(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】健康状態評価システム、健康状態評価プログラム及び健康状態評価方法、並びに、食生活評価システム、食生活評価プログラム及び食生活評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20241216BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20241216BHJP
G01N 33/579 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G16H20/00
G01N33/579
(21)【出願番号】P 2020185165
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 嗣人
(72)【発明者】
【氏名】玉木 陽穂
(72)【発明者】
【氏名】福家 暢夫
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178805(JP,A)
【文献】特開2005-140618(JP,A)
【文献】国際公開第2008/009869(WO,A1)
【文献】Awoyemi Ayodeji et al,Markers of metabolic endotoxemia as related to metabolic syndrome in an elderly male population at high cardiovascular risk: a cross-sectional study,Diabetology & Metabolic Syndrome,2018年07月21日,Vol.10:59 No.1,1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康状態評価システムであって、それを構成するのは、少なくとも、以下である:
測定装置:これで測定されるのは、被測定者の血中LPS濃度であり、
出力装置:これで出力されるのは、当該被測定者の健康状態であり、及び、
処理装置:これに接続されるのは、当該出力装置であり、かつ、
これで処理されるのは、当該血中LPS濃度であり、それによって得られるのは、当該被測定者の健康状態であり、
当該血中LPS濃度が処理されるのは、メタボリックシンドロームの該否値が処理された後である。
【請求項2】
健康状態評価プログラムであって、それによってコンピュータが実行するのは、次の処理である:
判定:ここで判定されるのは、被測定者の健康状態であり、その際に参照されるのは、
当該被測定者の血中LPS濃度であり、
前記血中LPS濃度が参照されるのは、生活習慣病の該否及びメタボリックシンドロームの該否値が参照された後である。
【請求項3】
請求項2のプログラムであって、
当該健康状態は、脂質代謝能の状態、肝機能の状態、血圧調節能の状態、及び動脈硬度の少なくとも1つ以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、健康状態評価システム、健康状態評価プログラム及び健康状態
評価方法、並びに、食生活評価システム、食生活評価プログラム及び食生活評価方法であ
る。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病の予防に不可欠なのは、メタボリックシンドロームの改善である。生活習慣
病とは、疾患の総称であって、当該疾患の原因が生活習慣であるものをいう。例示すると
、がん、循環器疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂
肪肝、動脈硬化等である。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満の病態であっ
て、高血糖、脂質異常症及び高血圧のうち2つ以上が合併していることをいう。換言する
と、メタボリックシンドロームで定義されるのは、生活習慣病(とりわけ、心血管疾患)
の高危険度群(ハイリスクグループ)である。
【0003】
我が国における状況は、深刻である。非特許文献1の報告によれば、我が国における特
定健康診査受診者の約25%は、メタボリックシンドローム該当者又はその予備群該当者
である。
メタボシックシンドロームの早期発見を主に担っているのは、特定健康診査である。特
定健康診査で検査されるのは、腹囲、並びに、血糖、脂質及び血圧(以下、これらを「検
査指標」と、それらの値を「検査値」ともいう。)である。
【0004】
メタボシックシンドロームの改善を主に担っているのは、特定保健指導である。特定保
健指導で指導されるのは、被検査者のうち検査値が所定の基準の範囲外である者である。
換言すると、メタボリックシンドローム該当者及びその予備群該当者の何れでもない(以
下、「メタボリックシンドローム等非該当者」という。)場合、被検査者は、指導の対象
外である。
【0005】
しかしながら、特定健康診査及び特定保健指導で見逃されているのは、メタボリックシ
ンドローム等非該当者であって、生活習慣病の危険度が高い者である。非特許文献2の報
告によれば、20歳代日本人男性のうちメタボリックシンドローム該当者又はその予備群
該当者の割合は、約10%であり、30歳代では、約40%である。そのような割合の増
加が示唆するとおり、メタボリックシンドローム等非該当者であっても、生活習慣病の危
険度は、必ずしも低くはない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】平成27年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況について(厚生労働省)
【文献】平成29年度国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、生活習慣病の高危険度者(ハイリスク者)の発見確
度の向上である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<第1の観点>本願発明者が先ず着目したのは、生活習慣病及びメタボリックシンドロ
ーム並びに血中リポポリサッカライド(LPS)濃度(以下、「血中LPS濃度」という
。)の関係性である(Diabetes Care,34:1809-1815(2011
