(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】繊維集合体及び繊維集合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/007 20120101AFI20241216BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20241216BHJP
C08F 112/04 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
D04H3/007
D04H3/16
C08F112/04
(21)【出願番号】P 2020097981
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 太郎
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-073270(JP,A)
【文献】特開2000-260229(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 3/007
D04H 3/16
C08F 112/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minであるシンジオタクチックポリスチレンを含む繊維を含有し、
前記繊維の平均繊維径が5μm以下であ
り、
目付が2g/m
2
~8g/m
2
である、耐熱性フィルター、吸音材又は耐熱材用の繊維集合体。
【請求項2】
厚みが0.5mm以下である、請求項1に記載の繊維集合体。
【請求項3】
綿状である、請求項1
又は請求項2に記載の繊維集合体。
【請求項4】
不織布である、請求項1
又は請求項2に記載の繊維集合体。
【請求項5】
MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minのシンジオタクチックポリスチレンを含む熱可塑性樹脂を溶融する工程と、
溶融した前記熱可塑性樹脂を、複数の孔を有する紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し、前記加熱ガスにより前記熱可塑性樹脂を延伸して、繊維状樹脂とする工程と、
前記繊維状樹脂を、ウェブフォーマーベルト上にウェブ状に捕集する工程と、を含み
前記孔1つあたりの吐出量が、5mg/min~150mg/minである、メルトブローン法を用いる繊維集合体の製造方法。
【請求項6】
MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min未満であるシンジオタクチックポリスチレンを250℃~400℃、1分~25分の条件で処理して、MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minであるシンジオタクチックポリスチレンを得る熱分解工程と、
MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minの前記シンジオタクチックポリスチレンを含む熱可塑性樹脂を溶融する工程と、
溶融した前記熱可塑性樹脂を、複数の孔を有する紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し、前記加熱ガスにより前記熱可塑性樹脂を延伸して、繊維状樹脂とする工程と、
前記繊維状樹脂を、ウェブフォーマーベルト上にウェブ状に捕集する工程と、
を含む、メルトブローン法を用いる繊維集合体の製造方法。
【請求項7】
前記加熱ガスの流量が、250Nm
3/hr/m~750Nm
3/hr/mである、請求項
5又は請求項
6に記載の繊維集合体の製造方法。
【請求項8】
前記溶融の温度が250℃~400℃である、請求項
5~請求項
7のいずれか1項に記載の繊維集合体の製造方法。
【請求項9】
前記紡糸口金と前記ウェブフォーマーベルトとの距離が120mm以下である、請求項
5~請求項
8のいずれか1項に記載の繊維集合体の製造方法。
【請求項10】
前記紡糸口金と前記ウェブフォーマーベルトとの距離が120mmを超える、請求項
5~請求項
8のいずれか1項に記載の繊維集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維集合体及び繊維集合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料として、シンジオタクチックポリスチレン(以下、「SPS」ともいう)を用いる不織布が知られている(例えば、特許文献1参照)。SPSは、ポリオレフィンに比べて耐熱性が高いことが一般に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等に記載されたSPS製の不織布は平均繊維径が太いため、不織布が厚くなり、疎な構造となることから、さらなる改善の余地があった。そこで、本発明の課題は、平均繊維径が細いSPS製の繊維集合体及びその繊維集合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0006】
