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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20241216BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20241216BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241216BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241216BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/19
A61K8/73
A61K8/06
A61Q1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020217400
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102581
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 紗希
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭太
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120682(JP,A)
【文献】特開2020-121940(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065963(WO,A1)
【文献】特開2018-108994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数8~14の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩を含む表面処理剤により表面処理された顔料、
(B)油分、
(C)疎水性紫外線散乱剤、および
(D)水溶性アルキル置換多糖誘導体
を含み、
紫外線吸収剤の配合量が、化粧料全量に対して1質量%未満であり、
記(A)および(C)成分が油相中に分散している、シリコーン化合物を含まない水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記アシル化アミノ酸が、ラウロイルグルタミン酸ナトリウムまたはラウロイルアスパラギン酸ナトリウムである、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
さらに(E)水溶性増粘剤を含む、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記(B)油分に占める極性油の割合が、質量比にして40%以上を占める、請求項1から3のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン化合物の配合量を抑制した化粧料基剤において、紫外線散乱剤と顔料を安定して配合することができる水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンオイル等のシリコーン化合物は、撥水性が高い、べたつきがなく軽い使用感触がある、皮膚へののび広がりが良好であるという特徴を有し、それを配合した化粧料の耐水性、使用感および他の配合成分の分散性を向上させる効果がある。さらに、シリコーン化合物は粉末成分の表面処理剤としても広く用いられている。
【0003】
シリコーン化合物は上記のような利点を有するが、その高い撥水性に起因して水で化粧を落としにくくし、洗浄性が劣るという問題を有している。さらに、シリコーン化合物は通常生分解性ではないため、環境中に長期間蓄積され、環境を汚染し生態系を乱すリスクがあることが懸念されている。そこで近年、シリコーン化合物を配合しない「シリコーンフリー」と呼ばれる化粧料が注目されている。
【0004】
しかしながら、従来の化粧料において粉末等の他の配合成分の分散性向上に寄与していたシリコーン化合物を除くと、化粧料の安定性を維持することが困難になる等の問題を生じる。
【0005】
一方、化粧料には、紫外線の害から皮膚を守るために、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤を配合することが一般的に行われている。通常、紫外線吸収剤としては、有機化合物、例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルおよびオクトクリレンが用いられ、紫外線散乱剤としては、無機粉末成分、例えば、二酸化チタンおよび酸化亜鉛が用いられる。
【0006】
紫外線吸収剤は、透明性が高い、肌へののび広がりが良い、汗で崩れにくいといった利点があるが、紫外線を熱エネルギーなどの別のエネルギーに変換することで紫外線の影響を防ぐため、敏感肌の使用者には刺激を感じる場合がある。そこで、紫外線吸収剤を用いず紫外線散乱剤により紫外線防御効果を得た、紫外線吸収剤フリー、いわゆる「ノンケミカル」の化粧料に対する需要がある。
【0007】
