(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関および複式燃料2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関を始動させる方法
(51)【国際特許分類】
F02B 23/02 20060101AFI20241216BHJP
F02B 19/16 20060101ALI20241216BHJP
F01P 3/22 20060101ALI20241216BHJP
F01P 3/16 20060101ALI20241216BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20241216BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241216BHJP
F02D 19/06 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
F02B23/02 H
F02B19/16 H
F01P3/22 U
F01P3/16
F02B43/00 A
F02M21/02 L
F02M21/02 N
F02M21/02 301A
F02D19/06 B
F02D19/06 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020119009
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】PA 2019 70460
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA 2020 70399
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】519441006
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ、フィリアル・エフ・マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー、ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ・シエルップ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・アントニー・ラモス・デ・マトス・オフテダル
(72)【発明者】
【氏名】シモン・バッハ・メルガルド
(72)【発明者】
【氏名】カーステン・ピーターセン
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522941(JP,A)
【文献】実開昭61-65237(JP,U)
【文献】特開昭53-126412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 1/00-23/10
F02D 13/00-28/00
F01P 1/00-11/20
F02B 43/00-45/10
F02M 21/00-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダと、シリンダカバーと、ピストンと、燃料ガス供給システムと、予燃室と、掃気システムとを備える2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関であって、前記シリンダは、シリンダ壁を有し、前記シリンダカバーは、前記シリンダの頂部に配置されかつ排出弁を有し、前記ピストンは、下死点と上死点との間で中心軸に沿って前記シリンダ内に可動に配置されており、前記掃気システムは、前記シリンダの底部に配置された掃気入口を有し、前記燃料ガス供給システムは、少なくとも部分的に前記シリンダ壁に配置されかつ圧縮ストローク中に燃料ガスを前記シリンダに噴射するように構成された燃料ガス弁を備え、前記燃料ガスが、掃気と混合することを可能にし、掃気と燃料ガスとの混合物が、点火される前に圧縮されることを許容し、前記予燃室は、第1の開口部を通じて前記シリンダへと開口しており、前記予燃室は、前記シリンダ内の掃気と燃料ガスとの前記混合物を点火するように構成されており、ここにおいて、前記
内燃機関は、前記予燃室の温度を調節するための予燃室温度調節システムをさらに備え、前記予燃室温度調節システムは、前記予燃室と熱交換するための、前記予燃室に近接した熱交換流路を備え、前記予燃室温度調節システムは、前記熱交換流路を通じて熱交換流体を循環させるように構成されており、ここにおいて、前記予燃室温度調節システムは、前記熱交換流体の流れおよび/または前記熱交換流体の入口温度を制御するように構成された制御ユニットをさらに備え
、ここにおいて、前記内燃機関は、パイロット燃料供給システムをさらに備え、前記パイロット燃料供給システムは、前記予燃室に配置されているパイロット燃料弁を備え、前記パイロット燃料弁は、前記予燃室内に自己着火可能なパイロット燃料を噴射するように構成され、前記制御ユニットは、前記予燃室の温度を前記パイロット燃料の自己着火温度に向って低下させるように構成されている、2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項2】
前記制御ユニットは、機関負荷、機関速度、掃気と燃料ガスとの前記混合物の空気-燃料等量比λ、および/またはセンサ信号に依存して、前記熱交換流体の前記流れおよび/または前記熱交換流体の前記入口温度を制御するように構成されている、請求項1に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項3】
前記予燃室は、少なくとも部分的に前記シリンダ壁に配置されており、前記第1の開口部は、前記シリンダ壁に形成されている、請求項1または2に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項4】
前記予燃室温度調節システムは、前記予燃室を冷却するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項5】
前記予燃室温度調節システムは、前記予燃室を加熱するようにさらに構成されている、請求項4に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項6】
前記予燃室温度調節システムは、機関始動手順の一部として、前記予燃室を加熱するようにさらに構成されている、請求項5に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項7】