))。この関係性を踏まえて、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、生活習慣病の指
標及び血中LPS濃度の相関性、並びに、メタボリックシンドローム及び血中LPS濃度
の相関性である。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。
【0009】
<健康状態評価システム>健康状態評価システムを構成するのは、少なくとも、測定装
置、出力装置、及び、処理装置である。当該測定装置で測定されるのは、被測定者の血中
LPS濃度である。当該出力装置で出力されるのは、当該被測定者の健康状態である。当
該処理装置に接続されるのは、少なくとも、当該出力装置である。当該処理装置で処理さ
れるのは、当該血中LPS濃度であり、それによって得られるのは、当該被測定者の健康
状態である。
【0010】
<健康状態評価プログラム>健康状態評価プログラムによってコンピュータが実行する
処理は、少なくとも、判定である。当該コンピュータで判定されるのは、被測定者の健康
状態であり、その際に参照されるのは、当該被測定者の血中LPS濃度である。
<健康状態評価方法>健康状態評価方法(但し、医療行為を除く。)を構成するのは、
少なくとも、測定、判定、及び、提示である。すなわち、人又は装置若しくは器具によっ
て測定されるのは、被測定者の血中LPS濃度である。人又は装置若しくは器具によって
判定されるのは、当該被測定者の健康状態であり、その際に参照されるのは、当該血中L
PS濃度である。人又は装置若しくは器具によって提示されるのは、当該健康状態である
。
【0011】
<第2の観点>本願発明者が次に着目したのは、食生活状態及び血中LPS濃度の関係
性である。すなわち、食生活が悪化する(例えば、油の摂り過ぎ等)と、腸内細菌のLP
Sが侵入するのは、血液中である。血液中のLPSが増えると、体内で慢性的に起きるの
は、炎症である。慢性的な炎症で悪化するのは、健康状態である。この観点から、本発明
を定義すると、以下のとおりである。
【0012】
<食生活評価システム>食生活評価システムを構成するのは、少なくとも、測定装置、
出力装置、及び、処理装置である。当該測定装置で測定されるのは、被測定者の血中LP
S濃度である。当該出力装置で出力されるのは、当該被測定者の食生活状態である。当該
処理装置に接続されるのは、少なくとも、当該出力装置である。当該処理装置で処理され
るのは、当該血中LPS濃度であり、それによって得られるのは、当該食生活状態である
。
【0013】
<食生活評価プログラム>食生活評価プログラムによってコンピュータが実行する処理
は、少なくとも、判定である。当該コンピュータで判定されるのは、被測定者の食生活状
態であり、その際に参照されるのは、当該被測定者の血中LPS濃度である。
【0014】
<食生活評価方法>食生活評価方法を構成するのは、少なくとも、測定、判定、及び、
提示である。すなわち、人又は装置若しくは器具によって測定されるのは、被測定者の血
中LPS濃度である。人又は装置によって判定されるのは、当該被測定者の食生活状態で
あり、その際に参照されるのは、当該血中LPS濃度である。人又は装置若しくは器具に
よって提示されるのは、当該食生活状態である。
【発明の効果】
【0015】
本発明が可能にするのは、生活習慣病の高危険度者の発見確度の向上である。なぜなら
、被測定者がメタボリックシンドローム該当者及びその予備群該当者以外の者であっても
、当該被測定者の健康状態の把握が従来よりも正確だからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】健康状態の出力画面であって、その対象がメタボリックシンドローム該当者であるものである。
【
図5】健康状態の出力画面であって、その対象がメタボリックシンドローム等非該当者であり、かつ、そのLPS診断値が正常時のものである。
【
図6】健康状態の出力画面であって、その対象がメタボリックシンドローム等非該当者であり、かつ、そのLPS診断値が異常時のものである。
【
図11】食生活評価の出力画面であって、(a)食生活の乱れが推認されない時のもの、(b)食生活の乱れが推認される時のものである。
【
図15】血中LPS濃度と各検査値との関係である。
【
図16】健常者対NAFLD患者の血漿中LPS濃度に対する評価結果であり、(a)血漿中LPS濃度の比較結果(健常者対NAFLD患者)であり、(b)ROC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本実施の形態>本発明を具現化するのは、以下の実施の形態である。ここで用いる語
句の定義は、以下のとおりである。
【0018】
<血中LPS濃度>血中LPS濃度とは、血液に含まれるリポポリサッカライド(LP
S)の濃度(単位:EU/mL)をいう。「血中LPS濃度」に含まれるのは、血漿中L
PS濃度及び血清中LPS濃度である。血漿中LPS濃度とは、血漿に含まれるLPSの
濃度(単位:EU/mL)をいう。血清中LPS濃度とは、血清に含まれるLPSの濃度
(単位:EU/mL)をいう。本実施の形態で採用するのは、血漿中LPS濃度である(
以下、単に「血中LPS濃度」ということもある。)。なぜなら、血中LPS濃度に略等
しいのは、血漿中LPS濃度だからである(すなわち、「血中LPS濃度」≒「血漿中L
PS濃度」)。
【0019】
<健康状態(広義)>健康状態(広義)とは、身体の機能的状態又は身体の器質的状態
をいう。身体の機能的状態を例示すると、糖代謝能の状態、脂質代謝能の状態、肝機能の
状態、血圧調節能の状態等である。身体の器質的状態を例示すると、動脈硬度(動脈の状
態)、肝臓脂肪量(肝臓脂肪の状態)等である。
【0020】
<健康状態(狭義)>健康状態(狭義)とは、生活習慣病の該否、メタボリックシンド
ロームの該否、及びそれらの双方をいう。ここで、「該否」とは、該当するか否かをいう
。
【0021】
<健康状態(最狭義)>健康状態(最狭義)とは、脂質代謝能の状態、肝機能の状態、
血圧調節能の状態、及び動脈硬度(動脈の状態)の少なくとも1つ以上をいう。これらの
状態に相関するのは、血中LPS濃度である。当該状態の表現態様は、不問である。特定
検診の表現に倣えば、その表現例は、「異常なし」、「軽度異常」、「要経過観察」及び
「要医療」である。
【0022】
<生活習慣病>生活習慣病とは、疾患の総称であって、当該疾患の原因が生活習慣であ
