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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20241216BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20241216BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20241216BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20241216BHJP
   G03B 5/06 20210101ALI20241216BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20241216BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20241216BHJP
   H04N 23/63 20230101ALI20241216BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/02 E
G02B7/04 E
G02B7/08 B
G03B5/00 C
G03B5/06
G03B17/14
H04N23/50
H04N23/63
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020176245
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067506
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】中下 大輔
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091027(JP,A)
【文献】特開2015-172745(JP,A)
【文献】特開2012-141516(JP,A)
【文献】特開2012-133185(JP,A)
【文献】特表2007-508586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0149727(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0234198(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0024740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/08
G03B 5/00-5/06
G03B 17/02
G03B 17/14
H04N 23/50
H04N 23/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒内に配置されたレンズと、
前記鏡筒内で前記レンズを光軸に直交するティルト軸回りでティルトさせるティルト手段と、
前記鏡筒の外周において光軸回りで回転操作される第1の操作部材と、
前記第1の操作部材の回転に応じて、前記ティルト軸の前記光軸回りでの向きを変更する変更手段と、
前記レンズをティルトさせるために操作される第2の操作部材とを有し、
前記第2の操作部材は、
前記第1の操作部材上に配置され、かつ前記光軸を通り前記ティルト軸に直交する方向にある位置に配置されて、前記第1の操作部材の回転とともに前記光軸回りで移動し、
前記第2の操作部材の操作方向は、前記光軸に直交する面に関して対称な2方向であることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記ティルト手段は、
前記レンズをティルトさせる駆動力を発生するアクチュエータと、
前記第2の操作部材の操作を検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段により検出された操作に応じて前記アクチュエータを制御する制御手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記ティルト手段は、前記第2の操作部材の操作力によって前記レンズをティルトさせることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記第1の操作部材の回転操作力によって前記ティルト軸を前記光軸回りで回転させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記変更手段は、
