(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】患者の試料中のヒト葉酸受容体1を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20241216BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20241216BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20241216BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20241216BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20241216BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20241216BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20241216BHJP
G01N 33/538 20060101ALI20241216BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241216BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
C07K7/06
C07K7/08
C12Q1/37
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N30/72 C
G01N30/88 J
G01N33/538
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2020534815
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(86)【国際出願番号】 US2018049529
(87)【国際公開番号】W WO2019050935
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-07
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512186793
【氏名又は名称】イミュノジェン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュー, レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】カルム-マーデック, ケリー
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】宮澤 浩
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533788(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3165928(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0209412(US,A1)
【文献】特表2017-523406(JP,A)
【文献】Navin Rauniyar, Data-Independent Acquisition and Parallel Reaction Monitoring Mass Spectrometry Identification of Serum Biomarkers for Ovarian Cancer,Biomarker Insights、2017.06.05発行、Volume 12、pp.1-12
【文献】Crugliano T、Specific changes in the proteomic pattern produced by the BRCA1-Ser1841Asn missense mutation.、The international journal of biochemistry & cell biology、2007発行、39(1)、pp.220-226
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01N33/48-33/98
G01N27/00-27/70
G01N27/92
G01N30/00-30/96
B01J20/281-20/292
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液試料中の脱落ヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出する方法であって、
(a)固体支持体と結合したイムノキャプチャ試薬を用いて前記脱落ヒトFOLR1を捕捉することであって、前記イムノキャプチャ試薬が、FOLR1に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、前記抗体または抗原結合断片が、
(i)配列番号1の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1;配列番号2のVH CDR-2;配列番号3のVH CDR-3;配列番号13の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1;配列番号14のVL CDR-2及び配列番号15のVL
CDR-3;または
(ii)配列番号4の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1;配列番号5のVH CDR-2;配列番号6のVH CDR-3;配列番号16の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1;配列番号17のVL CDR-2及び配列番号18のVL CDR-3
を含む、捕捉することと、
(b)前記固体支持体から前記捕捉したFOLR1を溶出することと、
(c)前記溶出されたFOLR1を消化して、少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドを生成することと、
(d)前記消化されたFOLR1に対して液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)の分析を実行することと、
を含み、前記脱落FOLR1が、前記少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドのクロマトグラフィー分離及び質量分析応答をモニタリングすることにより検出される可溶性FOLR1タンパク質であり、前記方法は、前記試料中の0.5ng/mLのFOLR1を検出することができ、前記体液試料が血漿、血清または腹水である、前記方法。
【請求項2】
前記試料中の前記FOLR1のレベルが、前記LC/MSの分析によって定量化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料中の前記FOLR1のレベルが、前記試料中の前記FOLR1のレベルをFOLR1の基準レベルと比較することによって定量化される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号1の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号2のVH CDR-2、配列番号3のVH CDR-3、配列番号13の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号14のVL CDR-2、及び配列番号15のVL CDR-3を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号4の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号5のVH CDR-2、配列番号6のVH CDR-3、配列番号16の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号17のVL CDR-2、及び配列番号18のVL CDR-3を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号25の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号26の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号33の配列を有する重鎖、及び配列番号37の配列を有する軽鎖を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号34の配列を有する重鎖、及び配列番号38の配列を有する軽鎖を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体または抗原結合断片が、約1.0nM~約10nMのKdでヒトFOLR1と結合する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体または抗原結合断片が、約0.5nM~約5nMのKdでヒトFOLR1と結合する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記固体支持体が、質量分析イムノアッセイ(MSIA)マイクロカラムを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記固体支持体が、磁気ビーズを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1回の洗浄ステップが、前記固体支持体からFOLR1を溶出する前に実行される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
2回以上の洗浄ステップが、前記固体支持体からFOLR1を溶出する前に実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄ステップが、前記固体支持体と結合した前記FOLR1を洗浄緩衝液、塩溶液、及び洗浄剤と接触させることを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
FOLR1が、酸性溶液を用いて前記固体支持体から溶出される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記FOLR1が、前記FOLR1を消化する前に、還元及びアルキル化される、請求
項17に記載の方法。
【請求項19】
FOLR1が、トリプシンおよび/またはLys-Cで消化される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記FOLR1を消化することにより、配列番号42の配列を含むペプチドが生成される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記FOLR1を消化することにより、配列番号43の配列を含むペプチドが生成される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記FOLR1を消化することにより、配列番号44の配列を含むペプチドが生成される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記FOLR1を消化することにより、配列番号45の配列を含むペプチドが生成される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
FOLR1の少なくとも2つのシグネチャペプチドが選択され、前記LC/MSの分析ステップでモニタリングされる、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
FOLR1の少なくとも3つのシグネチャペプチドが選択され、前記LC/MSの分析ステップでモニタリングされる、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
FOLR1の少なくとも4つのシグネチャペプチドが選択され、前記LC/MSの分析ステップでモニタリングされる、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記シグネチャペプチドが、
(a)配列番号42の配列を含むペプチド、
(b)配列番号43の配列を含むペプチド、
(c)配列番号44の配列を含むペプチド、及び
(d)配列番号45の配列を含むペプチドを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記体液が、血漿である、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記体液が、血清である、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記体液が、腹水である、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記試料が、末梢血試料を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記試料が、がんを有する患者から取得され
た試料である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記がんが、卵巣、脳、乳房、子宮、子宮内膜、膵臓、腎、肺癌、及び腹膜の癌からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記がんが、卵巣癌である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
試料中の0.3ng/mLのFOLR1を検出することができる、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
試料中の0.25ng/mLのFOLR1を検出することができる、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ヒト血漿試料中の脱落ヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出する方法であって、
(a)固体支持体と結合したイムノキャプチャ試薬を用いて前記脱落ヒトFOLR1を捕捉することであって、前記イムノキャプチャ試薬が、配列番号25の配列を有する可変重鎖(VH)と配列番号29の配列を有する可変軽鎖(VL)とを含む抗体または抗原結合断片を含む、捕捉することと、
(b)前記固体支持体から前記捕捉したFOLR1を溶出することと、
(c)トリプシンおよび/またはLys-Cを用いて、前記溶出されたFOLR1を消化して、少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドを生成することと、
(d)前記消化されたFOLR1に対して液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)の分析を実行することと、を含み、前記脱落FOLR1が、配列番号44のアミノ酸配列を含む前記少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドのクロマトグラフィー分離及び質量分析応答をモニタリングすることにより検出される可溶性FOLR1タンパク質である、前記方法。
【請求項38】
ヒト血漿試料中の脱落ヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出する方法であって、
(a)固体支持体と結合したイムノキャプチャ試薬を用いて前記脱落ヒトFOLR1を捕捉することであって、前記イムノキャプチャ試薬が、配列番号26の配列を有する可変重鎖(VH)と配列番号30の配列を有する可変軽鎖(VL)とを含む抗体または抗原結合断片を含む、捕捉することと、
(b)前記固体支持体から前記捕捉したFOLR1を溶出することと、
(c)トリプシンおよび/またはLys-Cを用いて、前記溶出されたFOLR1を消化して、少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドを生成することと、
(d)前記消化されたFOLR1に対して液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)の分析を実行することと、を含み、前記脱落FOLR1が、配列番号44のアミノ酸配列を含む前記少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドのクロマトグラフィー分離及び質量分析応答をモニタリングすることにより検出される可溶性FOLR1タンパク質である、前記方法。
【請求項39】
FOLR1の少なくとも4つのシグネチャペプチドが選択され、前記LC/MSの分析ステップでモニタリングされ、前記シグネチャペプチドが、
(a)配列番号42の配列を含むペプチド;
(b)配列番号43の配列を含むペプチド;
(c)配列番号44の配列を含むペプチド;及び
(d)配列番号45の配列を含むペプチド
を含む、請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
試料中の0.5ng/mLのFOLR1を検出することができる、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、概して、試料中のヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出するための方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、先進国における主要な死因の1つであり、米国だけで年間100万人以上が、がんと診断され、50万人が死亡する。全体として、3人に1人以上が生涯に何らかの形態のがんを発症するであろうと推定される。200以上の異なる種類のがんが存在し、乳房、肺、結腸直腸、及び前立腺の4つが、全ての新規症例の半分を超えて占める(Jemal et al.,2003,CancerJ.Clin.53:5-26)。
【0003】
葉酸受容体アルファまたは葉酸結合タンパク質としても知られる葉酸受容体1(FOLR1)は、細胞の細胞膜上に発現するNグリコシル化タンパク質である。FOLR1は、葉酸及びいくつかの還元葉酸誘導体に対して高い親和性を有する。FOLR1は、細胞内へ生理的な葉酸である、5-メチルテトラヒドロ葉酸の送達を仲介する。
【0004】
FOLR1は、大多数の卵巣がん、ならびに多くの子宮、子宮内膜、膵臓、腎、肺、及び乳癌で過剰発現しているが、正常組織でのFOLR1の発現は、腎近位尿細管内の上皮細胞の頂端膜、肺の肺胞肺細胞、膀胱、精巣、脈絡叢、及び甲状腺に制限される(Weitman SD,et al.,Cancer Res 52:3396-3401(1992);Antony AC,Annu Rev Nutr 16:501-521(1996);Kalli KR,et al.Gynecol Oncol 108:619-626(2008))。FOLR1のこの発現パターンは、FOLR1に向けられるがん治療の所望される標的となる。
【0005】
卵巣癌は通常、進行期まで無症状であるため、多くの場合、後期に診断され、現在利用可能な手法である、通常の外科的減量術後に化学療法剤で治療した場合に予後不良を有する(von Gruenigen V et al.,Cancer 112:2221-2227(2008);Ayhan A et al.,Am J Obstet Gynecol 196:81 e81-86(2007);Harry VN et al.,Obstet Gynecol Surv 64:548-560(2009))。したがって、卵巣癌のための、より効果的な治療法に対する明らかに満たされていない医学的ニーズが存在する。
【0006】
脱落FOLR1を検出するために使用される以前のアッセイのいくつかは、FOLR1に対して十分に特異的でない。例えば、いくつかのアッセイは、FOLR1及び他の葉酸受容体ファミリーメンバー(FOLR2、3、及び4)を識別しないか、または総FBP(葉酸結合タンパク質)についての値を報告しない。さらに、いくつかのアッセイは、受容体から葉酸を解離するために、ヒトの試料(例えば、血漿)を軽酸洗浄ステップで前処理する必要がある。いくつかのアッセイ結果は、抗体療法及び診断用抗体間の競合効果により、不正確性をさらに有し得る。さらに、多くの市販キットは、従来のそれらの試薬、及びそれらのロット間の安定性の両方で信頼性がない。これらのキットの評価は、非常に複雑な結果を与えており、研究用途のみを目的としている。多くの場合に、「マトリックス効果」による偽陽性の可能性を低減するために、分析前にヒト試料を事前に希釈する必要がある。さらに、多くの現在のアッセイ、例えば、ELISA系アッセイは、生理学的レベルでの脱落FOLR1における差異間を識別するのに十分な感度を提供せず、偽陽性の結果によって制限される。したがって、患者の試料中のFOLR1を検出するための高感度、及び正確な方法についての明らかな必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Jemal et al.,2003,CancerJ.Clin.53:5-26
