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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】車両用温調システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20241216BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20241216BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20241216BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
F01P3/20 L
F01P3/18 G
H02K9/19 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021003824
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108688
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】本荘 拓也
(72)【発明者】
【氏名】本城 智代
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓実
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133608(JP,A)
【文献】特開2000-265839(JP,A)
【文献】特開2008-256313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
F01P 3/20
F01P 3/18
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の第1温調媒体が循環し、第1ポンプが設けられた第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環し、第2ポンプが設けられた第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
制御装置と、を備える車両用温調システムであって、
前記第2温調回路は、
分岐部及び合流部と、
前記第2ポンプが設けられ、一端部が前記分岐部に接続し、他端部が前記合流部に接続する圧送流路と、
被温調装置が設けられ、一端部が前記分岐部に接続し、他端部が前記合流部に接続する第1分岐流路と、
前記熱交換器が設けられ、一端部が前記分岐部に接続し、他端部が前記合流部に接続する第2分岐流路と、を有し、
前記第2ポンプで圧送されて前記圧送流路を流れる前記第2温調媒体が、前記分岐部で前記第1分岐流路と前記第2分岐流路とに分岐して流れ、前記第1分岐流路を流れる前記第2温調媒体と前記第2分岐流路を流れる前記第2温調媒体とが、前記合流部で合流して前記圧送流路を流れて前記第1ポンプに供給されて、前記第2温調媒体が前記第2温調回路を循環し、
前記第2分岐流路には、前記第2分岐流路を流れる前記第2温調媒体の流量を調節するバルブ装置が、前記分岐部と前記熱交換器との間に設けられており、
前記制御装置は、
前記熱交換器の故障を検知すると、前記第2温調媒体が前記第2分岐流路を流れるのを遮断するように前記バルブ装置を制御する、車両用温調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用温調システムであって、
前記合流部において、前記第1分岐流路の前記他端部には、流路断面積が減少する絞り部が形成されており、前記第2分岐流路の前記他端部は、前記絞り部で前記第1分岐流路に接続する、車両用温調システム。
【請求項3】
内燃機関と、
非導電性の第1温調媒体が循環し、第1ポンプが設けられた第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環し、第2ポンプが設けられた第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
制御装置と、を備える車両用温調システムであって、
前記第1ポンプは、前記内燃機関の動力によって駆動され、
前記制御装置は、前記熱交換器の故障を検知すると、前記内燃機関の駆動が停止することを禁止するように前記内燃機関を制御する、車両用温調システム。
【請求項4】
非導電性の第1温調媒体が循環し、第1ポンプが設けられた第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環し、第2ポンプが設けられた第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
制御装置と、を備える車両用温調システムであって、
前記第2ポンプは、前記制御装置によって制御可能な電動ポンプであり、
前記制御装置は、前記熱交換器の故障を検知した場合の前記第2ポンプの回転数が、前記熱交換器の故障を検知していない場合の前記第2ポンプの回転数よりも低い回転数となるように前記第2ポンプを制御する、車両用温調システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用温調システムであって、
前記第2ポンプは、電動ポンプであり、
