(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】涙液層の状態を特定するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
A61B3/10
(21)【出願番号】P 2019544627
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 NL2018050117
(87)【国際公開番号】W WO2018156022
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-21
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519295904
【氏名又は名称】カッシーニ テクノロジーズ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ハイブレグトセ マールテン ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】デ フリース ハーイエ リンマー
【合議体】
【審判長】南 宏輔
【審判官】松本 隆彦
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0308100(US,A1)
【文献】特開2006-204773(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067332(WO,A1)
【文献】特表2012-522594(JP,A)
【文献】特表2006-511305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/12
A61B 3/13-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の涙液層の状態を特定するためのデバイスであって、
複数の光線を角膜表面上に投射するための源点のパターンを形成するように配置された少なくとも一つの光源と、
前記角膜表面上で反射されたそれぞれの複数の反射光線を受け取り、それにより像点のパターンを形成するように配置されたレンズ-カメラシステムと、
前記像点に基づいて前記眼の前記涙液層の前記状態を特定するように、および/または前記像点に基づいて前記眼の前記涙液層の前記状態を表すデータを特定し、前記眼の前記涙液層の前記状態を表す前記データをユーザに提供するように配置された演算ユニットと
を含み、
前記演算ユニットは、複数の像点の各々について、それぞれの像点の局所的歪みを表す値を特定するように配置され、それぞれの像点の前記局所的歪みを表す値は、前記眼の涙液層の前記状態を特定するために使用されうる、
前記演算ユニットは、像点の大域的歪みを表す値を特定するように配置され、それぞれの像点の前記大域的歪みを表す値は、多数、可能な全ての像点にほぼ同じように影響を与える大域的原因の効果を表し、
前記デバイスは、前記大域的歪みを表す値が所定の閾値を超えるときに、前記像点のパターンが前記眼の涙液層の前記状態を特定するのに適さないと判断するように構成されている、
デバイス。
【請求項2】
前記演算ユニットは、前記源点と前記像点とを比較することおよび/または前記源点のパターンと前記像点のパターンとを比較することに基づいて、前記眼の涙液層の前記状態を特定するように配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記演算ユニットは、
各像点の中心ポジションの周りの領域を定義するステップであって、前記定義された領域は重複せず
に隣接する、ステップと、
一つ一つの像点自体の定義された領域内の一つ一つの像点の形状を分析するステップと、
前記分析された形状に基づいて、一つ一つの像点につきそれぞれの像点の前記局所的歪みを表す値を定量化するステップと
によってそれぞれの像点の前記局所的歪みを表す値を確立するように配置される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記演算ユニットは、グリッド線のパターンを特定するように配置され、前記グリッド線の交差点は、特定された前記像点の位置によって形成され、前記グリッド線のパターン内の歪みによって前記眼の涙液層の前記状態またはそれを表すデータが特定されうる、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスは、前記眼の涙液層の前記状態および/または前記眼の涙液層の前記状態を表す前記データを表示するように配置されたディスプレイデバイスを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記演算ユニットは、前記源点のパターンに基づくパターン情報が提供されたメモリユニットを含み、前記演算ユニットは、前記複数の反射光線の各々について、前記パターン情報に基づいて源点と像点との間の1対1の対応を確立するように配置され、前記演算ユニットは、前記像点と前記源点との比較に基づいて、前記眼の前記涙液層の前記状態を特定するようにさらに配置される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記演算ユニットは、前記像点のパターンの像点と、前記源点のパターンの対応する源点との個々の比較に基づいて、前記眼の涙液層の前記状態を特定するように配置される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも一つの光源は、前記源点のパターンが少なくとも二つの異なる色を含むように異なる色の光線を投射する光源を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
