IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧

特許7604108ロボットを有する製造環境における近接状態の検出
<>
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図1
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図2
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図3
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図4
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図5
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図6
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図7
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図8
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図9
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図10
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図11
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図12
  • 特許-ロボットを有する製造環境における近接状態の検出 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ロボットを有する製造環境における近接状態の検出
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
B25J19/06
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020061131
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2020183027
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】16/372,306
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】シスコ, ファラナズ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, フェイ
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-198839(JP,A)
【文献】特開2015-016531(JP,A)
【文献】特開2017-106808(JP,A)
【文献】特開2018-202563(JP,A)
【文献】特開2008-220553(JP,A)
【文献】特開2006-043861(JP,A)
【文献】特開2011-073079(JP,A)
【文献】特開2017-100206(JP,A)
【文献】特開2018-207349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立て環境(130)における近接状態を報告するための方法(200)であって、
ウエアラブルな第1近接状態検出器(160、300、410、1160)を、技術者(150)に装備させること(202)と、
前記組み立て環境(130)のセル(132、133、1100)の中で動くロボット(140、710、720、1150)に、第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)を配置すること(204)と、
前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)及び前記第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)から前記組み立て環境(130)内の前記セル(132、133、1100)の外部に配置されたセンサ(120、1170)に信号を送信することと、
前記技術者(150)が前記セル(132、133、1100)の中にいる間に、前記信号に基づいて特定された、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)と前記第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)との間の距離(D1)が閾値を下回った場合に、前記技術者(150)に警告を提供するよう前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)に指示すること(214)と
前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)のバッテリーレベルが、前記技術者(150)が進入を試行しているセルに基づいて変動する所定のバッテリーレベルを下回っている時に、前記技術者(150)が前記セル(132、133、1100)への進入を試行した場合、前記技術者(150)にバッテリーレベル警告を提供するよう、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)を動作させることとを含む、
方法(200)。
【請求項2】
前記信号を送信することは、
前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)から前記センサ(120、1170)に第1信号を送信すること(206)と、
前記第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)から前記センサ(120、1170)に第2信号を送信すること(208)とを含む、請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)と前記第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)との間の前記距離(D1)を特定すること(210)を更に含む、請求項2に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記閾値が第1閾値であり、
前記距離が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を下回った場合に、停止するよう前記ロボット(140、710、720、1150)に指示すること(218)を更に含む、請求項2又は3に記載の方法(200)。
【請求項5】
前記ロボット(140、710、720、1150)に複数の近接状態検出器(160、300、420、430、1190)を設置することであって、前記複数の近接状態検出器(160、300、420、430、1190)の各々は、前記ロボット(140、710、720、1150)を特定し、かつ前記近接状態検出器(160、300、420、430、1190)を前記ロボット(140、710、720、1150)におけるその他の近接状態検出器(160、300、420、430、1190)から区別する、信号を送信する、複数の近接状態検出器(160、300、420、430、1190)を設置することと、
前記ロボット(140、710、720、1150)における前記複数の近接状態検出器(160、300、420、430、1190)の各々と、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)との間の距離(D1、D2)を特定すること(210)とを更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項6】
