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  • 特許-画像形成方法および画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】画像形成方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20241216BHJP
   G03G 11/00 20060101ALI20241216BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/087 325
G03G11/00
G03G15/20
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2020176802
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022042917
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2020148582
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆行
(72)【発明者】
【氏名】植地 正樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】平井 規晋
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 省伍
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124432(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/124433(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/124434(WO,A1)
【文献】特開2011-150285(JP,A)
【文献】国際公開第2020/255586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
G03G 11/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラム上のトナーであって、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を含有するトナーを、シートに転写する転写工程と、
前記第1結着樹脂、前記第2結着樹脂および前記第3結着樹脂を軟化させることができる定着液を、前記トナーが転写された前記シートに付与する付与工程と、
を含み、
前記第1結着樹脂は、1,4-ブタンジオールを含有する第1アルコール成分と、多価カルボン酸を含有する第1カルボン酸成分との縮合物であり、前記第1アルコール成分中の前記1,4-ブタンジオールのモル比率が30mol%以上であり、
前記第2結着樹脂は、炭素数2から6の直鎖ジオールを含有する第2アルコール成分と、多価カルボン酸を含有する第2カルボン酸成分との縮合物であり、
前記第3結着樹脂は、ポリスチレン樹脂であり、
前記第1結着樹脂の軟化温度を第1軟化温度と定義し、
前記第2結着樹脂の軟化温度を第2軟化温度と定義し、
前記第3結着樹脂の軟化温度を第3軟化温度と定義し、
前記第1結着樹脂および前記第2結着樹脂の総質量に対する前記第1結着樹脂の質量の割合を第1含有割合と定義し、
前記第1結着樹脂および前記第2結着樹脂の総質量に対する前記第2結着樹脂の質量の割合を第2含有割合と定義した場合、
前記第3軟化温度は、前記第1軟化温度と前記第1含有割合との積と、前記第2軟化温度と前記第2含有割合との積との和よりも低いことを特徴とする、画像形成方法。
【請求項2】
前記第1アルコール成分中の前記1,4-ブタンジオールのモル比率が65mol%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記第1アルコール成分中の前記1,4-ブタンジオールのモル比率が53mol%以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記第1結着樹脂は、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有さないことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記第1結着樹脂は、アモルファスであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記第1アルコール成分は、分岐鎖ジオールを含有することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記分岐鎖ジオールは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物であることを特徴とする、請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、およびビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物の少なくとも一方であることを特徴とする、請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物であることを特徴とする、請求項8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記第1アルコール成分は、前記1,4-ブタンジオール、および、前記ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のみを含有し、
前記第1カルボン酸成分は、前記多価カルボン酸のみを含有することを特徴とする、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記第1アルコール成分中において、前記1,4-ブタンジオールに対する前記ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比は、35/65以上、70/30以下であることを特徴とする、請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記第1アルコール成分中の前記1,4-ブタンジオールと前記ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物との総量に対する前記多価カルボン酸のモル比は、80/100以上、90/100以下であることを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記トナーは、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有することを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記トナーの前記吸熱ピークの温度は、50℃以上、250℃以下であることを特徴とする、請求項13に記載の画像形成方法。
【請求項15】
前記トナーは、示差走査熱量測定において、前記吸熱ピークよりも低温の発熱ピークを有することを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の画像形成方法。
【請求項16】
前記トナーの前記吸熱ピークの温度は、120℃以上、200℃以下であり、
前記トナーの前記発熱ピークの温度は、120℃未満であることを特徴とする、請求項15に記載の画像形成方法。
【請求項17】
前記第2結着樹脂は、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有することを特徴とする、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項18】
前記第2結着樹脂の前記吸熱ピークの温度は、50℃以上、250℃以下であることを特徴とする、請求項17に記載の画像形成方法。
【請求項19】
前記第2結着樹脂は、前記第1結着樹脂と前記第2結着樹脂の総量中に、20質量%以上、80質量%以下、含有されることを特徴とする、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項20】
前記第2アルコール成分は、1,4-ブタンジオールを含有することを特徴とする、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項21】
前記第2アルコール成分は、1,4-ブタンジオールと、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物とを含有することを特徴とする、請求項20に記載の画像形成方法。
【請求項22】
前記定着液は、エステル系軟化剤を含有することを特徴とする、請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項23】
前記付与工程において、前記エステル系軟化剤は、前記第1結着樹脂、前記第2結着樹脂および前記第3結着樹脂を軟化させることを特徴とする、請求項22に記載の画像形成方法。
【請求項24】
前記エステル系軟化剤は、二塩基酸エステルであることを特徴とする、請求項22または請求項23に記載の画像形成方法。
【請求項25】
前記エステル系軟化剤は、炭酸エステルであることを特徴とする、請求項22から請求項24のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項26】
