(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241216BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 501
B41J2/14 607
B41J2/14 609
B41J2/14 613
B41J2/16 503
(21)【出願番号】P 2020186061
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】能條 成幸
(72)【発明者】
【氏名】井利 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元昭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄介
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179599(JP,A)
【文献】特開2007-276385(JP,A)
【文献】特表2014-522755(JP,A)
【文献】特表2013-539724(JP,A)
【文献】特開2020-059241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口を形成する吐出口形成部材と、
前記吐出口形成部材の前記吐出口に液体を供給するための複数の液体供給口と、前記複数の液体供給口間に形成されている隔壁と、を有する基板と、
前記基板を支持する支持部材と、
を備える液体吐出ヘッドにおいて、
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記液体供給口は、前記基板の長手方向に沿って延在しており、
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記複数の液体供給口は、前記基板の短手方向に沿って配列しており、
前記隔壁の少なくとも一部は、前記支持部材と当接しない非当接部分となっており、
前記複数の液体供給口のうち互いに隣接して形成されている液体供給口間が、前記非当接部分と前記支持部材との隙間により連通しており、
前記液体供給口の前記短手方向における断面をみたときに、前記液体供給口のいずれの箇所における開口幅も該液体供給口の前記支持部材側の開口幅以下であ
り、
前記隔壁は、前記支持部材と当接する当接部分をさらに有し、
前記長手方向に沿って延在している液体供給口のうち、前記当接部分と前記短手方向に隣接する部分の前記基板厚み方向における中央部の開口幅をa、前記非当接部分と前記短手方向に隣接する部分の前記基板厚み方向における中央部の開口幅をbとした場合に、a<bを満たすことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記当接部分は、接着剤により前記支持部材と接合している請求項
1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記隔壁の全部が前記非当接部分となっている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記隔壁の一部分のみが前記非当接部分となっている請求項
1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記非当接部分は、前記短手方向に並んで複数形成されている請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
液体を吐出する吐出口を形成する吐出口形成部材と、
前記吐出口形成部材の前記吐出口に液体を供給するための複数の液体供給口と、前記複数の液体供給口間に形成されている隔壁と、を有する基板と、
前記基板を支持する支持部材と、
を備える液体吐出ヘッドにおいて、
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記液体供給口は、前記基板の長手方向に沿って延在しており、
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記複数の液体供給口は、前記基板の短手方向に沿って配列しており、
前記隔壁の少なくとも一部は、前記支持部材と当接しない非当接部分となっており、
前記複数の液体供給口のうち互いに隣接して形成されている液体供給口間が、前記非当接部分と前記支持部材との隙間により連通しており、
前記液体供給口の前記短手方向における断面をみたときに、前記液体供給口のいずれの箇所における開口幅も該液体供給口の前記支持部材側の開口幅以下であり、
前記隔壁は、前記支持部材と当接する当接部分をさらに有し、
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記非当接部分と前記当接部分とは、前記短手方向に並んで形成されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
液体を吐出する吐出口を形成する吐出口形成部材と、
前記吐出口形成部材の前記吐出口に液体を供給するための複数の液体供給口と、前記複数の液体供給口間に形成されている隔壁と、を有する基板と、
前記基板を支持する支持部材と、
を備える液体吐出ヘッドにおいて、
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記液体供給口は、前記基板の長手方向に沿って延在しており、
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記複数の液体供給口は、前記基板の短手方向に沿って配列しており、
前記隔壁の少なくとも一部は、前記支持部材と当接しない非当接部分となっており、
前記複数の液体供給口のうち互いに隣接して形成されている液体供給口間が、前記非当接部分と前記支持部材との隙間により連通しており、
前記液体供給口の前記短手方向における断面をみたときに、前記液体供給口のいずれの箇所における開口幅も該液体供給口の前記支持部材側の開口幅以下であり、