眼の涙液層の状態を特定する方法であって、
-少なくとも一つの光源を用いて、源点のパターンからの複数の光線を角膜表面上に投射するステップと、
-レンズ-カメラシステムで、前記角膜表面上で反射されたそれぞれの複数の反射光線を受け取り、それにより像点のパターンを形成するステップと、
-演算ユニットを用いて、前記像点に基づいて前記眼の前記涙液層の前記状態を特定するステップ、および/または演算ユニットを用いて、前記像点に基づいて前記眼の前記涙液層の前記状態を表すデータを特定し、前記眼の前記涙液層の前記状態を表す前記データをユーザに提供するステップと
を含み、
前記眼の前記涙液層の前記状態を特定する
、および/または前記像点に基づいて前記眼の前記涙液層の前記状態を表すデータを特定し、前記眼の前記涙液層の前記状態を表す前記データをユーザに提供する前記ステップは、複数の像点の各々について、それぞれの像点の局所的歪みを表す値を特定するステップであって、それぞれの像点の前記局所的歪みを表す値は、前記眼の涙液層の前記状態を特定するために使用されうるステップを含み、
前記方法は、
像点の大域的歪みを表す値を特定するステップであって、それぞれの像点の前記大域的歪みを表す値は、多数、可能な全ての像点にほぼ同じように影響を与える大域的原因の効果を表す、ステップ、
前記像点の前記大域的歪みを表す値を用いて、個々の像点を前記大域的原因の前記効果につき補正または補償するステップ、および/または
前記大域的歪みを表す値が所定の閾値を超えるときに、前記像点のパターンが前記眼の涙液層の前記状態を特定するのに適さないと判断するステップ
を含む、方法。
【請求項10】
前記眼の前記涙液層の前記状態を特定する前記ステップは、前記源点と前記像点とを比較するステップ、および/または前記源点のパターンと前記像点のパターンとを比較するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記局所的歪みを表す値を特定する前記ステップは、
各像点の中心ポジションの周りの領域を定義するステップであって、前記定義された領域は重複せず
に隣接する、ステップと、
一つ一つの像点自体の定義された領域内の一つ一つの像点の形状を分析するステップと、
前記分析された形状に基づいて、一つ一つの像点につき
局所的歪み係数の値を定量化するステップと
を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、グリッド線のパターンを特定するステップであって、前記グリッド線の交差点は、特定された前記像点の位置によって形成され、前記グリッド線のパターン内の歪みは前記眼の涙液層の前記状態を表すステップを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、ディスプレイデバイスを用いて前記眼の涙液層の前記状態および/または前記眼の涙液層の前記状態を表す前記データを表示するステップを含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、それぞれの像点または像点のグループの局所的歪みを示すマップを作成するステップを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、
-前記源点のパターンに基づくパターン情報を提供するステップと、
-前記パターン情報に基づいて前記源点の各々とそれぞれの像点との間に1対1の対応を確立するステップと、
-前記眼の涙液層の前記状態を特定するために前記像点と前記源点とを比較するステップと
を含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記比較するステップは、前記像点のパターンの像点と、前記源点のパターンの対応する源点との個々の比較に基づいて、前記眼の涙液層の前記状態を特定するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の涙液層の状態を特定するデバイスに関する。本発明は、眼の涙液層の状態を特定する方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
眼の角膜表面は通常、涙液層、すなわち角膜表面上の涙液の層で覆われている。この涙液層は、涙膜または涙膜層としても知られる。涙液の蒸発により、瞼が瞬きの後に開いたままである間に涙液層は徐々に薄くなる。しばらくすると涙液層は壊れもするが、通常は涙液層が壊れる前に人は瞬きをする。角膜表面上の瞼の移動により、涙液層が回復される。
【0003】
従来技術において、涙液層の状態を監視するため、特に涙液層の破壊時間(TBUT:the break up time)を特定するために、いくつかのデバイスが提案されている。眼の瞬きとそれに続く涙液層の破壊との間の期間は、眼の瞬きの間に形成される涙液層の品質に関する情報を提供する。
【0004】
特許文献1は、角膜表面上に形成される涙液層の状態を非侵襲的に測定するように構成されたデバイスを開示する。特許文献1のデバイスは、複数の同心リングを含むリング形状のパターンを角膜表面上に投射する光学投射システムを含む。角膜表面からの投射光の反射像を受け取るために、撮像デバイス、例えばCCDカメラが提供される。操作ユニットが、撮像デバイスにより撮影された像の濃度値分布に基づいて、反射像の歪みの程度を計算する。計算された歪みの程度に基づいて、操作ユニットは涙液層の状態を定量化しうる。
