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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】治療用のボツリヌス神経毒素
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20241216BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20241216BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20241216BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241216BHJP
   A61K 8/99 20170101ALN20241216BHJP
   A61K 35/742 20150101ALN20241216BHJP
【FI】
A61K38/16 ZMD
A61K8/64
A61P21/02
A61Q19/08
A61K8/99
A61K35/742
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020501424
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2018023709
(87)【国際公開番号】W WO2018175688
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】62/474,744
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/474,749
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/508,215
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519341348
【氏名又は名称】ボンチ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】アブシャクラ サウサン
(72)【発明者】
【氏名】アーマッド ワジュディ
(72)【発明者】
【氏名】ハサン ファウアド
(72)【発明者】
【氏名】ジャープ マイケル
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】山村 祥子
【審判官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-514353(JP,A)
【文献】特開2011-157331(JP,A)
【文献】特開2011-037866(JP,A)
【文献】The Journal of Biological Chemistry、2003、Vol. 218, No. 2、p. 1363-1371
【文献】Neuroscience Letters、1998、Vol. 256、pp. 135-138
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Caplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眉間のしわを有するヒト患者に美容処置を行う方法において使用するための、ボツリヌス神経毒素血清型Eを含む医薬組成物であって、前記方法はボツリヌス神経毒素血清型Eの総用量が約0.2ngと約20ngの間であるように医薬組成物を患者に注射により投与することを含み、
前記総用量は5つのほぼ等用量のボツリヌス神経毒素血清型Eに分けられ、前記ほぼ等用量が筋肉内注射により以下の筋肉:鼻根筋、左内側皺眉筋、右内側皺眉筋、左外側皺眉筋及び右外側皺眉筋に投与され、かつ
前記美容処置の臨床効果の発現は、ボツリヌス神経毒素血清型Eの投与後24時間以内に得られる、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記ボツリヌス神経毒素血清型Eが、約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ボツリヌス神経毒素血清型Eの総用量が約2ngと約10ngの間である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記臨床効果は、最大限に顔をしかめた時の治験医師評価による顔面しわ尺度(FWS)グレードの、ボツリヌス神経毒素血清型Eの投与前の中等度から重度から、ボツリヌス神経毒素血清型Eの投与後のなしまたは軽度への変化を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ボツリヌス神経毒素血清型Eが、約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
約150単位の約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eが、少なくとも1つの筋肉に注射される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
中等度から重度の眉間のしわを有するヒト患者に美容処置を行う方法おいて使用するための、約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eを含む医薬組成物であって、前記方法は治療有効量の約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eが患者に投与されるように医薬組成物を投与することを含み、
前記治療有効量は約0.2ngと約20ngの間であり、
前記治療有効量は5回の筋肉内注射で投与され、各注射は、ほぼ等量の約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eを含み、1回の注射は、以下の筋肉:鼻根筋、左内側皺眉筋、右内側皺眉筋、左外側皺眉筋及び実に外側皺眉筋
のそれぞれに行われ、
美容処置の臨床効果の発現は、約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eの投与後48時間以内に得られ;かつ
臨床効果は、最大限に顔をしかめた時の治験医師評価による顔面しわ尺度(FWS)グレードの、約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eの投与前の中程度から重度から、約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eの投与後のなしまたは軽度への変化を含む、前記医薬組成物。
【請求項8】
眉間のしわを有するヒト患者に美容処置を行う方法において使用するためのボツリヌス神経毒素血清型Eを含む医薬組成物であって、前記ボツリヌス神経毒素血清型Eの総用量が約0.2ngと約20ngの間であるように医薬組成物を患者に注射により投与することを含み、
前記総用量は5つのほぼ等用量のボツリヌス神経毒素血清型Eに分けられ、前記ほぼ等用量が筋肉内注射により以下の筋肉:鼻根筋、左内側皺眉筋、右内側皺眉筋、左外側皺眉筋及び右外側皺眉筋に投与され、
美容処置の臨床効果の持続期間は、ボツリヌス神経毒素血清型Eの投与後約14日から約30日の範囲であり、かつ、前記臨床効果は、最大限に顔をしかめた時の治験医師評価による顔面しわ尺度(FWS)グレードの、ボツリヌス神経毒素血清型Eの投与前の中等度から重度からボツリヌス神経毒素血清型Eの投与後のなしまたは軽度への変化を含む、前記医薬組成物。
【請求項9】
前記ボツリヌス神経毒素血清型Eが、約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ボツリヌス神経毒素血清型Eの総用量が約2ngと約10ngの間である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記方法が、プラセボが投与される同等の方法よりも、投与後第1、2、7、14、または30日において最大限に顔をしかめた時の顔面しわ尺度(FWS)評価で2グレード以上の改善(減少)(IR-2)を達成する点において統計的に有意に優れている、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ボツリヌス神経毒素血清型Eが約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
約150単位の約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eが、少なくとも1つの筋肉に注入される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
中等度から重度の眉間のしわを有するヒト患者に美容処置を行う方法において使用するための、約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eを含む医薬組成物であって、前記方法は治療有効量の約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eが患者に投与されるように医薬組成物を投与することを含み、
前記治療有効量は、約2ngと約10ngの間であり、
前記治療有効量は5回の筋肉内注射で投与され、各注射は、ほぼ等量の約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eを含み、1回の注射は、以下の筋肉:鼻根筋、左内側皺眉筋、右内側皺眉筋、左外側皺眉筋及び右外側皺眉筋
のそれぞれに行われる、前記医薬組成物。
【請求項15】
前記方法が、プラセボが投与される同等の方法よりも、投与後第1、2、7、14、または30日において最大限に顔をしかめた時の顔面しわ尺度(FWS)評価で2グレード以上の改善(減少)(IR-2)を達成する点において統計的に有意に優れている、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
約150単位の約150kDaの純ボツリヌス神経毒素血清型Eが、少なくとも1つの筋肉に注入される、請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、治療における神経毒素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
