(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】エクステンション部材
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20241216BHJP
F21S 41/40 20180101ALI20241216BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20241216BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20241216BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20241216BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20241216BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20241216BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20241216BHJP
F21W 102/19 20180101ALN20241216BHJP
F21W 103/30 20180101ALN20241216BHJP
F21W 103/45 20180101ALN20241216BHJP
F21W 102/30 20180101ALN20241216BHJP
【FI】
B29C45/26
F21S41/40
F21W102:00
F21W103:00
F21W103:20
F21W103:35
F21W103:10
F21W103:55
F21W102:19
F21W103:30
F21W103:45
F21W102:30
(21)【出願番号】P 2020048682
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】八島 崇
(72)【発明者】
【氏名】成田 靖吾
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018806(JP,A)
【文献】特開2013-114756(JP,A)
【文献】特開2005-026148(JP,A)
【文献】特開2000-052855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
F21S 41/40
F21W 102/00
F21W 103/00
F21W 103/20
F21W 103/35
F21W 103/10
F21W 103/55
F21W 102/19
F21W 103/30
F21W 103/45
F21W 102/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光学ユニットを複数有する車両用灯具に備えられ、前記光学ユニットの前方に配置され、複数の前記光学ユニットからの照射光を通過させるための複数の開口部が形成されているとともに、前記光学ユニット同士の隙間を覆うようにして、前記光学ユニットの内部構造を外部から見えないように目隠しするエクステンション部材において、
PBT樹脂で構成された射出成形品であり、
内側が大きく開口した枠状の枠部と、
前記枠部の内側に掛かり、前記枠部よりも細く形成される、少なくとも一つの橋脚部と、を備え、
前記橋脚部により、前記枠部の内側に、開口部面積が異なる複数の前記開口部が形成されており、
前記枠部は、表裏方向において、前記射出成形品の非意匠部となる裏面である底面部に形成されたパーティングライン痕を有し、
少なくとも一つの前記橋脚部は、前記表裏方向において、前記射出成形品の意匠部となる表面寄りに形成されたパーティングライン痕を有し、
前記表面寄りに形成されたパーティング
ライン痕を有する前記橋脚部の断面形状は、逆U字型または逆J字型である、
ことを特徴とするエクステンション部材。
【請求項2】
少なくとも一つの前記橋脚部の断面積は、0.2cm
2以上0.4cm
2未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載のエクステンション部材。
【請求項3】
少なくとも一つの前記橋脚部の裏面側に、押圧痕が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のエクステンション部材。
【請求項4】