前記隔壁は、前記支持部材と当接する当接部分をさらに有し、
前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記当接部分が千鳥に形成されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記基板は、シリコン基板である請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の記録媒体に液体を吐出して記録を行う液体吐出装置(記録装置)として、例えば、インクジェットプリンターが挙げられる。インクジェットプリンターは、液体(インク)を吐出する部分である液体吐出ヘッドを備えている。液体吐出ヘッドは一般的に、液体を吐出する複数の吐出口が形成されている吐出口形成部材と、吐出口に液体を供給するための液体供給口が形成された基板と、を有する記録素子基板を備えている。
【0003】
特許文献1には、
図8に示すような、複数の液体供給口が個別に独立して基板に形成されている記録素子基板が開示されている。
図8(a)は、基板1の主面20と対向する位置から基板を見た際の平面図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示すA-A´断面における断面図である。液体は、液体(インク)を収容するインクタンクから液体供給口7を介して吐出口5に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録パターン(印字パターン)によっては、ある特定の吐出口から多量の液体を吐出することがある。この場合に、
図8に示すような複数の液体供給口が互いに独立して形成されている構成であると、その特定の吐出口に連通する液体供給口からより多くの液体が消費される。これにより、その液体供給口と接続されているインクタンク内の液体が他のインクタンクと比べて早期にインクを使い切ってしまう。そのため、他のインクタンクには液体が十分に充填されているのにもかかわらず、特定の吐出口からは液体を吐出することができないがために、液体吐出ヘッド自体を新規なものと交換しなければならない場合がある。
【0006】
そこで、
図9に示すような、複数の液体供給口7を連通させる構成が考えられる。
図9(a)は、
図8(a)に対応する平面図、
図9(b)は、
図9(a)に示すA-A´断面における断面図である。
図9(b)に示すように、複数の液体供給口7が互いに連通している。液体供給口間のこの連通は、基板1の長手方向(Y方向)にわたって生じている。複数の液体供給口7を互いに連通させることにより、特定の吐出口からの液体の消費が激しかったとしても、他の液体供給口7からも液体を供給することができる。このため、特定のインクタンクのみ液体の消費が激しくなるような場合を回避することが可能となる。しかしながら、
図9に示す構成においては、複数の液体供給口7を互いに連通させるために、液体供給口間に形成されている隔壁19をエッチング等で削り、除去しているため、基板1の強度が低下する。基板1の強度が低下すると、基板1に外力13等が加わった際に、基板1にクラック(割れ)12が発生する場合がある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、液体供給口間の液体の消費量の偏りを抑制しつつ、基板の強度を確保することができる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、液体を吐出する吐出口を形成する吐出口形成部材と、前記吐出口形成部材の前記吐出口に液体を供給するための複数の液体供給口と、前記複数の液体供給口間に形成されている隔壁と、を有する基板と、前記基板を支持する支持部材と、を備える液体吐出ヘッドにおいて、前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記液体供給口は、前記基板の長手方向に沿って延在しており、前記基板の主面と対向する位置からみたときに、前記複数の液体供給口は、前記基板の短手方向に沿って配列しており、前記隔壁の少なくとも一部は、前記支持部材と当接しない非当接部分となっており、前記複数の液体供給口のうち互いに隣接して形成されている液体供給口間が、前記非当接部分と前記支持部材との隙間により連通しており、前記液体供給口の前記短手方向における断面をみたときに、前記液体供給口のいずれの箇所における開口幅も該液体供給口の前記支持部材側の開口幅以下であり、前記隔壁は、前記支持部材と当接する当接部分をさらに有し、前記長手方向に沿って延在している液体供給口のうち、前記当接部分と前記短手方向に隣接する部分の前記基板厚み方向における中央部の開口幅をa、前記非当接部分と前記短手方向に隣接する部分の前記基板厚み方向における中央部の開口幅をbとした場合に、a<bを満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体供給口間の液体の消費量の偏りを抑制しつつ、基板の強度を確保することができる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】記録素子基板の製造方法の各工程を示す概略図。
【
図5】第2の実施形態における記録素子基板を示す概略図。
【
図6】第2の実施形態における記録素子基板を示す概略図。
【
図7】第2の実施形態における記録素子基板の変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、
図1ないし
図4を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の液体吐出ヘッド16を示す斜視図である。
図1に示すように、液体吐出ヘッド16は、液体を吐出する吐出口5(
図2)を有する記録素子基板15と、フレキシブル配線基板17と、吐出口5に供給するインクを収容している筐体18と、から主に構成されている。フレキシブル配線基板17は、記録素子基板15に電力を供給するための配線を有している。筐体18は、記録素子基板15を支持する部材でもあるので、以下の記載で支持部材と表記する場合もある。