前記炭酸エステルは、炭酸プロピレンであることを特徴とする、請求項25に記載の画像形成方法。
【請求項27】
前記エステル系軟化剤は、脂肪族ジカルボン酸エステルであることを特徴とする、請求項22から請求項26のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項28】
前記脂肪族ジカルボン酸エステルは、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジカルビトールからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項27に記載の画像形成方法。
【請求項29】
前記エステル系軟化剤の沸点は、180℃以上であることを特徴とする、請求項22から請求項28のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項30】
前記多価カルボン酸は、芳香族ジカルボン酸であることを特徴とする、請求項1から請求項29のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項31】
前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸であることを特徴とする、請求項30に記載の画像形成方法。
【請求項32】
感光ドラムと、
前記感光ドラム上のトナーであって、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を含有するトナーを、シートに転写する転写装置と、
前記第1結着樹脂、前記第2結着樹脂および前記第3結着樹脂を軟化させることができる定着液を、前記トナーが転写された前記シートに付与する付与装置と、
を備え、
前記第1結着樹脂は、1,4-ブタンジオールを含有する第1アルコール成分と、多価カルボン酸を含有する第1カルボン酸成分との縮合物であり、前記第1アルコール成分中の前記1,4-ブタンジオールのモル比率が30mol%以上であり、
前記第2結着樹脂は、炭素数2から6の直鎖ジオールを含有する第2アルコール成分と、多価カルボン酸を含有する第2カルボン酸成分との縮合物であり、
前記第3結着樹脂は、ポリスチレン樹脂であり、
前記第1結着樹脂の軟化温度を第1軟化温度と定義し、
前記第2結着樹脂の軟化温度を第2軟化温度と定義し、
前記第3結着樹脂の軟化温度を第3軟化温度と定義し、
前記第1結着樹脂および前記第2結着樹脂の総質量に対する前記第1結着樹脂の質量の割合を第1含有割合と定義し、
前記第1結着樹脂および前記第2結着樹脂の総質量に対する前記第2結着樹脂の質量の割合を第2含有割合と定義した場合、
前記第3軟化温度は、前記第1軟化温度と前記第1含有割合との積と、前記第2軟化温度と前記第2含有割合との積との和よりも低いことを特徴とする、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置は、感光ドラムと、転写装置と、付与装置とを備える(下記特許文献1参照)。転写装置は、感光ドラムからシートにトナーを転写する。付与装置は、定着液を、シートに転写されたトナーに付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-68098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような画像形成装置において、定着液がシート上のトナーに付与されてからトナーがシートに定着するまでの時間を短くすること、すなわち、定着速度の向上が望まれている。
【0005】
本開示の目的は、定着速度の向上を図ることができる画像形成方法、および、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の画像形成方法は、転写工程と、付与工程とを含む。転写工程は、感光ドラム上のトナーをシートに転写する。トナーは、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を含有する。付与工程は、定着液を、トナーが転写されたシートに付与する。定着液は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を軟化させることができる。
【0007】
第1結着樹脂は、第1アルコール成分と第1カルボン酸成分との縮合物である。第1アルコール成分は、1,4-ブタンジオールを含有する。第1カルボン酸成分は、多価カルボン酸を含有する。第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率は、30mol%以上である。
【0008】
第2結着樹脂は、第2アルコール成分と第2カルボン酸成分との縮合物である。第2アルコール成分は、炭素数2から6の直鎖ジオールを含有する。第2カルボン酸成分は、多価カルボン酸を含有する。
【0009】
第3結着樹脂は、ポリスチレン樹脂である。
【0010】
第1結着樹脂の軟化温度を第1軟化温度と定義し、第2結着樹脂の軟化温度を第2軟化温度と定義し、第3結着樹脂の軟化温度を第3軟化温度と定義し、第1結着樹脂および第2結着樹脂の総質量に対する第1結着樹脂の質量の割合を第1含有割合と定義し、第1結着樹脂および第2結着樹脂の総質量に対する第2結着樹脂の質量の割合を第2含有割合と定義した場合、第3軟化温度は、第1軟化温度と第1含有割合との積と、第2軟化温度と第2含有割合との積との和よりも低い。
【0011】
この画像形成方法によれば、トナーは、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を含有する。第1結着樹脂は、第1アルコール成分と第1カルボン酸成分との縮合物であり、第2結着樹脂は、第2アルコール成分と第2カルボン酸成分との縮合物である。対して、第3結着樹脂は、ポリスチレン樹脂である。さらに、第3軟化温度は、第1軟化温度と第1含有割合との積と、第2軟化温度と第2含有割合との積との和よりも低い。
【0012】
そのため、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂のうち、第3結着樹脂を、定着液で容易に軟化させることができる。
【0013】
その結果、定着速度の向上を図ることができる。
【0014】
さらに、トナーは、1,4-ブタンジオールを30mol%以上含有する第1アルコール成分と、多価カルボン酸を含有する第1カルボン酸成分との縮合物を、第1結着樹脂として含有する。
【0015】
そのため、トナー像が形成され、かつ、定着液が付与された第1のシートの上に、第2のシートが重ねられた場合に、第1のシートの軟化したトナーが第2のシートに写ってしまうことを、抑制できる。
【0016】
(2)第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率は、65mol%以下であってもよい。
【0017】
第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率が65mol%以下であると、第1結着樹脂を定着液で容易に軟化させることができる。
【0018】
(3)第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率は、53mol%以上であってもよい。
【0019】
第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率が53mol%以上であることにより、トナー像が形成され、かつ、定着液が付与された第1のシートの上に、第2のシートが重ねられた場合に、第1のシートの軟化したトナーが第2のシートに写ってしまうことを、より抑制できる。
【0020】
(4)第1結着樹脂は、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有さなくてもよい。
【0021】
(5)第1結着樹脂は、アモルファスであってもよい。
【0022】
第1結着樹脂がアモルファスであることにより、第1結着樹脂を定着液で軟化させることができ、トナーをシートに定着させることができる。
【0023】
(6)第1アルコール成分は、分岐鎖ジオールを含有してもよい。
【0024】
(7)分岐鎖ジオールは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物であってもよい。
【0025】
(8)ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、およびビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物の少なくとも一方であってもよい。
【0026】
(9)ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物であってもよい。
【0027】
(10)第1アルコール成分は、1,4-ブタンジオール、および、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のみを含有してもよい。第1カルボン酸成分は、多価カルボン酸のみを含有してもよい。
【0028】
(11)第1アルコール成分中において、1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比は、35/65以上、70/30以下であってもよい。
【0029】
1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比が35/65以上であると、第1結着樹脂を定着液で容易に軟化させることができる。