前記制御装置は、前記第2ポンプの回転速度の変化に基づいて、前記熱交換器の故障を検知する、車両用温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両などに搭載される車両用温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動車両など、回転電機と、回転電機を制御する電力変換装置と、を備える車両が知られている。一般に、回転電機や電力変換装置は駆動すると発熱するため、回転電機や電力変換装置を備える車両には、回転電機や電力変換装置を温調する車両用温調システムが搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、オイルが循環し、電動機Mを冷却する循環路Lと、冷却水が循環し、インバータUを冷却する循環路Fと、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとの間で熱交換を行う熱交換部(オイルクーラC)と、を備える車両用温調システムが開示されている。循環路FにはラジエータRが設けられており、循環路Fを流れる冷却水は、ラジエータRで冷却される。循環路Lを流れるオイルは、熱交換部(オイルクーラC)で、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとの間で熱交換が行われることによって冷却される。特許文献1の車両用温調システムは、オイルを冷却するためのラジエータが不要となるので、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとを1つのラジエータで冷却でき、車両用温調システムを小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-238406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献1の車両用温調システムは、熱交換部(オイルクーラC)が故障して破損すると、循環路Fを流れてインバータUを冷却する冷却水が循環路Lに流れ込み、電動機Mを冷却するオイルに冷却水が混入する場合がある。
【0006】
そして、特許文献1の車両用温調システムでは、冷却水が電動機Mを冷却するオイルに混入すると、冷却水を含むオイルが電動機Mに供給されるが、水は導電性を有するので、冷却水を含むオイルが電動機Mに供給されると、電動機Mで短絡が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、非導電性の温調媒体への導電性の温調媒体の混入を低減できる車両用温調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
非導電性の第1温調媒体が循環し、第1ポンプが設けられた第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環し、第2ポンプが設けられた第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
制御装置と、を備える車両用温調システムであって、
前記第2温調回路は、
分岐部及び合流部と、
前記第2ポンプが設けられ、一端部が前記分岐部に接続し、他端部が前記合流部に接続する圧送流路と、
被温調装置が設けられ、一端部が前記分岐部に接続し、他端部が前記合流部に接続する第1分岐流路と、
前記熱交換器が設けられ、一端部が前記分岐部に接続し、他端部が前記合流部に接続する第2分岐流路と、を有し、
前記第2ポンプで圧送されて前記圧送流路を流れる前記第2温調媒体が、前記分岐部で前記第1分岐流路と前記第2分岐流路とに分岐して流れ、前記第1分岐流路を流れる前記第2温調媒体と前記第2分岐流路を流れる前記第2温調媒体とが、前記合流部で合流して前記圧送流路を流れて前記第1ポンプに供給されて、前記第2温調媒体が前記第2温調回路を循環し、
前記第2分岐流路には、前記第2分岐流路を流れる前記第2温調媒体の流量を調節するバルブ装置が、前記分岐部と前記熱交換器との間に設けられており、
前記制御装置は、
前記熱交換器の故障を検知すると、前記第2温調媒体が前記第2分岐流路を流れるのを遮断するように前記バルブ装置を制御する。
【0009】
また、本発明は、
内燃機関と、
非導電性の第1温調媒体が循環し、第1ポンプが設けられた第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環し、第2ポンプが設けられた第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
制御装置と、を備える車両用温調システムであって、
前記第1ポンプは、前記内燃機関の動力によって駆動され、
前記制御装置は、前記熱交換器の故障を検知すると、前記内燃機関の駆動が停止することを禁止するように前記内燃機関を制御する。
【0010】
また、本発明は、
非導電性の第1温調媒体が循環し、第1ポンプが設けられた第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環し、第2ポンプが設けられた第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
制御装置と、を備える車両用温調システムであって、
前記第2ポンプは、前記制御装置によって制御可能な電動ポンプであり、
前記制御装置は、前記熱交換器の故障を検知した場合の前記第2ポンプの回転数が、前記熱交換器の故障を検知していない場合の前記第2ポンプの回転数よりも低い回転数となるように前記第2ポンプを制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱交換器が故障した場合であっても、熱交換器で第2温調媒体が第1温調回路に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体への導電性の第2温調媒体の混入を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態の車両用温調システムのブロック図である。