前記第1の操作部材の回転位置を検出する回転検出手段と、
前記ティルト軸を前記光軸回りで回転させる駆動力を発生するアクチュエータと、
前記回転検出手段により検出された回転位置に応じて前記アクチュエータを制御する制御手段とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
鏡筒内に配置されたレンズと、
前記鏡筒内で前記レンズを光軸に直交するシフト方向にシフトさせるシフト手段と、
前記鏡筒の外周において光軸回りで回転操作される第1の操作部材と、
前記第1の操作部材の回転に応じて、前記シフト方向の前記光軸回りでの向きを変更する変更手段と、
前記レンズをシフトさせるために操作される第2の操作部材とを有し、
前記第2の操作部材は、
前記第1の操作部材上に配置され、かつ前記光軸を通り前記シフト方向にある位置に配置されて、前記第1の操作部材の回転とともに前記光軸回りで移動し、
前記第2の操作部材の操作方向は、前記光軸に直交する面に関して対称な2方向であることを特徴とするレンズ装置。
【請求項7】
前記シフト手段は、
前記レンズをシフトさせる駆動力を発生するアクチュエータと、
前記第2の操作部材の操作を検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段により検出された操作に応じて前記アクチュエータを制御する制御手段とを有することを特徴とする請求項6に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記シフト手段は、前記第2の操作部材の操作力によって前記レンズをシフトさせることを特徴とする請求項6に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記変更手段は、
前記第1の操作部材の回転位置を検出する回転検出手段と、
前記レンズを互いに異なる2つのシフト方向にシフトさせる駆動力を発生する第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータと、
前記回転検出手段により検出された回転位置に応じて、前記第1および第2のアクチュエータのうち制御するアクチュエータを選択する制御手段とを有することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記第2の操作部材の操作方向は、前記光軸に平行な方向に対して直交する又は傾いた2方向であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記第2の操作部材の操作方向は、前記光軸に平行な2方向であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズ装置が着脱可能に取り付けられる撮像装置であって、
前記第1の操作部材の回転位置に応じて、前記レンズのティルトによりあおり効果が得られる方向と前記あおり効果のうち少なくとも一方を表示する表示部を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置からの光を受光する撮像素子と、
前記第1の操作部材の回転位置に応じて、前記レンズのティルトによりあおり効果が得られる方向と前記あおり効果のうち少なくとも一方を表示する表示部を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
請求項6からのいずれか一項に記載のレンズ装置が着脱可能に取り付けられる撮像装置であって、
前記第1の操作部材の回転位置に応じて、前記レンズのシフトによりあおり効果が得られる方向と前記あおり効果のうち少なくとも一方を表示する表示部を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
請求項6からのいずれか一項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置からの光を受光する撮像素子と、
前記第1の操作部材の回転位置に応じて、前記レンズのシフトによりあおり効果が得られる方向と前記あおり効果のうち少なくとも一方を表示する表示部を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影においてあおり効果が得られるレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを撮像面に対してティルトまたはシフトさせることで、ピントが合う被写体面を撮像面に対して傾ける等のあおり効果を得ることができる。特許文献1には、鏡筒の外周に2つの操作環を有し、第1の操作環の回転操作により鏡筒内のレンズのティルト軸の光軸回りでの向き(回転位置)を変更でき、第2の操作環の回転操作によりレンズのティルト軸回りでのティルト方向を変更できるレンズ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4462357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたレンズ装置では、第2の操作環の回転操作方向が実際のレンズのティルト方向とは一致しないため、ユーザが直感的に第2の操作環を操作することができないおそれがある。
