(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 9/14 20060101AFI20241216BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20241216BHJP
B65H 3/44 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B65H9/14
B65H5/06 M
B65H3/44 F
(21)【出願番号】P 2020194811
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優太
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/080291(WO,A1)
【文献】特開2019-099372(JP,A)
【文献】特開2020-083523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 9/14
B65H 5/06
B65H 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、
シート搬送方向において前記第1ローラ対の下流に配置され、前記シートを挟持して搬送する第2ローラ対と、
前記シート搬送方向において前記第2ローラ対の下流に配置され、前記シートの先端が突き当てられることで前記シートの斜行を補正した後に前記シートを挟持して搬送するレジストレーション手段と、
前記第2ローラ対を当接及び離間させる離間機構と、
前記第1ローラ、前記第2ローラ対、前記レジストレーション手段及び前記離間機構を制御する制御手段と、
を備え、
前記レジストレーション手段によるシート搬送速度をV1、前記第1ローラ対によるシート搬送速度をV2として、
前記制御手段は、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1
>V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シート
の搬送
を開始させる
第1の搬送動作
と、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1≦V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第2の搬送動作と、を実行可能であり、
前記制御手段は、前記シート搬送方向の長さが第1の長さであるシートを搬送する場合に前記第1の搬送動作を実行し、前記シート搬送方向の長さが前記第1の長さより短い第2の長さであるシートを搬送する場合に前記第2の搬送動作を実行する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、
シート搬送方向において前記第1ローラ対の下流に配置され、前記シートを挟持して搬送する第2ローラ対と、
前記シート搬送方向において前記第2ローラ対の下流に配置され、前記シートの先端が突き当てられることで前記シートの斜行を補正した後に前記シートを挟持して搬送するレジストレーション手段と、
前記第2ローラ対を当接及び離間させる離間機構と、
前記第1ローラ、前記第2ローラ対、前記レジストレーション手段及び前記離間機構を制御する制御手段と、
装置本体に対して引き出し可能であり、シートを収納するカセットと、
前記装置本体の外部に突出し、シートが載置されるトレイと、
を備え、
前記レジストレーション手段によるシート搬送速度をV1、前記第1ローラ対によるシート搬送速度をV2として、
前記制御手段は、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1>V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第1の搬送動作と、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1≦V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第2の搬送動作と、を実行可能であり、
前記制御手段は、前記トレイから給送されるシートを搬送する場合に前記第1の搬送動作を実行し、前記カセットから給送されるシートを搬送する場合に前記第2の搬送動作を実行する、
ことを特徴とす
るシート搬送装置。
【請求項3】
シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、
シート搬送方向において前記第1ローラ対の下流に配置され、前記シートを挟持して搬送する第2ローラ対と、
前記シート搬送方向において前記第2ローラ対の下流に配置され、前記シートの先端が突き当てられることで前記シートの斜行を補正した後に前記シートを挟持して搬送するレジストレーション手段と、
前記第2ローラ対を当接及び離間させる離間機構と、
前記第1ローラ、前記第2ローラ対、前記レジストレーション手段及び前記離間機構を制御する制御手段と、
を備え、
前記レジストレーション手段によるシート搬送速度をV1、前記第1ローラ対によるシート搬送速度をV2として、
前記制御手段は、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1>V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第1の搬送動作と、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1≦V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第2の搬送動作と、前記離間機構により前記第2ローラ対を当接させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後に前記第2ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートを搬送させる第3の搬送動作と、を実行可能であり、
前記制御手段は、
第1の坪量を有し、かつ、前記シート搬送方向の長さが第3の長さであるシートを搬送する場合に、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させて前記第1の搬送動作又は前記第2の搬送動作を実行し、
前記第1の坪量より大きい第2の坪量を有するシートを搬送する場合、及び、前記シート搬送方向の長さが前記第3の長さより短い第4の長さであるシートを搬送する場合に、前記離間機構により前記第2ローラ対を当接させて前記第3の搬送動作を実行する、
ことを特徴とす
るシート搬送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第3の搬送動作における前記第1ローラ対及び前記第2ローラ対のシート搬送速度を、前記第3の搬送動作における前記レジストレーション手段のシート搬送速度以上に設定する、
ことを特徴とする請求項
3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
シートを収納するカセットと、
前記カセットから前記第2ローラ対へ向けてシートを給送する給送ユニットと、
をさらに備え、
前記給送ユニットから前記レジストレーション手段までの搬送経路に、前記第2ローラ対の他にローラ対が配置されていない場合において、
前記制御手段は、前記カセットからシートが給送される場合には、前記離間機構により前記第2ローラ対を当接させた状態で、前記第2ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートを搬送させる、
ことを特徴とする請求項