前記セル(132、133、1100)の中で動く更なるロボット(140、720、1150)の一部分(142)に、第3近接状態検出器(160、300、430、1190)を配置することと、
前記第3近接状態検出器(160、300、430、1190)から前記組み立て環境(130)内のセンサ(120、1170)に第3信号を送信することと、
前記第1信号及び前記第3信号に基づいて、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)と前記第3近接状態検出器(160、300、430、1190)との間の更なる距離を特定することと、
前記更なる距離が第1閾値を下回った場合に、前記技術者(150)に警告を提供するよう前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)に指示すること(214)とを更に含む、請求項2から4のいずれか一項に記載または請求項2から4のいずれか一項に従属するときの請求項5に記載の方法(200)。
【請求項7】
前記距離を特定すること(210)が、
前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)によって送信された第1信号に基づいて、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)の第1位置を特定することと、
前記第2近接状態検出器(160、300、420、430、1160)によって送信された第2信号に基づいて、前記第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)の第2位置を特定することと、
前記第1位置と前記第2位置との間の離間量を特定することとを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項8】
前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)はボタンを備え、前記ボタンが押されると、前記技術者(150)と同じセル(132、133、1100)内にあるロボット(140、710、720、1150)を遠隔停止させるためのコマンドを発するよう、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)を動作させることを更に含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項9】
技術者(150)とセル(132、133、1100)の中のロボット(140、710、720、1150)との間の近接状態を検出するためのシステム(100)であって、
前記技術者(150)が装着している第1近接状態検出器(160、300、410、1160)の位置、及びロボット(140、710、720、1150)における第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)の位置を示す信号を受信する、前記セル(132、133、1100)の外部に配置されたセンサ(120、1170)と、
近接状態報告サーバ(110、1180)であって、
前記信号を記憶するメモリ(114)、及び
前記信号に基づいて前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)と前記第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)との間の距離を特定し、前記距離が第1閾値を下回った場合に、前記技術者(150)に警告を提供するよう前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)に指示し、かつ前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)が前記セル(132、133、1100)の中にある間に、前記距離が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を下回った場合に、停止するよう前記ロボット(140、710、720、1150)に指示する、コントローラ(112)を備える、近接状態報告サーバ(110、1180)とを備え
前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)は、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)のバッテリーレベルが、前記技術者(150)が進入を試行しているセルに基づいて変動する所定のバッテリーレベルを下回っている時に、前記技術者(150)が前記セル(132、133、1100)への進入を試行した場合、前記技術者(150)にバッテリーレベル警告を提供するように動作する、
システム(100)。
【請求項10】
前記センサ(120、1170)が前記近接状態報告サーバ(110、1180)に前記信号を提供する、請求項に記載のシステム(100)。
【請求項11】
前記コントローラ(112)が、各センサ(120、1170)において受信された前記信号の強度に基づいて、前記第1近接状態検出器(160、300、410、1160)の第1位置、及び前記第2近接状態検出器(160、300、420、430、1190)の第2位置を三角測量し、かつ前記第1位置と前記第2位置との間の離間量を特定する、請求項又は10に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は組み立ての分野に関し、詳細には、組み立て環境における人間-機械相互作用に関する。
【背景技術】
【0002】
組み立て環境においては、新たな部品を可能な限り迅速かつ効率的に組み立てることが、依然として望ましい。ある種の組み立てタスクが自動機械によって実施される一方で、その他の組み立てタスクが人間の技術者(technicians)によって実施されるのは、よくあることである。安全を確保するために、技術者は、自動機械が動作している間、この自動機械の動作ゾーンへの進入が制限される。これにより「立ち入り禁止ゾーン」が生じるが、この立ち入り禁止ゾーンにより、技術者が作業するスピード及び効率が低減し、かつ/又は、望ましくない組み立て速度の低減がもたらされうる。これと同時に、付近の自動機械に対する作業員の自覚に依存することは実行不可能である。(これができるのであれば、自動機械が、同一ゾーン内で技術者と連携して動作することが可能になる。)ゆえに、自動機械と技術者とは、両者が同一ゾーンを利用するのであれば、使用時間を分けるよう制限される。
【0003】
したがって、上記の問題の少なくとも一部だけでなく起こりうる他の問題も考慮した、方法及び装置を有することができれば、それが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本書に記載の実施形態は、ロボットに対する技術者の近接状態を動的に特定し、この近接状態に基づいて多種多様な補正措置を実施する。例えば、第1近接状態においては、技術者は警告を受け取ることが可能であり、第2近接状態においては、ロボットが停止しうる。更に、ロボットの複数の構成要素の位置を正確に追跡するために、ロボットに複数の近接状態検出器が配置されうる。
【0005】
一実施形態は、組み立て環境における近接状態を報告するための方法である。この方法は、ウエアラブルな第1近接状態検出器を、技術者に装備させることと、組み立て環境のセルの中で動くロボットに、第2近接状態検出器を配置することと、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離が閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することとを、含む。
【0006】
更なる実施形態は、プログラムされた命令を具現化する非一時的コンピュータ可読媒体であって、この命令は、プロセッサによって実行されると、組み立て環境における近接状態を報告するための方法を実施するよう実行可能である、非一時的コンピュータ可読媒体である。この方法は、ウエアラブルな第1近接状態検出器を、技術者に装備させることと、組み立て環境のセルの中で動くロボットに、第2近接状態検出器を配置することと、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離が閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することとを、含む。
