まで、または-20から+80℃まで、または0から40℃までであってもよい。
予備重合の間に、水素などの分子量制御剤が使用されてもよい。分子量制御剤は、望ましくは、予備重合により得られるポリマーが、意図した生成物と一致する特性を有するような量で使用されてもよい。予備重合は、チタン触媒1グラム当たり、0.1から1000gまでのポリマー、またはより好ましくは0.3から300gまでのポリマーが形成されるように実行される。
プロピレンおよび任意選択のコモノマーの本重合は、気相、液相、バルク相、スラリー相、またはそれらの任意の組合せで実行されてもよい。特に、重合は、不活性炭化水素を反応溶媒として使用するか、またはオレフィン液体をその反応条件下でその溶媒として使用できる、スラリー重合により実行されてもよい。重合プロセスは、本重合の時点、本重合の前、例えば、予備重合の時点、またはそれらの組合せの時点で、チタン触媒成分、1つまたは複数の内部電子供与体、有機アルミニウム共触媒、および2つの外部電子供与体を、互いに接触させるステップを含む。本重合の前にそれらを接触させる際に、これらの成分のいずれか2つ以上を、自由に選択し、接触させてもよい。その成分のうちの2つ以上は、個々にまたは部分的に接触させられ、その後、触媒系を生成するために、合わせて互いに接触させられてもよい。いかなる場合も、水素を、重合の間に使用して、生じたポリマーの分子量および他の特性を制御してもよい。
【0031】
任意の実施形態では、重合条件には、20、または40、または60℃から、120、または140、または160、または180、または200℃までの範囲内の重合温度、および大気圧から最大100kg/cm2までの圧力、より好ましくは、2、または6kg/cm2から、20、または50、または100kg/cm2までの範囲内の圧力が含まれる。重合プロセスは、バッチ式に、半連続式もしくは連続式に、および/または2つ以上の反応器で連続して実行されてもよい。1つを超える反応器で実行された場合の各反応器における条件は、同じまたは異なることもある。その後、反応スラリー(バルクプロピレン中のホモポリマー顆粒)は、反応器から除去されてもよく、ポリマー顆粒は、液体プロピレンから連続的に分離される。その後、ポリマー顆粒は、配合特性および/または機械的特性のための粒状生成物を生成するために、未反応モノマーから分離されてもよい。
【0032】
いかなる場合も、線状ポリプロピレンは、本明細書に記載されるような望ましい特性を有する。任意の実施形態における線状ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、0.1、または0.2、または0.5g/10分から、4、または8、または10、または20g/10分までの範囲内にある。任意の実施形態では、線状ポリプロピレンのGPC-3D分析による重量平均分子量(Mw)は、100,000、または150,000、または200,000、または250,000g/molから、500,000、または550,000、または600,000、または800,000g/molまでの範囲内にある。任意の実施形態では、線状ポリプロピレンは、少なくとも5、もしくは6、もしくは8であるか、または5、もしくは6、もしくは8から、9、もしくは10、もしくは12、もしくは16までの範囲内の分子量分布(Mw/Mn)を有する。任意の実施形態では、本発明において有益な、望ましい線状ポリプロピレンのGPC-3D分析によるz-平均分子量(Mz)は、800,000、または1,000,000、または1,100,000g/molから、1,300,000、または1,400,000、または1,500,000、または1,800,000、または2,000,000g/molまでの範囲内にあり、z-平均分子量および重量平均分子量(Mz/Mw)の比は、2.8、もしくは2.9、もしくは3.0を超えるか、または2.8、もしくは2.9、もしくは3.0、もしくは3.5から、4.0、もしくは4.5、もしくは5.0までの範囲内にあり、2.8を超える値は、線状ポリエチレンに対する高分子量部分を示す。
【0033】