【0005】
しかも、第1の操作環の回転によってティルト軸の向きが変わるため、ユーザは第2の操作環を操作する前に第1の操作環を目視する等してその向きを確認しておく必要がある。さらにティルト軸の向きを調整してレンズをティルトさせる際に、ユーザは第1の操作環から第2の操作環へと手を大きく移動させる必要がある。これらのことからユーザにとって素早い操作が難しい。
【0006】
本発明は、あおり撮影のための操作をユーザが直感的にかつ素早く行うことが可能なレンズ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、鏡筒内に配置されたレンズと、鏡筒内でレンズを光軸に直交するティルト軸回りでティルトさせるティルト手段と、鏡筒の外周において光軸回りで回転操作される第1の操作部材と、第1の操作部材の回転に応じて、ティルト軸の光軸回りでの向きを変更する変更手段と、レンズをティルトさせるために操作される第2の操作部材とを有する。第2の操作部材は、第1の操作部材上に配置され、かつ光軸を通りティルト軸に直交する方向にある位置に配置されて第1の操作部材の回転とともに光軸回りで移動する。第2の操作部材の操作方向は、光軸に直交する面に関して対称な2方向であることを特徴とする。
【0008】
また本発明の一側面としてのレンズ装置は、鏡筒内に配置されたレンズと、鏡筒内でレンズを光軸に直交するシフト方向にシフトさせるシフト手段と、鏡筒の外周において光軸回りで回転操作される第1の操作部材と、第1の操作部材の回転に応じて、シフト方向の光軸回りでの向きを変更する変更手段と、レンズをシフトさせるために操作される第2の操作部材とを有する。第2の操作部材は、第1の操作部材上に配置され、かつ光軸を通りシフト方向に直交する方向にある位置に配置されて第1の操作部材の回転とともに光軸回りで移動する。第2の操作部材の操作方向は、光軸に直交する面に関して対称な2方向であることを特徴とする。なお、上記レンズ装置とともに用いられる撮像装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、あおり撮影のための操作をユーザに直感的にかつ素早く行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のレンズ装置のXY断面図。
図2】実施例1のレンズ装置のYZ断面図。
図3】実施例1において操作リングが0°位置にあるときのレンズ装置のYZ断面図。
図4】実施例1において操作リングが+90°位置にあるときのレンズ装置のYZ断面図。
図5】実施例1における操作リングと操作スイッチの上面図。
図6】実施例1のレンズ装置が装着されたカメラの表示部(図3に対応する状態)を示す図。
図7】実施例1のレンズ装置が装着されたカメラの表示部(図4に対応する状態)を示す図。
図8】実施例2のレンズ装置のYZ断面図。
図9】実施例2のレンズ装置のXY断面図。
図10図9におけるD-D線に沿ったYZ断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施例1であるレンズ装置100の光軸α(X軸)に平行なXY断面を示し、図2はレンズ装置100の光軸αに直交するYZ断面を示している。なお、図1は、図2において光軸αから少しずれたA-A線に沿った断面である。図1において、左側が物体側(前側)、右側が像側(後側)である。
【0013】
レンズ装置100は、光軸αに対してティルトすることであおり効果を生じさせるレンズ11と、該レンズ11を保持する保持枠21と、保持枠21に設けられた保持軸部211を保持穴部311にて保持する案内筒31とを有する。保持軸部211と保持穴部311はそれぞれ、保持枠21と案内筒31における直径方向の2箇所に設けられている。保持枠21は、保持軸部211および保持案部311の中心を通るティルト軸β回りでティルト可能に案内筒31により保持されている。
【0014】