【0007】
更なる実施形態は、組み立て環境における近接状態報告のためのシステムである。このシステムは、ウエアラブルな第1近接状態検出器と、組み立て環境のセル内のロボットに配置される、第2近接状態検出器と、
近接状態サーバとを、含む。この近接状態サーバは、第1閾値と、第1閾値を下回る第2閾値とを示すデータを記憶するメモリ、及び第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離を特定し、この距離が第1閾値を下回った場合に第1近接状態検出器に通知を提供し、かつ距離が第2閾値を下回った場合に第2近接状態検出器に通知を提供するために、第1信号及び第2信号を解析するコントローラを、含む。
【0008】
更なる実施形態は、技術者とロボットとの間の近接状態を検出するためのシステムである。このシステムは、技術者が装着している第1近接状態検出器の位置、及びロボットにおける第2近接状態検出器の位置を示す信号を受信する、センサを含む。システムは近接状態サーバも含む。この近接状態サーバは、信号を記憶するメモリ、及び第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離を特定し、この距離が第1閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示し、距離が第2閾値を下回った場合に、停止するようロボットに指示する、コントローラを含む。
【0009】
その他の例示的な実施形態(例えば、上述した実施形態に関連する方法及びコンピュータ可読媒体)についても、後述されうる。上述した特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において個別に実現可能であるか、又は、更に別の実施形態であって、その更なる詳細が以下の説明及び図面を参照して理解されうる実施形態において、組み合わされることもある。
【0010】
これより、本開示の実施形態の一部について、ただ例示のためだけに、添付図面を参照して説明する。全ての図面で、同じ参照番号は同じ要素又は同種の要素を表わしている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】例示的な一実施形態における、近接状態報告システムを示す。
図2】例示的な一実施形態における、近接状態を報告するための方法を示すフロー図である。
図3】例示的な一実施形態における、近接状態検出器の図である。
図4】例示的な一実施形態における、近接状態検出器同士の間の距離を示す。
図5】例示的な一実施形態における、近接状態検出器同士の間の距離を示す。
図6】例示的な一実施形態における、近接状態検出器同士の間の距離を示す。
図7】例示的な一実施形態における、工場フロアのセルを横切って進む技術者を示す。
図8】例示的な一実施形態における、工場フロアのセルを横切って進む技術者を示す。
図9】例示的な一実施形態における、近接状態検出器と近接状態報告サーバとの間で送信される通信を示す。
図10】例示的な一実施形態における、近接状態検出器と近接状態報告サーバとの間で送信される通信を示す。
図11】例示的な一実施形態における、近接状態報告システムのブロック図である。
図12】例示的な一実施形態における、航空機の製造・保守方法のフロー図である。
図13】例示的な一実施形態における、航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図及び以下の説明により、本開示の具体的かつ例示的な実施形態が提供される。ゆえに、当業者は、本開示の原理を具現化する様々な構成であって、本開示の範囲に含まれている様々な構成を、(本書で明示的に説明又は図示されていなくとも)考案しうることが、認識されよう。更に、本書に記載のいかなる例も、本開示の原理の理解に役立てるためのものであり、具体的に列挙されたかかる例及び条件に限定されるものではないと、解釈されるべきである。結果として、本開示は、後述する具体的な実施形態又は例には限定されず、特許請求の範囲及びその等価物によって限定されるものである。
【0013】
図1は、例示的な一実施形態における、近接状態報告システム100の図である。近接状態報告システム100は、組み立て環境内で近接状態センサ同士の間の距離を動的に特定するよう動作可能な、任意のシステムを含む。近接状態報告システム100は、技術者とロボットとを区別するよう、かつ、技術者とロボットとの間の距離に基づいて警告及び/又はその他の緩和策を提供するよう、強化されたものである。これによって、ロボットの付近で作業する技術者の安全が確保されると共に、セル内のロボットの稼働時間も増大することにより、技術的恩恵がもたらされる。本書で使用される場合、「セル(cell)」は、専用の作業スペース又は空間であって、その中で一又は複数のロボット/機械が動作することを意図された、あらゆる作業スペース又は空間を含む。
【0014】
この実施形態では、近接状態報告システム100は、近接状態報告サーバ110と、センサ120(例えば無線アンテナ、送受信器、カメラなど)とを含む。センサ120は、組み立て環境130(工場フロアなど)の一又は複数のセル132~133の中に配置されている近接状態検出器160から入力を受信する。ゆえに、センサ120は、近接状態報告サーバ110のインターフェースとして動作する。近接状態検出器160は、一又は複数の技術者150に装着されることが可能であり、ロボット140の部分142(可動構成要素など)にも配置されうる。ロボット140は、ロボットアームと、自動誘導車両(AGV)と、適応軌道機械(flex track machines)と、セル内で動くその他の自動デバイスとを備えうる。図示しているように、技術者150は、セル132内で近接状態検出器160を装着しており、セル132内で、ロボット140から近接状態Pにある。更に、図示しているように、この時点で、セル133内には、技術者も近接状態検出器も存在していない。
【0015】
近接状態報告サーバ110のコントローラ112は、近接状態検出器160からの信号に基づいて、近接状態検出器160の各々の所在地を特定する。一又は複数の技術者の近接状態検出器160が、ロボット140の近接状態検出器160に、メモリ114に記憶されている所定の閾値を超えて近付くと、コントローラ112は警告を提供しうる。コントローラ112は、例えば、カスタム回路として、プログラムされた命令を実行するハードウェアプロセッサとして、又はこれらの何らかの組み合わせとして、実装されうる。
【0016】
近接状態報告システム100は、二重の安全方策を提供することによって、人間と機械との協働を可能にする。つまり、ロボット140と技術者150は、送受信器を装備して自身の所在地を通信し、かかる所在地同士が互いに比較されうる。この比較に基づいて、人間とロボットとが同一のセル/ゾーン内で共に作業する時の安全を確保するために、種々のレベルの警告/対処法が(例えば、人間に警告するため、かつ/又はロボットを停止させるために)提供される。
【0017】
近接状態報告システム100の動作の例示的な詳細について、これより図2のフロー図に関連して説明する。この実施形態では、図1の技術者150が、ロボット140が動作中のセル132への進入を企図していることが、前提となる。このロボットは、例えば、航空機に使用される複合部品及び/又は金属部品を組み立て中/接合中でありうる。
【0018】
図2は、例示的な一実施形態における、近接状態を報告するための方法200を示すフロー図である。方法200のステップについて、図1の近接状態報告システムを参照して説明するが、当業者には、方法200はその他のシステムにおいても実施されうることが認識されよう。本書に記載のフロー図のステップは、網羅的なものではなく、その他の図示していないステップも含みうる。本書に記載のステップは、代替的な順序でも実施されうる。
【0019】
