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特許7604215画像処理装置、画像処理方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241216BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20241216BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H04N1/00 002A
B41J29/393 105
B41J29/38 301
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020207881
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094794
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】石井 正俊
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03G 15/00
G06T 1/00
B41J 29/38-29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物における印刷位置のずれを検出するための条件を設定する設定手段と、
前記印刷物を読み取って得られる検査対象画像と前記条件とに基づき、前記印刷物を検査する検査手段と
を有し、
前記条件は上限及び下限により決まる範囲内で設定され、
印刷媒体を読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が大きい場合における前記条件の設定可能な範囲は、前記読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が小さい場合に比べて、上限が等しく下限が大きいことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検査手段は、前記検査対象画像と参照画像とを比較することで検査を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が大きい場合、予め定められた範囲を変更することで前記設定可能な範囲を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定可能な範囲は、前記印刷位置のずれのレベルで表されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が大きい場合に、前記読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が小さい場合に比べて、前記レベルに対応する印刷位置ずれの大きさがより大きくなるように前記設定可能な範囲を設定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記設定手段は、最も小さな位置ずれを検査可能な検査レベルに設定された印刷位置ずれの大きさが、前記検出可能な最小の位置ずれ量となるように前記設定可能な範囲を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記印刷物の縦横独立に前記条件を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記印刷物の搬送位置ずれ量を取得する搬送位置ずれ量取得手段をさらに備え、
前記設定手段は、前記読み取り可能な幅、前記印刷物の幅、および、前記搬送位置ずれ量に基づいて、前記条件を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載された画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
印刷物における印刷位置のずれを検出するための条件を設定する設定工程と、
前記印刷物を読み取って得られる検査対象画像と前記条件とに基づき、前記印刷物を検査する検査工程と
を有し、
前記条件は上限及び下限により決まる範囲内で設定され、