有益な線状ポリプロピレンは、他の望ましい特性を有することもある。任意の実施形態では、線状ポリプロピレンは、20、もしくは25、もしくは30の降伏点における張力、もしくは25MPaから、40、もしくは45、もしくは50、もしくは55、もしくは80MPaまでの範囲内の降伏点における張力(Instron Machineを使用し、50.8mm/分(2.0in/分)のクロスヘッド速度、および50.8mm(2.0in)のゲージ長さを用いる、ASTM D638)を有する。任意の実施形態では、線状ポリプロピレンは、1800、または1900、または2000MPaから、2100、または2200、または2400、または2600MPaまでの範囲内の1%割線曲げ弾性率を有する(Instron Machineを使用して、1.27mm/分(0.05in/分)のクロスヘッド速度、および50.8mm(2.0in)の支持スパンを使用する、ASTM D790A)。任意の実施形態では、線状ポリプロピレンは、190℃で、少なくとも10、もしくは15、もしくは20cNの溶融強度、または10、もしくは15、もしくは20、もしくは30cNから、35、もしくは40cNまでの範囲内の溶融強度(以下に記載された伸長レオロジーにより決定される)を有する。任意の実施形態では、以下に記載された分枝ポリプロピレンの溶融強度は、線状ポリプロピレンの溶融強度を超え、好ましくは、線状ポリプロピレンの溶融強度よりも、少なくとも5、または10、または15、または20cN高い。
【0034】
(分枝ポリプロピレン)
ここで、および明細書全体にわたって、用語「分枝ポリプロピレン」は、0.98、または0.97、または0.96未満の分枝指数g’(vis)を有する、ポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーを指す。分枝ポリプロピレンは、他の手段中でも、反応器グレードの分枝ポリプロピレンを形成するための触媒生成、または反応性押出などのあらゆる手段によって形成できる。好ましい分枝ポリプロピレンは、以下にさらに記載されるような他の特徴を有することもある。
【0035】
任意の実施形態では、分枝ポリプロピレンは、適切な条件下で、線状ポリプロピレンおよび有機過酸化物を合わせることによって形成され、ここで、「有機過酸化物」は、少なくとも1つの-(O)COO-基および/または-O-O-基を含む任意の有機化合物であり、ならびに好ましくは、芳香族および/またはハロゲン化芳香族炭化水素溶媒中で決定された、100℃未満の1時間半減期温度(1T1/2)、好ましくは、25、または35、または45℃から、65、または75、または85、または100℃までの範囲内の(1T1/2)を有する。
【0036】
任意の実施形態では、有機過酸化物は、(a)および(b)から選択される、1つまたは複数の構造を有する化合物から選択され:
【化2】
式中、各「R」基は、独立して、水素、C1またはC5-C24またはC30直鎖アルキル、C1またはC5-C24またはC30第二級アルキル、C1またはC5-C24またはC30第三級アルキル、C7-C34アルキルアリール、C7-C34アリールアルキル、およびそれらの置換された形態からなる群から選択される。最も好ましくは、有機過酸化物は、式(a)により表された構造から選択される。「置換された」が意味するものは、ハロゲン、カルボキシラート、ヒドロキシル基、アミン、メルカプタン、およびリン含有基などの置換基を有する、炭化水素「R」基である。特定の実施形態では、各「R」基は、独立して、オクチル、デシル、ラウリル、ミスリチル、セチル、アラキジル、べヘニル、エルシル、およびセリル基、ならびにそれらの直鎖、第二級、第三級形態などのC
8-C
20またはC24の直鎖、第二級、第三級アルキルから選択される。適切な有機過酸化物の詳細な非限定的な例には、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジブチルペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジドデシルペルオキシジカーボネート、ジイコシルペルオキシジカーボネート、およびジテトラコシルペルオキシジカーボネートが含まれる。
本明細書に記載された分枝ポリプロピレンの形成は、任意の実施形態では、線状ポリプロピレンを有機過酸化物と溶融混合することによって、特に、混合/押出の間の、剪断力、および線状ポリプロピレンの少なくとも融点の融解温度まで、例えば、少なくとも140、もしくは150、もしくは160℃まで、または140、もしくは150、もしくは160℃から、180、もしくは200、もしくは220、もしくは240、もしくは260、もしくは280、もしくは300℃までの範囲内まで放射加熱を適用することによって成し遂げられる。適切な手段には、一軸もしくは二軸スクリュー押出機、またはBrabenderタイプの装置が含まれる。最も好ましくは、有機過酸化物および線状ポリプロピレンの質量に対して0.1、または0.5、または1から、2、または3、または4、または5質量%までの範囲内の有機過酸化物が、線状ポリプロピレンと合わせられる。
