(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】携帯用加工機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/02 20060101AFI20241216BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20241216BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20241216BHJP
B23D 47/02 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 Z
B23D45/16
B23D47/02
(21)【出願番号】P 2020190734
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 健司
(72)【発明者】
【氏名】久米 翔
(72)【発明者】
【氏名】木村 佳弘
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-116695(JP,A)
【文献】特開平11-058304(JP,A)
【文献】特表2013-540205(JP,A)
【文献】特開2004-068087(JP,A)
【文献】特開2000-160347(JP,A)
【文献】特開2014-128976(JP,A)
【文献】実開昭55-078401(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/02
B25F 5/00
B23D 47/02
B23D 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用加工機であって、
電動モータを収容し、前記電動モータにより回転する刃具を支持する工具本体部と、
前記刃具を下方に突出させた状態で前記工具本体部を支持して被加工材に当接される下面を具備するベースを有し、
前記ベースは、マグネシウム製でかつ表面にニッケルメッキの層を備え、
前記ベースは、
断面円弧形状の曲面でありかつ、前記下面から直接または離れて前記ベースの前面と後面と右側面と左側面それぞれに向けて
側面視で円弧形状に伸びかつ、前記ベースの肉厚の50%以上の半径の円弧形状部を有し、
前記円弧形状部は、略一定の厚みの前記ニッケルメッキの層を表面に備える携帯用加工機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯用加工機であって、
前記円弧形状部は、
側面視で30°以上の中心角の円弧形状である携帯用加工機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の携帯用加工機であって、
前記円弧形状部は、前記下面から前記前面と前記後面と前記右側面と前記左側面それぞれに向けて直接伸びる携帯用加工機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の携帯用加工機であって、
前記ニッケルメッキの層は、前記ベースの肉厚に対して1/200~1/100の厚みである携帯用加工機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載した携帯用加工機であって、
前記ベースの前記前面と前記後面と前記右側面と前記左側面を相互に連結する4つの連結部の少なくとも1つは、平面視で円弧形状であり、かつ前記4つの連結部の下端部に前記円弧形状部が位置する携帯用加工機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の携帯用加工機であって、
前記下面と前記円弧形状部の間には、前記円弧形状部と接する角度で前記円弧形状部から延在して前記下面に連結される断面直線状の傾斜面部が設けられる携帯用加工機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載した携帯用加工機であって、
前記ベースの上面に凹部が設けられ、
前記凹部は、上下方向に起立する縦壁で周縁を囲まれており、
前記縦壁は、上方から見て曲線状である丸み部を有し、
前記丸み部の全長および全幅は、前記凹部の上下方向の深さよりも長い携帯用加工機。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯用加工機であって、
前記丸み部は、上方から見て前記凹部の全長または全幅において延出する1つの曲線状である携帯用加工機。
【請求項9】
請求項7または8に記載の携帯用加工機であって、
前記凹部は、前記縦壁に囲まれた底壁と、前記縦壁と前記底壁を連結しかつ
側面視で円弧形状である連結領域を有する携帯用加工機。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の携帯用加工機用ベースの製造方法であって、
板状のベース成形体をマグネシウムを原料として成形型を利用して成形し、
前記ベース成形体の下面から前記ベース成形体の前面と後面と右側面と左側面それぞれに向けて前記円弧形状部を含んで
側面視で円弧形状を有する縁部を形成し、
前記ベース成形体の前記下面を平削りして前記ベースの前記円弧形状部を残しつつ前記縁部を削り、
前記ベースの全表面に前記ニッケルメッキの層を設ける携帯用加工機用ベースの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の携帯用加工機用ベースの製造方法であって、
前記縁部は、厚み方向全体において断面円弧形状であり、前記平削りにおいて前記断面円弧形状の下側部分が削られ上側部分が前記円弧形状部として残される携帯用加工機用ベースの製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の携帯用加工機用ベースの製造方法であって、
前記縁部は、上側において断面円弧形状であり、前記断面円弧形状よりも下側において断面直線状であり、前記平削りにおいて前記断面直線状の全部が削られる携帯用加工機用ベースの製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の携帯用加工機用ベースの製造方法であって、
前記ベース成形体は、前記円弧形状部よりも内周側で前記円弧形状部よりも下方に膨出する膨出部を前記縁部の一部として有し、前記平削りにおいて前記膨出部を削る携帯用加工機用ベースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材を加工するための携帯用加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯マルノコと称される携帯用加工機は、電動モータを駆動源として駆動する先端工具を具備した工具本体部と、工具本体部を支持するベースを有する。ベースの下面に被加工材を当接させ、ベースの下面側に先端工具を突き出させて被加工材に切り込ませることで、切断加工を行うことができる。