るものをいう。例示すると、がん、循環器疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、糖尿病
、高血圧、脂質異常症、脂肪肝、動脈硬化等である。
【0023】
<メタボリックシンドローム>メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは、内
臓脂肪型肥満の病態であって、高血糖、脂質異常症及び高血圧のうち2つ以上が合併して
いることをいう。換言すると、メタボリックシンドロームで定義されるのは、生活習慣病
(とりわけ、心血管疾患)の高危険度群(ハイリスクグループ)である。メタボリックシ
ンドローム該当者とは、ヒトであって、その状態がメタボリックシンドロームである者を
いう。
【0024】
メタボシックシンドロームの診査指標は、腹囲、並びに、血糖、血圧及び脂質である。
日本人の場合、メタボリックシンドローム該当者が満たす要件は、(1)が認められ、か
つ、(2A)、(2B)及び(2C)の2つ以上が認められることである。
(1)男性の場合、腹囲が85cm以上であり、女性の場合90cm以上であること
(2A)空腹時血糖が110mg/dL以上であること
(2B)中性脂肪が150mg/dL以上であること、及び/又は、HDLコレステロー
ルが40mg/dL未満であること
(2C)収縮期血圧が130mmHg以上であること、及び/又は、拡張期血圧が85m
mHg以上であること
【0025】
<メタボリックシンドローム予備群及びメタボリックシンドローム予備群該当者>メタ
ボリックシンドローム予備群とは、肥満状態であって、その段階がメタボリックシンドロ
ームの手前であることをいう。メタボリックシンドローム予備群該当者とは、ヒトであっ
て、その属性がメタボリックシンドローム予備群であるものをいう。メタボリックシンド
ローム予備群該当者が満たす要件は、(1)が認められ、かつ、(2A)、(2B)及び
(2C)の1つのみが認められることである。
【0026】
(1)男性の場合、腹囲が85cm以上であること、女性の場合、腹囲が90cm以上で
あること
(2A)空腹時血糖が110mg/dL以上であること
(2B)中性脂肪が150mg/dL以上であること、及び/又は、HDLコレステロー
ルが40mg/dL未満であること
(2C)収縮期血圧が130mmHg以上であること、及び/又は、拡張期血圧が85m
mHg以上であること
【0027】
<メタボリックシンドローム等非該当群及びメタボリックシンドローム等非該当者>メ
タボリックシンドローム等非該当群とは、状態であって、メタボリックシンドローム及び
メタボリックシンドローム予備群の何れでもないことをいう。メタボリックシンドローム
等非該当者とは、ヒトであって、その属性がメタボリックシンドローム等非該当群である
ものをいう。メタボリックシンドローム等非該当者が満たすのは、以下の(1)から(5
)までの全てである。
(1)腹囲:男性の場合、85cm未満であり、女性の場合、90cm未満であること
(2)空腹時血糖:110mg/dL未満であること
(3)中性脂肪:150mg/dL未満であること
(4)HDLコレステロール:40mg/dL以上であること
(5)血圧:収縮期血圧が130mmHg未満であり、かつ、拡張期血圧が85mmHg
未満であること
【0028】
<食生活状態>食生活状態とは、日々の食事の状態をいう。例示すると、油分の摂取量
、糖分の摂取量、塩分の摂取量、アルコールの摂取量等である。これらの要因が関連する
のは、生活習慣病、メタボリックシンドローム、及びそれらの双方である。また、当該各
要因に相関するのは、血中LPS濃度である。すなわち、油分の摂取量、糖分の摂取量、
アルコールの摂取量の何れかが過多であると、血中LPS濃度が上がる。
【0029】
<健康状態評価システム>
図1で示すのは、健康状態評価システムの構成である。健康
状態評価システム10を構成するのは、測定装置20、出力装置30、処理装置40、入
力装置50、及び、外部記憶装置60である。これらの装置の一部又は全部を接続する方
式は、有線又は無線である。これらの装置は、互いに独立し、或いは、一部又は全部が一
体化している。出力装置30及び処理装置40並びに入力装置50が一体化している場合
、そのような一体化を具現化するのは、パーソナルコンピュータやタブレット端末等であ
る。各装置の詳細は、以下のとおりである。
【0030】
<測定装置>測定装置20で測定されるのは、被測定者の血中LPS濃度である。すな
わち、測定装置20で先ず分析されるのは、被測定者の血液又は血漿であり、それによっ
て出力されるのが当該被測定者の血中LPS濃度である。当該血液及び血漿は、前処理さ
れる。当該前処理の詳細は、後述する。当該血中LPS濃度の出力先は、不問であるが、
好ましくは、処理装置30である。測定装置20を具現化するものは、様々であり特に限
定されないが、例示すると、分光計、分光光度計、マイクロプレートリーダ等である。本
実施の形態で採用したのは、マイクロプレートリーダ(バイオテック社製のマイクロプレ
ートリーダELx808)である。
【0031】
<出力装置>出力装置30で出力されるのは、被験者の血中LPS濃度及び被験者の健
康状態である。これらの情報を出力する態様は、不問であり、具体的には、画像出力、音
声出力、紙出力、これらの組合せ等である。出力装置30を例示すると、ディスプレイ、
スピーカ、プリンタ等である。
【0032】
<処理装置>処理装置40に接続されるのは、出力装置30、入力装置50及び外部記
憶装置60である。処理装置40で処理されるのは、被測定者の血中LPS濃度であり、
その結果、得られるのは、被験者の健康状態である。本実施の形態では、被測定者の血中
LPS濃度の源泉は、測定装置20である。また、当該血中LPS濃度を直接的に入力す
るのは、入力装置50である。
処理装置40を構成するのは、コンピュータの基本要素であり、具体的には、入出力部
、通信部、プログラム記憶部、一時記憶部、及び、処理部である。これらの部品は、互い
に、バス接続されている。これらの部品の説明は、次のとおりである。
【0033】
<入出力部>入出力部で授受されるのは、各種データである。入出力部に接続されるの
は、出力装置40、入力装置50、及び、外部記憶装置60である。入出力部に接続可能
なのは、測定装置20である。この場合、測定装置20に備わっているのは、入出力機能
である。
【0034】
<通信部>通信部で送受されるのは、各種データである。通信部に接続されるのは、ネ
ットワークである。通信部を例示すると、ダイヤルアップ接続モジュール、ワイファイ(