案内筒31の外周上の1箇所であって光軸αからティルト軸βに直交する方向にある位置に駆動部41が固定されている。駆動部41は、光軸αと平行な軸回りで回転するリードスクリュー411を有するモータ(アクチュエータ)であり、保持枠22をティルトさせる駆動力を発生する。案内筒31は、バヨネット結合により光軸α回りで回転可能に固定筒51により保持されている。固定筒51および案内筒31の外周には鏡筒としての外装固定筒101が配置されている。外装固定筒101の後端には、後述する撮像装置(レンズ交換型カメラ)に着脱可能に装着される不図示のレンズマウントが設けられている。また、外装固定筒101の後端には、制御基板102が固定されている。
【0015】
制御基板102には、CPU等により構成される制御部(制御手段)81が実装されているとともに、フレキシブルプリント基板(FPC)721を介してスイッチ操作検出部(操作検出手段)72が接続されている。スイッチ操作検出部72は、後述する操作スイッチ71に対する操作を検出する。
【0016】
外装固定筒101の外周には、光軸α回りにて回転操作可能な操作リング(第1の操作部材)61が配置されている。操作リング61は、連結部62を介して案内筒31と一体回転可能に連結されている。このため、操作リング61が回転操作されると、その回転操作力が案内筒31および保持枠21に伝わってこれらが光軸α回りで回転し、この結果、ティルト軸βも光軸α回りで回転する。このような構成により、操作リング61の回転によりティルト軸βの光軸α回りでの向きを変更する変更手段が実現される。
【0017】
連結部62は、外装固定筒101に周方向180°の範囲に延びるように形成された溝部を貫通している。連結部62がこの溝部の両端と当接することで、操作リング61と案内筒31の光軸α回りでの回転範囲が、図2に示す0°位置を中央とする±90°の範囲に制限される。
【0018】
図3は、操作リング61が図2と同じ0°位置にあるときのレンズ装置100のYZ断面であって、図1中のB-B線に沿った断面を示している。操作リング61が0°位置にあるときは、ティルト軸βは水平方向を向く。図4は、操作リング61が0°位置から時計回り方向の操作端(+90°位置)に回転操作されたときのレンズ装置100のYZ断面(B-B線に沿った断面)を示している。操作リング61が+90°位置および-90°位置にあるときは、ティルト軸βは垂直方向を向く。操作リング61の回転位置は、ポテンショメータやエンコーダ等を用いて構成された不図示のリング回転検出部(回転検出手段)により検出される。
【0019】
なお、操作リング61を0°位置以外の回転位置から0°位置に戻す際にユーザに分かりやすくするために、操作リング61が0°位置に到達した際にクリック感を発生させるクリック機構を設けてもよい。また、操作リング61が±45°位置等の中間位置に到達した際にクリック感を発生させるクリック機構を設けてもよい。
【0020】
操作リング61上の周方向1箇所であって光軸αからティルト軸βに直交する方向にある位置(すなわち駆動部41と同位相)には、操作スイッチ(第2の操作部材)71が配置されている。このため、操作リング61の回転とともに操作スイッチ71および駆動部41も光軸α回りで移動する。例えば、図2および図3に示すように操作リング61が0°位置にあるときには操作スイッチ71および駆動部41も0°位置にあり、図4に示すように操作リング61が+90°位置にあるときは操作スイッチ71および駆動部41も+90°位置にある。同様に、操作リング61が-90°位置にあるときは操作スイッチ71および駆動部41も-90°位置にある。
【0021】
操作スイッチ71は、図5に操作リング61を径方向外側から見たときに、光軸αに直交する面(YZ面)γを挟んだ両側に2つの操作部71A、71Bを有している。操作部71A、71Bのそれぞれにはプッシュスイッチが内蔵されており、それらの操作方向はいずれも光軸αに平行な方向に対して直交する方向(-Y方向)である。ただし、操作スイッチ71は、光軸αに平行な方向に対して直交する又は傾いた方向をそれぞれ操作方向とする2つの操作部を有するシーソー型スイッチでもよいし、光軸αに平行な2方向(±X方向)にスライド操作可能なスライド型スイッチでもよい。さらに図2おける操作リング61の接線方向に延びる軸回りにて前側と後側(±X方向)に回転操作が可能なダイヤル型スイッチを用いてもよい。このように、操作スイッチ71は、その操作方向が光軸αに直交するYZ面γに関して対称な2方向である操作部材であればよい。
【0022】
案内筒31には、スイッチ操作検出部72が固定されている。スイッチ操作検出部72は、操作スイッチ71の操作部71A、71Bの操作をそれぞれ検出する検出部72A、72Bを有する。なお、スイッチ操作検出部72を操作リング61に固定してもよい。スイッチ操作検出部72と制御基板102を接続するFPC721は、光軸回りの周方向の1箇所に、延びる方向が反転する曲げ部を有しており、操作リング61の回転操作に伴って曲げ部が周方向に移動することで操作リング61のスムーズな回転操作を可能とする。