【0003】
従来の携帯用加工機においては、アルミ製のベースが広く利用されていた。特許文献1には、ニッケルメッキを施したアルミ製のベースが記載されている。ニッケルメッキを施すことによりベースの硬度を高めることができる。さらにベースの外観の高級感を高めることができる。
【0004】
携帯用加工機を軽量にするためにベースを軽量にすることが従来から望まれている。ベースの強度を従来製品から維持しながら軽量にするために、ベースをマグネシウム製にすることが考えられる。しかしながらマグネシウム製のベースにニッケルメッキを施すことは従来困難であった。例えばニッケルメッキ若しくはメッキ処理の前の表面処理が不均一である場合、ニッケルメッキが摩耗し易い傾向がある。さらにマグネシウム製ベースとニッケルメッキの間において腐食が生じ易い。複数の凸部または凹部を具備するベースにおいてニッケルメッキや表面処理を均一に施すことは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように携帯用加工機のベースには種々改良の余地があった。したがって軽量で硬度が高く、高級感の高いベースを具備する携帯用加工機が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの特徴によると携帯用加工機は、電動モータを収容し、電動モータにより回転する刃具を支持する工具本体部と、刃具を下方に突出させた状態で工具本体部を支持して被加工材に当接される下面を具備するベースを有する。ベースは、マグネシウム製でかつ表面にニッケルメッキの層が施されている。
【0008】
したがってマグネシウム製で設けることにより携帯用加工機のベースを軽量にできる。しかもニッケルメッキを施すことにより、高い硬度を有するベースを設けることができる。さらにニッケルメッキを施すことにより、ベースの外観の高級感を高めることができる。
【0009】
本開示の他の特徴によるとニッケルメッキの層は、ベースの肉厚に対して1/200~1/100の厚みである。したがってニッケルメッキの層は、ベースの肉厚に対して概ね1/200以下である一般的なメッキ層よりも厚く設けられる。ニッケルメッキの層を厚く設けることにより摩耗を抑制できる。また、ベースの肉厚に対するニッケルメッキ層の相対的な厚みを厚くして硬度を上げることにより、ベースの強度を向上できる。さらにニッケルメッキとベースの間における腐食を防止できる。かくしてベースを高い硬度と高級感を具備した状態で維持できる。
【0010】
本開示の他の特徴によるとベースは、下面と下面に隣接して起立する前後面若しくは左右側面との間に角部を有する。角部の少なくとも一部は、断面円弧形状である。したがって凸形状である角部に断面円弧形状の領域が設けられる。そのため角部においてニッケルメッキを断面円弧形状に沿って略均一に施すことができる。これにより角部におけるニッケルメッキの摩耗を抑制できる。角部は、被加工材と当接する下面の端縁に位置するため摩耗が生じ易い。したがってマグネシウム製のベースにおけるニッケルメッキの摩耗を好適に抑制できる。さらに角部におけるニッケルメッキとマグネシウム製のベースの間の腐食を抑制できる。
【0011】
本開示の他の特徴によると前後面と左右側面を連結する4つの外周角部の少なくとも1つの外周角部は、平面視で断面円弧形状である。少なくとも1つの外周角部の下端部に少なくとも一部が断面円弧形状である角部が位置する。したがって少なくとも1つの外周角部は、水平方向及び上下方向に断面円弧形状である。そのため少なくとも1つの外周角部は、3次元的に丸みを帯びている。そのため外周角部にニッケルメッキを、上下方向と水平方向のいずれにおいても断面円弧形状に沿って略均一に施すことができる。これにより外周角部におけるニッケルメッキの摩耗と、ニッケルメッキとマグネシウム製のベースの間の腐食を抑制できる。
【0012】
本開示の他の特徴によると角部は、断面円弧形状の曲面である円弧形状部と、円弧形状部の下方において円弧形状部と隣接しかつ下面に対して傾斜する断面直線状の傾斜面部を有する。したがって円弧形状部においてニッケルメッキ層が略均一の厚みで施される。また、ベースの素材(ベース成形体)の下部を除去してベースの下面を形成する際、除去される除去部の厚みにばらつきが出る場合がある。この場合においても、傾斜面部と下面が形成する角を同じ角度の形状に設けることができる。しかもこの角を鈍い角度で設けることができる。そのため傾斜面部と下面が形成する角においてニッケルメッキ層の厚みが薄くなりにくい。かくして角部におけるニッケルメッキ層の厚みのばらつきを抑制できる。
【0013】
本開示の他の特徴によると、角部は、前後面若しくは左右側面と下面より下方において下面に対して平行である仮想平面との間を結ぶ断面円弧形状の曲面を有する。したがって下面を平削りする前のベースの素材(ベース成形体)について、下端部の角部をいわゆる丸み面取り形状に形成できる。そのためベース成形体の角部を単純な形状にできる。これによりベース成形体を成形する金型を容易に製作できる。
【0014】
本開示の他の特徴によるとベースの上面に凹部が設けられる。凹部は、上下方向に起立する縦壁で周縁を囲まれている。縦壁は、上方から見て曲線状である丸み部を有する。丸み部に接する接線は、ベースの前後面若しくは左右側面と平行かつ水平に延出する。接線と直交しかつ水平に延出する直線は、接線の延出方向における凹部の端で丸み部と交差する。接線から、直線が丸み部と交差する交点までの距離は、凹部の上下方向の深さよりも長い。
【0015】
したがって縦壁に凹部の深さとの比で相対的に大きな丸み部を設けることにより、例えばベースを傾けることで凹部から溶剤等を排出し易い。これにより凹部に溶剤等が溜まることを抑制できる。そのため凹部において表面処理を略均一に施すことができ、かつニッケルメッキを略均一に施すことができる。これにより凹部の周囲におけるニッケルメッキとマグネシウム製のベースの間の腐食を好適に抑制できる。
【0016】
本開示の他の特徴によると丸み部は、上方から見て前後面若しくは左右側面と平行に延出する2つの直線の間に挟まれた1つの曲線状である。したがって丸み部が2つの直線の間で長く形成される。そのため凹部から丸み部を介して溶剤等を好適に排出し易い。これにより凹部に溶剤等が溜まることをより好適に抑制できる。そのため凹部において表面処理を略均一に施すことができ、かつニッケルメッキを略均一に施すことができる。これにより凹部の周囲におけるニッケルメッキとマグネシウム製のベースの間の腐食を好適に抑制できる。
【0017】
本開示の他の特徴によると凹部は、縦壁に囲まれた底壁と、縦壁と底壁を連結しかつ断面円弧形状である連結領域を有する。したがって縦壁と連結される底壁の周縁において溶剤等が溜まることを抑制できる。そのため凹部において表面処理を略均一に施すことができ、かつニッケルメッキを略均一に施すことができる。これにより凹部におけるニッケルメッキとベースの間の腐食を抑制できる。
【0018】