美容外科手術または形成外科手術は、外観および自信を高めるために身体の構造を向上させ、かつ再形成する外科的および非外科的手技を含む。これらの手技は、ますます一般的になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書で開示するのは、美容処置用の組成物および方法である。例えば、開示された実施形態は、例えば、眉間のしわを処置するための「速効性の」ボツリヌス毒素の使用を含む。
本明細書で開示するのは、傷跡の最小限に使用する組成物および方法である。例えば、開示された実施形態は、創傷に近接する筋肉の緊張を低減し、したがって傷跡を予防しまたは減少するための「速効性の」ボツリヌス毒素の使用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態において、皮膚切開または裂傷に近接する筋肉の活性が減少し、したがって傷跡形成を低減または予防する。
実施形態において、開示された方法は追加の美容手技を含む。例えば、開示された実施形態は、例えば、真皮充填剤注射、アイリフト、鼻形成術、またはこれらに類するものと併用での、速効性ボツリヌス神経毒素の投与を含む。
実施形態において、ボツリヌス毒素は、「高速回復性」毒素である。
実施形態において、「速効性の」ボツリヌス毒素はまた、「高速回復性」毒素でもある。
実施形態において、美容処置は初回投与後の、追加のボツリヌス投与を含んでよい。
実施形態において、開示された方法は、例えば、より遅効性の神経毒素との併用での速効性のボツリヌス神経毒素の投与を含む。
実施形態において、開示された方法は、例えば、徐回復性の神経毒素と併用での、高速回復性ボツリヌス神経毒素の投与を含む。
実施形態において、神経毒素の投与量は、タンパク質の量で表される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】美容外科手術において使用される注射部位を描写する図である。
図2】眉間のしわ治療試験の主要有効性を示すグラフである。
図3】眉間のしわ治療試験の副次的有効性を示すグラフである。
図4】術後疼痛のラットモデルにおける、開示されたE型ボツリヌス組成物の単回局所投与の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に開示の実施形態は、局所筋活性を低減し、それによって美容的な不完全または不整な外観、例えば顔のしわ、を低減する。実施形態において、美容的不整は、眉間のしわ、額のしわ、「バニー」ライン、笑いじわ、顎の不整、広頚筋のすじ(platysmal band)、「マリオネット」ライン、唇のしわ、カラスの足跡、眉の不整、これらの組合せ、およびこれらに類するものを含む。
実施形態は、日光角化症、脂漏性角化症、基底細胞癌、扁平上皮癌、および他の病変または皮下嚢胞の治療などの、皮膚科学的外科手術を含む方法を含む。
開示された実施形態の実施に有用な投与部位は、皺眉筋および鼻根筋を含む眉間複合体;眼輪筋;眼輪筋の上外側線維;前頭筋;鼻筋;上唇鼻翼挙筋;口輪筋;咬筋;口角下制筋;および広頸筋を含んでよい。眉間のしわ治療に有用な典型的な注射部位を図1に示す。
実施形態は、全般的しわの治療を含む。
【0007】
開示された実施形態は、例えば、皮膚障害、例えば、アクネおよびこれらに類するものの治療を含んでよい。開示された実施形態は、炎症性皮膚疾患の治療を含んでよい。例えば、開示された実施形態は、乾癬、湿疹、およびこれらに類するものの治療を含んでよい。
本明細書に開示の実施形態は、局所筋活性を低減し、それによって傷跡、例えば、外科手術により生じる傷跡の発現を低減することができる。実施形態において、外科手術は、美容外科手術、例えば鼻形成術、アイリフト、「タミー」タック(腹壁形成術)、またはこれらに類するものを含んでよい。実施形態において、手術は、他のタイプの医学的手技、例えば、虫垂切除、臓器移植、およびこれらに類するものを含んでよい。実施形態において、方法は、開示された組成物の創傷近接への投与を含む。
本明細書に開示の実施形態は、局所筋活性を低減し、それによって傷跡、例えば、外傷により生じる傷跡の発現を低減することができる。例えば、外傷性障害の後に、開示の実施形態は、開示の組成物の外傷、例えば裂傷または切断近接への投与を含んでよい。
開示された実施形態の実施に有用な投与部位は、筋活性を低減されようとするいかなる部域をも含んでよい。例えば、顔の美容外科手術と併用されるとき、開示された実施形態は、皺眉筋および鼻根筋を含む眉間複合体;眼輪筋;眼輪筋の上外側線維;前頭筋;鼻筋;上唇鼻翼挙筋;口輪筋;咬筋;口角下制筋;および広頸筋への投与を含んでよい。
【0008】
他の外科手術と併用されるとき、開示された実施形態は、例えば、腕、脚、胴体、およびこれらに類するものの筋肉への投与を含んでよい。
開示された実施形態は、切開に近接する筋肉の緊張を低減するために、手術に先立って手術部位を準備するための方法を含んでよい。
開示された実施形態は、例えば、エラスチン、コラーゲン、およびこれらに類するものの産生を促進することができる。開示された実施形態は、皮膚の弾力性を増大する方法を含んでよい。
実施形態において、本明細書に開示の組成物は速効性ボツリヌス毒素、例えば、E型を含んでよい。
実施形態において、本明細書に開示の組成物は早期回復性ボツリヌス毒素、例えば、E型を含んでよい。
実施形態において、本明細書に開示の組成物は速効性、早期回復性ボツリヌス毒素、例えば、E型を含んでよい。
【0009】
定義:
「投与」または「投与する」は、医薬組成物または活性成分を対象者に、与える(すなわち、投与する)ステップを意味する。本明細書に開示の医薬組成物は、いくつかの適切な経路によって投与されてよいが、開示の方法において記述のように、組成物は、例えば、筋肉内投与経路、例えば注射または埋め込み錠の使用により、局所投与される。
「ボツリヌス毒素」または「ボツリヌス神経毒素」は、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)から誘導された野生型神経毒素、ならびに、修飾、遺伝子組換え、ハイブリッドおよびキメラボツリヌス毒素を意味する。遺伝子組換えボツリヌス毒素は、非クロストリジウム種によって遺伝子組換えで産生されたその軽鎖および/または重鎖を有する。本明細書で使用される「ボツリヌス毒素」は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、F、GおよびHを包含する。本明細書で使用される「ボツリヌス毒素」はまた、ボツリヌス毒素複合体(すなわち、300、600および900kDa複合体)ならびに純ボツリヌス毒素(すなわち、約150kDa神経毒素分子)の両方を含み、これらは全て、本発明の実施において有用である。「純ボツリヌス毒素」は、純ボツリヌス毒素または他のタンパク質から単離または実質的に単離されたボツリヌス毒素複合体ならびにボツリヌス毒素が培養または発酵プロセスにより得られるときに伴うことがある不純物を意味する。したがって、純ボツリヌス毒素では、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%の非ボツリヌス毒素タンパク質および不純物が取り除かれている。
【0010】
「生体適合性の」は、埋め込み錠の埋め込み部位において炎症性反応がわずかであることを意味する。
「クロストリジウム神経毒素」は、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ブチリクム(Clostridium butyricum)またはクロストリジウム・ベラッティ(Clostridium beratti)などのクロストリジウム細菌から産生されるか、またはその細菌に特有の神経毒素、ならびに非クロストリジウム種によって遺伝子組換えで産生されたクロストリジウム神経毒素を意味する。
「完全にフリーの」(「からなる」用語)は、使用されている装置またはプロセスの検出範囲内で、物質が検出され得ないかまたはその存在が確認され得ないことを意味する。
「基本的にフリーの」は、使用されている装置またはプロセスの検出範囲内で、微量の物質が検出され得るに過ぎないことを意味する。
【0011】
本明細書で使用される「速効性の」は、患者において、例えば、ボツリヌス神経毒素A型によって発揮されるよりも迅速に、効果を発揮するボツリヌス毒素をいう。例えば、速効性ボツリヌス毒素の効果は、36時間以内に視覚的に認めることができる。
本明細書で使用される「高速回復性」は、患者においてその効果が、例えばボツリヌス神経毒素A型によって発揮される効果よりも迅速に減少するボツリヌス毒素をいう。例えば、早期回復性ボツリヌス毒素の効果は、例えば、120時間、150時間、300時間、350時間、400時間、500時間、600時間、700時間、800時間、またはこれらに類するもの以内に減少する。ボツリヌス毒素A型は、最大で12カ月間の効果を有することが知られている。しかし、ボツリヌス神経毒素A型の筋肉内注射の通常の持続期間は、典型的には約3から4カ月である。
本明細書で使用される「中程度作用性」は、速効性毒素よりも緩徐に効果を発揮するボツリヌス毒素をいう。
「神経毒素」は、神経細胞表面受容体に対して特異的親和性のある生物学的に活性な分子を意味する。神経毒素は、純毒素としての、および1つまたは複数の非毒素、毒素関連タンパク質との複合体としてのクロストリジウム毒素の両方を含む。
【0012】
「患者」は、医療的または獣医学的ケアを受けるヒトまたは非ヒト対象を意味する。
「医薬組成物」は、活性成分がボツリヌス毒素であってよい処方を意味する。用語「処方」は、医薬組成物中に、ボツリヌス神経毒素活性成分に加えて、少なくとも1つの追加の成分(例えば、アルブミン[ヒト血清アルブミンまたは遺伝子組換えヒトアルブミンなどの]および/または塩化ナトリウムなどであるがこれらに限定されるものではない)が存在することを意味する。したがって、医薬組成物は、ヒト患者などの対象者に対する診断的、治療的または美容的投与に適した処方である。医薬組成物は、凍結乾燥または真空乾燥状態、凍結乾燥または真空乾燥された医薬組成物を生理食塩水または水で再溶解した後に形成される溶液、例えば、または、再溶解を必要としない溶液として、であってよい。すでに述べたように医薬組成物は、液体または固体であってよい。医薬組成物は、動物性タンパク質フリーであってよい。
【0013】
