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特許7604177ヒータ、電気集塵装置及びヒータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ヒータ、電気集塵装置及びヒータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/04 20060101AFI20241216BHJP
   H05B 3/48 20060101ALI20241216BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20241216BHJP
   B03C 3/70 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H05B3/04
H05B3/48
H05B3/02 A
B03C3/70 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020183110
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073242
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】軸屋 幸一
(72)【発明者】
【氏名】浜田 一星
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-092437(JP,U)
【文献】米国特許第2876322(US,A)
【文献】特開2003-142234(JP,A)
【文献】実公昭48-026977(JP,Y1)
【文献】実開昭61-39884(JP,U)
【文献】特開昭58-197689(JP,A)
【文献】実公昭47-4690(JP,Y1)
【文献】特開平07-328479(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00888953(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02-3/08
H05B 3/48
B03C 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱線と、
前記電熱線が内部に配置されたパイプと、
中空の筒状部を有し、前記パイプの外周部を囲むように前記パイプの端部に設置され、内部に合成樹脂材が充填された収容部と、
端子棒を有し、前記収容部において前記パイプ側とは反対側に設けられ、外部電源と接続可能であり、前記端子棒が前記電熱線と接続された端子部と、
前記端子棒が貫通し、前記筒状部の端部に接触して設けられた端板と、
前記端子棒にネジ締めされて、前記端板を前記筒状部の前記端部に接触させるナットと、
を備えるヒータ。
【請求項2】
記筒状部の一端部において、前記パイプが前記筒状部の内部に挿入されている請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記収容部の内部には前記合成樹脂材としてエポキシ樹脂が充填され、
前記収容部の前記パイプ側とは反対側の端部においてシリコン樹脂が設置されている請求項1又は2に記載のヒータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のヒータと、
電気集塵部を構成する放電極と、
前記放電極と接続される電気導体を支持し、前記ヒータが外周面に沿って設置される碍子と、
を備える電気集塵装置。
【請求項5】
電熱線の端部に端子棒を有する端子部を接続するステップと、
パイプの内部に前記電熱線を配置するステップと、
前記パイプの外周部を囲むように、前記パイプの端部に中空の筒状部を有する収容部を設置するステップと、
前記収容部の前記筒状部の内部に合成樹脂材を充填するステップと、
前記収容部において前記パイプ側とは反対側に前記端子部を設けるステップと、
端板に前記端子棒を貫通させて、ナットを前記端子棒にネジ締めして、前記ナットによって前記端板を前記筒状部の端部に接触させるステップと、