Wi-Fi)モジュール、ブルートゥース(登録商標)“Bluetooth”、モジュ
ール等である。
【0035】
<プログラム記憶部>プログラム記憶部に記憶されるのは、各種プログラムである。プ
ログラム記憶部を具現化するのは、不揮発性記憶装置(例えば、ROMなど)及び不揮発
記憶装置(例えば、HDDやSSDなど)である。不揮発性記憶装置に記憶されるのは、
基本プログラム(それに必要なデータを含む。)である。基本プログラムを例示すると、
ベーシックインプット/アウトプットシステム(BIOS)、オペレーションシステム(
OS)設定プログラム、ネットワーク設定プログラムなどである。不揮発記憶装置に記憶
されるのは、オペレーションシステム(OS)及びアプリケーションプログラムである。
オペレーションシステム(OS)を例示すると、ウィンドウズ(登録商標)“Windo
ws”、リナックス(登録商標)“Linux(登録商標)”、アンドロイド(登録商標
)“Android”などである。アプリケーションプログラムを例示すると、後述する
健康状態評価プログラムである。
【0036】
<一時記憶部>一時記憶部に一時的に記憶されるのは、各種プログラム及び各種データ
である。各種プログラムは、前述のとおりである。各種データが示すのは、入力値や出力
値などである。一時記憶部を例示すると、揮発性記憶装置(例えば、RAMなど)である
。
【0037】
<処理部>処理部で実行されるのは、各種プログラムであり、かつ、処理されるのは、
各種データである。各種プログラムが実行されることで、入力値が処理されて出力値とな
る。処理部を具現化するのは、中央演算装置(いわゆるCPU)である。
【0038】
<入力装置>入力装置50で入力されるのは、各種データである。入力装置50を例示
すると、タッチパネル、操作キー、ボタン、キーボードやマウス等である。
【0039】
<外部記憶装置>外部記憶装置60で記憶されるのは、各種データ及び各種プログラム
である。外部記憶装置を例示すると、磁気記憶装置(HDDなど)、光学記憶装置(CD
、DVD、BDなど。その駆動装置を含む。)、半導体記憶装置(USBメモリ、SDカ
ードメモリ、SSDなど)などである。
【0040】
<健康状態評価プログラム>健康状態評価プログラムによって処理装置30が実行する
のは、判定処理である。すなわち、処理装置30で判定されるのは、被測定者の健康状態
である。その際に、処理装置30で参照されるのは、当該被測定者の血中LPS濃度であ
る。
図2で示すのは、判定処理の流れである。判定処理を構成するのは、メタボリックシン
ドローム診断(S10)、LPS診断(S20)、及び、健康状態出力(S30)である
。
【0041】
<メタボリックシンドローム診断(S10)>メタボリックシンドローム診断で得られ
るのは、該非値である。この該非値が示すのは、少なくとも、被診断者がメタボリックシ
ンドローム等非該当者であるか否か、である。該非値を記憶するのは、一時記憶部である
。本実施の形態では、該否値「1」で示されるのは、被診断者がメタボリックシンドロー
ム等非該当者であることである。他方、該否値「0」で示されるのは、被験者がメタボリ
ックシンドローム等非該当者ではない(すなわち、メタボリックシンドローム該当者又は
その予備群該当者である)ことである。
【0042】
該非値を得る際に参照されるのは、メタボシックシンドロームの検査指標の値及びメタ
ボシックシンドローム該当要件である。すなわち、当該検査指標の値と比較されるのは、
当該該当要件である。これらの定義は、前述のとおりである。検査指標の値を記憶するの
は、一時記憶部である。検査指標の値を入力する態様は、自動又は手動である。検査指標
の値を自動入力する手段は、通信装置である。検査指標の値を手入力する手段は、入力装
置である。
【0043】
<LPS診断(S20)>該否値が「1」であれば、LPS診断が実行される。LPS
診断で得られるのは、LPS診断値である。LPS診断の詳細は、以下のとおりである。
図3で示すのは、LPS診断の流れである。LPS濃度が読み出されて(S31)、戻
り値が返される(S32~S36)。
LPS濃度「Y」が基準値「a」未満(Y<a)であれば、戻り値「A」が返される(
S32)。戻り値「A」が意味するのは、健康状態の悪化が推認されないこと、より具体
的には、脂質代謝能の悪化、肝機能の悪化、血圧調節能の悪化、及び動脈硬度(動脈の悪
化)の何れも推認されないことである。
【0044】
LPS濃度「Y」が基準値「a」以上、かつ、「b」未満(a≦Y<b)であれば、戻
り値「B」が返される(S33)。戻り値「B」が意味するのは、健康状態の悪化が推認
される(悪化度1%~20%)ことである。具体的には、脂質代謝能の悪化、肝機能の悪
化、血圧調節能の悪化、及び動脈硬度(動脈の悪化)の何れかが推認される(悪化度1%
~20%)。
【0045】
LPS濃度「Y」が基準値「b」以上、かつ、「c」未満(b≦Y<c)であれば、戻
り値「C」が返される(S34)。戻り値「C」が意味するのは、健康状態の悪化が推認
される(悪化度21%~50%)ことである。具体的には、脂質代謝能の悪化、肝機能の
悪化、血圧調節能の悪化、及び動脈硬度(動脈の悪化)の何れかが推認される(悪化度2
1%~50%)。
【0046】
LPS濃度「Y」が基準値「c」以上、かつ、「d」以下(c≦Y≦d)であれば、戻
り値「D」が返される(S35)。戻り値「D」が意味するのは、健康状態の悪化が推認
される(悪化度51%~70%)ことである。具体的には、脂質代謝能の悪化、肝機能の
悪化、血圧調節能の悪化、及び動脈硬度(動脈の悪化)の何れかが推認される(悪化度5
1%~70%)。
【0047】
LPS濃度「Y」が基準値「d」より大きい(Y>d)ならば、戻り値「E」が返され
る(S36)。戻り値「E」が意味するのは、健康状態の悪化が推認される(悪化度71
%以上)ことである。具体的には、脂質代謝能の悪化、肝機能の悪化、血圧調節能の悪化
、及び動脈硬度(動脈の悪化)の何れかが推認される(悪化度71%以上)。
以上において、閾値「a」、「b」、「c」、及び「d」が依存するのは、人種及び居
住地である。日本人の場合、閾値「a」、「b」、「c」、及び「d」は、それぞれ、「
0.001」、「0.004」、「0.007」、及び「0.010」である。
【0048】
<健康状態出力(S30)>健康状態が出力されるのは、該否値が「0」であり、或い
は、LPS診断が終了した後である。健康状態の出力態様は、大きく分けて、3つである
