(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】光電変換装置、光電変換システム、移動体、半導体基板、光電変換装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/78 20230101AFI20241216BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20241216BHJP
H04N 25/445 20230101ALI20241216BHJP
【FI】
H04N25/78
H04N25/76
H04N25/445
(21)【出願番号】P 2020201214
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀央
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 蒼
【審査官】廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0205886(US,A1)
【文献】特開2010-246012(JP,A)
【文献】特開2007-142738(JP,A)
【文献】特開2009-296364(JP,A)
【文献】特開2015-126043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30-5/33
H04N 23/11、23/20-23/30
H04N 25/00、25/20-25/79
H01L 27/14-27/148
H01L 29/76
H10K 39/32-39/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に並んだ複数の画素を有する光電変換装置であって、
前記複数の画素のうち、第一の方向に並ぶ第一の画素群と、前記第一の画素群が接続される第一の出力線と、
前記複数の画素のうち、前記第一の画素群に含まれない画素が前記第一の方向に並ぶ第二の画素群と、前記第二の画素群が接続される第二の出力線と、を有し、
前記第一の出力線は第一の電流源に接続され、
前記第二の出力線は第二の電流源に接続され、
前記第一の電流源および前記第二の電流源に電流が流れる状態から、前記第一の電流源に流れる前記電流を減少させる制御を行っている間、前記第二の電流源に流れる前記電流を増加させる制御を行う制御部を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
アレイ状に並んだ複数の画素を有する光電変換装置であって、
前記複数の画素のうち、第一の方向に並ぶ第一の画素群と、前記第一の画素群が接続される第一の出力線と、
前記複数の画素のうち、前記第一の画素群に含まれない画素が前記第一の方向に並ぶ第二の画素群と、前記第二の画素群が接続される第二の出力線と、を有し、
前記第一の出力線は第一の電流源に接続され、
前記第二の出力線は第二の電流源に接続され、
前記第一の電流源および前記第二の電流源に電流が流れる状態から、前記第一の電流源に流れる前記電流の変化に応じて、前記第二の電流源に流れる前記電流を変化させることで、流れる電流の総量の変動を抑制する
制御を行う制御部を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
前記第一の画素群に含まれる複数の画素と、前記第二の画素群に含まれる複数の画素とが、
前記アレイ状に配された複数の画素の同一の列に配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第一の出力線は第一の信号処理回路に接続され、
前記第二の出力線は第二の信号処理回路に接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第一の出力線及び前記第二の出力線のそれぞれは前記複数の画素で生じた電荷に基づく信号を出力し、
前記第一の信号処理回路は前記第一の出力線から出力される信号と参照信号とを比較し、
前記第二の信号処理回路は前記第二の出力線から出力される信号と参照信号とを比較することを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一の電流源に流れる前記電流を減少させる制御を行っている間、前記第二の出力線の抵抗を小さくすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第一の電流源に流れる前記電流の減少量と、前記第二の電流源に流れる前記電流の増加量との差分が、前記減少量又は前記増加量よりも少ないことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第一の電流源を含む第一の電流源群に流れる電流の減少量と、前記第二の電流源を含む第二の電流源群に流れる電流の増加量との差分が、前記減少量又は前記増加量よりも少ないことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第一の電流源と、前記第二の電流源とは、同一の基準電圧源に接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第一の信号処理回路を動作させ、前記第一の信号処理回路が動作している期間に前記第二の信号処理回路を動作させない間引き動作を行う間引き制御回路を有することを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の光電変換装置。
【請求項11】
第一の読み出しモードから第二の読み出しモードへの変化に応じて、
前記制御部は、前記制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記第一の読み出しモードにおいて、前記複数の画素から出力されたデータ量は、前記第二の読み出しモードにおいて、前記複数の画素から出力されたデータ量よりも多いことを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第一の読み出しモードは、前記第二の読み出しモードよりも解像度が高い全画素読み出しモードであり、前記第二の読み出しモードは、前記第一の読み出しモードよりもSN比が高い列間引きモードであることを特徴とする請求項11又は12に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記複数の画素は第一の半導体基板に形成され、
前記第一の電流源及び第二の電流源は第二の半導体基板に形成され、
前記第一の半導体基板及び第二の半導体基板を含む複数の半導体基板を積層して構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項
13のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項
14のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する信号処理部と、を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項16】
請求項1乃至請求項
15のいずれか1項に記載の光電変換装置を備える移動体であって、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御部を有することを特徴とする移動体。
【請求項17】
他の半導体基板に積層するための半導体基板であって、
第一の電流源に接続された第一の出力線と、
第二の電流源に接続された第二の出力線と、
前記第一の電流源および前記第二の電流源に電流が流れる状態から、前記第一の電流源に流れる前記電流を減少させる制御を行っている間、前記第二の電流源に流れる前記電流を増加させる制御を行う制御部を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項18】
アレイ状に並んだ複数の画素を有し、
前記複数の画素のうち、第一の方向に並ぶ第一の画素群と、前記第一の画素群が接続される第一の出力線と、
前記複数の画素のうち、前記第一の画素群に含まれない画素が前記第一の方向に並ぶ第二の画素群と、前記第二の画素群が接続される第二の出力線と、を有し、
前記第一の出力線は第一の電流源に接続され、
前記第二の出力線は第二の電流源に接続される光電変換装置の駆動方法であって、
前記第一の電流源および前記第二の電流源に電流が流れる状態から、前記第一の電流源に流れる前記電流を減少させる期間に、前記第二の電流源に流れる前記電流を増加させることを特徴とする光電変換装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、この光電変換装置を備えた光電変換システム、移動体、半導体基板、光電変換装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画素列毎に配された比較器の電流値を比較器のAD変換ゲインに応じて切り替える固体撮像装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の固体撮像装置では、電源電圧が変動することにより、固体撮像装置の出力信号の精度が低下するという課題があった。
【0005】
本件は上記課題を鑑みてなされたものであり、光電変換装置の電源電圧の変動を抑制し、光電変換装置の出力信号の精度を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの側面は、アレイ状に並んだ複数の画素を有する光電変換装置であって、前記複数の画素のうち、第一の方向に並ぶ第一の画素群と、前記第一の画素群が接続される第一の出力線と、前記複数の画素のうち、前記第一の画素群に含まれない画素が前記第一の方向に並ぶ第二の画素群と、前記第二の画素群が接続される第二の出力線と、を有し、前記第一の出力線は第一の電流源に接続され、前記第二の出力線は第二の電流源に接続され、前記第一の電流源および前記第二の電流源に電流が流れる状態から、前記第一の電流源に流れる前記電流を減少させる制御を行っている間、前記第二の電流源に流れる前記電流を増加させる制御を行う制御部を有することを特徴とする。
【0007】
本開示のその他の側面は、アレイ状に並んだ複数の画素を有する光電変換装置であって、前記複数の画素のうち、第一の方向に並ぶ第一の画素群と、前記第一の画素群が接続される第一の出力線と、前記複数の画素のうち、前記第一の画素群に含まれない画素が前記第一の方向に並ぶ第二の画素群と、前記第二の画素群が接続される第二の出力線と、を有し、前記第一の出力線は第一の電流源に接続され、前記第二の出力線は第二の電流源に接続され、前記第一の電流源および前記第二の電流源に電流が流れる状態から、前記第一の電流源に流れる前記電流の変化に応じて、前記第二の電流源に流れる前記電流を変化させることで、流れる電流の総量の変動を抑制する制御を行う制御部を有することを特徴とする。
【0008】
本開示の更にその他の側面は、複数の出力線と、各々が前記複数の出力線のいずれかに接続された複数の画素と、各々が前記複数の出力線のいずれかに接続された複数の電流源と、各々が前記複数の出力線のいずれかに接続された複数の比較器と、を有する光電変換装置であって、前記複数の電流源は第一の電流源と第二の電流源とを含み、前記複数の比較器は第一の比較器と第二の比較器とを含み、前記第一の電流源と前記第一の比較器との間に前記第二の電流源が配され、前記第二の電流源と前記第二の比較器との間に前記第一の比較器が配されていることを特徴とする。
【0009】
本開示の更にその他の側面は、他の半導体基板に積層するための半導体基板であって、第一の電流源に接続された第一の出力線と、第二の電流源に接続された第二の出力線と、前記第一の電流源および前記第二の電流源に電流が流れる状態から、前記第一の電流源に流れる前記電流を減少させる制御を行っている間、前記第二の電流源に流れる前記電流を増加させる制御を行う制御部を有することを特徴とする。
【0010】
本開示の更にその他の側面は、アレイ状に並んだ複数の画素を有し、前記複数の画素のうち、第一の方向に並ぶ第一の画素群と、前記第一の画素群が接続される第一の出力線と、前記複数の画素のうち、前記第一の画素群に含まれない画素が前記第一の方向に並ぶ第二の画素群と、前記第二の画素群が接続される第二の出力線と、を有し、前記第一の出力線は第一の電流源に接続され、前記第二の出力線は第二の電流源に接続される光電変換装置の駆動方法であって、前記第一の電流源および前記第二の電流源に電流が流れる状態から、前記第一の電流源に流れる前記電流を減少させる期間に、前記第二の電流源に流れる前記電流を増加させることを特徴とする光電変換装置の駆動方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、光電変換装置の出力信号の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図2】第一の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図3】第一の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図4】第一の実施形態に係るタイミングチャートである。
【
図5】第二の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図6】第二の実施形態に係るタイミングチャートである。