前記
内燃機関は、前記シリンダを冷却するための、前記シリンダに近接した冷却流路を備えるシリンダ冷却システムをさらに備え、前記シリンダ冷却システムは、前記冷却流路を通じて熱交換流体を循環させるように構成されており、ここにおいて、前記シリンダ冷却システムは、前記熱交換流体の前記流れおよび/または前記熱交換流体の前記入口温度を制御するように構成された制御ユニットをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項8】
前記シリンダ冷却システムおよび前記予燃室温度調節システムは、流体的に接続されていない2つの別個のシステムである、請求項7に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項9】
前記予燃室は、予燃室壁を有し、ここで、前記熱交換流路は、前記予燃室壁の一部の内部に延在している、請求項1~8のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項10】
前記
内燃機関は、予燃室ハウジングをさらに備え、前記予燃室は、前記予燃室ハウジングに配置されており、前記予燃室は、前記予燃室ハウジングに当接しかつ前記予燃室を前記予燃室ハウジングに固定させるための少なくとも第1の接触部分および第2の接触部分を有し、ここにおいて、前記予燃室ハウジングは、前記予燃室と前記
内燃機関との間の熱交換を制限するための、前記第1の接触部分と前記第2の接触部分との間に形成された第1の絶縁容積を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項11】
前記熱交換流路は、前記予燃室の冷却または加熱のいずれかを行うように構成された複合型加熱冷却システムの一部であ
り、前記複合型加熱冷却システムは、前記
内燃機関が低負荷で動くとき、前記予燃室を加熱するように構成されており、前記
内燃機関が高負荷で動くとき、前記予燃室を冷却するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
【請求項12】
燃料ガスで動くとき、オットーサイクルモードを有し、代替燃料で動くとき、ディーゼルサイクルモードを有する、
請求項1に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関を始動させる方法であって
、前記内燃機関は、前記シリンダに直接的に前記代替燃料を噴射するための専用の代替燃料供給システムをさらに備え、ここにおいて、前記予燃室は、機関始動手順の一部として加熱され、ここにおいて、前記
内燃機関は、前記専用の代替燃料供給システムを使用して、最初に前記代替燃料を前記シリンダに噴射することなく、燃料ガスモードで直接的に始動され
、ここにおいて、前記内燃機関は、パイロット燃料供給システムをさらに備え、前記パイロット燃料供給システムは、前記予燃室に配置されているパイロット燃料弁を備え、前記パイロット燃料弁は、前記予燃室内に自己着火可能なパイロット燃料を噴射するように構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関および複式燃料2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関を始動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2ストローク内燃機関は、コンテナ船、ばら積み貨物船、およびタンカーのような船舶において推進機関として使用される。内燃機関からの望ましくない排出ガスの低減は、ますます重要になっている。
【0003】
望ましくない排出ガスの量を低減させるための効果的な方法が、燃料油、例えば、重油(HFO)から燃料ガスに切り替えることである。燃料ガスは、圧縮されたときにシリンダ内のガスが達成する高温によって、またはパイロット燃料の点火によってのいずれかで、それがただちに点火され得る圧縮ストロークの最後にシリンダに噴射され得る。しかしながら、圧縮ストロークの最後にシリンダに燃料ガスを噴射することは、シリンダ内の高圧を克服するために、噴射より前に燃料ガスを圧縮するための高圧コンプレッサを必要とする。
【0004】
しかしながら、高圧ガスコンプレッサは、製造および保守整備するのに高価で複雑である。高圧コンプレッサの必要性を回避するための1つの方法が、シリンダ内の圧力が著しくより低い圧縮ストロークの始めに燃料ガスを噴射するように機関を構成することである。
【0005】
WO2013007863が、このような機関を開示している。燃料ガスの適切な点火を確保するために、パイロット点火予燃室がシリンダカバーに設けられている。一定量のパイロット燃料油が、パイロット点火予燃室に噴射され、これは、その後、パイロット点火予燃室内の温度および圧力により、自己着火する。これは、シリンダの主室内の燃料ガスを点火させるトーチ(torch)をもたらす。
【0006】
しかしながら、予燃室の適切な冷却を確保することは困難である。
【0007】
したがって、予燃室を冷却する改善された方法を提供することが依然として課題となっている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、少なくとも1つのシリンダと、シリンダカバーと、ピストンと、燃料ガス供給システムと、予燃室と、掃気システムとを備える2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関に関し、シリンダは、シリンダ壁を有し、シリンダカバーは、シリンダの頂部に配置されかつ排出弁を有し、ピストンは、下死点と上死点との間で中心軸に沿ってシリンダ内に可動に配置されており、掃気システムは、シリンダの底部に配置された掃気入口を有し、燃料ガス供給システムは、少なくとも部分的にシリンダ壁に配置されかつ圧縮ストローク中に燃料ガスをシリンダに噴射するように構成された燃料ガス弁を備え、燃料ガスが、掃気と混合することを可能にし、掃気と燃料ガスとの混合物が、点火される前に圧縮されることを許容し、予燃室は、第1の開口部を通じてシリンダへと開口しており、予燃室は、シリンダ内の掃気と燃料ガスとの混合物を点火するように構成されており、ここにおいて、機関は、予燃室の温度を調節するための予燃室温度調節システムをさらに備え、予燃室温度調節システムは、予燃室と熱交換するための、予燃室に近接した熱交換流路を備え、予燃室温度調節システムは、熱交換流路を通じて熱交換流体を循環させるように構成されており、ここにおいて、予燃室温度調節システムは、熱交換流体の流れおよび/または熱交換流体の入口温度(inlet temperature)を制御するように構成された制御ユニットをさらに備える。