【0005】
特許文献1のデバイスは、角膜表面上に形成される涙液層の状態を非侵襲的に測定でき、網膜からの反射像を利用せずに涙液層の状態を定量的に測定できるデバイスを提供するが、このデバイスの結果はまだ限定的である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、涙液層の状態の特定に関して改善された結果を提供することができる、涙液層の状態を特定するためのデバイスおよび/もしくは方法を提供すること、または少なくとも代替的デバイスおよび/または方法をそれぞれ提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、眼の涙液層の状態を特定するためのデバイスであって、
複数の光線を角膜表面上に投射するための源点のパターンを形成するように設けられた少なくとも一つの光源と、
角膜表面上で反射されたそれぞれの複数の反射光線を受け取り、それにより像点のパターンを形成するように設けられたレンズ-カメラシステムと、
像点に基づいて眼の涙液層の状態を特定するように、および/または像点に基づいて眼の涙液層の状態を表すデータを特定し、眼の涙液層の状態を表すデータをユーザに提供するように設けられた演算ユニットと
を含むデバイスを提供する。
【0009】
本発明のデバイスは、複数の光線を角膜表面上に投射するための源点のパターンと、角膜表面上で反射されたそれぞれの複数の反射光線によって形成される像点のパターンとを提供する。
【0010】
像点は、例えば欧州特許第1844702号で提案されるリングのパターンよりも有用な歪み情報を提供しうるため、像点は眼の涙液層の状態を特定するための良い基礎を提供しうることが分かっている。例えば、点はより正確な局所的定義を有する。リング形状のパターンは半径方向の変形を検出するためにしか使用できないのに対して、全ての方向の局所的変形が認識されうる。さらに、リング形状のパターンでは、投射されたパターンの局所的歪みと大域的歪みとを区別することがより困難でありうる。
【0011】
像点のパターンの使用の結果、涙液層の状態の特定は、少数の像のみ、すなわち五つ未満の像に基づきうる。特定は一つの像に基づくのが好ましい。
【0012】
演算ユニットは、像点に基づいて眼の涙液層の状態を特定するように設けられうる。演算ユニットは、例えば、眼内のある位置または領域での涙液層の現在の状態を表す値を計算し、この値が一つ以上の閾値を超えるか否かを示すように構成されうる。
【0013】
演算ユニットが、像点に基づいて眼の涙液層の状態を表すデータを特定し、眼の涙液層の状態を表すデータをユーザ、例えばデバイスの操作者、医師、またはこのデータに関心のある任意の他の人に提供するように設けられることも可能である。涙液層の状態を表すこのデータにより、ユーザは眼の涙液層の状態を特定することができ、好ましくは直接特定することができる。
【0014】
本発明のデバイスにより、ユーザは眼の涙液層の状態、または少なくとも眼の涙液層の状態を表すデータを取得または特定できるため、この情報がドライアイ症候群などの眼表面疾患の診断にも使用されうる。さらに、涙液層の状態は少数の像のみを用いて、したがって短い時間間隔内に特定されうるため、本発明のデバイスは、経時的な涙液層の発達を監視するためにも使用されうる。例えば、涙液層の破壊時間が特定されうる。
【0015】
一実施形態では、各源点はそれ自体の光源を有してもよく、例えば、各源点のためにLEDが提供されてもよいことに留意されたい。この実施形態では、デバイスは複数の光源を有することとなる。代替手段として、源点のサブグループの全ての源点が単一の光源、例えば端点が角膜表面に向かって光線を放出する源点を形成する複数の光ファイバに光が分配される光源にリンクされてもよい。
【0016】
一実施形態では、演算ユニットは、源点と像点とを比較することおよび/または源点のパターンと像点のパターンとを比較することに基づいて、眼の涙液層の状態を特定するように設けられる。源点と像点との比較またはそれらのパターンの比較を用いて、涙液層の状態を特定しうる。十分な厚さの均一な一貫した涙液層は、鏡状の反射を有する。その結果、像点と源点とが同様の形状および/または寸法を有する。例えば不均一な涙液層または比較的薄い涙液層の場合など、涙液層の状態が低下したときには、反射光線から形成される像点および/またはそれらのパターンは歪みがより大きくなる。
【0017】
一実施形態では、演算ユニットは、複数の像点の各々について、それぞれの像点の局所的歪みを表す値を特定するように構成され、それぞれの像点の局所的歪みを表す値が、眼の涙液層の状態を特定するために使用されうる。
【0018】
本明細書において、局所的歪みは、局所的原因により個々の源点が不完全に反射され、像点として受け取られる程度として定義される。この不完全な反射は通常、涙液層の局所的状態によって、すなわち他の位置での涙液層の状態とは独立に引き起こされる。不完全な反射は涙液層の局所的状態によって引き起こされるため、異なる像点では通常、これらの像点に関連する涙液層の状態がほぼ同じであっても、反射の形状および強度は異なる。
【0019】
本明細書において局所的歪み係数としても示されるそれぞれの像点の局所的歪みを表す値は、局所的に引き起こされた不完全な反射のみが考慮されることから、涙液層の局所的状態を表す値を提供する。
【0020】
一実施形態では、演算ユニットは、例えば、