【0037】
任意の実施形態では、分枝ポリプロピレンは、押出プロセスから直接、真空下で処置および/または溶媒洗浄することなく、反応器フレークおよび/もしくは顆粒、または押出ペレットへと形成される。
任意の実施形態では、分枝反応および/または架橋反応前に、顆粒が均一にコーティングされ、高い比表面積が利用されるように、過酸化物が、線状ポリプロピレンと反応する前に溶融することが好ましい。任意の実施形態では、本明細書において使用される線状ポリプロピレンの反応器顆粒は、押出ペレットよりも好ましい。そのような線状ポリプロピレン顆粒は、好ましくは、例えば、一軸または二軸スクリュー押出機(「溶融押出」)で溶融混合するように、「合わせる」前に、有機過酸化物と乾式混合される。
【0038】
任意の実施形態では、有機過酸化物と線状ポリプロピレンとの間の反応の生成物には、二酸化炭素、ならびにアルコール、好ましくは、C8-C24アルコール、および最も好ましくは、その反応で使用される、水酸基当量の有機過酸化物であるアルコールからなる、分解生成物が含まれることもある。アルコールは、典型的には、存在するにしても、分枝ポリプロピレンの質量に対して2、または1、または0.5質量%でしか存在しない。このように記載されるように、分枝ポリプロピレンは、組成物に関して本明細書に記載される特性のうちのいずれかを有することもある。
このように形成されて、本明細書に記載された分枝ポリプロピレンは、さらに処理することなく、そのまま輸送、運送、および/または貯蔵し、かつ低分子量ポリオレフィンとの混合の際に使用して、発泡成形および非発泡成形の両方の、任意数の物品を作ることができる。任意の実施形態では、発泡剤が、輸送後までに活性化せず、そのまま発泡成形品を作ることができるように、上記の加熱/押出プロセスの間に添加されてもよい。好ましくは、低分子量ポリオレフィンも、発泡成形前に分枝ポリプロピレンに混合される。言及されるように、組成物は、そう望まれるのであれば、物品を形成し、かつ発泡成形を成し遂げるために、後に再び加熱/押出されてもよい。
【0039】
分枝ポリプロピレンは、その前駆体の線状ポリプロピレンと同じレベルのプロピレンおよびコモノマー由来単位を有するであろう。任意の実施形態では、ブタジエン、イソプレン、ノルボルネン、および1,9-デカジエンなどのジエンモノマー(少なくとも2つの共役または非共役炭素-炭素二重結合を有する、直鎖、分枝、または環式のC4-C20アルケン)は、分枝ポリプロピレン中には存在せず、および/または分枝ポリプロピレンの形成における全てのプロセスのステップにおいて存在しない。本発明の組成物において有益なポリプロピレンは、その線状ポリプロピレン前駆体とは異なるものとして、任意数のパラメーターにより特徴付けられる。任意の実施形態では、分枝ポリプロピレンは、少なくとも20、もしくは30、もしくは40cNの溶融強度、または20、もしくは30、もしくは40、もしくは45cNから、60、もしくは65、もしくは80cNまでの範囲内の溶融強度を有する。
任意の実施形態では、分枝ポリプロピレンは、0.1、または0.2、または0.5g/10分から、4、または8、または10、または20g/10分までの範囲内のMFRを有する。
【0040】
任意の実施形態では、分枝ポリプロピレンは、18,000、または20,000、または24,000、または28,000g/molから、40,000、または44,000、または48,000、または50,000g/molまでの範囲内の、GPC-3D分析による数平均分子量(Mn)を有する。また任意の実施形態では、そのポリプロピレンは、250,000、または300,000、または350,000g/molから、450,000、または500,000、または550,000、または600,000g/molまでの範囲内の、GPC-4D分析による重量平均分子量(Mw)を有する。また任意の実施形態では、分枝ポリプロピレンは、1,000,000、または1,100,000、または1,200,000g/molから、1,500,000、または1,600,000、または1,700,000、または1,800,000g/molまでの範囲内の、GPC-4D分析によるz-平均分子量(Mz)を有する。