少なくとも一つの前記橋脚部の前記押圧痕は、前記橋脚部の肉厚方向の半分にのみ形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のエクステンション部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はPBT樹脂で構成されるエクステンション部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具において、内部構造物を目隠しするエクステンション部材は、デザインニーズによりその形状が複雑化している。例えば、特許文献1では、複数の光学ユニットを搭載した車両用灯具が公開されているが、このようなコンビネーションランプには、それぞれの光学ユニットの照射光が通過する複数の開口部が形成された大型のエクステンション部材が使用される。
【0003】
また近年では、エクステンション部材には、耐熱性が高く、耐摩耗性に優れ、かつ安価なPBT(ポリブリレンテレフタレート)樹脂が使用されることが増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、PBT樹脂は真空密着性が高いため、金型に張り付きやすい。エクステンション部材には、光学ユニットの照射光を通過させるために開口部が形成されているが、開口面積が異なる複数の開口部が設けられていると、PBT樹脂で成形した場合、開口面積の大きな開口部はキャビティ側金型に張り付きやすく、開口面積の小さな開口部はコア側金型に張り付きやすい。このため、型開き時に成形品にかかる応力のバランスが悪く、小さな開口部に設けられた橋脚部などの最小断面積箇所に、応力が集中して破断してしまう、という問題があった。
【0006】
本発明は、これを鑑みてなされたものであり、PBT樹脂から構成され、成形時の破断の発生を抑制したエクステンション部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本開示の構成によるある態様では、光を出射する光学ユニットを複数有する車両用灯具に備えられ、前記光学ユニットの少なくとも一部を外部から遮蔽するエクステンション部材において、PBT樹脂で構成された射出成形品であり、
前記光学ユニットから出射した光が通過する開口部を、開口面積が異なるように複数に分割する1または2以上の橋脚部を備え、前記橋脚部の最小断面積部は、該側面に、表面裏面方向において、表面寄りに形成されたパーティングライン痕を有するようエクステンション部材を構成した。
【0008】
PBT樹脂は真空密着度が高いために金型に張り付きやすく、開口面積が異なる2以上の開口部が形成されているエクステンション部材においては、大きな開口部はキャビティ側金型に張り付き、小さな開口部はコア側金型に張り付くため、型開き時に成形品にかかる応力のバランスが悪い。橋脚部は開口部同士を分割するように細く形成されるため、型開き時に、橋脚部の最小断面積部に大きな応力がかかり、破断してしまう。これに対して、最小断面部の金型境界部をコア側に寄せて、キャビティ側成形面よりもコア側成形面を増やし、コア側により多く接するように構成することで、橋脚部が堅固にコア側金型に張り付くように構成して、型開き時の最小断面部の破断を抑制した。金型境界部は、パーティングライン痕として、成形品に残る。
【0009】
また、ある態様では、前記最小断面部の断面積は、0.2cm2以上0.4cm2未満であるよう構成した。従来では、破断防止のため、最小断面積は0.4cm2以上である必要であった。上記のように構成することで、最小断面積をより小さくすることができ、これにより、設計の自由度が増し、また軽量化にも対応できる。
【0010】
また、ある態様では、前記最小断面積部を含む前記橋脚部の背面側に、押圧痕が形成されているよう構成した。コア側成形面が増加するように構成されたため、コア側金型に張り付きやすい最小断面部は、突出し時にコア側金型に残りやすい。このため、最小断面部のコア側金型に突出しを設けることで、突出し工程での破断を防止した。成形品の最小断面部の底面には、突出しが押した痕が、押圧痕として残る。
【0011】
また、ある態様では、前記最小断面積部の前記押圧痕は、前記橋脚部の肉厚方向の略半分にのみ形成されているよう構成した。最小断面部の底面角部にフィレットを設けると、突出し部材にはフィレットに対応する極小凸部が形成しまう。これを避けるため、肉厚方向には半分だけ最小断面部の肉厚方向にかかるように突出し部材を構成した。これにより、突出し時の破断の発生が抑制され、成形品が確実に金型から取り外されるようになった。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、PBT樹脂から構成され、成形時の破断の発生を抑制したエクステンション部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るエクステンション部材を備える車両用灯具の概略構造を示す正面図である。
