(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】フェノール樹脂発泡体、この製造方法及びこれを含む断熱材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20241216BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C08J9/14 CEZ
C08J9/04 103
(21)【出願番号】P 2020503809
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 KR2020000896
(87)【国際公開番号】W WO2021145492
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-10-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルエックス・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LX HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】98, Huam-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,インスン
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ソンウ
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ヒェミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョンへ
(72)【発明者】
【氏名】パク,グンピョ
(72)【発明者】
【氏名】ペ,スンジャ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドフン
(72)【発明者】
【氏名】ミン,キュンス
(72)【発明者】
【氏名】カン,ギルホ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020049(JP,A)
【文献】特開2010-185061(JP,A)
【文献】特開2007-070508(JP,A)
【文献】特開2002-363327(JP,A)
【文献】特開2010-285496(JP,A)
【文献】特開2010-138219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C44/00-44/60
B29C67/20
C08J9/00-9/42
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡性組成物の熱硬化物で
あるフェノール樹脂発泡体であって、
pHが4以上であり、
前記フェノール樹脂発泡体のセル(cell)の頂点(vertex)部分を、エネルギー分散型X線分光計(EDX;energy dispersive X-ray analysis))で測定した硫黄に対する炭素の質量比(C/S)が25~250であり、
前記フェノール樹脂発泡体のセルの頂点部分を、エネルギー分散型X線分光計(EDX;energy dispersive X-ray analysis))で測定した硫黄に対する酸素の質量比(O/S)が5~60であり、
KS M ISO 844による圧縮強度が100kPa~300kPaであ
り、
前記発泡性組成物は、架橋剤を更に含み、
前記架橋剤は、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン、p-メチロールフェノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つの架橋剤をさらに含み、
前記硬化剤対前記架橋剤の重量比が6:4~3:7であり、
前記発泡性組成物は、前記フェノール系樹脂100重量部に対し、前記硬化剤を5重量部~10重量部で含む、
フェノール樹脂発泡体。
【請求項2】
20℃における前記発泡剤の蒸気圧が20kPa~110kPaである、
請求項
1に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項3】
前記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin、HFO)系化合物、炭化水素系化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つを含む、
請求項1
又は2に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項4】
前記硬化剤は、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スチレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
【請求項5】
下記数式3による厚み偏差が5%以下である、
請求項
1に記載のフェノール樹脂発泡体:
[数式3]
厚み偏差(T
d、%)=(T
max-T
min)/T
avg×100
上記数式3において、前記T
maxは、厚み偏差を測定しようとする発泡体に対して測定した最大厚みを意味し、前記T
minは、前記発泡体に対して測定した最小厚みを意味し、T
avgは、前記発泡体に対して測定した平均厚みを意味する。
【請求項6】
請求項1~
請求項5のうちいずれか一項によるフェノール樹脂発泡体を含む、
断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フェノール樹脂発泡体、この製造方法及びこれを含む断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱材は、熱硬化性発泡体を含むものであって、建築物の壁面に断熱材を設けて熱の移動を防ぐことにより、外部の温度変化が建築物の内部温度に及ぼす影響を減らして、より少ないエネルギーで一定した室内温度を維持させることができるようにするものである。
【0003】
熱硬化性発泡体は、発泡性組成物の硬化物であり、発泡性組成物は、硬化剤を含み、硬化剤は、発泡層を硬化させて適宜の独立気泡率及び機械的物性を付与することができる。一方、硬化剤を含むフェノール樹脂発泡体は、酸性を有するものと知られているが、このような高い酸性を有するフェノール樹脂発泡体は、使用過程において例えば、雨水等の水に露出する場合、発泡体から高い酸性抽出物が出て、周辺の金属材料を腐食させる問題があり得る。
【0004】