「実質的にフリーの」は、培地、発酵培地、医薬組成物またはその中で物質の質量パーセントが算定されるその他の物質の質量の1パーセント未満のレベルで存在することを意味する。
本明細書で使用される「追加の投与」は、初回の神経毒素投与に続くボツリヌス投与をいう。
【0014】
「治療用処方」は、周辺筋肉の活性を特徴とする障害または疾患などの、障害または疾患および/またはそれに付随する症状を治療し、かつ、それによって軽減するために使用することができる処方を意味する。
「治療有効量」は、疾患、障害または病態を、有意な否定的または有害な副作用を起こすことなく治療するのに必要な薬剤(例えば、ボツリヌス毒素またはボツリヌス毒素を含む医薬組成物など)のレベル、量または濃度を意味する。
「治療する」、「治療している」、または「治療」は、例えば、損傷または障害された組織の治癒によって、あるいは既存のまたは知覚される疾患、障害または病態を部分変化させ、変化させ、向上させ、改善し、回復させかつ/または美化することによって、所望の治療的または美容的結果を達成するように、疾患、障害または病態の軽減または減少(若干の減少、顕著な減少、ほぼ完全な減少、および完全な減少を含む)、消散または予防(一時的または持続的な)を意味する。
「単位」または「U」は、1単位の市販のボツリヌス神経毒素A型と等価の神経筋遮断効果を持つよう標準化された活性BoNTの量を意味する。
【0015】
神経毒素組成物
本明細書で開示の実施形態は、神経毒素組成物、例えば、速効性神経毒素組成物、例えば、ボツリヌスE型組成物を含む。こうした神経毒素は、医薬品に許容されるいかなる形態で、医薬品に許容されるいかなる処方に処方化されてもよい。神経毒素はまた、いかなる製造者から供給される医薬品に許容されるいかなる形態で使用されてもよい。
本明細書で開示の実施形態は、神経毒素組成物、例えば、高速回復性神経毒素を含む。こうした神経毒素は、医薬品に許容されるいかなる形態で、医薬品に許容されるいかなる処方に処方化されてもよい。神経毒素はまた、いかなる製造者から供給される医薬品に許容されるいかなる形態で使用されてもよい。
本明細書で開示の実施形態は、多様な神経毒素を含んでよい。例えば、実施形態において、開示された組成物は、2種の神経毒素、例えば2種のボツリヌス神経毒素、例えば速効性およびより遅効性の神経毒素など、例えば、E型およびA型のボツリヌス神経毒素を含んでよい。実施形態において、開示された組成物は、ボツリヌス神経毒素のフラグメント、例えば50kDa軽鎖(LC)を含んでよい。
神経毒素は、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ブチリクム、またはクロストリジウム・ベラッティ細菌などのクロストリジウム細菌によって産生されてよい。さらに、神経毒素は、修飾神経毒素;天然または野生型神経毒素と比較して、少なくともその1つのアミノ酸が除去、修飾または置換されている神経毒素である、であってよい。さらに、神経毒素は、遺伝子組換え産生された神経毒素またはそれらの誘導体またはフラグメントであってよい。
【0016】
実施形態において、開示されたE型組成物は、A型に対して、40%のアミノ酸相同性を有し、両者は、ジスルフィド結合で連結された100kDa重鎖(HC)および50kDa軽鎖(LC)の2つの鎖からなる同一の基本ドメイン構造を共通して有する(Whelan 1992)。HCは、受容体結合ドメインおよびトランスロケーションドメインを含むが、一方、LCは、シナプトソーム関連タンパク質(SNAP)酵素活性を含む。ドメイン構造は、全てのボツリヌス神経毒素神経毒血清型が共有する同一の構造である。
開示された実施形態において、神経毒素は単位投与形態に処方される。例えば、バイアルに入れた無菌溶液として、あるいは生理食塩水などの注射に適した溶媒で再溶解する凍結乾燥粉末を含むバイアルまたはサシェとして、提供されてよい。
実施形態において、ボツリヌス毒素は、生理食塩水および低温殺菌したヒト血清アルブミンを含む溶液に処方化され、これにより毒素を安定化し、非特異的吸着による損失を最小限にする。溶液は、無菌ろ過(0.2μフィルター)され、個々のバイアルに充填され、次いで真空乾燥されてよく、無菌凍結乾燥粉末が得られる。使用において、粉末は、無菌の保存剤を含まない生理食塩水(塩化ナトリウム0.9%注射用)の添加によって再溶解されてよい。
【0017】
実施形態において、ボツリヌスE型は、0.03Mリン酸ナトリウム中20ng/mLの名目上濃度、0.12M塩化ナトリウムおよび1mg/mLヒト血清アルブミン(HSA)含有、pH6.0の注射用無菌溶液として、5mLバイアル入りで供給される。
一実施形態において、ボツリヌスE型は、0.03Mリン酸ナトリウム中10ng/mLの名目上濃度、0.12M塩化ナトリウムおよび1mg/mLHSA含有、pH6.0の注射用無菌溶液として、5mLバイアル入りで供給される。
一実施形態において、ボツリヌスE型は、0.03Mリン酸ナトリウム中5ng/mLの名目上濃度、0.12M塩化ナトリウムおよび1mg/mLHSA含有、pH6.0の注射用無菌溶液として、5mLバイアル入りで供給される。
一実施形態において、ボツリヌスE型は、0.03Mリン酸ナトリウム中1ng/mLの名目上濃度、0.12M塩化ナトリウムおよび1mg/mLHSA含有、pH6.0の注射用無菌溶液として、5mLバイアル入りで供給される。
【0018】
組成物は、ボツリヌスE型などの、1種類の神経毒素のみを含んでもよいが、開示された組成物は、障害に対する治療効果を高めることができる2種類以上の神経毒素を含んでよい。例えば、患者に投与する組成物は、ボツリヌスA型およびE型を含んでよい。2種の異なる神経毒素を含む単一の組成物を投与することは、患者に単一の神経毒素が投与された場合よりも、各神経毒素の有効濃度を下げることを可能にし、それでもなお所望の治療効果を達成する。患者に投与する組成物はまた、他の薬剤的に活性な成分、例えば、タンパク質受容体またはイオンチャネルモジュレーターを、1種または複数の神経毒素と組み合わせて含んでよい。これらのモジュレーターは、種々の神経細胞間の神経伝達の低減に寄与することができる。例えば、組成物は、GABAA受容体によって媒介される抑制効果を高めるガンマアミノ酪酸(GABA)A型受容体モジュレーターを含んでよい。GABAA受容体は、細胞膜を通り抜ける電流を効果的に短絡することにより、神経活動を抑制する。GABAA受容体モジュレーターは、GABAA受容体の抑制効果を高め、神経細胞から電気的または化学的シグナル伝達を低減することができる。GABAA受容体モジュレーターの例には、ベンゾジアゼピン、例えば、ジアゼパム、オキサゼパム、ロラゼパム、プラゼパム、アルプラゾラム、ハラゼパム、コルジアゼポキシド、およびクロルアゼペートが含まれる。組成物はまた、グルタミン酸受容体によって媒介される興奮効果を低減するグルタミン酸受容体モジュレーターをも含んでよい。グルタミン酸受容体モジュレーターの例には、AMPA、NMDAおよび/またはカイニン酸型のグルタミン酸受容体を介しての電流束を抑制する薬剤が含まれる。組成物はまた、ドーパミン受容体を調節する薬剤、例えば、抗精神病薬、ノルエピネフリン受容体、および/またはセロトニン受容体をも含んでよい。組成物はまた、電位依存性カルシウムチャネル、カリウムチャネル、および/またはナトリウムチャネルを介してのイオン流束に影響する薬剤をも含んでよい。したがって、開示された実施形態において使用される組成物は、神経伝達を低減し得るイオンチャネル受容体モジュレーターに加えて、ボツリヌス毒素などの、1つまたは複数の神経毒素を含んでよい。
【0019】
使用方法
本明細書で開示の方法は、速効性の神経毒素の患者への投与を含んでよい。好ましい一実施形態において、神経毒素は、ボツリヌスE型である。
本明細書で開示の方法は、高速回復性神経毒素の患者への投与を含んでよい。好ましい一実施形態において、神経毒素は、ボツリヌスE型である。
本明細書で開示の組成物を投与する前に、治療部位の解剖学的形態に注意深く配慮する必要がある。例えば、実施形態において、治療目標は、もし既知であるならば神経筋接合部が最も集中している部域に注射することである。例えば、筋肉内投与の場合、筋肉注射をする前に、筋肉をその可動域で動かし、結果としての針端部の動きを観察することにより筋肉内での針の位置が確認され得る。全身麻酔、局所麻酔および鎮静は、患者の年齢、注射部位の数、および患者に特有のニーズに応じて使用される。所望の結果を達成するために、1つより多い注射および/または注射部位が必要なことがある。また、注射しようとする筋肉によっては、筋電図により誘導される、細い、中空のTEFLON(登録商標)コートした針の使用を必要とする注射もある。
【0020】
開示された組成物の投与は、例えば、次の骨格筋あるいはそれらの1つまたは複数の周辺への注射、例えば、後頭前頭筋、鼻筋、口輪筋、口角下制筋、広頸筋、胸骨舌骨筋、前鋸筋、腹直筋、外腹斜筋、大腿筋膜張筋、腕橈骨筋、腸腰筋、大腰筋、恥骨筋、長内転筋、縫工筋、薄筋、外側広筋、大腿直筋、内側広筋、大腿四頭筋の腱、膝蓋骨、腓腹筋、ヒラメ筋、脛骨、長腓骨筋、前脛骨筋、膝蓋靭帯、腸脛靭帯、小指球筋、母指球筋、尺側手根屈筋、浅指屈筋、長掌筋、橈側手根屈筋、腕橈骨筋、円回内筋、上腕筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大胸筋、三角筋、僧帽筋、胸鎖乳突筋、咬筋、眼輪筋、側頭筋、帽状腱膜、大円筋、指伸筋、尺側手根伸筋、肘筋、長母指外転筋、足底筋、踵骨腱、ヒラメ筋、大内転筋、大殿筋、中殿筋、広背筋、棘下筋、およびこれらの組合せ、ならびにこれらに類するもの、への注射を含んでよい。
【0021】
開示された組成物の投与は、例えば、次の神経あるいはそれらの1つまたは複数の周辺への注射、例えば、腋窩神経、横隔神経、脊髄神経節、脊髄、交感神経節鎖、陰部神経、総掌側指神経、尺骨神経、尺骨神経深枝、坐骨神経、腓骨神経、脛骨神経、伏在神経、骨間神経、浅腓骨神経、中間足背皮神経、内側足底神経、内側足背皮神経、深腓骨神経、脛骨神経の筋枝、伏在神経の膝蓋下枝、総腓骨神経、大腿神経の筋枝、大腿神経の前皮枝、坐骨神経の筋枝、大腿神経、腸骨鼠経 神経、終糸、腸骨下腹 神経、閉塞神経、尺骨神経、橈骨神経、閉塞神経、橈骨神経、肋下神経、肋間神経、肋間神経の背枝、肋間神経の内側皮枝、筋皮神経、三角筋の神経、迷走神経、腕神経叢、鎖骨上神経、顔面神経、耳介側頭神経、およびこれらの組合せ、ならびにこれらに類するもの、への注射を含んでよい。