<1> MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minであるシンジオタクチックポリスチレンを含む繊維を含有する繊維集合体。
<2> 前記繊維の平均繊維径が5μm以下である、<1>に記載の繊維集合体。
<3> 厚みが0.5mm以下である、<1>又は<2>に記載の繊維集合体。
<4> 目付が25g/m2以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の繊維集合体。
<5> 綿状である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の繊維集合体。
<6> 不織布である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の繊維集合体。
<7> MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minのシンジオタクチックポリスチレンを含む熱可塑性樹脂を溶融する工程と、
溶融した前記熱可塑性樹脂を、複数の孔を有する紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し、前記加熱ガスにより前記熱可塑性樹脂を延伸して、繊維状樹脂とする工程と、
前記繊維状樹脂を、ウェブフォーマーベルト上にウェブ状に捕集する工程と、を含む、メルトブローン法を用いる繊維集合体の製造方法。
<8> 前記加熱ガスの流量が、250Nm3/hr/m~750Nm3/hr/mである、<7>に記載の繊維集合体の製造方法。
<9> 前記孔1つあたりの吐出量が、5mg/min~150mg/minである、<7>又は<8>に記載の繊維集合体の製造方法。
<10> 前記溶融の温度が250℃~400℃である、<7>~<9>のいずれか1項に記載の繊維集合体の製造方法。
<11> MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min未満であるシンジオタクチックポリスチレンを250℃~400℃、1分~25分の条件で処理して、MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minであるシンジオタクチックポリスチレンを得る熱分解工程を含む、<7>~<10>のいずれか1項に記載の繊維集合体の製造方法。
<12> 前記紡糸口金と前記ウェブフォーマーベルトとの距離が120mm以下である、<7>~<11>のいずれか1項に記載の繊維集合体の製造方法。
<13> 前記紡糸口金と前記ウェブフォーマーベルトとの距離が120mmを超える、<7>~<11>のいずれか1項に記載の繊維集合体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、平均繊維径が細いSPS製の繊維集合体及びその繊維集合体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0009】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0012】
≪繊維集合体≫
本開示の繊維集合体は、MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minであるシンジオタクチックポリスチレン(SPS)を含む繊維を含有する。
本開示の繊維集合体は、上記構成とすることにより、ポリオレフィンに比べて耐熱性に優れているSPSを用いながら平均繊維径を細くすることができる。平均繊維径を細くすることで、細かい粒子を捕捉可能なフィルターを製造することができ、ボイラーの排気口用などの耐熱性が求められるフィルターとしても利用可能となる。さらには、断熱材や吸音材への適用も可能となる。
【0013】
(成分)
SPSは、主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体である。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素-炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有することをいう。
SPSのタクティシティーは、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量される。シンジオタクチック構造のタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。通常、ラセミダイアッドとしては、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン系重合体、ラセミペンタッドとしては、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン系重合体が用いられる。