印刷媒体を読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が大きい場合における前記条件の設定可能な範囲は、前記読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が小さい場合に比べて、上限が等しく下限が大きいことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物を検査する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷出力後の検査において、画像読取装置により検査対象画像データを取得する際に、印刷物の用紙の一部が画像読取装置の最大読み取り幅を超えてしまい、読み取れない用紙領域が発生する場合がある。このような場合には、読み取れなかった用紙領域を推定処理するため、良品であるリファレンス画像データと検査対象画像データとの比較において、推定処理に起因する誤差が発生し、印刷欠陥を誤検出してしまう可能性がある。
【0003】
特許文献1には、はみ出した部分を非検査領域に設定することで、検査対象から除外しつつ検査を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-310726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、はみ出した部分に対する検査設定の変更は可能であるが、印刷位置ずれのように紙面全体に対する検査設定の変更を行うわけではないため、はみ出した場合の印刷位置ずれの検査を適切に行うことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、印刷物における印刷位置のずれを検出するための条件を設定する設定手段と、前記印刷物を読み取って得られる検査対象画像と前記条件とに基づき、前記印刷物を検査する検査手段とを有し、前記条件は上限及び下限により決まる範囲内で設定され、印刷媒体を読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が大きい場合における前記条件の設定可能な範囲は、前記読み取り可能な幅より前記印刷物の幅が小さい場合に比べて、上限が等しく下限が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
印刷媒体を読み取り可能な幅より印刷媒体の幅が大きい場合にも、印刷位置ずれの検査を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像処理装置を含む印刷システム全体の構成図。
図2】画像処理装置の構成を示すブロック図。
図3】検査処理の流れを示すフローチャート。
図4】実施例1における検査パラメータ設定範囲制御処理のフローチャート。
図5】実施例1における検査設定画面の例を示す図。
図6】実施例1における検査設定画面の例を示す図。
図7】実施例1における検査設定画面の例を示す図。
図8】検査レベルと印刷位置ずれ量との関係を示す図。
図9】実施例2における検査パラメータ設定範囲制御処理のフローチャート。
図10】実施例2における検査設定画面の例を示す図。
図11】最大画像読み取り幅と用紙の幅との関係を示す図。
図12】用紙が画像読取装置の最大読み取り幅を超えない場合の検査対象画像とリファレンス画像の例を示す図。
図13】リファレンス画像と検査対象画像の位置合わせを行ったあとの状態を示す図。
図14】用紙が画像読取装置の最大読み取り幅を超える場合の検査対象画像とリファレンス画像の例を示す図。
図15】実施例3における検査パラメータ設定範囲制御部の詳細構成を示すブロック図。
図16】実施例3における検査パラメータ設定範囲制御処理のフローチャート。
図17】最大搬送位置ずれ量を説明する図。
図18】縦横独立に印刷位置ずれに対応するパラメータを設定する検査設定画面の例を示す図。
図19】用紙の斜行を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成については、同じ符号を付して説明し、重複した説明は省略する。また、フローチャートにおける各工程(ステップ)についてはSで始まる符号を用いて示す。
【実施例1】
【0010】
実施例1では、印刷媒体サイズ(例えば用紙サイズ)が画像読取装置の最大読み取り幅を超えてはみ出す場合においても、適切に印刷位置ずれの検査を行うための処理について説明する。具体的には、検査可能な最小位置ずれ量に応じて設定可能な印刷位置ずれ検査の検査パラメータの設定可能な範囲を変更する処理について説明する。
【0011】
図1は、本実施例における画像処理装置100を含む、印刷物の出力と検査を行う印刷システム全体の構成例である。本実施例の印刷システムは、画像処理装置100と、印刷用サーバ180、印刷装置190を有する。なお、本実施例では、画像処理装置100と印刷装置190とを別体として説明するが、印刷装置190の中に画像処理装置100が備えられてもよい。