【文献】Weitman SD,et al.,Cancer Res 52:3396-3401(1992)
【文献】Antony AC,Annu Rev Nutr 16:501-521(1996)
【文献】Kalli KR,et al.Gynecol Oncol 108:619-626(2008)
【文献】von Gruenigen V et al.,Cancer 112:2221-2227(2008)
【文献】Ayhan A et al.,Am J Obstet Gynecol 196:81 e81-86(2007)
【文献】Harry VN et al.,Obstet Gynecol Surv 64:548-560(2009))
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、試料中のFOLR1を検出するための方法を提供し、例えば、試料中のヒトFOLR1のレベルを定量化するために使用できる。
【0009】
一実施形態において、試料中のヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出するための方法は、(a)固体支持体と結合したイムノキャプチャ試薬を用いて該葉酸受容体1(FOLR1)を捕捉することと、(b)固体支持体からFOLR1を溶出することと、(c)溶出されたFOLR1を消化することと、(d)消化されたFOLR1に対して液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)の分析を実行することと、を含み、該FOLR1は、少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドのクロマトグラフィー分離及び質量分析応答をモニタリングすることにより検出される。
【0010】
一実施形態において、試料中のFOLR1のレベルは、LC/MS分析によって定量化される。一実施形態において、試料中のFOLR1のレベルは、試料中のFOLR1のレベルをFOLR1の基準レベルと比較することによって定量化される。
【0011】
一実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、FOLR1と結合する抗体または抗原結合断片を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合は、IMGN853のFOLR1との結合によって競合的に阻害されない。一実施形態において、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合は、huMov19のFOLR1との結合によって競合的に阻害されない。一実施形態において、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合は、第2の抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、第2の抗体または抗原結合断片は、配列番号59の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号60のVL CDR-2、配列番号61のVL CDR-3、配列番号62の可変重鎖(VH)CDR-1、配列番号64のVH CDR-2、及び配列番号65のVH CDR-3を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合は、第2の抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、第2の抗体または抗原結合断片は、配列番号56の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号57または配列番号58の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合は、第2の抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、第2の抗体または抗原結合断片は、(i)PTA-10772としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されているプラスミドによってコードされる重鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む重鎖、及び(ii)PTA-10774としてATCCに寄託されているプラスミドによってコードされる軽鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合は、葉酸のFOLR1との結合によって阻害されない。
【0012】
一実施形態において、抗体は、muFR1-9である。一実施形態において、抗体は、muFR1-13である。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号1の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号2のVH CDR-2、配列番号3のVH CDR-3、配列番号13の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号14のVL CDR-2、及び配列番号15のVL CDR-3を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号4の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号5のVH CDR-2、配列番号6のVH CDR-3、配列番号16の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号17のVL CDR-2、及び配列番号18のVL CDR-3を含む。
【0013】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号25の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号25の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号26の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号26の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。
【0014】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号25の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号26の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号33の配列を有する重鎖、及び配列番号37の配列を有する軽鎖を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号34の配列を有する重鎖、及び配列番号38の配列を有する軽鎖を含む。
【0015】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、約1.0nM~約10nMのKdでヒトFOLR1と結合する。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、約0.5nM~約5nMのKdでヒトFOLR1と結合する。
【0016】
一実施形態において、固体支持体は、質量分析イムノアッセイ(MSIA)マイクロカラムを含む。一実施形態において、固体支持体は、磁気ビーズを含む。
【0017】
一実施形態において、少なくとも1回の洗浄ステップが、固体支持体からFOLR1を溶出する前に実行される。一実施形態において、2回以上の洗浄ステップが、固体支持体からFOLR1を溶出する前に実行される。一実施形態において、洗浄ステップは、固体支持体と結合したFOLR1を洗浄緩衝液、塩溶液、及び洗浄剤と接触させることを含む。一実施形態において、FOLR1は、酸性溶液を用いて固体支持体から溶出される。
【0018】
一実施形態において、FOLR1は、FOLR1を消化する前に、還元及びアルキル化される。一実施形態において、FOLR1は、トリプシン/Lys-Cで消化される。一実施形態において、FOLR1を消化することにより、配列番号42の配列を含むペプチドが生成される。一実施形態において、FOLR1を消化することにより、配列番号43の配列を含むペプチドが生成される。一実施形態において、FOLR1を消化することにより、配列番号44の配列を含むペプチドが生成される。一実施形態において、FOLR1を消化することにより、配列番号45の配列を含むペプチドが生成される。
【0019】
一実施形態において、FOLR1の少なくとも2つのシグネチャペプチドが選択され、LC/MSの分析ステップでモニタリングされる。一実施形態において、FOLR1の少なくとも3つのシグネチャペプチドが選択され、LC/MSの分析ステップでモニタリングされる。一実施形態において、FOLR1の少なくとも4つのシグネチャペプチドが選択され、LC/MSの分析ステップでモニタリングされる。
【0020】
一実施形態において、シグネチャペプチドは、(a)配列番号42の配列を含むペプチド、(b)配列番号43の配列を含むペプチド、(c)配列番号44の配列を含むペプチド、及び(d)配列番号45の配列を含むペプチドを含む。
【0021】
一実施形態において、試料は、体液を含む。一実施形態において、体液は、血漿である。一実施形態において、体液は、血清である。一実施形態において、体液は、腹水である。
【0022】
一実施形態において、試料は、末梢血試料を含む。
【0023】
一実施形態において、試料は、がんを有する患者から取得される。一実施形態において、がんは、卵巣、脳、乳房、子宮、子宮内膜、膵臓、腎、肺癌、及び腹膜の癌からなる群から選択される。一実施形態において、がんは、卵巣癌である。一実施形態において、FOLR1を検出することは、試料中に存在するIMGN853によって阻害されない。一実施形態において、FOLR1を検出することが、試料中に存在するhuMov19によって阻害されない。
【0024】
一実施形態において、FOLR1を検出することが、試料中に存在する抗体または抗原結合断片によって阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、配列番号59の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号60のVL CDR-2、配列番号61のVL CDR-3、配列番号62の可変重鎖(VH)CDR-1、配列番号64のVH CDR-2、及び配列番号65のVH CDR-3を含む。一実施形態において、FOLR1を検出することが、試料中に存在する抗体または抗原結合断片によって阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、配列番号56の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号57または配列番号58の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、FOLR1を検出することが、試料中に存在する抗体または抗原結合断片によって阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、(i)PTA-10772としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されているプラスミドによってコードされる重鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む重鎖、及び(ii)PTA-10774としてATCCに寄託されているプラスミドによってコードされる軽鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0025】
一実施形態において、FOLR1を検出することが、試料中に存在する葉酸によって阻害されない。
【0026】
一実施形態において、方法は、試料中の少なくとも0.5ng/mLのFOLR1を検出することができる。一実施形態において、方法は、試料中の少なくとも0.3ng/mLのFOLR1を検出することができる。一実施形態において、方法は、試料中の少なくとも0.25ng/mLのFOLR1を検出することができる。
【0027】
一実施形態において、信号対雑音比は、少なくとも5である。一実施形態において、信号対雑音比は、少なくとも10である。
【0028】
一実施形態において、FOLR1は、脱落FOLR1である。
【0029】
本発明は、FOLR1の新規ペプチドをさらに提供する。一実施形態において、ペプチドは、配列番号42の配列からなる。一実施形態において、ペプチドは、配列番号43の配列からなる。一実施形態において、ペプチドは、配列番号44の配列からなる。一実施形態において、ペプチドは、配列番号45の配列からなる。
【0030】
本発明は、試料中のFOLR1を検出するためのキットをさらに提供する。一実施形態において、キットは、FOLR1と結合するイムノキャプチャ試薬、消化試薬、ならびにa)配列番号42の配列を含むペプチド、b)配列番号43の配列を含むペプチド、c)配列番号44の配列を含むペプチド、及びd)配列番号45の配列を含むペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む。
【0031】
一実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、FOLR1と結合する抗体または抗原結合断片を含む。一実施形態において、抗体は、muFR1-9である。一実施形態において、抗体は、muFR1-13である。
【0032】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号1の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号2のVH CDR-2、配列番号3のVH CDR-3、配列番号13の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号14のVL CDR-2、及び配列番号15のVL CDR-3を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号4の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号5のVH CDR-2、配列番号6のVH CDR-3、配列番号16の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号17のVL CDR-2、及び配列番号18のVL CDR-3を含む。
【0033】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号25の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号25の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号26の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号26の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。
【0034】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号25の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号26の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む。
【0035】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号33の配列を有する重鎖、及び配列番号37の配列を有する軽鎖を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、配列番号34の配列を有する重鎖、及び配列番号38の配列を有する軽鎖を含む。
【0036】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、約1.0nM~約10nMのKdでヒトFOLR1と結合する。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、約0.5nM~約5nMのKdでヒトFOLR1と結合する。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
試料中のヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出する方法であって、
(a)固体支持体と結合したイムノキャプチャ試薬を用いて前記葉酸受容体1(FOLR1)を捕捉することと、
(b)前記固体支持体からFOLR1を溶出することと、
(c)前記溶出されたFOLR1を消化することと、
(d)前記消化されたFOLR1に対して液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)の分析を実行することと、を含み、前記FOLR1が、少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドのクロマトグラフィー分離及び質量分析応答をモニタリングすることにより検出される、前記方法。
(項目2)
前記試料中の前記FOLR1のレベルが、前記LC/MSの分析によって定量化される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記試料中の前記FOLR1のレベルが、前記試料中の前記FOLR1のレベルをFOLR1の基準レベルと比較することによって定量化される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記イムノキャプチャ試薬が、FOLR1と結合する抗体または抗原結合断片を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合が、IMGN853のFOLR1との結合によって競合的に阻害されない、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合が、huMov19のFOLR1との結合によって競合的に阻害されない、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合が、第2の抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、前記第2の抗体または抗原結合断片が、配列番号59の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号60のVL CDR-2、配列番号61のVL CDR-3、配列番号62の可変重鎖(VH)CDR-1、配列番号64のVH CDR-2、及び配列番号65のVH CDR-3を含む、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合が、第2の抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、前記第2の抗体または抗原結合断片が、配列番号56の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号57または配列番号58の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目4に記載の方法。
(項目9)
前記抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合が、第2の抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、前記第2の抗体または抗原結合断片が、(i)PTA-10772としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されているプラスミドによってコードされる重鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む重鎖、及び(ii)PTA-10774としてATCCに寄託されているプラスミドによってコードされる軽鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目4に記載の方法。
(項目10)
