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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】電源管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0645 20230101AFI20241216BHJP
   H02J 9/04 20060101ALI20241216BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241216BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241216BHJP
【FI】
G06Q30/0645
H02J9/04
H01M10/44 P
G06Q50/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020205265
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092443
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 奈美
【審査官】野村 和史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027779(JP,A)
【文献】国際公開第2020/115992(WO,A1)
【文献】特開2020-174510(JP,A)
【文献】特開2013-246751(JP,A)
【文献】特開2011-055589(JP,A)
【文献】特開2014-056530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
H02J 9/04
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた地区内の所定の施設に配置され、電力を蓄積する蓄電手段を有する電源装置と、
商用電源の電力に代えて前記電源装置から供給される電力によって特定負荷が動作可能とされた前記地区内の複数の住宅と、
前記住宅の何れかの居住者が所有する蓄電池を備えた車両から給電される電力を前記電源装置の蓄電手段に充電する充電手段と、
前記住宅ごとに登録されている居住者から前記電源装置の貸与依頼を受け付ける受付手段と、
前記充電手段による前記電源装置の蓄電手段への充電を管理すると共に、前記受付手段によって受け付けた居住者の前記貸与依頼に応じた前記電源装置の貸与を管理する電源管理手段と、
を含む電源管理システム。
【請求項2】
前記電源管理手段は、各々が前記車両を有する複数の住宅に対し、前記電源装置の前記蓄電手段へ充電するための給電依頼を行う請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記車両が所有される前記住宅は、前記電源管理手段との間で情報の送受信が可能なHEMSが設置された住宅を含み、
前記電源管理手段は、前記HEMSに前記給電依頼を通知する請求項2に記載の電源管理システム。
【請求項4】
前記居住者は、前記HEMSを介して前記電源装置の前記貸与依頼を通知する請求項3に記載の電源管理システム。
【請求項5】
前記居住者は、前記電源管理手段との間で情報の送受信が可能な携帯端末を有し、
前記電源管理手段は、前記車両を所有する居住者の前記携帯端末に前記給電依頼を通知する請求項2に記載の電源管理システム。
【請求項6】
前記居住者は、前記携帯端末を介して前記電源装置の前記貸与依頼を通知する請求項5に記載の電源管理システム。
【請求項7】
前記電源装置の前記蓄電手段の電力を前記施設の電気負荷に供給することで放電する放電手段を含み、
前記電源管理手段は、前記電源装置の前記蓄電手段の自然放電に代えて前記放電手段により放電を行う請求項1から請求項6の何れか1項に記載の電源管理システム。
【請求項8】
前記電源装置は、前記蓄電池の直流電力を商用電源と同様の交流電力に変換する変換手段を含む請求項1から請求項7の何れか1項に記載の電源管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交換可能な蓄電池モジュールを備える車両に対して、蓄電池モジュールを貸与するための貸与システムが開示されている。貸与システムでは、対象地域に分散して充電スタンドを設置し、充電スタンドにおいて発電設備によって発電された電力を蓄電池に充電する。また、充電スタンドは、サーバに接続されており、サーバは、ユーザの車両から要求される蓄電池モジュールの貸与希望に対し、貸与が好ましいと判断されることで、充電スタンドにおいて貸与希望したユーザに対して蓄電池モジュールを交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-080199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電池に蓄積された電力により走行可能な車両は、アクセサリーコンセントを備えることで、バッテリーの直流電力を商用電源と同様の単相100V等の交流電力に変換して出力できる。これにより、車両のアクセサリーコンセントから供給される電力により家庭用電化製品などの各種の電気機器の使用が可能になる。また、住宅においては、商用電源の給電が停止した停電時などにおいて蓄電池を備えた車両が接続されることで、予め設定した特定の電気機器に電力を供給して作動させることができる。
【0005】