各像点の中心ポジションの周りの領域を定義するステップであって、定義された領域は重複せずに好ましくは隣接する、ステップと、
一つ一つの像点自体の定義された領域内の一つ一つの像点の形状を分析するステップと、
分析された形状に基づいて、一つ一つの像点につきそれぞれの像点の局所的歪みを表す値を定量化するステップと
によって局所的歪みを表す値を確立するように設けられうる。
【0021】
この定量化は、例えば焦点が合った点では0、局所的歪みのある点では1でありうるが、より分散したスケール、例えば1~5の範囲または1~10の範囲を使用して、個々の像点の局所的歪みを局所的歪み係数に定量化することもできる。
【0022】
定義された領域の分布および関連する局所的歪み係数は、例えばある領域内の局所的歪みの量を示すために色コード/スケールを使用することによって、マップに表示されうる。
【0023】
一実施形態では、演算ユニットは、グリッド線のパターンを特定するように設けられ、グリッド線の交差点は、特定された像点の位置によって形成され、グリッド線のパターン内の歪みによって眼の涙液層の状態またはそれを表すデータが特定されうる。このグリッド線のパターンを特定するために、演算ユニットは最初に、例えば像点のパターンの各像点の中心点を計算することにより、像点の位置を計算しうる。これらの中心点が接続線によって互いに接続されて、グリッド線が形成されうる。
【0024】
源点のパターンは、例えば、ほとんどのグリッド線が互いに対して平行または垂直であるように選択されうる。その結果、グリッド線のパターンが多数の真直な平行または垂直のグリッド線を示すときには、涙液層の状態が比較的良好であると結論付けることができ、グリッド線のパターンが多数の非真直な非平行または非垂直のグリッド線を示すときには、涙液層の状態が比較的悪いと結論付けることができる。
【0025】
グリッド線のパターンは、ユーザがデータに基づいて眼の涙液層の状態を特定できるようにユーザに提示されうる。
【0026】
別の実施形態では、演算ユニットは、グリッド線の真直性およびグリッド線の互いに対する平行度または垂直度を分析することにより、グリッド線表現に基づいて眼の涙液層の状態を特定するように設けられうる。
【0027】
一実施形態では、デバイスは、眼の涙液層の状態および/または眼の涙液層の状態を表すデータを表示するように設けられたディスプレイデバイスを含む。ディスプレイデバイスはコンピュータスクリーンでありうるが、プリンタであってもよい。グラフィカル情報などの関連データがユーザに提示されうるのが有利である。ディスプレイデバイスは、例えば眼の涙液層の状態を表すグリッド線のパターンを表示するように設けられうる。
【0028】
一実施形態では、演算ユニットは、源点のパターンに基づくパターン情報が提供されたメモリユニットを含み、演算ユニットは、複数の反射光線の各々について、パターン情報に基づいて源点と像点との間の1対1の対応を確立するように設けられ、
演算ユニットは、像点と源点との比較に基づいて、眼の涙液層の状態を特定するようにさらに設けられる。
【0029】
源点と像点との比較のデータ結果は、例えばデータベースに記憶され、以前に取得された同じ眼のデータとまたは例えば同じ人の別の眼または他の人から取得された参照データと比較されうる。例えばドライアイ症候群などの眼表面疾患の治療効果を特定するために、より長期間にわたってデータが使用されてもよい。
【0030】
一実施形態では、演算ユニットは、像点のパターンの像点と、源点のパターンの対応する源点との個々の比較に基づいて、眼の涙液層の状態を特定するように設けられる。
【0031】
演算ユニットは、複数の反射光線の各々について、源点のパターンのパターン情報に基づいて源点と像点との間の1対1の対応を確立するように設けられる。これにより、演算ユニットは、源点と像点との間で1対1の比較を行い、像点の各々について、そのそれぞれの像点に対応する角膜表面上の位置での涙液層の状態の定量的評価を特定することが可能になる。特に、源点および像点のパターンの使用は、源点と対応する像点との間で適切な個々の比較を行う可能性を提供することが明らかであろう。
【0032】
源点と対応する像点との個々の比較の後、眼表面の一つ以上のエリアに対する単一の定性値またはそれぞれの眼の角膜表面全体の涙液層の状態を表す単一の定性値を提供するために、個々の比較の結果がグループ化されうる。
【0033】
比較の結果、すなわち涙液層の状態は、例えばマップに提示されうる。マップには、個々の源点および像点に関連する値、または選択された源点および像点のグループに関連する値が提示されうる。マップは、例えばコンピュータディスプレイに示されるかまたは紙に印刷されうる。
【0034】
一実施形態では、演算ユニットは、像点の大域的歪みを表す値を特定するように設けられ、それぞれの像点の大域的歪みを表す値は、多数、可能な全ての像点にほぼ同じように影響を与える大域的原因の効果を表し、演算ユニットは、必要に応じて、像点の大域的歪みを表す値を用いて、個々の像点を大域的原因の効果につき補正または補償するように設けられる。
【0035】
本明細書において、大域的歪みは、大域的原因により源点の完全なパターンが不完全に反射され、像点のパターンとして受け取られる程度として定義される。この不完全な反射は、例えば涙液層に対するデバイスの移動によって引き起こされる。不完全な反射が大域的原因によって引き起こされるため、反射の形状および/または強度の変化は、典型的には全ての像点でほぼ同じになる。
【0036】