。その詳細は、以下のとおりである。
図4で示すのは、健康状態の出力画面であって、その対象がメタボリックシンドローム
該当者であるものである。この画面が出力されるのは、該否値が「0」である場合である
。すなわち、被験者は、メタボリックシンドローム該当者であり、その総合判定結果は、
「要指導」である。
【0049】
図5で示すのは、健康状態の出力画面であって、その対象がメタボリックシンドローム
等非該当者であり、かつ、そのLPS診断値が正常時のものである。この画面が出力され
るのは、LPS診断値(戻り値)が「A」である場合である。すなわち、被験者は、メタ
ボリックシンドローム等非該当者であり、かつ、その健康状態の悪化も推認されない者で
ある。その総合判定結果は、「異常なし」(又は「正常」)である。
【0050】
図6で示すのは、健康状態の出力画面であって、その対象がメタボリックシンドローム
等非該当者であり、かつ、そのLPS診断値が異常時のものである。この画面が出力され
るのは、LPS診断値(戻り値)が「B」、「C」、「D」及び「E」の何れかである場
合である。すなわち、被験者は、メタボリックシンドローム等非該当者であり、かつ、そ
の健康状態の悪化が推認されるものである。その総合判定結果は、「正常」(又は「異常
なし」)であるものの、そこに付されるのは、注記(例えば、アスタリスク「*」等)で
ある。注記の出力態様を変える要素は、戻り値である。注記「*」が採用される場合、戻
り値が「B」であれば、1つの「*」が付される。戻り値が「E」であれば、4つの「*
」が付される。
【0051】
<健康状態評価方法>
図7で示すのは、健康状態評価方法の流れである。健康状態評価
方法を構成するのは、測定(P1)、判定(P2)、及び、提示(P3)である。具体的
には、以下のとおりである。
【0052】
<測定(P1)>測定の目的は、被測定者の血中LPS濃度を把握することである。す
なわち、人又は装置若しくは器具によって測定されるのは、被測定者の血中LPS濃度で
ある。言い換えれば、当該血中LPS濃度の測定態様は、自動、手動又は半自動である。
測定原理は、不問であり、例示すると、LALエンドポイントアッセイ(比色法)である
。本実施の形態で採用するのは、LALエンドポイントアッセイである。この場合、当該
血中LPS濃度の測定手順は、次のとおりである。
【0053】
検体は、被測定者の血液である。この血液の保管温度は、-80℃~35℃であり、好
ましくは、-10℃~10℃である。当該血液の画分は、特に限定されないが、好ましく
は、血漿である。当該画分が排除しないのは、血清である。
当該血漿は、前処理される。具体的には、先ず、当該血漿を希釈する。その希釈溶媒は
、LPS非含有の液体(例えば、蒸留水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水など)であり、
かつ、その希釈率は、10倍である。次に、そのように希釈された血漿を加熱する。その
加熱温度は、70度であり、かつ、その加熱時間は、10分間である。そのように処理さ
れた血漿に反応させるのは、LAL試薬である。この試薬は、市販されている。市販のキ
ットを例示すると、エンドトキシン-シングルテストワコー(富士フイルム和光純薬株式
会社製)やLimulus amebocyte lysate assay kit(QC
L-1000、Lonza)等である。
前処理された血漿を分析するのは、後述する測定装置である。この血漿が分析されて得
られるのは、被測定者の血中LPS濃度である。
【0054】
<判定(P2)>判定の目的は、被測定者の健康状態を導出することである。人又は装
置によって判定されるのは、当該被測定者の健康状態であり、その際に参照されるのは、
当該血中LPS濃度である。好ましくは、判定(P2)が実施されるのは、被測定者がメ
タボリックシンドローム等非該当者である場合である。それ以外であれば、判定(P2)
が省略される。
【0055】
図8で示すのは、健康状態判定表である。当該健康状態判定表で示されるのは、LPS
濃度と健康状態判定値との関係である。当該健康状態判定表に当てはめられるのは、被測
定者の血中LPS濃度であり、その結果、得られるのは、被測定者の健康状態判定値であ
る。閾値「a」、「b」、「c」、及び「d」が依存するのは、人種及び居住地である。
【0056】
<提示(P3)>提示の目的は、被測定者の健康状態を認知させることである。人又は
装置若しくは器具によって提示されるのは、当該血中LPS濃度及び当該健康状態であり
、その提示先は、当該被測定者である。測定された血中LPS濃度及び健康状態を提示す
る方式は、問わないが、具体的には、電磁的(電子的又は磁気的)である。また、当該血
中LPS濃度及び健康状態を提示する態様は、問わないが、具体的には、視覚的態様であ
る。血中LPS濃度及び当該健康状態を提示する手段は、限定されず、例示すると、紙や
画面などである。
【0057】
<健康状態評価システム、健康状態評価プログラム及び健康状態評価方法の効果>これ
らの実施の形態で奏されるのは、生活習慣病の高危険度群の発見確度の向上である。なぜ
なら、被測定者がメタボリックシンドローム等非該当者であっても、その者のLPS濃度
が更に把握されるからである。
【0058】
<変形例>前述の判定処理又は判定で参照されるのがLPS濃度に加えて、他の指標(
血糖値や中性脂肪値等)であれば、生活習慣病の高危険度群の発見確度がより一層向上す
る。
【0059】
<食生活評価システム/食生活評価プログラム>食生活評価システムを構成するのは、
測定装置、出力装置、処理装置、入力装置、及び、外部記憶装置である。これらのハード
ウェアの詳細説明で援用するのは、測定装置20、出力装置30、処理装置40、入力装
置50、及び、外部記憶装置60の説明である。食生活評価システムの特徴は、食生活評
価プログラムである。
【0060】
<食生活評価プログラム>健康状態評価プログラムによって処理装置が実行するのは、
判定処理である。すなわち、処理装置で判定されるのは、被測定者の食生活状態である。
その際に、処理装置で参照されるのは、当該被測定者の血中LPS濃度である。
図9で示すのは、判定処理の流れである。判定処理を構成するのは、LPS診断(S4
0)、及び、食生活出力(S50)である。
【0061】
<LPS診断(S40)>起動後、LPS診断が実行される。LPS診断で得られるの
は、LPS診断値である。LPS診断の詳細は、以下のとおりである。
