(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】電子デバイス、表示装置、光電変換装置、電子機器、照明、および移動体
(51)【国際特許分類】
H10K 50/11 20230101AFI20241216BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241216BHJP
F21S 43/145 20180101ALI20241216BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20241216BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20241216BHJP
G09F 9/302 20060101ALI20241216BHJP
H10K 50/805 20230101ALI20241216BHJP
H10K 50/813 20230101ALI20241216BHJP
H10K 50/818 20230101ALI20241216BHJP
H10K 50/852 20230101ALI20241216BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20241216BHJP
H10K 59/124 20230101ALI20241216BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20241216BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20241216BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20241216BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20241216BHJP
H10K 102/10 20230101ALN20241216BHJP
【FI】
H10K50/11
F21S2/00 482
F21S43/145
F21V19/00 170
F21V23/00 160
G09F9/302 C
H10K50/805
H10K50/813
H10K50/818
H10K50/852
H10K59/122
H10K59/124
H10K59/35
H10K59/95
F21W103:00
F21Y115:15
H10K102:10
(21)【出願番号】P 2020178127
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 希之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博晃
(72)【発明者】
【氏名】松田 陽次郎
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138612(JP,A)
【文献】特開2013-030476(JP,A)
【文献】特開2009-277590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0181188(US,A1)
【文献】国際公開第2020/105544(WO,A1)
【文献】特開2010-056017(JP,A)
【文献】特開2016-054085(JP,A)
【文献】特開2017-079160(JP,A)
【文献】特開2015-050011(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104425766(CN,A)
【文献】特開2020-136260(JP,A)
【文献】特開2014-123528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 -99/00
H01L 51/50 -51/52
G09F 9/302
F21S 2/00 -43/145
F21V 19/00 -23/00
F21Y 115/15
F21W 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された複数の素子を有し、
前記複数の素子のそれぞれは、前記基板側から、
第1絶縁層と、第1電極と、機能層と、第2電極と、をこの順に有し、
前記機能層および前記第2電極が、前記複数の素子のうちの隣り合う2つの素子がそれぞれ独立に有する2つの前記第1電極を覆うように、一方の前記第1電極の上から他方の前記第1電極の上まで連続して配置された電子デバイスであって、
前記第1絶縁層は、前記基板に対して傾斜した傾斜部を有し、
前記第1電極は、前記傾斜部の上に配置された第1部分と、前記機能層と接し、前記基板に対する傾斜角が前記第1部分よりも小さい第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に配置され、前記基板に対する傾斜角が前記第1部分よりも小さい第3部分と、を有し、
前記第1電極と前記機能層の間に配置され、前記第1電極の端部を覆う第2絶縁層を有し、
前記第2絶縁層は、前記第3部分と前記第1部分とを覆うように、前記第1部分および前記第3部分の上に配置されており、
前記第1電極は光透過性を有し、
前記第1部分の上に配置された前記機能層の、前記第1部分と接する面に対する法線方向の厚さは、前記第2部分の上に配置された前記機能層の、前記第2部分と接する面に対する法線方向の厚さよりも小さい
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
前記第1部分は、前記基板に対する傾斜角が15°以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記第1部分は、前記第2部分を取り囲むように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記第2絶縁層は、前記第1電極の上に開口部を有し、前記第1電極において前記開口部の中で前記機能層と接する部分が前記第1部分である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記
第1絶縁層は前記第2部分よりも前記基板から離れた位置に平坦部を有し、
前記第1電極は、前記平坦部の端部と前記傾斜部とを覆うように前記第1絶縁層の上に配置されていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記第1絶縁層の前記傾斜部は、前記基板に対する平面視で前記第1部分を取り囲むように配置されており、
前記第1絶縁層の前記平坦部は、前記基板に対する平面視で前記傾斜部を取り囲むように配置されていることを特徴とする請求項
5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記複数の素子は、第1の光を出射する第1素子と、第2の光を出射する第2素子と、を含み、
前記第1素子の有する前記第1絶縁層の前記平坦部の上面と、前記第2素子の有する前記第1絶縁層の前記平坦部の上面と、が同一平面上にあることを特徴とする請求項
5または
6に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記複数の素子は、第1の光を出射する第1素子と、第2の光を出射する第2素子と、を含み、
前記第1素子の有する前記第1電極の前記第2部分の上面と、前記第2素子の有する前記第1電極の前記第2部分の上面と、が異なる平面上にあることを特徴とする請求項
7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記複数の素子は、第1の光を出射する第1素子と、第2の光を出射する第2素子と、を含み、
前記第1素子および前記第2の素子は、前記第2部分と前記基板との間に、前記基板側から、反射層と、光学調整層と、をさらに有し、
前記第1素子の有する前記光学調整層の厚さと前記第2素子の有する光学調整層の厚さは互いに異なることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記第1絶縁層は前記第2部分よりも前記基板から離れた位置に平坦部を有し、
前記反射層は前記第2部分および前記平坦部の下に配置されており、
前記反射層の前記平坦部の下に配置されている部分の前記基板に垂直な方向の厚さは、前記反射層の前記第2部分の下に配置されている部分の前記基板に垂直な方向の厚さよりも大きく、
前記第1絶縁層は、前記反射層の前記第2部分の下に配置されている部分と前記反射層の前記平坦部の下に配置されている部分とで形成される段差を覆うように配置されていることを特徴とする請求項
9に記載の電子デバイス。
【請求項11】
請求項1~1
0のいずれか1項に記載の電子デバイスと、
前記複数の素子に接続されるトランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項12】
撮像装置と、
表示部として請求項1~
10のいずれか1項に記載の電子デバイスと、を備え、
前記撮像装置から提供されるユーザーの視線情報に基づいて前記表示部の表示画像が制御される表示装置。
【請求項13】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は請求項1~
10のいずれか1項に記載の電子デバイスを有する光電変換装置。
【請求項14】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の電子デバイスを有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有する電子機器。
【請求項15】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の電子デバイスを有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルムと、を有する照明装置。
【請求項16】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の電子デバイスを有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有する移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス、表示装置、光電変換装置、電子機器、照明、および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機層(有機化合物層ともいう)を用いた電子デバイスとして、有機発光素子や有機光電変換素子が提案されている。有機発光素子は、陰極および陽極と、その間に配置された有機層とを有する素子であり、陰極から注入された電子と、陽極から注入された正孔とが再結合して光を発生する発光デバイスである。有機光電変換素子は、陰極および陽極と、その間に配置された有機層とを有する素子であり、有機層が光を吸収して発生する電子および正孔を陰極および陽極から取り出す光電変換デバイスである。近年、有機発光素子を備える表示装置や有機光電変換素子を備える撮像装置が注目されている。