【0009】
結果として、予燃室に専用の温度調節システムを設けることによって、予燃室における安全(secure)かつ効率的な点火が得られ得、例えば、予燃室の温度は、シリンダ冷却システムなどの他の冷却システムの動作に非依存に制御され得る。改善された制御は、予燃室の温度が、着火限界(例えば、パイロット燃料の要求自己着火温度)にさらに向かって低下されることをさらに許容し得、これによって、NOxガスの排出は、低減され得る。改善された制御はまた、NOx生成を上昇させるのみならず機関の摩耗の増加ももたらす過早点火(pre-ignition)のリスクを低下させ得る。
【0010】
内燃機関は、好ましくは、シリンダ毎に少なくとも400kWの動力を有する、定置用の発電所(stationary power plant)または海洋船舶を推進するためのユニフロー掃気を有する大型低速ターボチャージ付き2ストローククロスヘッド内燃機関である。内燃機関は、内燃機関によって発生した排出ガスによって駆動されかつ掃気を圧縮するように構成されたターボチャージャーを備え得る。内燃機関は、燃料ガスで動くとき、オットーサイクルモードを有し、代替燃料、例えば、重油または船舶用ディーゼル油で動くとき、ディーゼルサイクルモードを有する、複式燃料機関(dual-fuel engine)であり得る。このような、複式燃料機関は、代替燃料を噴射するためのそれ自体の専用の燃料供給システムを有している。内燃機関は、シリンダ冷却システムを備え得る。予燃室温度調節システムは、予燃室(および場合によっては、直接的または間接的に予燃室を取り囲む機関部品)の温度を調節するようにのみ構成され得る。
【0011】
内燃機関は、好ましくは、複数のシリンダ、例えば、4個から14個までの間のシリンダを備える。内燃機関は、複数のシリンダの各シリンダに対して、シリンダカバー、排出弁、ピストン、燃料ガス弁、および掃気入口をさらに備える。
【0012】
燃料ガス供給システムは、好ましくは、音速状態下で、すなわち、速度が音速に等しい、すなわち、一定の速度で、1つ以上の燃料ガス弁を介して燃料ガスを噴射するように構成されている。音速状態は、ノズルのど部(断面の最小面積)にわたる圧力降下率が、略2(approximately two)よりも大きくなるときに達成され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、1つ以上の燃料ガス弁は、下死点からの0度から160度内で、下死点からの0度から130度内で、または、下死点からの0度から90度内で、圧縮ストローク中に燃料ガスをシリンダに噴射するように構成されている。
【0014】
1つ以上の燃料ガス弁は、好ましくは、掃気入口より上の位置において、上死点と下死点との間で、少なくとも部分的にシリンダ壁に配置されている。1つ以上の燃料ガス弁は、シリンダに燃料ガスを噴射するための、シリンダ壁に配置されたノズルを備え得る。燃料ガス弁の他の部分(ノズル以外)は、シリンダ壁の外(outside)に配置され得る。
【0015】
燃料ガスの例は、液化天然ガス(LNG)、メタン、アンモニア、エタン、および液化石油ガス(LPG)である。
【0016】
いくつかの実施形態では、機関は、パイロット燃料供給システムをさらに備え、パイロット燃料供給システムは、予燃室に配置されたパイロット燃料弁を備え、パイロット燃料弁は、予燃室にパイロット燃料を噴射するように構成されている。
【0017】
予燃室は、パイロット燃料が、予燃室内の温度および圧力により、自己着火するように構成され得る。代替として、予燃室におけるパイロット燃料は、スパークプラグまたはレーザ点火装置を備える手段によって点火され得る。パイロット燃料は、ちょうどの量がシリンダ内の燃料ガスと掃気との混合物に点火できるように正確にその分量をはかられた、重油もしくは船舶用ディーゼル油、または好適な点火性を有するその他任意の燃料であり得る。このようなパイロット燃料システムは、代替燃料のための専用の燃料供給システムと比較して、サイズがはるかに小さく、正確な量のパイロット燃料を噴射するのにより好適であり得、これは、コンポーネントの大きいサイズがこの目的に適さない可能性があることに起因する。パイロット燃料供給システムは、上死点の近くで、主チャージ(main charge)の最適な点火のための好適なクランク角において、一定量のパイロット油を噴射するように構成され得る。パイロット燃料の点火は、パイロット油の噴射の直後に起こり、主チャージの点火は、パイロット油の点火の直後に起こる。
【0018】
予燃室は、シリンダ壁またはシリンダカバーに配置され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは、機関負荷、機関速度、掃気と燃料ガスとの混合物の空気-燃料等量比(air-fuel equivalence ratio)λ、および/またはセンサ信号に依存して、熱交換流体の流れおよび/または熱交換流体の入口温度を制御するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、予燃室は、少なくとも部分的にシリンダ壁に配置されており、第1の開口部は、シリンダ壁に形成されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、予燃室温度調節システムは、予燃室を冷却するように構成されている。
【0022】
予燃室温度調節システムは、予燃室を冷却するように構成された冷却システムであり得、例えば、冷却システムは、熱交換流体を熱交換流路に供給する前に、熱交換流体を冷却するように構成され得る。したがって、熱交換流路は、冷却流路であり得る。
【0023】
代替として、熱交換流路は、予燃室の冷却または加熱のいずれかを行うように構成された複合型加熱冷却システムの一部であり得、例えば、複合型加熱冷却システムは、熱交換流体を熱交換流路に供給する前に、熱交換流体の冷却または加熱のいずれかを行うように構成され得る。複合型加熱冷却システムは、完全な機関停止からか、または重油もしくは船舶用ディーゼル油から燃料ガスに切り替わるときのいずれかで、ガス始動手順の一部として予燃室を加熱するように構成され得る。複合型加熱冷却システムは、予燃室および/または取り囲んでいる機関部品への損傷を防止するために、ガス始動手順が完了した後に、すなわち、通常のガス運転(gas operation)中に、予燃室を冷却するように構成され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、熱交換流路は、予燃室の冷却または加熱のいずれかを行うように構成された複合型加熱冷却システムの一部であり得、ここにおいて、複合型加熱冷却システムは、機関が低負荷で動くとき、予燃室を加熱するように構成されており、機関が高負荷で動くとき、予燃室を冷却するように構成されている。