図10で示すのは、LPS診断の流れである。LPS濃度が読み出されて(S41)、
戻り値が返される(S42~S43)。
LPS濃度「Z」が基準値「e」未満(Z<e)であれば、戻り値「F」が返される(
S42)。ここで、閾値「e」が依存するのは、人種及び居住地である。戻り値「F」が
意味するのは、食生活の乱れが推認されないことである。具体的には、油分の摂取過多、
糖分の摂取過多、塩分の摂取過多、アルコールの摂取過多の何れもが推認されない。
【0062】
LPS濃度「Z」が基準値「e」以上であれば、戻り値「G」が返される(S43)。
戻り値「G」が意味するのは、生活習慣病が推認されることである。具体的には、油分の
摂取過多、糖分の摂取過多、塩分の摂取過多、アルコールの摂取過多の何れかが推認され
る。
【0063】
<食生活評価出力(S50)>食生活評価が出力されるのは、LPS診断が終了した後
である。食生活評価の出力態様は、大きく分けて、2つである。その詳細は、以下のとお
りである。
図11で示すのは、食生活評価の出力画面であって、(a)食生活の乱れが推認されな
い時のもの、(b)食生活の乱れが推認される時のものである。画面を構成するのは、被
測定者のLPS濃度71、食生活評価72、及び指導内容(アドバイス)73である。食
生活の乱れが推認されない場合、食生活評価で示されるのは、食生活が乱れていない旨7
2aである。また、指導内容に含まれるのは、現状の食生活を継続すべき旨73aである
。他方、食生活の乱れが推認される場合、食生活評価で示されるのは、食生活が乱れてい
る旨72bである。また、指導内容に含まれるのは、現状の食生活を改善すべき旨73b
である。
【0064】
<食生活評価方法>
図12で示すのは、食生活評価方法の流れである。食生活評価方法
を構成するのは、測定(P11)、判定(P12)、提示及び/又は指導(P13)であ
る。具体的には、以下のとおりである。
【0065】
<測定(P11)>測定の目的は、被測定者の血中LPS濃度を把握することである。
その詳細説明で援用するのは、測定(P1)の説明である。
【0066】
<判定(P12)>判定の目的は、被測定者の食生活を導出することである。人又は装
置によって判定されるのは、当該被測定者の食生活であり、その際に参照されるのは、当
該血中LPS濃度である。
図14で示すのは、食生活判定表である。当該食生活判定表で示されるのは、LPS濃
度と食生活判定値との関係である。当該食生活判定表に当てはめられるのは、被測定者の
血中LPS濃度であり、その結果、得られるのは、被測定者の食生活判定値である。閾値
「e」、が依存するのは、人種及び居住地である。当該食生活判定値が示すのは、「食生
活の乱れが推認される。」又は「食生活の乱れが推認されない。」である。当該食生活判
定値が許容するのは、「食生活の乱れ」の程度の多段階化である。その場合、当該食生活
判定値が採用するのは、より詳細な表現であり、例えば、「食生活がやや乱れていること
が推認される。」、「食生活がかなり乱れていることが推認される。」などである。
【0067】
<提示及び/又は指導(P13)>提示の目的は、被測定者の食生活評価を認知させる
ことである。人又は装置若しくは器具によって提示されるのは、当該血中LPS濃度及び
当該食生活評価であり、その提示先は、当該被測定者である。測定された血中LPS濃度
及び食生活評価を提示する方式は、問わないが、具体的には、電磁的(電子的又は磁気的
)である。また、当該血中LPS濃度及び食生活評価を提示する態様は、問わないが、具
体的には、視覚的態様である。血中LPS濃度及び当該食生活評価を提示する手段は、限
定されず、例示すると、紙や画面などである。
【0068】
当該提示に伴い、或いは、当該提示に代えて、人又は装置若しくは器具によって実施さ
れるのは、指導である。指導が実施されるのは、当該食生活判定値が「食生活の乱れが推
認される。」である場合である。指導の目的は、食生活の改善である。油分の摂取量、糖
分の摂取量、及びアルコールの摂取量の何れかが過多であると、血中LPS濃度が上がる
。それ故、指導内容は、これらの摂取量を控える旨である。好ましくは、当該指導の実施
は、一時的なものではなく、継続的なものである。
【0069】
<食生活評価システム、食生活評価プログラム及び食生活評価方法の効果>これらの実
施の形態で奏されるのは、生活習慣病の予防である。なぜなら、生活習慣病の原因は、食
生活の乱れであり、かつ、その乱れが早期に把握されるからである。
【0070】
<変形例>前述の判定処理又は判定で参照されるのがLPS濃度に加えて、他の指標(
血糖値や中性脂肪値等)であれば、生活習慣病の予防がより一層奏功する。
【0071】
<本実施の形態が依拠する試験結果>本実施の形態が依拠するのは、生活習慣病の指標
及び血中LPS濃度の相関性、並びに、メタボリックシンドローム及び血中LPS濃度の
相関性である。これらの相関性を導くのは、以下の試験結果である。
【0072】
<試験1>試験1で把握するのは、血中LPS濃度と健康状態との相関の有無である。
この試験の手順は、以下のとおりである。
【0073】
<被験者の選定>成人男女31名を選定し、被験者とした。選定条件は、(1)インフ
ォームドコンセントが得られたこと、かつ、(2)過去3か月以内の健康診断又は人間ド
ックで、何れのメタボリックシンドローム診断基準にも非該当であることである。選定条
件(2)を言い換えると、以下の基準を全て満たす者である。
a)腹囲:男性の場合、85cm未満であること、女性の場合、90cm未満であること
b)空腹時血糖:110mg/dL未満であること
c)中性脂肪:150mg/dL未満であること
d)HDLコレステロール:40mg/dL以上であること
e1)収縮期血圧:130mmHg未満であること
e2)拡張期血圧:85mmHg未満であること
【0074】
<データ収集>被験者のデータを収集した。具体的には、被験者の健康診断又は人間ド
ックの結果であり、被験者の受診時期が本試験参加から過去3か月以内のものである。こ
れらの結果に含まれるのは、BMI、腹囲、収縮期血圧、拡張期血圧、血液生化学検査値
(ALT、AST、γ-GTP、中性脂肪、総コレステロール、HDLコレステロール、
LDLコレステロール、HbA1c)である。以下において、脈圧とは、収縮期血圧と拡
張期血圧との差分をいう。
【0075】
<血液及び血漿の採取>被験者の血液を採取した。これらの血液を用いて、測定し或い