前記抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合が、葉酸のFOLR1との結合によって阻害されない、項目4に記載の方法。
(項目11)
前記抗体が、muFR1-9である、項目4に記載の方法。
(項目12)
前記抗体が、muFR1-13である、項目4に記載の方法。
(項目13)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号1の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号2のVH CDR-2、配列番号3のVH CDR-3、配列番号13の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号14のVL CDR-2、及び配列番号15のVL CDR-3を含む、項目4に記載の方法。
(項目14)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号4の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号5のVH CDR-2、配列番号6のVH CDR-3、配列番号16の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号17のVL CDR-2、及び配列番号18のVL CDR-3を含む、項目4に記載の方法。
(項目15)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号25の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目4に記載の方法。
(項目16)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号25の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目4に記載の方法。
(項目17)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号26の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目4に記載の方法。
(項目18)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号26の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目4に記載の方法。
(項目19)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号25の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目4に記載の方法。
(項目20)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号26の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目4に記載の方法。
(項目21)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号33の配列を有する重鎖、及び配列番号37の配列を有する軽鎖を含む、項目4に記載の方法。
(項目22)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号34の配列を有する重鎖、及び配列番号38の配列を有する軽鎖を含む、項目4に記載の方法。
(項目23)
前記抗体または抗原結合断片が、約1.0nM~約10nMのKdでヒトFOLR1と結合する、項目4に記載の方法。
(項目24)
前記抗体または抗原結合断片が、約0.5nM~約5nMのKdでヒトFOLR1と結合する、項目4に記載の方法。
(項目25)
前記固体支持体が、質量分析イムノアッセイ(MSIA)マイクロカラムを含む、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記固体支持体が、磁気ビーズを含む、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
少なくとも1回の洗浄ステップが、前記固体支持体からFOLR1を溶出する前に実行される、項目1~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
2回以上の洗浄ステップが、前記固体支持体からFOLR1を溶出する前に実行される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記洗浄ステップが、前記固体支持体と結合した前記FOLR1を洗浄緩衝液、塩溶液、及び洗浄剤と接触させることを含む、項目27または28に記載の方法。
(項目30)
FOLR1が、酸性溶液を用いて前記固体支持体から溶出される、項目1~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記FOLR1が、前記FOLR1を消化する前に、還元及びアルキル化される、項目30に記載の方法。
(項目32)
FOLR1が、トリプシン/Lys-Cで消化される、項目1~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記FOLR1を消化することにより、配列番号42の配列を含むペプチドが生成される、項目1~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記FOLR1を消化することにより、配列番号43の配列を含むペプチドが生成される、項目1~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記FOLR1を消化することにより、配列番号44の配列を含むペプチドが生成される、項目1~34のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記FOLR1を消化することにより、配列番号45の配列を含むペプチドが生成される、項目1~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
FOLR1の少なくとも2つのシグネチャペプチドが選択され、前記LC/MSの分析ステップでモニタリングされる、項目1~36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
FOLR1の少なくとも3つのシグネチャペプチドが選択され、前記LC/MSの分析ステップでモニタリングされる、項目1~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
FOLR1の少なくとも4つのシグネチャペプチドが選択され、前記LC/MSの分析ステップでモニタリングされる、項目1~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記シグネチャペプチドが、
(a)配列番号42の配列を含むペプチド、
(b)配列番号43の配列を含むペプチド、
(c)配列番号44の配列を含むペプチド、及び
(d)配列番号45の配列を含むペプチドを含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記試料が、体液を含む、項目1~40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記体液が、血漿である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記体液が、血清である、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記体液が、腹水である、項目41に記載の方法。
(項目45)
前記試料が、末梢血試料を含む、項目1~40のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記試料が、がんを有する患者から取得される、項目1~45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記がんが、卵巣、脳、乳房、子宮、子宮内膜、膵臓、腎、肺癌、及び腹膜の癌からなる群から選択される、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記がんが、卵巣癌である、項目47に記載の方法。
(項目49)
FOLR1を検出することが、前記試料中に存在するIMGN853によって阻害されない、項目1~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
FOLR1を検出することが、前記試料中に存在するhuMov19によって阻害されない、項目1~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
FOLR1を検出することが、前記試料中に存在する抗体または抗原結合断片によって阻害されず、前記抗体または抗原結合断片が、配列番号59の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号60のVL CDR-2、配列番号61のVL CDR-3、配列番号62の可変重鎖(VH)CDR-1、配列番号64のVH CDR-2、及び配列番号65のVH CDR-3を含む、項目1~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目52)
FOLR1を検出することが、前記試料中に存在する抗体または抗原結合断片によって阻害されず、前記抗体または抗原結合断片が、配列番号56の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号57または配列番号58の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目1~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
FOLR1を検出することが、前記試料中に存在する抗体または抗原結合断片によって阻害されず、前記抗体または抗原結合断片が、(i)PTA-10772としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されているプラスミドによってコードされる重鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む重鎖、及び(ii)PTA-10774としてATCCに寄託されているプラスミドによってコードされる軽鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目1~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
FOLR1を検出することが、前記試料中に存在する葉酸によって阻害されない、項目1~53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
試料中の少なくとも0.5ng/mLのFOLR1を検出することができる、項目1~54のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
試料中の少なくとも0.3ng/mLのFOLR1を検出することができる、項目1~54のいずれか1項に記載の方法。
(項目57)
試料中の少なくとも0.25ng/mLのFOLR1を検出することができる、項目1~54のいずれか1項に記載の方法。
(項目58)
信号対雑音比が、少なくとも5である、項目1~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目59)
信号対雑音比が、少なくとも10である、項目1~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
FOLR1が、脱落FOLR1である、項目1~59のいずれか1項記載の方法。
(項目61)
配列番号42の配列からなる、ペプチド。
(項目62)
配列番号43の配列からなる、ペプチド。
(項目63)
配列番号44の配列からなる、ペプチド。
(項目64)
配列番号45の配列からなる、ペプチド。
(項目65)
FOLR1と結合するイムノキャプチャ試薬、消化試薬、ならびに
(a)配列番号42の配列を含むペプチド、
(b)配列番号43の配列を含むペプチド、
(c)配列番号44の配列を含むペプチド、及び
(d)配列番号45の配列を含むペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む、キット。
(項目66)
前記イムノキャプチャ試薬が、FOLR1と結合する抗体または抗原結合断片を含む、項目65に記載のキット。
(項目67)
前記抗体が、muFR1-9である、項目66に記載のキット。
(項目68)
前記抗体が、muFR1-13である、項目66に記載のキット。
(項目69)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号1の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号2のVH CDR-2、配列番号3のVH CDR-3、配列番号13の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号14のVL CDR-2、及び配列番号15のVL CDR-3を含む、項目66に記載のキット。
(項目70)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号4の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号5のVH CDR-2、配列番号6のVH CDR-3、配列番号16の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号17のVL CDR-2、及び配列番号18のVL CDR-3を含む、請求66に記載のキット。
(項目71)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号25の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目66に記載のキット。
(項目72)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号25の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目66に記載のキット。
(項目73)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号26の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目66に記載のキット。
(項目74)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号26の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目66に記載のキット。
(項目75)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号25の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目66に記載のキット。
(項目76)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号26の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む、項目66に記載のキット。
(項目77)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号33の配列を有する重鎖、及び配列番号37の配列を有する軽鎖を含む、項目66に記載のキット。
(項目78)
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号34の配列を有する重鎖、及び配列番号38の配列を有する軽鎖を含む、項目66に記載のキット。
(項目79)
前記抗体または抗原結合断片が、約1.0nM~約10nMのKdでヒトFOLR1と結合する、項目66に記載のキット。
(項目80)
前記抗体または抗原結合断片が、約0.5nM~約5nMのKdでヒトFOLR1と結合する、項目66に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】FOLR1イムノキャプチャ-LC/MSアッセイの概略図を示す。
【
図2】0.3ng/mLでの代替マトリックスにおける低レベルの可溶性FOLR1を含む試料から抽出されたイオンクロマトグラムを示す。
【
図3】正常なヒト血漿試料から抽出されたイオンクロマトグラムを示す。
【
図4】増加された可溶性FOLR1を伴う患者の服用前試料から抽出されたイオンクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、患者試料中のヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出する新規方法を提供する。FOLR1の最初のイムノキャプチャステップが実行され、それに続いて、捕捉されたFOLR1のペプチドへの消化、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を介したペプチドの定量分析が実行される。抗FOLR1活性剤(例えば、IMGN853などの抗体huMov19を含む活性剤)のFOLR1との結合を競合的に阻害しない抗体は、本発明のイムノキャプチャステップにおいて有用である。抗FOLR1活性剤の結合を競合的に阻害しない抗体は、抗FOLR1活性剤を用いて治療された患者からの試料中のFOLR1(例えば、脱落FOLR1)を捕捉するのに特に有用である。本発明の方法により産生されるFOLR1のペプチドがさらに開示される。そのようなペプチドは、LC/MSによる患者試料のFOLR1レベルの検出において有用である。FOLR1と結合する薬剤及びFOLR1ペプチドを含むキットがさらに提供される。
【0039】
I.定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句を以下に定義する。
【0040】
本明細書で使用される「ヒト葉酸受容体1」、「FOLR1」、または「葉酸受容体アルファ(FR-α)」という用語は、特に明記しない限り、任意の天然のヒトFOLR1を指す。したがって、これらの用語の全ては、本明細書に示されるタンパク質または核酸配列のいずれかを指すことができる。「FOLR1」という用語は、「全長」の非プロセス型FOLR1だけでなく、細胞内でプロセシングされたFOLR1のいずれもの形態を包括する。この用語は、FOLR1の天然に発生するバリアント、例えばスプライスバリアント(FOLR2、FOLR3、またはFOLR4を包括するそれらのバリアントを除く)、対立遺伝子バリアント、及びアイソフォームをさらに包括する。本明細書に記載されるFOLR1ポリペプチドは、ヒト組織型または別の源からなどの様々な源から単離するか、または組換え法もしくは合成法によって調製することができる。FOLR1配列の例には、NCBI参照番号P15328、NP_001092242.1、AAX29268.1、AAX37119.1、NP_057937.1、及びNP_057936.1が含まれるが、これらに限定されない。ヒトFOLR1配列は、以下のとおりである:
MAQRMTTQLLLLLVWVAVVGEAQTRIAWARTELLNVCMNAKHHKEKPGPEDKLHEQCRPWRKNACCSTNTSQEAHKDVSYLYRFNWNHCGEMAPACKRHFIQDTCLYECSPNLGPWIQQVDQSWRKERVLNVPLCKEDCEQWWEDCRTSYTCKSNWHKGWNWTSGFNKCAVGAACQPFHFYFPTPTVLCNEIWTHSYKVSNYSRGSGRCIQMWFDPAQGNPNEEVARFYAAAMSGAGPWAAWPFLLSLALMLLWLLS(配列番号41)。
【0041】
「脱落抗原」及び「脱落FOLR1」(「sFOLR1」または「sFRα」)という用語は、本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、可溶性であり、かつ細胞に関連しないFOLR1タンパク質を指す。いくつかの実施形態において、細胞外ドメイン(ECD)及びグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)リンカーが含まれる。一実施形態において、脱落FOLR1は、ECDのみを含む。FOLR1には、シグナルペプチド(アミノ酸1~24)、FOLR1タンパク質鎖(アミノ酸25~233または234)、及び切断可能なプロペプチド(アミノ酸235~257)が含まれる。脱落FOLRは、アミノ酸1~257、1~233、1~234、25~233、25~234、またはその任意の他の断片を含むことができる。いくつかの実施形態において、シグナル配列は、切断される。他の実施形態において、ECD及びGPI部分は、膜(例えば、可溶性脂質ラフト)にはめ込むことができる。一実施形態において、脱落FOLR1は、アミノ酸1~233またはその断片を含むことができる。