【0014】
SPSとしては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、及びこれらの水素化重合体、さらにはこれらから選択される2種以上の混合物、並びにこれらの構造単位を主成分とする共重合体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
ポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソピルスチレン)、ポリ(t-ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)等が挙げられる。
ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。
ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。
ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(m-メチルスチレン)、ポリ(p-、t-ブチルスチレン)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(m-クロロスチレン)、ポリ(p-フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられ、スチレンの単独重合体(ポリスチレン)が特に好ましい。
【0017】
SPSは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。但し、SPSの少なくとも1種は、MFR(300℃、荷重2.16kg)が、100g/10min~200g/10minである。MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minのSPSを「特定SPS」ともいう。
特定SPSのMFR(300℃、荷重2.16kg)は、110g/10min~180g/10minであることが好ましく、120g/10min~160g/10minであることがより好ましい。
特定SPSのMFR(300℃、荷重2.16kg)が上記の下限値以上であると、平均繊維径をより細くできる傾向にあるため好ましい。また、特定SPSのMFR(300℃、荷重2.16kg)が上記の上限値以下であると、繊維の強度が向上し且つ分解成分の生成が抑制される傾向にあるため好ましい。
【0018】
MFRは、ASTM D-1238(B法)に準拠して以下の条件で測定する。測定試料を120℃で6時間、予備乾燥を行ってから測定を行う。
・試験方法:ASTM D1238(B法)
・充填量:8.0g
・試験温度:300℃
・荷重;2.16kg
上述の条件にて3回測定し、その平均値を求める。測定装置としては、例えば、メルトインデクサF-F01型(株式会社東洋精機製作所)を用いることができる。
【0019】
特定SPSは、例えば、MFRが100g/10min未満のSPSを熱分解することで得ることができる。熱分解の詳細については後述する。
【0020】
繊維集合体に含まれる繊維は、SPS以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでもよい。その他の熱可塑性樹脂としては、特定SPSと相溶化する構造単位を持つ樹脂が望ましい。例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB、SEBC)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレンブロックを持つ重合体、並びに、それらの変性体、ポリフェニレンエーテル及びその変性体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等のスチレン系重合体及びスチレン系エラストマーが挙げられる。
【0021】
さらにその他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS);ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6等のポリアミド樹脂;熱可塑性ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリエーテル樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4-メチルペンテン-1、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物重合体;ポリオキシメチレン;ポリビニルアルコール樹脂;ポリアセタール;非晶ポリアリレート;及びこれらの誘導体が挙げられる。