を備えるヒータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒータ、電気集塵装置及びヒータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気集塵装置は、集塵極と放電極を備え、集塵極と放電極との間に直流高電圧が印加されることによって、コロナ放電が生じる。コロナ放電によって、電気集塵装置内を流れるガスに含まれるダストが帯電し、帯電したダストは集塵極と放電極の間の電界下でダストに作用するクーロン力の働きにより集塵極に捕集される。
【0003】
電気集塵装置は、乾式電気集塵装置と湿式電気集塵装置に分類分けされる。乾式電気集塵装置は、集塵極に捕集されたダストを槌打などの衝撃力によって払い落とすものであり、湿式電気集塵装置は、水や捕集液体などの洗浄液を利用して集塵極に捕集されたダストを洗い流すものである。湿式電気集塵装置によれば、集塵極の表面が洗浄液によって濡れた状態となるため、ダストの再飛散を抑制でき、吸湿性の高いダストが集塵極に固着しづらいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭55-44435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放電極は、電気導体を介して、外部の高圧電源と接続される。電気導体は、例えば金属部品などであり、碍子によって電気集塵装置の構造体と絶縁され、かつ、碍子によって支持される。湿式電気集塵装置において、碍子は、碍子室の内部に設置された保護筒(碍子覆い)の中に設置される。保護筒は、外面側に設けられた碍子ヒータによって加熱されることで、内部の碍子が乾燥状態とされる。碍子が乾燥されることによって、水分結露などに起因する沿面放電による碍子の破損が防止される。
【0006】
碍子ヒータが設置された碍子室の内部に漏水などの原因によって湿度が上昇した場合、碍子ヒータの端子部から碍子ヒータの本体内部に高湿度の空気が流入するおそれがある。碍子ヒータの内部には電熱線及び絶縁性の充填材が封入されているが、高湿度の空気が流入すると碍子ヒータの絶縁抵抗を低下させ、碍子ヒータの電源を投入できない。
【0007】
碍子の破損を防止するため、保護筒の温度条件を満たす場合においてのみ放電極への電圧の印加(荷電)を許可するという運転条件が設定されるとき、碍子ヒータにおいて絶縁抵抗の低下が生じている場合、電気集塵装置を運転できないという問題が生じる。
【0008】
なお、乾式電気集塵装置では、湿式電気集塵室よりも湿度が低いため、保護筒は設けられないが、碍子が乾燥状態となるように、碍子の周囲に碍子ヒータが設置される。また、乾式電気集塵装置の場合においても、碍子ヒータの本体内部への高湿度の空気の流入を防止する必要がある。
【0009】
上記の特許文献1では、パイプヒータのシール方法に関する発明が開示されている。パイプの端部には、シリコンワニス、ガラスシール、シリコンゴム又はエポキシ樹脂等の耐熱性絶縁物が充填されている。しかし、絶縁物の劣化等によってパイプの長さ方向や径方向に絶縁物が収縮したり変形が生じたりすると、絶縁物がない空隙が形成されてしまい、パイプ内部に高湿度の空気が流入するおそれがある。
【0010】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電熱線が配置されたパイプ内部への空気の流入を確実に抑制又は防止することが可能なヒータ、電気集塵装置及びヒータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本開示のヒータ、電気集塵装置及びヒータの製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示に係るヒータは、電熱線と、前記電熱線が内部に配置されたパイプと、前記パイプの外周部を囲むように前記パイプの端部に設置され、内部に合成樹脂材が充填された収容部と、前記収容部において前記パイプ側とは反対側に設けられ、外部電源と接続可能な前記電熱線と接続された端子部とを備える。
【0012】
本開示に係る電気集塵装置は、上述したヒータと、電気集塵部を構成する放電極と、前記放電極と接続される電気導体を支持し、前記ヒータが外周面に沿って設置される碍子とを備える。
【0013】