このため、発泡性組成物に塩基性無機フィラー等を添加して、熱硬化性発泡体の酸性度を中和することができるが、塩基性無機フィラーが硬化剤と予め中和反応して発泡性能が落ち、これによって熱伝導率が高くなる問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、pH4以上の低酸性を有すると共に、均一な厚みで優れた耐久性及び熱伝導率等の物性を具現することのできるフェノール樹脂発泡体を提供することにある。
【0006】
本発明の他の課題は、前記フェノール樹脂発泡体の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の課題は、前記フェノール樹脂発泡体を含む断熱材を提供することにある。
【課題を解決しようとする手段】
【0008】
本発明の一具現例において、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡性組成物の熱硬化物であり、pHが4以上であるフェノール樹脂発泡体を提供する。
【0009】
本発明の他の具現例において、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡性組成物を準備するステップ;及び前記発泡性組成物に熱を加えて発泡及び硬化させるステップ;とを含むフェノール樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明のさらに他の具現例において、前記フェノール樹脂発泡体を含む断熱材を提供する。
【発明の効果】
【0011】
前記フェノール樹脂発泡体は、pH4以上の低酸性を有すると共に、均一な厚みで優れた耐久性及び熱伝導率等の物性を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一具現例によるフェノール樹脂発泡体の走査電子顕微鏡(SEM)写真。
【
図2】本発明のフェノール樹脂発泡体の厚み偏差を測定する方法を簡略に示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述の実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態に具現されるものである。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にして、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0014】
図面における複数の層及び領域を明確に表現するため厚みを拡大して示した。また図面において、説明の便宜のため一部の層及び領域の厚みを誇張して示した。全明細書における同じ参照符号は、同じ構成要素を指す。
【0015】
また、本明細書における層、膜、領域、板等の部分が他の部分の「上に」又は「上部に」あると言うとき、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言うときには、中間に他の部分がないことを意味する。また、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の「下に」又は「下部に」あると言うとき、これは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「真下に」あると言うときには、中間に他の部分がないことを意味する。
【0016】
本発明の一具現例において、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡性組成物の熱硬化物であり、pH4以上であるフェノール樹脂発泡体を提供する。
【0017】
一般に熱硬化性発泡体は、硬化剤を含み、発泡層を硬化させて、適宜の独立気泡率及び機械的物性を付与することができる。しかし、硬化剤を含む熱硬化性発泡体、例えば、フェノール樹脂発泡体は、高酸性硬化剤を含み、熱硬化性発泡体のpHが低くなり、高酸性の熱硬化性発泡体によって周辺の金属材料が腐食する等の問題があり得る。また、低酸性の熱硬化性発泡体を製造するために硬化剤の含量を減少させると、発泡性能及び硬化性能を調節しにくくなり、均衡が破れ、かつ熱硬化性発泡体の見掛け不良、高い熱伝導率等の問題が発生し得る。また、これを改善するため反応性を高くしたフェノール系樹脂を用いるか硬化温度を高くして生産する場合、一定以上の均一な厚みを有する熱硬化性発泡体を生産し難い問題があり得る。
【0018】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡性組成物の熱硬化物を含み、前記組成物を調節して、均一な厚みを有し、かつ優れた耐久性及び熱伝導率を具現すると共に、pH4以上の低酸性を有し得る。具体的には、前記フェノール樹脂発泡体のpHは、4~7又は4.5~7であってもよく、又は5~6であってもよい。前記フェノール樹脂発泡体は、高い独立気泡率を有し、かつ均一な厚み、優れた圧縮強度及び熱伝導率を具現して、優れた断熱性能を表すと共に、前記pH範囲の低い酸性を示すことで、より安定してフェノール樹脂発泡体を生産することができ、周辺の金属等を腐食させないため、より安定して長期間使用することができる。
【0019】
前記発泡性組成物は、フェノール系樹脂を含む。前記フェノール系樹脂は、フェノール及びホルムアルデヒドが反応して得られ、例えば、レゾール系フェノール樹脂を含んでいてもよい。
【0020】
前記発泡性組成物は、前記フェノール系樹脂を約30重量%~約90重量%の含量で含んでいてもよい。前記フェノール系樹脂を前記範囲内の含量で含むことで、発泡セルを安定して形成し、優れた熱伝導度を具現することができる。具体的には、前記フェノール系樹脂を前記範囲未満で含む場合、発泡セルを形成しにくくて、熱伝導率が高くなるし、前記範囲を超える場合、他の添加剤等の割合が相対的に低くなり、発泡セルの形状や発泡工程における不良が発生し得る。
【0021】
前記フェノール系樹脂は、約40℃の温度条件下で、約1,000cps~約30,000cpsの粘度を有してもよく、具体的には、約2,000cps~約10,000cpsの粘度を有してもよい。より具体的には、約3,000cps~約7,000cpsの粘度を有してもよい。前記粘度は、ブルックフィールド粘度計を利用して測定することができる。
【0022】
前記発泡性組成物は、前記範囲の粘度を有するフェノール系樹脂を含み、発泡性能を好適に調節することができ、これによって発泡セルがうまく形成され、独立気泡(cell)率を向上させて、優れた熱伝導率を付与することができる。具体的には、前記フェノール系樹脂の粘度が前記範囲未満である場合、発泡の初期に発泡ガスの損失が発生し得るし、これによって熱伝導率が高くなり、断熱性が低下し得る。また、粘度が前記範囲を超える場合、硬化速度が発泡速度に比べて早くなり、好適の大きさを有する発泡セルがうまく形成されず、発泡体を目的とする一定以上の厚みで形成できない問題があり得る。
