(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】脱硫装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20241216BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241216BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20241216BHJP
F28G 9/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B01D53/50 200
B01D53/78 ZAB
B01D53/18 150
F28G9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020194248
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田口 善規
(72)【発明者】
【氏名】成田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】島村 潤
(72)【発明者】
【氏名】内山 圭吾
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公告第1271296(DE,B)
【文献】特開2012-196611(JP,A)
【文献】特開2009-095697(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103063082(CN,A)
【文献】特表2012-528707(JP,A)
【文献】米国特許第5826518(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-18
B01D 53/34-96
F23J 15/00-08
F27D 17/00
F28G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の硫黄分を吸収する吸収液が収容される収容部から上方に延びる流路下流部と、前記収容部よりも上方で前記流路下流部に接続されて排ガスが流入する流入部と、前記流入部の上流側に接続された流路上流部と、を有する排ガス流路と、
前記流路下流部の排ガスに前記吸収液を噴射する噴射器と、
前記流路上流部の排ガスから熱を回収すると共に、排ガスの流れ方向に対して前記噴射器よりも下流側の排ガスに回収した熱で加熱する熱交換器と、
前記流路上流部に配置されて前記熱交換器に洗浄液を噴射する洗浄機と、
前記流路上流部の底部に設けられて、洗浄液を排出する排出部と、
ガスの流れ方向に対して、前記排出部よりも下流側且つ前記流入部と前記流路下流部との境界の位置よりも上流側に配置され、前記洗浄液の前記流路下流部への流入を規制する規制部材と、
を備えたことを特徴とする脱硫装置。
【請求項2】
前記規制部材の重力方向の上端部に形成され、重力方向に対して傾斜する返し部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の脱硫装置。
【請求項3】
重力方向の上方に行くにつれてガスの流れ方向の下流側に傾斜する前記返し部、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の脱硫装置。
【請求項4】
前記排ガス流路の底面に対して出没可能な前記規制部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の脱硫装置。
【請求項5】
前記洗浄機が洗浄液を噴射する洗浄作業が行われる場合に、前記排ガス流路の底面に対して突出し、前記洗浄作業が終了すると前記排ガス流路の底面に対して埋没する前記規制部材、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の脱硫装置。
【請求項6】
熱を蓄積可能且つ回転軸を中心として回転可能に構成され、前記流路上流部の内部と前記流路下流部の内部とを順に通過する前記熱交換器、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の脱硫装置。
【請求項7】
前記流路上流部における前記熱交換器の排ガスの流れ方向の上流側と下流側との圧力の差に基づいて、前記洗浄機を噴射する時期を制御する制御部、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の脱硫装置。
【請求項8】
前記排出部から排出された洗浄液を前記洗浄機に循環させる循環部、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の脱硫装置。