像点の大域的歪みは、大域的原因、典型的には複数の光線を角膜表面上に投射し、角膜表面上で反射されるそれぞれの複数の反射光線を受け取る期間中の涙液層に対するデバイスの移動から生じる。像データの処理の間に、特に個々の源点と対応する像点との比較の間に大域的歪み効果が考慮されないと、大域的歪みによって引き起こされる効果が涙液層の状態の評価に負の効果を有しうる。
【0037】
したがって、演算ユニットは、個々の像点を移動の効果について補正するように設けられうる。演算ユニットはまず、像点のパターンに大きな大域的歪みが存在するか否かを確認し、大きな大域的歪みが発生していることが確認されたときにのみ像点のパターンを補正/補償することが可能でありうる。
【0038】
代替的実施形態では、デバイスは、大域的歪みを表す値が所定の閾値を超えるときに、像点のパターンが眼の涙液層の状態を特定するのに適さないと判断するように構成されうる。
【0039】
像点の大域的歪みは、典型的にはかなりの数の像点、好ましくは全ての像点に同じ歪みを探すことによって特定される。これらの対応する歪みを定量化することにより、大域的歪みを表す値が確立されうる。本明細書において大域的歪み係数または安定性品質係数としても示されるこの大域的歪みを表す値が、個々の像点を補正および/または補償するために使用されうる。
【0040】
一実施形態では、パターン情報は、各源点の識別子を含む。源点と像点との間の1対1の対応を特定するために、各点の識別子が使用されうる。
【0041】
一実施形態では、少なくとも一つの光源は、源点のパターンが少なくとも二つの異なる色を含むように異なる色の光線を投射する光源を含む。源点のパターンにおいて異なる色を使用することにより、源点と像点との間の1対1の対応が確立されうる労力が大幅に減少されることができ、および/または源点と像点との間の1対1の対応が確立されうる信頼性が大幅に高められることができる。源点および像点の適切な評価および比較を得るためには、源点と像点とのマッチングが正確に行われることが非常に重要である。
【0042】
本発明は、眼の涙液層の状態を特定する方法をさらに提供し、本方法は、
-少なくとも一つの光源を用いて、源点のパターンからの複数の光線を角膜表面上に投射するステップと、
-レンズ-カメラシステムで、角膜表面上で反射されたそれぞれの複数の反射光線を受け取り、それにより像点のパターンを形成するステップと、
-演算ユニットを用いて、像点に基づいて眼の涙液層の状態を特定するステップ、および/または演算ユニットを用いて、像点に基づいて眼の涙液層の状態を表すデータを特定し、眼の涙液層の状態を表すデータをユーザに提供するステップと
を含む。
【0043】
一実施形態では、眼の涙液層の状態を特定するステップは、源点と像点とを比較するステップ、および/または源点のパターンと像点のパターンとを比較するステップを含む。
【0044】
一実施形態では、眼の涙液層の状態を特定するステップは、複数の像点の各々について、それぞれの像点の局所的歪みを表す値を特定するステップであって、それぞれの像点の局所的歪みを表す値は、眼の涙液層の状態を特定するために使用されうる、ステップを含む。
【0045】
一実施形態では、局所的歪みを表す値を特定するステップは、
各像点の中心ポジションの周りの領域を定義するステップであって、定義された領域は重複せずに好ましくは隣接する、ステップと、
一つ一つの像点自体の定義された領域内の一つ一つの像点の形状を分析するステップと、
分析された形状に基づいて、一つ一つの像点につき局所的歪み係数の値を定量化するステップと
を含む。
【0046】
一実施形態では、本方法は、グリッド線のパターンを特定するステップであって、グリッド線の交差点は、特定された像点の位置によって形成され、グリッド線のパターン内の歪みは眼の涙液層の状態を表す、ステップを含む。
【0047】
一実施形態では、本方法は、ディスプレイデバイスを用いて眼の涙液層の状態および/または眼の涙液層の状態を表すデータを表示するステップを含む。
【0048】
一実施形態では、本方法は、それぞれの像点または像点のグループの局所的歪みを示すマップを作成するステップを含む。
【0049】
一実施形態では、本方法は、
-源点のパターンに基づくパターン情報を提供するステップと、
-パターン情報に基づいて源点の各々とそれぞれの像点との間に1対1の対応を確立するステップと、
-眼の涙液層の状態を特定するために像点と源点とを比較するステップと
を含む。
【0050】
一実施形態では、比較するステップは、像点のパターンの像点と、源点のパターンの対応する源点との個々の比較に基づいて、眼の涙液層の状態を特定するステップを含む。
【0051】
一実施形態では、本方法は、
像点の大域的歪みを表す値を特定するステップであって、それぞれの像点の大域的歪みを表す値は、多数、可能な全ての像点にほぼ同じように影響を与える大域的原因の効果を表す、ステップ、
像点の大域的歪みを表す値を用いて、個々の像点を大域的原因の効果につき補正または補償するステップ、および/または
大域的歪みを表す値が所定の閾値を超えるときに、像点のパターンが眼の涙液層の状態を特定するのに適さないと判断するステップ
を含む。
【0052】
ここで、本発明によるデバイスの実施形態を、添付図面を参照して単なる例としてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明によるデバイスの一実施形態を示した図である。
【
図2】本発明によるトポグラファにおいて適用されうる多色の源点パターンを含むパネルを概略的に示した図である。
【