【0003】
有機層を用いた電子デバイスでは、複数の有機発光素子や複数の有機光電変換素子にわたって有機層が連続的に形成される場合がある。このような場合には、隣り合う素子がそれぞれ独立に有する電極(陰極または陽極)の間で、有機層を介して電流のリークが発生しやすい。有機発光素子において隣り合う素子間での電流のリークが発生してしまうと有機発光素子の意図しない発光を招き、表示装置の色域を狭めてしまう。また、有機光電変換素子において隣り合う素子間での電流のリークが発生してしまうと、ノイズが発生してしまう。このように、隣り合う素子間での電流のリークは、電子デバイスの特性を低下させてしまう。
【0004】
特許文献1に記載されている電子デバイスは、隣り合う素子がそれぞれ有する下部電極の端部を覆うように絶縁層が設けられている。絶縁層は下部電極の上に配置される傾斜部を有しており、その上に有機層が複数の素子にわたって連続に形成されている。特許文献1には、隣り合う素子がそれぞれ有する下部電極の間での電流のリークを抑制しつつ、上部電極と下部電極との間の電流のリークを抑制するために、絶縁層の傾斜部の上に配置される有機層の厚さを所定値以上とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、平坦な下部電極の端部を覆うように、傾斜部を有する絶縁層を配置している。そして、絶縁層の傾斜部の上に配置される有機層の厚さを調節することで、隣り合う素子の間の電流のリークと、上部電極と下部電極との間の電流のリークを抑制している。しかしながら、従来のように単に有機層の厚さを調整するのみでは、隣り合う素子の間の電流のリークを十分に抑制できない場合があるという課題があった。
【0007】
そこで本発明では、上述の課題に鑑み、隣り合う素子の間の電流リークをより確実に抑制可能な電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての電子デバイスは、基板上に配置された複数の素子を有し、前記複数の素子のそれぞれは、前記基板側から、絶縁層と、第1電極と、機能層と、第2電極と、をこの順に有し、前記機能層および前記第2電極が、前記複数の素子のうちの隣り合う2つの素子がそれぞれ独立に有する2つの前記第1電極を覆うように、一方の前記第1電極の上から他方の前記第1電極の上まで連続して配置された電子デバイスであって、前記絶縁層は、前記基板に対して傾斜した傾斜部を有し、前記第1電極は、前記傾斜部の上に配置された第1部分と、前記機能層と接し、前記基板に対する傾斜角が前記第1部分よりも小さい第2部分と、を有し、前記第1部分の上に配置された前記機能層の、前記第1部分と接する面に対する法線方向の厚さは、前記第2部分の上に配置された前記機能層の、前記第2部分と接する面に対する法線方向の厚さよりも小さいことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の一側面としての電子デバイスは、基板上に配置された複数の素子を有し、前記複数の素子のそれぞれは、前記基板側から、第1絶縁層と、第1電極と、機能層と、第2電極と、をこの順に有し、前記機能層および前記第2電極が、前記複数の素子のうちの隣り合う2つの素子がそれぞれ独立に有する2つの前記第1電極を覆うように、一方の前記第1電極の上から他方の前記第1電極の上まで連続して配置された電子デバイスであって、前記第1絶縁層は、前記基板に対して傾斜した傾斜部を有し、前記傾斜部の上に配置され、前記第1電極の端部を覆う第2絶縁層を有し、前記第1電極は、前記傾斜部の上に配置され、前記第2絶縁層に覆われた第1部分と、前記機能層と接する第2部分と、を有し、前記第1部分の上に配置された前記機能層の、前記第1部分と接する面に対する法線方向の厚さは、前記第2部分の上に配置された前記機能層の、前記第2部分と接する面に対する法線方向の厚さよりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隣り合う素子の間の電流リークをより確実に抑制可能な電子デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る有機発光装置の構成を示す平面図。
【
図2】第1の実施形態に係る有機発光装置の構成を示す断面図。
【
図5】下部電極の平坦部上における有機層の層厚に対する、隣り合う2つの下部電極の平坦部の間の距離の比と、赤画素の色度の関係図。
【
図6】成膜シミュレーションにおける部材の配置図。
【
図8】第2の実施形態に係る有機発光装置の構成を示す断面図。
【
図9】第3の実施形態に係る有機発光装置の構成を示す断面図。
【
図11】第4の実施形態に係る有機発光装置の構成を示す断面図。
【
図12】第5の実施形態に係る有機発光装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態にかかる有機発光装置の詳細を説明する。なお、以下の実施の形態は、いずれも本発明の一例を示すのであり、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、本発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。また、「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上又は直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0014】
本明細書において、「略平行」とは、二つの直線または平面が-15°以上15°以下の角度で配置されている状態をいう。また、本明細書において、「AからBまでの間において連続して配置されている」とは、AからBまでの間において途切れることなく連続して配置されていることを意味する。また、本明細書において、「高さ」とは、基板1の上面(第1の面)からの上方向の距離である。基板1の上面(第1の面)と平行な部分を指定しその指定した基準に基づいて「高さ」を指定してもよい。
【0015】
[第1の実施形態]
図1~7を参照して、本発明の第1の実施形態に係る有機発光装置について説明する。本実施形態は、電子デバイスが有機発光装置である例である。
【0016】
(有機発光装置の全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る有機発光装置100の構成を示す平面図である。有機発光装置100は、基板1上(基板上)に複数の画素PXが二次元アレイ状に配置された表示領域110と、周辺回路120を有する。周辺回路120は、表示領域110に画像を表示するための回路であり、画像表示用のドライバである信号線駆動回路121(信号出力回路)と信号線駆動回路122(垂直走査回路)とを含んでもよい。
【0017】
複数の画素PXのそれぞれは、複数の副画素SPを有する。本実施形態では、複数の画素PXのそれぞれは、第1色の光を出射する第1副画素SPRと、第2色の光を出射する第2副画素SPGと、第3色の光を出射する第3副画素SPBの3種類の副画素SPを有している。ここでは、第1色、第2色、および第3色は、例えばそれぞれ赤色、緑色、および青色であるものとする。なお、ここで示した画素PXの構成は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、複数の画素PXのそれぞれは、第1副画素SPR、第2副画素SPG、第3副画素SPBの他に、第4色を出射する第4副画素SPWを有していてもよい。第4色は、例えば白色や黄色であってもよい。また、本実施形態では副画素SPの配列がデルタ配列である例を示すが、これに限定はされず、ストライプ配列やスクエア配列、ベイヤー配列であってもよい。
【0018】
(発光素子の構成)
図2は、
図1の線分A-A´における断面模式図である。複数の副画素SPは、基板1の上面(第1の面)に配置された発光素子10をそれぞれ有する。
図1には、有機発光装置100が有する複数の画素PXのうちの1つの画素PXが有する、3つの副画素SPが示されている。第1副画素SPRは第1発光素子10Rを有し、第2副画素SPGは第2発光素子10Gを有し、第3副画素SPBは第3発光素子10Bを有する。第1発光素子10Rは第1色の光を出射する発光素子であり、第2発光素子10Gは第2色の光を出射する発光素子であり、第3発光素子10Bは第3色の光を出射する発光素子である。なお本明細書において、複数の発光素子10のうちの特定の発光素子に言及する場合は、発光素子10「R」のように参照番号の後に添え字を付して示す。また、発光素子の種類を特定せずに発光素子に言及する場合は、単に発光素子「10」と示す。他の構成要素についても同様である。
【0019】
複数の発光素子10は、それぞれ、基板1の上面の側(基板側)から、第1絶縁層3と、第1電極である下部電極2と、発光層を含む有機層4と、第2電極である上部電極5と、をこの順に有する。発光層を含む有機層4は、機能層ということもできる。本実施形態の有機発光装置100は、上部電極5から光を取り出すトップエミッション型デバイスである。さらに、有機発光装置100は、上部電極5を覆うように配置された保護層6と、第1平坦化層8と、第2平坦化層9と、カラーフィルタ層70と、を含む。
【0020】
カラーフィルタ層70は、第1カラーフィルタ7Rと、第2カラーフィルタ7Gと、第3カラーフィルタ7Bと、を含む。第1カラーフィルタ7Rは第1の色の光を透過するカラーフィルタであり、第2カラーフィルタ7Gは第2の色の光を透過するカラーフィルタであり、第3カラーフィルタ7Bは第3の色の光を透過するカラーフィルタである。それぞれのカラーフィルタ7は、複数の発光素子10ごとに配置されており、発光素子10の発光領域のそれぞれと対応するように配置されている。
図1の平面図において、各副画素SP(発光素子10)が有するカラーフィルタ7は実線で示されている。また、
図1において、各副画素SPが有する下部電極2の外縁は破線で示されており、第1絶縁層3の開口部は一点鎖線で示されている。後述するように、有機層4は下部電極2と接しており、有機層4と下部電極2とが接している領域が、各副画素SPの発光領域となる。本実施形態では下部電極2はその上面の全体が有機層4と接しているため、各副画素SPの発光領域は
図1の点線で示される領域である。
図1に示すように、それぞれのカラーフィルタ7は、対応する発光素子10の発光領域の中心と平面視で重なるように配置されている。
【0021】