【0025】
結果として、機関を低負荷で動かすときに、予燃室が十分に暖まっていることを保証することによって、燃焼安定性が増大され得、点火遅れが低減および安定化され得る。さらに、機関が高負荷で動くときに、予燃室を冷却することによって、予燃室および取り囲んでいる機関部品への損傷が防止され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、複合型加熱冷却システムは、機関が第1のしきい値より低い(below)負荷で動くとき、予燃室を加熱するように構成されており、機関が第2のしきい値を超えて(above)動くとき、予燃室を冷却するように構成されており、ここにおいて、第2のしきい値は、第1のしきい値より高いか等しい。
【0027】
第1および第2のしきい値の値は、特定の機関設計に依存し、実験および/またはコンピュータシミュレーションを介して見出され得る。
【0028】
熱交換流体の例は、水、空気、およびシステム油である。
【0029】
いくつかの実施形態では、予燃室温度調節システムは、予燃室を加熱するようにさらに構成されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、予燃室温度調節システムは、機関始動手順の一部として、予燃室を加熱するようにさらに構成されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、機関は、シリンダを冷却するための、シリンダに近接した冷却流路を備えるシリンダ冷却システムをさらに備え、シリンダ冷却システムは、冷却流路を通じて熱交換流体を循環させるように構成されており、ここにおいて、シリンダ冷却システムは、熱交換流体の流れおよび/または熱交換流体の入口温度を制御するように構成された制御ユニットをさらに備える。
【0032】
結果として、予燃室およびシリンダは、例えば、機関パラメータの値に依存して、両方が少なくとも部分的に独立して冷却され得、これによって、より良好な機関性能が達成され得る。
【0033】
シリンダ冷却システムは、好ましくは、シリンダカバーを冷却するようにも構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、シリンダ冷却システムおよび予燃室温度調節システムは、流体的に接続されていない2つの別個のシステムである。
【0035】
結果として、予燃室およびシリンダは、両方が完全に独立冷却され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、シリンダ冷却システムおよび予燃室温度調節システムは、予燃室温度調節システムの熱交換流路またはシリンダ冷却システムの冷却流路のいずれかに供給される熱交換流体の入口圧力を制御するように構成された第1の圧力調節弁を備える共通の機関温度調節システムの一部を形成する。
【0037】
結果として、機関の冷却システムは、単純化されるとともに、依然として、シリンダおよび予燃室の冷却の部分的に独立した制御を提供し得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、予燃室は、予燃室壁を有し、ここで、熱交換流路は、予燃室壁の一部の内部に延在している。
【0039】
結果として、予燃室壁の内部に直接的に配置された熱交換流路を有することによって、予燃室の温度は、効果的かつ正確に調節され得る。
【0040】
予燃室壁の内部に延在している熱交換流路の部分は、例えば、積層造形技法(additive manufacturing techniques)を使用して、予燃室が形成されるのと同時に形成され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、機関は、予燃室ハウジングをさらに備え、予燃室は、予燃室ハウジングに配置されており、予燃室は、予燃室ハウジングに当接しかつ予燃室を予燃室ハウジングに固定させるための少なくとも第1の接触部分および第2の接触部分を有し、ここにおいて、予燃室ハウジングは、予燃室と機関との間の熱交換を制限するための、第1の接触部分と第2の接触部分との間に形成された第1の絶縁容積(first insulation volume)を有する。
【0042】
結果として、予燃室をそれが挿入される機関の部分から絶縁させることによって、予燃室の温度は、より正確に制御され得る。これはまた、予燃室に近接した機関の部分が、鋳鉄などのより低い熱耐性を有する材料から作製されることを可能にし得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、予燃室は、予燃室ハウジングに当接するための第3の接触部分をさらに有し、ここにおいて、予燃室ハウジングは、第2の接触部分と第3の接触部分との間に形成された第2の絶縁容積をさらに有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、予燃室および熱交換流路は、単一の積層造形工程によって製造される。
【0045】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリンダは、基部部材と予燃室部材と有し、予燃室部材は、基部部材の上に配置されており、シリンダカバーは、予燃室部材の上に配置されており、ここにおいて、予燃室は、少なくとも部分的に予燃室部材のシリンダ壁に配置されており、第1の開口部は、予燃室部材のシリンダ壁に形成された開口部を通じてシリンダへと開口している。
【0046】
これは、予燃室部材が、例えば、好適な材料を選択することによって、予燃室内の高い温度および圧力を取り扱う(handle)ように特別に設計されることを可能にする。これはさらに、予燃室に対して保守整備を行うことをより容易にし得る。予燃室部材は、どちらか一方に向けてのガスケット装置(gasket arrangements towards either)を有するまたは有しない、基部部材とシリンダカバーとの間のインサートであり得る。それは、シリンダカバーが取り付けられる前に、基部部材と共に前もって組み立てられ得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、シリンダの予燃室部材は、シリンダの基部部材とは異なる材料で作製される。