3又は4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1の搬送動作において、前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段による前記シートの搬送を開始させた後で且つ前記シート搬送方向におけるシートの後端が前記第1ローラ対を抜けるまでにV1の値を変更する場合は、V1がV2を下回らないようにV1に連動してV2の値を変更する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、
シート搬送方向において前記第1ローラ対の下流に配置され、前記シートを挟持して搬送する第2ローラ対と、
前記シート搬送方向において前記第2ローラ対の下流に配置され、前記シートの先端が突き当てられることで前記シートの斜行を補正した後に前記シートを挟持して搬送するレジストレーション手段と、
前記第2ローラ対を当接及び離間させる離間機構と、
前記第1ローラ、前記第2ローラ対、前記レジストレーション手段及び前記離間機構を制御する制御手段と、
を備え、
前記レジストレーション手段によるシート搬送速度をV1、前記第1ローラ対によるシート搬送速度をV2として、
前記制御手段は、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートを搬送させる搬送動作を実行可能であり、
前記制御手段は、前記搬送動作において、前記シートの斜行補正がされた後にV1>V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段による前記シートの搬送を開始させ、且つ、前記シート搬送方向におけるシートの後端が前記第1ローラ対を抜けるまでにV1の値を変更する場合はV1がV2を下回らないようにV1に連動してV2の値を変更する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
前記第2ローラ対及び前記離間機構に接続されたモータをさらに備え、
前記モータが第1方向に回転することで前記第2ローラ対が駆動され、前記モータが前記第1方向とは反対の第2方向に回転することで前記離間機構が駆動される、
ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記第2ローラ対を駆動する第1モータと、
前記離間機構を駆動する第2モータと、
をさらに備え、
前記制御手段は、前記レジストレーション手段において前記シートの斜行補正が行われるまでは前記離間機構により前記第2ローラ対を当接状態とし、前記シートの斜行補正後に、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させる、
ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記レジストレーション手段から送り出される前記シートに画像を形成する画像形成手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置及びシートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置に用いられるシート搬送装置には、シートの先端をレジストレーションローラ対のニップ部やその近傍の突き当て部材に突き当ててたわませることでシートの斜行を補正するものがある。斜行補正されたシートは、レジストレーションローラ対によって搬送される。このとき、レジストレーションローラ対からシートが送り出される速度が変動しないように、レジストレーションローラ対より上流の搬送ローラ対のシート搬送速度はレジストレーションローラ対のシート搬送速度より若干速く設定される場合が多い。
【0003】
また、近年、記録媒体として用いられるシートの多様化に対応するため、シート搬送装置は様々なサイズのシートを搬送することが求められている。シートを搬送するためには少なくとも一つのローラ対等で挟持している必要があるため、搬送方向の長さが短いシートに対応するために搬送方向におけるローラ対同士の間隔は狭まる傾向にある。
【0004】
ここで、ローラ対同士の間隔が狭まるほど、シートの斜行を補正する際のシートの面外変形が大きくなり、面外変形が生じている部分がレジストレーションローラ対のニップ部に挟持されることでシートにシワが生じやすくなる。特許文献1に記載の画像形成装置では、搬送ローラ対から送り出されるシートの先端をゲート部材(突き当て部材)に突き当てて斜行補正してから、レジストレーションローラ対にシートを挟持させ、その後、搬送ローラ対を離間させている。搬送ローラ対を離間させることで、レジストレーションローラ対の上流側におけるシートの位置ずれが解消され、シートは真っ直ぐに伸びた状態に近づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、斜行補正後のシートを搬送する際のレジストレーションローラ対のシート搬送速度より上流側の搬送ローラ対のシート搬送速度を速く設定すると、シートの搬送が進むにつれてシートの面外変形が大きくなる。特許文献1のように上流側の搬送ローラ対を離間させたとしても、搬送が進むにつれて当該搬送ローラ対よりさらに上流の搬送ローラ対とレジストレーションローラ対との間の搬送速度差によってシートの面外変形が大きくなる。その結果、シートにシワが発生する場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、シワが発生する可能性を低減可能なシート搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、シート搬送方向において前記第1ローラ対の下流に配置され、前記シートを挟持して搬送する第2ローラ対と、前記シート搬送方向において前記第2ローラ対の下流に配置され、前記シートの先端が突き当てられることで前記シートの斜行を補正した後に前記シートを挟持して搬送するレジストレーション手段と、前記第2ローラ対を当接及び離間させる離間機構と、前記第1ローラ、前記第2ローラ対、前記レジストレーション手段及び前記離間機構を制御する制御手段と、を備え、前記レジストレーション手段によるシート搬送速度をV1、前記第1ローラ対によるシート搬送速度をV2として、前記制御手段は、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1>V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第1の搬送動作と、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1≦V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第2の搬送動作と、を実行可能であり、前記制御手段は、前記シート搬送方向の長さが第1の長さであるシートを搬送する場合に前記第1の搬送動作を実行し、前記シート搬送方向の長さが前記第1の長さより短い第2の長さであるシートを搬送する場合に前記第2の搬送動作を実行する、ことを特徴とするシート搬送装置である。