例えば、特許文献1では、粉末の表面処理剤として高級脂肪酸と2価金属からなる金属石鹸を用いることにより粉末分散性および使用感触の良好な水中油型乳化化粧料が提案されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載される化粧料では、持ち歩くなどして化粧料に振動がかかった場合に十分な安定性が得られるかどうかについて検討はなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開2017/006488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、シリコーン化合物の配合量を抑制した化粧料基剤において、紫外線散乱剤と顔料を高配合した場合であっても粉末分散性、特に振動安定性に優れた水中油型乳化基剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、油相に配合する顔料を炭素数8~14の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩を含む表面処理剤により表面処理するとともに、水溶性アルキル置換多糖誘導体を配合することによって、シリコーン化合物を配合しなくとも、内相である油相中の粉末の分散性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(A)炭素数8~14の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩を含む表面処理剤により表面処理された顔料、
(B)油分、
(C)疎水性紫外線散乱剤、および
(D)水溶性アルキル置換多糖誘導体
を含み、
紫外線吸収剤の配合量が、化粧料全量に対して1質量%未満であり、
シリコーン油が、化粧料全量に対して10質量%以下であり、
前記(A)および(C)成分が油相中に分散している、ことを特徴とする、水中油型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る化粧料は、上記構成とすることにより、シリコーン化合物を配合しなくとも、顔料と紫外線散乱剤を高配合した乳化基剤の振動安定性および乳化安定性を向上することができる。よって、持ち運びに適するシリコーンフリーのメーキャップ化粧料を実現することができる。また、本発明によれば、紫外線吸収剤を配合しなくとも高配合した紫外線散乱剤により十分な紫外線防御効果を得ることができるので、ノンケミカルの化粧料を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る化粧料は、(A)炭素数8~14の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩を含む表面処理剤により表面処理された顔料、(B)油分、(C)疎水性紫外線散乱剤、および(D)水溶性アルキル置換多糖誘導体を含むことを特徴とする。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0015】
<(A)顔料>
本発明に係る化粧料に配合される(A)顔料(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、炭素数8~14の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩を含む表面処理剤により表面処理された無機顔料を指す。これら特定の処理剤で表面処理された顔料を用いることにより、粉末分散性および経時安定性に優れた化粧料となる。本発明の顔料の表面処理剤として炭素数8~14の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩のみが用いられてもよいし、あるいは炭素数8~14の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩に加えて、粉末の表面処理剤として一般的に用いられる他の化合物がさらに含まれてもよい。
【0016】
顔料の具体例としては、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄、γ-酸化鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青等が挙げられる。なかでも、本発明の顔料としては、黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄等の顔料級酸化鉄、顔料級酸化チタン等を用いることが好ましい。ここで、顔料級とは平均粒子径が100nm~1μmのものをいう。
【0017】
「炭素数8~14の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩」とは、グルタミン酸またはアスパラギン酸のアミノ基にアシル基、具体的には炭素数8~14の飽和脂肪酸が縮合した化合物ないしはその塩である。炭素数8~14の飽和脂肪酸としては、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等が挙げられ、「アシル基」としては、カプリロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基等を挙げることができる。「塩」は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等から選択できるが、ナトリウム塩が好ましい。アシル化アミノ酸の具体例として、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0018】