本開示の他の特徴は、工具本体部を支持して被加工材に当接される携帯用加工機用ベースの製造方法に関する。ベース成形体は、板状でかつ下面に隣接して起立する前後面若しくは左右側面と下面との間に縁部を有する(ベース成形体の角部は、ベースの角部と区別するために「縁部」と表す)。縁部の少なくとも一部が断面円弧形状であるベース成形体を、マグネシウムを原料として成形型を利用して成形する。ベース成形体の下面を平削りによって平らにする。ベースの表面にニッケルメッキを施す。
【0019】
したがってマグネシウム製で設けることによりベースを軽量にできる。しかもニッケルメッキを施すことにより、高い硬度を有して高級感のあるベースを設けることができる。少なくとも一部が断面円弧形状である縁部には、ニッケルメッキを略均一に施すことができる。そのため縁部におけるニッケルメッキの摩耗と、ニッケルメッキとマグネシウム製のベースの間の腐食を抑制できる。また、ベース成形体の下面を平削りした後のベースの角部に断面円弧形状を残すことができる。そのためベースの下面の形成と、マグネシウム製のベースに略均一なニッケルメッキ層を施すメッキ処理とを両立できる。
【0020】
本開示の他の特徴によると縁部は、厚み方向全体において断面円弧形状である。平削りにおいて断面円弧形状の下側部分が削られ上側部分が残される。したがって厚み方向全体における縁部の断面円弧形状に沿うようにニッケルメッキを略均一に縁部に施すことができる。円弧形状部の下端には平削りにより角ができるが、180°よりもわずかに小さいごく鈍い角度の角で形成される。そのためベースの角部におけるニッケルメッキの摩耗と、ニッケルメッキとマグネシウム製のベースの間の腐食を好適に抑制できる。
【0021】
本開示の他の特徴によると縁部は、上側において断面円弧形状であり、断面円弧形状よりも下側において断面直線状である。平削りにおいて断面直線状の下側部分または全部が削られる。したがってベース成形体の下面を平削りする際に削り代を調整し易い。大量生産時には削り代にばらつきが出る場合がある。そのような場合でも、傾斜面部と下側傾斜面部の形状(傾斜角度)が同じであることにより、加工後の形状を略同一に形成できる。
【0022】
本開示の他の特徴によるとベース成形体は、縁部よりも中心側の領域から縁部よりも下方に膨出し、平削りにおいて削られる膨出部を有する。したがってベース成形体は、膨出部の凸形状を縁部から離間させた形状で設けられる。そのため平削りをした後のベースの角部に角がない丸み面取りを形成することができる。これによりベースの角部において断面円弧形状に沿うようにしてニッケルメッキを略均一に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る携帯用加工機の全体斜視図である。
【
図5】
図3中V-V線断面矢視図であって、ベースの縦断面図である。
【
図7】ベースの上面に設けられた凹部の平面図である。
【
図8】
図7中VIII-VIII線断面矢視図であって、凹部の縦断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るベースの側面図であって、
図4中VI部分に相当する拡大側面図である。
【
図10】第2実施形態に係るベースの上面に設けられた凹部の平面図である。
【
図11】第3実施形態に係るベースの側面図であって、
図4中VI部分に相当する拡大側面図である。
【
図12】第3実施形態に係るベースの上面に設けられた凹部の平面図である。
【
図13】第4実施形態に係るベースの側面図であって、
図4中VI部分に相当する拡大側面図である。
【
図14】第4実施形態に係るベースの上面に設けられた凹部の平面図である。側面図である。
【
図15】平面面取り形状の面取り部におけるメッキ層を概略的に示す縦断面図である。
【
図16】丸み面取り形状の面取り部におけるメッキ層を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
次に、本開示の第1実施形態を
図1~8に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態の携帯用加工機1は、携帯マルノコと称されるもので、工具本体部10と、工具本体部10を支持する矩形平板形状のベース2を有する。工具本体部10は、略円板状の刃具11を回転可能に支持する。ベース2の下面2c(
図4参照)は、平面状に形成されており被加工材の上面に当接される。ベース2を上下方向に貫通する窓部2aを経て、刃具11の下側を下面2c側に突き出し可能である。下面2c側に突き出された刃具11を切り込ませて被加工材の切断加工が行われる。工具本体部10には、使用者が把持するハンドル部30が設けられている。使用者は、
図1において携帯用加工機1の左側に位置してハンドル部30を把持し、右方に移動させることにより切断加工を進行させる。以下の説明において部材及び構成の前後方向については、携帯用加工機1を移動させて切断加工が進行する方向を前側とし、使用者側を後側とする。部材及び構成の上下左右方向については使用者を基準にして用いる。
【0025】
図1に示すように工具本体部10は、前側傾動支持部5と後側傾動支持部6(
図2参照)を介してベース2の上方に支持されている。前側傾動支持部5は、ベース2の前部に取付けられた扇形状の前側アンギュラプレート17と、工具本体部10に一体に連結されたブラケット18によって構成されている。前側アンギュラプレート17は、上方に向けて起立しており、刃具11の前方に扇形状の円弧中心が位置するようにベース2に取付けられている。前側傾動支持部5は、前側アンギュラプレート17の扇形状の略中心部分において前後方向に延出する左右傾動支軸8を有する。
【0026】
図1に示すように前側アンギュラプレート17の後部には、左右方向延出する上下揺動支軸7が設けられている。ブラケット18は、上下揺動支軸7を中心にして上下方向に揺動可能に前側アンギュラプレート17に連結されている。ブラケット18に連結された工具本体部10は、上下揺動支軸7を中心にして上下方向に揺動可能である。工具本体部10のベース2に対する上下揺動位置を変更することにより、刃具11のベース2の下面2c側への突き出し寸法を変更することができる。これにより刃具11の被加工材に対する切り込み深さを調整することができる。刃具11の切り込み深さは、後述する固定カバー15の左側に取付けられたデプスガイド9を用いて調整できる。
【0027】
図2に示すように後側傾動支持部6は、ベース2の後部において上方に向けて起立した扇形状の後側アンギュラプレート2bを有する。後側アンギュラプレート2bは、前側アンギュラプレート17と違い、一体成形によってベース2と一体に形成されている。後側傾動支持部6は、後側アンギュラプレート2bの扇形状の略中心部分において前後方向に延出する左右傾動支軸8を有する。後側傾動支持部6と前側傾動支持部5の左右傾動支軸8は同軸である。
図1に示すように工具本体部10は、前側傾動支持部5と後側傾動支持部6の左右傾動支軸8を中心に左右に傾動可能である。工具本体部10を左右に傾動させることにより、ベース2の下面2cに対して刃具11が傾斜した傾斜切りを行うことができる。