本発明の他の一態様は、シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、シート搬送方向において前記第1ローラ対の下流に配置され、前記シートを挟持して搬送する第2ローラ対と、前記シート搬送方向において前記第2ローラ対の下流に配置され、前記シートの先端が突き当てられることで前記シートの斜行を補正した後に前記シートを挟持して搬送するレジストレーション手段と、前記第2ローラ対を当接及び離間させる離間機構と、前記第1ローラ、前記第2ローラ対、前記レジストレーション手段及び前記離間機構を制御する制御手段と、装置本体に対して引き出し可能であり、シートを収納するカセットと、前記装置本体の外部に突出し、シートが載置されるトレイと、を備え、前記レジストレーション手段によるシート搬送速度をV1、前記第1ローラ対によるシート搬送速度をV2として、前記制御手段は、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1>V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第1の搬送動作と、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1≦V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第2の搬送動作と、を実行可能であり、前記制御手段は、前記トレイから給送されるシートを搬送する場合に前記第1の搬送動作を実行し、前記カセットから給送されるシートを搬送する場合に前記第2の搬送動作を実行する、ことを特徴とするシート搬送装置である。
本発明の他の一態様は、シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、シート搬送方向において前記第1ローラ対の下流に配置され、前記シートを挟持して搬送する第2ローラ対と、前記シート搬送方向において前記第2ローラ対の下流に配置され、前記シートの先端が突き当てられることで前記シートの斜行を補正した後に前記シートを挟持して搬送するレジストレーション手段と、前記第2ローラ対を当接及び離間させる離間機構と、前記第1ローラ、前記第2ローラ対、前記レジストレーション手段及び前記離間機構を制御する制御手段と、を備え、前記レジストレーション手段によるシート搬送速度をV1、前記第1ローラ対によるシート搬送速度をV2として、前記制御手段は、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1>V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第1の搬送動作と、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後にV1≦V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートの搬送を開始させる第2の搬送動作と、前記離間機構により前記第2ローラ対を当接させた状態で、前記シートの斜行補正がされた後に前記第2ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートを搬送させる第3の搬送動作と、を実行可能であり、前記制御手段は、第1の坪量を有し、かつ、前記シート搬送方向の長さが第3の長さであるシートを搬送する場合に、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させて前記第1の搬送動作又は前記第2の搬送動作を実行し、前記第1の坪量より大きい第2の坪量を有するシートを搬送する場合、及び、前記シート搬送方向の長さが前記第3の長さより短い第4の長さであるシートを搬送する場合に、前記離間機構により前記第2ローラ対を当接させて前記第3の搬送動作を実行する、ことを特徴とするシート搬送装置である。
本発明の他の一態様は、シートを挟持して搬送する第1ローラ対と、シート搬送方向において前記第1ローラ対の下流に配置され、前記シートを挟持して搬送する第2ローラ対と、前記シート搬送方向において前記第2ローラ対の下流に配置され、前記シートの先端が突き当てられることで前記シートの斜行を補正した後に前記シートを挟持して搬送するレジストレーション手段と、前記第2ローラ対を当接及び離間させる離間機構と、前記第1ローラ、前記第2ローラ対、前記レジストレーション手段及び前記離間機構を制御する制御手段と、を備え、前記レジストレーション手段によるシート搬送速度をV1、前記第1ローラ対によるシート搬送速度をV2として、前記制御手段は、前記離間機構により前記第2ローラ対を離間させた状態で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段に前記シートを搬送させる搬送動作を実行可能であり、前記制御手段は、前記搬送動作において、前記シートの斜行補正がされた後にV1>V2を満たすシート搬送速度V1,V2で前記第1ローラ対及び前記レジストレーション手段による前記シートの搬送を開始させ、且つ、前記シート搬送方向におけるシートの後端が前記第1ローラ対を抜けるまでにV1の値を変更する場合はV1がV2を下回らないようにV1に連動してV2の値を変更する、ことを特徴とするシート搬送装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シワが発生する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施例1に係る画像形成装置の概略図。
【
図2】実施例1に係るレジ前ローラ対が当接した状態を表す図。
【
図3】実施例1に係るレジ前ローラ対が離間した状態を表す図。
【
図4】実施例1に係るレジ前ローラ対が離間して、かつ、引抜ローラ対のシート搬送速度をレジローラ対のシート搬送速度よりも遅い状態を表す図。
【
図5】実施例1に係るレジ前ローラ対の駆動構成を表す図。
【
図6】実施例1に係るレジ前ローラ対の駆動構成を表す図。
【
図7】実施例1に係るレジ前ローラ対を回転させるときの駆動構成の模式図。
【
図8】実施例1に係る離間機構を動作させるときの駆動構成の模式図。
【
図9】実施例1に係る画像形成装置の制御構成を表すブロック図。
【
図10】実施例1に係る画像形成装置の制御方法を表すフローチャート。
【
図11】実施例2に係るレジ前ローラ対の駆動構成を表す図。
【
図12】実施例2に係る画像形成装置の制御構成を表すブロック図。
【
図13】実施例2に係る画像形成装置の制御方法を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
「画像形成装置」とは、プリンタ、複写機、ファクシミリ、及び複合機を含み、外部PCから入力された画像情報又は原稿から読取った画像情報に基づいて、記録媒体として用いられるシートに画像を形成する。記録媒体として用いられるシートには、用紙及び封筒等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム、並びに布が含まれる。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、実施例1に係る画像形成装置100は、画像形成部150を収容する装置本体100Aと、装置本体100Aの上方に配置され原稿から画像情報を読取る画像読取装置300と、を備える。画像形成手段の一例である画像形成部150は、4つの画像形成ユニットPY,PM,PC,PK及び中間転写ベルト155を含む、中間転写タンデム方式の構成である。画像形成部150は、画像形成ユニットPY~PKによって形成したトナー像を、中間転写ベルト155を介してシートSに転写する。各画像形成ユニットPY~PKの構成は、現像に用いるトナーの色が異なる以外は基本的に同様であるため、イエローの画像形成ユニットPYを例にして画像形成ユニットの構成及びトナー像の形成動作について説明する。
【0014】
画像形成ユニットPYがトナー像の形成を行う場合、感光体である感光ドラム151が回転駆動され、帯電装置が感光ドラム151の表面を一様に帯電させる。装置本体100Aの下部に設けられた露光装置152は、画像情報に基づくレーザ光を感光ドラム151に照射してドラム表面を露光し、感光ドラム151に静電潜像を形成する。そして、現像装置153から供給されたトナーによって静電潜像が可視化(現像)されることで、感光ドラム151の表面にトナー像が形成される。
【0015】