【請求項9】
前記排出部から排出された洗浄液のpHに基づいて、前記洗浄液を前記洗浄機に循環させるか否かを判別する制御部、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の脱硫装置。
【請求項10】
前記排出部に設けられ、洗浄液の入口側を水封する水封部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の脱硫装置。
【請求項11】
前記排出部を閉止するダンパにより構成された前記水封部材、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の脱硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中から硫黄分を除去する脱硫装置に関し、特に、処理前の排ガスから熱を回収して、処理後の排ガスを加熱する熱交換器を有する脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等における排煙(排ガス)に含まれる硫黄分を除去する脱硫装置において、脱硫装置の吸収塔内において排ガスを吸収液と接触させる湿式の脱硫装置が公知である。湿式の脱硫装置では、吸収塔出口における排ガスは水分飽和ガスとなり、SO3ミストによる腐食の原因や煙突出口で紫煙などが生じる原因となる。これを防止するために吸収塔の出口に、ガス再加熱装置を設置して排ガスの温度を高めて煙突から排出するのが一般的である。
排ガスの加熱を行う技術として、下記の特許文献1,2に記載の技術が公知である。
【0003】
特許文献1(特開2009-95697号公報)には、回転軸(9)を中心として回転する蓄熱体(1)が、脱硫処理が未処理のガスが通過する部分と、処理済みのガスが通過する部分を順に通過することで、未処理のガスから熱を回収し、回収した熱で処理済みのガスを加熱(再加熱)する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、未処理のガスが通過するガス流路において、蓄熱体(1)の上下から水洗ノズル(8,10)で洗浄液を噴射して水洗している。
【0004】
特許文献2(中国特許公開公報第103063082号:CN103063082A)には、特許文献1と同様の回転式のGGH(ガスガスヒータ、熱交換器)に対して、高圧シャワー(13)から高圧水を噴射してGGHを洗浄したり、ジェット(42)から薬液を噴射して洗浄する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-95697号公報(「0016」-「0019」、
図1、
図2)
【文献】中国特許公開公報第103063082号(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
石炭火力発電の排ガスには、石炭燃焼灰等の粒子が含まれており、熱回収時に熱交換器のエレメント(伝熱管)には排ガス中の石炭燃焼灰等の粒子が付着する。したがって、特許文献1,2に記載の技術のように、未処理のガスが流れる部分は、洗浄液で洗浄することが広く行われている。
特に、特許文献1,2のような回転型(ユングストローム型)のGGHでは、熱回収時に石炭燃焼灰が付着した部分が、GGHの回転に伴って、処理済みのガス側に進入する。この時、処理済みのガス側には、脱硫用の吸収液のミストが含まれていることがあり、ミストによりGGHに付着した石炭燃焼灰等の粒子が固着化して圧力損失が増加しやすい。
【0007】
図4は従来技術の熱交換器を備えた脱硫装置の概略説明図である。
図4において、特許文献1,2のような脱硫装置01では、回転式のGGH02は、未処理のガスが流れる上流部03と、下流部04を順に通過する。上流部03には、GGH02を洗浄する洗浄機06が配置されている。また、下流部04には、底部に吸収液が溜まる収容部07が配置され、GGH02の下方に吸収液を噴射する噴射器08が配置されている。
図4において、特許文献1,2のように洗浄機06でGGH02を洗浄する場合に、GGH02から流れ落ちる洗浄液には、石炭灰中のK(カリウム)、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、F(フッ素)が含まれている。この流れ落ちた洗浄液が、収容部07に流れ込んで脱硫用の吸収液に混入すると、吸収液の濃度やpH等が変化して、脱硫性能の低下を招く恐れがある。
【0008】
本発明は、熱交換器の洗浄液が脱硫用の吸収液に混入することを抑制することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は、下記の構成を採用することにより達成できる。