しかし、住宅等では、非通常時に蓄電池等に蓄積された電力を利用するための設備が設置されていても、蓄電池を備える車両を所有していない場合、車両の蓄電池が給電できる状態にない場合、車両が戻ってない場合などでは設置されている設備を使用できない。このため、住宅では、商用電力の停電時などの非通常時に電気機器を使用できるように設置された設備を効果的に使用できるようにするためには改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記事実を鑑みて成されたものであり、蓄電池などの蓄電手段に蓄積された電力の効果的な利用可能にする電源管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様の電源管理システムは、予め定めた地区内の所定の施設に配置され、電力を蓄積する蓄電手段を有する電源装置と、商用電源の電力に代えて前記電源装置から供給される電力によって特定負荷が動作可能とされた前記地区内の複数の住宅と、前記住宅の何れかの居住者が所有する蓄電池を備えた車両から給電される電力を前記電源装置の蓄電手段に充電する充電手段と、前記住宅ごとに登録されている居住者から前記電源装置の貸与依頼を受け付ける受付手段と、前記充電手段による前記電源装置の蓄電手段への充電を管理すると共に、前記受付手段によって受け付けた居住者の前記貸与依頼に応じた前記電源装置の貸与を管理する電源管理手段と、を含む。
【0008】
第1の態様の電源管理システムでは、予め定めた地区において居住者が居住する複数の状態を電源装置の貸与対象としている。貸与対象の住宅では、商用電源の電力に代えて電源装置から供給される電力によって特定負荷が動作可能とされており、住宅では、電源装置が貸与されることで、商用電源の停電時において電源装置の蓄電手段の電力を特定負荷に供給して動作させることができる。なお、住宅は、戸建てに限らず、集合住宅であってもよい。
【0009】
電源装置は、地区内の所定の施設に配置される。充電手段は、施設に配置された電源装置の蓄電手段を、蓄電手段を備えた車両から給電される電力により充電する。また、電源装置の蓄電手段は、地区の居住者が所有する車両が用いられ、電源管理手段は、充電手段による電源装置の蓄電手段への充電を管理する。
【0010】
ここで、受付手段は、住宅ごとに登録されている居住者から電源装置の貸与依頼を受け付ける。電源管理手段は、受付手段によって受け付けた居住者の貸与依頼に応じて電源装置を貸与する。これにより、地区内の居住者が所有する車両の電力を用いて電源装置の蓄電手段を充電し、蓄電手段が充電された電源装置の地区内の居住者に貸与できるので、蓄電手段に蓄積された電力を効果的に利用できる。
【0011】
第2の態様の電源管理システムは、第1の態様において、前記電源管理手段は、各々が前記車両を有する複数の住宅に対し、前記電源装置の前記蓄電手段へ充電するための給電依頼を行う。
【0012】
第2の態様の電源管理システムでは、電源管理手段により各々が車両を有する複数の住宅に対し、電源装置の蓄電手段へ充電するための給電依頼を行う。これにより、地区内の車両の電力を電源装置の蓄電手段に給電して、蓄電手段の充電を行うことができるので、商用電源を用いて電源装置の蓄電手段を充電する必要が無いので、充電のためのコストを抑制できる。
【0013】
第3の態様の電源管理装置は、第2の態様において、前記車両が所有される前記住宅は、前記電源管理手段との間で情報の送受信が可能なHEMSが設置された住宅を含み、前記電源管理手段は、前記HEMSに前記給電依頼を通知する。
【0014】
第3の態様の電源管理システムでは、地区内において車両が所有されていると共に、電源管理手段との間で情報の送受信が可能なHEMSが設置された住宅に対し、HEMSに給電依頼を通知する。これにより、車両が所有された住宅に対して効率よく充電依頼を通知できる。
【0015】
第4の態様の電源管理システムは、第3の態様において、前記居住者は、前記HEMSを介して前記電源装置の前記貸与依頼を通知する。
【0016】
第4の態様の電源管理システムでは、HEMSを介して電源装置の貸与依頼を通知するので、電源装置の貸与依頼を容易にできると共に、貸与依頼を通知した住宅の特定が容易になる。
【0017】
第5の態様の電源管理システムは、第2の態様において、前記居住者は、前記電源管理手段との間で情報の送受信が可能な携帯端末を有し、前記電源管理手段は、前記車両を所有する居住者の前記携帯端末に前記給電依頼を通知する。
【0018】
第5の態様の電源管理システムでは、地区内において車両を所有すると共に、電源管理手段との間で情報の送受信が可能な携帯端末を所有する居住者に対し、居住者の携帯端末に給電依頼を通知する。これにより、車両の所有者に迅速に充電依頼を通知できる。車両が所有された住宅に対して効率よく充電依頼を通知できる。
【0019】
第6の態様の電源管理システムは、第5の態様において、前記居住者は、前記携帯端末を介して前記電源装置の前記貸与依頼を通知する。
【0020】
第6の態様の電源管理システムでは、居住者が携帯端末を用いて電源装置の貸与依頼を通知するので、住宅にいなくても、迅速に電源装置の貸与依頼をできる。
【0021】
第7の態様の電源管理システムは、第1から第6の何れか1の態様において、前記電源装置の前記蓄電手段の電力を前記施設の電気負荷に供給することで放電する放電手段を含み、前記電源管理手段は、前記電源装置の前記蓄電手段の自然放電に代えて前記放電手段により放電を行う。
【0022】
第7の態様の電源管理システムでは、電源装置の蓄電手段の自然放電に代えて、放電手段が電源装置の蓄電手段の電力を放電する。また、放電手段は、放電する電力を施設の電気負荷に供給する。これにより、電源装置の蓄電手段の蓄電能力の低下を抑えることができると共に、電源装置の蓄電手段の電力を効果的に利用できる。
【0023】
第8の態様の電源管理システムは、第1から第7の何れか1の態様において、前記電源装置は、前記蓄電手段の直流電力を商用電源と同様の交流電力に変換する電力変換手段を含む。
【0024】
第8の態様の電源管理システムでは、電源装置が蓄電手段の直流電力を商用電源と同様の交流電力に変換する電力変換手段を含んでいる。これにより、電源装置から出力する電力をそのまま特定負荷に給電できる。
【0025】
本発明の一態様の電源管理システムは、前記特定負荷として商用電源によって動作されている医療機器が設置された住宅の居住者からの前記貸与依頼に対し、前記電源管理手段は、優先的に前記電源装置を貸与することを含む。
【0026】
この態様の電源管理システムでは、電源装置の電力を用いる特定負荷として、医療機器が設置された住宅からの貸与依頼については、優先的に電源装置を貸与する。これにより、非常時において医療機器に電力が供給されずに停止してしまうのを抑制できる。