これら他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本開示の繊維集合体は、繊維集合体の耐熱性を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、脂肪酸アミド等の種々公知の添加剤を含んでもよい。繊維集合体におけるこれらの添加剤の含有率は、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましい。
【0023】
繊維集合体におけるSPSの含有率は1質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることがさらに好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
SPS中の特定SPSの含有率は、50質量%~100質量%であることが好ましく、90質量%~100質量%であることがより好ましく、99質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
(繊維集合体の形態)
本開示の繊維集合体は、長繊維で構成されていても短繊維で構成されていてもよく、生産性の観点からは、長繊維で構成されることが好ましい。本開示において「短繊維」とは、平均繊維長200mm以下の繊維をいう。また「長繊維」とは、平均繊維長200mm超えの繊維をいう。
【0025】
本開示の繊維集合体は、不織布であっても、綿状であってもよい。本開示において「不織布」とは、繊維が交絡し、互いに融着することでシート状となっている繊維集合体をいう。また、本開示において「綿状」とは、繊維が交絡して塊の状態になっている繊維集合体をいう。具体的には、電子顕微鏡(倍率:×500)で観察したとき、合計面積0.2mm2の範囲内で繊維間融着点が50個以上の場合を「不織布」といい、50個未満を「綿状」という。
【0026】
本開示の繊維集合体は、単層であっても、複数の層が積層された積層体であってもよい。積層体としては、本開示の繊維集合体が積層体のうち少なくとも1層に含まれていればよく、例えば、1種の製造方法により製造された複数の繊維集合体が積層された積層体であってもよく、2種以上の製造方法により製造された複数の繊維集合体が積層された積層体であってもよく、フィルム等のような不織布や綿状以外の層と積層されていてもよい。積層される本開示以外の繊維集合体やフィルムなどとしては、従来公知の繊維集合体やフィルムなどが挙げられる。
【0027】
〔繊維集合体の物性等〕
(平均繊維径)
繊維集合体は、用途を鑑み、平均繊維径が5μm以下であることが好ましく、0.05μm~3μmであることがより好ましく、0.1μm~2μmであることがさらに好ましい。平均繊維径が小さいほど、フィルターとしたときに、小さい粒子を捕捉することができると共に、薄型化することができる。
【0028】
繊維集合体の平均繊維径は、以下のようにして求めることができる。
測定対象の繊維集合体の表面を、電子顕微鏡(型番;S-3500N、(株)日立製作所製)を用いて、倍率1000倍の写真を撮影する。撮影された写真から、任意に繊維1000本(n=1000)を選び、選択した繊維の直径(幅)を測定し、その算術平均値を平均繊維径(Da)として求める。
【0029】
本開示の繊維集合体は、特定SPSのMFRが所定範囲であるため、平均繊維径を小さくできる傾向にある。また、繊維集合体の平均繊維径を上記範囲内とする手法は、特に制限されないが、例えば、繊維集合体の製造時における紡糸温度、滞留時間、ノズル孔径、単孔吐出量(ノズルの孔1つあたりの吐出量)、加熱空気の温度、加熱空気の流量等を制御する手法などが挙げられる。
【0030】
(厚み)
繊維集合体が不織布の場合、不織布の厚みは、0.5mm以下であることが好ましく、0.005mm~0.5mmであることがより好ましく、0.01mm~0.3mmであることがさらに好ましく、0.02mm~0.2mmであることが特に好ましい。厚みが小さいほど、フィルターとしたときに、小さい粒子を捕捉することができると共に、薄型化することができる。
【0031】
繊維集合体の厚みは以下のようにして求めることができる。
測定対象の繊維集合体10枚について、中央及び四隅の計5箇所の厚みをそれぞれ測定し、計10箇所の平均値を算出する。厚みの測定には、荷重が7gf/cm2(測定子直径25mmφ)の厚み計を使用する。
【0032】
(目付)
繊維集合体の目付は、用途に応じて適宜設定することが好ましく、一般には、25g/m2以下であることが好ましく、1g/m2~15g/m2であることがより好ましく、2g/m2~8g/m2であることがさらに好ましい。
【0033】
繊維集合体が不織布の場合、繊維集合体の目付は、25g/m2以下であることが好ましく、1g/m2~15g/m2であることがより好ましく、2g/m2~8g/m2であることがさらに好ましい。