【0042】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または上記の組み合わせなどの標的を認識し、特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗体が所望される生物活性を示す限り、無傷のポリクローナル抗体、無傷のモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体を含む融合タンパク質、及び任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、免疫グロブリンの5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のうちのいずれかであり得、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと称されるそれらの重鎖定常ドメインの同一性に基づく。免疫グロブリンの異なるクラスは、異なる、及び周知であるサブユニット構造及び三次元配置を有する。抗体は、ネイキッドであり得るか、または毒素、放射性同位体などの他の分子と複合され得る。
【0043】
「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部を指す。「抗原結合断片」は、抗原と結合する無傷の抗体の一部を指す。抗原結合断片は、無傷の抗体の抗原決定可変領域を含むことができる。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、直鎖状抗体、ならびに一本鎖抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
「抗FOLR1抗体」または「FOLR1と結合する抗体」という用語は、FOLR1を標的とする診断及び/または治療剤として有用である抗体のように、十分な親和性でFOLR1と結合可能な抗体を指す(例えば、huMov19(M9346A)抗体)。無関係な非FOLR1タンパク質との抗FOLR1抗体の結合の程度は、例えば放射イムノアッセイ(RIA)によって測定される抗体のFOLR1との結合の約10%未満であり得る。
【0045】
「IMGN853」(ミルベツキシマブソラブタンシンとしても知られる)という用語は、huMov19(M9346A)抗体、スルホSPDBリンカー、及びDM4メイタンシノイドを含む本明細書に記載される免疫複合体を指す。配列番号56~58のポリペプチドは、huMov19(M9346A)の重鎖の可変ドメイン、可変ドメイン軽鎖バージョン1.00、及びhuMov19の可変ドメイン軽鎖バージョン1.60のそれぞれを含む。特定の実施形態において、huMov19(M9346A)抗体は、可変重鎖配列の配列番号56、及び可変軽鎖配列の配列番号58(huMov19のバージョン1.60)を含む、抗FOLR1抗体である。DM4は、N2’-デアセチル-N2’-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)メイタンシンを指す。「スルホSPDB」は、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート)リンカーを指す。特定の実施形態において、huMov19(M9346A)抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)に寄託されているプラスミドによってコードされ、ブダペスト条約の条件の下で2010年4月7日、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110に位置し、ATCC寄託番号PTA-10772及びPTA-10773または10774を有する。以下の配列情報は、huMov19の相補性決定領域(CDR)、可変重及び軽鎖、ならびに完全な重及び軽鎖を提供する:
huMov19可変重鎖(配列番号56)
QVQLVQSGAEVVKPGASVKISCKASGYTFTGYFMNWVKQSPGQSLEWIGRIHPYDGDTFYNQKFQGKATLTVDKSSNTAHMELLSLTSEDFAVYYCTRYDGSRAMDYWGQGTTVTVSS
huMov19可変軽鎖バージョン1.00(配列番号57)
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLNISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKR
huMov19可変軽鎖バージョン1.60(配列番号58)
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLTISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKR
huMov19可変軽鎖CDR1(配列番号59)
KASQSVSFAGTSLMH
huMov19可変軽鎖CDR2(配列番号60)
RASNLEA
huMov19可変軽鎖CDR3(配列番号61)
QQSREYPYT
huMov19可変重鎖CDR1(配列番号62)
GYFMN
huMov19可変重鎖CDR2-Kabat規定(配列番号63)
RIHPYDGDTFYNQKFQG
huMov19可変重鎖CDR2-Abm規定(配列番号64)
RIHPYDGDTF
huMov19可変重鎖CDR3(配列番号65)
YDGSRAMDY
huMov19重鎖アミノ酸配列(配列番号66)
QVQLVQSGAEVVKPGASVKISCKASGYTFTGYFMNWVKQSPGQSLEWIGRIHPYDGDTFYNQKFQGKATLTVDKSSNTAHMELLSLTSEDFAVYYCTRYDGSRAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
huMov19軽鎖バージョン1.00アミノ酸配列(配列番号67)
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLNISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
huMov19軽鎖バージョン1.60アミノ酸配列(配列番号68)
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLTISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0046】
本明細書で使用される「免疫複合体」または「複合体」という用語は、細胞結合剤(すなわち、抗FOLR1抗体またはその断片)と連結され、一般式:C-L-Aによって定義される化合物またはその誘導体を指し、C=細胞毒素、L=リンカー、及びA=抗体またはその抗原結合断片、例えば、抗FOLR1抗体または抗体断片である。免疫複合体は、逆順における一般式:A-L-Cによって定義することもできる。
【0047】
「リンカー」は、化合物、通常は薬物(メイタンシノイドなど)を、安定した共有結合様式で細胞結合剤(抗FOLR1抗体またはその断片など)と結合することができる任意の化学部分である。リンカーは、化合物または抗体が活性を維持する条件下で、例えば、ジスルフィド結合切断に対して感受性または実質的に耐性であり得る。好適なリンカーは、当技術分野で周知であり、例えば、ジスルフィド基及びチオエーテル基を含む。
【0048】
「モノクローナル」抗体またはその抗原結合断片は、単一の抗原決定基またはエピトープにおける高度に特異的な認識及び結合に関与する均一な抗体または抗原結合断片集団を指す。これは、通常、異なる抗原決定基に向けられる異なる抗体を含む、ポリクローナル抗体とは対照的である。「モノクローナル」抗体またはその抗原結合断片という用語は、無傷である完全長モノクローナル抗体、ならびに抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む他の修飾免疫グロブリン分子の両方を包括する。さらに、「モノクローナル」抗体またはその抗原結合断片は、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物を含むがこれらに限定されない任意の数の様式で作製された、かかる抗体及びその抗原結合断片を指す。
【0049】
「ヒト化」抗体またはその抗原結合断片という用語は、特定の免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、または最小の非ヒト(例えば、ネズミ科)配列を含むその断片である非ヒト(例えば、ネズミ科)抗体または抗原結合断片の形態を指す。典型的には、ヒト化抗体またはその抗原結合断片は、相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望される特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDRからの残基で置き換えられたヒト免疫グロブリンである(「CDRグラフト」)(Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988))。いくつかの事例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、所望される特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種からの抗体または断片の対応する残基で置き換えられる。ヒト化抗体またはその抗原結合断片は、Fvフレームワーク領域において及び/または置き換えられた非ヒト残基内のいずれかの追加の残基の置換により、さらに修飾することができ、抗体または抗原結合断片の特異性、親和性、及び/または能力を洗練及び最適化する。一般に、ヒト化抗体またはその抗原結合断片は、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列のものであるのに対し、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全てまたは実質的に全てを含む少なくとも1つ、典型的には2つまたは3つの実質的に全ての可変ドメインを含むであろう。ヒト化抗体またはその抗原結合断片は、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものをさらに含むことができる。ヒト化抗体を生成するために使用される方法の例は、米国特許第5,225,539号、Roguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91(3):969-973(1994)、及びProtein Eng.9(10):895-904(1996)に記載される。いくつかの実施形態において、「ヒト化抗体」は、再表面化抗体である。
【0050】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域の、単独または組み合わせのいずれかを指す。重及び軽鎖の可変領域は、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)のそれぞれで構成される。各鎖におけるCDRは、FRにより近接して一緒に保持され、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの手法が存在する:(1)異種間配列可変性に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda Md.),「Kabat」)、及び(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al,J.Molec.Biol.273:927-948(1997))。さらに、これらの2つのアプローチの組み合わせは、CDRを決定するために当技術分野で時おり使用される。
【0051】
可変ドメインにおける残基を参照する場合(およそ残基1~107の軽鎖及び残基1~113の重鎖)、Kabat付番システムが一般的に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest。(5th Ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)(「Kabat」)。
【0052】
Kabatのようなアミノ酸位置の付番は、Kabatらにおける抗体の編集の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される付番システムを指す(Sequences of Immunological Interest.(5th Ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda,Md.),「Kabat」)。この付番システムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮または挿入に対応する、より少ないまたは追加のアミノ酸を含むことができる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatによる残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入される残基(Kabatによる残基82a、82b、82cなど)を含むことができる。残基のKabat付番は、「標準的に」Kabat付番される配列を伴う抗体の配列の相同性領域のアラインメントにより、所定の抗体について決定できる。Cothiaは、その代わりに、構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat付番規定を使用して付番された場合のChothia CDR-H1ループの終わりは、ループの長さに応じてH32及びH34の間で異なる(これは、Kabat付番化案が挿入をH35A及びH35Bに配置するためであり、35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終了し、35Aのみが存在する場合、ループは33で終了し、35A及び35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。AbM超可変領域は、Kabat CDR及びChothia構造ループ間の妥協点を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用される。
【表A】
【0053】
「キメラ」抗体またはその抗原結合断片という用語は、アミノ酸配列が2つ以上の種に由来する、抗体またはその抗原結合断片を指す。一般的に、軽及び重鎖の両方の可変領域は、所望される特異性、親和性、及び能力を有する哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)の1種に由来する抗体または抗原結合断片の可変領域に対応し、一方、定常領域は、その種における免疫応答の誘発を避けるために、別(通常はヒト)に由来する抗体または抗原結合断片の配列と相同である。
【0054】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、本明細書で互換的に使用され、特定の抗体によって認識され、特異的に結合され得る抗原の部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、タンパク質の三次折り畳みによって並置される隣接するアミノ酸及び非連続アミノ酸からの両方を形成し得る。隣接するアミノ酸から形成されるエピトープは通常、タンパク質の変性時に保持されるが、三次折り畳みによって形成されるエピトープは通常、タンパク質の変性時に欠失する。エピトープは、典型的には、ユニークな空間的高次構造において少なくとも3、より一般的には少なくとも5、または8~10のアミノ酸を含む。
【0055】
「結合親和性」は、一般に、分子の単一結合部位(抗体など)と、その結合パートナー(抗原など)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。特に明記されない限り、本明細書で使用する「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般に解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定できる。一般に、低親和性抗体は抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向がある一方で、高親和性抗体は一般に抗原により速く結合し、より長く結合したままになる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、そのいずれも本発明の目的に使用することができる。特定の例示的な実施形態が本明細書に記載される。
【0056】
結合親和性を指すために本明細書で使用される場合の「またはより良い」とは、分子とその結合パートナーとの間のより強い結合を指す。本明細書で使用される場合の「より良い」とは、より小さな数値のKd値によって表される、より強い結合を指す。例えば、抗体は、「0.6nMまたはより良い」抗原に対する親和性を有し、抗原に対する抗体の親和性は<0.6nM、すなわち0.59nM、0.58nM、0.57nMなど、または0.6nM未満の任意の値である。一実施形態において、Kdによって決定される抗体の親和性は、約10-3~約10-12M、約10-6~約10-11M、約10-6~約10-10M、約10-6~約10-9M、約10-6~約10-8M、または約10-6~約10-7Mであろう。
【0057】
抗体は、参照抗体のエピトープとの結合を、ある程度遮断する範囲でそのエピトープと優先的に結合する場合に、参照抗体の所定のエピトープとの結合を「競合的に阻害する」と言われる。競合的阻害は、例えば競合ELISAアッセイなどの当技術分野で知られている任意の方法によって決定し得る。抗体は、参照抗体の所与のエピトープとの結合を競合的に少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%阻害すると言われ得る。
【0058】
本明細書で使用される「実質的に類似」または「実質的に同じ」という語句は、2つの数値の間の十分に高い程度の類似性を示し(一般に、一方は本発明の抗体に関連し、他方は参照/比較抗体に関連する)、そのため、当業者は、2つの値の間の差が、該値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特性の状況下で生物学的及び/または統計的有意性が低いまたは無いと考えるであろう。該2つの値の間の差は、参照/比較抗体に対する値の機能として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満である。
【0059】
「単離された」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、自然界には見られない形態のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物である。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物には、それらがもはや自然に見られる形態に至らない程度まで精製されているものが含まれる。いくつかの実施形態において、単離された抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は実質的に純粋である。
【0060】
本明細書で使用される「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋、または少なくとも99%純粋である(すなわち、汚染物質を含まない)材料を指す。
【0061】
FOLR1の「増加した発現」という用語は、参照試料、参照FOLR1レベル、または同じ対照から検出された以前のFOLR1レベルと比較して、FOLR1発現レベルの上昇を含む試料を指す。したがって、例えば、患者試料における「増加したFOLR1タンパク質レベル」は、非がん性参照試料におけるFOLR1タンパク質レベルよりも高いFOLR1タンパク質レベルを有することができる。患者試料における「増加したFOLR1タンパク質レベル」は、例えば、がん性試料におけるFOLR1タンパク質レベルに等しいFOLR1タンパク質レベルを有することもできる。
【0062】