本開示に係るヒータの製造方法は、電熱線の端部に端子部を接続するステップと、パイプの内部に前記電熱線を配置するステップと、前記パイプの外周部を囲むように前記パイプの端部に収容部を設置するステップと、前記収容部の内部に合成樹脂材を充填するステップと、前記収容部において前記パイプ側とは反対側に前記端子部を設けるステップとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電熱線が配置されたパイプ内部への空気の流入を確実に抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る碍子、保温外装板、保護筒、保温材及び碍子保護用ヒータを示す斜視図であり、部分的に切断して内部を示している。
図2】本開示の一実施形態に係る碍子保護用ヒータを示す平面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る碍子保護用ヒータを示す正面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る碍子保護用ヒータの端部を示す側面図である。
図5】本開示の一実施形態の変形例に係る碍子及び碍子保護用ヒータを示す斜視図であり、部分的に切断して内部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本開示の一実施形態に係る碍子保護用ヒータについて、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る碍子保護用ヒータ1(以下「ヒータ1」という。)は、例えば図1に示すように、湿式電気集塵装置の碍子20の周囲を加熱する装置である。
【0017】
湿式電気集塵装置は、集塵極と放電極を備える。集塵極と放電極との間に直流高電圧が印加されることによって、コロナ放電が生じる。コロナ放電によって、電気集塵装置内を流れるガスに含まれるダストが帯電し、帯電したダストは集塵極と放電極の間の電界下でダストに作用するクーロン力の働きにより集塵極に捕集される。
【0018】
湿式電気集塵装置は、水や捕集液体などの洗浄液を利用して集塵極に捕集されたダストを洗い流す洗浄部を備える。洗浄部は、洗浄時において、洗浄液を集塵極に供給する。
【0019】
碍子20は、放電極に接続される電気導体24を湿式電気集塵装置の他の構造物と絶縁し、かつ、電気導体24を支持する。放電極は、電気導体24を介して、外部の高圧電源と接続される。
【0020】
湿式電気集塵装置では、碍子室に穴が開く等の不適合な事象によって、高湿度の空気が電気集塵装置の内部空間30から碍子20の周囲に流入する可能性があり、碍子20の表面に水分結露が生じると沿面放電が生じて碍子20が破損するおそれがある。碍子20の破損を防止するため、湿式電気集塵装置は、碍子20を保護する保温外装板12、保護筒13、保温材14及びヒータ1が設置される。
【0021】
碍子20の外周には、図1に示すように、保温外装板12と、保護筒13と、保温材14と、ヒータ1などを備える。碍子20、保温外装板12、保護筒13、保温材14及びヒータ1は、例えば湿式電気集塵装置の内部に設けられた天井材32上に設置される。
【0022】
保温外装板12は、例えば円筒形状を有し、円筒内部に保護筒13を収容する。保温外装板12の内面と保護筒13の外面との間には、保温材14が設置される。保温材14は、保護筒13の外周面を囲むように、保護筒13の外周面に沿って設けられる。
【0023】
保護筒13は、筒部の一例であり、例えば円筒形状を有し、保温外装板12の内部に収容される。保護筒13は、内部に碍子20を収容する。保護筒13の外周面にはヒータ1が設置される。
【0024】
碍子20は、例えば筒状であって、かつ、円錐台形状を有する。碍子20の内部において、碍子20の軸方向に対して平行に放電極と接続される電気導体24が吊り下げられる。電気導体24は、碍子20の上部に置かれた支持部22を介して碍子20に支持される。
【0025】
ヒータ1は、例えば図4に例示される電熱線2が内蔵されたパイプ3を備え、保温外装板12の円筒内部に設置された保護筒13の外周面に沿って設けられる。ヒータ1によって保護筒13の内部が加熱されることで、内部に設置された碍子20が乾燥状態とされる。碍子20が乾燥されることによって、碍子20表面における水分結露などに起因する沿面放電による碍子20の破損が防止される。