図2図1の車両用温調システムにおいて、熱交換器が故障していない場合と熱交換器が故障している場合とにおける第2ポンプの回転速度の挙動を示した図である。
図3図1の車両用温調システムの合流部周辺を示した図である。
図4】本発明の第2実施形態の車両用温調システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の車両用温調システムが搭載された車両の各実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0014】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態の車両用温調システム10について図1図3を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の車両用温調システム10は、車両Vに搭載され、内燃機関ICEと、制御装置ECUと、電動機20と、発電機30と、変速装置40と、電力変換装置50と、温調回路60と、を備える。
【0016】
電動機20は、車両Vに搭載された不図示の蓄電装置に蓄電されている電力、又は、発電機30によって発電された電力によって、車両Vを駆動する動力を出力する回転電機である。電動機20は、車両Vの制動時に、車両Vの駆動輪の運動エネルギーによって発電し、前述の蓄電装置を充電してもよい。
【0017】
発電機30は、内燃機関ICEの動力によって発電し、前述の蓄電装置を充電し、又は、電動機20に電力を供給する回転電機である。
【0018】
変速装置40は、電動機20から出力された動力を減速して駆動輪に伝達する装置であり、例えば、歯車式の動力伝達装置である。
【0019】
電力変換装置50は、前述した蓄電装置から出力された電力を直流から交流へと変換して電動機20及び発電機30の入出力電力を制御する不図示のPDU(Power Drive Unit)と、必要に応じて前述した蓄電装置から出力された電力を昇圧する不図示のVCU(Voltage Control Unit)と、を備える。VCUは、車両Vの制動時に電動機20が発電した場合、電動機20が発電した電力を降圧してもよい。
【0020】
温調回路60は、非導電性の第1温調媒体TCM1が循環し、電動機20、発電機30、及び変速装置40の温調を行う第1温調回路61と、導電性の第2温調媒体TCM2が循環し、電力変換装置50の温調を行う第2温調回路62と、第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間で熱交換を行う熱交換器63と、を有する。非導電性の第1温調媒体TCM1は、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)と呼ばれる、電動機20、発電機30、及び変速装置40の潤滑及び温調を行うことが可能なオイルである。導電性の第2温調媒体TCM2は、例えば、LLC(Long Life Coolant)と呼ばれる、冷却水である。
【0021】
第1温調回路61には、第1ポンプ611と、貯留部612と、が設けられている。第1ポンプ611は、内燃機関ICEの動力と、車両Vの不図示の車軸の回転力と、によって駆動する機械式ポンプである。貯留部612は、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を貯留する。貯留部612は、例えば、電動機20、発電機30、及び変速装置40を収容する不図示のハウジングの底部に設けられたオイルパンである。第1温調回路61は、分岐部613を有する。第1温調回路61は、第1ポンプ611が設けられ、上流側の端部が貯留部612に接続し、第1ポンプ611を通って、下流側の端部が分岐部613に接続する圧送流路610aと、電動機20及び発電機30が設けられ、上流側の端部が分岐部613に接続し、電動機20及び発電機30を通って、下流側の端部が貯留部612に接続する第1分岐流路610b1と、変速装置40が設けられ、上流側の端部が分岐部613に接続し、変速装置40を通って、下流側の端部が貯留部612に接続する第2分岐流路610b2と、を有する。第1温調回路61において、熱交換器63は、第1分岐流路610b1の電動機20及び発電機30よりも上流に配置されている。
【0022】
したがって、第1温調回路61には、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第1分岐流路610b1を通って、熱交換器63で第2温調媒体TCM2と熱交換することによって冷却され、電動機20及び発電機30に供給されて電動機20及び発電機30を潤滑及び温調した後、貯留部612に貯留する流路と、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第2分岐流路610b2を通って、変速装置40に供給されて変速装置40を潤滑及び温調した後、貯留部612に貯留する流路と、が並列に形成され、貯留部612に貯留した第1温調媒体TCM1が圧送流路610aを流れて第1ポンプ611に供給されて、第1温調媒体TCM1が第1温調回路61を循環する。
【0023】
本実施形態では、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2は、第1分岐流路610b1を流れる第1温調媒体TCM1の流量が、第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の流量よりも大きくなるように形成されている。
【0024】