【
図2】エクステンション部材を示し、(A)が正面図、(B)が
図2(A)のII(B)-II(B)線で切断した断面図である。
【
図3】エクステンション部材の斜視図であり、(A)表面側斜視図、(B)裏面側斜視図である。
【
図5】橋脚部の金型であり、
図2のII(B)-II(B)線に対応した断面図である。
【
図6】エクステンション部材に対する突出し部材の配置を示す概要図である。(A)が本実施形態の突出し部材の配置、(B)が比較用の従来の突出し部材の配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るエクステンション部材10を含んだ車両用灯具1の正面図である。車両用灯具1は、右前照灯であり、車両の前方右側に装着される。
【0016】
図1に示すように、車両用灯具1は、ランプボディ2と、前面カバー3とを備える。ランプボディ2は、開口部を有する箱状に形成される。前面カバー3は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成され、ランプボディ2の開口部に取付けられ、灯室を形成する。灯室内には、三つの光学ユニットLU1~LU3と、エクステンション部材10とが配置される。
【0017】
光学ユニットLU1~LU3は、発光素子である光源を備え、該光源から出射した光を車両前方へ出射する。本実施形態においては、光学ユニットLU1は、可変配光ユニットであり、車両の運転状況や周辺の状況に適用させた配光パターンを形成して、車両前方に照射する。光学ユニットLU2,LU3は、それぞれターンシグナルランプユニット、ポジショニングランプユニットであり、それぞれ、アンバー色光、白色光を、車両前方に出射する。以下、特定の光学ユニットを指定する場合を除いて、三つの光学ユニットLU1~LU3をまとめて光学ユニットLUと称する。
【0018】
光学ユニットLUには、走査機構装置や、リフレクター型装置、プロジェクター型装置など、既知の構成が用いられており、その種類は問わない。また、本開示の構成は、上記コンビネーションランプのヘッドランプに用いられるエクステンション部材に限られない。テールランプ、ターンシグナルランプ、ストップランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプ、コーナーリングランプ、ハザードランプ、ポジショニングランプ、バックランプ、フォグランプ等の光学ユニットが複数使用されるコンビネーションランプが配置される各種車両用灯具に、内部構成を目隠しするエクステンション部材として、広く適用することができる。
【0019】
(エクステンション部材)
図2および
図3は、エクステンション部材10を示し、
図2(A)が正面図、
図2(B)が
図2(A)のII(B)-II(B)線に沿った断面図、
図3(A)が正面斜視図(表面側斜視図)、
図3(B)が背面側斜視図(裏面斜視図)である。なお、
図2および
図3では、開口部をわかりやすく示すために、エクステンション部材10を薄墨で着色している。
【0020】
エクステンション部材10は、光学ユニットLUの前方に配置され、光学ユニットLUとランプボディ2の隙間、および隣接する光学ユニットLU同士の隙間を覆うようにして、光学ユニットLUの内部構造物などを外部から見えないようにする目隠し材であり、PBT(ポリブリレンテレフタレート)樹脂から構成される薄肉の射出成形品である。
【0021】
エクステンション部材10は、周壁を形成する枠部11と、枠部11内側にかかり、水平方向にのびる第1橋脚部20と、枠部11と第1橋脚部20にかかり、鉛直方向にのびる第2橋脚部30から構成される。
【0022】
枠部11にかかる二つの橋脚部20,30により、光学ユニットLUからの照射光を通過させるための開口部OP1~OP3が、光学ユニットLU1~LU3に対応する位置に、それぞれ形成される。
【0023】
まず、枠部11に水平方向に伸びてかかる第1橋脚部20により、枠部11内側の開口部は、開口部OP1と、開口部OP2,OP3の上下方向二つに大きく分割される。第1橋脚部20は、上下方向には、中央よりも上方寄りに設けられており、下方に形成される開口部OP1は、上方に形成される開口部OP2,OP3よりも広く形成されている。光学ユニットLU1は、配光を形成して暗闇での運転手の視界を確保するために広角度に高光度の光を照射するため、装置として大型の光学機器が用いられており、これに対応する開口部OP1も非常に開口面積が大きなものとなっている。
