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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】歯付ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/28 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
F16G1/28 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020160614
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2021055845
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019176878
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】大田 隆史
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特許第6085034(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/018068(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体と、
上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部と、
上記ベルト本体の幅方向に間隔を開け、上記長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設される複数の芯体コードと
を備え、
上記複数の芯体コードが、
導電性を有する通電用芯体コードと、
上記通電用芯体コードより単位長当たりの電気抵抗が高い補強用芯体コードと
を有し、
上記通電用芯体コードの平均径が上記補強用芯体コードの平均径より大きい歯付ベルト。
【請求項2】
幅方向の両側に同数の上記補強用芯体コードが配列され、中央部に全ての上記通電用芯体コードが集められている請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項3】
上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードが補強用芯体コードである請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項4】
上記複数の芯体コードが上記通電用芯体コードを複数有し、
隣接する通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードが配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の歯付ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯付ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等での物の昇降や搬送に、歯付ベルトが用いられている。この歯付ベルトは、ベルト本体と、このベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔に配置される歯部と、ベルトの幅方向に等間隔に配列され、長さ方向に沿ってベルト本体に埋設される複数の芯体コードとを備えている。
【0003】
この歯付ベルトの構成としては、無端状のエンドレスベルトと両端部を有するオープンベルトとがある。このうちオープンベルト構成の歯付ベルトは、例えばその歯部が歯付プーリーと嵌合可能となるように台車に固定され、歯付プーリーを回転駆動することでこの台車を上下あるいは左右に移動させるために使用される。
【0004】
上記台車には、例えば積み込んだ荷が台車から滑り落ちないようにストッパーが搭載されているものがある。このストッパーは台車に荷を搭載する時や荷を積み降ろす時には障害とならないように格納可能に電気制御される場合がある。このように台車には電気により制御される付加機能が搭載されている場合が少なくない。
【0005】
このような付加機能を制御する電気信号や電源の配線(以下、単に「配線」ともいう)を、芯体コードと兼用する歯付ベルトが提案されている(特開2019-60403号公報参照)。この歯付ベルトでは、芯体コードを通電可能な材質とすることで、給電ケーブルとしても兼用しているので、歯付ベルトの厚みの増加を抑止しつつ、配線を歯付ベルト内に埋設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-60403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
歯付ベルトの芯体コードを配線としても用いる場合、芯体コードの本数は歯付ベルトに必要な強度により決まる本数と、必要な配線数とのうちの多い方の本数で決まることとなる。このため、配線数が多くなると芯体コードの本数は配線数で決まることとなり、歯付ベルトの幅が不必要に大きくなり易い。歯付ベルトの幅が不必要に大きくなると、この歯付ベルトを組み込んだ装置、例えば台車の小型化が困難となる場合がある。
【0008】