【0048】
シリンダの基部部材は、鋳鉄で作製され得、予燃室部材は、鋼で作製され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、予燃室は、第1の軸に沿って延在している流路を介して第1の開口部に接続されており、ここにおいて、第1の軸と、中心軸に垂直に配置されている基準面との間の角度は、0度~85度、0度~80度、0度~60度、0度~45度、または0度~30度の間である。
【0050】
結果として、予燃室からシリンダへと延在するトーチは、掃気と燃料ガスとの混合物の大部分と直接接触し得る。
【0051】
機関には、より多くの予燃室部材が設けられ得、例えば,シリンダ当たり少なくとも2つ、3つ、または4つの予燃室である。
【0052】
第2の態様によれば、本発明は、燃料ガスで動くとき、オットーサイクルモードを有し、代替燃料で動くとき、ディーゼルサイクルモードを有する、複式燃料2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関を始動させる方法に関し、機関は、少なくとも1つのシリンダと、シリンダカバーと、ピストンと、燃料ガス供給システムと、シリンダ冷却システムと、予燃室と、掃気システムとを備え、シリンダは、シリンダ壁を有し、シリンダカバーは、シリンダの頂部に配置されかつ排出弁を有し、ピストンは、下死点と上死点との間で中心軸に沿ってシリンダ内に可動に配置されており、掃気システムは、シリンダの底部に配置された掃気入口を有し、燃料ガス供給システムは、少なくとも部分的にシリンダ壁に配置されかつ圧縮ストローク中に燃料ガスをシリンダに噴射するように構成された燃料ガス弁を備え、燃料ガスが、掃気と混合することを可能にし、掃気と燃料ガスとの混合物が、点火される前に圧縮されることを許容し、予燃室は、第1の開口部を通じてシリンダへと開口しており、予燃室は、シリンダ内の掃気と燃料ガスとの混合物を点火するように構成されており、ここにおいて、機関は、シリンダに直接的に代替燃料を噴射するための専用の代替燃料供給システムをさらに備え、ここにおいて、予燃室は、機関始動手順の一部として加熱され、ここにおいて、機関は、専用の代替燃料供給システムを使用して、最初に代替燃料をシリンダに噴射することなく、燃料ガスモードで直接的に始動される。
【0053】
結果として、予燃室を加熱することによって、機関は、ガスモードで直接的に始動され得、望ましくない排出ガスの放出を低下させる。これは、機関が、居住区域の近くに位置するクルーズ港などの、放出に敏感な地域において始動される場合に、特に有益であり得る。
【0054】
機関は、本発明の第1の態様に関連して開示された機関であり得る。
【0055】
本発明の異なる態様は、2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関および複式燃料2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関を始動させる方法などを含む異なる方法で実現され得、上記で説明された態様のうちの少なくとも1つに関連して説明された利益および利点のうちの1つ以上をそれぞれ生み出し、上記で説明された態様のうちの少なくとも1つに関連して説明された、および/または従属請求項において開示される好ましい実施形態に対応する1つ以上の好ましい実施形態をそれぞれ有している。さらに、本明細書で説明される態様のうちの1つに関連して説明される実施形態は、他の態様に等しく適用され得ることが認識されるだろう。
【0056】
2つの軸の間、2つの面の間、または軸と面の間には、常に2つの角度、すなわち、小角度V1および大角度V2が存在することになり、ここで、V2=180度-V1である。本開示では、常に小角度V1が指定されることになる。
【0057】
本発明の上記のおよび/または追加の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照して、本発明の実施形態の以下の例示的で非限定的な詳細な説明によってさらに明瞭にされるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による、2ストローク内燃機関の断面図を概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による、ユニフロー掃気を有する2ストローククロスヘッド内燃機関の一部の概略的な断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による、ユニフロー掃気を有する2ストローククロスヘッド内燃機関の一部の概略的な断面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による、ユニフロー掃気を有する2ストローククロスヘッド内燃機関の一部の概略的な断面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による、複式燃料2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関を始動させる方法のフローチャートを示す。
【
図6a】
図6aは、本発明の実施形態による、海洋船舶を推進するためのユニフロー掃気を有する大型低速ターボチャージ付き2ストローククロスヘッド内燃機関の断面図を示す。
【
図6b】
図6bは、本発明の実施形態による、海洋船舶を推進するためのユニフロー掃気を有する大型低速ターボチャージ付き2ストローククロスヘッド内燃機関の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下の説明において、添付の図面への参照がなされ、これは、本発明がどのように実施され得るかを例として示している。
【0060】