同様にして、画像形成ユニットPM,PC,PKにおいても、感光ドラム上に対応する色のトナー像が形成される。各画像形成ユニットPY~PKによって形成されたトナー像は、一次転写ローラ154により、感光ドラム151から中間転写体である中間転写ベルト155に一次転写される。感光ドラム151に残留したトナー等の付着物は、各画像形成ユニットPY~PKに設けられたクリーニング装置によって除去される。
【0016】
中間転写ベルト155は、二次転写内ローラ156、テンションローラ157、及び張架ローラ158に巻き回されており、図中反時計回り方向に回転駆動される。中間転写ベルト155に担持されたトナー像は、二次転写内ローラ156に対向する二次転写ローラ159と中間転写ベルト155との間に形成される二次転写部に向けて搬送される。
【0017】
上記のプロセスに並行して、カセット給送部11又はマルチ給送部12(多目的給送部、手差し給送部とも呼ばれる)から二次転写部へ向けてシートSを給送する給送動作が実行される。カセット給送部11は、シート収納部としての第1カセット110及び第2カセット111と、第1カセット110及び第2カセット111のそれぞれに設けられた給送手段としての給送ユニット113及び給送ユニット114とを含む。マルチ給送部12は、シートを支持するシート支持部として装置本体100Aの外部に突出するマルチトレイ112(多目的トレイ)と、給送手段としての給送ユニット115と、を有する。マルチトレイ112は、ユーザが画像形成装置に画像形成動作を実行させる際に、必要なシートをその都度セット(載置)することができる。一方、第1カセット110及び第2カセット111には、使用頻度の高いシート(例えばA4普通紙)を大量に収納することができる。
【0018】
カセット給送部11及びマルチ給送部12の給送ユニットとしては、カセットからシートを繰り出すピックアップローラと、ピックアップローラからシートを受け取って1枚ずつ分離しながら搬送する分離ローラ対と、を含むものを用いることができる。分離ローラ対の分離機構としては、ピックアップローラと同じ方向にシートを搬送するフィードローラに対し、フィードローラの回転に逆らう方向の駆動力をトルクリミッタを介して入力されるリタードローラを当接させた構成がある。上記に限らず、分離パッド方式やエア給送方式等の他の給送機構に置き換えてもよい。
【0019】
第1カセット110に収納されたシートSは、給送ユニット113によりレジストレーション前ローラ対(以下、レジ前ローラ対とする)120を介して、レジストレーションローラ対(以下、レジローラ対とする)130に搬送される。第2カセット111に収納されたシートSは、給送ユニット114により給送された後、引抜ローラ対121を経由して、レジ前ローラ対120及びレジローラ対130に搬送される。マルチトレイ112にセットされたシートは、給送ユニット115により給送された後、引抜ローラ対122を経由して、レジ前ローラ対120及びレジローラ対130に搬送される。なお、第1カセット110から給送されるシートについて、給送ユニット113からレジローラ対130までの搬送経路上にはレジ前ローラ対120以外のローラ対は配置されていない。引抜ローラ対121,122は本実施例における第1ローラ対であり、レジ前ローラ対120は本実施例における第2ローラ対である。レジローラ対130は本実施例のレジストレーション手段である。
【0020】
給送されてきたシートSの先端(シート搬送方向の下流端)が停止状態のレジローラ対130に突き当てられると、シートSがたわみ(ループを形成し)、シートSの先端がレジローラ対130のニップ部に倣って斜行補正される。その後、レジローラ対130は、画像形成部150による画像形成プロセスに同期したタイミングでシートSの搬送を開始し、シートSを二次転写部に搬送する。なお、シートの先端をレジローラ対130のニップ部に突き当てるものに限らず、レジローラ対130のニップ部の近傍に設けた突き当て部材(シャッタ部材)にシートSの先端を突き当てて斜行補正を行うものをレジストレーション手段として用いてもよい。
【0021】
二次転写部において、中間転写ベルト155に担持されるトナー像が二次転写ローラ159によってシートSに二次転写される。中間転写ベルト155に残留したトナー等の付着物は、ベルトクリーニング装置によって除去される。トナー像を転写されたシートSは、定着装置160へ受け渡される。定着装置160は、シートSを挟持して搬送する定着ローラ対及びシートSを加熱するハロゲンランプ又はセラミックヒータ等の加熱手段を有し、シートSを搬送しながらトナー像に熱及び圧力を付与する。これにより、トナーが溶融・固着してシートSに定着する。
【0022】
二次転写部及び定着装置160を通過することで画像を形成されたシートSは、シート排出部170の排出パス172に受け渡され、排出ローラ対171によって装置本体100Aと画像読取装置300との間に設けられた排出トレイ180へと排出される。両面印刷を行う場合は、第1面に画像形成されたシートSは,反転ローラ対である排出ローラ対171によってスイッチバック搬送されて両面搬送部190に受け渡され、搬送ローラ対193により両面パス192を介して搬送される。そして、再びレジローラ対130に到達したシートSは、画像形成部150によって裏面に画像を形成された後、排出ローラ対171によって排出トレイ180に排出される。
【0023】
(レジローラ対上流側のシート搬送機構)
次に、実施例1に係る画像形成装置100において、レジローラ対130及びその上流側のシート搬送機構について
図2~
図10を用いて説明する。
図2及び
図3は、シート搬送機構の概略図であり、それぞれレジ前ローラ対120を当接させた状態、レジ前ローラ対120を離間させた状態を表す。図中、破線によりマルチ給送部12から給送されるシートSを示している。
図4は、レジ前ローラ対120が離間していて、かつ、引抜ローラ対のシート搬送速度V2がレジローラ対のシート搬送速度V1よりも遅い状態を表す。
図5及び
図6は、レジ前ローラ対120を当接及び離間させる離間機構140を含む、レジ前ローラ対120の駆動構成を表す図である。
図5はレジ前ローラ対120が当接した状態であり、
図6はレジ前ローラ対120が離間した状態である。
【0024】
まず、シート搬送機構に含まれる構成要素について、
図2及び
図3を用いて説明する。引抜ローラ対121,122は、モータによって駆動される引抜駆動ローラ121a,122a及びこれに追従して回転する引抜従動ローラ121b,122bからなる。レジ前ローラ対120は、モータによって駆動されるレジ前駆動ローラ120a及びこれに追従して回転するレジ前従動ローラ120bからなり、後述する離間機構140によってローラ対を当接及び離間可能に構成される。レジローラ対130は、モータに駆動されるレジ駆動ローラ130a及びこれに追従して回転するレジ従動ローラ130bからなる。
【0025】
画像形成装置100には、レジ前ローラ対120とレジローラ対130との間の検知位置でシートSを検知可能な検知手段として、シートセンサ132が配置されている。シートセンサ132は、例えばシート搬送路に光を照射してシートSからの反射光を検知する反射型の光電センサ、又はシート搬送路に突出するフラグの回動を検知する透過型の光電センサを用いることができる。
【0026】
なお、本実施例に係る画像形成装置100は、装置本体100Aの内部を略上方に搬送されるシートSに対して画像を形成する垂直搬送型(
図1参照)の構成である。そして、装置本体100Aの側面に配置されるマルチ給送部12から給送されるシートSは、湾曲したシート搬送路を介して二次転写部へ向かって搬送される。即ち、
図2に示すように、シート搬送路は、シート搬送方向に直交する幅方向から視た場合に、引抜ローラ対122とレジローラ対130との間で略水平方向から略上下方向に向かって湾曲した形状を有する。レジ前ローラ対120とレジローラ対130との間のシート搬送路は、湾曲形状の外側(図中左方)に向かって張り出した部分を有し、レジローラ対130に突き当てられたシートのたわみ(ループ形成)を許容する空間が形成されている。