は算出したのは、被験者の血中LPS濃度、血糖値、インスリン濃度、及び、HOMA-
IR(homeostasis model assessment of insul
in resistance)である。具体的な手順は、以下のとおりである。
【0076】
手順1:被験者の空腹時の血液5mLを採取した。採血にあたり、被験者が絶食した期
間は、採血前日の21時から採血時までである。
手順2:採取された血液を遠心分離したことで、ヘパリン血漿を採取した。
手順3:ヘパリン血漿を撹拌した。その撹拌時間は、約1分間であり、その撹拌に用い
たのは、試験管ミキサである。
【0077】
手順4:撹拌された血漿の一部を分取した後、分取された血漿を希釈した。その希釈条
件は、希釈溶媒が大塚蒸留水であり、希釈倍率(血漿の量に対する希釈溶媒の量)が10
倍であり、かつ、希釈環境が氷中である。
手順5:希釈された血漿を加熱した。その条件は、加熱温度が70℃であり、かつ、加
熱時間が10分間である。
【0078】
手順6:加熱された血漿を氷中で冷却したことで、当該血漿の温度を室温程度(25℃
前後)とした。
手順7:当該室温の血漿を撹拌した。その条件は、撹拌時間が約30秒であり、かつ、
撹拌器具が試験管ミキサである。
【0079】
手順8:プレート1を作成した。具体的には、96穴プレートを準備した。(1)被験
者1人の血漿(1検体)に使用したのは、プレート1の96穴のうち2穴である(2穴/
検体)。つまり、血漿が注入されたのは、計62穴(31名×2穴)である。当該血漿の
1穴当たりの注入量は、50μL/穴である。また、各穴にそれぞれ入れたのは、さらに
、リムルス試薬(エンドスペシー(登録商標)ES-50Mセット、生化学工業株式会社
製)50μLである(50μL/穴)。(2)蒸留水(大塚製薬株式会社製)が注入され
たのは、残り34穴のうち2穴である。また、各穴にそれぞれ入れたのは、さらに、リム
ルス試薬(エンドスペシー(登録商標)ES-50Mセット、生化学工業株式会社製)5
0μLである(50μL/穴)。(3)検量線を作成するため、エンドトキシン標準品(
生化学工業株式会社製)を用いて調整したのは、7種の標準LPS水溶液である。7種の
標準LPS水溶液の濃度は、それぞれ、0.0001EU/mL、0.0004EU/m
L、0.0016EU/mL、0.0063EU/mL、0.025EU/mL、及び、
0.10EU/mL、2.0EU/mLである。1種の標準LPS水溶液に使用したのは
、残り32穴のうち2穴である(2穴/検量線用LPS水溶液)。つまり、標準LPS水
溶液が注入されたのは、計14穴(7種×2穴)である。また、各穴にそれぞれ入れたの
は、さらに、リムルス試薬(エンドスペシー(登録商標)ES-50Mセット、生化学工
業株式会社製)50μLである(50μL/穴)。
【0080】
手順9:プレート1をインキュベートした。その条件は、インキュベート温度が37℃
であり、かつ、インキュベート時間が1時間である。
手順10:プレート2を作成した。その目的は、吸光度測定で血漿の色の影響をキャン
セルすることである。具体的には、96穴プレートを準備した。(1)血漿が注入された
のは、計62穴(31名×2穴)である。当該血漿の1穴当たりの注入量は、50μL/
穴である。各穴にそれぞれ入れたのは、さらに、蒸留水(大塚製薬株式会社製)50μL
である(50μL/穴)。(2)蒸留水(大塚製薬株式会社製)が注入されたのは、残り
34穴のうち2穴である。各穴にそれぞれ入れたのは、さらに、蒸留水(大塚製薬株式会
社製)50μLである(50μL/穴)。
手順11:プレート2をインキュベートした。その条件は、インキュベート温度が37
℃であり、かつ、インキュベート時間が1時間である。
【0081】
<吸光度の測定>インキュベート後、405nmの吸光度(対照波長492nm)を測
定した。ここで、対照波長とは、波長であって、吸光妨害因子(例えば、プレートの傷や
歪み等)が与える影響を補正するためのものをいい、具体的には、リムルス試薬の製造企
業(本実施の形態では、生化学工業株式会社)が指定したものをいう。各吸光度の関係は
、次式のとおりである。ここで、各サンプルの吸光度に用いたのは、2穴の平均値である
。
(式)吸光度A=吸光度B-{吸光度C+(吸光度D1-吸光度D2)}
吸光度A:血漿中LPS及びリムルス試薬の反応
吸光度B:血漿及びリムルス試薬(プレート1)
吸光度C:蒸留水及びリムルス試薬(プレート1)
吸光度D1:血漿及び蒸留水(プレート2)
吸光度D2:蒸留水(プレート2)
【0082】
<検量線の作成手順>検量線の作成手順は、次のとおりである。標準LPS水溶液及び
リムルス試薬の反応物(手順8の(3)を参照。)の405nmの吸光度(対照波長49
2nm)を測定したことで、LPS濃度及び吸光度の関係(検量線)を得た。この検量線
の適否を確認した。具体的には、当該適否の判断基準は、全被験者の吸光度Aが当該各反
応物の吸光度の範囲内か否かである。
【0083】
<血液(血漿)中LPS濃度の演算>被験者毎の血液(血漿)中LPS濃度を演算した
。
当該検量線に当てはめたのは、被験者毎の吸光度Aであり、それによって得られたのは
、被験者毎の血漿中LPS濃度(EU/mL)である。
【0084】
<血糖値の測定>血糖値を測定した。その測定器具は、FreeStyleリブレ(ア
ボット社)である。
【0085】
<インスリン濃度の測定>
インスリン濃度を測定した。その測定器具は、既存のキット(Mercodia In
sulin ELISA、メルコディア社製)である。
【0086】
<HOMA-IRの算出>HOMA-IRの算出式は、以下の式である。
(式)HOMA-IR=[空腹時インスリン濃度(μU/mL)×空腹時血糖値(mg/
dl)]÷405
【0087】
<被験者のプロファイル>表1で示すのは、本試験の被験者のプロファイルである。指
標のうちアスタリスク「*」付きものにおいて、その値は、平均値±標準偏差である。全
ての被験者について確認されたのは、如何なるメタボリックシンドローム診断基準にも非
該当であることである。
【0088】
【0089】
<被験者のLPS濃度分布>
図14で示すのは、被験者の血中LPS濃度分布である。
被験者の血中LPS濃度の中央値は、0.0038EU/mLである。被験者の血中LP
S濃度の濃度範囲は、0から0.0117EU/mLである。被験者のうちLPSが検出
された者の数は、22名であり、被験者全体の71%である。
【0090】
<単回帰分析>被験者の血中LPS濃度及び各検査値の関係を分析した(単回帰分析)