本実施形態では、各発光素子10が有する有機層4は白色発光する。そして、カラーフィルタ7R、7G、7Bは、有機層4から発せられる白色光から、RGBそれぞれの光を選択的に透過することで分離し、外部に出射する。カラーフィルタ層70の有するカラーフィルタの少なくとも一部は、有機層から発せられた光を吸収して他の色に変換して出射する色変換層であってもよい。色変換層は、量子ドット(QD)を含んでもよい。また、カラーフィルタ層70は、4種類以上のカラーフィルタを有していてもよい。さらに、有機層4が発する光は白色光でなくてもよい。
【0022】
基板1は、第1の面を有する板状部材である。基板1の第1の面の上に各種構成要素が積層され、有機発光装置100が形成されている。基板1はシリコン基板などの半導体基板であってもよいし、ガラスや石英、樹脂などの絶縁体基板であってもよい。また、基板1は可撓性を有していてもよい。
【0023】
基板1の上には、下部電極2と電気的に接続されているトランジスタを含む駆動回路層(不図示)が形成されていてもよい。本実施形態では、駆動回路層に形成される駆動回路はアクティブマトリクス型の画素駆動回路である。したがって、有機発光装置100はアクティブマトリクス型表示装置であるともいえる。駆動回路層は基板1の上に積層されて形成されていてもよいし、半導体プロセスによってその一部が基板1に直接形成されていてもよい。駆動回路層は、トランジスタと、配線層と、配線層の間に配置される絶縁物を含んでいてもよい。絶縁物は例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸窒化シリコン(SiON)等の無機物、ポリイミド、ポリアクリル等の有機物で構成される層間絶縁層が挙げられる。層間絶縁層は、その上面に平坦な面を有しており、下部電極2を形成する際の下地となる面の凹凸を軽減する目的から平坦化層と呼ばれることもある。基板1が駆動回路層を有する場合には、駆動回路層も含めて「基板」ととらえてもよい。なお、駆動回路層も含めて「基板」ととらえる場合には、駆動回路層の最上層の層間絶縁層の上面を、第1の面ととらえることができる。本実施形態においては、第1の面の上には下部電極2が形成されるため、下部電極2の下面のうちの基板1と接している面は第1の面と一致する。そのため、下部電極2の下面のうちの基板1と接している面を第1の面とみなしてもよい。
【0024】
第1絶縁層3は、基板1の上に配置されている。第1絶縁層3は副画素SPと、それと隣り合う別の副画素SPと、の間に配置されており、第1絶縁層3によって各副画素SPが画定されている。また、第1絶縁層3は基板1の第1の面に対して傾斜した傾斜部31を有している。第1絶縁層3は画素分離膜、隔壁、バンクなどとも呼ばれる。
【0025】
図2に示すように、第1副画素SPRと第2副画素SPGとの間に配置されている第1絶縁層3は、第1副画素SPRに近い側の端部に傾斜部31Rを有し、第2副画素SPGに近い側の端部に傾斜部31Gを有する。同様に、第2副画素SPGと第3副画素SPBとの間に配置されている第1絶縁層3は、第2副画素SPGに近い側の端部に傾斜部31Gを有し、第3副画素SPBに近い側の端部に傾斜部31Bを有する。また、
図2には示されていないが、第3副画素SPBと第1副画素SPRとの間に配置されている第1絶縁層3は、第3副画素SPBに近い側の端部に傾斜部31Bを有し、第1副画素SPRに近い側の端部に傾斜部31Rを有する。また、第1絶縁層3は、2つの傾斜部31の間には平坦部32を有する。なお、第1副画素SPR、第2副画素SPG、第3副画素SPBは、それぞれ、第1発光素子10R、第2発光素子10G、第3発光素子10B、と読み替えてよい。
【0026】
第1絶縁層3は、例えば、化学気相堆積法(CVD法)や物理蒸着法(PVD法)などで形成してよい。第1絶縁層3は、例えば、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiOx)、酸窒化シリコン(SiON)などで構成されてよい。また、第1絶縁層3は、それらの積層膜でもよい。第1絶縁層3の傾斜部31の傾斜角は、異方性エッチングや等方性エッチングの条件によって制御可能である。また、第1絶縁層3の下に配置される層の傾斜角を制御することで、第1絶縁層3の傾斜部31の傾斜角を制御してもよい。第1絶縁層3は、エッチングなどによる加工や、層の積み増しなどによって、上面に凹凸を有してもよい。
【0027】
下部電極2は、アノード(陽極)であり、それぞれの発光素子10ごとに電気的に分離して配置される。換言すれば、下部電極2は、副画素ごとに電気して分離して配置される。複数の発光素子10が、下部電極2をそれぞれ独立に有する、ということもできる。下部電極2は、画素電極や個別電極などとも呼ばれる。本実施形態では、下部電極2はアノードとしての機能の他に、有機層4から発生した光を反射して発光素子10の発光効率を高める反射層としての機能も兼ねている。下部電極2は、反射層としての機能を高めるために、有機層4の発光波長に対する反射率が80%以上の金属材料が用いられてもよい。ここで、有機層4の発光波長は、有機層4から発せられる光の最大強度の波長である。下部電極2の材質としては、例えば、Al(アルミニウム)やAg(銀)などの金属や、これらの金属にSi、Cu、Ni、Ndなどを添加した合金を使用することができる。あるいは、下部電極2は、可視光領域における光の反射率が80%以上の金属材料が用いられてもよい。下部電極2は、バリア層を含む積層構造としてもよい。バリア層の材料としては、Ti、W、Mo、Auなどの金属やその合金を用いてよい。バリア層は、下部電極2の上面に配置される金属層であってよい。
【0028】
下部電極2は、第1絶縁層3の有する傾斜部31の上に配置される第1部分21と、基板1の上に基板1と接するように配置される第2部分22と、を有する。さらに、下部電極は、第1絶縁層3の有する平坦部31の上に配置される第4部分24をさらに有する。下部電極2は直下の層の形状に沿うように配置されている。そのため、傾斜部31の上に配置されている第1部分21は、その上面および下面が、傾斜部31と同様に基板1の第1の面に対して傾斜している。一方、基板1の上に配置される第2部分22は、その上面および下面が、基板1の第1の面と略平行である。第2部分22は、基板1とは反対側の面(すなわち上面)の基板1に対する傾斜角が第1部分21よりも小さい部分であるともいえる。また、平坦部32の上面は、基板1の第1の面と略平行である。そのため、平坦部32の上に配置される第4部分24は、その上面および下面が、基板1の第1の面と略平行である。第4部分24は、基板1とは反対側の面(すなわち上面)の基板1に対する傾斜角が第1部分21よりも小さい部分であるともいえる。また、第1部分21は平面視で第2部分22を取り囲むように配置されているともいえる。さらに、第4部分24は平面視で第1部分21を取り囲むように配置されているともいえる。
【0029】
有機層4は、下部電極2と上部電極5との間に配置されている。有機層4は、下部電極2および第1絶縁層3の上に、複数の発光素子10に共通に、連続して配置されている。1つの有機層4を複数の発光素子10で共有しているともいえる。有機層4は、1つの画素PXを構成する複数の副画素SPにわたって共通に配置されていてもよい。有機層4は、隣り合う画素PXと画素PXとの間では分離されていてもよいし、複数の画素PXにわたって共通に配置されていてもよい。有機層4は、有機発光装置100の画像を表示する表示領域110の全面わたって、一体的に形成されていてもよい。有機層4が複数の層から構成される場合には、その少なくとも一部の層が、複数の発光素子10にわたって連続して配置されていてもよい。副画素SPのサイズが微細な場合には、特に、有機層4を複数の副画素SPにわたって共通に配置することが有効である。
【0030】
有機発光装置100が含む複数の画素PXが、第1下部電極2Rを有する第1副画素SPRと、第2下部電極2Gを有する第2副画素SPGと、をそれぞれ含む場合を考える。このとき、有機層4の少なくとも一部は、第1下部電極2Rの上から第2下部電極2Gの上までの間において連続して配置されていてもよい。なお、「連続して配置される」とは、途中で途切れることなく配置されることを意味する。また、「第1下部電極2Rの上から第2下部電極2Gの上までの間において連続して配置される」とは、第1下部電極2Rの上から第2下部電極2Gの上まで途切れることなく配置されていることを意味する。
【0031】
有機発光装置100が含む複数の画素PXが、第1下部電極2Rを有する第1副画素SPR、第2下部電極2Gを有する第2副画素SPG、第3下部電極2Bを有する第3副画素SPBと、をそれぞれ含む場合を考える。このとき、有機層4の少なくとも一部は、下記を満たしてもよい。第1下部電極2Rの上から第2下部電極2Gの上までの間、第2下部電極2Gの上から第3下部電極2Bの上までの間、および、第3下部電極2Bの上から第1下部電極2Rの上までの間、のうちの少なくとも2つにおいて連続して配置されていてもよい。また、第1下部電極2Rの上から第2下部電極2Gの上までの間、第2下部電極2Gの上から第3下部電極2Bの上までの間、および、第3下部電極2Bの上から第1下部電極2Rの上までの間、のすべてにおいて連続して配置されていてもよい。
【0032】
有機層4は、下部電極2から供給された正孔と上部電極2から供給された電子とが再結合して発光する発光層を含む。有機層4は、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を含んでよい。有機層4は、発光効率、駆動寿命、光学干渉といった観点からそれぞれ適切な材料を選択することができる。正孔輸送層は、電子ブロック層や正孔注入層として機能してもよく、正孔注入層や正孔輸送層や電子ブロック層などの積層構造としてもよい。発光層は、異なる色を発光する発光層の積層構造でもよく、異なる色を発光する発光ドーパントを混合した混合層でもよい。発光層は、第1色の光を発光する第1色発光材料、第2色の光を発光する第2色発光材料、第3色を発光する第3色発光材料を含んでいてもよく、各発光色を混合することによって白色光を得られるように構成されていてもよい。第1色、第2色、および第3色は、例えばそれぞれ赤色、緑色、および青色であってもよい。発光層は、青色発光材料と黄色発光材料などの補色の関係の発光材料を含有していてもよい。また、電子輸送層は、正孔ブロック層や電子注入層として機能してもよく、電子注入層や電子輸送層や正孔ブロック層の積層構造としてもよい。
【0033】
また、有機層4は複数の発光層と、複数の機能層間に配置される中間層と、を有していてもよく、有機発光装置100は、中間層が電荷発生層であるタンデム構造の発光装置であってもよい。タンデム構造は、電荷発生層と発光層との間に正孔輸送層や電子輸送層などの電荷輸送層を有していてもよい。
【0034】