ステップ202において、技術者150は、第1近接状態検出器(例えば、近接状態検出器160のうちの一又は複数)を装備する。第1近接状態検出器は、技術者が手を使わない方式で持ち運びうるように、ウエアラブルである。例えば、近接状態検出器は、技術者の被り物(ヘルメットなど)に付加されることも、面ファスナ―(例えばVelcro)素材によって技術者150が装着している衣服に装備されることも、技術者のポケットに入れられることも、技術者150が装着するペンダント又はスマート腕時計の形態であることも、技術者150が装着している衣服に縫い付けられるか若しくは接着されることも、視覚的警告、音による警告、振動による警告、若しくはこれらの任意の組み合わせを提供するスマート保護メガネとして実装されることも、又は、その他の手段によって装備されることもある。
【0020】
ステップ204において、組み立て環境130の中で動くロボット140の一部分142に、第2近接状態検出器が配置される。このことは、複数の近接状態検出器160をセルの中の各ロボット140に設置すること(例えば、各ロボットの表面上又は内部に配置すること)を含んでよく、かつ、整備又は検査が求められる前の、ロボット140の初期設定・較正の時に実施されうる。一部の実施形態では、第2近接状態検出器は、ロボット140の電力供給源に連結され、ロボット140のコントローラと通信する。第1近接状態検出器及び第2近接状態検出器が定位置にある状態で、技術者150が、(例えば、検査、組み立て支援、又は整備を実施するために)セル132内に進入する。この時、セル132内のロボット140は、動作を継続してよい。
【0021】
ステップ206において、第1近接状態検出器は、組み立て環境130内のセンサ120(例えば、セル132の外部に配置されたセンサ120、セル132の内部に配置されたセンサ120、ロボット140に配置されたセンサ120など)に第1信号を送信する。一実施形態では、第1信号は、第1近接状態検出器を組み立て環境130内のその他の近接状態検出器160から区別する、第1近接状態検出器の固有の識別子を提供する、超広帯域(UWB)無線信号を含む。第1近接状態検出器は、近接状態報告サーバ110のメモリ114において示される、ある特定の技術者に関連付けられうる。更なる実施形態では、第1信号は更に、第1近接状態検出器が取り付けられている技術者又はロボットを明示する。更に別の実施形態では、第1信号は、複数の異なる無線帯域又は通信チャネルを経て送信される。第1信号は、ある種の実施形態では、視覚コードとして、発光ダイオード(LED)により送信されることもある。複数の別個の通信チャネルにより第1信号を送信することで、この信号がセンサ120によって受信され、処理されうることが確実になるという、技術的な恩恵がもたらされる。第1信号は、連続的に送信されても、周期的に(例えば1秒あたり1回若しくは複数回)送信されてもよい。
【0022】
ステップ208において、第2近接状態検出器は、センサ120に第2信号を送信する。第2信号は、この第2近接状態検出器を一意的に特定するものであり、第1信号と同様な方式で、同じチャネルを介して送信されうる。第1信号及び第2信号は、センサ120で受信され、解析のために近接状態報告サーバ110に提供される。
【0023】
ステップ210において、近接状態報告サーバ110のコントローラ112は、第1信号及び第2信号に基づいて、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離を特定する。このことは、各センサの位置を示す、メモリ114に記憶された情報を参照すること、各センサ120で受信された信号の強度に基づいて、第1近接状態検出器の第1位置、及び第2近接状態検出器の第2位置を三角測量すること(triangulating)、及び第1位置と第2位置との間の離間量を特定することによって、実施されうる。メモリ114は、このプロセスの一部として、センサ120からの信号を記憶しうる。センサ120がカメラを含む更なる実施形態では、各カメラの角度、及び立体視の機器又は技法が、位置を特定するために使用されることもある。更なる実施形態では、コントローラ112は、どの近接状態検出器同士の間の距離を特定するかを、選択しうる。例えば、コントローラ112は、複数の技術者に配置された複数の近接状態検出器同士の間、同一の主体(例えば同一技術者、同一ロボットなど)に配置された複数の近接状態検出器同士の間、(例えば、ロボット向けの既存の衝突回避技術により衝突が既に防止されている状況においては)複数のロボットに配置された複数の近接状態検出器同士の間などでは、選択的に、距離特定を控えることもある。これにより、コントローラ112が最も適切な(すなわち、安全性を強化する可能性が最も高い)距離特定を実施しうる割合が、増大しうる。更に別の実施形態では、技術者又はロボットの現時点でのスピード及び/又は方向を特定するために、経時的に取得された距離データに対して、モーション検出技法が使用されうる。
【0024】
距離が特定された後に、コントローラ112は、ステップ212において、この距離が第1閾値を下回るかどうかを判定する。本書に記載の距離閾値は、ロボットごとに静的に規定されても、ロボットが動作を継続するにつれて、ロボットのNCプログラムに示される動き及び/又はNCプログラムにおけるロボットの位置に基づいて、動的に規定されてもよい。例えば、ロボットの将来の経路により、そのロボットと技術者との距離が縮まることが予測される場合、より迅速に警告を発することを確実にするために、閾値は加増されうる。
【0025】
距離が第1閾値を下回らなければ、技術者150はロボット140から離れていることになる。したがって、ロボット140は動作を継続しうる。したがって、処理はステップ210へと続く。あるいは、ステップ212において距離が第1閾値を下回っている場合には、ステップ214において、コントローラ112が(例えばセンサ120を介して)、技術者150に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示する。セル132内の動作環境は、視覚的な、音による、及び/又はその他の刺激を含むことがあり、これらの刺激は、技術者150の感覚を弛緩させうる。したがって、警告は、複数の感覚を刺激するよう(例えば、明るい光、振動運動、及び/又は独特の音により)生成されうる。警告は、ロボットに対する技術者の場所に応じて、「前進停止」「左方向に動くな」「南方向に動くな」、又は類似の文言を発声する、音声警告の形態をとることもある。警告は、自覚及び用心の増大を促す、技術者150に対する合図である。更なる実施形態では、警告は、技術者のヘルメット、メガネ、若しくは手袋における光の点滅という形態で、又はロボットにおける光の点滅若しくはサイレンとして、実装されうる。
【0026】
ステップ216において、コントローラ112は、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離が第2閾値を下回るかどうかも判定する。この距離が第2閾値を下回った場合には、コントローラ112は、ステップ218において、停止するようロボット140に指示する。これによって、たとえ技術者がアクティブに動作しているロボットに接近しても、技術者の安全が保たれることが確実になることにより、技術的恩恵がもたらされる。これにより、技術的恩恵が更にもたらされる。各ロボット自体が、技術者を回避するための専用のセンサ及びロジックを含むことが、必要ではなくなるからである。
【0027】
方法200は、近接状態検出器の複数の組に関して、実質的に同時にかつ非同期的に実施されうる。例えば、方法200は、技術者の近接状態検出器と更なるロボットの近接状態検出器との間の更なる距離を特定するために、複数回実施されうる。これにより、製造セルの中の(又は工場フロア全体においても)関連する全ての主体に関して、近接状態検出が実施されることが可能になる。
【0028】