【0023】
また、前記フェノール系樹脂は、水分率が約5重量%以上であってもよく、具体的には、約5重量%~約30重量%であってもよい。より具体的には、約7重量%~約23重量%であってもよい。前記水分率は、Karl Fischer Titration方法によって測定することができる。前記フェノール系樹脂は、前記範囲内の水分率を有することで、優れた作業性及び優れた断熱性を具現することができる。具体的には、前記フェノール系樹脂の水分率が前記範囲を脱して、水分率が低過ぎる場合、発泡性組成物が他の成分と円滑に配合しにくくて工程上の制御が難しいことがあり、水分率が高過ぎる場合、断熱性が低下して熱硬化性発泡体の接着性が落ち得る。このため、前記フェノール樹脂発泡体は、表面材等とラミネート方法によって堅く付着し難いことがある。
【0024】
また、前記フェノール系樹脂は、ウレア結合を含まなくてもよい。それによって、フェノール樹脂の重合過程において、ウレア-ホルムアルデヒド反応によって発生する水分が生成されず、前記発泡性組成物の粘度及び水分を調節しやすい。
【0025】
前記発泡性組成物は、硬化剤を含む。前記硬化剤は、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つの酸硬化剤を含んでいてもよい。前記発泡性組成物は、前記硬化剤を含み、好適な架橋、硬化及び発泡性を表し得る。
【0026】
前記発泡性組成物は、前記フェノール系樹脂100重量部に対し、前記硬化剤を約3重量部~約15重量部の含量で含んでいてもよい。例えば、前記硬化剤は、前記フェノール系樹脂100重量部に対し、約5重量部~約12重量部又は約5重量部~約10重量部の含量で含んでいてもよい。前記発泡性組成物は、前記硬化剤を上記のように低い含量で含み、前記フェノール樹脂発泡体に低酸性を付与することができると共に、均一な厚み、優れた圧縮強度及び低い熱伝導率を具現して、優れた断熱性能を付与することができる。
【0027】
具体的には、前記硬化剤の含量が前記範囲未満である場合、pHは、さらに高くなり得るが、断熱材としての性能が顕著に落ちる問題があり、前記範囲を超える場合には、酸性度が高くなる、すなわち、pHが低くなる問題があり得る。
【0028】
前記発泡性組成物は、発泡剤を含む。前記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin、HFO)系化合物、炭化水素系化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含んでいてもよい。
【0029】
前記発泡性組成物は、発泡剤の種類及び含量を調節して、20℃における蒸気圧が約20kPa~約110kPaの発泡剤を含んでいてもよく、具体的には、蒸気圧が約30kPa~約100kPa、より具体的には、約33kPa~約85kPaの発泡剤を含んでいてもよい。発泡剤の蒸気圧は、20℃における発泡剤固有の蒸気圧を意味する。発泡剤の蒸気圧は、KS M 1071-3の静的方法(static method)によって測定することができる。前記発泡剤が2以上の発泡剤を混合した混合物である場合、発泡剤の蒸気圧(Pm)は、下記関係式1を用いて計算した値を意味する。
【0030】
[関係式1]Pm=(m1P1+m2P2+..mxPx)/(m1+m2+..mx)
Pm:混合物全体の蒸気圧
mx:混合物内に含まれた発泡剤x自体のモル数
Px:発泡剤x固有の蒸気圧
【0031】
一般に発泡性組成物に含まれる硬化剤の含量を低くする場合、熱硬化性発泡体に低酸性を付与することができる。しかし、硬化剤の含量が低くなるにつれて、発泡量及び発泡性能が低下し、硬化性能との均衡が破れ、かつ熱硬化性発泡体の厚みが不均一になり、圧縮強度が低下して、熱伝導率が高くなる等の問題が発生し得る。
【0032】
前記発泡性組成物は、前記範囲の蒸気圧を有する発泡剤を含み、向上した発泡性能を付与することができ、低酸性を有する前記フェノール樹脂発泡体に高い独立気泡率と均一な厚み、優れた圧縮強度及び優れた熱伝導率を付与することができる。
【0033】
具体的には、発泡剤の蒸気圧が前記範囲未満である場合、発泡が十分に起きないため、定めた厚みのフェノール樹脂発泡体が得られにくく、フェノール樹脂発泡体の位置別厚み偏差が大きくなる問題があり得るし、発泡剤の蒸気圧が上記範囲を超える場合、発泡が過度に早く行われて独立気泡率が低くなり、フェノール樹脂発泡体の発泡セルが破れ、物理的強度が落ち、熱伝導率が高くなる問題があり得る。
【0034】
前記ハイドロフルオロオレフィン系化合物は、例えば、塩素化ハイドロフルオロオレフィン系化合物、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン系化合物、又はこれらを全て含んでいてもよい。
【0035】
前記ハイドロフルオロオレフィン系化合物は、この技術分野における公知の種類を用いることができ、例えば、トランス1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF3CH=CClH)、シス1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(cis CF3CH=CClH)、トランス1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(trans CHF2CF=CClH)、シス1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(cis CHF2CF=CClH)、トランス1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(trans CHF2CH=CClF)、シス1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(cis CHF2CH=CClF)、トランス2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(trans CHF2CCl=CHF)、シス2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(cis CHF2CCl=CHF)、トランス2-クロロ-1,1,3-トリフルオロプロペン(trans CH2FCCl=CF2)、シス2-クロロ-1,1,3-トリフルオロプロペン(cis