開示された組成物の投与に適した平滑筋は、血管壁、胃壁、尿管、腸管、大動脈(中膜層)内、眼の虹彩、前立腺、消化管、気道、小動脈、細動脈、生殖器系(男女両方)、静脈、腎糸球体(メサンギウム細胞と称される)、膀胱、子宮、皮膚の立毛筋、毛様体筋、括約筋、気管、胆管、およびこれらに類するもののいかなるものを含んでもよい。
開示された方法下での注射の頻度および量は、治療される特定の部域の性質および位置に基づいて決定されてよい。しかし、ある特定の場合、反復的または追加的な注射が最適な結果を達成するために所望されてよい。各特定の場合に対する注射の頻度および量は、当業者によって決定されてよい。
【0022】
実施形態において、速効性神経毒素の投与は、外科手術に先んじて行われる。実施形態において、投与は、例えば、手術前36時間以内、手術前24時間以内、手術前22時間以内、手術前20時間以内、手術前18時間以内、手術前16時間以内、手術前14時間以内、手術前12時間以内、手術前11時間以内、手術前10時間以内、手術前9時間以内、手術前8時間以内、手術前7時間以内、手術前6時間以内、手術前5時間以内、手術前4時間以内、手術前3時間以内、手術前2時間以内、手術前60分以内、手術前50分以内、手術前40分以内、手術前30分以内、手術前20分以内、手術前10分以内、手術前5分以内、手術前2分以内、などに行われる。
実施形態において、速効性神経毒素の投与は、外科手術に先んじて行われる。実施形態において、投与は、例えば、手術の36時間以上前、手術の24時間以上前、手術の22時間以上前、手術の20時間以上前、手術の18時間以上前、手術の16時間以上前、手術の14時間以上前、手術の12時間以上前、手術の11時間以上前、手術の10時間以上前、手術の9時間以上前、手術の8時間以上前、手術の7時間以上前、手術の6時間以上前、手術の5時間以上前、手術の4時間以上前、手術の3時間以上前、手術の2時間以上前、手術の60分以上前、手術の50分以上前、手術の40分以上前、手術の30分以上前、手術の20分以上前、手術の10分以上前、手術の5分以上前、手術の2分以上前、などに行われる。
実施形態において、速効性神経毒素の投与は、外科手術と同時に行われる。
実施形態において、速効性神経毒素の投与は、外科手術の後に行われる。例えば、投与は、手術後1分以内、手術後2分以内、手術後3分以内、手術後4分以内、手術後5分以内、手術後6分以内、手術後7分以内、手術後8分以内、手術後9分以内、手術後10分以内、手術後20分以内、手術後30分以内、手術後40分以内、手術後50分以内、手術後60分以内、手術後90分以内、手術後2時間以内、手術後3時間以内、手術後4時間以内、手術後5時間以内、手術後6時間以内、手術後7時間以内、手術後8時間以内、手術後9時間以内、手術後10時間以内、手術後11時間以内、手術後12時間以内、などに行われてよい。
【0023】
本明細書で開示の方法は、患者への速効性神経毒素の初回投与後の追加投与を含んでよい。追加投与を含む実施形態は、先の神経毒素投与の結果の医師または患者による評価をさらに含んでよい。こうした評価は、例えば、写真、スキャニング、またはこれらに類するものの使用を含んでよい。
【0024】
実施形態において、初回の神経毒素投与の結果の評価は、例えば、初回投与の6時間、初回投与の8時間、初回投与の10時間、初回投与の12時間、初回投与の14時間、初回投与の16時間、初回投与の18時間、初回投与の24時間、初回投与の30時間、初回投与の36時間、初回投与の42時間、初回投与の48時間、初回投与の54時間、初回投与の60時間、初回投与の66時間、初回投与の72時間、初回投与の78時間、初回投与の84時間、初回投与の90時間、初回投与の96時間、初回投与の102時間、初回投与の108時間、初回投与の114時間、初回投与の120時間、初回投与の1週間、初回投与の2週間、初回投与の3週間、初回投与の4週間、初回投与の5週間、初回投与の6週間、初回投与の7週間、初回投与の8週間、初回投与の9週間、初回投与の10週間、初回投与の11週間、初回投与の12週間、など以内に行われてよい。
【0025】
追加投与を含む実施形態おいて、追加用量の投与は、例えば、評価の6時間、評価の8時間、評価の10時間、評価の12時間、評価の14時間、評価の16時間、評価の18時間、評価の24時間、評価の30時間、評価の36時間、評価の42時間、評価の48時間、評価の54時間、評価の60時間、評価の66時間、評価の72時間、評価の78時間、評価の84時間、評価の90時間、評価の96時間、評価の102時間、評価の108時間、評価の114時間、評価の120時間、評価の1週間、評価の2週間、評価の3週間、評価の4週間、評価の5週間、評価の6週間、評価の7週間、評価の8週間、評価の9週間、評価の10週間、評価の11週間、評価の12週間、など以内に行われてよい。
【0026】
実施形態において、追加投与は、例えば、初回投与の6時間、初回投与の8時間、初回投与の10時間、初回投与の12時間、初回投与の14時間、初回投与の16時間、初回投与の18時間、初回投与の24時間、初回投与の30時間、初回投与の36時間、初回投与の42時間、初回投与の48時間、初回投与の54時間、初回投与の60時間、初回投与の66時間、初回投与の72時間、初回投与の78時間、初回投与の84時間、初回投与の90時間、初回投与の96時間、初回投与の102時間、初回投与の108時間、初回投与の114時間、初回投与の120時間、初回投与の1週間、初回投与の2週間、初回投与の3週間、初回投与の4週間、初回投与の5週間、初回投与の6週間、初回投与の7週間、初回投与の8週間、初回投与の9週間、初回投与の10週間、初回投与の11週間、初回投与の12週間、など以内に、行われてよい。
【0027】
本明細書で開示の方法は、急速開始の効果を(例えば、速効性神経毒素を用いて)提供することができる。例えば、開示された実施形態は、視覚的にわかる美容効果を、例えば、投与後30分、投与後45分、投与後60分、投与後75分、投与後90分、投与後2時間、投与後3時間、投与後4時間、投与後5時間、投与後6時間、投与後7時間、投与後8時間、投与後9時間、投与後10時間、投与後11時間、投与後12時間、投与後13時間、投与後14時間、投与後15時間、投与後16時間、投与後17時間、投与後18時間、投与後19時間、投与後20時間、投与後21時間、投与後22時間、投与後23時間、投与後24時間、投与後30時間、投与後36時間、投与後42時間、投与後48時間、投与後3日、投与後4日、投与後5日、投与後6日、投与後7日、投与後8日、投与後9日、投与後10日、投与後11日、投与後12日、など以内に、提供することができる。
本明細書で開示の方法は、より短い方向の効果を(例えば、速効性神経毒素を用いて)提供することができる。例えば、開示された実施形態は、例えば、投与後3日、投与後4日、投与後5日、投与後6日、投与後7日、投与後8日、投与後9日、投与後10日、投与後11日、投与後12日、投与後13日、投与後14日、投与後15日、投与後16日、投与後17日、投与後18日、投与後19日、投与後20日、投与後21日、投与後22日、投与後23日、投与後24日、投与後25日、投与後26日、投与後27日、投与後28日、投与後29日、投与後30日、投与後45日、投与後60日、投与後75日、投与後90日、投与後105日など、以内に鎮静する、視覚的にわかる美容効果を提供することができる。
【0028】
副作用は、ボツリヌス注射と関連することがある。開示された実施形態は、従来の神経毒素治療よりも副作用が少ないかまたは持続期間がより短い副作用をもたらす神経毒素治療を提供することができる。
例えば、開示された実施形態は、複視またはかすみ目、眼瞼麻痺(対象者は瞼を完全に開くことができない)、顔面筋肉運動の喪失、しわがれ声、膀胱調節機能不全、息切れ、嚥下困難、しゃべりづらさ、死亡、およびこれらに類するもののより少ない(またはより持続期間が短い)結果をもたらすことができる。
【0029】
本方法は、通常は、加齢、環境への曝露、体重減少、出産、外傷、手術、またはこれらの組合せの結果である、美容的不整の治療に特に適している。加齢および環境への曝露は、皮膚の様々な位置にしわを引き起こすことが多い。他方、体重減少および出産は、皮膚の様々な位置、特に腹部、下半身部域、および脚、にストレッチマークを引き起こすことが多い。外傷および手術は、外傷および手術部域に頻回に、傷跡をもたらす。開示された方法による治療に適した特定の輪郭的欠陥には、顔をしかめた時のしわ、額の線、しわ、カラスの足跡、マリオネットライン、ストレッチマーク、創傷、アクシデント、咬傷、手術、または、これらに類するものが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の治療に特に適するのは、眼、頬、鼻、唇、額、および首などの部域の輪郭的欠陥である。
さらに、開示された実施形態は、より確かな持続期間の美容的結果を患者に提供することができる。例えば、より長期作用性の神経毒素による、効果の持続期間の20%の変動は、有効持続期間において1カ月の差をもたらす可能性がある。開示された早期回復性神経毒素を用いると、この20%の変動は、有効持続期間においてそれほど極端な差を生じることはない。
【0030】
速効性神経毒素の追加投与は、先の美容的神経毒素の投与を効果的に修正または増大することができる。例えば、本明細書で開示の方法は、先の投与による不均一な美容的結果を修正するため、または先の投与の美容的結果を増加するため、または非速効性神経毒素を用いて達成された結果と比較して結果の開始を加速するための追加的投与を含んでよい。
開示された速効性神経毒素組成物は、針または無針装置を用いて投与されてよい。ある特定の実施形態において、方法は、個人の皮下に組成物を注射することを含む。例えば、投与は、約30ゲージ以下の針によって組成物を注射することを含む。ある特定の実施形態において、方法は、ボツリヌス毒素E型を含む組成物を投与することを含む。
【0031】
組成物の注射は、注射器、カテーテル、針および注射のための他の手段によって行われてよい。注射は、顔面、頸部、胴体、腕、手、脚、および足を含むがこれらに限定されるものではない、治療を必要とする哺乳類の身体のいかなる部域に対して行われてもよい。注射は、表皮、真皮、脂肪、筋肉、または皮下層などの特定の部域のいかなる位置に行われてもよい。