【0028】
図1に示すように工具本体部10には、刃具11の上側略半周の範囲を覆う固定カバー15が取付けられている。固定カバー15の右側面には、刃具11の回転方向を示す白抜き矢印15aが表示されている。工具本体部10には、刃具11の下側略半周の範囲を覆うことができる可動カバー16が取付けられている。可動カバー16は、刃具11の周方向に開閉可能に支持されて閉じ方向(
図1において反時計回り)にばね付勢されている。可動カバー16は、ばね付勢力により閉じられると刃具11の下側略半周の範囲を覆う。ばね付勢力に抗して可動カバー16が開かれると刃具11の周縁の刃先が露出される。通常の切断加工では、可動カバー16の前端が被加工材の端部に当接され、当接状態で携帯用加工機1を前側へ移動させることにより可動カバー16がばね付勢力に抗して徐々に開かれていく。可動カバー16の右側部には、開閉レバー16aが設けられている。使用者はこの開閉レバー16aを把持して可動カバー16を強制的に開閉させることができる。
【0029】
図1に示すように固定カバー15の左側には、ギヤハウジング22が設けられている。ギヤハウジング22には、不図示の減速ギヤ列が収容されている。ギヤハウジング22の左側には、略円筒形状のモータハウジング20が設けられている。モータハウジング20には、DCブラシレスモータと称されるモータ21が収容されている。モータ21のモータ軸の回転出力は、ギヤハウジング22に収容される減速ギヤ列を介して減速されて、左右方向に延出するスピンドルに伝達される。スピンドルの右端側は、固定カバー15内に突き出されて刃具11を取り付けられている。刃具11は、スピンドルと直交した姿勢でアウタフランジ12と不図示のインナフランジで面直方向(左右方向)に挟み込まれている。この刃具11の挟み込み状態がスピンドルの先端に締め込んだ固定ボルト13によりロックされている。これにより刃具11は、スピンドルに対して軸方向変位不能かつ軸回りに回転不能に固定されている。
【0030】
図1に示すように工具本体部10の上部には、ハンドル部30が設けられている。ハンドル部30の前端部は、モータハウジング20とギヤハウジング22の上部に連結されている。ハンドル部30は、その前端部から後方に延びたループ形状に形成されている。ハンドル部30のループ形状部分は、使用者が携帯用加工機1を使用するときに手で把持するグリップ部31として設けられている。グリップ部31のループ形状の上部内周側には、トリガ形式のスイッチレバー32が設けられている。グリップ部31を把持した手の指先でスイッチレバー32を引くと、モータ21が起動して刃具11が回転する。スイッチレバー32の上方には、押し操作可能なロックオフボタン33が設けられている。ロックオフボタン33を押すことで、スイッチレバー32のロック状態が解除されてスイッチレバー32の引き操作が可能となる。そのためロックオフボタン33によってスイッチレバー32の不用意な引き操作が防止される。
【0031】
図3,4に示すベース2は、マグネシウムを原料としてダイキャスト金型と称される成形型を利用して成形され、成形後、下面及び左右側面を平削り加工(平面切削加工)したものである。ベース2は、略矩形状の前端と後端において上下方向に延在する平面状の前面2dと後面2eを有する。ベース2は、略矩形状の左右端それぞれにおいて上下方向に起立した板状の右側面2fと左側面2gを有する。前面2d、後面2e、右側面2f、左側面2gは、それぞれ傾斜平面や丸みにより角を落とした面取り部3でベース2の下面2cと連結されている。以下、「面取り」は、傾斜平面により角を落とした通常の面取り(平面面取り)と、丸みにより角を落とした丸み面取りの双方の意味として用いる。また、以下において面取り部は、本開示におけるベースの角部やベース成形体の縁部に相当する意味として用いる。面取り部3は、前面2d、後面2e、右側面2f、左側面2gの下端部に設けられている。前面2dと右側面2fまたは左側面2g、及び後面2eと右側面2fまたは左側面2gは、ベース2の略矩形状の四隅に相当する外周角部3aで互いに連結されている。そのため外周角部3aの下端部にも面取り部3が設けられている。なお、下面2c、右側面2f、左側面2gは、平削り加工後の平面である。また、平面視で外周角部3aを見ると、丸みの外側が平面によって切り欠かれたような角を有する断面円弧形状である。これは、ベース成形体の状態で外周角部に丸み面取りが形成され、その状態から右側面と左側面が平削りで除去されることでベース2の右側面2fと左側面2gが形成されるからである。
【0032】
図6に示すように面取り部3は、断面円弧形状であるR1.0の円弧形状部3bと、下面2cに対して略45°で傾斜した断面直線状の傾斜面部3cを有する。円弧形状部3bは面取り部3の上部に設けられている。傾斜面部3cは面取り部3の下部に設けられている。円弧形状部3bと傾斜面部3cは、表面が滑らかに連続するように互いに連結されている。さらに具体的に言えば、傾斜面部3cの断面の直線は円弧形状部3bの円弧の接線となる。円弧形状部3bと傾斜面部3cは、水平方向において前面2d(後面2e)の下端部と外周角部3aの下端部と右側面2f(左側面2g)の下端部に跨って表面が滑らかに連続するように形成されている。円弧形状部3bと傾斜面部3cを具備する面取り部(縁部)35aは、ベース成形体35を成形する成形型を利用して形成される。ここでベース成形体35は、ベース2と下面2cよりも下方に膨出した除去部3eとが一体である状態のものを示す。
【0033】
図6に示すようにベース成形体35は、上下方向の所定の高さに下面2cが平面状に形成されるように下端から所定の厚みの領域を平削りされる。ベース成形体35の下端の除去部3eは、フライス盤等の工作機械による平削り加工によってベース成形体35から削られる。これにより傾斜面部3cの下側部分の下側傾斜面部3dがベース2から削られる。下側傾斜面部3dの傾斜角度は、傾斜面部3cと同じ角度であり、両者は同一平面上にある。除去部3eの厚みは、除去部3eをベース成形体35から削る際に円弧形状部3bがベース2側に全て残る範囲内で設定されている。
【0034】
図3に示すようにベース2の上面2hには、下方に向けて凹形状の複数の凹部4が設けられている。凹部4は、窓部2aの左方において前後方向に延出しかつ工具本体部10(
図1参照)の下方に位置する領域に設けられている。凹部4は、平面視に置いて前後方向に長く伸びかつ各四隅に円弧形状を有する略矩形状に形成されている。複数の凹部4は、同形状に設けられており、前後方向及び左右方向に略等間隔で配置されている。
【0035】
図5,7,8に示すように凹部4は、上下方向に起立した縦壁4aによって周縁を囲まれている。縦壁4aは、略矩形状の四隅において平面視で円弧形状の丸み部4bを有する。4つの丸み部4bの半径は、