第1温調回路61には、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1の温度を検出する第1温度センサ61aが設けられている。本実施形態では、第1温度センサ61aは、オイルパンである貯留部612に設けられており、貯留部612に貯留する第1温調媒体TCM1の温度を検出する。第1温度センサ61aは、貯留部612に貯留する第1温調媒体TCM1の温度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0025】
第1温調回路61は、上流側の端部が貯留部612に接続し、下流側の端部が第1ポンプ611より下流側で圧送流路610aに接続する調圧回路610cをさらに有する。調圧回路610cには、調圧バルブ619が設けられている。調圧バルブ619は、逆止弁であってもよいし、ソレノイドバルブ等の電磁弁であってもよい。第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の液圧が所定の上限圧以上となると調圧バルブ619は開状態となり、第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の一部が貯留部612に戻される。これにより、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の液圧は、上限圧以下に保持される。
【0026】
第2温調回路62には、第2ポンプ621と、ラジエータ622と、貯留タンク623と、が設けられている。第2ポンプ621は、例えば、前述した蓄電装置に蓄電された電力によって駆動する電動式ポンプである。ラジエータ622は、車両Vの前部に配置されており、車両Vの走行時における走行風によって、第2温調媒体TCM2を冷却する放熱装置である。貯留タンク623は、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2を一時的に貯留するタンクである。第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2にキャビテーションが発生した場合でも、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2が貯留タンク623で一時的に貯留されることによって、第2温調媒体TCM2に発生したキャビテーションは消滅する。
【0027】
第2温調回路62は、分岐部624及び合流部625を有する。第2温調回路62は、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622が、上流側からこの順に設けられ、上流側の端部が合流部625に接続し、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622を通って、下流側の端部が分岐部624に接続する圧送流路620aを有する。貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2は、圧送流路620aを通って第2ポンプ621で圧送され、ラジエータ622で冷却される。
【0028】
第2温調回路62は、電力変換装置50が設けられ、上流側の端部が分岐部624に接続し、電力変換装置50を通って、下流側の端部が合流部625に接続する第1分岐流路620b1と、熱交換器63が設けられ、上流側の端部が分岐部624に接続し、熱交換器63を通って、下流側の端部が合流部625に接続する第2分岐流路620b2と、をさらに有する。本実施形態では、第2分岐流路620b2の熱交換器63よりも上流部分に、バルブ装置626が設けられている。本実施形態では、バルブ装置626は、第2分岐流路620b2を全開状態と全閉状態とのいずれかの状態に切り替えるON-OFFバルブであってもよいし、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量を調節可能な可変流量バルブであってもよい。バルブ装置626は、制御装置ECUによって制御される。
【0029】
したがって、圧送流路620aにおいて第2ポンプ621で圧送されてラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2は、分岐部624で第1分岐流路620b1と第2分岐流路620b2とに分岐する。第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2は、電力変換装置50を冷却して合流部625で第2分岐流路620b2及び圧送流路620aと合流する。第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2は、熱交換器63で第1温調媒体TCM1と熱交換することによって第1温調媒体TCM1を冷却し、合流部625で第1分岐流路620b1及び圧送流路620aと合流する。第1分岐流路620b1を流れた第2温調媒体TCM2と第2分岐流路620b2を流れた第2温調媒体TCM2とは、合流部625で合流して圧送流路620aを流れて貯留タンク623に一時的に貯留される。そして、貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2が圧送流路620aを通って第2ポンプ621に再び供給されて、第2温調媒体TCM2が第2温調回路62を循環する。
【0030】
本実施形態では、第1分岐流路620b1及び第2分岐流路620b2は、第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2の流量が、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量よりも大きくなるように形成されている。
【0031】