【0030】
1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比が70/30以下であると、裏写りを、より抑制できる。
【0031】
(12)第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールとビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物との総量に対する多価カルボン酸のモル比は、85/100以上、90/100以下であってもよい。
【0032】
(13)トナーは、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有してもよい。
【0033】
(14)トナーの吸熱ピークの温度は、50℃以上、250℃以下あってもよい。
【0034】
トナーの吸熱ピークの温度が50℃以上250℃以下であることにより、軟化したトナーによって第1のシートと第2のシートとが貼り付いてしまうことを、より抑制できる。
【0035】
(15)トナーは、示差走査熱量測定において、吸熱ピークよりも低温の発熱ピークを有してもよい。
【0036】
トナーが、吸熱ピークと、吸熱ピークよりも低温の発熱ピークとを有することにより、軟化したトナーによって第1のシートと第2のシートとが貼り付いてしまうことを、より抑制できる。
【0037】
(16)トナーの吸熱ピークの温度は、120℃以上、200℃以下であってもよい。
トナーの発熱ピークの温度は、120℃未満であってもよい。
【0038】
(17)第2結着樹脂は、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有してもよい。
【0039】
(18)第2結着樹脂の吸熱ピークの温度は、50℃以上、250℃以下であってもよい。
【0040】
(19)第2結着樹脂は、第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に、20質量%以上、80質量%以下、含有されてもよい。
【0041】
第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に第2結着樹脂が20質量%以上含有されることにより、貼り付きを抑制できる。
【0042】
第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に第2結着樹脂が80質量%以下含有されることにより、トナー粒子中の第1結着樹脂の割合を確保でき、トナー粒子をシートSに容易に定着させることができる。
【0043】
(20)第2アルコール成分は、1,4-ブタンジオールを含有してもよい。
【0044】
(21)第2アルコール成分は、1,4-ブタンジオールと、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物とを含有してもよい。
【0045】
(22)定着液は、エステル系軟化剤を含有してもよい。
【0046】
(23)定着工程において、エステル系軟化剤は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を軟化させてもよい。
【0047】
(24)エステル系軟化剤は、二塩基酸エステルであってもよい。
【0048】
(25)エステル系軟化剤は、炭酸エステルであってもよい。
【0049】
(26)炭酸エステルは、炭酸プロピレンであってもよい。
【0050】
(27)エステル系軟化剤は、脂肪族ジカルボン酸エステルであってもよい。
【0051】
(28)脂肪族ジカルボン酸エステルは、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジカルビトールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0052】
(29)エステル系軟化剤の沸点は、180℃以上であってもよい。
【0053】
エステル系軟化剤の沸点は、180℃以上であることにより、エステル系軟化剤の蒸発を抑制できる。そのため、エステル系軟化剤の臭気が発生することを抑制できる。
【0054】
(30)多価カルボン酸は、芳香族ジカルボン酸であってもよい。
【0055】
(31)芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸であってもよい。
【0056】
(32)本開示の画像形成装置は、感光ドラムと、転写装置と、付与装置とを備える。転写装置は、感光ドラム上のトナーをシートに転写する。付与装置は、定着液を、トナーが転写されたシートに付与する。
【発明の効果】
【0057】
本開示の画像形成方法および画像形成装置によれば、定着速度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、画像形成装置の概略図である。
図2図2は、定着性の評価に使用するオフライン定着装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
1.画像形成装置1の概略
図1を参照して、画像形成装置1の概略について説明する。
【0060】
画像形成装置1は、本体筐体2と、シート収容部3と、感光ドラム4と、帯電装置5と、露光装置6と、現像装置7と、転写装置8と、付与装置9とを備える。
【0061】
1.1 本体筐体2
本体筐体2は、シート収容部3と、感光ドラム4と、帯電装置5と、露光装置6と、現像装置7と、転写装置8と、付与装置9とを収容する。
【0062】
1.2 シート収容部3
シート収容部3は、シートSを収容可能である。シートSは、例えば、印刷用紙である。シートSは、感光ドラム4に向かって搬送される。
【0063】
1.3 感光ドラム4
感光ドラム4は、ドラム軸A1について回転可能である。ドラム軸A1は、第1方向に延びる。感光ドラム4は、第1方向に延びる。
【0064】
1.4 帯電装置5
帯電装置5は、感光ドラム4の表面を帯電させる。本実施形態では、帯電装置5は、帯電ローラである。帯電装置5は、スコロトロン型帯電器であってもよい。
【0065】
1.5 露光装置6
露光装置6は、帯電装置5によって帯電された感光ドラム4の表面を露光する。露光装置6は、具体的には、レーザースキャンユニットである。露光装置6は、LEDアレイであってもよい。
【0066】
1.6 現像装置7
現像装置7は、感光ドラム4上にトナーを供給する。詳しくは、現像装置7は、露光装置6によって露光された感光ドラム4の表面上にトナーを供給する。現像装置7は、現像筐体71と、現像ローラ72とを有する。
【0067】
1.6.1 現像筐体71
現像筐体71は、トナーを収容可能である。
【0068】
1.6.2 現像ローラ72
現像ローラ72は、現像筐体71内のトナーを感光ドラム4の表面に供給可能である。本実施形態では、現像ローラ72は、感光ドラム4と接触する。現像ローラ72は、所定の間隔をあけて感光ドラム4から離れていてもよい。現像ローラ72は、現像軸A2について回転可能である。現像軸A2は、第1方向に延びる。現像ローラ72は、第1方向に延びる。
【0069】
1.7 転写装置8
転写装置8は、感光ドラム4上のトナーをシートSに転写する。すなわち、画像形成方法は、転写工程を含む。転写工程において、転写装置8は、感光ドラム4上のトナーをシートに転写する。本実施形態では、転写装置8は、転写ローラ81を有する。転写ローラ81は、感光ドラム4と接触する。転写ローラ81は、所定の間隔をあけて感光ドラム4から離れていてもよい。シート収容部4内のシートSは、感光ドラム4と転写ローラ81との間を通って、付与装置9へ搬送される。転写ローラ81は、感光ドラム4上のトナーを、感光ドラム4と転写ローラ81との間を通るシートSに転写する。転写ローラ81は、転写軸A3について回転可能である。転写軸A3は、第1方向に延びる。転写ローラ81は、第1方向に延びる。転写装置8は、転写ベルトを有してもよい。
【0070】
1.8 付与装置9
付与装置9は、定着液を、トナーが転写されたシートSに定着液を付与する。すなわち、画像形成方法は、付与工程を含む。付与工程において、付与装置9は、定着液をトナーが転写されたシートSに付与する。定着液は、トナーをシートSに定着させる。本実施形態では、付与装置9は、定着液を、静電噴霧により、シートSに噴霧する。付与装置9は、定着ローラを備えてもよい。定着ローラは、定着液を、シートSに塗布する。定着液が付与されたシートSは、本体筐体2の上面に排出される。
【0071】
2.トナーの詳細
次いで、トナーの詳細について説明する。
【0072】
トナーは、トナー粒子と、必要により、外添剤とを含有する。
【0073】
2.1 トナー粒子
トナー粒子は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を含有する。すなわち、トナーは、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を含有する。
【0074】
第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂は、トナー粒子のベースである。第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂は、トナー粒子に含まれる成分を結着する。
第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂は、定着液が付与されることによって軟化し、その後、硬化する。これにより、トナーは、シートSに固着する。
【0075】