電荷発生層は、電子供与性の材料と電子受容性の材料を含み電荷を発生する層である。電子供与性の材料と電子受容性の材料とは、それぞれ、電子を与える材料およびその電子を受け取る材料である。これによって、電荷発生層には正および負の電荷が発生するため、電荷発生層よりも上方および下方の層に、正または負の電荷を供給することができる。電子供与性の材料は、例えば、リチウム、セシウムなどのアルカリ金属であってもよい。また、電子供与性の材料は、例えば、フッ化リチウム、リチウム錯体、炭酸セシウム、セシウム錯体などであってもよい。この場合、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムのような還元性の材料と共に含まれることで、電子供与性を発現してもよい。電子受容性の材料は、例えば、酸化モリブデンのような無機物であってもよく、[ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル](HAT-CN)のような有機物であってもよい。電子受容性の材料と電子供与性の材料は混合されていてもよいし、積層されていてもよい。
【0035】
上部電極5は、カソード(陰極)であり、有機層4の上に配置される。上部電極5は、複数の発光素子10にわたって連続的に形成され、複数の発光素子10によって共有されている。有機層4と同様に、上部電極5は、有機発光装置100の画像を表示する表示領域110の全面にわたって、一体的に形成されていてもよい。上部電極5は、上部電極5の下面に到達した光の少なくとも一部を透過する電極であってよい。上部電極は、一部の光を透過するとともに、他の一部を反射する性質(すなわち半透過反射性)を有する半透過反射層として機能してもよい。上部電極5は、例えばマグネシウムや銀などの金属、または、マグネシウムや銀を主成分とする合金、もしくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属を含んだ合金材料から形成されうる。また、上部電極5としては、ITO、IZO、ZnO、AZO、IGZOなどの酸化物導電体などが用いられてもよい。また、上部電極5は、適当な透過率を有するならば、積層構造であってもよい。
【0036】
保護層6は、上部電極5の上に、複数の発光素子10にわたって連続的に形成され、複数の発光素子10によって共有されている。保護層6は、透光性を有し、外部からの酸素や水分の透過性が低い無機材料を含んでいてもよい。保護層6は、防湿層や封止層などとも呼ばれる。保護層6は、例えば、窒化シリコン(SiNx)、酸窒化シリコン(例えば、SiON)、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)、酸化シリコン(SiOx)および酸化チタン(例えば、TiO2)などを含んでいてもよい。窒化シリコン、酸窒化シリコンは、例えば、CVD法またはスパッタリング法を用いて形成されてよい。一方、酸化アルミニウム、酸化シリコンおよび酸化チタンは、原子層堆積法(ALD法)を用いて形成されてよい。保護層6の構成材料と製造方法の組み合わせは、上記の例示に限定されないが、形成する層厚、それに要する時間など、を考慮して製造されてよい。保護層6は、上部電極5を透過した光を透過し、十分な水分遮断性能があれば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0037】
カラーフィルタ層70は、保護層6の上に形成される。上述のように、カラーフィルタ層70は、第1カラーフィルタ7Rと、第2カラーフィルタ7Gと、第3カラーフィルタ7Bと、を含んでもよい。
図2に示される第1カラーフィルタ7Rと第2カラーフィルタ7Gとのように、カラーフィルタ層70に含まれるカラーフィルタ7は、隙間なく接してもよい。また、カラーフィルタ7の端部が他の色のカラーフィルタ7の端部の上に重なるように配置されてもよい。
【0038】
平坦化層8は、保護層6とカラーフィルタ層70の間に形成され、平坦化層9は、カラーフィルタ層70の上に形成される。平坦化層8及び9は、例えば樹脂で形成される。
【0039】
(第1絶縁層の傾斜部の上に配置される各層の構成)
次に、第1絶縁層3の傾斜部31の上に配置される各層の構成について説明する。
【0040】
図2に示すように、本実施形態に係る有機発光装置100は、第1絶縁層3が傾斜部31を有し、傾斜部31の上には下部電極2、有機層4、および上部電極5が積層されている。そして、有機層4の、下部電極2の第1部分21の上に配置されている部分は、下部電極2の第2部分22の上に配置されている部分よりも層厚が薄くなっている。ここで、本明細書において、層Aの「層厚」は、層Aの下地となる層Bの上面(すなわち、層Bの、層Aと接する面)に対する法線方向の厚さである。すなわち、有機層4の下部電極2の第1部分21の上に配置されている部分の層厚は、第1部分21の上面に対する法線方向の厚さということもできる。また、有機層4の下部電極2の第2部分22の上に配置されている部分の層厚は、第2部分22の上面に対する法線方向の厚さということもできる。
【0041】
これによって、有機層4のうち、第1部分21の上に配置された部分の層厚方向の抵抗を、第2部分22の上に配置された部分の層厚方向の抵抗よりも小さくすることができる。これにより、下部電極2から注入された電荷が横方向、すなわち隣の副画素SPの方へと流れてしまったとしても、隣の副画素SPに到達する前に、第1部分21の上の有機層4が薄くなっている部分で電荷再結合を生じさせることができる。この結果、副画素SP間での電荷のクロストークを抑制することができ、副画素SP間での電流リークを抑制することができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、傾斜部31の上に配置されて薄くなっている有機層4は、下部電極2と上部電極5に挟まれるように配置されている。これにより、有機発光装置100を駆動し、副画素SPを構成する発光素子10を発光させている間は、下部電極2と上部電極5との間に電界が印加された状態となる。そのため、下部電極2を設けずに傾斜部31の上に有機層4を薄く配置した場合よりも、傾斜部31の上の有機層4における電荷再結合をより一層生じやすくすることができる。この結果、副画素SP間での電流リークをより一層抑制することができる。
【0043】
図3は、
図2の点線部Cを拡大した図である。上述のとおり、下部電極2は、傾斜部31の上に配置された第1部分21と、基板1と接する第2部分22と、平坦部32の上に配置された第4部分24と、を有する。また、有機層4は下部電極2および第1絶縁層3を覆って配置されており、第1部分21の上に配置され層厚が薄くなっている第1領域41と、第2部分22の上に配置された第2領域42と、を有している。第1領域41は下層の傾斜部31および第1部分21と同様に基板1の第1の面に対して傾斜しているため、有機層4の傾斜領域とも呼ぶことができる。また、第2領域42は下層の第2部分22と同様にその上面および下面が基板1の第1の面と略平行に配置されているため、有機層4の平坦領域とも呼ぶことができる。
【0044】
有機発光装置100の各副画素SPが
図1に示すような平面構造を有する場合には、傾斜部31は下部電極2の周縁部に沿って、六角形の各辺を一周してまたがって形成される。換言すれば、傾斜部31は、下部電極2の有機層4と接する第2部分22を取り囲むように配置されている。
【0045】
有機層4の第1領域41は、第1部分21の上に配置されて層厚が薄くなっている部分であるが、
図3に示すように、その両端には層厚が薄くなっていない部分も存在している。すなわち、第1領域41のうち、下部電極2と上部電極5とが互いに平行に対向し合っている領域に含まれる部分については層厚が薄くなっているが、それ以外の部分についてはこの限りではない。第1領域41の第2領域42と隣接する部分については、層厚の大きな第2領域42によって第1領域41が埋められてしまっているため、層厚は大きくなっている。第1領域41の第2領域42とは反対側の端部についても同様である。したがって、第1領域41の層厚は、下部電極2と上部電極5とが互いに平行に対向し合っている領域において測定することが好ましい。また、第2領域42についても同様に、下部電極2と上部電極5とが互いに平行に対向し合っている領域において測定することが好ましい。
図3に示すように、本実施形態では、第1領域41の層厚T1は、第2領域42の層厚T2よりも小さい。
【0046】
また、
図3に示すように、第2領域42の有機層4の上面の高さH1が、傾斜部31の上端33の高さH2より低いことが好ましい。これによって、下部電極2上に形成される有機層4が、傾斜部31に沿って形成される有機層4を全て埋めることがなくなる。そのため、下部電極2および第1絶縁層3の上に有機層4を配置した際に、傾斜部31の上に配置される第1領域41の層厚を薄くしやすい。よって、副画素SP間の電流リークを抑制しやすくなる。
【0047】
(主発光領域間の間隔と第1領域の層厚)
上述のように、有機発光装置100は、複数の副画素SPごとにそれぞれ下部電極2が配置されている。ここで、
図2に示すように、ある下部電極2の第2部分22と、それと隣り合う下部電極2の第2部分22と、の間の最短距離をdとする。換言すれば、距離dは、隣り合う2つの第2領域42の間の最短距離ということもできる。
【0048】
有機発光装置100において、下部電極2の第2部分22上における有機層4(すなわち第2領域42)の層厚T2に対する、隣り合う2つの下部電極2の第2部分22の間の距離dの比(d/T2)が、50未満であってよい。ここで、下部電極2の第2部分22上に配置された有機層4(すなわち第2領域42)は、各副画素SPの発光領域のうち、最も大きく発光に寄与する部分であり、主発光領域ともいうことができる。層厚T2に対する距離dの比(d/T2)が小さいほど、有機層4の主発光領域同士の間隔が小さいことを意味し、副画素SPを構成する発光素子10が高密度に配置されていることを意味する。そして、従来の有機発光装置などの電子デバイスにおいては、層厚T2に対する距離dの比(d/T2)が50未満である場合には、副画素SP間での電流リークが特に大きな課題となっていた。その根拠を以下に説明する。
【0049】
図4は、比較例の有機発光装置900の構成を示す模式図である。有機発光装置900が有機発光装置100と異なる点は、有機発光装置900が、第1絶縁層3の傾斜部31と、傾斜部31の上に配置された下部電極2の第1部分21を有さない点である。換言すれば、有機発光装置900は、本実施形態に係る有機発光装置100が有する電流リーク抑制構造を有さない、ということもできる。
図4では、発光素子10Rの等価回路を重ねて示している。なおこの等価回路は、
図4の有機層4の抵抗値を模式的に示すものであり、電子回路が組み込まれることを意味するものではない。また、発光素子10間の電流リークを説明するために、発光素子10Gの等価回路も示している。有機発光装置900の有する発光素子10Rは赤色の光を出射する赤色発光素子であり、発光素子10Gは緑色の光を出射する緑色発光素子である。
【0050】