繊維集合体をフィルターとして用いる場合、繊維集合体の目付は、25g/m2以下であることが好ましく、2g/m2~15g/m2であることがより好ましく、3g/m2~8g/m2であることがさらに好ましい。
【0034】
繊維集合体の目付は、以下のようにして求めることができる。
繊維集合体から100mm(繊維の流れ方向:MD)×100mm(繊維の流れ方向と直交する方向(CD方向))の試験片を、10点採取する。試験片の採取場所は、CD方向にわたって10箇所とする。次いで、採取した各試験片に対して上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量〔g〕を測定して各試験片の質量の平均値を求める。上記で求めた平均値から1m2当たりの質量〔g〕に換算し、各繊維集合体の目付〔g/m2〕とする。
【0035】
繊維集合体の目付を上記範囲とする手法は特に制限されず、例えば、繊維集合体の製造の際に、コレクターの速度を変更させ調整する手法等が挙げられる。
【0036】
(通気度)
繊維集合体は、フィルター等の用途に応じて適宜調節することが好ましく、例えば、1cm3/cm2・sec~200cm3/cm2・secであることが好ましく、3cm3/cm2・sec~100cm3/cm2・secであることがより好ましい。
【0037】
繊維集合体の通気度は以下のようにして求めることができる。
繊維集合体を準備し、JIS L1096(8.27.1A法;フラジール形法)に準拠して、JIS Z8703(試験場所の標準状態)に規定する温度20±2℃、湿度65±2%の恒温室内で繊維集合体から採取した20cm×20cmの試験片5枚を採取し、フラジール形試験機を用いて試験片を通過する空気量(cm3/cm2・sec)を測定し、その平均値を求める。
【0038】
(引張強度)
繊維集合体の引張強度は、5N/50mm以上であることが好ましく、5N/50mm~200N/50mmであることがより好ましく、10N/50mm~100N/50mmであることがさらに好ましい。
【0039】
繊維集合体の引張強度は、以下のようにして求めることができる。
測定対象の繊維集合体から、幅50mm×長さ200mmの試験片を採取し、引張試験機(島津製作所オートグラフAGS-J)を用いてチャック間距離100mm、ヘッドスピード300mm/minで縦方向(MD方向):5点、横方向(CD方向):5点を測定し、平均値を算出し、引張強度を求める。
【0040】
繊維集合体の引張強度を、上記範囲内とする具体的な手法は特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂としてポリアミドを含む繊維集合体とする手法;紡糸後に捕集するコレクターベルトの位置をノズルに近づける手法;などが挙げられる。
【0041】
(繊維集合体の用途)
本開示の繊維集合体の用途は特に制限されず、繊維集合体の用途として公知の用途に用いることができる。特に、本開示の繊維集合体は、SPSを含んで構成されるため耐熱性に優れ、かつ平均繊維径を細くすることができるため、例えば、フィルター、吸音材、断熱材などに好適に用いることができる。
フィルターとしては、耐熱性の求められる箇所に用いるフィルター、例えば、ボイラー、エンジンフィルター等に好適に用いることができる。
吸音材、断熱材としては、車輛のエンジン回りの空間に設置したり、耐熱性、難燃性等が求められる箇所に配置したりすることが可能である。
【0042】
≪繊維集合体の製造方法≫
本開示の繊維集合体の製造方法は、MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minのシンジオタクチックポリスチレン(上述の特定SPS)を含む熱可塑性樹脂を溶融する工程(以下「溶融工程」ともいう)と、溶融した前記熱可塑性樹脂を、複数の孔を有する紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し、前記加熱ガスにより前記熱可塑性樹脂を延伸して、繊維状樹脂とする工程(以下、「吐出工程」ともいう)と、前記繊維状樹脂を、ウェブフォーマーベルト上にウェブ状に捕集する工程(以下「捕集工程」ともいう)と、を含む、メルトブローン法を用いる製造方法である。
本開示の繊維集合体の製造方法は、上記工程を含むことにより、平均繊維径が細いSPS製の繊維集合体を製造することができる。
【0043】
本開示の繊維集合体の製造方法は、上記工程以外のその他工程を含んでもよい。その他の工程としては、特定SPSを準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)等が挙げられる。
【0044】
(準備工程)