本発明はこのような不都合に鑑みてなされたものであり、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる歯付ベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の歯付ベルトは、ベルト本体と、上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部と、上記ベルト本体の幅方向に間隔を開け、上記長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設される複数の芯体コードとを備え、上記複数の芯体コードが、導電性を有する通電用芯体コードと、上記通電用芯体コードより単位長当たりの電気抵抗が高い補強用芯体コードとを有する。
【0010】
当該歯付ベルトでは、通電用芯体コードの単位長当たりの電気抵抗が補強用芯体コードよりも低いので通電に必要な電気抵抗を確保するための通電用芯体コードの並列数を下げることができる。また、当該歯付ベルトは、主に補強用芯体コードで強度を維持することができる。従って、当該歯付ベルトは、必要な芯体コード数を低減できるため、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【0011】
上記通電用芯体コードの材質が上記補強用芯体コードの材質と異なるとよい。このように通電用芯体コードの材質を補強用芯体コードの材質と異なるものとすることで、通電用芯体コードとして電気抵抗率の低いものを採用することが可能となるため、必要な電気抵抗を確保するための通電用芯体コードの並列数を下げ易い。
【0012】
上記通電用芯体コードの平均径が上記補強用芯体コードの平均径より大きいとよい。このように通電用芯体コードの平均径を補強用芯体コードの平均径より大きくすることで、通電用芯体コードの単位長当たりの電気抵抗を容易に下げることができる。
【0013】
上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードが補強用芯体コードであるとよい。上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードは、当該歯付ベルトの側面からの擦れによる摩耗等により電気抵抗が経年増加するおそれがある。このため、上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードを補強用芯体コードとし、電気信号あるいは電源の配線に用いないことで、配線としての信頼性を高めることができる。
【0014】
上記複数の芯体コードが上記通電用芯体コードを複数有し、隣接する通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードが配置されているとよい。このように隣接する通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードを配置することで、当該歯付ベルトの強度が局所的に低下することを抑止できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、当該歯付ベルトは、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る歯付ベルトを示す模式的斜視図である。
図2図1の歯付ベルトのA-A線での模式的断面図である。
図3図1の歯付ベルトのB-B線での模式的断面図である。
図4図3とは異なる歯付ベルトを示す模式的断面図である。
図5図3及び図4とは異なる歯付ベルトを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0018】
図1図2及び図3に示す歯付ベルト1は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部20と、上記長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設される9本の芯体コード30とを備える。
【0019】
<ベルト本体>
ベルト本体10の主成分は、ゴム又は樹脂である。上記ゴムとしては、エチレン-プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)等のエチレン-α-オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)等を挙げることができる。上記ゴムは、これらのうちの1種でもよいが、2種以上をブレンドしたものであってもよい。上記樹脂としては、熱可塑性のポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を挙げることができる。ベルト本体10の主成分としては、低発塵性の観点から樹脂が好ましく、中でも耐摩耗性に優れる熱可塑性ウレタンが好ましい。ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味し、好ましくは含有量が50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の成分をいう。
【0020】
ベルト本体10の平均厚さは、当該歯付ベルト1に要求される強度等により適宜決定されるが、例えば1mm以上10mm以下とできる。
【0021】
ベルト本体10の長さは、当該歯付ベルト1の用途に応じて適宜決定される。なお、当該歯付ベルト1は、両端部を有するオープンベルトとして主に用いられる。
【0022】
ベルト本体10は、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、防曇剤、難燃剤、表面調整剤、顔料、フィラー、ワックス等が挙げられる。
【0023】
<歯部>