図3】
図2に示されるような七つのパネルを含むスティミュレータを使用して得られる像点パターンを概略的に示した図である。
【
図4】三つの源点と関連する像点とを概略的に示した図である。
【
図5】三つの源点と関連する像点とを概略的に示した図である。
【
図6】各領域が一つの像点に関連する定義された領域のモザイクを示した図である。
【
図7】一つ一つの領域ごとに眼の涙液層の状態を示したマップである。
【
図8】眼の涙液層の状態を表すグリッド線表示の例を示した図である。
【
図9】眼の涙液層の状態を表すグリッド線表示の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1には、本発明によるデバイスの実施形態が概略的に示される。本デバイスは、眼の涙液層の状態を特定するように構成される。
【0055】
本デバイスは、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる国際公開第2012/067508号に示され記載された角膜トポグラファに基づく。
【0056】
図1の実施形態は、複数の光線を角膜表面110上に投射するように設けられた多色スティミュレータ100を概略的に示す。スティミュレータ100は、例えば円錐形状または半球形状の表面120を有し得、複数の光線を角膜表面110上に投射するために、この表面120上に複数の源点が設けられる。一実施形態では、源点は、異なる色のLED130を表面120上に取り付けることによって提供されうる。代替手段として、源点は、角膜表面110に向かって光線を放出するように設けられた光ファイバの端点によって形成されてもよい。
【0057】
概略的に示されるように、源点(Sp)130.1(座標(Xs,Ys,Zs)を有する)によって放出される入射光線Iは、角膜表面110と(角膜交点C(座標(Xc,Yc,Zc)を有する)で)交差し、角膜反射を記録するためのレンズ-カメラシステムのレンズ150に向かう反射光線Rを生じる。反射光線Rは、その後レンズ-カメラシステムのカメラ平面170によって受け取られて、座標(Xi,Yi,Zi)を有する像点(Ip)を生じる。
図1から分かるように、円錐120(または半球)の開口部は、測定されるべき眼の角膜表面110に面する。図示のデバイスは、キャプチャされた像を処理し、キャプチャされた像に基づいて涙液層の状態の数学的表現を構築するための演算ユニット180、例えばコンピュータ、またはマイクロプロセッサをさらに含む。演算ユニット180は、源点のパターン情報などの関連データを記憶するメモリユニットを含む。関連データを表示するために、ディスプレイデバイス181、例えばコンピュータスクリーンまたはプリンタが提供されうる。
【0058】
一実施形態では、多色スティミュレータは、同一でも異なっていてもよい複数のセグメントを含む。そのような実施形態の一例として、スティミュレータの源点は、PCBなどの複数のボードに取り付けられる。そのような設定では、略円錐の形状を形成するために複数のPCBパネルが組み立てられてうる。例として、このようなスティミュレータは、少なくとも三つのパネルを使用して構築されうる。以下に、7つのPCBパネルを含むより詳細な例が示される。
図2は、このようなパネル200の平面図を概略的に示し、記号〇、+、および●は、異なる色の源点のポジションを示すために使用される。図示された例では、96個の源点(例えばLED)がパネル上に設けられる。略円錐状のスティミュレータを形成するために、各PCBパネルが源点すなわちカラーLEDの同一の配列を有しうるこのような7つのパネルが組み立てられうる。一実施形態では、パネル上の源点の配列は、球面上の反射により略矩形状のグリッドパターンが形成されるようなものである。
図3では、7つの
図2によるパネルが使用されたときに生じる像パターン300が概略的に示される。点線310で示されるように、像点が、略矩形状のグリッドパターンから得られた。特定のパネルを他のパネルと識別するために(パネルは同一であると仮定する)、矩形状のグリッドパターンの向きが用いられうる。したがってこのような向きを用いて、像点の固有の識別を確立するのを助けうる。グリッドパターンの向きは、例えば像点のサブセットのポジションの評価から導出されうる。
図2の源点パターンから分かるように、像点パターンとしてこのような矩形状のグリッドパターンを実現するために、源点は、曲線、例えば
図2に示すような湾曲210に沿って設けられうる。
【0059】
源点と像点との間に1対1の対応を確立するために、デバイスは源点の多色パターンに基づく色パターン情報を適用する。そのような情報は、例えば色パターンの部分を、例えば複数のマトリックスの配列として記述しうる。例として、n×mの源点の色パターンを記述するために、n×mのマトリックス(例えば2×2または3×3)が使用されうる。マトリックスの色パターンを像点のパターンにマッチさせることにより、像点と源点との間の対応が確立されうる。
【0060】
上述のように、本発明のデバイスは、複数の光線を検査されるべき眼の角膜表面上に投射するための源点のパターンを形成するように設けられた少なくとも一つの光源と、角膜表面上で反射されたそれぞれの複数の反射光線を受け取り、それにより像点のパターンを形成するように設けられたレンズ-カメラシステムとを含む。
【0061】
演算ユニット180が像点のパターンを受け取った後、演算ユニット180は、複数の反射光線の各々について、メモリユニットに記憶されたパターン情報に基づいて源点と像点との間の1対1の対応を確立する。
【0062】