図3は、例示的な一実施形態における、近接状態検出器300の図である。近接状態検出器300は、近接状態検出器160(図1参照)として使用されうる。近接状態検出器300は、コントローラ310、メモリ320、及び主要送受信器330に加えて、副次的送受信器340も含む。主要送受信器330及び副次的送受信器340は、近接状態検出器300から信号を送信するために別々の周波数範囲(又は、光と無線といった別々の通信モダリティ)を使用して動作する。ゆえに、一方の周波数範囲が干渉又はノイズを受けても、他方の送受信器は、別の周波数範囲で信号を提供することが可能なままである。近接状態検出器300は、振動発生装置360(例えばピエゾ素子、振動モータなど)、及びスピーカー350も含む。コントローラ310は、警告を生成する時に、これらの要素の一方又は両方を始動させて、技術者の注意を引き付けうる。更なる実施形態では、近接状態検出器300は、警告を提供する光の点滅、その他の視覚的入力、又は振動を引き起こすよう、技術者150が装着している眼装具において警報を生成しうる。例えば、眼装具の、技術者のこめかみの近く、詳細にはつるの端部にある部分により、音による警告が生成されうる。更なる実施形態では、眼装具は、視覚的警告、音による警告、若しくは振動による警告、又はこれらの任意の組み合わせを伴う、スマート保護メガネを含む。一部の実施形態では、ブルートゥース技術が利用され、この場合、技術者は、近接状態検出器を実装する、帽子、ヘルメット、手袋、メガネ、ベストなどといったウエアラブルデバイスと通信可能な、基地局を装着する。この実施形態では、近接状態検出器300は、バッテリー370及びセンサ380も含む。センサ380は、(例えばバッテリー370における電圧を測定することによって、)バッテリーレベルを検出する。センサ380は、コントローラ310にこのバッテリーレベルを報告しうる。バッテリーレベルが望ましい値を下回った場合には、コントローラ310は、スピーカー350及び/又は振動発生装置360により、バッテリーレベル警告を生成しうる。近接状態検出器300は、ボタン390を更に含みうる。ボタン390を推すことで、第1近接状態検出器は、技術者150と同じセル内にあるロボット140を遠隔停止させるためのコマンドを発するよう動作しうる。
【0029】
更なる実施形態では、近接状態報告サーバ110にバッテリーレベル情報が報告されうる。各セルは、所定のバッテリーレベルに関連付けられうる。これは、そのセル内で技術者が検査又は整備を実施している間、近接状態検出器300が動作を継続することを確実にするために望ましい、バッテリーレベルでありうる。(例えば、近接状態検出器300の三角測量された所在地に基づいて決定された)セルへの進入に当たり、コントローラ112は、現時点のバッテリーレベルと、そのセルにとって望ましいバッテリーレベルとを比較しうる。コントローラ112は更に、技術者がセルへの進入を試行している時にバッテリーレベルが所定のバッテリーレベルを下回っている場合、警告を生成するよう近接状態検出器300に指示しうる。近接状態報告サーバ110は更に、検査又は整備のプロセスにおいて、バッテリーレベルがこの時点で予測されるバッテリーレベルよりも低くなると、技術者が(この技術者が中にいる)セル132内に留まると予測される時間を推定して、近接状態検出器300にバッテリーレベル警告を生成するよう命令しうる。
【0030】
更に別の実施形態では、近接状態報告サーバ110は、近接状態検出器が既定の時間(例えば1秒間、10秒間、30秒間、1分間など)よりも長い時間にわたって信号を送信していないと、判定しうる。この判定に応じて、近接状態報告サーバ110は、近接状態検出器が最後に検出されたセル内に配置された全てのロボットに、停止命令を送信しうる。これにより、予期されない電力損失が近接状態検出器に発生した際にも安全が確保され、全体的なバッテリー損失又はデバイス故障が発生しても、技術者がセルから安全に退出することが可能になる。
【0031】
更なる近接状態検出器(ロボット140に配置されるものなど)は、振動発生装置、バッテリー、バッテリーセンサ、及び/又はスピーカーを伴わずに装備されうる。かかる近接状態センサは、それらが取り付けられるロボットの電源に直接取り付けられてよく、それらが装着されるロボット140のコントローラと直接通信するコントローラを有しうる。
【0032】
図4から図6は、例示的な一実施形態における、近接状態検出器410と、420と、430との間の距離を示している。近接状態検出器410、420、及び430の各々は、近接状態検出器160(図1参照)として使用されてよく、近接状態検出器300(図3参照)として構成されうる。この実施形態では、近接状態検出器410が、セル(例えば、図1に示しているセル132又は133)内に進入しつつある技術者(例えば、図1に示している技術者150)に配置されることが、前提となる。技術者は、図4に示しているように、第1ロボット(例えば、図1に示しているロボット140、又は図7に示しているロボット710)に配置された近接状態検出器420、及び、第2ロボット(例えば、図1に示しているロボット140、又は図7に示しているロボット720)に配置された近接状態検出器430に向かって動いている。近接状態検出器420及び430が取り付けられているこれらのロボットも、別々の方向に動いている。技術者及びロボットが動くにつれ、近接状態検出器410と近接状態検出器420及び430との間の距離が縮まった末に、近接状態検出器420は、図5に示しているように、距離D2の範囲内に入る。これにより、近接状態検出器410は警告を発出する。図6では、技術者及びロボットの動きが継続したことにより、近接状態検出器420は距離D1の範囲内に、近接状態検出器430は距離D2の範囲内に入っている。近接状態検出器410からの警告の発出は継続しており、近接状態検出器420が取り付けられているロボットは停止する。ロボットを停止させることは、ロボットの動きを妨げること、ロボットを稼働停止させること、ロボットを動かして「安全(safety)」ポーズ若しくはその他の縮納状態にすること、又はロボットが技術者から離れるように能動的に動くようにさせることを、含みうる。
【0033】
図7から図8は、例示的な一実施形態における、工場フロアのセル132を横切って進む技術者150を示している。この実施形態では、ロボット710とロボット720は各々、別々の場所へと動きうる別々の部分に(例えば、ロボットのエンドエフェクタやロボットのベースなどに)配置された、近接状態検出器160を含む。例えば、ロボットに取り付けられた近接状態検出器160は各々、ロボットの運動連鎖(kinematic chain)における異なる剛性体に設置されうる。技術者150がセル132の空間740を通って進むにつれて、ロボットはオフになり、次いで再びオンになる。例えば、図7に示しているように、技術者がセル132内を進んでいる間、ロボット710は稼働停止して部品730に対する作業を止め、次いで、図8に示しているように、ロボット720が稼働停止している間、ロボット710は再稼働して部品730に対する作業を実施しうる。つまり、図8では技術者150がロボット720に接近したので、ロボット720は(例えば、全ての動作を停止することによって、又はホーム/縮納位置に戻ることによって)停止している。しかし、技術者150がロボット710から更に離れるように動いたので、ロボット710は再稼働している。
【0034】
図9から図10は、例示的な一実施形態における、近接状態検出器と近接状態報告サーバとの間で送信される通信を示している。図9は、近接状態検出器によって送信される信号の通信900を示している。この通信は、周知の無線プロトコルにしたがって(例えば、IEEE802.11プロトコルやブルートゥースなどにしたがって)パケット化されてよく、センサ120を介して受信されうるか、さもなければ、情報を運ぶよう変調されうる。図9によると、通信900は、近接状態検出器が取り付けられているロボット又は人物を示すマスタIDを含む。通信900は、近接状態検出器を、同じ人物又はロボットにおけるその他の近接状態検出器から一意的に区別する、デバイスIDも含む。通信900は更に、その通信を生成した近接状態検出器のバッテリーレベルを報告する。図10は、近接状態報告サーバ110により近接状態検出器に提供されうる、通信1000を示している。この実施形態では、通信1000は通知を含む。通信1000は、デバイスに割り振られた識別子と、近接状態検出器に割り振られた識別子と、この近接状態検出器に提供される命令とを含む。例示的な命令は、警告、動作停止命令、動作再開命令、及びその他を含みうる。例えば、ロボットにおける近接状態検出器の距離が第1閾値を下回ると、第1通知(例えば警告のための通知)が、技術者が装着している近接状態検出器に提供されうる一方、第2通知(例えば停止のための通知)は、第1閾値よりも小さい第2閾値を下回る距離にある第2近接状態検出器に提供されうる。