歯部20は、断面が台形、三角形、半円形、山形、波形、正規分布曲線状等の凸条部である。また、歯部20は、その稜線(軸方向)がベルト本体10の幅方向と一致するように配設されている。
【0024】
歯部20の平均高さ及び歯部20間のピッチは、当該歯付ベルト1の用途に応じて適宜決定される。歯部20の平均高さは、例えば1.0mm以上10mm以下とできる。また、歯部20間のピッチは、例えば2mm以上25mm以下とできる。
【0025】
歯部20の主成分は、ベルト本体10と同様とできる。また、歯部20にはベルト本体10と同様の添加剤を含めてもよい。
【0026】
<芯体コード>
9本の芯体コード30は、円形断面を有する線状体である。9本の芯体コード30は、図3に示すように、ベルト本体10の幅方向に並べられている。
【0027】
9本の芯体コード30は、導電性を有する4本の通電用芯体コード31と、通電用芯体コード31より単位長当たりの電気抵抗が高い5本の補強用芯体コード32とを有する。
【0028】
(材質)
通電用芯体コード31の材質としては、スチールや銅を挙げることができる。中でも電気抵抗率の低い銅が好ましい。
【0029】
また、通電用芯体コード31は、上述のスチールや銅といった導体の周囲が絶縁層で被覆されたものとすることもできる。このように絶縁層で被覆することで、仮に隣接する芯体コード30と接触した場合であっても、通電用芯体コード31の電気信号あるいは電源としての機能に影響が生じ難い。なお、上記絶縁層の主成分としては、例えばエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)を挙げることができる。
【0030】
補強用芯体コード32は、通電用芯体コード31より単位長当たりの電気抵抗が高い限り、導電性を有してもよいが、絶縁性を有することが好ましい。補強用芯体コード32を絶縁性を有するものとすることで、仮に通電用芯体コード31と接触した場合であっても、通電用芯体コード31の電気信号あるいは電源としての機能に影響が生じ難い。従って、通電用芯体コード31と補強用芯体コード32との間隔を狭くすることが可能であり、当該歯付ベルト1の幅の増加を抑止し易い。
【0031】
導電性を有する補強用芯体コード32の材質としては、通電用芯体コード31と同様の材質を挙げることができる。また、絶縁性を有する補強用芯体コード32の材質としては、アラミド、ガラス、ポリエステル等を挙げることができる。
【0032】
通電用芯体コード31の材質と補強用芯体コード32の材質とを同じものとすることもできるが、通電用芯体コード31の材質は、補強用芯体コード32の材質と異なるとよい。このように通電用芯体コード31の材質を補強用芯体コード32の材質と異なるものとすることで、通電用芯体コード31として電気抵抗率の低いものを採用することが可能となるため、必要な電気抵抗を確保するための通電用芯体コード31の並列数を下げ易い。中でも、通電用芯体コード31の材質を電気抵抗率の低い銅とし、補強用芯体コード32の材質を絶縁性を有するアラミドとすることが好ましい。
【0033】
また、通電用芯体コード31と補強用芯体コード32とがともに導電性を有する場合にあっては、通電用芯体コード31が絶縁層で被覆された銅線である銅コードであり、補強用芯体コード32がスチール線を有するスチールコードであることが好ましい。
【0034】
銅は単位長当たりの電気抵抗が低く、通電用途に好適である。一方、銅線は屈曲し易いため、絶縁層で被覆した銅コードとすることで、断線等の不具合が生じることを抑止できる。また、スチールコードは剛性が高く、径が小さいものであっても強度を維持することができる。このスチールコードは被覆層を有さない構成とすることができる。通電用芯体コード31である銅コードが周囲を被覆する絶縁層を有しているので、被覆層を有さないスチールコードが仮に通電用芯体コード31と接触した場合であっても、通電用芯体コード31の電気信号あるいは電源としての機能に影響が生じ難い。このようにスチールコードは、絶縁層を設ける必要がなく、かつ径を小さくできるので、特に幅方向のスペースを必要としない。従って、補強用芯体コード32をスチールコードとすることで、通電用芯体コード31の配設領域を広く確保しつつ、当該歯付ベルトの強度を維持することができる。以上から、通電用芯体コード31を絶縁層で被覆された銅コードとし、補強用芯体コード32をスチールコードとすることで、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ当該歯付ベルの幅の増加をさらに抑止できる。
【0035】
上記銅コードの絶縁層の主成分としては、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が好ましい。
【0036】
また、上記銅コードの銅線及び上記スチールコードのスチール線は、その一方又は両方が撚線であってもよい。
【0037】
(平均径)
通電用芯体コード31の平均径の下限としては、0.2mmが好ましく、0.5mmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。一方、通電用芯体コード31の平均径の上限としては、2.5mmが好ましく、1.5mmがより好ましい。通電用芯体コード31の平均径が上記下限未満であると、通電用芯体コード31の電気抵抗が十分に下げられず、電気信号あるいは電源として機能を十分に果たさないおそれがある。逆に、通電用芯体コード31の平均径が上記上限を超えると、当該歯付ベルト1の幅が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0038】