図1は、本発明の実施形態による、海洋船舶を推進するためのユニフロー掃気を有する大型低速ターボチャージ付き2ストローククロスヘッド内燃機関100の断面図を概略的に示す。機関100は、掃気システム111、排出ガスレシーバ108、燃料ガス供給システム、およびターボチャージャー109を備える。機関は、複数のシリンダ101を有する(断面図には単一のシリンダのみが示されている)。各シリンダ101は、シリンダ壁115を有し、シリンダ101の底部に配置された掃気入口102を備える。機関は、各シリンダに対して、シリンダカバー112およびピストン103をさらに備える。シリンダカバー112は、シリンダ101の頂部に配置されており、排出弁104を有している。ピストン103は、下死点と上死点との間で中心軸113に沿ってシリンダ内に可動に配置されている。燃料ガス供給システムは、圧縮ストローク中に、燃料ガスをシリンダ101に噴射するように構成された1つ以上の燃料ガス弁105(概略的にのみ図示されている)を備え、燃料ガスが、掃気と混合することを可能にし、掃気と燃料ガスとの混合物が、点火される前に圧縮されることを許容する。燃料ガス弁105は、少なくとも部分的に、シリンダカバー112と掃気入口102との間のシリンダ壁に配置されている。機関は、(概略的にのみ図示されている)シリンダ壁115に配置された予燃室114をさらに備える。予燃室114は、予燃室壁を有し、第1の開口部を通じてシリンダへと開口する。予燃室114は、シリンダ101内の掃気と燃料ガスとの混合物を点火するように構成されている。機関100は、予燃室の温度を調節するための予燃室温度調節システムをさらに備え、予燃室温度調節システムは、予燃室114と熱交換するための、予燃室114に近接した熱交換流路191(概略的にのみ図示されている)を備え、予燃室温度調節システムは、熱交換流路191を通じて熱交換流体を循環させるように構成されている。予燃室温度調節システムは、例えば、予燃室温度調節システムのコンプレッサおよび/または膨脹弁を制御することによって、熱交換流体の流れおよび/または熱交換流体の入口温度を制御するように構成された制御ユニット190をさらに備える。掃気入口102は、掃気システムに流体的に接続されている。ピストン103は、その最も低い位置(下死点)において示されている。ピストン103は、クランクシャフト(図示せず)に接続されているピストン棒を有する。燃料ガス弁105は、圧縮ストローク中に、燃料ガスをシリンダに噴射するように構成され、燃料ガスが、掃気と混合することを可能にし、掃気と燃料ガスとの混合物が、点火される前に圧縮されることを許容する。燃料ガス弁105は、好ましくは、下死点から0度から130度内の圧縮ストロークの始めに、すなわち、クランクシャフトが下死点におけるその向き(orientation)から、0度から130度の間で回転したとき、燃料ガスをシリンダ101に噴射するように構成されている。好ましくは、燃料ガス弁105は、燃料ガスが排出弁104および掃気入口102を通って流出することを阻止するために、ピストンが掃気入口102を通過するように、クランクシャフト軸が下死点から数度回転した後に、燃料ガスを噴射することを開始するように構成されている。掃気システム111は、掃気レシーバ110と空気冷却器106とを備える。
【0061】
機関100は、好ましくは、燃料ガスで動くとき、オットーサイクルモードを有し、代替燃料、例えば、重油または船舶用ディーゼル油で動くとき、ディーゼルサイクルモードを有する、複式燃料機関である。このような、複式燃料機関は、代替燃料を噴射するためのそれ自体の専用の代替燃料供給システムを有している。したがって、オプションで、機関100は、代替燃料供給システムの一部を形成しているシリンダカバー112において配置された1つ以上の燃料噴射器116をさらに備える。機関100が代替燃料で動くとき、燃料噴射器116は、高圧下で圧縮ストロークの最後に、代替燃料、例えば、重油を噴射するように構成されている。
【0062】
図2は、本発明の実施形態による、ユニフロー掃気を有する2ストローククロスヘッド内燃機関の一部の概略的な断面図を示す。シリンダ101、シリンダカバー112、ピストン103、および排出弁104が示されている。ピストン103は、上死点において配置されている。シリンダ101は、第1の予燃室114と第2の予燃室116とが設けられたシリンダ壁115を有し、第1および第2の予燃室114 116には、それぞれ熱交換流路(図示せず)が設けられている。第1および第2の予燃室114 116は、両方がシリンダ壁115に形成された開口部を通じてシリンダ101へと開口し、予燃室は、シリンダ内の掃気と燃料ガスとの混合物を点火するように構成されている。
【0063】
図3は、本発明の実施形態による、ユニフロー掃気を有する2ストローククロスヘッド内燃機関の一部の概略的な断面図を示す。この部分は、シリンダ101が基部部材117と予燃室部材118とを有するという違いを伴って、
図2に示された部分に対応し、予燃室部材118は、基部部材117の上に配置されており、シリンダカバー112は、予燃室部材118の上に配置されている。第1および第2の予燃室114、116は、予燃室部材118のシリンダ壁に配置されている。これは、予燃室部材が、例えば、好適な材料を選択することによって、予燃室内の高い温度および圧力を取り扱うように特別に設計されることを可能にする。
【0064】
図4は、本発明の実施形態による、ユニフロー掃気を有する2ストローククロスヘッド内燃機関の一部の概略的な断面図を示す。この部分は、第1および第2の予燃室114 116がシリンダカバー112に配置されているという違いを伴って、
図2に示された部分に対応する。
【0065】
図5は、本発明の実施形態による、複式燃料2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関を始動させる方法のフローチャートを示す。機関は、
図1に関連して開示された機関であり得る。第1のステップ501において、機関の予燃室が、例えば、予燃室に近接して設けられた熱交換流路を使用して、加熱される。次にステップ502において、機関は、専用の代替燃料供給システムを使用して、最初に代替燃料をシリンダに噴射することなく、燃料ガスモードで直接的に始動される。結果として、予燃室を加熱することによって、機関は、ガスモードで直接的に始動され得、望ましくない排出ガスの放出を低下させる。これは、機関が、居住区域の近くに位置するクルーズ港などの、放出に敏感な地域において始動される場合に、特に有益であり得る。
【0066】