開示された方法下での注射の頻度および量は、治療される特定の美容的不整の性質および位置に基づいて決定されてよい。しかし、ある特定の場合、反復的注射が最適な結果を達成するために所望されてよい。各特定の場合に対する注射の頻度および量は、当業者によって決定されてよい。
投与の経路および投与量の例が提供されているが、適切な投与経路および投与量は、一般に、担当医師によって、ケースバイケースで決定される。こうした決定は、当業者にとっては、日常的なことである。例えば、開示された本発明のクロストリジウム神経毒素の投与の経路および投与量は、選択された神経毒素の溶解特性ならびに治療される美容的病態の強度および範囲などの基準に基づいて選択することができる。
【0032】
速効性神経毒素は、約10-3U/kg体重から約35U/kg体重の量で、投与されてよい。一実施形態において、神経毒素は、約10-2U/kgから約25U/kgの量で、投与される。別の一実施形態において、神経毒素は、約10-1U/kgから約15U/kgの量で、投与される。別の一実施形態において、神経毒素は、約1U/kgから約10U/kgの量で、投与される。多くの例において、約1単位から約500単位のボツリヌスE型などの神経毒素の投与は、有効な治療的救済を提供する。一実施形態において、約5単位から約200単位のボツリヌスE型などの神経毒素を使用することができ、別の一実施形態において、約10単位から約100単位のボツリヌスE型などの神経毒素を、筋肉などの標的組織に局所的に投与することができる。
【0033】
実施形態において、投与は、約4単位の神経毒素、または約5単位の神経毒素、または約6単位の神経毒素、または約7単位の神経毒素、または約8単位の神経毒素、または約10単位の神経毒素、または約15単位の神経毒素、または約20単位の神経毒素、または約30単位の神経毒素、または約40単位の神経毒素、または約50単位の神経毒素、または約60単位の神経毒素、または約70単位の神経毒素、または約80単位の神経毒素、または約90単位の神経毒素、または約100単位の神経毒素、または約110単位の神経毒素、または約120単位の神経毒素、または約130単位の神経毒素、または約140単位の神経毒素、または約150単位の神経毒素、または約160単位の神経毒素、または約170単位の神経毒素、または約180単位の神経毒素、または約190単位の神経毒素、または約200単位の神経毒素、または約210単位の神経毒素、または約220単位の神経毒素、または約230単位の神経毒素、または約240単位の神経毒素、または約250単位の神経毒素、または約260単位の神経毒素、または約270単位の神経毒素、または約280単位の神経毒素、または約290単位の神経毒素、または約290単位の神経毒素、または約300単位の神経毒素、または約310単位の神経毒素、または約320単位の神経毒素、または約330単位の神経毒素、または約340単位の神経毒素、または約350単位の神経毒素、または約360単位の神経毒素、または約370単位の神経毒素、または約380単位の神経毒素、または約390単位の神経毒素、または約400単位の神経毒素、または約410単位の神経毒素、または約420単位の神経毒素、または約430単位の神経毒素、または約440単位の神経毒素、または約450単位の神経毒素、または約460単位の神経毒素、または約470単位の神経毒素、または約480単位の神経毒素、または約490単位の神経毒素、または約500単位の神経毒素、などの用量を含んでよい。
【0034】
実施形態において、投与は、約4単位のボツリヌスE型神経毒素、または約5単位のボツリヌスE型神経毒素、または約6単位のボツリヌスE型神経毒素、または約7単位のボツリヌスE型神経毒素、または約8単位のボツリヌスE型神経毒素、または約10単位のボツリヌスE型神経毒素、または約15単位のボツリヌスE型神経毒素、または約20単位のボツリヌスE型神経毒素、または約30単位のボツリヌスE型神経毒素、または約40単位のボツリヌスE型神経毒素、または約50単位のボツリヌスE型神経毒素、または約60単位のボツリヌスE型神経毒素、または約70単位のボツリヌスE型神経毒素、または約80単位のボツリヌスE型神経毒素、または約90単位のボツリヌスE型神経毒素、または約100単位のボツリヌスE型神経毒素、または約110単位のボツリヌスE型神経毒素、または約120単位のボツリヌスE型神経毒素、または約130単位のボツリヌスE型神経毒素、または約140単位のボツリヌスE型神経毒素、または約150単位のボツリヌスE型神経毒素、または約160単位のボツリヌスE型神経毒素、または約170単位のボツリヌスE型神経毒素、または約180単位のボツリヌスE型神経毒素、または約190単位のボツリヌスE型神経毒素、または約200単位のボツリヌスE型神経毒素、または約210単位のボツリヌスE型神経毒素、または約220単位のボツリヌスE型神経毒素、または約230単位のボツリヌスE型神経毒素、または約240単位のボツリヌスE型神経毒素、または約250単位のボツリヌスE型神経毒素、または約260単位のボツリヌスE型神経毒素、または約270単位のボツリヌスE型神経毒素、または約280単位のボツリヌスE型神経毒素、または約290単位のボツリヌスE型神経毒素、または約290単位のボツリヌスE型神経毒素、または約300単位のボツリヌスE型神経毒素、または約310単位のボツリヌスE型神経毒素、または約320単位のボツリヌスE型神経毒素、または約330単位のボツリヌスE型神経毒素、または約340単位のボツリヌスE型神経毒素、または約350単位の神経毒素、または約360単位のボツリヌスE型神経毒素、または約370単位のボツリヌスE型神経毒素、または約380単位のボツリヌスE型神経毒素、または約390単位のボツリヌスE型神経毒素、または約400単位のボツリヌスE型神経毒素、または約410単位のボツリヌスE型神経毒素、または約420単位のボツリヌスE型神経毒素、または約430単位のボツリヌスE型神経毒素、または約440単位のボツリヌスE型神経毒素、または約450単位のボツリヌスE型神経毒素、または約460単位のボツリヌスE型神経毒素、または約470単位のボツリヌスE型神経毒素、または約480単位のボツリヌスE型神経毒素、または約490単位のボツリヌスE型神経毒素、または約500単位のボツリヌスE型神経毒素、などの用量を含んでよい。
【0035】
本明細書で開示するのは、神経毒素投与量を表し、かつ神経毒素投与量を伝えるための方法である。実施形態において、投与量は、タンパク質の量、例えばナノグラム(ng)で表される。実施形態において、神経毒素は、ボツリヌス毒素を含んでよい。
本明細書で開示の方法は、神経毒素、例えば速効性神経毒素、の患者への投与を含んでよく、ここにおいて神経毒素の投与量は、タンパク質の量、例えば1投与あたりのタンパク質の量、で表される。一実施形態において、速効性神経毒素は、ボツリヌス毒素、例えば、ボツリヌスE型である。
【0036】
実施形態において、神経毒素の用量は、タンパク質の量または濃度で表される。例えば、実施形態において、神経毒素は、約.2ngから20ngの量で投与されてよい。一実施形態において、神経毒素は、約.3ngから19ng、約.4ngから18ng、約.5ngから17ng、約.6ngから16ng、約.7ngから15ng、約.8ngから14ng、約.9ngから13ng、約1.0ngから12ng、約1.5ngから11ng、約2ngから10ng、約5ngから7ng、などの量で、筋肉などの標的組織に投与される。
【0037】
実施形態において、投与は、5から7ng、7から9ng、9から11ng、11から13ng、13から15ng、15から17ng、17から19ng、などの総用量を含んでよい。
実施形態において、投与は、5ng以下、6ng以下、7ng以下、8ng以下、9ng以下、10ng以下、11ng以下、12ng以下、13ng以下、14ng以下、15ng以下、16ng以下、17ng以下、18ng以下、19ng以下、20ng以下、などの総用量を含んでよい。
実施形態において、投与は、5ng以上、6ng以上、7ng以上、8ng以上、9ng以上、10ng以上、11ng以上、12ng以上、13ng以上、14ng以上、15ng以上、16ng以上、17ng以上、18ng以上、19ng以上、20ng以上、などの総用量を含んでよい。
【0038】
実施形態において、投与は、約0.1ngの神経毒素、0.2ngの神経毒素、0.3ngの神経毒素、0.4ngの神経毒素、0.5ngの神経毒素、0.6ngの神経毒素、0.7ngの神経毒素、0.8ngの神経毒素、0.9ngの神経毒素、1.0ngの神経毒素、1.1ngの神経毒素、1.2ngの神経毒素、1.3ngの神経毒素、1.4ngの神経毒素、1.5ngの神経毒素、1.6ngの神経毒素、1.7ngの神経毒素、1.8ngの神経毒素、1.9ngの神経毒素、2.0ngの神経毒素、2.1ngの神経毒素、2.2ngの神経毒素、2.3ngの神経毒素、2.4ngの神経毒素、2.5ngの神経毒素、2.6ngの神経毒素、2.7ngの神経毒素、2.8ngの神経毒素、2.9ngの神経毒素、3.0ngの神経毒素、3.1ngの神経毒素、3.2ngの神経毒素、3.3ngの神経毒素、3.4ngの神経毒素、3.5ngの神経毒素、3.6ngの神経毒素、3.7ngの神経毒素、3.8ngの神経毒素、3.9ngの神経毒素、4.0ngの神経毒素、4.1ngの神経毒素、4.2ngの神経毒素、4.3ngの神経毒素、4.4ngの神経毒素、4.5ngの神経毒素、5ngの神経毒素、6ngの神経毒素、7ngの神経毒素、8ngの神経毒素、9ngの神経毒素、10ngの神経毒素、11ngの神経毒素、12ngの神経毒素、13ngの神経毒素、14ngの神経毒素、15ngの神経毒素、16ngの神経毒素、17ngの神経毒素、18ngの神経毒素、19ngの神経毒素、20ngの神経毒素、などの総用量を含んでよい。
【0039】