第2温調回路62には、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2の温度を検出する第2温度センサ62aが設けられている。本実施形態では、第2温度センサ62aは、ラジエータ622と分岐部624との間の圧送流路620aに設けられており、ラジエータ622から排出された第2温調媒体TCM2の温度を検出する。第2温度センサ62aは、ラジエータ622から排出された第2温調媒体TCM2の温度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0032】
第1温調回路61において、電動機20、発電機30、及び変速装置40を冷却した後に貯留部612に貯留した第1温調媒体TCM1の温度は約100[℃]である。したがって、熱交換器63には、約100[℃]の第1温調媒体TCM1が供給される。
【0033】
一方、第2温調回路62において、ラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2の温度は約40[℃]である。熱交換器63に供給される第2温調媒体TCM2は、被温調装置である電力変換装置50を通らないため、熱交換器63には、約40[℃]の第2温調媒体TCM2が供給される。
【0034】
熱交換器63は、熱交換器63に供給された約100[℃]の第1温調媒体TCM1と約40[℃]の第2温調媒体TCM2との間で、熱交換を行う。そして、熱交換器63からは、約80[℃]の第1温調媒体TCM1が、第1温調回路61の第1分岐流路610b1の下流側に排出され、約70[℃]の第2温調媒体TCM2が、第2温調回路62の第2分岐流路620b2の下流側に排出される。
【0035】
このようにして、第1温調媒体TCM1は、熱交換器63で冷却されるので、温調回路60は、第1温調媒体TCM1を冷却するためのラジエータを設けることなく、第1温調媒体TCM1を冷却することができる。したがって、温調回路60は、1つのラジエータ622で、第1温調回路61を流れる第1温調媒体TCM1と第2温調回路62を流れる第2温調媒体TCM2とを冷却することができるので、温調回路60を小型化できる。
【0036】
制御装置ECUは、内燃機関ICEと、電力変換装置50と、第2ポンプ621と、バルブ装置626と、を制御する。制御装置ECUは、熱交換器63の故障を検知する熱交換器故障検知部71を有する。第2ポンプ621には、第2ポンプ621の回転速度を検出する回転速度センサ621aが取り付けられている。回転速度センサ621aは、第2ポンプ621の回転速度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0037】
熱交換器故障検知部71は、回転速度センサ621aから出力された第2ポンプ621の回転速度の検出値に基づいて、熱交換器63の故障を検知する。
【0038】
図2に示すように、熱交換器63が故障し、第2温調媒体TCM2が第2温調回路62から漏出すると、貯留タンク623に貯留する第2温調媒体TCM2が減少していく。そして、第2温調媒体TCM2の貯留タンク623内における液位が、圧送流路620aの上端よりも下方まで低下すると、貯留タンク623から圧送流路620aに排出される第2温調媒体TCM2に空気が混入する。空気が混入した第2温調媒体TCM2が第2ポンプ621に供給されると、第2ポンプ621の回転速度は、空気が混入していない第2温調媒体TCM2が供給される場合よりも、目標回転速度に対する変動幅が大きくなる。したがって、回転速度センサ621aから出力された第2ポンプ621の回転速度の検出値の目標回転速度に対する変動幅が所定値以上のとき、空気が混入した第2温調媒体TCM2が第2ポンプ621に供給されており、熱交換器63が故障して第2温調媒体TCM2が第2温調回路62から漏出していると推定できる。
【0039】
これにより、簡素な構成で熱交換器63の故障を検知することができるので、車両用温調システム10を小型化できる。
【0040】
図1に戻って、熱交換器故障検知部71は、回転速度センサ621aから出力された第2ポンプ621の回転速度の検出値に基づいて、熱交換器63の故障を検知する。具体的には、熱交換器故障検知部71は、回転速度センサ621aから出力された第2ポンプ621の回転速度の検出値の目標回転速度に対する変動幅が所定値以上のときに熱交換器63が故障したと判定することによって、熱交換器63の故障を検知する。
【0041】
制御装置ECUは、熱交換器故障検知部71で熱交換器63の故障を検知すると、バルブ装置626を全閉し、第2温調媒体TCM2が第2分岐流路620b2を流れるのを遮断するようにバルブ装置626を制御する。
【0042】
バルブ装置626を全閉し、第2温調媒体TCM2が第2分岐流路620b2を流れるのを遮断すると、第2温調媒体TCM2は熱交換器63に供給されない。したがって、熱交換器63の故障が検知されると、第2温調媒体TCM2は熱交換器63に供給されないので、熱交換器63が故障して破損した場合であっても、熱交換器63で第2温調媒体TCM2が第1温調回路61に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体TCM1への導電性の第2温調媒体TCM2の混入を低減できる。
【0043】
図3に示すように、合流部625において、第1分岐流路620b1の下流側の端部と、第2分岐流路620b2の下流側の端部と、圧送流路620aの上流側の端部と、が合流する。図3中に示す矢印は、第2温調媒体TCM2の流れ方向を示している。
【0044】
合流部625において、第1分岐流路620b1の下流側の端部には、流路断面積が減少する絞り部625aが形成されている。そして、第2分岐流路620b2の下流側の端部は、絞り部625aで第1分岐流路620b1に接続している。