請求項1に記載の発明の脱硫装置は、
排ガス中の硫黄分を吸収する吸収液が収容される収容部から上方に延びる流路下流部と、前記収容部よりも上方で前記流路下流部に接続されて排ガスが流入する流入部と、前記流入部の上流側に接続された流路上流部と、を有する排ガス流路と、
前記流路下流部の排ガスに前記吸収液を噴射する噴射器と、
前記流路上流部の排ガスから熱を回収すると共に、排ガスの流れ方向に対して前記噴射器よりも下流側の排ガスに回収した熱で加熱する熱交換器と、
前記流路上流部に配置されて前記熱交換器に洗浄液を噴射する洗浄機と、
前記流路上流部の底部に設けられて、洗浄液を排出する排出部と、
ガスの流れ方向に対して、前記排出部よりも下流側且つ前記流入部と前記流路下流部との境界の位置よりも上流側に配置され、前記洗浄液の前記流路下流部への流入を規制する規制部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の脱硫装置において、
前記規制部材の重力方向の上端部に形成され、重力方向に対して傾斜する返し部、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の脱硫装置において、
重力方向の上方に行くにつれてガスの流れ方向の下流側に傾斜する前記返し部、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の脱硫装置において、
前記排ガス流路の底面に対して出没可能な前記規制部材、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の脱硫装置において、
前記洗浄機が洗浄液を噴射する洗浄作業が行われる場合に、前記排ガス流路の底面に対して突出し、前記洗浄作業が終了すると前記排ガス流路の底面に対して埋没する前記規制部材、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の脱硫装置において、
熱を蓄積可能且つ回転軸を中心として回転可能に構成され、前記流路上流部の内部と前記流路下流部の内部とを順に通過する前記熱交換器、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の脱硫装置において、
前記流路上流部における前記熱交換器の排ガスの流れ方向の上流側と下流側との圧力の差に基づいて、前記洗浄機を噴射する時期を制御する制御部、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の脱硫装置において、
前記排出部から排出された洗浄液を前記洗浄機に循環させる循環部、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の脱硫装置において、
前記排出部から排出された洗浄液のpHに基づいて、前記洗浄液を前記洗浄機に循環させるか否かを判別する制御部、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の脱硫装置において、
前記排出部に設けられ、洗浄液の入口側を水封する水封部材、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の脱硫装置において、
前記排出部を閉止するダンパにより構成された前記水封部材、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、規制部材を有しない場合に比べて、熱交換器の洗浄液が脱硫用の吸収液に混入することを抑制することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、返し部を有しない場合に比べて、ガスの流れの乱れを抑制できる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、返し部の下流側でガスの流れに渦が発生することを低減できる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、規制部材を使用する際に突出させ、使用しない場合に埋没させることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、洗浄が行われていない場合に、規制部材が排ガスの流れを乱すことを防止できる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、回転式の熱交換器を洗浄する際の洗浄液が、脱硫用の吸収液に混入することを抑制できる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1ないし6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、圧力差に基づいて熱交換器の洗浄時期を自動的に判別できる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかに記載の発明の効果に加えて、洗浄液を循環させない場合に比べて、環境負荷を低減でき、費用も削減できる。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、請求項8に記載の発明の効果に加えて、pHに基づいて洗浄液が循環させるほうが不適切な場合に、循環させないようにすることができる。