その高分子量成分または「テール」の指標として、分枝ポリプロピレンは、任意の実施形態において、3.0、もしくは3.2、もしくは3.6を超えるMz/Mw値、または3.0、もしくは3.2、もしくは3.6から、4.0、もしくは4.5、もしくは5.0、もしくは6.0までの範囲内のMz/Mw値を有する。また、分枝ポリプロピレンは、30、もしくは35、もしくは40を超えるMz/Mn、または30、もしくは35、もしくは40から、44,もしくは48、もしくは50、もしくは55、もしくは60までの範囲内のMz/Mnを有する。また、分枝ポリプロピレンは、任意の実施形態では、少なくとも5、もしくは6、もしくは8、もしくは10のMz/Mn、または5、もしくは6、もしくは8、もしくは10から、16、もしくは18、もしくは20までの範囲内のMz/Mnを有する。
【0041】
分枝ポリプロピレンは、ピーク伸長粘度の増大で証明されるような、改善された歪み硬化(線状ポリプロピレンと比較して)を有する。任意の実施形態では、分枝ポリプロピレンは、0.01/sec(190℃)の歪み速度において、50、もしくは55、もしくは60kPa・秒を超えるピーク伸長粘度(アニールした)、または50、もしくは55、もしくは60kPa・秒から、500、もしくは550、もしくは600kPa・秒までの範囲内のピーク伸長粘度(アニールした)を有する。任意の実施形態では、分枝ポリプロピレンは、0.01/secの歪み速度(190℃)において、500、もしくは550、もしくは600kPa・秒を超えるピーク伸長粘度(アニールした)、または500、もしくは550、もしくは600kPa・秒から、2000、もしくは2500、もしくは3000kPa・秒までの範囲内のピーク伸長粘度(アニールした)を有する。
【0042】
(ポリプロピレン組成物)
任意の実施形態では、上記のような分枝ポリプロピレン、および低分子量ポリオレフィンを含む(または、それらから本質的になる)ポリプロピレン組成物が開示される。任意の実施形態では、組成物は、低分子量ポリオレフィンおよび分枝ポリプロピレンの質量に対して5または10質量%から、15、または20、または25、または30、または35、または40質量%までの範囲内の低分子量ポリオレフィンを含む。最も好ましくは、組成物の残りは、分枝ポリプロピレンおよび添加剤である。
任意の実施形態では、ポリプロピレン組成物は、同じ歪み速度における190℃での伸長レオロジーにより測定されたときの、分枝ポリプロピレン単独により示される歪み硬化の少なくとも90%または95%を示す。また、任意の実施形態では、ポリプロピレン組成物は、190℃での微小振幅振動性分光法(small-amplitude oscillatory spectroscopy)により決定されたとき、分枝ポリプロピレン単独と比較して、500rad/秒で、少なくとも10%または5%低い複素粘度を示す。任意の実施形態では、その組成物は、発泡成形品、熱成形品、および/または押出品へと形成されてもよい。望ましい物品には、カップ、プレート、食品コンテナ、および絶縁コンテナが含まれる。
「低分子量ポリオレフィン」は、80,000または100,000g/mol以下の重量平均分子量を有するポリオレフィンポリマーであり、好ましくは、エチレンおよびC4-C10由来単位を含み、最も好ましくは、プロピレン由来単位を含み、かつエチレン由来単位を含んでもよい。任意の実施形態では、低分子量ポリオレフィンは、少なくとも50、もしくは100、もしくは200、もしくは500g/10分のメルトフローレート(230℃/2.16kg)、または50、もしくは100、もしくは200、もしくは500g/10分から、1500、もしくは2000、もしくは5000g/10分までの範囲内のメルトフローレート(230℃/2.16kg)を有する。
【0043】
任意の実施形態では、低分子量ポリオレフィンは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、低分子量ポリオレフィンは、ポリプロピレンホモポリマーであり、1または2質量%未満のエチレンまたはC4-C10由来単位を含むことを意味する。
任意の実施形態では、低分子量ポリオレフィンは、5、または4、または3未満のMw/Mnを有する。