準備工程では、MFR(300℃、荷重2.16kg)が100未満であるシンジオタクチックポリスチレン(以下、「原料SPS」ともいう)を250℃~350℃、1分~25分の条件で処理して、MFR(300℃、荷重2.16kg)が100g/10min~200g/10minであるシンジオタクチックポリスチレン(特定SPS)を得る熱分解工程を含む。
【0045】
原料SPSのMFR(300℃、荷重2.16kg)は、熱分解して得られる特定SPSのMFRをコントロールする観点から、100g/10min未満であり、90g/10min以下であることが好ましく、80g/10min以下であることがより好ましく、70g/10min以下であることがさらに好ましい。
【0046】
原料SPSの熱分解工程における温度は、250℃~400℃であり、270℃~400℃であることが好ましく、290℃~400℃であることがより好ましい。熱分解工程での温度を高くするほど、得られる特定SPSのMFR(300℃、荷重2.16kg)は大きくなる傾向にある。
【0047】
また、原料SPSの熱分解工程における時間は、上記温度範囲において、1分~25分であり、3分~25分であることが好ましく、6分~25分であることがより好ましい。熱分解工程での時間を長くするほど、得られる特定SPSのMFR(300℃、荷重2.16kg)は大きくなる傾向にある。
原料SPSの熱分解工程は、上記温度範囲での加熱が1回のみであっても、2回以上繰り返し行ってもよい。加熱を2回以上繰り返し行う場合、上記時間は上記温度範囲における総時間をいう。
【0048】
原料SPSの熱分解には、例えば、押出機、分解促進剤(デグラ剤)等を用いることができる。
【0049】
このように、原料SPSを熱分解して予め特定SPSを準備してから、次の溶融工程を実施してもよく、あるいは、準備工程を経ず、溶融工程において原料SPSを熱分解してもよい。さらには、原料SPSの熱分解は、準備工程と溶融工程の両方で行ってもよい。
【0050】
(溶融工程)
溶融工程では、特定SPSを含む熱可塑性樹脂を溶融する。
溶融工程において原料SPSを熱分解して特定SPSを得る場合、溶融温度は、250℃~400℃であることが好ましく、300℃~390℃であることがより好ましく、350℃~380℃であることがさらに好ましい。溶融工程での温度を高くするほど、得られる特定SPSのMFR(300℃、荷重2.16kg)は大きくなる傾向にある。上述の準備工程において得られた特定SPSを用いる場合、溶融工程における溶融温度は、250℃~400℃が好ましく、270℃~380℃がより好ましく、310℃~350℃がさらに好ましい。
【0051】
また、溶融工程における滞留時間は、10分~100分であることが好ましく、10分~60分であることがより好ましく、10分~40分であることが更に好ましい。溶融工程での滞留時間を長くするほど、得られる特定SPSのMFR(300℃、荷重2.16kg)は大きくなる傾向にある。
なお、250℃~400℃の温度範囲での時間は、例えば1分~25分であり、3分~25分であることが好ましく、6分~25分であることがより好ましい。溶融工程は、上記温度範囲での加熱が1回のみであっても、2回以上繰り返し行ってもよい。加熱を2回以上繰り返し行う場合、上記時間は上 記温度範囲における総時間をいう。
【0052】
また、準備工程において予め特定SPSを準備した場合には、溶融時間(滞留時間)は特に制限されず、製造スケール等に応じて適宜設計することができ、熱可塑性樹脂が充分に溶融すればよく、具体的には、5分~30分であることが好ましく、7分~20分であることがより好ましい。
【0053】
溶融工程では、熱可塑性樹脂の混練ムラを抑えて、精度よく混練する観点から、2以上の軸を用いて混練することが好ましい。混練に用いられる軸のことをいい、例えば、スクリュー等が挙げられる。混練溶融工程は、例えば、2以上のスクリューを備えた溶融押出機を用いて行っていてもよい。
【0054】
(紡出工程)
溶融した熱可塑性樹脂(以下「溶融物」ともいう)を、複数の孔を有する紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し、加熱ガスにより熱可塑性樹脂を延伸して、繊維状樹脂とする。具体的には、押出機を用いて、溶融物に圧力をかけてノズルが形成された紡糸口金に供給し、ノズルから溶融物を噴出させる。押出機は、特に限定されず、一軸押出機であっても多軸押出機であってもよい。紡出時の溶融物の温度(押出温度)は、溶融状態を維持できれば特に制限されないが、例えば、溶融温度と同様の温度範囲内で設定すればよい。押出温度は、溶融温度との差が-50℃~+50℃以内であることが好ましく、-20℃~+20℃以内であることがより好ましい。
【0055】
ノズル孔径は、0.06mm~0.50mmが好ましく、0.10mm~0.40mmがより好ましい。
ノズルにおける孔1つあたりの吐出量(単孔吐出量)は5mg/min~150mg/minであることが好ましく、7mg/min~100mg/minであることがより好ましく、10mg/min~70mg/minがさらに好ましい。
