(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナを用いた高速空間探索
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20241216BHJP
H01Q 3/30 20060101ALI20241216BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H04B7/06 960
H01Q3/30
H04B7/06 956
H04B7/08 802
H04B7/08 810
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081988
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・エー・レイ
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0323757(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0227024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H01Q 3/30
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェーズドアレイアンテナ(4)を用いて信号を探索するための方法であって、
(a)第一ビーム幅と照準からの第一角度とを有する第一ビームを送信することと、
(b)前記第一ビームの送信後に第一信号を受信することと、
(c)前記第一信号のパラメータの値が第一閾値を超えていることを検出することと、
(d)前記第一ビーム幅よりも小さな第二ビーム幅と、前記第一ビームの角度範囲内に在る照準からの第二角度とを有する第二ビームを送信することと、
(e)前記第二ビーム幅と、前記第一ビームの角度範囲内に在る照準からの第三角度とを有する第三ビームを送信することと、を備え、
前記照準からの第一角度が前記照準からの第二角度と前記照準からの第三角度との間にあ
り、
前記方法は更に、探索ギャップを埋めるために、追加の狭ビームを追加すべきか否かを決定することを備える、方法。
【請求項2】
前記第二ビーム幅が前記第一ビーム幅の半分に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二ビームの角度範囲と前記第三ビームの角度範囲の合計が前記第一ビームの角度範囲と同一の広がりである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(f)前記第二ビームの送信後に第二信号を受信することと、
(g)前記第二信号のパラメータの値が第二閾値を超えていることを検出することと、
(h)前記第二ビーム幅よりも小さな第三ビーム幅と、前記第二ビームの角度範囲内に在る照準からの第四角度とを有する第四ビームを送信することと、
(i)前記第三ビーム幅と、前記第二ビームの角度範囲内に在る照準からの第五角度とを有する第五ビームを送信することと、を更に備え、
前記照準からの第二角度が前記照準からの第四角度と前記照準からの第五角度との間にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第二ビーム幅が前記第一ビーム幅の半分に等しく、前記第三ビーム幅が前記第二ビーム幅の半分に等しく、前記第四ビームの角度範囲と前記第五ビームの角度範囲の合計が前記第二ビームの角度範囲と同一の広がりである、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は一般的にフェーズドアレイアンテナに係り、特にフェーズドアレイアンテナを用いて信号を探索するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最新のフェーズドアレイアンテナは、人工衛星、航空機、船舶、陸用車両を介する広帯域モバイル通信を支持する技術を実現可能とするものである。特に、先進的なデジタルビームフォーミングが、大型のフェーズアレイアンテナと共に、サイドローブ性能を改善しグレーティングローブを抑制して、ダイナミックで高スループットでロバストな通信及びネットワーク形成を提供するために必要とされ、また、ジャミング用の高速無効化、高速スキャン、ネットワーク性能を向上させるための高速ビーム切り替えを提供するために必要とされている。従って、ビーム探索には、モバイルネットワークの接続、新規レーダーの発見、人工衛星や携帯電話基地局を切り替える際のロバストな切り替え(ハンドオフ)を提供する等の多種多様な応用が存在する。本願において、「ビーム探索」との用語は、ビームを用いて信号を探索することを称する(ビームを探索することではない)。
【0003】
ビーム探索にとって重要なのは、ビームフォーミングのプロセスである。ビームフォーミングは、指向性信号送受信用のアンテナアレイで用いられる信号処理方法である。これは、アンテナアレイにおいて信号要素同士を組み合わせて、特定の角度の信号が強め合う干渉を受け、他の信号が弱め合う干渉を受けるようにすることによって達成される。このようなアンテナアレイは典型的にはフェーズドアレイアンテナと称される。全方向性(無指向性)の送受信と比較しての改善は、アレイの指向性として知られていて、アンテナの性能の重要な尺度である。ビームフォーミングは無線周波(RF,radio‐frequency)又は音波に対して使用可能であり、レーダー、ソナー、地震学、無線通信、電波天文学、音響学、生物医学における多数の応用を有する。従来の時間遅延ビームステアリングは指向方向(本願では、代わりに「照準角度」や「指向角度」とも称される)を取り、指向方向に対する信号送受信を最大化して、狭ビームを形成するようにアンテナアレイの設定を行う。ビームフォーミングを可能にするメカニズムは、各素子において位相(又は時間遅延)と振幅(又は重み)を別々に調整して、所望のビームを生成するように強め合う又は弱め合う信号の重ね合わせとすることである。
【0004】
既存のフェーズドアレイを用いたビーム探索の解決策では、信号を探索する方法において機械的な皿を模倣している。従って、こうした解決策では、アレイの視野Fを単一の狭ビームで掃引する。これは、ビームが最終的には視野内の全ての角度領域を指向しなければならないので、掃引時間がアレイのサイズ(素子の総数)と共に線形に増加することを意味する。これを理解するためには、波長λでd=λ/2の素子間隔でN個の素子を有する線形アレイの第一ヌルビーム幅(FNBW,first null beam width)が、ラジアン単位で近似的に4/Nであることに留意されたい。同様の近似で、N1×N2のサイズの平面アレイでは、角度面積は近似的に線形アレイのビーム幅同士の積であり、例えばステラジアン単位で16/(N1N2)である。従って、視野Fの完全な探索のための時間は、線形アレイでは近似的にspan(F)×N/4であり、平面アレイでは近似的にarea(F)×N1N2/16である。ここで、span()はラジアン単位での角度範囲を表し、area()はステラジアン単位での二次元立体角範囲を表す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Karam et al., “Complex Chebyshev Approximation for FIR Filter Design”, IEEE Trans. on Circuits and Systems, Part II, March 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
如何にしてフェーズドアレイアンテナの視野内の全ての検出可能な信号を素早く見つけ出すのかという課題に対する解決策が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下詳述される主題は、フェーズドアレイアンテナの視野内の検出可能な信号を素早く見つけ出すためのシステムと方法を対象としている。ツリー型の信号検出の手法で粗密角度ビームパターンを生成することによって、送信ビームパターンを時間と共に変更して、典型的な時間遅延ステアリングよりも信号空間探索性能を向上させる。より具体的には、ツリー型ビーム探索を採用して、以前に信号が検出された角度空間内の照準から或る角度において送信用の狭ビーム幅を有するビームを選択する。