【0027】
ところで、記録媒体として用いられるシートの多様化に伴い、画像形成装置に用いられるシート搬送装置は様々なサイズのシートを安定して搬送可能であることが求められている。具体的には、シート搬送方向における搬送ローラ対同士の間隔を狭く設定し、小さなシート(例えば、はがき)が上流側の搬送ローラ対から下流側の搬送ローラ対に確実に受け渡されるように構成される。本実施例の場合も、シート搬送方向におけるレジ前ローラ対120とレジローラ対130の間隔は、画像形成装置100が画像形成を実行可能なシートの中でシート搬送方向の長さが最も短いものよりも短く設定されている。
【0028】
(レジ前ローラ対の離間機構)
本実施例では、レジ前ローラ対120を必要に応じて離間(ニップ部を開放)させることが可能な構成を採用している。以下、レジ前ローラ対120の離間機構140の構成について説明する。
【0029】
図5及び
図6に示すように、離間機構140は、離間ギア146、離間伝達軸148、カム149、レバー127、姿勢決めバネ128、離間軸141、離間アーム142、及び離間センサ129を含む。離間機構140は、レジ前ローラ対120と共通の駆動源であるレジ前駆動モータ145によって駆動され、レジ前従動ローラ120bの回転軸120dに作用することでレジ前ローラ対120を当接状態と離間状態とに切り替える。
【0030】
離間ギア146及びカム149は離間伝達軸148に支持され、離間ギア146がレジ前駆動モータ145によって回転駆動されることで離間ギア146と一体的に回転する。カム部材であるカム149は、離間軸141に設けられたレバー127を押圧することで、離間軸141を回動させる。離間軸141に接続される姿勢決めバネ128は、レバー127をカム149に押し付けるように離間軸141を付勢している。離間軸141に取付けられた揺動部材である離間アーム142は、レバー127の移動に伴って揺動し、レジ前従動ローラ122bの回転軸122dをレジ前駆動ローラ120aに対して接近及び離間する方向に移動させる。離間センサ129は、離間軸141に設けられたフラグ部141aを検知可能な透過型の光電センサであり、レジ前ローラ対120の当接状態(
図5)及び離間状態(
図6)に対応する離間軸141の回転角度を検知する。なお、離間センサ129はレジ前ローラ対120の当接・離間を検知可能な位置検知手段の一例であり、例えばレジ前従動ローラ120bの回転軸120dの位置を検知する構成に置き換えてもよい。
【0031】
また、
図2に示すように、レジ前ローラ対120は、レジ前従動ローラ120bの回転軸120dと、画像形成装置100の枠体に対して固定された板金144と、の間に設けられた弾性部材である加圧バネ143によって加圧されている。加圧バネ143は、レジ前ローラ対120の一方のローラを他方のローラに向けて加圧する加圧手段の一例であり、レジ前ローラ対120の当接状態における当接圧(ニップ圧)を規定する。
【0032】
図7及び
図8に示すように、レジ前駆動モータ145の出力ギアは、レジ前駆動ローラ120aの駆動軸120cに取付けられたレジ前駆動ギア147及び上記の離間ギア146の両方に噛合っている。以下、レジ前駆動モータ145の回転方向を、出力軸の方向から視て時計回りの方向をCW方向と表し、その反対である反時計回りの方向をCCW方向と表す。レジ前駆動ギア147には、出力ギアがCW方向に回転するときにのみレジ前駆動モータ145の駆動力を駆動軸120cに伝達するワンウェイクラッチ機構が設けられている。また、離間ギア146には、出力ギアがCCW方向に回転するときにのみレジ前駆動モータ145の駆動力を離間伝達軸148に伝達するワンウェイクラッチ機構が設けられている。
【0033】
レジ前駆動モータ145がCW方向(第1方向)に回転する場合、レジ前駆動ギア147を介して駆動軸120cに駆動力が伝達され、レジ前ローラ対120が回転駆動される。このとき、離間伝達軸148には駆動力が伝達されず、離間機構140は作動しない。一方、レジ前駆動モータ145がCCW方向(第2方向)に回転する場合、離間ギア146を介して離間伝達軸148に駆動力が伝達され、離間機構140によってレジ前ローラ対120の当接状態と離間状態とが切換わる。即ち、カム149の回転によってレバー127が押圧され、離間軸141を介して離間アーム142が揺動することで、レジ前従動ローラ122bがレジ前駆動ローラ120aに対して当接(
図5)及び離間(
図6)する。このとき、駆動軸120cには駆動力が伝達されず、レジ前ローラ対120は回転駆動されていない状態となる。このように、本実施例に係るレジ前ローラ対120の駆動構成は、1つのモータであるレジ前駆動モータ145の回転方向を切り替えることで、レジ前ローラ対120の回転駆動と離間機構140の駆動とを切換可能である。
【0034】
次に、シート搬送機構が実行可能な搬送動作について、
図2~
図4を用いて説明する。本実施例のシート搬送機構は、シートの属性(例えばサイズ、坪量等の情報)及びシートの給送元に基づいて、以下で説明する複数の搬送動作(モード)のいずれかを実行してシートを搬送する。なお、以下ではマルチ給送部12から給送されるシートSを対象とした搬送動作を主に説明するが、特に断らない限り、基本的に同様の搬送動作をカセット給送部11から給送されるシートSに対しても実行可能である。
【0035】
(レジ前ローラ対を当接させる搬送動作)
図2は、レジ前ローラ対120を当接させた状態でシートSを搬送する搬送動作(本実施例における第3の搬送動作)の様子を表している。本搬送動作では、引抜ローラ対122により搬送されてきたシートSは、レジ前ローラ対120により挟持されてさらに搬送される。そして、停止しているレジローラ対130のニップ部にシートSの先端が突き当てられ、レジ前ローラ対120とレジローラ対130の間でループを形成することで、シートSの先端の斜行が補正される。
【0036】
また、本搬送動作では、シートSの斜行補正後もレジ前ローラ対120を当接させた状態でシートSの搬送が行われる。従って、シートSの斜行補正後にレジローラ対130の搬送が開始されると、レジローラ対130と共にレジ前ローラ対120がシートSを搬送する。このとき、シートの引っ張り合いを避けるため、レジ前ローラ対120のシート搬送速度V2(シートの搬送抵抗等による速度変動を無視した場合の駆動ローラの周面速度)は、レジローラ対130のシート搬送速度V1と同等又は若干速い値とする。
【0037】
本搬送動作は、搬送抵抗が比較的大きな厚紙等のシートであっても、シート先端をレジローラ対130のニップ部により確実に押込んで斜行補正を行うと共に、レジ前ローラ対120の補助によってシートを安定して搬送できる利点がある。また、シートの引っ張り合いによりレジローラ対130からシートが送り出される速度が変動することが避けられるため、二次転写部においてシートに転写される画像の画質を高めることができる。
【0038】
(レジ前ローラ対を離間させる搬送動作)
図3は、レジ前ローラ対120を離間させた状態でシートSを搬送する搬送動作(本実施例における第2の搬送動作)の様子を表している。本搬送動作では、引抜ローラ対122により搬送されてきたシートSの先端は開放状態のレジ前ローラ対120を通過し、停止しているレジローラ対130のニップ部にシートSの先端が突き当てられる。引抜ローラ対122がシートSをさらに搬送することで、引抜ローラ対122とレジローラ対130の間でループを形成してシートSの斜行を補正する。
【0039】
また、本搬送動作では、シートSの斜行補正後もレジ前ローラ対120を離間させた状態でシートSの搬送が行われる。従って、シートSの斜行補正後にレジローラ対130の搬送が開始されると、レジローラ対130と共に引抜ローラ対122がシートSを搬送する。このとき、引抜ローラ対122のシート搬送速度V2は、レジローラ対130のシート搬送速度V1と同等又は若干速い値とする。