【
図7】第三の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図8】第三の実施形態に係るタイミングチャートである。
【
図9】第三の実施形態に係るタイミングチャートである。
【
図10】第四の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図11】第四の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図12】第四の実施形態に係る光電変換装置の変形例である。
【
図13】第五の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図14】第五の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図15】第五の実施形態に係るタイミングチャートである。
【
図16】第五の実施形態に係るタイミングチャートである。
【
図17】第六の実施形態に係る光電変換システムの構成を示す図である。
【
図18】第七の実施形態に係る移動体の構成、動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら各実施形態を説明する。
【0014】
以下に述べる各実施形態では、光電変換装置の一例として、撮像装置を中心に説明する。ただし、各実施形態は、撮像装置に限られるものではなく、光電変換装置の他の例にも適用可能である。例えば、測距装置(焦点検出やTOF(Time Of Flight)を用いた距離測定等の装置)、測光装置(入射光量の測定等の装置)などがある。
【0015】
(第一の実施形態)
図1~
図3は本実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【0016】
図1に示す光電変換装置は、画素アレイ110、垂直出力線130、垂直出力線131、電流源トランジスタ140、電流源トランジスタ141、スイッチ150、スイッチ151、GNDパッド160、電源パッド161を含む。さらに制御信号線PWR1、制御信号線PWR2、バイアス線BSを有し、抵抗170、抵抗171は寄生抵抗である。
【0017】
画素アレイ110には複数行及び複数列にわたって複数の画素100がアレイ状に配されている。
【0018】
画素アレイ110の各列には、列方向(
図1において縦方向)に延在して、垂直出力線130,131が配されている。垂直出力線は、列方向に並ぶ画素100にそれぞれ接続され、これら画素100に共通の信号線をなしている。
【0019】
画素アレイ110を構成する画素100の数は、特に限定されるものではない。例えば、一般的なデジタルカメラのように数千行×数千列の画素100で画素アレイ110を構成してもよく、1行に並べた複数の画素100で画素アレイ110を構成してもよい。
【0020】
画素100から読み出された画素信号は、垂直出力線を介して不図示の列信号処理回路に入力される。列信号処理回路は画素100から読み出された画素信号を保持するメモリ等を含み得る。列信号処理回路から出力される画素信号は信号処理回路を介して列毎に順次出力される。
【0021】
電源パッド161、抵抗171を介して画素アレイ110に電源電圧が供給される。
【0022】
GNDパッド160は接地電位であるグラウンドに接続されている。以下グラウンドをGNDとも呼ぶ。
【0023】
電流源トランジスタ140、141にはGNDパッド160、抵抗170を介して基準電位となるGND電位が供給され、電流源トランジスタ140、141のゲートにはバイアス線BSからバイアス電圧が入力される。バイアス線BSにバイアス電圧を供給するバイアス源は、例えば
図2に示す電流源と可変トランジスタを含む構成をとる。可変トランジスタのサイズに応じたバイアス電圧がバイアス線BSに出力される。
【0024】
制御信号線PWR1に接続されたスイッチ150のオンオフに応じて垂直出力線130に電流が供給される。同様に、制御信号線PWR2に接続されたスイッチ151のオンオフに応じて垂直出力線131に電流が供給される。
【0025】
制御部であるタイミングジェネレータ190は、制御信号線PWR1、PWR2に出力する信号を制御する。これにより、タイミングジェネレータ190は、スイッチ150、スイッチ151の動作を制御している。また、タイミングジェネレータ190は、画素アレイ110の画素からの信号の読み出し動作と、列信号処理回路および信号処理回路の信号処理動作の駆動を制御している。
【0026】
(画素の構成)
本実施形態に係る画素100の構成について説明する。
【0027】
図3は画素回路の等価回路図を示している。垂直出力線130に接続された画素の一つを例とする。画素100のそれぞれはフォトダイオード400、転送トランジスタ410、フローティングディフュージョン420、ソースフォロワトランジスタ430、選択トランジスタ440、GNDノード450、リセットトランジスタ455、電源ノード460を有する。
【0028】
フォトダイオード400はGNDノード450で接地している。フォトダイオード400は転送トランジスタ410に接続される。転送トランジスタ410のゲートには制御信号TXが入力される。転送トランジスタ410はリセットトランジスタ455及びソースフォロワトランジスタ430と共通のノードを有し、該共通のノードがフローティングディフュージョン420となる。リセットトランジスタ455及びソースフォロワトランジスタ430は共に電源ノード460に接続される。リセットトランジスタ455のゲートにはリセット信号RESが入力される。ソースフォロワトランジスタ430は選択トランジスタ440に接続され、選択トランジスタ440のゲートには選択信号線SELから選択信号が入力される。選択トランジスタ440は垂直出力線130に接続される。
【0029】
(画素の各要素の機能)
画素100の各要素の機能について説明する。
【0030】
フォトダイオード400は、入射した光を光電変換し、電荷を発生させる。
【0031】
フォトダイオード400で光電変換された電荷は、転送トランジスタ410を介してフローティングディフュージョン420に転送され、フローティングディフュージョン420に付随する寄生容量で信号電圧に変換される。該信号電圧は、ソースフォロワトランジスタ430のゲートに入力され、選択トランジスタ440を介して垂直出力線130へ出力される。ソースフォロワトランジスタ430は、
図1の電流源トランジスタ140とともにソースフォロワを構成し、フローティングディフュージョン420上の信号電圧は、該ソースフォロワを介して垂直出力線130に出力される。
【0032】
(光電変換装置の駆動)