【0008】
一実施形態では、複数のレベルを有する相補的ビームセットを設計する。各レベルを構成するサブセット内のビーム数は、レベルが増えるにつれて増加する。次いで、フェーズドアレイアンテナによって生成されるビームを制御するビームステアリングコントローラに複数のレベルの相補的ビームをロードする。検出された信号のパラメータの値が閾値を超えた際に信号検出が生じる。例えば、検出されるパラメータは、信号のエネルギーの和であり得る。他の多数の検出方式も可能である。レベルが増えるにつれて、各ビームフィルタの利得が増加し、ビーム幅が減少する。従って、信号がより多くの空間フィルタに投入されて、可能な信号方向を狭めるのと同時に、受信信号のパワーを増加させる。これは、(1)より多くの信号を見つけ出すことを(2)より狭い角度領域において行うという二重の効果を有する。
【0009】
上述のように、典型的なフェーズドアンテナアレイは、その信号探索方法において機械的な皿を模倣する。従って、フェーズドアレイアンテナを用いて、命令された各角度に対して狭ビームがそれぞれ生成される。対照的に、本開示のビーム探索方法論は、典型的な時間遅延ステアリングよりも信号空間探索性能を向上させるようにビームパターンを時間と共に変更することができる。この手法は、ビーム探索のために典型的に用いられるよりもフェーズドアレイの性能をより多く用いる。この点は次元を検討することで明らかとなる。単一のビームを用いた単純な角度探索で、N個の素子を有するフェーズドアレイアンテナの視野にわたって掃引した場合、ビームに対する方位角制御(方位角及び仰角制御)を有する線形アレイ(平面アレイ)については、位相と振幅の制御は一次元空間(二次元空間)内でのみ異なるものとなる。従って、狭ビームを生成するためにN-1次元(N-2次元)のみが探索中に用いられることになる。対照的に、本提案のシステムは、ビームの幅と指向角度が増えるので、探索用により多くの次元を用いる。従って、本提案のシステムは、探索用に最大二倍のアレイ寸法を用いる。これは、効率的に指向性と探索時間のトレードオフを可能にする。
【0010】
本提案のビーム探索方法論(以下「ツリー型ビーム探索」と称する)は以下の特筆すべき特徴を有する:(1)フェーズドアレイアンテナを用いてツリー型ビーム探索を行うことで、Dlog2(N)/2に比例する時間内において(平均で)視野内の全ての信号を見つけ出すことができ、ここで、Dは単一の信号を検出する時間である。これは、時間が平均でDN/2に比例する従来の方法よりもはるかに高速である。(2)信号空間を高速探索することによって、過渡信号検出の確率が上昇する。特に、本システムは、より短い持続時間の信号をより確実に検出することができる。例えば、標準的な探索法は持続時間DNを有する全ての信号を検出するが、本提案の方法は、持続時間Dlog2(N)を有する大抵の信号を検出することができる。
【0011】
上述の特徴は、高価であり問題が多い選択肢となるアンテナのサイズや数の増大とRF受信器の性能の改善を必要とせずに、探索性能を向上させることによって、フェーズドアレイアンテナシステムに利点を与える。本願で採用されている手法は、典型的なフェーズドアレイアンテナが採用しているものよりもロバストなビームフォーミングとビームステアリングを採用しており、市販のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA,field programmable gate array)と電子機器を用いて実施可能である。
【0012】
以下、フェーズドアレイアンテナの視野内の検出可能な信号を素早く見つけ出すためのシステムと方法の多様な実施形態を詳細に説明するが、これら実施形態のうちの一つ以上は以下の態様のうち一つ以上を特徴とし得る。
【0013】
以下で詳述される主題の一態様は、フェーズドアレイアンテナを用いて信号を探索するための方法であって、その方法は、(a)第一ビーム幅と照準からの第一角度とを有する第一ビームを送信することと、(b)第一ビームの送信後に第一信号を受信することと、(c)第一信号のパラメータの値が第一閾値を超えていることを検出することと、(d)第一ビーム幅よりも小さな第二ビーム幅と、第一ビームの角度範囲内に在る照準からの第二角度とを有する第二ビームを送信することと、(e)第二ビーム幅と、第一ビームの角度範囲内に在る照準からの第三角度とを有する第三ビームを送信することと、を備え、照準からの第一角度は照準からの第二角度と第三角度との間にある。一部実施形態によると、第二ビーム幅は第一ビーム幅の半分に等しく、第二ビームの角度範囲と第三ビームの角度範囲の合計は第一ビームの角度範囲と同一の広がりである。
【0014】
上記方法は、(f)第二ビームの送信後に第二信号を検出することと、(g)第二信号のパラメータの値が第二閾値を超えていることを検出することと、(h)第二ビーム幅よりも小さな第三ビーム幅と、第二ビームの角度範囲内に在る照準からの第四角度とを有する第四ビームを送信することと、(i)第三ビーム幅と、第二ビームの角度範囲内に在る照準からの第五角度とを有する第五ビームを送信することと、を更に備え得て、照準からの第二角度は、照準からの第四角度と第五角度との間にある。第一ビームから第五ビームは、M個のビームを有し第一ビームを含む第一レベルと、2M個のビームを有し第二ビーム及び第三ビームを含む第二レベルと、4M個のビームを有し第四ビーム及び第五ビームを含む第三レベルと、2L-1個のビームを有する第Lレベルとを備えるL個のレベルを有する相補的ビームセットから選択され、LとMは整数である。
【0015】
以下で詳述される主題の他の態様は、フェーズドアレイアンテナを用いて信号を探索するための方法であって、本方法は、L個のレベルを有する相補的ビームセットを設計することと、フェーズドアレイアンテナによって生成されるビームを制御するビームステアリングコントローラにL個のレベルの相補的ビームセットをロードすることと、送信用に相補的ビームセット内のビーム(b,l)をマーキングすることと、ビーム幅と指向角度を有するマーキング済みのビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナのアンテナ素子の位相と振幅を設定することと、マーキング済みのビームの送信後にフェーズドアレイアンテナにおいて信号を受信することと、受信した信号のパラメータの値が信号を受信したことを示していることを検出することと、現在のレベルlがレベル総数L未満であるか否かを決定することと、現在のレベルlがレベル総数L未満ではない場合に、現在のビームの指向角度に対応する到達方向で信号が検出されたことを宣言することと、現在のレベルlがレベル総数L未満である場合に、相補的ビームセットのレベルlの現在のビームに対応する次のレベル(l+1)の二つのビーム(2b-1)と2bを送信用にマーキングすることと、二つのビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナのアンテナ素子の位相と振幅を設定することと、二つのビームを連続して送信することと、を備える。提案される一実施形態によると、相補的ビームセットは、M個のビームを有する第一レベルと、2M個のビームを有する第二レベルと、4M個のビームを有する第三レベルと、2L-1M個のビームを有する第Lレベルとを備えるL個のレベルを有し、MとLは整数である。本方法は、現在の探索フレームの探索ギャップを埋めるために第Lレベルからの追加のビームのサブセットをマーキングすることと、追加のビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナのアンテナ素子の位相と振幅を設定することと、を更に備え得る。
【0016】