図6aは、本発明の実施形態による、海洋船舶を推進するためのユニフロー掃気を有する大型低速ターボチャージ付き2ストローククロスヘッド内燃機関の断面図を示す。機関は、燃料ガスで動くとき、オットーサイクルモードを有し、代替燃料、例えば、重油または船舶用ディーゼル油で動くとき、ディーゼルサイクルモードを有する、複式燃料機関である。各シリンダは、シリンダ壁を有し、シリンダの底部に配置された掃気入口を備える(図示せず)。機関は、各シリンダに対して、シリンダカバー112およびピストン103をさらに備える。シリンダカバー112は、シリンダの頂部に配置されており、排出弁104を有している。ピストン103は、下死点と上死点との間で中心軸に沿ってシリンダ内に可動に配置されている。図において、ピストン103は、上死点に配置されている。燃料ガス供給システムは、(機関がガスモードにあるとき)圧縮ストローク中に、燃料ガスをシリンダに噴射するように構成された1つ以上の燃料ガス弁(図示せず)を備え、燃料ガスが、掃気と混合することを可能にし、掃気と燃料ガスとの混合物が、点火される前に圧縮されることを許容する。燃料ガス弁は、少なくとも部分的に、シリンダカバー112と掃気入口との間のシリンダ壁に配置されている。機関は、2つのパイロット予燃室ユニット131をさらに備え、各パイロット予燃室ユニット131は、予燃室114、パイロット燃料弁ハウジング130、およびパイロット燃料弁ハウジング130に配置されたパイロット燃料弁132を備える。シリンダは、基部部材117と予燃室部材118とを有し、予燃室部材118は、基部部材117の上に配置されており、シリンダカバー112は、予燃室部材118の上に配置されている。予燃室114は、予燃室部材118のシリンダ壁に配置されている。予燃室114は、予燃室部材118のシリンダ壁に形成された開口部を通じてシリンダへと開口している。掃気入口は、掃気システムに流体的に接続されている。ピストン103は、ピストン棒、クロスヘッド、および連接棒を介してクランクシャフト(図示せず)に接続されている。パイロット燃料弁132は、少なくとも機関がガスモードにあるとき、少量のパイロット燃料を予燃室114に噴射するように構成されている。パイロット燃料弁132はまた、パイロット燃料弁が動かなくなることを防止するために、機関が純ディーゼルで動くときに、少量のパイロット燃料を予燃室114に噴射するように構成され得る。予燃室114は、パイロット燃料が、予燃室114内の温度および圧力により、自己着火するように構成されている。パイロット燃料油は、重油、船舶用ディーゼル油、または好適な自己着火性を有するその他任意の燃料であり得る。
【0067】
機関は、代替燃料供給システムの一部を形成しているシリンダカバー112に配置された1つ以上の燃料噴射器116をさらに備える。機関100が代替燃料で動くとき、燃料噴射器116は、高圧下で圧縮ストロークの最後に、代替燃料、例えば、重油を噴射するように構成されている。
【0068】
図6bは、
図6aに示された右側のパイロット予燃室ユニット131のクローズアップを示す。予燃室パイロットユニット131は、入口136と出口(図示せず)とを有する、温度調節流体を循環させるための第1の熱交換流路145を備え、ここで、入口136および出口の両方が、パイロット燃料弁ハウジング130に配置されている。予燃室パイロットユニット131は、入口138と出口(図示せず)とを有する、温度調節流体を循環させるための第2の熱交換流路146をさらに備え、ここで、入口138および出口の両方が、パイロット燃料弁ハウジング130に配置されている。第1および第2の熱交換流路145、146は、予燃室114の壁の一部と、パイロット燃料弁ハウジング130の一部との両方の内部に延在している。第1および第2の熱交換流路145、146は、予燃室114の温度を調節するための予燃室温度調節システムの一部を形成する。予燃室温度調節システムは、第1および第2の熱交換流路145、146を通じて熱交換流体を循環させるように構成されている。予燃室温度調節システムは、熱交換流体の流れ、例えば、第1および第2の熱交換流路145、146を通る熱交換流体の流速、および/または、第1および第2の熱交換流路145、146に供給される熱交換流体の入口温度を制御するように構成された制御ユニット(図示せず)をさらに備える。第1および第2の熱交換流路145、146は、予燃室の第1の開口部144に向かって温度調節流体を誘導するための第1の部分と、予燃室の第1の開口部から遠ざかる方へ(away from)温度調節流体を誘導するための第2の部分とを備える(第1の部分のみが、この断面図において見られる)。第1の部分の形状は、第2の部分の形状に実質的に対応する。この実施形態では、予燃室部材118は、予燃室ハウジングとして機能し、予燃室114は、予燃室ハウジングに配置されており、予燃室114は、予燃室ハウジングに当接しかつ予燃室を予燃室ハウジングに固定させるための第1の接触部分143および第2の接触部分142を有する。この実施形態では、第1の接触部分143および第2の接触部分142の両方が、円環形を有する。予燃室ハウジングは、予燃室114と機関との間の熱交換を制限するための、第1の接触部分143と第2の接触部分142との間に形成された第1の絶縁容積141(例えば、空気が充填されている)を有する。予燃室は、予燃室ハウジングに当接するための第3の接触部分147をさらに有する。この実施形態では、第3の接触部分147は、円環形を有する。予燃室ハウジングは、第2の接触部分142と第3の接触部分147との間に形成された第2の絶縁容積140をさらに有する。
【0069】
いくつかの実施形態が、詳細に説明および示されたが、本発明は、それらに限定されず、以下の特許請求の範囲で規定される主題事項の範囲内で、他の方法でも具現化され得る。特に、本発明の範囲から逸脱せずに、他の実施形態が利用され得、構造的および機能的な修正が行われ得ることが理解されるべきである。
【0070】
いくつかの手段を列挙するデバイスに係る請求項では、これらの手段のうちのいくつかは、ハードウェアの1つの同じアイテムによって具現化されることができる。ある特定の方策が、相互に異なる従属請求項において記載されている、または異なる実施形態において説明されているという単なる事実は、これらの方策の組合せが有利に用いられることができないことを示すわけではない。
【0071】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises/comprising)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、またはコンポーネントの存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、コンポーネント、またはそのグループの存在または追加を排除するものではないことが強調されるべきである。