請求項10に記載の発明によれば、請求項1ないし9のいずれかに記載の発明の効果に加えて、排出部を水封することができ、排出部を通じてガスが漏れだすことを防止できる。
請求項11に記載の発明によれば、請求項10に記載の発明の効果に加えて、ダンパで水封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明の一実施例の脱硫装置の概略説明図である。
【
図2】
図2は実施例1の変更例の説明図であり、
図2(A)は実施例1の変更例1の説明図、
図2(B)は実施例1の変更例2の説明図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例2の脱硫装置の説明図である。
【
図4】
図4は従来技術の熱交換器を備えた脱硫装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例としての実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の一実施例の脱硫装置の概略説明図である。
図1において、本発明の実施例1の脱硫装置1では、吸収塔2を有する。吸収塔2の内部には、底部に、吸収液の貯留部の一例としての収容部3が形成されている。収容部3には、吸収液(吸収液スラリ)が収容されている。また、収容部3から上方には、脱硫装置1が接続されているボイラ(図示せず)からの排ガスが通過する流路下流部4が延びている。
流路下流部4に平行する形で、ダクト6が配置されている。ダクト6の内部には、排ガスが通過する流路上流部7が形成されている。流路上流部7の下端には、吸収塔2に向けて延びる流入部8の一端(上流端)が接続されている。流入部8の他端(下流端)は、流路下流部4の下部であって、収容部3の上方の位置に接続されている。
流路下流部4、流路上流部7、流入部8等によって、実施例1の排ガス流路9が構成されている。
【0026】
流路上流部7には、流入部8との境界部分(接続位置)よりも上方に、噴射器の一例としての吸収液スプレ11が配置されている。吸収液スプレ11は、吸収液スラリポンプ12で送られた収容部3の吸収液スラリを、流路上流部7を通過する排ガスに向けて噴射することで、排ガスの脱硫を行う。
吸収液スプレ11の上方には、液回収機の一例としてのデミスタ13が配置されている。デミスタ13は、吸収液スプレ11から噴射された液滴状、霧状(ミスト状)の吸収液を回収する。
【0027】
デミスタ13の上方には、熱交換器の一例としてのGGH21が配置されている。実施例1のGGH21は、熱交換器本体の一例としての蓄熱体22を有する。蓄熱体22は、円板状に形成されている。蓄熱体22は、流路上流部7と流路下流部4との間に配置された回転軸23を中心として回転可能に支持されており、モータ24で回転、駆動される。したがって、蓄熱体22は、その一部(22a)が流路上流部7に進入し且つ別の一部(22b)が流路下流部4に進入した状態となる。そして、蓄熱体22は、流路上流部7に進入した部分(22a)が排ガスから熱を回収し、蓄熱体22の回転に伴って流路下流部4に進入すると、流路下流部4を通過する排ガスが再加熱される。
したがって、実施例1のGGH21は、従来公知の回転型(ユングストローム型)のGGHにより構成されている。
【0028】
流路上流部7には、蓄熱体22(22a)の上方に、洗浄機の一例としての洗浄スプレ26が配置されている。洗浄スプレ26は、洗浄水パイプ27から供給される洗浄液を蓄熱体22に向けて噴射して洗浄する。なお、洗浄スプレ26で洗浄液を噴射した状態で、蓄熱体22が1周以上回転することで、蓄熱体22の全体に洗浄液を噴射可能である。
流路上流部7の底部7aには、排出部の一例としての洗浄液排水管28が接続されている。洗浄液排出管28の下端には、洗浄液の貯留部の一例としての洗浄水ピット29が配置されている。洗浄水ピット29にたまった洗浄液は、量が所定量以上になると排出される。
【0029】