「参照試料」を使用して、試験試料から本発明の方法で得られた結果を相関させ、比較することができる。参照試料は、細胞(例えば、細胞株、細胞ペレット)、体液、または組織である。「参照試料」におけるFOLR1レベルは、FOLR1の絶対または相対量、量の範囲、最小及び/または最大量、平均値の量、及び/または中央値の量であり得る。「参照試料」は、試験試料と比較されるFOLR1発現の基準としても機能する。「参照試料」は、同じ患者からの以前の試料または基準試料、正常な参照、または関連する患者集団からの参照を含むことができる。一般に、FOLR1レベルは、標準曲線の値として表される。標準曲線は、アッセイデータをプロットして試料中のFOLR1の濃度を決定する定量的な方法である。一実施形態において、参照試料は、抗原標準精製FOLR1またはFOLR1-Fcである。本明細書に開示される検出方法は、試験試料中のFOLR1の発現レベルと、「参照値」または「参照レベル」との比較を伴い得る。いくつかの実施形態において、参照値は、参照試料中のFOLR1の発現レベルである。参照値は、所定の値であり得、かつ試験試料と並行して試験された基準試料(例えば、対照生体試料)から決定され得る。参照値は、中央値もしくは平均値などの単一のカットオフ値、または信頼区間などの値の範囲であり得る。参照値は、がんの素因がある個体、初期もしくは後期のがんを有する個体、男性及び/または女性の個体、またはがん治療を受けている個体など、個体の様々なサブグループに対して確立できる。正常な参照試料または値、及び陽性の参照試料または値の例は、本明細書で記載される。
【0063】
本発明の「試料」または「生物試料」は、生体起源のものであり、特定の実施形態において、例えば、真核生物からのものである。好ましい実施形態において、試料は、ヒト試料であるが、動物試料もまた、本発明の実施に使用することができる。本発明で使用するための試料の非限定的な源としては、例えば、固形組織、生検吸引液(biopsy aspirate)、腹水、流体抽出物(fluidic extract)、血液、血漿、血清、髄液、リンパ液、皮膚の外側部分(external section)、気道、腸管、及び尿生殖路、涙、唾液、乳汁、腫瘍、器官、細胞培養物、及び/または細胞培養成分が含まれるが、これらに限定されない。本発明は、利用可能な物質の量が少ない、通常、腹水などの体液を含むがん試料にとって、特に有用である。本方法は、FOLR1の発現の態様または試料の状態を試験するのに使用することができ、異なるタイプの細胞または組織を比較すること、異なる発生段階を比較すること、ならびに疾患もしくは異常の存在及び/またはタイプを検出または決定することを含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「キャプチャ試薬」という用語は、好適な条件下で、キャプチャ試薬-標的分子の複合体が、試料の残りから分離することができるように、試料中の標的分子に結合し、それを捕捉することが可能である試薬を指す。「イムノキャプチャ試薬」という用語は、好適な条件下で、キャプチャ試薬-標的分子複合体は、試料の残りから分離することができるように、試料中の標的分子に結合し、それを捕捉することが可能である免疫学的試薬を指す。一実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、抗体または抗原結合断片である。一実施形態において、キャプチャ試薬またはイムノキャプチャ試薬は、固定化される。一実施形態において、キャプチャ試薬またはイムノキャプチャ試薬は、固体支持体上に固定化される。
【0065】
本明細書で使用される場合、「検出可能な抗体」という用語は、検出手段によって増幅される標識を介して直接的に、または標識されている、例えば、別の抗体を介して間接的に検出されることが可能である抗体を指す。直接標識については、抗体は、典型的には、何らかの手段によって検出可能である部分に複合される。一実施形態において、検出可能な抗体は、ビオチン化抗体である。
【0066】
「標識」という単語は、本明細書で使用されるとき、「標識された」抗体を生成するように抗体に直接または間接的に複合される検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体で(例えば、放射性同位元素標識または蛍光標識)検出可能であることができ、酵素標識の場合、検出可能である基質の化合物または組成物の化学変化を触媒することができる。
【0067】
「相関する」または「相関すること」は、どんな方法であれ、第1の分析の成績及び/または結果を第2の分析の成績及び/または結果と比較することを意味する。例えば、第2の分析を行うことにおいて第1の分析の結果を使用してもよく、第1の分析の結果を使用して第2の分析を行うべきであるかどうかを決定してもよく、及び/または第1の分析の結果を第2の分析の結果と比較してもよい。
【0068】
「がん」及び「がん性」という用語は、細胞の集団が無秩序な細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的な状態を指すまたは説明する。がんの例には、がん腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。そのようながんのさらに特定の例としては、肺の扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化器癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、直腸癌、直腸結腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌、及び種々の型の頭頚部の癌が含まれる。がんは、FOLR1を発現するがんであり得る。
【0069】
「腫瘍」及び「新生物」は、前がん性病変を含む良性(非がん性)または悪性(がん性)のいずれかの過剰な細胞の成長または増殖からもたらされた、いかなる組織の塊をも指す。
【0070】
「がん細胞」、「腫瘍細胞」という用語、及び文法的等価物は、腫瘍細胞集団の大部分を含む非腫瘍形成性細胞及び腫瘍形成性幹細胞(がん幹細胞)の両方を含む、腫瘍または前がん病変に由来する全細胞集団を指す。本明細書で使用される場合、「腫瘍細胞」という用語は、再生し、分化する能力を欠くそれら腫瘍細胞を単に指して、それらの腫瘍細胞をがん幹細胞から区別する場合、「非腫瘍形成性の」という用語によって修飾されるであろう。
【0071】
「対象」という用語は、特定の治療のレシピエントとなるヒト、非ヒト霊長類、齧歯類などを含むが、これらに限定されない、任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的には、「対象」及び「患者」という用語は、ヒト対象に関連して、本明細書では同義的に使用される。
【0072】
「薬学的製剤」という用語は、有効成分の生物学的活性を有効にするような形態であり、製剤が投与され得る対象にとって許容できない毒性である追加成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は、滅菌であり得る。
【0073】
本明細書で開示されているような抗体の「有効量」は、具体的に言及される目的を実施するのに十分な量である。「有効量」は、定められた目的との関連で、経験的に、及び通例の方法で、決定することができる。
【0074】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では相互交換可能に使用されて、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状または分枝状であり得、それは、修飾されたアミノ酸を含むことができ、非アミノ酸によって中断することができる。その用語はまた、天然に修飾されている、または介入、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分による複合化によって修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)ならびに当該技術分野で既知の他の修飾を含有するポリペプチドもまた、定義の中に含められる。本発明のポリペプチドが抗体に基づくので、特定の実施形態において、ポリペプチドは、単鎖または会合した鎖として存在し得ることが理解される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質は、天然に存在しない。いくつかの実施形態において、ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質は、他の天然に存在する成分から精製される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質は、組換えで生成される。
【0075】
2つ以上の核酸またはポリペプチドの文脈での「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、配列同一性の一部としていかなる保存的なアミノ酸置換も考慮せずに、最大の一致について比較し、(必要に応じてギャップを導入して)並べた場合、同じである2つ以上の配列もしくは部分配列、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の特定された比率を有する2つ以上の配列もしくは部分配列を指す。パーセント同一性は、配列比較ソフトウェアまたはアルゴリズムを用いて、または目視検査によって測定することができる。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のアラインメントを得るのに使用することができる種々のアルゴリズム及びソフトウェアが当該技術分野で既知である。配列アラインメントアルゴリズムのそのような非限定的な例の1つは、Karlin et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.,90:5873-5877にて修飾されるように、Karlin et al,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:2264-2268に記載されるアルゴリズムであり、NBLAST及びXBLASTプログラム(Altschul et al.,1991,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402)に組み入れられている。特定の実施形態において、ギャップのあるBLASTは、Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されるように使用することができる。BLAST-2、WU-BLAST-2(Altschul et al.,1996,Methods in Enzymology,266:460-480)、ALIGN、ALIGN-2(Genentech,South San Francisco,California)、またはMegalign(DNASTAR)は、配列を並べるのに使用することができる追加の公的に利用可能なソフトウェアのプログラムである。特定の実施形態において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、(例えば、NWSgapdna.CMPマトリックス及び40、50、60、70、もしくは90のギャップ加重及び1、2、3、4、5、もしくは6の長さ加重を用いた)GCGソフトウェアにおけるGAPプログラムを用いて決定される。特定の代替的実施形態において、Needleman及びWunsch(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))のアルゴリズムを組み入れるGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて、(例えば、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、及び16、14、12、10、8、6、もしくは4のギャップ加重及び1、2、3、4、5の長さ加重を用いて)2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を決定することができる。代替的に、特定の実施形態において、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列間でのパーセント同一性は、Myers及びMiller(CABIOS,4:11-17(1989))のアルゴリズムを用いて決定される。例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を用いて、かつ残基表、12のギャップ長さペナルティ及び4のギャップペナルティと共にPAM120を用いて、パーセント同一性を決定することができる。特定のアラインメントソフトウェアによる最大アラインメントのための適当なパラメータは、当業者によって決定することができる。特定の実施形態において、アラインメントソフトウェアの初期設定パラメータが、使用される。特定の実施形態において、第1のアミノ酸配列の第2の配列アミノ酸に対するパーセント同一性「X」は、100×(Y/Z)として算出され、式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメント(目視検査または特定の配列アラインメントプログラムによって並べられた)において同一の一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Zは、第2の配列における残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列よりも長い場合、第1の配列の第2の配列に対するパーセント同一性は、第2の配列の第1の配列に対するパーセント同一性よりも長いであろう。
【0076】
非限定的な例として、任意の特定のポリヌクレオチドが参照配列に対してある特定の比率の配列同一性を有する(例えば、少なくとも80%同一である、少なくとも85%同一である、少なくとも90%同一である、及びいくつかの実施形態において、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である)かどうかは、特定の実施形態において、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)を用いて決定することができる。Bestfitは、Smith及びWaterman,Advances in Applied Mathematics 2:482 489(1981)のローカル相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の相同性の最良なセグメントを見出す。Bestfitまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを用いて、特定の配列が本発明による参照配列に対して、例えば、95%同一性であるかどうかを決定する場合、パラメータは、同一性の割合が参照ヌクレオチド配列の完全長にわたって算出され、かつ参照配列におけるヌクレオチドの総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように設定される。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明の2つの核酸またはポリペプチドが、実質的に同一であり、これは、配列比較アルゴリズムを用いて、または目視検査によって測定するとき、最大の一致について比較し、並べた場合、それらが、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、及びいくつかの実施形態において、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有することを意味する。特定の実施形態において、同一性は、長さ少なくとも約10、約20、約40~60の残基またはその間の任意の整数値である配列の領域にわたって、または60~80残基、少なくとも約90~100残基より長い領域にわたって存在し、または配列は、例えば、ヌクレオチド配列のコーディング領域のような、比較される配列の完全長にわたって実質的に同一である。
【0078】
「保存的なアミノ酸置換」は、あるアミノ酸残基が類似する側鎖を有するもう1つのアミノ酸残基で置き換えられるものである。塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。例えば、フェニルアラニンのチロシンへの置換は、保存的置換である。特定の実施形態において、本発明のポリペプチド及び抗体の配列における保存的な置換は、アミノ酸配列を含有するポリペプチドまたは抗体の抗原(複数可)への、すなわち、ポリペプチドまたは抗体が結合するFOLR1への結合を無効にしない。抗原結合を排除しないヌクレオチド及びアミノ酸の保存的置換を特定する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Brummell et al.,Biochem.32:1180-1 187(1993)、Kobayashi et al.Protein Eng.12(10):879-884(1999)、及びBurks et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:.412-417(1997)を参照のこと)。
【0079】
本開示及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明瞭に指示しない限り、複数形を含む。
【0080】
実施形態が「含む(comprising)」という言語と共に本明細書に記載される箇所はどこでも、「からなる(consisting of)」及び/または「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という点で記載される別の類似の実施形態も提供されることが理解される。
【0081】
本明細書にて「A及び/またはB」のような語句で使用される場合、「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」、ならびに「B」の両方を含むように意図されている。同様に、A、B、及び/またはC」のような語句で使用される場合、「及び/または」という用語は、以下の実施形態:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)のそれぞれを包含するように意図されている。
【0082】
II.FOLR1結合剤
ヒトFOLR1に特異的に結合する薬剤は、本発明の方法を実施するのに有用である。そのような薬剤は、本明細書では「FOLR1結合剤」と称される。本発明の方法を実施するのに有用であるFOLR1結合剤は、例えば、WO2014/036495及びWO2015/031815(これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)において記載されている。
【0083】
FOLR1結合剤には、muFR1-9、muFR1-13、muFR1-53、muFR1-62、muFR1-64、及びFOLR1-2.1(「IMGN 353.2-1」、「353.2-1」、「2.1」、または「muFRIHC2-1」としても称される)の重及び軽鎖CDR配列を含む薬剤が含まれる。CDR配列muFR1-9、muFR1-13、muFR1-53、muFR1-62、FOLR1-2.1は、以下の表1及び2に記載される。
【表1】
【表2】
【0084】
FOLR1結合分子は、CDRごとに最大4つ(すなわち、0、1、2、3、または4)の保存的アミノ酸置換を有するmuFR1-9、muFR1-13、muFR1-53、muFR1-62、muFR1-64、またはFOLR1-2.1(「IMGN 353.2-1」、「353.2-1」、「2.1」、または「muFRIHC2-1」としても称される)のCDRを含むFOLR1と特異的に結合する、抗体または抗原結合断片であり得る。
【0085】
ポリペプチドは、本明細書に記載される個々の可変軽鎖または可変重鎖のうちの1つを含むことができる。抗体及びポリペプチドは、可変軽鎖及び可変重鎖の両方を含むこともできる。ネズミ科muFR1-9、muFR1-13、muFR1-53、muFR1-62、及びFOLR1-2.1(「IMGN 353.2-1」、「353.2-1」、「2.1」、または「muFRIHC2-1」としても称される)抗体の可変軽鎖及び可変重鎖配列は、以下の表3及び4に提供される。
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【0086】
(a)配列番号25~28と少なくとも約90%の配列同一性を有するポリペプチド、及び/または(b)配列番号29~32と少なくとも約90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、ポリペプチドがさらに提供される。特定の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号25~32と少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。したがって、特定の実施形態において、ポリペプチドは、(a)配列番号25~28と少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチド、及び/または(b)配列番号29~32と少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。特定の実施形態において、ポリペプチドは、(a)配列番号25~28のアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び/または(b)配列番号29~32のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。特定の実施形態において、ポリペプチドは抗体であり、及び/またはポリペプチドは、FOLR1と特異的に結合する。特定の実施形態において、ポリペプチドは、FOLR1と特異的に結合するネズミ科、キメラ、またはヒト化抗体である。特定の実施形態において、配列番号25~32と特定の割合の配列同一性を有するポリペプチドは、保存的アミノ酸置換のみが配列番号25~32と異なる。