【0012】
印刷用サーバ180は、印刷する原稿の印刷ジョブを生成し、印刷装置190へ印刷ジョブを投入する機能を有する。
【0013】
印刷装置190は、印刷用サーバ180から投入された印刷ジョブに基づき、印刷媒体上(印刷用紙上)に画像を形成する。印刷装置190は、オフセット印刷方式や、電子写真方式やインクジェット方式等の装置を用いることができる。本実施例では電子写真方式の印刷装置であるとする。印刷装置190は給紙部191を有しており、ユーザはあらかじめ印刷用紙を給紙部191にセットしておく。印刷装置190は印刷ジョブが投入されたら、給紙部191にセットされた印刷用紙を搬送路192に沿って搬送しながら、その表面または両面に画像を形成し、画像処理装置100へと送る。
【0014】
画像処理装置100は、印刷装置190が画像を形成し、搬送路192を通じて送ってきた紙、すなわち印刷物に対し、印刷欠陥の有無を調べる検査処理を行う。すなわち画像処理装置100は検査処理装置として機能する。画像処理装置100は、内部にCPU101、RAM102、ROM103、主記憶装置104、画像読取装置105、印刷装置とのインターフェース(I/F)106、汎用インターフェース(I/F)107、ユーザインターフェース(UI)パネル108、メインバス109を有する。また、画像処理装置100は、例えばネットワークを介して接続された複数の処理装置によって構成されていてもよい。さらに、印刷装置190の搬送路192と接続された印刷物の搬送路110、検査合格した印刷成果物の出力トレー111と、印刷欠陥が発見され検査不合格だった印刷物の出力トレー112を有する。なお、印刷物の分類はこの合格、不合格の2種類だけでなく、さらに細かく分類する構成であってもよい。
【0015】
CPU101は画像処理装置100内の各部を統括的に制御するプロセッサである。RAM102は、CPU101の主メモリ、ワークエリア等として機能する。ROM103は、CPU101によって実行されるプログラム群を格納している。主記憶装置104は、CPU101によって実行されるアプリケーションや、画像処理に用いられるデータ等を記憶する。
【0016】
画像読取装置(スキャナ)105は、印刷装置から送られてきた印刷物の片面または両面を、搬送路110上で読み取り、画像データとして取得することができる。印刷装置I/F106は印刷装置190と接続されており、印刷装置190と印刷物の処理タイミングの同期を取ったり、互いの稼働状況を連絡し合ったりすることができる。汎用I/F107はUSBやIEEE1394等のシリアルバスインターフェースであり、ユーザがログ等のデータを持ち出したり、何らかのデータを画像処理装置100に取り込んだりすることができる。
【0017】
UIパネル108は、例えば液晶ディスプレイであり、画像処理装置100のユーザインターフェースとして機能し、現在の状況や設定を表示しユーザに伝える。また、タッチパネルかボタンを備えることによって、ユーザからの指示を受け付ける。メインバス109は画像処理装置100の各部分を接続している。このほか図1からは省略するが、CPU101からの指示によって画像処理装置100や印刷システムの内部各所を動作させることができる。例えば、搬送路を同期して動かしたり、検査結果に応じて印刷物を合格の出力トレー111か不合格の出力トレー112のどちらに送るかを切り替えたりすることができる。また、CPUの他にGPUを備えていてもよい。
【0018】
全体として画像処理装置100は、印刷装置190から送られた印刷物を搬送路110で搬送しつつ、画像読取装置105で読み取った印刷物の画像データに基づき、以下に説明する検査処理を行う。検査処理の結果、印刷物が検査合格であれば合格の出力トレー111まで搬送され、そうでなければ不合格の出力トレー112に搬送される。こうして品質の確認されたものだけを納品用の成果物として出力トレー111に集めることができる。
【0019】
上記のようなシステム構成のうち、図2に検査処理に係る画像処理装置100の処理ブロックごとの構成を示す。画像処理装置100は、検査画像取得部201、リファレンス画像取得部202、検査パラメータ設定範囲制御部203、検査設定部204、検査処理部205、結果出力部206を有する。
【0020】
検査画像取得部201は、印刷装置190からの印刷物を搬送路110上で画像読取装置105により読み取り、検査対象画像データ(以降、検査画像データや検査対象データなどとも呼ぶ)として取得する。取得した画像データはRAM102あるいは主記憶装置104に保持する。