排ガスの流れ方向に対して洗浄液排出管28よりも下流側且つ流入部8と流路下流部4との境界の位置8aよりも上流側の位置、すなわち、洗浄液排水管28と収容部3との間には、規制部材の一例としての堰き止め板31が配置されている。
実施例1の堰き止め板31は、流入部8の上流端の近傍の底面から上方に起立する板状に形成されている。堰き止め板31は、洗浄液排水管28側の液体が収容部3側に流入することを妨げる(規制する)ことが可能な高さ、幅に形成されている。高さや幅は、使用される洗浄液の単位時間当たりの噴射量や洗浄液排水管28の排水能力等の設計や仕様に応じて、任意に変更可能である。
【0030】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の脱硫装置1では、吸収液スラリの噴射前の未処理の排ガスが通過する流路上流部7では、蓄熱体22に経時的に石炭燃焼灰等が付着していく。また、蓄熱体22の回転に伴って流路下流部4において、デミスタ13で回収しきれなかったミスト状の吸収液と石炭燃焼灰等との接触で、石炭燃焼灰等が蓄熱体22に固着する恐れがある。これに対して、定期メンテナンス時等に洗浄スプレ26から洗浄液が噴射されて、蓄熱体22が清掃される。蓄熱体22に噴射された洗浄液は流路上流部7を落下して、底部の洗浄液排水管28から排液される。
【0031】
ここで、堰き止め板31を有しない従来の構成では、洗浄液排水管28に流れ込む前の洗浄液の一部が、吸収液スラリの収容部3に流れ込む恐れがあり、吸収液スラリの脱硫性能が低下する恐れがあった。
これに対して、実施例1の脱硫装置1では、洗浄液排水管28と収容部3との間に堰き止め板31が配置されている。したがって、洗浄液排水管28に流れ込む前の洗浄液が収容部3側に移動しようとしても、堰き止め板31で堰き止められる。よって、収容部3側に洗浄液が流入、混入することが抑制される。したがって、吸収液スラリの脱硫性能が洗浄液で低下することが抑制される。
【0032】
(実施例1の変更例)
図2は実施例1の変更例の説明図であり、
図2(A)は実施例1の変更例1の説明図、
図2(B)は実施例1の変更例2の説明図である。
実施例1において、堰き止め板31は、流入部8の底面から上方に起立する板状の構成を例示したがこれに限定されない。例えば、
図2(A)、(B)に示すように、堰き止め板31′,31″の上端部に、上下方向に対して傾斜する返し部31a′,31a″を設けることも可能である。
図2(A)に示すように、上方に行くにつれてガスの流れ方向の上流側に傾斜する返し部31a′とすることも可能であるし、
図2(B)に示すように、上方に行くにつれてガスの流れ方向の下流側に傾斜する返し部31a″とすることも可能である。返し部31a′,31a″とすることで、堰き止め板31でのガスの流れの乱れ、すなわち、堰き止め板31の流路抵抗を抑制することが可能である。
図2(A)、(B)のいずれの返し部31a′,31a″が流路抵抗の抑制効果が高いかは、流速や流路上流部7の形状(直線状や湾曲を有する等)や流入部8の形状(水平向きや水平に対して傾斜している等)の流路の条件に応じて異なるため、設計等に応じて任意に変更可能である。なお、実施例1のように流路上流部7が直管状で流入部8が水平向きの場合は、
図2(B)に示す構成の方が、堰き止め板31の上端の下流側で排ガスの流れに渦ができにくくなるため、好ましい。
【実施例2】
【0033】
図3は本発明の実施例2の脱硫装置の説明図である。
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例2は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
【0034】
図3において、実施例2の脱硫装置1では、堰き止め板31は、流入部8の底面8bに対して出没可能に構成されている。実施例1の堰き止め板31は、底面8bに対して突出する突出位置(堰き止め位置、
図3の実線参照)と、底面8bに対して埋没する埋没位置(待機位置、
図3の破線参照)との間を移動可能に構成されている。なお、実施例2の堰き止め板31の出没は、制御部の一例としての演算器41で制御される。
また、実施例2の脱硫装置1では、流路上流部7において、蓄熱体22(22a)の上方と下方には、それぞれ、圧力計SN1,SN2が配置されている。各圧力計SN1,SN2で計測された値は、演算器41に入力される。実施例2では、一例として、各圧力計SN1,SN2で計測された圧力の差圧Δpが演算器41に入力される。
【0035】
実施例2の洗浄液排出管28には、水封部材の一例としてのダンパ42が配置されている。ダンパ42は、洗浄液排出管28を開放/閉止して、洗浄液を排水/排水停止する。