【0026】
ヒータ1は、図2から図4に示すように、例えば、電熱線2(図4参照)と、パイプ3と、収容部4と、端子部5などを有する。
【0027】
電熱線2は、例えばニクロム線であってコイル状であり、パイプ3の内部において、パイプ3の長手方向に沿って設置される。電熱線2は、通電時に発熱する。
【0028】
パイプ3は、例えば軸線に対して垂直方向に切断した断面が円形状であり、中空状部材である。パイプ3は、例えば鋼製である。パイプ3は、内部に電熱線2及び絶縁材(図示せず。)が設置される。電熱線2は、パイプ3によって保護される。絶縁材は、例えば酸化マグネシウムなどであり、耐熱性の材料であって、電熱線2に流れる電気を絶縁し、かつ、電熱線2で生じた熱をパイプ3に伝達する。
【0029】
パイプ3は、保護筒13の外周面において、周方向に沿って配置される。パイプ3の両端には、端子部5が設置される。1本のパイプ3は、保護筒13の外周面のうち約半分を占めるように設けられ、保護筒13を上面から見たとき(平面視したとき)、左右対称となるように2本のパイプ3が設置される。
【0030】
パイプ3は、中間部分における第1折り曲げ部3aと、収容部4や端子部5付近における第2折り曲げ部3bとを有する。第1折り曲げ部3aでは、パイプ3が半円形状を有するように折り曲げられている。第2折り曲げ部3bでは、保護筒13の外周面の周方向に沿って配置されたパイプ3が、保護筒13の径方向に対して平行に延びるように折り曲げられている。パイプ3が上述した形状で折り曲げられていることによって、両端の端子部5同士が近傍に設置される。
【0031】
パイプ3において保護筒13側とは反対側の外側において、保護筒13の周方向に沿って締付バンド(図示せず。)が設けられる。締付バンドが保護筒13の外周面との間でパイプ3を挟み込むことによって、パイプ3が保護筒13に対して固定される。
【0032】
パイプ3の端部には、収容部4が設置される。収容部4は、パイプ3の外周部を囲むようにパイプ3の端部に設置される。収容部4は、図4に示すように、例えば中空の筒状部6と、筒状部6のパイプ3側の端部に設置される第1端板7と、筒状部6のパイプ3側とは反対側の端部に設置される第2端板8などを有する。収容部4によってパイプ3内部への空気や流体の流入が抑制又は防止される。
【0033】
筒状部6は、例えば鋼製であって、円筒状の部材である。筒状部6の肉厚は例えば1mmであり、軸線方向の長さが20mmである。筒状部6は、パイプ3の外径が例えば12mmである場合、内径が約20mmである。筒状部6は、筒状部6の軸心とパイプ3の軸心が一致するように、第1端板7を介してパイプ3に固定される。第1端板7は、パイプ3や筒状部6に対して、例えばろう付けによって接続される。ろう付けによれば、溶接と異なり、パイプ3や筒状部6の溶融のしすぎによる破損のおそれがない。
【0034】
第1端板7には貫通孔が形成され、第1端板7の中心においてパイプ3が貫通している。したがって、パイプ3は、収容部4の一端部において収容部4の内部に挿入されている。第1端板7は例えば鋼製である。
【0035】
第2端板8には貫通孔が形成され、第2端板8の中心部において端子部5を構成する端子棒9が貫通している。第2端板8は、絶縁材であり、パイプ3と端子部5との間での沿面放電を防止できるように電気的絶縁を確保する。第2端板8は、例えばアルミナ、ステアタイトなどのセラミックス製である。
【0036】
収容部4の内部には、合成樹脂材が充填される。合成樹脂材は、例えばエポキシ樹脂15である。エポキシ樹脂15は、パイプ3の内部への高湿度の空気の流入を防止できる。また、パイプ3の端部の外周面が収容部4によって覆われていることから、収容部4における筒状部6の内面とパイプ3の外周面の間にエポキシ樹脂15が充填されている。したがって、パイプ3の端部の内部のみにエポキシ樹脂15が充填される場合と異なり、エポキシ樹脂15の劣化等による空隙の発生のおそれが少なくなり、パイプ3の内部への高湿度の空気の流入を確実に防止できる。
【0037】
収容部4の内部における第2端板8側においてシリコン樹脂16が設置されている。そして、シリコン樹脂16に接触するように第2端板8が配置される。シリコン樹脂16は、収容部4内部やパイプ3内部への流体の流入を防止できる。
【0038】