本実施形態に係る光電変換装置では、高解像度かつ通常SN比の全画素読み出しモードと、低解像度で高SN比の列間引きモードを切り替えて使用する。両モードの消費電流を概ね同等にすることで、電源及び基準電圧源であるGNDの変動を抑制し、出力信号の精度を向上させることができる。
【0033】
以下に具体的な駆動を説明する。
【0034】
図1に示す光電変換装置において、バイアス線BSから電流源トランジスタ140、電流源トランジスタ141へ供給するバイアス電圧を増加させることで、垂直出力線130、垂直出力線131のそれぞれに供給される電流が増加する。これにより画素100中のソースフォロワトランジスタ430で生じる1/fノイズを低減し、SN比を改善することが可能となる。
【0035】
この際、スイッチ150を制御する制御線PWR1、スイッチ151を制御する制御信号線PWR2のどちらか一方をローレベルとすることでスイッチ150、スイッチ151のいずれかをオフ状態とすることができる。スイッチ150をオン状態としている期間中にスイッチ151をオフ状態とした場合を例に挙げて説明する。このとき、垂直出力線131には電流が供給されなくなり(パワーセーブ状態)、垂直出力線131に接続される画素100からなる画素群の信号の読み出しを行わない列間引きの読み出しモードとなる。このような列間引きモードでは、出力される信号による画像の解像度は下がるが、画素アレイ110から出力されるデータ量が減少することにより、後段のデータ処理の負荷を低減し、消費電力を低減できる。
【0036】
このような読み出しモードの変更を行う際、各画素列の電流消費量が変動することによって、電源電圧に変動が生じる。このような変動が生じている間に信号を読み出すことで、変動がノイズとして当該信号に重畳され、出力信号のSN比が低下する。
【0037】
そこで本実施形態では、列間引きモード時は電流源トランジスタ140から垂直出力線130へ供給される電流を増加させる。具体的には、制御部による垂直出力線への供給電流量を決定する制御信号線PWRの信号レベルの切り替えに応じて、制御部がバイアス源に接続された可変トランジスタのトランジスタサイズを変え、電流源トランジスタに供給されるバイアス電圧を変化させる。電流の総量の変動を抑制し、読み出しモード変更の際の電源やGNDの電圧変動を抑制することで、画質の劣化を抑制することが可能となる。
【0038】
以下、光電変換装置の駆動について
図4に示すタイミングチャートを用いて説明する。
【0039】
まず、時刻t0において、制御信号PWR1、2はハイレベルとなっている。電流源トランジスタ140、電流源トランジスタ141のゲートには共通のバイアス線BSからバイアス電圧が供給されている。電流源トランジスタ140を流れる電流と電流源トランジスタ141を流れる電流は、ほぼ等しくなっている。
【0040】
時刻t0~t1では、画素アレイ110中の画素100の信号を1行ずつ順次読み出していく。
【0041】
全行分の信号を読み出し終わった後、時刻t1において、制御信号PWR2をローレベルとし、スイッチ151をオフ状態とし、列間引きモードへ移行させる。この時、同時にバイアス線BSから電流源トランジスタ140、電流源トランジスタ141のゲートに供給されるバイアス電圧を増加させる。これにより、列間引きモードに移行する際に、電流の総量の変動が抑制され、電源電圧変動を抑制することが可能となる。
【0042】
つまり、電源パッド161~抵抗171~画素アレイ110~垂直出力線130~電流源トランジスタ140~抵抗170~GNDパッド160という経路で流れる電流の変動を抑制する。
【0043】
この電流変動の抑制により、画素100の電源ノード460の電源電圧変動及び電流源トランジスタ140、電流源トランジスタ141のソースノード電位の変動を抑制できる。電源ノード460の電位の変動がソースフォロワトランジスタ430のドレイン-ゲート間容量を介してフローティングディフュージョン420に干渉することによる画質劣化を抑制可能となる。このとき、電流の総量の変動を防ぐためには電流源トランジスタ140を流れる電流の増加量と電流源トランジスタ141を流れる電流の減少量とがなるべく近い値であることが望ましいが、電流増加量と減少量とのバランスは許容される画質に応じて決定できる。
【0044】
また、電流源トランジスタ140、141のソースノードの電位の変動を抑制することにより、電流源トランジスタ140、141の電流が変動し、垂直出力線130、131の信号が劣化することを抑制できる。また、電流源トランジスタ140、141は隣接して配置された同一の回路要素であり、それぞれのソースノードからGNDパッド160へのインピーダンスはほぼ同一かつ共通であるため、電流変動の抑制によるソースノードの変動の抑制効果を高くできる。
【0045】
このように、本実施形態に係る光電変換装置においては、モード切り替え時の電源の変動を抑制することが可能となる。また、電源電圧変動を抑制することでSN比が向上し、画質劣化を抑制することが可能となる。
【0046】
なお、
図1では、電流源トランジスタ140、141のゲートのバイアス線は共通で、スイッチ150、151の制御線を個別とすることでどちらか一方をパワーセーブ状態とする例を説明したが、構成はこれに限られない。電流源トランジスタ140、141のゲートのバイアス線を個別にしておいてどちらか一方をパワーセーブ状態としても構わない。また、その際、電流を遮断せずに、例えば0.1μA程度の微弱な電流は流しておく状態をパワーセーブ状態としても構わない。パワーセーブ状態でも微弱な電流を流すことで、復帰する際に要する時間を短縮可能である。
【0047】
なお、本実施形態では、光電変換装置が備えるタイミングジェネレータ190が電流源トランジスタ140、141の電流量を制御していた。他の例として、光電変換装置の外部に設けられた制御部が、電流源トランジスタ140、141を制御するようにしても良い。例えば、後述する第六の実施形態において説明される
図17の光電変換システムに備わる全体制御・演算部1009が制御するようにしても良い。また、
図17の光電変換システムの外部から電流源トランジスタ140、141を制御するようにしても良い。
【0048】
(第二の実施形態)
図5に第二の実施形態に係る光電変換装置の模式図を示す。第1の実施形態と重複する説明を省略し、主として第一の実施形態との相違点について説明する。
【0049】
本実施形態に係る光電変換装置では、通常SN比の高速モードと、低速だが高SN比の高SNモードとを切り替えて使用する。
【0050】