以下で開示される主題の更なる態様はシステムであって、本システムは、フェーズドアレイアンテナと、送信器と、受信器と、送信モードにおいて送信器をフェーズドアレイアンテナに接続し、受信モードにおいて受信器をフェーズドアレイアンテナに接続する伝送モジュールと、ツリー型ビーム探索によって決定される照準からの角度とビーム幅とを有するビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナを制御するように構成されたビームステアリングコントローラと、ツリー型ビーム探索によって選択されたビームをフェーズドアレイアンテナに送信させる命令を送信器とビームステアリングコントローラに送信するように構成されたビーム探索コントローラと、L個のレベルで構成された相補的ビームセットのビームの特性を表すデータを記憶している相補的ビームセットデータ記憶媒体と、を備え、相補的ビームセットデータ記憶媒体はビーム探索コントローラとビームステアリングコントローラの両方によってアクセス可能であり、ビーム探索コントローラは、相補的ビームセットデータ記憶媒体内で特定され選択されたビームをマーキングするように更に構成され、ビームステアリングコントローラは、相補的ビームセットデータ記憶媒体から読み出されたビーム情報に応じてフェーズドアレイアンテナによって生成されるビームを制御するように更に構成される。ビーム探索コントローラは、受信器によって出力された信号の特定のパラメータを検出するように構成されたモジュールを備える。
【0017】
上記システムの一部実施形態によると、相補的ビームセットは、M個のビームを有する第一レベルと、2M個のビームを有する第二レベルと、4M個のビームを有する第三レベルと、2L-1個のビームを有する第Lレベルとを備えるL個のレベルを有し、MとLは整数である。第一レベルは第一ビーム幅を有するビームを含み、第二レベルは第一ビーム幅よりも小さな第二ビーム幅を有するビームを含み、第三レベルは第二ビーム幅よりも小さな第三ビーム幅を有するビームを含み、第Lレベルは、第三ビーム幅よりも小さく且つ第三レベルと第Lレベルとの間のいずれのレベルのビーム幅よりも小さい第Lビーム幅を有数ビームを含む。
【0018】
提案される一実施形態によると、ビーム探索コントローラは、送信用に相補的ビームセット内のビーム(b,l)をマーキングすることと、ビームの送信後に受信信号のパラメータの値が信号を受信したことを示していることを検出することと、送信ビームが属する現在のレベルlがレベル総数L未満であるか否かを決定することと、現在のレベルlがレベル総数L未満ではない場合に、送信ビームの指向角度に対応する到達方向で信号が検出されたことを宣言することと、現在のレベルlがレベル総数L未満である場合に、相補的ビームセットのレベルlの送信ビームに対応する次のレベル(l+1)の二つのビーム(2b-1)と2bを送信用にマーキングすることと、を行うように更に構成される。
【0019】
フェーズドアレイアンテナの視野内の検出可能な信号を素早く見つけ出すためのシステムと方法の他の態様については以下で開示する。
【0020】
上述の特徴、機能及び利点は、多様な実施形態において独立して達成可能であり、更に他の実施形態においては組み合わせ可能でもある。上述の態様及び他の態様を例示する目的で、以下では、図面を参照して多様な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】典型的なフェーズドアレイアンテナシステムのいくつかの構成要素を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係るフェーズドアレイアンテナを用いてツリー型ビーム探索を行うための方法のステップを示すフローチャートである。
【
図3】如何にしてフェーズドアレイアンテナの多様な素子にデジタルビームフォーマが接続されるのかを示す図である。
【
図4A】単一チャネル有限インパルス応答(FIR)フィルタ(
図4Aを参照)と等間隔無指向性狭帯域線形アレイ(
図4Bを参照)との間の類似性を示す図である。
【
図4B】単一チャネル有限インパルス応答(FIR)フィルタ(
図4Aを参照)と等間隔無指向性狭帯域線形アレイ(
図4Bを参照)との間の類似性を示す図である。
【
図5A】相対的ビーム利得・対・指向角度のグラフである。
【
図5B】相対的ビーム利得・対・指向角度のグラフである。
【
図5C】相対的ビーム利得・対・指向角度のグラフである。
【
図6A】絶対ビーム利得・対・指向角度のグラフである。
【
図6B】絶対ビーム利得・対・指向角度のグラフである。
【
図6C】絶対ビーム利得・対・指向角度のグラフである。
【
図7】ビーム探索法を用いたフェーズドアレイアンテナシステムでの信号検出用のツリーを示す図である。
【
図8】一実施形態に係るフェーズドアレイアンテナシステムのいくつかの部品を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面全体にわたって同様の要素が同じ参照番号を有する図面を参照する。
【0023】
以下、フェーズドアレイアンテナの視野内の検出可能な信号を素早く見つけ出すためのシステムと方法の例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、実際の実施形態における全ての特徴が本明細書に記載されている訳ではない。実際の実施形態の開発においては、実施形態毎に異なるシステムに関する制約や事業に関する制約等のその開発者の具体的な目標を達成するために、多数の実施形態特有の決定を為さなければならないことを当業者は理解されたい。更に、そのような開発の労力は、複雑で時間がかかるものではあるが、本開示の恩恵を受ける当業者にとっては日常的な業務であることを理解されたい。
【0024】
以下、フェーズドアレイアンテナの視野内の検出可能な信号を素早く見つけ出すための方法の例示的な一実施形態を例示目的で説明する。誤解を避けるため、まずは、
図1を参照して、フェーズドアレイアンテナの動作原理を簡単に説明する。
【0025】
図1は、典型的なフェーズドアレイアンテナシステム2のいくつかの構成要素を示すブロック図である。フェーズドアレイアンテナシステム2は、フェーズドアレイアンテナ4と、送信器14と、受信器16と、伝送モジュール12とを含み、伝送モジュール12は、送信モードにおいて送信器14をフェーズドアレイアンテナ4に接続し、受信モードにおいて受信器16をフェーズドアレイアンテナ4に接続する。フェーズドアレイアンテナ4は、アンテナ素子(アンテナ要素)6のアレイと、対応する位相シフタ8のアレイとを含む。各アンテナ素子6用のフィード電流は、ビームステアリングコントローラ10によって制御される各位相シフタ8(φ)を通過する。ビームステアリングコントローラ10は、指向角度θを有する送信ビームを生成するように組み合わさるRF波を各アンテナ素子6が放出するように位相シフタ8を制御するように構成される(例えば、プログラムされる)。個々の波面は球形であるが、フェーズドアレイアンテナ4の前方で組み合わさって(重なり合って)、特定の方向に伝播する平面波を生成する。位相シフタ8はRF波を遅延させて、各アンテナ素子6がその前のアンテナ素子よりも後にその波面を放出するようにする。これが、アンテナ軸(照準としても知られている)に対して角度θに向けられる平面波を結果的に生じさせる。位相シフトを変更することによって、ビームステアリングコントローラ10は送信ビームの角度θを瞬時に変更することができる。大抵のフェーズドアレイは、
図1に示される線形アレイの代わりにアンテナ素子の二次元アレイを有し、この場合、送信ビームは二次元でステアリング可能である。受信ビームも同様に、指向角度から戻る波面を組み合わせるように位相シフトを制御することによって形成される。
【0026】
遠隔通信とレーダー工学において、アンテナ照準は、指向性アンテナの最大利得(最大放射パワー)の軸である。大抵のアンテナでは、照準はアンテナの対称軸である。例えば、軸フィード皿型アンテナでは、アンテナ照準はパラボラ状の皿の対称軸であり、アンテナ放射パターン(メインローブ)は照準軸周りに対称である。フェーズドアレイアンテナは、送信ビームを電子的にステアリングすることができ、別々のアンテナ素子6によって放出されるRF波の相対的な位相をシフトすることによって照準の角度(指向角度としても知られている)を変更する。本願において、「ビーム幅」との用語は、メインローブのピーク有効放射パワーを基準とした際のメインローブのハーフパワー(略3dB)の点同士の間の角度を意味する。
