(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】高圧タンクを製造する方法
(51)【国際特許分類】
F16J 12/00 20060101AFI20241216BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20241216BHJP
B29D 22/00 20060101ALI20241216BHJP
B29D 23/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
F16J12/00 A
F17C1/06
B29D22/00
B29D23/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021003795
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-09-07
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599036761
【氏名又は名称】ヘルムホルツ-ツェントルム ヘレオン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz-Zentrum hereon GmbH
【住所又は居所原語表記】Max-Planck-Strasse 1, 21502 Geesthacht, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】521019587
【氏名又は名称】アッセンブラエ
【氏名又は名称原語表記】assemblae
(73)【特許権者】
【識別番号】521019598
【氏名又は名称】シュターフ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】パスキール ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベロースタ フォン コルベ ヨゼ
(72)【発明者】
【氏名】ネイカンプ アントン
(72)【発明者】
【氏名】シュターフ ホルジャー
(72)【発明者】
【氏名】イェプセン ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドルナイム マルティン
(72)【発明者】
【氏名】クラッセン トーマス
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07036677(US,B1)
【文献】米国特許第05828003(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00
F17C 1/06
B29D 22/00
B29D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力下で流体を貯蔵または収容するタンクを製造する方法であって、
(a)2つの端部を備えた円筒部分と、該円筒部分のそれぞれの前記端部にある2つのドーム部分とを有するライナーを提供するステップと、
(b)プルワインド方法を用いて繊維フィラメントのチューブを作成するステップと、
(c)前記ライナーの少なくとも前記円筒部分が繊維フィラメントの前記チューブに囲われるように、繊維フィラメントの前記チューブを前記ライナー上に巻き付けるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
(a)2つの端部を備えた円筒部分と、該円筒部分のそれぞれの前記端部にある2つのドーム部分とを有するライナーを提供するステップと、
(b)プルワインド方法を用いて繊維フィラメントの前記チューブを作成するステップと、
(c)前記ライナーの少なくとも前記円筒部分が繊維フィラメントの前記チューブで囲われるように、繊維フィラメントの前記チューブを前記ライナー上に巻き付けるステップと、
(d)熱を加えて繊維フィラメントの前記チューブを前記ライナー上に収縮させる、および/または繊維フィラメントの前記チューブを前記ライナー上に接着するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧力下で流体を収容または誘導するパイプを製造する方法であって、
(a)1つまたは2つの開放端を備えた円筒部分を有するライナーを提供するステップと、
(b)プルワインド方法を用いて繊維フィラメントのチューブを作成するステップと、
(c)前記ライナーの前記円筒部分が繊維フィラメントの前記チューブで囲われるようにして、繊維フィラメントの前記チューブを前記ライナー上に巻き付けるステップと、を含む、方法。
【請求項4】
(a)1つまたは2つの開放端を備えた円筒部分を有するライナーを提供するステップと、
(b)プルワインド方法を用いて繊維フィラメントのチューブを作成するステップと、