次いで、演算ユニット180は、像点と源点との比較に基づいて、眼の涙液層の状態を特定しうる。比較は、像点のパターンのある像点と、源点のパターンの対応する源点との個々の比較に基づく。このアプローチは、角膜表面のある位置での角膜表面の反射性が、その位置での角膜表面の涙液層の状態に依存するという洞察に基づく。特に、源点に対する像点の局所的歪みを表す値は、涙液層の状態を特定する上で信頼できる尺度である。
【0063】
局所的歪みは、個々の源点が不完全に反射され、像点として受け取られる程度である。この不完全な反射は、典型的には涙液層の局所的状態によって、すなわち他の位置での涙液層の状態とは独立に引き起こされる。不完全な反射は涙液層の局所的状態によって引き起こされるため、異なる像点では通常、それらの異なる像点の位置での涙液層の状態がほぼ同じであっても、反射の形状および強度は異なる。一つの源点の反射における局所的歪みにより、形状または寸法の変化が生じうることに留意されたい。また、一つの源点が、像点が複数のスポットに分裂するように歪められうる。
【0064】
源点は、角膜表面上に投射される複数の光線から生じる小さな光のスポットになる。これらの源点は、例えば、直径が比較的小さい円形状を有する。像点が角膜表面上に投射される位置での角膜表面の反射率に依存して、涙液層の状態が比較的良好なときには反射はより鏡状になり、涙液層の状態が比較的悪いときにはより局所的に歪む。
【0065】
しかし、角膜表面上の光線の反射に別の効果も影響しうる。この効果は大域的歪みと呼ばれる。本明細書において、大域的歪みは、源点の完全なパターンが不完全に反射され、像点のパターンとして受け取られる程度として定義される。この完全なパターンの不完全な反射は、大域的原因、例えば角膜表面に対するデバイスの移動によって引き起こされる。不完全な反射が大域的原因によって引き起こされるため、反射の形状および強度の変化に対する効果は、典型的には像点のパターンの中の異なる像点でほぼ同じになる。
【0066】
眼の涙液層の状態を特定するために源点および像点を正確に使用するためには、大域的歪みの効果が、存在する場合には補正または補償されねばならない。演算ユニット180は、最初に、大域的歪み係数がある閾値を超えるか否かを確認し、大域的歪みがこの閾値を超えるときにのみ補正/補償することが可能でありうる。また、大域的歪み係数がある閾値を超えるときには、大域的歪みにより像点のパターンが涙液層の状態を特定するのに適さないとも判断され得る。
【0067】
図4は、例として、三つの源点SP1、SP2、SP3と三つの像点IP1、IP2、IP3とを示す。局所的歪みのために、第一像点IP1は複数(四つ)の像スポットを含むことに留意されたい。演算ユニット180は、源点SP1、SP2、SP3と、対応する像点IP1、IP2およびIP3との間にそれぞれ1対1の対応を既に確立している。第一および第二源点SP1、SP2と第一および第二像点IP1、IP2とは、第三源点SP3および第三像点IP3の位置と比較して相対的に互いの近くに位置することに留意されたい。これは、
図4に破線の分離線で示される。
【0068】
図4では、源点と像点とが重ねて描かれる。源点SP1、SP2、SP3のパターンおよび関連する像点IP1、IP2、IP3のパターンを評価することにより、全ての像点が、光線の投射および反射光線の受け取りの間の角膜表面に対するデバイスの移動によって引き起こされる対応する歪みを含むことが確認できる。この移動は、矢印Mで示される。像点のパターンにおけるこれらの対応する歪みは大域的原因によって引き起こされるため、これらの歪みが涙液層の状態の指標として使用されないようにこれらの歪みを補正/補償することが望ましい。この補償は、大域的歪み係数、すなわちほぼ全ての像点における対応する歪みを特定し、この大域的歪み係数を使用して像点のパターン全体の歪みを補償することによって実行されうる。
【0069】
図5は、このような補償後の三つの源点SP1、SP2、SP3と三つの像点IP1、IP2、IP3とを示す。補償は任意の他の適切なやり方で実行されてもよく、必ずしもそれぞれの像点IP1、IP2、IP3の形状変化を生じる必要はないことに留意されたい。
【0070】
ここで、第一および第二像点IP1、IP2は、対応する源点SP1、SP2とそれぞれ比較して、相対的に局所的に歪んだ形状を示すことが分かる。対照的に、第三像点IP3の形状は、第三源点SP3に対してわずかに変化しているだけである。第三像点IP3に関連する角膜表面上の位置では、涙液層の良好な状態を示す比較的良好な鏡状の反射が得られる一方で、第一および第二像点IP1、IP2の角膜表面上の位置では、涙液層の不良な状態を示す局所的歪みが相対的に高い不良な反射が得られると結論付けることができる。
【0071】
像点の各々の局所的歪みに関する有用なフィードバックを提供するために、演算ユニット180は、複数の像点の各々について、それぞれの像点の局所的歪みを表す値を特定するように設けられ、このそれぞれの像点の局所的歪みを表す値が、眼の涙液層の状態を指示/特定するために使用されうる。
【0072】
一実施形態では、それぞれの像点の局所的歪みを表す値を確立するために以下のステップが行われる。
【0073】
第一ステップとして、演算ユニット180は、各像点について、その像点の中心ポジションの周りの領域を定義し、定義された領域は重複せず、隣接する。このような領域のモザイクの例が、
図6に示される。
【0074】