図7に示す距離Tに相当する。距離Tは以下に示すように算出される。接線L1は、前後方向に延出して1つの丸み部4bに接する。接線L2は、接線L1と直交する左右方向に延出して同じ丸み部4bに接する。距離Tは、接線L1と、接線L2が丸み部4bに接する交点Pとの距離である。
【0036】
図5,8に示すように凹部4は、縦壁4aによって周囲を囲まれた底壁4cを有する。底壁4cは、下面2cと平行な水平方向に延出しており、平面形状に形成されている。底壁4cは、上面2hに対して深さDの位置に形成されている。凹部4の深さDは、上述した距離T(
図7参照)よりも小さい。そのため凹部4は、水平方向の長さよりも上下方向の深さが小さい底浅形状である。底壁4cと縦壁4aが連結される連結領域4dは、断面円弧形状に形成されている。縦壁4aと凹部4の上面2hとが交差する連結領域4eも断面円弧形状に形成されている。ここで連結領域は、R1.0の断面円弧形状である。
【0037】
図2に示すベース2は、先ずマグネシウムを原料として成形型を利用したいわゆるダイキャストによってベース成形体が成形される。
図6に示すようにベース成形体35は、下面2cが水平方向に延出した平面形状になるように平削りされる。また、右側面2fと左側面2gも垂直方向に延出した平面形状になるように平削りされる。これによりベース成形体35の下方に膨出した除去部3eが削られる。平削りの後に、メッキの付着性を向上させる下地処理としてベース2の表面に下地処理用の溶剤が塗布される。ベース2の表面に溜まった溶剤を落とした後にベース2の表面にニッケルメッキ処理がなされる。これによりベース2の表面を覆うニッケルメッキの層が設けられる。
【0038】
図5に示すベース2は、肉厚Nが概ね2mmになるように形成されている。具体的には、ベース成形体35(
図6参照)の時の肉厚は概ね2.5mmであり、除去部3eが0.5mm取り除かれている。ベース2の表面に設けられるニッケルメッキ層の厚みは、10μm以上であり、好ましくは10~20μmである。そのためニッケルメッキ層の厚みは、ベース2の肉厚Nの1/200以上であり、好ましくはベース2の肉厚Nの1/200~1/100の大きさである。
【0039】
面取り部におけるニッケルメッキ層の厚みについて
図15,16に基づいて説明する。
図15に示すようにベース70の下端の縁には、傾斜平面で角を落とした平面面取りの面取り部71が設けられている。ベース70のベース成形体76は、下端部の縁が平面面取りされた面取り部(縁部)76aを有する。ベース成形体76の下端から所定の厚みの除去部73を平削りして下面72が形成される。その後にベース70の表面にニッケルメッキ層が施される。メッキ層74は、ベース70の下面72、前後面、左右側面においては概ね一定の厚みを有する。しかしながら面取り部71は、上下両端において角が出張っている。そしてこの面取り部71の角75にはメッキが載り難い。これは、ニッケルメッキ層は液体の溶液が固まったものであり、液体の性質によってベース70の平面部では溶液の層が平面部と平行になるが、角75では液体の表面が角(エッジ)になりにくい性質を持っているためである。これにより面取り部71においてメッキ層74の厚みが薄くなる場合がある。したがって面取り部71の周囲で摩耗や腐食を十分に抑制することが難しい。
【0040】
図16に示すようにベース80の下端の縁には、断面円弧形状で角を落とした丸み面取りの面取り部81が設けられている。ベース80のベース成形体85の面取り部86は、上側に丸み面取り形状を有し、丸み面取り形状よりも下方に傾斜平面で面取りされた平面面取り形状を有する。ベース成形体85の下端から平面面取り形状と同じの厚みの除去部83を平削りして下面82が形成される。そのため断面円弧形状の面取り部81は、平削り後の状態において下面82、前後面、左右側面と滑らかに連結される。したがってベース80の下端部は、角75(
図15参照)のような角張った形状を有さずに設けられる。そのためベース80の表面に施されるメッキ層84は、ベース80の面取り部81、下面82、前後面、左右側面のいずれにおいても概ね一定の厚みで設けられる。これにより面取り部81は、メッキ層84によってベース80の他の部分と同様に摩耗や腐食が抑制される。
【0041】
上述するように携帯用加工機1は、
図1に示すようにモータ21を収容し、モータ21により回転する刃具11を支持する工具本体部10と、刃具11を下方に突出させた状態で工具本体部10を支持して被加工材に当接される下面2cを具備するベース2を有する。ベース2は、マグネシウム製でかつ表面にニッケルメッキの層が施されている。
【0042】
したがってマグネシウム製で設けることにより携帯用加工機1のベース2を軽量にできる。しかもニッケルメッキを施すことにより、高い硬度を有するベース2を設けることができる。さらにニッケルメッキを施すことにより、ベース2の外観の高級感を高めることができる。
【0043】
図5に示すようにニッケルメッキの層は、ベース2の肉厚Nに対して1/200~1/100の厚みである。したがってニッケルメッキの層は、ベース2の肉厚Nに対して概ね1/200以下である一般的なメッキ層よりも厚く設けられる。ニッケルメッキの層を厚く設けることにより摩耗を抑制できる。また、ベース2の肉厚Nに対するニッケルメッキ層の相対的な厚みを厚くして硬度を上げることにより、ベース2の強度を向上できる。さらにニッケルメッキとベース2の間における腐食を防止できる。かくしてベース2を高い硬度と高級感を具備した状態で維持できる。
【0044】
図2,6に示すようにベース2は、下面2cと、下面2cに隣接して起立する前後面2d,2e若しくは左右側面2f,2gとの間に面取り部3を有する。面取り部3の上部は、断面円弧形状の円弧形状部3bである。したがって凸形状である面取り部3に断面円弧形状の円弧形状部3bが設けられる。そのため面取り部3においてニッケルメッキ若しくは表面処理を円弧形状部3bの断面円弧形状に沿って略均一に施すことができる。これにより面取り部3におけるニッケルメッキの摩耗を抑制できる。面取り部3は、被加工材と当接する下面2cの端縁に位置するため摩耗が生じ易い。したがってマグネシウム製のベース2におけるニッケルメッキの摩耗を好適に抑制できる。さらに面取り部3におけるニッケルメッキとマグネシウム製のベース2の間の腐食を抑制できる。
【0045】
図3,4,6に示すように前後面2d,2eと左右側面2f,2gをそれぞれ連結する4つの外周角部3aは、平面視で前述したように角を有する断面円弧形状である。外周角部3aの下端部には、断面円弧形状である円弧形状部3bを具備する面取り部3が位置する。したがって外周角部3aは、水平方向及び上下方向に断面円弧形状である。そのため外周角部3aは、3次元的に丸みを帯びている。そのため外周角部3aにニッケルメッキ若しくはニッケル処理の前の表面処理を、上下方向と水平方向のいずれにおいても断面円弧形状に沿って略均一に施すことができる。これにより外周角部3aにおけるニッケルメッキの摩耗と、ニッケルメッキとマグネシウム製のベース2の間の腐食を抑制できる。
【0046】