CH2FCCl=CF2)、トランス3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(trans CHFClCF=CFH)、シス3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(cis CHFClCF=CFH)、トランス3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(trans CH2ClCF=CF2)、シス3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(cis CH2ClCF=CF2)、トランス3-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF2ClCF=CH2)、シス3-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(cis CF2ClCF=CH2)等のモノクロロトリフルオロプロペン;2,3,3-トリフルオロプロペン(CHF2CF=CH2)、1,1,2-トリフルオロプロペン(CH3CF=CF2)、1,1,3-トリフルオロプロペン(CH2FCH=CF2)、1,3,3-トリフルオロプロペン(CHF2CH=CHF)等のトリフルオロプロペン;1,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,1,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン等のテトラフルオロプロペン;1,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン等のペンタフルオロプロペン;2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,1,2,3,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,1,3,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,2,3,3,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン等のヘキサフルオロブテン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0036】
また、前記炭化水素系化合物は、炭素数1個~6個の炭化水素を含んでいてもよく、例えば、塩素化炭化水素化合物、非塩素化炭化水素化合物、又はこれらを全て含んでいてもよい。
【0037】
前記炭化水素系化合物は、ジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
前記発泡剤は、2以上の前記発泡剤の混合物であってもよい。具体的には、前記混合発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin、HFO)系化合物を含み、低い発熱量でも優れた発泡性能を付与することができる。例えば、前記発泡剤は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(CF3CH=CClH)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つのハイドロフルオロオレフィン系化合物とシクロペンタン、イソペンタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ブタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つの炭化水素系化合物の混合物であってもよい。
【0039】
前記発泡剤は、前記フェノール系樹脂約100重量部を基準として、前記発泡剤の総含量が約5重量部~約15重量部となるように含まれてもよい。前記発泡剤を前記範囲の含量で含むことで、低い発熱量でも優れた発泡性能を表し、低酸性を有する前記フェノール樹脂発泡体に均一な厚み、優れた圧縮強度及び優れた熱伝導率を付与することができる。
【0040】
具体的には、発泡剤の含量が前記範囲未満である場合、気化する発泡剤の含量が足りなくて発泡しないか、発泡が十分に起きないため、定めた厚みに合わせないか、フェノール樹脂発泡体の位置別厚み偏差が大きくなる問題があり得るし、前記範囲を超える場合、過量の発泡剤が気化して発泡剤の蒸気圧を調節することが難しいし、発泡圧力が大きくなり過ぎ、フェノール樹脂発泡体の発泡セルが破れて独立気泡率が低くなり、物理的強度が低下し、熱伝導率が高くなる問題があり得る。
【0041】
前記発泡性組成物は、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン、p-メチロールフェノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つの架橋剤をさらに含んでいてもよい。
【0042】
一般に発泡性組成物に含まれる硬化剤の含量を低くする場合、熱硬化性発泡体に低酸性を付与することができる。しかし、硬化剤の含量が低くなるにつれて、硬化性能が低下し、発泡性能との均衡が破れながら発泡セルが破れる等の現象が発生し得るし、熱硬化性発泡体に割れ目が生じて、厚みが不均一になり、熱伝導率が高くなる等の問題が発生し得る。
【0043】
前記発泡性組成物は、前記硬化剤とともに前記架橋剤をさらに含み、前記フェノール樹脂発泡体の低酸性を維持すると共に、優れた架橋及び硬化性能を付与して、前記フェノール樹脂発泡体の厚みを均一にし、優れた圧縮強度等の耐久性及び優れた熱伝導率を付与することができる。
【0044】
具体的には、前記発泡性組成物は、前記硬化剤対前記架橋剤を約6:4~約3:7の重量比で含んでいてもよい。例えば、前記発泡性組成物は、前記硬化剤対前記架橋剤を約6:4~4:9の重量比又は約5:6~4:9の重量比で含んでいてもよい。前記架橋剤の含量が前記範囲未満である場合、架橋及び硬化反応が不足して熱伝導率が高くなり、圧縮強度が低下し得る。また、前記架橋剤の含量が前記範囲を超える場合、発泡が十分に行われていない状態で硬化して発泡セルが破れ、独立気泡率が低くなり、フェノール樹脂発泡体の位置別厚み偏差が大きくなり、熱伝導率が高くなる問題があり得る。
【0045】
前記フェノール樹脂発泡体は、セル(cell)の頂点(vertex)部分を、EDX(エネルギー分散型X線分光計;energy dispersive X-ray analysis)で測定した硫黄に対する炭素の質量比(C/S)が25~250であってもよい。
【0046】