【0021】
リファレンス画像取得部202は、あらかじめ生成しておいたリファレンス画像データ(参照画像データとも呼ぶ)を主記憶装置104からRAM102に読み出すことで取得する。または、印刷装置190から印刷物の出力と同期して送路110上の印刷物の画像データとして取得してもよい。
【0022】
検査パラメータ設定範囲制御部203は、画像読取装置105の最大読み取り幅と印刷用紙の用紙サイズに基づいて、設定可能な印刷位置ずれの検査パラメータを制御し、これをUIパネル108の表示に反映する。検査設定部204は、UIパネル108を介して取得したユーザからの指示などに基づき、検査に関わる各種設定を行う。検査処理部205は、検査画像データをリファレンス画像データと比較することで検査を行う。結果出力部206は、検査結果をUIパネル108に表示し、印刷物を合格の出力トレー111か不合格の出力トレー112のどちらに送るかを切り替える。
【0023】
次に、検査パラメータ設定範囲制御部203の詳細構成について説明する。検査パラメータ設定範囲制御部203は、最大読み取り幅取得部2031、用紙サイズ取得部2032、検出可能最小位置ずれ量決定部2033、サイズ判定部2034、検査パラメータ設定範囲変更部2035を有する。
【0024】
最大読み取り幅取得部2031は、画像読取装置105の最大読み取り幅を取得する。用紙サイズ取得部2032は、印刷用紙の用紙サイズとして用紙の幅と高さを取得する。以降、用紙サイズとして用紙の幅のみを指す場合もある。検出可能最小位置ずれ量決定部2033は、最大読み取り幅と用紙サイズに基づいて検出可能な最小位置ずれ量を決定する。サイズ判定部は、最大読み取り幅と用紙サイズを比較して用紙サイズが画像読取装置105の最大読み取り幅からはみ出すか否かを判定する。検査パラメータ設定範囲変更部2035は、上記のサイズ判定結果に基づいて設定可能な印刷位置ずれの検査パラメータを変更し、これをUIパネル108の表示に反映する。
【0025】
図3は本実施例の画像処理装置100が行う検査処理のフローチャートである。
【0026】
S301では、検査パラメータ設定範囲制御部203が、画像読取装置105の最大読み取り幅と印刷用紙の用紙サイズに基づいて、設定可能な印刷位置ずれ検査パラメータの制御処理を行う。処理の詳細は後述する。
【0027】
S302では、リファレンス画像取得部202が、印刷位置ずれなどの印刷欠陥がない印刷物をあらかじめ読み取ることで生成しておいたリファレンス画像データを主記憶装置104からRAM102に読み出すことでリファレンス画像データを取得する。あるいは、印刷装置190から印刷物の出力と同期して送路110上の印刷物の画像データとして取得し、これをリファレンス画像データとしてもよい。ただし、この印刷物に印刷位置ずれなどの印刷欠陥がないことが確認されている必要がある。
【0028】
S303では、検査設定部204が、UIパネル108を介して取得したユーザからの指示などに基づき、検査設定を行う。各設定値は、RAM102あるいは主記憶装置104に保持される。本実施例では、検査設定として印刷位置ずれを検出するための閾値である印刷位置ずれ検査パラメータの設定を行うものとするが、例えば、汚れなどの印刷欠陥に対応する検査パラメータなどの設定が加えてなされていてもよい。図5図6図7にUIパネルにおける検査設定画面の例を示す。図5に示す例では、ユーザは、エディットボックス501に数値を入力することで印刷位置ずれの検査パラメータを設定する。図6に示す例では、ユーザは、プルダウンメニュー601、プルダウンメニュー602から所望の設定値を選択することで印刷位置ずれの検査パラメータを設定する。また、図7に示す例では、ユーザは、プルダウンメニュー701から所望の設定レベルを選択することで印刷位置ずれの検査パラメータを設定する。各レベルには、図8に示すような印刷位置ずれ量があらかじめ設定されている。
【0029】