【0023】
次に、駆動部41により保持枠21(レンズ11)をティルト駆動するティルト機構(あおり手段)の構成について説明する。保持枠21上の周方向における駆動部41と同位相の位置には、駆動受け部212が設けられている。駆動受け部212には、駆動部41のリードスクリュー411の軸方向に直交する方向に延びる溝部が形成されており、この溝部にリードスクリュー411に噛み合うラック412に設けられたピン部が係合している。
【0024】
駆動部41が駆動されてリードスクリュー411が回転すると、ラック412がリードスクリュー411の軸方向(光軸αに平行な方向)に移動し、これにより駆動受け部212を有する保持枠21がティルト軸βを中心としてティルト駆動される。
操作スイッチ71の操作部71Aが操作されると、スイッチ操作検出部72の検出部72Aがこれを検出して信号を制御部81に出力する。該信号を受けた制御部81は、駆動部41の駆動を制御してリードスクリュー411を正転方向に回転させる。これにより、保持枠21は図1に示すA方向にティルトする。操作スイッチ71の操作部71Bが操作されると、スイッチ操作検出部72の検出部72Bがこれを検出して信号を制御部81に出力する。該信号を受けた制御部81は、駆動部41の駆動を制御してリードスクリュー411を逆転方向に回転させる。これにより、保持枠21は図1に示すB方向にティルトする。こうしてレンズ11が撮像装置の撮像面に対してティルトすることで、あおり効果を得ることができる。
【0025】
ティルト軸βは光軸α回りの180°の範囲で回転可能であり、かつレンズ11が2方向(A、B方向)にティルト可能であるため、撮像面上における光軸α回りのどの位相であっても2方向のあおり効果を得ることが可能である。
【0026】
また、制御部81は、操作スイッチ71の(操作部71A、71B)の操作の時間長さに応じて駆動部41の駆動量を制御する。これにより、レンズ11のティルト量、つまりはあおり効果の度合いを調整することができる。
【0027】
なお、本実施例では、レンズ11が外装固定筒101内に配置されており、外装固定筒101はレンズ11がティルトしても外観が変わらないため、ユーザにレンズ11のティルト軸βがどの方向に延びているかを知らせる構成が必要である。操作リング61やその近傍にティルト軸βが延びる方向が目視で分かる指標を設けることもできるが、これではユーザは被写体から目を離してその指標を見る必要がある。
【0028】
本実施例では、操作リング61上における光軸αからティルト軸βに直交する方向にある位置に操作スイッチ71を設けている。このため、ユーザは操作スイッチ71の光軸α回りでの位置からティルト軸βの向き、言い換えればあおり効果が得られる光軸α回りでの方向(位相)を、被写体から目を離さなくても容易に知ることができる。しかも、操作リング61上に操作スイッチ71を設けることで、操作スイッチ71に手を掛けて操作リング61を回転操作することもでき、操作リング61の回転操作から操作スイッチ71の操作まで手を移動させる必要がない。操作リング61の回転範囲が0°位置から+90°位置と-90°位置までであるため、ユーザは操作スイッチ71に手を置いたまま操作リング61を全回転範囲で回転操作することができる。さらに操作スイッチ71の操作方向を光軸αに直交する面γに関して対称な2方向とすることで、ユーザは該2方向とレンズ11のティルト方向とを直感的に対応付けることができる。
【0029】
したがって、本実施例によれば、ユーザはあおり効果が得られる位相やその位相においてあおり効果を得る方向を変更する際に直感的な操作が可能であり、かつ素早い操作を行うことができる。
【0030】
図6および図7は、レンズ装置100が装着された撮像装置としてのデジタルカメラ300の表示部としての背面モニタ301を示している。カメラ300は、レンズ装置100を通して静止画撮影や動画撮影を行うことができる。各図中の背面モニタ301には、カメラ300内の撮像素子を通して撮影されているライブビュー画像(苺の画像)と、あおり効果に関するガイドとなるあおりガイド302が表示されている。カメラ300は、レンズ装置100の制御部81から、リング回転検出部により検出された操作リング61の回転位置を示す情報を通信により受け取り、該回転位置情報に基づいて背面モニタ301にあおりガイド302を表示する。
【0031】