組成物は、分枝ポリプロピレン単独よりも加工可能であるが、独立気泡構造を形成するための望ましいレベルの歪み硬化を維持するので、熱成形品、および特に発泡成形品に適切である。したがって、任意の実施形態では、発泡成形品、熱成形品、および/または押出品は、分枝ポリプロピレンおよびポリプロピレンホモポリマーの質量に対して95から60質量%までの範囲内の、20から80cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)、および0.1~20g/10分の範囲内のメルトフローレートを有する、分枝ポリプロピレンならびに少量の添加剤と;分枝ポリプロピレンおよびポリプロピレンホモポリマーの質量に対して5から40質量%までの範囲内の、少なくとも50g/10分のメルトフローレートを有するポリプロピレンホモポリマーとを含むポリプロピレン組成物を含み、ここで、そのポリプロピレン組成物は、0.5から40g/10分までの範囲内のメルトフローレート、20から80cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)を有し、かつ分枝ポリプロピレンにより示される歪み硬化の少なくとも90%を示す。
【0044】
ほぼあらゆる混合技術を、成分を合わせ、ポリプロピレン組成物を生成するために使用できる。望ましくは、本発明のプロセスは、線状ポリプロピレンを有機過酸化物と合わせて、分枝ポリプロピレンを得るステップと;分枝ポリプロピレンを低分子量ポリオレフィンと合わせて、ポリプロピレン組成物を得るステップとを含む。望ましくは、低分子量ポリオレフィンおよび分枝ポリプロピレンの質量に対して5または10質量%から、15、または20、または25、または30、または35、または40質量%までの範囲内の低分子量ポリオレフィンが合わせられる。残りは、抗酸化剤、充填剤、および当技術分野において公知の他の添加剤などの添加剤を含むか、または含まない分枝ポリプロピレンである。その成分は、最も好ましくは、高分子原料を溶融させるが分解温度よりも低い温度、好ましくは190から260℃までの範囲内の温度で作動する、一軸または二軸スクリュー押出機を使用して溶融混合される。
【0045】
任意の実施形態では、低分子量ポリオレフィンは、押出機に直接供給することにより、好ましくは、その固体形態で押出機に直接供給することにより、またはより高い分子量のポリオレフィンを含む低分子量ポリオレフィンのマスターブレンドを初めに形成することにより、他の原料と合わせられる。
任意の実施形態では、ポリプロピレン組成物を生成するためのプロセスは、10から40cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)を有する線状ポリプロピレンを、有機過酸化物と合わせて、20から80cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)を有する分枝ポリプロピレンを得るステップであって、ここで、分枝ポリプロピレンの溶融強度が、線状ポリプロピレンの溶融強度を超える、ステップと;0.1~20g/10分の範囲内のメルトフローレート、および少なくとも5のMw/Mnを有する分枝ポリプロピレンを、分枝ポリプロピレンおよびポリプロピレンホモポリマーの質量に対して5から40質量%までの範囲内の、少なくとも50g/10分のメルトフローレートおよび5未満のMw/Mnを有するポリプロピレンホモポリマーと合わせて、ポリプロピレン組成物を得るステップとを含み、ここで、そのポリプロピレン組成物は、0.5から40g/10分までの範囲内のメルトフローレート、20から80cNまでの範囲内の溶融強度(190℃)を有し、かつ分枝ポリプロピレンにより示される歪み硬化の少なくとも90%を示す。
【0046】
本発明のポリプロピレン組成物およびプロセスに関する、それらを得るための、本明細書に開示される様々な記述要素および数値範囲は、本発明を記載するために他の記述要素および数値範囲と組み合わせることができ、さらに、所与の要素に関して、あらゆる数的上限は、本明細書に記載されたあらゆる数的下限と組み合わせることができ、これには、そのような組合せを可能とする管轄における例が含まれる。
【実施例】
【0047】
本発明の特徴を、以下の非限定的な例で実証する。初めに、試験方法および実験手順を記載する。
MFR。230℃で、2.16kgの荷重を用いる、ASTM D1238。
【0048】