図1は、本発明の一具現例によるフェノール樹脂発泡体の走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、
図1に示したように、フェノール樹脂発泡体に含まれたセルは、セル壁(cell wall)10とセル壁が当接する地点に支持台(strut)20が形成され、前記支持台20は、セルの骨格を構成する。また、前記支持台20等が会う交点は、セル頂点(cell vertex)30と定義する。
【0047】
前記フェノール樹脂発泡体は、前記フェノール樹脂発泡体の横、縦及び高さの中間、すなわち、真中部分の断面、例えば、パネル型発泡体の厚み方向を二等分した断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で200倍率に拡大し、前記断面のセル(cell)の頂点(vertex)部分において、EDX(製造社Horiba,EMAX EX-250,加速電圧15kv)でC、O、S元素のみ選択して、該3つ元素の割合を測定した。
【0048】
具体的には、前記断面に含まれた任意のセル(cell)1つを基準として、互いに連続して位置しないn個のセルを選択して、前記各々のセルに含まれた1つの頂点(vertex)部分のC、O、S元素の割合を測定した。また、各々のセルの頂点(vertex)部分で測定されたC、O及びS元素の割合の和を100%として、硫黄に対する炭素の質量比(C/S)を測定した。前記硫黄に対する炭素の質量比(C/S)は、1からn番目セルに含まれた1つの頂点(vertex)部分のC/S値の総和をnで割った値を意味する。すなわち、前記硫黄に対する炭素の質量比(C/S)は、下記数式1を用いて計算することができる。
【0049】
【0050】
このとき、n=7~10の整数である。好ましくは、n=9~10又はn=10であってもよい。
【0051】
前記フェノール樹脂発泡体は、前記発泡性組成物の熱硬化物であって、前記発泡性組成物を調節して、セル(cell)の頂点(vertex)部分を、EDXで測定した硫黄に対する炭素の質量比(C/S)が約25~約250であってもよく、又は、約50~約150、又は約69~約123であってもよい。
【0052】
前記硫黄は、前記硬化剤に由来する元素であってもよく、前記発泡剤を含む前記発泡性組成物の熱硬化物である前記フェノール樹脂発泡体に含まれた炭素(C)と比較して、前記フェノール樹脂発泡体は、前記範囲の硫黄に対する炭素の質量比(C/S)を有してもよい。
【0053】
硫黄に対する炭素の質量比(C/S)が前記範囲未満である場合、酸性度が高くて、低いpHを有する酸性発泡体が形成され得るし、前記範囲を超える場合、発泡過程中に硬化が十分に行われず、フェノール樹脂発泡体の物理的強度が低く、表面に割れ目が生じるか、厚みが不均一になるか、圧縮強度が低くなり、高い熱伝導率を表し得る。
【0054】
前記フェノール樹脂発泡体は、セルの頂点部分(vertex)をEDXで測定した硫黄に対する酸素の質量比(O/S)が約5~約60であってもよい。前記硫黄に対する酸素の質量比(O/S)は、1からn番目セルに含まれた1つの頂点(vertex)部分のO/S値の総和をnで割った値を意味する。すなわち、前記硫黄に対する酸素の質量比(O/S)は、下記数式2を用いて計算することができる。
【0055】
【0056】
このとき、n=7~10の整数である。好ましくは、n=9~10又はn=10であってもよい。
【0057】
前記フェノール樹脂発泡体は、前記発泡性組成物の熱硬化物であって、前記発泡性組成物を調節して、セルの頂点部分(vertex)をEDXで測定した硫黄に対する酸素の質量比(O/S)は、約5~約60であってもよく、又は、約10~約50、又は約19~約33であってもよい。
【0058】
前記硫黄は、前記硬化剤に由来する元素であって、前記フェノール系樹脂、特定の硬化剤及び架橋剤等を含む前記発泡性組成物の熱硬化物である前記フェノール樹脂発泡体に含まれた酸素(O)と比較して、前記フェノール樹脂発泡体は、前記範囲の硫黄に対する酸素の質量比(O/S)を有してもよい。
【0059】
硫黄に対する酸素の質量比(O/S)が前記範囲未満である場合、発泡が十分に行われていない状態で硬化が行われ、この過程において、フェノール樹脂発泡体の酸性度(pH)が低くなるか、厚みが不均一になり、熱伝導率が高くなる問題があり得る。また、前記範囲を超える場合、硬化性能が足りなくて、フェノール樹脂発泡体の物理的強度が落ち、熱伝導率が高くなる問題があり得る。
【0060】
前記フェノール樹脂発泡体の平均厚みは、約70mm~約300mmであってもよい。前記フェノール樹脂発泡体は、前記範囲内の平均厚みを有することにより、これを含む建築用断熱材の総厚みを過度に増加させない、かつ十分に優れた水準の断熱性を具現することができる。具体的には、前記フェノール樹脂発泡体の平均厚みが前記範囲未満である場合、熱貫流率が低くて、建築用断熱材としての役割を担えない問題があり、前記範囲を超える場合、硬化過程において発生する熱が発泡体の内部中心に蓄積して、セル構造の形成を妨げて熱伝導度が低下し得る。
【0061】
前記フェノール樹脂発泡体は、下記数式3による厚み偏差が約5%以下であってもよく、具体的には、約0.1%~約5%であってもよい:
【0062】
[数式3]
厚み偏差(Td、%)=(Tmax-Tmin)/Tavg×100
【0063】
上記数式3において、前記Tmaxは、厚み偏差を測定しようとする発泡体に対して測定した最大厚みを意味し、前記Tminは、前記発泡体に対して測定した最小厚みを意味し、Tavgは、前記発泡体に対して測定した平均厚みを意味する。
【0064】
前記フェノール樹脂発泡体は、前記範囲内の厚み偏差を有するものであって、厚みの均一度に優れることが分かり、それにより、優れた熱伝導率を表し、長期断熱性がさらに効果的に向上し、かつ所定の製品に適用する際の加工性、作業性にさらに優れる。例えば、前記フェノール樹脂発泡体は、約0.1%~約3%、又は0.1%~2.4%の厚み偏差を有してもよい。
【0065】
前記フェノール樹脂発泡体は、KS L 9016による約20℃の温度で、厚み方向に測定した熱伝導率が約0.0160W/m・K~約0.0220W/m・Kであってもよい。例えば、前記フェノール樹脂発泡体は、約0.0164W/m・K~約0.0210W/m・K、約0.0164W/m・K~約0.020W/m・K未満、又は約0.0164W/m・K~約0.0194W/m・Kの熱伝導率を有してもよい。
【0066】
通常、発泡体の厚みが厚くなるほど、厚み方向に測定した熱伝導率は低下するおそれがある。前記フェノール樹脂発泡体は、前述したように、十分に厚い厚みを有し、かつ熱伝導率を低下しないため、優れた断熱性を維持することができる。
【0067】