【0040】
本搬送動作によると、レジ前ローラ対120を当接させた
図2の状態と比較して、ループが形成されるローラ間距離を長く取ることができる。つまり、
図2の状態ではレジ前ローラ対120からレジローラ対130までの短い搬送路内でループが形成されるが、本搬送動作では
図3に示すように引抜ローラ対122からレジローラ対130までの搬送路内でループが形成される。そのため、斜行補正に伴うシートSの面外変形が緩和され、シートSにシワが発生する可能性が低減される。また、シートの引っ張り合いによりレジローラ対130からシートが送り出される速度が変動することが避けられるため、二次転写部においてシートに転写される画像の画質を高めることができる。
【0041】
(レジ前ローラ対を離間させ、ループを減少させる搬送動作)
図4は、レジ前ローラ対120を離間させ、かつ、斜行補正後の引抜ローラ対122のシート搬送速度をレジローラ対130のシート搬送速度より遅い値に設定してシートSを搬送する搬送動作(本実施例における第1の搬送動作)の様子を表している。本搬送動作は、レジ前ローラ対120を離間させた状態でシートSの斜行補正及び斜行補正後の搬送が行われる点は
図3の場合と同様である。そのため、斜行補正に伴うシートSの面外変形が緩和され、シートSにシワが発生する可能性が低減される。
【0042】
さらに、本搬送動作では、斜行補正後の引抜ローラ対122のシート搬送速度は、レジローラ対130のシート搬送速度より小さい値とする。つまり、レジローラ対130のシート搬送速度をV1とし、引抜ローラ対122のシート搬送速度をV2として、斜行補正後にV1>V2を満たすシート搬送速度V1,V2でレジローラ対130及び引抜ローラ対122にシートSを搬送させる。これにより、シートSの後端が引抜ローラ対122を抜けるまでの間、シートSの搬送が進むにつれてレジローラ対130と引抜ローラ対122との間におけるループは徐々に減少(解消)される。すると、シート後端側の姿勢がレジローラ対130に挟持されているシート先端側の姿勢に倣って傾きを解消しやすくなり、シートSの面外変形が減少していく。その結果、シートSの面外変形がさらに緩和され、シートSにシワが発生する可能性がさらに低減される。
【0043】
このように、本実施例では、レジ前ローラ対120を離間させ、かつ、斜行補正後にV1>V2を満たすシート搬送速度でレジローラ対130及び引抜ローラ対122にシートを搬送させることで、シートのシワが発生する可能性を低減することができる。
【0044】
また、本実施例では、レジ前ローラ対120を離間させるか否か、及び、斜行補正後のレジローラ対130の搬送速度と上流側のローラ対(120,122)の搬送速度との関係が異なる複数の搬送動作を切替可能に構成した。
図3に示す搬送動作(第2の搬送動作)は、
図2に示す搬送動作(第1の搬送動作)よりシワの発生を抑制する効果が高く、
図4に示す搬送動作(第1の搬送動作)は、
図3に示す搬送動作よりシワの発生を抑制する効果がさらに高い関係がある。従って、シートの属性やシートの給送元といった画像形成動作の実行条件(通紙条件)に応じて複数の搬送動作を切り替えることにより、搬送性や斜行補正能力を維持しつつシワが発生する可能性を低減することができる。
【0045】
(フローチャート)
以下、画像形成装置100によるシート搬送動作の制御方法の例について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9に示すように、画像形成装置100には、制御手段の一例である制御部201が搭載されている。制御部201は、プログラム及びデータを記憶するメモリ204と、プログラムを実行する実行手段としての中央処理装置(CPU)203とを含む。制御部201は、離間センサ129及びシートセンサ132の他に、液晶パネル及び各種のボタンを含みユーザーインターフェースとして機能する操作部202からの入力信号を受け取る。制御部201は、アクチュエータであるレジ駆動モータ133、レジ前駆動モータ145、及び引抜モータ123を駆動制御することにより、シート搬送機構の動作を制御する。
【0046】
CPU203は、メモリ204から読み出したプログラムを実行することにより、
図10に示すフローチャートの各工程の機能を実現する。まず、画像形成装置100の操作部202を介してユーザによって入力された、記録媒体として使用するシートSの情報を含むプリント情報が取得される(F101)。ここで入力される情報は、例えばシートSのサイズや坪量が挙げられる。ユーザが操作部202を介してプリントジョブの実行を指示したことが検知されると(F102)、レジ前ローラ対120を離間させるか否かの判定が行われる(F103~F105)。
【0047】
具体的には、プリントジョブの実行に用いるシート(画像形成動作の対象となるシート)の給送元が第1カセット110か否かが判定される(F103)。給送元が第1カセット110の場合(F103:No)、レジ前ローラ対120は当接させて搬送動作を行う必要があると判断され、レジ前ローラ対120の当接動作(F106,F107a)が行われる。これは、第1カセット110の給送ユニット113からレジローラ対130までの搬送経路上にレジ前ローラ対120以外のローラ対が配置されていないことから、レジ前ローラ対120を離間させることでシートの搬送不良が生じることを避けるためである。
【0048】
給送元が第1カセット110以外の場合(F103:Yes)、さらにシートSのシート搬送方向の長さ(以下、単にシート長さとする)が予め設定された閾値X1[mm]以上か否かが判定される(F104)。X1[mm]よりもシートSが短い場合(F104:No)、レジ前ローラ対120は当接させて搬送動作を行う必要があると判断され、レジ前ローラ対120の当接動作(F106,F107a)が行われる。これは、シートSが短い場合、レジ前ローラ対120が離間している状態では、シート先端がレジローラ対130に到達する位置までシートを搬送できない場合があるからである。従って、閾値X1としては、搬送路に沿って測った引抜ローラ対122からレジローラ対130までの距離に、若干のマージンを加えた値を用いることができる。
【0049】
シート長さがX1[mm]以上の場合(F103:Yes)、シートSの坪量が予め設定された閾値M[gsm]より小さいか否かが判断される(F105)。シートSの坪量がM[gsm]より小さい場合(F105:No)、レジ前ローラ対120を離間させる判断がなされ、レジ前ローラ対120の離間動作(F107b,F108)が行われる。坪量が小さいシートSは剛性が低く、シワの発生リスクが比較的高いと考えられるからである。一方、シートSの坪量がM[gsm]以上の場合(F105:Yes)、レジ前ローラ対120を当接させる判断がなされ、レジ前ローラ対120の当接動作(F106,F107b)が行われる。
【0050】
レジ前ローラ対120の当接動作(F106,F107a)では、離間センサ129の出力信号がレジ前ローラ対120の当接状態を表すもの(本実施例ではOFF信号)となるまで、レジ前駆動モータ145をCCW方向(
図8)に回転させる。すると、上述した離間機構140が作動してレジ前ローラ対120が当接状態となる。離間センサ129の出力信号が最初からレジ前ローラ対120の当接状態を表している場合には、レジ前駆動モータ145をCCW方向に回転させずに後の工程に進む。
【0051】
レジ前ローラ対120の離間動作(F108,F107b)では、離間センサ129の出力信号がレジ前ローラ対120の離間状態を表すもの(本実施例ではOFF信号)となるまで、レジ前駆動モータ145をCCW方向(
図8)に回転させる。すると、上述した離間機構140が作動してレジ前ローラ対120が離間状態となる。離間センサ129の出力信号が最初からレジ前ローラ対120の離間状態を表している場合には、レジ前駆動モータ145をCCW方向に回転させずに後の工程に進む。