図6に示すように面取り部3は、断面円弧形状の曲面である円弧形状部3bと、円弧形状部3bの下方において円弧形状部3bと隣接しかつ下面2cに対して傾斜する断面直線状の傾斜面部3cを有する。したがって円弧形状部3bにおいてニッケルメッキ層が略均一の厚みで施される。また、ベース成形体35の下部を除去して下面2cを形成する際、除去される除去部3eの厚みにばらつきが出る場合がある。この場合においても、傾斜面部3cと下面2cが形成する角を同じ角度の形状に設けることができる。しかもこの角を鈍い角度で設けることができる。そのため傾斜面部3cと下面2cが形成する角においてニッケルメッキ層の厚みが薄くなりにくい。かくして面取り部3におけるニッケルメッキ層の厚みのばらつきを抑制できる。
【0047】
図7に示すようにベース2の上面2hに凹部4が設けられる。凹部4は、上下方向に起立する縦壁4aで周縁を囲まれている。縦壁4aは、上方から見て曲線状である丸み部4bを有する。ここで、凹部4の前後方向の長さは25mmであり、左右方向の長さは15mmである。丸み部4bはR6.0の丸み面取りである。丸み部4bに接する接線L1は、ベース2の左右側面2f,2g(
図3参照)と平行な前後方向に延出しかつ水平に延出する。接線Lと直交しかつ水平に延出する接線L2は、接線L1の延出方向における凹部4の端で丸み部4bと交差する。接線L1から、接線L2が丸み部4bと交差する交点Pまでの距離は、凹部4の上下方向の深さD(
図8参照)よりも長い。ここで、深さDは5mmであり、距離Tは6mmである。
【0048】
したがって縦壁4aに凹部4の深さDとの比で相対的に大きな丸み部4bを設けることにより、例えばベース2を傾けることで凹部4から溶剤等を排出し易い。これにより凹部4に溶剤等が溜まることを抑制できる。そのため凹部4において表面処理を略均一に施すことができ、かつニッケルメッキを略均一に施すことができる。これにより凹部4の周囲におけるニッケルメッキとマグネシウム製のベース2の間の腐食を好適に抑制できる。
【0049】
図5,8に示すように凹部4は、縦壁4aに囲まれた底壁4cと、縦壁4aと底壁4cを連結しかつ断面円弧形状である連結領域4dを有する。したがって連結領域4dにおいて溶剤等が溜まることを抑制できる。そのため凹部4において表面処理を略均一に施すことができ、かつニッケルメッキを略均一に施すことができる。これにより凹部4におけるニッケルメッキとベース2の間の腐食を抑制できる。ここで、連結領域4dはR1.0の断面円弧形状である。
【0050】
図2,6を参照するようにベース成形体35は、板状でかつ下面2cに隣接して起立する前後面2d,2e若しくは左右側面2f,2gと下面2cとの間に面取り部35aを有する。面取り部35aの円弧形状部3bが断面円弧形状であるベース成形体35を、マグネシウムを原料として成形型を利用して成形する。ベース成形体35の下面を平削りによって平らにする。ベース2の表面にニッケルメッキを施す。
【0051】
したがってマグネシウム製で設けることによりベース2を軽量にできる。しかもニッケルメッキを施すことにより、高い硬度を有して高級感のあるベース2を設けることができる。円弧形状部3bが断面円弧形状である面取り部3には、ニッケルメッキを略均一に施すことができる。そのため面取り部3におけるニッケルメッキの摩耗と、ニッケルメッキとマグネシウム製のベース2の間の腐食を抑制できる。また、ベース成形体35の下面を平削りした後の面取り部3にベース2に円弧形状部3bを残すことができる。そのためベース2の下面2cの形成と、マグネシウム製のベース2に略均一なニッケルメッキ層を施すメッキ処理とを両立できる。
【0052】
図6に示すように面取り部3は、上側において断面円弧形状の円弧形状部3bを有し、断面円弧形状よりも下側において断面直線状の傾斜面部3cを有する。平削りにおいて傾斜面部3cの下側部分の下側傾斜面部3dが削られる。したがってベース成形体35の下面を平削りする際に削り代を調整し易い。例えば0.5mmの削り代で削る狙いだったものが、大量生産時のばらつきにより0.6mmになったり0.4mmになったりする場合がある。そのような場合でも、傾斜面部3cと下側傾斜面部3dの形状(傾斜角度)が同じであることにより、加工後の形状を略同一に形成できる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態を
図9~10に基づいて説明する。以下の説明においては、第2実施形態の携帯用加工機40について、第1実施形態の携帯用加工機1と異なる構成についてのみ詳細に説明する。
図9に示すように携帯用加工機40は、携帯用加工機1の面取り部3(
図6参照)と異なる形状の面取り部42を具備したベース41を有する。
図10に示すようにベース41は、携帯用加工機1の凹部4(
図7参照)と異なる形状の凹部43を有する。
【0054】
図9に示すように面取り部42は、ベース41の下面41aと前面41bが連結される前面41bの下端部と、下面41aと右側面41cが連結される右側面41cの下端部に設けられている。面取り部42は、前面41bと右側面41cが互いに連結される外周角部42aの下端部にも設けられている。なおベース41の後面と左側面については図では見えていないが同様にして下端部に面取り部42が設けられている。
【0055】
図9に示すように面取り部42は、断面円弧形状であるR1.0の円弧形状部42bを有する。ベース41を平削りする前のベース成形体45は、下面41aよりも下方に膨出した除去部42dを含んでいる。円弧形状部42bは、前面41b若しくは右側面41cと除去部42dの下面とを断面円弧形状で滑らかに連結するように形成されている。換言すると円弧形状部42bは、前面41b若しくは右側面41cと、下面41aよりも下方において下面41aと平行な仮想平面42eとの間を断面円弧形状で連結する曲面形状を有する。円弧形状部42bは、水平方向において前面41bと外周角部42aと右側面41cそれぞれの下端部に跨って表面が滑らかに連続するように形成されている。円弧形状部42bは、ベース成形体45を成形する成形型を利用して形成される。除去部42dを削ると、円弧形状部42bの下側部分の下側円弧形状部42cがベース41から削られる。除去部42dの厚みは、円弧形状部42bの少なくとも一部がベース41側に全て範囲内で設定されている。
【0056】
図10に示すようにベース41の上面には、下方に向けて凹形状の凹部43が設けられている。凹部43は、凹部4(
図3参照)と同様に複数設けられ、凹部4と略同じ位置に配置される。凹部43は、平面視において径の等しい2つの円弧の凹側を対向させた向きで結合し、2つの円弧が結合される点(交点P)を結んだ距離を2つの円弧の距離(距離Tの2倍)より長くするとともに、結合点を結んだ直線が前後方向に沿うような姿勢に形成されている。ここで、凹部43の前後方向長さ(後述する直線L4から直線L5までの距離)は25mmであり、左右方向長さは15mmである。距離Tは7.5mmである。
【0057】