【0027】
本発明の一態様の電源管理システムは、前記電源管理手段は、前記給電した車両の所有者に、前記電源装置の貸与についてインセンティブを付与する。
【0028】
この態様の電源管理システムでは、給電依頼に応じた車両について、所有する居住者に電源装置の貸与についてのインセンティブを付与する。これにより、電源装置の蓄電手段の充電に寄与に報いることを可能にしている。
【0029】
本発明の一態様の電源管理システムは、前記貸与依頼の可能性を予測するための情報を配信可能な情報配信手段を含み、前記電源管理手段は、前記情報配信手段から取得される情報に基づき、前記電源装置の蓄電手段を充電させる。
【0030】
この態様の電源管理システムでは、非常時に居住者からの電源装置の貸与依頼が通知されると予測できることから、情報配信手段から貸与依頼の可能性を予測するための情報を取得する。また、取得した情報から非常時の発生が予測される場合に、電源装置の蓄電手段を充電させる。これにより、非常時に電源装置の貸与が停滞してしまうのを抑制できて、電源装置を効果的に貸与できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の第1の態様によれば、地区内の居住者が所有する車両の蓄電手段に蓄積された電力によって電源装置の蓄電手段に充電しておき、蓄電手段が充電された電源装置を地区内に居住する居住者に貸与するので、蓄電手段に蓄積された電力を効果的に利用できる、という効果を有する。
【0032】
第2の態様によれば、商用電源を用いて電源装置の蓄電手段を充電する必要が無いので、充電のためのコストを抑制できる。
【0033】
第3の態様によれば、車両が所有された住宅に対して効率よく充電依頼を通知できる。また、第4の態様によれば、住宅から電源装置の貸与依頼を容易にできると共に、貸与依頼を通知した住宅の特定が容易になる。
【0034】
第5の態様によれば、車両の所有者に迅速に充電依頼を通知できる。車両が所有された住宅に対して効率よく充電依頼を通知できる。
【0035】
第6の態様によれば、居住者が住宅にいなくても迅速に電源装置の貸与依頼をできる。また、第7の態様によれば、電源装置の蓄電手段の蓄電能力の低下を抑えて、電源装置の蓄電手段の電力を効果的に利用できる。
【0036】
第8の態様によれば、電源装置から出力する電力をそのまま特定負荷に給電できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施形態に係る電源管理システムの概略構成図である。
図2】電源管理システムにおける充電設備の概略構成図である。
図3】電源管理システムの主要部を示す概略構成図である。
図4】電源管理システムを利用できる住宅の概略構成図である。
図5】(A)は充電処理の概略を示す流れ図、(B)は放電処理の概略を示す流れ図、(C)は(A)とは異なる充電処理の概略を示す流れ図である。
図6】電源装置の貸与処理の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る電源管理システム10では、複数の蓄電手段に電力を蓄積し、電力が蓄積された蓄電手段を予め登録している利用者のうちで希望する利用者に貸与する。電源管理システム10では、複数の蓄電手段の各々の充電状態の管理及び利用者への貸与を管理する。図1から図3の各々には、本実施形態に係る電源管理システム10の主要部が概略構成図にて示されており、図4には、電源管理システム10が利用される下記住宅14が概略図にて示されている。
【0039】
図1に示すように、電源管理システム10は、所定の地区12内に設置されている。地区12は、一つの町(町内)であってもよく、地区12は、複数の町が含まれてもよい。すなわち、地区12としては、一つの自治組織(例えば、町内会)単位、又は電源管理システム10の設置するために複数の組織単位を一つにした自治組織を適用できる。
【0040】
地区12には、各々に居住者が居住する複数の住宅14が建てられている。なお、本実施形態では、居住者が居住する建物として戸建ての住宅14を例に説明するが、住宅14には、集合住宅の住戸が含まれてもよい。
【0041】
地区12の居住者には、車両を所有する居住者が含まれており、車両を所有する居住者の住宅14には、駐車場(図示省略)が設置されている。車両には、電源管理システム10に利用可能な車両16が含まれている。電源管理システム10に利用可能な車両16は、HV(Hybrid Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、EV(Electric Vehicle)、FCV(Fuel Cell Vehicle)などが含まれる。これらの車両16は、走行用の駆動源としての電動機(モータ)、及び電力を蓄積する蓄電池(バッテリー)を備え、蓄電池に電力が蓄積された電力により電動機を回転駆動させて走行できる。
【0042】
また、車両16は、蓄電池に蓄積された電力を車外に出力可能は給電手段を備えている。車両16には、給電手段の一例として、商用電源と同様の電力を出力するための車両側の接続点とするアクセサリーコンセント(図示省略)の設置されている。車両16は、蓄電池に蓄積された直流電力を商用電源と同様の交流電力に変換し、アクセサリーコンセントから出力する。本実施形態では、一例として、車両16が単相100Vの電力(例えば、単相100V/15Aの電力)を出力する。なお、車両16は、単相200V、単相100V/200V、或いは、所定電圧の直流電力を出力してもよい。
【0043】
図1及び図4に示すように、住宅14の各々には、単相100V/200Vの商用電源18が引き込まれている。図4に示すように、住宅14内には、商用電源18に電気的に接続された分電盤20が設置されており、住宅14では、分電盤20から照明器具、家電製品が接続されるコンセント、各種の電気設備等(何れも図示省略)に配線が分岐されている。これにより、住宅14では、商用電源18の電力が照明器具、各種の家電製品及び電気設備に供給される。
【0044】