あおりガイド302において、直線302Cは操作リング61の回転操作によって光軸α回りで回転するティルト軸βの向きを示している。図6は操作リング61が0°位置にあってティルト軸βが水平方向を向いた状態を示し、図7は操作リング61が+90°位置にあってティルト軸βが垂直方向を向いた状態を示している。ティルト軸βに直交する方向が、あおり効果が得られる位相である。
【0032】
また、あおりガイド302は、直線302Cを挟んだ両側に、操作スイッチ71の操作部71A、71Bの操作に応じてあおり効果が得られる方向とそのあおり効果を示すあおり効果表示302A、302Bを含んでいる。具体的には、図6において、あおり効果表示302Aは、操作スイッチ71の操作部71Aの操作に対してあおり効果が得られる方向である上側を示す矢印と、あおり効果として上側が前ピン状態となることを示す「上前ボケ」とを表示する。一方、あおり効果表示302Bは、操作スイッチ71の操作部71Bの操作に対してあおり効果が得られる方向である下側を示す矢印と、あおり効果として下側が前ピン状態となることを示す「下前ボケ」を表示する。
【0033】
また図7において、あおり効果表示302Aは、操作スイッチ71の操作部71Aの操作に対してあおり効果が得られる方向である右側を示す矢印と、あおり効果として右側が前ピン状態となることを示す「右前ボケ」を表示する。一方、あおり効果表示302Bは、操作スイッチ71の操作部71Bの操作に対してあおり効果が得られる方向である左側を示す矢印と、あおり効果として左側が前ピン状態となることを示す「左前ボケ」を表示する。
【0034】
操作リング61が-90°位置にあるときもティルト軸βが垂直方向を向くが、このときは操作部71Aの操作に対するあおり効果表示302Aは左向きの矢印と「左前ボケ」を表示し、操作部71Bの操作に対するあおり効果表示302Bは右向きの矢印と「右前ボケ」を表示する。
【0035】
このように、カメラ300にあおりガイド302を表示させることで、ユーザはあおり効果が得られる位相を確認することができ、さらにその位相において得たいあおり効果の方向に対応する操作スイッチ71の操作部(71A、71B)を確認することができる。このため、より素早く正確な操作を行うことができる。なお、おありガイドは、あおり効果が得られる方向とあおり効果のうち少なくとも一方を表示すればよい。
【0036】
また、スイッチ操作検出部72による検出結果をカメラ300に送信し、カメラ300に操作スイッチ71の操作部71A、71Bのうち操作された操作部に対応するあおり効果表示をもう一方のあおり効果表示よりも強調するように色や明るさを変えて表示させてもよい。これにより、より明確にユーザに得られるあおり効果を知らせることができる。
【0037】
また、図6および図7では、カメラ300の背面モニタ301にあおりガイド302を表示する場合を示したが、カメラ300のファインダ内に設けられた表示部に同様のあおりガイドを表示してもよい。
【0038】
また、本実施例では、操作リング61の回転とともにティルト軸βと駆動部41が実際に光軸α回りで回転することで、ティルト軸βの回転位置によらず保持枠21をティルト軸β回りでティルト駆動する場合について説明した。これに対して、保持枠21をY方向に平行な軸回りとZ方向に平行な軸回りでティルト可能に保持し、光軸からY方向とZ方向の位置に設けた2つの駆動部のうち、操作リング61の回転位置に応じて保持枠21をティルト駆動する1又は2つの駆動部を選択するようにしてもよい。この構成では、実際にはティルト軸と駆動部は実際に光軸回りで回転はしないが、ティルト軸の向きを操作リング61の回転により変更する変更手段が構成される。なお、この場合において、レンズの中心位置が光軸に対してずれて軸上の収差が変化したりピント位置がずれるおそれがあるが、ピント位置のずれに対しては移動して不図示のピント位置を調整するレンズがレンズ11のティルトに応じて移動するようにしてもよい。
【0039】
また本実施例では、操作スイッチ71の操作に応じて制御されるアクチュエータとしての駆動部41を用いて保持枠21をティルトさせる場合について説明した。これに対して、第2の操作部材として図2における操作リング61の接線方向に延びる軸回りにて前側および後側に回転操作が可能なダイヤルを設け、該ダイヤルの回転をギアを介して保持枠21に伝達してこれをティルトさせるようにしてもよい。この場合、ユーザがダイヤルを回転させる操作力で保持枠21をティルトさせることになるため、駆動部41は不要となる。
【0040】
さらに本実施例では、操作リング61の回転操作力によって案内筒31および保持枠21(つまりはティルト軸β)が光軸α回りで回転される場合について説明した。これに対して、前述したリング回転検出部によって操作リング61の回転位置を検出し、制御部がその検出結果に応じて案内筒31および保持枠21を光軸回りで回転させる駆動力を発生するアクチュエータを制御するようにしてもよい。