【0087】
ポリペプチドは、本明細書に記載される個々の軽鎖または重鎖のうちの1つを含むことができる。抗体及びポリペプチドは、軽鎖及び重鎖の両方を含むこともできる。ネズミ科muFR1-9、muFR1-13、muFR1-53、muFR1-62、及びFOLR1-2.1(「IMGN 353.2-1」、「353.2-1」、「2.1」、または「muFRIHC2-1」としても称される)抗体の軽鎖及び可変鎖配列は、以下の表5及び6に提供される。特定の実施形態において、抗FOLR1抗体は、2013年4月16日にATCCに寄託されたハイブリドーマによって産生され、ATCC寄託番号PTA-120197(「FOLR1-2.1」、さらに「IMGN 353.2-1」、「353.2-1」、「2.1」、または「muFRIHC2-1」としても称される)を有する抗体である。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表6-1】
【表6-2】
【0088】
(a)配列番号33~36と少なくとも約90%の配列同一性を有するポリペプチド、及び/または(b)配列番号37~40と少なくとも約90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、ポリペプチドがさらに提供される。特定の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号33~40と少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。したがって、特定の実施形態において、ポリペプチドは、(a)配列番号33~36と少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチド、及び/または(b)配列番号37~40と少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。特定の実施形態において、ポリペプチドは、(a)配列番号33~36のアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び/または(b)配列番号37~40のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。特定の実施形態において、ポリペプチドは抗体であり、及び/またはポリペプチドは、FOLR1と特異的に結合する。特定の実施形態において、ポリペプチドは、FOLR1と特異的に結合するネズミ科、キメラ、またはヒト化抗体である。特定の実施形態において、配列番号33~40と特定の割合の配列同一性を有するポリペプチドは、保存的アミノ酸置換のみが配列番号30~40と異なる。
【0089】
特定の実施形態において、ポリペプチドは、huMov19のFOLR1との結合によって競合的に阻害されない。特定の実施形態において、ポリペプチドは、IMGN853のFOLR1との結合によって競合的に阻害されない。特定の実施形態において、ポリペプチドは、huMov19のFOLR1との結合によって競合的に阻害されない。特定の実施形態において、ポリペプチドは、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、配列番号59の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号60のVL CDR-2、配列番号61のVL CDR-3、配列番号62の可変重鎖(VH)CDR-1、配列番号64のVH CDR-2、及び配列番号65のVH CDR-3を含む。特定の実施形態において、ポリペプチドは、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、配列番号56の配列を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号57または配列番号58の配列を有する可変軽鎖(VL)を含む。特定の実施形態において、ポリペプチドは、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合によって競合的に阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、(i)PTA-10772としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されているプラスミドによってコードされる重鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む重鎖、及び(ii)PTA-10774としてATCCに寄託されているプラスミドによってコードされる軽鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。特定の実施形態において、ポリペプチドは、葉酸のFOLR1との結合によって阻害されない。
【0090】
抗原に対する抗体の親和性または結合活性は、当該技術分野で周知の任意の好適な方法、例えば、サイトメトリー(フローサイトメトリーを含む)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または放射性免疫アッセイ(RIA)または速度論(例えば、表面プラズモン共鳴分光法(BIACORE(商標))分析)を用いて実験的に決定することができる。直接結合アッセイならびに競合結合アッセイ方式を容易に採用することができる(例えば、Berzofsky,et al.,“Antibody-Antigen Interactions,” In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992)、及び本明細書で記載される方法を参照のこと。特定の抗体-抗原の相互作用の測定された親和性は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH、温度)で測定される場合、変化し得る。したがって、親和性及び他の抗原-結合パラメータ(例えば、KDまたはKd、Kon、Koff)の測定は、抗体及び抗原の標準化した溶液及び本明細書で記載される緩衝液のような当該技術分野で既知であるような標準化した緩衝液で行う。
【0091】
一態様において、結合アッセイは、表面上にFOLR1抗原を発現している細胞にてサイトメトリー(例えば、フローサイトメトリー)を用いて行うことができる。例えば、100μLのFACS緩衝液(2%正常ヤギ血清で補完したRPMI-1640培地)にて試料当たり1×105個の細胞を用いて抗FOLR1抗体の濃度を変化させて、SKOV3などのFOLR1陽性細胞を、インキュベートした。次いで、細胞をペレットにし、洗浄し、100μLのFITC複合化ヤギ抗マウスまたはヤギ抗ヒトのIgG抗体(例えば、Jackson Laboratoryから入手可能である、FACS緩衝液中で6μg/mL)と共に1時間インキュベートした。細胞を、再びペレットにし、FACS緩衝液で洗浄し、1%ホルムアミドを含有する200μLのPBSに再懸濁させた。例えば、HTSマルチウェルサンプラーを伴ったFACSCaliburフローサイトメータを用いて試料を捕捉し、CellQuest Pro(全てBD Biosciences,San Diego,USからの)を用いて分析した。各試料について、FL1の平均蛍光強度(MFI)を取り出し、半対数プロットにて抗体濃度に対してプロットして、結合曲線を生成した。S字用量反応曲線を結合曲線に当てはめ、例えば、初期設定パラメータのGraphPad Prism v4(GraphPad software,San Diego,CA)などのプログラムを用いてEC50値を算出する。各抗体についての見かけの解離定数「Kd」または「KD」についての評価基準としてEC50値を使用することができる。
【0092】
Kohler及びMilstein(1975) Nature 256:495によって記載されたもののようなハイブリドーマ法を用いて、モノクローナル抗体を調製することができる。ハイブリドーマ法を用いて、マウス、ハムスター、または他の適当な宿主動物を上記のように免疫して、免疫抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生を引き出す。リンパ球もまた、インビトロで免疫することができる。免疫に続いて、リンパ球を単離し、例えば、ポリエチレングリコールを用いて好適な骨髄腫細胞株と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成し、次いで、それを融合しなかったリンパ球及び骨髄腫細胞から選別することができる。免疫沈降、免疫ブロットによって、またはインビトロの結合アッセイ(例えば、放射性免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定されるような選択された抗原に対して特異的に向けられたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、次いで、標準方法(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)を用いたインビトロの培養にて、または動物における腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。次いで、ポリクローナル抗体について記載されるように、モノクローナル抗体を、培養培地または腹水液から精製することができる。
【0093】
代替的に、米国特許第4,816,567号に記載されるように、組換えDNA法を用いても、モノクローナル抗体を、作製することができる。例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたRT-PCRによって、モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から単離し、従来の手順を用いてその配列を決定する。次いで、重鎖及び軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドを、好適な発現ベクターにクローニングし、そうでなければ、免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞にそれを形質移入すると、宿主細胞によってモノクローナル抗体が産生される。また、所望の種の組換えモノクローナル抗体またはその断片は、記載されるように所望の種のCDRを発現するファージディスプレライブラリから単離することができる(McCafferty et al.,1990,Nature,348:552-554、Clackson et al.,1991,Nature,352:624-628、及びMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581-597)。
【0094】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチド(複数可)をさらに修飾して、組換えDNA技術を用いて、組換えDNA法を用いた多数の異なる方法において代替抗体を生成することができる。いくつかの実施形態において、例えば、マウスモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインを、1)例えば、ヒト抗体のその領域に置換してキメラ抗体を生成することができるか、または2)非免疫グロブリンポリペプチドに置換して融合抗体を生成することができる。いくつかの実施形態において、定常領域を切り詰め、または取り除いて、モノクローナル抗体の所望の抗体断片を生成する。可変領域の部位特異的なまたは高密度の変異誘発を用いて、モノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、ヒトFOLR1に対するモノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。特定の実施形態において、そのような抗体を治療上用いて、ヒト対象に投与したときに、抗原性及びHAMA(ヒト抗マウス抗体)反応を軽減する。
【0096】
非ヒト抗体またはヒト抗体を操作する、ヒト化する、または表面再構成するための方法も使用することができ、それらは当該技術分野で周知である。ヒト化された、表面再構成した、または同様に操作された抗体は、非ヒトであるが、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、または他の哺乳動物に限定されない、供給源に由来する1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトのアミノ酸残基は、「移入」残基と称されることが多い残基によって置き換えられ、それは、典型的には、既知のヒト配列の「移入」の可変、定常、または他のドメインから選び取られる。
【0097】
そのような移入された配列を用いて、免疫原性を減らすことができるか、または当該技術分野で周知のように結合、親和性、オン速度、オフ速度、結合活性、特異性、半減期、または任意の他の好適な特性を軽減する、向上させる、または修飾することができる。一般に、CDR残基が直接、かつ最も実質的にFOLR1結合に影響を及ぼすことに関与する。したがって、非ヒトまたはヒトのCDR配列の一部または全てが維持される一方で、可変領域及び定常領域の非ヒト配列は、ヒトのアミノ酸または他のアミノ酸で置き換えることができる。
【0098】
抗原FOLR1に対する高い親和性及び他の好都合な生物特性を保持しながら、抗体はまた、任意でヒト化され、表面再構成され、操作されることもできるか、またはヒト抗体が操作されることもできる。この目標を達成するために、親配列、操作された配列、及びヒト化された配列の三次元モデルを用いた親配列及び種々の概念的なヒト化産物及び操作した産物の解析プロセスによって、ヒト化した(ヒトの)または操作した抗FOLR1抗体及び表面再構成した抗体を、任意で調製することができる。三次元の免疫グロブリンモデルは市販されており、当業者が精通している。選択された候補免疫グロブリン配列の考えられる三次元立体構造を説明し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の調査によって、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の分析が可能になり、すなわち、候補免疫グロブリンのFOLR1のような抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このように、フレームワーク(FR)残基を、選択し、所望の抗体の特徴、例えば、標的抗原(複数可)に対する増加した親和性が達成されるように共通配列及び移入配列と組み合わせることができる。
【0099】
本明細書に開示される抗体のヒト化、表面再構成、または操作は、Winter(Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、Roguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91(3):969-973(1994)、Roguska et al.,Protein Eng.9(10):895-904(1996)、米国特許第5,639,641号、同第5,723,323号、同第5,976,862号、同第5,824,514号、同第5,817,483号、同第5,814,476号、同第5,763,192号、同第5,723,323号、同第5,766,886号、同第5,714,352号、同第6,204,023号、同第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,225,539号、同第4,816,567、PCT/:US98/16280、US96/18978、US91/09630、US91/05939、US94/01234、GB89/01334、GB91/01134、GB92/01755、WO90/14443、WO90/14424、WO90/14430、EP229246、7,557,189、7,538,195、及び7,342,110(当該出願の各々は、参照により本明細書に組み込まれ、その中で引用された参考文献を含む)にて記載されたものなどであるが、これらに限定されない、任意の既知の方法を用いて実施することができる。
【0100】
本明細書に開示されているFOLR1に特異的に結合する薬剤はまた、抗体断片も包含する。様々な技術は、抗体断片の作製で知られている。伝統的には、これらの断片は、無傷な抗体のタンパク分解消化を介して導き出される(例えば、Morimoto et al.,1993,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117、Brennan et al.,1985,Science,229:81)。特定の実施形態において、抗体断片は、組換えで作製される。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は全て、E.coliまたは他の宿主細胞において発現され、それから分泌されるため、これらの断片の大量生産が可能になる。そのような抗体断片はまた、上で論じられる抗体ファージライブラリーから単離され得る。抗体断片はまた、米国特許第5,641,870号に記載される線状抗体であり得、例えば、単一特異性または二重特異性であり得る。抗体断片の作製についての他の技術は、技量のある実践者には明らかであろう。
【0101】
本発明の目的で、修飾された抗体は抗体のヒトFOLR1のポリペプチドとの会合を提供する任意の型の可変領域を含むことができることが十分に理解されるべきである。この点で、可変領域は、所望の腫瘍関連抗原に対する液性免疫を備え、免疫グロブリンを生成するように誘導することができる任意の種類の哺乳動物を備えることができるか、またはそれに由来することができる。したがって、修飾された抗体の可変領域は、例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカクなど)またはオオカミの起源のものであることができる。いくつかの実施形態において、修飾された免疫グロブリンの可変領域及び定常領域の両方がヒトである。他の実施形態において、適合する抗体(通常、非ヒト供給源に由来する)の可変領域が、結合特性を改善するか、または分子の免疫原性を減らすように操作され、または特に誂えられ得る。この点で、本発明で有用な可変領域は、ヒト化することができるか、またはさもなければ、移入されるアミノ酸配列の包含を介して変えることができる。
【0102】
特定の実施形態において、重鎖及び軽鎖の両方における可変ドメインは、1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置き換えによって、必要に応じて、部分的なフレームワーク領域の置き換え及び配列変化によって変えられる。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラスまたはさらにサブクラスの抗体に由来することができるが、CDRは異なるクラスに由来し、特定の実施形態において、異なる種からの抗体に由来することが想定される。ドナーの可変領域からの完全なCDRでCDRの全てを置き換えて、1つの可変ドメインの抗原結合能を別に移すことが必要でなくてもよい。むしろ、抗原結合部位の活性を維持するのに必要である残基を移すことが必要であるに過ぎない可能性がある。米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、及び同第5,693,762号に記載される説明を考えると、日常の実験を行うことによって、または試行錯誤の試験を行うことによって、低下した免疫原性を持つ機能的な抗体を得ることは、十分に当業者の力量の範囲内であろう。
【0103】