また、住宅14には、HEMS(Home Energy Management System)22が設置されている住宅14が含まれ、住宅14内の家電製品や電気設備がHEMS22に電気的に接続されている。また、住宅14のHEMSは、通信手段を備え、通信手段を介して各種のネットワークに接続可能とされている。これにより、住宅14では、HEMS20により電力を含むエネルギー管理が可能になっている。なお、住宅14には、太陽光発電装置などの自然エネルギーを利用した発電設備、エネファーム(登録商標)、エコキュート等の各種の電力供給設備(何れも図示省略)を備え、これらの電力利用をHEMS22が管理してもよい。また、HEMS22のエネルギー管理は、公知の構成を適用でき本実施形態は、詳細な説明を省略する。
【0045】
一方、住宅14には、車両16等から供給される電力を使用可能とする給電設備24が設置されている。給電設備24は、住宅14側の接続点としての給電コンセント26、給電用接続箱28及び切換器30を備える。給電コンセント26は、例えば、車両16の駐車場に隣接して設置されており、駐車された車両16のアクセサリーコンセントと給電ケーブル32によって接続される。なお、居住者が車両16を所有していない住宅14では、給電コンセント26が屋外から給電に用いられる。
【0046】
給電用接続箱28は、一次側が給電コンセント26に電気的に接続され、二次側が切換器30に電気的に接続されており、給電用接続箱28には、給電コンセント26を介して電力が供給される。給電用接続箱28には、絶縁トランス28A及び地絡検出器(例えば、地絡継電器GR:Ground Relay)28Bが設けられている。絶縁トランス28Aは、給電コンセント26側(車両16側:一次側)と切換器30側(二次側)とを絶縁することで、二次側(又は一次側)に生じた電気的支障が一次側(又は二次側)に波及するのを抑制する。地絡検出器28Bは、給電設備24は給電設備24の二次側等における地絡を検知し、地絡が検知されると一次側と二次側との電気的接続を遮断する(地絡保護)。
【0047】
住宅14には、特定回路34が設けられている。特定負荷34Aには、一つ又は複数の電気機器(照明器具やコンセントを含む)や電気設備が適用されており、特定負荷34Aには、無停電電源装置(図示省略)を備える電気機器や電気設備が含まされてもよい。特定負荷34Aには、商用電源18の停電時において電力供給を停止させたくない電気機器や電気設備が適用されている。特定負荷34Aは、停電時においても点灯させたい照明器具、停電時においても使用したい電気機器が接続されるコンセント、停電時においても使用したい電気設備が含まれる。このような特定負荷34Aには、在宅治療している居住者が使用する医療機器が含まれる。
【0048】
特定回路34では、分電盤20と特定負荷34Aとが配線34Bにより電気的に接続されており、特定負荷34Aは、配線34Bを介して商用電源18の電力が分電盤20から供給されている。給電設備24の切換器30は、配線34Bの中間部に配置されており、切換器30には、分電盤20、給電用接続箱28(地絡検出器28Bの二次側)、及び特定負荷34Aの各々が電気的に接続されている。切換器30は、操作されることで特定負荷34Aの接続先(電力の供給元)を分電盤20と給電設備24との間で切り換える。
【0049】
図1及び図2に示すように、電源管理システム10は、充電設備36を備えており、充電設備36は、地区12内において公共的な施設38に設置されている。充電設備36が設置される施設38としては、地区12内における集会所や図書館などの主に地区12内の居住者が利用する公共施設を適用できる。また、施設38としては、地区12内の病院を適用できる。さらに、施設38としては、複数の居住者により利用されていることで地区12内において公共的な施設とみなせるコンビニエンスストア等の店舗を適用できる。
【0050】
また、電源管理システム10は、地区12内において所定数の住宅14ごとに設定した複数の施設38の各々に充電設備36が設置されてもよい。本実施形態では、施設38として地区12の一箇所の集会所を適用し、充電設備36を集会所に設置している。
【0051】
図2に示すように、充電設備36には、給電部40、充電部42、蓄電部44、放電部46、及び制御部48が設けられている。給電部40には、一つ又は複数の給電コンセント26が設けられていると共に、給電コンセント26ごとに給電用接続箱28が設けられており、給電コンセント26が給電用接続箱28を介して充電部42に電気的に接続されている。
【0052】
給電部40では、施設38の所定の駐車位置に駐車された車両16が給電コンセント26に給電ケーブル32を介して電気的に接続されることで車両16の電力(交流電力)が充電部42に給電される。なお、給電コンセント26に接続される車両16は、ステアリングロックなどの車両16の移動を禁止する禁止機構が作動される。また、施設38では、給電のために駐車される車両16が前輪と後輪との間においてロック板が傾動上昇するセンターロック式やロック板が昇降する昇降式などのロック機構などによって移動が規制される。
【0053】
充電部42は、交流電力を所定電圧の直流電力に変換するコンバータ(図示省略)等を備え、給電部40から給電された電力を直流電力に変換して蓄電部44に出力する。蓄電部44には、可搬式の電源装置50が複数設置されている。
【0054】
電源装置50の各々には、蓄電手段としての蓄電池(バッテリー)52、及び電力変換手段としての電力変換器54を備えている。電源装置50の各々は、蓄電池52が給電部40に電気的に接続されており、給電部40から給電される直流電力によって蓄電池52が充電される。また、電源装置50の電力変換器54は、蓄電池52に蓄積された直流電力を商用電源18と同様(同様の電圧及び周波数)の交流電力に変換して出力する。
【0055】
電源装置50は、例えば、単相100V/15Aの交流電力を所定時間連続出力可能となるように蓄電池52の蓄積容量となっている。なお、複数の電源装置50は、各々の蓄電池52の蓄積容量が同様であってもよく、複数の電源装置50には、蓄電池52の蓄積容量が異なる(他よりも蓄積容量が大きい)蓄電池52を備えた電源装置50が含まれてもよい。