実施例2のダンパ42の開閉は、演算器41で制御される。なお、水封部材として、実施例2ではダンパ42を例示したがこれに限定されない。例えば、バルブ(開閉弁)を使用することも可能である。
図3において、実施例2の洗浄水ピット29には、洗浄液のpHを計測するpH計SN3や、洗浄液の量(水位)を計測する液量計SN4が設置されている。また、洗浄水ピット29には、洗浄水ピット29から排水するための排水管46と、洗浄水ピット29の洗浄水を循環させるための循環管47とが接続されている。排水管46は、排水弁46aで開閉され、排水管46を通じた排水/排水停止が行われる。なお、排水弁46aは演算器41で制御される。
【0036】
循環管47の他端は、洗浄水パイプ27に合流している。循環管47には洗浄液を移送する洗浄液ポンプ48が設置されている。前記循環管47や洗浄液ポンプ48により、実施例2の循環部47,48が構成されている。したがって、洗浄液ポンプ48が作動すると、洗浄水ピット29の洗浄液が洗浄スプレ26に送られてGGH21に噴射される。また、洗浄水ピット29の洗浄液が使用されない場合は、洗浄水パイプ27の洗浄水弁49が開放されて新規の洗浄液が供給される。なお、実施例2の洗浄液ポンプ48や洗浄水弁49は演算器41で制御される。
【0037】
(実施例2の制御部(演算器41)の説明)
実施例2の脱硫装置1の演算器41は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、演算器41は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、演算器41は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、演算器41は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施例1の演算器41は、情報処理装置、いわゆるコンピュータ装置により構成されている。よって、演算器41は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0038】
演算器41は、圧力計SN1,SN2やpH計SN3、液量計SN4等からの入力信号に応じて、堰き止め板31やダンパ42、排水弁46a、洗浄液ポンプ48、洗浄水弁49等の制御が行われる。
実施例2の演算器41は、圧力計SN1,SN2の差圧ΔPが予め定めれた閾値に達すると、蓄熱体22に石炭燃焼灰等が蓄積して排ガスが流れにくくなっていると判断し、GGH21を洗浄する時期になったと判別する。演算器41は、GGH21を洗浄する時期になったと判別した場合には、作業者にその旨を画像表示や音声案内等の報知方法で報知する。なお、作業者は、報知を受けると、ボイラの稼働状況に応じて計画的にボイラを停止して、洗浄作業に入ることとなる。
【0039】
実施例2の演算器41は、GGH21の洗浄作業が開始された場合には、堰き止め板31を埋没位置から突出位置に移動させる。なお、洗浄が終了すると、演算器41は、堰き止め板31を突出位置から埋没位置に移動させる。
また、実施例2の演算器41は、GGH21の洗浄作業が開始された場合には、ダンパ42を作動させて、洗浄液排水管28を開放する。
さらに、演算器41は、GGH21の洗浄作業が開始された場合には、pH計SN3の検知結果に基づいて、洗浄水ピット29の洗浄液のpHが所定の値の範囲内であれば、洗浄水ピット29の洗浄液を循環して洗浄を行うように制御する。この場合、洗浄液ポンプ48を作動させるとともに、洗浄水弁49は閉止した状態で保持する。したがって、洗浄水ピット29の洗浄液が使用されて、GGH21の洗浄が行われる。
一方、洗浄水ピット29の洗浄液のpHが所定の値の範囲外であれば、演算器41は、洗浄水ピット29の洗浄液を循環させずに洗浄を行うように制御する。この場合、洗浄液ポンプ48を停止させるとともに、洗浄水弁49を開放する。したがって、新たな洗浄液が供給されて、GGH21の洗浄が行われる。
【0040】
また、演算器41は、液量計SN4の検知結果に基づいて、排水弁46aやダンパ42を制御する。実施例2の演算器41は、液量計SN4の検知結果から、洗浄水ピット29の洗浄液の液量が予め定められた上限量に達する場合には、排水弁46aを開放して、洗浄水ピット29の洗浄液が溢れないように制御する。なお、液量が上限量に達しない場合には、排水弁46aを閉止する。
さらに、実施例2の演算器41は、液量計SN4の検知結果から、洗浄作業が行われていない状況で、洗浄水ピット29の洗浄液の液量が予め定められた下限量を下回る場合には、ダンパ42を作動させて洗浄液排水管28を閉止するように制御する。