【0027】
本開示のビーム探索方法は、フェーズドアレイアンテナシステム2によって生成されるビームパターンを時間と共に変更することを可能にし、ツリー型の信号検出手法で粗密角度ビームパターンを生成することによって、典型的な時間遅延ステアリングよりも信号空間探索性能を向上させる。
図2は、一実施形態に係るフェーズドアレイアンテナ4を用いてツリー型ビーム探索を行うための方法のステップを示すフローチャートであり、送信用に選択されたビームをマーキングすることと、フェーズドアレイアンテナ4を用いてマーキング済みのビームを送信することを含む。
図2に示されるステップは、ビームステアリングコントローラ10に通信可能に結合されたビーム探索コントローラ1の制御下で行われる。ビーム探索コントローラ1は、ビームステアリングコントローラ10に命令を送信するように構成された(例えば、プログラムされた)コンピュータ又はプロセッサである。そして、ビームステアリングコントローラ10は、ツリー型ビーム探索によって決定される照準からの角度とビーム幅を有するマーキング済みのビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナ4を制御するように構成された(例えば、プログラムされた)コンピュータ又はプロセッサである。
【0028】
図2に示される実施形態によると、L個のレベルを有する相補的ビームセット20が設計される。ビームパターンは以下のとおりになるように予め設計される:レベル1がM個のビームを有する。レベル2が2M個のビームを有し、各ビーム対はレベル1からのビームパターンの対応ビーム内に収まる(フィットする)。レベル3は4M個のビームを有し、各ビーム対がレベル2からのビームパターンの対応ビーム内に収まる(フィットする)。本願において、「収まる(フィットする)」とは、或るレベルのビーム対の角度範囲が、一つ低いレベルの対応するより幅広のビームの角度範囲の各部分に重なり且つその角度範囲内に収まる(フィットする)ことを意味し、更に、その一つ低いレベルの幅広ビームの照準からの角度が、そのビーム対の照準からのそれぞれの角度同士の間にあることを意味する。これは、フィルタ設計法を用いて達成可能であり、以下でより詳細に説明する。ビームセットの各ビームは、n(l,b)と記される「マーキング」によって特定され、これは、レベルlにおける第b番目のマーキングされたビームを表す。
【0029】
次いで、L個のレベルの相補的ビームが非一時的有形コンピュータ可読記憶媒体(
図2には示されていないが、
図8の相補的ビームセットデータ記憶媒体11を参照)にロードされる。非一時的有形コンピュータ可読記憶媒体には、ビーム探索コントローラ1とビームステアリングコントローラ10の両方によってアクセス可能である。ビーム探索コントローラ1は、相補的ビームセットデータ記憶媒体11において特定され選択されたビームをマーキングするように構成され、一方、ビームステアリングコントローラ10は、相補的ビームセットデータ記憶媒体11から読み出されたビーム情報に応じてフェーズドアレイアンテナ4によって生成されるビームを制御するように構成される。より具体的には、ビームステアリングコントローラ10は、フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子6について位相遅延を設定し(
図1を参照して前述したように)、また、アンテナアレイ6によって放出される波面の振幅を調整するのに用いられる重み付けを設定する。
【0030】
新規探索フレーム用のビーム探索の初期化に応答して、ビーム探索コントローラ1はビームインデックスbとレベルインデックスlをリセットする(
図2の工程34)。これらのインデックス(送信すべきマーキング済みビームを特定する)を含む送信ビーム要求22が、ビームステアリングコントローラ10に送信される。次いで、ビームステアリングコントローラ10は、アンテナ素子6の位相と振幅を設定して、照準からの特定の角度と特定のビーム幅を有するマーキング済みのビームが送信されるようにする。
【0031】
プログラムされたビームの送信に続いて、信号Sをフェーズドアレイアンテナ4によって受信する。本願では、レベルlにおいてプログラムされたビームB
ln(l,b)の送信に続いて受信される信号をB
ln(l,b)(S)と表す。ビーム探索コントローラ1は、信号パラメータの値が信号(ノイズではない)を受信したことを示していることを検出するように更に構成される。受信信号B
ln(l,b)(S)のパラメータ(例えば、エネルギー)の値の検出するため、ビーム探索コントローラ1は、選択された検出アルゴリズムd()を用い、レベルlについて閾値T
lを有するものとする。より具体的には、以下のように、パラメータの検出値が閾値T
lよりも大きいか否かを決定する(
図2の工程24):
d(B
ln(l,b)(S))>T
l?
受信信号のパラメータ値が閾値T
lを超えていると決定されると、次いで、現在のレベルlがレベル総数L未満であるか否かを更に決定する(工程26)。そして、現在のレベルlがレベル総数L未満ではない場合(例えば、l=L)、次いで、閾値を超えた信号検出は、現在のビームB
ln(l,b)の指向角度に対応する到達方向で信号が検出されたというシステムの宣言(工程27)に繋がる。
【0032】
他方、現在のレベルlがレベル総数L未満である場合、次いで、レベルlの現在のビームに対応する次のレベル(l+1)の二つのビーム(2b-1)と(2b)を使用のためにマーキングする(工程28)。次いで、マーキングn(l+1,2b)とn(l+1,2b-1)を表すデジタルデータを先入先出(FIFO,first‐in first‐out)バッファ30に記憶する。次いで、ビーム探索コントローラ1は、ビーム探索が全てのマーキングされたビームで行われたか否かを決定する(工程32)。全てのレベルの全てのマーキングされたビームが放出された場合、次いで、ビーム探索コントローラ1は、現在の探索フレームの探索ギャップを埋めるために追加の狭ビームのサブセットをマーキングすべきかどうかを決定する。
【0033】
他方、ビーム探索が全てのマーキングされたビームで行われていないと決定されると(工程32において)、ビームインデックスbとレベルインデックスl(送信すべき次のマーキング済みビームを特定する)を含む送信ビーム要求22が、ビームステアリングコントローラ10に送信される。送信ビーム要求22は、ビームステアリングコントローラ10の制御下で送信される次のビームBln(l,b)を特定する。次いで、ビームステアリングコントローラ10は、相補的ビームセット20内の次のマーキング済みビームが送信されるようにアンテナ素子6の位相と振幅を設定する。
【0034】
他方、現在の探索フレームについてビーム探索が全てのマーキングされたビームで行われたと決定されると(工程32において)、次いで、ビーム探索コントローラ1は、ビーム探索が追加の狭ビーム(例えば、最後のレベルLのビームのビーム幅に等しいビーム幅を有するビーム)を含むべきか否かを決定する(工程34)。
【0035】
他方、現在の探索フレームについて追加の狭ビームを追加すべきではないと決定されると(工程34において)、次いで、ビーム探索コントローラ1は、新規探索フレーム用にビーム探索のリセット(工程18)と初期化(工程22)を行う。
【0036】
他方、現在の探索フレームの探索ギャップを埋めるために追加の狭ビームを現在の探索フレームに追加すべきであると決定されると(工程34において)、次いで、ビーム探索コントローラ1は、追加の狭ビームのサブセットをマーキングする。これらの追加の狭ビームは、全てのマーキングされたビームが既に処理されているビーム探索フレームの終わりにおいてマーキングされる。探索フレームを完了するために追加の狭ビームのマーキングを選択する理由は、受信信号が最狭ビーム(対応して最高の利得を有する)でのみ検出可能であって、効率的なツリー型探索では見逃されてしまう場合に対処するためである。バイナリー(二値)探索ツリーについては、最後(最狭ビーム)のレベルLにおいてM