【0056】
充電設備36では、蓄電部44に配置された電源装置50の蓄電池52の電力により動作する。これにより、充電設備36は、施設38に供給される商用電源18の電力を用いずに動作でき、商用電源18の停電時にも動作できる。
【0057】
また、施設38には、各住宅14に電源装置50を搬送できる図示しない車両が配置されている。この車両としては、蓄電池の電力によって走行可能な車両であることが好ましい。充電設備36では、住宅に14に貸与する電源装置50をこの車両によって搬送できる。
【0058】
施設38には、商用電源18から電力が供給される配電盤56が設置されており、配電盤56には、例えば、単相100V/200Vの電力(電灯電力)、又は電灯電力と三相200Vの電力(動力電力)が供給される。施設38では。配電盤56から施設38内の照明器具、コンセント、及び電気設備等の電気負荷58に電力が供給される。なお、電気負荷58への電力供給は、電気負荷58の各々に対応される図示しない分電盤等を介して行われる。
【0059】
蓄電部44に設置された電源装置50の各々は、蓄電池52が放電部46に電気的に接続されており、放電部46には、直流電力を交流電力に変換する図示しないインバータが設けられている。また、放電部46は、施設38の配電盤56に電気的に接続されている。放電部46は、複数の電源装置50から選択した一つ又は複数の電源装置50の電力(直流電力)を商用電源18に連系させた交流電力(例えば、単相100V/200Vの電力)に変換して配電盤56に出力する。この際、放電部46では、出力する交流電力の電圧、周波数及び位相の各々を商用電源18に合せる系統連系を行うことで、電源装置50の電力を施設38内の電気負荷58に供給できるようにしている。
【0060】
充電設備36の制御部48は、給電部40、充電部42及び放電部46の各々の動作を制御すると共に、複数の電源装置50の各々の貸し出し(貸与)を管理する。この制御部48には、コントローラ60が含まれている。コントローラ60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージ、通信インタフェース、表示部及び操作部の構成を有し、各構成がバスを介して相互に通信可能に接続されたマイクロコンピュータ(図示省略)を備えている。
【0061】
ROMは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データが格納される。
【0062】
通信インタフェースは、給電部40、充電部42、蓄電部44、放電部46、及び施設38の配電盤56の各々に設置されている各機器との間、充電設備36の外部との間で信号の授受を行うためのインタフェースである。操作部は、各種の入力を行うために使用され、マウス等のポインティングデバイス及びキーボードを含んでもよい。表示部は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部は、タッチパネル方式を採用して、操作部として機能しても良い。
【0063】
コントローラ60では、ROM又はストレージに電源装置50の充放電制御のための充放電制御プログラム、及び電源装置50の貸与管理のための管理プログラムが格納されており、CPUがROM又はストレージから充放電制御プログラム及び管理プログラムを読み出し、RAMを作業領域として実行する。
【0064】
これにより、コントローラ60には、充電制御部62、放電制御部64、蓄電池管理部66、貸与管理部68、通信部70、受付部72、情報取得部74、表示/操作部76及び記憶部78の各々の機能が実現される。この際、通信部70は、通信インタフェースにより実現され、表示/操作部76は、操作部及び表示部により実現され、記憶部78は、ストレージにより実現される。
【0065】
充電制御部62は、充電部42を制御することで、給電部40の給電制御及び蓄電部44における電源装置50の充電制御を行う。放電制御部64は、放電部46を制御することで、電源装置50の放電制御、及び配電盤56への給電制御を行う。この際、コントローラ60では、配電盤56に供給される商用電源18の電圧、周波数及び位相に応じて放電部46のインバータを制御することで系統連系を図る。
【0066】
また、蓄電池管理部66は、各電源装置50の蓄電池52の充電状態に応じて充電制御部62及び放電制御部64の作動を制御することで、各電源装置50の蓄電池52を最適な充電状態に維持する。
【0067】
電源管理システム10が設置される地区12では、電源管理ネットワーク80が形成されている。電源管理ネットワーク80には、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)や公衆通信回線網などが用いられ、コントローラ60は、通信部70を介して電源管理ネットワーク80に接続されている。また、電源管理ネットワーク80には、地区12内の各住宅14に設置されているHEMS22や、各住宅14の居住者が使用しているスマートフォンなどの携帯端末82が接続される。さらに、電源管理ネットワーク80には、災害情報、災害予測情報、気象情報等の地区12に関連する各種の情報が配信可能な情報配信手段としての情報サーバ84が接続されている。
【0068】
情報取得部74は、通信部70を介して情報サーバ84に接続して地区12に関連する各種の情報を取得する。蓄電池管理部66は、情報サーバ84から取得した情報に基づいて、電源装置50を充電完了状態で居住者に貸与できるように電源装置50の充放電を制御する。
【0069】
一方、記憶部78には、住宅14の登録情報86A、電源装置50の貸与依頼(貸与要求)の受け付けに関する受付情報86B、及び電源装置50の貸与に関する貸与情報86Cが記憶される。
【0070】
電源管理システム10では、住宅14単位で居住者及び居住者の所有する車両16が登録されて、登録情報86Aとして記憶部78に格納されている。電源管理システム10の登録は、住宅14ごとに識別子(ID)が設定されてもよく、住宅14における筆頭の居住者ごとに識別子が設定されていてもよい。電源管理システム10では、一例として、地区12内の住宅14ごとに識別子が付与される。