。当該検査値に含まれるのは、BMI、腹囲、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、AST、
ALT、γ-GTP、中性脂肪、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレ
ステロール、空腹時血糖、HbA1c、インスリン、及び、HOMA-IRである。
【0091】
図15で示すのは、血中LPS濃度と各検査値との関係である。図中の「ρ」が示すの
は、相関係数である。すなわち、有意な正の相関(Spearmanの順位和相関係数:
P<0.05)が認められたのは、(1)血中LPS濃度及び収縮期血圧の間、(2)血
中LPS濃度及び拡張期血圧の間、(3)血中LPS濃度及び脈圧の間、(4)血中LP
S濃度及びγ-GTPの間、並びに、(5)血中LPS濃度及び中性脂肪の間である。以
下、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、γ-GTP及び中性脂肪を総称して、単相関検査値
という。
【0092】
これらの結果で示唆されるのは、(1)血中LPS濃度の上昇及び血圧調節能の悪化が
関連すること、(2)血中LPS濃度の上昇及び動脈硬化の悪化が関連すること、(3)
血中LPS濃度の上昇及び肝機能の悪化が関連すること、並びに、(4)血中LPS濃度
の上昇及び脂質代謝能の悪化が関連することである。
【0093】
<重回帰分析>各単相関検査値、並びに、血中LPS濃度、年齢、性別及びBMIの関
係を分析した(重回帰分析)。すなわち、目的変数は、各単相関検査値であり、かつ、説
明変数は、血中LPS濃度及び年齢、性別及びBMIである。Shapiro-Wilk
検定で確認されたのは、LPS濃度(P=0.005)、年齢(P=0.001)、BM
I(P=0.03)、及び、γ-GTP(P=0.004)が正規分布していないことで
ある。そこで、これらの値をlog変換し、重回帰分析した。性別は、2値なので、lo
g変換せず、重回帰分析した。
【0094】
表2で示されるのは、重回帰分析の結果(P値)である。年齢、性別、及びBMIでの
調整後も、有意な正の相関P<0.05)が見られたのは、血中LPS濃度及び中性脂肪
の間である。また、相関傾向(P<0.1)が見られたのは、血中LPS濃度及び収縮期
血圧の間、血中LPS濃度及び脈圧の間、並びに、血中LPS濃度及びγ-GTPの間で
ある。これらの結果で示唆されるのは、血中LPS濃度が年齢、性別、及び、BMIから
独立していることである。
【0095】
【0096】
<検査値の分布範囲>表3で示すのは、血中LPS検出被験者及び血中LPS未検出被
験者それぞれの単相関検査値の分布範囲である。これらの結果で示されるのは、血中LP
Sの検出有無に関わらず、何れの単相関検査値の分布範囲も同様であることである。すな
わち、単相関検査値の高低から推定困難なのは、血中LPS濃度である。翻って、これら
の結果からの示唆によれば、既存の検査指標で検知されなくても、血中LPS濃度で検知
可能なのは、健康状態(特に、血圧調節能、動脈硬化、肝機能、脂質代謝能)の悪化であ
る。
【0097】
【0098】
<試験2>健常者の血中LPS濃度及び非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalco
holic fatty liver disease)患者(以下、「NAFLD患者」
という。)の血中LPS濃度を評価した。ここで、非アルコール性脂肪性肝疾患とは、脂
肪性肝疾患であって、その原因が明らかにアルコール性肝障害以外であるものをいう。
被験者の血中LPS濃度を測定した。その測定方法は、試験1と同様である。被験者を
構成したのは、健常者31名及びNAFLD患者31名である。
【0099】
<各群のパラメータ>表4で示すのは、試験2の被験者のプロファイルである。指標の
うちアスタリスク「*」付きものにおいて、その値は、平均値±標準偏差である。各項目
で施されたのは、Studentのt検定又はMann-WhitneyのU検定であり
、それによって得たのがp値である。健常者及びNAFLD患者を比較すると、NAFL
D患者の年齢が有意に高値である。男女比では、群間差が見られなかった。健常者及びN
AFLD患者を比較すると、有意(p<0.05)な悪化が確認されたのは、NAFLD
患者の検査値のうち肥満、血圧、肝機能、脂質代謝、糖代謝に関連するものである。
【0100】
【0101】
<結果>
図16で示すのは、健常者対NAFLD患者の血漿中LPS濃度に対する評価
結果である。
図16(a)で示すのは、血漿中LPS濃度の比較結果(健常者対NAFL
D患者)である。箱髭図の横線で示すのは、下から最小値、第一四分位、中央値、第三四
分位、最大値である。最大値より上部にあるドットで示すのは、外れ値である。健常者の
血漿中LPS濃度は、中央値0.0038EU/mL(0~0.0117EU/mL)で
ある。NAFLD患者は、中央値0.0169EU/mL(0.0009~0.3003
EU/mL)である。両者を比較すると、NAFLD患者の血漿中LPS濃度は、健常者
と比較して有意(p<0.05)に高値である。
【0102】
図16(b)で示すのは、Reciever Оperating Character
istic(ROC)曲線である。NAFLDに対する血漿中LPS濃度の診断能は、R
OC曲線下面積(area under the curve;AUC)=0.87である
。血漿中LPS濃度が0.010EU/mLであれば、カットオフ値(点線)が最適であ
る。この場合、陽性的中率(感度)は、71.0%であり、陰性的中率(特異度)は、96
.8%である。これらの結果から示唆されるのは、健康状態が悪化する境界が血漿中LP
S濃度0.010EU/mLであることである。つまり、健康状態の判定基準値は、血漿
中LPS濃度0.010EU/mLである。
【0103】
<本実施の形態の効果>本実施の形態が奏する効果は、生活習慣病の高危険度群の発見
確度の向上である。なぜなら、メタボリックシンドローム該当群及びその予備群以外の者
の健康状態の把握が従来よりも正確だからである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明が有用な分野は、健康サービス事業である。
【符号の説明】
【0105】
10 健康状態評価システム
20 測定装置
30 出力装置
40 処理装置