L=2
L-1M個のビームが存在し得る。そして、
【数1】
が、このレベルのN
L個のマーキングされたビームのセット(組)である。前提として、一つの探索フレームにはt=1/R-(M
1+M
2+…+M
L)D秒残っていて、Rはフレーム毎秒単位での探索フレームレートである。従って、フレーム毎にt/D個の追加ビームの余地がある。追加のマーキングの仕組み(所望の一定ビームドウェル時間DでRフレーム毎秒の所望の固定探索フレームレートを仮定している)は以下のとおりである。
【0037】
フレームF1は、フレームF1のレベルLのマーキングされていない狭ビーム(U(F1)={u1,u2,…}と称する)のML-NL(F1)の完全なセットから連続して取られたm=t/D個のビームの第一セットをマーキングする。このマーキングされたセットをA(F1)={u1,…,um}と称する。
【0038】
フレームF2は、このフレームF2のレベルLのマーキングされていない狭ビーム(U(F2)と称する)からA(F1)のビームを引いたもの(U(F2)\U(F1)と称する)から連続して取られたm個のビームの次のセットをマーキングする。このセットをA(F2)と称する。
【0039】
このプロセスは、マーキングされていないビームから追加的にマーキングされていくビームを引いたものU(F)\(F1)\(F2)…のセット(組)が空になるまで、フレーム毎に続けられる。次いで、追加の狭ビームをマーキングするプロセスを再度開始する。
【0040】
この方式に対する単純な変更は、一定ではない探索フレームレートと一定ではないビームドウェル時間とで簡単に設計されるものである。以下の開示は、相補的ビームセット設計とFIRフィルタ設計を説明するものである。
【0041】
図3は、如何にしてフェーズドアレイアンテナのJ個のアンテナ素子6にデジタルビームフォーマ50が接続されるのかを示す図であり、Jは1よりも大きな整数である。デジタルビームフォーマ50は複数の乗算器40を含み、各乗算器40は複数のアンテナ素子6によって出力された各信号に重み付けする。乗算器40によって出力された信号は加算器42によって加算される。時点kにおける出力y(k)は、時点kにおけるJ個のアンテナ素子6でのデータの線形結合として以下のように与えられる:
【数2】
ここで、()
*は複素共役を表す。これは送信モードを描写したものである。受信モードはこの正反対であって、入射信号y(k)が信号のセット{x
j(k)}を生成し、J個のアンテナ素子6の各々において一つの信号である。以下では明示的に繰り返さないが、時点kに対する依存性は以下のように理解されるものである。
【0042】
図4Aと
図4Bは、単一チャネル有限インパルス応答(FIR,finite impulse response)フィルタ52(
図4Aを参照)と等間隔無指向性狭帯域線形アレイの形式のビームフォーマ50(
図4Bを参照)との間の類似性を示す図である。
【0043】
図4Aを参照すると、FIRフィルタ52は、重み付けされた信号を生成するように乗算器40によって適用される複数の要素重みを含み、重み付けされた信号が加算器42によって加算される。Z
-1と付された各正方形は、一クロック周期で値を遅延させるように機能するレジスタ又はメモリ素子を表す。従って、各乗算器は、異なる持続時間での遅延後に入射信号を受信する。
【0044】
要素重みw
j
*(1≦j≦J)とT秒間の要素遅延での有限インパルス応答(FIR)フィルタの周波数応答は以下のように与えられる:
【数3】
この式は、周波数ωの複素正弦曲線に対するフィルタの応答を表す。ここで、
【数4】
は、周波数ωに関連するタップに対するFIRフィルタの各タップにおける複素正弦曲線の位相を記述するベクトルである。ここで、i=√(-1)である。
【0045】
図4Bを参照すると、入射信号が、到達方向θで周波数ωの複素平面波であると仮定している。そうすると、r(w,ω)の式が、w
Hd(ω)から
【数5】
に変化する。ここで、
d’(ω)=[d
1(θ,ω),d
2(θ,ω),…,d
J(θ,ω)]
であり、また、
【数6】
である。ここで、1≦j≦Jであり、Δ
j(θ)は、入射角度θにおける1番目の要素からj番目の要素までの伝播時間に起因する時間遅延を表す。記号
○は、通常のアダマール要素毎の積である。
【0046】
FIRフィルタリングとビームフォーミングとの間の対応関係は、ビームフォーマが単一の時間周波数ω0で動作し、アレイの幾何学的形状が線形であって、均一線形アレイの場合のように等間隔である際に最も密接となる。センサ間隔をdとし、伝播速度(光速)をcとし、θが(アレイに垂直である)照準に対する相対的な到達方向を表すものとする。そうすると、1番目のセンサからj番目のセンサまでの伝播に起因する時間遅延は以下の式で表される:
τj(θ)=(j-1)(d/c)sin(θ)
この場合、項d(ω)(FRフィルタ)の時間周波数ωと項d(θ,ω0)(ビームフォーマ)の方向θとの間の関係は以下のようになる:
ω=ω0(d/c)sin(θ)
従って、FIRフィルタの時間周波数は、ビームフォーマとして用いられる狭帯域均一線形アレイの方向の正弦に対応する。
【0047】
図5A~
図5Cは、相対的ビーム利得・対・指向角度のグラフであり、これらのグラフは、N=256個の素子を有するアレイ用の相補的空間フィルタと、均一線形アレイに対する-60°から+60°までの角度空間にわたって五個のレベル(対応する数のビームを有する)を有するビームツリーの設計を部分的に示す。相対的利得が示されている(全てのビームが0dBの最大利得を有するようにしている)。これは、如何にしてこれらの空間フィルタが、ツリー状に横断可能な等間隔の角度領域に空間を分割するように互いに組み合わさるのかを示すのに役立つ。
【0048】
図5Aは、8個のビームから成る第一レベルについての相対的ビーム利得・対・指向角度を示し、8個のビームの各々は略15°に等しいビーム幅を有する。
図5Bは、16個のビームから成る第二レベルについての相対的ビーム利得・対・指向角度を示し、16個のビームの各々は略7.5°に等しいビーム幅を有する。
図5Cは、32個のビームから成る第三レベルについての相対的ビーム利得・対・指向角度を示し、32個のビームの各々は略3.75°に等しいビーム幅を有する。64個のビーム(各々略1.875°に等しいビーム幅を有する)を有する第四レベルと、128個のビーム(各々略0.9375°に等しいビーム幅を有する)有する第五レベルについてのグラフも同様であるが、黒線の図では、多数のビームが個々のビームの判別を難しくして、そのようなグラフは読者の理解を深めるものではないので、図示していない。
【0049】
例えば、ビーム探索コントローラ1が、ビームステアリングコントローラ10に第一レベルからのビーム70(
図5Aを参照)を送信させ、そのビーム70が0°(照準に対応)から+15°までの角度範囲を有すると仮定する。第一レベルからのビーム70(
図5Aを参照)が送信された後に、受信信号の検出パラメータが第一レベルの検出閾値よりも大きいと更に仮定する。システムはそのセンサデータを処理し、0°から+15°までの角度範囲内に在る或る角度で検出信号が到達したと決定する。
【0050】
次いで、ビーム探索コントローラ1は、ビームステアリングコントローラ10に第二レベルからのビーム72と74(
図5Bを参照)を送信させ、ビーム72は0°から+7.5°までの角度範囲を有し、ビーム74は7.5°から+15°までの角度範囲を有する。第二レベルからのビーム72(
図5Bを参照)が送信された後に、ビーム72の送信後に受信した信号の検出パラメータが第二レベルの検出閾値よりも大きいと更に仮定する。システムは、そのセンサデータを処理して、0°から+7.5°までの角度範囲内に在る或る角度で検出信号が到達したと決定する。
【0051】
次いで、ビーム探索コントローラ1は、ビームステアリングコントローラ10に第三レベルからのビーム76と78(