【0071】
電源管理システム10では、識別子に関連付けられて、住宅14の居住者を特定する情報、住宅14の車両16(車両16の有無を含む)を特定する情報が登録されている。また、電源管理システム10では、住宅14に設置されているHEMS22を特定する情報、住宅14の居住者の携帯端末82を特定する情報が登録されている。また、電源管理システム10では、住宅14における特定回路34に接続される特定負荷34Aに関する情報が登録されており、例えば、特定負荷34Aに医療機器が含まれているか否かが登録されている。コントローラ60の記憶部78には、これらの情報が登録情報86Aとして記憶部78に格納されている。
【0072】
蓄電池管理部66では、電源装置50の蓄電池52への充電が必要と判断されると、登録情報に基づいて車両16が登録されている何れかの住宅14(又は居住者)を選択し、選択した住宅14のHEMS22や居住者の携帯端末82に対して車両16を用いた充電依頼を行う。
【0073】
また、コントローラ60の受付部72は、HEMS22や携帯端末82を介して通知される電源装置50の貸与依頼を受け付ける。貸与管理部68は、受付部72が受け付けた貸与依頼を受付情報86Bとして記憶部78に格納する。また、貸与管理部68は、電源装置50を居住者に貸与すると、貸与に関する情報を貸与情報86Cとして記憶部78に格納する。
【0074】
このように構成されている電源管理システム10では、地区12の各住宅14が予め登録されている。登録情報86Aは、各住宅14に設定された識別子に関連付けられており、登録情報86Aには、住宅14を特定する情報、住宅14の居住者、住宅14の居住者の車両16の所有状況、住宅14のHEMS22を特定する情報、住宅14の居住者が使用する携帯端末82に関する情報等が含まれる。また、登録情報86Aには、住宅14の特定負荷34Aに関する情報が含まれ、特に特定負荷34Aに医療機器があるか否かの情報が含まれる。
【0075】
電源管理システム10では、施設38に設置された充電設備36に複数の電源装置50が配置されており、電源管理システム10では、電源装置50を地区12の居住者(住宅)に貸与することで、住宅14において、特定回路34の特定負荷34Aを商用電源18の電力に変えて電源装置50の電力によって動作可能にできる。
【0076】
電源管理システム10では、地区12の居住者の協力によって複数の電源装置50の蓄電池52を充電状態とし、居住者からの貸与依頼を受けて電源装置50を貸与する。この際、充電設備36では、コントローラ60が電源装置50の各々蓄電池52の充電制御と共に、放電制御を実行する。これにより、充電設備36では、蓄電池52が自然放電を繰り返すことによる蓄電能力の低下を抑制している。図5(A)には、充電処理の概略が流れ図にて示され、図5(B)には、放電処理の概略が流れ図にて示されている。また、図5(C)には、情報サーバ84から取得する情報に基づいた充電処理の概略が流れ図にて示されている。
【0077】
図5(A)に示すように、コントローラ60は、ステップ100において蓄電池52への充電が必要な電源装置50があるか否かを確認する。コントローラ60では、蓄電部44の電源装置50の各々についで蓄電池52の充電量を検知しており、蓄電池52の充電量が低下した電源装置50を検知すると、コントローラ60は、ステップ100において肯定判定してステップ102へ移行する。
【0078】
このステップ102において、コントローラ60は、車両16を所有する地区12内の居住者(住宅14)に対して、予め設定されている順序で蓄電池52の充電のための給電依頼を通知する。給電依頼の通知は、車両16を所有している居住者の携帯端末82又は、居住者の住宅14のHEMS22に通知される。この通知に基づいて居住者は、車両16を施設38に移動し、車両16を給電ケーブル32によって給電コンセント26に接続する。これにより、車両16の電力が充電部42に給電される。
【0079】
コントローラ60は、車両16の電力が給電部40に給電されると、ステップ104において充電部42を制御して、車両16から給電された電力を所定電圧の直流電力に変換し、充電が必要は電源装置50の蓄電池52に供給して蓄電池52を充電する。なお、コントローラ60では、必要な充電量に応じた台数の車両16に対して充電依頼を通知する。また、給電依頼の通知に対して、車両16が使用中で施設38に移動できない、移動に時間を要する、充電量が不足しているなどの場合がある。これらの場合、給電依頼を付けた居住者は、HEMS22又は携帯端末82から給電依頼に応答できない旨を通知する。これにより、コントローラ60は、新たな(別の)車両16(車両16を所有する居住者)に対して給電依頼を通知する。
【0080】
ここで、電源管理システム10では、蓄電池52への充電に協力した車両16(車両16の所有者)に対して、地区12内におけるインセンティブを付与するようにしている。具体的には、コントローラ60は、ステップ106において、給電した車両16に関して居住者(住宅14)にインセンティブ(貢献ポイント)を付与する。付与した貢献ポイントは、登録情報86Aとして記憶部78に格納される。
【0081】
なお、電源管理システム10では、車両16の電力によって蓄電池52を充電するが、例えば、施設38に太陽光発電装置などの自然エネルギーを利用した発電設備が設置されている場合、この発電設備の電力により電源装置50の蓄電池52が充電されてもよい。
【0082】
一方、図5(B)のフローチャートは、コントローラ60が予め設定した時間間隔、又は定期的に実行し、最初のステップ110においてコントローラ60は、放電すべきタイミングとなった電源装置50の蓄電池52があるか否かを確認する。これにより、例えば、充電が終了してから所定時間が経過し、蓄電池52の電力を放電すべき予め設定したタイミングに達した電源装置50があると、コントローラ60は、ステップ110において肯定判定してステップ112に移行する。なお、蓄電池52の電力を放電すべき条件は、蓄電池52の蓄電能力を長期に渡って高い能力(適切な蓄電能力)に維持するための各種の条件を適用できる。