下部電極2R上の有機層4の層厚をT2、下部電極2Rと下部電極2Gの開口部の間の距離をd、有機層4の厚さ方向における単位面積あたりの抵抗をrとする。なお、本比較例においては、下部電極2は平坦な基板1上に形成された平坦な部分のみから構成されている。そのため、下部電極2はその全体が第2部分22であるともいえる。したがって、下部電極2Rと下部電極2Gの開口部の間の距離は、隣り合う2つの下部電極2の第2部分2の間の距離、ともいえる。
【0051】
このとき、有機層4の水平方向における単位面積あたりの抵抗は、r(d/T2)となる。ここから、発光素子10Rの下部電極2と上部電極5との間に流れる電流をIR、発光素子10Gの下部電極2と上部電極5との間に流れる電流をIGとすると、以下の関係が成り立つ。
IG/IR=1/(1+d/T2)・・・式(1)
【0052】
式(1)は、発光素子10Rのみを発光させようとしても、発光素子10Gにも電流が流れて発光素子10Gも発光してしまうことを意味している。そして、隣の発光素子10Gに流れる電流の大きさはd/T2に依存しており、d/T2が小さいほど、隣の発光素子10Gに電流が流れやすいことを意味している。
【0053】
同じ電流量で発光させた際の、発光素子10Rのみの発光スペクトルをSR、発光素子10Gのみの発光スペクトルをSG、とする。このとき、発光素子10間のリーク電流を考慮した発光スペクトルSR+Gは、以下の式(2)にて示される。
SR+G=SR+SG(IG/IR)・・・式(2)
【0054】
S
R+GのCIExy空間における色度座標を算出し、色度座標のx座標の値(CIE_x)を縦軸にとり、d/T2を横軸にとったグラフを
図5に示す。
図5は、d/T2と色度座標のx値との関係を表している。
図5において色度座標のx座標が変化するということは、赤色の発光を意図しているにも関わらず、緑色も発光されていることを意味する。すなわち、
図5において、x座標の値が小さいことは、隣の画素へのリーク電流が発生していることを示している。
【0055】
図5に示されるように、d/T2が50以上の場合、x座標の値が高いまま、ほとんど変化しない。一方、d/T2が50未満の場合には、x座標の値が大きく低下しており、赤色の色純度低下が顕著となることがわかる。このように、層厚T2に対する距離dの比(d/T2)が50未満である場合には、副画素SP間での電流リークが特に大きな課題となりうることがわかる。
【0056】
一方、本実施形態の場合には、第1絶縁層3の傾斜部31と、傾斜部31の上に配置された下部電極2の第1部分21を設けることで、副画素SP間での電流リークを抑制する電流リーク抑制構造を実現している。このような構成とすることで、層厚T2に対する距離dの比(d/T2)が50未満であって副画素SP間での電流リークが生じやすい場合であっても、電流リークを抑制することができる。
【0057】
(絶縁層の傾斜部の傾斜角)
図3に示すように、傾斜部31の傾斜角をθ
i、下部電極2の第1部分21の上面の傾斜角をθ
jとする。θ
jは、有機層4の形成される下地となる層の上面の傾斜角、すなわち、第1の領域41の下面が接する層の上面の傾斜角であるともいえる。このとき、下部電極2の第1部分21の下面の傾斜角はθ
i、有機層4の第1の領域41の下面の傾斜角はθ
jとなる。下部電極2が傾斜部31の上に一定の層厚で形成されている場合には、θ
iとθ
jは略等しくなる。
【0058】
このとき、傾斜角θjは、30°以上であることが好ましく、より好ましくは50°以上である。θiとθjは略等しい場合には、傾斜角θiも30°以上であることが好ましく、より好ましくは50°以上である。これによって第1の領域41の有機層4の層厚T1を薄くしやすく、副画素SP間での電流リークを抑制する効果が大きくできる。その根拠を以下に示す。
【0059】
本実施形態における好ましい傾斜部31の傾斜角についての知見を得るために、蒸着法による成膜シミュレーション(蒸着シミュレーション)を実施した。
図6は、成膜シミュレーションの前提となる、成膜源(蒸着源)と成膜対象(基板)の位置関係を示す配置図である。蒸着源201、基板202、基板に配された有機デバイス203の位置を
図6のように設定し、R=200mm、r=95mm、h=340mmとした。
【0060】
以下の式(3)で表す、蒸着分布のn=2とした。
φ=φ0cosnα・・・式(3)
【0061】
ここで、式(3)において、αは角度、φは角度αにおける蒸気流密度、φ0はα=0における蒸気流密度である。また、基板202は基板の中心で回転することを前提とした。
【0062】
基板上の有機デバイス203の位置に傾斜角0°~90°の傾斜部がある場合を仮定し、傾斜角0°における有機層の層厚を76nmとした際の、各傾斜角における、傾斜部に沿った有機層の領域の層厚を計算した。
【0063】
図7に、成膜シミュレーションの結果を示す。ここから、傾斜角が30°以上である場合、傾斜部31に沿った有機層4の第1の領域41における有機層4の層厚T1が薄くなりやすいことがわかる。また、傾斜角が50°以上である場合、傾斜部31に沿った有機層4の第1の領域41における有機層4の層厚T1がより一層薄くなりやすいことがわかる。
【0064】
一方、有機層4の第1の領域41の下面と接する層の傾斜面の、傾斜角θjは、70°未満が好ましく、より好ましくは60°未満である。これによって、領域41の有機層の厚さが薄くなり過ぎず、下部電極2と上部電極5間の電流リークを抑制することができる。
【0065】
傾斜部31の上に配置される有機層4の層厚T1は、20nm以上であってよい。傾斜部31の上に配置される有機層4の層厚T1は、好ましくは25nm以上であり、特に好ましくは33nm以上である。これによって、上部電極2と下部電極5間の電流リークをより一層抑制することができる。
【0066】
[第2の実施形態]
図8を参照して、本発明の第2の実施形態に係る有機発光装置について説明する。以下の説明では、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0067】
図8は、第2の実施形態に係る有機発光装置200の構成を示す断面図である。有機発光装置200は、有機発光装置100の構成に加えて、下部電極2の端部を覆う第2絶縁層14を有する。これ以外の構成については、第1の実施形態に係る有機発光装置100と同じである。
【0068】
本実施形態においては、第2絶縁層14は、下部電極2の第1絶縁層3の平坦部32の上に配置された部分である第4部分24から、下部電極2の基板1上に配置された平坦な部分までを覆っている。ここで、下部電極2のうち、第1部分21と第2部分22との間に配置され、第1部分21よりも基板に対する傾斜角が小さな部分を第3部分23とする。第3部分23は、第2部分22と同様に、その上面が基板1の第1の面と平行な部分であってよい。第3部分23と第4部分24はともにその上面が基板1の第1の面と平行な部分であってよいが、第3部分23は第4部分24よりも基板1に近い位置に配置されている。すなわち、第2絶縁層14は、第3部分23、第1部分21、および、第4部分24の上に配置されている。第2絶縁層14は、傾斜部31の上に配置された第1部分21の上に配置されているので、傾斜部31の上に配置されている、ということもできる。さらに、隣り合う副画素SPの下部電極2の端部まで連続して配置されている。
【0069】
下部電極2は、第2絶縁層14に覆われていない部分、すなわち、第2絶縁層14の開口部において、有機層4と接している。本実施形態においては、下部電極2は、基板1の上に配置された部分の中央領域(第2部分22)において、有機層4と接している。したがって、本実施形態においては、この領域が発光領域となる。換言すれば、発光領域は、第2絶縁層14の開口部によって規定されている。
【0070】
本実施形態においても、傾斜部31の上に下部電極2および有機層4を配置することにより、有機層4の層厚を薄くするとともに、下部電極2および上部電極5の間に電界を印加することで、副画素SP間での電流リークを抑制することができる。さらに、本実施形態においては、第1絶縁層3に乗り上げている下部電極2を覆うように、第2絶縁層14が配置されているため、傾斜部31上の第1部分21が有機層4と接しないように構成される。これにより、傾斜部31の上に配置された下部電極2からは有機層4に電荷が注入されなくなるため、第1の実施形態に比べて、有機層4の第1領域41における発光が抑制される。
【0071】
第1の実施形態においては、傾斜部31上の有機層4(第1の領域41)の抵抗が低いため、傾斜部31上の下部電極2から注入される電荷による再結合発光量も大きくなりやすい。しかし、下部電極2が平坦な部分(第2部分22)上の有機層4(第2の領域42)に比べて、下部電極2が傾斜した部分(第1部分21)上の有機層4(第1の領域41)での発光は、光が発光素子10の正面方向に取り出されにくい。換言すれば、第1の領域41における発光は、第2の領域42における発光よりも、発光素子10の発光効率に寄与しにくい。したがって、第1の実施形態のように第1の領域41も下部電極2と接触させて電荷の注入を行うようにすると、発光効率が低くなってしまう場合がある。
【0072】
一方、本実施形態では、第1の領域41は下部電極2と接しておらず、第2の領域42のみが、下部電極2と接するように構成されている。そのため、第2の領域42に集中的に電荷を注入するため、発光効率を高めることができる。そして、第2の領域42に注入されたものの、隣接する副画素SPの方へと流れてしまった電荷については、第1の領域41で再結合させて発光させるようにしているので、副画素SP間での電流リークは抑制される。さらに本実施形態では、第3部分23の上にも第2絶縁層14が配置されているため、第3部分23の上に配置された有機層4(第3の領域(不図示))についても、下部電極2からの電荷の注入がされずに電界が印加されるように構成されている。そのため、第3の領域においても電荷再結合が促進されている。これにより、第1の領域41から第2の領域42の方へと流れた電荷を途中で再結合させ、当該電荷が第2の領域42まで到達しにくくなっている。この結果、発光効率をさらに高めることができる。
【0073】
[第3の実施形態]
図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係る有機発光装置について説明する。以下の説明では、主に第2の実施形態と異なる部分について説明する。
【0074】
第3の実施形態に係る有機発光装置300は、第2の実施形態に係る有機発光装置200に加えて、基板1と下部電極2との間に、反射層12を有する。そして、反射層12の上には、反射層12を覆うように第1絶縁層3が配置されている。有機発光装置200においては下部電極2の第2部分22は基板1の上に基板1に接して形成されていたが、有機発光装置300においては下部電極2の第2部分22は第1絶縁層3の第2平坦部35上に形成されている。
【0075】
反射層12は、有機層4で発光し、基板1の方向に進む光を反射する層である。反射層12は、副画素SPごとに分離されていてもよい。