【0035】

以下の例では、近接状態報告システムの観点から、更なるプロセス、システム、及び方法について説明する。
【0036】
図11は、例示的な一実施形態における、近接状態報告システムのブロック図である。図11に示しているように、製造セル1100はロボット1150を含む。ロボット1150は、ベース1110に取り付けられ、コントローラ1152を含む。コントローラ1152は、剛性体1120及び1130を(例えば、数値制御(NC)プログラムにしたがって)再位置付けするために、アクチュエータ1112、1114、及び1116の動作を指示する。これにより、エンドエフェクタ1132も再位置付けされる。アクチュエータ1112、1114、及び1116と剛性体1120及び1130(エンドエフェクタ1132を含む)とを組み合わせることで、運動連鎖1154が形成される。
【0037】
近接状態検出器1190は、ロボット1150に装着され、コントローラ1152と通信するよう連結される。近接状態検出器1190はコントローラ1192を含み、コントローラ1192は、近接状態報告サーバ1180によって処理される信号を生成し、かつメモリ1194を更に含む。冗長性を提供し、かつ信号が干渉を受ける可能性を低減するために、信号は、主要送受信器1196及び/又は副次的送受信器1198を介して送信される。近接状態検出器1190から送信された信号は、センサ1170において受信される。
【0038】
近接状態検出器1160は、製造セル1100の中で技術者に装着される。近接状態検出器1160は、信号を生成するコントローラ1161と、信号を生成し解読するための命令を記憶するメモリとを含む。近接状態検出器1160は、主要送受信器1163と、副次的送受信器1164とを更に含む。スピーカー1165及び振動発生装置1166が、技術者向けの警告を生成するために使用され、バッテリー1167が携帯電力(mobile power)を提供する。センサ1168は、解読されるよう、コントローラ1161にバッテリーレベルを報告する
【0039】
図面をより詳細に参照するに、本開示の実施形態は、図12に示している方法1200における航空機の製造及び保守の観点から、並びに図13に示している航空機1202の観点から、説明されうる。製造前段階では、方法1200は、航空機1202の仕様及び設計1204と、材料の調達1206とを含みうる。製造段階において、航空機1202のコンポーネント及びサブアセンブリの製造1208と、システム統合1210とが行われる。その後、航空機1202は、認可及び納品1212を経て、運航1214に供されうる。顧客により運航されている期間中、航空機1202には、整備及び保守1216(改変、再構成、改修なども含みうる)の定期的な作業が予定される。本書で具現化されている装置及び方法は、方法1200に記載の製造及び保守の、任意の好適な一又は複数の段階(例えば、仕様及び設計1204、材料の調達1206、コンポーネント及びサブアセンブリの製造1208、システム統合1210、認可及び納品1212、運航1214、整備及び保守1216)において、及び/又は、航空機1202の任意の好適な構成要素(例えば、機体1218、システム1220、内装1222、推進システム1224、電気システム1226、液圧システム1228、環境システム1230)で、用いられうる。
【0040】
方法1200の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。この明細書では、システムインテグレータは任意の数の航空機製造業者及び主要システム下請業者を含みうるがそれらに限定されず、第三者は任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含みうるがそれらに限定されず、かつ、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0041】
図13に示しているように、方法1200によって製造される航空機1202は、複数のシステム1220及び内装1222を有する、機体1218を含みうる。システム1220の例は、推進システム1224、電気システム1226、液圧システム1228、及び環境システム1230のうちの一又は複数を含む。任意の数の他のシステムも含まれうる。航空宇宙関連の例を示しているが、本発明の原理は、他の産業(自動車産業など)にも適用されうる。
【0042】
既に上述したように、本書で具現化されている装置及び方法は、方法1200に記載の製造及び保守の、一又は複数の任意の段階において用いられうる。例えば、コンポーネント及びサブアセンブリの製造1208に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機1202の運航期間中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリと同様の方式で製作又は製造されうる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はこれらの組み合わせは、例えば、航空機1202の組立てを著しく効率化するか、又は航空機1202のコストを大幅に削減することにより、サブアセンブリの製造1208及びシステムインテグレーション1210において利用されうる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、又はこれらの組み合わせのうちの一又は複数は、航空機1202の運航期間中に(限定するわけではないが例としては、整備及び保守1216において)利用されうる。例えば、本書に記載の技法及びシステムは、材料の調達1206、コンポーネント及びサブアセンブリの製造1208、システムインテグレーション1210、運航1214、及び/又は整備及び保守1216で使用されてよく、かつ/又は、機体1218及び/又は内装1222に使用されうる。かかる技法及びシステムは、例えば推進システム1224、電気システム1226、液圧システム1228、及び/又は環境システム1230を含む、システム1220にも利用されうる。
【0043】
一実施形態では、部品は、機体1218の一部分を含み、コンポーネント及びサブアセンブリの製造1208において製造される。この部品は、この場合、システムインテグレーション1210において航空機に組み立てられてよく、次いで、摩耗によりこの部品が使用不可となるまで、運航1214において利用されうる。その後、整備及び保守1216においてこの部品は廃棄されてよく、新たに製造された部品と交換されうる。新たな部品を製造するシステムの検査及び保守を容易にするために、コンポーネント及びサブアセンブリの製造1208の全体を通じて、新規な構成要素及び方法が利用されうる。
【0044】
図示しているか、又は本書に記載している様々な制御要素(例えば電気的構成要素又は電子部品)はいずれも、ハードウェア、プロセッサ実装ソフトウェア、プロセッサ実装ファームウェア、又はこれらの何らかの組み合わせとして実装されうる。例えば、ある要素は専用ハードウェアとして実装されうる。専用ハードウェア要素は、「プロセッサ(processors)」、「コントローラ(controllers)」と称されうるか、又は何らかの類似の用語で呼ばれうる。機能は、プロセッサによって提供される場合、単一の専用プロセッサによって、単一の共用プロセッサによって、又は、複数の個別のプロセッサであって、その一部が共用でありうるプロセッサによって、提供されうる。更に、「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行可能なハードウェアのみを表わしていると解釈すべきではなく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)若しくはその他の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェア記憶用の読取専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性ストレージ、論理、又は、他の何らかの物理的ハードウェアの構成要素若しくはモジュールを黙示的に含みうるが、それらに限定されるわけではない。