トナー粒子は、必要により、着色剤、顔料分散剤、離型剤、磁性体および帯電制御剤を含有する。
【0076】
2.1.1 第1結着樹脂
第1結着樹脂は、ポリエステル樹脂である。第1結着樹脂の軟化温度を第1軟化温度Tm1と定義する。
【0077】
第1軟化温度Tm1は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上であり、例えば、120℃以下、好ましくは、110℃以下である。
【0078】
なお、軟化温度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0079】
第1結着樹脂は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂の総量中に、例えば、40質量%以上、例えば、70質量%以下、含有される。第1結着樹脂および第2結着樹脂の総質量に対する第1結着樹脂の質量の割合を第1含有割合Y1と定義する。
【0080】
第1結着樹脂は、示差走査熱量測定において、50℃から250℃までの範囲に吸熱ピークを有さない。すなわち、第1結着樹脂は、50℃から250℃までの範囲において、アモルファスであり、融点を有さない。第1結着樹脂がアモルファスであることにより、第1結着樹脂を定着液で軟化させることができ、トナーをシートSに定着させることができる。
【0081】
なお、吸熱ピークおよび融点は、ASTM D3418-99に準じて、示差走査熱量測定により測定される。具体的には、吸熱ピークおよび融点は、後述する実施例に記載の示差走査熱量測定により測定される。
【0082】
詳しくは、第1結着樹脂は、第1アルコール成分と第1カルボン酸成分との縮合物である。
【0083】
2.1.1.1 第1アルコール成分
第1アルコール成分は、1,4-ブタンジオールを含有する。
【0084】
第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率は、30mol%以上、好ましくは、53mol%以上であり、例えば、65mol%以下である。
【0085】
第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率が30mol%以上であると、裏写りおよび貼り付きを抑制できる。
【0086】
なお、「裏写り」とは、「トナー像が形成され、かつ、定着液が付与された第1のシートの上に、第2のシートが重ねられた場合に、第1のシートの軟化したトナーが第2のシートに写ってしまうこと」である。「貼り付き」とは、「トナー像が形成され、かつ、定着液が付与された第1のシートの上に、第2のシートが重ねられた場合に、軟化したトナーにより、第1のシートと第2のシートとが貼り付いてしまうこと」である。
【0087】
第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率が53mol%以上であることにより、裏写りを、より抑制できる。
【0088】
第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率が65mol%以下であると、第1結着樹脂を定着液で容易に軟化させることができる。第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率が65mol%を超えると、第1結着樹脂の結晶性が高まり、第1結着樹脂が定着液で軟化しにくくなる場合がある。
【0089】
第1アルコール成分は、分岐鎖ジオールを、さらに含有してもよい。
【0090】
分岐鎖ジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオールなどの分岐鎖のアルカンジオールや、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0091】
分岐鎖ジオールは、好ましくは、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である。
【0092】
第1アルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含有する場合、第1アルコール成分は、1,4-ブタンジオール、および、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のみを含有してもよい。
【0093】
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物であってもよい。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物であってもよい。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物と、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物との混合物であってもよい。すなわち、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、およびビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物の少なくとも一方であってもよい。アルキレンオキシドの付加モル数は、例えば、2以上、4以下である。
【0094】
第1アルコール成分がビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含有する場合、1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比(ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物/1,4-ブタンジオール)は、例えば、35/65以上であり、例えば、70/30以下、好ましくは、47/53以下である。つまり、1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比は、好ましくは、35/65以上、47/53以下である。
【0095】
1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比が35/65未満であると、第1結着樹脂の結晶性が高まり、第1結着樹脂が定着液で軟化しにくくなる場合がある。1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比が35/65以上であると、第1結着樹脂を定着液で容易に軟化させることができる。1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比が70/30以下であると、裏写りを、より抑制できる。1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比が47/53以下であると、裏写りを、さらに抑制できる。
【0096】
2.1.1.2 第1カルボン酸成分
第1カルボン酸成分は、多価カルボン酸を含有する。好ましくは、第1カルボン酸成分は、多価カルボン酸のみを含有する。言い換えると、第1カルボン酸成分は、モノカルボン酸を含有しない。
【0097】
多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸(1,2-ベンゼンジカルボン酸)、イソフタル酸(1,3-ベンゼンジカルボン酸)、テレフタル酸(1,4-ベンゼンジカルボン酸)、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸が挙げられる。多価カルボン酸は、好ましくは、芳香族ジカルボン酸である。芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、テレフタル酸である。
【0098】
第1アルコール成分の総量に対する多価カルボン酸のモル比(多価カルボン酸/第1アルコール成分の総量)は、例えば、80/100以上であり、例えば、90/100以下である。
【0099】
詳しくは、1,4-ブタンジオールとビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物との総量に対する多価カルボン酸のモル比(多価カルボン酸/1,4-ブタンジオールとビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物との総量)は、例えば、80/100以上であり、例えば、90/100以下である。
【0100】
2.1.1.3 第1結着樹脂の製造
第1結着樹脂を製造するには、第1アルコール成分、多価カルボン酸、および、エステル化触媒を反応容器に仕込み、例えば、150℃以上、250℃以下の温度で、例えば、5時間以上、10時間以下、加熱する。これにより、第1結着樹脂を得ることができる。
【0101】
詳しくは、第1結着樹脂を製造するには、1,4-ブタンジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、多価カルボン酸、および、エステル化触媒を反応容器に仕込み、例えば、150℃以上、250℃以下の温度で、例えば、5時間以上、10時間以下、加熱する。これにより、第1結着樹脂を得ることができる。
【0102】
なお、エステル化触媒としては、例えば、2-エチルヘキサン酸錫(II)などが挙げられる。
【0103】
2.1.2 第2結着樹脂
第2結着樹脂は、ポリエステル樹脂である。第2結着樹脂の軟化温度を第2軟化温度Tm2と定義する。
【0104】
第2軟化温度Tm2は、第1軟化温度Tm1よりも高い。第2軟化温度Tm2は、例えば、150℃以上、好ましくは、160℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、190℃以下である。