(c)前記ライナーの前記円筒部分が前記繊維フィラメントのチューブ
で囲われるよう
に、前記繊維フィラメントのチューブを前記ライナー上に巻き付けるステップと、
(d)熱を加えて前記繊維フィラメントのチューブを前記ライナー上に収縮させる、および/または前記繊維フィラメントのチューブを前記ライナー上に接着するステップと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)において、縦繊維が、前記繊維フィラメントのチューブの外側フィラメント層として、または内側フィラメント層として、または中間フィラメント層として配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
繊維の1つまたは複数のフープ巻き層が、前記縦繊維の周りまたは内部に巻かれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
繊維のフープ巻き層が、20°から約79°、好ましくは約30°から約60°、より好ましくは約45°の傾斜角で前記縦繊維の周りに巻かれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
繊維のフープ巻き層が、約80°から約89.9°、または約0.1°から約10°の横断角度で前記縦繊維の周りに巻かれる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ライナーがアルミニウムまたは鋼で作られる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
囲う前
記繊維フィラメントが、炭素、アラミド、ガラス繊維、またはそれらの任意の組み合わせで作られる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ライナーと前記繊維フィラメントとの間に中間層が設けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記中間層が、発泡材料、弾性ポリマー、またはゴムで作られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)において、繊維フィラメントがコアの内表面および/または外表面の周りに巻かれる、請求項3もしくは4、または請求項3もしくは4に従属する請求項5から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
繊維フィラメントの2つのチューブがコアの周りに巻かれ、繊維フィラメントの一方のチューブがコアの内表面の周りに、繊維フィラメントの他方のチューブが前記コアの外表面の周りに巻かれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コアが、発泡材料、弾性ポリマー、ゴム、または複合材料で作られる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ドーム部分が、前記円筒部分の中心軸に沿って延在する中心ロッドによって保持される、請求項1もしくは2、または請求項1もしくは2に従属する請求項5から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ドーム部分が、前記円筒部分の周りに配設されたロッド列によって保持される、請求項1もしくは2、または請求項1もしくは2に従属する請求項5から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力下で流体(液体、または水素もしくは天然ガスなどのガス)を貯蔵または収容する高圧タンクを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧タンク、特に自動車または給油所における水素もしくは天然ガス貯蔵用のものが、関心を得てきている。鋼およびアルミニウムで作られたものなどの単純なタイプ1の金属タンクは、17.5MPa(アルミニウム)から30MPa(鋼)の最大圧力までガスを安全に貯蔵することができ、繊維フィラメント強化(タイプ2)またはフィラメント複合体(タイプ3またはタイプ4)タンクは、85MPaの最大圧力まで安全にガスを貯蔵することができる。
【0003】
タイプ2のタンクは、金属コアの周りに炭素、アラミド、またはガラス繊維を巻いた繊維フィラメントによって構築される。タイプ3のタンクは、金属ライナーの周りの炭素、アラミド、またはガラス繊維を含む複合材料から作られる。金属成分(タイプ3のタンクの場合)は、複合材料を通してガスが拡散するのを回避するために提供される。タイプ4のタンクは、例えば、ポリマーライナーを有する炭素、アラミド、またはガラス繊維の複合体タンクである。
【0004】