【0024】
第2橋脚部30は第1橋脚部20により分割された上方の開口部にかかり、左右方向には中央よりも右方寄りに設けられている。このため、左方に形成される開口部OP2は、右方に形成される開口部OP3よりも広くなっている。第2橋脚部30は、第1橋脚部20により分割された枠部11内側の開口部をさらに分割している。
【0025】
上記構成から、開口部OP1~OP3の開口面積は全て異なり、開口部OP1の開口面積は、開口部OP2と開口部OP3を合計した開口面積よりも大きい。
【0026】
図2(B)に示すように、第1橋脚部20および枠部11の断面形状は逆U字型となっている。このため、
図3(B)に示すように、開口部OP1の外周縁からは鉛直方向に伸びる周壁14が形成されている。また、開口部OP2,OP3に共有される外周縁には、鉛直方向に伸びる周壁15が形成されている。
第2橋脚部30の断面形状は逆J字型であり、比較的小さな開口部OP2と開口部OP3を隔てる第2橋脚部30は、第1橋脚部20に比べて鉛直方向には短く形成され、幅も狭く、かつ肉薄であり、エクステンション部材10の他のどの部位よりも断面積の小さな最小断面積部となっている。
【0027】
(橋脚部の金型)
ここで第2橋脚部30とその成形方法について説明する。
図4は第2橋脚部30の拡大斜視図であり、第2橋脚部30の裏面側の特徴を示すために下方斜視図となっている。なお、
図4においては、押圧痕の深さ、およびパーティングライン痕の突出長の寸法は、実際の寸法を反映したものではなく、構成を模式的に表している。
図5は、第2橋脚部30の橋脚部金型40の概略構成を示す模式図であり、
図2(A)のII(B)-II(B)線に対応した位置での断面図である。橋脚部金型40は、エクステンション部材10の金型の一部を構成している。
【0028】
第2橋脚部30の特徴を述べる前に、まず
図5の成形金型とその成形方法について説明する。
【0029】
図5に示すように、橋脚部金型40は、キャビティ側金型41と、突出し部材43を有するコア側金型42とで構成される。
【0030】
突出し部材43は、コア側金型42に設けられた孔42bに、上下方向にスライド可能に保持されている。突出し部材43は、成形される第2橋脚部30の底面に、肉厚方向には半分だけ係るように設けられている。
【0031】
キャビティ側金型41と、突出し部材43含むコア側金型42の対向面には、それぞれキャビティ側成形面41a,コア側成形面42aが形成されている。キャビティ側金型41とコア側金型42とが、互いに向き合った状態で配置されて型締めされると、二つの成形面41a,42aにより、内部に第2橋脚部30の形状に対応した成形空間S1が画成される。
【0032】
キャビティ側金型41と、コア側金型42との境界部44は、成形される第2橋脚部30の表面と面一の位置となるように構成されている。このため、キャビティ側成形面41aは、略平面で、第2橋脚部30の表面31のみを成形するように構成されている。一方、コア側成形面42aは第2橋脚部30の表面31以外を形成するため、コア側金型42の表面から第2橋脚部30の高さ分だけ掘り下げられて形成されている。
【0033】
上記のようにキャビティ側金型41とコア側金型42の境界部44が、第2橋脚部30の表面31と面一となる位置となるように橋脚部金型40を構成することで、コア側成形面42aの面積を、キャビティ側成形面41aの面積よりも、非常に広いものとしている。このため、橋脚部金型40で成形された成形品は、コア側金型42に密着する。
【0034】
(作用効果)
エクステンション部材10に設けられた開口部OP1~OP3において、開口部OP1は、開口部OP2および開口部OP3よりも、開口面積が大きい。開口部OP2と比較すると、開口部OP3の方が、開口面積が小さい。また、エクステンション部材10を構成するPBT樹脂は、耐熱性が高く、耐摩耗性に優れ、かつ安価であるため、射出成形に一般的に広く用いられているが、例えばポリプロピレン樹脂やポリエステル樹脂等と比較して、真空密着度が高い。
【0035】