加熱ガスの温度は、250℃~420℃であることが好ましく、290℃~410℃であることがより好ましい。
加熱ガスの流量は、250Nm3/hr/m~750Nm3/hr/mであることが好ましく、630Nm3/hr/m~740Nm3/hr/mであることがより好ましい。
ノズル孔径、吐出量、並びに加熱ガスの温度及び流量をこのような範囲とすることで、得られる繊維集合体の平均繊維径を小さくすることができ、かつ、樹脂粒子の発生が低減される傾向にある。
【0056】
(捕集工程)
捕集工程では、繊維状樹脂を、ウェブフォーマーベルト上にウェブ状に捕集する。
スパンボンド法では繊維状樹脂を冷却して捕集するのに対して、メルトブローン法は冷却せずに繊維状樹脂を捕集するため、捕集機上で繊維同士が融着しやすいという特性がある。そのため、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離が近いほど、繊維同士が融着した状態でウェブフォーマーベルト上に捕集され、不織布となる。他方、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離が遠くなるほど、繊維状樹脂の温度が下がってからウェブフォーマーベルト上に捕集されるので、繊維同士が融着せずに、綿状となる。
【0057】
不織布を得る観点からは、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離は、120mm以下であることが好ましく、10mm~110mmであることがより好ましく、30mm~80mmであることがさらに好ましい。
他方、綿状の繊維集合体を得る観点からは、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離は、120mmを超えることが好ましく、150mm~500mmであることがより好ましく、250mm~450mmであることがさらに好ましい。
【0058】
捕集工程は、ウェブフォーマーベルトの裏側から空気を吸引しつつ行ってもよい。裏側から空気を吸引すると、繊維の飛散を防止できる傾向がある。
【0059】
捕集工程において、ウェブフォーマーベルト上に、捕集材料を配置しておいてもよい。捕集材料は、繊維集合体と共に巻き取ることができる。捕集材料としては、本発明の不織布以外の不織布などが挙げられる。捕集材料を用いることで、巻き取りが容易になる傾向がある。捕集材料は、空気の吸引を阻害しない程度の目付であることが好ましい。
【0060】
(その他の工程)
ウェブフォーマーベルト上に捕集して堆積することによって得られた繊維集合体は、二次加工をさらに施されてもよい。二次加工としては、例えば、交絡処理、押圧加工、ギア加工、印刷加工、塗布加工、ラミネート加工、加熱処理、賦型加工、親水加工、撥水加工、プレス加工等が挙げられる。
【0061】
交絡処理としては、例えば、熱エンボス処理、超音波融着処理、ウォータージェット処理、ホットエアースルー処理、ニードルパンチ処理等が挙げられる。
剛性と通気性とのバランスをより良好に保つ観点からは、交絡処理としては、熱エンボス処理を含むことが好ましい。
本開示の繊維集合体を熱エンボス処理により熱圧着する場合、エンボス面積率(熱圧着部)は、5%~30%の範囲であることが好ましく、5%~20%の範囲であることがより好ましい。刻印形状は、例えば、円、楕円、長円、正方、菱、長方、四角、キルト、格子、亀甲やそれら形状を基本とする連続した形が挙げられる。
【0062】
本開示の繊維集合体の厚み、剛性、緻密性、通気度等を制御する観点からは、二次加工は、押圧加工を含むことが好ましい。押圧加工における本開示の繊維集合体を押圧する押圧手段は、特に限定されず、例えば、繊維集合体の厚さ方向(繊維集合体が積層体である場合、積層体の積層方向)に対し圧力を加えて押圧する押圧手段であってもよい。押圧加工としては、例えば、シート状に堆積された2層以上の繊維集合体(より好ましくはメルトブローン不織布)をプレス成形する方法;ロールにより繊維集合体を押圧するロール成形;などが挙げられ、これらの中でもロール成形を含むことが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
【0064】
-材料の準備-
SPSとしては下記3種を用いた。SPSのMFRの測定は、上述の方法で行った。
・SPS1:シンジオタクチックポリスチレン(出光興産株式会社製、ザレック300ZC)
300℃、荷重2.16kgでのMFRは、67.5g/10minである。
・SPS2:SPS1を二軸押出機にて、350℃で3.6分間混練し熱分解したシンジオタクチックポリスチレン
300℃、荷重2.16kgでのMFRは、131g/10minである。
・SPS3:SPS1を二軸押出機にて、350℃で7.2分間混練し熱分解したシンジオタクチックポリスチレン
300℃、荷重2.16kgでのMFRは、156g/10minである。