以下に本願発明の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 少なくとも1つのシリンダと、シリンダカバーと、ピストンと、燃料ガス供給システムと、予燃室と、掃気システムとを備える2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関であって、前記シリンダは、シリンダ壁を有し、前記シリンダカバーは、前記シリンダの頂部に配置されかつ排出弁を有し、前記ピストンは、下死点と上死点との間で中心軸に沿って前記シリンダ内に可動に配置されており、前記掃気システムは、前記シリンダの底部に配置された掃気入口を有し、前記燃料ガス供給システムは、少なくとも部分的に前記シリンダ壁に配置されかつ圧縮ストローク中に燃料ガスを前記シリンダに噴射するように構成された燃料ガス弁を備え、前記燃料ガスが、掃気と混合することを可能にし、掃気と燃料ガスとの混合物が、点火される前に圧縮されることを許容し、前記予燃室は、第1の開口部を通じて前記シリンダへと開口しており、前記予燃室は、前記シリンダ内の掃気と燃料ガスとの前記混合物を点火するように構成されており、ここにおいて、前記機関は、前記予燃室の温度を調節するための予燃室温度調節システムをさらに備え、前記予燃室温度調節システムは、前記予燃室と熱交換するための、前記予燃室に近接した熱交換流路を備え、前記予燃室温度調節システムは、前記熱交換流路を通じて熱交換流体を循環させるように構成されており、ここにおいて、前記予燃室温度調節システムは、前記熱交換流体の流れおよび/または前記熱交換流体の入口温度を制御するように構成された制御ユニットをさらに備える、2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[2] 前記制御ユニットは、機関負荷、機関速度、掃気と燃料ガスとの前記混合物の空気-燃料等量比λ、および/またはセンサ信号に依存して、前記熱交換流体の前記流れおよび/または前記熱交換流体の前記入口温度を制御するように構成されている、[1]に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[3] 前記予燃室は、少なくとも部分的に前記シリンダ壁に配置されており、前記第1の開口部は、前記シリンダ壁に形成されている、[1]または[2]に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[4] 前記予燃室温度調節システムは、前記予燃室を冷却するように構成されている、[1]~[3]のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[5] 前記予燃室温度調節システムは、前記予燃室を加熱するようにさらに構成されている、[4]に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[6] 前記予燃室温度調節システムは、機関始動手順の一部として、前記予燃室を加熱するようにさらに構成されている、[5]に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[7] 前記機関は、前記シリンダを冷却するための、前記シリンダに近接した冷却流路を備えるシリンダ冷却システムをさらに備え、前記シリンダ冷却システムは、前記冷却流路を通じて熱交換流体を循環させるように構成されており、ここにおいて、前記シリンダ冷却システムは、前記熱交換流体の前記流れおよび/または前記熱交換流体の前記入口温度を制御するように構成された制御ユニットをさらに備える、[1]~[6]のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[8] 前記シリンダ冷却システムおよび前記予燃室温度調節システムは、流体的に接続されていない2つの別個のシステムである、[7]に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[9] 前記予燃室は、予燃室壁を有し、ここで、前記熱交換流路は、前記予燃室壁の一部の内部に延在している、[1]~[8]のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[10] 前記機関は、予燃室ハウジングをさらに備え、前記予燃室は、前記予燃室ハウジングに配置されており、前記予燃室は、前記予燃室ハウジングに当接しかつ前記予燃室を前記予燃室ハウジングに固定させるための少なくとも第1の接触部分および第2の接触部分を有し、ここにおいて、前記予燃室ハウジングは、前記予燃室と前記機関との間の熱交換を制限するための、前記第1の接触部分と前記第2の接触部分との間に形成された第1の絶縁容積を有する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[11] 前記熱交換流路は、前記予燃室の冷却または加熱のいずれかを行うように構成された複合型加熱冷却システムの一部であり得、前記複合型加熱冷却システムは、前記機関が低負荷で動くとき、前記予燃室を加熱するように構成されており、前記機関が高負荷で動くとき、前記予燃室を冷却するように構成されている、[1]~[10]のいずれか一項に記載の2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関。
[12] 燃料ガスで動くとき、オットーサイクルモードを有し、代替燃料で動くとき、ディーゼルサイクルモードを有する、複式燃料2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関を始動させる方法であって、前記機関は、少なくとも1つのシリンダと、シリンダカバーと、ピストンと、燃料ガス供給システムと、シリンダ冷却システムと、予燃室と、掃気システムとを備え、前記シリンダは、シリンダ壁を有し、前記シリンダカバーは、前記シリンダの頂部に配置されかつ排出弁を有し、前記ピストンは、下死点と上死点との間で中心軸に沿って前記シリンダ内に可動に配置されており、前記掃気システムは、前記シリンダの底部に配置された掃気入口を有し、前記燃料ガス供給システムは、少なくとも部分的に前記シリンダ壁に配置されかつ圧縮ストローク中に燃料ガスを前記シリンダに噴射するように構成された燃料ガス弁を備え、前記燃料ガスが、掃気と混合することを可能にし、掃気と燃料ガスとの混合物が、点火される前に圧縮されることを許容し、前記予燃室は、第1の開口部を通じて前記シリンダへと開口しており、前記予燃室は、前記シリンダ内の掃気と燃料ガスとの前記混合物を点火するように構成されており、ここにおいて、前記機関は、前記シリンダに直接的に前記代替燃料を噴射するための専用の代替燃料供給システムをさらに備え、ここにおいて、前記予燃室は、機関始動手順の一部として加熱され、ここにおいて、前記機関は、前記専用の代替燃料供給システムを使用して、最初に前記代替燃料を前記シリンダに噴射することなく、燃料ガスモードで直接的に始動される、方法。