S304では、検査画像取得部201が、印刷装置190で印刷された印刷物を画像読取装置105で読み取り、検査対象画像データとして取得する。取得した検査対象画像データは、RAM102あるいは主記憶装置104に保持される。図12(a)に、用紙が画像読取装置105の最大読み取り幅を超えない場合の検査対象画像の例を示す。これは、用紙1202の上に印刷データ1203が印刷された印刷物を画像読取装置105で読み取ることで取得される。この例では、検査対象画像に用紙1202を示す領域の上下左右にバッキング領域1201が存在している。これは、読み取り中に画像読取装置105のセンサ部に読取対象が存在しない場合に生成される領域である。次に、図11に示すように、用紙1101の幅Wpが画像読取装置105の最大読み取り幅Wsを超える場合には、検査対象画像は、図14(a)に示すような画像となる。つまり、画像読取装置105の最大読み取り幅をはみ出した用紙の一部が欠けている画像となる。この例では、図12(a)と同様に、用紙1402の上に印刷データ1403が印刷された印刷物を読み取った画像を示しており、用紙1402を示す領域の上下にバッキング領域1401が存在している。はみだし領域1404は、画像読取装置105で読み取ることのできなかった用紙の領域を示しており、実際の検査対象画像には存在しない領域である。
【0030】
S305では、検査処理部205が、リファレンス画像データと検査対象画像データとの比較を行うことで、印刷欠陥の有無の検査を実行する。本実施例では、印刷欠陥として印刷位置ずれの検査を行う。まず、リファレンス画像から位置合わせのための特徴点の抽出を行う。例えば特徴点として画像のコーナー情報を利用する場合、Harrisのコーナー検出などの公知のアルゴリズムによってコーナー検出を行い、例えば特徴量が大きいものから順に複数の特徴点を抽出する。あるいは、特徴点を手動で追加・調整するようにしてもよい。本実施例では、位置合わせ処理にアフィン変換を用いるため、特徴点は3点以上抽出する必要がある。また、これらの特徴点は、アフィン変換の性質上、特徴点間の距離が離れていて、点同士が直線状に並んでいない方が好ましい。なお、特徴点抽出処理は、リファレンス画像データの取得時にあらかじめ行ってRAM102あるいは主記憶装置104に保持しておき、これを読み出して使用するようにしてもよい。
【0031】
図12(b)に用紙が画像読取装置105の最大読み取り幅を超えない場合のリファレンス画像について抽出された特徴点1205の例を示している。また、図14(b)には、用紙が画像読取装置105の最大読み取り幅を超えてはみ出す場合のリファレンス画像について抽出された特徴点1405の例を示している。
【0032】
次に、検査対象画像について、この特徴点に対応する対応点の探索を行う。これには、公知のテンプレートマッチングなどの対応点探索アルゴリズムが利用できる。そして、リファレンス画像上の複数の特徴点の座標と、これらに対応する検査対象画像上の対応点の座標との関係から、アフィン変換を行うためのアフィンパラメータを算出する。そして、このアフィンパラメータを用いてアフィン変換によりリファレンス画像と検査対象画像の位置合わせを行う。
【0033】
用紙が画像読取装置105の最大読み取り幅を超えてはみ出す場合には、用紙の角は検査対象画像上には見えていないため、これらの座標は推定値を用いることになる。本実施例では用紙の見えない角の座標の推定は次のように行う。まず、図14(a)に示すように用紙の幅方向の両端が均等に画像読取装置105からはみ出していると仮定する。そして、画像上の用紙の上下の辺に沿って辺の中央から左右それぞれの方向にW/2離れた場所に用紙の角があると推定する。ここで、Wは用紙の幅である。この際、用紙の幅がインチ単位、検査対象画像上の座標がpixel単位のように異なる場合は、画像読取装置105の読み取り解像度(ppi)を使って、物理的な用紙サイズを検査対象画像上の座標へと変換すればよい。
【0034】
図13はリファレンス画像1301と検査対象画像1302の位置合わせを行ったあとの状態を示している。リファレンス画像上の印刷データ1204と検査対象画像上の印刷データ1203の位置は一致しているが、それぞれの画像の用紙の角については位置がずれている状態となっている。この用紙の角の座標の差分が印刷位置ずれとなる。用紙が画像読取装置105の最大読み取り幅を超えてはみ出す場合には、検査対象画像上の用紙の角は推定値になるため、位置合わせ後の座標についても誤差を含んでいる。
【0035】
印刷位置ずれ量がこの誤差の範囲内に収まっている場合には、その印刷位置ずれを正しく評価できない。そのため、S301において、この誤差を考慮して設定可能な印刷位置ずれ検査パラメータを制御する必要がある。
【0036】
本実施例では、印刷位置ずれとして、横方向の印刷位置ずれ1303と縦方向の印刷位置ずれ1304を独立に算出する。最後に、算出されたこれらの印刷位置ずれと、S303で設定した印刷位置ずれに対する検査パラメータを比較し、設定された閾値よりも大きい値となった場合には印刷欠陥があるものと判定し、検査結果をRAM102あるいは主記憶装置104に保持する。
【0037】