【0065】
[実施例1]
SPS3を320℃で溶融し、紡糸口金温度を320℃、ノズル孔径0.12mm、単孔吐出量14mg/min、加熱エアーの流量690Nm3/hr/m、加熱エアーの温度320℃、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離(以下、「DCD」ともいう)60mm、押出温度320℃の条件で紡糸口金から吐出し、繊維状のSPS3をウェブフォーマー上に捕集して、メルトブローン不織布を得た。
得られたメルトブローン不織布は、目付が5g/m2であり、厚みが0.10mmであり、平均繊維径が1.0μmであった。得られたメルトブローン不織布中の繊維状のSPSは、300℃、荷重2.16kgでのMFRが180g/10minであった。
【0066】
[実施例2]
紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離を300mmの条件で紡糸し、かつ、捕集材料として目付13g/m2のポリプロピレン製のスパンボンド不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして綿状の繊維集合体を得た。
得られた綿状の繊維集合体は、目付が5g/m2であり、平均繊維径が1.0μmであった。綿状であるため、厚みは測定しなかった。得られた綿状の繊維集合体中の繊維状のSPSは、300℃、荷重2.16kgでのMFRが180g/10minであった。
【0067】
[実施例3]
加熱エアーの流量を300Nm3/hr/m、加熱エアーの温度を300℃、溶融温度及び押出温度を300℃、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離を100mmに変更した以外は実施例1と同様にして、メルトブローン不織布を得た。
得られたメルトブローン不織布は、目付が10g/m2であり、厚みが0.22mmであり、平均繊維径が2.2μmであった。得られたメルトブローン不織布中の繊維状のSPSは、300℃、荷重2.16kgでのMFRが170g/10minであった。
【0068】
[実施例4]
SPS3に代えてSPS2を用い、ノズル孔径を0.36mm、単孔吐出量を80mg/min、加熱エアーの流量を300Nm3/hr/m、加熱エアーの温度を300℃、溶融温度及び押出温度を300℃、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離を100mmに変更した以外は実施例1と同様にして、メルトブローン不織布を得た。
得られたメルトブローン不織布は、目付が20g/m2であり、厚みが0.45mmであり、平均繊維径が3.8μmであった。得られたメルトブローン不織布中の繊維状のSPSは、300℃、荷重2.16kgでのMFRが151g/10minであった。
【0069】
[実施例5]
実施例1において、SPS3に代えてSPS2を用い、ノズル孔径を0.36mm、単孔吐出量を120mg/min、加熱エアーの流量を300Nm3/hr/m、加熱エアーの温度を300℃、溶融温度及び押出温度を300℃、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離を100mmに変更した以外は実施例1と同様にして、メルトブローン不織布を得た。
得られたメルトブローン不織布は、目付が20g/m2であり、厚みが0.48mmであり、平均繊維径が4.5μmであった。得られたメルトブローン不織布中の繊維状のSPSは、300℃、荷重2.16kgでのMFRが144g/10minであった。
【0070】
[比較例1]
SPS3に代えてSPS1を用い、ノズル孔径を0.36mm、単孔吐出量を120mg/min、加熱エアーの流量を300Nm2/hr/m、加熱エアーの温度を300℃溶融温度及び押出温度を300℃、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離を100mmに変更した以外は実施例1と同様にして、メルトブローン不織布を得た。
得られたメルトブローン不織布は、目付が20g/m2であり、厚みが0.53mmであり、平均繊維径が6.1μmであった。得られたメルトブローン不織布中の繊維状のSPSは、300℃、荷重2.16kgでのMFRが74g/10minであった。
【0071】
[比較例2]
実施例1において、SPS3に代えてSPS1を用い、単孔吐出量を14mg/min加熱エアーの流量を300Nm3/hr/m、加熱エアーの温度を300℃、溶融温度及び押出温度を300℃、紡糸口金とウェブフォーマーベルトとの距離を100mmに変更したところ、溶融押出ができず不織布を成形することができなかった。
【0072】
【0073】
表1に示すように、実施例の繊維集合体は、比較例の繊維集合体に比べて、平均繊維径が細いことがわかった。なお、実施例の繊維集合体はSPSを用いていることから、耐熱性に優れる。