図5Cを参照)を送信させ、ビーム76は0°から+3.75°までの角度範囲を有し、ビーム78は+3.75°から7.5°までの角度範囲を有する。第三レベルからのビーム76(
図5Cを参照)が送信された後に、ビーム76の送信後に受信した信号の検出パラメータが第三レベルの検出閾値よりも大きいと更に仮定する。システムは、そのセンサデータを処理して、0°から+3.75°までの角度範囲内に在る或る角度で検出信号が到達したと決定する。
【0052】
次いで、ビーム探索コントローラ1は、ビームステアリングコントローラ10に第四レベルからの二つのビーム(図示せず)を送信させる。このプロセスは、最後のレベルからの二つのビームが送信されるまでは少なくとも続く。これらのビームのうちの一つが、最後のレベルについての検出閾値よりも大きな検出パラメータを有する受信信号をもたらすと、次いで、システムはそのセンサデータを処理して、例えば、0°から+0.9375°からの角度範囲内に在る或る角度で検出信号が到達したと決定する。このようにして、目標物体からの信号の到達方向を決定することができる。
【0053】
図6A~
図6Cは、絶対ビーム利得・対・指向角度のグラフであり、これらのグラフは、N=256個の素子を有するアレイ用の相補的空間フィルタと、均一線形アレイに対する-60°から+60°までの角度空間にわたって五個のレベル(対応する数のビームを有する)を有するビームツリーの設計を部分的に示す。
図6Aは、8個のビームから成る第一レベルについての絶対ビーム利得・対・指向角度を示す。
図6Bは、16個のビームから成る第二レベルについての絶対ビーム利得・対・指向角度を示す。
図6Cは、32個のビームから成る第三レベルについての絶対ビーム利得・対・指向角度を示す。64個のビームを有する第四レベルと128個のビームを有する第五レベルについてのグラフも同様であるが、図示していない。
【0054】
FIRフィルタ設計方法を用いると、サイドローブが制御下に保たれるが(サイドローブは典型的にはメインローブの30dB下又はそれ以下である)、最大利得が犠牲になる。N=256個の素子で実現可能な最大利得は48dB=20log10(N)である。これは、レベル5のグラフ(図示せず)における最大の利得(僅か略23dB)のはるか上である。この理由は、サイドローブレベルを制御下に保つように制約された設計方法が、最大利得も低下させるからである。サイドローブを制約しないことによって、最大利得を達成することができる。そのサイドローブは、制約された手法を用いて設計された相補的ビームセットのものよりもはるかに高い。また、各ビームの利得は視野にわたって違いを示す。こうした違いは、要素重みの振幅調整によって簡単に補正可能である。
【0055】
FIRフィルタ設計には多種多様なものがあり、多数の方法で実現可能である。フィルタ設計を達成する多数の方法(最適化、周波数法、レメス(Remez)のアルゴリズム等)を全て説明するのではなく、本開示は参考として一つの手法を説明する。フィルタ設計は、実数又は複素数のいずれかの方法を用い、FIRフィルタ又は無限インパルス応答フィルタ用のものとなる。対象としているプロセスがアンテナのビームフォーミングであるので、複素FIRフィルタ設計法が用いられる。具体的には、ビームフォーミング等の非線形位相特性を有するフィルタの設計用に複素近似が用いられる。長さNのFIRデジタルフィルタ(N個のアンテナ素子に対応する)の周波数応答H(ω)は一般的には正規化された周波数ωの複素数値関数である:
【数7】
ここで、P=P
2-P
1+1である。この場合、フィルタ係数
【数8】
は、複素数であることが許容されるので、各アンテナ素子について振幅と位相の両方を表す。以下、複素チェビシェフ近似問題を説明する。コンパクトサブセット
【数9】
に対して定義される所望の連続的複素関数をD(ω)とする。式(2)の周波数応答によって、D(ω)がBに対して近似される。この近似問題は、フィルタ係数{h(n)}の全ての可能な選択肢について、重み付けされた誤差
E(ω)=W(ω)[D(ω)-H(ω)] (3)
のチェビシェフノルム
【数10】
を最小化するフィルタ係数
【数11】
を見つけ出すというものである。重みW(ω)は、リップル対サイドローブレベル等のトレードオフの関係にある設計パラメータである。チェビシェフ最適複素FIRフィルタを設計するためのアルゴリズムは多数ある。以下、MATLAB(登録商標)や他の現在の設計ソフトウェアで用いられる方法を説明する。
【0056】
レメス(Remez)の交換アルゴリズムを一般化することによって、チェビシェフ空間における複素FIRデジタルフィルタの設計用の効率的な多重交換アルゴリズムが非特許文献1において提案されている。このアルゴリズムは、基本的には、複素数の場合に対するパークス・マクレラン(Parks‐McClellan)のアルゴリズムの一般化である。具体的には、正規化された周波数のセット(組)を所与として、このアルゴリズムは、最適誤差が所与の交互性を満たす場合にBに対して最良に重み付けされたチェビシェフ近似に収束し、典型的には、Bの或るコンパクトサブセットに対して最適なチェビシェフ解に収束する。
【0057】
本願で提案される方法論は、ツリー型の手法に従って徐々に細かくなっていく角度ビームパターンを有するビームを送信することを含む。
図7に示されるように、ツリー60がL個のレベルを有すると仮定する。レベルl(1≦l≦L)についてのM
L=2
l-1M個のビーム(又は空間ビームパターン)を
【数12】
で表す。この数は、バイナリツリー(二分木)を仮定している。バイナリツリーの提案される一実施形態によると、
図7に示されるように、二つの分岐が各ノードから発散する。この場合、ツリー60は、第一レベル62においてM
1=M個のビーム(B
11,B
12,…,B
1M1)を有し、第二レベル64においてM
2=2M個のビーム(B
21,B
22,…,B
2M2)を有し、最後のレベル66においてM
L=2
l-1個のビーム(B
L1,B
L2,B
LML)を有する。より多くの分岐が検討可能である。ツリー型ビーム探索技術の典型的な適用は例示目的で説明されているものである。
【0058】
1≦l≦Lの各レベルlについて、各検出閾値T
lは、各ビーム内の信号検出の確率が1未満の定数となるように選択される(例えば、定数が0.5の場合には、検出信号の数は、バイナリツリーの各レベルにおいて一定のままである)。B(S)との表記は、ビーム空間フィルタBによってフィルタリングされた信号S(つまり、ビームパターンBでアンテナが受信した結果的な送信信号S)を表す。このような信号の検出は、d()で表される検出アルゴリズムを用いて、検出された信号のパラメータの値が閾値を超えた場合に信号検出が生じるようにする。言い換えると、レベルlについて
d(B(S))>T
l
である場合に、信号Sの検出が宣言される。この場合、一般的な検出アルゴリズムは、信号のエネルギーの和である。言い換えると、信号Sが複素サンプル{s
1,s
2,…,s
n}で表される場合には、以下のようになる:
【数13】
そして、信号エネルギーが閾値を跨ぐと、検出が宣言される。他の多数の検出方式も可能である。
【0059】
レベルが増加するにつれて、各ビームフィルタの利得は増大し、ビーム幅は減少する。従って、信号がより多くの空間フィルタに投入されて、可能性がある信号方向を狭めるのと同時に、受信信号パワーを増大させる。これは、(1)より多くの信号を見つけることを(2)より狭い角度領域において行うという二重の効果を有する。
【0060】
一実施形態によると、ツリー型ビーム探索法は、検出閾値の適応学習を含む。信号環境について全てが十分に分かっている場合には、閾値T1を前もって設定することができる。しかしながら、実際のシステムでは、これは現実的ではない。そのため、どの位多くの信号が各レベルにおいて検出されているのかに応じて、閾値を適応的に調整する。選択される適応閾値化の種類は多数ある。以下では、単純な手法を説明するが、他の多数の選択肢が可能である。
【0061】
Glがレベルlにおける各ビームの利得であり、G1<G2<…<GLであって、信号Sが特定のビーム内にある場合、検出試験は以下のようになる:
d(GlS)<Tl? 又は d(GlS)>Tl?