【0045】
また、制御要素は、要素の機能を実施するためにプロセッサ又はコンピュータによって実行可能な命令として、実装されうる。命令の例の一部は、ソフトウェア、プログラムコード、及びファームウェアである。命令は、プロセッサによって実行されると、要素の機能を実施することをプロセッサに指示するよう、実行可能である。命令は、プロセッサによって可読な記憶デバイスに記憶されうる。記憶デバイスの例の一部は、デジタル若しくはソリッドステートのメモリ、磁気ディスク及び磁気テープといった磁気記憶媒体、ハードドライブ、又は光学的に可読なデジタルデータ記憶媒体である。
【0046】
更に、本開示は以下の条項による例を含む。
【0047】
条項1.組み立て環境における近接状態を報告するための方法であって、ウエアラブルな第1近接状態検出器を、技術者に装備させることと、組み立て環境のセルの中で動くロボットに、第2近接状態検出器を配置することと、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離が閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することとを含む、
方法。
【0048】
条項2.第1近接状態検出器から組み立て環境内のセンサに第1信号を送信することと、第2近接状態検出器からこれらのセンサに第2信号を送信することとを更に含む、条項1に記載の方法。
【0049】
条項3.第1信号及び第2信号に基づいて、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離を特定することを更に含む、条項2に記載の方法。
【0050】
条項4.閾値が第1閾値であり、距離が第1閾値よりも小さい第2閾値を下回った場合に、停止するようロボットに指示することを更に含む、条項2又は3に記載の方法。
【0051】
条項5.ロボットに複数の近接状態検出器を設置することであって、複数の近接状態検出器の各々は、このロボットを特定し、かつ近接状態検出器をロボットにおけるその他の近接状態検出器から区別する、信号を送信する、複数の近接状態検出器を設置することと、ロボットにおける複数の近接状態検出器の各々と、第1近接状態検出器との間の距離を特定することとを更に含む、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
条項6.距離のうちのいずれかが閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することを更に含む、条項5に記載の方法。
【0053】
条項7.距離のうちのいずれかが第2閾値を下回った場合に、動きを停止するようロボットに指示することを更に含む、条項5又は6に記載の方法。
【0054】
条項8.セルの中で動く更なるロボットの一部分に、第3近接状態検出器を配置することと、第3近接状態検出器から組み立て環境内のセンサに第3信号を送信することと、第1信号及び第3信号に基づいて、第1近接状態検出器と第3近接状態検出器との間の更なる距離を特定することと、この更なる距離が第1閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することとを更に含む、条項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
条項9.更なる距離が第2閾値を下回った場合に、停止するようロボットに指示することを更に含む、条項8に記載の方法。
【0056】
条項10.第1近接状態検出器のバッテリーレベルが所定のバッテリーレベルを下回っている時に技術者がセルへの進入を試行した場合、技術者にバッテリーレベル警告を提供するよう、第1近接状態検出器を動作させることを更に含む、条項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
条項11.第1近接状態検出器におけるバッテリーレベルを特定することと、このバッテリーレベルが所定のバッテリーレベルを下回っていると判定することとを更に含み、所定のバッテリーレベルは、技術者が進入を試行しているセルに基づいて変動する、条項10に記載の方法。
【0058】
条項12.距離を特定することが、第1近接状態検出器によって送信された第1信号に基づいて、第1近接状態検出器の第1位置を特定することと、第1近接状態検出器によって送信された第2信号に基づいて、第2近接状態検出器の第2位置を特定することと、第1位置と第2位置との間の離間量を特定することとを含む、条項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
条項13.第1位置を特定することが、組み立て環境内の複数のセンサの各々において受信された信号の強度に基づいて、三角測量によって実施される、条項12に記載の方法。
【0060】
条項14.第1信号を送信することが、第1近接状態検出器において、第1送受信器を動作させて、第1の周波数範囲内の第1信号を提供することによって、及び第2送受信器を動作させて、第2の周波数範囲内の第1信号を提供することによって、実施される、条項12又は13に記載の方法。
【0061】
条項15.警告が、近接状態検出器における振動、光の点滅、及び音を含む、条項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
条項16.技術者と同じセル内にあるロボットを遠隔停止させるためのコマンドを発するよう、第1近接状態検出器を動作させることを更に含む、条項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
条項17.条項1から16のいずれか一項に記載の方法にしたがって組み立てられた、航空機の一部分。
【0064】
条項18.プログラムされた命令を具現化する非一過性のコンピュータ可読媒体であって、この命令は、プロセッサによって実行されると、組み立て環境における近接状態を報告するための方法を実施するよう実行可能であり、この組み立て環境内で、技術者はウエアラブルな第1近接状態検出器を装備し、第2近接状態検出器は組み立て環境のセル内で動くロボットに配置され、方法が、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離が閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することを含む、
媒体。
【0065】
条項19.プログラムされた命令を具現化する非一過性のコンピュータ可読媒体であって、この命令は、プロセッサによって実行されると、組み立て環境における近接状態を報告するための方法を実施するよう実行可能であり、この方法が、ウエアラブルな第1近接状態検出器を、技術者に装備させることと、組み立て環境のセルの中で動くロボットに、第2近接状態検出器を配置することと、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離が閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することとを含む、
媒体。
【0066】
条項20.方法が、第1近接状態検出器から組み立て環境内のセンサに第1信号を送信することと、第2近接状態検出器からこれらのセンサに第2信号を送信することとを更に含む、条項18又は19に記載の媒体。
【0067】
条項21.方法が、第1信号及び第2信号に基づいて、第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離を特定することを更に含む、条項20に記載の媒体。
【0068】