実施形態において、投与は、1注射あたり、例えば、約0.1ngのボツリヌスE型神経毒素、0.2ngのボツリヌスE型神経毒素、0.3ngのボツリヌスE型神経毒素、0.4ngのボツリヌスE型神経毒素、0.5ngのボツリヌスE型神経毒素、0.6ngのボツリヌスE型神経毒素、0.7ngのボツリヌスE型神経毒素、0.8ngのボツリヌスE型神経毒素、0.9ngのボツリヌスE型神経毒素、1.0ngのボツリヌスE型神経毒素、1.1ngのボツリヌスE型神経毒素、1.2ngのボツリヌスE型神経毒素、1.3ngのボツリヌスE型神経毒素、1.4ngのボツリヌスE型神経毒素、1.5ngのボツリヌスE型神経毒素、1.6ngのボツリヌスE型神経毒素、1.7ngのボツリヌスE型神経毒素、1.8ngのボツリヌスE型神経毒素、1.9ngのボツリヌスE型神経毒素、2.0ngのボツリヌスE型神経毒素、2.1ngのボツリヌスE型神経毒素、2.2ngのボツリヌスE型神経毒素、2.3ngのボツリヌスE型神経毒素、2.4ngの神経毒素、2.5ngの神経毒素、2.6ngのボツリヌスE型神経毒素、2.7ngのボツリヌスE型神経毒素、2.8ngのボツリヌスE型神経毒素、2.9ngのボツリヌスE型神経毒素、3.0ngのボツリヌスE型神経毒素、3.1ngのボツリヌスE型神経毒素、3.2ngのボツリヌスE型神経毒素、3.3ngのボツリヌスE型神経毒素、3.4ngのボツリヌスE型神経毒素、3.5ngのボツリヌスE型神経毒素、3.6ngのボツリヌスE型神経毒素、3.7ngのボツリヌスE型神経毒素、3.8ngのボツリヌスE型神経毒素、3.9ngのボツリヌスE型神経毒素、4.0ngのボツリヌスE型神経毒素、4.1ngのボツリヌスE型神経毒素、4.2ngのボツリヌスE型神経毒素、4.3ngのボツリヌスE型神経毒素、4.4ngのボツリヌスE型神経毒素、4.5ngのボツリヌスE型神経毒素、5ngのボツリヌスE型神経毒素、6ngのボツリヌスE型神経毒素、7ngのボツリヌスE型神経毒素、8ngのボツリヌスE型神経毒素、9ngのボツリヌスE型神経毒素、10ngのボツリヌスE型神経毒素、などの用量を含んでよい。
しかし、最終的に、投与される毒素の量およびその投与の頻度の両方が、治療責任医師の裁量に委ねられることになり、安全性および毒素によってもたらされる効果の問題と見合うことになる。
【0040】
放出制御系は、本明細書で記述の実施形態において、神経毒素を、所定の速度で特定の時間にわたり、in vivo送達するために、使用されてよい。一般に、放出速度は系の設計によって決定され、pHなどの環境条件にほとんど依存しないことがある。薬物を数年の期間にわたって送達することができる放出制御系が知られている。これに反して、持続放出系は、典型的には、薬物を24時間以内に送達し、環境因子が放出速度に影響を及ぼすことがある。したがって、埋め込まれた放出制御系(「埋め込み錠」)からの神経毒素の放出速度は、埋め込み担体物質および薬物自体の生理化学的特性の関数である。典型的には、埋め込み錠は、宿主奏功をほとんどまたは全く誘発しない不活性物質で作られる。
放出制御系は、担体に組み込まれた神経毒素を含んでよい。担体は、ポリマーまたはバイオセラミック物質であってよい。放出制御系は、患者の身体の選択された部位に注射、挿入または埋め込みされてよく、神経毒素が埋め込み錠により、所望の治療効果を与える方法および濃度で放出される間、長期間にわたり、そこに留まる。
ポリマー物質は、拡散、化学反応または溶媒活性化によって、ならびに磁力、超音波または温度変化因子の影響を受けて神経毒素神経毒を放出することができる。拡散は、リザーバーまたはマトリックスからであってよい。化学的制御は、ポリマーの分解またはポリマーからの薬物の切断に起因してよい。溶媒活性化は、ポリマーの膨潤または浸透圧効果を含んでよい。
【0041】
埋め込み錠は、所望の量の安定化した神経毒素を塩化メチレンに溶解した適切なポリマーの溶液に混合することによって調製してよい。溶液は、室温で調製してよい。次いで、溶液を、ペトリ皿に移し、真空デシケーター中で塩化メチレンを蒸発させてよい。所望する埋め込み錠の寸法によって、したがって配合された神経毒素の量によって、神経毒素配合の乾燥埋め込み錠の適切な量を型の中で、約8000p.s.i.で5秒間、または3000p.s.i.で17秒間、圧縮して、神経毒素を被包した埋め込みディスクを形成する。
【0042】
好ましくは、使用される埋め込み物質は、実質的に、無毒性、非発癌性、および非免疫原性である。適切な埋め込み物質には、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(p-HEMA)、ポリ(N-ビニルピロリドン)(p-NVP)+、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(アクリル酸)(PM)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、エチレン-酢酸ビニル(EVAc)コポリマー、ポリビニルピロリドン/メチルアクリレートコポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、コラーゲンおよびセルロース誘導体およびバイオセラミックス、例えばヒドロキシアパタイト(HPA)、リン酸三カルシウム(TCP)、およびリン酸アルミノカルシウム(ALCAP)、などのポリマーが含まれる。乳酸、グリコール酸およびコラーゲンが、生分解性埋め込み錠を作製するのに使用されてよい。
埋め込み物質は、生分解性または生体浸食性であってよい。生体浸食性埋め込み錠の利点は、患者から取り除く必要がないことである。生体浸食性埋め込み錠は、生理活性物質の膜またはマトリックス放出のいずれかに基づいていてよい。PLA-PGAから調製した生分解性マイクロスフィアが、皮下または筋肉内投与で知られている。
【0043】
開示された実施形態を実施するためのキットもまた、本開示によって包含される。キットは、30ゲージ以下の針および対応する注射器を含んでよい。キットはまた、ボツリヌスE型毒素組成物などのクロストリジウム神経毒素組成物をも含む。神経毒素組成物は、注射器に入って提供されてよい。組成物は、針を介して注射可能である。キットは、注射器および針の寸法ならびにそこに含まれる注射可能な組成物の容量に基づき、次にはキットが治療のために設計される特定の美容的欠陥に基づいて、種々の形態に設計される。
【実施例
【0044】
以下の非限定的実施例は、代表的な実施形態のより完全な理解を容易にするために例証のみを目的として提供される。本実施例は、本発明の明細書において記述された実施形態のいかなるものも限定すると解釈されるべきではない。
【0045】
(例1)
眉間のしわ(GL)を治療するためのボツリヌス毒素E型の使用
このファーストインヒューマン、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、昇順用量コホート試験は、EB-001(本明細書で開示のボツリヌスE型組成物)の投与(N=35)またはプラセボ(N=7)の投与を受けた42名の対象を登録した。有効性主要アウトカムは、最大限に顔をしかめた時のGL重症度において、治験医師の評価で2グレード(IR-2)の改善を示した対象の割合であった。安全性の評価は、有害事象(AE)、研究室試験、および身体診察を含んだ。IR-2奏功は、第3コホート(EB-001)を始めにして観察され、より高用量でより高率であった。臨床効果の発現開始は、24時間以内であり、最高用量に関して、14から30日間の範囲の持続期間を伴った。AE発生率は低く、最もよく見られたのは、軽度から中等度の頭痛であった。重篤なAEまたは眼瞼下垂は存在せず、他の安全性評価において臨床的に有意な変化はなかった。
GLにおけるこの臨床試験において、EB-001は、好ましい安全性および忍容性、ならびに、最高用量で、奏効率80%の用量依存的有効性を示した。EB-001の最大臨床効果は、24時間以内に認められ、14から30日間持続した。この区別されるEB-001のプロファイルは、効果の迅速な開始および短い持続性が望ましい審美的および治療的応用に向けての開発を裏付ける。
【0046】
ボツリヌス神経毒素は、アセチルコリンのシナプス前放出を抑制し、自然界で最も強力な分子のうちに入る。筋肉に注射した場合、ボツリヌス神経毒素は、神経筋伝達を抑制し、用量依存性の局所筋弛緩を生み出す。血清型AおよびBを含む、精製ボツリヌス神経毒素は、注射可能な薬物として開発され、種々の神経筋病態を治療するために広く使用されている。ボツリヌス神経毒素血清型Eは、これまで臨床用途には開発されていなかった新規の血清型である。ボツリヌス毒素E型は、全てのボツリヌス神経毒素の中で、作用の最も迅速な開始および最短の持続期間を有する。E型は、ジスルフィド結合で連結された100kDa重鎖および50kDa軽鎖の2つのタンパク質鎖からなる、A型と類似のドメイン構造を有する。E型は、A型と同じシナプス前小胞タンパク質(シナプトソーム関連タンパク質25)を切断することによって神経筋伝達を抑制するが、A型とは切断部位が異なる。運動軸索上の2つの結合部位は、ボツリヌス神経毒素によって、神経細胞の高親和性の認識を媒介する。結合は、先ず細胞表面のガングリオシドによって、次いで特異的タンパク質受容体によって媒介される。これらの受容体は、神経筋結合部において、運動軸索末端に認められる。ボツリヌス毒素A型およびE型はどちらも、特異的受容体のシナプス性小胞タンパク質2と結合することが示されており、これら2つの血清型のみがこの受容体を共通して有する。本試験は、GLの対象において、昇順用量のボツリヌス毒素E型の安全性および有効性を評価する初の臨床試験であった。
【0047】
本試験は、EB-001の安全性および有効性のファーストインヒューマン評価であり、中等度から重度のGLの治療に重点を置いていた。EB-001は、注射用液剤として処方された独自の精製形態のボツリヌス毒素E型である(Bonti,Inc.、Newport Beach、 California、 USA)。本試験は、2つの専門臨床センター(Steve Yoelin,MD Medical Associates、Newport Beach、 California、 USA;Center for Dermatology Clinical Research、Fremont、 California、 USA)において行われた、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、昇順用量コホート試験であった。本試験は、施設内審査委員会(Aspire Institutional Review Board、Santee、 California、 USA)によって認可され、ヘルシンキ宣言により設定されたガイドラインに従って実施された。書面によるインフォームドコンセントが全対象から、試験参加前に受領された。
【0048】