それらのタイプ2、タイプ3、およびタイプ4のタンクを作成する場合、繊維フィラメントが金属またはポリマーライナーの周りに1本ずつ注意深く配置され、通常はエポキシ樹脂で作られる(ただし他の材料も可能な場合がある)マトリックスを使用してまとめられる。かかる方法は、例えば、2013年11月14日に公開された特許文献1に記載されている。繊維から作られたシェルの厚さは、通常、3mmから30mmである。
【0005】
繊維の個々のストランドを織るこの方法は、構造を複雑にし、時間がかかり、したがってコストがかかる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、既知の手順よりも複雑でなく、連続的または半連続的な方式で用いることができ、圧力安全を考慮して、繊維から作られたシェルの厚さを薄くすることができる、水素または天然ガス貯蔵タンクなどの高圧タンクまたは他の耐圧流体貯蔵容器を製造する方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2013/299505号明細書
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態では、本発明は、圧力下で流体を貯蔵または収容するタンクを製造する方法に関し、
(a)2つの端部を備えた円筒部分と、該円筒部分のそれぞれの端部にある2つのドーム部分とを有するライナーを提供するステップと、
(b)プルワインド方法を用いて繊維フィラメントのチューブを作成するステップと、
(c)ライナーの少なくとも円筒部分が繊維フィラメントのチューブで囲われるように、繊維フィラメントのチューブをライナー上に巻き付けるステップと、を含む。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、圧力下で流体を収容または誘導するパイプを製造する方法に関し、
(a)1つまたは2つの開放端を備えた円筒部分を有するライナーを提供するステップと、
(b)プルワインド方法を用いて繊維フィラメントのチューブを作成するステップと、
(c)ライナーの円筒部分が繊維フィラメントのチューブで囲われるように、繊維フィラメントのチューブをライナー上に巻き付けるステップと、を含む。
【0010】
プルワインド法は、高性能複合体チューブを作成するのに通常適用される方法であり、従来の引抜き成形(pulltrusion)技術および連続フィラメントワインディング技術とを組み合わせたものである。プルワインド方法では、フープ巻きされた連続繊維の引抜き成形によって縦繊維が共押出しされる。
【0011】
ステップ(b)の一実施形態では、縦繊維は、繊維フィラメントのチューブの外側フィラメント層としてまたは内側フィラメント層として配置される。外側フィラメント層は、繊維フィラメントのチューブの外表面および/または内表面に配置されてもよく、内側フィラメント層は、繊維フィラメントのチューブの表面に触れないものとして規定される。縦繊維に加えて、繊維の1つまたは複数のフープ巻き層が、縦繊維の周りまたは内部に巻かれる。繊維のフープ巻き層は、通常、20°から約79°、好ましくは約30°から約60°、より好ましくは約45°の角度で、縦繊維の周りに傾斜角で巻かれてもよい。縦繊維の周りに傾斜角で巻かれた繊維は、ねじれおよび曲げ力を相殺するように機能することができる。別の方法として、またはそれに加えて、繊維のフープ巻き層は、縦繊維の周りに約80°から約89.9°(または約0.1°から約10°)の横断角度(transverse angle)で、縦繊維の周りまたは内部に巻かれてもよい。巻きのわずかに螺旋状の性質および巻きロービングの横方向移動のため、角度は真に90°ではなく、一周ごとに1バンド幅ずつ進む。縦繊維の周りに横断角度で巻かれた繊維は、金属ライナーの内圧から生じる径方向の力を吸収するように機能することができる。チューブにかかる力を最大限吸収するために、縦繊維層およびフープ巻き繊維層の任意の組み合わせが可能である。
【0012】
1つを超えるフープ巻き層が、チューブ壁の内部に、または繊維フィラメントのチューブの内側もしくは外側チューブ壁の外表面に配置された場合、フープ巻き層の巻きは、斜め方向または横断方向のどちらであっても、好ましくは時計回りの方向および反時計回りの方向の互い違いである。
【0013】
別の実施形態では、繊維フィラメントのチューブは、発泡材料のコア、弾性ポリマーのコア、ゴムのコア、または複合材料のコアなど、別の材料のコアの内表面および/または外表面の周りに巻かれてもよい。更に別の実施形態では、繊維フィラメントの2つのチューブは、発泡材料のコア、弾性ポリマーのコア、またはゴムのコアなど、別の材料のコアの周りに巻かれ、繊維フィラメントの一方のチューブはコアの内表面の周りに、繊維フィラメントの他方のチューブはコア材料の外表面の周りに巻かれる。
【0014】
圧力下で流体を貯蔵または収容するタンクを製造する方法、ならびに/あるいは圧力下で流体を収容または誘導するパイプを製造する方法では、繊維フィラメントのチューブは、繊維フィラメントをライナー上に熱収縮させることによってライナーに固着されてもよい。当然ながら、これは、繊維フィラメントが熱収縮性であることを前提とする。本発明の別の実施形態では、繊維フィラメントのチューブは、繊維フィラメントをライナー上に接着することによってライナーに固着されてもよい。