可変領域に対する変化にもかかわらず、当業者は、天然のまたは未変化の定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較した場合、例えば、より高い腫瘍の局在化または低下した血清半減期などの所望の生化学的特徴を提供するように、定常領域ドメインの1つ以上の少なくとも一部が欠失しているか、またはさもなければ変化している抗体(例えば、完全長の抗体またはその免疫反応性の断片)を本発明の修飾された抗体が含むことを十分に理解するであろう。いくつかの実施形態において、修飾された抗体の定常領域は、ヒトの定常領域を含むであろう。本発明に適合する定常領域に対する修飾は、1つ以上のドメインにおいて1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含む。すなわち、本明細書で開示される修飾された抗体は、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、もしくはCH3)のうちの1つ以上及び/または軽鎖定常ドメイン(CL)に対する変化または修飾を含むことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のドメインを部分的にまたは全体的に欠失させる修飾された定常ドメインが、企図される。いくつかの実施形態において、修飾された抗体は、CH2ドメイン全体が取り除かれているドメイン欠失の構築物またはバリアント(ΔCH2構築物)を含むであろう。いくつかの実施形態において、省略された定常領域ドメインは、存在しない定常領域によって通常付与される分子柔軟性の一部を提供する短いアミノ酸スペーサー(例えば、10残基)によって置き換えられるであろう。
【0104】
特定の実施形態において、修飾された抗体がそれぞれの修飾された抗体のヒンジ領域にCH3ドメインを直接融合させるように操作することができることが言及されるであろう。他の構築物では、ヒンジ領域と修飾されたCH2及び/またはCH3領域との間にペプチドスペーサーを提供することが望ましい可能性がある。例えば、CH2ドメインが欠失しており、残りのCH3ドメイン(修飾されたまたは未修飾の)が5~20アミノ酸のスペーサーを伴ってヒンジ領域に連結される適合性の構築物が発現され得る。そのようなスペーサーを付加して、例えば、定常ドメインの調節要素が自由でアクセス可能なままであり、またはヒンジ領域が柔軟なままであることを保証することができる。しかしながら、アミノ酸スペーサーは、場合によっては、免疫原性であり、構築物に対する望ましくない免疫応答を引き出すことを明確に示し得ることが言及されるべきである。したがって、特定の実施形態において、構築物に付加される任意のスペーサーは、修飾された抗体の所望の生化学的な質を維持するように、相対的に非免疫原性であるか、またはさらに完全に省かれるであろう。
【0105】
定常領域ドメイン全体の欠失に加えて、本明細書に開示される抗体は、2、3のまたはさらには単一のアミノ酸の部分的な欠失または置換によって提供され得ることが十分に理解されるであろう。例えば、CH2ドメインの選択された領域における単一アミノ酸の変異は、Fc結合を実質的に減らすのに十分であり得、それによって腫瘍の局在化を増加させ得る。同様に、調節されるエフェクター機能(例えば、補体C1Qの結合)を制御する1つ以上の定常領域ドメインのその部分を単に欠失させることが望ましい可能性がある。定常領域のそのような部分的な欠失は、抗体の選択された特徴(血清の半減期)を改善し得る一方で、対象の定常領域に関連する他の望ましい機能は無傷のままである。さらに、上記について暗に示されるように、開示される抗体の定常領域は、得られる構築物のプロファイルを向上させる1つ以上のアミノ酸の変異または置換を介して修飾することができる。この点で、保存された結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を崩壊させることが可能である一方で、修飾された抗体の立体構造及び免疫原性プロファイルは維持される。特定の実施形態は、定常領域への1つ以上のアミノ酸の付加を含み得、例えば、エフェクター機能の増減のような望ましい特徴を向上させるか、またはさらなる細胞毒素もしくは炭水化物の連結を提供し得る。そのような実施形態において、選択された定常領域ドメインに由来する特定の配列を挿入するまたは反復することが望ましいことであり得る。
【0106】
本明細書に開示される抗体はまた、本明細書に記述されるキメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体またはそれらの抗体断片に対して実質的に相同であるバリアント及び等価体を含む。これらは、例えば、保存的な置換変異、すなわち、類似のアミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置換を含有することができる。例えば、保存的な置換は、例えば、別の酸性アミノ酸による酸性アミノ酸1つ、別の塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸1つ、または別の中性アミノ酸による中性アミノ酸1つのような同じ一般クラスの範囲内での別のアミノ酸によるアミノ酸の置換を指す。保存的なアミノ酸置換によって意図されるものは、当該技術分野で周知である。
【0107】
本明細書に開示されるFOLR1結合剤は、ヒトFOLR1に対する抗体を含む組換えポリペプチド、天然ポリペプチド、もしくは合成ポリペプチド、またはその断片であり得る。本発明の一部のアミノ酸配列は、タンパク質の構造または機能に有意に影響することなく変化し得ることが当該技術分野で認識されるであろう。本明細書に開示されるFOLR1結合剤は、ヒト葉酸受容体タンパク質に対する抗体を含む組換えポリペプチド、天然ポリペプチド、もしくは合成ポリペプチド、またはその断片であり得る。そのような変異体には、欠失、挿入、逆位、反復、及び類型置換が含まれる。
【0108】
ポリペプチド及び類似体は、正常ではタンパク質の一部ではないさらなる化学部分を含有するようにさらに修飾することができる。これらの誘導体化された部分は、タンパク質の溶解性、生物学的半減期、または吸収を改善することができる。その部分はまた、タンパク質などの任意の妥当な副作用を軽減するまたは排除することができる。これらの部分の概説は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,20th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(2000)において見出すことができる。
【0109】
III.検出の方法
本発明の方法は、試料中のFOLR1を検出するための複数ステップのアプローチを提供する。特に、最初のイムノキャプチャステップは、試料中のFOLR1を濃縮し、それに続いて、FOLR1のペプチドへの消化、及び液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)による分析のために実行される。LC/MSによるペプチドの分析は、例えば、FOLR1を発現するがんに罹患している患者からの試料中のFOLR1のレベルを含む、試料中に存在するFOLR1のレベルを定量的に決定するのをさらに可能にする。いくつかの実施形態において、試料中のヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出する方法は、(a)固体支持体と結合したイムノキャプチャ試薬を用いて該葉酸受容体1(FOLR1)を捕捉することと、(b)固体支持体からFOLR1を溶出することと、(c)溶出されたFOLR1を消化することと、(d)消化されたFOLR1に対して液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)の分析を実行することと、を含み、該FOLR1は、少なくとも1つのシグネチャFOLR1ペプチドのクロマトグラフィー分離及び質量分析応答をモニタリングすることにより検出される。FOLR1の検出のための他の既知の方法と比較して、本発明の方法は、増強した感度及び選択性の利点を提供する。
【0110】
いくつかの実施形態において、FOLR1を含有する試料は、体液を含む。さらなる実施形態において、体液は、血漿、血清、または腹水であり得る。特定の実施形態において、試料は、血漿である。いくつかの実施形態において、試料は、末梢血試料を含む。いくつかの実施形態において、試料は、がんを有する患者から取得される。さらなる実施形態において、がんは、卵巣癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、乳癌、脳癌、腎臓癌、前立腺癌、消化管癌、黒色腫、子宮頸癌、膀胱癌、グリア芽腫、子宮内膜癌、腹膜の癌、及び頭頸部癌からなる群から選択される。特定の実施形態において、がんは、卵巣癌である。ある特定の実施形態において、がんは、子宮内膜癌である。特定の実施形態において、がんは、肺癌である。特定の実施形態において、肺がんは、非小細胞肺癌である。特定の実施形態において、非小細胞肺がんは、肺の腺癌である。
【0111】
a.イムノキャプチャ
初期のイムノキャプチャステップは、固体支持体と結合したイムノキャプチャ試薬を用いて試料において実行される。イムノキャプチャ試薬は、例えば、FOLR1と結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、FOLR1と結合する任意の免疫学的試薬であってもよい。抗体または抗原結合断片が、イムノキャプチャ試薬として使用されるとき、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合は、試料中のIMGN853などの抗体ベースの活性剤のFOLR1との結合によって競合的に阻害され得ない。さらに、抗体または抗原結合断片が、イムノキャプチャ試薬として使用されるとき、抗体または抗原結合断片のFOLR1との結合は、試料中に存在する葉酸によって阻害され得ない。
【0112】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、抗体muFR1-9である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、抗体muFR1-13である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、muFR1-53である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、抗体muFR1-62である。
【0113】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号1の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号2のVH CDR-2、配列番号3のVH CDR-3、配列番号13の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号14のVL CDR-2、及び配列番号15のVL CDR-3を含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号4のVH CDR-1、配列番号5のVH CDR-2、配列番号6のVH CDR-3、配列番号16のVL CDR-1、配列番号17のVL CDR-2、及び配列番号18のVL CDR-3を含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号7のVH CDR-1、配列番号8のVH CDR-2、配列番号9のVH CDR-3、配列番号19のVL CDR-1、配列番号20のVL CDR-2、及び配列番号21のVL CDR-3を含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号10のVH CDR-1、配列番号11のVH CDR-2、配列番号12のVH CDR-3、配列番号22のVL CDR-1、配列番号23のVL CDR-2、及び配列番号24のVL CDR-3を含む、抗体または抗原結合断片である。
【0114】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号25のVH、及び配列番号29のVLを含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号26のVH、及び配列番号30のVLを含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号27のVH、及び配列番号31のVLを含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号28のVH、及び配列番号32のVLを含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号25の配列と少なくとも90%の同一性を有するVH、及び配列番号29の配列と少なくとも90%の同一性を有するVLを含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号25の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号29の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号26の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号26の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号30の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、抗体または抗原結合断片を含む、抗体または抗原結合断片であり、配列番号27の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号31の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号27の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号31の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号28の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号32の配列と少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号28の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変重鎖(VH)、及び配列番号32の配列と少なくとも95%の同一性を有する可変軽鎖(VL)を含む、抗体または抗原結合断片である。
【0115】
一実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号33の配列を有する重鎖、及び配列番号37の配列を有する軽鎖を含む、抗体または抗原結合断片である。別の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号34の配列を有する重鎖、及び配列番号38の配列を有する軽鎖を含む、抗体または抗原結合断片である。別の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号35の配列を有する重鎖、及び配列番号39の配列を有する軽鎖を含む、抗体または抗原結合断片である。別の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号36の重鎖、及び配列番号40の軽鎖を含む、抗体または抗原結合断片である。
【0116】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、約1.0nM~約10nMのKdでヒトFOLR1と結合する、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、約0.5nM~約5nMのKdでヒトFOLR1と結合する、抗体または抗原結合断片である。
【0117】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、ビオチン化される。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して固体支持体に結合される。いくつかの実施形態において、固体支持体は、質量分析イムノアッセイ(MSIA)マイクロカラムである。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、磁気ビーズを含む。
【0118】
初期のイムノキャプチャステップを実行するために、FOLR1を含有する試料は、固体支持体と結合したイムノキャプチャ試薬でインキュベートされる。洗浄ステップは、捕捉されたFOLR1をさらに精製するために、イムノキャプチャステップ後に実行され得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の洗浄ステップは、イムノキャプチャ試薬を用いた試料のインキュベーション後、及び捕捉されたFOLR1の溶出前に実行される。いくつかの実施形態において、2つ以上の洗浄ステップは、捕捉されたFOLR1の溶出前に実行される。いくつかの実施形態において、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10の洗浄ステップは、捕捉されたFOLR1において実行される。いくつかの実施形態において、洗浄ステップは、捕捉されたFOLR1を洗浄緩衝液と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、洗浄緩衝液は、市販の洗浄緩衝液である。いくつかの実施形態において、洗浄ステップは、捕捉されたFOLR1を塩溶液及び洗浄剤と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、塩溶液は、400mMのNaClであり、洗浄剤は、0.1% Tween20である。
【0119】
イムノキャプチャ後、FOLR1は、溶出ステップを実行することによって固体支持体から放出される。いくつかの実施形態において、溶出ステップは、捕捉されたFOLR1を酸性溶液と接触させることによって実行される。いくつかの実施形態において、酸性溶液は、市販の溶液である。いくつかの実施形態において、溶出液は、中和緩衝液の添加によって中性pHにする。いくつかの実施形態において、中和緩衝液は、pH8で500mMの重炭酸アンモニウムである。いくつかの実施形態において、中和緩衝液は、市販の緩衝液である。
【0120】
b.液体クロマトグラフィー-質量分析法
免疫捕捉及び溶出後、得られたFOLR1タンパク質は、ペプチドに消化され、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)によって分析される。いくつかの実施形態において、FOLR1を含有する溶液は、LC/MSによる分析前に、還元及びアルキル化される。いくつかの実施形態において、FOLR1は、メタノールでアルキル化される。いくつかの実施形態において、FOLR1は、FOLR1をトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含有する溶液と接触させることによって還元される。いくつかの実施形態において、100mMのTCEPを含有する溶液が、FOLR1を還元するために使用される。いくつかの実施形態において、システインブロッキング試薬を、アルキル化及び還元後に、FOLR1を含有する溶液に添加する。いくつかの実施形態において、システインブロッキング試薬は、ヨードアセトアミド(IAM)である。いくつかの実施形態において、100mMのIAMを含有する溶液を、FOLR1を含有する溶液に添加する。
【0121】
アルキル化及び還元後、FOLR1は、ペプチドに消化される。いくつかの実施形態において、FOLR1は、トリプシンで消化される。いくつかの実施形態において、FOLR1は、Lys-Cで消化される。いくつかの実施形態において、FOLR1は、トリプシン及びLys-Cの混合物で消化される。いくつかの実施形態において、FOLR1は、FOLR1を、30ng/μLのトリプシン/Lys-Cを含有する50mMの重炭酸アンモニウム溶液と接触させることによって消化される。
【0122】
トリプシン/Lys-Cを用いたFOLR1の消化は、LC/MSによる試料の定量分析において有用なペプチドが生成される。いくつかの実施形態において、本発明の単離されたシグネチャペプチドは、FOLR1の消化産物で提供される。FOLR1の消化により生成されたシグネチャペプチドは、以下の表7に示される。
【表7】
【0123】
FOLR1のペプチドへの消化後、ペプチドを含有する溶液は、LC/MS分析のために調製される。いくつかの実施形態において、LC/MS分析前に、界面活性剤を、ペプチドを含有する溶液に添加する。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、質量分析法分析のために製剤化された市販の試薬である。いくつかの実施形態において、界面活性剤による反応を、10%ギ酸を添加することによって反応停止させる。
【0124】