DRIを使用する分子量決定(GPC-3D)。この方法は、本明細書に記載されたポリマーの分子量のモーメントを決定するために使用される2つの異なる方法、示されているように、いわゆる「GPC-3D」法および「GPC-4D」法のうちの最初のものを記載し、各々が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づいているが、異なる検出方法を使用する。GPC-3D法では、3つのインライン検出器である、示差屈折率検出器(DRI)、光錯乱(LS)検出器、および粘度計を備えた高温ゲル浸透クロマトグラフィー(Agilent PL-220)を使用することにより、数平均分子量(Mn)値を決定した。3つのAgilent PLgel 10μm Mixed-B LSカラムを使用した。公称流量は0.5mL/分であり、公称注入体積は300μLである。様々なトランスファーライン、カラム、粘度計、および示差屈折計(DRI検出器)を、145℃で維持されたオーブン中に収容した。抗酸化剤として6グラムのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を4リットルのAldrich試薬グレードの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中に溶解することにより、実験用の溶媒を調製する。その後、TCB混合物を、0.1μmテフロン(登録商標)フィルターを通して濾過する。その後、そのTCBを、GPC-3Dに進入させる前に、オンラインデガッサで脱気する。ポリマー溶液を、ガラス製容器中に乾燥ポリマーを配置し、所望量のTCBを添加し、その後、約2時間、連続的に振盪しながら160℃で混合物を加熱することにより調製した。全ての量は、質量分析により測定された。質量/体積単位のポリマー濃度を表すように使用されるTCB密度は、23℃で1.463g/ml、および145℃で1.284g/mlであった。注入濃度は、0.5から2.0mg/mlまでであり、より低い濃度は、より高い分子量の試料のために使用される。各試料を実行する前に、DRI検出器および粘度計をパージした。その後、装置中の流量を、0.5ml/分まで増大させ、DRIを、第1の試料を注入する前に、8時間安定させる。試料を実行する少なくとも1~1.5時間前に、LSレーザーの電源を入れる。クロマトグラムにおける各点の濃度「c」を、式:
c=(KDRI/IDRI)/(dn/dc)
を使用して、ベースラインが差し引かれたDRI信号、IDRIから算出し、式中、KDRIが、DRIの較正により決定された定数であり、(dn/dc)が、そのシステムの屈折率増分である。145℃でのTCBの屈折率n=1.500であり、λ=690nmである。GPC-3D法のこの記載の全体にわたるパラメーターの単位は、濃度が、g/cm3で表され、分子量が、g/molで表され、および固有粘度が、dL/gで表されるようなものである。
特に断りのない限り、全ての濃度は、g/cm3で表現され、全ての分子量は、g/molで表現され、および全ての固有粘度は、dL/gで表現される。GPC-3DまたはGPC-4Dのデータ処理に関して、使用したMark-Houwink定数は、K=0.000229およびa=0.705であり、ならびにdn/dc=0.1048mL/mgであった。A2(入力値)=0.0006であった。
【0049】
Ir検出器を使用する分子量決定(GPC-4D)。重量平均およびz-平均分子量(Mw、Mz)の分布およびモーメントを、マルチチャネルバンドフィルタベース赤外線検出器IR5、18アングル光散乱検出器(18-angle light scattering detector)、および粘度計を備えた高温GPC(Polymer Char GPC-IR)を使用して、GPC-4Dを使用して決定したか、またはGPC-3Dにより行われた場合に非常に類似した方法を使用して決定した。3つのAgilent PLgel 10μm Mixed-B LSカラムを使用して、ポリマーの分離をもたらした。300ppmの抗酸化剤BHTを含むAldrich試薬グレードのTCBを、移動相として使用した。TCB混合物を、0.1μmテフロン(登録商標)フィルターを通して濾過し、GPC機器に進入させる前に、オンラインデガッサで脱気する。公称流量は1.0mL/分であり、公称注入体積は200μLである。トランスファーライン、カラム、検出器を含むシステム全体を、145℃で維持されたオーブン中に収容した。所定量のポリマー試料を量り、添加された80μLのフローマーカー(ヘプタン)を含む標準バイアル中に密閉する。オートサンプラーにバイアルを装填した後、ポリマーを、8mLの添加されたTCB溶媒で、機器中で自動的に溶解する。そのポリマーを、約2時間、連続的に振盪しながら160℃で溶解させた。濃度計算で使用したTCB密度は、23℃で1.463g/ml、および145℃で1.284g/mlであった。試料溶液濃度は、0.2から2.0mg/mlまでであり、より低い濃度は、より高い分子量の試料のために使用される。