条項22.閾値が第1閾値であり、方法が、距離が第1閾値よりも小さい第2閾値を下回った場合に、停止するようロボットに指示することを更に含む、条項20又は21に記載の媒体。
【0069】
条項23.方法が、ロボットに複数の近接状態検出器を設置することであって、複数の近接状態検出器の各々は、このロボットを特定し、かつ近接状態検出器をロボットにおけるその他の近接状態検出器から区別する、信号を送信する、複数の近接状態検出器を設置することと、ロボットにおける複数の近接状態検出器の各々と、第1近接状態検出器との間の距離を特定することとを更に含む、条項18から22のいずれか一項に記載の媒体。
【0070】
条項24.方法が、距離のうちのいずれかが閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することを更に含む、条項23に記載の媒体。
【0071】
条項25.方法が、距離のうちのいずれかが第2閾値を下回った場合に、動きを停止するようロボットに指示することを更に含む、条項23又は24に記載の媒体。
【0072】
条項26.方法が、セルの中で動く更なるロボットの一部分に、第3近接状態検出器を配置することと、第3近接状態検出器から組み立て環境内のセンサに第3信号を送信することと、第1信号及び第3信号に基づいて、第1近接状態検出器と第3近接状態検出器との間の更なる距離を特定することと、この更なる距離が第1閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示することとを更に含む、条項18から25のいずれか一項に記載の媒体。
【0073】
条項27.方法が、更なる距離が第2閾値を下回った場合に、停止するようロボットに指示することを更に含む、条項26に記載の媒体。
【0074】
条項28.方法が、第1近接状態検出器のバッテリーレベルが所定のバッテリーレベルを下回っている時に技術者がセルへの進入を試行した場合、技術者にバッテリーレベル警告を提供するよう、第1近接状態検出器を動作させることを更に含む、条項18から27のいずれか一項に記載の媒体。
【0075】
条項29.方法が、第1近接状態検出器におけるバッテリーレベルを特定することと、このバッテリーレベルが所定のバッテリーレベルを下回っていると判定することとを更に含み、所定のバッテリーレベルは、技術者が進入を試行しているセルに基づいて変動する、条項28に記載の媒体。
【0076】
条項30.距離を特定することが、第1近接状態検出器によって送信された第1信号に基づいて、第1近接状態検出器の第1位置を特定することと、第1近接状態検出器によって送信された第2信号に基づいて、第2近接状態検出器の第2位置を特定することと、第1位置と第2位置との間の離間量を特定することとを含む、条項18から29のいずれか一項に記載の媒体。
【0077】
条項31.第1位置を特定することが、組み立て環境内の複数のセンサの各々において受信された信号の強度に基づいて、三角測量によって実施される、条項30に記載の媒体。
【0078】
条項32.第1信号を送信することが、第1近接状態検出器において、第1送受信器を稼働させて、第1の周波数範囲内の第1信号を提供することによって、及び、第2送受信器を動作させて、第2の周波数範囲内の第1信号を提供することによって、実施される、条項30又は31に記載の媒体。
【0079】
条項33.警告が、近接状態検出器における振動と音の両方を含む、条項18から32のいずれか一項に記載の媒体。
【0080】
条項34.方法が、技術者と同じセル内にあるロボットを遠隔停止させるためのコマンドを発するよう、第1近接状態検出器を動作させることを更に含む、条項18から33のいずれか一項に記載の媒体。
【0081】
条項35.条項18から34のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体に記憶された命令によって規定される方法にしたがって組み立てられた、航空機の一部分。
【0082】
条項36.組み立て環境における近接状態報告のためのシステムであって、ウエアラブルな第1近接状態検出器と、組み立て環境のセル内のロボットに配置される、第2近接状態検出器と、近接状態報告サーバであって、第1閾値と第1閾値を下回る第2閾値とを示すデータを記憶するメモリ、及び第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離を特定し、距離が第1閾値を下回った場合に第1近接状態検出器に通知を提供し、かつ距離が第2閾値を下回った場合に第2近接状態検出器に通知を提供するために、第1信号及び第2信号を解析する、コントローラを備える、近接状態報告サーバとを備える、
システム。
【0083】
条項37.第1近接状態検出器が、送受信器と、組み立て環境内のセンサに第1信号を送信するよう送受信器に指示し、かつ近接状態報告サーバから受信した通知に基づいて、第1近接状態検出器を装着している技術者に警告する、コントローラとを備える、条項36に記載のシステム。
【0084】
条項38.第1近接状態検出器が、帽子、ヘルメット、メガネ、ベスト、又は手袋において実装される、条項36又は37に記載のシステム。
【0085】
条項39.第2近接状態検出器が、送受信器と、組み立て環境内のセンサに第2信号を送信するよう送受信器に指示し、かつ近接状態報告サーバから受信した通知に基づいて、停止するようロボットに指示する、コントローラとを備える、条項36から38のいずれか一項に記載のシステム。
【0086】
条項40.技術者が装着している第1近接状態検出器の位置、及びロボットにおける第2近接状態検出器の位置を示す信号を受信するセンサを更に備える、条項36から39のいずれか一項に記載のシステム。
【0087】
条項41.センサが近接状態サーバに信号を提供する、条項40に記載のシステム。
【0088】
条項42.センサが、無線アンテナ、送受信器、及びカメラからなる群から選択される、条項41に記載のシステム。
【0089】
条項43.コントローラが、各センサにおいて受信された信号の強度に基づいて、第1近接状態検出器の第1位置、及び第2近接状態検出器の第2位置を三角測量し、かつ第1位置と第2位置との間の離間量を特定する、条項40から42のいずれか一項に記載のシステム。
【0090】
条項44.条項36から43のいずれか一項に記載のシステムを使用する、航空機の一部分の製造。
【0091】
条項45.技術者とロボットとの間の近接状態を検出するためのシステムであって、技術者が装着している第1近接状態検出器の位置、及びロボットにおける第2近接状態検出器の位置を示す信号を受信するセンサと、近接状態サーバであって、信号を記憶するメモリ、及び第1近接状態検出器と第2近接状態検出器との間の距離を特定し、距離が第1閾値を下回った場合に、技術者に警告を提供するよう第1近接状態検出器に指示し、かつ距離が第2閾値を下回った場合に、停止するようロボットに指示する、コントローラを備える、近接状態サーバとを備える、
システム。
【0092】
条項46.センサが近接状態サーバに信号を提供する、条項45に記載のシステム。
【0093】
条項47.センサが、無線アンテナ、送受信器、及びカメラからなる群から選択される、条項46に記載のシステム。
【0094】
条項48.第1近接状態検出器が、帽子、ヘルメット、メガネ、ベスト、又は手袋において実装される、条項45から47のいずれか一項に記載のシステム。
【0095】
条項49.コントローラが、各センサにおいて受信された信号の強度に基づいて、第1近接状態検出器の第1位置、及び第2近接状態検出器の第2位置を三角測量し、かつ第1位置と第2位置との間の離間量を特定する、条項45から48のいずれか一項に記載のシステム。
【0096】
条項50.条項45から49のいずれか一項に記載のシステムを使用する、航空機の一部分の製造。
【0097】
本書には具体的な実施形態が記載されているが、本開示の範囲は、かかる具体的な実施形態に限定されるものではない。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその何らかの均等物によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13