【0045】
第1分岐流路620b1の下流側の端部から圧送流路620aへと流れる第2温調媒体TCM2は、流路断面積が減少する絞り部625aで、ベンチュリ効果によって流速が増加して圧力が低下する。そのため、絞り部625aを第1分岐流路620b1から圧送流路620aへと流れる第2温調媒体TCM2には、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2を絞り部625aに吸引する吸引力が発生する。この吸引力により、熱交換器63の故障が検知され、バルブ装置626によって第2温調媒体TCM2が第2分岐流路620b2を流れるのを遮断した後に熱交換器63に滞留している第2温調媒体TCM2が、絞り部625aに吸引されて圧送流路620aへと導かれる。これにより、熱交換器63の故障が検知され、バルブ装置626によって第2温調媒体TCM2が第2分岐流路620b2を流れるのを遮断した後に熱交換器63に滞留する第2温調媒体TCM2を低減することができるので、熱交換器63で第2温調媒体TCM2が第1温調回路61に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体TCM1への導電性の第2温調媒体TCM2の混入をより低減できる。
【0046】
図1に戻って、第1温調媒体TCM1がATFである場合、第1温調媒体TCM1の温度が低くなると、第1温調媒体TCM1の粘度が高くなる。第1温調媒体TCM1は、電動機20及び発電機30を流れるので、粘度が高くなると、電動機20及び発電機30で生じるフリクションロスが増大し、電動機20及び発電機30の出力効率が低下する。したがって、電動機20及び発電機30の始動時等、電動機20及び発電機30が高温となっておらず、第1温調媒体TCM1の温度が所定温度以下である場合、第1温調媒体TCM1は、冷却不要であり冷却されない方が好ましい。
【0047】
制御装置ECUは、第1温度センサ61aから出力された第1温調媒体TCM1の温度の検出値が所定温度以下のとき、バルブ装置626を全閉し、第2温調媒体TCM2が第2分岐流路620b2を流れるのを遮断するようにバルブ装置626を制御する。
【0048】
第2分岐流路620b2に第2温調媒体TCM2が流れるのを遮断すると、熱交換器63には第2温調媒体TCM2が供給されないので、第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間で熱交換は行われず、第1温調媒体TCM1は冷却されない。したがって、第1温調媒体TCM1が冷却不要のときに、熱交換器63で第1温調媒体TCM1を冷却しないようにすることができる。これにより、第1温調媒体TCM1が冷却不要の場合に、熱交換器63で第1温調媒体TCM1が冷却されてしまうことを防止できる。
【0049】
制御装置ECUは、熱交換器故障検知部71で熱交換器63の故障を検知すると、内燃機関ICEの駆動が停止することを禁止するように内燃機関ICEを制御する。
【0050】
内燃機関ICEの駆動が停止することを禁止すると、内燃機関ICEは常時駆動することとなり、内燃機関ICEの動力によって駆動する第1ポンプ611も常時駆動する。したがって、熱交換器63の故障が検知されると、第1ポンプ611が常時駆動することとなるため、第1ポンプ611によって圧送されて第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1の液圧は所定圧以上に保持される。熱交換器63が故障した場合、第1温調媒体TCM1及び第2温調媒体TCM2は、熱交換器63内の液圧が低圧の方の流路へと流れ込みやすいが、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧が所定圧以上に保持されることによって、熱交換器63が故障して破損した場合であっても、熱交換器63で第2温調媒体TCM2が第1温調回路61に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体TCM1への導電性の第2温調媒体TCM2の混入を低減できる。
【0051】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態の車両用温調システム10Aについて図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態の車両用温調システム10と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0052】
第1実施形態の車両用温調システム10では、第2温調回路62において、第2分岐流路620b2の熱交換器63よりも上流側、すなわち、分岐部624と熱交換器63との間に、バルブ装置626が設けられているものとしたが、第2実施形態の車両用温調システム10Aでは、バルブ装置626が設けられていなくてもよい。また、第1実施形態の車両用温調システム10では、第2温調回路62は、分岐部624及び合流部625を有し、電力変換装置50が設けられ、上流側の端部が分岐部624に接続し、電力変換装置50を通って、下流側の端部が合流部625に接続する第1分岐流路620b1と、熱交換器63が設けられ、上流側の端部が分岐部624に接続し、熱交換器63を通って、下流側の端部が合流部625に接続する第2分岐流路620b2と、をさらに有するものとしたが、第2実施形態の車両用温調システム10Aでは、第2温調回路62は、電力変換装置50と熱交換器63とが直列に設けられていてもよい。以下、第1実施形態の車両用温調システム10と第2実施形態の車両用温調システム10Aとの相違点について詳細に説明する。