【0050】
クロマトグラムにおける各点の濃度「c」を、以下の式:
c=βI
を使用して、ベースラインが差し引かれたIR5広帯域信号強度「I」から算出し、式中、βが、ポリプロピレン基準を用いて決定された質量定数である。質量回収率を、濃度クロマトグラフィーの積分面積の溶出体積に対する比、および予め決定した濃度に注入ループ体積を乗じたものと等しい注入質量から算出する。
普遍的な較正関係を、700g/molから10,000,000g/molまでの範囲の、一連の単分散ポリスチレン(PS)標準を用いて実施されるカラム較正と組み合わせることにより、従来の分子量(IR MW)を決定する。各溶出体積のMWを、以下の式:
【数1】
を用いて算出し、式中、下付き文字「PS」を有する変数はポリスチレンを表し、下付き文字のないものは、試験試料である。この方法では、a
PS=0.67であり、K
PS=0.000175である一方で、「K」および「a」は、本明細書で使用されるようなポリプロピレンに関して、0.000229および0.705である。GPC-3DおよびGPC-4Dの両方の、全ての場合で、Mn、Mw、およびMzの値は、±10%の精度を有する。
【0051】
(分枝指数)
2つの圧力変換器とともにホイートストンブリッジ構成で配置された4つの毛細管を備えた、高温のViscotek社の粘度計を使用して、上記GPCからの溶出するポリマーの比粘度を決定した。一方の変換器は、検出器にわたる全圧力降下を測定し、ブリッジの両側面間に位置する他方の変換器は、差圧を測定する。粘度計を流れる溶液の比粘度ηsを、それらの出力から算出する。クロマトグラムの各点の固有粘度[η]を、以下の式:
ηs=c[η]+0.3(c[η])2
から算出し、式中、cは濃度であり、DRI出力から決定した。
【0052】
分枝指数(g’
vis)を、以下のように、GPC-DRI-LS-VIS法の出力を使用して算出する。試料の平均固有粘度[η]
avgを、
【数2】
により算出し、式中、総和は、積分限界間のクロマトグラフスライスiにわたる。
その後、分枝指数g’(vis)を
【数3】
のように定義し、式中、M
vは、LSレーザー分析により決定された分子量に基づく粘度平均分子量である。Z平均分枝指数(g’Z
ave)を、Ci=ポリマーピーク中のスライスiのポリマー濃度掛けるスライスの質量の2乗Mi
2を使用して算出する。1に近いg’(vis)の値は、線状ポリマーを示し、より低い値は、g’(vis)値が減少すると増大する、あるレベルの分枝を示す。
【0053】
SAOS。小角振動分光法(Small Angle Oscillatory Spectroscopy)を、低い剪断速度での粘度を決定するために使用した。ポリマー試料を、加熱プレス(Carver PressまたはWabash Pressのいずれか)を使用し準備して、直径25mmおよび厚さ2.5mmの円板を作った。剪断減粘性挙動を特徴付けるために、レオメーターARES-G2(TA Instruments)を使用して、温度190℃および10%の固定歪みで、0.01から500rad/秒までの範囲の角周波数における小角振動剪断測定を行った。その後、データを、剪断速度に応じて粘度に変換した。選択した歪みにより線形変更範囲内の測定が提供されることを保証するために、歪み掃引測定を行った(100Hzの角周波数で)。Triosソフトウェアを使用して、データを処理した。
【0054】
伸長レオロジー。ポリプロピレンの歪み硬化挙動を特徴付けるために、アニールした試料を、据え付けたSER取付具とともにDHR-3レオメーター(TA Instruments)を使用し試験して、伸長における応力を測定した。上記の手順(SAOS)を使用して、試料を準備し、その後、ほぼ長さ18mmおよび幅12.7mmの寸法を有する矩形形状へと切り込んだ。測定を、1、5、および10秒-1のHencky歪み速度ならびに190℃の温度で行った。Triosソフトウェアを使用して、データを処理した。試料を、3分間でおよそ200℃まで加熱することによりアニールして、圧力を用いることなくポリプロピレンペレットを溶融させた。その後、試料を2つのプレート間でさらに3分間加熱し続けながら、1500psiの圧力を加えた。後に、試料をさらに20分間200℃で加熱し続けながら、試料に加えられた圧力を除去した。20分後、さらに20分間いかなる圧力も加えることなく、試料を水循環で冷却した。本明細書において報告する溶融強度の値は、±10%の精度を有する。