総計42名の健常な毒素未投与の18歳から60歳の男性および女性対象が試験に登録された。各対象の参加は、約6週間継続することになっていた。主要な選択基準は:最大限に顔をしかめた時に中等度から重度と評価される左右対称なGLの存在、自らの顔のしわを正確に評価するのに眼鏡なしで十分な視力(コンタクトレンズの使用は許容される)、および試験の要件に従う能力、であった。主要な除外基準は:何らかの非制御の全身性疾患またはその他の病状、ボツリヌス神経毒素への曝露により対象のリスクを高めるおそれがある何らかの病状(診断された重症筋無力症、イートンランバート症候群、筋萎縮性側索硬化症、または神経筋機能を妨げる他の何らかの病状を含む)、現在または以前のボツリヌス神経毒素治療、ボツリヌス神経毒素に対する既知の免疫処置または過敏症、試験前3から12カ月以内の事前に定められた皮膚科学的手技(非侵襲性の表面修復、顔の美容手技、外用/経口レチノイド治療など)、および眼窩周辺の手術または治療歴であった。女性は、妊娠中、授乳中、または妊娠を予定している場合は、登録されなかった。妊娠可能な女性パートナーがいる男性は、投与後の3カ月間、二重の避妊法を使用することに同意した場合のみ、登録された。
【0049】
スクリーニングにおいて、対象の人口統計学的特性、病歴、および前治療薬および併用薬が記録され、アルコール/薬物選別が行われた。標準化された顔面写真撮影が、治療前のベースライン時、毎回のフォローアップ来診の際、および試験終了時に行われたが、写真は、有効性の評価には使用されなかった。
【0050】
7つのコホート(1コホート当たり6名の対象)が登録され、昇順用量のEB-001またはプラセボを5:1の割合で、投与された。このファーストインヒューマン試験における最高推奨開始用量(安全係数10-fold)が、前臨床安全性および毒性試験(データ未発表)からの無毒性量に基づいて設定された。ここから、基本用量(コホート1)が算出され、かつ準有効(sub-efficacious)用量が決定され、コホート2から7が、基本用量を、それぞれ、3、9、12、16、21および28回投与された。これは、EB-001の準有効用量から最大有効用量に相当していた。総用量を5つの注射部位に等しい容量で(各部位あたり0.1mLを、鼻根筋、左右の内側皺眉筋、および左右の外側皺眉筋に)標準化された方法で投与した(図1を参照)。外側皺眉筋への注射は、眼窩上隆起から上方へ約1cm、間隔を開けた。EB-001は、5mLバイアル入りで、注射用無菌溶液として供給された。プラセボは、EB-001を含まない同型のバイアル入りで供給された。
各対象は、スクリーニング(-30日から-1日)、ベースライン/注射(第0日)、第1、2、7、14日、および第30日(試験終了日)、および第42日(最終安全性フォローアップ)における来診を完了した。
【0051】
安全性は、有害事象(AE)、研究室試験、心電図(ECG)、身体診察、バイタルサイン(脈拍数、呼吸数、および血圧)、尿妊娠検査(妊娠可能性のある女性が対象)、およびボツリヌス神経毒素の拡散可能性を評価するための集中的神経学的検査によって評価した。治療下で発現した有害事象(TEAE)は、試験治療への曝露後に始まったかまたは重症度を悪化させた何らかのAEとして定義した。AEおよびTEAEは、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA、バージョン19.0)を用いて器官別大分類および基本用語別に集約した。重篤なAE(SAE、または医薬品重症度に関する規制基準を満たしたAE)、およびAEに起因する中止もまた評価した。AEの重症度は、軽度、中等度、重度、または生命を脅かす事象として記録した。各用量コホートへの登録の前に、安全性データ審査委員会が開催され、以前のコホートからの全ての安全性データを解析した。
【0052】
スクリーニング時、ベースライン時、および第1、2、7、14および30日に、対象のGLを、最大限に顔をしかめた時および安静時に、顔面しわ尺度(FWS)を用いて評価した。評価は治験医師および対象によって達成された。FWSは、顔のしわの重症度の評価に関して使用される広く受け入れられている方法である。本試験において、GLの重症度を示す4段階尺度は、次の通りであった:0=なし、1=軽度、2=中等度、3=重度。対象は、治験医師のFWS評価に基づき少なくとも2グレードの改善(減少)(IR-2)を達成した場合、治療奏効者とみなされた。主要有効性変数は、第30日までのいずれかのベースライン後の来診における最大限に顔をしかめた時のIR-2奏効者の割合であった。対象の追加の有効性評価項目は、第1、2、7、14、または30日において、治験医師が評価したFWSグレードで、なしまたは軽度(来診時ごとに解析)を達成した奏効者の割合であった。
【0053】
2つの解析母集団が、安全性集団および有効性集団に、予め指定された。プラセボ投与を受けた対象は、全ての解析のためにプールした。安全性集団には、試験治療を受け、その後少なくとも1回の安全性評価を受けた全ての対象が含まれた。全てのTEAEおよびSAEが治療群ごとに集約された。研究室試験、ECG、身体診察、バイタルサイン、尿妊娠検査、および集中的神経学的検査を含む、全ての安全性パラメーターが、治験医師により審査され、臨床的有意性が評価された。有効性集団は、少なくとも1用量の試験治療を受け、かつ少なくとも1回のベースライン後有効性評価値がある全ての無作為化された対象として定義されるmodified intent-to-treat(mITT)集団であった。人口統計学的およびベースライン特性の解析は、mITT集団に関して行われた。病歴は、安全性集団に基づいており、MedDRAを用いてコード化し、器官別大分類および基本用語別に集約した。前治療薬および併用薬は、安全性集団に基づいており、WHO(World Health Organization)の解剖治療化学分類法(Anatomical Therapeutic Chemical classification)インデックスを用いてコード化し、薬物クラスおよび治療群ごとに集約した。有効性解析は、mITT集団を用いて行った。FWSグレードは、頻度カウントおよび奏効率(%)を用いて、治療および試験日ごとに集約した。各EB-001コホートのIR-2奏効者の割合対(プールされた)プラセボを比較する解析は、有意性レベル0.05のフィッシャーの正確検定を用いて行った。
【0054】
試験のために選別された59名の対象者のうち、43名が7つのコホートのうちの1つに登録された。1名の対象は、治療を受けず、結果的に、42名の対象が、mITTおよび安全性集団に含まれた(EB-001治療35名およびプラセボ処置7名)。1名の対象はフォローアップから離脱し、41名の対象が、試験をやり遂げた。mITT集団の人口統計学的およびベースライン特性を表1に示す。対象の平均(範囲)年齢は、EB-001投与(プールされた)対象対(プールされた)プラセボ群対象で、それぞれ、47.9(22~60)歳および50.4(32~57)歳であった。対象の大部分は、女性であり(EB-001=91.4%;プラセボ=85.7%)、白人であった(どちらの群でも71.4%)。最大限に顔をしかめた時の治験医師評価によるGLのベースライン平均値(標準偏差[SD])は、EB-001群およびプラセボ群で、それぞれ、2.6(0.50)および2.9(0.38)であった。EB-001群およびプラセボ群は、実質的な群間差はなく、良くバランスされていた。
【0055】
第30日までのいずれかのベースライン後の来診時における最大限顔をしかめた時のGLの重症度に対してIR-2奏功を達成したmITT集団中の対象の割合を用量コホートごとに図2に示す。コホート3において、40%の対象がIR-2奏効者であった。この奏効率は、全てのより高用量コホートにおいては、これと同等かまたはこれよりも高く、コホート6および7は、IR-2奏効者が80%であった。コホート6および7は、プラセボに対して有意により高いIR-2奏効者のパーセンテージを示した(P=0.046)。図3は、第30日までのいずれかのベースライン後来診時における最大限顔をしかめた時の治験医師評価によるFWSグレードがGLなしまたは軽度GLであった各コホート中の対象の割合を集約している。コホート2から7(両端を含む)は、プラセボに対し奏効者のパーセンテージがより高く、コホート3以上では60%から100%の率を達成した。コホート3から7において、第1、2、および/または7日において、奏功なしまたは軽度の奏功が最も多く観察された。奏効者1名(20%)が観察されたのは、コホート3、5、6および7において第14日、コホート3および5において第30日であった。安全性の結果は、この集団において、IM注射として投与された、全ての評価された用量のEB-001の安全性を裏付ける。神経学的検査、ECG、身体診察、または研究室試験においてベースラインからの臨床的に有意な変化は、いずれの対象においても観察されなかった。
【0056】
EB-001治療を受けた5名の対象が、TEAEを報告したが、プラセボ群には報告した者はいなかった。SAEは報告されず、試験の中止に至るようなTEAEはなかった。全てのTEAEは、重症度において、軽度または中等度であった。咽頭痛およびインフルエンザ様症状の事象は、治療とは無関係であるとみなされた。3名の対象が頭痛のTEAEを報告し、そのうち1名は、治療に関連するとみなされた。頭痛の発症において用量関連性の増加はなかった。眼瞼下垂の発症または毒素の拡散に関連すると思われる他のTEAEは、なかった。
【0057】
我々の知る限りでは、これは、何らかの審美的または治療的使用におけるボツリヌス毒素E型製品の初の制御された臨床試験である。IM投与された新規の精製形態のボツリヌス毒素E型であるこのEB-001のファーストインヒューマン試験は、EB-001の安全性、忍容性、および有効用量範囲を評価するという目的を果たした。EB-001のより高い用量を投与されたコホートにおいて治療奏効者の割合がより大きく、用量反応が認められた。IR-2奏功は、コホート3を始めとして観察され、より高用量のコホートにおいて増加し、EB-001の有効用量範囲は、コホート4から7において使用された用量であり得ることを示唆している。コホート6および7は、80%IR-2奏効者を有し、承認されているボツリヌス毒素A型製品と同様の奏効率であった。FWSグレードで、なしまたは軽度を達成した対象は、コホート2を始めとして観察された。効果の開始に関して、治療奏功は、早くも投与後24時間に観察され、これは、ボツリヌス毒素E型はA型よりも迅速な開始を有することを示唆する先の報告を裏付ける。
【0058】