【0013】
図2は、記録素子基板15を示す斜視図である。記録素子基板15には、吐出口5から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子14が所定のピッチで形成されている。また、基板1には、筐体18からの液体を吐出口5に供給するための液体供給口7が複数形成されている。基板1は、例えばシリコンで形成する。特にシリコンの単結晶基板であることが好ましい。基板1上には、吐出口形成部材4によって、各エネルギー発生素子14に対応した吐出口5が形成されている。吐出口形成部材4は、構造材料としての高い機械的強度、下地との密着性、耐インク性、更には吐出口5としての微細なパターンをパターニングするための解像性が求められるものであることが好ましい。これらの特性を満足する材料としては、例えばカチオン重合型のエポキシ樹脂組成物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物や、含ブロモビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物が挙げられる。また、フェノールノボラック或いはo-クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの反応物が挙げられる。エポキシ樹脂は、エポキシ当量が2000以下であることが好ましく、エポキシ当量が1000以下であることがより好ましい。
【0014】
エポキシ樹脂を硬化させるための光カチオン重合開始剤としては、光照射により酸を発生する化合物が挙げられる。例えば、芳香族スルフォニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が挙げられる。また、必要に応じて、波長増感剤を添加してもよい。波長増感剤としては、例えばADEKA(株)より市販されているSP-100が挙げられる。
【0015】
吐出口形成部材4は、このような樹脂で製造する以外にも、例えばシリコン基板や金属層、SiN等の無機膜で形成することもできる。
【0016】
図3(a)は、記録素子基板15を基板1側から見た平面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示すA-A´断面における断面図である。
図3(a)に示すように、複数の液体供給口が基板1の短手方向(X方向)に沿って配列しており、液体供給口間には、隔壁19が形成されている。この隔壁19は、基板の一部である。
図3(b)に示す断面においては、隔壁19の一部が除去されていることにより、液体供給口間は、互いに連通している。即ち、基板1の主面20と対向する位置からみたときに、液体供給口7は、基板1の長手方向(Y方向)に延在して、隔壁19の少なくとも一部は、支持部材18とは当接しない部分である非当接部分19aとなっている。
図3においては、隔壁19の全部が非当接部分19aとなっている例を示している。したがって、
図3においては、液体供給口間のこの連通は、基板1の長手方向(Y方向)にわたって生じている。
【0017】
隔壁19の非当接部分19aと、支持部材18との間には、隙間2が生じる。この隙間2は液体が流動することができるため、例えば、
図3に示す左端に位置する液体供給口7と連通する吐出口から多量の液体が吐出されたとしても、真ん中または右端に位置する液体供給口7の液体が左端の液体供給口7に流れ込む。これにより、ある特定の吐出口からのみ多量の液体が消費されたとしても、そのほかの液体供給口からインクが供給されるようになるため、特定の吐出口だけ早期に液体の供給が困難になることを抑制することができる。そして、
図3(b)に示すように、液体供給口7の短手方向(X方向)における断面をみたときに、液体供給口7のいずれの箇所における開口幅dも、該液体供給口7の支持部材側の開口幅以下(d1以下)となっている。液体供給口7がこのような条件を満たす形状となっていることにより、比較例の
図9に示す基板1よりもより多くの部分が残っている基板1とすることができ、基板1の剛性を確保することができるようになる。したがって、記録素子基板15の変形を抑制することができる。
【0018】
次に、本実施形態の記録素子基板15の製造方法について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、記録素子基板15の製造方法の各工程を示す概略図であり、各工程における
図3に示すA-A´断面を示す。まず、
図4(a)に示すように、表面に密着向上層3および流路形成部材10、裏面にマスク層9であるポリエーテルアミド樹脂が形成された、シリコンの単結晶基板である基板1を用意した。この際、マスク層9の液体供給口7開口部の寸法については、基板1の短手方向(X方向)の寸法を750um、長手方向(Y方向)の寸法を9000umとした。非当接部分の長手方向の寸法については400um、当接部分の長手方向の寸法については600umとした。隣接する液体供給口間を短手方向に連通させる非当接部分については、
図4(a)に示すように、隣接する液体供給口間にはマスク層9を形成しない。
【0019】
次に、
図4(b)に示すように、流路形成部材10上に、カチオン重合型のエポキシ樹脂で、吐出口形成部材4を形成した。その後、液体供給口を形成するために、YAGレーザーの3倍波(THG:波長355nm)のレーザー光を用いて、未貫通孔11を基板1に形成した。
【0020】
次に、
図4(c)に示すように、基板1の裏面から異方性エッチングを行う。異方性エッチングに用いるエッチング液には、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用い、液温80℃、エッチング時間8.5hrでエッチングをした。このエッチングにより、互いの液体供給口7が連通している液体供給口7を形成した。エッチング液が基板1の裏面側に形成された複数の未貫通孔11内部へと入り、エッチングが進行することで、エッチングマスク層9が形成されていない開口部及び、隣接する液体供給口7の隔壁の一部がエッチングされる。基板表面にエッチングが進行していくと液体供給口7内も横方向に広がって所望の開口となる。