端子部5は、端子棒9を有し、電熱線2と接続されている。端子部5は、パイプ3よりも端部側に設けられる。端子部5は、外部電源と接続可能であることから、端子部5を介して電熱線2に電気が供給される。
【0039】
次に、ヒータ1の製造方法について説明する。
まず、直線形状を有するパイプ3を準備又は製作する。そして、パイプ3の内部に電熱線2を通して設置する。電熱線2をパイプ3に通す前に、電熱線2の端部に端子部5を構成する端子棒9などが接続されていることが望ましい。電熱線2がパイプ3に設置された後、パイプ3の内部に酸化マグネシウムなどの絶縁材を充填する。
【0040】
次に、例えば常温下での塑性加工である冷間鍛造をパイプ3に施し、パイプ3の外径及び内径を小さくする。これにより、パイプ3内部の空気が外部に排出され、充填された酸化マグネシウムなどの絶縁材の充填密度を上昇させることができる。
【0041】
そして、パイプ3に対して曲げ加工を行い、パイプ3を保護筒13の外周面に沿った形状とする。曲げ加工によって、例えば、上述した第1折り曲げ部3aや第2折り曲げ部3bを有する構造とする。
【0042】
その後、パイプ3の端部における端末処理を実施する。まず、電熱線2や絶縁材が設置されたパイプ3の端部に対して、ろう付けによって第1端板7を取付ける。そして、筒状部6を第1端板7に溶接によって固定する。その後、筒状部6の内部にエポキシ樹脂15を充填し乾燥させる。さらに、筒状部6の端部側にシリコン樹脂16を充填し乾燥させる。シリコン樹脂16が乾燥した後、筒状部6の端部に第2端板8を接触させつつナット17によるネジ締めを行って端子部5を形成する。
【0043】
以上、本実施形態によれば、ヒータ1のパイプ3の端部が収容部4によって密封された状態とされる。そして、パイプ3の外径よりも大きい収容部4がパイプ3の外周面を覆うように設置され、収容部4の内部には合成樹脂材(例えばエポキシ樹脂15)が充填される。また、シリコン樹脂16や第2端板8などによってエポキシ樹脂15が封入されることから、パイプ3端部の密閉性が高い。これにより、パイプ3の端部からの高湿度の空気の流入を抑制又は防止できる。その結果、高湿度の空気の流入によるヒータ1の絶縁抵抗の低下を防止でき、ヒータ1の電源を投入できず、碍子20を乾燥させることができないといった不具合が生じにくくなる。また、保護筒13の温度条件を満たす場合においてのみ放電極への電圧の印加(荷電)を許可するという運転条件が設定されるとき、ヒータ1の電源不投入による温度の低下が生じないため、電気集塵装置を運転できないという問題を生じさせない。
【0044】
なお、本開示に係る碍子保護用ヒータは、湿式電気集塵装置の碍子20の周囲を加熱する場合に限定されず、乾式電気集塵装置の碍子20の周囲を加熱する場合にも適用できる。
【0045】
図5には、乾式電気集塵装置における碍子20及びヒータ1の配置を示す。湿式電気集塵装置の場合と異なり、碍子20の周囲には、保温外装板12、保護筒13及び保温材14が設置されない。乾式電気集塵装置において、碍子20の周囲には、ヒータ1や反射板18が設置される。碍子20及びヒータ1の構成は、上述した実施形態と同様の構成であり、詳細な説明を省略する。ヒータ1の周囲には、碍子20側と反対側の外側において、ヒータ1を囲むように反射板18が設置される。これにより、ヒータ1によって碍子20を効率良く加熱できる。
【0046】
図5に示すように、ヒータ1は、碍子20の外周面からほぼ一定の間隔で離隔して設置され、碍子20の外周面に沿って設けられる。ヒータ1によって碍子20の外周面が加熱されることで、碍子20が乾燥状態とされる。碍子20が乾燥されることによって、碍子20表面における水分結露などに起因する沿面放電による碍子20の破損が防止される。
【0047】
なお、本開示に係るヒータ1は、ヒータ1を新しく製造する場合に限られず、既に電気集塵装置の保護筒13の外周面に沿って、又は、碍子20の外周面から離隔して周方向に設置されているヒータの端部を取り換えて改造される場合にも適用可能である。図2に示すように、本開示に係るヒータ1において収容部4や端子部5がコンパクトであるため、第2折り曲げ部3bから端子部5までの直線部分の長さが従来のヒータの直線部分の長さと同じとすることができる。
【0048】
以上説明した実施形態に記載のヒータ、電気集塵装置及びヒータの製造方法は例えば以下のように把握される。