図9には、反射層12が副画素SPごとに分離されている例が示されており、第1副画素SPRは第1反射層12Rを有し、第2副画素SPGは第2反射層12Gを有し、第3副画素SPBは第3反射層12Bを有している。
【0076】
有機発光装置300の発光効率の観点から、反射層12には、可視光の反射率が50%以上の材料が用いられてもよい。具体的には、AlやAgなどの金属や、それら金属にSi、Cu、Ni、Nd、Tiなどを添加した合金が、反射層12として用いられてもよい。また、反射層12は、光を反射する表面にバリア層を備えていてもよい。反射層12のバリア層の材料として、Ti、W、Mo、Auなどの金属や、それら金属の合金、また、ITO、IZOなどの透明導電酸化物が用いられてもよい。
【0077】
反射層12は、反射層12の周辺領域の上に導電層13を有してよい。導電層13は、例えば、TiやTiNなどで構成され、上記のバリア層であってもよい。反射層12の上に導電層13を設けておくことによって、反射層12と下部電極2とを電気的に接続させる際の抵抗を低減することができる。例えば、それぞれの下部電極2は、第1絶縁層3に設けられた開口(コンタクトホール)上まで延在し、開口の下に配置された反射層12の周辺部の導電層13と、開口を介して電気的に接続されてよい。
【0078】
本実施形態では、基板1の第1の面の上に反射層12が形成されているため、反射層12の下面は第1の面と一致する。そのため、反射層12の下面を第1の面とみなしてもよい。
【0079】
第1絶縁層3は、反射層12と下部電極2との間に配置される、透光性を有する絶縁層である。有機発光装置300の有する第1絶縁層3は、複数の副画素SPにわたって連続して配置されているが、副画素SPごとに、その厚さが異なるように設けられている。これにより、反射層12と有機層4の発光層の発光位置との間の光学距離をそれぞれの色で最適化する構成(共振構造)となっていてもよい。したがって、第1絶縁層3は、光学調整層ということもできる。
【0080】
第1絶縁層3は、単層で構成されていてもよいし、複数層で構成されてよい。第1絶縁層3は、複数層で構成されており、副画素SPごとに、積層されている層の数が異なっていてもよい。第1絶縁層3を構成する材料は特に限定はされないが、例えば、酸化シリコン(SiOx)を用いることができる。
【0081】
第1絶縁層3の上には、下部電極2が配置される。上述のとおり、下部電極2は副画素SPごとに電気的に分離して配置される。下部電極2は、透明材料、例えば、ITO、IZO、ZnO、AZO、IGZOなどの酸化物導電体で構成されうる。第1絶縁層3および下部電極2は、光透過性を有する。
【0082】
本実施形態に係る有機発光装置300の上部電極5と反射層12との間の光学距離は、強め合わせの干渉構造となってよい。強め合わせの干渉構造は、共振構造ということもできる。
【0083】
強め合わせの光学干渉条件を満たすように有機層4や第1絶縁層3を形成することで、光学干渉により有機発光装置からの取り出し光を強めることができる。正面方向の取り出し光を強める光学条件とすれば、より高効率に正面方向に光が放射される。また、光学干渉により強められた光は、発光スペクトルの半値幅が、干渉前の発光スペクトルに比べて小さくなることが知られている。すなわち、色純度を高くすることができる。
【0084】
波長λの光に対して設計した場合、有機層4の発光層の発光位置から反射層12の反射面までの距離d0をd0=iλ/4n0(i=1,3,5,・・・)に調整することで強め合わせの干渉とすることができる。
【0085】
その結果、波長λの光の放射分布に正面方向の成分が多くなり、正面輝度が向上する。なお、n0は、発光位置から反射面までの層の波長λにおける屈折率である。
【0086】
本実施形態では、有機層4の発光層の発光位置から反射層12との間の光学距離を各色で最適化するために、有機層4の発光層の発光位置から反射層12の反射面(例えば、上面)までの間の光学距離Lrは、以下の式(4)をおおよそ満足するようにする。なお、光学距離Lは、有機層の各層の屈折率njと各層の厚さdjの積の総和である。つまり、Lは、Σnj×djと表せ、またn0×d0とも表せられる。なお、φは負の値である。
Lr=(2m-(φr/π))×(λ/4)・・・式(4)
【0087】
ここで、上記式(4)において、mは0以上の整数(非負整数)であり、φrは反射面で波長λの光が反射する際の位相シフト量の和[rad]である。なお、φ=-πでm=0ではL=λ/4、m=1ではL=3λ/4となる。以後、上記式(4)のm=0の条件をλ/4の干渉条件と記載し、上記式(4)のm=1の条件を3λ/4干渉条件と記載する。
【0088】
また、有機層4の発光層の発光位置と上部電極5の反射面(例えば、下面)との間の光学距離Lsは、以下の式(5)をおおよそ満足するようにする。
Ls=(2m’-(φs/π))×(λ/4)=-(φs/π)×(λ/4)・・・式(5)
【0089】
ここで、上記式(5)において、m’は0以上の整数(非負整数)であり、φsは反射面で波長λの光が反射する際の位相シフトの和[rad]である。
【0090】
よって、反射層12から上部電極5までの全層干渉Lは、以下の式(6)をおおよそ満足するようにする。
L=(Lr+Ls)=(2m-(φ/π))×(λ/4)・・・式(6)
【0091】
ここで、上記式(16において、φは波長λの光が反射層12と上部電極5で反射する際の位相シフトの和(φr+φs)である。
【0092】
このとき、実際の有機発光装置においては、正面の取り出し効率とトレードオフの関係にある視野角特性等を考慮すると、上記式と厳密に一致させなくてもよい。具体的には、全層干渉Lは、式(6)を満たす値から±λ/8の値の範囲内の誤差があってもよい全層干渉Lの値が干渉条件から離れてもよい許容値は、50nm以上75nm以下であってよい。
【0093】
よって、本実施形態に係る有機発光装置300においては、下記式(7)を満たすことが好ましい。さらに好ましくは、全層干渉Lが式(6)を満たす値から±λ/16の値の範囲内であればよく、下記式(7’)を満たすことが好ましい。
(λ/8)×(4m-(2φ/π)-1)<L<(λ/8)×(4m-(2φ/π)+1)・・・式(7)
(λ/16)×(8m-(4φ/π)-1)<L<(λ/16)×(8m-(4φ/π)+1)・・・式(7’)
【0094】
ここで、発光波長λは、発光強度が最大のピークの発光波長であってよい。有機化合物の発光においては、発光スペクトルに複数のピークが含まれる場合にはそれら複数のピークのうち、波長が最も短いピークが最大発光であることが一般的なので、波長が最も短いピークの波長であってもよい。発光スペクトルは、各発光素子のCF透過後の発光スペクトルを指す。
【0095】
以下、本実施形態に係る有機発光装置300の好ましい例について説明する。
【0096】
図9に示すように、第1発光素子10Rの第1反射層12Rの上面から第1下部電極2Rの上面までの距離d
1と、第2発光素子10Gの第2反射層12G上面から第2下部電極2Gの上面までの距離d
2と、は互いに異なっていることが好ましい。なお、距離d
1は、第1発光素子10Rの第1反射層12Rの上面から第1下部電極2Rの上面までの最短距離である。また、距離d
2は、第2発光素子10Gの第2反射層12G上面から第2下部電極2Gの上面までの最短距離である。また、距離d
1と、距離d
2と、第3発光素子10Bの第3反射層12Bの上面から第3下部電極2Bの上面までの距離d
3と、は全て互いに異なっていることが好ましい。なお、距離d
3は、第3発光素子10Bの第3反射層12Bの上面から第3下部電極2Bの上面までの最短距離である。
【0097】
また、
図9に示すように、距離d
1~d
3は、下記の式(8)または式(9)を満たすことが好ましい。
d
1>d
2・・・式(8)
d
1>d
2>d
3・・・式(9)
【0098】
本実施形態において、各発光素子10の下部電極2の端部は、同じ高さにあってよい。これによって、下部電極2をフォトリソグラフィーでパターニングして形成する際に、露光のフォーカス高さが発光素子10ごとに変わらないため、下部電極2を高い精度でパターニングをすることができる。本実施形態の場合には、第1絶縁層3の平坦部32の高さが、副画素SPごとに一定の高さとなるようにしている。換言すれば、それぞれの副画素SPの有する第1絶縁層3の平坦部32の上面が、同一平面上に存在するようにしている。第1絶縁層3の第2平坦部35は光学調整層として機能させるために副画素SPごとに厚さが異なるようにしている。換言すれば、第2平坦部35の上面は、副画素SPごとに異なる平面上に存在するようにしている。これは、副画素SPごとに、第2平坦部35を構成する層の数を変えることで実現してもよい。一方、第1絶縁層3の平坦部32については厚さが一定となるようにしている。これは、副画素SPごとに、平坦部32を構成する層の数を揃えることで実現してもよい。このようにして高さを揃えた平坦部32の上に下部電極2の端部を配置することで、各副画素SPの下部電極2の端部の高さを揃えることができる。
【0099】
一方、第2平坦部35上に下部電極2の端部を形成するようにパターニングする場合は、第2平坦部35の高さは副画素SPごとに異なるため、下部電極2の端部の高さが異なってしまう。そのため、副画素SPごとにパターニング時の露光のフォーカス高さが異なってしまう。
【0100】
図10は、
図9の拡大図である。第2絶縁層14は、第1絶縁層3に乗り上げている下部電極2を覆うように配置されており、その端部141は下部電極2の第3部分23上に配置されている。第2絶縁層14は隣接する副画素SPの間にまたがって配置されているが、その間に2つの頂上部を有している。なお、ここでいう頂上部は、第2絶縁層14の一方の端部141から他方の端部141へとその上面を辿ったときに、第2絶縁層14の傾斜が、上り斜面から下り斜面に変化する部分をいう。なお、頂上部は平坦部を含んでいてもよく、上り斜面から平坦部を挟んで下り斜面に変化する部分も、頂上部ととらえることができる。このとき、一方の端部141に近い頂上部の端部を上端142とすると、第2絶縁層14は、端部141と上端142との間に、基板1の第1の面と略平行な平行部143を有する。また、第2絶縁層14は、平行部143と上端142との間に上側傾斜部144と、端部141と平行部143との間に下側傾斜部145とを有する。
【0101】
このとき、上側傾斜部144の高さ方向の長さH3は、下側傾斜部145の高さ方向の長さH4よりも、大きいことが好ましい。上側傾斜部144は、第2絶縁層14が第1絶縁層3の傾斜部31と下部電極2上に配置されて形成された傾斜であり、下側傾斜部145は第2絶縁層14の端部側面のことである。上側傾斜部144の上には有機層4の第1領域41が配置されており、この部分に下部電極2と上部電極5との間の電界が印加されることで、副画素SP間での電流リークが抑制される。したがって、上側傾斜部144を長くすることによって、副画素SP間での電流リークをより一層抑制することができる。