【0021】
次に、
図4(d)に示すように、基板1裏面のマスク層9と基板1表面の流路形成部材10を除去した。そして、最後に、基板1をダイシング等で切断分離して記録素子基板15を形成し、電気配線の接続や支持部材18に記録素子基板15を接合することによって、液体吐出ヘッド16が完成した。
【0022】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、
図5を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の箇所については同一の符号を付し、説明は省略する。
図5は、本実施形態における記録素子基板15を示す。
図5(a)は、基板1の裏面側から見た平面図である。
図5(b)は、
図5(a)に示すA-A´断面における断面図である。
図5(c)は、
図5(a)に示すB-B´断面における断面図である。本実施形態においては、
図5に示すように、隔壁19が、支持部材18と当接しない非当接部分19aと、支持部材18と当接する当接部分19bと、を有する。即ち、本実施形態においては、隔壁19の一部分のみが非当接部分19aとなっている。
【0023】
隔壁19が支持部材18と当接する当接部分19bを有することにより、この当接部分19bでは支持部材18と基板1が接着剤により接合されており、基板1の強度を確保することができる。これにより、記録素子基板15の変形を抑制することができる。さらには、当接部分19bが形成されていることにより、基板1をより多く残すことができるため、基板1の剛性を保つことができる。したがって、本実施形態によれば、非当接部分19aと支持部材18との隙間2を液体が流動することにより液体供給口間の液体の消費量の偏りを抑制しつつ、基板の強度をより確保することができる。
【0024】
また、基板1の短手方向(X方向)において、非当接部分19aと隣接する位置に形成されている液体供給口7の基板厚み方向における中央部の開口幅をbとする。そして、当接部分19bと隣接する位置に形成されている液体供給口7の基板厚み方向における中央部の開口幅をaとする。この場合に、a<bの関係性になるように、液体供給口7を形成することが好ましい。非当接部分19a支持部材18との隙間2は微小空間であるため、液体供給口7よりも流体の抵抗が大きい。そのため、液体の消費量が大きい液体供給口7へ他の液体供給口から円滑に液体を供給することが困難になる場合もある。そこで、
図5(b)および(c)に示すように、隙間2に隣接する部分の液体供給口については、上述したa<bの関係性を満たすように形成することが好ましい。これにより、より円滑に液体供給口間を液体が流動することができるようになる。
【0025】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、
図6および
図7を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態における記録素子基板15を示す概略図であり、
図6(a)は、
図3(a)に対応する平面図である。
図6(b)は、
図6(a)に示すA-A´断面における断面図である。
図6(c)は、
図6(a)に示すB-B´断面における断面図である。本実施形態においては、基板1の長手方向(Y方向)において最も剛性の小さい中央部に隔壁19の当接部19bを形成している。これにより、基板1の強度をより確保することができる。ここで、隔壁19の中央部分とは、隔壁19の長手方向(Y方向)における重心を中心に、半径d/5(dは、隔壁19の長手方向における全長)の円に囲まれる領域のことをいう。なお、本実施形態においても第2の実施形態と同様に、液体供給口の開口幅が、a<bの関係性を満たすことがより好ましい。
【0026】
図7は、本実施形態における記録素子基板15の変形例であり、
図7(a)は、
図6(a)に対応する平面図である。
図7(b)は、
図7(a)に示すA-A´断面における断面図である。
図7(c)は、
図7(a)に示すB-B´断面における断面図である。
図7に示す記録素子基板15においては、長手方向(Y方向)の中央部に隔壁19の当接部分19bを設けるのみならず、端部にも形成されていることが、
図6に示す記録素子基板15と異なる点である。ここで、隔壁19の端部とは、隔壁19の長手方向(Y方向)における端から、d/5(dは、隔壁19の長手方向における全長)までの領域のことをいう。
【0027】
隔壁19の強度を高める観点から、当接部分19bは隔壁19の長手方向における中央部分に形成することが好ましい。そして、中央部分にのみならず、隔壁19の長手方向における端部にも当接部分19bを形成することで、隔壁19の強度をより確保することができる。
【0028】
また、第2の実施形態および第3の実施形態においては、基板1の主面20と対向する位置からみたときに、非当接部分19aは、基板1の短手方向(X方向)に並んで複数形成されていたが、第2の実施形態および第3の実施形態はこれに限られない。即ち、非当接部分19aと当接部分19bとが、短手方向に並んで形成されていてもよい。更には、基板1の主面20と対向する位置からみたときに、非当接部分19aと当接部分19bとが千鳥に配置されていてもよい。千鳥に配置されていることにより、記録素子基板15の剛性は場所によらずに均一に保たれる。これにより、局所的に剛性の低いような箇所がよりなくなるため、例えば、どのような方向から力が記録素子基板15に加わったとしても、記録素子基板15が変形することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 基板
2 隙間
4 吐出口形成部材
5 吐出口
7 液体供給口
18 支持部材
19 隔壁
19a 非当接部分
20 基板の主面