図10に示すように凹部43は、上下方向に起立した縦壁43aによって周縁を囲まれている。縦壁43aは、平面視で円弧形状であって左右一対の丸み部43bで構成されている。接線L1は、前後方向に延出して1つの丸み部43bに接する。直線L4は、接線L1と直交する左右方向に延出して同じ丸み部43bの前端と交点Pで交差する。交点PにはR1.0の丸み面取りが形成されている。直線L5は、凹部43を挟んで直線L4と対向する位置において、直線L4と平行に延出して同じ丸み部43bの後端と交差する。丸み部43bは、直線L4と直線L5の間に挟まれた1つの曲線状に形成されている。丸み部43bは、半径15mmの円弧形状である。
【0058】
図10に示すように凹部43は、縦壁43aによって周囲を囲まれた平面状の底壁43cを有する。
図10中の凹部43のA-A断面矢視図は、
図8に示す凹部4の断面矢視図と同様の形状を有している。そのため底壁43cは、ベース41の上面に対して深さDの位置に形成されている。凹部43の深さDは、上述した距離Tよりも小さい。底壁43cと縦壁43aは、断面円弧形状の連結領域で互いに連結されている。
【0059】
上述するように携帯用加工機40のベース41の上面には、
図10に示すように凹部43が設けられている。凹部43の縦壁43aが具備する丸み部43bは、上方から見て互いに平行に延出して丸み部43bに接する2つの接線L1,L3の間に挟まれた1つの曲線状である。したがって丸み部43bが2つの接線L1,L3の間で長く形成される。そのため凹部43から丸み部43bを介して溶剤等を好適に排出し易い。これにより凹部43に溶剤等が溜まることをより好適に抑制できる。そのため凹部43において表面処理を略均一に施すことができ、かつニッケルメッキを略均一に施すことができる。これにより凹部43の周囲におけるニッケルメッキとマグネシウム製のベース41の間の腐食を好適に抑制できる。
【0060】
図9に示すように面取り部42は、前面41b若しくは右側面41cと仮想平面42eとの間を結ぶ断面円弧形状の曲面を有する。仮想平面42eは、下面41aより下方において下面41aに対して平行である。したがって下面41aを平削りする前のベース41のベース成形体45について、下端部の面取り部(縁部)45aをいわゆる丸み面取り形状に形成できる。そのためベース成形体45の面取り部45aを単純な形状にできる。これによりベース成形体45を成形する金型を容易に製作できる。
【0061】
図9に示すように面取り部42は、ベース41の厚み方向全体において断面円弧形状の円弧形状部42bを有する。平削りにおいて円弧形状部42bの下側部分の下側円弧形状部42cが削られ上側部分が残される。したがって厚み方向全体における面取り部42の断面円弧形状に沿うようにニッケルメッキを略均一に面取り部42に施すことができる。円弧形状部42bの下端には平削りにより角ができるが、180°よりもわずかに小さいごく鈍い角度の角で形成される。それにより角であってもメッキの膜厚が薄くなりにくい。そのため面取り部42におけるニッケルメッキの摩耗と、ニッケルメッキとマグネシウム製のベース41の間の腐食を好適に抑制できる。
【0062】
<第3実施形態>
次に、本開示の第3実施形態を
図11~12に基づいて説明する。以下の説明においては、第3実施形態の携帯用加工機50について、第1実施形態の携帯用加工機1と異なる構成についてのみ詳細に説明する。
図11に示すように携帯用加工機50は、携帯用加工機1の面取り部3(
図6参照)と異なる形状の面取り部52を具備したベース51を有する。
図12に示すようにベース51は、携帯用加工機1の凹部4(
図7参照)と異なる形状の凹部53を有する。
【0063】
図11に示すように面取り部52は、ベース51の下面51aと前面51bが連結される前面51bの下端部と、下面51aと右側面51cが連結される右側面51cの下端部に設けられている。面取り部52は、前面51bと右側面51cが互いに連結される外周角部52aの下端部にも設けられている。なおベース51の後面と左側面については図では見えていないが同様にして下端部に面取り部52が設けられている。
【0064】
図11に示すように面取り部52は、断面円弧形状であるR1.0の円弧形状部52bを有する。ベース51を平削りする前のベース成形体55は、下面51aよりも下方に膨出した除去部(膨出部)52cを有する。除去部52cは、面取り部52よりもベース51の中心に近い領域に設けられている。円弧形状部52bは、水平方向において前面51bと外周角部52aと右側面51cそれぞれの下端部に跨って表面が滑らかに連続するように形成されている。円弧形状部52bは、ベース成形体55を成形する成形型を利用して形成される。除去部52cを削ると、円弧形状部52bが全てベース51側に残る。円弧形状部52bは、前面51b若しくは右側面51cと下面51aとを断面円弧形状で滑らかに連結する形状に仕上げられる。
【0065】
図12に示すようにベース51の上面には、下方に向けて凹形状の凹部53が設けられている。凹部53は、凹部4(
図3参照)と同様に複数設けられ、凹部4と略同じ位置に配置される。凹部53は、平面視に置いて前後方向に長く延びかつ前部及び後部がそれぞれ半円形状で連結された略矩形状に形成されている。凹部53は、前後方向長さが25mmであり、左右方向長さが15mmである。凹部53は、上下方向に起立した縦壁53aによって周縁を囲まれている。縦壁53aは、平面視で前部及び後部に半円形状の丸み部53bを有する。接線L1は前後方向に延出し、接線L2は接線L1と直交する左右方向に延出し、それぞれ同じ丸み部53bに接する。接線L3は、凹部53を挟んで接線L1と対向する位置において接線L1と平行に延出して同じ丸み部53bに接する。丸み部53bは、接線L1と接線L3の間に挟まれた1つの曲線状に形成されている。したがって丸み部52bの半径は7.5mmである。丸み部53bの半径は、接線L1と、接線L2が丸み部53bに接する交点Pとの距離T(7.5mm)に相当する。
【0066】
図12に示すように凹部53は、縦壁53aによって周囲を囲まれた平面状の底壁53cを有する。
図12中の凹部53のA-A断面矢視図は、
図8に示す凹部4の断面矢視図と同様の形状を有している。そのため底壁53cは、ベース51の上面に対して深さDの位置に形成されている。凹部53の深さDは5mmであり、上述した距離Tよりも小さい。底壁53cと縦壁53aは、断面円弧形状の連結領域で互いに連結されている。
【0067】
上述するようにベース51に係るベース成形体55は、
図11に示すように面取り部(縁部)55aよりもベース51の中心側の領域から面取り部55aよりも下方に膨出し、平削りにおいて削られる除去部52cを有する。したがってベース成形体55は、除去部52cの凸形状を面取り部55aから離間させた形状で設けられる。そのため平削りをした後のベース51の面取り部52に角がない丸み面取りを形成することができる。これにより面取り部52において断面円弧形状の円弧形状部52bに沿うようにしてニッケルメッキを略均一に施すことができる。
【0068】
<第4実施形態>
次に、本開示の第4実施形態を