【0041】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2の脱硫装置1では、差圧ΔPが所定の値に達すると洗浄する時期になったものと判別し、作業者に報知する。したがって、GGH21の洗浄が必要かどうか、すなわち、GGH21がどのくらい汚れているのかを自動的に判別することができる。
そして、洗浄作業が開始されると、洗浄水ピット29の洗浄液のpHが所定の範囲内であれば、洗浄液があまり汚れておらず、洗浄に使用することが可能と判断して、洗浄液を循環させて噴射する。したがって、循環させない場合に比べて、水の使用量を削減でき、環境負荷を軽減でき、費用も抑制できる。一方、洗浄液のpHが所定の範囲外であれば、洗浄液が汚れていて洗浄に使用することが不適当であると判断して、洗浄水ピット29の洗浄液を排水しつつ、新規の洗浄液を噴射する。
【0042】
また、実施例2では、洗浄作業が開始されると堰き止め板31が突出位置に移動して、洗浄液が収容部3に流入することを抑制するとともに、洗浄作業が行われていない状況、すなわち、ボイラが稼働している状況では、堰き止め板31が流入部8の内部に突出しない。よって、ボイラ稼働中(脱硫中)に、堰き止め板31が排ガスの流れを乱すことを防止できる。
さらに、実施例2では、洗浄作業が行われていない状況、例えば、ボイラ稼働中に、洗浄水ピット29の洗浄液の液量が少なくなるとダンパ42が洗浄液排水管28を閉止する。洗浄水ピット29の洗浄液の液量が少なくなって、洗浄液排水管28の内部の洗浄液が存在しなくなると、流路上流部7を流れる排ガスの一部が洗浄液排水管28を流れ、排ガス流路9の外部に漏れ出す恐れがある。これに対して、実施例2では、洗浄液排水管28から洗浄液がなくなる前に、ダンパ42が洗浄液排水管28を閉止すると、ダンパ42よりも上方に洗浄液が残った状態となる。すなわち、水封された状態となる。よって、排ガスが排ガス流路9の外部に漏れ出すことを抑制できる。なお、水封する構成を設けることが望ましいが、洗浄水ピット29の液量がほぼ一定になるように制御される等であれば、水封の構成は設けないことも可能である。
【0043】
(変更例)
以上、本発明の実施例および変更例を詳述したが、本発明は、前記実施例および変更例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明のその他の変更例(H01)~(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、熱交換器として回転式のGGH21を例示したがこれに限定されない。例えば、回転せず、流路上流部7と流路下流部4に配置された伝熱管の中を熱媒が循環する熱交換器にも適用可能である。
【0044】
(H02)前記実施例1の変更例において、返し部31a′,31a″の形状は、例示した形状に限定されず、弧状に湾曲した形状や多角柱状等、任意の形状に変更可能である。
(H03)前記実施例において、堰き止め板31の設置位置や大きさ等は、実施例で例示した位置に限定されない。例えば、設置位置は、実施例で例示した位置よりも、より収容部3に近い側に配置したり、洗浄液排水管28に近い側に配置することも可能である。また、実施例2のように出没可能な構成の場合、突出位置では流入部8を完全に塞ぐ大きさとすることも可能である。
【0045】
(H04)前記実施例において、差圧ΔPに基づいて洗浄する時期の判別を行う構成を例示したがこれに限定されない。例えば、流路上流部7の排ガスの温度と流路下流部4を流れる排ガスの温度から伝熱性能の低下を判別して、洗浄する時期の判別を行うことも可能である。他にも、前回の洗浄作業からの累積の稼働時間や、GGH21の累積の回転回数から洗浄する時期の判別を行うことも可能である。
(H05)前記実施例において、洗浄液のpHに基づいて循環させるかどうかの判別を行う場合を例示したがこれに限定されない。例えば、循環回数や循環させた液量が多くなると洗浄液が汚れていると判別して循環させなくすることも可能である。他にも、例えば、洗浄直後に洗浄水ピット29に流れ込む洗浄液に石炭燃焼灰等が多く含まれ(汚れがひどく)、洗浄開始から時間が経過すると流れ込む洗浄液に含まれる石炭燃焼灰等が少なくなることから、洗浄開始から所定の数分間は、流れ込む洗浄液を排出して、それ以降は、洗浄水ピット29に洗浄液を送って、循環して使用するといった制御も可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…脱硫装置、
3…収容部、
4…流路下流部、
7…流路上流部、
8…流入部、
8a…境界、
8b…排ガス流路の底面、
9…排ガス流路、
11…噴射器、
21…熱交換器、
23…回転軸、
26…洗浄機、
28…排出部、
31…規制部材、
31a′,31a″…返し部、
41…制御部、
42…水封部材、
47,48…循環部。