【0083】
ステップ112においてコントローラ60は、対象の電源装置50の蓄電池52の電力を放電部46に出力させる。また、コントローラ60は、放電部46のインバータの出力電力が配電盤56に供給される商用電源18に応じた電圧、周波数及び位相となるように制御する。
【0084】
これにより、放電部46から出力される電力が商用電源18の電力に重畳されて電気負荷58により消費される。また、コントローラ60は、対象の電源装置50の蓄電池52の蓄電容量が予め設定された容量まで低下すると、ステップ114において肯定判定してステップ116に移行し、ステップ116において電源装置50からの放電を停止して放電処理を終了する。
【0085】
充電設備36では、車両16から給電された電力を電源装置50の蓄電池52に充電している。このため、施設38では、電源装置50の蓄電池52の電力が電気負荷に供給されることで、商用電源18の電力消費を抑制でき、維持費が抑制される。
【0086】
また、充電設備36では、電源装置50の蓄電池52の電力を自然放電させるのではなく、施設38の電気負荷58で消費させる。このため、蓄電池52では、蓄積された電力が自然放電される場合に比して、蓄電能力の低下が抑制されるので、電源装置50は、長期に渡って最適な使用可能状態に維持される。しかも、充電設備36では、蓄電池52に充電された電力を有効に利用できる。
【0087】
一方、図5(C)のフローチャートは、所定の時間間隔、又は定期的(予め設定した時刻)に実行され、最初のステップ120においてコントローラ60は、情報サーバ84から地区12に関連し、かつ電源装置50の貸与依頼に影響する情報を取得する。出憶する情報は、地区12に関連し、かつ電源装置50の貸与依頼に影響する情報を含み、例えば、地区12の天候、注意報や警報などの気象情報が含まれる。
【0088】
次のステップ122において、コントローラ60は、取得した情報(主として気象情報)に基づいて電源装置50の貸与依頼が予測されるか(例えば、商用電源18の停電等の非常時等に至ることが予測されるか)否かを確認する。この際、地区12を含む地域に商用電源18の停電等を予測される場合、コントローラ60は、ステップ122において肯定判定して、ステップ124に移行する。
【0089】
ステップ124において、コントローラ60は、電源装置50の蓄電池52の放電を停止させる。次のステップ126では、コントローラ60は、複数の電源装置50の各々の蓄電池52を充電する。
【0090】
この際、コントローラ60は、例えば、電源装置50ごとの蓄電池52の充電状態から、各電源装置50の蓄電池52の充電を完了するために必要な電力量を算出し、算出した電力量を所定時間内(非常時が発生すると予測される時間)に充電を完了するための充電計画を設定する。
【0091】
この充電計画では、車両16の電力からの給電で間に合うか否かを含めて立案し、必要な台数の車両16を確保するように給電依頼と通知する。この際、コントローラ60は、給電依頼に緊急充電が必要となっている旨を明示して、給電依頼を通知する。この後、充電設備36では、通知した給電依頼に対応して施設38に参集した車両16を用いて電源装置50の蓄電池52への充電が行われる。
【0092】
また、車両16から給電のみでは、電源装置50の蓄電池52への充電が終了しないと判断される場合、商用電源18の電力が用いられてもよい。この場合、コントローラ60は、施設38に供給されている商用電源18の電力が充電部42へ供給されるように制御し、商用電源18の電力を用いた電源装置50の蓄電池52への充電を行う。
【0093】
これにより、電源管理システム10では、商用電源18の停電に先立って、各電源装置50の蓄電池52を充電状態にできる。なお、コントローラ60は、予め設定したタイミングで情報サーバ84から新たな情報を取得し、非常時が回避されるか終了すると、通常の充電処理及び放電処理を開始する。
【0094】
一方、電源管理システム10では、居住者からの電源装置50の貸与依頼を受け付けて、受け付けた貸与依頼に応じて電源装置50の貸与(貸し出し)を行う。図6には、貸与処理の概略が流れ図にて示されている。
【0095】
図6のフローチャートの最初のステップ130において、コントローラ60は、居住者からの電源装置50の貸与依頼を受信したか否かを確認する。コントローラ60は、居住者から通知された貸与依頼を受信すると、ステップ130において肯定判定してステップ132に移行し、ステップ132において貸与依頼を受け付ける。
【0096】
貸与依頼は、居住者が自宅(住宅14)においてHEMS22から通知したものであってもよい。また、貸与依頼は、例えば、居住者が外出中のために携帯端末82から通知したものであってもよい。
【0097】
コントローラ60は、次のステップ134において、電源装置50の貸与可能数(蓄電池52の充電が終了し、かつ貸与可能となっている電源装置50の数)を確認し、ステップ136において貸与可能か否かを判断する。コントローラ60は、貸与可能な電源装置50がある(残っている)とステップ136において肯定判定してステップ138に移行する。なお、貸与可能な電源装置50が残っていない場合、コントローラ60は、ステップ136において否定判定してステップ140に移行し、受け付けた貸与依頼を通知した居住者に、電源装置50が残っていいないために貸与不能となっていることを通知する。
【0098】
コントローラ60では、ステップ138において複数の貸与依頼を受け付けいるか否かを確認し、受け付けた貸与依頼が一つであればステップ138において否定判定してステップ142に移行する。ステップ142において、コントローラ60は、貸与依頼を通知した居住者の住宅14のHEMS22又は居住者の携帯端末82に電源装置50の貸与許可を通知する。
【0099】
また、複数の貸与依頼を受け付けている場合、コントローラ60は、ステップ138において肯定判定してステップ144に移行し、ステップ144において、貸与依頼の通知を受け付けた居住者全員に電源装置50を貸与可能な否かを確認する。このとき、受け付けた貸与依頼の数よりも電源装置50の残数が多ければ(同数を含んでもよい)、コントローラ60は、ステップ144において肯定判定して、ステップ142に移行し、各居住者に貸与許可を通知する。