LC/MS分析のための試料の消化及び調製後、試料を、LC/MS装置に注入し、分析する。いくつかの実施形態において、FOLR1の少なくとも2つのシグネチャペプチドが選択され、LC/MSの分析ステップでモニタリングされる。いくつかの実施形態において、FOLR1の少なくとも3つのシグネチャペプチドが選択され、LC/MSの分析ステップでモニタリングされる。いくつかの実施形態において、FOLR1の少なくとも4つのシグネチャペプチドが選択され、LC/MSの分析ステップでモニタリングされる。いくつかの実施形態において、選択され、LC/MSのステップでモニタリングされた、少なくとも4つのシグネチャペプチドは、配列番号42のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号43のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号44のアミノ酸配列を有するペプチド、及び配列番号45のアミノ酸配列を有するペプチドを含む。いくつかの実施形態において、FOLR1レベルの定量的測定は、LC/MS分析によって提供される。さらなる実施形態において、試料中のFOLR1のレベルは、試料中のFOLR1のレベルをFOLR1の基準レベルと比較することによって定量化される。LC/MS分析による分析の方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、Yang et al.Scientific Reports.2015 November 17;5:16733、doi10.1038/srep16733に記載されている。
【0125】
いくつかの実施形態において、試料中のFOLR1の検出は、試料中のIMGN853の存在によって阻害されない。いくつかの実施形態において、試料中のFOLR1の検出は、試料中のhuMov19の存在によって阻害されない。いくつかの実施形態において、試料中のFOLR1の検出は、試料中に存在する抗体または抗原結合断片の存在によって阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、配列番号59の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号60のVL CDR-2、配列番号61のVL CDR-3、配列番号62の可変重鎖(VH)CDR-1、配列番号64のVH CDR-2、及び配列番号65のVH CDR-3を含む。いくつかの実施形態において、試料中のFOLR1の検出は、試料中に存在する抗体または抗原結合断片の存在によって阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、配列番号56の配列を有するVH、及び配列番号57または配列番号58の配列を有するVLを含む。いくつかの実施形態において、FOLR1の検出は、試料中に存在する抗体または抗原結合断片の存在によって阻害されず、該抗体または抗原結合断片は、(i)PTA-10772としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されているプラスミドによってコードされる重鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む重鎖、及び(ii)PTA-10774としてATCCに寄託されているプラスミドによってコードされる軽鎖のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、試料中のFOLR1の検出は、試料中の葉酸の存在によって阻害されない。
【0126】
いくつかの実施形態において、少なくとも0.5ng/mLのFORL1は、本発明の方法を実行することによって試料中で検出され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも0.3ng/mLのFOLR1は、本発明の方法を実行することによって試料中で検出され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも0.25ng/mLのFOLR1は、本発明の方法を実行することによって試料中で検出され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも0.2ng/mLのFOLR1は、本発明の方法を実行することによって試料中で検出され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも0.15ng/mLのFOLR1は、本発明の方法を実行することによって試料中で検出され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも5の信号対雑音比は、本発明の方法を実行することによって観察される。いくつかの実施形態において、少なくとも6の信号対雑音比は、本発明の方法を実行することによって観察される。いくつかの実施形態において、少なくとも7の信号対雑音比は、本発明の方法を実行することによって観察される。いくつかの実施形態において、少なくとも8の信号対雑音比は、本発明の方法を実行することによって観察される。いくつかの実施形態において、少なくとも9の信号対雑音比は、本発明の方法を実行することによって観察される。いくつかの実施形態において、少なくとも10の信号対雑音比は、本発明の方法を実行することによって観察される。
【0127】
IV.キット
便宜上、本発明のアッセイ方法は、キットの形態で提供され得る。そのようなキットは、(a)FOLR1と結合するイムノキャプチャ試薬であり得る第1の試薬、及び(b)捕捉されたFOLR1をペプチドに消化させることができる消化試薬の基本要素を含む包装された組み合わせである。このキットは、FOLR1に由来する少なくとも1つのペプチドをさらに含み得る。これらの基本要素は、上記及び以下の実施例において定義される。
【0128】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、FOLR1と結合する抗体または抗原結合断片を含む。さらなる実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号1の可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号2のVH CDR-2、配列番号3のVH CDR-3、配列番号13の可変軽鎖(VL)相補性決定領域(CDR)-1、配列番号14のVL CDR-2、及び配列番号15のVL CDR-3を含む、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号4のVH CDR-1、配列番号5のVH CDR-2、配列番号6のVH CDR-3、配列番号16のVL CDR-1、配列番号17のVL CDR-2、及び配列番号18のVL CDR-3を含む、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号7のVH CDR-1、配列番号8のVH CDR-2、配列番号9のVH CDR-3、配列番号19のVL CDR-1、配列番号20のVL CDR-2、及び配列番号21のVL CDR-3を含む、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号10のVH CDR-1、配列番号11のVH CDR-2、配列番号12のVH CDR-3、配列番号22のVL CDR-1、配列番号23のVL CDR-2、及び配列番号24のVL CDR-3を含む、抗体または抗原結合断片である。
【0129】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号25のVH、及び配列番号29のVLを含む、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号26のVH、及び配列番号30のVLを含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号27のVH、及び配列番号31のVLを含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号28のVH、及び配列番号32のVLを含む、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号25~28のうちのいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するVHを含む抗体を含む。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号25~28のうちのいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するVHを含む抗体を含む。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号29~32のうちのいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するVLを含む抗体を含む。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号29~32のうちのいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するVLを含む抗体を含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号33の配列を有する重鎖、及び配列番号37の配列を有する軽鎖を含む、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号34の配列を有する重鎖、及び配列番号38の配列を有する軽鎖を含む、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号35の配列を有する重鎖、及び配列番号39の配列を有する軽鎖を含む、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、配列番号36の重鎖、及び配列番号40の軽鎖を含む、抗体または抗原結合断片である。
【0131】
いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、muFR1-9である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、muFR1-13である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、約1.0nM~約10nMのKdでヒトFOLR1と結合する、抗体または抗原結合断片である。他の実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、約0.5nM~約5nMのKdでヒトFOLR1と結合する、抗体または抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、ビオチン化される。
【0132】
いくつかの実施形態において、キットは、捕捉試薬のための固相支持体をさらに含み、それは、別個の要素として提供されることができ、またはその上に捕捉試薬がすでに固定化されている。したがって、キットにおける捕捉抗体は、固相支持体に固定化することができるか、またはそれらは、キットと共に含まれるもしくはキットとは別に提供されるそのような支持体に固定化することができる。いくつかの実施形態において、固相支持体は、質量分析イムノアッセイ(MSIA)マイクロカラムを含む。他の実施形態において、固相支持体は、磁気ビーズを含む。いくつかの実施形態において、固相支持体は、ストレプトアビジンでコーティングされる。いくつかの実施形態において、イムノキャプチャ試薬は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して固体支持体に結合される。
【0133】
いくつかの実施形態において、キットは、液体クロマトグラフィー-質量分析法分析における標準物質として使用することができる、少なくとも1つのFOLR1ペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、配列番号42の配列を含むペプチドを含む。いくつかの実施形態において、キットは、配列番号43の配列を含むペプチドを含む。いくつかの実施形態において、キットは、配列番号44の配列を含むペプチドを含む。いくつかの実施形態において、キットは、配列番号45の配列を含むペプチドを含む。一実施形態において、キットは、液体クロマトグラフィー-質量分析法分析における標準物質として使用することができる、4つのシグネチャペプチドを含む。一実施形態におい、4つのシグネチャペプチドは、1)配列番号42の配列を含むペプチド、2)配列番号43の配列を含むペプチド、3)配列番号44の配列を含むペプチド、及び4)配列番号45の配列を含むペプチド、からなる。
【0134】
キットはまた、典型的には、アッセイを行うための取扱説明書、及び/または標準物質の役割を果たすFOLR1タンパク質もしくはFOLR1ペプチド、ならびに安定剤などの他の添加剤、洗浄及びインキュベーション緩衝液なども含有する。キットはまた、試料中のFOLR1レベルの定量的測定についての取扱説明書を含むことができる。
【0135】
キットの構成成分は、所定の比で提供され、様々な試薬の相対量は、実質的にアッセイの感度を最大限にする、試薬の溶液中の濃度を提供するために好適に変化する。特に、試薬は、賦形剤を含む、通常、凍結乾燥された乾燥粉末として提供することができ、それは溶解の際、試験する試料と組み合わせるのに適切な濃度を有する試薬溶液を提供する。
【0136】
本開示の実施形態は、本開示の方法を詳細に説明する、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに定義することができる。材料及び方法の両方に対する多くの改変が、本開示の範囲から逸脱することなく実施され得ることが当業者に明らかである。
【実施例】
【0137】
本明細書で説明する実施例及び実施形態は、単に例示の目的のためであり、その観点での様々な改変または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【0138】
実施例1
sFRαイムノキャプチャ-LC/MSアッセイ
ELISA系アッセイが開発され、WO2014/036495に記載されている。このアッセイは、FOLR1-Fc(huFOLR1及びマウスIgG2Aヒンジの融合ペプチド、CH2、CH3)、捕捉抗体としてmuFR1-9、ならびにビオチン化muFR1-13でコーティングされたELISAプレートを用いて実行された。アッセイは、基準が、高い信号対雑音比を有する再現可能な信号、ヒト血漿試料中の最小マトリックス効果、高再現性及び精密性、ならびに検出の最小限度である、組織的アプローチによって最適化された。選択された最適なELISA条件は、無視できる(neglibible)/低雑音を有するわずか25ng/mLのsFRαの検出をもたらした。最適化条件にもかかわらず、このELISAアッセイは、sFRαレベル及び病態の相関分析を可能にする、健常な対象におけるsFRαレベルと卵巣癌患者におけるsFRαレベルの分布の範囲を区別するのに十分な感度を提供しなかった。
【0139】
Kurosaki et al.,Int.J.Cancer.2016 April 15;138(8):1994-2002において報告された2つの異なるヒトFRα特異的マウスモノクローナル抗体を用いたさらに近年のELISA系アッセイは、悪性卵巣腫瘍を有する疑いが臨床的にある患者の血清中のsFRαのレベルを調査し、卵巣癌に対する診断マーカーとしてsFRαを評価するために開発された。このELISAアッセイは、250~8000pg/mLのダイナミックレンジ、及び最低キャリブレータ(250pg/mL)に対する3.4の信号対雑音比を有した。このELISAアッセイが、sFRα検出のより高感度のダイナミックレンジを提供したが、ELISA読み出しは、一般的には、450nmで分光光度法で測定され、620nmの吸光度で補正され、したがって、それほど選択的ではなく、さらに偽陽性結果を生成する可能性がある。
【0140】
感度及び選択性の両方の基準を満たした本発明のアッセイが、開発された。LC/MSステップによるシグネチャペプチドの正確な測定は、一般的なELISA方法では提供されない第2のレベルの選択性を提供する。さらに、イムノキャプチャ-LC/MSアッセイによって得られるsFRαの検出の感度及び選択性はまた、このアッセイを、卵巣癌患者の予測及び/または予後バイオマーカーとしてsFRαを探索する際に役立つ。
【0141】
図1に示すようにアッセイは、ビオチン化捕捉抗体(例えば、muFR1-9またはmuFR1-13抗体などの本発明の抗体)溶液を、ストレプトアビジンをコーティングしたイムノキャプチャ培地(MSIAマイクロカラムもしくは磁気ビーズ)でインキュベートするステップ、試料をイムノキャプチャ培地でインキュベートするステップ、複数の洗浄においてイムノキャプチャ培地を洗浄緩衝液、塩溶液、及び洗浄剤で洗浄するステップ、上清を廃棄するステップ、酸性溶液を用いてイムノキャプチャ培地からのsFRαを放出するステップ、ならびにsFRα溶液を中和し、続いて、還元及びアルキル化するステップを含む。次いで、試料を、トリプシン/Lys-Cで消化し、分析のためにLC/MSに注入する。sFRαの4つの異なるシグネチャペプチドが選択され、LC/MSの分析ステップでモニタリングされた。具体的には、配列番号42のペプチドは、タンパク質濃度を報告するために使用され、配列番号43~45のペプチドは、確認のために使用された。
【0142】
試料調製中のアッセイ性能を改善する最適化ステップには、免疫捕捉効率を改善するための条件の変更、血漿マトリックスからの潜在的な干渉を除去するための洗浄手順、及び酵素消化効率を改善するための条件の変更が含まれる。LC/MS時の最適化ステップは、良好なクロマトグラフ分離及び質量分光反応を提供するシグネチャペプチド配列を特定することを含む。イムノキャプチャの自動化オプションは、MSIAマイクロカラム技術及び磁気ビーズ処理で評価された。両方のオプションは、96ウェルプレートの使用と互換性があり、試料スループットを大幅に改善し、同様の感度が両方の自動化プラットフォームで観察された。評価はまた、抗原枯渇血漿または代理マトリックスのいずれかを使用したアッセイでも実施された。
【0143】
作業アッセイパラメータは、次のとおりである:8.5時間のイムノキャプチャ及び酵素消化を含む試料処理、試料当たり10分のLC/MS分析、5%BSA、PBS(代替マトリックス、0.65ng/mL~40.63ng/mL)、0.3mLの試料容量、LLOQレベルの4つのシグネチャペプチドの10超のS/N、LLOQ(±25%)を除く公称値の±20%のSTD受け入れ基準、公称値の±20%のQC受け入れ基準。
【0144】
実施例2
sFRαイムノキャプチャ-LC/MSアッセイを用いたヒト血漿試料のデータ分析
実験は、上記のパラメータを使用して、0.3ng/mLの代替マトリックスに低レベルのsFRαを含む試料中のsFRαのレベルを測定するために設計された。
図2に示すように、これらの実験の結果は、非常に低いレベルのsFRαがイムノキャプチャ-LC/MSアッセイによって測定することができることを示す。実験はまた、正常なヒト血漿試料中のsFRαのレベルを測定するために設計された。
図3に示すように、約0.5ng/mLで見られるsFRαの内因性レベルは、イムノキャプチャ-LC/MSアッセイによって測定することができる。
図4は、増加したsFRαを伴う患者の服用前試料から抽出されたイオンクロマトグラムを示す。この実験の結果は、sFRαの増加したレベルを有する患者血漿試料が、正常なヒト血漿試料の内因性レベルの試料とは明らかに区別することができることを示す。
【0145】
実験は、血漿試料中のFRαを標的とする免疫複合体、IMGN853の存在下でのアッセイ耐性を試験するために設計された。sFRα QC試料は、低、中、高レベルで血漿中に調製し、IMGN853を予測Cmax濃度でスパイクし、IMGN853なしで血漿中に調製したsFRα QC試料と比較した。QC試料のいずれのセットでも干渉は観察されず、試料の両方のセットには同様の応答を有する。
【0146】
これらの実験の結果は、本発明のイムノキャプチャ-LC/MSアッセイが、感度が増加しており(0.3ng/mL、少なくとも10の信号対雑音比、すなわち、当該技術分野でのELISAアッセイよりも2倍感度が高い)、FRαを標的とする免疫複合体の存在及び不存在下でのヒト血漿試料中のsFRαを測定するための選択性を向上していることを示す。
【0147】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、及び受入番号/データベース配列(ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列の両方を含む)は、各個々の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、または受入番号/データベース配列が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されているのと同程度に、全ての目的についてそれらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】