S306では、結果出力部206が、RAM102あるいは主記憶装置104から検査結果を読み出し、UIパネル108に検査結果を表示する。また、この検査結果に応じて、印刷物を合格の出力トレー111、あるいは不合格の出力トレー112のどちらに送るかを切り替える。
【0038】
S307では、検査を終了するかどうかを判定する。すべての印刷データの検査が終了している場合、あるいはユーザから検査終了の指示があった場合には検査処理を終了し、そうでない場合には、S304へ戻って処理を継続する。
【0039】
<検査パラメータ設定範囲制御処理>
ここでは、S301の検査パラメータ設定範囲制御処理の詳細を説明する。
【0040】
図4は、本実施例における検査パラメータ設定範囲制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、フローチャートの各ステップについて説明する。
【0041】
S401では、最大読み取り幅取得部2031が、画像読取装置105の最大読み取り幅Wの取得を行う。例えば画像読取装置105がラインスキャナであれば、その有効センサ幅を最大読み取り幅として取得する。
【0042】
S402では、用紙サイズ取得部2032が、印刷用紙の用紙サイズとして、用紙の幅を取得する。例えば、UIパネル108を介したユーザから指示された用紙サイズ、または、デフォルト値として設定されている用紙サイズ、或は、印刷時に設定された用紙サイズを用いる。本実施例では、用紙の幅は、用紙の搬送方向に対して垂直な関係となる紙の辺の長さとする。図11に、最大読み取り幅W、用紙の幅W、用紙の搬送方向の関係を示す。
【0043】
S403では、サイズ判定部2034が、用紙サイズとしてS402で取得した用紙の幅WとS401で取得した最大読み取り幅Wを比較する。もし、用紙の幅Wの方が大きければS404へ進み、そうでなければ処理を終了する。
【0044】
S404では、検出可能最小位置ずれ量決定部2033が、検出可能な最小位置ずれ量の算出を行う。具体的には、最大読み取り幅Wと用紙の幅Wに基づいて式(1)により検査可能な最小位置ずれ量Dminを求める。
【0045】
【数1】
【0046】
S405では、検査パラメータ設定範囲変更部2035が、S404で算出した検査可能な最小位置ずれ量Dminに基づいて、ユーザが設定可能な検査パラメータの範囲の変更を行う。図5は、UIパネルにおける検査設定画面の例を示している。図5(a)は、デフォルトの検査設定画面を示している。用紙の幅が最大読み取り幅を超えない場合は、ここに示す検査パラメータの設定範囲502、即ち、「1.0mm-10.0mm」の範囲内でユーザは印刷位置ずれに対する検査閾値をエディットボックス501に入力することで設定する。これに対して、図5(b)は、設定可能な検査パラメータの範囲の変更を本ステップにおいて実行した後のUIパネルにおける検査設定画面の状態を示している。ここでは、S404で算出された検査可能な最小位置ずれ量がDmin=3.0の場合の例を示している。図5(a)では検査パラメータの設定範囲502が「1.0mm-10.0mm」であったのに対して、図5(b)では検査パラメータの設定範囲502が「3.0mm-10.0mm」へと小さくなるように制限される方向で変更されている。このように設定可能な検査パラメータの最小値がDmin以上となるように変更を行う。
【0047】
以上説明した一連の処理により、用紙サイズが画像読取装置105の最大読み取り幅を超えてはみ出す場合に、検査可能な最小位置ずれ量に応じて設定可能な印刷位置ずれ検査の検査パラメータの設定範囲を小さくするように変更することになる。これにより、はみ出す場合でも適切に印刷位置ずれの検査を行うことができるようになる。
【0048】
なお、本実施例では、印刷位置ずれの検査閾値を設定するためのUIパネルの例として、エディットボックスで入力を行う例について示したが、UIはこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、ドロップダウンリストから所望の数値を選択することで印刷位置ずれの検査閾値の設定を行うようにしてもよい。図6(a)は、デフォルトの検査設定画面を示している。用紙の幅が最大読み取り幅を超えない場合は、ここに示すドロップダウンリスト601、即ち、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0の5種類のパラメータから1つを選択することで印刷位置ずれの検査閾値を設定する。図6(b)は、設定可能な検査パラメータの範囲の変更をS405において実行した後のUIパネルにおける検査設定画面の状態を示している。ここでは、S404で算出された検査可能な最小位置ずれ量がDmin=3.0の場合の例を示している。図6(a)では、パラメータの選択候補として前述の5種類のパラメータが示されていたのに対して、図6(b)では、パラメータの選択候補の数は5種類と同じであるが、その中身が図6(a)とは異なっている。選択可能なパラメータの最小値がDmin以上となるように、選択候補が変更されている。