【0015】
したがって、別の実施形態では、本発明は、圧力下で流体を貯蔵または収容するタンクを製造する方法に関し、
(a)2つの端部を備えた円筒部分と、該円筒部分のそれぞれの端部にある2つのドーム部分とを有するライナーを提供するステップと、
(b)プルワインド方法を用いて繊維フィラメントのチューブを作成するステップと、
(c)ライナーの少なくとも円筒部分が繊維フィラメントのチューブで囲われるよう、繊維フィラメントのチューブをライナー上に巻き付けるステップと、
(d)熱を加えて繊維フィラメントのチューブをライナー上に収縮させる、および/または繊維フィラメントのチューブをライナー上に接着するステップと、を含む。
【0016】
更に別の実施形態では、本発明は、圧力下で流体を収容または誘導するパイプを製造する方法に関し、
(a)1つまたは2つの開放端を備えた円筒部分を有するライナーを提供するステップと、
(b)プルワインド方法を用いて繊維フィラメントのチューブを作成するステップと、
(c)ライナーの円筒部分が繊維フィラメントのチューブで囲われるように、繊維フィラメントのチューブをライナー上に巻き付けるステップと、
(d)熱を加えて繊維フィラメントのチューブをライナー上に収縮させる、および/または繊維フィラメントのチューブをライナー上に接着するステップと、を含む。
【0017】
繊維フィラメントをライナー上に配置する際、タンク内部の温度が上昇した場合でも内側本体が拡張することができるように留意すべきである。
【0018】
上述の実施形態のうちいずれかの好ましい実施形態では、ライナーは、金属、好ましくはアルミニウムまたは鋼で作られる。圧力下で流体を貯蔵または収容するタンクに関し、金属ライナーは、円筒部分のそれぞれの側でドーム部分に溶接された円筒部で構成されてもよい。
【0019】
あるいは、ライナーは、流体の拡散バリアを提供するプラスチック材料で作られてもよい。圧力下で流体を貯蔵または収容するタンクに関し、プラスチックライナーは、円筒部分のそれぞれの側でドーム部分に接着された円筒部で構成されてもよい。
【0020】
上述の実施形態の両方において、ライナーが金属であるかプラスチック材料であるかにかかわらず、ドーム部分は、円筒部分の中心軸に沿って延在する中心ロッドによって保持されてもよく、その場合、中心ロッドが中空である場合は流体導管として使用されてもよい。更に別の実施形態では、ドーム部分は、円筒部分の周りに配設されたロッド列によって保持されてもよく、その場合、円筒部分の壁は二重壁または単壁であってもよく、ロッド列は、繊維複合体チューブの外側または内側で壁の間に配置される。円筒部分の端部でドームを保持するのにロッド列を使用する実施形態では、ロッドは、中空であってもよく、ライナーおよびその内容物を冷却および/または加熱する役割を果たすか、あるいは流体導管として役立ってもよい。
【0021】
上述の実施形態のうちいずれかの別の好ましい実施形態では、囲う繊維フィラメントは、炭素、アラミド、ガラス繊維、またはそれらの任意の組み合わせで作られる。
【0022】
本発明による方法は、比較的低コストで高スループットを達成することが可能なので、圧力下で流体を貯蔵または収容するタンク、特にタイプ2の高圧タンクを、あるいは圧力下で流体を収容または誘導するパイプを、連続的もしくは半連続的に作成するのに非常に良く適していることが見出されている。更に、圧力に耐えるポリマーシェルの厚さは、特に、最良の場合では、また所望の耐圧性に応じて、5mmまたは更には3mmまで低減される。これは、コアの長手方向軸から約90°の角度で繊維を置くことが可能であり、したがって、流体の圧力によって生じる径方向の応力を完全に吸収することができるためである。同時に、他の繊維配置技術と比較して、他の方向における繊維の量を低減することができ、壁厚全体の所望の低減がもたらされる。
【0023】
内側ライナーは、金属製の場合、所望の直径および壁厚の金属チューブを提供し、その上に2つのエンドキャップを溶接することによって作成することができる。金属ライナーはまた、1つの深絞りエンドキャップ、各端部に1つずつ2つの深絞りエンドキャップを含むか、または1つの深絞りエンドキャップを端部に溶接した、所望の直径および壁厚の金属チューブを深絞り加工することによって、追加製造によって、あるいは金属を適切な形状にダイキャストすることによって、作成することができる。ポリマー製の場合、ライナーは押出しまたは接着によって製造されてもよい。
【0024】
本発明の更に別の実施形態では、例えば、(加熱すると拡張する)金属コアと(通常、加熱してもそれほど拡張しない)複合体シェルとの膨張差を相殺するため、発泡材料、弾性ポリマー、またはゴムなどの弾性材料の中間層が、ライナーと繊維フィラメントとの間に提供される。