また、前記フェノール樹脂発泡体の密度は、約20kg/m3~約50kg/m3であってもよい。前記フェノール樹脂発泡体は、前記範囲の密度を有することにより、現場における取り扱いが容易であり、優れた物理的強度及び優れた断熱性能を具現することができる。
【0068】
前記フェノール樹脂発泡体は、KS M ISO 844による圧縮強度が約100kPa~約300kPaであってもよい。前記フェノール樹脂発泡体は、前記フェノール系樹脂に前記硬化剤、前記発泡剤及び前記架橋剤等を含めて製造された前記発泡性組成物の硬化物であって、前記範囲の圧縮強度を有してもよい。フェノール樹脂発泡体の圧縮強度が前記範囲未満である場合、フェノール樹脂発泡体を裁断するか施工する等の取り扱い時にフェノール樹脂発泡体の見掛けが変形しやすいし、フェノール樹脂発泡体を用いることによって破損しやすい等の長期耐久性の問題があり、前記範囲を超える場合、フェノール樹脂発泡体の密度が高くなり、かつ熱伝導度が高くなる問題が発生し得る。
【0069】
前記フェノール樹脂発泡体は、独立気泡率が約85%以上であってもよい。前記フェノール樹脂発泡体は、小さなハムカム状のセロからなるところ、前記セルのうち、閉じたセルの百分率を独立気泡率と言う。独立気泡率が高いほど、断熱性が改善するものであって、前記独立気泡率が約85%未満である場合、一定水準の断熱性を確保することができない。独立気泡率の上限に制限があるものではないが、前記フェノール樹脂発泡体は、約99%の独立気泡率を有してもよい。
【0070】
本発明の他の一具現例は、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡性組成物を準備するステップ;及び前記発泡性組成物に熱を加えて発泡及び硬化させるステップ;とを含むフェノール樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【0071】
上記製造方法によって前述した前記フェノール樹脂発泡体を製造することができる。
【0072】
上記製造方法において、フェノール系樹脂、発泡剤及び硬化剤を含む発泡性組成物を準備する。前記発泡性組成物に対する具体的な事項は、前述したとおりである。
【0073】
具体的には、前記発泡性組成物は、フェノール系樹脂、発泡剤を先に混合した後、前記混合物に硬化剤を投入して発泡性組成物を製造することができる。このとき、前記発泡性組成物に架橋剤をさらに含む場合、前記混合物に架橋剤を一緒に投入して混合し、その後に硬化剤を投入してもよい。
【0074】
また、上記製造方法は、前記準備した発泡性組成物に熱を加えて、発泡及び硬化させるステップを含む。前記発泡性組成物は、発泡及び硬化を同時に行うことができ、このとき、発泡又は硬化のいずれかを先に開始するか、又はこれらを同時に開始することもできる。
【0075】
前記発泡及び硬化は例えば、約50℃~約90℃の温度条件下で行うことができる。また、前記発泡及び硬化は、約2分~約20分間行うことができるが、これに制限されず、発明の目的及び用途に応じて好適に異なってもよい。
【0076】
前記発泡性組成物は例えば、所定のモールド内で発泡及び硬化するか、又は例えば、両方の表面材の間に注入されるか吐出されながら発泡及び硬化されてもよいが、これに制限されるものではない。これにより、前述したフェノール樹脂発泡体を製造することができる。
【0077】
本発明のさらに他の具現例は、前記フェノール樹脂発泡体を含む断熱材を提供する。
【0078】
前記フェノール樹脂発泡体は、pHが4以上である低酸性のフェノール樹脂発泡体であって、例えば、建築用断熱材の用途として適用することができ、雨水等の水に露出した場合にも、周辺の金属材料を腐食させない、かつ建築用断熱材として求められる高厚度規格、優れた耐久性及び優れた熱伝導率を同時に満し得る。
【0079】
前記建築用断熱材は、例えば、前記フェノール樹脂発泡体の一面又は両面の上に表面材をさらに含んでいてもよく、前記表面材は、この技術分野における公知の種類を用いることができ、例えば、有機物又は無機物に由来する織物、不織布、布、アルミニウム等の金属ホイル、紙等を含む材質であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0080】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載の実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎないし、これによって本発明が制限されてはならない。
【0081】
<実施例及び比較例>
実施例1
40℃の温度条件下で、粘度が3,900cpsであるレゾール系フェノール樹脂を20℃の温度で準備した。また、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF3CH=CClH)及びシクロペンタン(cyclopentane)を7:3重量比で混合し、20℃における約74kPaの蒸気圧を有する発泡剤10重量部;界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンエステル3重量部;及びポリエステルポリオールにレゾルシノール(resorcinol)を5:5の重量比で混合した架橋剤混合物(ポリエステルポリオール及びレゾルシノール)36重量部を混合して樹脂混合物を形成した。また、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、8重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合し、前記樹脂混合物に投入して発泡性組成物を製造した。また、前記発泡性組成物を2000rpmに混練して白いフォーム状のスラーリが形成されるようにした。そして、前記白いフォームを300×300×90mmの金型モールドの内部に密度40kg/m3となる重さに充填し、70℃オーブンで10分間加熱した後にモールドを分離して、最終的にフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0082】
実施例2
発泡剤として20℃における約60kPaの蒸気圧を有する1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを用いて、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、ポリエステルポリオールにレゾルシノール(resorcinol)を5:5の重量比で混合した架橋剤混合物(ポリエステルポリオール及びレゾルシノール)24重量部を用いて、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、10重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合した後に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0083】