なしまたは軽度の評価を受けた奏効者の割合として定義された効果の持続期間に関して、第14日までに、高い方の用量の5つのコホートの大部分において1名の対象が、また第30日までに、高い方の用量の5つのコホートのうちの2つにおいて1名の対象が観察された。EB-001の全ての用量が、局所注射部位反応を起こすことなく、良好な忍容性を示した。SAEまたは重篤なTEAEは報告されず、またTEAEによる中止は、なかった。最もよく見られた頭痛というTEAEは、重症度において軽度または中等度であり、その他の治療関連AEはなかった。いずれの用量レベルにおいても眼瞼下垂の発症はなく、毒素の拡散に関連すると思われる事象はなかった。したがって、本試験において臨床的安全性および忍容性プロファイルは、好ましいと思われる。EB-001の有効性および安全性プロファイルは有望であり、GLの治療および他の顔面への審美的用途における独特な治療選択肢としてのEB-001の可能性を裏付ける。迅速な開始は、予期せぬ社会的または職業的出来事の前に顔のしわの迅速な治療を求めている人々の満たされていないニーズを満足させることができる。効果の限定された持続期間は、ボツリヌス神経毒素治療を初めて使用しようと考えている人々にとって有益であり得、また長期間の約束をするのは不本意である。EB-001治療は人々に、ボツリヌス毒素A型製品の効果持続期間12週間と比較して、より短い持続期間にわたる審美的効果の評価を可能にするであろう。GLの対象におけるこの初めての臨床試験において、EB-001は全てのコホートにおいて好ましい安全性および忍容性を示した。7つのコホートのうち5つが、プラセボと比較して、数値的に高い奏効率を示した。これは、GLの重症度低減におけるEB-001の有効性を裏付ける。2つの最高用量は、承認されているボツリヌス毒素A型製品と同様の80%の奏効率をもたらした。A型製品の既知のタイムコースとは対照的に、EB-001の臨床効果は24時間以内に認められ(開始)、かつ14~30日間継続した(持続期間)。この区別される臨床プロファイルは、効果の迅速な開始および短い持続時間が望ましい顔面への審美的使用および重要な治療的使用のためのEB-001の将来の進歩を裏付ける。
【0059】
【表1】
(例2)
カラスの足跡を治療するためのボツリヌス毒素E型の使用
長年の日光曝露により生じたカラスの足跡がある57歳の男性は、主治医に治療を求める。医師は、本明細書で開示の組成物を推奨し、組成物を患者の眼の両側に皮下注射する。各注射部位には、約3単位のE型ボツリヌス毒素が投与され、眼のどちら側にも数カ所の注射が行われる。カラスの足跡は、治療後約2日で消失し、2カ月間、減少したままである。
【0060】
(例3)
眉リフトへのボツリヌス毒素E型の使用
60歳の女性は、眉毛が眉骨の下方に延長している。医師は、本明細書で開示の組成物を推奨し、組成物を各眼の上に皮下注射する。各注射部位には、約10単位のE型ボツリヌス毒素が投与され、眼のどちら側にも数カ所の注射が行われる。眉の垂れ下がりは約2日以内に減少し、投与後3カ月間実質的に軽減される。
【0061】
(例4)
豊胸へのボツリヌス毒素E型の使用
30歳の女性は、豊胸手術を選択する。手術の4時間前に、ボツリヌス毒素E型を、外科的切開を行おうとする場所に近接して投与する。投与は、切開部域における筋肉の緊張を低減し、最小限の傷跡という結果をもたらす。手術の2週間後、追加用量を投与する。
【0062】
(例5)
乳房再建へのボツリヌス毒素E型の使用
30歳の女性は、乳房再建手術を選択する。手術の14時間前に、ボツリヌス毒素E型を、外科的切開を行おうとする場所に近接して投与する。投与は、切開部域における筋肉の緊張を低減し、最小限の傷跡という結果をもたらす。手術の2週間後、追加用量を投与する。
【0063】
(例6)
会陰切開を治療するためのボツリヌス毒素E型の使用
44歳の女性が会陰切開を受けている。手術直後に、4ngのE型ボツリヌス毒素を手術部域周辺の組織に投与する。20時間以内に、創傷周辺の筋肉および神経の活性が大きく減少する。
【0064】
(例7)
スポーツヘルニアを治療するためのボツリヌス毒素E型の使用
28歳の男性がスポーツヘルニアに罹患している。主治医は、4ngのE型ボツリヌス毒素を両ヘルニア周辺の組織に投与する。10時間以内に、障害周辺の筋肉および神経の活性が大きく減少する。
【0065】
(例8)
肩分離症を治療するためのボツリヌス毒素E型の使用
48歳の男性が肩分離症に罹患している。主治医は、4ngのE型ボツリヌス毒素を両ヘルニア周辺の組織に投与する。16時間以内に、障害周辺の筋肉および神経の活性が大きく減少する。
【0066】
(例9)
前十字靭帯断裂を治療するためのボツリヌス毒素E型の使用
23歳の女性が前十字靭帯断裂に罹患している。損傷の6時間後に、主治医は、7ngのE型ボツリヌス毒素を断裂した靭帯周辺の筋肉に投与する。30時間後、創傷周辺の筋肉および神経の活性が大きく減少する。
結びとして、本明細書の態様は、具体的な実施形態を参照することにより強調されるが、これらの開示された実施形態が本明細書で開示の主題の原理の例証となるのみであることを当業者であれば容易に認識するであろうことを理解されたい。したがって、開示された主題は、本明細書に記載の、特定の方法、プロトコール、および/または試薬などに限定されるものでは全くないことが理解されるべきである。したがって、開示された主題に対する種々の修正または変更、あるいは代替構成が、本明細書の精神から離れることなく本明細書の教示に従って、なされてよい。最後に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的としており、請求項によってのみ定義される本開示の範囲を限定することは意図されていない。したがって、本開示の実施形態は、示されおよび記述された全くその通りの実施形態に限定されるものではない。
ある特定の実施形態は、本明細書に記述されており、本明細書に記述の方法および装置を実施するための発明者が知る最良の態様を含む。当然のことながら、これらの記述された実施形態の変形例は、前述の説明を読めば、当業者には明らかになる。したがって、本開示は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の請求項に列挙する主題の全ての変更および均等物を含む。さらに、前述の実施形態の全ての可能な変形例におけるいかなる組合せも、本明細書で特段の指示がない限りあるいは文脈によって特に明らかに否定されない限り、開示によって包含される。
本開示の代替の実施形態、要素、またはステップのグループは、限定と解釈されるべきではない。各グループメンバーは、単独でまたは本明細書で開示の他のグループメンバーとの何らかの組合せで、参照されるかまたは主張されてよい。利便性および/または特許性上の理由で、1グループの1つまたは複数のメンバーがグループに含まれるかまたはグループから削除され得ることが予想される。そうした包含または削除が発生した場合、本明細書は、添付の請求項において使用される全てのマーカッシュグループの記載された説明を満たすように変更されたグループを含むと考えられる。
【0067】
特段の指示がない限り、本明細書および請求項において使用される特徴、項目、量、パラメーター、特性、期間などを表す全ての数字は、全ての例において、用語「約」によって修飾されるものと理解されるべきである。本明細書で使用するとき、用語「約」は、そのように修飾される特徴、項目、量、パラメーター、特性、または期間が、明言された特徴、項目、量、パラメーター、特性、または期間の値の上および下にプラスまたはマイナス10パーセントの範囲を含むことを意味する。したがって、特にそれと反対の指示がない限り、本明細書および添付の請求項において明記される数値パラメーターは、変動することがある近似値である。最低限でも、また請求項の範囲への均等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、各数値表示は、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、また通常の概算方法を適用することによって、解釈されるべきである。開示の広い範囲を明記している数値範囲および値が近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例において明記される数値範囲および値は可能な限り正確に報告される。しかし、いかなる数値範囲および値も、それら個々の試験測定において認められる標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本質的に含む。本明細書での値の数値範囲の記載は、単に、各々の別個の値が範囲内に入っていることをそれぞれに表す簡潔な方法として役立つことを意図されている。本明細書において特段の指示がない限り、数値範囲の個々の値は、あたかも本明細書で個々に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0068】
本開示を記述する文脈において(特に以下の請求項の文脈において)使用される用語「a」、「an」、「the」および類似の指示対象は、本明細書において特段の指示がない限り、あるいは文脈によって特に明らかに否定されない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。本明細書で記載の全ての方法は、本明細書において特段の指示がない限り、あるいは文脈によって特に明らかに否定されない限り、いかなる適切な順序で行われてもよい。いずれかのおよび全ての例の使用、または本明細書で示される例示用語(例えば、「such as(などの)」)は、単に開示をより良く明らかにすることを意図されており、別に主張される範囲の限定を提示するものではない。本明細書において、本明細書で開示の実施形態の実施に不可欠ないかなる非請求の要素をも示すと解釈されるべき語は、全くない。
【0069】
本明細書で開示の具体的な実施形態は、語からなるあるいは基本的に語からなることを用いる請求項においてさらに限定されてよい。請求項において使用されるとき、出願としてであれ、補正による追加であれ、移行用語「consisting of(からなる)」は、請求項において明記されないいかなる要素、ステップ、または成分をも除外する。移行用語「consisting essentially of(から基本的になる)」は、請求項の範囲を、明記された物質またはステップならびに基本的および新規の特徴に実質的に影響を与えることのないものに限定する。そのように主張された本開示の実施形態は、本明細書において本質的にまたは明確に記述され、可能にされる。
図1
図2
図3
図4