図13~14に基づいて説明する。以下の説明においては、第4実施形態の携帯用加工機60について、第1実施形態の携帯用加工機1と異なる構成についてのみ詳細に説明する。
図13に示すように携帯用加工機60は、携帯用加工機1の面取り部3(
図6参照)と異なる形状の面取り部62を具備したベース61を有する。
図14に示すようにベース61は、携帯用加工機1の凹部4(
図7参照)と異なる形状の凹部63を有する。
【0069】
図13に示すように面取り部62は、ベース61の下面61aと前面61bが連結される前面61bの下端部と、下面61aと右側面61cが連結される右側面61cの下端部に設けられている。面取り部62は、前面61bと右側面61cが互いに連結される外周角部62aの下端部にも設けられている。なおベース61の後面と左側面については図では見えていないが同様にして下端部に面取り部62が設けられている。
【0070】
図13に示すように面取り部62は、上部に断面直線状であって下面61aに対して略45°で傾斜する傾斜面部62bを有し、下部に断面円弧形状であるR1.0の円弧形状部62cを有する。傾斜面部62bは、ベース成形体を成形する成形型を利用して形成される。円弧形状部62cは、下面61aを平削りで平面状に形成する際に削り加工により断面円弧形状に形成される。円弧形状部62cは、前面61b若しくは右側面61cと下面61aとを断面円弧形状で滑らかに連結する。
【0071】
図14に示すようにベース61の上面には、下方に向けて凹形状の凹部63が設けられている。凹部63は、凹部4(
図3参照)と同様に複数設けられ、凹部4と略同じ位置に配置される。凹部63の前後方向長さは25mmであり、左右方向長さは15mmである。凹部63は、平面視に置いて前後方向に長い楕円形状に形成されている。この楕円は長径25mm、短径15mmで規定される楕円である。凹部63は、上下方向に起立した縦壁63aによって周縁を囲まれている。縦壁63aは、平面視で楕円形状の丸み部63bを有する。接線L1は前後方向に延出し、接線L2は、接線L1と直交する左右方向に延出し、それぞれ丸み部63bに接する。接線L3は、凹部63を挟んで接線L1と対向する位置において接線L1と平行に延出して丸み部63bに接する。丸み部63bは、接線L1と接線L3の間に挟まれた1つの曲線状に形成されている。丸み部63bの短径は、接線L1と、接線L2が丸み部63bに接する交点Pとの距離Tに相当する。ここで、距離Tは短径の2分の1なので7.5mmである。
【0072】
図14に示すように凹部63は、縦壁63aによって周囲を囲まれた平面状の底壁63cを有する。
図14中の凹部63のA-A断面矢視図は、
図8に示す凹部4の断面矢視図と同様の形状を有している。そのため底壁63cは、ベース61の上面に対して深さDの位置に形成されている。凹部63の深さDは、上述した距離Tよりも小さく5mmである。底壁63cと縦壁63aは、断面円弧形状の連結領域で互いに連結されている。
【0073】
<他の変形例>
以上説明した第1~第4実施形態の携帯用加工機1,40,50,60には、様々な変更を加えることができる。携帯マルノコと称される携帯用加工機を例示したが、例えばジグソー、ルータ、携帯カンナ等のその他の携帯用加工機に本発明を適用することができる。マグネシウム製のベースに、ベースの肉厚Nに対して1/200~1/100の厚みのニッケルメッキ層を施したものを例示した。これに代えてアルミ製のベースに、ベースの肉厚Nに対して1/200~1/100の厚みのニッケルメッキ層を施しても良い。従来のメッキ層よりも厚いニッケルメッキ層を施すことにより、ニッケルメッキの摩耗を抑制でき、さらにニッケルメッキとアルミ製ベースとの間における腐食とを抑制できる。
【0074】
面取り部の円弧形状部について、ダイキャスト成形時に設けても良く、ベースを削り加工する際に設けても良い。面取り部の円弧形状部について、成形し易い断面円弧形状(いわゆるR形状)を例示したが、例えば断面形状が楕円形状等であっても良い。面取り部の円弧形状部について、例えば被加工材と接触し易いベースの前部において大きい径で形成し、ベースの後部においてそれよりも小さい径で形成しても良い。面取り部の傾斜面部について、成形し易いように下面に対して45°で傾斜する傾斜面(いわゆるC面)を例示した。これに代えて、例えば下面に対する傾斜角度が45°よりも小さい場合及び大きい場合にも適用できる。
【0075】
ベースの上面に設けられる凹部について、例えば左右方向に長手方向を有する形状であっても良い。複数の凹部をそれぞれ若しくは一部を異なる形状で形成しても良い。複数の凹部をそれぞれ若しくは一部を異なる大きさで形成しても良い。複数の凹部を例えば左右方向にジグザグ状に配置しても良く、例えば不規則に配置しても良い。
【符号の説明】
【0076】
1…携帯用加工機
2…ベース、2a…窓部、2b…後側アンギュラプレート、2c…下面
2d…前面、2e…後面、2f…右側面、2g…左側面、2h…上面
3…面取り部(角部)、3a…外周角部、3b…円弧形状部、3c…傾斜面部
3d…下側傾斜面部、3e…除去部
4…凹部、4a…縦壁、4b…丸み部、4c…底壁、4d,4e…連結領域
5…前側傾動支持部
6…後側傾動支持部
7…上下揺動支軸
8…左右傾動支軸
9…デプスガイド
10…工具本体部
11…刃具
12…アウタフランジ
13…固定ボルト
15…固定カバー、15a…(刃具の回転方向を示す)白抜き矢印
16…可動カバー、16a…開閉レバー
17…前側アンギュラプレート
18…ブラケット
20…モータハウジング
21…モータ
22…ギヤハウジング
30…ハンドル部
31…グリップ部
32…スイッチレバー
33…ロックオフボタン
35…ベース成形体、35a…面取り部(縁部)
40…携帯用加工機(第2実施形態)
41…ベース、41a…下面、41b…前面、41c…右側面
42…面取り部(角部)、42a…外周角部、42b…円弧形状部、42c…下側円弧部
42d…除去部、42e…仮想平面
43…凹部、43a…縦壁、43b…丸み部、43c…底壁
45…ベース成形体、45a…面取り部(縁部)
50…携帯用加工機(第3実施形態)
51…ベース
51a…下面、51b…前面、51c…右側面
52…面取り部(角部)、52a…外周角部、52b…円弧形状部
52c…除去部(膨出部)
53…凹部、53a…縦壁、53b……丸み部、53c…底壁
55…ベース成形体、55a…面取り部(縁部)
60…携帯用加工機(第4実施形態)
61…ベース
61a…下面、61b…前面、61c…右側面
62…面取り部(角部)、62a…外周角部、62b…傾斜面部、62c…円弧形状部
63…凹部、63a…縦壁、63b……丸み部、53c…底壁
70…ベース、71…面取り部(角部)、72…下面、73…除去部、74…メッキ層
75…角
76…ベース成形体、76a…面取り部(縁部)
80…ベース、81…面取り部(角部)、82…下面、83…除去部、84…メッキ層
85…ベース成形体、86…面取り部(縁部)
D…深さ
L1,L2,L3…接線(直線)、L4,L5…直線
P…交点、
T…距離
N…肉厚