本発明における表面処理剤は、前記の飽和脂肪酸によりアシル化されたグルタミン酸またはアスパラギン酸ないしはその塩に加えて、他の処理剤を含んでいてもよい。他の処理剤としては、「アミノ酸」、「エステル」および「エステルの金属錯体」等が挙げられる。「アミノ酸」は、特に限定されないが、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびリシンから選択するのが好ましく、なかでもリシンが特に好ましい。「エステル」は、炭素数8~12の一価または二価の脂肪酸と、炭素数12~20の飽和脂肪族アルコールとがエステル結合を介して結合した化合物であり、前記脂肪酸および脂肪族アルコールのアルキル鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的にはセバシン酸イソステアリル等が挙げられる。「エステルの金属錯体」とは、金属原子にエステルが配位結合した化合物であり、例えば、トリイソステアリン酸イソプロピルチタンが好ましい例として挙げられる。
【0019】
本発明の(A)顔料は、常法により、顔料表面にアシル化されたアミノ酸ないしはその塩を吸着させることにより調製することができる。
【0020】
本発明で用いられる(A)顔料としては、ラウロイルグルタミン酸ナトリウムとリシンとを含む表面処理剤(ASL処理剤)、あるいはラウロイルアスパラギン酸ナトリウムとトリイソステアリン酸イソプロピルチタンとを含む表面処理剤(ASI処理剤)で表面処理された顔料が好ましい。
【0021】
本発明の(A)顔料として市販品を使用することもでき、好ましい市販品としては、例えば、ASL-1 TiO2 CR-50、ASL-レッドR516P、ASL-イエローLL-100P、ASL-ブラックBL-100P等のASL処理粉体、ASI TiO2 CR-50、ASI-レッドR516P、ASI-イエローLL-100P、ASI-ブラックBL-100P、ASI-タルクJA46R等のASI処理粉体(以上、大東化成工業社製)等が挙げられる。
【0022】
本発明の化粧料は、前記の表面処理剤で処理された顔料を、1種または2種以上組み合わせて配合してよい。
(A)顔料の合計配合量は、所望の色彩を得る限りにおいて特に限定されないが、通常は化粧料全量に対して0.1質量%以上、例えば1~20質量%、好ましくは2~10質量%である。配合量が1質量%未満では十分な色彩が得られず、20質量%を超えると安定性が悪くなる傾向がある。
【0023】
<(B)油分>
本発明に係る化粧料に配合される(B)油分(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に配合される油分であれば特に限定されないが、例としては、炭化水素油、エステル油、炭素数12~22の高級アルコール、炭素数12~22の脂肪酸、油脂、ロウ類等が挙げられる。本発明の化粧料は、従来は乳化安定性を低下させると考えられていた極性油でさえも安定に配合することができる。
【0024】
ただし、本発明の化粧料においては、シリコーン油の配合量は化粧料全量に対して10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。また、本発明の化粧料は、シリコーン油を実質的に配合しない態様も包含する。
【0025】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、イソヘキサデカン、イソドデカン、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリイソブテン、オレフィンオリゴマー、揮発性炭化水素油(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、ウンデカン、トリデカン等)等が挙げられる。
【0026】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン(トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル)、セチル2-エチルヘキサノエート、パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸ポリプロピレングリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等のトリエステル油等が挙げられる。
【0027】
炭素数12~22の高級アルコールとしては、例えば、オレイルアルコール、2-デシルテトラデシノール、ドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。炭素数12~22の脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。
【0028】
油脂としては、例えば、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0029】
ロウ類としては、例えば、カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ホホバロウ等が挙げられる。
【0030】
本発明の化粧料においては、油分の合計量に対する極性油の割合を、質量比にして40%以上とすると粉末の分散安定性が高まる。よって、本発明の化粧料においては、(B)油分の合計量に占める極性油の割合を40%以上とするのが好ましい。
【0031】