本実施形態に係る光電変換装置の垂直出力線130はスイッチ180を有し、垂直出力線131はスイッチ181を有する。垂直出力線130は画素アレイ110の偶数列に並ぶ一群の画素に接続され、垂直出力線131は画素アレイ110の奇数列に並ぶ一群の画素に接続されている。スイッチ180は制御信号線VLON1から入力される信号によって制御され、スイッチ180は制御信号線VLON2から入力される信号によって制御される。
【0051】
以下、光電変換装置の駆動について
図6のタイミングチャートを用いて説明する。
【0052】
時刻t0~t1までの動作は
図4と同様である。時刻t0において、制御信号VLON1がハイレベルでスイッチ180はオン状態、制御信号VLON2がローレベルでスイッチ181はオフ状態となっている。また、制御信号PWR1、制御信号PWR2がハイレベルとなっており、スイッチ150、スイッチ151がオン状態となっている。電流源トランジスタ140、電流源トランジスタ141の電流は、ほぼ等しい状態で垂直出力線130、垂直出力線131のそれぞれを介してGNDパッド160へと流れる。この状態で、画素アレイ110中の画素100の信号を1行ずつ順次読み出していく。
【0053】
時刻t1で、制御信号PWR2をローレベルとすることでスイッチ151をオフ状態とし、読み出しモードを高速モードから高SNモードへ移行させる。この時、同時にバイアス線BSから各電流源トランジスタのゲートに供給されるバイアス電圧を増加させる。これにより、読み出しモードの移行の際に電流の総量の変動が抑制され、電源電圧変動が抑制される。
【0054】
時刻t1~t2では、制御信号VLON1がハイレベルでスイッチ180はオン状態、制御信号VLON2がローレベルでスイッチ181はオフ状態となっており、電流源トランジスタ140の電流は垂直出力線130を流れる。この状態で、垂直出力線130を介して画素アレイ110の偶数列の画素100の信号が読み出される。
【0055】
時刻t2において、制御信号VLON1がローレベルとなり、スイッチ180はオフ状態になる。制御信号VLON2はハイレベルとなり、スイッチ181はオン状態となる。電流源トランジスタ141の電流は垂直出力線131を流れる。この状態で、垂直出力線131を介して画素アレイ110の奇数列の画素100の信号が読み出される。
【0056】
このように、高SNモードでは、時刻t1~t3の間に1行分の画素100の信号を奇数列の画素100の信号と偶数列の画素100の信号との2回に分けて読み出す。
【0057】
時刻t3~t5では、同様の動作により、更に次の行の画素100の信号を読み出す。このような駆動により、本実施形態においては、高SNモード時に解像度を落とさずに信号を読み出すことが可能である。また、高速モードから高SNモードへの読み出しモード移行時に電源電圧変動を抑制し、電源電圧変動に伴う画質劣化を抑制することができる。
【0058】
(第三の実施形態)
図7に第三の実施形態に係る光電変換装置の模式図を示す。
【0059】
本実施形態に係る光電変換装置でも、第二の実施形態と同様に通常SN比の高速モードと、低速だが高SN比の高SNモードとを切り替えて使用する。以下では、主に第二の実施形態との相違点について説明する。
【0060】
図7に示す本実施形態に係る光電変換装置は、垂直出力線130後段の信号処理回路として比較器200を有し、垂直出力線131後段の信号処理回路として比較器201を有する。また、比較器200に接続されるGNDパッド210と抵抗220、比較器201に接続されるGNDパッド211と抵抗221を図示している。さらにランプ信号線RAMP、バイアス信号線CBS、制御線CPWR1、制御線CPWR2を有する。
【0061】
図7に示す光電変換装置においては、配線の電源電圧変動に加え、比較器の電源電圧変動及びGND変動も抑制可能となる。比較器200、比較器201それぞれのバイアス電流値はバイアス線CBSから供給されるバイアス電圧で駆動される。入力端子にはランプ信号線RAMPから供給されるランプ信号が参照信号として入力される。また、垂直出力線のそれぞれに流れる電流は制御線PWR1及び制御線PWR2によって制御される。
【0062】
動作の一例として、
図8のタイミングチャートを示す。
図8に示すタイミングチャートは、制御線CPWR1、制御線CPWR2、バイアス線CBSについて、各々制御線PWR1、制御線PWR2、バイアス線BSと同様の制御を行うことが示されている以外は、
図6に示すタイミングチャートと同様である。
【0063】
時刻t0~t1では、制御線CPWR1、制御線CPWR2はいずれもハイレベルであり、比較器200、比較器201はそれぞれ垂直出力線130、131を介して出力される信号の処理を行う。
【0064】
時刻t1において、読み出しモードを高速モードから高SNモードへ移行し、バイアス電圧CBSを増加させる際、制御線CPWR2をローレベルとすることで比較器201への電流の供給を停止する。これにより比較器200、比較器201の電流の総量の変動が抑制され、電源電圧変動及びGND変動が抑制される。なお、比較器200、201のそれぞれは差動段と増幅段を有し、差動段と増幅段のそれぞれは電流源を有するが、モード移行の際は差動段と増幅段のどちらへの電流供給を変化させてもかまわない。
【0065】
時刻t1~t2においては、垂直出力線130から出力される信号を、比較器200を用いてランプ信号と比較することによりAD変換を行う。
【0066】
時刻t2~t3では、垂直出力線131から出力される信号について、比較器201を用いてランプ信号と比較することによりAD変換を行う。
【0067】
ここで、垂直出力線の信号をAD変換する際の動作について、垂直出力線130及び比較器200を例にとり、
図9のタイミングチャートを用いて説明する。なお
図8の符号t0~t5と
図9の符号t0~t8は無関係である。
【0068】
時刻t0~t1において、
図3の制御信号RESがハイレベルとなりリセットトランジスタ455がオンすることにより、フローティングディフュージョン420がリセットされる。それに応じて垂直出力線130の電位はリセットレベルとなる。
【0069】
時刻t2において、ランプ信号の電位を時間に応じて変化させるスロープ動作を開始する。一律に電位が下降する場合を図示しているが、ランプ信号は時間経過に応じて連続的に電位が上昇するような信号でもよいし、ノコギリ状に電位が変化する信号でも構わない。
【0070】
時刻t3において、比較器200に入力されるランプ信号と、垂直出力線130の出力信号との大小関係が反転し、比較器200の出力が反転する。この比較器出力の反転までの時間を不図示のカウンタにより計測することより、リセットレベルのAD変換を行う。
【0071】
時刻t4において、ランプ信号のリセットを行う。
【0072】
時刻t5~t6において、
図3の制御信号TXがハイレベルとなり、転送トランジスタ410がオンすることにより、フォトダイオード400からフローティングディフュージョン420へ光電荷が転送される。フローティングディフュージョン420の電位は、電荷の量に応じて低下し、それに応じて垂直出力線130の電位は信号レベルとなる。