実施例3
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及びn-ペンタン(n-pentane)を約5:5の重量比で混合し、20℃における約74kPaの蒸気圧を有する発泡剤を用いて、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、ポリエステルポリオールにレゾルシノール(resorcinol)を5:5の重量比で混合した架橋剤混合物(ポリエステルポリオール及びレゾルシノール)16重量部を用いて、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、12重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合した後に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0084】
実施例4
トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF3CH=CClH)及びシクロペンタン(cyclopentane)を1:9の重量比で混合し、20℃における約39kPaの蒸気圧を有する発泡剤を用いて発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0085】
実施例5
トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF3CH=CClH)及びシクロペンタン(cyclopentane)を5:95の重量比で混合し、20℃における約37kPaの蒸気圧を有する発泡剤を用いて、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、ポリエステルポリオールにレゾルシノール(resorcinol)を5:5の重量比で混合した架橋剤混合物(ポリエステルポリオール及びレゾルシノール)18重量部を用いて、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、12重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合した後に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0086】
実施例6
トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF3CH=CClH)及びシクロペンタン(cyclopentane)を7:3の重量比で混合し、20℃における約74kPaの蒸気圧を有する発泡剤を用いて、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、ポリエステルポリオールにレゾルシノール(resorcinol)を5:5の重量比で混合した架橋剤混合物(ポリエステルポリオール及びレゾルシノール)30重量部を用いて、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、15重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合した後に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0087】
実施例7
トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF3CH=CClH)及びシクロペンタン(cyclopentane)を7:3の重量比で混合し、20℃における約74kPaの蒸気圧を有する発泡剤8重量部を用いて、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、ポリエステルポリオールにレゾルシノール(resorcinol)を5:5の重量比で混合した架橋剤混合物(ポリエステルポリオール及びレゾルシノール)15重量部を用いて、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、5重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合した後に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0088】
実施例8
トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF3CH=CClH)及びシクロペンタン(cyclopentane)を5:95の重量比で混合し、20℃における約37kPaの蒸気圧を有する発泡剤を用いて、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、ポリエステルポリオールにレゾルシノール(resorcinol)を5:5の重量比で混合した架橋剤混合物(ポリエステルポリオール及びレゾルシノール)21重量部を用いて、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、7重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合した後に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0089】
比較例1
前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を25重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合し、前記架橋剤混合物を含まない樹脂混合物に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0090】
比較例2
前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を12重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合し、前記架橋剤混合物を含まない樹脂混合物に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0091】
比較例3
トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(trans CF3CH=CClH)を単独使用し、30℃における約154kPaの蒸気圧を有する発泡剤8重量部を用いて、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、ポリエステルポリオールにレゾルシノール(resorcinol)を5:5の重量比で混合した架橋剤混合物(ポリエステルポリオール及びレゾルシノール)33.2重量部を用いて、トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)を、前記レゾール系フェノール樹脂100重量部に対し、5重量部の含量で準備した後、水に8:2の重量比で混合した後に投入して発泡性組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
【0092】
<評価>
実験例1:EDX(energy dispersive X-ray analysis)
実施例及び比較例の前記フェノール樹脂発泡体の真中部分を5mm×5mmの大きさ及び該厚み(h=90mm)の試片に裁断した。また、前記試片の真中部位(h/2)に切れ目をつけた後、液体窒素に入れ、前記試片の両端に力を加えて、切れ目をつけた真中部位が切断されるようにした。このため、液体窒素により保存された断面を有する試片を準備した。そして、前記断面が含まれた前記試片の厚みが2mmとなるように裁断し、前記液体窒素により保存された試片の断面が上方へ向かうようにSEMマウントに固定した後、PTコーティング(白金コーティング)した。また、前記試片が固定したSEMマウントをSEMに入れた後、画面を200倍率に拡大した。
【0093】
図1は、本発明の一具現例によるフェノール樹脂発泡体の走査電子顕微鏡(FE-SEM、SU8010、Hitachi社)写真であり、
図1に示したように、フェノール樹脂発泡体に含まれたセル(cell)は、セル壁(cell wall)10と、セル壁が当接する地点に支持台(strut)20が形成され、前記支持台20は、セルの骨格を構成する。また、前記支持台20らが会う交点は、セル頂点(cell vertex)30と定義する。
【0094】
前記SEM画面にセル(cell)の頂点(vertex)部分において、EDX(エネルギー分散型X線分光計;energy dispersive X-ray analysis)(堀場製作所,EMAX EX-250,加速電圧15kv)でC、O、S元素のみ選択して、該3つ元素の割合を測定した。具体的には、前記断面に含まれた任意のセル(cell)1つを基準として、互いに連続して位置しないn個(n=10)のセルを選択して、前記各々のセルに含まれた1つの頂点(vertex)部分のC、O、S元素の割合を測定した。
【0095】
また、測定されたC、O及びS元素の割合の和を100%として、硫黄に対する炭素の質量比(C/S)及び硫黄に対する酸素の質量比(O/S)の値を下記数式1及び数式2を用いて計算しており、その結果を下記表1及び表2に記載した。
【0096】
【0097】
このとき、n=7~10の整数である。
【0098】
【0099】
このとき、n=7~10の整数である。
【0100】
実験例2:pH
実施例及び比較例のフェノール樹脂発泡体の真中部分を50mm×50mm×50mmの大きさに切断して試片を準備し、前記試片を20℃~30℃で蒸留水150mlに試片の6面が蒸留水と当接するように浸漬した後、密封して48時間浸漬した。また、浸漬した試片を除去した後に得た抽出液をpHメーターを利用してpHを測定しており、その結果を下記表1及び表2に記載した。
【0101】
実験例3: 熱伝導率(W/mK)
実施例及び比較例のフェノール樹脂発泡体の真中部分において、上部から50mmの厚み及び300mm×300mmの大きさに切断して試片を準備し、前記試片を70℃で12時間乾燥して前処理した。前記試片に対して、KS L 9016(平板熱流計法測定方法)の測定条件に従って、平均温度20℃でHC-074-300(EKO社)熱伝導率機器を用いて熱伝導率を測定しており、その結果を下記表1及び表2に記載した。
【0102】
実験例4:圧縮強度(kPa)
実施例及び比較例のフェノール樹脂発泡体を50mm×50mmの大きさ及び該厚み(90mm)の試片で準備し、前記試片をLloyd instrument社LF Plus万能材料試験機(Universal Testing Machine)の広い板の間に置いて、UTM装備における試片厚みの10%/min速度に設定し、圧縮強度実験を始めて、厚みが減少するうちに到逹する最大荷重を記録した。圧縮強度は、KS M ISO 844規格の方法で測定しており、その結果を下記表1及び表2に記載した。
【0103】
実験例5:厚み偏差(%)
図2は、本発明のフェノール樹脂発泡体の厚み偏差を測定する方法を簡略に示した模式図である。
【0104】
実施例及び比較例の前記フェノール樹脂発泡体を300mm×300mmの大きさ及び該厚み(90mm)の試片で準備した後、0.1mmの精密度を有するスライディングキャリパー器具を用いて、
図2の実線で位置を示すように、前記試片の横及び縦のうち一面当たり50mmの間隔で5ヵ地点の厚みを測定した。すなわち、前記試片の計4面の20ヵ地点での厚みを測定してT
avg、T
max 、T
minを設定し、下記数式3によって厚み偏差を測定しており、その結果を下記表1及び表2に記載した。
【0105】
[数式3]
厚み偏差(Td、%)=(Tmax-Tmin)/Tavg×100
【0106】
上記数式3において、前記Tmaxは、発泡体シートに対して測定した最大厚みを意味し、前記Tminは、測定した最小厚みを意味し、Tavgは、測定した平均厚みを意味する。
【0107】
実験例6:独立気泡率(%)
実施例及び比較例それぞれの発泡体をKS M ISO 4590測定方法で独立気泡率測定機器(Quantachrome,ULTRAPYC 1200e)装備を用いて測定し、その結果を下記表1及び2に記載した。
【0108】
【0109】
【0110】
前記表1及び表2のように、一定値のEDX(C/S)及びEDX(O/S)を外れる比較例1は、フェノール樹脂発泡体の酸性度が高過ぎに表れており、比較例2は、低酸性のフェノール樹脂発泡体であるとしても、熱伝導率及び圧縮強度が低下し、著しい厚み偏差が発生することを確認することができる。一方、実施例は、pH4以上の低酸性を有すると共に、均一な厚みで優れた耐久性及び熱伝導率等の物性を具現することを確認することができる。
【符号の説明】
【0111】
10 セル壁(cell wall)
20 支持台(strut)
30 セル頂点(cell vertex)