極性油としては、IOB値が0.05~0.80である油分、特にエステル油が挙げられる。極性油の具体例には、イソステアリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソノニル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、エチルヘキサン酸セチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、セチルイソオクタノエート、セチル2-エチルヘキサノエート、パルミチン酸2-エチルヘキシル、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0032】
(B)油分の配合量は、油相に顔料および紫外線散乱剤等の粉末を配合する上で通常用いられる量であれば特に限定されないが、例えば、化粧料全量に対して5~50質量%であることが挙げられる。油分の配合量が50質量%を超えると安定性や使用性が低下する傾向がある。
【0033】
<(C)疎水性紫外線散乱剤>
本発明に係る化粧料に配合される(C)疎水性紫外線散乱剤(以下、単に「(D)成分」と称する場合がある)は、化粧料に通常用いられるものから適宜選択することができ、特に限定されないが、粒子表面が疎水性であるものを指す。具体例としては、金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。本発明においては、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。また、平均粒子径が0.1μm以下の微粒子であることが好ましい。平均粒子径の下限は、特に限定されないが、通常は5nm程度である。
【0034】
本発明に用いられる紫外線散乱剤は、粒子表面が疎水性である限りにおいて、表面無処理のもの、疎水化処理を施したもののいずれであってもよい。疎水化表面処理剤としては、特に限定されないが、シリコーン処理剤、フッ素化合物処理剤、アミノ酸処理剤、脂肪酸処理剤、脂肪酸石鹸処理剤、脂肪酸エステル処理剤、その他、レシチン処理剤、アルキルリン酸エステル処理等が挙げられる。
【0035】
シリコーン処理剤としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイルや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシランや、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等が挙げられる。フッ素化合物処理剤としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等が挙げられる。アミノ酸処理剤としては、N-アシルグルタミン酸、N-アシルアスパラギン酸、N-アシルリジン等が挙げられる。脂肪酸処理剤としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。脂肪酸石鹸処理剤としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。脂肪酸エステル処理剤としては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの疎水化処理は、常法に従って行うことができる。
【0036】
本発明の化粧料によれば、紫外線散乱剤を油相に高配合することができるので、紫外線吸収剤を配合しなくとも十分な紫外線防御効果を達成することができる。よって、本発明の化粧料においては、紫外線吸収剤の配合量は化粧料全量に対して3質量%以下であり、好ましくは1質量%以下である。また、本発明の化粧料は、紫外線吸収剤を実質的に配合しない態様も包含する。紫外線吸収剤を実質的に配合しない態様とすることにより、「ノンケミカル」の化粧料とすることができる。
【0037】
「ノンケミカル」化粧料とは、有機紫外線吸収剤ではなく無機紫外線散乱剤を含有することによって、紫外線からの皮膚保護効果を発揮する化粧料をいう。
【0038】
(C)紫外線散乱剤の配合量は所望の紫外線防御効果を得るために必要とされる量であって、特に限定されないが、通常は化粧料全量に対して1質量%以上、例えば5~30質量%、好ましくは10~30質量%である。配合量が5質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、30質量%を超えると安定性が悪くなる傾向がある。本発明の化粧料をノンケミカル化粧料として調製する場合には、紫外線散乱剤の合計含有量を10質量%以上とすることが好ましい。
【0039】
<(D)水溶性アルキル置換多糖誘導体>
本発明の化粧料で用いられる(D)水溶性アルキル置換多糖誘導体(以下、単に「(D)成分」ともいう)としては、特に限定されないが、疎水変性アルキルセルロース、疎水化変性スルホン化多糖誘導体等が挙げられる。
【0040】
疎水変性アルキルセルロースとしては、炭素数14~22のアルキル基により疎水変性されたアルキルセルロースが好ましい。より具体的には、水溶性セルロースエーテル誘導体に疎水性基である長鎖アルキル基を導入した化合物であり、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
【化1】
【0041】