【0105】
第2結着樹脂は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂の総量中に、例えば、20質量%以上、例えば、40質量%以下、含有される。第1結着樹脂および第2結着樹脂の総質量に対する第2結着樹脂の質量の割合を第2含有割合Y2と定義する。
【0106】
また、第2結着樹脂は、第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に、例えば、20質量%以上、例えば、80質量%以下、含有される。
【0107】
第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に第2結着樹脂が20質量%以上含有されることにより、さらに、貼り付きを抑制できる。
【0108】
第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に第2結着樹脂が80質量%以下含有されることにより、トナー粒子中の第1結着樹脂の割合を確保でき、トナー粒子をシートSに容易に定着させることができる。なお、第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に第2結着樹脂が80質量%を超えると、トナー粒子がシートSに定着しにくくなる場合がある。
【0109】
第2結着樹脂は、第1結着樹脂とともに、トナー粒子に含まれる成分を結着する。第2結着樹脂は、定着液が付与されることによって軟化し、その後、硬化することにより、シートSに固着する。第2結着樹脂は、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有する。
すなわち、第2結着樹脂は、結晶性を有する。第2結着樹脂の吸熱ピークの温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、120℃以上、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。
【0110】
第2結着樹脂が示差走査熱量測定において吸熱ピークを有することにより、トナーが第2結着樹脂を含有する場合、トナーは、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有する。トナーの吸熱ピークの温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、120℃以上、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。
【0111】
トナーの吸熱ピークの温度が50℃以上、250℃以下であることにより、貼り付きを、より抑制できる。また、トナーの吸熱ピークの温度が120℃以上、200℃以下であることにより、貼り付きを、より一層抑制できる。
【0112】
なお、吸熱ピークは、ASTM D3418-99に準じて、示差走査熱量測定により測定される。具体的には、吸熱ピークは、後述する実施例に記載の示差走査熱量測定により測定される。
【0113】
また、第2結着樹脂は、示差走査熱量測定において、吸熱ピークよりも低温の発熱ピークを有してもよい。第2結着樹脂の発熱ピークの温度は、例えば、120℃未満である。
【0114】
第2結着樹脂が示差走査熱量測定において発熱ピークを有することにより、トナーが第2結着樹脂を含有する場合、トナーは、示差走査熱量測定において、吸熱ピークよりも低温の発熱ピークを有する。トナーが発熱ピークを有することにより、貼り付きを、より抑制できる。トナーが示差走査熱量測定において発熱ピークを有する場合、発熱ピークの温度は、例えば、120℃未満である。
【0115】
なお、発熱ピークは、ASTM D3418-99に準じて、示差走査熱量測定により測定される。具体的には、発熱ピークは、後述する実施例に記載の示差走査熱量測定により測定される。
【0116】
また、吸熱ピークの温度は、融点とみなすことができる。そのため、第2結着樹脂は、融点を有する。第2結着樹脂の融点は、例えば、50℃以上、好ましくは、120℃以上である。第2結着樹脂の融点は、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。
【0117】
詳しくは、第2結着樹脂は、第2アルコール成分と第2カルボン酸成分との縮合物である。
【0118】
2.1.2.1 第2アルコール成分
第2アルコール成分は、炭素数2から6の直鎖ジオールを含有する。
【0119】
炭素数2から6の直鎖ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール(1,2-エタンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの炭素数2から6の直鎖のアルカンジオールが挙げられる。
【0120】
第2アルコール成分は、好ましくは、1,4-ブタンジオールを含有する。
【0121】
第2アルコール成分は、分岐鎖ジオールを含有してもよい。
【0122】
分岐鎖ジオールとしては、上記した第1アルコール成分で挙げた分岐鎖ジオールが挙げられる。
【0123】
第2アルコール成分は、好ましくは、1,4-ブタンジオールと、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物とを含有する。
【0124】
2.1.2.2 第2カルボン酸成分
第2カルボン酸成分は、多価カルボン酸を含有する。詳しくは、第2カルボン酸成分は、多価カルボン酸のみを含有する。言い換えると、第2カルボン酸成分は、モノカルボン酸を含有しない。
【0125】
多価カルボン酸としては、上記した第1カルボン酸成分において挙げた多価カルボン酸が挙げられる。
【0126】
2.1.2.3 第2結着樹脂の製造
第2結着樹脂は、上記した第1結着樹脂と同じ方法により製造可能である。
【0127】
2.1.3 第3結着樹脂
第3結着樹脂は、ポリスチレン樹脂である。第3結着樹脂は、第1結着樹脂および第2結着樹脂のいずれにも相溶しにくい。言い換えると、第1結着樹脂に対する第3結着樹脂の相溶性は、第1結着樹脂に対する第2結着樹脂の相溶性よりも低い。第2結着樹脂に対する第3結着樹脂の相溶性は、第2結着樹脂に対する第1結着樹脂の相溶性よりも低い。
【0128】
第3結着樹脂は、定着液に溶解しやすい。詳しくは、25℃において、定着液に対する第3結着樹脂の溶解度は、定着液に対する第1結着樹脂の溶解度、および、定着液に対する第2結着樹脂の溶解度よりも高い。
【0129】
第3結着樹脂の軟化温度を第3軟化温度Tm3と定義する。第3軟化温度Tm3は、第1軟化温度Tm1と第1含有割合Y1との積と、第2軟化温度Tm2と第2含有割合Y2との積との和よりも低い。そのため、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂のうち、第3結着樹脂を、定着液で容易に軟化させることができる。その結果、定着速度の向上を図ることができる。
【0130】
第3結着樹脂のガラス転移温度は、例えば、45℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、55℃以上である。第3結着樹脂のガラス転移温度が45℃以上であると、トナーの保存安定性を確保することができる。第3結着樹脂のガラス転移温度が50℃以上であると、トナーの保存安定性を向上させることができる。第3結着樹脂のガラス転移温度が55℃以上であると、トナーの保存安定性を、より向上させることができる。
【0131】
また、第3結着樹脂のガラス転移温度は、例えば、80℃以下、好ましくは、75℃以下、より好ましくは、70℃以下である。第3結着樹脂のガラス転移温度が80℃以下であると、定着速度を確保できる。第3結着樹脂のガラス転移温度が75℃以下であると、定着速度を向上させることができる。第3結着樹脂のガラス転移温度が70℃以下であると、定着速度を、より向上させることができる。
【0132】
第3結着樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、3500以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2600以下である。第3結着樹脂の重量平均分子量が3500以下であると、第3結着樹脂を、定着液で容易に軟化させることができる。第3結着樹脂の重量平均分子量が3000以下であると、第3結着樹脂を、定着液でより容易に軟化させることができる。第3結着樹脂の重量平均分子量が2600以下であると、第3結着樹脂を、定着液でより一層容易に軟化させることができる。
【0133】
第3結着樹脂の重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0134】
第3結着樹脂は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂の総量中に、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下含有される。
【0135】
第3結着樹脂は、第1結着樹脂と第2結着樹脂との総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、例えば、45質量部以下、好ましくは、35質量部以下含有される。
【0136】