【0052】
このように、本実施例では、第1の坪量(M未満の坪量)を有し、かつ、シート搬送方向の長さが第3の長さ(X1以上の長さ)であるシートを搬送する場合に、離間機構140によりレジ前ローラ対120を離間させる。この場合、後述するように斜行補正後もレジ前ローラ対120を離間させた状態で第1の搬送動作(F115)又は第2の搬送動作(F116)が実行される。一方、第1の坪量より大きい第2の坪量(M以上の坪量)を有するシートを搬送する場合、離間機構140によりレジ前ローラ対120を当接させる。また、シート搬送方向の長さが第3の長さより短い第4の長さ(X1未満の長さ)であるシートを搬送する場合も、離間機構140によりレジ前ローラ対120を当接させる。これらの場合、後述するように、斜行補正後は第3の搬送動作としてレジ前ローラ対120を当接させた状態でシートの搬送が行われる。
【0053】
以上のF103~F108の処理によってレジ前ローラ対120の当接又は離間が決定されると、給送元のカセット又はトレイからシートSを給送する給送動作が開始される(F109)。給送元がマルチトレイ112の場合、給送ユニット115によりマルチトレイ112上のシートSが1枚給送され、引抜ローラ対122を介してレジローラ対130へ向けて搬送される。このとき、レジ前ローラ対120が当接状態である場合は、レジ前駆動モータ145をCW方向に回転させてレジ前ローラ対120にもシートSを搬送させる。なお、レジ前ローラ対120が離間状態である場合は、レジ前駆動モータ145をCW方向に回転させてもよく、レジ前駆動モータ145を停止させてもよい。離間状態においてレジ前駆動ローラ120aの周面が搬送路内に突出している構成(
図2)では、レジ前駆動モータ145をCW方向に回転させ、レジ前駆動ローラ120aを引抜ローラ対122と同速度で駆動すると好適である。
【0054】
その後、上述したように、シートSの先端が停止状態のレジローラ対130に突き当ててられシートSのループが形成されることで、レジローラ対130においてシートSの斜行が補正される(F110)。このとき、レジ前ローラ対120が当接状態の場合にはレジ前ローラ対120とレジローラ対130の間でループが形成され、レジ前ローラ対120が離間状態の場合には引抜ローラ対122とレジローラ対130の間でループが形成される。ループの大きさ(シート先端がレジローラ対130に到達した後の上流側のローラ対によるシートの送り量)は、シートセンサ131によるシート先端の検知時刻からの経過時間及び上流側のローラ対のシート搬送速度に基づいて管理される。
【0055】
所定の大きさのループが形成されると、引抜ローラ対122及びレジ前ローラ対120の回転は一時停止する。その後、画像形成部150による画像形成プロセスに同期したタイミングで、レジローラ対130はシート搬送速度V1で回転を開始する(F111)。レジローラ対130の回転開始に合わせて上流側のレジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122もシート搬送速度V2で回転を開始するが、このとき、シート搬送速度V2をF112~F114の処理で決定する。
【0056】
具体的には、レジ前ローラ対120が離間状態であり(F112:Yes)、給送元がマルチトレイ112であり(F113:Yes)、かつ、シート長さが予め設定された閾値X2[mm]以上である(F114:Yes)場合に、シート搬送速度V2はレジローラ対130のシート搬送速度V1より遅い値に設定される(F115)。それ以外の場合は、レジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122のシート搬送速度V2はレジローラ対130のシート搬送速度以上(V1以上)の値に設定される(F116)。言い換えると、シート搬送方向の長さが第1の長さ(X2以上の長さ)であるシートを搬送する場合に第1の搬送動作(F115)を実行する。また、シート搬送方向の長さが第1の長さより短い第2の長さ(X2未満の長さ)であるシートを搬送する場合に第2の搬送動作(F116)を実行する。
【0057】
給送元がマルチトレイ112の場合にV1>V2とするのは、ユーザがマルチトレイ112にシートをセットする際にシートが傾いていることで、カセットから給送されるシートに比べて斜行補正時の面外変形が大きくなる場合があるからである。シート長さが閾値X2以上の場合にV1>V2とするのは、シートが長いほど、斜行補正後の搬送時にV1≦V2としたときにシート後端が引抜ローラ対122を抜けるまでにシートの面外変形が大きくなりやすいからである。
【0058】
なお、シート搬送速度V1,V2の設定に関するシート長さの閾値X2と、レジ前ローラ対120を離間させるか否かに関するシート長さの閾値X1は同じ値でなくてもよい。閾値X2は、レジローラ対130と上流側のローラ対のシート搬送速度の差に起因するシワの発生リスクの観点から設定され、例えばX2>X1である。
【0059】
レジローラ対130からシートSが送り出されると、二次転写部において画像を転写され、その後、定着装置160により定着処理を受け、画像形成装置100の外部に排出される(F117)。これにより、1枚のシートに対するプリントジョブの処理は終了する(F118)。なお、複数枚のシートに対して連続的に画像形成を行う場合は、F109~F117の処理が繰り返し実行される。
【0060】
(変形例)
本実施例で説明したシート搬送動作では、斜行補正後にレジローラ対130が一定のシート搬送速度V1でシートを搬送するものとして説明したが、斜行補正後のレジローラ対130のシート搬送速度V1を変動させる場合もある。例えば、画像形成プロセスに同期させてシート先端が二次転写部に到達するタイミングを調整するためにシート搬送速度V1を制御する場合がある。その場合、少なくともF115,F116でレジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122の回転を開始させるタイミングではV1>V2又はV1≦V2の関係が成り立つようにする。また、回転開始後にレジローラ対130のシート搬送速度V1を変更する場合には、V1>V2又はV1≦V2の関係が維持されるようにレジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122のシート搬送速度V2も変更すると好適である。
【0061】
なお、本実施例では斜行補正時にシートに所定の大きさのループが形成されるとレジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122が一時停止するものとして説明したが、これらのローラ対の搬送を継続させることもできる。即ち、シートに所定の大きさのループが形成されたタイミングで、レジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122の回転を継続させたまま、レジローラ対130の回転を開始させてもよい。その場合、シート先端が二次転写部に到達するタイミングを調整するためにレジローラ対130のシート搬送速度V1を変更してもよい。
【0062】
レジ前ローラ対120を離間させるか否か、及び、斜行補正後のシート搬送速度V1,V2を決定するための基準は本実施例で説明したものに限らない。例えば、レジ前ローラ対120を離間させるか否かについて、
図10のF103~F105に示す条件の一部のみを用いて判断することもできる。また、斜行補正後のシート搬送速度V1,V2を、
図10のF113又はF114の一方のみを用いて決定してもよい。その場合でも、実施例中で説明した理由により、シートの属性やシートの給送元といった画像形成動作の実行条件に応じて適切な搬送動作を実行できる。
【0063】