[式中、Rは、同一でも異なってもよく、水素原子、炭素原子数が1~4のアルキル基、基-[CHCH(CH)O]-H(式中、mは、1~5、好適には1~3の整数である)、基-CHCHOH、および、基-CHCH(OH)CHOR’(式中、R’は、炭素原子数が14~22のアルキル基である)から選ばれる1種以上の基であるが、基-CHCH(OH)CHOR’を必ず含むものとする。また、Aは、基-(CH-(qは、1~3の整数であり、好適には1である)であり、nは、100~10,000、好適には500~5,000の整数である。]
【0042】
前記式(I)の疎水変性アルキルセルロースの製造方法は、概ね、基となる水溶性セルロースエーテル誘導体、具体的には、メチルセルロース(Rが水素原子またはメチル基)、エチルセルロース(Rが水素原子またはエチル基)、プロピルセルロース(Rが水素原子またはプロピル基)、ブチルセルロース(Rが水素原子またはブチル基)、ヒドロキシプロピルセルロース[Rが水素原子またはヒドロキシプロピル基(基-[CHCH(CH)O]-H(式中、mは、1~5、好適には1~3の整数である))]、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Rが水素原子、メチル基またはヒドロキシプロピル基(同上))等に対して、炭素数14~22の長鎖アルキル基導入用化合物、具体的には、下記式(II)の長鎖アルキルグリシジルエーテルを、アルカリ触媒の存在下で接触させて得ることができる。
【化2】
[R’は、炭素原子数が14~22のアルキル基である。]
【0043】
本発明の疎水変性アルキルセルロースに導入される基-CHCH(OH)CHOR’の含有量は、疎水変性アルキルセルロース全体に対して0.1~5.0質量%程度であるのが好ましい。このような含有率とするためには、上記水溶性セルロースエステル誘導体と長鎖アルキルグリシジルエーテルの反応の際のモル比や、反応時間、アルカリ触媒の種類等を適宜選択して製造すればよい。上記反応後、反応物の中和・濾過・洗浄・乾燥・篩分等の精製工程を行ってもよい。
【0044】
なお、上記の水溶性セルロースエーテル誘導体のうち、特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを選択することが好適である(これにより、式(I)におけるRは、水素原子、メチル基、基-[CHCH(CH)O]H、および、基-CHCH(OH)CHOR’の4種のいずれかの基となり、基Aのqが1となり、当該Aはメチレン基となる)。
さらに、式(II)の長鎖アルキルグリシジルエーテルにおけるR’は、炭素数14~22のアルキル基、好ましくは炭素数14~20のアルキル基、更に好ましくは炭素数18のステアリル基(-C1837)である。アルキル基R’の炭素数が14未満または23以上では、得られた疎水変性アルキルセルロースによる乳化安定性が十分でなくなる場合がある。
【0045】
疎水変性アルキルセルロースの重量平均分子量は、100,000~1000,000が好ましく、より好ましくは300,000~800,000、更に好ましくは550,000~750,000である。
【0046】
疎水化変性スルホン化多糖誘導体としては、多糖類またはその誘導体を基本骨格にもち、ヒドロキシル基の水素原子の一部または全てが、以下の置換基(a)と置換基(b)に置換されたものであることが好ましい。置換基(a)は、炭素数10~40の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル基および炭素数10~40の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有するアルケニルグリセリルエーテル基から選ばれる疎水部を有するグリセリルエーテル基であることが好ましい。置換基(b)は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1~5のスルホアルキル基またはその塩であることが好ましい。ここで水溶性とは25℃で水に0.001質量%以上溶解するものをいう。
【0047】
置換基(a)の具体例としては、特に限定されないが、2-ヒドロキシ-3-アルコキシプロピル基、2-アルコキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基、2-ヒドロキシ-3-アルケニルオキシプロピル基、2-アルケニルオキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基が挙げられる。これらのグリセリルエーテル基に置換している炭素数10~40のアルキル基またはアルケニル基としては、炭素数12~36、更に炭素数16~24の直鎖または分岐鎖のアルキル基およびアルケニル基が好ましく、なかでもアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
【0048】
また、置換基(b)の具体例としては、特に限定されないが、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、3-スルホ-2-ヒドロキシプロピル基、2-スルホ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基等が挙げられ、その全てあるいは一部がNa、K等のアルカリ金属、Ca、Mg等のアルカリ土類金属、アミン類等の有機カチオン基、アンモニウムイオンなどとの塩となっていてもよい。
【0049】