【0049】
また、別の例として、図7は、ドロップダウンリスト701から所望の検査レベルを選択することで印刷位置ずれの検査閾値の設定を行うUIパネルを示している。この検査レベルには、あらかじめ印刷位置ずれの閾値がそれぞれ紐づけられており、その一例を図8に示す。図8(a)は、用紙の幅が最大読み取り幅を超えない場合に使用される検査レベルと印刷位置ずれの閾値との対応表である。これに対し、図8(b)は、設定可能な検査パラメータの範囲の変更をS405において実行した後の検査レベルと印刷位置ずれの閾値との対応表を示している。最小レベルに対応する印刷位置ずれの閾値がDmin以上となるように、各レベルと印刷位置ずれの閾値との対応表が変更される。
【実施例2】
【0050】
実施例1では、検査パラメータの入力範囲や選択可能な印刷位置ずれの大きさを小さくするように制限することで、検査パラメータの設定範囲を制御する例について説明した。本実施例では、検査可能な最小位置ずれ量に応じて選択可能な検査レベルの数を少なくするように制限する変更の例について説明する。
【0051】
本実施例では、実施例1において図3を使って説明した画像処理装置100が行う検査処理の流れにおいて、S301に示した検査パラメータ設定範囲制御処理のみが実施例1と異なるため、この処理の詳細について説明する。その他の処理については実施例1と重複しているため説明は省略する。
【0052】
<検査パラメータ設定範囲制御処理>
図9は、本実施例における検査パラメータ設定範囲制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0053】
S901では、検査パラメータ設定範囲変更部2035が、S404で算出した検査可能な最小位置ずれ量Dminに基づいて、ユーザが設定可能な検査レベルの範囲の変更を行う。図10は、本実施例のUIパネルにおける検査設定画面の例を示している。この例では、ドロップダウンリストから所望の検査レベルを選択することで印刷位置ずれの検査閾値の設定を行う。図10(a)は、デフォルトの検査設定画面を示している。用紙の幅が最大読み取り幅を超えない場合は、ここに示すドロップダウンリスト1001、即ち、レベル1からレベル5までの5種類のパラメータから1つを選択することで印刷位置ずれの検査閾値を設定する。なお、各レベルに対応する印刷位置ずれの検査閾値は、図10(c)に示すようにあらかじめ紐づけられて保持されているものとする。例えば、ユーザがレベル1を選択した場合、内部では印刷位置ずれの検査閾値として1.0mmが設定されることになる。図10(b)は、設定可能な検査レベルの範囲の変更を本ステップにおいて実行した後のUIパネルにおける検査設定画面の状態を示している。ここでは、S404で算出された検査可能な最小位置ずれ量がDmin=3.0の場合の例を示している。図10(a)では、検査レベルの選択候補として前述の5種類のレベルが示されていたのに対して、図10(b)では、パラメータの選択候補がレベル3からレベル5までの3種類に制限されている。図10(c)に示す対応表から印刷位置ずれの閾値がDmin以上となる最小のレベルを取得し、これがドロップダウンリスト1002で選択可能な最小レベルとなるようにドロップダウンリスト1002の内容を変更する。この例では、Dmin=3.0であるので、対応表からレベル3が取得され、ドロップダウンリスト1002で選択可能な最小レベルがこのレベル3となるように変更されている。
【0054】
以上説明した処理により、用紙サイズが画像読取装置の最大読み取り幅を超えてはみ出す場合に、検査可能な最小位置ずれ量に応じて選択可能な検査レベルの数を少なくするよう変更する。これにより、適切に印刷位置ずれの検査を行うことができるようになる。
【実施例3】
【0055】
本実施例では、さらに搬送時の位置ずれを考慮して検出可能最小位置ずれ量を決定し、これに基づいて検査パラメータ設定範囲の制御を行う処理について説明する。
【0056】