【0102】
下側傾斜部145の高さ方向の長さH4は、下部電極2に接する部分の電荷輸送層401(典型的には正孔輸送層)の高さ方向の長さ(厚さ)T3より大きいことが好ましい。これによって、電荷輸送層401が下側傾斜部145に沿って薄くなりやすい。これにより、副画素SP間の電荷のクロストーク(すなわち、電流リーク)を抑制できる。
【0103】
さらに、下側傾斜部145の高さ方向の長さH4は、下部電極2に接する部分の有機層4の高さ方向の長さ(厚さ)T2より短いことが好ましい。これによって、下側傾斜部145に沿った有機層4が、基板1と平行な部分に形成される有機層4に埋もれるため、有機層4が薄くなりすぎる部分ができにくい。よって、上部電極5と下部電極2間の電流リークを抑制することができる。
【0104】
さらに、下側傾斜部145の高さ方向の長さH4は、上側傾斜部144の高さ方向の長さH3よりも短いことに加え、下側傾斜部145は、上側傾斜部144よりも、最も急な部分の傾斜角が大きい傾斜部であることが好ましい。換言すれば、下側傾斜部145のほうが、上側傾斜部144よりも傾斜が急な傾斜部であることが好ましい。これによって、下側傾斜部145はその大きな傾斜角により、上に配置される電荷輸送層401を薄くしやすい。一方で、下側傾斜部145の高さ方向の長さを短くすることで、その上に配置される有機層4が薄くなりすぎることを抑制できる。これにより、副画素SP間での電流リーク(電荷のクロストーク)の抑制と、上部電極5と下部電極2間の電流リークの抑制を両立することができる。また、上側傾斜部144は、傾斜角が小さい傾斜部であるため、その上に配置される有機層4が薄くなりすぎることを抑制できる。そしてさらに、上側傾斜部144の高さ方向の長さを長くすることでその上に配置される有機層4に電界が印加される部分を長くすることができるので、副画素SP間での電流リークの抑制と、上下電極2間の電流リークの抑制を両立することができる。
【0105】
本実施形態において、反射層12の中央部は外周部よりも厚みが薄いことが好ましい。換言すれば、反射層12は下部電極2の第2部分22の下に配置される部分と第1絶縁層3の平坦部32の下に配置される部分とで厚さが異なり、第1絶縁層3の平坦部32の下に配置される部分のほうが厚さが大きいことが好ましい。そして、第1絶縁層3は、この厚さが異なる2つの部分の間に形成される段差をまたぐように配置されていることが好ましい。これによって、反射層12の形状を反映して、反射層12上の第1絶縁層3の傾斜部31を容易に形成することができる。これによって、副画素SP間での電荷のクロストークを抑制することができる。
【0106】
[第4の実施形態]
図11を参照して、本発明の第4の実施形態に係る有機発光装置400について説明する。以下の説明では、主に第3の実施形態と異なる部分について説明する。
【0107】
図11は、第4の実施形態に係る有機発光装置400の構成を示す断面図である。有機発光装置400は、有機発光装置300の構成に加えて、第2平坦化層9の上に、マイクロレンズアレイMLAを有する。これ以外の構成については、第3の実施形態に係る有機発光装置300と同じである。
【0108】
マイクロレンズアレイMLAは、第1発光素子10Rに対応する第1マイクロレンズ11Rと、第2発光素子10Gに対応する第2マイクロレンズ11Gと、第3発光素子10Bに対応する第3マイクロレンズ11Bと、を含む。各マイクロレンズ11は、対応する発光素子10の発光領域の中心と平面視で重なるように配置されている。なお、発光素子10の発光領域は第2絶縁層14の開口で規定されるが、発光領域の中心は、その第2絶縁層14の開口の重心としてもよい。
【0109】
マイクロレンズアレイMLAを構成するマイクロレンズ11としては、従来公知ものを用いることができる。マイクロレンズ11の材質は、樹脂であってよい。マイクロレンズアレイMLAは、例えば、マイクロレンズ11を形成するための材料による膜(フォトレジスト膜)を形成し、連続的な諧調変化を有するマスクを用いて、フォトレジスト膜を露光および現像することで形成することができる。このようなマスクとしては、グレーマスクや面積階調マスクを用いることが可能である。また、露光および現像プロセスで形成したマイクロレンズ11に対して、エッチバックを行うことにより、レンズ形状を調整してもよい。マイクロレンズ11の形状は、放射光を屈折させることができる形状であればよく、球面であっても非球面であってもよく、断面形状が非対称であってもよい。
【0110】
マイクロレンズ11の出射面側、換言すればカラーフィルタ7とは反対側は、マイクロレンズ11よりも屈折率が低い材料、典型的には空気で満たされていることが好ましい。これにより、マイクロレンズ11の集光効果を大きくすることができる。
【0111】
傾斜部31に沿った有機層4の第1領域41では、上部電極5と下部電極2と間に印加される電界の効果によって、電荷再結合が促進される。本実施形態では、傾斜部31に沿った下部電極2は第2絶縁層14で覆われているが、第2部分22の上に配置された有機層4に含まれる電荷輸送層401に沿って電荷が移動し、傾斜部31に沿った有機層4の第1領域41に到達しうる。この電荷は第1領域41で再結合し、有機層4の第1領域41は発光する。
【0112】
本実施形態では、上述のように、発光素子10から出射される光の色に応じて光学距離を調整し、出射される光が強まるようにしている。しかし、傾斜部31に沿った有機層4の第1領域41の下には第1絶縁層3の傾斜部31があるために、第2領域42を基準にして調整された光学距離からのずれが生じる。そのため、傾斜部31に沿った有機層4の第1領域41で、電荷再結合、発光して出射される光L1Gは、所望の波長からずれた波長が強められた光となる。そこで本実施形態では、傾斜部31に沿った有機層4の第1領域41とマイクロレンズ11の傾斜部とが平面視で重なるように、マイクロレンズ11を配置している。これにより、第1領域41から発光素子10の正面方向に放出された光が、マイクロレンズ11で屈折して正面方向からずれた方向に出射する光L2Gとなるため、正面方向に取り出されにくくすることができる。
【0113】
このため、マイクロレンズアレイMLAを設けることで、発光素子10から出射される光の色純度を向上することができる。
【0114】
[第5の実施形態]
図12を参照して、本発明の第5の実施形態に係る有機発光装置500について説明する。以下の説明では、主に第3の実施形態と異なる部分について説明する。
【0115】
図12は、第5の実施形態に係る有機発光装置500の構成を示す断面図である。有機発光装置500は、カラーフィルタ層70に含まれる複数のカラーフィルタ7のうちの異なる色のカラーフィルタ7同士が重なり合う重なり部分を有すること以外、第3の実施形態と同じである。
【0116】
有機発光装置500は、第2カラーフィルタ7Gの端部の上に第1カラーフィルタ7Rの端部が乗り上げるように重なり合う重なり領域71を有している。また、有機発光装置500は、第2カラーフィルタ7Gの端部の上に第3カラーフィルタ7Bの端部が乗り上げるように重なり合う重なり領域72を有している。
【0117】
本実施形態では、カラーフィルタ7同士が重なる重なり領域(71,72)と平面視で重畳する位置に、傾斜部31に沿った有機層4の第1領域41が配置されるようにしている。これにより、傾斜部31に沿った有機層4の第1領域41で発光した光L1Gを2種類のカラーフィルタ7によって吸収することができる。上述のとおり、第1領域41で発光した光は色純度が低い光となるため、このような光をカラーフィルタ7の重なり領域によって減光あるいは遮光し、外部に取り出されにくくしている。これにより、発光素子10から出射される光の色純度をさらに高めることができる。
【0118】
また、封止層6は、平面視で見て隣接する2つの発光素子10の下部電極2の第2部分22の間に、低密度領域(不図示)を有してよい。低密度領域は、第1領域41と平面視で重畳する位置に配置されていることが好ましい。上述のとおり、第1領域41で発光して出射される光は、所望の波長からずれた波長が強められた光となり、色純度の低下の要因となる。また、傾斜部31に沿った有機層4の第1領域41で発光した光は隣接する発光素子10のカラーフィルタ7の方向へ放出される可能性があり、隣接する発光素子10のカラーフィルタ7を透過して出射されると混色が生じてしまう。上述のように封止層6が低密度領域を有することで、低密度領域によって光が散乱されることにより、外部に取り出されにくくしている。これにより、発光素子10から出射される光の色純度をさらに高めることができる。ここでいう密度は、原子密度[atom/cm3]であってもよいし、重量密度[g/cm3]であってもよい。
【0119】
[その他の実施形態]
以上の実施形態では、副画素SPR,SPG,SPBがそれぞれカラーフィルタ7R,7G,7Bを有し、有機層4から発せられた白色光を、それぞれのカラーフィルタ7を透過させることで、第1~第3の光を出射させる構成について説明した。しかし本発明はこれに限定はされず、副画素SPがカラーフィルタ7を有さない構成であってもよい。すなわち、上記各実施形態において、有機層4を構成する複数の層のうちの少なくとも発光層が副画素ごとに分離して形成されている構成も、本発明に含まれる。このとき、第1副画素SPRは第1の色の光を発光する第1発光層を有し、第2副画素SPGは第2の色の光を発光する第2発光層を有し、第3副画素SPBは第3の色の光を発光する第3発光層を有していてもよい。そして、有機層4を構成する複数の層のうちの発光層以外の層の少なくとも一部は、各副画素SPにわたって共通に配置されていてもよい。このような実施形態においても、画素間の電流リークを抑制しつつ、光取り出し効率を向上させるという効果が発揮される。
【0120】
また、以上の実施形態では、電子デバイスの素子が有機発光素子である場合、換言すれば電子デバイスが有機発光装置である場合について説明した。このとき、電子デバイスの機能層は、発光層を含む有機層であってもよい。一方、電子デバイスの素子は光電変換素子であってもよく、電子デバイスは光電変換装置であってもよい。このとき、電子デバイスの機能層は、光電変換層を含む有機層であってもよい。
【0121】
図13は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008、を有してよい。タッチパネル1003および表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタがプリントされている。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。
【0122】
本実施形態に係る表示装置は、赤色、緑色、青色を有するカラーフィルタを有してよい。カラーフィルタは、当該赤色、緑色、青色がデルタ配列で配置されてよい。