【0073】
時刻t7から再びランプ信号のスロープ動作を開始する。
【0074】
時刻t8で再び比較器200に入力されるランプ信号と垂直出力線130の出力との大小関係が反転し、比較器の出力が変化する。比較器出力の変化までの時間を不図示のカウンタで計測することにより、信号レベルのAD変換を行う。そして、後段の処理回路にて、リセットレベルと信号レベルのAD変換結果の差分をとることにより、いわゆるCDS処理を行う。
【0075】
以上の動作を、
図8の時刻t1~t2の間で行うことにより、垂直出力線130の信号のAD変換を行う。同様に、
図8の時刻t2~t3で垂直出力線131の信号のAD変換を行う。以降は、その繰り返しとなる。
【0076】
以上のように、本実施形態においては、モード切り替えによる比較器の電源電圧変動及びGND変動が抑制可能である。
【0077】
なお、電流の総量の変動を防ぐためには電流源トランジスタ140を流れる電流の増加量と電流源トランジスタ141を流れる電流の減少量がなるべく近い値であることが望ましいが、電流増加量と減少量とのバランスは許容される画質に応じて決定できる。例えば、全比較器に電流を流すモードと、全比較器の1/3の数の比較器に電流を減少させる、あるいは流さず、残りの2/3の数の比較器に流す電流を増加させるモードを有する光電変換装置などが考えられる。つまり、電流源トランジスタ140を含む電流源群と電流源トランジスタ141を含む電流源群との間で電流の増加量と減少量のバランスが保たれていてもよい。
【0078】
なお、
図9において、ランプ信号の傾きを変化させることで、AD変換のゲイン(V/LSB)を切り替えることが可能である。
図8の時刻t1で高SNモードに移行する際、AD変換ゲインも同時に切り替えても構わないし、AD変換ゲインを切り替えずにAD変換を行っても構わない。
【0079】
また、
図7では、電流源トランジスタ140、141のゲートのバイアス線は共通で、スイッチ150、151の制御線を個別とすることでどちらか一方をパワーセーブ状態とする例を説明したが、構成はこれに限られない。電流源トランジスタ140、141のそれぞれのゲートのバイアス線を個別に設け、どちらか一方の電流源トランジスタをパワーセーブ状態としても構わない。また、その際、電流を遮断せずに、例えば0.1μA程度の微弱な電流は流しておく状態をパワーセーブ状態としても構わない。パワーセーブ状態でも微弱な電流を流すことで、復帰する際に要する時間を短縮可能である。
【0080】
(第四の実施形態)
図10、
図11に第四の実施形態に係る光電変換装置の模式図を示す。以下では、主として第三の実施形態との相違点について説明する。
【0081】
図10は第四の実施形態に係る光電変換装置のブロック図であり、第一の電流源を含む回路700、第二の電流源を含む回路701、第一の比較器を含む回路710、第二の比較器を含む回路711を有する。
図11に
図10に示す光電変換装置の回路の具体例を示す。
図11に示す光電変換装置においては、垂直出力線130、131は同一画素列で異なる画素行の信号を並列に読み出すことが可能となっている。つまり、高速(複数行同時)読み出しが可能である。
【0082】
第三の実施形態においては、
図8のタイミングチャートに示すように、時刻t0~t1までは画素信号を1行ずつ読み出し、時刻t1以降の高SNモードでは奇数列と偶数列のそれぞれに対応する画素信号を交互に読み出していた。
【0083】
図11に示す光電変換装置においては、
図8と同様のタイミングチャートにより、時刻t0~t1までは画素信号を2行ずつ並列に読み出し、時刻t1以降の高SNモードでは画素信号を1行ずつ読み出す動作を行う。この場合も、時刻t1で読み出しモードを移行させる際の電源電圧変動を抑制することが可能となっている。
【0084】
尚、
図10に示すように第一の電流源を含む回路700、第二の電流源を含む回路701は近接して配置され、第一の比較器を含む回路710、第二の比較器を含む回路711も近接して配置される。
【0085】
図10の回路配置を回路図で示した
図11においては、電流源トランジスタ140、141を隣接するように配置し、さらに比較器200、201が隣接するよう配置している。言い換えれば、回路700と回路710との間に回路701が配され、回路701と回路711との間に回路710が配されている。画素側から電源パッド側に向かって電流源トランジスタ140、比較器200、電流源トランジスタ141、比較器201の順としても構わないが、
図11のように同一の回路要素が隣接するように配置するとよい。このような配置により、比較器200及び比較器201からGNDパッド210や電源パッド211までの共通インピーダンスをほぼ等しくすることで、電源やGND変動の抑制効果を高めることが可能となっている。
【0086】
なお、各実施形態における光電変換装置は
図12に示すような積層型の構成をとっても構わない。
【0087】
図12に示した積層構造の光電変換装置は画素基板800と、回路基板810を有する。電流源トランジスタ140、電流源トランジスタ141、比較器200、比較器201を回路基板810に配置する場合を考える。
【0088】
読み出しモードの移行に際し、電流源トランジスタ140、電流源トランジスタ141、比較器200、比較器201の単位電流を増加する場合、動作する回路の数を少なくすることで、電流変動を抑制し、発熱量及びそのムラの増加を抑制することが可能となる。これにより、画素基板800中の画素100において、フォトダイオード400の暗電流の増大や、そのムラによる画質劣化を抑えることが可能となる。さらに、隣接回路同士での電流変動の抑制により、発熱量のムラの抑制効果を高くすることができる。
【0089】
例えば、比較器の電流が低い方のモードを動画モード、高い方のモードを静止画モードとしても構わない。
【0090】
(第五の実施形態)
図13、14に第五の実施形態に係る光電変換装置と比較器の模式図を示す。
【0091】
本実施形態に係る光電変換装置では、グローバルシャッタによる信号読み出しを行うグローバルシャッタモードと、ローリングシャッタによる信号読み出しを行うローリングシャッタモードとを切り替えて使用する。
【0092】
図13、14においてユニット500(以下画素ADとも表記する)は、画素および比較器であり、各画素が1つの比較器を有する構成をとる。505は制御回路である。
【0093】
図14に示す画素AD500は、フォトダイオード510、オーバーフロートランジスタ520、転送トランジスタ530、リセットトランジスタ540、フローティングディフュージョン550を有する。また、トランジスタ560、トランジスタ570は差動対を構成する。トランジスタ580は電流源として動作する。また、トランジスタ590、トランジスタ600はカレントミラーを構成する。610はスイッチである。