第3結着樹脂としては、市販のポリスチレン樹脂を使用できる。ポリスチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン誘導体の重合体、スチレン-アクリル共重合体などが挙げられる。第3結着樹脂としては、好ましくは、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体が挙げられ、より好ましくは、ポリスチレンが挙げられる。
【0137】
2.1.4 着色剤
着色剤は、トナー粒子に所望の色を付与する。着色剤は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂中に分散する。
【0138】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、有機顔料、無機顔料または金属粉、油溶性染料または分散染料、ロジン系染料、高級脂肪酸や樹脂などによって加工された染料や顔料などが挙げられる。
【0139】
有機顔料としては、例えば、キノフタロンイエロー、ハンザイエロー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、ペリノンオレンジ、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられる。
【0140】
無機顔料または金属粉としては、例えば、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズなどが挙げられる。
【0141】
油溶性染料または分散染料としては、例えば、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料などが挙げられる。
【0142】
ロジン系染料としては、例えば、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸樹脂などが挙げられる。
【0143】
トナー粒子は、所望の色に応じて、1種類の着色剤のみを含有してもよいし、複数の着色剤を含有してもよい。また、トナー粒子は、着色剤を含有しなくてもよい。
【0144】
着色剤の配合割合は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂の総量100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0145】
2.1.5 顔料分散剤
顔料分散剤は、着色剤の分散性を向上させる。
【0146】
顔料分散剤の配合割合は、着色剤100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0147】
2.1.6 帯電制御剤
帯電制御剤は、トナー粒子に帯電性を付与する。帯電性は、正帯電性および負帯電性のいずれであってもよい。
【0148】
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、官能基(スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム基など)を有する高分子化合物などが挙げられる。
【0149】
帯電制御剤の配合割合は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0150】
2.1.7 離型剤
離型剤としては、例えば、ポリオレフィン系ワックス、長鎖炭化水素系ワックス、エステル系ワックスなどが挙げられる。
【0151】
離型剤の配合割合は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂の総量100質量部に対して、例えば、0質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0152】
2.1.8 磁性体
磁性体としては、例えば、マグネタイト、γ-ヘマタイト、各種フェライトなどが挙げられる。
【0153】
磁性体の配合割合は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば500質量部以下、好ましくは、150質量部以下である。なお、磁性体は、前述の着色剤としても使用することができる。
【0154】
2.2 外添剤
外添剤は、トナー粒子の帯電性、流動性、保存安定性を調整する。外添剤としては、例えば、無機粒子や合成樹脂粒子が挙げられる。
【0155】
無機粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物、および、これらの疎水性化処理物などが挙げられる。
例えば、シリカの疎水化処理物は、シリカの微粉体を、シリコーンオイルや、例えば、ジクロロジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザンなどのシランカップリング剤で処理することにより、得ることができる。
【0156】
合成樹脂粒子としては、例えば、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン-アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル重合体からなるコアシェル型粒子などが挙げられる。
【0157】
外添剤の粒径は、トナー粒子の粒径よりも小さい。外添剤の粒径は、例えば、2μm以下、好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは、0.03μm以下である。
【0158】
外添剤の配合割合は、トナー粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、例えば、10質量部以下である。
【0159】
2.3 トナーの製造方法
トナーを製造するには、まず、トナー粒子を製造する。トナー粒子の製造方法は、混練・粉砕法、懸濁重合法、乳化重合・凝集法、乳化・収斂法および噴射造粒法などが挙げられる。
【0160】
トナー粒子を製造するには、第1結着樹脂、第2結着樹脂、第3結着樹脂、帯電制御剤、着色剤を混合し、得られた混合物を、二軸押出機により、溶融、混練する。次いで、得られた混練物を、冷却した後、粉砕する。これにより、トナー粒子を得ることができる。
【0161】
次いで、トナーを製造するには、得られたトナー粒子に、外添剤を添加し、混合する。これにより、トナーを得ることができる。トナーの粒径は、体積中位粒径(D50)で、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、12μm以下、好ましくは、9μm以下である。
【0162】
体積中位粒径(D50)は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0163】
3.定着液
定着液は、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を軟化させることができる。定着液は、エステル系軟化剤を含有する。定着液は、希釈剤と界面活性剤とを、さらに含有してもよい。
【0164】
3.1 エステル系軟化剤
エステル系軟化剤は、上記した定着工程において、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を軟化させる。これにより、定着液は、上記した定着工程において、第1結着樹脂および第2結着樹脂を軟化させることができる。エステル系軟化剤の1気圧での沸点は、例えば、180℃以上、好ましくは、250℃以上であり、例えば、400℃以下である。すなわち、エステル系軟化剤は、上記した画像形成装置1が使用される環境において、蒸発しにくい。そのため、エステル系軟化剤の臭気が発生することを抑制できる。
【0165】
エステル系軟化剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸エステル、炭酸エステルなどが挙げられる。
【0166】
脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、下記化学式(1)で表される脂肪族モノカルボン酸エステルが挙げられる。また、脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、下記化学式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸ジアルキル、例えば、下記化学式(3)で表される脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルなどの脂肪族ジカルボン酸エステルが挙げられる。
【0167】
化学式(1):R1-COO-R2(式中、R1およびR2は、直鎖または分岐のアルキル基である。R1とR2とは、互いに異なってもよく、同じでもよい。なお、R1は、炭素数が9以上15以下の直鎖または分岐のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上4以下の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。)
化学式(2):R3(-COO-R4)2(式中、R3は、直鎖または分岐のアルキレン基である。R4は、直鎖または分岐のアルキル基である。2つのR4は、互いに異なってもよく、同じでもよい。なお、R3は、炭素数が2以上10以下の直鎖または分岐のアルキレン基であり、R4は、炭素数が1以上8以下の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。)