置換基(a)の置換度は、構成単糖残基当たり0.001~1が好ましく、より好ましくは0.002~0.5、更に好ましくは0.003~0.1である。置換基(b)の置換度は、構成単糖残基当たり0.01~2.5が好ましく、より好ましくは0.02~2、更に好ましくは0.1~1.5である。また、置換基(a)と置換基(b)の数の比率は1:1,000~100:1が好ましく、より好ましくは1:500~10:1、更に好ましくは1:300~10:1である。
【0050】
疎水化変性スルホン化多糖誘導体の基本骨格となる多糖類またはその誘導体としては、特に限定されないが、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。これら多糖類またはその誘導体の重量平均分子量は、10,000~10,000,000が好ましく、より好ましくは100,000~5,000,000、更に好ましくは300,000~2,000,000である。
【0051】
本発明の化粧料で用いられる(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラウレス-13PGヒドロキシエチルセルロース等の疎水変性アルキルセルロース;ステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸塩等の疎水化変性スルホン化多糖誘導体挙げられる。なかでも、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸塩がより好ましい。
【0052】
本発明においては、(D)成分として市販品を使用することもできる。例えば、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、サンジェロース60L(大同化成工業社製)、サンジェロース90L(大同化成工業社製)等が挙げられ、ステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸塩として、ポイズ310(花王社製)等が挙げられる。
【0053】
本発明の化粧料における(D)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.01~1質量%であり、好ましくは0.05~0.5質量%、より好ましくは0.1~0.3質量%である。0.05質量%未満では十分な乳化安定性が得られず、1質量%を超えて配合しても効果の更なる増大は得られ難い。
【0054】
本発明の化粧料においては、(D)水溶性アルキル置換多糖誘導体以外の水溶性増粘剤をさらに配合することにより安定性や使用性を向上することができる。本発明で用いられる水溶性増粘剤としては、通常の乳化型化粧料等において水相に配合される、増粘性のある乳化剤として用いられる物質から適宜選択できる。
【0055】
水溶性増粘剤としては、例えば、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、ジェランガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー等が挙げられる。
【0056】
本発明の化粧料においては、水相増粘剤の中でも、特に化粧料に一般的に配合される範囲の濃度の電解質の存在によって粘度低下を生ずる耐塩性の低い増粘剤(以下、「電解質濃度の上昇により粘度低下が生じる増粘剤」ともいう)を用いると、化粧料を皮膚に塗布した際に、独特のみずみずしい使用感触が得られる。
【0057】
本発明における「独特のみずみずしい使用感触」とは、化粧料を手指などで皮膚に塗布した際に、急激に粘度低下して崩れるような感触があり、それと同時に皮膚に対して広がる非常にみずみずしい感触を与えることを意味する。
【0058】
電解質濃度の上昇により粘度低下が生じる増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテート共重合物、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸アルカノールアミン、アルキルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレート共重合物、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウム、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー等のアクリル系高分子が挙げられる。
【0059】
本発明の水溶性増粘剤として、上記物質から選択される1種または2種以上を配合して用いてもよい。
本発明の化粧料における水溶性増粘剤の配合量は、化粧料全量に対して、0.05~3質量%が好ましく、より好ましくは0.1~2質量%、更に好ましくは0.15~1質量%である。
【0060】
本発明の化粧料によれば、シリコーン化合物を含まない「シリコーンフリー」の化粧料を実現することができる。
本明細書における「シリコーン化合物」とは、分子内にシロキサン(-Si-O-Si-)構造を持つ化合物(例えば、シリコーン類およびシロキサン類)およびシラン類(モノシラン、オリゴシラン、ポリシラン、およびシラン誘導体、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン等)を意味し、シリコーン油、シリコーンエラストマー、シリコーン系界面活性剤、さらにはシリコーン化合物で表面処理された粉体を包含する。なお、二酸化ケイ素(シリカ)は、本発明における「シリコーン化合物」には含まれない。
【0061】