【0053】
図4に示すように、本実施形態の第2温調回路62は、貯留タンク623を起点として、第2ポンプ621、ラジエータ622、電力変換装置50、及び熱交換器63が、上流側からこの順に設けられて、再び貯留タンク623に戻るように形成された循環流路620cを有する。循環流路620cを流れる第2温調媒体TCM2は、貯留タンク623から排出されて第2ポンプ621で圧送され、ラジエータ622で冷却されて電力変換装置50に供給され、電力変換装置50を冷却した後、熱交換器63に供給され、熱交換器63で第1温調回路61を流れる第1温調媒体TCM1と熱交換して第1温調媒体TCM1を冷却して、再び貯留タンク623に戻る。このようにして、第2温調媒体TCM2は、第2温調回路62を循環する。
【0054】
制御装置ECUは、熱交換器63の故障を検知した場合の第2ポンプ621の回転数が、熱交換器63の故障を検知していない場合の第2ポンプ621の回転数よりも低い回転数となるように第2ポンプ621を制御する。したがって、熱交換器63の故障を検知した場合の熱交換器63内の第2温調媒体TCM2の液圧は、熱交換器63の故障を検知していない場合の熱交換器63内の第2温調媒体TCM2の液圧よりも低くなる。
【0055】
熱交換器63が故障した場合、第1温調媒体TCM1及び第2温調媒体TCM2は、熱交換器63内の液圧が低圧の方の流路へと流れ込みやすいが、熱交換器63内の第2温調媒体TCM2の液圧が低くなることによって、熱交換器63が故障して破損した場合であっても、熱交換器63で第2温調媒体TCM2が第1温調回路61に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体TCM1への導電性の第2温調媒体TCM2の混入を低減できる。
【0056】
以上、本発明の各実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0057】
例えば、第2実施形態の第2温調回路62は、貯留タンク623を起点として、第2ポンプ621、ラジエータ622、熱交換器63、及び電力変換装置50が、上流側からこの順に設けられて、再び貯留タンク623に戻るように形成された循環流路620cを有するものとしたが、第1実施形態の第1温調回路61と同様の構成であってもよい。すなわち、第2実施形態の第2温調回路62は、分岐部624及び合流部625と、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622が、上流側からこの順に設けられ、上流側の端部が合流部625に接続し、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622を通って、下流側の端部が分岐部624に接続する圧送流路620aと、電力変換装置50が設けられ、上流側の端部が分岐部624に接続し、電力変換装置50を通って、下流側の端部が合流部625に接続する第1分岐流路620b1と、熱交換器63が設けられ、上流側の端部が分岐部624に接続し、熱交換器63を通って、下流側の端部が合流部625に接続する第2分岐流路620b2と、を有していてもよい。
【0058】
また、例えば、第1実施形態及び第2実施形態の第2温調回路62は、電力変換装置50を温調するものとしたが、第2温調回路62が温調する被温調装置は、電力変換装置50でなくてもよく、温調が要求される任意の装置であってよい。
【0059】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0060】
(1) 非導電性の第1温調媒体(第1温調媒体TCM1)が循環し、第1ポンプ(第1ポンプ611)が設けられた第1温調回路(第1温調回路61)と、
導電性の第2温調媒体(第2温調媒体TCM2)が循環し、第2ポンプ(第2ポンプ621)が設けられた第2温調回路(第2温調回路62)と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器(熱交換器63)と、
制御装置(制御装置ECU)と、を備える車両用温調システム(車両用温調システム10)であって、
前記第2温調回路は、
分岐部(分岐部624)及び合流部(合流部625)と、
前記第2ポンプが設けられ、一端部(下流側の端部)が前記分岐部に接続し、他端部(上流側の端部)が前記合流部に接続する圧送流路(圧送流路620a)と、
被温調装置(電力変換装置50)が設けられ、一端部(上流側の端部)が前記分岐部に接続し、他端部(下流側の端部)が前記合流部に接続する第1分岐流路(第1分岐流路620b1)と、
前記熱交換器が設けられ、一端部(上流側の端部)が前記分岐部に接続し、他端部(下流側の端部)が前記合流部に接続する第2分岐流路(第2分岐流路620b2)と、を有し、
前記第1ポンプで圧送されて前記圧送流路を流れる前記第2温調媒体が、前記分岐部で前記第1分岐流路と前記第2分岐流路とに分岐して流れ、前記第1分岐流路を流れる前記第2温調媒体と前記第2分岐流路を流れる前記第2温調媒体とが、前記合流部で合流して前記圧送流路を流れて前記第1ポンプに供給されて、前記第2温調媒体が前記第2温調回路を循環し、
前記第2分岐流路には、前記第2分岐流路を流れる前記第2温調媒体の流量を調節するバルブ装置(バルブ装置626)が、前記分岐部と前記熱交換器との間に設けられており、
前記制御装置は、
前記熱交換器の故障を検知すると、前記第2温調媒体が前記第2分岐流路を流れるのを遮断するように前記バルブ装置を制御する、車両用温調システム。
【0061】