【0100】
これに対して、受け付けた貸与依頼の数よりも電源装置50の残数が少ないと、コントローラ60は、ステップ144において否定判定して、ステップ146に移行する。ステップ146において、コントローラ60は、登録情報86Aに基づいて貸与依頼を通知した居住者の間に優先順位を設定する。
【0101】
電源装置50の貸与の優先順位は、特定負荷34Aに医療機器が含まれる住宅14の居住者が最上位に設定される。これにより、商用電源18の停電によって医療機器が停止してしまうのを抑制できる。
【0102】
電源装置50の貸与の優先順位は、貢献ポイントが付与されている居住者の順位が貢献ポイントの付与されていない居住者よりも上位に設定される。また、貢献ポイントが付与されている居住者の間では、貢献ポイントの多い居住者の順位が貢献ポイントの少ない居住者の順位よりも上位に設定される。
【0103】
この後、コントローラ60は、ステップ148において、優先順位の上位から順に電源装置50の貸与可能な数の居住者について貸与許可を通知する。また、ステップ150において、コントローラ60は、電源装置50が残っていいないために貸与不能となっていることを通知する。
【0104】
このようにして居住者からの貸与依頼に応じて処理を行うと、コントローラ60は、各住宅14のHEMS22や居住者の携帯端末82において、電源装置50の貸与状況を確認可能にして、貸与処理を終了する。
【0105】
一方、貸与許可の通知を受けた居住者は、施設38から電源装置50を自身の住宅14に搬送する。また、施設38には、電源装置50を搬送するための車両が配置されており、許可通知を受けた居住者は、自身で電源装置50を搬送できない場合、この車両を用いて搬送してもよく、搬送を依頼することもできる。
【0106】
貸与許可を受けた居住者は、自身の住宅14に搬送した電源装置50を給電コンセント26に接続すると共に、切換器30を操作することで、商用電源18が停電しても住宅14の特定回路34に電力を供給して特定負荷34Aを動作させることができる。
【0107】
このように、電源管理システム10では、地区12の居住者が協力して電源装置50の蓄電池52に充電し、蓄電池52が充電された電源装置50を地区12内で貸与する。この際、電源装置50の蓄電池52の充電には、居住者の所有する車両16の電力が用いられる。これにより、電源管理システム10では、車両16の蓄電池や電源装置50の蓄電池52などに蓄積された電力を効果的に利用できる。
【0108】
また、電源管理システム10では、地区12内の車両16の電力を電源装置50の蓄電池52に給電するので、商用電源18を用いる場合に比して充電のためのコストを抑制できる。
【0109】
また、電源管理システム10では、住宅14に設置されているHEMS22により貸与依頼を通知できると共に、給電依頼や貸与許可をHEMS22に通知するので、車両16が所有された住宅14に対して効率よく各種の通知を効率よくできる。また、電源管理システム10では、居住者の携帯端末82により貸与依頼を通知できると共に、給電依頼や充電許可を携帯端末82に通知するので、住宅14の居住者に対して効率よく、各迅速に各種の通知を行うことができる。
【0110】
さらに、電源管理システム10では、電源装置50の蓄電池52の自然放電に代えて、放電する電力を施設38の電気負荷58に供給するので電源装置50の蓄電池52の蓄電能力の低下を抑えながら電源装置50の蓄電池52の電力を効果的に利用できる。
【0111】
また、電源管理システム10では、電源装置50が電力変換器54を備えるので、電源装置50から出力する電力をそのまま特定負荷34Aに給電できる。また、電源管理システム10では、特定負荷34Aとして医療機器が設置された住宅14に対して優先的に電源装置50を貸与できるので、商用電源18の停電により医療機器の動作が停止してしまうのを防止できる。
【0112】
さらに、電源管理システム10では、電源装置50の蓄電池52に給電した車両16の居住者(住宅14)に貢献ポイントを付与し、電源装置50の貸与の際の優先順位が上がるので、居住者の貢献度に合った貸与が可能になると共に、居住者の貢献を促すことができる。また、電源管理システム10では、情報サーバ84から取得した情報に応じて、電源装置50の蓄電池52の充電を促進するので、非常時に電源装置50の貸与が停滞してしまうのを抑制できる。
【0113】
なお、以上説明した本実施形態では、車両16の給電回数に応じて貢献ポイントを付与した。しかしながら、インセンティブは、車両が給電した電力量に応じて付与してもよく、これにより、車両の所有者の電源管理システムへの貢献度をより的確に反映させることができる。
【0114】
また、本実施形態では、貢献ポイントに応じて電源装置50を貸与する際の優先順位に反映するようにした。しかしながら、インセンティブは、他の方法で反映させてもよい。例えば、電源管理システムの設置や維持には費用が掛かり、この費用を居住者が分割して負担するようにした際、インセンティブに応じて居住者の負担する費用が軽減されるように反映させてもよく、また、地区において生じる費用(例えば、町内会費、電源管理システムを設置している施設の利用料等)がインセンティブによって軽減されるようにしてもよい。これにより、電源管理システムが地区の居住者の各々の協力によって継続的に維持可能になる。
【符号の説明】
【0115】
10 電源管理システム
12 地区
14 住宅
16 車両
18 商用電源
22 HEMS
24 給電設備
26 給電コンセント
34 特定回路
34A 特定負荷
36 充電設備
38 施設
40 給電部(充電手段)
42 充電部(充電手段)
46 放電部(放電手段)
50 電源装置
52 蓄電池(蓄電手段)
54 電力変換器(電力変換手段)
60 コントローラ(電源管理手段)
80 電源管理ネットワーク
82 携帯端末
84 情報サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6