従って、T1<T2<…<TLである。効率的な探索を維持するためには各レベルにわたって検出の統計的に一定の確率を維持することが望ましい。従って、検出の最適確率は以下のようになる:
Pr(d(GlS)>Tl)=Cl
【0062】
例えば、バイナリツリーで、C
l=1/2を維持することによって、探索ツリーの各レベルにおいて統計的に一定数の信号検出を得ることができる。その適応は以下のように単純なものである。c
1=Pr(d(G
lS)>T
l)、c
2=Pr(d(G
lS)>T
l
hi)を、現在のレベルにおける検出と現在のレベルの閾値T
lを超える検出との両方を観測することによって、計算する。次いで、新規閾値Tl’を以下のように設定する:
【数14】
【0063】
上記タイプのツリー型ビーム探索のシミュレーションを行った。そのシミュレーション計画は、以下の規則と条件を含んでいた:(1)レベル数は4であり、4個のレベルがそれぞれ32個のビーム、64個のビーム、128個のビーム、256個のビームを有していた;(2)信号数は16個から64個までで変化させた;(3)ビームに広範な角度と多様な振幅をランダムに割り当てた;(4)マーキングされた信号を各探索フレームの最後において追加しなかった(
図2を参照して上述したように)。シミュレーションの結果は、直接探索について、この状況での平均待ち時間が128Dであったというものであり、ここで、Dは基本検出時間である。従って、本願で提案されるツリー型ビーム探索技術のシミュレーションは、待ち時間における明確な利点を示している。
【0064】
図8は、一実施形態に係るフェーズドアレイアンテナシステム2のいくつかの構成要素を示すブロック図である。フェーズドアレイアンテナシステム2は、フェーズドアレイアンテナ4と、送信器14と、受信器16と、送信モードにおいて送信器14をフェーズドアレイアンテナ4に接続し、受信モードにおいて受信器16をフェーズドアレイアンテナ4に接続する伝送モジュール12とを含む。フェーズドアレイアンテナシステム2は、ツリー型ビーム探索によって決定される照準からの角度とビーム幅を有するビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナ4を制御するように構成された(例えば、プログラムされた)ビームステアリングコントローラ10を更に含む。送信器14とビームステアリングコントローラ10はビーム探索コントローラ1の制御下にある。ビーム探索コントローラ1は、送信器14とビームステアリングコントローラ10に命令を送信するように構成された(例えば、プログラムされた)コンピュータ又はプロセッサであり、その命令は、フェーズドアレイアンテナ4にツリー型ビーム探索によって選択されたビームを送信させる。ビーム探索コントローラ1は、受信器16によって出力された信号の特定のパラメータ(例えば、エネルギーやパワー)を検出するように構成されたモジュールも含む。
【0065】
ビーム探索コントローラ1とビームステアリングコントローラ10の両方によってアクセス可能な非一時的有形コンピュータ可読記憶媒体11に、L個のレベルの相補的ビームをロードする(例えば、データテーブルの形式で)。ビーム探索コントローラ1は、相補的ビームセットデータ記憶媒体11内で特定され選択されたビームをマーキングするように構成され、一方、ビームステアリングコントローラ10は、相補的ビームセットデータ記憶媒体11から読み出されたビーム情報に応じて、フェーズドアレイアンテナ4によって生成されるビームを制御するように構成される。
【0066】
上記の実施形態は、一つ以上の処理デバイスや計算デバイスを使用する。こうしたデバイスとして、典型的には、プロセッサ、処理デバイス、コントローラが挙げられ、例えば、汎用中央処理ユニット(汎用CPU)、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、プログラマブル論理回路、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、デジタル信号プロセッサ、及び/又は、本願に開示されている機能を実行することができる他の回路や処理デバイスが挙げられる。本開示の方法は、ストレージデバイス及び/又はメモリデバイス等(これらに限定されない)の非一時的有形コンピュータ可読記憶媒体に実行可能命令としてエンコードされ得る。このような命令は、処理デバイスによって実行されると、本開示の方法の少なくとも一部を処理デバイスに行わせる。上記例は単に例示であって、「プロセッサ」と「計算デバイス」との用語の定義及び/又は意味を限定するものではない。
【0067】
フェーズドアレイアンテナの視野内の検出可能な信号を素早く見つけ出すためのシステムと方法を多様な実施形態を参照して説明してきたが、本開示の教示から逸脱せずに、多様な変更を行い得て、また、等価物に置換可能であることを当業者は理解するものである。また、本開示を特定の状況で実施するために本願のコンセプトを適用させて取捨選択を行うようにして多数の変更を行い得る。従って、特許請求の範囲によってカバーされる主題は本開示の実施形態に限定されるものではない。
【0068】
更に、本開示は以下の項に係る実施形態を含む。
【0069】
項1
フェーズドアレイアンテナを用いて信号を探索するための方法であって、
(a)第一ビーム幅と照準からの第一角度を有する第一ビームを送信することと、
(b)第一ビームの送信後に第一信号を受信することと、
(c)第一信号のパラメータの値が第一閾値を超えていることを検出することと、
(d)第一ビーム幅よりも小さな第二ビーム幅と、第一ビームの角度範囲内に在る照準からの第二角度とを有する第二ビームを送信することと、
(e)第二ビーム幅と、第一ビームの角度範囲内に在る照準からの第三角度とを有する第三ビームを送信することと、を備え、
照準からの第一角度は照準からの第二角度と第三角度との間にある、方法。
【0070】
項2
第二ビーム幅が第一ビーム幅の半分に等しい、項1に記載の方法。
【0071】
項3
第二ビームの角度範囲と第三ビームの角度範囲の合計が、第一ビームの角度範囲と同一の広がりである、項1に記載の方法。
【0072】
項4
(f)第二ビームの送信後に第二信号を受信することと、
(g)第二信号のパラメータの値が第二閾値を超えていることを検出することと、
(h)第二ビーム幅よりも小さな第三ビーム幅と、第二ビームの角度範囲内に在る照準からの第四角度を有する第四ビームを送信することと、
(i)第三ビーム幅と、第二ビームの角度範囲内に在る照準からの第五角度を有する第五ビームを送信することと、を更に備え、
照準からの第二角度が照準からの第四角度と第五角度との間にある、項1に記載の方法。
【0073】
項5
第二ビーム幅が第一ビーム幅の半分に等しく、第三ビーム幅が第二ビーム幅の半分に等しい、項4に記載の方法。
【0074】
項6
第四ビームの角度範囲と第五ビームの角度範囲の合計が第二ビームの角度範囲と同一の広がりである、項4に記載の方法。
【0075】
項7
第一ビーム~第四ビームが、M個のビームを有し且つ第一ビームを含む第一レベルと、2M個のビームを有し且つ第二ビーム及び第三ビームを含む第二レベルと、4M個のビームを有し且つ第四ビーム及び第五ビームを含む第三レベルとを備えるL個のレベルを有する相補的ビームセットから選択され、Mが整数である、項4に記載の方法。
【0076】
項8
L個のレベルが、2L-1M個のビームを有する第Lレベルを更に備える、項7に記載の方法。
【0077】
項9