化学式(3):R5[-COO-(R6-O)n-R7]2(式中、R5またはR6は、直鎖または分岐のアルキレン基である。R7は、直鎖または分岐のアルキル基である。なお、R5は、炭素数が2以上10以下の直鎖または分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下の直鎖または分岐のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。nは、1以上の整数である。
nは、例えば、3以下である。)
脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、デカン酸エチル(沸点243℃)、ラウリン酸エチル(沸点275℃)、パルミチン酸エチル(沸点330℃)などが挙げられる。
【0168】
脂肪族ジカルボン酸ジアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエチル(沸点196℃)、アジピン酸ジエチル(沸点251℃)、アジピン酸ジイソブチル(沸点293℃)、アジピン酸ジオクチル(沸点335℃)、セバシン酸ジエチル(沸点309℃)、セバシン酸ジブチル(沸点345℃)、セバシン酸ジオクチル(沸点377℃)、ドデカン二酸ジエチル(沸点200℃以上)などが挙げられる。
【0169】
脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル(沸点200℃以上)、コハク酸ジブトキシエチル(沸点200℃以上)、コハク酸ジカルビトール(別名:コハク酸ビス(エトキシジグリコール)、沸点200℃以上)、アジピン酸ジエトキシエチル(沸点200℃以上)などが挙げられる。
【0170】
炭酸エステルとしては、例えば、炭酸エチレン(沸点261℃)、炭酸プロピレン(沸点242℃)などが挙げられる。
【0171】
エステル系軟化剤は、好ましくは、脂肪族ジカルボン酸エステル、炭酸エステルなどの二塩基酸エステルである。脂肪族ジカルボン酸エステルは、好ましくは、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジカルビトールからなる群から選択される少なくとも1つである。炭酸エステルは、好ましくは、炭酸プロピレンである。
【0172】
エステル系軟化剤の配合割合は、定着液中に、例えば、5質量%以上、例えば、100質量%以下である。
【0173】
3.2 希釈剤
希釈剤は、エステル系軟化剤を希釈するための溶媒である。エステル系軟化剤は、希釈剤中に分散することにより、希釈されてもよい。また、エステル系軟化剤は、エステル系軟化剤中に希釈剤を分散させることにより、希釈されてもよい。また、エステル系軟化剤は、希釈剤中に溶解することにより、希釈されてもよい。
【0174】
希釈剤としては、例えば、水、例えば、単価または多価アルコール系溶媒、n-アルカン、イソパラフィン、シリコーンオイルなどが挙げられる。単価または多価アルコール系溶媒としては、例えば、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0175】
3.3 界面活性剤
界面活性剤は、エステル系軟化剤を希釈剤中に分散するために、定着液に配合される。または、界面活性剤は、希釈剤をエステル軟化剤中に分散させるために、定着液に配合される。
【0176】
界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0177】
界面活性剤の配合割合は、定着液中に、例えば、0.1質量%以上、例えば、30質量%以下である。
【0178】
4.作用効果
(1)画像形成装置1および画像形成方法によれば、トナーは、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂を含有する。第1結着樹脂は、第1アルコール成分と第1カルボン酸成分との縮合物であり、第2結着樹脂は、第2アルコール成分と第2カルボン酸成分との縮合物である。対して、第3結着樹脂は、ポリスチレン樹脂である。さらに、第3軟化温度Tm3は、第1軟化温度Tm1と第1含有割合Y1との積と、第2軟化温度Tm2と第2含有割合Y2との積との和よりも低い。
【0179】
そのため、第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂のうち、第3結着樹脂を、定着液で容易に軟化させることができる。
【0180】
その結果、定着速度の向上を図ることができる。
【0181】
さらに、トナーは、1,4-ブタンジオールを30mol%以上含有する第1アルコール成分と、多価カルボン酸を含有する第1カルボン酸成分との縮合物を、第1結着樹脂として含有する。
【0182】
そのため、裏写りおよび貼り付きを抑制できる。
【0183】
(2)画像形成装置1および画像形成方法によれば、第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率は、65mol%以下である。
【0184】
そのため、第1結着樹脂を定着液で容易に軟化させることができる。
【0185】
(3)画像形成装置1および画像形成方法によれば、第1アルコール成分中の1,4-ブタンジオールのモル比率が53mol%以上である。
【0186】
そのため、裏写りを、より抑制できる。
【0187】
(4)画像形成装置1および画像形成方法によれば、第1結着樹脂は、アモルファスである。
【0188】
そのため、第1結着樹脂を定着液で軟化させることができ、トナーをシートSに定着させることができる。
【0189】
(5)画像形成装置1および画像形成方法によれば、1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比が35/65以上である。
【0190】
そのため、第1結着樹脂を定着液で容易に軟化させることができる。
【0191】
(6)画像形成装置1および画像形成方法によれば、1,4-ブタンジオールに対するビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモル比が70/30以下である。
【0192】
そのため、裏写りを、より抑制できる。
【0193】
(7)画像形成装置1および画像形成方法によれば、トナーは、第2結着樹脂を含有する。トナーの吸熱ピークの温度は、50℃以上250℃以下である。
【0194】
そのため、貼り付きを、より抑制できる。
【0195】
(8)画像形成装置1および画像形成方法によれば、トナーは、吸熱ピークと、吸熱ピークよりも低温の発熱ピークとを有する。
【0196】
そのため、貼り付きを、より抑制できる。
【0197】
(9)画像形成装置1および画像形成方法によれば、第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に第2結着樹脂が20質量%以上含有される。
【0198】
そのため、貼り付きを、さらに抑制できる。
【0199】
(10)画像形成装置1および画像形成方法によれば、第1結着樹脂と第2結着樹脂の総量中に第2結着樹脂が80質量%以下含有される。
【0200】
そのため、トナー粒子中の第1結着樹脂の割合を確保でき、トナー粒子をシートSに容易に定着させることができる。
【0201】
(11)画像形成装置1および画像形成方法によれば、エステル系軟化剤の沸点は、180℃以上である。
【0202】
そのため、エステル系軟化剤の蒸発を抑制できる。
【0203】
その結果、エステル系軟化剤の臭気が発生することを抑制できる。
【0204】
5.変形例
(1)上記実施形態の現像方式は、磁性または非磁性のトナーのみを用いた一成分現像方式であったが、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0205】
現像方式は、例えば、トナーとキャリアが混合される二成分現像方式であってもよい。二成分現像剤である場合、キャリアとしては、例えば、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属と、アルミニウム、鉛などの金属と、の合金が挙げられる。
【0206】
キャリア粒径としては、例えば、4μm以上、好ましくは、20μm以上であり、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。
【0207】
トナーの配合割合は、キャリア100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。
【0208】
また、キャリアは、樹脂コートキャリアや、結着樹脂に磁性粉を分散させた分散型キャリアなどであってもよい。
【0209】
(2)現像装置7は、感光ドラム4および帯電装置5とともに、1つのプロセスユニットとして構成されてもよい。プロセスユニットは、本体筐体2に対して装着可能であってもよい。
【0210】
(3)現像装置7は、感光ドラム4および帯電装置5を有するドラムユニットに対して装着可能な現像カートリッジであってもよい。ドラムユニットは、本体筐体2に対して装着可能であってもよい。
【0211】
(4)現像装置7は、現像ローラ72を備える現像器と、現像器に対して装着可能なトナーカートリッジとを備えてもよい。この場合、トナーカートリッジは、トナーを収容可能である。また、現像器は、ドラムユニットに設けられてもよい。現像器は、ドラムユニットに対して装着可能であってもよい。
【実施例
【0212】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって限定されない。
【0213】
1.第1結着樹脂または第2結着樹脂の製造
表1および表2に示すモル比で、直鎖ジオール、分岐鎖ジオール、無水トリメリット酸以外の多価カルボン酸を、反応容器(5Lの四つ口フラスコ)に仕込んだ。なお、反応容器には、温度計、ステンレス製撹拌棒、温水を通した精留塔、流下式コンデンサー、および窒素導入管を、装備した。