(1)によれば、制御装置は、熱交換器の故障を検知すると、第2温調媒体が第2分岐流路を流れるのを遮断するようにバルブ装置を制御するので、熱交換器の故障が検知されると、第2温調媒体は熱交換器に供給されない。したがって、熱交換器が故障して破損した場合であっても、熱交換器で第2温調媒体が第1温調回路に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体への導電性の第2温調媒体の混入を低減できる。
【0062】
(2) (1)に記載の車両用温調システムであって、
前記合流部において、前記第1分岐流路の前記他端部には、流路断面積が減少する絞り部(絞り部625a)が形成されており、前記第2分岐流路の前記他端部は、前記絞り部で前記第1分岐流路に接続する、車両用温調システム。
【0063】
(2)によれば、合流部において、第1分岐流路の他端部には、流路断面積が減少する絞り部が形成されており、第2分岐流路の他端部は、絞り部で第1分岐流路に接続するので、第1分岐流路から合流部を通って圧送流路へと流れる第2温調媒体は、流路断面積が減少する絞り部で、ベンチュリ効果によって流速が増加して圧力が低下する。そのため、絞り部を第1分岐流路から圧送流路へと流れる第2温調媒体には、第2分岐流路を流れる第2温調媒体を絞り部に吸引する吸引力が発生する。この吸引力により、熱交換器の故障が検知され、バルブ装置によって第2温調媒体が第2分岐流路を流れるのを遮断した後に熱交換器に滞留している第2温調媒体が、絞り部に吸引されて合流部へと導かれる。これにより、熱交換器の故障が検知され、バルブ装置によって第2温調媒体が第2分岐流路を流れるのを遮断した後に熱交換器に滞留する第2温調媒体を低減することができるので、熱交換器で第2温調媒体が第1温調回路に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体への導電性の第2温調媒体の混入をより低減できる。
【0064】
(3) 内燃機関(内燃機関ICE)と、
非導電性の第1温調媒体(第1温調媒体TCM1)が循環し、第1ポンプ(第1ポンプ611)が設けられた第1温調回路(第1温調回路61)と、
導電性の第2温調媒体(第2温調媒体TCM2)が循環し、第2ポンプ(第2ポンプ621)が設けられた第2温調回路(第2温調回路62)と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器(熱交換器63)と、
制御装置(制御装置ECU)と、を備える車両用温調システム(車両用温調システム10)であって、
前記第1ポンプは、前記内燃機関の動力によって駆動され、
前記制御装置は、前記熱交換器の故障を検知すると、前記内燃機関の駆動が停止することを禁止するように前記内燃機関を制御する、車両用温調システム。
【0065】
(3)によれば、制御装置は、熱交換器の故障を検知すると、内燃機関の駆動が停止することを禁止するように内燃機関を制御するので、熱交換器の故障が検知されると、第1ポンプが常時駆動することとなり、第1ポンプによって圧送されて第1温調回路を循環する第1温調媒体の液圧は所定圧以上に保持される。これにより、熱交換器が故障して破損した場合であっても、熱交換器で第2温調媒体が第1温調回路に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体への導電性の第2温調媒体の混入を低減できる。
【0066】
(4) 非導電性の第1温調媒体(第1温調媒体TCM1)が循環し、第1ポンプ(第1ポンプ611)が設けられた第1温調回路(第1温調回路61)と、
導電性の第2温調媒体(第2温調媒体TCM2)が循環し、第2ポンプ(第2ポンプ621)が設けられた第2温調回路(第2温調回路62)と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器(熱交換器63)と、
制御装置(制御装置ECU)と、を備える車両用温調システム(車両用温調システム10)であって、
前記第2ポンプは、前記制御装置によって制御可能な電動ポンプであり、
前記制御装置は、前記熱交換器の故障を検知した場合の前記第2ポンプの回転数が、前記熱交換器の故障を検知していない場合の前記第2ポンプの回転数よりも低い回転数となるように前記第2ポンプを制御する、車両用温調システム。
【0067】
(4)によれば、制御装置は、熱交換器の故障を検知した場合の第2ポンプの回転数が、熱交換器の故障を検知していない場合の第2ポンプの回転数よりも低い回転数となるように第2ポンプを制御するので、熱交換器の故障を検知した場合の熱交換器内の第2温調媒体の液圧は、熱交換器の故障を検知していない場合の熱交換器内の第2温調媒体の液圧よりも低くなる。これにより、熱交換器が故障して破損した場合であっても、熱交換器で第2温調媒体が第1温調回路に流れ込むことによる、非導電性の第1温調媒体への導電性の第2温調媒体の混入を低減できる。
【0068】
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の車両用温調システムであって、
前記第2ポンプは、電動ポンプであり、
前記制御装置は、前記第2ポンプの回転速度の変化に基づいて、前記熱交換器の故障を検知する、車両用温調システム。
【0069】
(5)によれば、制御装置は、第2ポンプの回転速度の変化に基づいて、熱交換器の故障を検知するので、簡素な構成で熱交換器の故障を検知することができ、車両用温調システムを小型化できる。
【符号の説明】
【0070】
10 車両用温調システム
50 電力変換装置(被温調装置)
61 第1温調回路
611 第1ポンプ
62 第2温調回路
620a 圧送流路
620b1 第1分岐流路
620b2 第2分岐流路
621 第2ポンプ
624 分岐部
625 合流部
625a 絞り部
626 バルブ装置
63 熱交換器
ECU 制御装置
ICE 内燃機関
TCM1 第1温調媒体
TCM2 第2温調媒体
図1
図2
図3
図4