【実施例2】
【0041】
図8は本発明の実施例2であるレンズ装置200の光軸α(X軸)に直交するYZ断面を示している。図9はレンズ装置200の光軸αに平行なXY断面を示している。なお、図9は、図8において光軸αから少しずれC-C線に沿った断面である。図9において、左側が物体側(前側)、右側が像側(後側)である。
【0042】
レンズ装置200は、光軸αに直交する方向にシフトすることであおり効果を生じさせるレンズ12と、該レンズ12を保持する保持枠22と、保持枠22をシフト可能に保持するベース部材25とを有する。レンズ12があおり効果を生じさせるためにシフトする方向(以下、シフト方向という)は、該レンズ12の1つの直径方向である。本実施例では、レンズ12をシフトさせることで、実施例1のようにレンズをティルトさせたときと同様なあおり効果としてのティルト効果が得られる。レンズ12をシフト方向に駆動する駆動部23については後述する。
【0043】
ベース部材25の周方向3箇所には軸部251が設けられており、ベース部材25はこれら軸部251が固定筒52の周方向3箇所に設けられた保持穴部521に嵌合することで固定筒52により保持される。
【0044】
固定筒52の外周には、鏡筒としての外装固定筒201が配置されている。外装固定筒201の外周には、実施例1と同様に操作リング(第1の操作部材)61が光軸α回りで回転操作可能に配置されている。
【0045】
図8および図9は、操作リング61が0°位置にあるときのレンズ装置100のYZ断面およびXZ断面を示している。本実施例でも、実施例1と同様に、操作リング61の光軸α回りでの回転範囲が図8に示す0°位置を中央とする±90°の範囲に制限される。
【0046】
外装固定筒201の後端には、実施例1に示したカメラ300に着脱可能に装着される不図示のレンズマウントが設けられている。また、外装固定筒101の後端には、実施例1と同様に制御部81が実装され、かつFPC721を介してスイッチ操作検出部72が接続された制御基板102が固定されている。本実施例では、制御基板102には、FPC631を介して、操作リング61の回転位置を検出するリング回転検出部63も接続されている。
【0047】
操作リング61上の周方向1箇所であって光軸αからシフト方向にある位置には、操作スイッチ(第2の操作部材)71が配置されている。このため、操作リング61の回転とともに操作スイッチ71も光軸α回りで移動する。例えば、図8および図9に示すように操作リング61が0°位置にあるときには操作スイッチ71も0°位置にあり、操作リング61が+90°位置や-90°位置にあるときは操作スイッチ71も+90°位置や-90°位置にある。
【0048】
操作スイッチ71は、実施例1において図5に示したように、光軸αに直交する面γを挟んだ両側に2つの操作部71A、71Bを有し、面γに関して対称な2方向に操作可能である。外装固定筒201には、スイッチ操作検出部72が固定されている。スイッチ操作検出部72は、実施例1と同様に、操作スイッチ71の操作部71A、71Bの操作をそれぞれ検出する検出部72A、72Bを有する。
【0049】
次に、保持枠22(レンズ12)をシフト駆動するあおり機構(あおり手段)の構成について説明する。図9に示すように、保持枠22にはコイル231が固定されており、ベース部材25におけるコイル231を挟む前後の位置にはマグネット232が固定されている。コイル231とマグネット232によりボイスコイル型アクチュエータとしての第1の駆動部(第1のアクチュエータ)23が構成される。制御部81が不図示のFPCを介してコイル231に通電すると、コイル231とマグネット232との間に発生した電磁力(駆動力)によって保持枠22がシフト駆動される。
【0050】
本実施例では、光軸αからY方向の位置に設けられた第1の駆動部23とは光軸α回りで90°位相が異なるZ方向の位置に、第1の駆動部23と同じ構成を有する第2の駆動部(第2のアクチュエータ:図示せず)が設けられている。第1の駆動部23によって保持枠22が±Y方向にシフト駆動され、第2の駆動部によって保持枠22が±Z方向にシフト駆動される。第1の駆動部23と第2の駆動部により、保持枠22を±Y方向と±Z方向に対して斜めの方向にシフト駆動することができる。
【0051】