従来では、ポリエステル樹脂などで構成された射出成形品では、パーティングライン(境界部)は成形品の底面位置である。成形品の表面側をキャビティ側金型が形成し、裏面側を、突出し部材を有するコア側金型が形成し、開口部がある場合には、開口部の周壁面はキャビティ側の成形面で形成される。このようにパーティングラインが底面部となるように構成された金型を用いてPBT樹脂で成形した場合、PBT樹脂の真空密着度が高いことから、成形品の開口部は成形面のあるキャビティ側金型に密着する。成形品に開口面積の異なる複数の開口部が設けられている場合には、開口部面積の大きな開口部はキャビティ側金型に接する表面積が大きいことから、キャビティ側金型に張り付きやすい。しかし、開口面積の小さな開口部はキャビティ側金型に接する表面積が比較的小さいため、型開き時にはコア側金型に残りやすく、型開き時の成形品にかかる応力バランスが悪い。このため、型開き時には、成形品の最小断面部に応力が集中して、成形品は最小断面積部で容易に破断する。
【0036】
本実施形態のエクステンション部材10では、開口部OP1の開口面積が大きく、周壁14の内面(開口部側)がキャビティ側金型に密着する。開口部OP2,OP3の開口面積はこれと比較して小さいため、周壁15内側はキャビティ側金型に密着するも、キャビティ側金型に接する面積が周壁14よりも少なく、型開き時には周壁15はコア側金型に残ろうとする。エクステンション部材10の金型の型開き工程では、最も体積や表面積の大きい枠部11はコア側金型に残ろうとするため、全体としてはコア側金型に残る。しかし、周壁14がキャビティ金型に引っ張られると、開口部OP2,OP3周辺もキャビティ側金型に引っ張られ、最小断面積部である第2橋脚部30に、最も応力がかかる。
【0037】
本実施形態では、境界部44が成形品の表面31と面一の位置となるように、橋脚部金型40は構成されているため、コア側成形面42aがキャビティ側成形面41aよりも非常に広い。コア側金型42に接する面積が広いため、第2橋脚部30は強固にコア側金型42に密着する。この密着する力により、型開き時における、最小断面部である第2橋脚部30にかかるキャビティ側金型へ引っ張る力に対抗でき、第2橋脚部30を含めた成形品はコア側金型に残る。これにより、異なる開口部が形成された成形品に対する、型開き時の最小断面積部での破断の発生が抑制される。橋脚部金型40のように、最も応力のかかる最小断面部だけ、コア側成形面を増やすだけで、成形品に発生する破断を抑制する効果は発揮される。
【0038】
(突出し部材の配置)
型開きの後、突出し工程として、コア側金型に張り付く成形品が、突出し部材43により上方に突き出されて取り外される。ここで、エクステンション部材10全体の突出し部材の配置について、
図6を用いて説明する。
図6は、エクステンション部材の背面図(裏面図)に対する突出し部材の概略配置を示している。
図6(A)が本実施形態でのエクステンション部材10に対する突出し部材の配置を示し、
図6(B)が従来の突出し部材の配置を示している。比較用として示す
図6(B)のエクステンション部材110は、エクステンション部材10と同等の形状であり、橋脚部130を有する。各開口部を分かりやすく示すために、エクステンション部材10,110を薄墨で着色し、突出し部材P,43にはハッチングを施した。
【0039】
図6(A)に示すように、本実施形態においては、エクステンション部材10に対して、各四辺に四つの突出し部材P、開口部OP1に三つの突出し部材P、および第2橋脚部30にかかる突出し部材43が、それぞれ設けられている。
【0040】
これに対して、従来の形態においては、
図6(B)に示すように、突出し部材Pの配置は同一だが、突出し部材43が設けられていない。これは、従来では、わざわざ開口面積の小さな開口部に突出し部材を設けずとも、他の突出し部材による突出しによって、成形品はコア側金型から外れるからである。
【0041】
しかし、PBT樹脂は、前述の通り、金型に張り付きやすい。
図6(B)の橋脚部130は最小断面部であるため、突出し時にも応力が集中しやすい。このため、突出し工程で、コア側金型に残ろうとして、破断が発生する場合がある。さらに、本実施形態においては、型開き工程で成形品が破断するのを防止するため、第2橋脚部30の橋脚部金型40は、境界部44が成形品の表面31と面一となるように構成されている。このため、開口部の小さい部分に第2橋脚部30はコア側金型42に強固に密着する。
【0042】
このため、
図5および
図6(A)に示すように、突出し部材43を設けることで、最小断面積部であり、応力集中しやすい第2橋脚部30を確実に押し出して、エクステンション部材10を取り外す構成とした。
【0043】
(第2橋脚部)
上記構成の橋脚部金型40で形成される第2橋脚部30について、
図4にかえって詳しく説明する。
【0044】