成分を混合するための手順。表1に表記された成分を、ZSK30mm押出機を使用して溶融混合して、各例の混合物を生成し、ここで、15~50質量%(混合物の全ての成分の質量に基づく)の低分子量ポリオレフィン、この場合は、1550MFRのポリプロピレンホモポリマーを、Patterson Double Cone Blenderで、50~85質量%の分枝ポリプロピレンと予備混合した。出力を約10kg/時とし、窒素をホッパーに適用しながら、Coperion Werner and Pfleiderer ZSK 30mm押出機(二軸共回転スクリュー、L/D=36)へと、乾燥混合物を供給した。押出機のトルクは約50%、ダイ圧力は約400psi、およびスクリュー回転数は約200rpmであった。融解温度は、約435°F(222℃)であった。最後に、水中ペレタイザーを使用して、例の混合物の各々のペレットを生成した。
【0055】
190から220℃までの範囲内の温度で、1.5質量%のPerkadox(Akzo Nobel)を用いて上記のように作った、チーグラー・ナッタ生成線状ポリプロピレンホモポリマーを溶融押出することにより、分枝ポリプロピレン(b-PP)を生成した。全ての例示的な混合物において、b-PPは、0.98未満のg’(vis)、40±5cNの溶融強度、2.09g/10分のMFR、15のMw/Mn、および6のMz/Mwを有する。
全ての混合物において、低分子量ポリオレフィン(LMW-PO)は、1550g/10分のMFRおよび2.5のMw/Mn(GPC-3D)を有する、ポリプロピレンホモポリマー(100質量%のプロピレン由来単位)であった。
【0056】
表1の本発明のポリプロピレン組成物の概要:
・例1は、分枝ポリプロピレン(ポリプロピレンホモポリマー、100質量%のプロピレン由来単位)とLMW-POとの85:15の混合物であり、その混成物は、17.5cNの溶融強度を有しており、延伸比は5に近かった。
・例2は、分枝ポリプロピレン(100質量%のプロピレン由来単位)と、第三者の配合業者により混合されたPolyOneとの50:50の混合物であり;その混成物は、2.5cNの溶融強度を有しており、延伸比は12に近かった。
・例3は、50:50の混合物であるが、分枝ポリプロピレンが、ポリマーの質量に対して約0.55質量%以下のエチレン由来単位を有する。
・例4は、50:50の混合物であるが、分枝ポリプロピレンが、100質量%のプロピレン由来単位を有するポリプロピレンホモポリマーである。
表1.ポリプロピレン組成物
【表1】
【0057】
図4のSAOSデータは、ポリプロピレン組成物の粘度、したがって加工性が、分枝ポリプロピレン単独以上に改善されることを実証するが、
図1~3のデータは、その組成物が、分枝ポリプロピレンからの望ましいレベルの
歪み硬化を依然として有することを実証する。このように、ポリプロピレン組成物は、190℃での微小振幅振動性分光法により決定されたとき、分枝ポリプロピレンと比較して、500rad/秒で、少なくとも10%低い複素粘度を示す一方で、好ましくは、その組成物は、同じ歪み速度における、分枝ポリプロピレンにより示される
歪み硬化の少なくとも90%を示す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、特許請求されるポリマーまたはポリマー混合物が、指定された成分だけを含み、その測定された特性を10または20%以上変更する追加の成分は含まないことを意味し;最も好ましくは、追加の成分または「添加剤」が、組成物の質量に対して5、または4、または3、または2質量%未満のレベルで存在することを意味する。そのような添加剤には、例えば、充填剤、着色剤、抗酸化剤、アルキルラジカル捕捉剤、抗UV添加剤、酸捕捉剤、スリップ剤、硬化剤および架橋剤、脂肪族化合物および/または環式化合物含有オリゴマーまたはポリマー(「炭化水素樹脂」とも言う)、ならびに本技術分野で公知の他の添加剤が含まれる。
【0059】
プロセスに関する場合、句「から本質的になる」は、そのプロセスから生成されたポリマー、ポリマー混合物、または物品の特許請求される特性を10または20%以上変更するであろう他のプロセスの特徴が、存在しないこと意味する。
「文献による組み込み」の理論が適用される全ての管轄について、試験方法、特許公開、特許、および参照論文の全ては、それらの全体、またはそれらが参照される関連部分についてのいずれかを参照することにより、本明細書に組み込まれる。