【0094】
図15を用いてグローバルシャッタ動作について説明する。
【0095】
図15において、OFG1は
図13の1行目に配された画素AD500に対応するOFGであり、OFG2、OFG3、OFD4はそれぞれ2行目、3行目、4行目に対応する。同様にRES1は
図13の1行目に配された画素AD500に対応するRESであり、TX1は
図13の1行目に配された画素AD500に対応するTX、PWR1は
図13の1行目に配された画素AD500に対応するPWRである。
【0096】
時刻t1~2で、制御信号OFG1~4をハイレベルとすることで、
図13のすべての画素AD500において、オーバーフロートランジスタ520をオンし、フォトダイオード510の電荷をリセットする。
【0097】
時刻t3~4で制御信号RES1~4をハイレベルとすることで、すべての画素AD500のリセットトランジスタ540をオンし、フローティングディフュージョン550をリセットする。
【0098】
時刻t5~6でランプ信号をスロープ動作させることでフローティングディフュージョン550のリセットレベルをAD変換する。
【0099】
時刻t7~8で制御信号TX1~4をハイレベルとすることで、フォトダイオード510からフローティングディフュージョン550へ光電荷を転送する。電荷蓄積時間は全ての行の画素で同一の時刻t2~t8である。フローティングディフュージョン550の電位は、光電荷の量に応じて信号レベルに低下する。
【0100】
時刻t9~10で再びランプ信号をスロープ動作させることでフローティングディフュージョン550の信号レベルをAD変換する。
【0101】
尚、時刻t0~t11で制御信号PWR1~4は全てハイレベルであり、全ての画素AD500は動作状態である。読み出し動作が始まる時刻t3より前の時刻t0から制御信号PWR1~4をハイレベルとしているのは、電流変動によって起きる電源電圧変動が収まるまでに所定の時間を有するためである。
【0102】
次に
図16を用いてローリングシャッタ動作について説明する。
【0103】
図15と同様に、OFG1は
図13の1行目に配された画素AD500に対応するOFGであり、OFG2、OFG3、OFD4はそれぞれ2行目、3行目、4行目に対応する。同様にRES1は
図13の1行目に配された画素AD500に対応するRESであり、TX1は
図13の1行目に配された画素AD500に対応するTX、PWR1は
図13の1行目に配された画素AD500に対応するPWRである。
【0104】
このように、
図15では、各画素ADは全ての行が同一のタイミングで電荷蓄積を行う、いわゆるグローバルシャッタ動作をしている。
【0105】
時刻t0~1で、制御信号OFG1をハイレベルとすることで、
図13の1行目の画素AD500において、オーバーフロートランジスタ520をオンにし、フォトダイオード510の電荷をリセットする。
【0106】
時刻t2~3で、制御信号OFG2をハイレベルとすることで、
図13の2行目の画素AD500において、オーバーフロートランジスタ520をオンにし、フォトダイオード510の電荷をリセットする。
【0107】
時刻t4~5で、制御信号OFG3をハイレベルとすることで、
図13の3行目の画素AD500において、オーバーフロートランジスタ520をオンにし、フォトダイオード510の電荷をリセットする。
【0108】
時刻t7~8で、制御信号OFG4をハイレベルとすることで、
図13の4行目の画素AD500において、オーバーフロートランジスタ520をオンにし、フォトダイオード510の電荷をリセットする。
【0109】
時刻t9~10で制御信号RES1をハイレベルとすることで、
図13の1行目の画素AD500において、リセットトランジスタ540をオンにし、フローティングディフュージョン550をリセットする。
【0110】
時刻t11~12でランプ信号をスロープ動作させることでフローティングディフュージョン550のリセットレベルをAD変換する。尚、この時、制御信号PWR1がハイレベル、PWR2~4がローレベルとなっており、
図13の一行目の画素AD500においてのみスイッチ610がオンすることで電流が流れ、AD変換を行える状態となっている。読み出し動作が始まる時刻t9より前の時刻t6から制御信号PWR1をハイレベルとしているのは、電流変動によって起きる電源電圧変動が収まるまでに一定の時間を有するためである。
【0111】
時刻t13~14で制御信号TX1をハイレベルとすることで、フォトダイオード510からフローティングディフュージョン550へ光電荷を転送する。この時、
図13の一行目の画素ADの蓄積時間は時刻t1~t14となる。
【0112】
時刻t15~16でランプ信号をスロープ動作させることでフローティングディフュージョン550の信号レベルをAD変換する。
【0113】
時刻t17~t19では、同様に
図13の2行目の画素AD500でリセットレベルと信号レベルのAD変換が行われる。電荷蓄積時間は時刻t3~t18となる。
【0114】
以下同様に、
図13の3行目の画素AD500では、蓄積時間は時刻t5~t20となり、
図13の4行目の画素AD500では、蓄積時間は時刻t8~t22となる。
【0115】
このように、
図16では、各画素ADは行毎にずれたタイミングで蓄積を行う、いわゆるローリングシャッタ動作となっている。
【0116】
ローリングシャッタモードの時刻t17で、制御信号PWR1がローレベルになるとともに制御信号PWR2がハイレベルとなることで、消費電流を保ち、電源電圧変動を抑制することができる。時刻t19、t21でも同様の動作を行っている。
【0117】
ここで、
図16のローリングシャッタ動作を行うローリングシャッタモードから
図15のグローバルシャッタ動作を行うグローバルシャッタモードへ、読み出しモードを移行させる場合を考える。
【0118】
図16の時刻t23では、制御信号PWR4のみがハイレベル、制御信号PWR1~3がローレベルとなっている。一方、
図15の時刻t0では制御信号PWR1~4が全てハイレベルとなっている。読み出しモードが移行するタイミングでバイアス線BSからトランジスタ580に供給するバイアス電圧を低くし、画素AD500ひとつあたりの消費電流を小さくすることで、電流の総量を略一定とし、移行の際の電源電圧変動を抑制することが可能となる。
【0119】
本実施形態では、行順次の読み出しを行うローリングシャッタモードからグローバルシャッタモードへ読み出しモードを移行する場合を例にとって説明したが、読み出し動作はこれに限られない。例えば列順次の読み出しからグローバルシャッタ動作に移行しても構わない。また、動作する画素AD500の数を間引いたグローバルシャッタ動作から間引かないグローバルシャッタ動作へ移行しても構わない。