本開示に係るヒータ(1)は、電熱線(2)と、前記電熱線が内部に配置されたパイプ(3)と、前記パイプの外周部を囲むように前記パイプの端部に設置され、内部に合成樹脂材(15)が充填された収容部(4)と、前記収容部において前記パイプ側とは反対側に設けられ、外部電源と接続可能な前記電熱線と接続された端子部(5)とを備える。
【0049】
この構成によれば、パイプの内部に電熱線が配置されて、パイプによって電熱線が保護されており、パイプの端部には収容部が設置されて、収容部によってパイプ内部への空気や流体の流入が抑制又は防止される。収容部の内部には、合成樹脂材、例えばエポキシ樹脂が充填される。パイプの端部の外周部が収容部によって囲むように設置され、収容部に合成樹脂材が充填されているため、パイプの端部の内部のみに合成樹脂材が充填される場合と異なり、パイプの内部への高湿度の空気の流入を確実に防止できる。端子部は、電熱線と接続されており、収容部においてパイプ側とは反対側に設けられる。端子部は、外部電源と接続可能であることから、端子部を介して電熱線に電気が供給される。
【0050】
本開示に係るヒータにおいて、前記収容部は、中空の筒状部(6)を有し、前記筒状部の一端部において、前記パイプが前記筒状部の内部に挿入されてもよい。
【0051】
この構成によれば、中空の筒状部を有する筒状部の一端部において、パイプが筒状部の内部に挿入されている。これにより、収容部における筒状部の内面とパイプの外周面の間に合成樹脂材が充填され、パイプの内部への高湿度の空気の流入を確実に防止できる。
【0052】
本開示に係るヒータにおいて、前記収容部の内部には前記合成樹脂材としてエポキシ樹脂(15)が充填され、前記収容部の前記パイプ側とは反対側の端部においてシリコン樹脂(16)が設置されてもよい。
【0053】
この構成によれば、シリコン樹脂が、収容部のパイプ側の端部とは反対側の端部に設置され、シリコン樹脂によって、収容部内部やパイプ内部への流体の流入を防止できる。また、合成樹脂材としてエポキシ樹脂が収容部の内部に充填され、エポキシ樹脂によって、パイプの内部への高湿度の空気の流入を防止できる。
【0054】
本開示に係る電気集塵装置は、上述したヒータと、電気集塵部を構成する放電極と、前記放電極と接続される電気導体(24)を支持し、前記ヒータが外周面に沿って設置される碍子(20)とを備える。
【0055】
この構成によれば、碍子が電気導体を支持しており、電気導体は、電気集塵部を構成する放電極と接続される。碍子の外周面に沿って設置されたヒータによって碍子が加熱されることで、碍子が乾燥状態とされる。
【0056】
本開示に係るヒータの製造方法は、電熱線の端部に端子部を接続するステップと、パイプの内部に前記電熱線を配置するステップと、前記パイプの外周部を囲むように前記パイプの端部に収容部を設置するステップと、前記収容部の内部に合成樹脂材を充填するステップと、前記収容部において前記パイプ側とは反対側に前記端子部を設けるステップとを備える。
【0057】
この構成によれば、パイプの内部に電熱線が配置されて、パイプによって電熱線が保護されており、パイプの端部には収容部が設置されて、収容部によってパイプ内部への空気や流体の流入が抑制又は防止される。収容部の内部には、合成樹脂材、例えばエポキシ樹脂が充填される。パイプの端部の外周部が収容部によって囲むように設置され、収容部に合成樹脂材が充填されているため、パイプの端部の内部のみに合成樹脂材が充填される場合と異なり、パイプの内部への高湿度の空気の流入を確実に防止できる。端子部は、電熱線と接続されており、収容部においてパイプ側とは反対側に設けられる。端子部は、外部電源と接続可能であることから、端子部を介して電熱線に電気が供給される。
【符号の説明】
【0058】
1 :碍子保護用ヒータ(ヒータ)
2 :電熱線
3 :パイプ
3a :第1折り曲げ部
3b :第2折り曲げ部
4 :収容部
5 :端子部
6 :筒状部
7 :第1端板
8 :第2端板
9 :端子棒
12 :保温外装板
13 :保護筒(筒部)
14 :保温材
15 :エポキシ樹脂
16 :シリコン樹脂
17 :ナット
18 :反射板
20 :碍子
22 :支持部
24 :電気導体
30 :内部空間
32 :天井材
図1
図2
図3
図4
図5