補強用芯体コード32の平均径の下限としては、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましく、0.5mmがさらに好ましい。一方、補強用芯体コード32の平均径の上限としては、2mmが好ましく、1mmがより好ましい。補強用芯体コード32の平均径が上記下限未満であると、補強用芯体コード32の強度が不足するおそれがある。逆に、補強用芯体コード32の平均径が上記上限を超えると、当該歯付ベルト1の幅が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0039】
通電用芯体コード31の平均径は、補強用芯体コード32の平均径より大きいとよい。このように通電用芯体コード31の平均径を補強用芯体コード32の平均径より大きくすることで、通電用芯体コード31の単位長当たりの電気抵抗を容易に下げることができる。特に、通電用芯体コード31の材質と補強用芯体コード32の材質とが同じものである場合は、通電用芯体コード31の平均径を補強用芯体コード32の平均径より大きくすることで、単位長当たりの電気抵抗を下げることが可能となる。
【0040】
(配列)
9本の芯体コード30(4本の通電用芯体コード31及び5本の補強用芯体コード32)は、図3に示すように、ベルト本体10の一方の面(歯部20が配設されている面)から芯体コード30の外周へ至る最短距離が一定となるように並べられている。このような配列とすることで、9本の芯体コード30を下方から支持しつつ、押出成形することで容易にベルト本体10を製造することができる。
【0041】
当該歯付ベルト1の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30が補強用芯体コード32であるとよい。上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30は、当該歯付ベルト1の側面からの擦れによる摩耗等により電気抵抗が経年増加するおそれがある。このため、上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30を補強用芯体コード32とし、電気信号あるいは電源の配線に用いないことで、配線としての信頼性を高めることができる。
【0042】
最も外側に配設される補強用芯体コード32の中心軸と、これと近接するベルト本体10の側面との平均距離(「補強用芯体コード32とベルト本体10の側面との平均距離」ともいう)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記補強用芯体コード32とベルト本体10の側面との平均距離の上限としては、1mmが好ましく、0.7mmがより好ましい。上記補強用芯体コード32とベルト本体10の側面との平均距離が上記下限未満であると、当該歯付ベルト1の製造時に、最も外側に配設される補強用芯体コード32がベルト本体10の側面から露出するおそれがある。逆に、上記補強用芯体コード32とベルト本体10の側面との平均距離が上記上限を超えると、ベルト本体10の側縁が駆動時にばたつき易くなり、芯体コード30による駆動の正確性の向上効果が不十分となるおそれがある。
【0043】
また、隣接する通電用芯体コード31の間に補強用芯体コード32が配置されているとよい。このように隣接する通電用芯体コード31の間に補強用芯体コード32を配置することで、当該歯付ベルト1の強度が局所的に低下することを抑止できる。
【0044】
つまり、図3に示すように、4本の通電用芯体コード31及び5本の補強用芯体コード32は、幅方向の外側から補強用芯体コード32、通電用芯体コード31の順に交互に配列されている。このような配列とすることで、特に5本の補強用芯体コード32が絶縁性を有する場合、芯体コード30の間隔を狭くすることが容易となる。
【0045】
隣接する芯体コード30の平均間隔(芯体コード30の中心軸間の当該歯付ベルト1の幅方向の距離)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記平均間隔の上限としては、4mmが好ましく、1mmがより好ましい。上記平均間隔が上記下限未満であると、複数の通電用芯体コード31間の絶縁性が十分に確保できないおそれや、当該歯付ベルト1の可撓性が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均間隔が上記上限を超えると、当該歯付ベルト1が幅方向に不要に大きくなるおそれや、芯体コード30による当該歯付ベルト1の強度、耐久性、駆動の正確性等の向上効果が不十分となるおそれがある。
【0046】
<歯付ベルトの製造方法>
当該歯付ベルト1は、例えば押出成形工程と、歯部形成工程とを備える製造方法により製造することができる。
【0047】
(押出成形工程)
押出成形工程では、押出成形により芯体コード30が埋設されたゴム又は樹脂組成物を主成分とする押出成形体を形成する。
【0048】
具体的には、複数の芯体コード30を押出機のシリンダ先端に取り付けたクロスヘッドに挿通しながら、その両側を溶融したゴム又は樹脂組成物で被覆するように押出成形する。あるいは、溶融押出したゴム又は樹脂組成物と複数の芯体コード30とを一対のロールで挟み込み加圧することで、複数の芯体コード30をゴム又は樹脂組成物内に埋め込んでもよい。
【0049】