図4に示すように、第2橋脚部の表面31の角部には、長手方向に沿ってパーティングライン痕34が形成されている。パーティングライン痕34は、第2橋脚部30を成形するキャビティ側金型41とコア側金型42の境界部44の位置にバリとして、側面方向へ突出して形成されている。パーティングライン痕は、射出成形された際にライン状に形成され、後工程として突出部分を研磨された場合には、研磨痕として橋脚部に残る。そのようなパーティングライン痕も本発明の範囲に含まれる。
【0045】
また、第2橋脚部30の底面の一部には、押圧痕35が形成されている。押圧痕35は、第2橋脚部30の一方の脚の底面に、長手方向には略中央に、肉厚方向には外側の略半分にだけ、矩形状の僅かな窪みとして形成されている。
【0046】
押圧痕は、射出成形時に成形品を金型から取り外すために、金型に設けられた突出し部材が、突出しの際に金型に張り付く成形品を押し上げた部分に残される。本実施形態においては、橋脚部金型40に設けられた突出し部材43がコア側金型42に残る成形品を突出すことで、成形品に形成される。押圧痕は、少なくとも突出し面の一部が成形品にかかりを突き出すことで成形されることから、押圧痕として円形、矩形など突出し面の形状がそのまま残るだけでなく、半円形など突出し面の一部だけが残される場合もあり、そのような押圧痕も本発明の範囲に含まれる。
【0047】
突出し部材43は、成形される第2橋脚部30の底面の肉厚方向には半分だけ係るように設けられている。丸みのない角部が手を傷つけることを避けるために、底面角部を含めて成形品の角部には、曲率半径の極めて小さなフィレット(本実施形態では図示していない)が設けられている。突出し部材を成形品の底面に合わせて構成した場合、この小さなフィレットを形成するための極小突起を形成する必要がある。極小突起の形成を避けるため、このように肉厚方向に半分だけ係るよう構成した。これに限らず、入れ子を設けて、突出し部材が肉厚方向に全てかかるように構成しても構わない。
【0048】
従来では、成形時における破断の発生を防ぐため、最小断面積は0.4cm2以上必要であるとされていた。エクステンション部材は複雑化しており、デザインニーズおよび軽量化ニーズから、最小断面積をより小さくすることが求められている。上記構成により、射出成型時における、成形品の最小断面積部位での破断の発生が抑制されるため、最小断面積を従来よりも小さいものとすることができる。具体的には、エクステンション部材10の最小断面積部位である第2橋脚部30の断面積は、0.2cm2以上0.4cm2未満であっても、破断なく成形する。本開示の構成により、エクステンション部材に対して、より自由度の高い設計が可能となった。
【0049】
最小断面積部の断面形状は、その断面積が0.2cm2以上0.4cm2未満であれば、逆U字型または逆J字型の、どちらの形状であってもよい。
【0050】
(変形例)
図7は変形例であり、
図7(A)は変形例として第2橋脚部30’を示す。
図7(B)は第2橋脚部30’の成形金型である橋脚部金型40’を示す。それぞれ、上記実施形態と同等の構成を持つものは、同じ符号を付して説明を省略する。なお、突出し部材43は省略した。
【0051】
図7(B)に示すように、橋脚部30’の側面36には、上下方向(表面裏面方向)には、中央よりもやや表面31寄りに、パーティングライン痕34が形成されている。
【0052】
図7(B)に示すように、境界部44が、第2橋脚部30’の表面の面一の位置となる位置ではなく、側面36の略中央位置となるように、橋脚部金型40’は構成されている。なお、PBT樹脂は比較的柔らかいため、金型には成形品を取り出しやすくするための抜き勾配は設けられていない。
【0053】
上記実施形態では、境界部44が第2橋脚部30の表面31と面一となるように、橋脚部金型40は構成されたが、少なくとも、従来では成形品の底面と面一となるように構成される境界部を表面側に寄せるだけでも、成形時の破断を抑制する効果が得られる。コア側金型成形面の面積を増やして、キャビティ側成形面の面積を減少させることで、コア側金型に張り付く力を増大させて、抗力を高めることができる。
図7(B)に示すように、成形品の表面裏面方向には、中央よりもやや表面寄りに、境界部44が形成されるように金型が構成されると、破断への抑制力が高く、好ましい。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 :車両用灯具
10 :エクステンション部材
20 :第1橋脚部
30 :第2橋脚部
31 :表面
34 :パーティングライン痕
35 :押圧痕
LU :光学ユニット
OP1~OP3 :開口部