フェーズドアレイアンテナを用いて信号を探索するための方法であって、
L個のレベルを有する相補的ビームセットを設計することと、
フェーズドアレイアンテナによって生成されるビームを制御するビームステアリングコントローラにL個のレベルの相補的ビームセットをロードすることと、
送信用に相補的ビームセットのうちのビーム(b,l)のマーキングを行うことと、
ビーム幅と指向角度を有するマーキング済みのビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナのアンテナ素子の位相と振幅を設定することと、
マーキング済みのビームを送信することと、
マーキング済みのビームの送信後に、フェーズドアレイアンテナで信号を受信することと、
受信した信号のパラメータの値が信号が受信されたことを示している時点を検出することと、
現在のレベルlがレベル総数L未満であるか否かを決定することと、
現在のレベルlがレベル総数L未満ではない場合に、現在のビームの指向角度に対応する到達方向で信号が検出されたことを宣言することと、
現在のレベルlがレベル総数L未満である場合に、相補的ビームセットのレベルlの現在のビームに対応する次のレベル(l+1)の二つのビーム(2b-1)と2bを送信用にマーキングすることと、
二つのビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナのアンテナ素子の位相と振幅を設定することと、
二つのビームを連続して送信することと、を備える方法。
【0078】
項10
相補的ビームセットが、M個のビームを有する第一レベルと、2M個のビームを有する第二レベルと、4M個のビームを有する第三レベルと、2L-1M個のビームを有する第Lレベルとを備えるL個のレベルを有し、MとLが整数である、項9に記載の方法。
【0079】
項11
第一レベルが、第一ビーム幅と照準からの第一角度を有する第一ビームを少なくとも含み、
第二レベルが、
第一ビーム幅よりも小さな第二ビーム幅と、第一ビームの角度範囲内に在る照準からの第二角度を有する第二ビームと、
第二ビーム幅と、第一ビームの角度範囲内に在る照準からの第三角度を有する第三ビームと、を少なくとも含み、
照準からの第一角度が照準からの第二角度と第三角度との間にある、項10に記載の方法。
【0080】
項12
第二ビーム幅が第一ビーム幅の半分に等しい、項11に記載の方法。
【0081】
項13
第二ビームの角度範囲と第三ビーム角度範囲の合計が第一ビームの角度範囲と同一の広がりである、項11に記載の方法。
【0082】
項14
第一レベルが第一ビーム幅を有するビームを含み、第二レベルが第一ビーム幅よりも小さな第二ビーム幅を有するビームを含み、第三レベルが第二ビーム幅よりも小さな第三ビーム幅を有するビームを含み、第Lレベルが第三ビーム幅よりも小さく且つ第三レベルと第Lレベルとの間のいずれのレベルのビーム幅よりも小さな第Lビーム幅を有するビームを含む、項10に記載の方法。
【0083】
項15
現在の探索フレームの探索ギャップを埋めるために第Lレベルからの追加のビームのサブセットをマーキングすることと、
追加のビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナのアンテナ素子の位相と振幅を設定することと、を更に備える項14に記載の方法。
【0084】
項16
フェーズドアレイアンテナと
送信器と、
受信器と、
送信モードにおいて送信器をフェーズドアレイアンテナに接続し、受信モードにおいて受信器をフェーズドアレイアンテナに接続する伝送モジュールと、
ツリー型ビーム探索によって決定される照準からの角度とビーム幅を有するビームを送信するようにフェーズドアレイアンテナを制御するように構成されたビームステアリングコントローラと、
ツリー型ビーム探索によって選択されたビームをフェーズドアレイアンテナに送信させる命令を送信器とビームステアリングコントローラに送信するように構成されたビーム探索コントローラと、
L個のレベルで構成される相補的ビームセットのビームの特性を表すデータを記憶している相補的ビームセットデータ記憶媒体と、を備え、
相補的ビームセットデータ記憶媒体がビーム探索コントローラとビームステアリングコントローラの両方によってアクセス可能であり、ビーム探索コントローラが、相補的ビームセットデータ記憶媒体内で特定され選択されたビームをマーキングするように更に構成され、ビームステアリングコントローラが、相補的ビームセットデータ記憶媒体から読み出されたビーム情報に応じてフェーズドアレイアンテナによって生成されるビームを制御するように更に構成されている、フェーズドアレイアンテナシステム。
【0085】
項17
ビーム探索コントローラが、受信器によって出力された信号の特定のパラメータを検出するように構成されたモジュールを備える、項16に記載のフェーズドアレイアンテナシステム。
【0086】
項18
相補的ビームセットが、M個のビームを有する第一レベルと、2M個のビームを有する第二レベルと、4M個のビームを有する第三レベルと、2L-1M個のビームを有する第Lレベルとを備えるL個のレベルを有し、MとLが整数である、項16に記載のフェーズドアレイアンテナシステム。
【0087】
項19
第一レベルが第一ビーム幅を有するビームを含み、第二レベルが第一ビーム幅よりも小さな第二ビーム幅を有するビームを含み、第三レベルが第二ビーム幅よりも小さな第三ビーム幅を有するビームを含み、第Lレベルが第三ビーム幅よりも小さく且つ第三レベルと第Lレベルとの間のいずれのレベルのビーム幅よりも小さな第Lビーム幅を有するビームを含む、項18に記載のフェーズドアレイアンテナシステム。
【0088】
項20
ビーム探索コントローラが、
送信用に相補的ビームセットのうちのビーム(b,l)のマーキングを行うことと、
受信信号のパラメータの値が信号が受信されたことを示している時点を検出することと、
送信さビームが属する現在のレベルlがレベル総数L未満であるか否かを決定することと、
現在のレベルlがレベル総数L未満ではない場合に、送信ビームの指向角度に対応する到達方向で信号が検出されたことを宣言することと、
現在のレベルlがレベル総数L未満である場合に、相補的ビームセットのレベルlの送信ビームに対応する次のレベル(l+1)の二つのビーム(2b-1)と2bを送信用にマーキングすることと、を更に行うように構成されている、項16に記載のフェーズドアレイアンテナシステム。
【0089】
添付の特許請求の範囲の方法クレームは、ステップの一部又は全部が行われる特定の順序を示す条件を特に断っていない限りは、記載されているステップをアルファベット順(特許請求の範囲におけるアルファベットの順序は、前に記載されているステップを参照する目的でのみ使用されている)又は記載順に行うことを要するものとして解釈されるものではない。方法クレームは、二つ以上のステップの部分が同時に又は交互に行われることを、そのような解釈を除外する条件を明示的に断っていない限りは、排除するものとして解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0090】
1 ビーム探索コントローラ
2 フェーズドアレイアンテナシステム
4 フェーズドアレイアンテナ
6 アンテナ素子
8 位相シフタ
10 ビームステアリングコントローラ
12 伝送モジュール(送受信モジュール)
14 送信器
16 受信器
20 相補的ビームセット
40 乗算器
42 加算器
50 デジタルビームフォーマ
52 有限インパルス応答(FIR)フィルタ