押出成形においてゴム又は樹脂組成物を溶融させるための加熱温度は、ゴム又は樹脂の種類や硬化剤の利用の有無等に依存するが、上記加熱温度の下限としては、150℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、250℃が好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、ゴム又は樹脂組成物が十分に溶融せず、押出成形が困難となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、押出成形体が不要に熱くなるため、冷却時間が不要に長くなり、当該歯付ベルト1の製造効率が低下するおそれがある。
【0050】
(歯部形成工程)
歯部形成工程では、上記押出成形工程後の押出成形体に歯部20を形成する。これにより当該歯付ベルト1を得ることができる。
【0051】
具体的には、例えば歯部20に対応した凹部を外周面に有する円筒状の金型ロールを準備し、上記押出成形体の一方の面を加熱しながら上記金型ロールに巻き付けることで、歯部20を形成できる。
【0052】
歯部形成工程での加熱温度としては、押出成形体が溶融して一方の面に歯部20を形成できる温度に応じて適宜決定されるが、上記加熱温度の下限としては、150℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、250℃が好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、押出成形体の軟化が不足し、歯部20の形成が困難となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、当該歯付ベルト1全体が熱により変形し易くなるおそれがある。
【0053】
<利点>
当該歯付ベルト1では、通電用芯体コード31の単位長当たりの電気抵抗が補強用芯体コード32よりも低いので通電に必要な電気抵抗を確保するための通電用芯体コード31の並列数を下げることができる。また、当該歯付ベルト1は、主に補強用芯体コード32で強度を維持することができる。従って、当該歯付ベルト1は、必要な芯体コード数を低減できるため、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数30を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【0054】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0055】
上記実施形態では、幅方向の外側から補強用芯体コード32、通電用芯体コード31の順に交互に配列されている場合を説明したが、通電用芯体コード31及び補強用芯体コード32の配列方法はこれに限定されるものではない。以下にいくつかの変形例を説明する。なお、各変形例で図3に示す歯付ベルト1と同様である構成要素については、同一符号を付して詳細説明を省略する。
【0056】
<変形例1>
図4に示す歯付ベルト2は、10本の芯体コード30を備え、10本の芯体コード30が、導電性を有する4本の通電用芯体コード31と、通電用芯体コード31より単位長当たりの電気抵抗が高い6本の補強用芯体コード32とを有する。
【0057】
当該歯付きベルト2では、幅方向の両側に同数(3本ずつ)の補強用芯体コード32が配列され、中央部に全ての(4本の)通電用芯体コード31が集められている。
【0058】
通電用芯体コード31の平均径を補強用芯体コード32の平均径よりも大きく取る場合にあっては、これら2種類の芯体コード30を交互に並べると、その平均径の差によりベルト本体10の表面に凹凸が生じ易くなるおそれがある。このように中央部に通電用芯体コード31をまとめて配置することで、上述の凹凸を生じ難くすることができる。
【0059】
また、当該歯付ベルト2のように通電用芯体コード31が連続して配列される場合、通電用芯体コード31は、導体の周囲が絶縁層で被覆されたものとすることが好ましい。
【0060】
<変形例2>
図5に示す歯付ベルト3は、11本の芯体コード30を備え、11本の芯体コード30が、導電性を有する4本の通電用芯体コード31と、通電用芯体コード31より単位長当たりの電気抵抗が高い7本の補強用芯体コード32とを有する。
【0061】
当該歯付ベルト3では、通電用芯体コード31が2本ずつ並走し、その間に3本の補強用芯体コード32が配置されるとともに、幅方向の両側にも2本ずつの補強用芯体コード32が配置されている。
【0062】
このような構成は、例えば並走する2本の通電用芯体コード31を同一の電気信号あるいは電源として用いる場合に有用な構成である。また、複数の補強用芯体コード32を分散して配置することで、当該歯付ベルト3の強度を確保し易くできる。
【0063】
<その他>
上記実施形態では、特定の本数の芯体コードを備える場合を説明したが、芯体コードの本数は3本以上であれば各実施形態の本数に限定されるものではない。
【0064】
また、通電用芯体コード及び補強用芯体コードの配列パターンは、上述の実施形態に限定されるものではなく、必要な電気信号あるいは電源の配線に応じて適宜選択することができる。
【0065】
上記実施形態では、通電用芯体コードを電気信号あるいは電源の配線として用い、補強用芯体コードを補強に用いる場合を説明したが、配線として用いられない通電用芯体コードがあってもよく、また逆に配線として用いる補強用芯体コードがあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の歯付ベルトは、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3 歯付ベルト
10 ベルト本体
20 歯部
30 芯体コード
31 通電用芯体コード
32 補強用芯体コード
図1
図2
図3
図4
図5