図8に示すように操作リング61が0°位置にあることがリング回転検出部63により検出され、スイッチ操作検出部72により操作スイッチ71の操作が検出されると、制御部81は第1の駆動部23のコイル231に通電する。これにより、保持枠22は±Y方向にシフト駆動される。操作リング61が+90°位置や-90°位置にあることがリング回転検出部63により検出され、スイッチ操作検出部72により操作スイッチ71の操作が検出されると、制御部81は第2の駆動部のコイルに通電する。これにより、保持枠22は±Z方向にシフト駆動される。操作リング61が0°位置と±90°位置との間にあることがリング回転検出部63により検出され、スイッチ操作検出部72により操作スイッチ71の操作が検出されると、制御部81は第1の駆動部23のコイル231と第2の駆動部のコイルに通電する。これにより、保持枠22は±Y方向と±Z方向に対して斜めの方向にシフト駆動される。このような構成と制御によって、操作リング61の回転に応じてレンズ12のシフト方向の光軸α回りでの向き(位相)を変更する変更手段が実現される。
【0052】
また、制御部81は、操作スイッチ71の操作の時間長さに応じて各駆動部の駆動量を制御する。これにより、レンズ12のシフト量、つまりはティルト効果の度合いを調整することができる。
【0053】
図10は、図9に示すレンズ装置200のD-D線に沿ったYZ断面を示している。前述したリング回転検出部63は、外装固定筒201の外周に周方向に延びて固定された固定部と、端子保持部材612を介して操作リング61に固定された検出端子とを有する。リング回転検出部63は、操作リング61の回転とともに検出端子が固定部上を移動することで、検出端子の位置、つまりは操作リング61の回転位置を検出する。
【0054】
なお、FPC721とFPC631はそれぞれ、光軸α回りの周方向の1箇所に、延びる方向が反転する曲げ部を有しており、操作リング61の回転操作に伴って曲げ部が周方向に移動することで操作リング61のスムーズな回転操作を可能とする。FPC721は、板金により形成されて外装固定筒201に固定されたFPC支持部材611によって支持されている。FPC631は、外装固定筒201により支持されている。
【0055】
本実施例では、操作リング61上における光軸αからシフト方向にある位置に操作スイッチ71を設けることで、ユーザは操作スイッチ71の光軸α回りでの位置から、光軸α回りにおいてあおり効果が得られる位相を、被写体から目を離さなくても容易に知ることができる。しかも、実施例1と同様に、操作リング61上に操作スイッチ71を設けることで、操作スイッチ71に手を掛けて操作リング61を回転操作することもでき、操作リング61の回転操作から操作スイッチ71の操作まで手を移動させる必要がない。さらに、実施例1と同様に、操作スイッチ71の操作方向を光軸αに直交する面γに関して対称な2方向とすることで、ユーザは該2方向とレンズ12のシフトによるティルト効果が得られる方向とを直感的に対応付けることができる。
【0056】
したがって、本実施例においても、ユーザはあおり効果が得られる位相やその位相においてあおり効果を得る方向を変更する際に直感的な操作が可能であり、かつ素早い操作を行うことができる。
【0057】
なお、本実施例においても、カメラに、実施例1にて図6および図7を用いて説明したあおりガイドと同様なガイド表示を行わせてもよい
また、本実施例では、操作スイッチ71の操作に応じて制御されるアクチュエータとしての第1の駆動部23と第2の駆動部により保持枠22をシフトさせる場合について説明した。これに対して、第2の操作部材として図8における操作リング61の接線方向に延びる軸回りにて前側および後側に回転操作が可能なダイヤルを光軸からY方向とZ方向にある位置に設けてもよい。そして、これらダイヤルの回転をギアを介して保持枠22に伝達してこれを±Z方向と±Y方向にシフトさせてもよい。この場合、ユーザがダイヤルを回転させる操作力で保持枠22をシフトさせることになるため、第1の駆動部23と第2の駆動部は不要となる。
【0058】
また、上記各実施例の構成に対して、あおり効果を得るためにティルトまたはシフトするレンズとは別に、あおり効果を得る際に発生する収差を補正するためにティルトまたはシフトするレンズを設けてもよい。
【0059】
さらに上記各実施例ではレンズ装置が交換レンズとしてカメラに着脱可能である場合について説明したが、同様の構成のレンズ装置をレンズ一体形カメラに固定してもよい。
【0060】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
11、12 レンズ
101、201 外装固定筒(鏡筒)
61 操作リング(第1の操作部材)
71 操作スイッチ(第2の操作部材)
100、200 レンズ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10