【0120】
また、画素毎に比較器を設ける画素ADの場合を例にとって説明したが、行列状の複数の画素(画素ブロック)に対して比較器を設けるブロックADに適用しても構わない。
【0121】
(第六の実施形態)
本実施形態による光電変換システムについて、
図17を用いて説明する。
図17は、本実施形態による光電変換システムの概略構成を示すブロック図である。
【0122】
上記第一~第五の実施形態で述べた光電変換装置は、種々の光電変換システムに適用可能である。適用可能な光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図15には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0123】
図17に例示した光電変換システムは、光電変換装置の一例である撮像装置1004、被写体の光学像を撮像装置1004に結像させるレンズ1002を有する。さらに、レンズ1002を通過する光量を可変にするための絞り1003、レンズ1002の保護のためのバリア1001を有する。レンズ1002及び絞り1003は、撮像装置1004に光を集光する光学系である。撮像装置1004は、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置であって、レンズ1002により結像された光学像を電気信号に変換する。
【0124】
光電変換システムは、また、撮像装置1004より出力される出力信号の処理を行うことで画像を生成する画像生成部である信号処理部1007を有する。信号処理部1007は、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部1007は、撮像装置1004が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置1004とは別の半導体基板に形成されていてもよい。
【0125】
光電変換システムは、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部1010、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1013を有する。更に光電変換システムは、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1012、記録媒体1012に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1011を有する。なお、記録媒体1012は、光電変換システムに内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0126】
更に光電変換システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1009、撮像装置1004と信号処理部1007に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1008を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システムは少なくとも撮像装置1004と、撮像装置1004から出力された出力信号を処理する信号処理部1007とを有すればよい。
【0127】
撮像装置1004は、撮像信号を信号処理部1007に出力する。信号処理部1007は、撮像装置1004から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。光電変換システムは、この画像データを用いて、画像を生成する。
【0128】
このように、本実施形態によれば、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0129】
(第七の実施形態)
本実施形態の光電変換システム及び移動体について、
図18を用いて説明する。
図18は、本実施形態の光電変換システム及び移動体の構成を示す図である。
【0130】
図18(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記のいずれかの実施形態に記載の光電変換装置(撮像装置)である。光電変換システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、光電変換システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、光電変換システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0131】
光電変換システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御部である制御ECU330が接続されている。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0132】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム300で撮像する。
図18(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の光電変換システムを示した。車両情報取得装置320が、光電変換システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0133】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、光電変換システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0134】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0135】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態に含まれる。
【0136】
また、上記第六の実施形態、第七の実施形態に示した光電変換システムは、光電変換装置を適用しうる光電変換システム例を示したものであって、本発明の光電変換装置を適用可能な光電変換システムは
図15及び
図16に示した構成に限定されるものではない。
【0137】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0138】
100 画素
130 垂直出力線
131 垂直出力線
140 電流源
141 電流源