【0123】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0124】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。
【0125】
図14(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0126】
撮像に好適なタイミングはわずかな時間なので、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、本発明の有機発光素子を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光素子は応答速度が速いからである。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が求められる、これらの装置、液晶表示装置よりも好適に用いることができる。
【0127】
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。撮像装置は光電変換装置と呼ばれてもよい。光電変換装置は逐次撮像するのではなく、前画像からの差分を検出する方法、常に記録されている画像から切り出す方法等を撮像の方法として含むことができる。
【0128】
図14(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部、を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部に映される。電子機器としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0129】
図15は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。
図15(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302には、本実施形態に係る発光装置が用いられてよい。
【0130】
額縁1301と、表示部1302を支える土台1303を有している。土台1303は、
図15(a)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台を兼ねてもよい。
【0131】
また、額縁1301および表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0132】
図15(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。
図15(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第一表示部1311、第二表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第一表示部1311と第二表示部1312とは、本実施形態に係る発光装置を有してよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第一表示部1311、第二表示部1312は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第一および第二表示部とで一つの画像を表示してもよい。
【0133】
図16(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光学フィルム1404と、光拡散部1405と、を有してよい。光源は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。光学フィルタは光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部は、ライトアップ等、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルタ、光拡散部は、照明の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
【0134】
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。それらを調光する調光回路を有してよい。照明装置は本発明の有機発光素子とそれに接続される電源回路を有してよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置はカラーフィルタを有してもよい。
【0135】
また、本実施形態に係る照明装置は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
【0136】
図16(b)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車の模式図である。当該自動車は灯具の一例であるテールランプを有する。自動車1500は、テールランプ1501を有し、ブレーキ操作等を行った際に、テールランプを点灯する形態であってよい。
【0137】
テールランプ1501は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。テールランプは、有機EL素子を保護する保護部材を有してよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネート等で構成されることが好ましい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
【0138】
自動車1500は、車体1503、それに取り付けられている窓1502を有してよい。窓は、自動車の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイは、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。この場合、有機発光素子が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
【0139】
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてよい。灯具は本実施形態に係る有機発光素子を有する。
【0140】
図17を参照して、上述の各実施形態の表示装置の適用例について説明する。表示装置は、例えばスマートグラス、HMD、スマートコンタクトのようなウェアラブルデバイスとして装着可能なシステムに適用できる。このような適用例に使用される撮像表示装置は、可視光を光電変換可能な撮像装置と、可視光を発光可能な表示装置とを有する。
【0141】
図17(a)は、1つの適用例に係る眼鏡1600(スマートグラス)を説明する。眼鏡1600のレンズ1601の表面側に、CMOSセンサやSPADのような撮像装置1602が設けられている。また、レンズ1601の裏面側には、上述した各実施形態の表示装置が設けられている。
【0142】
眼鏡1600は、制御装置1603をさらに備える。制御装置1603は、撮像装置1602と各実施形態に係る表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置の動作を制御する。レンズ1601には、撮像装置1602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0143】
図17(b)は、1つの適用例に係る眼鏡1610(スマートグラス)を説明する。眼鏡1610は、制御装置1612を有しており、制御装置1612に、撮像装置1602に相当する撮像装置と、表示装置が搭載される。レンズ1611には、制御装置1612内の撮像装置と、表示装置からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1611には画像が投影される。制御装置1612は、撮像装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、撮像装置および表示装置の動作を制御する。制御装置は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザーの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。
【0144】
赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザーの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。
【0145】
より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザーの視線が検出される。
【0146】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、受光素子を有する撮像装置を有し、撮像装置から提供されるユーザーの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。
【0147】
具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザーが注視する第一の視界領域と、第一の視界領域以外の第二の視界領域とを決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第一の視界領域の表示解像度を第二の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第二の視界領域の解像度を第一の視界領域よりも低くしてよい。
【0148】
また、表示領域は、第一の表示領域、第一の表示領域とは異なる第二の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第一の表示領域および第二の表示領域から優先度が高い領域を決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0149】
なお、第一の視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、撮像装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0150】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する撮像装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0151】
以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【符号の説明】
【0152】
1 基板
2 下部電極(第1電極)
21 第1部分
22 第2部分
3 第1絶縁層
31 傾斜部
4 有機層(機能層)
41 第1領域
42 第2領域
5 上部電極(第2電極)
10 発光素子(素子)