本発明の化粧料は、上記特定の表面処理剤で処理された顔料と、水溶性アルキル置換多糖誘導体とを組み合わせることで、シリコーンフリー化粧料としても、粉末の分散性および安定性、特に振動に対する安定性が顕著に向上する。
【0062】
本発明に係る化粧料には、上記成分の他に、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意成分を必要に応じて適宜配合してもよい。他の任意成分としては、例えば、前記(A)および(C)成分以外の粉体、界面活性剤、高分子化合物、キレート剤、低級アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、殺菌剤、各種薬剤等が挙げられる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
【0063】
本発明の化粧料は、通常の方法に従って製造することができ、液状、乳液状、ペースト状、クリーム状、ジェル状、固形状等の剤型にすることができる。
本発明の化粧料は、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメーキャップ化粧料;日焼け止め等のスキンケア化粧料として提供できるが、メーキャップ化粧料、特に化粧下地、リキッドファンデーションとするのに適している。
【実施例
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0065】
1.調製直後の粉末分散性の評価
調製直後に、試料の外観を目視にて観察し、粉末の分散性について以下の基準に基づいて評価した。色縞が少ないほど、粉末が均一に分散していることを示す。
A:色縞が全く認められない。
B:色縞がわずかに認められるが使用上問題のない程度であった。
C:色縞が明らかに認められる。
D:色縞がみられ、化粧料としての使用に耐えない。
【0066】
2.振動安定性の評価
調製した試料30mlを樹脂チューブに入れ、30分間、10Hz以上の条件で振動を与え、静置後の試料の乳化分離および粉末の凝集状態を目視により観察し、以下の基準に基づいて評価した。
A:乳化破壊や粉末の凝集が見られない。
B:乳化破壊や粉末の凝集があまり見られない。
C:乳化破壊や粉末の凝集が見られる。
D:乳化破壊や粉末の凝集が激しく見られる。
【0067】
3.経時安定性の評価
スクリュー管(50ml)に試料を充填し、50℃の恒温槽に2週間静置した。静置の前後に回転式粘度計(ビスメトロン回転式粘度計)を用いて粘度変化を測定するとともに、乳化粒子、外観の観測を行い、以下の基準に基づいて評価した。
A:粘度変化がなく、乳化粒子・外観に問題がない。
B:若干の粘度変化や乳化粒子・外観の変化が見られるが使用上問題のない程度であった。
C:粘度変化や乳化粒子・外観の変化が見られる。
D:粘度変化や乳化粒子・外観の変化が見られ、化粧料としての使用に耐えない。
【0068】
次頁の表に掲げた組成を有する水中油型乳化化粧料を常法により調製した。調製した試料について、前記した評価方法に従って安定性および粉末分散性を評価した。結果は表中に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
*1:ASL-1 TiO2 CR-50(大東化成工業社製)
*2:ASL-イエローLL-100P(大東化成工業社製)
*3:ASL-レッドR516P(大東化成工業社製)
*4:ASI TiO2 CR-50(大東化成工業社製)
*5:ASI-イエローLL-100P(大東化成工業社製)
*6:ASI-レッドR516P(大東化成工業社製)
*7:NHS-チタンCR-50(三好化成工業社製)
*8:NHS-イエローLL-100P(三好化成工業社製)
*9:NHS-レッドR516PS(三好化成工業社製)
*10:NAI-チタンCR-50(三好化成工業社製)
*11:NAI-イエローLL-100P(三好化成工業社製)
*12:NAI-レッドR516PS(三好化成工業社製)
*13:LL TiO2 CR-50(大東化成工業社製)
*14:LL―イエローLL-100P(大東化成工業社製)
*15:LL-レッドR516P(大東化成工業社製)
*16:MI-チタンCR-50(三好化成工業社製)
*17:MI-イエローLL-100P(三好化成工業社製)
*18:MI-レッドR516PS(三好化成工業社製)
*19:ST-485SA(チタン工業社製)
【0071】
表に示すように、本発明の(D)水溶性アルキル置換多糖誘導体を配合しない比較例1の化粧料は乳化できなかった。また、炭素数18のステアリン酸とグルタミン酸との縮合物であるステアロイルグルタミン酸2Naを含む処理剤(NHS処理、NAI処理)、アシル化アミノ酸のアミノ酸がリジンである処理剤(LL処理)、脂肪酸石鹸処理剤(MI処理)、シリコーン処理剤(EP1処理)を用いて疎水化処理を施した顔料を含む比較例2~6の化粧料は、調製直後から色縞が見られ、振動試験後には乳化破壊や粉末の凝集が著しく観察され、経時安定性も不良であった。
一方、本発明の(A)~(D)成分を配合する実施例1および実施例2の化粧料は、調製直後から良好な粉末分散性を示し、振動安定性および経時安定性のいずれにも優れていた。
なお、脂肪酸石鹸処理剤(MI処理)を用いて疎水化処理を施した顔料を含む比較例5の化粧料は特許文献1発明の化粧料に相当するが、本発明の化粧料は特許文献1発明の化粧料よりも粉末分散性および経時安定性が向上した化粧料であることが示された。