図15に本実施例における検査処理に係る画像処理装置100の処理ブロックごとの構成を示す。実施例1の図2で説明した構成に搬送位置ずれ量取得部1501が追加された構成となっている。印刷データが印刷された用紙は、搬送ローラーなどで構成された搬送路を通って画像読取装置105に送られる。その際、紙送り時のメカ起因の誤差などにより搬送位置にずれが生じることがある。このような搬送位置ずれ量の最大値は、前述のメカ起因の誤差などを見積もることによってあらかじめ計算して主記憶装置104などに記憶しておくことができる。搬送位置ずれ量取得部1501は、この既知の最大搬送位置ずれ量を主記憶装置104からRAM102に読み出すことで取得する。なお、その他の処理ブロックに関しては図2と共通であるため説明を省略する。
【0057】
本実施例では、実施例1において図3を使って説明した画像処理装置100が行う検査処理の流れにおいて、S301に示した検査パラメータ設定範囲制御処理のみが実施例1と異なるため、この処理の詳細について説明する。その他の処理については実施例1と重複しているため説明は省略する。
【0058】
<検査パラメータ設定範囲制御処理>
図16は、本実施例における検査パラメータ設定範囲制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0059】
S1601では、搬送位置ずれ量取得部1501が、既知の最大搬送位置ずれ量εを主記憶装置104からRAM102に読み出すことで取得する。図17は最大搬送位置ずれ量εを説明する図である。用紙1701は搬送位置ずれなしで画像読取装置105の中央を通過する場合を示している。1702は左方向に最大搬送位置ずれが生じた際の用紙を示している。また、1703は右方向に最大搬送位置ずれが生じた際の用紙を示している。この図に示すように1701と1702、あるいは1701と1703との紙の幅方向の差分が最大搬送位置ずれ量εとなる。
【0060】
S1602では、搬送位置ずれ量取得部1501が、さらに最大搬送位置ずれ量εが(W-W)/2以下であるかどうかを判定する。ここで、Wは最大読み取り幅、Wは用紙の幅である。この条件を満たす場合はS1603へ進み、条件を満たさない場合はS1604へ進む。
【0061】
S1603では、検出可能最小位置ずれ量決定部2033が、検出可能な最小位置ずれ量をDmin=εとして設定する。
【0062】
S1604では、検出可能最小位置ずれ量決定部2033が、検出可能な最小位置ずれ量をDmin=(W-W)/2として設定する。
【0063】
以上説明した処理により、搬送時の位置ずれを考慮して検出可能最小位置ずれ量を決定し、これに基づいて検査パラメータ設定可能な範囲の制御を行うことで、用紙サイズが最大読み取り幅をはみ出す場合でも適切に検査を行うことができるようになる。
【0064】
なお、本実施例では実施例1と同様に検査パラメータの設定可能な範囲の制御を行う例について説明したが、以下の手法を用いてもよい。つまり、搬送時の位置ずれを考慮して決定された検出可能最小位置ずれ量に基づいて、実施例2に示したような選択可能な検査レベルの数を小さくするように制限する処理を行う。これにより同様の効果を得ることができる。
【0065】
〔その他の実施例〕
実施例1から実施例3において、印刷位置ずれの検査パラメータ設定を行うUIパネルの例として、1つのパラメータを設定するUIについて説明した。しかし、例えば図18に示すように、縦横それぞれの印刷位置ずれに対応するパラメータを独立して設定するようなUIとして、縦横独立の検査パラメータ設定範囲の制御を行うようにしてもよい。
【0066】
また、紙の斜行を考慮して、検出可能最小位置ずれ量を算出するようにしてもよい。図19に用紙が斜行した際の画像読取装置105と用紙の関係を示している。ここでは、用紙の最大斜行角をθとしている。この場合、検出可能な最小位置ずれ量をDmin=xと設定し、実施例1から実施例3で説明した<検査パラメータ設定範囲制御処理>を行うことで同様の効果を得ることができる。Xは式(2)で算出することができる。
【0067】
【数2】
【0068】
ここで、Wは用紙の幅、Hは用紙の高さ、Wは画像読取装置105の最大読み取り幅である。
【0069】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0070】
201 検査画像取得部
202 リファレンス画像取得部
203 検査パラメータ設定範囲制御部
204 検査設定部
205 検査処理部
206 結果出力部
図1
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図3
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