また、本実施例では、斜行補正後のシート搬送速度V1,V2をV1>V2とする場合は常にレジ前ローラ対120が離間状態であるものとして説明した。これに限らず、レジ前ローラ対120を当接させ、かつ、斜行補正後の引抜ローラ対122及びレジ前ローラ対120のシート搬送速度V2をレジローラ対130のシート搬送速度V1より速く設定して(V1<V2)シートSを搬送するモードを追加してもよい。
【実施例2】
【0064】
次に、実施例2に係る画像形成装置100のシート搬送機構について、
図11~
図13を用いて説明する。
図11は本実施例に係るレジ前ローラ対120の駆動構成を示す斜視図である。
図12は本実施例に係る画像形成装置100の制御構成を示すブロック図である。
図13は本実施例に係る画像形成装置100の制御方法を示すフローチャートである。以下、実施例1と共通する要素には同符号を付して説明を省略する。
【0065】
図11及び
図12に示すように、本実施例では、レジ前ローラ対120を回転駆動する第1モータとしてのレジ前駆動モータ145とは別に、離間機構140を作動させる第2モータとしての離間動作モータ301が設けられている。レジ前駆動モータ145は、レジ前駆動ギア147を介してレジ前駆動ローラ120aの駆動軸120cを回転駆動する。離間動作モータ301は、離間機構140のカム149と一体に回転するカム付ギア302を回転させることで離間機構140を作動させ、離間アーム142を介してレジ前従動ローラ120bの回転軸120dを移動させる。制御部201は、レジ前駆動モータ145及び離間動作モータ301の駆動状態を独立に制御可能である。実施例2によるレジ前ローラ対120の離間機構140は、
図12に示すように、離間動作モータ301の駆動によって離間機構140を動作する構成となっている。
【0066】
本実施例における画像形成装置100の制御方法について、
図13のフローチャートに沿って説明する。本実施例による制御は、実施例1と比べて離間機構140を動作させるタイミングが異なる。その他の実施例1の制御と実質的に同一の処理を行う部分には、同一の符号を付して説明は省略する。
【0067】
プリントジョブが開始されると(F102)、給送元のカセット又はトレイからシートの給送が開始されると共に(F109)、レジ前ローラ対120を当接状態とする制御(F201,F202)が行われる。つまり、本実施例では、シートの斜行補正を行う間はレジ前ローラ対120を当接状態とし、斜行補正後に、必要に応じてレジ前ローラ対120を離間させる制御(F103~F108)が行われる。
【0068】
具体的には、シートの給送開始時(F109)に、離間センサ129がOFFとなっていない場合は離間動作モータ301を回転させることでレジ前ローラ対120を当接状態とする(F201、F202)。その後、シート先端が停止状態のレジローラ対130に突き当てられてシートに所定の大きさのループが形成されると(F110)、レジローラ対130の回転が開始される(F111)。
【0069】
また、斜行補正後にレジ前ローラ対120を離間させるか否かの判断を行うため、シートの給送元(F103)、シート長さ(F104)、シートの坪量(F105)についての判定が行われる。F103~F105の判定基準は、実施例1と同様のものを用いることができる。レジ前ローラ対120を離間させる判断がなされた場合は、離間動作モータ301を回転させてレジ前ローラ対120を離間させ(F108,F202)、そうでない場合はレジ前ローラ対120を当接状態としたまま、次のF112の処理へ進む。
【0070】
また、斜行補正後のレジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122のシート搬送速度V2を決定するため、レジ前ローラ対120の状態(F112)、シートの給送元(F113)、シート長さ(F114)についての判定が行われる。F112~F114の判定基準は、実施例1と同様のものを用いることができる。決定されたシート搬送速度V2でレジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122が回転を開始する(F115、F116)。これ以降の処理内容は、実施例1と同様である。
【0071】
本実施例では、シートの属性や給送元といった条件に応じて、斜行補正後の搬送動作においてレジ前ローラ対120を離間させるか否か、及び、レジローラ対130と上流側のローラ対のシート搬送速度V1,V2の大小関係を決定している。従って、実施例1と同様に、条件に応じて適切な搬送動作を実行して、搬送性や斜行補正能力を維持しつつシワの発生を抑制することができる。
【0072】
また、本実施例は、レジ前駆動モータ145とは別に離間動作モータ301を有するので、斜行補正後の搬送動作においてレジ前ローラ対120を離間させる場合に、斜行補正時はレジ前ローラ対120を当接状態としても生産性の低下が避けられる。つまり、実施例1のように単一のレジ前駆動モータ145でレジ前ローラ対120の回転と離間機構140の駆動を行うことにすると、レジ前ローラ対120を離間させる前後でモータの回転方向を逆転させる必要がある。具体的には、
図13のF110ではCW方向にレジ前駆動モータ145を回転させ、F202ではCCW方向にレジ前駆動モータ145を回転させ、F115,F116ではCW方向にレジ前駆動モータ145を回転させることになる。そして、レジ前駆動モータ145の回転を停止させ、逆方向への回転を開始させるための待ち時間により、シートの給送開始から画像形成装置外部への排出までの所要時間が長くなる。これに対し、本実施例ではレジ前駆動モータ145を逆転させる必要はないから、レジ前ローラ対120の離間動作を行うことによるシートの搬送遅れを最小限に抑えることができる。
【0073】
(変形例)
図13に示すフローでは、レジ前ローラ対120の離間動作(F108,F202)が、レジローラ対130の回転開始(F111)の後で、かつ、レジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122の回転開始(F115,F116)の前に行われている。しかしながら、他のタイミングでレジ前ローラ対120の離間動作を行ってもよい。例えば、シートに所定の大きさのループが形成(F110)された後、レジローラ対130の回転開始(F111)の前に、離間動作の有無の判断及び離間動作(F103~F108,F202)を実行してもよい。その場合、レジローラ対130の回転開始(F111)と同時にレジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122の回転を開始させることができる。また、本実施例はレジ前駆動モータ145とは別に離間動作モータ301を有するので、レジ前ローラ対120及び引抜ローラ対122の回転駆動とレジ前ローラ対120の離間動作を同時進行で行ってもよい。
【0074】
(その他の実施形態)
以上説明した実施形態では、画像形成装置の内部でシートを搬送するシート搬送装置について説明したが、本技術は他のシート搬送装置に適用してもよい。例えば画像形成装置の装置本体から排出されたシートに穴あけ等の処理を施すシート処理装置において、シートの斜行を補正しつつシートを搬送する装置として用いることができる。また、中間転写タンデム方式の画像形成部150(
図1)は画像形成手段の一例であり、例えばインクジェット方式の画像形成装置におけるシート搬送装置に本技術を適用してもよい。
【0075】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0076】
100…画像形成装置/121,122…第1ローラ対(引抜ローラ対)/120…第2ローラ対(レジ前ローラ対)/130…レジストレーション手段(レジローラ対)/140…離間機構/150…画像形成手段(画像形成部)/201…制御手段(制御装置)