【0214】
次いで、エステル化触媒として2-エチルヘキサン酸錫(II)を仕込み、窒素雰囲気化にて、マントルヒーター内で、180℃まで昇温した後、230℃まで8時間かけて昇温した。
【0215】
その後、必要により、表1に示すモル比で無水トリメリット酸を反応容器に投入し、反応容器内を8.0kPaに減圧しながら、220℃で、反応物の軟化温度が表1に示す軟化温度に達するまで、加熱した。
【0216】
なお、軟化温度は、フローテスター「CFT-500D」(島津製作所製)を用いて測定した。具体的には、約1gの試料を昇温速度6℃/分で50℃から200℃まで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化温度とした。
【0217】
上記した反応により、表1に示す第1結着樹脂A~Cと、第2結着樹脂と、比較結着樹脂とを得た。表1に、得られた結着樹脂のガラス転移温度、および、吸熱ピークの温度を示す。
【0218】
なお、ガラス転移温度、および、吸熱ピークの温度は、示差走査熱量測定によって測定した。
【0219】
示差走査熱量測定は、ASTM D3418-99に準じて、示差走査熱量測定装置「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて測定した。検出部の温度補正には、インジウムと亜鉛の溶融温度を用いた。熱量の補正には、インジウムの融解熱を用いた。
【0220】
具体的には、得られた結着樹脂5mgをアルミニウム製のパンに入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、昇温速度10℃/分で、-10℃から250℃まで昇温した(1回目の昇温)。
【0221】
次に、250℃で2分間保持した後、降温速度-20℃/分で、-10℃まで降温した(1回目の降温)
次に、-10℃で5分間保持した後、再度、昇温速度10℃/分で、-10℃から250℃まで昇温した(2回目の昇温)。
【0222】
ガラス転移温度は、2回目の昇温で得られた比熱変化に伴うベースラインシフトのDSC曲線から求めた。詳しくは、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線とDSC曲線との交点を、ガラス転移温度Tgとした。
【0223】
吸熱ピーク温度は、1回目の昇温の際に得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点温度から求めた。
【0224】
【表1】
【0225】
2.第3結着樹脂
2つの第3結着樹脂A、Bを用意した。第3結着樹脂A、Bは、いずれも、ポリスチレンである。表2に、第3結着樹脂A、Bの物性を示す。
【0226】
【表2】
【0227】
なお、表2中、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、測定した。使用した測定装置は、「HLC-8220GPC」(東ソー社製)である。使用した分析カラムは、「GMHXL」(東ソー社製)および「G3000HXL」(東ソー社製)である。
【0228】
詳しくは、濃度が0.5g/100mLになるように、第3結着樹脂Aまたは第3結着樹脂Bの試料を、テトラヒドロフランに25℃で溶解させた。
【0229】
次に、試料の溶液を、ポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC製)を用いて濾過し、不溶解分を除いた。これにより、試料溶液を得た。
【0230】
次に、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。
【0231】
そこに、試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。
【0232】
なお、検量線は、複数の標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて作成した。複数の標準ポリスチレンとは、具体的には、「A-500」(分子量:5.0×102)、「A-1000」(分子量:1.01×103)、「A-2500」(分子量:2.63×103)、「A-5000」(分子量:5.97×103)、「F-1」(分子量:1.02×104)、「F-2」(分子量:1.81×104)、「F-4」(分子量:3.97×104)、「F-10」(分子量:9.64×104)、「F-20」(分子量:1.90×105)、「F-40」(分子量:4.27×105)、「F-80」(分子量:7.06×105)、「F-128」(分子量:1.09×106)(以上、東ソー株式会社製)である。
【0233】
3.トナーの製造
表3および表4に示す部数の第1結着樹脂、第2結着樹脂および第3結着樹脂と、ボントロンN-04(帯電制御剤、オリエント化学工業社製)3質量部と、FCA-F201-PS(帯電制御剤、藤倉化成社製)7質量部と、Regal 330R(着色剤、カーボンブラック、キャボット社製)6質量部とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
【0234】
次に、得られた混合物を、二軸押出機により、溶融、混練した。
【0235】
次に、得られた混練物を、冷却し、ハンマーミルを用いて、1mm程度に粉砕した。
【0236】
次に、得られた粉砕物を、エアージェット方式の粉砕機により、さらに粉砕した。
【0237】
次に、得られた粉砕物を分級し、体積中位粒径(D50)が7.5μmのトナー粒子を得た。
【0238】
なお、体積中位粒径(D50)は、コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定した。解析ソフトには、コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19(ベックマンコールター社製)を用いた。
詳しくは、分散液として、電解液(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5質量%のエマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解した溶液を用いた。分散液5mlにトナー粒子10mgを添加し、超音波分散機US-1(エスエヌディー社製、出力:80W)にて1分間分散させた。次に、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。次に、電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
【0239】
次に、得られたトナー粒子100質量部に、NAX-50(外添剤、疎水性シリカ、日本アエロジル社製)0.5質量部と、RX-300(外添剤、疎水性シリカ、日本アエロジル社製)0.5質量部とを添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
【0240】
これにより、トナーを得た。得られたトナーの発熱ピークは、いずれも、100℃付近にあった。得られたトナーの吸熱ピークは、いずれも、180℃付近にあった。
【0241】
なお、発熱ピークの温度、および、吸熱ピークの温度は、上記した示差走査熱量測定によって測定した。発熱ピークの温度は、1回目の昇温の際に得られるDSC曲線の発熱ピークの頂点温度から求めた。吸熱ピークの温度は、1回目の昇温の際に得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点温度から求めた。
【0242】
【表3】
【0243】
【表4】
【0244】
3 評価
(1)定着性評価
得られたトナーを現像カートリッジに充填し、加熱定着器を取り外した画像形成装置「HL-L2360D」(ブラザー工業製)を用いて、トナー付着量が5g/m2であるトナー像(10mm×10mm、四角形)を、印刷用紙の表面に形成した。なお、加熱定着器が取り外されているため、トナー像は、印刷用紙に定着していない。
【0245】
次に、図2に示す噴霧器100を搭載したオフライン定着部を用いて、トナー像Tに、表3および表4に示す定着液を、A4サイズあたり0.1gの噴霧量で、噴霧した。なお、噴霧器100は、圧縮空気を用いて定着液を噴霧するエアブラシである。
【0246】
次に、トナー像Tの反射濃度OD1を、分光光度計により測定した。なお、分光光度測定装置として、スペクトロアイ(エックスライト社製)を用いた。また、反射濃度OD1が1.29以上、1.31以下になるように、画像形成装置の現像バイアスを調整した。
【0247】
トナー像Tに定着液を噴霧してから30分経過後に、トナー像Tが形成されている部分を、300gの荷重をかけながら、布で5往復擦った。その後、トナー像Tの反射濃度OD2を測定した。
【0248】
そして、反射濃度低下率[%]を、下記式により算出した。
【0249】
式:反射濃度低下率[%]=(反射濃度OD1-反射濃度OD2)/反射濃度OD1×100
反射濃度低下率の6枚の平均値が、15%未満であるものを○、15%以上であるものを×と判定した。結果を表3および表4に示す。
【0250】
(2)保存安定性評価
トナー5gを、温度45℃、相対湿度70%の環境下で120時間放置した。放置後のトナーをスパーテルで軽く触り、トナー凝集の発生程度を目視にて観察した。明らかなトナー凝集物が確認されれば×、凝集物が確認されなければ○と判定した。結果を表3および表4に示す。
【符号の説明】
【0251】
1 画像形成装置
4 感光ドラム
8 転写装置
9 付与装置
S シート
図1
図2