次のステップでは、一つ一つの像点自体の定義された領域内の一つ一つの像点の形状が演算ユニット180により検査され得、その後、分析された形状に基づき、一つ一つの像点につき局所的歪み係数、すなわちそれぞれの像点の局所的歪みを表す値が定量化されうる。
【0075】
各領域内の局所的歪みの定量化は、任意の適切なスコアリングシステムを用いて行われうる。例えば、像点は、局所的歪みのないものと局所的歪みのあるものの二つのカテゴリーに分類されうる。局所的歪みのない領域は、例えば「0」で示され得、局所的歪みのある領域は「1」で示されうる。スコアリングシステムは、例えば「1」~「5」までのスケールで示される、歪みなし、低歪み、中歪み、高歪み、および超高歪みなどの複数のスケールを含んでもよい。任意の他のスコアリングシステムが適用されてもよい。
【0076】
涙液層の状態を表現するために、眼のあるエリアの個々の像点のスマッジ係数が複合局所的歪み係数に組み合わせられてもよい。例えば、スティミュレータの各パネル(
図2に一つのパネルが示される)について、角膜表面のそれぞれのエリアの涙液層の状態を示すのに用いる複合局所的歪み係数が特定されうる。眼の角膜表面全体について単一の局所的歪み係数が特定されることも可能である。
【0077】
図7は、
図6の定義された領域の分布が示されたマップを示し、領域の各々がグレースケールに従って塗りつぶされている。グレースケールの明るさは、この領域に関連する像点の局所的歪み係数を示す。例えば、より暗いグレーは局所的歪み係数が低い領域、すなわち涙液層の状態が比較的良好であることを示し、より明るいグレーは局所的歪み係数が高い領域、すなわち涙液層の状態が比較的悪いことを示す。
【0078】
図7のマップは、デバイスの操作者に眼の涙液層の状況に関する適切なフィードバックを提供する。このマップは、コンピュータモニタに表示されるかまたは印刷されうる。
【0079】
マップのデータ、またはより一般的には個々の局所的歪み係数および/または複合局所的歪み係数は、将来の参照のためにデータベースに、例えばメモリユニットに記憶されうる。データは、例えば眼の瞬きと涙膜破壊との間の時間を特定するために、例えば経時的な涙液層の状態を監視するために使用されうる。しかし、例えばドライアイ症候群などの眼表面疾患の治療効果を特定するために、より長期間にわたってデータが使用されてもよい。
【0080】
図9および10には、ヒトの眼の涙液層の状態を表す別のタイプの表現が示される。この表現は、例えばディスプレイユニット181によって表示されうる。この表現は、像点の中心の間に描かれたグリッド線に基づく。源点が完全に反射される場合には、グリッド線は互いに対して平行または垂直に走る直線になるであろう。グリッド線の非真直性、または非平行または非垂直のグリッド線は、対応する像点に歪みがあることを示す。
【0081】
一実施形態では、ディスプレイデバイスは、眼の涙液層の状態を表すデータをグリッド線のパターンとして表示するように設けられ、グリッド線の交差点は、特定された像点の位置によって形成され、グリッド線のパターン内の歪みによって眼の涙液層の状態が特定されうる。
【0082】
図9は、グリッドラインが比較的真直で平行または垂直であるグリッドライン表現を示す。これは、涙液層の状態が比較的良好であることを示す。
【0083】
図10は、グリッド線の真直性がより低く、平行度または垂直度がより低いグリッド線表現を示す。これは、涙液層の状態が比較的悪いことを示す。
【0084】
したがって、源点のパターンと像点のパターンとの比較に基づく
図9および10に示された表現は、ユーザに眼の涙液層の状態を表すデータを提供し、ユーザがデータに基づいて眼の涙液層の状態を特定することを可能にする。
【0085】
別の実施形態では、演算ユニットは、グリッド線の真直性およびグリッド線の互いに対する平行度または垂直度を分析することにより、グリッド線表現に基づいて眼の涙液層の状態を特定するように設けられうる。
【0086】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示されるが、開示された実施形態は本発明の単なる例示であり、本発明は様々な形態で具体化されうることを理解されたい。したがって、本明細書で開示される特定の構造および機能の詳細は限定として解釈されてはならず、単に特許請求の範囲の基礎として、および本発明を事実上任意の適切な詳細の構造で様々に採用することを当業者に教示するための代表的基礎として解釈されねばならない。さらに、本明細書で使用されるところの用語および語句は、限定を意図するものではなく、本発明の理解可能な説明を提供することを意図するものである。
【0087】
本明細書で使用されるところの「一つの(a)」または「一つの(an)」という用語は、一つまたは複数として定義される。本明細書で使用される複数という用語は、二つまたは三つ以上として定義される。本明細書で使用される別のという用語は、少なくとも第二のまたはそれ以上のとして定義される。本明細書で使用されるところの含むおよび/または有するという用語は、備える(すなわち他の要素またはステップを除外しないオープンランゲージ)として定義される。特許請求の範囲における任意の参照符号は、特許請求の範囲または本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0088】
ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0089】
単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲に記載されたいくつかのアイテムの機能を果たしうる。